説明

生ごみ炭化装置

【課題】生ごみ炭化装置において、乾留ガス逆流がなく、所定温度範囲におけるガスの燃焼を維持すると共に、効率的な燃焼エネルギ投入を実現する。
【解決手段】生ごみ炭化装置1は、生ごみ10を収納する容器11と、容器11を加熱して容器内部に収納した生ごみ10を炭化処理する炭化ヒータ21(炭化手段)と、炭化の過程で発生する乾留ガスG1にエネルギを投入してそのガスを燃焼させる燃焼ヒータ31を有した燃焼部3と、乾留ガスG1を燃焼させるための燃焼空気A1を燃焼部3に送風する送風機42と、燃焼中の燃焼温度を測定する温度計T4〜T6と、温度計T4等によって測定された燃焼温度を指標にして燃焼ヒータ31及び送風機42を制御する制御部5と、を備えている。制御部5は、燃焼ヒータ31が投入するエネルギ投入率Eに応じて予め定めた風量の燃焼空気A1を燃焼部3に送風するように送風機42を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみを低酸素濃度下で加熱して炭化処理する生ごみ炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生ごみを炭化処理する生ごみ炭化装置が知られている。この種の装置は、炭化室において酸素を遮断または供給制限した状態で生ごみを一定温度以上に加熱して熱分解(乾留)させ、これにより、生ごみを最終的に減量及び減容された固形物、すなわち炭化物に変える。生ごみの炭化の過程において、まず水分が蒸発し、その後、温度上昇とともに有機物が分解して種々の可燃性ガスを含むガス(乾留ガス)が発生する。最終的には炭素主体の炭が生成される。この炭は吸着剤や土壌改良剤として利用が可能である。生ごみ炭化装置は、原理的に、木材や油脂、プラスチックスなどの処理も可能である。炭化による処理は、コンポスト化や乾燥減容化等の生ごみ処理方法と比べて処理物の質に対する制限が少ない。
【0003】
他方、炭化処理に伴って発生する乾留ガスは、有害物を含むこともあり、通常、燃焼装置により燃焼処理されて排出される。炭化処理温度と発生ガスの関係は処理対象物の成分に大きく依存する。代表的な乾留ガスの燃焼反応は次の如くである。メタン:CH+2O=CO+2HO、一酸化炭素:2CO+O=2CO、水素:2H+O=2HO。また、各燃焼反応に応じた燃焼熱が発生する。
【0004】
上述のように、生ごみ炭化装置において乾留ガスの燃焼に酸素(空気)が必要であり、その必要量はガス量に応じて理論的に決定される(理論空気量)。実際の燃焼では、理論空気量の一定倍率(空気比)の空気量を供給することによって、燃焼空気量不足を防止して不完全燃焼を防止し、未燃ガスやばいじん等の大気汚染物質の排出を防止している。
【0005】
また、生ごみ炭化装置が廃棄物焼却炉として位置付けられる場合、ダイオキシンの発生抑制の観点からガスの燃焼温度を、例えば800℃以上に保持する必要がある。可燃性ガスの発生量が多い場合には、可燃性ガスの燃焼熱によって燃焼温度を高く維持できるが、可燃性ガスの発生量が少ない場合には、燃焼温度を800℃以上の所定範囲に保持するために加熱ヒータや助燃装置等によりエネルギを投入する必要がある。
【0006】
また炭化処理装置において、炭化によって発生したガスの燃焼後の排気ガスの温度を所定の温度範囲に収めるため、ガスを燃焼する燃焼室に温度計を配置し、その温度計の指示温度に応じて排気通路に設けた送風機の風量を変化させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−81473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した生ごみ炭化装置を、エネルギ消費を抑える観点から見た場合、燃焼温度を下げてしまう過剰の空気量供給を避けると共に、燃焼温度を所定範囲に保つためのエネルギ供給を最小限とするのが望ましい。しかしながら、炭化処理する生ごみの成分が毎回一定とは限らないので、炭化の過程で発生するガス量(可燃性ガス量)が処理毎や処理中に大きく変動することがあり、これに対応するため、過剰のエネルギ投入が余儀なくされる。例えば、生ごみ中には多くの水分が含まれており、炭化炉の昇温過程では含水量に応じた水蒸気が発生する。この水蒸気量は燃焼に必要な空気量よりも多いことがあり、空気供給のための風量設定が、もしも燃焼に必要な酸素量の供給だけの観点から行われている場合に、水蒸気による風量が空気供給のための風量を上回ってしまい、水蒸気の流れが燃焼空気の取り入れ口に逆流してしまう。そこで、この逆流を回避するため、予め風量を大きく設定しておくと、結果として無駄なエネルギを消費してしまうことになる。
【0008】
また、一般の燃焼管理においては燃料供給量を調整して燃焼温度を一定に保つが、生ごみ炭化装置の場合、可燃性ガスからなる燃料の供給元である炭化室の熱容量が大きいこともあり燃料供給量(ガス発生量)を瞬時にコントロールすることは困難である。従って、可燃性ガスを燃焼する側で加熱したり、温度を下げたりして燃焼温度を所定範囲に保つ必要がある。そこで、上述した特許文献1においては、温度計の指示に応じて送風機の風量を変化させるようにしているが、温度計の指示だけでは、温度変化が可燃性ガスの発生量の変化によるものか、加熱手段によるものか判別できなく、結果的に投入エネルギの無駄を発生することになる。
【0009】
本発明は、上記課題を解消するものであって、乾留ガス逆流がなく、ガスの燃焼温度を所定温度範囲に維持できると共に効率的な燃焼エネルギ投入を実現できる生ごみ炭化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、前記制御手段は、前記加熱手段が投入するエネルギ投入率に応じて予め定めた風量の燃焼空気を前記燃焼手段に送風するように前記送風手段を制御するものである。
【0011】
請求項2の発明は、生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、前記燃焼手段における燃焼空気を取り入れる空気入口での燃焼空気温度を測定する入口温度測定手段を備え、前記制御手段は、前記入口温度測定手段により測定した燃焼空気の入口温度が予め定めた温度となるように、前記送風手段による燃焼空気の風量を制御するものである。
【0012】
請求項3の発明は、生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、前記燃焼手段における燃焼空気を取り入れる空気入口での燃焼空気温度を測定する入口温度測定手段を備え、前記制御手段は、前記加熱手段が投入するエネルギ投入率に応じて予め定めた風量と、前記入口温度測定手段により測定した燃焼空気の入口温度が予め定めた温度となるように制御される風量とのいずれか大きい方で前記送風手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、加熱手段が燃焼温度を指標にして制御され、その加熱手段が投入するエネルギ投入率に応じて予め定めた風量の燃焼空気を燃焼手段に送風するので、エネルギ効率良く安定に燃焼温度を維持した燃焼を行うことができる。例えば、一般にエネルギ投入率が低い場合には可燃性ガスによる発熱によって燃焼温度が維持されているので風量(燃焼用空気)を大きくする。このように、空気比が最適となるような運転条件におけるエネルギ投入率と風量の関係を予め算出しておき、運転時のエネルギ投入率が変化した場合、その値に応じた風量調整を行うことにより、可燃性ガス発生の変動に対応して必要最低限のエネルギ消費のもとで安定した運転を行うことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、燃焼空気入口での空気温度を検知することにより水蒸気や可燃性ガスなどの乾留ガスが所定のガス流れとは逆向きに流れる逆流の発生を事前に検知できるので、必要最低限の風量でエネルギ効率良くガスの燃焼処理を行うことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、例えば、水分の多い生ごみを投入した場合に発生するエネルギ投入率からだけでは判断が難しいガスの逆流と、燃焼空気入口での空気温度からだけでは判断が難しい可燃性ガスの増加との両方に対応して、安定したエネルギ効率の良い燃焼ができる。つまり、ガスの逆流や不完全燃焼を起こすことのない必要最低限の風量のもとで燃焼運転を行うことができる。また、最適条件のもとで燃焼運転ができるので、炭化処理時間も短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る生ごみ炭化装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の生ごみ炭化装置1を示す。生ごみ炭化装置1は、電力を動力源とした縦型の装置であり、下部に炭化部2、その上に乾留ガスG1を燃焼する燃焼部3、その上に燃焼処理されたガスを排気する排気部4、及び外部から電力供給を受けて炭化から排気までの処理を制御する制御部5を備えている。
【0017】
さらに概要を述べると、生ごみ炭化装置1は、生ごみ10を収納する容器11と、容器11を加熱して容器内部に収納した生ごみ10を炭化処理する炭化ヒータ21(炭化手段)と、炭化の過程で発生する乾留ガスG1にエネルギを投入してそのガスを燃焼させる燃焼ヒータ31(加熱手段)を有した燃焼部3(燃焼手段)と、乾留ガスG1を燃焼させるための燃焼空気A1を燃焼部3に送風する送風機42(送風手段)と、燃焼中の燃焼温度を測定する温度計T4,T5,T6(温度測定手段)と、温度計T4等によって測定された燃焼温度を指標にして燃焼ヒータ31及び送風機42を制御する制御部5(制御手段)と、を備えている。以下、詳細を説明する。
【0018】
炭化部2は、断熱壁20a及び前扉20bを備えて密閉空間(炭化室)を形成し、その密閉空間の内部に、炭化のためのエネルギを投入する炭化ヒータ21、及び炭化中の生ごみの温度を測定するための温度計T1を備えている。断熱壁20aは、密閉空間から燃焼部3に連通する連通ダクト60を備えている。また、前扉20bは、前扉20bの開閉状態を確認する近接スイッチSWと、前扉20bの不安全な開閉を防止して危険防止を行うと共に確実な密閉を確保するためのソレノイドロックSLとを備えている。容器11は、内部に生ごみ10又は処理後の炭化物を収納した状態で、前扉20bを開いて密閉空間に入れ出しされる。温度計T1は、容器11の近傍に配置されている。連通ダクト60は、容器11の内部に接続され、容器11の内部で発生する乾留ガスG1を燃焼部3に向けて送り出す。
【0019】
燃焼部3は、断熱壁30によって外気と断熱した状態で、上述の連通ダクト60に連結された乾留ガス経路61、乾留ガス経路61を囲むようにコイル状に形成した燃焼ヒータ31、乾留ガス経路61の下流側に設けた燃焼触媒32、及び乾留ガス経路61の略中央部と燃焼触媒32の前後にそれぞれ設けた温度計T4,T5,T6を備えている。乾留ガス経路61は、炭化部2からの乾留ガスG1を燃焼させながら排気部4へと導く。また、空気配管71が乾留ガス経路61の入口側に接続されている。空気配管71は、燃焼部3の入口における燃焼空気温度を測定する入口温度計T3を備えている。空気配管71は、乾留ガス経路61に燃焼空気A1を供給するものであり、空気配管70から分岐している。空気配管70は、外気吸入口を装置下方に持つ。
【0020】
排気部4は、温度計T7を備えた希釈室41、希釈室41に配管63で接続された送風機42と予備の送風機43(これは通常停止されている)、これらの送風機に配管64,65によってそれぞれ接続されたサイレンサ44、及びサイレンサに接続された排気筒45を備えている。希釈室41には、乾留ガス経路61の出口側、及び空気配管72が接続されている。空気配管72は希釈室41に希釈と冷却用の冷却空気A2を供給する。空気配管72は、空気配管70から分岐している。また、上述の空気配管70から分岐した空気配管73が、排気筒45の内部に冷却用及び希釈用の空気を導入するため接続されている。なお、空気配管70の外気吸入口の近くには外気温度を測定する温度計T8が備えられている。また、送風機43は、停電等の緊急時にバックアップ電源により駆動して緊急排気を行うためのものである。
【0021】
次に、生ごみ炭化装置1の動作を、乾留ガスG1の流れに沿って説明する。炭化部2において、容器11に収納された生ごみ10が、容器11の外部から無酸素状態又は貧酸素状態のもとで炭化ヒータ21によって加熱され、加熱された生ごみ13から乾留ガスG1が発生する。乾留ガスG1は、連通ダクト60を通って、燃焼部3の乾留ガス経路61に導かれる。乾留ガスG1の一方向の流れは、乾留ガスG1の発生に伴う正圧、及び又は送風機42による負圧によって形成される。
【0022】
乾留ガス経路61に導かれた乾留ガスG1は、乾留ガス経路61内部において燃焼ヒータ31によって加熱され、空気配管71から供給される燃焼空気A1と混合されて、乾留ガス経路61及び触媒32を通過する間に燃焼される。燃焼したガスは、乾留ガス経路61に接続された希釈室41において、空気配管72から供給される冷却空気A2と混合されて希釈と冷却が行われ、送風機42、サイレンサ44等を介して大気中に排気ガスG2として放出される。制御部5は、これらの一連の処理を行うため各部を制御する。
【0023】
次に、図1に加えて、図2、図3を参照して、生ごみ炭化装置1における制御部5によるエネルギ効率を向上する制御について説明する。図2は、生ごみ炭化装置1における乾留ガスG1発生量の時間変化の例を示し、図3は、図2に示した乾留ガスG1発生の条件と同様の条件のもとで、生ごみ炭化装置1において風量を制御した場合としない場合の燃焼ヒータ31のエネルギ投入率Eの時間変化の例を示す。なお、エネルギの投入率Eは、投入し得る最大エネルギ値やその90%値、あるいは所定の燃焼温度を維持するために必要なエネルギ値に対する、稼働中に投入しているエネルギの割合として定義される。燃焼エネルギとして電力を用いる場合、電力値や電流値によってエネルギ及びエネルギ投入率Eを表現することができる。
【0024】
生ごみ10を炭化する際に発生する乾留ガスG1の発生量は、図2に示す曲線aのように、生ごみを加熱する処理時間tの経過とともに増大し、その後、減少する。このように発生量が時間変化する乾留ガスG1に対して、送風量を制御することなく常時一定の風量のもとで送風機42を稼働させると、燃焼部3において燃焼ヒータ31が投入するエネルギの投入率Eは、図3に示す曲線bのように、図2における曲線aを上下反転したような曲線を描いて時間変化する。
【0025】
乾留ガスG1の発生量が少ない炭化処理の初期段階や後期段階において、乾留ガスG1の発生量が多い場合の風量と同じ風量で送風機42を稼働させることは、送風機42を稼働させるためのエネルギが必要なことはもとより、多量の燃焼空気A1によって燃焼部3における乾留ガス経路61内部の熱を奪い去ることから、燃焼ヒータ31の投入エネルギが増大する結果を招くことになる。これは、乾留ガス経路61内部の燃焼温度は、例えば、ダイオキシンの発生抑制等の観点から800℃以上に保持するという前提による。
【0026】
そこで、エネルギ効率を向上するため、生ごみ炭化装置1において、制御部5は、燃焼ヒータ31が投入するエネルギ投入率Eに応じて予め定めた風量の燃焼空気A1を燃焼部3に送風するように送風機42を制御する。生ごみ炭化装置1において、例えば、「エネルギ投入率Eが低い場合には乾留ガスG1の中の可燃性ガスによる発熱によって燃焼温度が維持されているので風量(燃焼空気A1の量)を大きくする」というように、空気比が最適となる運転条件におけるエネルギ投入率Eと風量の関係を予め算出しておき、運転時のエネルギ投入率Eが変動した場合、その変動値に応じた風量調整を行う。
【0027】
このような風量制御を伴った燃焼処理を行うと、図3に示す曲線cのように、燃焼ヒータ31のエネルギ投入率Eを大幅に引き下げることができる。すなわち、生ごみ炭化装置1は、燃焼ヒータ31のエネルギ投入率Eに反映される可燃性ガス発生量の変動に対応して、必要最低限のエネルギ消費のもとでエネルギ効率良く、所定の燃焼温度を維持した燃焼を安定に行うことができる。
【0028】
再び、図1を参照して、生ごみ炭化装置1における乾留ガスG1の逆流防止について説明する。上述したように、乾留ガスG1が、連通ダクト60を通って、燃焼部3の乾留ガス経路61に導かれる一方向の流れは、乾留ガスG1の発生に伴う正圧、及び又は送風機42による負圧によって形成される。また、空気配管71から乾留ガス経路61に供給される燃焼空気A1の流れは、送風機42が排気するガスの流れによる負圧によって形成される。もし、送風機42による負圧が乾留ガスG1の発生に伴う正圧を相殺できなければ、乾留ガスG1が空気配管71に逆流することになる。この逆流は、安全管理上、未然に防止する必要がある。
【0029】
そこで、燃焼部3における燃焼空気を取り入れる空気入口に設けた温度計T3によって燃焼空気温度を測定する。制御部5は、入口温度の温度計T3により測定した燃焼空気の入口温度が予め定めた温度以上とならないように、送風機42を制御して燃焼空気A1の風量を調整する。すなわち、燃焼空気入口温度をモニタすることにより、乾留ガス経路61内部の圧力が増大して逆流発生気味となる兆候を、燃焼空気入口温度の上昇によって把握することができる。燃焼空気入口温度が予め設定した温度以上となった時に、送風機42による風量を上昇させることによって、例えば、含水率が高い生ごみ10の処理のように水蒸気圧が急激に上昇する場合においても、乾留ガスG1の逆流を防止することができる。このような方法により送風機42を制御すると、少なくとも乾留ガスG1の逆流に関する不具合の発生がなく、送風機42を最小風量の状態で運転ができ、生ごみ炭化装置1のエネルギ効率が向上する。
【0030】
次に、図4を参照して、生ごみ炭化装置1における上述した燃焼ヒータ31のエネルギ投入率Eに基づく送風機42の制御と、温度計T3による燃焼空気入口温度に基づく逆流防止のための送風機42の制御を組み合わせた制御を説明する。上述のエネルギ投入率Eに基づく送風機42の制御では、例えば、水蒸気の大量発生による逆流が起こる可能性を解消できず、燃焼空気入口温度に基づく送風機42の制御では燃焼空気A1の不足が起こる可能性を解消できない。従って、この両制御方法によって決められた風量の大きい方を実現するように送風機42の運転を行えば、これらの可能性を解消でき、乾留ガスG1の逆流や不完全燃焼を起こすことなく、必要最低限の風量で、燃焼ヒータ31のエネルギ効率良く、生ごみ炭化装置1を運転できる。
【0031】
すなわち、生ごみ炭化装置1の制御部5は、エネルギ投入率Eに応じて予め定めた風量と、燃焼空気A1の入口温度が予め定めた温度となるように制御される風量とのいずれか大きい方で送風機42を制御することとする。ここで、送風機42は、その回転数をインバータ制御されており、インバータによる制御周波数と風量が比例するものとする。図4に、生ごみ処理の時間tに対して、送風機42を制御する制御周波数の変化の例を示している。
【0032】
図4において、破線から成る曲線eは、例えば、燃焼空気入口温度に基づく送風機42の制御周波数の時間変化を示し、実線から成る曲線dは、エネルギ投入率Eに基づく送風機42の制御周波数の時間変化を示す。曲線dは、全般的に曲線eよりも高い制御周波数(従って大きい風量)を示しているが、時間t=t1〜t2において、燃焼空気入口温度に基づく送風機42の制御周波数(曲線e)の方が高くなっている。この時間t=t1〜t2においては、風量がより大きくなる曲線eに基づく送風機42の制御が行われる。
【0033】
上述のような送風機42の制御を行った具体例を説明する。図1に示すような電気式の生ごみ炭化装置において、風量制御をインバータによって行い、次の(1)(2)に示すような制御を行ったところ良好な燃焼状態を実現できた。
(1)燃焼空気入口温度が50℃以上でインバータ設定値を5Hz上昇させる。
(2)燃焼ヒータの通電率(E)と風量を表1に従って制御する。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、乾留ガスG1の燃焼のための加熱手段として燃料ガスや燃料油を用いて行う場合においても、その燃料の投入率などを上述のエネルギ投入率Eとして用いて、送風機42を制御して上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る生ごみ炭化装置の模式的構成図。
【図2】同上炭化装置におけるガス発生量の時間変化の例を示すグラフ。
【図3】同上炭化装置において風量を制御した場合としない場合のヒータ通電率の時間変化の例を示すグラフ。
【図4】同上炭化装置における送風機制御周波数の時間変化の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0037】
1 生ごみ炭化装置
2 炭化部
3 燃焼部(燃焼手段)
4 排気部
5 制御部(制御手段)
10 生ごみ
11 容器
21 炭化ヒータ(炭化手段)
31 燃焼ヒータ(加熱手段)
42 送風機(送風手段)
A1 燃焼空気
G1 乾留ガス
T3 温度計(入口温度測定手段)
T4,T5,T6 温度計(温度測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、
前記制御手段は、前記加熱手段が投入するエネルギ投入率に応じて予め定めた風量の燃焼空気を前記燃焼手段に送風するように前記送風手段を制御することを特徴とする生ごみ炭化装置。
【請求項2】
生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、
前記燃焼手段における燃焼空気を取り入れる空気入口での燃焼空気温度を測定する入口温度測定手段を備え、前記制御手段は、前記入口温度測定手段により測定した燃焼空気の入口温度が予め定めた温度となるように、前記送風手段による燃焼空気の風量を制御することを特徴とする生ごみ炭化装置。
【請求項3】
生ごみを収納する容器と、前記容器を加熱して容器内部に収納した生ごみを炭化処理する炭化手段と、前記炭化の過程で発生するガスにエネルギを投入してそのガスを燃焼させる加熱手段を有した燃焼手段と、前記ガスを燃焼させるための燃焼空気を前記燃焼手段に送風する送風手段と、前記燃焼中の燃焼温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段によって測定された燃焼温度を指標にして前記加熱手段及び送風手段を制御する制御手段と、を備えた生ごみ炭化装置であって、
前記燃焼手段における燃焼空気を取り入れる空気入口での燃焼空気温度を測定する入口温度測定手段を備え、
前記制御手段は、前記加熱手段が投入するエネルギ投入率に応じて予め定めた風量と、前記入口温度測定手段により測定した燃焼空気の入口温度が予め定めた温度となるように制御される風量とのいずれか大きい方で前記送風手段を制御することを特徴とする生ごみ炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2184(P2007−2184A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186987(P2005−186987)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】