説明

生体情報検出システム

【課題】生体情報検出システムの電力消費量を低減し、電池交換等の煩わしさを軽減すること。
【解決手段】本発明の生体情報検出システムは、被験者の腕に装着される表示装置と、被験者の体に近接して配置されるセンサ装置とを備え、表示装置は表示部とモーションセンサと第1通信部とを有していると共に、センサ装置はバイタルセンサと第2通信部とを有し、モーションセンサが被験者の表示部を注視する姿勢を検出した後、第1通信部は第2通信部に対して制御信号を送信し、制御信号を第2通信部により受信したセンサ装置は、バイタルセンサで検出された生体情報を第2通信部により第1通信部へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生体情報を検出する生体情報検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被験者の生体情報を検出するための生体情報検出システムについて、図13、図14に示す。図13に示した生体情報検出システムは、被験者の運動中の心拍数をモニタリングするものである。
【0003】
図13に示した従来の生体情報検出システムは、被験者102の心拍を検出するために被験者102の胸部上に配置されたセンサ装置100と、被験者102の手首に装着されると共に、センサ装置100にて検出された被験者102の心拍情報を表示する表示装置101とを有している。
【0004】
図13に示した生体情報検出システムの具体的な動作について、図14のブロック図を用いて説明する。図14において、表示装置101は、センサ装置100から送信された心拍情報を受信する第1通信部103と、受信した心拍情報を被験者へ表示する表示部104と、第1通信部103の動作内容と表示部104の動作内容とを制御する第1制御部105とを有している。また、センサ装置100は、被験者102の心拍情報を検出するバイタルセンサ106と、検出された心拍情報を第1通信部103へ送信する第2通信部107と、バイタルセンサ106において検出された心拍情報を処理すると共に、バイタルセンサ106の動作内容と第2通信部107の動作内容とを制御する第2制御部108とを有している。
【0005】
ここで、第2通信部107は第1通信部103へ常時または一定間隔で心拍情報を送信するように第2制御部108により制御されており、また、表示部104は、常時、心拍情報を表示するように第1制御部105により制御されている。
【0006】
尚、センサ装置100と表示装置101とは、共に、電池にて駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−168602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来の生体情報検出システムにおいては、第2通信部107が第1通信部103へ常時または一定間隔で心拍情報を送信しており、更に、表示部104は、常時、心拍情報を表示しているため、センサ装置100及び表示装置101共に消費電力が大きく、頻繁に電池交換を行う必要があった。
【0009】
そこで、本発明の生体情報検出システムは、電力消費量を低減し、電池交換等の煩わしさを軽減する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の生体情報検出システムは、被験者の腕に装着される表示装置と、被験者の体に近接して配置されるセンサ装置とを備え、表示装置は表示部とモーションセンサと第1通信部とを有していると共に、センサ装置はバイタルセンサと第2通信部とを有し、モーションセンサが被験者の表示部を注視する姿勢を検出した後、第1通信部は第2通信部に対して制御信号を送信し、制御信号を第2通信部により受信したセンサ装置は、バイタルセンサで検出された生体情報を第2通信部により第1通信部へ送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体情報検出システムは、被験者が自分の生体情報を確認するために、被験者の腕に装着された表示部を注視した時に、センサ装置から表示装置に生体情報が送信される。つまり、生体情報が必要なタイミングにおいて、センサ装置から表示装置に生体情報が送信されるため、常時、または、一定間隔で生体情報を送信し続け、受信し続ける必要がない。このため、センサ装置及び表示装置の消費電力を低減する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る生体情報検出システムを装着した様子を示す図
【図2】本発明に係る生体情報検出システムのブロック図
【図3】被験者の腕の概略図
【図4】角速度センサの検出軸を表わす概念図
【図5】被験者の腕の外観図
【図6】被験者の腕の外観図
【図7】被験者の下膊の断面図
【図8】被験者の下膊の断面図
【図9】本発明に係る生体情報検出システムのブロック図
【図10】表示部を注視した際の実際のモーションセンサの検出結果例を示す図
【図11】表示部を注視した際の実際のモーションセンサの検出結果例を示す図
【図12】モーションセンサの検出結果例を示す図
【図13】従来の生体情報検出システムを装着した様子を示す図
【図14】従来の生体情報検出システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る本発明の生体情報検出システム1について、図1〜8を用いて説明する。
【0014】
図1に示した生体情報検出システム1は、被験者13の心拍を検出するために被験者13の胸部上に配置されたセンサ装置3と、被験者13の手首に装着されると共に、センサ装置3にて検出された被験者13の心拍情報を表示する表示装置2とを有している。
【0015】
図1に示した生体情報検出システム1の具体的な動作について、図2のブロック図を用いて説明する。図2において、生体情報検出システム1は、被験者13の手首に装着された表示装置2と、被験者13の胸部に装着されたセンサ装置3からなる。そして、表示装置2は、センサ装置3から送信された心拍情報を受信する第1通信部7と、被験者13の動作を検出するモーションセンサ5と、モーションセンサ5により検出された被験者13の動作に関する生体情報と、センサ装置3から受信した生体情報(本実施の形態の場合、心拍情報)とが記録される第1メモリ8とを有している。更に、表示装置2は、モーションセンサ5により検出された被験者13の動作に関する生体情報と、センサ装置3から受信した生体情報とを被験者13へ表示して知らせる表示部4と、第1通信部7と表示部4とモーションセンサ5と第1メモリ8のそれぞれの動作内容を制御する第1制御部6とを有している。
【0016】
また、センサ装置3は、被験者13の心拍情報を検出するバイタルセンサ10と、バイタルセンサ10において検出された心拍情報が記録される第2メモリ11と、第2メモリ11に記録されている生体情報を第1通信部7へ送信する第2通信部9と、バイタルセンサ10と第2通信部9と第2メモリ11のそれぞれの動作内容を制御する第2制御部12とを有している。なお、本実施の形態では生体情報を心拍情報としているが、生体情報とは身体の状態を数値という客観的な指標で示した情報を意味しており、例えば体温、脈拍、血圧、呼吸などの情報でも構わない。また、センサ装置3は、常時、被験者13の身体に装着されている必要はなく、例えば、エアロバイクのペダル上にセンサ装置3を配置し、被験者13がペダル上に足を置いて使用するような形態でも良い。
【0017】
本発明の生体情報検出システム1の特長の1つは、バイタルセンサ10において検出された生体情報が、常時または一定間隔でセンサ装置3から表示装置2へ送信されない点である。つまり、被験者13がバイタルセンサ10で検出された生体情報を確認するために、被験者13の手首に装着された表示装置2の表示部4を注視した時に、センサ装置3から表示装置2へ生体情報が送信される。要するに、生体情報が必要なタイミングにおいて、センサ装置3から表示装置2に生体情報が送信されるため、常時、または、一定間隔でセンサ装置3が生体情報を送信し続け、表示装置2が生体情報を受信し続ける必要がない。このため、センサ装置3及び表示装置2の消費電力を低減する事が可能となる。
【0018】
尚、モーションセンサ5において検出された生体情報およびバイタルセンサ10で検出されて第2通信部9を介して送信された生体情報は第1メモリ8に記録され、例えば数日間の生体情報が第1メモリ8に記録された後、外部機器(例えば、携帯電話等)に無線又は有線にて出力される。この際、第1通信部7を介して、外部機器に生体情報を出力しても良い。同様に、バイタルセンサ10において検出された生体情報は第2メモリ11に記録され、例えば数日間の生体情報が第2メモリ11に記録された後、外部機器(例えば、携帯電話等)に無線又は有線にて出力される。この際、第2通信部9を介して、外部機器に生体情報を出力しても良い。
【0019】
更に、第1メモリ8又は第2メモリ11に記録された生体情報のデータ量が所定量を超えた場合には、表示部4を介して被験者13にその旨を伝え、第1メモリ8又は第2メモリ11に記録された生体情報を外部機器に出力するように促しても良いし、自動的に第1メモリ8又は第2メモリ11に記録された生体情報を外部機器に出力する構成としても良いし、さらに自動的に第1メモリ8又は第2メモリに記録された生体情報を自動的に古いデータから削除しても良い。
【0020】
更にモーションセンサ5において検出される被験者13の動きが所定期間以上、検出されない場合にはバイタルセンサ10で検出される生体情報を第2通信部9で送信せずに強制的に第2メモリ11に記録し続ける構成としても良い。本構成により例えば被験者13が睡眠時の場合には、表示装置2を被験者13が確認することがなくなるため、無駄な消費電力を削減することが出来る。
【0021】
被験者13が被験者13の手首に装着された表示装置2の表示部4を注視しているか否かを判定する方法としては、モーションセンサ5の検出結果を用いる方法が考えられる。
【0022】
複数の加速度センサ、または、複数の角速度センサ、または、少なくとも1つの加速度センサと少なくとも1つの角速度センサによりモーションセンサ5を実現し、これらの複数のセンサの検出結果を基にして判定を行う。具体的には、予め、複数の被験者に表示装置2を装着(例えば、各被験者の手首に)してもらい、各被験者に表示装置2の表示部4を注視する動作をしてもらい、その一連動作(被験者が表示部4を注視する動作を開始する前から、表示部4を注視する動作へ移行し、実際に表示部4を注視する動作を行い、それを一定期間継続するといった一連動作)の間の上記複数センサの出力値を記録する。そして、これら統計データから、被験者が表示部4を注視する動作を行う際に現れるモーションセンサ5の検出結果の一般的特徴を抽出する。そして、この抽出されたモーションセンサ5の検出結果の一般的特徴をリファレンスとし、判定基準を策定しておく。
【0023】
判定基準としては、複数のセンサ出力値に対し所定の閾値を設け、この閾値を基準に判定しても良いし、複数のセンサ出力値の時間的変化量に対して所定の閾値を設け、この閾値を基準に判定しても良いし、更に、それら2つの閾値を併用して判定を行っても良い。
【0024】
具体的には、被験者13が表示部4を注視している期間においては、被験者13は、表示装置2の位置を表示部4が視認できる領域に維持しようと心掛ける。このため、表示装置2が備えるモーションセンサ5の検出結果は、被験者13が表示部4を注視している期間において、大きな時間的変化を生じないことが予想される。故に、被験者13が表示部4を注視している期間と、それ以外の期間では、モーションセンサ5の検出結果が大きく異なった特徴を有してくる。図10は、被験者13が表示部4を注視した際の実際のモーションセンサ5の検出結果例である。本結果は、被験者13が歩行している期間と表示部4を注視している期間とにおける加速度センサの出力結果を示しており、横軸は時間、縦軸は加速度センサの出力レベルを表している。本結果より表示部4を注視している期間においては加速度センサの時間的変化が少なく、歩行している期間に比べて特徴のある加速度センサ検出結果が得られることが分かる。本発明は、被験者13のこの動作的特徴に気付き、それを利用する事で、低消費電力化が可能な新規な生体情報検出システム1を実現した。
【0025】
尚、表示装置2が被験者13のどちらの腕に装着されているかに応じて、判定基準として用いる所定の閾値が切替えられる構成としてもよい。具体的には、モーションセンサ5が少なくとも1つの加速度センサを有しており、この加速度センサの検出結果から表示装置2が被験者13のどちらの腕に装着されているかを判定し、この判定結果に基づいて、モーションセンサ5が被験者13の表示部4を注視する姿勢を検出する際に用いられる閾値を切替える構成である。このような構成を採用することにより、判定基準の精度を向上させることが可能となり、被験者13の注視姿勢の検出精度を更に向上させることができる。
【0026】
尚、モーションセンサ5を構成する加速度センサにより、表示装置2がどちらの腕に装着されているかを判定する方法の一例を、以下、示す。
【0027】
被験者13は、表示部4の画面の上下方向を考慮して腕に表示装置2を装着する。このため、被験者13が立った姿勢で両腕を下方に垂らした状態においては、表示装置2を左腕に装着した場合と、右腕に装着した場合とで、下方を向いている表示装置2の面が異なってくる。故に、下方を向いている表示装置2の面を加速度センサにより検出することで、どちらの腕に表示装置2が装着されているかを判定できる。尚、被験者13が両腕を上方に上げた状態も考えられるが、統計的には両腕を下方に垂らした状態でいる時間が最も長いため、一定期間における加速度センサの検出結果を分析することで、どちらの腕に表示装置2が装着されているかを判定してもよい。図12(a)は被験者13が表示装置2を左腕に装着した場合であり、図12(b)は被験者13が表示装置2を右腕に装着した場合の実際のモーションセンサ5の検出結果例である。本結果から、左腕に装着した場合と右腕に装着した場合とで加速度センサの少なくとも1軸の検出結果の極性が大きく変化するため、どちらの腕に表示装置2が装着されているか判定することが出来る。
【0028】
上記の事例では、複数の被験者から得られたモーションセンサ5の検出結果を統計処理することで判定基準を決定したが、これに限る必要はなく、生体情報検出システム1を装着して使用する被験者13が、使用前に、表示部4を注視する一連動作を行い、この際に出力されたモーションセンサ5の出力結果を基に、被験者13が表示部4を注視する姿勢をしているか否かを判定する基準を決定しても良い。これにより、各被験者が持っている独特の動作特徴をも踏まえた判定基準を得る事ができる。
【0029】
更には、例えば、モーションセンサ5を1つの角速度センサにより実現し、この角速度センサの検出軸が、表示装置2を装着している被験者の下膊の軸と概ね平行となるように、表示装置2に角速度センサが配置されても良い。ここで、「被験者13の下膊の軸」と「角速度センサの検出軸」とについて、図3及び図4を用いて説明する。
【0030】
図3において、被験者13の腕は、手首から肘までの下膊14(手首も含む)と、肩から肘までの上膊15とで構成されている。ここで「被験者13の下膊14の軸」とは、下膊内部の骨16と概ね平行な軸を指している。本発明において、「腕の軸」とは、表示装置2が下膊14に装着されている場合には、下膊内部の骨16と概ね平行な軸を指しており、また、表示装置2が上膊15に装着されている場合には、上膊内部の骨17に概ね平行な軸を指している。
【0031】
図4において、「角速度センサの検出軸」とは、角速度センサが検出する回転運動の円19の中心点を通り、円19の存在する面に対して垂直な軸18を指している。
【0032】
つまり、図4の角速度センサの検出軸18が、図3の下膊14の軸(下膊内部の骨16と概ね平行な軸)と概ね平行となるように、被験者13の手首に装着される表示装置2(図3中では便宜上表記せず)にモーションセンサ5(図3中では便宜上表記せず)を配置する。このような構成を採用することにより、被験者13が下膊14の軸(下膊内部の骨16と概ね平行な軸)を中心とした回転動作20をしたときの角速度センサの検出値を大きくする事が可能となる。被験者13が手首に装着された表示装置2の表示部4を視認しようとする際、被験者13は図3に示した下膊14の軸を中心とした回転動作20を行う可能性が極めて高い。本発明は、被験者13のこの動作特徴に着目し、回転動作20の検出を少数の角速度センサを用いて精度良く行うことで、消費電力の少ない生体情報検出システムを実現できる。図11は、被験者13が表示部4を注視した際の実際のモーションセンサ5の検出結果例である。本結果は被験者13が歩行している期間と表示部4を注視している期間における、角速度センサの出力結果を示しており横軸は時間、縦軸はセンサ出力レベルを表している。本結果より表示部4を注視している期間の前後において角速度センサの少なくとも1軸(下膊14の軸)において急峻な変化が確認出来る。
【0033】
尚、上記においては、モーションセンサ5を1つの角速度センサにて実現した場合について説明したが、複数の角速度センサにてモーションセンサ5を実現し、複数の角速度センサの検出結果から被験者13の回転動作20を検出し、被験者13が表示部4を注視しているか否かを判断しても良い。
【0034】
また、表示装置2は、下膊内面の上方、又は、下膊外面の上方に配置される表示部を有していてもよい。本発明において、「下膊内面」とは、概ね、図5に示す領域21を指しており、概ね下膊14の掌24に接した面を指している。また、本発明において、「下膊外面」とは、概ね、図6に示す領域22を指しており、概ね下膊14の手の甲25に接した面を指している。尚、図5及び図6においては、便宜上、手首に装着された表示装置2は記載していない。
【0035】
次に、本発明における「下膊内面の上方」および「下膊外面の上方」について、図7、図8を用いて具体的に示す。
【0036】
図7は、図6中の線23における下膊14の断面図であり、表面の平坦な面26に掌24と下膊14を押し当てた状態を示している。下膊外面側には表示装置2が装着されており、表示装置2の下膊14に接していない面には、表示部4が配置されている。図7においては、便宜上、図示していないが、表示装置2は下膊14に対してバンド等により固定される。
【0037】
次に、図8を用いて、本発明における「下膊内面の上方」および「下膊外面の上方」の記載の定義について説明する。図8は、図7と同様に、図6中の線23における下膊の断面図であり、表面の平坦な面26に掌24と下膊14を押し当てた状態を示している。
【0038】
直線27は、面26に垂直な直線であるとともに、図8において、下膊14の左側面に接する直線でもある。また、直線28は、面26に垂直な直線であるとともに、図8において、下膊14の右側面に接する直線でもある。
【0039】
本発明における「下膊内面の上方」とは、図8中の領域29を指しており、直線27と直線28と図8における下膊14の下面に接する斜線領域を指している。
【0040】
本発明における「下膊外面の上方」とは、図8中の領域30を指しており、直線27と直線28と図8における下膊14の上面に接する斜線領域を指している。
【0041】
つまり、本発明における「下膊内面」とは、図8中の領域29に接している下膊14の表面を指しており、更に、本発明における「下膊外面」とは、図8中の領域30に接している下膊14の表面を指している。
【0042】
本発明において、「表示装置2は、下膊内面の上方、又は、下膊外面の上方に配置される表示部を有する」とは、図8における領域29または領域30の中に表示部4の少なくとも一部が存在することを指している。このような構成を採用することにより、被験者13が表示部4を視認しようとする際には、必ず、図3に示した下膊14の回転運動20を行うため、回転運動20の状態をモーションセンサ5で検出することにより、被験者13が表示部4を注視しているか否かを判定することが容易となる。つまり、腕を胴体の側面に自然に垂らした状態、及び、腕を身体の前方に自然に置いた状態等においては、人の身体の構造上、下膊14の側面(図8において、直線27または直線28に接した下膊14の側面付近)が見え、下膊内面の全体又は下膊外面の全体を見ることは困難である。ゆえに、図8に示すように、表示装置2が、下膊内面の上方、又は、下膊外面の上方に配置される表示部を有している場合には、被験者13は必ず、下膊14に対して図3に示した回転運動20を行い、表示部4を見え易くなる方向に向けることとなる。本発明は、人の身体の構造上の特徴に着目することで、表示部4の注視姿勢の検出精度を向上させることができ、結果、確実に低消費電力化を実現できる生体情報検出システムを実現した。
【0043】
上記においては、下膊14に表示装置2が装着された事例を示したが、上膊15に表示装置2が装着される場合にも、被験者13が腕の軸を中心とした回転運動20を行わないと表示部4を視認できない(又は、視認しにくい)位置に表示部4が配置された表示装置2を用いてもよい。このような構成を採用することにより、上膊15に表示装置2が装着される場合にも、モーションセンサ5により上膊15の回転運動20を検出することにより、容易に被験者13の注視姿勢の検出精度を向上させることができる。結果として、確実に低消費電力化を実現できる生体情報検出システムを実現した。
【0044】
上記の方法により被験者13が表示部4を注視していることを検出した後、図2における第1制御部6は、第1通信部7を介してセンサ装置3に生体情報を要求する制御信号を送信する。この制御信号を第2通信部9を介して受信したセンサ装置3の第2制御部12は、第2メモリ11に記録されている生体情報の一部又は全部を第2通信部9を介して表示装置2へ送信する。センサ装置3から送信されたこの生体情報は、第1通信部7を介して第1メモリ8へ、一時、記録された後、表示部4へ表示される。
【0045】
このようなシステム構成とすることにより、被験者13が自分の生体情報を視認したいと思った時に、必要な生体情報がセンサ装置3から表示装置2へ送信されるので、従来のシステムように常時または一定期間毎にセンサ装置3と表示装置2の間の通信を行う必要がなく、大幅な低消費電力化を実現することができる。
【0046】
尚、被験者13が表示部4を注視する姿勢をとった後、第2メモリ11に記録されている生体情報のすべてを送信せず、最新の生体情報のみを送信し、表示部4に最新の生体情報を表示する形態としてもよい。これによりセンサ装置3から表示装置2へ送信されるデータ量を減らす事ができ、消費電力を低減できる。また、第1メモリ8のメモリサイズを小さくでき、小型な生体情報検出システムが実現できる。更に、第1メモリ8に記録されたバイタルセンサ10の生体情報は、一定時間経過後(または、表示部4の表示が消去された後)には消去されても良い。これにより第1メモリ8の空き容量を大きくできる。
【0047】
また、モーションセンサ5が被験者13の表示部4を注視する姿勢を検出した後、表示装置2は表示部4にバイタルセンサ10により検出された生体情報、又は、モーションセンサ5により検出された生体情報を表示し、モーションセンサ5が被験者13の表示部4を注視する姿勢以外を検出した後、表示装置2は表示部4の表示の少なくとも一部を消去する構成を採用しても良い。このような構成を採用することにより、被験者13が表示部4を注視していない期間の大半において、表示部4の表示の少なくとも一部を消去できるため、表示部4の表示に消費される電力を大幅に低減できる。これにより生体情報検出システムの低消費電力化を測ることができる。尚、本構成における被験者13が表示部4を注視しているか否かの判定も、これまで説明してきた手法を採用することにより、高精度化することが可能である。また、本実施の形態においては、被験者13が表示部4を注視した際に、センサ装置3と表示装置2との間で通信のやり取りがなされる構成を説明したが、この構成とは異なり、常時、又は、一定間隔毎に、センサ装置3と表示装置2との間で通信のやり取りが行われるようなシステムにおいても、被験者13の表示部4を注視する姿勢をしている間だけ、表示部4に生体情報を表示する構成は有効であり、消費電力の少ない生体情報検出システムを実現することが可能となる。
【0048】
また、夜間等の暗闇の中で、被験者13が表示部4を注視している際に、図3の回転運動20を所定回数行うと、表示部4のバックライトが点灯する構成としても良い(回転運動20の回数とそれに対応した制御内容を予め決めておく)。これにより、本発明にとって検知精度の高い回転運動20を用い、簡易に表示装置2の動作を制御できる。更には、表示装置2の動作の制御だけでなく、センサ装置3の動作内容(例えばモーションセンサ5の動作内容等)や表示装置2とセンサ装置3との通信のやり取り等を、回転運動20の回数により制御しても良い。
【0049】
尚、被験者13が表示部4を注視する姿勢から表示部4を注視しない姿勢へ移行したか否かは、モーションセンサ5の検出値の時間的変化の大きさ等を基に判定する。つまり、被験者13が表示部4を注視している間は、表示装置2が装着されている被験者部位の時間的な変位は比較的緩やかであるため、人のこの特徴を利用して判定を行ってもよい。
【0050】
モーションセンサ5を構成する角速度センサまたは加速度センサにより検出された情報は、モーションセンサ5において処理し、アナログ量からデジタル量に変換した後、第1メモリ8に記録してもよい。これによりモーションセンサ5により検出された生体情報の情報量を圧縮でき、第1メモリ8のメモリ容量を減らす事が可能となる。同様に、バイタルセンサ10において検出された生体情報は、バイタルセンサ10において処理し、アナログ量からデジタル量に変換した後(本実施の形態の場合には、心臓の近傍である胸部に取り付けられたバイタルセンサ10にて検出される心電波形(アナログ量)をバイタルセンサ10にて処理し、心拍数(デジタル量)を導出する事を指している)、第2メモリ11へ記録してもよい。これにより、バイタルセンサ10により検出された生体情報の情報量を圧縮でき、第2メモリ11のメモリ容量を減らす事が可能となると共に、第2通信部9から第1通信部7へ送信される情報量を減らす事ができる。
【0051】
尚、表示装置2は、例えば、時計の機能を有していてもよい。この場合も、上記同様に、被験者13が表示部4を注視している間のみ時刻の表示を行い、それ以外の期間の大半は時刻の表示を消去してもよい。
【0052】
本発明において、表示装置2は腕または手にのみ装着されるが、センサ装置3は被験者13の体であればどこに装着されてもよい。つまり、本実施の形態においては、バイタルセンサ10が心拍を検出するため、心臓に近接した胸部に装着したが、これに限る必要はなく、例えば腕や足や頭部等に装着されてもよい。要は、取得したい生体情報を検出しやすい部位に装着されればよい。しかし、表示装置2は腕に装着される。被験者13が表示部4を注視することが容易なためである。なお、センサ装置3は複数個あっても問題ない。センサ装置3を被験者13の体に複数個装着することにより、体の部位ごとに異なる細かい生体情報を検出することが可能となる。また、表示装置2は、必ずモーションセンサ5を有している。これは、被験者13は、腕に装着された表示装置2を視認可能な領域に移動させた後、表示部4を注視するためであり、被験者13が表示部4を注視しているか否かを判定する上で、表示装置2にモーションセンサ5を配置することが有効なためである。
【0053】
本実施の形態では、モーションセンサ5を用いて被験者13が表示部4を注視しているか否かを判断しているが、他の機能としてモーションセンサ5から被験者の運動消費カロリー、歩数、歩行距離などの算出に用いても良い。さらにモーションセンサ5はバイタルセンサ10で検出された生体情報を補正するために用いても良い。これにより、被験者13の体動によりバイタルセンサ10の検出結果に生じるノイズの一部をキャンセルすることが可能となる。
【0054】
また、表示装置2とセンサ装置3の間の通信は、無線であっても有線であっても問題ない。
【0055】
尚、本実施の形態においては、バイタルセンサ10は所定間隔で生体情報を検出する構成となっているが、これに限る必要もなく、被験者13が表示部4を注視する姿勢をとった直後、または直後だけ、バイタルセンサ10が生体情報を検出し、第2通信部9を介して表示装置2にこの生体情報を送信し、表示部4にこの生体情報を表示する構成としても良い。このような構成をとる事により、被験者13が自分の生体情報を知りたいと思ったときの生体情報を取得できるシステムを実現でき、生体情報検出システムの省電力化を図ることが可能となる。この場合、バイタルセンサ10で検出された生体情報を第1メモリ8に記録し保持する形態としてもよい。この構成を採用することにより、第2メモリ11のメモリ容量を小さくすることができ、センサ装置3の小型化を図ることが可能となる。
【0056】
また、モーションセンサ5が複数の角速度センサを有しており、モーションセンサ5が被験者13の表示部4を注視する姿勢を検出した後、検出軸18が被験者13の腕の軸と概ね平行となるように配置されていない角速度センサでの検出を停止し、検出軸が被験者13の腕の軸と概ね平行となるように配置されている角速度センサでのみ検出を行う構成としても良い。被験者13が表示部4を注視している間は、表示装置2の時間的変位が少なくなるように被験者13が意識するため、モーションセンサ5により被験者13の生体情報を検出することが困難となる。このため、図3中の回転運動20を検出することが困難な角速度センサの検出動作を停止させることで、生体情報検出システムの消費電力を低減できる。ここで、被験者13が表示部4を注視している間、検出軸が被験者13の腕の軸と概ね平行となるように配置されている角速度センサの検出動作を停止させないのは、図3の回転運動20を用いることで、表示部4を注視しながら被験者13が生体情報検出システムを簡易に制御できるためである。
【0057】
尚、この場合に、被験者13が表示部4を注視する姿勢から表示部4を注視しない姿勢に移行したことを判定するためには、検出軸が被験者13の腕の軸と概ね平行となるように配置されている角速度センサ(被験者13が表示部4を注視している間も検出動作を続けている角速度センサ)の検出結果の時間変化の大きさをモニタすれば可能である。
【0058】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る本発明の生体情報検出システム31について、図9を用いて説明する。図9は、実施の形態1において示した表示装置2にバイタルセンサ10が配置された構成となっている。
【0059】
そして、バイタルセンサ10とモーションセンサ5によって検出された生体情報は第1メモリ8に蓄積される。そして、第1制御部6は、被験者13が表示部4を注視している期間において、第1メモリ8に記録された生体情報の一部または全部を表示部4に表示するように第1メモリ8と表示部4とを制御する。このような構成とすることにより、表示部4の表示のために消費される電力を低減する事が可能となり、低消費電力の生体情報検出システムを実現する事ができる。
【0060】
尚、第1通信部7は、センサ装置(図9においては図示せず)または外部機器(例えば、携帯電話等が該当)と信号の送受を行う際に利用される。また、被験者13が表示部4を注視しているか否かは、実施の形態1に記載した方法で判定すると共に、実施の形態1において説明した構成・工夫を適用する事により、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明の生体情報検出システムは消費電力を少なくする事が可能となる為、人体等に装着される電池駆動の小型ヘルスケア製品や、医療機器等に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0062】
1 生体情報検出システム
2 表示装置
3 センサ装置
4 表示部
5 モーションセンサ
6 第1制御部
7 第1通信部
8 第1メモリ
9 第2通信部
10 バイタルセンサ
11 第2メモリ
12 第2制御部
13 被験者
14 下膊
15 上膊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の腕に装着される表示装置と、
前記被験者の体に近接して配置されるセンサ装置とを備え、
前記表示装置は表示部とモーションセンサと第1通信部とを有していると共に、
前記センサ装置はバイタルセンサと第2通信部とを有し、
前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出した後、
前記第1通信部は前記第2通信部に対して制御信号を送信し、
前記制御信号を前記第2通信部により受信した前記センサ装置は、前記バイタルセンサで検出された生体情報を前記第2通信部により前記第1通信部へ送信する
生体情報検出システム。
【請求項2】
被験者の腕に装着される表示装置と、
前記被験者の体に近接して配置されるバイタルセンサとを備え、
前記表示装置は表示部とモーションセンサとを有し、
前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出した後、
前記表示装置は前記表示部に前記バイタルセンサ又は前記モーションセンサにより検出された生体情報を表示し、
前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢以外を検出した後、
前記表示装置は前記表示部の表示の少なくとも一部を消去する
生体情報検出システム。
【請求項3】
前記モーションセンサは加速度センサを有している請求項1または請求項2に記載の生体情報検出システム。
【請求項4】
前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出した後、
前記バイタルセンサは前記被験者の生体情報を検出する請求項1または請求項2に記載の生体情報検出システム。
【請求項5】
前記表示装置は、下膊内面の上方、又は、下膊外面の上方に配置される前記表示部を有し、
前記モーションセンサは、前記表示装置が装着される前記被験者の下膊の軸を中心とした前記被験者の回転動作を検出することにより前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出する請求項1または請求項2に記載の生体情報検出システム。
【請求項6】
前記加速度センサの検出結果から前記表示装置が前記被験者のどちらの腕に装着されているかを判定し、この判定結果に基づいて、前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出する際に用いられる閾値を切替える請求項3に記載の生体情報検出システム。
【請求項7】
前記モーションセンサは少なくとも1つの角速度センサを有しており、
前記角速度センサの検出軸は前記被験者の腕の軸と概ね平行となるように配置されている請求項1または請求項2に記載の生体情報検出システム。
【請求項8】
前記モーションセンサは複数の角速度センサを有しており、
前記モーションセンサが前記被験者の前記表示部を注視する姿勢を検出した後、
検出軸が前記被験者の腕の軸と概ね平行となるように配置されていない前記角速度センサでの検出を停止し、
検出軸が前記被験者の腕の軸と概ね平行となるように配置されている前記角速度センサでのみ検出を行う請求項1または請求項2に記載の生体情報検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−156320(P2011−156320A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22951(P2010−22951)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】