説明

生タイヤ予熱方法

【課題】予熱の過程で生タイヤの形状変化を抑えつつ、生タイヤの成長を抑制する生タイヤ予熱方法を提供する。
【解決手段】生タイヤ1を構成する金属部材の近傍に加熱コイル12を配置し、加熱コイル12を生タイヤ1に対して相対的に回転させて、生タイヤ1を予熱する生タイヤ予熱方法であって、生タイヤ1の内側から内圧を与えると共に、ゴムチューブ21により生タイヤのトレッド部Tをタイヤ内側に向かって押圧する方法とする。更に、ゴムチューブ22、23により生タイヤ1のショルダー部S及びサイドウォール部Wをタイヤ内側に向かって押圧する方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫成型用金型に入れる前に生タイヤを予熱する方法及びその装置に関し、より詳細には予熱時の生タイヤの成長を抑える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤ(グリーンタイヤとも呼ばれる)を加硫成型金型に入れ、生タイヤが加硫成型されて空気入りタイヤが完成する。トレッドやビードでは、他の部分に比べてゴムが厚いので、生タイヤが所望の温度に達するまで多くの時間を要していた。その結果、生産効率の低下を招いていた。
【0003】
このような問題を解決すべく、金型に入れる前に、生タイヤを予熱する方法が採用されている。生タイヤを加熱する方法には、大きく分けて輻射熱による方法と電磁誘導による方法とがある。後者の方法では、トレッドゴムの下に配置されたベルト層を構成するワイヤ、ビードコアを構成するワイヤなどの金属部材を電磁誘導により加熱し、前記金属部材の周辺のゴムの内部から加熱される。したがって、前者の方法に比べて短時間で生タイヤの予熱が完了する。例えば、特許文献1に記載された生タイヤ予熱装置が知られている。
【特許文献1】特願2004−130653号公報(第5〜7頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の生タイヤ予熱装置においては、タイヤ回転軸が鉛直方向になるように生タイヤが水平に載置され、上述した金属部材の近傍に加熱用コイルを配置している。生タイヤ又は加熱用コイルのうち、少なくとも一方を移動させることにより、加熱用コイルが生タイヤの周囲を回転し、タイヤ全周に渡って均一に加熱が可能となる。
【0005】
生タイヤは柔らかいので、予熱の過程で生タイヤが鉛直下方に垂れる下がり、生タイヤの形状が変化するおそれがある。そのため、生タイヤの内側(カーカス側)にブラダーを配置して、該ブラダーを膨らませて内側から内圧を与えて生タイヤの形状を保持することがある。
【0006】
しかし、内圧を与えて生タイヤの形状を保持しようとすると、予熱の過程で生タイヤ、特にトレッド部の中央が成長してしまってタイヤ直径が大きくなりすぎて、予熱後生タイヤが金型に入らないという問題が発生していた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、予熱の過程で生タイヤの形状変化を抑えつつ、生タイヤの成長を抑制する生タイヤ予熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明は、生タイヤを構成する金属部材の近傍に加熱コイルを配置し、前記加熱コイルを前記生タイヤに対して相対的に回転させて、前記生タイヤを予熱する生タイヤ予熱方法であって、
与圧手段により前記生タイヤの内側から内圧を与えると共に、押圧手段により前記生タイヤのトレッド部をタイヤ内側に向かって押圧することを特徴とする生タイヤ予熱方法である。
【0009】
本発明において、例えば押圧手段としてゴムチューブを採用した場合、ゴムチューブはタイヤ外側の所定の部位(例えば、トレッド部)を全周に渡って接触している。該ゴムチューブの内圧を大きくすることで、生タイヤのトレッド部はタイヤ内側に向かって押圧される。その結果、トレッド部の中央の成長が抑制され、タイヤ直径が大きくなることはなく、予熱後、生タイヤが金型に入らないという問題が解消される。
【0010】
また、押圧手段としては、生タイヤを変形させない程度の柔軟性があり、生タイヤの形状を維持できる材質(例えば発泡ゴムなどで、JIS K6253 A型硬度計で測定した硬度30〜50を有することが好ましい)で作られた押圧部材(リング形状が好ましい)を生タイヤに押圧する手段としてもよい。
【0011】
生タイヤの内側から内圧を与える与圧手段としては、生タイヤの内側にブラダーを配置し、該ブラダーを膨らませて内圧を与える手段、あるいは、タイヤの内部を密閉してタイヤ内に空気等で圧力を与える手段などがある。
【0012】
本願発明は、更に、第2の押圧手段により前記生タイヤのショルダー部及びサイドウォール部をタイヤ内側に向かって押圧する生タイヤ予熱方法でもある。
【0013】
更に、設けられたゴムチューブによりショルダー部及びサイドウォール部の成長も抑えられる。また、生タイヤより下方に配置されたゴムチューブにより、生タイヤの垂れ下がりをも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本願発明に係る生タイヤ予熱方法の実施の形態を説明する。図1は、本願発明の方法に使用される生タイヤ予熱装置の概略を示す断面図である。生タイヤ1は、回転装置12、13によりビード部が把持されて、回転軸Cが鉛直方向になるように生タイヤが水平に載置されている。タイヤ1の内側でベルト層2の近傍には加熱コイル11が配置されている。加熱コイル11により発生する磁界により、ベルト層2のワイヤが電磁誘導的に加熱され、その結果、トレッドゴムが加熱される。回転装置12、13により、生タイヤ1が回転されるので、タイヤ全周に渡って均一に加熱される。なお、更にビードコア3の近傍に加熱コイルを配置して、ビード部を加熱してもよい。また、加熱コイル11はパンタグラフ方式のリンク30に取り付けられた構造とし、生タイヤ1を装着時にはリンク30を縮め、生タイヤ1を装着後にはリンク30を伸ばして加熱コイル11を生タイヤに1に近づけることができる。
【0015】
生タイヤ1は柔らかいので、予熱の過程で生タイヤ1が鉛直下方に垂れ下がったり、形状が変形したりする。そのため、回転装置12、13により生タイヤ1の内側を密閉し、加圧装置(図示しない)により生タイヤ1内に内圧を与えて生タイヤ1の形状を保持している。
【0016】
ゴムチューブ21は、生タイヤ1のトレッド部Tの全周に渡って接触している。ゴムチューブ21内に気体(例えば空気)が充填されている。ゴムチューブ21の内圧を大きくすることで、ゴムチューブ21は、トレッド部Tをタイヤ内側に向かって押圧する。その結果、トレッド部Tの成長(特に中央部)が抑制され、タイヤ直径が大きくなることはなく、予熱後、生タイヤ1が金型に入らないという問題が解消される。
【0017】
また、図に示すように、更に、生タイヤ1のショルダー部Sに接触するゴムチューブ22a、22b、生タイヤ1のサイドウォール部Wに接触するゴムチューブ23a、23bを配置してもよい。同様に、ゴムチューブ22aなどに気体を充填しその内圧を高めて、ショルダー部S及びサイドウォール部Wをタイヤ内側に向かって押圧する。その結果、ショルダー部S及びサイドウォール部Wの成長も抑えられる。また、生タイヤ1より下方に配置されたゴムチューブ22b、23bにより、生タイヤ1の垂れ下がりをも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の方法に使用される生タイヤ予熱装置の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 生タイヤ
2 ベルト層
3 ビードワイヤ
11 加熱コイル
12、13 回転装置
21 ゴムチューブ
22a、22b ゴムチューブ
23a、23b ゴムチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを構成する金属部材の近傍に加熱コイルを配置し、前記加熱コイルを前記生タイヤに対して相対的に回転させて、前記生タイヤを予熱する生タイヤ予熱方法であって、
与圧手段により前記生タイヤの内側から内圧を与えると共に、押圧手段により前記生タイヤのトレッド部をタイヤ内側に向かって押圧することを特徴とする生タイヤ予熱方法。
【請求項2】
更に、第2の押圧手段により前記生タイヤのショルダー部及びサイドウォール部をタイヤ内側に向かって押圧する請求項1に記載の生タイヤ予熱方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44321(P2008−44321A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224484(P2006−224484)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】