説明

生体ポリマーの特性解析方法、生体ポリマーの特性解析装置、及び生体ポリマーの特性解析チップ

【課題】 ナノポアによる配列解析のマルチ化に際し、試料をナノポアにトラップする効率が必ずしも100%ではなく、トラップされていないポアの計測に無駄な時間を費やし、計測効率が低いという課題があった。
【解決手段】 試料に標識物質を結合し、ナノポアに標識物質付き試料をトラップする。標識物質を観察する装置を採用し、標識物質を観察し、個々のナノポアについて試料がトラップされているか否かを確認する。試料がトラップされているナノポアに対してのみ計測を行うことにより、計測効率を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズのポアが開いた薄膜によるDNA、RNAなどの核酸の配列解析等を行う装置及び方法に関する。特に、アレイ化されたナノポア、即ちマルチナノポアを用いる場合における前処理の効率化の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
次々世代DNAシーケンサとしてナノポアを用いる手法が注目を浴びている。中でも半導体材料に微細加工を施して作成したナノサイズのポア(以下ナノポア、あるいはポア)を持つ、固体ナノポアつき薄膜を用いたDNAの解析法が盛んに研究されている(非特許文献1)。このポアつき薄膜を用いるDNAの解析法は現在2種類提案されている。第1の手法は、封鎖電流方式である。例えばポアつき薄膜の両側に液槽を設け、それぞれの液槽に電極を設けて電解質溶液を満たし、電極間に電圧をかけると、ナノポアを通してイオン電流が流れる。イオン電流の大きさは一次近似としてナノポアの断面積に比例する。DNAがナノポアを通過すると、DNAがナノポアを封鎖し、有効断面積が減少するため、イオン電流が減少する。この電流を封鎖電流と呼ぶ。封鎖電流の大きさを元に、DNAの1本鎖と2本鎖との差異や、塩基の種類を判別する。第2の手法は、ナノポアの内側面等に電極対を対向して設け、電極間に電圧をかけることにより、ナノポアを通過する際のDNAとプローブ間のトンネル電流を測定するトンネル電流方式である。トンネル電流の大きさから塩基の種類を判別する。同じく、電極間に交流電圧をかけることにより電極間の静電容量を測定し、DNAが通過するときのその変化を測定し、延期の種類を判別する。
【0003】
ナノポア内を通過するDNAのブラウン運動が大きいことや、ナノポア内を通過するスピードが速すぎて検出器の測定スピードが追い付かないなどの課題があるため、各塩基を判別する測定精度を確保しにくい。DNAのブラウン運動や通過スピードをコントロールするために、DNAの一端をトラップして運動を制御した上で測定する手法(以下トラップ計測法)がいくつか提案されている。AFMなどで用いられるカンチレバーにDNAをトラップする方式(特許文献1)、ビーズとDNAを結合して光でトラップする方式(非特許文献2)、電場を設定してそのポテンシャル井戸の中にトラップする方式(特許文献2)などがある。
【0004】
従来は1つの薄膜に1つのナノポアを設けた、いわゆるシングルナノポアを用いるのが通例である。一方、1つの薄膜に複数のナノポアを設けた、いわゆるマルチナノポアを用いれば、薄膜あたりの測定効率を向上できると考えられる。マルチナノポアをトラップ計測法に類する方法と組み合わせて、分子間力スペクトロスコピーを複数のDNAについて同期して行う方法が報告されている(非特許文献3、以下従来例)。従来例は同一試料のコピーを複数のナノポアで多重計測することにより、結果の統計値を一度に得られるとしている。また測定開始に先立って、Probeをナノポアにトラップし、そのトラップの状況を封鎖電流により追跡する様子も記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報第2006−0057585号
【特許文献2】米国特許公開公報第2004−0144658号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Branton, D. et al., Nat. Biotech. 26, 1146-1153 (2008)
【非特許文献2】Keyser, U. F. et al., Nat. Phys. 2, 473 (2006)
【非特許文献3】Tropini, C. et al., Biophysical J. 92, 1632-1637 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来例の技術を用いて測定効率向上を図る場合、以下の課題が想定される。ポアつき薄膜1枚あたりの測定効率をナノポアのマルチ化によって向上するためには、個々のナノポアで独立した測定を行う必要がある。しかしながら従来例では同一試料のコピーを多重計測して結果の平均値を得ることを目的としており、各ナノポアでの測定は基本的に同じ結果をもたらす(独立していない)。従って従来例の単位ポアつき薄膜当たりの測定効率はシングルポアと同じであり、マルチ化してもポアつき薄膜1枚あたりの測定効率は向上しない、という限界があった。
【0008】
従来例を応用して測定効率向上を図る場合、以下の課題が想定される。即ち、従来例を改変し、個々のナノポアで独立した測定を行う方法を採用したと仮定する。この場合、準備段階において、ProbeやAnalyteがトラップされているナノポアと、トラップされていないナノポアが混在する。つまり測定準備が完了しているナノポアと、測定が不可能なナノポアが混在する。次に、全てのナノポアについて独立に測定を図ると、前者のナノポアについては測定が行えるが、後者については測定が失敗に終わるため時間を無駄に費やすばかりでなく、存在しない試料を計測しようとして試行錯誤を繰り返し、余計な時間を費やす、という課題がある。
【0009】
従って、従来例はマルチポアを用いても単位ポアつき薄膜あたりの測定効率は向上せず、また従来例を応用したとしても測定装置の稼働効率や時間効率が低く、マシンタイムに応じたランニングコストが高く、また結果が得られるまでの待ち時間も長いという課題があった。
【0010】
また、前記従来例が持つ課題として、複数のポアの挙動が完全に揃わない可能性がある。特に解析領域の長さが短い場合は、ポアによる微妙な挙動の相違の影響が顕著になり、結果が揃わず複数のポアにおけるDNAの挙動をまとめて分散の様子を取ったときに、分散の値がそろわない可能性が高い。したがって平均化しても情報量が少なく、高精度な結果を得にくい、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は一つの態様において、複数のナノポアを備えた第1の薄膜を用いた生体ポリマーの特性解析法であって、生体ポリマーを複数、複数のナノポアそれぞれにトラップするトラップ工程と、複数の生体ポリマーのトラップ情報を取得するトラップ情報取得工程と、トラップ情報に基づいて生体ポリマーの特性を解析する解析工程と、を含む生体ポリマーの特性解析法である。
【0012】
また本発明の別の態様として、 複数のナノポアを備えた第1の薄膜と、第1の薄膜上における生体ポリマーのトラップ情報を取得するトラップ情報取得手段と、生体ポリマー特性解析手段と、を備えたことを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置がある。
【0013】
さらに本発明の別の態様として、複数のナノポアを設けた第1の薄膜と、複数のナノポアのそれぞれのナノポアの周囲を囲むように配置された隔壁と隔壁に埋設した電極を用いて第1の薄膜により隔たれた2つの空間の片方から他方に流れる電流値変化を検出する検出手段と、生体ポリマーがナノポアにトラップされたことを判断するトラップ判断手段と、を備えることを特徴とする生体ポリマーの特性解析チップがある。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、DNAがトラップされていないポアについて測定し時間を浪費する従来例の無駄を回避できる。したがって従来例と比較して高価な測定装置の稼働効率を高めることができ、時間効率即ちスループットを向上でき、マシンタイムを低減でき、ランニングコストを削減でき、待ち時間も短縮できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】生体分子特性解析プロセスの一例を示したフローチャート図。
【図2】生体分子特性解析プロセスのその他の例を示したフローチャート図。
【図3】生体分子特性解析プロセスのその他の例を示したフローチャート図。
【図4】生体ポリマーと標識物質の結合の一例を示した図。
【図5】電圧が印加されたチャンバー内標識物質が結合した生体ポリマーがポアつき薄膜にトラップされている様子を示した図。
【図6】標識物質が結合した生体ポリマーがポアつき薄膜にトラップされている様子を示した図。
【図7】複数のナノポアを持つ薄膜の一例を示した図。
【図8】一つのナノポアを持つ複数の薄膜の配列の一例の様子を示した図。
【図9】複数のナノポアを持つ複数の薄膜の配列の一例の様子を示した図。
【図10(A)】電流値測定結果の計算機への出力一例を示した図。
【図10(B)】電流値測定結果への計算機への出力の別の例を示した図。
【図11】電流値の測定により生体ポリマートラップ位置特定を行う生体ポリマー特性解析装置の一例を示した構成図。
【図12】光学測定による生体ポリマートラップ位置特定を行う生体ポリマー特性解析装置の一例を示した構成図。
【図13】電流値の測定により生体ポリマートラップ位置特定を行うトラップ用ポアつき薄膜及び測定用ポアつき薄膜の配線の一例の様子を示した構成図。
【図14】電流値の測定により生体ポリマートラップ位置特定を行うトラップ用ポアつき薄膜上面の一例を示した図。
【図15】個々のポアを隔離するチャンバー付きチップ断面の一例を示した構成図。
【図16】チャンバー内流路発生装置原理断面の一例を示した構成図。
【図17(A)】測定用ポアつき薄膜を移動させて解析を行う一例を示した上面構成図。
【図17(B)】測定用ポアつき薄膜を移動させて解析を行う一例を示した横面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願で、生体ポリマーとは、単位構造の低分子(単量体、モノマー)が複数連結した多量体(オリゴマー)や高分子(ポリマー)のうち、生体に由来するものを意味する。具体的にはDNAやRNA、タンパク質などを指し、個々の生体によって異なるものである。poly(A), poly(T),poly(G),poly(C)などのように、人為的に合成した分子も含む。本願では、試料としてナノポアに貫通させて、特性を検査する対象。ポリマーとも略す。
【0017】
本明細書中で、標識物質とは、生体ポリマーに結合して標識する物質である。標識物質の第1の作用は、ポアつき薄膜にポリマーをトラップすることである。薄膜に設けたトラップ用ナノポアの直径以上の粒径を持つ粒子を標識物質として用い、標識物質をナノポアに引っ掛けることにより、ポリマーがナノポアを通り抜けるのを防止し、ナノポアにトラップすることができる。粒子状の標識物質は、磁場や光ピンセットの原理により、また高分子イオンなどの荷電粒子からなる標識物質は電場により、その動きを任意に制御可能である。
【0018】
標識物質の第2の作用は、ポリマーのトラップ位置を確認することである。標識物質の材料として観察や検出に適するものを選択することにより、蛍光観察や光学顕微鏡観察、電気測定等で標識物質を確認することができる。この作用を有する標識物質の材料としては例えば、蛍光ビーズ、光を吸収あるいは散乱する物質、金属微粒子、蛍光性官能基を有する高分子イオンなどを用いることができる。
【0019】
標識物質としては、上記2種の作用を同時に実現する1種類の物質を標識物質として採用することができる。また、上記2種の作用をそれぞれ独立に実現する2種類の物質を組み合わせることにより、標識物質として使用する事も可能である。
【0020】
本願のナノポアは薄膜に形成する。本願のポアつき薄膜には2種類の使用目的に即したポアつき薄膜がある。第1のポアつき薄膜は、標識物質と結合した生体ポリマーをトラップするためのポアつき薄膜(以下トラップ用ポアつき薄膜と称す)であり、第2の薄膜は、生体ポリマーの特性を解析するためのポアつき薄膜(以下測定用ポアつき薄膜と称す)である。ポアつき薄膜の使用形態も2種類あり、トラップ用ポアつき薄膜と測定用ポアつき薄膜が各々別のポアつき薄膜である場合と、同じポアつき薄膜で上記二つの使用目的を実現する場合がある。
【0021】
薄膜は主に無機材料から形成され、ポア部分以外は基本的に電気的絶縁体である。薄膜材料の例としては、SiN,SiO2などが挙げられる。他に、有機物質、高分子材料などからなる絶縁体を含むこともできる。薄膜材料は、単層ではなく複層でもよい。複層の場合、最も外側の材料は絶縁体である。薄膜は生体ポリマーのトラップ状況をモニタリングしたり、生体ポリマーの特性解析を行ったりするために電気的配線がなされ得る。
【0022】
本願でいうナノポア及びポアとは、前述の薄膜に設けたナノサイズの孔であり、薄膜の表裏を貫通する。ポアのサイズは測定対象によって適切な範囲があり、例えば1nm以上3nm以下、3nm以上10nm以下、10nm以上50nm以下である。
【0023】
dsDNA(2本鎖DNA)の直径は2.6nmであるため、dsDNAを測定するポアの径は3〜5nmが適当である。ssDNA(1本鎖DNA)の直径は1.5nmであるが、ヘアピン構造を作る可能性が高いため、ssDNAは修飾して測る場合があり、この場合ポア径は2nm以上3nm以下が適当である。
【0024】
トラップが適切に行われ、ナノポア周辺部に隣のナノポアとの隔壁がある状態で、dsDNAおよびそれに相当する径を持つ物質を測定する際には10nm〜50nmでも測定可能である。
【0025】
本願でいう開口は、ポアの薄膜表面に出ている部分を指す。溶液中のポリマーやイオンなどは開口から入り、反対側の開口から出てくる。
【0026】
本願でいうトラップ情報は、トラップ用ポアつき薄膜にトラップされた標識物質結合生体ポリマーの位置情報及び存在の有無、トラップ用ポアつき薄膜へのトラップ率を指す。
【0027】
本願でいう解析は、生体ポリマー特性解析のことを指す。生体ポリマーの特性解析を行うためには、生体ポリマーを構成する塩基ごとの電流特性の違いを測定する。
【0028】
本願では2種類の電流増幅機構がある。一つは簡易型電流増幅機構(第一のアンプ)であり、トラップ用ポアつき薄膜中の各ナノポアと電気的に配線されており、トラップ用ナノポアに生体ポリマーがトラップされていることの確認に用いる。当該アンプは小型で簡便な作りをしている。また、作成にかかるコストも安いものを用いる。二つ目は高精度電流増幅機構(第二のアンプ)である。すべてのポアと電気的に配線されており、一回の解析では任意の一つのポアとだけ配線されるように、ポアと第二のアンプの間には複数の配線切り替え装置がついている。第二のアンプは、生体ポリマー解析に用いるため、電流測定時のノイズが小さく、数pAオーダーの電流値の違いを検出、増幅することが可能である。
【0029】
本願でいう封鎖電流とは、以下のようなものである。ポアを設けた薄膜の両面にチャンバーを設け、両チャンバーとポアにKClなどの電解質(イオン)を含む水溶液を満たし、両チャンバー間に電圧をかけると、ポアを通してイオンが移動し、電流(イオン電流)が流れる。イオン電流の大きさはイオンの移動しやすさ、特にポアの断面積に依存する。ポアの断面積が大きいほど、イオン電流は大きくなる。チャンバー内にDNAを封入し、DNAがポアを通過すると、ポアの有効断面積が減り、イオン電流が減少する。このDNAがポアを通過する際にポアを封鎖するために電流の大きさが減少する現象を封鎖電流と呼ぶ。薄膜を水平に、その上下にチャンバーや電極を配置して電圧をかけると、薄膜に対して垂直方向に電流が流れる。したがってここでは、垂直型封鎖電流と呼ぶ。上記垂直型封鎖電流に対して、薄膜中に電極を埋め込み、ポアの内部に電極1401が突出した構造を作成し、薄膜に水平方向のイオン電流を流し、その流れに対して流れ込むポリマーがイオン電流の流れを妨げる。この電流の減少値を水平型封鎖電流と呼ぶ。
【0030】
以下、発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)プロセス
本願によるマルチナノポア解析装置の動作の1実施例を図1に示す。図示の通り、観察機構付きマルチトラップされた生体ポリマー特性解析手法プロセス100は、試料調製工程101、生体ポリマーの投入工程102、生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103、トラップ位置の確認工程104、トラップ率に基づく判断工程105、解析工程106の6工程で構成される。以下、各工程の概要を説明する(詳細は後述する)。
【0032】
試料調製工程101は特性解析の対象である生体ポリマーを細胞等から抽出し、薄膜に設けたポアより径が大きく、観察や検出が可能な標識物質を生体ポリマーの一端に結合させ、生体ポリマー-標識物質複合体を得る工程である。本実施例では生体ポリマーとしてDNA、標識物質として蛍光微粒子を採用した。生体ポリマー-標識物質複合体の様態を示す模式図を図4に示した。生体ポリマーを投入する工程102は、生体ポリマー-標識物質複合体をチャンバー内に投入する工程である。チャンバー体積や、生体ポリマーの大きさ、求めるイベント回数により濃度を考慮して導入する。
【0033】
生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103は、生体ポリマー-標識物質複合体を薄膜のポアにトラップする工程である。生体ポリマー-標識物質複合体が薄膜のポアにトラップされた様態600を示す模式図を図6に示した。
【0034】
トラップ位置の確認工程104は、トラップ情報取得手段(確認手段とも称す)を用いてトラップ情報を取得する工程である。本実施例では確認手段として蛍光顕微鏡を採用し、標識物質である蛍光微粒子の画像を取得することにより、トラップ情報の基本要素である、各ナノポアにおける生体ポリマーの存在の有無と、薄膜上の各ナノポアの座標(位置)を特定した。確認手段の構成の一例を図11に示した。また生体ポリマーのトラップ位置の確認結果の一例を図10(B)左に示した。
【0035】
トラップ率による判断工程105は、トラップ率の確認を行い、規定値と比較し、次に進むべき工程を決定する工程である。ここでトラップ率は、トラップ位置の確認工程104で生体ポリマーの存在が確認されたポアの数の、薄膜上のポアの総数に対する割合として定義される。トラップ率が規定値以上であれば次の解析工程106に進み、規定値以下であれば生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103に戻る。
【0036】
解析工程106は、トラップ位置の確認工程104で存在を確認した、トラップされた個々の生体ポリマーについて、特性解析を行う工程である。
【0037】
次に実施例1の具体例、並びに他の態様について述べる。
【0038】
試料調製工程101で調製する生体ポリマー-標識物質複合体を図4を用いて説明する。生体ポリマー402に結合する標識物質401の例としては、蛍光微粒子、金属微粒子、磁気ビーズ、粒子状高分子、光を吸収する物質などがあげられる。ここで蛍光微粒子の例としてはCyanine-5(cy5),Cyanine-3(cy3),Indodicarbocyanine-5(Ic5)などがある。
【0039】
粒子状高分子の例としては、ラテックスビーズ、アクリルポリマービーズ、ポリメタクリル酸メチル、スチレンなどがある。光吸収物質の例としては、黒体様物質などがある。
【0040】
これらの標識物質とポリマーは共有結合、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合などにより結合される。また標識物質としては電荷の量がDNAより少ないか、電荷を持たない中性の物質が好適に用いられる。
【0041】
試料調製工程101において、生体ポリマー-標識物質複合体のナノポアへのトラップを促進するために、標識物質により標識されていないポリマーの末端(非標識末端)に、生体ポリマーよりも負電荷の密度が高く、ナノポア直径よりも直径が小さい第2の化学物質403を用いて標識することも可能である。本願の目的に適う負電荷密度を持つ第2の化学物質403の例としては、例えばポリカルボン酸塩やポリ硫酸塩、ポリリン酸塩などがある。ポリカルボン酸塩の例として、ポリアクリル酸塩を例にとって説明する。DNAのモノマーであるデオキシリボヌクレオチドの分子量は約325g/mol、荷電量は−1である。一方ポリアクリル酸塩のモノマーであるアクリル酸の分子量は約72g/mol、荷電量は−1である。従って、DNAの末端にポリアクリル酸塩を標識し、第2のチャンバーへ陽電圧を印加することにより、単位分子量当たりDNAの約4.5倍の静電引力が作用し、第2のチャンバーへ向けてより強力に泳動することが可能となり、ナノポアへのトラップをより効率的に行うことができる。第2の化学物質403として好適に採用可能な他の物質の例としては、ポリスチレンスルホン酸(モノマーの分子量185)塩、ポリリン酸(同80)塩、などの各種イオン性高分子が挙げられる。前記第2の化学物質として用いるイオン性高分子の重合度の、試料DNAの重合度に対する比率(重合度比)は数%ないし50%程度に設定することが好ましい。重合度比が高いほど、静電気力が高くトラップ効率も高いが、逆にナノポアを通過する試料中にDNAが占める割合は低くなる。従って、重合度比はトラップ効率と、測定効率との兼ね合いで決定することが好ましい。
【0042】
生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103の具体的な手順と動作を以下図5を用いて説明する。生体ポリマー-標識物質複合体を第1のチャンバー503に添加した上で、生体ポリマーを第2のチャンバー504へと誘導する力を作用させる。誘導する力としては、例えば生体ポリマーとしてDNAを対象とする場合、DNAの荷電である負電荷と同じ極性の陰電圧を第1のチャンバーへ、反対極性の陽電圧を第2のチャンバーへ印加する。すると負電荷をもつDNAは陽電圧に引かれて第1のチャンバー503から第2のチャンバー504の方向、具体的にはまず両者の接点であるナノポア502に向けて泳動する。負電荷の大きさがDNAより少ない標識物質は陽電圧へ向けて泳動されにくいため、DNAより遅れ、DNAの末尾から追従する。泳動を継続すると、生体ポリマーであるDNA402はナノポア502を通して第2チャンバーに流入するが、末尾の標識物質401はその径がナノポアよりも大きいため、チャンバーの開口にひっかかり、DNA-標識物質複合体は薄膜中に形成されたポアにトラップされる。以降の工程でも電圧を作用させ続けることにより、このトラップ状態は維持される。
【0043】
(標識物質を用いた確認−光学方式)
トラップ位置の確認工程104において、生体ポリマーと標識物質とは複合体を形成しており、両者ならびにその複合体の位置は一致する。確認手段は標識物質の標識の種類に応じて適宜選択可能である。例えば生体ポリマーに結合された標識物質が蛍光分子群や蛍光ビーズ、FRET方式の標識である場合、確認手段として、光学方式(以下光学確認方式)、特に好適には蛍光顕微鏡が採用できる。蛍光顕微鏡画像はCCDカメラなどによって画像データに変換し、計算機によって処理することにより、生体ポリマーの存在の有無と位置を確認する。
【0044】
確認手段として蛍光顕微鏡を用いる場合、薄膜上のナノポアパターン間隔を広くとり、パターンがない部分に非特異的に吸着した標識物質からの蛍光を読み取らないようにする。また、任意のポアにトラップされた標識物質からの蛍光の放射範囲が1um程度であるため、隣のポアにトラップされた標識物質からの蛍光とのオーバーラップを防ぐため、トラップ用ポアつき薄膜中のポアは2um以上のピッチで並んでいるのが望ましい。
【0045】
ポアの位置を特定するために、座標の基準となるガイドラインを薄膜上に作成することができる。標識物質として蛍光体、確認手段として蛍光顕微鏡を用いる場合、蛍光塗料等を用いてガイドラインを薄膜に設け、標識物質と、ガイドラインの蛍光画像を同時に取得することにより、生体ポリマーの薄膜上の座標を特定する。ガイドラインは生体ポリマーの標識物質と共通の標識を行い、共通の確認手段を用いて確認してもよいし、異なる標識、異なる確認手段を用いてもよい。
【0046】
一方、生体ポリマーに結合された標識物質が光吸収物体や、光散乱物体である場合は、光学確認方式に用いる確認手段としては、光学顕微鏡を好適に採用できる。
【0047】
光学確認方式において、確認手段は通常標識物質が存在する薄膜の上方、即ち第1のチャンバーの方向に設置する。あるいは、確認手段を薄膜の下方に設けることもできる。後者の場合、試料調製工程101において生体ポリマーの非標識末端にポアより粒径の小さな蛍光体などの光学的検出が可能な標識を結合する変形例を採用可能である。
【0048】
(ナノポア付き薄膜を用いた確認−電流方式)
トラップ位置の確認工程105において、確認手段として電流方式(以下電流確認方式)を採用することもできる。電流確認方式の場合、薄膜には各ポア近傍にそれぞれ電極対を設け、開口面に対して水平に電圧を印加する。電極間に流れる電流を、電流検出機構により計測する。電流検出機構は具体的には電流アンプ、ADコンバータ、計算機などから構成される。電極対間の電流は生体ポリマーが存在している時と、いないときで差があるため、個々の電極対間の電流をそれぞれ計測し、閾値を設けて計算機で判別することにより、各ポアにおける生体ポリマーの存在の有無を確認できる。この電流計測においては生体ポリマーの存在の有無を識別できれば良いため、電流アンプとして簡易なものを用いることができる。
【0049】
電極対と電流検出機構との間に信号選択機構を設け、計算機からの選択情報に基づいて切り替えて測定することにより、複数の電極対からの電流を、1つの電流検出機構を用いて測定可能である。この際、選択情報とポアの位置とを予め対応付けておくことにより、ポアの位置ごとに生体ポリマーの存在の有無を確認できる。また電流確認方式の場合、標識物質の第2の作用は生体ポリマーそのものが備えるため、標識物質は第1の作用に必要な特性、即ちポアに引っかかる大きさだけを備えれば良い。
【0050】
電流確認方式は薄膜上に形成された確認手段を用いるため、装置を小型化、低コスト化できる特長がある。位置確認結果の計算機への出力イメージは図10(B)のようになる。
【0051】
(電流かつトンネル、静電容量)
なお電流確認方式の変形例として、電流としてトンネル電流、静電容量を検出してもよい。この場合、トラップ位置の確認工程104においてチャンバー内に電解質は添加されていなくても構わない。
【0052】
トラップ率による判断工程105において、トラップ率は、目的とする処理効率に応じて、規定値は任意に設定可能である。図2にあるように、トラップ率が規定値よりも低かった場合は、生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103に戻った後、そのまま静置を続けるか、ナノポアに印加する力を増加させるか、102に戻り、生体ポリマーの封入量を増やすか、101に戻り試料の変更を行う。実施態様によっては、まず印加する力の量を変え、それでも変化がなければ封入量を変えるといった順番で、ループを回しながら、ループの通過回数を考慮に入れて処置を変更することもできる(201)。このような解析手法プロセス200を用いることも好適である。
【0053】
解析工程106における特性解析のための計測手法の例としては、封鎖電流方式、トンネル電流方式、容量測定方式などを採用できる。トラップ用ポアつき薄膜と測定用ポアつき薄膜が同じである場合は、上記のいずれの方式も採用できる。トラップ用ポアつき薄膜と測定用ポアつき薄膜が異なる場合、水平型封鎖電流方式やトンネル電流方式、静電容量方式を採用できる。測定装置から計算機を解してモニタ上に出力された測定結果の例を図10(B)に示す。なお、生体ポリマーの動きを抑制する処理工程103で印加した力がこの特性解析工程における測定に妨げになる場合(301)は、ここで印加していた力を解除する工程302がある(図3)。ここで妨げになる場合の一例として、上下方向に電圧をかけて標識物質つき生体ポリマーをポアにトラップして、測定では封鎖電流で生体分子特性解析を行う場合がある。トラップのためにかけた電圧が、封鎖電流測定に必要な電圧値よりも非常に大きいとき、高精度アンプのレンジを越えてしまい測定が不可能になったり、ポア通過スピードが速すぎて読み取りが不可能になったりする場合がある。また、水平方向の封鎖電流を読み取るときに、イオン電流値が不安定になるため印可した力の解除が必要である。
【0054】
ナノポアを用いた生体ポリマーの解析を行う際、本実施例により生体ポリマーの動きを抑制できるため、測定時間を十分長く設定して高精度な測定が行え、またブラウン運動による測定誤差を抑制できる、という特長がある。本実施例により複数のポアを薄膜上に設けて、複数の生体ポリマーを予め薄膜中に形成されたポアにトラップした上でまとめて測定できるため、測定効率を向上できる、という特長がある。また生体ポリマーのトラップ位置を予め確認することにより、生体ポリマーがトラップされているポアだけを測定可能となり、無駄な時間を排除でき、測定装置の稼働効率や時間効率が高いという特長もある。したがって、マシンタイムに応じたランニングコストが低く、また結果が得られるまでの待ち時間も短いという特長もある。つまり本実施例は高精度、高効率、低コスト、かつ迅速という効果がある。
【0055】
(実施例2)タンデムポア型
本願による位置特定機構を持つ生体ポリマー特性解析を行うマルチナノポア解析装置構成の1実施例について図11を用いて説明する。図11は本実施例の生体ポリマー特性解析装置の一部であり、図示のように、501は生体ポリマートラップ用ポアつき薄膜、503は生体ポリマー封入チャンバー、1101は観察用電流計測系、1102は測定用ポア、1104〜1106は測定用ポア駆動系、1103は測定用トンネル電流及び静電容量計測系及び駆動装置制御機構、1107は計算機である。
【0056】
(使用形態)
測定に用いる際の動作工程は基本的に実施例1のフローに従う。生体ポリマーのトラップ情報取得、生体ポリマー特性解析を実施するためには数々の手法が存在する。その中で本実施例では生体ポリマーの確認には水平型封鎖電流、測定にはトンネル電流方式を採用した形で例示する。
【0057】
(生体ポリマートラップ用ポアつき薄膜501)
生体ポリマートラップ用ポアつき薄膜には複数のナノポアを備え、そのナノポアの直径は生体ポリマーに結合した標識物質の直径よりも小さい。形状は円筒形以外でもよく、例えば直方体でもよい。ポアが開いている部分の厚みは、生体ポリマーと標識物質間のサイズとほぼ同じか、それ以下が望ましい。材料は問わない。例えば、封鎖電流によるシーケンシングの場合、シリコン酸化膜もしくはシリコンナイトライドが用いられるが、それに限らなければ導電性材料膜例えば、p-Si,a-Siによる成膜でも構わない。
【0058】
(ポアつき薄膜内部の構造―配線)
薄膜は層構成になっており、内部に電極がパターニングされている。ポアの内部に電解質溶液を充填して電極に直流電圧を印加すると、ポアの内部でイオン電流が発生する。この電圧源は観察用電流計測系1101に内蔵されている。電極はすべてのポアに向かって図13のように配線されており、それぞれの配線は、簡易電流増幅機構に接続されている。
【0059】
(ポアつき薄膜全体の構成)
生体ポリマートラップ用ポアつき薄膜の備えるナノポアの並びを示す模式図を、図7に示した。実施態様によっては、一つのポアを持つ薄膜を、複数並べる(図8)。他の実施態様では、複数のポアを持つ薄膜を、複数並べることも可能である(図9)。
【0060】
複数のポアを持つ一つの基板(図7)の場合、一度の基板作成プロセスの中に、測定対象ポアを選択するための配線をポア作成と同時に作成できるため、測定装置作成のスループットをあげることが可能となる
一つのポアを持つ薄膜を複数並べる(図8)の場合、ここのポアが独立していると、測定装置に向かって測定対象を動かすことが可能となり、トラップされていないポアの測定を行うことがなくなるばかりでなく、測定装置を長時間移動させる必要もなくなるため、測定のスループットが上がる。
複数のポアを持つ薄膜を複数並べる(図9)の場合、上記二つの性質が共存する。
【0061】
(オプション:水流)
また、実施態様によっては、生体ポリマーをトラップしているポアつき薄膜の上部には、一つのナノポアに二つ以上の生体ポリマーがトラップされることを防ぐ為に、薄膜の面に対して水平方向の振動をかけるとよい。トラップ用ポアつき薄膜は駆動装置に結合され、半径マイクロメーターオーダーで振動する。100〜3000rpmの範囲での回転スピードがよい。実施態様によっては、トラップ用ポアつき薄膜の備えるナノポア上部に液体の横向きの流れを作る(拡大図:図16)。これによりポアの無い薄膜表面に、静電気的に吸着してしまった標識物質を洗い流すことが可能となる。
【0062】
図11でいうチャンバー内に水流発生装置1108を導入することにより、図16に示す構成を採用できる。この時水流の強さは、水流による標識物質の駆動力が、電圧による標識物質の駆動力を下回る範囲で選定することが望ましい。実施態様によっては、上記を組み合わせて利用することがよい。
【0063】
(生体ポリマー封入チャンバー503)
標識物質と結合した生体ポリマーおよび電解質溶液が含まれている。電解質溶液中には一般にKClなどが含まれる。実施態様によってはNaCl,MgCl2などまたは、それらの混合物を用いてもよい。チャンバー材料としては、中に封入された溶液が外部に漏れ出ない素材が用いられる。また、溶液を保持できるだけの堅牢性を持ち合わせる。内部にはチャンバー外壁からの振動を吸収する素材からなる緩衝部材1109が薄膜と外壁の間にはめ込まれている。緩衝部材1109としてはポリジメチルシロキサン(PDMS)などを用いることができるが、振動を吸収する素材であればPDMS以外でも利用できる。
【0064】
(観察用電流計測系1101)
観察用電流計測系1101はトラップ位置の確認手段であり、トラップ用ポアつき薄膜に流す電流を発生させる電圧源および、簡易電流増幅機構1302を内蔵している。電圧源の電圧は電圧コントローラにより設定できる。これによりトラップ率をコントロールする。簡易電流増幅機構1302はさらに外部のADコンバータ1303と接続している。ADコンバータ1303はさらに計算機1107と接続している。ADコンバータ1303の出力するデータは計算機1107のモニタに映し出される。予めナノポアの位置と、出力データの対応づけがなされており、ナノポア内に生体ポリマーがトラップされることによる電流値変化の閾値を超えるポアをトラップが完了したナノポアと判断する。
【0065】
(光学測定の場合の装置構成)
実施態様によっては、トラップ位置の確認手段として光学測定方式を採用することもできる。光学測定方式の装置構成の例を図12に示した。チャンバーの上部には観察窓1202を設け、その外側に対物レンズ1201を設けた。レーザー光源1204から出力されたレーザー光1207と、試料からの蛍光1206はダイクロックミラー1203で分光される。蛍光は増幅機構、検出器1205を通り、計算機1107で記録される。
【0066】
(測定用ポア1102)
測定用ポア1102において、トンネル電流を計測する。測定用ポアつき薄膜の上面図は図14のようになっており、図13のように駆動装置(1104〜1106)と電流計測装置1304および駆動装置制御機構1305に結合している。
【0067】
測定用薄膜501はナノポア502を持ち、ナノポアに向かって電極1401が配線されている。ナノポアとは反対側の電極端部は、薄膜を固定する部材を通り、駆動装置とつながるケーブルにつながっている。
【0068】
(薄膜中に開いているポアサイズ/薄膜材料)
測定用ポアつき薄膜に形成されているポアはポリマーの塩基配列測定用のポアであるため、ナノポア周辺部の膜内にはパターニングされた電極が埋め込まれている(図13)。薄膜は主にSi、SiN、SiO2などからできている。溶液中に含まれるK+,Na+が薄膜に浸透するのを防ぐために、SiNが好適に用いられるが、親水性を保つためにSiO2コーティングするのがよい。測定用ナノポアのポア直径は10nm以下である必要がある。ナノポアの直径を10nm以下とすることにより、ポリマーのブラウン運動の抑制にも有利に働く。測定用ポアのポア径は数nm程度が好ましい。dsDNAの開口の断面積が2.5nm程度であるから、ポア径もそれに等しいかそれよりも大きくてdsDNAが2本入らない程度、すなわち5nm未満であることが特に好ましい。
【0069】
(測定用電流計測系1103)
測定用ポアつき薄膜には図13のような配線がなされ、トラップ用ポアつき薄膜同様に、1304に示す測定用電流計測系と電気的に結合している。
【0070】
駆動装置は図13の1104〜1106のように構成され、それぞれxyz方向に動く粗動機構1105,1106と微動機構1104、駆動装置制御機構1305からなる。駆動装置は駆動装置制御機構1305により動作方向が規定される。
【0071】
前記制御機構1305は駆動装置下部に設置され、計算機1107の実行ファイルから送られてきた命令を受信し、微動機構1104、Z軸方向粗動機構1105,XY軸方向粗動機構1106の移動距離を制御する。
【0072】
前記駆動装置1104〜1106はすべてのナノポアの下を測定用ポアつき薄膜が移動せしめるが、前記制御機構1305の制御により、トラップが完了したナノポアの下で停止し、そのナノポアにトラップされた生体ポリマーの特性解析を行う。
【0073】
実施様態によっては、生体ポリマーのトラップ情報は、計算機1107に随時送られ、前記駆動装置1104〜1106はトラップが完了したナノポアの下に随時アクセスしトラップされた生体ポリマーの特性解析を行う。
【0074】
実施様態の一例を図17(A)に示す。第一の薄膜501とそこに形成されたポア502及びポア502にトラップされた生体分子400が描かれており、点線で第二のポアの移動軌跡1701、第2の薄膜が結合している駆動装置を示している。
図17(B)は、第1の薄膜及び、それにトラップされた生体ポリマー、第2の薄膜及び駆動機構を横から見たものである。点線は、第2の薄膜の移動軌跡であり、トラップされた生体ポリマーの下に駆動装置が来ると、薄膜はz方向駆動装置および微動装置により移動し、生体ポリマーの解析に取り掛かる
実施様態によっては、生体ポリマーのトラップ情報は、計算機1107に随時送られ、前記第2の薄膜及び前記駆動装置1104〜1106は、図17の軌跡に限らず、トラップが完了したナノポアの下に随時アクセスしトラップされた生体ポリマーの特性解析を行う。
【0075】
微動機構1104はnmオーダーで移動させることが可能な素子であり、圧電素子など、さまざまな材料から製作することが可能である。初期位置からポア直下の位置はあらかじめ指定されておりナノメーターオーダーのコントロールがなされる。また、粗動機構1105,1106はumオーダーで移動させることが可能な素子である。
【0076】
本装置はトラップ用ポアつき薄膜の配置に対して、どの位置に配置することも可能である。本発明の例にはさまざまな材料からなる電圧素子を用いることが可能である。この装置は、前述の駆動装置制御機構と一体化していてもよい。
【0077】
本実施例のような測定手段を用いて、同一種類の複数のDNAを複数のポアにトラップして個別に解析することにより、情報量の多い結果を独立にかつ多くの繰り返し測定回数すなわち高い多重度で得ることができる。結果を統計処理することにより、高精度な結果を得ることができる。
【0078】
(実施例3)ノンタンデム装置構成
本願による位置特定機構を持つ生体ポリマー特性解析を行うマルチナノポア解析装置構成の1実施例を図15を用いて説明する。図は本実施例の生体ポリマー特性解析装置の一部であり、図示のように、生体ポリマートラップ用および測定用ポアつき薄膜501、生体ポリマー引き上げ力発生装置1501、生体ポリマー封入チャンバー503、観察用電流計測系1502、測定用封鎖電流計測系1503で構成されている。以下、装置動作方法および装置構成の概要を説明する。測定用ポアつき薄膜501、生体ポリマー引き上げ力発生装置1501、生体ポリマー封入チャンバー503、観察用電流計測系1502は一体化しておりひとつのチップの形を取る。
【0079】
(使用例)
基本的な生体ポリマー解析手法は実施例1に従うが、本実施例では生体ポリマーのトラップ情報取得、生体ポリマー特性解析は、ともに封鎖電流方式で行う。
【0080】
(装置構成詳細説明)
生体ポリマートラップ用および測定用ポアつき薄膜501には複数のナノポアを備え、そのポアのサイズは封鎖電流方式による解析を実現するために10nm以下である。材料は前述(実施例2)の測定用ポアつき薄膜と同じである。
【0081】
生体ポリマー封入チャンバー503は個々のポア周りの溶液を独立させるための複数の隔壁を備えた構造を持つ。隔壁と薄膜の接合面には、隔壁からの振動を吸収するために緩衝材1109を備える。実施態様によっては、複数の薄膜が複数の隔壁と結合している。この際に隔壁からの振動を吸収するため緩衝材1109を介して結合している。緩衝材料として代表的なものは、PDMSやシリコンゴムなどが挙げられる。
【0082】
生体ポリマー溶液や、電解質溶液、バッファー等は生体ポリマー引き上げ装置の脇、チャンバー上部に、試料封入路1505のような配置でチューブから流し込む。
【0083】
チャンバーの内部には二種類の封鎖電流測定用の配線がなされている。
【0084】
(配線1)
一つは、生体ポリマーのトラップを確認するために、個々の簡易増幅機構1502とつながっている。簡易増幅機構は薄膜外部の駆動装置及びADコンバータ1506とつながっている。ADコンバータ1506はさらに計算機1107と接続している。計算機上では予めポアの位置とコンバータから取得される情報が対応づけられており、ある閾値以上の数値を示すポアではトラップが完了していると判断される。その時のPC画面は、図10(B)中のようになる(1010)。この情報からポアのトラップ率も取得できる。
【0085】
(配線2)
もう一方の電極は測定用封鎖電流測定系1507に内蔵された高精度増幅機構につながっており、前記トラップ情報を参照し、任意のポアに導通させることができる切り替えスイッチで個々の任意のポアに対して一つずつ測定できるようになっている。
【0086】
生体ポリマー引き上げ力発生装置1501はチャンバーの上部に位置する。
【0087】
生体ポリマーに標識された物質が磁気ビーズの場合、チャンバーの上部に反極を持つ材料を備え、徐々に強度を上げていくことで、生体ポリマーをゆっくり引き上げて、封鎖電流量をモニタリングする。実施態様によっては、標識された物質が正電荷を持つものでもよい。その場合先の材料が負電極となるように電圧をかけ、同じく印加電圧量を少しずつ大きく、ゆっくり引き上げつつ塩基配列を測定する。
【0088】
実施態様によっては、DNA巻き取り型の引き上げ装置でもよい。巻き取り装置はポアの周りにトラップしてあり、DNAと片端が結合している。読み取り速度に応じて、巻き取り装置が回転しゆっくり生体ポリマーは巻き取られていく。
【0089】
この間、電圧勾配によりDNAはポアから抜け出ない。実施態様によっては、DNA巻き取り装置と結合している部分とは逆の末端に長鎖の負電荷をもつタンパク質もしくはポリマーがトラップしており、ポアから外れない。
【0090】
観察用電流計測形1502および、測定用封鎖電流計測系1503は実施例2とほぼ同じものを用いる。配置はその他の構成に対してどの位置に取ることも可能であるが、本実施例では観察用電流計測系1502のうち簡易電流増幅系は、トラップ用ポアつき薄膜上に作られた各々のポアを隔離している隔壁1504の内部に埋め込まれている。測定用電流計測系1503は薄膜の外部にあり、ポアそれぞれに配線された電極と結合する。また材料、素子等もあらゆる種類のものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 観察機構付きマルチトラップされた生体ポリマー特性解析手法プロセス
101 試料調製工程
102 生体ポリマー投入工程
103 生体ポリマーの動きを抑制する処理工程
104 トラップ位置確認工程
105 トラップ率による判断工程
106 解析工程
200 観察機構付きマルチトラップされた生体ポリマー特性解析手法プロセス
201 再試行場所判断工程
300 観察機構付きマルチトラップされた生体ポリマー特性解析手法プロセス
301 生体ポリマーの動きを抑制するために印加していた力が測定に対して妨げになるか否かの判断
302 解除の実行工程
400 標識物質と結合した生体ポリマー
401 標識物質
402 生体ポリマー
403 第2の化学物質
500 標識物質が結合した生体ポリマーのポアつき薄膜へのトラップされた様子
501 薄膜
502 ナノポア
503 第1のチャンバー
504 第2のチャンバー
600 ポアつき薄膜へのトラップの様子
700 複数のナノポアを備える一つの薄膜
800 ひとつのナノポアを備える複数の薄膜
900 複数のナノポアを備える複数の薄膜
1000 トラップ情報取得の際の測定データの計算機への出力例及び特性解析結果の計算機への出力例
1100 トラップ情報を電流により取得するトラップ情報取得装置の例
1101 観察用電流計測系
1102 測定用ポア
1103 測定用電流計測系及び駆動装置制御機構
1104 微動機構
1105 z軸方向粗動機構
1106 xy軸方向粗動機構
1107 計算機
1108 水流発生装置
1109 衝撃緩衝材
1200 トラップ情報を光学系により取得するトラップ情報取得装置の例
1201 対物レンズ
1202 観察窓
1203 ダイクロックミラー
1204 レーザー光源
1205 検出器
1206 蛍光
1207 レーザー光
1300 トラップ情報を電流により取得するトラップ情報取得装置の一部拡大図
1301 切り替えスイッチ
1302 簡易電流増幅機構
1303 ADコンバータ
1304 測定用電流計測機構
1305 駆動装置制御機構
1400 測定用ポアつき薄膜上面図
1500 封鎖電流方式特性解析チップ
1501 生体ポリマー引き上げ力発生装置
1502 観察用電流計測系
1503 測定用電流計測系
1504 隔壁
1505 試料封入路
1506 ADコンバータ
1507 測定用電流計測系
1600 水流発生の様子
1601 水流
1602 水流発生装置
1700 第1の薄膜、第1のポアにトラップされた生体ポリマー及び第2の薄膜の装置上面から見た位置関係および第2の薄膜の軌跡
1701 第2のポア及び連結した駆動装置の移動位置例
1710 第1のポアにトラップされた生体ポリマー及び第2の薄膜の装置位置関係を横から見た様子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノポアを備えた第1の薄膜を用いた生体ポリマーの特性解析法であって、前記生体ポリマーを複数、前記複数のナノポアそれぞれにトラップするトラップ工程と、前記複数の生体ポリマーのトラップ情報を取得するトラップ情報取得工程と、前記トラップ情報に基づいて生体ポリマーの特性を解析する解析工程と、を含む生体ポリマーの特性解析法。
【請求項2】
請求項1に記載の生体ポリマーの特性解析方法であって、前記トラップ情報取得工程は、前記複数のナノポアのそれぞれについて、前記生体ポリマーがトラップされているか否かを検出し、前記検出の結果を前記トラップ情報の真偽として記録することを含み、前記解析工程は、前記トラップ情報が真であるナノポアについて、トラップされた生体ポリマーの特性を解析することを含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項3】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記複数のナノポアの総数に対する、前記複数の生体ポリマーがトラップされているナノポアの割合であるトラップ率をあらかじめ設定した閾値と比較し、前記トラップ率が前記閾値を超えていない場合、再び前記トラップ工程を行うことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項4】
請求項3に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ率を前記閾値と比較し、前記トラップ率が前記閾値を超えていない場合、前記複数の生体ポリマーをさらに添加することを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項5】
請求項3に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ率が前記閾値を超えていない場合、前記生体ポリマーの第1の標識物質または標識方法を変えることを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項6】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ工程は、前記複数の生体ポリマーをトラップする電磁場を印可することを含み、さらに前記解析工程の前に、前記電磁場を解除する工程を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項7】
請求項1に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記複数の生体ポリマーは核酸を含み、前記解析工程は、前記核酸を構成する塩基配列を解析する
こと含む生体ポリマーの特性解析法。
【請求項8】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記複数の生体ポリマーのうち少なくとも1つの生体ポリマーの一端に前記複数のナノポアの少なくとも一つの径より粒径の大きい第2の標識物質を結合し、前記トラップ工程において前記第2の標識物質を前記ナノポアに引っかけることにより前記生体ポリマーを前記ナノポアにトラップすることを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項9】
請求項8に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記標識物質は蛍光ビーズまたは光吸収体または金属微粒子または大型ポリマーまたは磁気ビーズであることを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項10】
請求項8に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記複数の生体ポリマーの少なくとも一つ以上の生体ポリマーの一端に、マイナス荷電を有する第3の標識物質を結合することを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項11】
請求項10に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記第3の標識物質は前記複数の生体ポリマーの少なくとも1つよりも同じか又は大きい単位分子量当たりの荷電数を有していることを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項12】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記複数のナノポアのうち、少なくとも一つ以上のナノポアの直径は1nm以上50nm以下である
ことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項13】
請求項3に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報は、トラップされた生体ポリマーの位置を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項14】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報は、前記複数の生体ポリマーの少なくとも1つ以上が前記複数のナノポアの少なくとも1つ以上を通過するとき、前記第1の薄膜で隔たれた空間の一方から他方へ流れる電流の変化量を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項15】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報は、前記生体ポリマーが前記ナノポアを通過するとき、前記ナノポアの内側面に対向し露出する電極間に生じる電流の変化を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項16】
請求項15に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記電流はトンネル電流であることを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項17】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報は、前記複数の生体ポリマーの少なくとも1つ以上が前記複数のナノポアの少なくとも1つ以上を通過するとき、前記複数のナノポアの内側面に対向し露出する電極間の静電容量の変化を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項18】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報取得工程は、蛍光顕微鏡または光学顕微鏡を用いて観察可能な標識物質を検出することにより、前記トラップ情報を取得することを含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項19】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報取得工程は、前記複数のナノポアに設けた電極からの複数の信号を前記電極に接続されたアンプで増幅し、前記増幅された複数の信号を前記アンプに接続されたAD変換装置でデジタル信号に変換し、前記デジタル信号を前記AD変換装置に接続された計算機に取り込み、前記計算機は前記デジタル信号を前記ナノポアの配列情報と対応づけることで前記ナノポアに関するトラップ情報を取得することを含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項20】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報取得工程は、予め前記第1の薄膜の座標の指標となる画像を取得し、さらにトラップされた標識物質の画像と前記複数のナノポアに関する光強度情報とを取得し、前記閾値と比較することにより前記トラップされた標識物質の位置を前記第1の薄膜と観察電流系を介して接続された計算機で読み取れる状態に変換し、前記トラップ情報を前記計算機で確認することを含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項21】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、さらに複数のナノポアを備えた第2の薄膜を有し、前記解析工程は前記第2の薄膜を用いて解析を行うことを含むことを特徴とする生体ポリマー特性解析法。
【請求項22】
請求項21に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報は、トラップされた生体ポリマーのトラップ位置を含み、前記解析工程は、前記トラップ情報に基づいて、前記第1の薄膜の前記トラップ位置に前記第2の薄膜が移動し解析を行うことを含む生体ポリマーの特性解析法。
【請求項23】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記解析工程は、前記第1の薄膜で隔たれた2つの空間の間の封鎖電流を解析することを特徴とする生体ポリマー特性解析法。
【請求項24】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記解析工程は、前記複数のナノポアの内側面に対向し露出する電極間の封鎖電流を解析することを特徴とする生体ポリマー特性解析法。
【請求項25】
請求項2に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記解析工程は、
前記複数のナノポアの内側面に対向し露出する電極間のトンネル電流を解析することを特徴とする生体ポリマーの特性解析法。
【請求項26】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記解析工程は、前記トラップ情報に基づいて、前記複数の生体ポリマーがトラップされた前記複数のナノポアの中から選択された一つの生体ポリマーのみ解析することを含む生体ポリマーの特性解析法。
【請求項27】
請求項13に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記解析工程は、前記トラップ情報に基づいて、前記複数の生体ポリマーがトラップされた前記複数のポアを順次選択して解析することを含む生体ポリマーの特性解析法。
【請求項28】
複数のナノポアを備えた第1の薄膜と、前記第1の薄膜上における生体ポリマーのトラップ情報を取得するトラップ情報取得手段と、前記トラップ情報に基づいて生体ポリマーを解析する生体ポリマー特性解析手段と、を備えたことを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項29】
請求項28に記載の生体ポリマー特性解析装置において、前記第1の薄膜が電流計測装置を備えていることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項30】
請求項28に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、さらに複数のナノポアを備えた第2の薄膜を備え、前記第2の薄膜の前記複数のナノポアが電流計測装置を有していることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項31】
請求項28に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、前記トラップ情報取得手段は、前記第1の薄膜と、前記第1の薄膜の外部に設けた第1のアンプと、前記第1の薄膜中の前記複数のナノポアの内部に対向した電極対とを有し、さらに前記電極対からの配線は前記第1の薄膜の外部に接続可能であることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項32】
請求項31に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、前記トラップ情報取得手段は、さらに前記第1のアンプに接続されたAD変換装置と、前記AD変換装置に接続された計算機とを備え、前記計算機は前記AD変換装置を介して前記第1のアンプの出力を取得し、前記複数のナノポアの位置情報と対応づける処理を行い、前記トラップ情報として記録することを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項33】
請求項30に記載の生体ポリマーの特性解析法において、前記トラップ情報に基づいて、前記第2の薄膜を前記生体ポリマーがトラップされている位置に移動させる薄膜駆動装置を備えることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項34】
請求項33に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、前記第2の薄膜と前記薄膜駆動装置とは、衝撃緩衝材を挟んで接続されていることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項35】
請求項33に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、前記薄膜駆動装置は、第1の移動手段と前記第1の移動手段の後に実行される第2の移動手段とを有し、前記第1の移動手段は前記第2の移動手段より大きく動くことを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項36】
請求項35に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、さらに前記薄膜駆動装置の内部に第2のアンプと、前記第2のアンプに配線された電流測定部を備えていることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項37】
請求項28に記載の生体ポリマーの特性解析装置において、前記複数のナノポアは、それぞれ周りに隣接するナノポアとの間に隔壁を設けていることを特徴とする生体ポリマーの特性解析装置。
【請求項38】
複数のナノポアを設けた第1の薄膜と、前記複数のナノポアのそれぞれのナノポアの周囲を囲むように配置された隔壁と前記隔壁に埋設した電極を用いて前記第1の薄膜により隔たれた2つの空間の片方から他方に流れる電流値変化を検出する検出手段と、前記生体ポリマーが前記ナノポアにトラップされたことを判断するトラップ判断手段と、を備えることを特徴とする生体ポリマーの特性解析チップ。
【請求項39】
請求項38に記載の生体ポリマーの特性解析チップにおいて、さらに前記第1の薄膜の上部に設けられた流路と、前記流路に接続された水流発生装置とを有する
ことを特徴とする生体ポリマーの特性解析チップ。
【請求項40】
請求項38に記載の生体ポリマーの特性解析チップにおいて、前記第1の薄膜は、1つのナノポアを設けた複数の第2の薄膜を含むことを特徴とする生体ポリマーの特性解析チップ。
【請求項41】
請求項38に記載の生体ポリマーの特性解析チップにおいて、さらに前記第1の薄膜を複数備えることを特徴とする生体ポリマーの特性解析チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(A)】
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【図10(B)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17(A)】
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【図17(B)】
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【公開番号】特開2011−211905(P2011−211905A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80098(P2010−80098)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】