説明

環状オレフィン系ポリマーの製造方法

【課題】 分子量および分子量分布の制御されたポリマーを製造するための環状オレフィン系ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】 環状オレフィンモノマーを、触媒存在下、イオン液体中で重合する環状オレフィン系ポリマーの製造方法により達成される。前記イオン液体は、アニオン成分として、イミド結合を有するアニオンを含むものである前記環状オレフィン系ポリマーの製造方法。前記環状オレフィン系ポリマーの製造方法は、マイクロ波を照射して重合するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系ポリマーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の環状オレフィン系ポリマーの製造方法においては、遷移金属触媒を用いて、ノルボルネン系付加重合体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
環状オレフィン系ポリマーは、各種用途に応じた分子量に制御して用いられることが多い。分子量制御の方法としては、特許文献2に例示されているように種々の方法が知られている。しかしながら、分子量調整剤としてα−オレフィンやシクロペンテン誘導体を用いた場合には、生成ポリマー中に残るポリマー末端の二重結合が目的用途によってはポリマーの酸化劣化の原因となるなどの恐れがあった。また、2種類以上の環状オレフィンモノマーを重合する場合には、各環状オレフィン系モノマーの反応性の違いにより、共重合体組成比を正確に制御することが困難であった。
【0003】
一方、イオン液体は、広い温度範囲において液体である塩または塩の混合物で、環境に優しい溶剤としてグリーンケミストリーなどの分野で注目されている。例えば、特許文献3には、イオン液体存在下での遷移金属触媒を用いたメタセシス反応において、イオン液体と触媒を含む相は更なるメタセシス反応にも使用できることが記載されている。また、特許文献4には、ある種のイオン液体存在下でのフリーラジカル重合において、多分散指数(PDI)の低いポリマーが得られた例が記載されている。しかしながら、イオン液体を用いた分子量や共重合体比が制御された環状ポリオレフィン系ポリマーの効率的な製造方法は見出されていない。
【0004】
【特許文献1】特表平9−508649号公報
【特許文献2】特開2006−321912号公報
【特許文献3】特開2000−256218号公報
【特許文献4】特開2006−89747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分子量および分子量分布が制御され、かつ2種以上のモノマーを重合する場合にはその共重合比の制御されたポリマーを製造するための環状オレフィン系ポリマーの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題は、下記第1項〜第7項の本発明により達成される。
即ち、本発明は、
1. 環状オレフィンモノマーを、触媒存在下、イオン液体中で付加重合する環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
2. 前記イオン液体は、イミド結合を有するアニオンを含むものである第1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
3. 前記イオン液体は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをアニオンとして含むものである第2項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
4. 前記環状オレフィン系ポリマーの製造方法は、マイクロ波を照射して重合する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
5. 前記触媒は、遷移金属触媒である第1項乃至第4項のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
6. 前記触媒は、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属触媒である第5項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
7. 前記環状オレフィンモノマーは、下記一般式(1)で表される化合物である第1項乃至第6項のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法、
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中のXは、それぞれ独立して、−CH2−、−(CH22−又は−O−を示し、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ水素原子、炭化水素基、および極性基もしくは極性基を含む基から選ばれる基を示し、これらの基は同一であっても異なっていても良い。nは0〜5までの整数である。)
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の分子量に制御することが容易な環状オレフィン系ポリマーの製造方法を提供することができる。また、2種以上の環状オレフィンモノマーを用いた場合、それぞれのモノマーの仕込み比に近い共重合比を有するポリマーを得ることができ、さらには、本発明の環状オレフィン系ポリマーは効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、環状オレフィンモノマーを、触媒存在下、イオン液体中で付加重合する環状オレフィン系ポリマーの製造方法であり、これにより、環状オレフィン系ポリマーを所望の分子量および分子量分布に制御することが容易になるものであり、また、2種以上の環状オレフィンモノマーを用いた場合、それぞれのモノマーの仕込み比に近い共重合比を有するポリマーを得ることができ、さらには、本発明の環状オレフィン系ポリマーは効率的に製造することができる。
【0011】
本発明に用いる環状オレフィンモノマーとしては、例えば、シクロヘキセンおよびシクロオクテンなどの単環式モノマー、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンおよびジヒドロテトラシクロペンタジエンなどの多環式モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネンモノマーから得られるノルボルネン系付加(共)重合体は、一般に、その主鎖骨格が脂環構造であるため、低吸湿性を有し、耐熱性にも優れる。更には、ノルボルネン系付加(共)重合体が特定の官能基を有することで、成形加工性が優れると共に、成形品などにした場合、より柔軟性が向上する。また、得られる重合体の使用目的に応じて、成形品などの特性を調整するために、各種官能基を選択することができる。
【0012】
官能基を有する環状オレフィン系モノマーとしては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中のXは、それぞれ独立して、−CH2−、−(CH22−又は−O−を示し、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ、水素原子、あるいは、炭化水素基、および極性基又は該極性基を含む基から選ばれる基を示し同一であっても異なっていても良い。nは0〜5までの整数である。前記R1、R2、R3、およびR4は、少なくとも一つが、炭化水素基、極性基又は該極性基を含む基を有することにより、成形加工性や各種機能を有した環状オレフィン系ポリマーとすることができる。
【0015】
前記炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基又はアリール基から選ばれた1種以上の置換基などが挙げられる。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基およびドデシル基等の側鎖を有していても良い(C1〜C20)アルキル基が挙げられ、アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブチニル基およびシクロヘキセニル基等の(C3〜C20)アルケニル基が挙げられ、アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、ヘキセニル基、オクテニル基およびヘプテニル基等の(C3〜C20)アルキニル基が挙げられ、前記環状脂肪族基の具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基およびメチルシクロヘキシル基等が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基およびフェニルエチニル基等の(C6〜C40)アリール基が挙げられ、アラルキル基の具体例としてはベンジル基およびフェネチル基等の(C7〜C20)アラルキル基が挙げられるが、本発明は何らこれらに限定されない。
【0016】
前記極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、エポキシ基(グリシジルエーテル基)等が挙げられる。
また、前記シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基等のシリル基の他に、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリエトキシシリル基およびトリエトキシシリルエチル基等のアルコキシシリル基、前記エステル基の具体例としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、n−ブチルエステル基、t−ブチルエステル基およびn−プロピルエステル基等のエステル基、前記(メタ)アクリル基の具体例としては、例えば、メタクリロキシメチル基等の(メタ)アクリル基、前記エポキシ基としては、例えば、グリシジルエーテル基等のエポキシ基が挙げられる。
【0017】
上記極性基を含む基としては、前記極性基と、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基、アリール基、エーテル基およびエステル基等の基で構成される基が挙げられる。
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基、アリール基の具体例としては、前記炭化水素基におけるそれらと同等のものが挙げられる。
【0018】
炭化水素基を有するノルボルネンモノマーの具体例としては、アルキル基を有するものとしては、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−ヘプチル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−ノニル−2−ノルボルネンおよび5−デシル−2−ノルボルネン等が挙げられ、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネンおよび5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン等が挙げられ、アルキニル基を有するものとしては、5−エチニル−2−ノルボルネン等が挙げられ、アリール基を有するものとしては、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−ナフチル−2−ノルボルネンおよび5−ペンタフルオロフェニル−2−ノルボルネン等が挙げられ、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニルメタン−2−ノルボルネン、5−(2−ペンタフルオロフェニルエチル)−2−ノルボルネンおよび5−(3−ペンタフルオロフェニルプロピル)−2−ノルボルネン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
極性基としてヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するノルボルネンモノマーとしては、5−ハイドロキシメチル−2−ノルボルネン、5−ヘキサフルオロイソプロパノールメチル−2−ノルボルネン、酢酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、プロピオン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、酪酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、吉草酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプロン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ラウリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ステアリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、オレイン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、リノレン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸i−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリエチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソボニルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸メチルエステル、ケイ皮酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルn−ブチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルt−ブチルカルボネート、5−メトキシ−2−ノルボルネン、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−エチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n―プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−オクチルエステルおよび(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−デシルエステル等が挙げられ、エポキシ基を有するものとしては、5−メチルグリシジルエーテル−2−ノルボルネンおよび5−[(2,3−エポキシプロポキシ)メチル]−2−ノルボルネン等が挙げられ、極性基としてシリル基を有するものとしては、5−トリメトキシシリル−2−ノルボルネン、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2−ノルボルネン、5−(4−トリメトキシシリルブチル)−2−ノルボルネン、5−トリメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネン、5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
また、テトラシクロ環から成るものとして、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−i−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(2−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(1−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−i−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(2−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(1−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(メトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(エトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(i−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(t−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(シクロへキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(フェノキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(テトラヒドロフラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジ(テトラヒドロピラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.01,6]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,12]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,101,6]ドデック−3−エン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の環状オレフィン系ポリマーの製造においては、触媒を用いるが、そのような触媒としては、単一成分系触媒と多成分系触媒が挙げられる。
前記単一成分系触媒としては、遷移金属を含んで構成される遷移金属触媒が好ましい。中でも触媒活性が安定し、過剰な反応を抑制し、適度な分子量に制御する上では、8族遷移金属を含む遷移金属触媒が好ましい。例えば、8族遷移金属およびこれに弱く配位している対アニオンからなる遷移金属錯体等が挙げられ、該遷移金属錯体におけるカチオンとしては、1個の金属−炭素α結合によって該8族遷移金属に直接結合し、ただし、3個以下のπ結合によって、弱く配位している中性の供与性配位子に結合している炭化水素を有するもの等が挙げられる。
前記8族遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウムおよび白金等が挙げられ、これらの中でも、ニッケル、パラジウムが特に好ましい。
前記単一成分触媒としては、下記の式(2)で表されるものが挙げられる。
【0022】
【化2】

【0023】
ここで、上記式中のMはNi又はPdを表わし、L1,L2およびL3はMの配位子を表わし、1個の配位子のみが、σ結合を有し、すべての配位子全体で2又は3個のπ結合を有し、そして、CA-は該溶媒中に該カチオンを溶解するように選択された対アニオンを表わす。
上記式で表される触媒において、MがNi又はPdを表わし、そして弱く配位した中性の供与性配位子L1〜L3が、シクロ(C8〜C12)アルカジエン、ノルボナジエン、シクロ(C10〜C20)トリエン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンからなる群から選択されることが好ましい。
弱く配位したアニオンCA-が、BF4-、PF6-、AlF33SCF3-、SbF6-、SbF5SO3-、B[C654-、CF3CO2-、C25CO2-およびB[C63(CF324-から選ばれることが好ましい。
【0024】
前記多成分系触媒としては、遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および/又は電子供与性成分を含有する触媒が挙げられ、これも、本発明においては遷移金属触媒に含まれるものであり、例えば、前記遷移金属化合物と前記有機アルミニウム化合物とを含有する触媒、前記遷移金属化合物と前記電子供与性成分とを含有する触媒、前記遷移金属化合物と前記有機アルミニウム化合物と前記電子供与性成分とを含有する触媒が挙げられる。前記電子供与性成分としては、ルイス酸、ブレンステッド酸、ハロゲン化化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
前記ルイス酸としては、BF3、エテラート、TiCl3、SbF5、BCl3、B(OCH2CH33およびトリス(パーフルオロフェニル)ボロン等を好ましいものとして挙げられる。
前記強ブレンステッド酸としては、HSbF6、HPF6、CF3CO2H、FSO3H・SbF3、H2C(SO2CF)2、CF3SO3Hおよびパラトルエンスルホン酸等を好ましいものとして挙げられる。
前記ハロゲン化化合物としては、ヘキサクロロアセトン、ヘキサフルオロアセトン、3−ブテン酸−2,2,3,4,4−ペンタクロロブチルエステル、ヘキサフルオログルタール酸、ヘキサフオロイソプロパノールおよびクロラニル等を好ましいものとして挙げられる。
【0025】
前記遷移金属化合物としては、前記単一成分触媒における遷移金属と同様の金属を含み、1座配位、2座配位および多座配位のイオン性又は中性配位子ならびにこれらの混合物の1種以上の骨格と結合した遷移金属イオンを含んでいるものが挙げられる。前記遷移金属化合物における遷移金属も、前記同様にして8族遷移金属が好ましい。
前記遷移金属化合物としては、ニッケルアセチルアセトネート類、ニッケルカルボキシレート類、ニッケルジメチルグリオキシム、ニッケルエチルヘキサノエート、コバルトネオデカノエート、鉄ナフテナート、パラジウムエイルヘキサノエート、NiCl2(PPh32、NiCl2(PPh2CH22、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトネートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトネートダイハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトネートテトラハイドレート、ビスアリルニッケルブロミド、ビスアリルニッケルクロリド、ビスアリルニッケルアイオダイド、[(η3−クロチル)(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル]ヘキサフルオロホスフェート、トランスPdCl2(PPh32、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)(ビスアセチルアセトネート)、バラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、Pd(アセテート)2(PPh32、Pd(アセテート)2(PCy32、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウムテトラフルオロボート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(Ii)、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトネート、フェロセン、ニケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、コバルト(II)アセテート、コバルト(II)アセチルアセトネート、コバルト(III)アセチルアセトン、コバルト(II)ベンゾエート、コバルトコクロライド、コバルトブロマイド、シクロヘキシルコバルトアセテート類、コバルト(II)テトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、パラジウムアセチルアセトネート、パラジウム(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキシド)ジクロライド、白金ビストリエチルホスフィンハイドロブロマイド、ルテニウムトリス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、ルテニウムトリス(トリフェニルホスフィン)ハイドライドクロライド、ルテニウムトリクロライド、ルテニウムテトラキス(アセトニトリル)ジクロライド、ルテニウムテトラキス(ジメチルスルホキシド)ジクロライド、ロジウムクロライドおよびロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライドから選ばれることが好ましい。遷移金属元素は1種類でもよく、必要に応じて2種類以上組み合わせて使用することができる。なお、上記例示において、Phはフェニル基、Cyはシクロヘキシル基を示す。
【0026】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピニルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、イソブツルアルミニウムセスキクロライド、ジ−t−ブチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジペンチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、t−ブチルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムクロライドおよびペンチルアルミニウムジクロライドを好ましいものとして挙げることができるが、これに限定されない。
【0027】
本発明において、前記触媒はこれらの1種又は2種を用いることができ、さらに助触媒を加えて反応効率や触媒活性を制御することができる。
【0028】
前記助触媒としては、例えば、アルミノオキサンおよびアルキルアルミニウム等が挙げられ、前記アルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドおよびエチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本発明に使用する前記イオン液体とは、カチオンとアニオンからなる溶融体のうち、常温において液体状態となるものを意味する。
前記イオン液体のカチオンとしては、脂肪族オニウムカチオン、脂環式オニウムカチオン、芳香族オニウムカチオン等が挙げられ、前記脂肪族オニウムカチオンとしては、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、グアニジニウム、N,N,N’,N’,−テトラメチル−N’’−エチルグアニジニウム、O−エチル−N,N,N’,N’,−テトラメチルイソウロニウムおよびトリエチルスルホニウム等が挙げられ、前記脂環式オニウムカチオンとしては、N−メチル−N−エチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−オクチル−1−メチルピロリジニウムおよびN−メチル−N−プロピルピペリジニウム等が挙げられ、前記芳香族オニウムカチオンとしては1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−メチル−3−オクチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム、3,4−ジメチル−1−ブチルピリジニウムおよび3,5−ジメチル−1−ブチルピリジニウム等が挙げられる。
一方、前記イオン液体のアニオンとしては、ハロゲン化物アニオン、無機アニオンおよび有機アニオン等が挙げられ、前記ハロゲン化物アニオンとしては、クロリド、ブロマイド、フルオリドおよびヨージド等が挙げられ、前記無機アニオンとしては、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラクロロアルミナート、テトラブロモアルミナート、テトラクロロフェラートおよびスルフェート等が挙げられ、前記有機アニオンとしては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トルフルオロアセテート、トリフルオロメチルスルホネート、ジシアンアミド、ジメチルホスフェート、メチルスルフェート、エチルスルフェート、ブチルスルフェート、ヘキシルスルフェートおよびメチルスルホネート等が挙げられる。
【0030】
前記イオン液体は、上記のカチオン種の1種又は2種以上および上記のアニオン種の1種又は2種以上の組合せによるものである。前記イオン液体としては、N,N−ジエチル−N−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボラート、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム クロリド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ジシアンアミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブロマイド、1,3−ジメチルイミダゾリウム ジメチルホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メチルスルフェート、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウム トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム クロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルイミダゾリウム トリフルオロメチルスルホネート、1−エチルピリジニウム ブロマイド、1−ブチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−プロピルピロリジニウム テトラフルオロボラート、N−メチル−N−エチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−メチル−1−オクチルピロリジニウム クロリド、トリエチルスルホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、前記触媒、例えば前記パラジウム触媒に対する親和性が高く、前記環状オレフィン系ポリマーの分子量を適当な値に制御する上で、アニオンにイミド結合を含有するイオン液体が好ましく、より好ましくは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをアニオンとして含有するものである。本発明においては、これらのイオン性液体を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0031】
本発明の環状オレフィン系ポリマーを製造する方法について、その例を詳細に説明する。
まず、1種以上の任意の環状オレフィンモノマーに、前記イオン液体に溶解した前記触媒および任意に前記助触媒を所定の量で添加する。この混合溶液を、加熱装置を備えた反応装置に入れて、加熱しながら撹拌し、反応させて付加重合することにより、環状オレフィン系ポリマーを製造することができる。また、製造においては、例えば、重合温度、イオン液体の種類、及びイオン液体の量などを適宜調節することにより、所望の分子量を得ることができる。
【0032】
環状オレフィンモノマーの付加重合における加熱方法としては、温度を精密に制御できるものであれば、特に限定されないが、例えば、マイクロ波反応装置を用いたマイクロ波照射による加熱、オイルバスおよび電熱ヒーター等による一般的な加熱などが挙げられ、これらの方法は併用することができる。前記環状オレフィン系ポリマーを高分子構造とするために、前記反応領域における温度は、50℃〜300℃が好ましく、より好ましくは60℃〜250℃である。また反応温度を変更することによって、環状オレフィン系ポリマーの分子量を制御できる。一方、反応時間は、5分〜20時間が好ましく、さらに好ましくは30分〜12時間、もっとも好ましくは1時間〜6時間であるが、マイクロ波を照射して重合する場合は、短時間で反応が進行するためこの限りではなく、この場合は、5秒〜20時間が好ましく、より好ましくは、10秒〜6時間である。反応中の雰囲気として、通常、窒素流通下、開放系で反応を行うが、揮発性のあるモノマーを使用する際は、ガラス製等の耐圧容器を用いて密閉系で反応を行ってもよい。
【0033】
マイクロ波照射を用いた環状オレフィンモノマーの重合におけるマイクロ波の照射方法としては、環状オレフィンモノマーの反応を促進できるものであれば特に限定されないが、照射するマイクロ波の周波数範囲が2450〜2455MHzであることが好ましい。2450〜2455MHzのマイクロ波を照射することにより、一般的な加熱のみによる重合と比較して、短時間・低触媒量で、反応物中の環状オレフィンモノマーを重合化することができる。
前記マイクロ波照射におけるマイクロ波を照射するモードとしては、例えば、出力制御モード、温度制御モード及び圧力制御モード等を用いることができるが、これらの中でも、マイクロ波を高出力で照射することが可能となるため、温度制御モードが好ましい。さらに、温度制御モードにおいて、マイクロ波出力はできる限り大きい方が好ましいが、例えば、10W以上、5,000W以下であることが好ましい。これにより前記混合物の昇温効率を向上させることができる。
本発明において、環状オレフィンモノマーの付加重合を効率よく進行させる点から、加熱及びマイクロ波照射を併用することが好ましい。
【0034】
ここで、前記環状オレフィンモノマー(A)と触媒(B)との添加比率(モル比A/B)としては、例えば、1/0.004以上1/0.000004以下の範囲が好ましく、より好ましくは1/0.002以上1/0.00002以下である。助触媒を用いる場合は、触媒(B)と助触媒(C)との添加比率(モル比B/C)としては、通常、1/1以上1/5以下の範囲が好ましい。
また、前記イオン液体の使用量としては、環状オレフィンモノマーに対してイオン液体が過剰であっても、イオン液体に対して環状オレフィンモノマーが過剰であっても良く、例えば、前記環状オレフィンモノマー(A)とイオン液体(D)との存在比率(モル比A/D)として、1/50以上1/0.01以下の範囲が好ましく、より好ましくは1/10以上1/0.1以下の範囲が好ましい。
【0035】
本発明により得られる環状オレフィン系ポリマーは、従来のように連鎖移動剤等を用いることなく、分子量を制御することができる。例えば、成形加工性等の特性を得る上で、制御される環状オレフィン系ポリマーの重量平均分子量は、50,000〜150,000が好ましく、より好ましくは75,000〜120,000である。また、スピンコート法等により、環状オレフィン系ポリマーを薄膜にして試用する必要がある場合等にはより低い重量平均分子量であることが望ましい。この場合の環状オレフィン系ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、より好ましくは2,000〜40,000である。
本発明において、重量平均分子量は標準ポリスチレンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0036】
前記環状オレフィン系ポリマーの分子量分布[重量平均分子量:Mwと、数平均分子量:Mnとの比(Mw/Mn)]は、特に限定されないが、1.0以上2.5以下の比較的小さい範囲の分子量分布を得ることができる。また、前記同様に成形加工性等の特性を得る上では、1.0以上3.5以下が好ましく、1.2以上3.0以下とすることがより好ましく、1.5以上2.5以下とすることがさらに好ましい。
前記分子量分布を測定する方法としては、例えばシクロヘキサン又はテトラヒドロフランを有機溶剤とするGPCで測定することができる。
【0037】
また、上記方法で重量平均分子量や分子量分布が測定できない環状オレフィン系ポリマーの場合には、通常の溶融加工法により、樹脂層を形成し得る程度の溶融粘度や重合度を有するものを使用することができる。前記環状オレフィン系ポリマーガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択できるが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは125℃以上のポリマーを得ることができる。
【0038】
また、環状オレフィン系ポリマーの製造において、2種類以上の環状オレフィンモノマーを用いて重合した場合、個々のモノマーの共重合反応性に前記環状オレフィンポリマーの共重合比は影響を受けるため、共重合比を制御するために、従来法において、一般的には、共重合反応性の低いモノマーを過剰に仕込む方式や逐次添加する方式が採られていたが、これらの方式では、未反応モノマーが多く残るといった欠点があった。本発明では、従来のように、共重合反応性に左右されることなく、仕込み比に近い値に共重合比を制御することができる。共重合におけるモノマーの組合せとしては、炭化水素基を有するモノマーと極性基を有するモノマー、異なる炭化水素基を有するモノマー同士、異なる極性基を有するモノマー同士が挙げられ、これらの組合せに制限はないが、例えば、5−ヘキシル−2−ノルボルネンと5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンなどの共重合において、その効果が発現される。
【0039】
本発明の製造方法により得られた環状オレフィン系ポリマーの溶液は、例えば、ガラス、シリコンウエハーおよびセラミック基板等の基材に塗布し、得られた塗膜を、室温、光照射、熱硬化で処理することにより、環状オレフィン系ポリマーの膜を得ることができる。
また、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン系ポリマーは、公知の手段である、熱成形、押出成形、射出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形、溶液からのキャスト成形、溶媒による加工、繊維の形成および焼結等により、各種の形状とすることができ、最終形態とする前の中間の形態であっても良い。例えば、光ディスク、光学用フィルムおよびレンズ等の光学分野、光回路、発光ダイオードおよび封止部品等の電気・電子分野、液晶分野、医療分野等に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
容量50mlの三口フラスコに、5−ヘキシル−2−ノルボルネン1.6g(0.009mol)、5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネン2.9g(0.009mol)を秤量した。三口フラスコに還流管と温度計をセットして、オイルバス中に浸漬し、ナスフラスコ内の反応溶液の温度が80℃になるように、オイルバスの温度を制御した。次いで、[(η3−クロチル)(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル]ヘキサフルオロホスフェート2.8mg(0.0072mmol)およびトリエチルアルミニウム0.82mg(0.0072mmol)を、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点11℃)1.1g(0.0027mol)に十分に溶解させて、触媒溶液を調製した。ノルボルネンモノマーを秤量した三口フラスコに、触媒溶液を加え、内部を攪拌しながら、窒素雰囲気下で210分反応させ、ノルボルネンモノマーを重合させた。反応後、トルエン60mlを加え、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドとトルエンの二相に分離させた。その後、トルエン相をメタノール650ml中に投入して、ポリノルボルネンを析出させた。固形分を濾過後、60℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は88,000、分子量分布は1.8であった。また、得られた重合体について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、50/50であった。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点11℃)1.1g(0.0027mol)をN−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(融点−18℃)1.1g(0.0036mol)に変更する以外は、実施例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は67,000、分子量分布は1.9であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、48/52であった。
【0043】
(実施例3)
実施例1において、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点11℃)1.1g(0.0027mol)を1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点−4.0℃)1.1g(0.0026mol)に変更する以外は、実施例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は92,000、分子量分布は2.1であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、49/51であった。
【0044】
(実施例4)
容量50mlの三口フラスコに、5−ヘキシル−2−ノルボルネン2.0g(0.011mol)を秤量した。三口フラスコに還流管と温度計をセットして、オイルバス中に浸漬し、ナスフラスコ内の反応溶液の温度が80℃になるように、オイルバスの温度を制御した。次いで、[(η3−クロチル)(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル]ヘキサフルオロホスフェート2.8mg(0.0072mmol)およびトリエチルアルミニウム0.82mg(0.0072mmol)を、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点−4.0℃)0.47g(0.0011mol)に十分に溶解させて、触媒溶液を調製した。ノルボルネンモノマーを秤量した三口フラスコに、触媒溶液を加え、内部を攪拌しながら、窒素雰囲気下で210分反応させ、ノルボルネンモノマーを重合させた。反応後、トルエン60mlを加え、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドとトルエンの二相に分離させた。その後、トルエン相をメタノール650ml中に投入して、ポリノルボルネンを析出させた。固形分を濾過後、60℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は95,000、分子量分布は1.8であった。
【0045】
(実施例5)
実施例4において、反応温度80℃を105℃に変更する以外は、実施例4と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は30,000、分子量分布は2.3であった。
【0046】
(実施例6)
実施例4において、反応温度80℃を130℃に変更する以外は、実施例4と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は12,000、分子量分布は2.5であった。
【0047】
(実施例7)
実施例4において、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点−4.0℃)0.47g(0.0011mol)を1.32g(0.0031mol)に変更する以外は、実施例4と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は50,000、分子量分布は1.5であった。
【0048】
(実施例8)
実施例1において、5−ヘキシル−2−ノルボルネン1.6g(0.009mol)を5−ブチル−2−ノルボルネン1.4g(0.009mol)に変更する以外は、実施例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は110,000、分子量分布は2.9であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ブチル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、51/49であった。
【0049】
(実施例9)
実施例1において、5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネン2.9g(0.009mol)を5−ベンジル−2−ノルボルネン1.7g(0.009mol)に変更する以外は、実施例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は82,000、分子量分布は2.2であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ベンジル−2−ノルボルネンのモル比は、49/51であった。
【0050】
(実施例10)
実施例1において、[(η3−クロチル)(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル]ヘキサフルオロホスフェート2.8mg(0.0072mmol)をPd(アセテート)2(PCy320.6mg(0.00072mmol)に変更する以外は、実施例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は82,000、分子量分布は1.5であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、50/50であった。
【0051】
(実施例11)
容量10mlの反応容器に、5−ヘキサフルオロイソプロパノールメチル−2−ノルボルネン2.0g(0.0073mol)を秤量した。次いで、Pd(アセテート)2(PCy3212.5mg(0.015mmol)およびトリエチルアルミニウム5.0mg(0.045mmol)を、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点−4.0℃)0.32g(0.77mmol)に十分に溶解させて、触媒溶液を調製した。マイクロ波照射装置を備えた反応装置(商品名:グリーン・モチーフ・I、IDX社製)に、ノルボルネンモノマーを秤量した反応容器を
セットし、加熱温度を100℃に設定した。触媒溶液を加え、攪拌しながら、周波数2450MHz及び最高出力300Wでマイクロ波を5分間照射して、ノルボルネンモノマーを重合させた。反応後、シクロペンチルメチルエーテル15mlを加え、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドとシクロペンチルメチルエーテルの二相に分離させた。その後、シクロペンチルメチルエーテル相をヘプタン200ml中に投入して、ポリノルボルネンを析出させた。固形分を濾過後、60℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は89,000、分子量分布は1.7であった。
【0052】
(実施例12)
実施例11において、加熱温度を140℃に変更する以外は、実施例11と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は39,000、分子量分布は1.6であった。
【0053】
(実施例13)
実施例11において、加熱温度を180℃に変更する以外は、実施例11と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は36,000、分子量分布は1.5であった。
【0054】
(比較例1)
容量50mlの三口フラスコに、5−ヘキシル−2−ノルボルネン1.6g(0.009mol)、5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル2−ノルボルネン2.9g(0.009mol)をトルエン25.4gに溶解させ、反応溶液を調製した。三口フラスコに還流管と温度計をセットして、オイルバス中に浸漬し、ナスフラスコ内の反応溶液の温度が80℃になるようにオイルバスの温度を制御した。次いで、[(η3−クロチル)(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル]ヘキサフルオロホスフェート2.8mg(0.0072mmol)およびトリエチルアルミニウム0.82mg(0.0072mmol)を加え、内部を攪拌しながら窒素雰囲気下で210分反応させ、ノルボルネンモノマーを重合させた。反応後、アセトニトリル9.0mlを加え反応を停止させ、トルエンを35ml追加希釈した。その後、反応溶液をメタノール750ml中に投入して、ポリノルボルネンを析出させた。固形分を濾過後、60℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は1400,000、分子量分布は15であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、57/43であった。
【0055】
(比較例2)
比較例1において、反応溶液に1−ヘキセン0.68g(0.0081mol)を加えて溶解させ反応溶液を調製する以外は、比較例1と同様にして、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は100,000、分子量分布は2.3であった。また、得られた重合体について、1H−NMRにより組成を確認したところ、5−ヘキシル−2−ノルボルネン/5−ジフェニルメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンのモル比は、56/44であった。
【0056】
(比較例3)
容量50mlの三口フラスコに、5−ヘキサフルオロイソプロパノールメチル−2−ノルボルネン2.0g(0.0073mol)をトルエン0.32gに溶解させ、反応溶液を調製した。三口フラスコに還流管と温度計をセットして、オイルバス中に浸漬し、ナスフラスコ内の反応溶液の温度が105℃になるように、オイルバスの温度を制御した。次いで、Pd(アセテート)2(PCy3212.5mg(0.015mmol)およびトリエチルアルミニウム5.0mg(0.045mmol)を加え、内部を攪拌しながら窒素雰囲気下で270分反応させ、ノルボルネンモノマーを重合させた。反応後、トルエンを15ml加え希釈した。その後、反応溶液をヘプタン200ml中に投入して、ポリノルボルネンを析出させた。固形分を濾過後、60℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、固形のポリノルボルネンを得た。得られた重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)を用い、分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は1600,000、分子量分布は6.3であった。
【0057】
本発明によれば、イオン液体を溶媒として使用することで、連鎖移動剤を使用せずに分子量および分子量分布の制御されたポリマーを製造するための環状オレフィン系ポリマーの製造方法を実現することができ、また、共重合体の場合、それぞれのモノマーの仕込み比に近い共重合比を有するポリマーを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィンモノマーを、触媒存在下、イオン液体中で付加重合する環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記イオン液体は、イミド結合を有するアニオンを含むものである請求項1に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記イオン液体は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをアニオンとして含むものである請求項2に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記環状オレフィン系ポリマーの製造方法は、マイクロ波を照射して重合する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記触媒は、遷移金属触媒である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記触媒は、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属触媒である請求項5に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記環状オレフィンモノマーは、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の環状オレフィン系ポリマーの製造方法。
【化1】

(式(1)中のXは、それぞれ独立して、−CH2−、−(CH22−又は−O−を示し、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ水素原子、炭化水素基、および極性基もしくは極性基を含む基から選ばれる基を示し、これらの基は同一であっても異なっていても良い。nは0〜5までの整数である。)

【公開番号】特開2009−96970(P2009−96970A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17254(P2008−17254)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】