説明

環状オレフィン重合体フィルムの製造方法

【目的】 環状オレフィン重合体よりなる表面平滑性、厚み精度に優れる透明性フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)
【化1】


(ここで、X及びYはそれぞれ独立にメチレン基、酸素原子、硫黄原子又はテルル原子を表わし、nは0または正の整数を表わす。)
で表わされる繰り返し単位を有する環状オレフィン重合体10〜40重量%、および溶媒90〜60重量%からなる溶液を支持基板上に流延し、溶媒を含む流延フィルムから溶媒を蒸発させる透明性フィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン重合体よりなる表面平滑性、厚み精度に優れる透明性フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機EL、PDPなどに代表されるフラットパネルディスプレイは、薄型、軽量である特徴が市場ニーズにマッチし、急速に普及、あるいはその利用範囲を拡大している。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、数々の高分子フィルムが用いられており、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、透明電極フィルム、光拡散フィルム、光反射フィルム、電磁波遮蔽フィルム、ディスプレイ表面保護フィルムなどに利用されている。そして、これら高分子フィルムには、ディスプレイの視認性を低下させないよう、非常に高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度が要求されることが一般的である。フラットパネルディスプレイに利用される透明性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、直鎖状ポリオレフィンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、熱硬化型樹脂フィルムなどを代表例として挙げることができる。
【0003】
光学用途に用いられる透明耐熱樹脂の一つに環状オレフィン樹脂が知られている。例えば、テトラシクロデセン系化合物、及びノルボルネン系化合物をメタセシス重合し、水素添加したもの(特許文献1〜4参照。)、エチレンとノルボルネン系化合物、またはエチレンとシクロデセン系化合物の付加重合体(特許文献5参照。)、ノルボルネン系化合物の付加重合体(特許文献6〜9参照。)、アルコキシシリル基を有するノルボルネン系化合物の付加重合体(特許文献10参照。)等が例示される。これら樹脂の耐熱性はそのガラス転位点により決まり、概ね165℃以下であった。一方、光学フィルムに対しては、年々、要求される耐熱性が高まってきており、これら樹脂からなるフィルムの耐熱性を上回る光学フィルムが望まれていた。
【0004】
一般に、透明性フィルムはTダイ溶融押出法または溶液流延法により製造される。Tダイ溶融押出法は生産性に優れ、製造設備も比較的安価であるため、透明性フィルムの製造方法として広く用いられている。しかし、溶融押出法の場合、溶融混練時の混練履歴、練りむら、吐出むら、樹脂焼け等の原因により、フィルム表面に微小なスジ、シャークスキン状の荒れ、ダイライン等が発生し易い。また、高粘度の溶融樹脂を押出機内にて混練した後、Tダイス内で幅方向に拡張し、引き取り操作を行うため、高い厚み精度を得ることが難しい。このような理由から、Tダイ溶融押出法により、フラットパネルディスプレイ用透明性フィルムに要求されるような非常に高い表面平滑性、厚み精度を達成することは非常に難しいことが実状である。
【0005】
一方、溶液流延法は、高分子を溶媒に溶解させた高粘度溶液(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとして支持基板から剥離し、さらに加熱乾燥して残りの溶媒を除去するフィルムの成膜法である。溶液流延法をTダイ溶融押出法と比較した場合、溶融混練押出による練りむら、吐出むら、あるいは熱劣化による樹脂焼けの発生が無いため、高い表面平滑性を得やすく、さらに溶融粘度に対し、溶液粘度は低いため、高い厚み精度が得られ易いという利点がある。従い、フラットパネルディスプレイ用透明性フィルムのように、特に高い表面平滑性、厚み精度を要求される場合には、溶液流延法によるフィルムが用いられることが多い。
【0006】
【特許文献1】特許第3050196号公報
【特許文献2】特開昭60−26024号公報
【特許文献3】特開平1−132625号公報
【特許文献4】特開平5−214079号公報
【特許文献5】特開昭61−292601号公報
【特許文献6】特開平4−63807号公報
【特許文献7】特開平8−198919号公報
【特許文献8】特開平9−508649号公報
【特許文献9】特開平11−505880号公報
【特許文献10】特開平7−196736号公報
【非特許文献1】「Journal of Polymer Science」,(米国),2004年、42巻、3649頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、環状オレフィン重合体からなる優れた表面平滑性および厚み精度を有する透明性フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、透明性フィルムの製造方法について検討し、優れた表面平滑性および厚み精度を得るため鋭意努力した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、下記の一般式(1)
【0010】
【化1】

(ここで、X、Y及びZは独立にメチレン、酸素原子、硫黄原子又はテルル原子を表わし、nは0または正の整数を表わす。)
で表わされる繰り返し単位からなる環状オレフィン重合体を溶媒に溶解させた溶液を用いて溶液流延法により製造されたフィルムが上記目的を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、一般式(1)で表わされる繰り返し単位からなる環状オレフィン重合体10〜40重量%および溶媒90〜60重量%からなる溶液を支持基板上に流延し、溶媒を含む流延フィルムから溶媒を蒸発させることを特徴とする透明性フィルムの製造方法に関するものである。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いられる一般式(1)で表される繰り返し単位を有する環状オレフィン重合体(以下、環状オレフィン重合体という)は、下記一般式(2)で表される重合性モノマーをメタセシス開環重合することにより得られる重合体(以下、メタセシス開環重合体という)を水素添加することにより得られる。
【0014】
【化2】

(ここで、X及びYはそれぞれ独立にメチレン基、酸素原子、硫黄原子又はテルル原子を表わし、nは0または正の整数を表わす。)
一般式(2)で表される重合性モノマーは、ビニルエーテル類とシクロジエン類のディールスアルダー反応により製造される。該ビニルエーテル類としてはトリシクロデカンビニルエーテル等を用いることができる。また、シクロジエン類としてはシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のディールスアルダー反応によりビニルエーテルを付加可能な脂肪族の環状ジエン類が用いられ、本質的に環状ジエンであればその種類を問わない。上記の付加反応においては、ビニルエーテル類及び環状ジエン類間の付加反応により一般式(2)においてnが0である目的物が生成する。この反応以外に、環状ジエン類間の付加反応も起こる。従い、生成した環状ジエン類とビニルエーテル類との間で更に付加反応が進行し、一般式(2)においてnが1で定義される目的物も生成する。このような副反応により、一般式(2)においてnが0または正の整数で定義される目的物が、nが異なる混合組成物として得られ、本発明のビニルエーテル誘導体は本質的にnが異なる数種の成分を含んでいる。この混合物から蒸留等により目的とする成分を分離することができるが、本質的に1成分だけを取り出すのは経済的に有利ではなく、通常、主成分に対して2%から40%のnが異なる成分を複数成分含んでいてもよい。
【0015】
本反応におけるシクロジエン類のビニルエーテル類に対する仕込みモル比は15〜0.6が好ましく、更に好ましくは10〜1.5である。この比率が15以上では生成物の収量が低く経済性に問題があり、0.5以下では生成物の転化率が低くなり収量が低下するため好ましくない。
【0016】
本反応は無溶剤で行うのが好ましいが、反応に不活性な溶媒を加えることに何らの制限もなく、ペンタン、オクタン、ノナン等のアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ハロゲン化アルカン類、ハロゲン化芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、環状エーテル、或いは線状ジアルキルエーテル等が例示される。
【0017】
反応温度は通常50〜300℃、好ましくは100〜250℃、更に好ましくは180〜240℃である。反応方法は何ら制限を受けず、バッチ、及び連続反応の何れも用いることが出来るが、経済性の面から連続反応が好ましい。
【0018】
一般式(2)で表わされる重合性モノマーは、メタセシス開環重合法によりメタセシス開環重合体とすることができ、メタセシス重合触媒としては公知のものを用いることが出来る。即ち、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、白金、タングステン、モリブデン、レニウム化合物から選ばれた少なくとも1種の金属化合物(I)、及び周期表1,2,3,4族の金属化合物(II)を用いることが出来る。
【0019】
タングステン、モリブデン、レニウム化合物は、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、カルボン酸塩、アセチルアセトナート配位物、酸化物のアセチルアセトナート配位物、アセトニトリル配位物、ヒドリド錯体が例示されるが、特にハロゲン化物、オキシハロゲン化物は重合活性が高く好適であり、WCl,WOCl,MoCl,MoOCl,ReCl,WCl(OC、MoO(acac),W(OCOR)が例示され、特にWCl,MoClが好ましい。
【0020】
また、周期表1,2,3,4族の金属化合物としては、n−ブチルリチウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、トリメチルガリウム、トリメチルスズ、n−ブチルスズ等が例示され、特にテトラメチルスズ、テトラフェニルスズが好ましい。金属化合物(I)、及び(II)の比率は金属原子のモル比として1/1〜1/30、好ましくは1/2〜1/20の範囲で用いられる。また、活性向上剤としてアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類を添加してもよい。
【0021】
メタセシス開環重合に用いられる溶剤としては、ペンタン、オクタン、ノナン等のアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ハロゲン化アルカン類、ハロゲン化芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、環状エーテル、或いは線状ジアルキルエーテル等が例示される。
【0022】
メタセシス開環重合体の分子量調節剤としては、エチレン、1−ヘキセン、1−ヘプテン等のα―オレフィン類が好適に用いられる。分子量調節剤は2種類以上併用することができる。分子量調節剤の使用量は、仕込みモノマー1モルあたり0.001から0.5モル、好ましくは0.002から0.4モルであるが、重合温度、重合触媒種及びその量により適宜変更することが好ましい。
【0023】
メタセシス開環重合体は、一般式(2)の重合性モノマーを単独重合しても、他の共重合モノマーと共重合してもよい。単独重合した場合、一般式(1)で表わされる繰り返し単位のみからなる環状オレフィン重合体が得られる。共重合する場合、主として用いられる共重合モノマーの例としてはシクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン、トリシクロ[6.2.1.01,8]−9−ウンデセン、トリシクロ[6.2.1.01,8]−4−ウンデセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−11−ペンタデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−ペンタデカ−4,11−ジエン等が例示され、シクロオレフィン類が好適に用いられる。共重合におけるこれら化合物の仕込み比は生成する重合体のガラス転位点により決定され特に制限はないが、共重合するモノマーは主原料モノマーに対して50モル%を超えない範囲で使用され、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
【0024】
メタセシス開環重合体は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン(PSt)換算の重量平均分子量で、通常10000〜300000の物が得られる。
【0025】
メタセシス開環重合体は、安定性、耐熱性を向上させるために水素添加され、環状オレフィン重合体が得られる。水素添加には、通常のオレフィン性化合物の水素化触媒を用いることができ、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等をカーボン、シリカ、アルミナ、チタニアに坦持させた坦持触媒の他、均一触媒も使用でき、ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、オクテン酸コバルト、チタノセンジクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が例示される。また、これら触媒の助触媒としてはトリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類、n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム類を使用することが出来る。
【0026】
用いられる触媒の形態は特に制限を受けず、粉末状でも粒状でも問題なく用いることが出来る。水素添加触媒の使用量は開環重合体に対して重量比で0.5〜2ppmが好適に用いられる。また、水素添加率は通常60%、好ましくは90%、更に好ましくは98%である。水素添加率が60%以下では得られる環状オレフィン重合体の熱安定性に問題が生じる場合があるため、出来る限り水素添加率を上げるのが好ましい。水素添加率が90%を超えると熱安定性に優れるものとなり、水素添加率が98%に達すると100%完全環状オレフィン重合体と同等の熱安定性を示す。
【0027】
開環重合体溶液に水素を添加し、常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧で反応させることで水素添加できる。この際の温度としては、0〜200℃、更に好ましくは20〜180℃が用いられる。
【0028】
水素化溶剤は特に制限を受けず、上記の水素添加反応条件において水素添加されないものであればどのような溶剤を用いても良く、経済性、作業性の点から好ましくは重合体溶剤と共通のものを用いるのが好ましい。
【0029】
本発明は、環状オレフィン重合体10〜40重量%および溶媒90〜60重量%からなる溶液を支持基板上に流延し、溶媒を含む流延フィルムから溶媒を蒸発させることを特徴とする透明性フィルムの製造方法に関するものである。
【0030】
本発明では、環状オレフィン重合体は溶媒に溶解させ、溶液とする。溶媒としては、重合体を溶解できるものであれば特に制限されず、例えば塩化メチレンが用いられる。
【0031】
また、本発明に用いられる溶媒は、溶液流延法により製膜したフィルムの表面性向上、溶媒の蒸発速度やドープの粘度調節などを目的に、樹脂組成物の溶媒への溶解性やドープの安定性を犠牲にしない範囲で、塩化メチレン以外の溶媒を含有させることができるが、溶媒が塩化メチレンを70重量%以上含有するものであることが好ましい。塩化メチレン以外の溶媒として、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ブタン等の脂肪族系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アルコール類が挙げられる。
【0032】
本発明における溶液は、環状オレフィン重合体10〜40重量%および溶媒90〜60重量%からなる溶液であり、より好ましくは、環状オレフィン重合体15〜30重量%、溶媒85〜70重量%である。樹脂組成物の溶液中含有量が40重量%を超えると溶媒への溶解性が低下するとともに、ドープの安定性が乏しくなる問題がある。一方、樹脂組成物の溶液中含有量が10重量%に満たない場合、ドープの安定性は問題ないが、溶液流延法により成膜した場合、フィルムの表面平滑性が不十分となることや、厚み精度が得られないなどの問題がある。
【0033】
本発明における溶液の作製法は、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明においては、ドープを支持基板上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させてフィルムを得る。一般に流延する方法として、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコータ法、リップコーター法等が用いられる。工業的には、ダイからドープをベルト状もしくはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としてはガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板などがある。高度に表面性、光学均質性の優れたフィルムを工業的に連続製膜するには、表面を鏡面仕上げした金属基板が最も一般的に用いられる。
【0035】
溶液流延法において、高い透明性を有し、且つ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する目的において、溶液粘度は極めて重要な因子である。溶液粘度はポリマーの濃度、分子量および溶媒の種類に依存するが、本発明の溶液の粘度は、好ましくは700〜30000cps、より好ましくは1000〜10000cpsである。溶液粘度が700〜30000cpsの範囲を外れる場合、フィルムの表面平滑性、厚み精度が得られ難くなるため、好ましくない。
【0036】
本発明における透明性フィルムには、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤等が加えられていても良い。
【0037】
本発明のフィルムの厚みは、10〜500μmであり、より好ましくは20〜200μmの範囲である。フィルム厚みが10μm未満の場合は、機械特性が低下し、500μmを超える場合には、溶媒の除去に長時間を要し、生産性が低下するため、好ましくない。
【発明の効果】
【0038】
本発明の方法により、液晶ディスプレイを始めとする光学用途に使用でき、従来にない耐熱性を有する透明樹脂フィルムを製造する方法を提供できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例に示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0040】
重量平均分子量:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製 HLC−802A)を用い、ポリスチレン換算により求めた。
【0041】
組成比:主として元素分析、H−NMR測定により決定した。
【0042】
全光線透過率:日本分光(株)製 紫外可視分光器(V530)を用い、フィルム中心部の全光線透過率を測定した。
【0043】
表面平滑性:(株)キーエンス製 レーザー顕微鏡(VK−8550)を用い、中心線平均粗さ(Ra)を求め、この値により表面平滑性を評価した。
【0044】
実施例に用いた原料、及び入手は下記の通り。
【0045】
ジシクロペンタジエン:和光純薬 試薬一級
トリシクロデカンビニルエーテル:丸善石油化学製TCD−VE
ヒドロキノン:和光純薬 試薬一級
参考例1
300mlのガラス製蒸留装置に100mlのジシクロペンタジエンを仕込み、マントルヒータ−で220℃に加熱して、熱分解により生成したシクロペンタジエンの沸点39.5℃の留分をドライアイスメタノール浴で冷却した受器中に液化させる手法で分離した。
【0046】
次に、シクロペンタジエン16.26グラム(0.247モル)、トリシクロデカンビニルエーテル76g(0.37モル)、及び触媒量のヒドロキノンを300mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、220℃に加熱し、加熱状態で5間反応させた。その後、反応器を冷却し、内容物から原料であるトリシクロデカンビニルエーテルを減圧蒸留により分離し、更にシクロペンタジエンが付加したトリシクロデカンビニルエーテル誘導体(トリシクロデカニル−トリシクロデセニルエーテル)(以下、モノマーという)であって、主成分としてビシクロ[2,2,11,4]−ヘプテニル トリシクロ[3,2,0,11,7]−デカニル エーテルを95%含む成分を分離した。この化合物の構造はガスクロマトグラフによる成分比、及びGCマススペクトルによる質量分析、H−NMRによる二重結合部分、メチン、及びメチレン部の水素の強度比を併用して、成分組成、構造を確認した。収量は8グラムであった。
【0047】
参考例2
参考例1と同様の方法で得たシクロペンタジエン32.52グラム(0.494モル)、トリシクロデカンビニルエーテル152g(0.78モル)、及び触媒量のヒドロキノンを1リットルのステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、220℃に加熱し、加熱状態で5時間反応させた。その後、反応器を冷却し、内容物から原料であるトリシクロデカンビニルエーテルを減圧蒸留により分離し、更にシクロペンタジエンが付加したトリシクロデカンビニルエーテル誘導体(トリシクロデカニル−トリシクロデセニルエーテル)であって、主成分としてビシクロ[2,2,11,4]−ヘプテニル トリシクロ[3,2,0,11,7]−デカニル エーテルを95%含む成分を分離した。この化合物の構造はガスクロマトグラフによる成分比、及びGCマススペクトルによる質量分析、H−NMRによる二重結合部分、メチン、及びメチレン部の水素の強度比を併用して、成分組成、構造を確認した。収量は20グラムであった。
【0048】
合成例1
窒素置換した300mlの反応器に、シクロヘキサン100ml、参考例1で得られたモノマー8グラム、触媒として六塩化タングステンの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液2ml(モル)、及びジエチルアルミニウムクロライドの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液0.2mlを仕込み、窒素気流下、60℃で、攪拌速度100rpmにて攪拌下、5時間反応させた。得られた反応溶液をメタノールに注いでメタセシス開環重合体を単離した。メタノールで数回洗浄を行った後、40℃で一昼夜減圧乾燥を行い、7.9gのメタセシス開環重合体を得た。GPC測定により、得られたメタセシス開環重合体のPSt換算の重量平均分子量は120000であった。
【0049】
得られたメタセシス開環重合体7グラム、トルエン30グラム、ルテニウムハイドライドトリフェニルホスフィン錯体0.1mgを100ccのステンレスオートクレーブに仕込み攪拌して、均一なポリマー溶液を得た。引き続き、水素ガス圧10MPa、温度160℃において、4時間攪拌下、水素添加反応を行った。反応溶液を冷却後、過剰な水素を放出、脱圧後、反応溶液を大量の塩酸―メタノール溶液に注ぎ、環状オレフィン重合体を単離した。得られた環状オレフィン重合体を50℃で一昼夜減圧乾燥して7gの環状オレフィン重合体を得た。この環状オレフィン重合体の重量平均分子量は150000、ガラス転位点は171℃であった。また、水素転化率は99.5%であった。
【0050】
合成例2
窒素置換した500mlの反応器に、シクロヘキサン180ml、合成例1で得られたモノマー20グラム、触媒として六塩化タングステンの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液4ml、及びジエチルアルミニウムクロライドの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液0.4mlを仕込み、窒素気流下、60℃で、攪拌速度100rpmにて攪拌下、5時間反応させた。得られたポリマー溶液にルテニウムハイドライドトリフェニルホスフィン錯体0.2mgを仕込み、更に水素ガスを圧入し10MPaの圧力下、温度160℃において、5時間攪拌下、水素添加反応を行った。反応溶液を冷却後、過剰な水素を放出、脱圧後、反応溶液を大量の塩酸―メタノール溶液に注ぎ、環状オレフィン重合体を単離した。得られた環状オレフィン重合体を50℃で一昼夜減圧乾燥して14gの環状オレフィン重合体を得た。このポリマーの分子量は120000、ガラス転位点は171℃であった。また、水素転化率は99.4%であった。
【0051】
合成例3
窒素置換した500mlの反応器に、シクロヘキサン180ml、合成例1と同様の手法により得られたモノマー20グラム、1−ヘキセン0.015g、六塩化タングステンの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液4ml、及びジエチルアルミニウムクロライドの濃度0.1モル/lのクロロベンゼン溶液0.4mlを仕込み、窒素気流下、60℃で、攪拌速度100rpmにて攪拌下、5時間反応させた。得られたポリマー溶液にルテニウムハイドライドトリフェニルホスフィン錯体0.2mgを仕込み、更に水素ガスを圧入し10MPaの圧力下、温度160℃において、5時間攪拌下、水素添加反応を行った。反応溶液を冷却後、過剰な水素を放出、脱圧後、反応溶液を大量の塩酸―メタノール溶液に注ぎ、環状オレフィン重合体を単離した。得られた環状オレフィン重合体を50℃で一昼夜減圧乾燥して14gの重合体を得た。この環状オレフィン重合体の重量平均分子量は60000、ガラス転位点は170℃であった。また、水素転化率は99.8%であった。
【0052】
実施例1〜3、比較例1〜6
合成例1〜3で合成した環状オレフィン重合体を表1に示す濃度で、塩化メチレンに溶解させドープを得た。得られたドープをTダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し、乾燥後、幅300mmのフィルムを得た。そして、成膜したフィルムを一片200mmの正方形に裁断し、全光線透過率、Raを測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】

(ここで、X及びYはそれぞれ独立にメチレン基、酸素原子、硫黄原子又はテルル原子を表わし、nは0または正の整数を表わす。)
で表わされる繰り返し単位を有する環状オレフィン重合体10〜40重量%、および溶媒90〜60重量%からなる溶液を支持基板上に流延し、溶媒を含む流延フィルムから溶媒を蒸発させることを特徴とする透明性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−168307(P2006−168307A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367450(P2004−367450)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】