説明

環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法

【課題】高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂をペレット化する際にも、ペレット化の際に発生する切削粉を低減し、ペレットの割れ発生を抑制する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法が、環状オレフィン系樹脂を溶融混練し棒状に吐出する吐出工程と、吐出された棒状物を冷却する冷却工程と、冷却した前記棒状物を切断してペレット化する切断工程と、を有し、重合時及び/又は溶融混練時にポリエチレンを、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂ペレットの製造過程でポリエチレンを添加する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、その優れた特性から種々の用途に使用されており、それぞれの分野で求められる要求性能を満足する樹脂が選択され、使い分けがなされている。
【0003】
一方、成形加工用としての原料の形態としては、ペレット形状として供される。該加工用ペレットの製造方法としては、押出機等で溶融混練され、押出機先端ダイス部から棒状の溶融樹脂として押し出され、速やかに水槽中等で冷却された後、ペレタイザーにより長さ2〜4mm程度の円柱状のペレットへ切削加工される。この切削工程において、所望の形状のペレット以外に、細かい切削粉が発生する。該切削粉は、ペレタイザーのロールカッター部、ペレタイザー以降のペレット搬送ライン及び梱包袋内に堆積、混入する。
【0004】
ペレット製造ラインにおける切削粉の混入により、ロールカッター部、搬送ライン、切削粉除去用のエアーフィルターの清掃や部品交換等メンテナンスに多大な時間と労力を要する。また、ペレット中に混入した切削粉は、押出成形加工において押出量が不安定になったり、射出成形工程において計量が不安定になったりする。さらに、粉体の多いペレットは輸送中の粉塵爆発の危険性があり、溶融混錬された熱可塑性樹脂の棒状物を冷却後、ペレタイザー等を用いてペレット化する際には、発生する切削粉の低減が望まれている。
【0005】
ペレット化する際に発生する切削粉を低減するための技術として、熱可塑性樹脂にポリカプロラクトンを配合して溶融混練する技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−21467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱可塑性樹脂の中でも特に環状オレフィン系樹脂は、高透明性、低複屈折性、高熱変形温度、軽量性、寸法安定性、低吸水性、耐加水分解性、耐薬品性、低誘電率、低誘電損失、環境負荷物質を含まない等、多くの特徴をもつ樹脂であり、これらの特徴が必要とされる多種多様な分野に用いられている。環状オレフィン系樹脂の中には、高いガラス転移点を持つ耐熱性の非常に優れた樹脂が存在する。これは非常に優れた材料であるが、高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂は、ペレット化する際に切削粉が発生しやすく、その結果ペレットの割れも発生しやすい。このため、高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂をペレット化する際にも適用可能な切削粉の低減技術が求められている。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂をペレット化する際にも、切削粉の発生を低減し、ペレットの割れ発生を抑制する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、環状オレフィン系樹脂を溶融混練し棒状に吐出する吐出工程と、吐出した棒状物を冷却する冷却工程と、冷却した棒状物を切断してペレット化する切断工程と、を有する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法の工程中の、上記環状オレフィン系樹脂重合時及び/又は環状オレフィン系樹脂の溶融混練時にポリエチレンを、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 環状オレフィン系樹脂を溶融混練し棒状に吐出する吐出工程と、吐出した棒状物を冷却する冷却工程と、冷却した該棒状物を切断してペレット化する切断工程と、を有する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であって、前記環状オレフィン系樹脂の重合時及び/又は前記溶融混練時にポリエチレンを、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【0010】
(2) 前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が150℃以上である(1)に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【0011】
(3) 前記冷却工程が、前記棒状物を水冷にて冷却する工程である(1)又は(2)に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【0012】
(4) 前記冷却工程が、前記棒状物を空冷にて冷却する工程である(1)又は(2)に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【0013】
(5) 前記環状オレフィン系樹脂ペレットの製造ラインに残留する粒径800μm未満の切削粉と、前記環状オレフィン系樹脂ペレットが有する粒径800μm未満の切削粉と、の合計量が、前記環状オレフィン系樹脂ペレットと切削粉との合計量100質量部に対して、10質量部以下である(1)から(4)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【0014】
(6) 前記粒径800μm未満の切削粉の混入量が5質量%未満である樹脂ペレット包装体。
【0015】
(7) (1)から(5)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法により得られる樹脂ペレット包装体であって、前記粒径800μm未満の切削粉の混入量が5質量%未満である樹脂ペレット包装体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂ペレットの製造において、環状オレフィン系樹脂の重合時や環状オレフィン系樹脂の溶融混練時に、ポリエチレンを環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加することで、高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂をペレット化する際にも、切削粉の発生を低減し、ペレットの割れ発生を抑制して、高品質な環状オレフィン系樹脂ペレットを製造することができる。切削粉の発生を低減することで、製造ラインに混入する切削粉の量が低減され、製造ラインのメンテナンスに掛かる労力・時間を低減することができる。
【0017】
また、切削粉が付着した樹脂ペレットを原料に用いることにより、押出成形加工において押出量が不安定になったり、射出成形工程において計量が不安定になったりする不具合が発生するおそれがある。
【0018】
特に粒径800μm未満の切削粉がペレットに付着したまま、材料として用いると、この切削粉が成形品に混入してしまい射出成形品の性能や品質に大きな影響を与えてしまう場合が多いが、本発明の製造方法により製造された環状オレフィン系樹脂ペレットは、切削粉の発生量が大幅に低減されるため、射出成形品等の成形品の品質や性能等に影響をほとんど与えない。
【0019】
また、作業環境を改善するためには、ペレタイズ温度は低い方が好ましい。本発明の製造方法によれば、ペレタイズ温度を下げたとしても切削粉が大量に発生することを抑え、特にガラス転移点の高い環状オレフィン系樹脂や、低粘度の環状オレフィン系樹脂においては成形加工に使用可能な樹脂ペレットも製造することができる。
【0020】
ガラス転移点の低い環状オレフィン系樹脂ペレットであっても、分子量が低い場合には、ペレットに割れが発生しやすくなるが、本発明の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法によれば、この割れを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
本発明は環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であり、使用する原材料の環状オレフィン系樹脂、ポリエチレン、及びポリエチレンの添加のタイミングに特徴がある。以下、本発明について、原料、製造方法の順で説明する。
【0023】
<環状オレフィン系樹脂>
以下、本発明に用いる環状オレフィン系樹脂について説明する。本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン成分を共重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン系樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、
(a1)環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、
(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物、
(a3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物、を挙げることができる。
【0024】
また、本発明に用いられる環状オレフィン成分を共重合成分として含む(A)環状オレフィン系樹脂としては、
(a4)上記(a1)〜(a3)の樹脂に、さらに極性基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したもの、を含む。
【0025】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等を挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0026】
本発明においては、上記の環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂(a1)〜(a4)は、1種単独であっても、二種以上を混合使用してもよい。本発明においては、(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物を好ましく用いることができる。
【0027】
また、本発明に用いられる環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(Topas Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物に好ましく用いられる(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体としては、特に限定されるものではない。特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィン成分と、を含む共重合体を挙げることができる。
【化1】

(式中、
〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0029】
〔〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分〕
本発明に好ましく用いられる環状オレフィン成分とエチレン等の他の共重合成分との付加重合体の共重合成分となる炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等を挙げることができる。また、これらのα−オレフィン成分は、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらの中では、エチレンの単独使用が最も好ましい。
【0030】
〔〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン成分〕
本発明に好ましく用いられる環状オレフィン成分とエチレン等の他の共重合成分との付加重合体において、共重合成分となる一般式(I)で示される環状オレフィン成分について説明する。
【0031】
一般式(I)におけるR〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0032】
〜Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0033】
また、R〜R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0034】
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0035】
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組合せからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0036】
一般式(I)で示される環状オレフィン成分の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環の環状オレフィン;
【0037】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン;
【0038】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
【0039】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンを挙げることができる。
【0040】
これらの環状オレフィン成分は、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
【0041】
〔その他共重合成分〕
本発明の組成物に特に好ましく用いられる(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体は、上記の〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有していてもよい。
【0042】
任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、4−メチル−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボンネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、4,9,5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン;2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン;2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等を挙げることができる。これらのうちでは、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、及び環状非共役ジエン、とりわけ、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエンが好ましい。
【0043】
特にガラス転移点の高い環状オレフィン系樹脂をペレット化する際に、切削粉の発生が促進され、ペレットの割れが顕著になる。しかし、本発明の製造方法のように環状オレフィン樹脂の重合時又は環状オレフィン系樹脂の溶融混練時に後述するポリエチレンを添加することで、切削粉の発生やペレットの割れを抑制することができる。ペレット化の際の切削粉の増加やペレット割れが顕著になり、本発明の製造方法がより効果的な環状オレフィン系樹脂のガラス転移点は150℃以上であり、さらに効果的なのは170℃以上である。
【0044】
環状オレフィン系樹脂中の環状オレフィン成分が多くなるに従い、ペレットは可撓性が低下し、割れやすくなる。したがって、このようなペレットの割れが顕著になり、本発明の製造方法がより効果的になる環状オレフィン系樹脂中の環状オレフィン成分の含有量は、環状オレフィン系樹脂中に環状オレフィン成分を70質量%以上含む場合であり、さらに効果的な場合は環状オレフィン成分を75質量%〜85質量%である。本発明の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法によれば、環状オレフィン系樹脂中の環状オレフィン成分を低下させなくても、割れの少ないペレットを容易に製造することができる。
【0045】
なお、本発明は環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であり、一定の水準以上の環状オレフィン成分を含む。本発明における環状オレフィン系樹脂とは、環状オレフィン成分を環状オレフィン系樹脂中に50質量%以上含むものをいう。
【0046】
<ポリエチレン>
本発明に用いることができるポリエチレンとは、エチレンが重合した構造を持つ高分子であり、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0047】
高密度ポリエチレンは、結晶性が高まり機械的強度が増すので、環状オレフィン系樹脂に添加した場合に、機械的強度向上という観点からペレットの割れを抑制することができるので好ましい。
【0048】
低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンは、可撓性を有するため環状オレフィン系樹脂ペレットに対し柔軟性を付与することができる。環状オレフィン系樹脂ペレットの柔軟性が増し可撓性が付与されると、ペレット化する際の割れ抑制につながるので好ましい。
【0049】
ポリエチレンは、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加する。5質量部以上であれば、ペレット化する際に発生する切削粉の量が低減し、ペレットの割れ発生を抑制することができる。また、ポリエチレンの添加量は環状オレフィン系樹脂100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。30質量部以下であれば得られる環状オレフィン系樹脂ペレットのガラス転移点が低下し過ぎることを防ぎ、また、得られるペレットの物性の低下を防ぐことができる。より好ましくは、5質量部〜15質量部である。ガラス転移点が高く耐熱性の高い環状オレフィン系樹脂の効果を十分に得るためには、ポリエチレンの含有量は少ない方が好ましいが、上記範囲内であれば耐熱性の維持と加工の容易性を両立することができる。
【0050】
ただし、ポリエチレンの添加量が、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して30質量部以上であっても、ペレット化する際に発生する切削粉の量を低減し、ペレットの割れ発生を抑制することができる。したがって、用途によっては高いガラス転移点や高い透明性が不要であるため、そのような環状オレフィン系樹脂ペレット作製の際にも、本発明の環状オレフィン系樹脂ペレット製造方法で、ペレットを作製することで生産性を向上することができる。
【0051】
本発明の製造方法に使用可能な高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンはJIS K6922−1で規定されるメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min〜10g/10minであることが好ましく、より好ましくは0.4g/10min〜5g/10minである。さらに好ましくは0.4g/10min〜2g/10minである。0.1g/10minより低い場合は可撓性を得る事ができるが、流動性が悪くなり良好な成形加工性が得られない可能性があり、10g/10minを超えると成形加工性は良好となるが、可撓性が得られない可能性がある。
【0052】
本発明の環状オレフィン系樹脂には、本発明の効果を失わない範囲で、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂、各種配合剤等を添加することができる。他の樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素樹脂等が例示される。これらの他の樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、配合剤としては、安定剤(酸化防止剤又は抗酸化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤(染料や顔料等)、潤滑剤、可塑剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、ドリッピング防止剤、架橋剤等が例示される。
【0053】
本発明の環状オレフィン系樹脂ペレットは、フィルム、射出成形品、繊維、シート、パイプ、発泡体、異形押出品、その他ペレットで加工されるもの全てに適用することができる。特に耐熱性が必要な材料には好ましく適用することができる。
【0054】
<環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法>
環状オレフィン系樹脂を重合する重合工程と、重合した環状オレフィン系樹脂を溶融混練し棒状に吐出する吐出工程と、吐出した棒状物を冷却する冷却工程と、冷却した棒状物を切断してペレット化する切断工程と、を有する。以下、本発明の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法について、重合工程、吐出工程、冷却工程、切断工程の順で説明する。
【0055】
[重合工程]
重合工程とは環状オレフィン系樹脂を重合する工程であり、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と〔2〕一般式(I)で表される環状オレフィン成分との重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではない。従来公知の方法に従って重合することができる。ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよいが、ランダム共重合であることが好ましい。
【0056】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により得ることができる。本発明に好ましく用いられる環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物は、メタロセン系触媒を用いて製造されることが好ましい。
【0057】
メタセシス触媒としては、シクロオレフィンの開環重合用触媒として公知のモリブデン又はタングステン系メタセシス触媒(例えば、特開昭58−127728号公報、同58−129013号公報等に記載)が挙げられる。また、メタセシス触媒で得られる重合体は無機担体担持遷移金属触媒等を用い、主鎖の二重結合を90%以上、側鎖の芳香環中の炭素−炭素二重結合の98%以上を水素添加することが好ましい。
【0058】
重合形態としては、溶液重合、バルク重合及びスラリー重合のいずれも採用することができ、また連続重合及びバッチ重合のいずれでも実施することができる。共重合で用いられる重合触媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を例示することができる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明では環状オレフィン系樹脂の重合時にポリエチレンを添加することで、環状オレフィン系樹脂をペレット化する際に発生する切削粉の量が低減し、ペレットの割れ発生を抑制することができる。ポリエチレンを添加することで、環状オレフィン系樹脂の可撓性が向上するため、上記本発明の効果を得ることができる。
【0060】
特に粒径800μm未満の切削粉が付着したままペレットを射出成形品等の原料として用いると、スクリュと粒径800μm未満の切削粉との間等で生じるせん断力が小さいため、成形機内で粒径800μm未満の切削粉が溶融せず、この切削粉が成形品に混入してしまい射出成形品の性能や品質に大きな影響を与えてしまう。本発明では、ペレット化の際に生じる切削粉を低減できるため、従来のものと比べて上記粒径の切削粉についてもさらにその発生を低減することができる。結果として、高品質な成形品を得るための高品質な環状オレフィン系樹脂ペレットを製造することができる。
【0061】
このような切削粉の発生は高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂で特に顕著である。本発明の製造方法によれば、たとえ高いガラス転移点を持つ環状オレフィン系樹脂の樹脂ペレットであっても、従来の製造方法と比較して大幅に上記粒径の切削粉の発生を抑えることができる。ポリエチレンを重合時に添加する方法としては、例えば、上記溶媒からなる重合溶液に投入し、分散・溶解させて環状オレフィン系樹脂に添加させることも可能である。
【0062】
また、ポリマー調製直後、高温・減圧によって溶媒を除去し、重合体が溶融状態にある時点で重合体にポリエチレンを添加後、重合体をストランド状に押出し、これを切断し、ペレットを製造する。
【0063】
[吐出工程]
吐出工程では、重合工程で得られた環状オレフィン系樹脂を溶融混練して棒状に吐出する。溶融混練して棒状に吐出する方法は特に限定されない。例えば、混練押出装置内で環状オレフィン系樹脂を混練し、その装置の開口部から棒状物の環状オレフィン系樹脂を吐出することができる。棒状物の環状オレフィン系樹脂が吐出する開口部としては、押出混練装置に取り付けられたダイの小孔等が挙げられる。開口部の形状も特に限定されず、円形、楕円形、角形等が挙げられる。これらの形状により棒状ペレットの断面の形状が決まる。ペレット化する際に発生する切削粉の量を低減し、ペレットの割れ発生を抑制するという観点からは、ペレットの断面は円形、直径1mm〜3mmの大きさであることが好ましい。
【0064】
棒状物には、紐状やストランド状のものを含む。ペレット化する際に発生する切削粉の量を低減し、ペレットの割れ発生を抑制する観点からは長さ3mm〜8mm程度の棒状物であることが好ましい。
【0065】
本発明では、環状オレフィン系樹脂の溶融混練時にポリエチレンを添加することで、環状オレフィン系樹脂をペレット化する際に発生する切削粉の量を低減し、ペレットの割れ発生を抑制することができる。これは上記重合時にポリエチレンを添加する場合と同様に環状オレフィン系樹脂に可撓性を付与できるからである。
【0066】
[冷却工程]
冷却工程とは棒状物の環状オレフィン系樹脂を冷却する工程であり、冷却方法については、特に限定されない。例えば、冷却水等で冷却させる水冷方式や、冷却用の空気を用いて冷却する空冷方式が挙げられる。
【0067】
本発明において水冷方式とは溶融ストランドを長さ0.3m〜長さ10m程度の水槽につけて冷却するストランドバス法等の方法が適用可能であり、これらの中でもストランドバスの長さは1m以上が好ましい。水冷方式であれば水浴の温度を40℃以上にすることで、粉の発生をさらに低減することが可能であるため好ましい。低温で後述するストランドの切断を行うと、ストランドが脆くなっているため切断の際に切削粉が生じやすいからである。水浴の温度を上げると固化させるために必要なバスの長さが長くなり、工業的な実施が困難になるため、本発明における水浴の温度は特に限定されず、樹脂ペレットの製造が容易になるように適宜変更することができる。
【0068】
ただし、水温が高すぎると、切断しにくくなり適度な温度に保つ温度制御が困難であるという問題や、後述する通り作業環境の改善という問題から、水浴の温度は低い方が好ましい場合もある。特に本発明の製造方法によれば、水浴の温度を低温にして、ペレタイズ温度を下げたとしても、従来の場合と比較して大幅に切削粉の発生を低減させることができる。したがって、本発明の製造方法によれば、水浴の温度を低温に設定することで、温度制御が容易になり一定の高い品質のペレットを容易に得ることができる。さらに作業環境も大幅に改善される。このような効果を得るためには、冷却水の温度を80℃以下、冷却時間を20秒以下にすることが好ましい。上記冷却条件で冷却することで、高い品質の樹脂ペレットを安定して得ることができる。また、作業環境も改善される。なお、「冷却時間」とはダイから吐出され、冷却水中に導入されてから、切断されるまでの時間をいう。
【0069】
本発明において空冷方式とは傾斜をつけた金属性溝や金属性ベルトコンベア上でストランドを空冷する方法等が適用可能である。ただし、本発明の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法においては水冷の方が好ましい。
【0070】
[切断工程]
切断工程は冷却した上記棒状物を切断してペレット化することをいう。切断方法は特に限定されず、従来公知の方法を利用することができる。従来公知の方法として、例えばペレタイズ法が挙げられる。
【0071】
本発明においては、カットされたペレットの長さは3mm〜8mm程度であることが、ペレット化する際に発生する切削粉の量を低減し、ペレットの割れ発生を抑制するという観点から好ましい。
【0072】
環状オレフィン系樹脂ペレットの製造ラインに残留する粒径800μm未満の切削粉と、上記製造方法により得られた環状オレフィン系樹脂ペレットが有する粒径800μm未満の切削粉と、の合計量が、環状オレフィン系樹脂ペレットと切削粉全体との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。特に粒径800μm未満の切削粉がペレットに付着したままであると上述の通り不具合が生じる。
【0073】
また、製造ラインに切削粉が混入すれば、切削粉の粒径にかかわらず、メンテナンスに多大な労力と時間が必要になるため好ましくない。
【0074】
<樹脂ペレット包装体>
本発明の製造方法により製造したペレット包装体は、従来のものと比較して、粒径が800μm未満の切削粉の混入量が少ないため、成形品等の材料として特に好ましい。具体的には、ペレット包装体中に粒径800μm以下の切削粉が5質量%未満になる。従来の製法により得られたペレットの包装体と比較すると、粒径800μm以下の切削粉の混入量は削減される。さらに好ましくは、3質量%未満である。
【0075】
上記の通り、環状オレフィン系樹脂ペレットの製造ラインに残留する粒径800μm未満の切削粉と、上記製造方法により得られた環状オレフィン系樹脂ペレットが有する粒径800μm未満の切削粉と、の合計量が、環状オレフィン系樹脂ペレットと切削粉全体との合計量100質量部に対して、10質量部以下であれば、容易にペレット包装体中の粒径800μmの切削粉の混入量を5質量%未満にすることができる。通常、切削粉は冷却水等により容易にペレットから除かれ、そのほとんどが製造ラインに残るからである。
【0076】
本発明の樹脂ペレット包装体は、樹脂ペレットを例えば15〜25kgずつ計量し、容器に充填したものをいう。容器は、特に制限されないが、プラスチック容器、プラスチック袋、紙袋、缶、ダンボール容器、フレキシブルコンテナー等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0078】
<環状オレフィン系樹脂ペレットの製造>
[吐出工程]
環状オレフィン系樹脂とポリエチレン樹脂とを表1に示す配合で、シリンダー温度280℃、押出し量12kg/hr(定量フィーダ使用)、スクリュ回転数150rpmで設定した30mmΦ二軸押出機にて溶融押し出しし、ストランド状物を得た。
【0079】
[冷却工程]
押し出しされたストランド状物をウォーターバス中の65℃の冷却水に約5秒浸漬した。
【0080】
[切断工程]
冷却された上記ストランド状押出物を、ペレタライザーを用いて、長さ5mm程度にカットし、その後105℃、3時間乾燥させ、本発明及び比較例の樹脂ペレットを採取した。なお、ペレタイザーより大部分のペレット及び切削粉は包装体に回収した。その他、ペレタイザーに付着、あるいは周辺に飛散した切削粉及びペレットも全て回収し、包装体中の切削粉及びペレット量、包装体に入らなかった切削粉量及びペレット量の双方を評価し、表1に切削粉全量と包装体中の切削粉量をまとめた。具体的な評価は、上記実施例及び比較例の樹脂ペレット包装体2kgを20メッシュ篩にて、篩別し通過した粒径800μm未満の切削粉量を秤量することにより行った。
【0081】
<評価>
上記のペレタイズしたペレット形状を観察し、以下の通り5点法にて評価判定を行った。判定結果を表1に示す。
評価が1の場合は、多くのペレットが砕けてしまい、成型加工用には使用不可と判断される。
評価が2の場合は、評価1と3との中間的な状態であり、成形加工には使用不可と判断される。
評価が3の場合は、形状をとどめているペレットも多いが、成形加工には使用可能な状態と判断される。
評価が4の場合は、評価3と5との中間的な状態であり、成形加工には使用可能な状態と判断される。
評価が5の場合は、ペレットはほぼ砕けず、ペレット形状を保持している。
【0082】
【表1】

環状オレフィン系樹脂:メタロセン系触媒(イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムクロリド)を用いて得られたエチレン・ノルボルネンランダム共重合体(ノルボルネン単位含量:85質量%、MFR:15g/分、Tg:193℃)
ポリエチレン:直鎖状低密度ポリエチレンExceed 1018CA、ExonMobil社製
【0083】
表1から分かるように、ガラス転移点の高い環状オレフィン系樹脂のペレット製造の際に、作業安全性を高めるために低い温度でストランドを切断しているにもかかわらず、ペレットは砕けず成形加工に使用可能であることが確認された。また、粒径800μm未満の切削粉の発生量も少ないため、高品質な環状オレフィン系樹脂ペレットを製造できることが確認された。
【0084】
実施例の包装体中切削粉量は全て5質量%未満であり、ポリエチレンの含有量が多くなるほど切削粉量が少なくなることが確認された。一方、比較例2、3においては、粒径800μm未満の切削粉の量が5質量%未満になることが確認されたが、いずれも実施例よりも高い値であった。さらに、比較例では製造ラインに残留する切削粉の量が実施例の場合よりも多い。したがって、ポリエチレンを環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、5質量部以上配合することで、メンテナンスにかかる多大な時間と労力を軽減できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂を溶融混練し棒状に吐出する吐出工程と、吐出した棒状物を冷却する冷却工程と、冷却した該棒状物を切断してペレット化する切断工程と、を有する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であって、
前記環状オレフィン系樹脂の重合時及び/又は前記溶融混練時にポリエチレンを、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部以上添加する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が150℃以上である請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程が、前記棒状物を水冷にて冷却する工程である請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程が、前記棒状物を空冷にて冷却する工程である請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記環状オレフィン系樹脂ペレットの製造ラインに残留する粒径800μm未満の切削粉と、前記環状オレフィン系樹脂ペレットが有する粒径800μm未満の切削粉と、の合計量が、前記環状オレフィン系樹脂ペレットと切削粉との合計量100質量部に対して、10質量部以下である請求項1から4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記粒径800μm未満の切削粉の混入量が5質量%未満である樹脂ペレット包装体。

【公開番号】特開2009−221339(P2009−221339A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66769(P2008−66769)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【出願人】(506168679)トパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】