生体信号測定具及びこれを用いた生体信号測定方法
【課題】皮膚状態が安定することを待たなくても精度の高い測定を行うことができるものとする。
【解決手段】被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブ9と、該測定プローブ9を支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体21と、該プローブ支持体21に設けられて上記測定プローブを生体表面6に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段23とを備える。生体組織(皮膚)に変化を与えることなく生体信号測定を行うことができる。
【解決手段】被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブ9と、該測定プローブ9を支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体21と、該プローブ支持体21に設けられて上記測定プローブを生体表面6に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段23とを備える。生体組織(皮膚)に変化を与えることなく生体信号測定を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外分光分析手法による生体成分濃度測定に用いる生体信号測定具及びこれを用いた生体信号測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体組織に近赤外光を照射した際の生体組織内を拡散反射した光を受光して得たスペクトル信号から生体組織の定性・定量分析を行う近赤外分光法は、生体内の種々の情報を非侵襲的に、試薬なしに、その場で即時に得ることができることから多くの医療分野で注目されている。
【0003】
特に血糖測定に関しては、糖尿病患者の血糖値管理に関する要望だけでなく、近年、集中治療室で血糖値を適切な範囲に管理することで患者の死亡率が大幅に低下するという報告があることから、非侵襲連続の血糖値モニターが注目されている。
【0004】
非侵襲的に血糖値を測定する技術手段の一つである近赤外分光法では、近赤外スペクトルのグルコース特異吸収波長において、グルコース濃度増減により吸光度が変化するので、その波長を含む生体組織からのスペクトルを測定し、そのスペクトル信号を多変量解析することによって生体内のグルコース濃度を検出する測定手法が特開平11−70101号公報や、特開2002一65645号公報、特開2006-87913号公報などに示されている。
【0005】
図1は上記特開2006-87913号公報に開示された非侵襲式の光学式血糖値測定システムを示すもので、ハロゲンランプ1から発光された近赤外光は熱遮蔽板2、ピンホール3、レンズ4、光ファイババンドル5を介して生体組織6に入射される。上記光ファイババンドル5は測定用光ファイバ7の一端とリファレンス用光ファイバ8の一端が接続され、測定用光ファイバ7の他端は測定プローブ9に接続され、リファレンス用光ファイバ8の他端はリファレンス用プローブ10に接続されており、さらに測定プローブ9及びリファレンスプローブ10は光ファイバを介して測定側出射体11及びリファレンス側出射体12に接続されている。
【0006】
この測定プローブ9は、その先端面を人体の前腕部などの生体組織6の表面に所定圧力で接触させた状態で近赤外スペクトル測定を行う。この時、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、測定用光ファイバ7内を伝達し、図1(b)に示すような測定プローブ9の先端から同心円周上に配置された12本の発光ファイバ20より生体組織6の表面に照射される。生体組織6に照射された測定光は、生体組織6内で拡散反射した後に、拡散反射光の一部が測定プローブ9の先端中央に配置されている受光ファイバ19に受光される。受光された光はこの受光側光ファイバ19を介して測定側出射体11から出射され、レンズ13を通して回折格子14に入射して分光された後、受光素子15において検出される。受光素子15で検出された光信号はA/Dコンバーター16でAD変換された後、パーソナルコンピュータなどの演算装置17に人力される。血糖値はこのスペクトルデータを解析することによって算出される。
【0007】
リファレンス測定はセラミック板など基準板18で反射した光を測定してこれを基準光とするもので、リファレンス用プローブ10は上記測定プローブ9と同一の構成を備えており、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光はリファレンス用光ファイバ8を通して、リファレンス用プローブ10の先端から基準板18の表面に照射される。基準板18での反射光はリファレンス用プローブ10の先端に配置された受光光ファイバ19を介してリファレンス側出射体12から出射される。
【0008】
上記の測定側出射体11とレンズ13の間、及びこのリファレンス側出射体12とレンズ13の間にはそれぞれシャッター22が配置してあり、シャッター22の開閉によって測定側出射体11からの光とリファレンス側出射体12からの光のいずれか一方が選択的に通過して受光素子15に導かれる。
【0009】
なお、測定プローブ9とリファレンス用プローブ10の端面は上述のように円上に配置された12本の発光ファイバ20と中心に配置された1本の受光ファイバ19で構成されているのであるが、発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lは650μmとしてある。また、測定側出射体11とリファレンス側出射体12の端面は図1(b)の右図のように出射ファイバ21(受光ファイバ19の他端)が中心に配置されている。
【0010】
近赤外分光法による定量・定性分析を行うにあたっては、通常、事前にデータ収集を行って得られたデータセットに対して多変量解析を行い、定量分析を行う場合は検量関数を作成し、目的とする成分濃度を算出する手法を用いることが一般的である。この時、ロバストな検量関数を得るには、可能な限り多様で幅広いデータを収集して上記データセットを作成することが良いとされているが、幅広いデータの収集に伴う時間・労力・コストの負担は大きな問題である。
【0011】
一方、生体成分の定量分析、とりわけ血糖値測定については、信号となる対象成分の吸光度が非常に小さく、たとえば上記の従来例に示される装置でグルコース信号変化を測定した場合、臨床的に意味がある測定に必要とされる10mg/dlの濃度変化に対するグルコース信号の吸光度変化は100μAU以下であり、生体変化や測定の再現性に関連するノイズに比べて極端に小さい(SN比が悪い)ため、通常の近赤外分光法で行われる検量関数作成法をそのまま生体成分の定性・定量分析に用いても有用な検量関数を得ることは難しい。また、その検量関数にしても被験者の個体差に起因するノイズを無くして適応性を高めるために個人毎に検量関数を作成することが多い。
【0012】
しかしながら集中治療室(ICU)のような医療施設では、治療におけるモニタリングに先立ち、その患者に対しスペクトル測定を行って検量関数を準備することは実用上不可能である。
【0013】
これに対して、上記特開2006−87913号公報で示されたものは、事前のスペクトルデータ収集を行わずに検量関数を作成する手法であり、ここでは生体あるいはシミュレーション等から得られた複数の近赤外吸光度スペクトルと、この中から選択される基準吸光度スペクトルの間の差分である複数の差分吸光度スペクトルを求め、前記差分吸光度スペクトルの各々に予め測定した被験者の基準吸光度スペクトルを合成して複数の合成吸光度スペクトルを求め、得られた複数の合成吸光度スペクトル用いて多変量解析することで検量関数を作成している。
【0014】
この場合、人為的に選択した外乱を組み込んで作成した検量モデルを用いることができることになるが、皮膚状態の変化を外乱として検量モデルに組み込んでいない場合は、皮膚状態が安定するまで測定を始められない欠点を持つことになる。この皮膚安定までに2時間程度の時間が必要な場合があり、実使用における用途を制約する原因となっている。図25に一例を示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。
【0015】
更には、血糖値の連続測定として、侵襲的に血糖値を測定する装置の開発も行われている。たとえば、米国FDA認可を受けているMedtronic MiniMed社(米国)の侵襲式連続血糖モニター(CGMS)は、センサ針を体内に挿入し、皮下組織中の体液のグルコース濃度測定を行うことで、最大72時間の連続測定が可能である。しかしながら、この装置についてもセンサ針を体内に挿入した後、2時間程度安定を待ち、さらにその後に採血により血糖値の較正を行う必要がある。初期の2時間は稼働時間である72時間に比較して短い時間であり、このために糖尿病患者の血糖値履歴管理や、急性期を過ぎた患者の血糖値管理等のような利用形態では問題とはならないが、実使用における用途を制約する原因となっている。
【特許文献1】特開2006−87913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、近赤外光を用いた生体成分測定、特に、血糖値の測定において、皮膚組織の状態変化に起因する外乱要因を小さくすることができて、皮膚状態が安定することを待たなくても精度の高い測定を行うことができる生体信号測定具及びこれを用いた生体信号測定方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本発明に係る生体信号測定具は、被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブと、該測定プローブを支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体と、該プローブ支持体に設けられて上記測定プローブを生体表面に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段とを備えていることに特徴を有している。
【0018】
特に上記測定プローブと生体組織表面との接触状態を検知する接触検知手段を有していると、生体組織表面に対する測定プローブの位置をより正確に且つ再現性よく定めることができる。
【0019】
この場合の接触検知手段としては、上記測定プローブの生体組織表面との接触面に配した電極によって電気的に接触を検知するものや、上記測定プローブによって生体からの反射光又は拡散光を受光することにより測定されたスペクトルの形状変化を解析して測定プローブと生体組織の表面との接触状態を検知するものを好適に用いることができる。
【0020】
測定プローブ先端面とプローブ支持体と生体組織表面とで囲まれる空間を外気に連通させる通気口を備えたものとすることも好ましい。生体組織における測定対象部分の性状変化を通気口を通じた通風によって抑えることができて、生体表面を良好な状態に保つことができ、測定精度を高めることができる。
【0021】
上記通気口を開閉する開閉手段を備えておれば、測定時には開閉手段を閉じておくことで、通気口を通じた通風がノイズの原因になってしまうことを避けることができる。
【0022】
通気口を通じて強制的に吸排する送風手段を備えたものであってもよく、この場合、確実に前記空間への通風を行うことができる。
【0023】
送風手段が前記駆動手段を兼ねているものでは、部品数を低減することができて小型で安価なものとすることができる。
【0024】
上記通気口を通って前記空間に至る空気の温度を生体温度に近づける温度調節手段を備えたものとすれば、前記空間に送り込む空気が性状変化の原因となってしまうことを避けることができる。
【0025】
更に測定した生体信号を元に通気口を通じた通気流量または通気方向の少なくとも一方を制御する制御手段を備えていると、より確実に性状変化を抑えて正確な測定を行うことができる。
【0026】
そして本発明に係る生体信号測定方法は、上記の生体信号測定具を用い、測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に位置させた状態で近赤外光の生体に対する照射及び反射光または拡散光の受光を行うことに特徴を有している。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、測定プローブが生体組織表面に与える変化が殆どなく、このために生体組織の変化に伴う外乱を除くことができるとともに、状態変化の安定を待たずとも任意時に正確な生体信号測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、本発明に係る生体信号測定具及び生体信号測定方法は、生体成分濃度、殊に血中グルコース濃度(血糖値)の測定のためのスペクトル測定に好適に用いることができるもので、上記スペクトル測定は、生体組織(皮膚)における真皮層を標的としている。
【0029】
生体の皮膚組織は、大きく表皮、真皮、皮下組織の3層の組織で構成されている。表皮組織は角質層を含む組織で、組織内に毛細血管はあまり発達していない。皮下組織は主に脂肪組織で構成されている。従って、この2つの組織内に含まれる水溶性の生体成分濃度、特に、グルコース濃度と血中グルコース濃度(血糖値)との相関は低いと考えられる。一方、真皮組織は毛細血管が発達していることと、水溶性の高い生体成分濃度、特に、グルコースが組織内で高い浸透性を有することから組織内生体成分濃度、特に、グルコース濃度は間質液(ISF:Interstitial Fluid)と同様に血糖値に追随して変化すると考えられ、このために真皮組織を標的としたスペクトル測定を行えば、生体成分濃度、特に血糖値変動と相関するスペクトル信号の測定が可能となる。
【0030】
図1に示した中心間距離Lが0.65mmの光ファイバで構成される測定プローブ9は、この真皮層を標的とするために開発されたものであり、本発明においてもこの測定プローブ9を好適に用いることができる。測定プローブ9における入射用光ファイバから照射された近赤外光を皮膚組織内で拡散反射させて検出用光ファイバに到達する一部の光を受光してスペクトル測定を行うものであり、この時、皮膚内における光の伝播経路は、“バナナ・シェイプ”と呼ばれる形状をとるが、上記中心間距離Lに設定されている場合、真皮層を通った光が検出用光ファイバに到達する。
【0031】
そして、本発明においては、上記測定プローブ9から近赤外光を皮膚表面に対して照射し且つ拡散反射光を測定プローブ9で受光するにあたり、測定プローブ9の皮膚との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定することで、測定プローブ9と皮膚の接触によって生じる皮膚の状態変化を軽減させて、測定プローブ9と皮膚の接触に起因する皮膚状態変化を抑えて、皮膚状態が安定するまでの時間を短縮することで任意時に正確な測定ができるようにしたものである。
【0032】
なお、血中濃度と相関が期待される生体成分濃度としては、グルコース(血糖値)以外に尿酸値、コレステロール量、中性脂肪量、アルブミン量、グロブリン量、酸素飽和度、ヘモグロビン量などがある。
【実施例1】
【0033】
本発明においても図1に示す構成の測定装置を用いた。ただし、測定プローブ9は図2に示すプローブ支持体21を用いて生体組織6の表面に正対させるものとしている。ここにおけるプローブ支持体21は、軸回りの回転が自在となるように軸受け24で支持されたねじ軸25を、測定プローブ9が固定されたスライダー26に設けた雌ねじ孔に螺合させたもので、駆動手段23によって上記ねじ軸25を回転させることでスライダー26と測定プローブ9とを図中上下方向に移動させることができるものであり、ここではねじ軸25のねじピッチを250μmとしていることから、ねじ軸25の1回転で、測定プローブ9を250μm移動させることができるものとなっている。
【0034】
スペクトル測定に際しては、プローブ支持体21の底面を生体組織6の表面に接触させた後、ねじ軸25を回転させることで、測定プローブ9の生体組織(皮膚)6との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定し、この状態で測定を行う。ここで、無負荷時の皮膚表面の位置とは、測定プローブ9が皮膚に接触する前の皮膚に負荷がかかっていない状態での表面位置のことである。また測定する位置は、特に−150μmから30μmの範囲で測定することが望ましい。測定プローブ9の先端面と正対する生体組織6は圧縮や角質水分量の上昇といった皮膚状態の変化が小さく、SN比の良好な近赤外スペクトル信号を確保できる。
【0035】
血糖測定実験では、血糖測定に先立って、採血により実測した血糖値を用い血糖モニターのキャリブレーションを行う。本キャリブレーション時に、採血と同時に測定した吸収スペクトルに後述の手法で得た差分テーブルを加算して仮想データセットを合成し、このデータセットからPLS回帰分析を行うことにより検量モデルを作成する。本実施例においては、検量モデル作成に用いた近赤外波長範囲は1,430nmから1,850nmで、PLSファクターの数は9である。キャリブレーションの後、近赤外スペクトルにより測定される血糖値は、キャリブレーション時に測定した血糖値からの相対変化値として求められる。本実施例による生体信号測定具の効果検証は、近赤外光による血糖値測定と比較データとして採血により血糖値を実測し、両者を比較することによって行った。測定は測定開始後5時間程度実施した。
【0036】
なお、ここでは差分テーブル作成用スペクトルの特徴量と基準スペクトルの特徴量との比に基づく補正を行っているのであるが、本実施例における差分テーブル作成は、光伝播シミュレーションとしてモンテカルロ法を採用して行った。モンテカルロ法は、コンピュータで発生させた0〜1の範囲の一様乱数に関して、目的事象の発生確率分布に基づく関数を使用し、目的事象を正確に再現することができる統計学的手法であり、光伝播を再現する場合は、媒体に入射する光を光子の集まりとみなして、光子1つ1つの媒体内での挙動を媒体の光学特性値(吸収係数、散乱係数、散乱位相関数、屈折率)に基づいて追跡する。その結果、全ての光子の挙動から統計的に光伝播を再現することができる。
【0037】
モンテカルロ法に基づいて光伝播シミュレーションを実施する場合、表皮層,真皮層及び皮下組織層の各々の吸収係数、散乱係数、屈折率、非等方散乱パラメータなどの光学特性値が必要となる。シミュレーションに用いる変動要因としてグルコース、たんぱく質、脂質、水分及び温度の5種類の生体内パラメータと散乱係数を、生体内パラメータの日内変動がカバーされるように予め設定した範用内で変化させ、シミュレーションによる吸光度スペクトルの作成を各パラメータの最大値と最小値を組み合わせた64通り(2の6乗)繰り返すことで作成した。このようにしてシミュレートして得た複数の吸光度スペクトルから、それらのシミュレーションスペクトルの平均スペクトルを減算することで複数の差分吸光度スペクトルを得たものが差分テーブルである。
【0038】
測定プローブ9をプローブ支持体21の底面より125μm(半回転)遠ざけた状態でスペクトル測定を行った場合の検証結果を図3に示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。皮膚組織の圧縮や角質水分量の上昇といった皮膚状態の変化を小さくすることができたことから、キャリブレーション直後より良好な血糖値推定が可能であった。
【0039】
対照実験として、測定プローブ9を生体組織6の表面に接触させたプローブ支持体21の底面から200μm引き上げた状態での実験を実施した。引き上げ距離以外は実施例1と同様である。対照実験における血糖予測値は、経口グルコース負荷前のほぼ一定の血糖値においては良好な推定ができたが、経口グルコース負荷の血糖値の上昇時においては予測値が血糖値に追随して変化することはなかった。これは、本対照実験における実験条件では、実施例1のように皮膚状態の変化は小さいが、皮膚表面と測定プローブ9との距離が離れすぎていて、皮膚の表面反射による信号が多くなるとともに皮膚組織内を伝播した信号成分が小さくなって、SN比の劣化が起こったためと考察される。また、プローブ支持体21の底面から測定プローブ9が500μmを越えて突出する状態で、つまりは測定プローブ9が生体組織6の表面を強く押す状態で測定した場合には、前述の図18に示す結果となった。
【0040】
従って、測定プローブ9の生体組織(皮膚)6との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定することが、近赤外スペクトルの生体成分に関するSN比を劣化させずに良好なスペクトル測定を行う条件であった。
【0041】
本実施例において、差分テーブルの作成手法として数値シミュレーションを利用した手法を示したが、これに限るものではなく、実際に、人間の皮膚を測定して得られた吸光度スペクトルからなるデータセットから得られた差分テーブルや、数値シミュレーションでなく、イントラリッピッドに代表される擬似生体を測定して得られる差分テーブルを用いてもかまわない。
【実施例2】
【0042】
測定プローブ9と生体組織6との接触状態を電気的に検知する接触検知手段を設けたもので、図5に示すように、測定プローブ9の外套部に電極30を設け、プローブ支持体21を絶縁体であるポリプラスチック株式会社製ジュラコンで作成した。また、信号発生器28及びモニター部29を用いて、これらと測定プローブ9の上記電極30とを導線31で接続するとともに、生体の測定プローブ9との接触面とは別の位置に電極27を接触させて信号発生器28に接続することで、測定プローブ9と生体組織6との通電状態を検知可能にした。なお、ここでは信号発信器28としてファンクションジェネレータを、モニター部29としてオシロスコープを用い、ファンクションジェネレータ28から発する周波数値を50kHz、電圧のP−P値を10Vとした。
【0043】
上記プローブ支持体22で保持されている測定プローブ9を徐々に前進させつつ、接触検知手段によって測定プローブ9の先端面が生体組織6の表面に接触したかどうかを検知することで、測定プローブ9が生体組織6の表面にわずかにでも接触した時点を検出し、その位置での測定プローブ9を基準位置として、前記−150μmから500μmの範囲内に測定プローブ9を位置させることを確実に行えるようにしたものである。なお、上記基準位置におけば、0μmのところに測定プローブ9を置いたことになる。この状態で先の実施例と同様にスペクトル測定を行い、測定後は、測定前と同様に生体から充分に離した位置で待機させる。検証結果を図6に示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。
【0044】
測定プローブ9と生体組織6とが接触したかどうかを電気的に確認することで、両者の位置関係を正確に把握することができるため、生体組織6を圧迫することがないようにすることを確実に行えるものであり、また測定プローブ9の生体組織6との接触程度の再現性が良くなるために、時間をおいて測定を繰り返す場合においても、測定プローブ9の生体組織6に対する相対位置の変化を殆ど無くすことができ、良好な血糖推定が可能となる。
【0045】
なお、ここでは測定プローブ9が生体組織6に接触した時のみ通電するように、測定プローブ9の外套部に電極30を作成したが、外套部に限ったものではなく、測定プローブ9の生体組織6との接触面が通電可能であれば良い。
【実施例3】
【0046】
図7に示すものは、プローブ支持体21に測定プローブ9の移動を制限することになるストッパーとしての突起部32を設けたもので、測定プローブ9を生体組織6の表面に近づける時、突起部32との当接で測定プローブ9先端面は生体組織6表面から微小距離だけ浮くことになる。
【0047】
上記突起部32は図8及び図9に示すように、測定プローブ9の先端面外周部に設けてもよく、この時、突起部32が接触検知手段における前記電極30を兼ねるものとすれば、測定プローブ9の先端面を生体組織6から所定の微小高さだけ離した状態に保つことが容易となる。
【実施例4】
【0048】
基本的には上記実施例2と同じであるが、ここでは次の手順で測定を行っている。すなわち、前記測定プローブ9を前記駆動手段23によってプローブ支持体21の底面と同じ位置に合わせた状態でスペクトルを測定し、これを基準スペクトルとする。なお、基準スペクトルの測定時における測定プローブ9の位置は上記位置に限るものでは無く、プローブ支持体21の底面よりも生体側に0.5mm近づけた位置や、逆に生体から0.1mm遠ざけた位置としてもよい。
【0049】
上記基準スペクトルの測定後、測定プローブ9が皮膚に接触しない位置(例えば約1mm)までいったん遠ざけて、この状態で次の検量モデルの作成及びキャリブレーションを行う。スペクトルを測定する時以外は、測定プローブ9が皮膚に接触していないようにすることで、皮膚組織の圧縮や角質水分量の上昇等の皮膚状態の変化を極力小さくして皮膚状態の安定を待たなくても、任意時の生体成分測定を可能とすること、及び皮膚組織の状態変化に起因する外乱要因を小さくすることで測定精度向上をはかるためである。
【0050】
検量モデルの作成は上記基準スペクトルから前記差分テーブルを利用して行う。また採血によって実測した血糖値を用いてキャリブレーションを行う。
【0051】
次に主成分分析用スペクトル群の算出を行う。これは上記基準スペクトルに上記差分テーブルを加算してスペクトル群(以下、主成分分析用スペクトル群と記述する)を算出する。前述のように差分テーブルはシミュレーションによって吸光度スペクトルの6種類の各パラメータの最大値と最小値の組み合わせ64通りを繰り返すことで作成したものなので、主成分分析用スペクトル群は64本のスペクトル群からなっている。
【0052】
次いで測定プローブ9を生体に近づけながらスペクトルを測定し、測定したスペクトルと前記主成分分析用スペクトル群とで主成分分析を行う。この時、ねじ軸25をたとえば1/5回転ずつ回転させて測定プローブ9の位置を微小値だけ変更(ねじ軸25のねじピッチが250μmの時、50μmに相当)してスペクトルを測定して後述するようにスコア値の算出、判定、血糖値の算出を行い、判定の結果、前記測定プローブ9の位置を変える必要がある場合は、前記ねじ軸25を回転させて前記測定プローブ9の位置を変えてスペクトルを測定することを繰り返す。
【0053】
上記判定は、測定したスペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトル群のスコア値の範囲内であるかどうかに応じて判定結果を出すもので、主成分分析用スペクトル群は64本のスペクトル群であるので64個のスコア値となり、測定スペクトルのスコア値と合わせて65個のデータ群となる。そして測定スペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内に有る場合は血糖値の算出を行い、範囲外の場合は測定プローブ9の上記位置変更を行う。なお、血糖値の算出を行う時も測定プローブ9を生体に接触しない位置(例えば1mm)まで遠ざける。
【0054】
図11は上記の算出したスコア値を表示した結果の一例で、図中7個のグラフはY軸に主成分数2〜8のスコア値をとっている。X軸は主成分数1のスコア値である。また各グラフ中の○で示した点が測定スペクトルのスコア値であり、それ以外の点は前記主成分分析用スペクトル群のスコア値である。
【0055】
ここにおいて、図11左上のグラフは測定スペクトルの主成分数1及び主成分数2のスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内に有り、同様に他のグラフも各グラフのX軸の主成分数1及びY軸の主成分数のスコア値に対して前記測定したスペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内にあることを示している。この場合、測定スペクトルは主成分分析用スペクトルが主成分数1〜8のスコア値で範囲内になっていると判定する。これに対して図12はスコア値を算出した結果の別の一例であるが、ここでは主成分数1〜7は範囲内となっているが、主成分数8は範囲外となっていることから、範囲外にあると判定する。
【0056】
図13は上記のようにしてスペクトル測定を行って血糖値を求めた場合、つまり測定スペクトルが主成分数1〜8において主成分分析用スペクトルのスコア群の範囲内になるように駆動手段23で測定プローブ9を動かして測定した結果である。皮膚の安定状態を待たずとも、キャリブレーション直後より良好な血糖推定が可能となっっていることがわかる。
【0057】
また、検量モデルを作成する際のPLSファクターの数は前述のように9であるが、測定スペクトルが主成分数1〜8において主成分分析用スペクトルのスコア群の主成分数1〜7が範囲内となり主成分数8が範囲外であった場合、前記したPLSファクターの数を7として作成した検量モデルを用いて推定値を算出するようにしてもよい。この場合、PLSファクターを9として推定値を算出した場合と比較して同等以上の精度を得ることが可能である。
【実施例5】
【0058】
これは測定プローブ9と生体組織6との接触状態を、吸光度スペクトルの形状変化を解析することで検知していることを除けば、実質的に実施例2の実施形態と同じである。なお、吸光度スペクトルの形状変化を解析するために、1450nmの水吸収ピークの吸光度値から1655nmの吸光度値を引いた数値を、「水ピーク高さ値」と定義する。この水ピーク高さ値の変化を解析することで測定プローブ9と生体組織6の表面との接触状態を検知する。
【0059】
すなわち、スペクトル測定に際し、プローブ支持体21の底面を生体に接触させた後、接触面から測定プローブ9を遠ざける位置に少しずつ移動させるとともに、この間、吸光度スペクトルの測定を連続して行う。得られる各吸光度スペクトルから水ピーク高さ値を算出し、水ピーク高さ値に後述する大きな変化が確認できるまで測定プローブ9を移動させる。変化が確認できたならばその直前の位置を正しい測定位置として、その位置で測定した吸光度スペクトルを真値として血糖推定に用いる。
【0060】
具体的には、図14に示した1測定目を例に使うと、測定位置A,B,C・・・と、測定プローブ9を接触面から遠ざけながら測定を行い、水ピーク高さ値が小さくなる位置を探し、測定位置Eの時に水ピーク高さ値が小さくなっていることから(測定位置Dと測定位置Eとの水ピーク高さ値の差=0.032AU、他測定位置での水ピーク高さ値の変化=0.005AU未満)、水ピーク高さ値が小さくなる直前の位置、つまり測定位置Dを正しい測定位置として、この測定位置Dで測定した吸光度スペクトルを用いて血糖推定を行った。
【0061】
検証結果を図15に示す。測定されたスペクトルの変化から正しい測定位置を特定していることから、生体組織6と測定プローブ9との距離を正確に把握して、再現性のあるスペクトル測定を行うことができ、良好な血糖推定が得られる。
【0062】
なお、測定プローブ9は接触面から遠ざける方向に移動させるのではなく、接触面に近づける方向に動かしても良い。
【実施例6】
【0063】
実質的に実施例2の実施形態と同じであるが、測定プローブ9と生体組織6とが接触したことを検知した位置から測定プローブ9を30μmだけ遠ざけた後、スペクトル測定を行って血糖値を導いた。図16にその検証結果を示す。測定プローブ9を生体組織6に接触させていない状態でスペクトルを測定しているために、皮膚性状の変化を非常に小さく抑えることができ、良好な血糖推定が可能である。
【実施例7】
【0064】
実質的に実施例2の実施形態と同じであるが、測定プローブ9と生体組織6とが接触したことを検知した位置から測定プローブ9を30μmだけ押し込んだ後、スペクトル測定を行って血糖値を導いた。図17にその検証結果を示す。
【実施例8】
【0065】
図18は生体信号測定具の他例を示している。基本的構成は実施例1で示したものと同じであるが、ここでは測定プローブ9と生体組織6とプローブ支持体21とで囲まれる空間αを外部に連通させる通気口33をプローブ支持体21に形成している。なお、このような通気口33は図19に示すように測定プローブ9に設けたり、プローブ支持体21とスライダー26とを貫通するものとして形成してもよく、また複数の通気口33を形成して、一つを流入側、他を排出側とすることで、空気の流れを良くすることができる。
【0066】
いずれにせよ、このような通気口33の存在は、測定プローブ9を生体組織6に接触させていない時、生体組織6における測定プローブ9の先端面と対向する部分を外気に曝すことができて、汗をかくなどの皮膚性状の変化を小さく抑えることができ、これ故に良好な血糖推定が可能となる。
【0067】
上記通気口33にはフィルターを設けて、外部から塵や埃が測定プローブ9の先端面に付着することがないようにしておくことも好ましい。
【実施例9】
【0068】
通気口33を常時開放されたものとするとのではなく、例えば図20に示すように開閉弁36にて開閉できるようにしておくことも好ましい。測定時に開閉弁36を閉じることで、通気口33による空気の流出入が測定時のノイズとなってしまうことを避けることができる。
【実施例10】
【0069】
図21に示すように、上記通気口33に送風手段35を接続している。この送風手段35としては、空気ポンプのほかに、炭酸ガスボンベなどを用いてもよい。前記空間αに強制的に風を送ることができるために、生体組織6の性状の変化、殊に水分量の上昇を確実に抑えることができる。なお、測定を行う時には送風手段35からの送風を停止させることがノイズ低減の点で好ましい。また、ここでは通気口33をプローブ支持体21に設けているが、前述のように他の部分に通気口33を形成したものであってもよいのはもちろんである。
【実施例11】
【0070】
図22は測定プローブ9を生体組織6に接触乃至近接させて測定を行う時と、通気口33を利用して生体組織6の性状変化を抑える時との切換を簡便に行うことができるようにしたものを示しており、プローブ支持体21によって上下動自在に支持されているスライダー26(もしくは測定プローブ9)の上部には側方に突出する受け片26aが設けられている。
【0071】
また、プローブ支持体9には開閉弁36と通気口33とが設けられているとともに、開閉弁36は通気口33側に開口するポート36aに加えて、上記受け片26a側に開口するポート36bも備えている。そしてプローブ支持体9内には、軸39によって回動自在に支持された回動板38が配設されており、該回動板38は水平状態にある時、スライダー26の下端面に接触する。
【0072】
今、図22(a)に示すように開閉弁36を通じて空気を通気口33に供給する時、スライダー26はその受け片26aが空気圧を受けることで上昇して生体組織6から離れた状態にあり、この時、上記回動板38が水平状態にあってスライダー26の下端面を支えている。そして通気口33に入った空気は、生体組織6に接触して生体組織6の性状変化を抑制した後、外部に排出される。
【0073】
開閉弁36を閉じたり空気供給を停止すれば、スライダー26(測定プローブ9)は回動板38を回転させつつ降下して図22(b)に示すように生体組織6に測定プローブ9が近接乃至接触する。測定はこの状態で行う。
【0074】
開閉弁36を通じて再度空気を供給すれば、受け片26aが空気圧で押されることでスライダー26が上昇する。なお、回動板38はスライダー26が上昇を完了するまでスライダー26によって回転が阻止されるために、通気口33側から空気が漏れ出てスライダー26の上昇が妨げられることはない。
【0075】
スライダー26が上昇し終われば、回動板38が回転して生体組織6へと風を送る流路を開放するために、図22(a)に示す状態に戻る。
【実施例12】
【0076】
図23は生体組織6の表面温度との温度差が小さい空気を通気口33を通じて前記空間αに送り込むことができるようにしたもので、通気口33はその経路が長くなるようにプローブ支持体21内を一周するループ状に設けられているとともに、該通気口33の周囲にはヒータ線43が配設されている。また、上記通気口33の外気側の一端寄りに空気温度検知手段45を設けるとともに、プローブ支持体21の生体組織6との接触面に熱電対のような生体温度検知手段46を設けている。
【0077】
そして上記空気温度検知手段45と生体温度検知手段46とは上記ヒータ線43の発熱制御を行うヒータ制御回路44に接続されており、ヒータ制御回路44は生体温度検知手段46で検知された生体温度と、空気温度検知手段45で検知された空気温度との温度差に基づき、温度差が小さい時には発熱量を抑え、温度差が大きい時には発熱量を多くすることで、通気口33を経て前記空間αに入る空気の温度を生体温度に近い温度とする。冷たい空気が生体組織6に触れると生体組織6に性状変化が生じるが、これを抑えることができる。
【実施例13】
【0078】
図24に示したものは、時間を置いて複数回の測定を連続的に行う時、今回測定値が前回測定値から大きく変動した時、生体組織6の性状に変化があったとして、性状を元に戻すための処置を行う。このために、ここでは前記演算装置17に生体変動検出部38を設けるとともに、生体変動検出部38の出力で送風手段35及び流量調整弁37を制御することができるようにしている。
【0079】
生体変動検出部38による生体変動の検出には、たとえば前述の「水ピーク高さ」の値を用いる。この場合、予め、水ピーク高さ値の基準値と、水ピーク高さ値の許容変動量を設定する。なお、この許容変動量は、水ピーク高さ値の基準値からの変化量の許容値であり、この許容変動量を越える水ピーク高さ値の変化があった場合は、生体組織6に性状変化があったと判断する。
【0080】
具体的には、まずスペクトル測定を行って、測定されたスペクトルを演算装置17に取り込み、水ピーク高さ値を算出する。また、測定開始時の最初のスペクトルから算出した水ピーク高さ値を基準値とする。
【0081】
そして次のスペクトル測定から算出された水ピーク高さ値と上記基準値との差分を求めて、この差分が上記許容変動量(たとえば10000μAU)より小さい時には、対応が必要な性状変化が生体組織6に起こっていないと判断し、許容変動量を越える時には送風手段35を作動させるとともに流量調整弁37を開いて生体組織6表面に風を当てる。
【0082】
ここにおいて、上記送風手段35には送風方向の切り換えを行うことができるものを用いて、水ピーク高さ値が基準値からどちらに変動したかによって送風方向を異ならせることが好ましい。生体組織6に空気を吹き付ければ水ピーク高さ値を減少させることができ、空気を吸い上げれば皮膚表面に水分が引き上げられることで水ピーク高さ値を増加させることができるからである。また、変動量の値に応じて上記流量調整弁37で流量を制御することで、性状変化を元に戻すことを早く且つ的確に行うことができるものとなる。
【0083】
生体変動の検出に水ピーク高さ値を用いた例を示したが、これに限るものではなく、例えば測定されるスペクトルの1波長または複数の波長の吸光度値を用いてもよく、また受光素子15から出力される電圧信号値をそのまま用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明において用いる測定装置を示しており、(a)は全体構成の概略図、(b)はプローブ構成の概略図である。
【図2】本発明に用いたプローブ支持体の一例の概略断面図である。
【図3】本発明の実施例の検証結果を示す説明図である。
【図4】本発明に用いた他例の概略断面図である。
【図5】同上のプローブ構成の概略図である。
【図6】同上の検証結果の説明図である。
【図7】本発明に用いたプローブ支持体の他の一例の概略断面図である。
【図8】(a)(b)は同上の別の例の概略断面図と端面図である。
【図9】(a)(b)は同上の更に別の例の概略断面図と端面図である。
【図10】他の実施の形態の一例のフローチャートである。
【図11】同上のスコア値の表示の例の説明図である。
【図12】同上のスコア値の表示の他例を示す説明図である。
【図13】同上の検証結果を示す説明図である。
【図14】他の実施例の説明図である。
【図15】同上の検証結果の説明図である。
【図16】他の例の検証結果を示す説明図である。
【図17】更に他の例の検証結果を示す説明図である。
【図18】他例のプローブ構成の概略断面図である。
【図19】更に他例の概略断面図である。
【図20】更に他の例の概略断面図である。
【図21】別の例の概略断面図である。
【図22】(a)(b)は更に別の例の概略断面図である。
【図23】他例を示す概略平面図である。
【図24】異なる例のブロック図である。
【図25】従来例における検証結果の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
6 生体組織
9 測定プローブ
21 プローブ支持体
23 駆動手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外分光分析手法による生体成分濃度測定に用いる生体信号測定具及びこれを用いた生体信号測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体組織に近赤外光を照射した際の生体組織内を拡散反射した光を受光して得たスペクトル信号から生体組織の定性・定量分析を行う近赤外分光法は、生体内の種々の情報を非侵襲的に、試薬なしに、その場で即時に得ることができることから多くの医療分野で注目されている。
【0003】
特に血糖測定に関しては、糖尿病患者の血糖値管理に関する要望だけでなく、近年、集中治療室で血糖値を適切な範囲に管理することで患者の死亡率が大幅に低下するという報告があることから、非侵襲連続の血糖値モニターが注目されている。
【0004】
非侵襲的に血糖値を測定する技術手段の一つである近赤外分光法では、近赤外スペクトルのグルコース特異吸収波長において、グルコース濃度増減により吸光度が変化するので、その波長を含む生体組織からのスペクトルを測定し、そのスペクトル信号を多変量解析することによって生体内のグルコース濃度を検出する測定手法が特開平11−70101号公報や、特開2002一65645号公報、特開2006-87913号公報などに示されている。
【0005】
図1は上記特開2006-87913号公報に開示された非侵襲式の光学式血糖値測定システムを示すもので、ハロゲンランプ1から発光された近赤外光は熱遮蔽板2、ピンホール3、レンズ4、光ファイババンドル5を介して生体組織6に入射される。上記光ファイババンドル5は測定用光ファイバ7の一端とリファレンス用光ファイバ8の一端が接続され、測定用光ファイバ7の他端は測定プローブ9に接続され、リファレンス用光ファイバ8の他端はリファレンス用プローブ10に接続されており、さらに測定プローブ9及びリファレンスプローブ10は光ファイバを介して測定側出射体11及びリファレンス側出射体12に接続されている。
【0006】
この測定プローブ9は、その先端面を人体の前腕部などの生体組織6の表面に所定圧力で接触させた状態で近赤外スペクトル測定を行う。この時、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、測定用光ファイバ7内を伝達し、図1(b)に示すような測定プローブ9の先端から同心円周上に配置された12本の発光ファイバ20より生体組織6の表面に照射される。生体組織6に照射された測定光は、生体組織6内で拡散反射した後に、拡散反射光の一部が測定プローブ9の先端中央に配置されている受光ファイバ19に受光される。受光された光はこの受光側光ファイバ19を介して測定側出射体11から出射され、レンズ13を通して回折格子14に入射して分光された後、受光素子15において検出される。受光素子15で検出された光信号はA/Dコンバーター16でAD変換された後、パーソナルコンピュータなどの演算装置17に人力される。血糖値はこのスペクトルデータを解析することによって算出される。
【0007】
リファレンス測定はセラミック板など基準板18で反射した光を測定してこれを基準光とするもので、リファレンス用プローブ10は上記測定プローブ9と同一の構成を備えており、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光はリファレンス用光ファイバ8を通して、リファレンス用プローブ10の先端から基準板18の表面に照射される。基準板18での反射光はリファレンス用プローブ10の先端に配置された受光光ファイバ19を介してリファレンス側出射体12から出射される。
【0008】
上記の測定側出射体11とレンズ13の間、及びこのリファレンス側出射体12とレンズ13の間にはそれぞれシャッター22が配置してあり、シャッター22の開閉によって測定側出射体11からの光とリファレンス側出射体12からの光のいずれか一方が選択的に通過して受光素子15に導かれる。
【0009】
なお、測定プローブ9とリファレンス用プローブ10の端面は上述のように円上に配置された12本の発光ファイバ20と中心に配置された1本の受光ファイバ19で構成されているのであるが、発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lは650μmとしてある。また、測定側出射体11とリファレンス側出射体12の端面は図1(b)の右図のように出射ファイバ21(受光ファイバ19の他端)が中心に配置されている。
【0010】
近赤外分光法による定量・定性分析を行うにあたっては、通常、事前にデータ収集を行って得られたデータセットに対して多変量解析を行い、定量分析を行う場合は検量関数を作成し、目的とする成分濃度を算出する手法を用いることが一般的である。この時、ロバストな検量関数を得るには、可能な限り多様で幅広いデータを収集して上記データセットを作成することが良いとされているが、幅広いデータの収集に伴う時間・労力・コストの負担は大きな問題である。
【0011】
一方、生体成分の定量分析、とりわけ血糖値測定については、信号となる対象成分の吸光度が非常に小さく、たとえば上記の従来例に示される装置でグルコース信号変化を測定した場合、臨床的に意味がある測定に必要とされる10mg/dlの濃度変化に対するグルコース信号の吸光度変化は100μAU以下であり、生体変化や測定の再現性に関連するノイズに比べて極端に小さい(SN比が悪い)ため、通常の近赤外分光法で行われる検量関数作成法をそのまま生体成分の定性・定量分析に用いても有用な検量関数を得ることは難しい。また、その検量関数にしても被験者の個体差に起因するノイズを無くして適応性を高めるために個人毎に検量関数を作成することが多い。
【0012】
しかしながら集中治療室(ICU)のような医療施設では、治療におけるモニタリングに先立ち、その患者に対しスペクトル測定を行って検量関数を準備することは実用上不可能である。
【0013】
これに対して、上記特開2006−87913号公報で示されたものは、事前のスペクトルデータ収集を行わずに検量関数を作成する手法であり、ここでは生体あるいはシミュレーション等から得られた複数の近赤外吸光度スペクトルと、この中から選択される基準吸光度スペクトルの間の差分である複数の差分吸光度スペクトルを求め、前記差分吸光度スペクトルの各々に予め測定した被験者の基準吸光度スペクトルを合成して複数の合成吸光度スペクトルを求め、得られた複数の合成吸光度スペクトル用いて多変量解析することで検量関数を作成している。
【0014】
この場合、人為的に選択した外乱を組み込んで作成した検量モデルを用いることができることになるが、皮膚状態の変化を外乱として検量モデルに組み込んでいない場合は、皮膚状態が安定するまで測定を始められない欠点を持つことになる。この皮膚安定までに2時間程度の時間が必要な場合があり、実使用における用途を制約する原因となっている。図25に一例を示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。
【0015】
更には、血糖値の連続測定として、侵襲的に血糖値を測定する装置の開発も行われている。たとえば、米国FDA認可を受けているMedtronic MiniMed社(米国)の侵襲式連続血糖モニター(CGMS)は、センサ針を体内に挿入し、皮下組織中の体液のグルコース濃度測定を行うことで、最大72時間の連続測定が可能である。しかしながら、この装置についてもセンサ針を体内に挿入した後、2時間程度安定を待ち、さらにその後に採血により血糖値の較正を行う必要がある。初期の2時間は稼働時間である72時間に比較して短い時間であり、このために糖尿病患者の血糖値履歴管理や、急性期を過ぎた患者の血糖値管理等のような利用形態では問題とはならないが、実使用における用途を制約する原因となっている。
【特許文献1】特開2006−87913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、近赤外光を用いた生体成分測定、特に、血糖値の測定において、皮膚組織の状態変化に起因する外乱要因を小さくすることができて、皮膚状態が安定することを待たなくても精度の高い測定を行うことができる生体信号測定具及びこれを用いた生体信号測定方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本発明に係る生体信号測定具は、被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブと、該測定プローブを支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体と、該プローブ支持体に設けられて上記測定プローブを生体表面に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段とを備えていることに特徴を有している。
【0018】
特に上記測定プローブと生体組織表面との接触状態を検知する接触検知手段を有していると、生体組織表面に対する測定プローブの位置をより正確に且つ再現性よく定めることができる。
【0019】
この場合の接触検知手段としては、上記測定プローブの生体組織表面との接触面に配した電極によって電気的に接触を検知するものや、上記測定プローブによって生体からの反射光又は拡散光を受光することにより測定されたスペクトルの形状変化を解析して測定プローブと生体組織の表面との接触状態を検知するものを好適に用いることができる。
【0020】
測定プローブ先端面とプローブ支持体と生体組織表面とで囲まれる空間を外気に連通させる通気口を備えたものとすることも好ましい。生体組織における測定対象部分の性状変化を通気口を通じた通風によって抑えることができて、生体表面を良好な状態に保つことができ、測定精度を高めることができる。
【0021】
上記通気口を開閉する開閉手段を備えておれば、測定時には開閉手段を閉じておくことで、通気口を通じた通風がノイズの原因になってしまうことを避けることができる。
【0022】
通気口を通じて強制的に吸排する送風手段を備えたものであってもよく、この場合、確実に前記空間への通風を行うことができる。
【0023】
送風手段が前記駆動手段を兼ねているものでは、部品数を低減することができて小型で安価なものとすることができる。
【0024】
上記通気口を通って前記空間に至る空気の温度を生体温度に近づける温度調節手段を備えたものとすれば、前記空間に送り込む空気が性状変化の原因となってしまうことを避けることができる。
【0025】
更に測定した生体信号を元に通気口を通じた通気流量または通気方向の少なくとも一方を制御する制御手段を備えていると、より確実に性状変化を抑えて正確な測定を行うことができる。
【0026】
そして本発明に係る生体信号測定方法は、上記の生体信号測定具を用い、測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に位置させた状態で近赤外光の生体に対する照射及び反射光または拡散光の受光を行うことに特徴を有している。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、測定プローブが生体組織表面に与える変化が殆どなく、このために生体組織の変化に伴う外乱を除くことができるとともに、状態変化の安定を待たずとも任意時に正確な生体信号測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、本発明に係る生体信号測定具及び生体信号測定方法は、生体成分濃度、殊に血中グルコース濃度(血糖値)の測定のためのスペクトル測定に好適に用いることができるもので、上記スペクトル測定は、生体組織(皮膚)における真皮層を標的としている。
【0029】
生体の皮膚組織は、大きく表皮、真皮、皮下組織の3層の組織で構成されている。表皮組織は角質層を含む組織で、組織内に毛細血管はあまり発達していない。皮下組織は主に脂肪組織で構成されている。従って、この2つの組織内に含まれる水溶性の生体成分濃度、特に、グルコース濃度と血中グルコース濃度(血糖値)との相関は低いと考えられる。一方、真皮組織は毛細血管が発達していることと、水溶性の高い生体成分濃度、特に、グルコースが組織内で高い浸透性を有することから組織内生体成分濃度、特に、グルコース濃度は間質液(ISF:Interstitial Fluid)と同様に血糖値に追随して変化すると考えられ、このために真皮組織を標的としたスペクトル測定を行えば、生体成分濃度、特に血糖値変動と相関するスペクトル信号の測定が可能となる。
【0030】
図1に示した中心間距離Lが0.65mmの光ファイバで構成される測定プローブ9は、この真皮層を標的とするために開発されたものであり、本発明においてもこの測定プローブ9を好適に用いることができる。測定プローブ9における入射用光ファイバから照射された近赤外光を皮膚組織内で拡散反射させて検出用光ファイバに到達する一部の光を受光してスペクトル測定を行うものであり、この時、皮膚内における光の伝播経路は、“バナナ・シェイプ”と呼ばれる形状をとるが、上記中心間距離Lに設定されている場合、真皮層を通った光が検出用光ファイバに到達する。
【0031】
そして、本発明においては、上記測定プローブ9から近赤外光を皮膚表面に対して照射し且つ拡散反射光を測定プローブ9で受光するにあたり、測定プローブ9の皮膚との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定することで、測定プローブ9と皮膚の接触によって生じる皮膚の状態変化を軽減させて、測定プローブ9と皮膚の接触に起因する皮膚状態変化を抑えて、皮膚状態が安定するまでの時間を短縮することで任意時に正確な測定ができるようにしたものである。
【0032】
なお、血中濃度と相関が期待される生体成分濃度としては、グルコース(血糖値)以外に尿酸値、コレステロール量、中性脂肪量、アルブミン量、グロブリン量、酸素飽和度、ヘモグロビン量などがある。
【実施例1】
【0033】
本発明においても図1に示す構成の測定装置を用いた。ただし、測定プローブ9は図2に示すプローブ支持体21を用いて生体組織6の表面に正対させるものとしている。ここにおけるプローブ支持体21は、軸回りの回転が自在となるように軸受け24で支持されたねじ軸25を、測定プローブ9が固定されたスライダー26に設けた雌ねじ孔に螺合させたもので、駆動手段23によって上記ねじ軸25を回転させることでスライダー26と測定プローブ9とを図中上下方向に移動させることができるものであり、ここではねじ軸25のねじピッチを250μmとしていることから、ねじ軸25の1回転で、測定プローブ9を250μm移動させることができるものとなっている。
【0034】
スペクトル測定に際しては、プローブ支持体21の底面を生体組織6の表面に接触させた後、ねじ軸25を回転させることで、測定プローブ9の生体組織(皮膚)6との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定し、この状態で測定を行う。ここで、無負荷時の皮膚表面の位置とは、測定プローブ9が皮膚に接触する前の皮膚に負荷がかかっていない状態での表面位置のことである。また測定する位置は、特に−150μmから30μmの範囲で測定することが望ましい。測定プローブ9の先端面と正対する生体組織6は圧縮や角質水分量の上昇といった皮膚状態の変化が小さく、SN比の良好な近赤外スペクトル信号を確保できる。
【0035】
血糖測定実験では、血糖測定に先立って、採血により実測した血糖値を用い血糖モニターのキャリブレーションを行う。本キャリブレーション時に、採血と同時に測定した吸収スペクトルに後述の手法で得た差分テーブルを加算して仮想データセットを合成し、このデータセットからPLS回帰分析を行うことにより検量モデルを作成する。本実施例においては、検量モデル作成に用いた近赤外波長範囲は1,430nmから1,850nmで、PLSファクターの数は9である。キャリブレーションの後、近赤外スペクトルにより測定される血糖値は、キャリブレーション時に測定した血糖値からの相対変化値として求められる。本実施例による生体信号測定具の効果検証は、近赤外光による血糖値測定と比較データとして採血により血糖値を実測し、両者を比較することによって行った。測定は測定開始後5時間程度実施した。
【0036】
なお、ここでは差分テーブル作成用スペクトルの特徴量と基準スペクトルの特徴量との比に基づく補正を行っているのであるが、本実施例における差分テーブル作成は、光伝播シミュレーションとしてモンテカルロ法を採用して行った。モンテカルロ法は、コンピュータで発生させた0〜1の範囲の一様乱数に関して、目的事象の発生確率分布に基づく関数を使用し、目的事象を正確に再現することができる統計学的手法であり、光伝播を再現する場合は、媒体に入射する光を光子の集まりとみなして、光子1つ1つの媒体内での挙動を媒体の光学特性値(吸収係数、散乱係数、散乱位相関数、屈折率)に基づいて追跡する。その結果、全ての光子の挙動から統計的に光伝播を再現することができる。
【0037】
モンテカルロ法に基づいて光伝播シミュレーションを実施する場合、表皮層,真皮層及び皮下組織層の各々の吸収係数、散乱係数、屈折率、非等方散乱パラメータなどの光学特性値が必要となる。シミュレーションに用いる変動要因としてグルコース、たんぱく質、脂質、水分及び温度の5種類の生体内パラメータと散乱係数を、生体内パラメータの日内変動がカバーされるように予め設定した範用内で変化させ、シミュレーションによる吸光度スペクトルの作成を各パラメータの最大値と最小値を組み合わせた64通り(2の6乗)繰り返すことで作成した。このようにしてシミュレートして得た複数の吸光度スペクトルから、それらのシミュレーションスペクトルの平均スペクトルを減算することで複数の差分吸光度スペクトルを得たものが差分テーブルである。
【0038】
測定プローブ9をプローブ支持体21の底面より125μm(半回転)遠ざけた状態でスペクトル測定を行った場合の検証結果を図3に示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。皮膚組織の圧縮や角質水分量の上昇といった皮膚状態の変化を小さくすることができたことから、キャリブレーション直後より良好な血糖値推定が可能であった。
【0039】
対照実験として、測定プローブ9を生体組織6の表面に接触させたプローブ支持体21の底面から200μm引き上げた状態での実験を実施した。引き上げ距離以外は実施例1と同様である。対照実験における血糖予測値は、経口グルコース負荷前のほぼ一定の血糖値においては良好な推定ができたが、経口グルコース負荷の血糖値の上昇時においては予測値が血糖値に追随して変化することはなかった。これは、本対照実験における実験条件では、実施例1のように皮膚状態の変化は小さいが、皮膚表面と測定プローブ9との距離が離れすぎていて、皮膚の表面反射による信号が多くなるとともに皮膚組織内を伝播した信号成分が小さくなって、SN比の劣化が起こったためと考察される。また、プローブ支持体21の底面から測定プローブ9が500μmを越えて突出する状態で、つまりは測定プローブ9が生体組織6の表面を強く押す状態で測定した場合には、前述の図18に示す結果となった。
【0040】
従って、測定プローブ9の生体組織(皮膚)6との接触面を無負荷時の皮膚表面の位置より−150μmから500μmの範囲内に設定することが、近赤外スペクトルの生体成分に関するSN比を劣化させずに良好なスペクトル測定を行う条件であった。
【0041】
本実施例において、差分テーブルの作成手法として数値シミュレーションを利用した手法を示したが、これに限るものではなく、実際に、人間の皮膚を測定して得られた吸光度スペクトルからなるデータセットから得られた差分テーブルや、数値シミュレーションでなく、イントラリッピッドに代表される擬似生体を測定して得られる差分テーブルを用いてもかまわない。
【実施例2】
【0042】
測定プローブ9と生体組織6との接触状態を電気的に検知する接触検知手段を設けたもので、図5に示すように、測定プローブ9の外套部に電極30を設け、プローブ支持体21を絶縁体であるポリプラスチック株式会社製ジュラコンで作成した。また、信号発生器28及びモニター部29を用いて、これらと測定プローブ9の上記電極30とを導線31で接続するとともに、生体の測定プローブ9との接触面とは別の位置に電極27を接触させて信号発生器28に接続することで、測定プローブ9と生体組織6との通電状態を検知可能にした。なお、ここでは信号発信器28としてファンクションジェネレータを、モニター部29としてオシロスコープを用い、ファンクションジェネレータ28から発する周波数値を50kHz、電圧のP−P値を10Vとした。
【0043】
上記プローブ支持体22で保持されている測定プローブ9を徐々に前進させつつ、接触検知手段によって測定プローブ9の先端面が生体組織6の表面に接触したかどうかを検知することで、測定プローブ9が生体組織6の表面にわずかにでも接触した時点を検出し、その位置での測定プローブ9を基準位置として、前記−150μmから500μmの範囲内に測定プローブ9を位置させることを確実に行えるようにしたものである。なお、上記基準位置におけば、0μmのところに測定プローブ9を置いたことになる。この状態で先の実施例と同様にスペクトル測定を行い、測定後は、測定前と同様に生体から充分に離した位置で待機させる。検証結果を図6に示す。図中イが近赤外光による推定血糖値、ロが採血法による血糖値である。
【0044】
測定プローブ9と生体組織6とが接触したかどうかを電気的に確認することで、両者の位置関係を正確に把握することができるため、生体組織6を圧迫することがないようにすることを確実に行えるものであり、また測定プローブ9の生体組織6との接触程度の再現性が良くなるために、時間をおいて測定を繰り返す場合においても、測定プローブ9の生体組織6に対する相対位置の変化を殆ど無くすことができ、良好な血糖推定が可能となる。
【0045】
なお、ここでは測定プローブ9が生体組織6に接触した時のみ通電するように、測定プローブ9の外套部に電極30を作成したが、外套部に限ったものではなく、測定プローブ9の生体組織6との接触面が通電可能であれば良い。
【実施例3】
【0046】
図7に示すものは、プローブ支持体21に測定プローブ9の移動を制限することになるストッパーとしての突起部32を設けたもので、測定プローブ9を生体組織6の表面に近づける時、突起部32との当接で測定プローブ9先端面は生体組織6表面から微小距離だけ浮くことになる。
【0047】
上記突起部32は図8及び図9に示すように、測定プローブ9の先端面外周部に設けてもよく、この時、突起部32が接触検知手段における前記電極30を兼ねるものとすれば、測定プローブ9の先端面を生体組織6から所定の微小高さだけ離した状態に保つことが容易となる。
【実施例4】
【0048】
基本的には上記実施例2と同じであるが、ここでは次の手順で測定を行っている。すなわち、前記測定プローブ9を前記駆動手段23によってプローブ支持体21の底面と同じ位置に合わせた状態でスペクトルを測定し、これを基準スペクトルとする。なお、基準スペクトルの測定時における測定プローブ9の位置は上記位置に限るものでは無く、プローブ支持体21の底面よりも生体側に0.5mm近づけた位置や、逆に生体から0.1mm遠ざけた位置としてもよい。
【0049】
上記基準スペクトルの測定後、測定プローブ9が皮膚に接触しない位置(例えば約1mm)までいったん遠ざけて、この状態で次の検量モデルの作成及びキャリブレーションを行う。スペクトルを測定する時以外は、測定プローブ9が皮膚に接触していないようにすることで、皮膚組織の圧縮や角質水分量の上昇等の皮膚状態の変化を極力小さくして皮膚状態の安定を待たなくても、任意時の生体成分測定を可能とすること、及び皮膚組織の状態変化に起因する外乱要因を小さくすることで測定精度向上をはかるためである。
【0050】
検量モデルの作成は上記基準スペクトルから前記差分テーブルを利用して行う。また採血によって実測した血糖値を用いてキャリブレーションを行う。
【0051】
次に主成分分析用スペクトル群の算出を行う。これは上記基準スペクトルに上記差分テーブルを加算してスペクトル群(以下、主成分分析用スペクトル群と記述する)を算出する。前述のように差分テーブルはシミュレーションによって吸光度スペクトルの6種類の各パラメータの最大値と最小値の組み合わせ64通りを繰り返すことで作成したものなので、主成分分析用スペクトル群は64本のスペクトル群からなっている。
【0052】
次いで測定プローブ9を生体に近づけながらスペクトルを測定し、測定したスペクトルと前記主成分分析用スペクトル群とで主成分分析を行う。この時、ねじ軸25をたとえば1/5回転ずつ回転させて測定プローブ9の位置を微小値だけ変更(ねじ軸25のねじピッチが250μmの時、50μmに相当)してスペクトルを測定して後述するようにスコア値の算出、判定、血糖値の算出を行い、判定の結果、前記測定プローブ9の位置を変える必要がある場合は、前記ねじ軸25を回転させて前記測定プローブ9の位置を変えてスペクトルを測定することを繰り返す。
【0053】
上記判定は、測定したスペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトル群のスコア値の範囲内であるかどうかに応じて判定結果を出すもので、主成分分析用スペクトル群は64本のスペクトル群であるので64個のスコア値となり、測定スペクトルのスコア値と合わせて65個のデータ群となる。そして測定スペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内に有る場合は血糖値の算出を行い、範囲外の場合は測定プローブ9の上記位置変更を行う。なお、血糖値の算出を行う時も測定プローブ9を生体に接触しない位置(例えば1mm)まで遠ざける。
【0054】
図11は上記の算出したスコア値を表示した結果の一例で、図中7個のグラフはY軸に主成分数2〜8のスコア値をとっている。X軸は主成分数1のスコア値である。また各グラフ中の○で示した点が測定スペクトルのスコア値であり、それ以外の点は前記主成分分析用スペクトル群のスコア値である。
【0055】
ここにおいて、図11左上のグラフは測定スペクトルの主成分数1及び主成分数2のスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内に有り、同様に他のグラフも各グラフのX軸の主成分数1及びY軸の主成分数のスコア値に対して前記測定したスペクトルのスコア値が前記主成分分析用スペクトルの64個のスコア群の範囲内にあることを示している。この場合、測定スペクトルは主成分分析用スペクトルが主成分数1〜8のスコア値で範囲内になっていると判定する。これに対して図12はスコア値を算出した結果の別の一例であるが、ここでは主成分数1〜7は範囲内となっているが、主成分数8は範囲外となっていることから、範囲外にあると判定する。
【0056】
図13は上記のようにしてスペクトル測定を行って血糖値を求めた場合、つまり測定スペクトルが主成分数1〜8において主成分分析用スペクトルのスコア群の範囲内になるように駆動手段23で測定プローブ9を動かして測定した結果である。皮膚の安定状態を待たずとも、キャリブレーション直後より良好な血糖推定が可能となっっていることがわかる。
【0057】
また、検量モデルを作成する際のPLSファクターの数は前述のように9であるが、測定スペクトルが主成分数1〜8において主成分分析用スペクトルのスコア群の主成分数1〜7が範囲内となり主成分数8が範囲外であった場合、前記したPLSファクターの数を7として作成した検量モデルを用いて推定値を算出するようにしてもよい。この場合、PLSファクターを9として推定値を算出した場合と比較して同等以上の精度を得ることが可能である。
【実施例5】
【0058】
これは測定プローブ9と生体組織6との接触状態を、吸光度スペクトルの形状変化を解析することで検知していることを除けば、実質的に実施例2の実施形態と同じである。なお、吸光度スペクトルの形状変化を解析するために、1450nmの水吸収ピークの吸光度値から1655nmの吸光度値を引いた数値を、「水ピーク高さ値」と定義する。この水ピーク高さ値の変化を解析することで測定プローブ9と生体組織6の表面との接触状態を検知する。
【0059】
すなわち、スペクトル測定に際し、プローブ支持体21の底面を生体に接触させた後、接触面から測定プローブ9を遠ざける位置に少しずつ移動させるとともに、この間、吸光度スペクトルの測定を連続して行う。得られる各吸光度スペクトルから水ピーク高さ値を算出し、水ピーク高さ値に後述する大きな変化が確認できるまで測定プローブ9を移動させる。変化が確認できたならばその直前の位置を正しい測定位置として、その位置で測定した吸光度スペクトルを真値として血糖推定に用いる。
【0060】
具体的には、図14に示した1測定目を例に使うと、測定位置A,B,C・・・と、測定プローブ9を接触面から遠ざけながら測定を行い、水ピーク高さ値が小さくなる位置を探し、測定位置Eの時に水ピーク高さ値が小さくなっていることから(測定位置Dと測定位置Eとの水ピーク高さ値の差=0.032AU、他測定位置での水ピーク高さ値の変化=0.005AU未満)、水ピーク高さ値が小さくなる直前の位置、つまり測定位置Dを正しい測定位置として、この測定位置Dで測定した吸光度スペクトルを用いて血糖推定を行った。
【0061】
検証結果を図15に示す。測定されたスペクトルの変化から正しい測定位置を特定していることから、生体組織6と測定プローブ9との距離を正確に把握して、再現性のあるスペクトル測定を行うことができ、良好な血糖推定が得られる。
【0062】
なお、測定プローブ9は接触面から遠ざける方向に移動させるのではなく、接触面に近づける方向に動かしても良い。
【実施例6】
【0063】
実質的に実施例2の実施形態と同じであるが、測定プローブ9と生体組織6とが接触したことを検知した位置から測定プローブ9を30μmだけ遠ざけた後、スペクトル測定を行って血糖値を導いた。図16にその検証結果を示す。測定プローブ9を生体組織6に接触させていない状態でスペクトルを測定しているために、皮膚性状の変化を非常に小さく抑えることができ、良好な血糖推定が可能である。
【実施例7】
【0064】
実質的に実施例2の実施形態と同じであるが、測定プローブ9と生体組織6とが接触したことを検知した位置から測定プローブ9を30μmだけ押し込んだ後、スペクトル測定を行って血糖値を導いた。図17にその検証結果を示す。
【実施例8】
【0065】
図18は生体信号測定具の他例を示している。基本的構成は実施例1で示したものと同じであるが、ここでは測定プローブ9と生体組織6とプローブ支持体21とで囲まれる空間αを外部に連通させる通気口33をプローブ支持体21に形成している。なお、このような通気口33は図19に示すように測定プローブ9に設けたり、プローブ支持体21とスライダー26とを貫通するものとして形成してもよく、また複数の通気口33を形成して、一つを流入側、他を排出側とすることで、空気の流れを良くすることができる。
【0066】
いずれにせよ、このような通気口33の存在は、測定プローブ9を生体組織6に接触させていない時、生体組織6における測定プローブ9の先端面と対向する部分を外気に曝すことができて、汗をかくなどの皮膚性状の変化を小さく抑えることができ、これ故に良好な血糖推定が可能となる。
【0067】
上記通気口33にはフィルターを設けて、外部から塵や埃が測定プローブ9の先端面に付着することがないようにしておくことも好ましい。
【実施例9】
【0068】
通気口33を常時開放されたものとするとのではなく、例えば図20に示すように開閉弁36にて開閉できるようにしておくことも好ましい。測定時に開閉弁36を閉じることで、通気口33による空気の流出入が測定時のノイズとなってしまうことを避けることができる。
【実施例10】
【0069】
図21に示すように、上記通気口33に送風手段35を接続している。この送風手段35としては、空気ポンプのほかに、炭酸ガスボンベなどを用いてもよい。前記空間αに強制的に風を送ることができるために、生体組織6の性状の変化、殊に水分量の上昇を確実に抑えることができる。なお、測定を行う時には送風手段35からの送風を停止させることがノイズ低減の点で好ましい。また、ここでは通気口33をプローブ支持体21に設けているが、前述のように他の部分に通気口33を形成したものであってもよいのはもちろんである。
【実施例11】
【0070】
図22は測定プローブ9を生体組織6に接触乃至近接させて測定を行う時と、通気口33を利用して生体組織6の性状変化を抑える時との切換を簡便に行うことができるようにしたものを示しており、プローブ支持体21によって上下動自在に支持されているスライダー26(もしくは測定プローブ9)の上部には側方に突出する受け片26aが設けられている。
【0071】
また、プローブ支持体9には開閉弁36と通気口33とが設けられているとともに、開閉弁36は通気口33側に開口するポート36aに加えて、上記受け片26a側に開口するポート36bも備えている。そしてプローブ支持体9内には、軸39によって回動自在に支持された回動板38が配設されており、該回動板38は水平状態にある時、スライダー26の下端面に接触する。
【0072】
今、図22(a)に示すように開閉弁36を通じて空気を通気口33に供給する時、スライダー26はその受け片26aが空気圧を受けることで上昇して生体組織6から離れた状態にあり、この時、上記回動板38が水平状態にあってスライダー26の下端面を支えている。そして通気口33に入った空気は、生体組織6に接触して生体組織6の性状変化を抑制した後、外部に排出される。
【0073】
開閉弁36を閉じたり空気供給を停止すれば、スライダー26(測定プローブ9)は回動板38を回転させつつ降下して図22(b)に示すように生体組織6に測定プローブ9が近接乃至接触する。測定はこの状態で行う。
【0074】
開閉弁36を通じて再度空気を供給すれば、受け片26aが空気圧で押されることでスライダー26が上昇する。なお、回動板38はスライダー26が上昇を完了するまでスライダー26によって回転が阻止されるために、通気口33側から空気が漏れ出てスライダー26の上昇が妨げられることはない。
【0075】
スライダー26が上昇し終われば、回動板38が回転して生体組織6へと風を送る流路を開放するために、図22(a)に示す状態に戻る。
【実施例12】
【0076】
図23は生体組織6の表面温度との温度差が小さい空気を通気口33を通じて前記空間αに送り込むことができるようにしたもので、通気口33はその経路が長くなるようにプローブ支持体21内を一周するループ状に設けられているとともに、該通気口33の周囲にはヒータ線43が配設されている。また、上記通気口33の外気側の一端寄りに空気温度検知手段45を設けるとともに、プローブ支持体21の生体組織6との接触面に熱電対のような生体温度検知手段46を設けている。
【0077】
そして上記空気温度検知手段45と生体温度検知手段46とは上記ヒータ線43の発熱制御を行うヒータ制御回路44に接続されており、ヒータ制御回路44は生体温度検知手段46で検知された生体温度と、空気温度検知手段45で検知された空気温度との温度差に基づき、温度差が小さい時には発熱量を抑え、温度差が大きい時には発熱量を多くすることで、通気口33を経て前記空間αに入る空気の温度を生体温度に近い温度とする。冷たい空気が生体組織6に触れると生体組織6に性状変化が生じるが、これを抑えることができる。
【実施例13】
【0078】
図24に示したものは、時間を置いて複数回の測定を連続的に行う時、今回測定値が前回測定値から大きく変動した時、生体組織6の性状に変化があったとして、性状を元に戻すための処置を行う。このために、ここでは前記演算装置17に生体変動検出部38を設けるとともに、生体変動検出部38の出力で送風手段35及び流量調整弁37を制御することができるようにしている。
【0079】
生体変動検出部38による生体変動の検出には、たとえば前述の「水ピーク高さ」の値を用いる。この場合、予め、水ピーク高さ値の基準値と、水ピーク高さ値の許容変動量を設定する。なお、この許容変動量は、水ピーク高さ値の基準値からの変化量の許容値であり、この許容変動量を越える水ピーク高さ値の変化があった場合は、生体組織6に性状変化があったと判断する。
【0080】
具体的には、まずスペクトル測定を行って、測定されたスペクトルを演算装置17に取り込み、水ピーク高さ値を算出する。また、測定開始時の最初のスペクトルから算出した水ピーク高さ値を基準値とする。
【0081】
そして次のスペクトル測定から算出された水ピーク高さ値と上記基準値との差分を求めて、この差分が上記許容変動量(たとえば10000μAU)より小さい時には、対応が必要な性状変化が生体組織6に起こっていないと判断し、許容変動量を越える時には送風手段35を作動させるとともに流量調整弁37を開いて生体組織6表面に風を当てる。
【0082】
ここにおいて、上記送風手段35には送風方向の切り換えを行うことができるものを用いて、水ピーク高さ値が基準値からどちらに変動したかによって送風方向を異ならせることが好ましい。生体組織6に空気を吹き付ければ水ピーク高さ値を減少させることができ、空気を吸い上げれば皮膚表面に水分が引き上げられることで水ピーク高さ値を増加させることができるからである。また、変動量の値に応じて上記流量調整弁37で流量を制御することで、性状変化を元に戻すことを早く且つ的確に行うことができるものとなる。
【0083】
生体変動の検出に水ピーク高さ値を用いた例を示したが、これに限るものではなく、例えば測定されるスペクトルの1波長または複数の波長の吸光度値を用いてもよく、また受光素子15から出力される電圧信号値をそのまま用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明において用いる測定装置を示しており、(a)は全体構成の概略図、(b)はプローブ構成の概略図である。
【図2】本発明に用いたプローブ支持体の一例の概略断面図である。
【図3】本発明の実施例の検証結果を示す説明図である。
【図4】本発明に用いた他例の概略断面図である。
【図5】同上のプローブ構成の概略図である。
【図6】同上の検証結果の説明図である。
【図7】本発明に用いたプローブ支持体の他の一例の概略断面図である。
【図8】(a)(b)は同上の別の例の概略断面図と端面図である。
【図9】(a)(b)は同上の更に別の例の概略断面図と端面図である。
【図10】他の実施の形態の一例のフローチャートである。
【図11】同上のスコア値の表示の例の説明図である。
【図12】同上のスコア値の表示の他例を示す説明図である。
【図13】同上の検証結果を示す説明図である。
【図14】他の実施例の説明図である。
【図15】同上の検証結果の説明図である。
【図16】他の例の検証結果を示す説明図である。
【図17】更に他の例の検証結果を示す説明図である。
【図18】他例のプローブ構成の概略断面図である。
【図19】更に他例の概略断面図である。
【図20】更に他の例の概略断面図である。
【図21】別の例の概略断面図である。
【図22】(a)(b)は更に別の例の概略断面図である。
【図23】他例を示す概略平面図である。
【図24】異なる例のブロック図である。
【図25】従来例における検証結果の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
6 生体組織
9 測定プローブ
21 プローブ支持体
23 駆動手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブと、該測定プローブを支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体と、該プローブ支持体に設けられて上記測定プローブを生体表面に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段とを備えていることを特徴とする生体信号測定具。
【請求項2】
上記測定プローブと生体組織表面との接触状態を検知する接触検知手段を有していることを特徴とする請求項1記載の生体信号測定具。
【請求項3】
接触検知手段は上記測定プローブの生体組織表面との接触面に配した電極によって電気的に接触を検知するものであることを特徴とする請求項2記載の生体信号測定具。
【請求項4】
上記測定プローブの生体組織表面との接触面を生体組織表面から浮かせる突起部を備えていることを特徴とする請求項3記載の生体信号測定具。
【請求項5】
接触検知手段は、上記測定プローブによって生体からの反射光又は拡散光を受光することにより測定されたスペクトルの形状変化を解析して測定プローブと生体組織の表面との接触状態を検知するものであることをことを特徴とする請求項2記載の生体信号測定具。
【請求項6】
測定プローブ先端面とプローブ支持体と生体組織表面とで囲まれる空間を外気に連通させる通気口を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体信号測定具。
【請求項7】
通気口を開閉する開閉手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の生体信号測定具。
【請求項8】
通気口を通じて強制的に吸排する送風手段を備えていることを特徴とする請求項6または7記載の生体信号測定具。
【請求項9】
送風手段が前記駆動手段を兼ねていることを特徴とする請求項8記載の生体信号測定具。
【請求項10】
通気口を通って前記空間に至る空気の温度を生体温度に近づける温度調節手段を備えていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの1項に記載の生体信号測定具。
【請求項11】
測定した生体信号を元に通気口を通じた通気流量または通気方向の少なくとも一方を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生体信号測定具。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の生体信号測定具を用い、測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に位置させた状態で近赤外光の生体に対する照射及び反射光または拡散光の受光を行うことを特徴とする生体信号測定方法。
【請求項1】
被験者の生体に近赤外光を照射するとともに前記生体からの反射光又は拡散光を受光する生体信号測定用の測定プローブと、該測定プローブを支持するとともに前記生体に接触するプローブ支持体と、該プローブ支持体に設けられて上記測定プローブを生体表面に対して直交する方向に移動させて測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段とを備えていることを特徴とする生体信号測定具。
【請求項2】
上記測定プローブと生体組織表面との接触状態を検知する接触検知手段を有していることを特徴とする請求項1記載の生体信号測定具。
【請求項3】
接触検知手段は上記測定プローブの生体組織表面との接触面に配した電極によって電気的に接触を検知するものであることを特徴とする請求項2記載の生体信号測定具。
【請求項4】
上記測定プローブの生体組織表面との接触面を生体組織表面から浮かせる突起部を備えていることを特徴とする請求項3記載の生体信号測定具。
【請求項5】
接触検知手段は、上記測定プローブによって生体からの反射光又は拡散光を受光することにより測定されたスペクトルの形状変化を解析して測定プローブと生体組織の表面との接触状態を検知するものであることをことを特徴とする請求項2記載の生体信号測定具。
【請求項6】
測定プローブ先端面とプローブ支持体と生体組織表面とで囲まれる空間を外気に連通させる通気口を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体信号測定具。
【請求項7】
通気口を開閉する開閉手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の生体信号測定具。
【請求項8】
通気口を通じて強制的に吸排する送風手段を備えていることを特徴とする請求項6または7記載の生体信号測定具。
【請求項9】
送風手段が前記駆動手段を兼ねていることを特徴とする請求項8記載の生体信号測定具。
【請求項10】
通気口を通って前記空間に至る空気の温度を生体温度に近づける温度調節手段を備えていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの1項に記載の生体信号測定具。
【請求項11】
測定した生体信号を元に通気口を通じた通気流量または通気方向の少なくとも一方を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生体信号測定具。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の生体信号測定具を用い、測定プローブの生体組織表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に位置させた状態で近赤外光の生体に対する照射及び反射光または拡散光の受光を行うことを特徴とする生体信号測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−104838(P2008−104838A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17069(P2007−17069)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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