説明

生ゴミの処理方法

【課題】処理効率の向上と、余剰汚泥の低減化とを達成する生ゴミの処理方法を提供すること。
【解決手段】(a):生ゴミを、液体を含む処理対象物に変換する工程であって、前記液体の硝酸ナトリウム可溶性画分がゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量70000を超える画分を実質的に含まない工程、及び(c):得られた処理対象物を好気的に生物処理して生物処理液を得る工程、を含む、生ゴミの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全や資源循環に対する意識が高まり、生ゴミ等の被処理物の焼却処理といった既存の処理手法に変わる手法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、生ごみ(食品残渣)、木くず、紙くず等の被処理物を高温高圧の水蒸気にて加水分解し、飼料や堆肥を製造している。
【0003】
特許文献1では、水蒸気の水成分と熱にて被処理物を加水分解するに当たり、処理釜内を1MPaに満たない圧力下で150℃前後の温度とすることが提案されている。この加水分解では、羽根を用いて食品残渣が攪拌されている。加水分解された後に排出される液体は、肥料として用いられるか、または廃棄されていた。
【0004】
一方で、好気性細菌を含む活性汚泥を用いて被処理物質を生分解処理する方法が知られている。例えば、特許文献2に開示される被処理物の生分解処理方法では、処理槽内に好気性細菌を含む活性汚泥と被処理物とが投入され、処理槽内が曝気されて処理槽内の溶存酸素量が制御されている。好気性細菌は、被処理物質中の汚濁物質(BOD、SSなど)を分解して、安定的に被処理物質を分解浄化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−47409号公報
【特許文献2】特開平4−268000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、生ゴミの処理効率が十分でないことが予想される。即ち、特許文献1に記載の技術を利用して、生ゴミから飼料及び肥料を製造することには相当の時間を要すること、かつ組成にバラつきがある生ゴミから、安定した組成を有する飼料及び肥料を製造することは困難であることが予想される。このため、生ゴミを飼料及び肥料にすることによる生ゴミの処理には限界があると考えられる。
【0007】
また、特許文献2に開示される被処理物質の生分解処理方法では、細菌が汚濁物質を分解せずに吸着する場合があるため、処理槽内に余剰汚泥が大量に発生してしまうことが予想される。
【0008】
本発明の目的は、処理効率の向上と、余剰汚泥の低減化とを達成する生ゴミの処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る生ゴミの処理方法は、(a):生ゴミを、液体を含む処理対象物に変換する工程であって、前記液体の硝酸ナトリウム可溶性画分がゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量7000を超える画分を実質的に含まない工程、及び(c):得られた処理対象物を好気的に生物処理して生物処理液を得る工程、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に用いることが可能な加水分解処理装置の一例の概略構成を示す図である。
【図2】加水分解処理プロセスの一例の工程を表す工程図である。
【図3】生物処理プラントを示す概略図である。
【図4】標準生ゴミの液状化率を示すグラフである。
【図5】固液分離後の液体のBOD/CODを示すグラフである。
【図6】固液分離後の液体の色度を示すグラフである。
【図7】標準生ゴミの液状化率を示すグラフである。
【図8】液体の分子量分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を生ゴミの処理に具体化した実施形態について説明する。本願における生ゴミとして、例えば一般家庭や病院から排出される食品残渣、給食残渣、野菜屑等が挙げられる。本実施形態に係る生ゴミの処理方法では、(a):生ゴミを、液体を含む処理対象物に変換する工程であって、前記液体の硝酸ナトリウム可溶性画分がゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量70000を超える画分を実質的に含まない工程と、(c):得られた処理対象物を好気的に生物処理して生物処理液を得る工程とを経て生ゴミを処理する。
【0012】
プラスチック、紙類、繊維、金属等の不燃物、ゴム等の本実施形態に係る処理に不適な物質が生ゴミに混入している場合には、(a)工程の前に、公知の手法により、これらの物質を生ゴミから分別することが好ましい。また、分別処理の前又は後に、生ゴミを低温で維持する保冷操作が行われてもよい。
【0013】
以下、(a)工程について説明する。
(a)工程における生ゴミの処理対象物への変換手段は、得られた処理対象物を構成する液体が特定の分子量分布を有する限り特に限定されないが、該手段として好ましくは加水分解が挙げられ、より好ましくは加水分解条件下で生ゴミを磨り潰す手段が挙げられる。より具体的には、生ゴミを加水分解する手段として、例えば耐圧容器内に羽根を設け、その羽根を回転させることによる手段が挙げられる。生ゴミの加水分解処理により、生ゴミは元の形状を失って液状化されるが、残渣としての固形分が残る場合がある。そのため、(a)工程により得られる処理対象物としての加水分解物は液体により構成されるか、または液体と固形分の混合物により構成される。生ゴミを磨り潰すことによって加水分解処理を促進し、生ゴミの加水分解に要する時間を短縮することができるとともに、生ゴミの液状化率を高めることができる。
【0014】
生ゴミの加水分解に要する時間(反応時間)は、好ましくは3〜30分間であり、より好ましくは5〜20分間である。生ゴミの液状化率を向上させる観点から、反応時間は3分間以上が好ましい。生ゴミの液状化率の低下、BOD/CODの比率(以下、単に「BOD/COD」と記載することがある)の低下及び色度の上昇を抑制する観点から、30分間以下が好ましい。加水分解物を構成する液体のBOD/CODが低下するか、又は色度が上昇すると、生物処理の効率が低下する傾向がある。生ゴミの加水分解に要する時間の起点は、耐圧容器内の温度が設定温度に到達した時点である。
【0015】
加水分解条件下での処理が完了すると、容器内の水蒸気が排出される。加水分解処理後の水蒸気の排出時間、即ち脱気時間は、好ましくは15分間以下であり、より好ましくは、1〜5分間である。生ゴミの液状化率を向上させる観点から、脱気時間は15分間以下が好ましい。脱気時間が短い場合には容器から急激に水蒸気が排出され、水蒸気とともに加水分解物が排出される場合がある。水蒸気とともに加水分解物が排出されることを抑制する観点から、脱気時間は1分間以上が好ましい。脱気時間の起点は、容器内の水蒸気が排出される時点であり、脱気時間の終点は、容器内からの水蒸気の排出が完了した時点である。水蒸気の排出が完了した時点での容器内の圧力は常圧付近、例えば0.01〜0.11MPaとなる。
【0016】
蒸気排出時の容器内の圧力の低下速度は、好ましくは0.1〜2MPa/分であり、より好ましくは0.3〜2MPa/分である。脱気時間、容器内の圧力の低下速度という要素が生ゴミの液状化率、加水分解物のBOD/COD、及び加水分解物の色度等に影響することも、本実施形態に係る処理の特徴の一つである。
【0017】
得られた加水分解物は特定の分子量分布を有する。具体的には、得られた加水分解物を構成する液体の硝酸ナトリウム可溶性画分が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定される分子量分布において、分子量70000を超える画分、より好ましくは分子量64000を超える画分を実質的に含まない。本願におけるGPC法で採用される分子量標準は、プルラン又はグルコースを採用する。本願において「分子量70000を超える画分が実質的に存在しない」とは、実施例に記載の方法で求められる分子量分布曲線において、分子量70000超える曲線下面積(AUC)が1%以下であることをいい、「分子量64000を超える画分が実質的に存在しない」とは、上記分子量分布曲線において、分子量64000を超える曲線下面積(AUC)が1%以下であることをいう。本実施形態においては、当該可溶性画分としては、分子量7万を超えるAUCが0.5%以下であることがより好ましく、0%であることがさらに好ましい。また、分子量64000を基準とした場合、当該可溶性画分としては、分子量64000を超えるAUCが0.5%以下であることがより好ましく、0%であることがさらに好ましい。本実施形態の生ゴミの処理方法が下記(b)工程を含む場合、当該可溶性画分としては、加水分解物から分離された液体の硝酸ナトリウム可溶性画分であってもよい。液体の硝酸ナトリウム可溶性画分は、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量140〜64000の画分を含む。該分子量分布における分子量の下限は、生ゴミの加水分解の効率の観点から140が好ましい。分子量分布における分子量の上限は、生物処理の容易さから64000が好ましい。
【0018】
前記可溶性画分について、その数平均分子量(Mn)としては、生物処理の容易さの観点から、250〜2000の範囲が好ましい。また、上記の可溶性画分の重量平均分子量(Mw)としては、生物処理の容易さの観点から、250〜3500の範囲が好ましい。かかる画分等の液体の上記平均分子量は、実施例に記載のGPC法による分子量分布の測定結果から算出することができる。
【0019】
(a)工程は、好ましくは、前記生ゴミの投入口と排出口を有する中空の耐圧容器に、前記生ゴミを前記投入口から投入する工程と、
水蒸気を生成する水蒸気生成源から水蒸気を前記耐圧容器の内部に圧送する工程と、
前記投入済みの生ゴミを前記水蒸気が導入済みの前記耐圧容器内で、好ましくは磨り潰して処理対象物としての加水分解物を得る工程と、
前記加水分解処理に際して処理環境の維持を図る工程を有する。
【0020】
ここで、前記処理環境の維持を図る工程は、
前記耐圧容器に導入される水蒸気を加熱した上で水蒸気を前記耐圧容器に送り出す工程と、
前記耐圧容器の内部に前記加水分解処理の開始に先だって加圧エアーを導入する工程と、
前記加水分解処理の終了後における前記耐圧容器の残存水蒸気を前記耐圧容器から排出して中空容器に蓄え、該蓄えた水蒸気を前記耐圧容器の前記投入口から投入される次回処理用の前記生ゴミに噴射して次回処理生ゴミを昇温させる工程の少なくともいずれか一つの工程を有することが好ましい。
【0021】
本実施形態における加水分解処理工程では、例えば加水分解条件下で生ゴミを加水分解処理するに際し、前記生ゴミの投入口と排出口を有する中空の耐圧容器に、前記生ゴミを前記投入口から投入し、この耐圧容器の内部に、水蒸気を生成する水蒸気生成源から水蒸気を圧送することが好ましい。こうした水蒸気圧送により、耐圧容器内部を、投入済みの生ゴミが圧送された水蒸気に触れ、水蒸気の持つ熱が生ゴミを加水分解処理する状態が形成される。そして、前記水蒸気が導入済みの前記耐圧容器内で生ゴミを磨り潰すことが好ましい。この磨り潰しにより、生ゴミの固形分を破壊して加水分解処理を促進させることができる。
【0022】
耐圧容器内で生ゴミを磨り潰すための手段として耐圧容器内に単数又は複数の攪拌羽根を設けることが好ましい。さらに、耐圧容器の内周面上にリムを設けることがより好ましい。リムを設けることにより、攪拌羽根による磨り潰し効果をさらに高めることができる。攪拌羽根の先端と耐圧容器の内周面との間隔としては、好ましくは0.5〜1cmである。攪拌羽根の回転数としては、好ましくは3〜42rpmである。
【0023】
こうした加水分解処理の進行には、水蒸気生成源からの高温高圧の水蒸気の圧送の継続が不可欠であるが、水蒸気生成源の能力上、高温高圧の水蒸気の安定した圧送、並びに圧送水蒸気の高温高圧化には限界がある。こうした知見に立ち、本実施形態では、加水分解処理に際して処理環境の維持を図ることが好ましい。つまり、前記耐圧容器に導入される水蒸気を加熱した上で水蒸気を前記耐圧容器に送り出すことで、水蒸気生成源の能力に拘わらず高温高圧の水蒸気の安定した圧送、並びに圧送水蒸気の高温高圧化を図り、加水分解処理の処理環境の維持を図ることができる。この場合、水蒸気の加熱は、耐圧容器に水蒸気を導入する経路にて行うことが簡便である。
【0024】
また、前記加水分解処理の開始に先だって加圧エアーを前記耐圧容器の内部に導入することで耐圧容器内を予め高圧環境としておき、加水分解処理の処理環境の高圧化を図り、加水分解処理の処理環境の維持を図ることが好ましい。或いは、前記加水分解処理の終了後における前記耐圧容器の残存水蒸気を前記耐圧容器から排出して中空容器に蓄え、該蓄えた水蒸気を前記耐圧容器の前記投入口から投入される次回処理用の前記生ゴミに噴射して次回処理生ゴミを昇温させることで、次回の加水分解処理の際の生ゴミ投入による温度降下を抑制し、加水分解処理の開始当初からの処理環境の維持を図ることが好ましい。次回の生ゴミの昇温は残存水蒸気にて行うことから、生ゴミの昇温のための熱源を別途用意する必要がなく、構成の簡略化、省資源化を図ることができる。
【0025】
以上説明した構成を有する(a)工程は、次のような態様を採ることもできる。例えば、水蒸気生成源から水蒸気を前記耐圧容器の内部に導入するための水蒸気導入路を、前記耐圧容器の複数の導入箇所に水蒸気導入を行うように配設し、該複数の導入箇所の少なくとも一つを前記耐圧容器の前記排出口とし、前記排出口における前記生ゴミを前記耐圧容器内に押し戻すようにすることができる。こうすれば、高温高圧下での加水分解処理の最中に、生ゴミが排出口を塞いで固化してしまうことや、排出口が塞がれてしまうことを回避できる。よって、加水分解処理後の処理完了物の排出が円滑となり好ましい。
【0026】
更に、前記耐圧容器の周囲に中空の流体導入部を形成し、該流体導入部に導入した流体と前記耐圧容器との間の熱交換を可能とする熱交換釜と、前記加水分解処理の終了後に前記熱交換釜に、前記耐圧容器に残存する残存水蒸気の温度より低温の流体を導入する流体導入手段と、前記加水分解処理の終了後に前記残存水蒸気を前記耐圧容器から排出する水蒸気排出手段とを設けてもよい。こうすれば、加水分解処理後の耐圧容器を低温の流体との熱交換により短時間の内に効率よく冷却して内部の温度低下と圧力降下を促進した上で残存水蒸気を排出できる。よって、既述した加水分解処理の処理環境維持に加え、次回の生ゴミの加水分解処理までの短縮化、延いては処理効率向上を図ることができる。
【0027】
このように熱交換釜と当該釜への低温流体導入は、加水分解処理の処理環境維持とは独立して構成でき、こうすれば、次回の生ゴミの加水分解処理までの短縮化、延いては処理効率向上を図ることができる。
【0028】
熱交換釜へ低温流体導入を図る上では、熱交換釜への低温流体の導入に際して、流体温度を前記残存水蒸気の温度から徐々に低下させつつ流体を導入するようにすることもできる。こうすれば、熱交換対象となる耐圧容器の急激な温度変化(温度低下)を抑制できるので、耐圧容器の耐久性確保の上から好ましい。
【0029】
また、熱交換釜への低温流体導入を行うことに加え、次回の前記生ゴミの加水分解処理に際して、前記熱交換釜に導入済みの前記低温の流体の排出を行った後、前記水蒸気生成源の生成した水蒸気を前記熱交換釜に導入するようにすることもできる。こうすれば、次回の加水分解処理では、熱交換釜に導入した水蒸気との熱交換によっても耐圧容器を昇温できるので、次回の加水分解処理の環境維持に対して寄与できる。
【0030】
以上説明した、本実施形態における加水分解条件下とは、耐圧容器内での処理環境を、好ましくは1.2〜3MPaの高圧下、且つ好ましくは160〜233℃の高温環境にすることである。本実施形態の前記装置は、例えば約2MPa/約200℃という高温高圧下での加水分解処理に際しての処理環境維持、生産効率向上に寄与できる。水蒸気圧力が高すぎると、耐圧容器の強度およびボイラ性能を向上させることとなり、コストの点から不利となる。
【0031】
次に、図面に基づいて(a)工程をより詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る(a)工程を実施するための加水分解処理装置100の一例の概略構成を示す図である。
【0032】
図示するように、本実施形態に係る加水分解処理装置100は、耐圧容器110と、ボイラ120と、コンプレッサ135と、熱交換釜140と、冷却装置150と、廃棄物投入ホッパ160と、制御装置170とを備える。耐圧容器110は生ゴミを処理するための中空の耐圧容器であり、耐圧性と耐温性を備えた鋼製の容器、或いはステンレス製の容器である。この耐圧容器110は、該容器の上下に生ゴミの投入口111と排出口112を備え、容器内部には複数の攪拌羽根113を回転自在に備えている。投入口111は、制御装置170の制御を受けて駆動する開口開閉機器114により開閉し、生ゴミの投入時において開口し、次回の生ゴミ投入時まで閉鎖状態とされる。排出口112は、制御装置170の制御を受けて駆動する開口開閉機器115により開閉し、生ゴミの処理(加水分解処理)完了時において開口し、加水分解処理の間に亘って閉鎖状態とされる。排出口112から排出された加水分解物は、図示しない搬送装置にて外部に搬送される。
【0033】
本実施形態では、耐圧容器110内に攪拌羽根113が設けられている。攪拌羽根113は、耐圧容器110の外部のモータ116の回転に伴って耐圧容器110の内部にて回転し、耐圧容器110の内部に投入済みの生ゴミを攪拌するとともに磨り潰す。後述するように、耐圧容器110の内部は、高温高圧の水蒸気が導入されて水蒸気と該水蒸気由来の熱水で充満されていることから、攪拌羽根113は、回転して生ゴミを攪拌することで、生ゴミを満遍なく水蒸気と熱水に接触させつつ、生ゴミへのより一律な熱の伝搬を図ることができる。更に、攪拌羽根113は、生ゴミを磨り潰して該生ゴミの固形分を破壊し、加水分解処理を促進することができる。
【0034】
耐圧容器110には、内部の温度を検出する温度センサ200と、内部の圧力を検出する圧力センサ201が装着され、これらのセンサは制御装置170に検出信号を出力する。温度センサ200は、耐圧容器110内の水蒸気の温度を計測するために耐圧容器110の上部に設けられるとともに、耐圧容器110内で処理される生ゴミの温度を測定するために耐圧容器110の下部にも設けられることが好ましい。制御装置170は、これらセンサからの出力信号を受けて、ボイラ120等を駆動制御する。こうした機器制御の様子については後述する。
【0035】
ボイラ120は、制御装置170からの制御信号を受けて、図示しない熱源にて水蒸気を生成し、耐圧容器110に水蒸気を圧送する。水蒸気は、ボイラ120から耐圧容器110にかけて配設された水蒸気導入管180を経て、耐圧容器110に導入される。水蒸気導入管180は、複数の管路に分岐して耐圧容器110に配管形成されており、耐圧容器110における複数箇所の噴出孔から耐圧容器内に水蒸気を噴出する。こうした水蒸気噴出により、水蒸気が耐圧容器110の内部に導入される。水蒸気導入管180から分岐した分岐水蒸気導入管181は、耐圧容器110の排出口112に設置された噴出孔182に配管され、この噴出孔182から水蒸気を耐圧容器110の内部に噴出する。噴出孔182は、排出口112において耐圧容器110の内部を指向して配設されているので、具体的には耐圧容器110の下方位置の排出口112において上向きに指向して配置されているので、噴出孔182から噴出された水蒸気は、排出口112における生ゴミを耐圧容器110の内部に押し戻す。
【0036】
図1においては、水蒸気導入管180の分岐形態を省略したが、水蒸気導入管180からは複数の分岐水蒸気導入管180a、180b、180c等が分岐している。よって、耐圧容器110の内部は、複数の分岐水蒸気導入管のそれぞれに対応する噴出孔から同時に噴出された水蒸気により、速やかに、且つくまなく充満される。こうした水蒸気の導入及び充満は、ボイラ120による水蒸気圧送によって起こり、例えば、耐圧容器110の内部の圧力を約2MPaにする。
【0037】
水蒸気が導入される耐圧容器110は、2系統の水蒸気排出系を有する。一つの排出系は、水蒸気放出管193と当該管路のバルブ194とサイレンサ195を備える排出系であり、水が導入された脱気タンク(図示せず)に、水蒸気を耐圧容器110から排出する。この排出系が、加水分解処理の終了後に耐圧容器110に残存している水蒸気(残存水蒸気)を耐圧容器110から排出する水蒸気排出手段に該当する。
【0038】
他方の排出系は、加水分解処理の終了時点で耐圧容器110の内部に残存する水蒸気(残存水蒸気)を次回の加水分解処理に供される生ゴミに噴射して当該生ゴミを加水分解処理に先だって昇温させるためのものであり、耐圧容器110から廃棄物投入ホッパ160まで配管された水蒸気還流管196と、当該管路のバルブ197とアキュムレータ198とアキュムレータ下流のバルブ199とを備える。バルブ197は、中空の容器であり、バルブ197の管路開放、バルブ199の管路閉鎖の期間において耐圧容器110の残存水蒸気を蓄え、この蓄えた残存水蒸気を、バルブ197の管路閉鎖、バルブ199の管路開放の期間において廃棄物投入ホッパ160の生ゴミ(次回処理用の生ゴミ)に噴射する。これにより、次回処理生ゴミは水処理に先だって昇温することから、水蒸気還流管196はアキュムレータ198と協働して本実施形態における昇温機構を構成し、上記の維持を達成するための手段の一つに該当する。
【0039】
上記した水蒸気導入管180の開閉は、制御装置170からの駆動信号を受けて駆動するバルブ183や噴出孔近傍のバルブ184によりなされる。分岐水蒸気導入管180a〜180c等においてもそれぞれの管路における噴出孔近傍の図示しないバルブにて開閉される。この場合、分岐水蒸気導入管181については、既述した水蒸気噴出による生ゴミの押し戻し機能を担う都合上、最上流のバルブ183によってのみ開閉される。つまり、分岐水蒸気導入管181以外の分岐水蒸気導入管180a等にあってはこれら管路を閉鎖した状態で、分岐水蒸気導入管181からのみ水蒸気噴出ができるように構成されている。この分岐水蒸気導入管181からのみの水蒸気噴出については後述する。
【0040】
上記した水蒸気導入管180には通過する水蒸気の圧力を検出するセンサ190が装着され、ボイラ120には通過する水蒸気の温度を検出するセンサ192が装着されている。これらセンサの検出信号は、制御装置170に出力されて、制御装置170によるボイラ120等を制御に用いられる。また、水蒸気導入管180や分岐水蒸気導入管181等の各分岐水蒸気導入管180a〜180c等には、水蒸気の逆流を防止する図示しない逆流弁の他、圧力の過剰上昇時に減圧した上でガス排出を行う図示しない排出弁が適宜設置されている。
【0041】
また、分岐水蒸気導入管181からは、更に分岐水蒸気導入管185が分岐され、この分岐水蒸気導入管185は、バルブ186、減圧機器ユニット187を経て、減圧水蒸気を後述の熱交換釜140の内部に導入する。この導入タイミングについては後述する。
【0042】
コンプレッサ135は、バルブ136を経て耐圧容器110と接続されており、ほぼ約2MPaの加圧エアーを耐圧容器110の内部に導入する。この加圧エアーの導入は、後述するように、耐圧容器110での加水分解処理に先だって行われ処理環境維持のためになされることから、コンプレッサ135は、本実施形態における加圧エアー導入機構に該当し、上記の維持を達成するための手段の一つに該当する。
【0043】
熱交換釜140は、耐圧容器110の胴体部周囲を取り囲むよう中空とされた流体導入部141を備える。この流体導入部141は、密閉状であり耐圧容器110の導体側壁と接触していることから、流体導入部141に導入された流体と耐圧容器110との間の熱交換を可能とする。流体導入部141に導入される流体は、本実施形態では後述するように冷却水と水蒸気である。つまり、熱交換釜140は,流体導入部141からの流体排出路として、冷却水排出管142と水蒸気排出管143を備え、制御装置170により駆動制御される各管路のバルブ144〜145により、流体導入部141における冷却水排出、水蒸気排出を行う。熱交換釜140の流体導入部141への冷却水導入は後述する冷却装置150から行われ、水蒸気導入は既述した分岐水蒸気導入管185を経て行われる。冷却水・水蒸気の導入・排出タイミングについては、後述する。なお、水蒸気排出管143は、図において下方に描画されているが、冷却水の導入及び排出に支障がないよう、実際は流体導入部141の上部に設置されている。
【0044】
冷却装置150は、第1タンク151と第2タンク152とを備え、両タンク内の冷却水を混合バルブ153にて混合し、その混合冷却水を冷却配管154とその管路のバルブ155を経て熱交換釜140の流体導入部141に導入する。この流体導入部141への冷却水導入は、耐圧容器110における加水分解処理の終了後になされる。第2タンク152は、水蒸気導入管180から分岐した熱交換用配管188の螺旋管部をタンク内に備え、当該配管を通過する水蒸気により、タンク内の冷却水を所定温度、例えば50〜80℃程度に維持する。熱交換用配管188の分岐箇所には分流バルブ189が配設され、この分流バルブ189により定められた分流通過量で、水蒸気は熱交換用配管188を通過する。よって、冷却装置150は、混合バルブ153による混合比に応じた第1タンク151の側からの冷却水量と第2タンク152の側からの冷却水量で定まる温度の冷却水を流体導入部141に送り込むことができる。冷却装置150から流体導入部141に導入される冷却水(混合冷却水)の温度は、第2タンク152における冷却水温度(50〜80℃)が上限であり、この温度は、耐圧容器110に導入される水蒸気温度(約200℃)より低温である。よって、冷却装置150は、本実施形態における流体導入手段に該当する。
【0045】
廃棄物投入ホッパ160は、耐圧容器110における加水分解処理サイクルに合致したタイミングで生ゴミを搬送しつつ、投入口111に投入する。制御装置170は、本実施形態の加水分解処理装置100の制御を統括的に行うものであり、論理演算を実行するCPUやプログラムやデータを記憶したROM、データの一時的な読み書きを可能とするRAM等を有するコンピュータで構成される。そして、制御装置170は、既述した種々のセンサからの検出信号を入力し、こうした検出信号や図示しない操作盤からの運転条件設定パラメータに応じて、バルブ183等の種々のバルブ駆動制御、ボイラ120等の機器の駆動制御を実行する。
【0046】
次に、本実施形態の加水分解処理装置100で行う加水分解処理プロセスについて説明する。図2は、この加水分解処理プロセスの一例の工程を表す工程図である。加水分解処理の説明に先立ち、この加水分解処理を行うために加水分解処理装置100が実行する処理について説明する。
【0047】
制御装置170は、水蒸気導入管180のセンサ190、ボイラ120のセンサ192、耐圧容器110の温度センサ200および圧力センサ201の検出信号に基づき、ボイラ120の運転状態(水蒸気生成量、圧送量等)を制御する。これにより、加水分解処理装置100は、耐圧容器110が安定した温度及び圧力(例えば200℃/2MPa)の水蒸気で充満されるよう、水蒸気を圧送する。この場合、耐圧容器110への水蒸気の導入初期においては、生ゴミとの接触による冷却を考慮して、上記の温度より約10℃程度高めの水蒸気を導入するようにすることもできる。
【0048】
制御装置170は、冷却装置150における第2タンク152の温度制御を行う。つまり、水蒸気導入管180に設けた分流バルブ189のバルブ開度調整を行い、第2タンク152の冷却水温度を、既述した50〜80℃の所定の温度、例えば80℃に調整する。この温度調整に際しては、第2タンク152に設けた図示しない温度センサの検出信号を用いる。第2タンク152のタンク容量は、耐圧容器110の胴回りの熱交換釜140、詳しくはその流体導入部141を満たすに足りる容量であることから、耐圧容器110の内容積(本実施形態では、約10m3)に比して十分に小さく、0.5m3程度である。しかも、調整温度は50〜80℃と、耐圧容器110に導入する水蒸気温度(約200℃)に比して低温であることから、第2タンク152の冷却水温度調整のために分流バルブ189から熱交換用配管188に分流させる水蒸気量も少量である。よって、上記したように水蒸気を分流させても、水蒸気導入による耐圧容器110の昇温には影響がない。
【0049】
加水分解処理装置100は、制御装置170にて上記した機器制御を実行しつつ、図2に示す加水分解処理を行う。この加水分解処理プロセスでは、まず、生ゴミが廃棄物投入ホッパ160に投入される(ステップS100)。生ゴミの導入に続き、制御装置170の制御下、廃棄物投入ホッパ160は、投入された生ゴミを攪拌しつつ投入口111まで搬送すると共に、この生ゴミに、アキュムレータ198に蓄積済みの水蒸気を噴霧して生ゴミの昇温を図る(ステップS110)。アキュムレータ198は、加水分解処理完了後の後述のステップ150にて高温状態のままの水蒸気を蓄積するので、制御装置170によるバルブ199の開弁制御により、アキュムレータ198内の高温水蒸気を噴霧して生ゴミの昇温を図る。水蒸気は、アキュムレータ198での蓄積の間に温度低下を起こすが、次回の加水分解処理までの期間では降温程度も少ないため、生ゴミの昇温には差し支えない。
【0050】
ステップS110に続き、制御装置170は、投入口111を開口開閉機器114により開放し、この投入口111に廃棄物投入ホッパ160から生ゴミを昇温状態のまま耐圧容器110に投入する(ステップS120)。続いて、制御装置170は、投入口111を閉鎖した後、所定時間に亘ってバルブ136を開弁制御し、この間において、コンプレッサ135から耐圧容器110に加圧エアーを導入する(ステップS130)。この加圧エアー導入により、次に行う水蒸気導入による耐圧容器110の高圧化を促進させる。
【0051】
続いて、制御装置170は、水蒸気導入管180の最上流のバルブ183と、分岐水蒸気導入管180a〜180c等のそれぞれのバルブを開弁制御し、耐圧容器110に、ボイラ120で生成した高温高圧(200℃/2MPa)の水蒸気を導入すると共に、耐圧容器内の攪拌羽根113をモータ116にて回転させ投入済みの生ゴミを攪拌するとともに磨り潰す(ステップS140)。こうした高温高圧の水蒸気導入により、耐圧容器110の内部では、投入済みの生ゴミが高温高圧の水蒸気に触れ、水蒸気と該水蒸気由来の熱水の持つ熱により生ゴミが加水分解処理される。そして、攪拌羽根113による生ゴミの攪拌により、投入済みの生ゴミを満遍なく高温高圧の水蒸気と熱水に接触させつつ、生ゴミへのより一律な熱の伝搬を図り、さらに攪拌羽根113による物理的な作用により、加水分解処理を進行させる。攪拌羽根113による生ゴミの攪拌は、ステップS130の加圧エアー導入と並行して行うようにすることもできる。
【0052】
水蒸気導入管180と分岐水蒸気導入管180a〜180c等を介した高温高圧の水蒸気導入は、生ゴミの加水分解処理の間に亘って継続される。そして、排出口112では、分岐水蒸気導入管181を経て耐圧容器内の噴出孔182からの水蒸気導入が継続して行われている。よって、加水分解処理の間において、排出口112では噴出孔182からの水蒸気導入により生ゴミが耐圧容器内に押し戻されることから、排出口112の不用意な閉塞を招かないようにできる。よって、前記水蒸気生成源から水蒸気を前記耐圧容器の内部に圧送する工程では、前記水蒸気を前記耐圧容器の複数の導入箇所に導入しつつ、該複数の導入箇所の少なくとも一つを前記耐圧容器の前記排出口とし、前記排出口における前記生ゴミを前記耐圧容器内に押し戻してもよい。
【0053】
加水分解処理装置100の制御装置170は、高温高圧の水蒸気による生ゴミの加水分解処理を所定時間に亘って実行した後、バルブ183の閉弁制御、モータ116の停止制御を行って加水分解処理を終了させる。そうすると、制御装置170は、水蒸気還流管196のバルブ197の開弁制御、バルブ199の閉弁制御を実行して、耐圧容器110における残存水蒸気をアキュムレータ198に導き、このアキュムレータ198に高温のままの水蒸気を蓄積する(ステップS150)。この水蒸気蓄積は、バルブ197の閉弁により終了する。こうして蓄積された水蒸気は、ステップS110にて既述したように生ゴミの昇温に用いられる。アキュムレータ198の内容積は、耐圧容器110の内容積(約10m3)に比して小さいことから、アキュムレータ198への水蒸気蓄積後にあっても、耐圧容器110には依然として水蒸気が残存している。
【0054】
アキュムレータ198への水蒸気蓄積が完了すると、制御装置170は、冷却装置150から熱交換釜140の流体導入部141に冷却水を導入する(ステップS160)。この冷却水導入は次のように行う。
【0055】
まず、冷却水排出管142のバルブ144を閉弁制御して、流体導入部141を冷却水で満たす。それ以降は、排出側のバルブ144と導入側のバルブ155を開弁制御して、冷却装置150の冷却水を流体導入部141に循環供給する。
【0056】
制御装置170は、冷却水導入当初の期間では、混合バルブ153による流量比を、第2タンク152の側を100%、第1タンク151の側を0%とし、その後、第2タンク152については流量を低減し、第1タンク151については流量を増大させる。そして、冷却水導入の終期においては、第2タンク152の側を0%、第1タンク151の側を100%とする。よって、流体導入部141に循環供給される冷却水の温度は、冷却水導入当初の期間では、第2タンク152の冷却水温度(約80℃)となり、その後は、徐々に低下し、冷却水導入の終期では、第1タンク151の冷却水温(常温)となる。こうした冷却水循環がなされることから、熱交換釜140、詳しくは流体導入部141は、耐圧容器110との間で熱交換(冷却)を行うに当たり、当初は、耐圧容器110の内部温度との差が小さい温度で冷却しつつ、徐々により低い温度の冷却水で冷却する。この冷却は、耐圧容器110の内部の環境が約100℃程度になるまで継続することが望ましい。
【0057】
こうした耐圧容器110の冷却に続いては、水蒸気放出管193のバルブ194を開弁制御して,冷却完了時点で耐圧容器110内に残存している水蒸気を総て脱気タンク(図示せず)に排出する(ステップS170)。この水蒸気放出は、上記したように温度及び圧力とも低下した状態で行われることになる。
【0058】
続いて、制御装置170は、開口開閉機器115を駆動して排出口112を開放し、加水分解物を耐圧容器110から排出する(ステップS180)。加水分解物が排出されると、制御装置170は、排出口112を閉鎖して次回の加水分解処理に備える。排出された加水分解物は、図示しないベルトコンベヤ等にて搬送される。
【0059】
制御装置170は、ステップS170による残存水蒸気の脱気タンクへの排出が終わると、上記の加水分解物の排出と並行して次回の加水分解処理に備えて耐圧容器110の昇温に取りかかる。即ち、制御装置170は、耐圧容器110の冷却のために熱交換釜140(詳しくは、流体導入部141)に導入していた冷却水を、冷却水排出管142のバルブ144を開弁制御することで冷却装置150の第1タンク151と第2タンク152に回収する(ステップS190)。次いで、バルブ144を閉弁制御して流体導入部141を密閉状とした上で、流体導入部141に分岐水蒸気導入管185を経て水蒸気を導入し(ステップS200)、耐圧容器110をその胴回り周囲の流体導入部141により昇温させる。なお、こうして導入された水蒸気は、既述したステップS160における冷却水導入に際して、流体導入部141の水蒸気排出管143から大気放出されるので、冷却水導入に支障はない。
【0060】
以上説明した加水分解処理装置100では、約200℃/2MPaと言う高温高圧の水蒸気及び熱水の水成分と熱にて生ゴミを耐圧容器110にて加水分解処理するに際し、耐圧容器110にその投入口111から生ゴミを投入し、この耐圧容器110の内部には、水蒸気導入管180や分岐水蒸気導入管180a〜180c等を経て上記高温高圧の水蒸気をボイラ120から圧送する。こうした水蒸気圧送により、耐圧容器110の内部を、投入済みの生ゴミが圧送された高温高庄の水蒸気に触れ、水蒸気及び熱水の持つ熱により生ゴミが加水分解処理される。上記高温高圧の水蒸気を導入済みの耐圧容器110内で攪拌羽根113により生ゴミを磨り潰すことで、生ゴミを満遍なく加水分解処理に接触させつつ、生ゴミへのより一律な熱の伝搬を図る。そして、水蒸気及び熱水の水成分とその熱による加水分解処理を進行させる。
【0061】
こうした加水分解処理の進行を図るに当たり、ボイラ120の生成した水蒸気をその圧送過程において蒸気加熱ヒータにより加熱して、約200℃/2MPaと言う高温高圧の水蒸気を耐圧容器110に継続して導入してもよい(ステップS140)。このような高温高圧の水蒸気の生成及び圧送をボイラにて担うには、ボイラに高い能力が求められるが、そのボイラ能力には限界があるので、上記したような高温高圧の水蒸気を安定して継続導入することが難しいが、上記したように蒸気加熱ヒータによる水蒸気加熱を行うことで、高温高圧の水蒸気を安定して継続導入できる。こうした高温高圧水蒸気の継続導入を行う加水分解処理装置100によれば、耐圧容器110を、加水分解処理に望ましい処理環境下(約200℃/2MPa)に置くことができると共に、当該処理環境を高温高圧に容易に維持できる。この場合、蒸気加熱ヒータによる水蒸気加熱を行うに当たり、蒸気加熱ヒータによる加熱を受ける経路を蛇行経路として経路長を長くして加熱効率を高めたので、水蒸気の高温化、延いては耐圧容器110の処理環境維持に好適である。
【0062】
そして、以上説明したように耐圧容器110の内部での処理環境を、好ましくは加水分条件下、より好ましくは約200℃/2MPaといった高温高圧で維持した上で生ゴミを加水分解処理するので、高い処理能力を達成できる。この場合、生ゴミを磨り潰しつつ加水分解処理することが、処理能力の観点からより好ましい。また、加水分解処理であることから、粉塵、煤煙の発生がなく環境保全の点から好ましいばかりか、生ゴミ由来の液体を好気的に生物処理することが可能であり、さらには生ゴミ由来の固形分をペレット化して燃料として用いることも可能である。
【0063】
また、上記した高温高圧の水蒸気の導入に先立ち、耐圧容器110に加圧エアーを導入して耐圧容器110内を予め高圧環境としてもよい。この場合、加水分解処理の処理環境を高温高圧に容易に維持できる。しかも、この高温高圧の水蒸気導入に先立つ加圧エアーの導入により高圧環境とした上で、その後に耐圧容器110に高温高圧の水蒸気導入を図ることから、加水分解処理の処理環境推持がより一層簡便となる。
【0064】
加えて、前回の加水分解処理の際に耐圧容器110内に残存している高温の残存水蒸気を、加水分解処理に処す前の生ゴミに噴霧して(ステップS110)、当該生ゴミを予め昇温させておいてもよい。これによって、耐圧容器110の内部への生ゴミの投入による温度降下を抑制することができるので、加水分解処理の開始当初から処理環境を高温高圧に維持できる。しかも、この生ゴミの昇温は、アキュムレータ198に蓄えておいた残存水蒸気にて行うことから、生ゴミの昇温のための熱源を別途用意する必要がなく、構成の簡略化・省資源化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、水蒸気をボイラ120から耐圧容器110の内部に導入するための水蒸気導入管180を、複数の分岐水蒸気導入管180a〜180c等に分岐させて複数の導入箇所にて耐圧容器110の内部に水蒸気導入を行うようにし、その上で、一つの分岐水蒸気導入管181の噴出孔182を耐圧容器110の排出口112に設置する。分岐水蒸気導入管181を経て噴出孔182から噴射された水蒸気は、排出口112における生ゴミを耐圧容器110内に押し戻すように作用するので、高温高圧下での加水分解処理の最中に、生ゴミが排出口112を塞いで固化してしまうことや、排出口112が塞がれてしまうことを回避できる。よって、加水分解処理後の処理完了物の排出が円滑となり好ましい。
【0066】
更に、耐圧容器110の胴体部周囲を取り囲む中空の流体導入部141を備える熱交換釜140を配設する。そして、加水分解処理の完了後には、この流体導入部141に冷却水を導入して、この冷却水との耐圧容器110の熱交換を行って耐圧容器110を冷却しつつ、耐圧容器110内の残存水蒸気を耐圧容器110から排出するようにする。これによって、加水分解処理後の耐圧容器を冷却水との熱交換により短時間の内に効率よく冷却して内部の温度低下と圧力降下を促進した上で、残存水蒸気を排出できる。このため、既述した加水分解処理の処理環境維持に加え、次回の生ゴミの加水分解処理までの短縮化、延いては処理効率向上を図ることができる。したがって、前記耐圧容器の周囲に形成した中空の流体導入部に流体を導入して該導入した流体と前記耐圧容器との間の熱交換を可能とする熱交換釜に対して、前記加水分解処理の終了後に、前記耐圧容器に残存する残存水蒸気の温度より低温の流体を導入する工程と、前記加水分解処理の終了後に前記耐圧容器に残存する残存水蒸気を前記耐圧容器から排出する工程とを有していてもよい。
【0067】
しかも、熱交換釜140(流体導入部141)への冷却水導入に際しては、導入する冷却水の温度が徐々に低くなるようにするので、熱交換(冷却)の対象となる耐圧容器110を急激な温度変化(温度低下)に晒さないようにできることから、耐圧容器の耐久性確保の観点において好ましい。こうした冷却水温度の調整に当たっては、耐圧容器110に導入される水蒸気の熱を熱交換用配管188にて利用するので、エネルギー効率の上から、好ましい。
【0068】
また、熱交換釜140(流体導入部141)への冷却水導入に加え、次回の前記生ゴミの加水分解処理に際して、熱交換釜140(流体導入部141)に導入済みの冷却水の排出を行った後、ボイラ120の生成した水蒸気を前記熱交換釜に導入するようにすることもできる。こうすれば、次回の加水分解処理では、熱交換釜に導入した水蒸気との熱交換によっても耐圧容器を昇温できるので、次回の加水分解処理の環境維持に対して寄与できる。
【0069】
以上、本実施形態の(a)工程の一態様について図に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記の説明では、耐圧容器110における処理環境維持に際して、蒸気加熱ヒータによる水蒸気の加熱、コンプレッサ135による事前の加圧エアー導入、残存水蒸気を用いた次回処理用の生ゴミの昇温を併用するが、これらを、耐圧容器110の内容積や、生ゴミの種類、加水分解処理の際の環境(温度・圧力)に応じて、適宜選択して採用することもできる。さらに、本発明の知見に基づいて、耐圧容器の内容積に応じて当業者が設定した条件も、本発明の範囲に包含される。
【0070】
生ゴミの加水分解処理により液体と固形分とからなる加水分解物が得られる場合は、加水分解物から液体を固液分離することなく、そのまま(c)工程の生物処理に供してもよいが、余剰汚泥の発生量を少なくする観点から、加水分解物から液体を分離し、得られた液体を(c)工程に供することが好ましい。この場合、本実施形態は、(a)工程で得られた加水分解物から液体を分離し、得られた液体を(c)工程に供給する工程((b)工程)をさらに含むこととなる。
【0071】
次いで、(b)工程について説明する。
加水分解物から液体を分離するための固液分離の手段としては、例えばフィルタープレス、凝集沈殿、メッシュ(例えば0.9mmの網目)、スクリュープレス、スリット(例えば0.15mm幅のスリット)等の公知の手段が挙げられる。
【0072】
固液分離により加水分解物から分離された固形分は、そのまま焼却処分してもよく、あるいは、例えば、乾燥及びペレット化を経て、固形燃料とすることができる。
【0073】
本願において、加水分解処理後の固液分離とは、加水分解物から、生物処理に適した液体を分離することをいう。固液分離することなく加水分解物がそのまま生物処理に供されると、固形分の一部が生物処理されることなくSS(浮遊物質)分として蓄積され、余剰汚泥の発生率が高くなるおそれがある。固液分離により生物処理に適した液体を分離して、当該液体のみを生物処理に供することにより、生ゴミの処理効率を高めることができる。
【0074】
加水分解物又は固液分離後の液体をオゾン処理してもよい。このオゾン処理により、液体中の油分が分解される。その結果、液体の生物処理における汚泥への負荷を下げることができ、より安定して生物処理を行うことができる。更に、オゾン処理により液体の脱色を行うことができる。オゾン処理の方法としては、公知の処理方法が挙げられる。
【0075】
加水分解物、加水分解物を固液分離して得られた液体、又は必要に応じてさらにオゾン処理された液体が(c)工程に供される。この場合において、例えば流量調整槽(バッファー槽)を設けて、この槽にて、加水分解処理後に耐圧容器から脱気タンクへ排出された水蒸気と上記液体とを混合した後、(c)工程に供してもよい。
【0076】
以下、本発明における(c)工程について説明する。
(c)工程における処理対象である加水分解物は、(a)工程で得られたものでもよく、(b)工程で得られたものでもよい。
【0077】
本工程における好気的な生物処理とは、例えば好気性細菌による好気的な生物処理である。具体的には、例えば好気性細菌を含む活性汚泥の存在下、空気等で曝気しながら処理対象物を生物処理する方法が挙げられる。
【0078】
(c)工程により、導入された液体中の成分が処理される。生物処理の際に、液体中の成分の一部が汚泥中の菌叢等により消費されて二酸化炭素などのガスとして系外に放出され、残部が汚泥中に取り込まれる。本実施形態では、液体中の成分を例えば、TOC負荷(kg/日)で3〜6kg/日のときに、一日に2〜4kgの量の炭素を二酸化炭素として系外に放出することができ、余剰汚泥の発生率を40%以下に抑えることができる。
【0079】
更に、生物処理により増加した汚泥の一部を抜き取り、加水分解処理に供することにより、余剰汚泥の発生率を更に下げることができる。
【0080】
生物処理に用いられる汚泥としては、系外で馴養された後に生物処理に用いてもよく、又は予め馴養されることなく生物処理に用いられ、馴養と生物処理とを同時に行ってもよい。
【0081】
曝気を行う場合において、処理槽内の液体の溶存酸素量としては、0.5mg/L以上であることが好ましく、1mg/L以上であることがより好ましい。また、定常的に生分解処理を行うのに必要な溶存酸素量の観点から、上限が8mg/L以下であることが好ましく、7mg/L以下であることがより好ましく、6mg/L以下であることがさらに好ましい。かかる溶存酸素量は、DOメーターOM12(株式会社堀場製作所製)等を用いて測定することができ、処理槽内へ空気を送るファンの回転数の調整等により容易に制御することができる。溶存酸素量が足りない場合は酸素溶解装置を使用してもよい。
【0082】
本実施形態に用いられる活性汚泥中の好気性細菌としては、公知の活性汚泥法において通常見られる好気性細菌であれば特に限定されない。
【0083】
さらに本実施形態においては、処理槽における、生ゴミから分離された液体の分解時の臭気を防止することができる。臭気を防止できる理由として、通常、嫌気性細菌による生分解処理時には硫化水素、アンモニア等の臭気物質が発生するが、本実施形態では、処理槽内が好気性であることが臭気の防止に大きく寄与していると考えられる。
【0084】
本実施形態は、該生ゴミから分離された液体が含まれる処理槽内の溶存酸素量を制御する方法を採用してもよい。
【0085】
本実施形態において、生物処理を行う生物処理槽は、生ゴミを加水分解条件下で磨り潰して得られる加水分解物が含まれる槽であって、加水分解物から分離された液体を好気的に生物処理する槽である。具体的には、曝気槽などが処理槽として使用されるが、生物処理槽は、1つまたは複数を使用してもよく、廃液を溜めておく原水槽と組み合わせてもよい。
【0086】
生物処理後に得られる生物処理液から、例えば、膜処理により液体成分を分離して、膜処理液を得てもよい。本願において、この膜処理液を得る工程を(d)工程と称する。
【0087】
膜処理液について、その数平均分子量としては、例えば250〜2000の範囲である。また、膜処理液の重量平均分子量としては、例えば250〜3000である。膜処理液の上記平均分子量は、実施例に記載のGPC法による分子量分布の測定結果から算出することができる。
【0088】
生物処理液又は膜処理液の分子量分布を測定し、加水分解物のそれと比較することによって、生ゴミの処理の進行程度を評価することができる。分子量分布の比較の結果、加水分解物に比べて、AUCが例えば14%にまで減少する。
【0089】
以下、本実施形態に係る(c)工程及び(d)工程を図面に基づいて説明する。
生ゴミから分離された液体を、図3に示される処理プラントで処理する。以下、各部材の符号は、図3に基づく。具体的には、加水分解工程Aで得られた加水分解物を、一旦流量調整槽301に貯蔵し、次いで生物処理槽302に供給する。ここでの生物処理槽302は、曝気のための散気管303を具備する曝気槽である。なお、図3に示す処理プラントにおいては、生物処理槽302は一槽であるが、複数の生物処理槽302を設けてもよい。生物処理槽302においては、pH計304、DO計305及び/又はORP計306を設けて、各測定値をモニタリングしてもよい。生物処理槽302においては、25重量%水酸化ナトリウム又は18重量%硫酸を適宜添加することにより、pHを所定値に調整することができる。
【0090】
生物処理槽302においては、曝気下で攪拌しながら生物処理を行う。生物処理槽302には、例えば好気性細菌を含む活性汚泥が導入されている。なお、生物処理槽302に水位センサを設けて、生物処理槽302における液体の滞留時間を所定の時間に設定することができる。
【0091】
(d)工程をさらに実施する場合、生物処理槽302で処理された生物処理液を、膜処理槽311に供給する。膜処理において用いられる膜としては、本発明分野で用いられている公知の膜を特に制限すること無く採用することができ、中空糸膜でもよく、平膜でもよい。本実施形態においては、膜処理槽311は、生物処理液をろ過するための中空糸膜(例えば、1m2、東レ株式会社製、商品名:SUR134)10枚からなる中空糸膜ユニット312を設け、必要に応じて曝気するための散気管303を設けてもよい。散気管303からの曝気によって、膜処理槽311内が溶存酸素量を所定の程度(例えば2mg/L以上)に保つことができる。さらに、汚泥返送ライン307を設けて、膜処理槽311に蓄積する汚泥を生物処理槽302に戻してもよい。
【0092】
中空糸膜ユニット312は、膜処理槽311において、散気管303の直上に、散気管303からのエアー曝気を十分うけるように配置されることが好ましい。散気管303は膜処理槽311の下部に配置され、曝気により、膜処理槽311の全体を攪拌することができる。膜処理槽311において、曝気は、散気管303から供給されるエアーが中空糸膜ユニット312を通り、膜処理槽311の壁面上を降下する。
【0093】
膜処理槽311内の生物処理液、即ち汚泥と処理対象物との混合液におけるMLSSとしては、膜処理槽311内を数回測定した平均値で10000mg/L以上が好ましく、20000mg/L以上がより好ましい。また、MLVSSの平均値は10000mg/L以上が好ましく、20000mg/L以上がより好ましい。
【0094】
膜処理槽311での膜処理により分離された液体成分(膜処理液)は、例えば、一旦処理水槽313に貯蔵してもよい。処理水槽313における膜処理液の生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素量、全リン量及び全有機炭素量(TOC)のそれぞれを測定してもよい。膜処理液が、下水等への放流基準を満たすことを確認した後、膜処理液を下水C等へ放流することができる。あるいは、システムの装置の洗浄液や、水蒸気製造用の水として利用する水再生プロセスBに供給してもよい。BODは、JIS K 0102 21に記載の測定方法に従って測定し、CODはJIS K 0102 17に記載の測定方法により測定する。TOCは、JIS K0102 22.1に記載の測定方法により測定する。
【0095】
全窒素量(T−N)は、JIS K 0102 45.2に記載の測定法により測定する。全リン量(T−P)は、JIS K 0102 5に記載の前処理を行い、シーケンシャル型高周波プラズマ発行分光装置(ICPS-7500、島津製)を用いてICP発光分光分析法で測定する。
【0096】
本実施形態においては、(d)工程で得られた膜処理液を、逆浸透(RO)処理、ヒドロキシアパタイト(HAP)処理、凝集沈殿処理、及びオゾン処理からなる群より選択される一種以上の処理により、さらに処理してもよい。RO処理により、膜処理液中の不純物を高度に除去することができる。HAP処理を行うことにより、膜処理液に含まれるリンを回収することができる。さらに、例えばRO処理前の膜処理液中に次亜塩素酸を添加し、膜処理液中に残存する有機物を除去してもよい。
【0097】
HAP処理された液体成分は下水に放流するのに適した水質となっており、そのまま下水に放流することができる。RO処理により得られる非濃縮液の一部を、例えば、本方法を利用するシステムの装置の洗浄液として再利用した後、流量調整槽301に導入してもよい。非濃縮液の残部をボイラにより加熱して水蒸気を製造し、加水分解に利用してもよい。また、加水分解前、加水分解中又は加水分解後の水蒸気から例えば熱交換器を用いて熱を取り出し、前記固液分離後に得られる固形分の乾燥に用いてもよい。加水分解後に排出される水蒸気を、例えば水道水と混合して冷却した後に脱気した後、流量調整槽301に導入してもよい。
【実施例】
【0098】
次に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
生ゴミは供給ロット間の組成が大きく異なるのが通常なので、下記の組成の生ゴミを標準生ゴミとして調製し、以下の実験に用いた。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例1
<加水分解の条件検討>
小型の耐圧容器(容積:2L)を用いて、生ゴミの加水分解に影響する種々の要因を検討した。
被処理物:400gの標準生ゴミ
耐圧容器の設定温度:200℃の最高温度
加水分解時の耐圧容器の圧力:1.8〜2.0MPa
攪拌羽根の回転:42rpm
攪拌羽根の先端と耐圧容器の内周面との間隔:0.5〜1cm
反応時間:5分間、10分間、20分間及び30分間
脱気時間:5分間及び15分間(脱気終了時の容器内の圧力:0.02MPa)
測定項目:生ゴミの液状化率並びに液体のBOD、COD及び色度
【0101】
生ゴミの液状化率は、次の式にて求めた。
液状化率=(加水分解前の生ゴミの固体有機物重量(g)−加水分解後の生ゴミの固体有機物重量(g))/加水分解前の生ゴミの固体有機物重量(g)×100(%)
固体有機物重量=SS(g)×熱灼減量(%)
SS:昭和46環告第59号付表8に記載の方法で測定。
熱灼減量:600℃で加熱した時の重量法によって測定。
【0102】
加水分解後の液体のBOD及びCODは、上記の方法によって測定した。加水分解後の液体の色度は、色度計(日本電色、Water Analyzer 2000)を用いて測定した。
【0103】
結果をまとめたものを図4〜図6に示す。
図4は、各反応時間及び脱気時間における標準生ゴミの液状化率を示すグラフである。図4において、ライン1は15分間の脱気時間のデータを示し、ライン2は5分間の脱気時間のデータを示す。図4から、本実験条件において、標準生ゴミの液状化率は、10分間を境に低下する傾向があることが分かった。また、15分間の脱気時間よりも5分間の脱気時間の方が、標準生ゴミの液状化率が高いことが分かった。
【0104】
図5は、各反応時間における、標準生ゴミの加水分解物の固液分離後の液体のCODに対するBODの比率(BOD/COD)を示すグラフであり、縦軸はBOD/CODの値を示す。図6は、各反応時間における、当該液体の色度を示すグラフであり、縦軸は色度の測定値を示す。図5から、当該液体のBOD/CODは、5分間を境に低下する傾向が見られた。さらに図6から、標準生ゴミの加水分解物後の液体の色度は、5分間を境に上昇する傾向が見られた。ここで、液体のBOD/CODの値が高いほど、例えば当該値が0.6以上であると、さらには液体の色度が小さいほど、例えば当該値が12000以下であると、その液体は生物処理されやすいとされていることから、5分間を境に、液体は生物処理されにくい傾向があることが分かった。
【0105】
さらに表1には、30分間の反応時間、15分間の脱気時間で攪拌羽根を作動させて標準生ゴミを加水分解処理した際の、標準生ゴミの組成の変化を示した。表1からは、糖質を含むその他成分、タンパク質、灰分の一部が液状化し、脂質及び食物繊維のほとんどは、加水分解物の固形分側にあること、即ち液状化しないか又はしにくいことが分かった。なお、ここでの加水分解物をろ紙でろ過することにより固液分離を行い、表1に示す分析方法で各成分の分析を行った。
【0106】
実施例1の結果について、下記に考察する。
反応時間が5〜10分間の間では、生ゴミの液状化率が高い値となった。更に、脱気時間を5分間にすることにより、反応時間に起因する液状化率の低下を抑えることができた。
【0107】
反応時間を5分間にすることにより、BOD/CODの値を高くすることができるとともに色度の値を小さくすることができ、生物処理に適した生ゴミの加水分解処理を行うことができた。尚、標準生ごみ1kg当たりの総発熱量を測定したところ、温度200℃、反応時間5〜30分間、脱気時間5分間の加水分解後で23〜27MJ/kgであった。さらに、上記加水分解物を固液分離して得られた固形分を乾燥させ、ペレット化した。得られたペレットの熱量は、約24.5MJ/kgであり、燃料として使用できることが分かった。
【0108】
さらに、蒸気排出時の容器内の圧力の低下速度について検討すると、5分間をかけて2MPaから0.02MPaまで低下させた場合は、15分間をかけて2MPaから0.02MPaまで低下させた場合に比べて温度が100℃になるまでの時間を短縮することができた。そのため、上記5分間の場合は15分間の場合に比べて液状化率の低下を抑えることができた。
【0109】
実施例2
<加水分解時の羽根による生ゴミの磨り潰し効果の確認>
小型の耐圧容器(容積:2L)を用いて、生ゴミの加水分解に対する攪拌羽根の影響を検討した。
被処理物:400gの標準生ゴミ
耐圧容器の設定温度:200℃の最高温度
加水分解時の耐圧容器の圧力:1.8〜2.0MPa
攪拌羽根の回転:0rpm又は42rpm
攪拌羽根の先端と耐圧容器の内周面との間隔:0.5〜1.0cm
反応時間:10、30分間
脱気時間:15分間
測定項目:生ゴミの液状化率
【0110】
結果をまとめたものを図7に示す。
図7は、各反応時間における攪拌羽根の回転の有無による標準生ゴミの液状化率を示すグラフである。図7において、ライン3は攪拌羽根を回転させた時のデータであり、点4は攪拌羽根を回転させなかった時のデータである。図7から、攪拌羽根の磨り潰し効果、攪拌効果によって、液状化率の上昇と反応時間の短縮を図ることができることが分かった。30分間の反応時間後の耐圧容器の内容物を目視で観察したところ、攪拌羽根を回転させた場合は、内容物は一様に液体であることが確認できたが、攪拌羽根を回転させなかった場合は、肉眼で確認できる程度の大きさの固形物が浮遊していることが確認できた。
【0111】
また、上記加水分解において使用される水蒸気量に相当する水を標準生ゴミに加えて、加熱することなく攪拌のみを行った場合の標準生ゴミの液状化率は40%であった。この結果と、図7の結果とより、攪拌のみでは液状化率は40%であるが、加熱のみによって70%にまで高めることができ、羽根による磨り潰しを加えることにより80%にまで高めることができた。
【0112】
実施例3
<二酸化炭素の発生量の測定>
本実施形態の方法によって得られた標準生ゴミの加水分解物を、固液分離した。次いで得られた液体を、5槽からなる生物処理槽及び1槽の膜処理槽によって処理した。両槽において曝気を行い、生物処理槽の1槽あたりの曝気量を0.78m3/min、膜処理槽の曝気量を0.42m3/minとした。曝気される気体(空気)及び両槽の上部から放出される気体について、二酸化炭素用の検知管(気体検知管二酸化炭素用No2LL、ガステック製)を用いてその濃度を測定した。実験は2回実施し、それぞれについての二酸化炭素の濃度を測定した。結果を以下に示す。
【0113】
・1回目
曝気される気体:500ppm
第一槽の生物処理槽上部:5000ppm
膜処理槽上部:測定せず
・2回目
曝気される気体:500ppm
生物処理槽上部:4500ppm
膜処理槽上部:1500ppm
【0114】
上記の結果から、本実施形態における生物処理槽内では、好気的条件下で、処理対象物から有機物が二酸化炭素として効果的に除去されていることが分かった。具体的には、生物処理槽に供給される一日の曝気量と、生物処理槽から排出される気体の量を同等と仮定すると、1回目の実験での一日あたりの二酸化炭素発生量は11.45kg、即ち炭素量に換算して3.12kgであり、2回目の実験での二酸化炭素発生量は10.01kg、即ち炭素量に換算して2.73kgであった。このことから、本実施形態の加水分解方法によって得られた加水分解物は、好気的に生物処理されやすいことが分かった。
【0115】
実施例4
<余剰汚泥発生率の算出>
上記の実施例3において、1回目の実験及び2回目の実験で発生した余剰汚泥の発生率を、下記の式で測定した。
余剰汚泥発生率=(乾燥ケーキ搬出量)/〔(流入BOD量−流出BOD量)+(流入SS量−流出SS量)±生物処理槽内MLSS発生量〕
【0116】
その結果、1回目の余剰汚泥発生率は38%であり、2回目のそれは28%であった。従来の下水等の生物処理における余剰汚泥発生率は50%前後であるのに対して、本実施形態の方法では、それを40%以下に抑えることができた。
【0117】
実施例5
<生物処理前後のサンプルの成分比較>
上記の実施例3において生じた、加水分解物を固液分離して得られた生物処理前の液体、及び膜処理槽を経て得られた生物処理後の膜処理液について、糖類の測定、有機体炭素及び無機体炭素の測定、炭素及び窒素の元素分析、並びに分子量分布の測定を行った。以下の成分比較において、生物処理後の液体は、生物処理前の液体が生物処理されて膜処理槽から排出されるタイミングで採取した。
【0118】
・糖類の測定
多糖類を測定するために、次のようにして測定用試料を調製した。
標準生ゴミの生物処理前由来の液体、及び生物処理由来の液体をそれぞれ100μL分取し、溶媒を留去した。得られた残渣に2mol/Lのトリフルオロ酢酸を加えて減圧封管し、約100℃で2時間加熱して加水分解を行った。
【0119】
加熱終了後、管を室温にまで戻した後、酸を留去して水で5mLにフィルアップし、0.45μmのメンブランフィルターでろ過を行い、得られた溶液を測定用試料とした。
【0120】
単糖類、二糖類を測定するために、次のようにして測定用試料を調製した。
上記と同様に、それぞれの液体を2mLずつ分取し、水で20mLにフィルアップした。次いで0.45μmのメンブランフィルターでろ過を行い、得られた溶液を測定用試料とした。
【0121】
次のような測定条件で、分析を行った。
使用装置:日本ダイオネクス製、イオンクロマトグラフ ICS−3000
検出器:電気化学検出器
カラム:日本ダイオネクス製、CarboPacPA1(4mmφ×250mm)
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相A:水
移動相B:10mmol/Lの水酸化ナトリウム水溶液
移動相C:200mmol/Lの水酸化ナトリウム水溶液
グラジエント条件:表2のとおり
【0122】
【表2】

【0123】
分析時間:30分間
注入間隔:55分間
流量:1mL/min
注入量:25μL
標準試料:グルコース、マンノース、ガラクトース及びスクロース
【0124】
分析結果を以下に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
上記の結果から、生物処理後の試料には、単糖類、二糖類及び多糖類の全てがほとんど含有されていないことが分かった。このことから、生物処理により、加水分解物中の糖類をほとんど除去できることが分かった。
【0127】
・有機体炭素及び無機体炭素の測定
有機体炭素及び無機体炭素の測定は、JIS K0102 22.1に規定の方法により実施した。結果を下記に示す。表4中の値は、2回の試験結果の平均値を示す。
【0128】
【表4】

【0129】
上記の結果から、生物処理後の試料の有機体炭素は、処理前の有機体炭素の約9分の1であった。このことから、生物処理により、加水分解物の有機体炭素分の約90%を除去できることが分かった。
【0130】
・炭素及び窒素の元素分析
炭素及び窒素の元素分析の測定装置及び測定条件は次のとおりである。
測定装置:酸素循環燃焼・TCD検出方式のNCH定量装置、スミグラフNCH−22F型(住化分析センター製)
測定条件
反応温度:850℃
還元温度:600℃
供試料量:約5mgを採取し、ミクロ天秤で秤量
分離/検出:ポーラスポリマービーズ充填カラム/TCD
標準試料:元素定量標準試料アセトアニリド
【0131】
結果を下記に示す。表5中の値は、2回の試験結果の平均値を示す。
【0132】
【表5】

【0133】
上記の結果から、生物処理後の試料中の炭素量は、処理前のそれの約30%に減少していた。このことから、生物処理により、炭素を含む成分の約70%を除去できることが分かった。
【0134】
・生物処理前後のサンプルの分子量分布の比較
本実験において、液体の分子量分布の測定は、次のようにして行った。
分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を採用した。
試料を溶離液で10倍希釈後、0.45μmメンブランフィルターにてろ過したものを測定溶液とした。
【0135】
測定装置は次のものを用いた。
システムコントローラー:島津製作所(株)製、SCL-10Avp
ポンプ:島津製作所(株)製、LC-10ADvp
カラムオーブン:島津製作所(株)製、CTO-10Avp
デガッサ:島津製作所(株)製、DGU-12A
オートサンプラー:島津製作所(株)製、SIL-10AF
RI(示差屈折計)検出器:島津製作所(株)製、RID-10A
データ処理ソフト:東ソー(株)製、GPC-8020 model II
【0136】
測定条件は次のとおりとした。
カラム:TSKgel GMPWXL×2+G2500PWXL×1(φ7.8mm×30mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
注入量:200μL
分子量標準:プルラン、グルコース
【0137】
結果を表6及び図8に示す。図8は、液体の微分分子量曲線を示すグラフである。ここで、横軸は分子量を示し、縦軸はピークの強度を示す。ライン5は生物処理前の分子量分布のデータを示し、ライン6は生物処理後の分子量分布のデータを示す。表6において、分子量分布を3つの領域に分け、各領域について平均分子量等を測定した。また、減少率(%)は、下式により求めた。表6中の値は、2回の試験結果の平均値を示す。
減少率(%)=(生物処理後の面積(mV))/(生物処理前の面積(mV))×100
【0138】
【表6】

【0139】
表6より、生物処理により、上記の多糖類等の量を処理前の約14%にまで減少させると共に、低分子化することができた。図8からも、生物処理後の試料の分布曲線のピークの位置が低分子側に移動していることが分かった。また、図8の生物処理前の試料の分布曲線から、加水分解処理により、分子量70000、より詳しくは64000を超える画分が実質的に存在しないことが分かった。本実施例では、硝酸ナトリウム水溶液を用いて多糖類、有機酸、アルコール、及びタンパク質の一部の分子量を測定した。
【0140】
実施例6
<生物処理の確認>
上記の実施例3において、1回目の実験及び2回目の実験で生物処理された生ゴミの水質を確認した。表中の各数値は、処理期間を通しての平均値である。
【0141】
表7に、1回目の実験にて18日間処理された例のデータを示す。本実験において、(a)工程における反応温度は平均185℃、反応時間は30分間とした。処理対象物の量は平均で一日あたり110.6kgの給食残渣を加水分解処理したものを使用した。
【0142】
【表7】

【0143】
表8に、2回目の実験にて28日間処理された例のデータを示す。本実験において、(a)工程における反応温度は平均185℃、反応時間は30分間とした。処理対象物の量は平均で一日あたり114.6kgの給食残渣を加水分解処理したものを使用した。
【0144】
【表8】

【0145】
各分析項目における測定方法は次のとおりである。
・nHEX:鉱物油類は、昭和49年環告第64号 付表4に記載の方法で測定した。
・nHEX:動植物油脂類は、昭和49年環告第64号 付表4に記載の方法で測定した。
・SSは、昭和46年環告第59号 付表8に記載の方法で測定した。
・ヨウ素消費量は、昭和37年厚生省・建設省令 第1号 第2による測定値であり、表中の数値の単位はmg/Lである。
・硝酸態窒素は、JIS K 0102 43.2に記載の方法で測定した。
・亜硝酸態窒素は、JIS K 0102 43.1に記載の方法で測定した。
・アンモニア態窒素は、JIS K 0102 42.2に記載の方法で測定した。
【0146】
上記の結果から、本実施形態の方法である1回目及び2回目の処理の両者において、得られた膜処理液を下水に放流するのに適した水質にまで処理できることが確認できた。また、一般的な下水処理場では1日当たりBOD容積負荷で0.4(kg/m3・日)程度の処理が行われるが、本実施形態ではBOD容積負荷で1.44(kg/m3・日)の処理が可能であり、一般的な処理に比べて処理効率が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の生ゴミの処理方法は、その由来、組成に関わらず、生ゴミの処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 ライン
2 ライン
3 ライン
4 点
5 ライン
6 ライン
100 加水分解処理装置
110 耐圧容器
111 投入口
112 排出口
113 攪拌羽根
115 開口開閉機器
115 開口開閉機器
116 モータ
120 ボイラ
135 コンプレッサ
136 バルブ
140 熱交換釜
141 流体導入部
142 冷却水排出管
143 水蒸気排出管
144 バルブ
145 バルブ
150 冷却装置
151 第1タンク
152 第2タンク
153 混合バルブ
154 冷却配管
155 バルブ
160 廃棄物投入ホッパ
170 制御装置
180 水蒸気導入管
180a 分岐水蒸気導入管
180b 分岐水蒸気導入管
180c 分岐水蒸気導入管
181 分岐水蒸気導入管
182 噴出孔
183 バルブ
184 バルブ
185 分岐水蒸気導入管
186 バルブ
187 減圧機器ユニット
188 熟交換用配管
189 分流バルブ
190 センサ
192 センサ
193 水蒸気放出管
194 バルブ
195 サイレンサ
196 水蒸気還流管
197 バルブ
198 アキュムレータ
199 バルブ
200 温度センサ
201 圧力センサ
301 流量調整槽
302 生物処理槽
303 散気管
304 pH計
305 DO計
306 ORP計
307 汚泥返送ライン
311 膜処理槽
312 中空糸膜ユニット
313 処理水槽
A 加水分解工程
B 水再生プロセス
C 下水
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a):生ゴミを、液体を含む処理対象物に変換する工程であって、前記液体の硝酸ナトリウム可溶性画分がゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量70000を超える画分を実質的に含まない工程、及び
(c):得られた処理対象物を好気的に生物処理して生物処理液を得る工程、
を含む、生ゴミの処理方法。
【請求項2】
(a)工程において、液体の硝酸ナトリウム可溶性画分がゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布において分子量140〜64000の画分を含む、請求項1に記載の生ゴミの処理方法。
【請求項3】
(a)工程において処理対象物は前記液体と固形分とを有し、
(b):(a)工程で得られた処理対象物から前記液体を分離し、該液体を(c)工程に供給する工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の生ゴミの処理方法。
【請求項4】
(d):(c)工程で得られた生物処理液から膜処理により液体成分を分離し、膜処理液を得る工程をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生ゴミの処理方法。
【請求項5】
(a)工程は加水分解により生ゴミを処理対象物に変換する工程である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の生ゴミの処理方法
【請求項6】
(a)工程における加水分解の反応時間を3〜30分間とする、請求項5に記載の生ゴミの処理方法。
【請求項7】
(a)工程における加水分解処理後の水蒸気の排出時間を15分間以下とする、請求項5又は請求項6に記載の生ゴミの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62610(P2011−62610A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213653(P2009−213653)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】