説明

生体情報計測装置

【課題】 スペクトラム拡散における直流問題を解決し、また、計測に関連する周波数の利用効率を向上させて生体の代謝に伴う生体情報を計測する生体情報計測装置を提供すること。
【解決手段】 光出射部1は、チップ周波数fでベースバンド信号をスペクトラム拡散変調して一次変調信号を生成し、さらに周波数2fで変調した二次変調信号を生成する。そして、二次変調信号に基づいて特定波長を有する近赤外光を生体内に出射する。光検出部2は、生体内にて反射した反射光を有効検出帯域2fで受光して電気的な検出信号に変換し、同変換した検出信号をサンプリング周波数4fでデジタル信号に変換する。そして、この変換した検出信号を周波数2fで復調して一次復調信号を生成し、さらにスペクトラム逆拡散によって変調して二次復調信号を生成する。これにより、生体情報に関連する生体情報信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の密度、水分、血中酸素濃度、酸素飽和度、グルコース濃度、血糖値、脈拍、その他の様々な生体の代謝に応じて、生体内の光伝播が伝播する光の波長により異なる変化を生ずる性質に着目して生体内部の情報を計測する生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内部を簡便に無侵襲で計測できる装置および方法として、生体表面に配置された光源から生体内部に光を出射し、生体内部を散乱、吸収されながら伝播して再び生体表面に到達した反射光を受光することにより、生体内部の情報を計測する装置および方法が積極的に提案されている。例えば、本願出願人は、下記特許文献1にて、スペクトラム拡散による変調および復調を利用することによって、生体情報を測定する生体情報測定装置を提案している。そして、この生体情報測定装置によれば、特に、ヘモグロビンの近赤外光における光吸収の変化に基づいて血液中の酸素濃度を計測することによって、例えば、脳の表層における情報を計測できるようになっている。
【特許文献1】特許第3623743号
【発明の開示】
【0003】
ところで、上記特許文献1においては、光出射部において送出信号(ベースバンド信号)をスペクトラム拡散変調して半導体レーザから光を出射するようになっている。ここで、一般的に、スペクトラム拡散変調された信号のパワースペクトラムは、図12に示すように表せることがよく知られている。そして、この図12に示すパワースペクトラムを有する信号に基づいて出力される光は、直流(DC)および直流近傍の周波数において、大きな出力(強度)を有するものとなる。このようなパワースペクトラムを有する光を用いて生体の情報を測定した場合には、光源ドライバ、光源、光検出器や増幅器などが有する直流成分の変動(ドリフト変動やオフセット変動、1/fノイズなど)、所謂、スペクトラム拡散における直流問題などの影響を受けやすく、その結果、相対的な測定は可能であっても厳密な測定が難しくなる可能性がある。
【0004】
また、上記特許文献1においては、光検出部において、生体内を伝播した光を電気的な検出信号(アナログ信号)とし、この検出信号(アナログ信号)をADコンバータによってデジタル信号に変換するようになっている。この場合、ADコンバータがアナログ信号をデジタル信号に変換するときのサンプリング周波数が明確に示されておらず、例えば、光の出射周期と同一のサンプリング周波数によって変換処理を行った場合には、受光した光に対応する検出信号(アナログ信号)の信号帯域(周波数)の全域をサンプリングできず、検出信号(アナログ信号)を適切にデジタル信号として再現できない可能性がある。すなわち、従来から行われているスペクトラム拡散を利用した生体内の計測においては、光の出射と検出および検出した光の電気的な信号への変換などに必要な周波数を効率よく利用しているとは言えない状況が存在する。その結果、生体内を伝播した光が有する生体に関する情報を適切にかつ確実に得られない可能性もある。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、スペクトラム拡散における直流問題を解決するとともに計測に関連する周波数の利用効率を向上させて、無侵襲によって生体の代謝に伴う生体情報を計測できる生体情報計測装置を提供することにある。
【0006】
本発明の特徴は、所定のベースバンド信号を生成して出力するベースバンド信号出力手段と、前記ベースバンド信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記ベースバンド信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段と、少なくとも1つの光源を有して前記第2変調手段から出力された前記二次変調信号に基づいて生体内に特定波長を有する近赤外光を出射する光発生手段とを有する光出射部と、前記光出射部から出射されて前記生体内を伝播した近赤外光を受光するとともに同受光した近赤外光を電気的な検出信号に変換して出力する受光手段と、同受光手段から出力された電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段と、同第2復調手段から出力された二次復調信号を用いて前記生体の代謝に伴う生体情報に関連する生体情報信号を出力する生体情報信号出力手段とを有する光検出部とを備えたことにある。
【0007】
この場合、前記第2の周波数を、前記光検出部の受光手段が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させるとよい。
【0008】
また、この場合、前記光出射部におけるベースバンド信号出力手段は、例えば、直流信号を生成して出力するとよい。
【0009】
また、この場合、前記光出射部におけるベースバンド信号出力手段は、例えば、前記第1の周波数の半分以下の任意の周波数により略パルス状の信号を生成して出力するものであり、前記光検出部は、さらに、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記略パルス状の信号を用いて前記第2復調手段によって出力された前記二次復調信号を復調する第3復調手段を有するとよい。そして、この場合には、前記光出射部は、さらに、前記ベースバンド信号出力手段から出力された略パルス状の信号に対して誤り訂正符号を付加する誤り訂正符号付加手段を有し、前記光検出部は、さらに、前記第2復調手段によって出力された前記二次復調信号に含まれる前記誤り訂正符号を用いて同二次復調信号の整合性を検査する誤り検査手段と、前記誤り検査手段による検査によって前記二次復調信号に誤りが存在するときに同二次復調信号を補間により修復する補間手段とを有するとよい。
【0010】
これらによれば、光出射部においては、ベースバンド信号出力手段がベースバンド信号(例えば、直流信号やパルス状の信号)を第1変調手段に出力する。また、拡散符号系列生成手段は、第1の周波数(すなわちスペクトラム拡散におけるチップレート)により生成した拡散符号系列を第1変調手段に出力する。これにより、第1変調手段は、出力されたベースバンド信号をスペクトラム拡散によって変調し、同変調した一次変調信号を第2変調手段に出力する。第2変調手段においては、出力された一次変調信号を第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて変調して二次変調信号を光発生手段に出力する。これにより、光発生手段は、二次変調信号に基づいて生体内に異なる特定波長を有する近赤外光を出射する。
【0011】
ここで、第2変調手段が第1の周波数の2倍となる第2の周波数で二次変調信号を生成することにより、二次変調信号におけるパワースペクトラムは、第1の周波数を中心として直流(DC)の周波数から第2の周波数まで広がるメインローブのパワースペクトラムとすることができる。その結果、光発生手段によって出射される近赤外光においては、直流および直流近傍の周波数および第2の周波数における出力(強度)が極めて小さくなる。したがって、光出射部から出射された近赤外光を用いることにより、スペクトラム拡散における直流問題を効率よく回避することができる。
【0012】
一方、光検出部においては、受光手段が上述したパワースペクトラムを有して生体内を伝播した近赤外光を受光し、同受光した近赤外光を電気的な検出信号(アナログ信号)に変換して出力する。この出力された電気的な検出信号(アナログ信号)は、信号成分除去手段によって、検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および第2の周波数以上の信号成分が除去されて信号変換手段に出力される。
【0013】
この場合、上述した二次変調信号(すなわち出射された近赤外光)のパワースペクトラムによれば、受光手段によって受光される近赤外光のパワースペクトラムも第1の周波数を中心として直流の周波数から第2の周波数まで広がるメインローブのパワースペクトラムとなる。このことから、受光手段から出力される電気的な検出信号(アナログ信号)においては、直流および直流近傍の周波数における信号強度と第2の周波数における信号強度が極めて小さいものとなる。したがって、これら信号成分を除去しても、計測に必要な情報を有する電気的な検出信号(アナログ信号)は、良好に確保することができる。
【0014】
また、信号成分除去手段によって直流および直流近傍の周波数および第2の周波数以上の信号成分が除去された電気的な検出信号(アナログ信号)の信号帯域幅は、受光手段における有効検出帯域幅すなわち第2の周波数と一致するものとなる。その結果、受光手段における有効検出帯域幅を極めて効率よく利用することができる。
【0015】
そして、信号変換手段は、信号成分除去手段から出力された電気的な検出信号(アナログ信号)を、遅延処理されて第2の周波数の2倍となる第3の周波数すなわちサンプリング周波数によってデジタル信号に変換する。言い換えれば、信号変換手段は、受光手段における有効検出帯域幅の2倍となるサンプリング周波数によってアナログ信号をデジタル信号に変換する。このように、受光手段における有効検出帯域幅の2倍、すなわち、アナログ信号の信号帯域の2倍のサンプリング周波数によってデジタル信号に変換することによって、受光手段における有効検出帯域幅の全域に相当するアナログ信号が有する情報を極めて良好にデジタル信号として再現することができる。これにより、スペクトラム拡散における周波数の利用効率を大幅に向上させることができる。
【0016】
このように、デジタル信号に変換された検出信号は、第1復調手段が第2の周波数を用いて復調し、同復調された一次復調信号は、第2復調手段によってスペクトラム逆拡散によって復調されて二次復調信号として出力される。そして、生体情報信号出力手段は、二次復調信号を用いて生体情報に関連する生体情報信号を出力する。したがって、スペクトラム拡散における直流問題の影響を排除するとともに、近赤外光の出射と検出および検出した近赤外光の電気的な検出信号への変換に必要な周波数の利用効率を向上させることができて、得られる生体情報の精度をも大幅に向上させることができる。なお、生体情報信号から得られる生体情報としては、生体の代謝に伴う情報であればよく、例えば、生体の密度、水分、血中酸素濃度、酸素飽和度、グルコース濃度、血糖値、脈拍などである。
【0017】
また、ベースバンド信号が略パルス状の信号として出力されるときには、このパルス状の信号に対して誤り訂正符号を付加して近赤外光を出射し、生体情報信号を出力することができる。これにより、より正確な生体情報信号を得ることができて、極めて正確な生体情報を得ることができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記光出射部における拡散符号系列生成手段は、前記光検出部における受光手段によって受光される前記生体内を伝播した近赤外光の光強度に応じて、前記拡散符号系列の拡散率を変更することにもある。
【0019】
この場合、前記拡散符号系列生成手段は、例えば、前記光検出部における受光手段によって受光される前記生体内を伝播した近赤外光の光強度が小さくSN比が低いときに前記拡散率を大きく変更して前記拡散符号系列を生成し、前記光強度が大きくSN比が高いときに前記拡散率を小さく変更して前記拡散符号系列を生成するとよい。そして、この場合、前記拡散符号系列生成手段は、例えば、前記変更した拡散率の異なる拡散符号系列間での直交性を保障する直交可変拡散率符号を拡散符号系列として生成するとよい。
【0020】
これらによれば、例えば、生体内で吸収散乱の影響を受けて、光検出部における受光手段によって受光される近赤外光の光強度が小さくSN比が低いときには、拡散符号系列生成手段は拡散率を大きく変更して拡散符号系列を生成することができる。一方、光検出部における受光手段によって受光される近赤外光の光強度が大きくSN比が高いときには、拡散符号系列生成手段は拡散率を小さく変更して拡散符号系列を生成することができる。
【0021】
ここで、スペクトラム拡散においては、拡散率が大きくなるほどスペクトラム逆拡散によって得られる信号の信号帯域幅が狭くなるものの信号のSN比を高めることができ、拡散率が小さくなるほどスペクトラム逆拡散によって得られる信号の信号帯域幅を広げることができる一方で信号のSN比が低下する。このことから、受光手段によって受光される近赤外光の光強度が小さいときには、拡散率を大きく変更することによって、生体内を伝播した近赤外光に対応する生体情報信号の信号帯域幅が小さくなるものの同信号のSN比を改善することができる。また、受光手段によって受光される近赤外光の光強度が大きいときには、拡散率を小さく変更することによって、生体内を伝播した近赤外光に対応する生体情報信号のSN比が若干低下するものの同信号の信号帯域幅を広げることができるため、広帯域の生体情報が得られる。
【0022】
また、この場合、拡散符号系列生成手段が拡散符号系列として直交可変拡散率符号(OVSF:Orthogonal Variable Spreading Factor)符号を生成することができる。これにより、拡散率が異なっても生成した拡散符号系列間の直交性が保障されるため、例えば、光強度が弱い領域と強い領域とが互いに隣接する状況であっても、これらの領域内を伝播する近赤外光同士が互いに妨害することを防止することができる。したがって、異なる拡散率によってスペクトラム拡散変調された近赤外光を同時に出射することができ、その結果、良好に二次復調信号を生成できて生体情報信号を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る生体情報計測装置Sの構成を概略的に示したブロック図である。図1に示すように、生体情報計測装置Sは、特定波長成分を含む光を発生する複数の光出射部1と、光出射部1から出射された光が生体の内部を反射しながら伝播した後の光を検出する複数の光検出部2とを備えている。
【0024】
これらの光出射部1と光検出部2は、それぞれ制御部3に接続されている。制御部3は、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、生体情報計測装置Sの作動を統括的に制御する。そして、制御部3は、光検出部2によって検出された光、より詳しくは、光出射部1から出射された光が生体の内部を伝播することによって減衰した光の強度を用いて、生体の代謝に伴う生体情報としての、例えば、脳内の血中酸素濃度を算出する。
【0025】
また、制御部3には、クロックジェネレータ31とディレイ32が設けられている。クロックジェネレータ31は、後述する光検出部2を構成する光受光部22の有効検出帯域幅に一致する第2の周波数としてのクロック周波数2fと、このクロック周波数2fの2倍となる4fのクロック周波数を光出射部1および光検出部2に供給するものである。なお、本明細書において、周波数fは、第1の周波数であり、任意に設定可能な周波数を表す。ディレイ32は、後述する各光出射部1の各拡散符号系列発生器11が発生して光検出部2に供給するPN系列符号およびクロックジェネレータ31が光検出部2に供給するクロック周波数4fまたはクロック周波数2fを適宜遅延させるものである。なお、この場合、光出射部1から光検出部2に向けて伝播する光の経路ごとに遅延特性が異なる可能性があるため、ディレイ32を各光検出部2ごとに設けて実施することにより、生体情報をより正確に得ることができる。
【0026】
さらに、制御部3は、算出した生体情報を表すデータを表示部4に出力する。表示部4は、例えば、液晶ディスプレイなどから構成されており、制御部3から供給されたデータに基づき、所定の態様によって生体情報を表示する。
【0027】
次に、光出射部1について、詳細に説明する。光出射部1は、図2のブロック図に示すように、異なる特定波長を有する光を発生させる複数の光発生装置10から構成されている。なお、本実施形態においては、後述するように、光出射部1を6つの光発生装置10によって構成して実施するが、光発生装置10の数についてはこれに限定されるものではない。
【0028】
これらの光発生装置10は、それぞれ、特定波長を有する光をスペクトラム拡散変調して出射するようになっている。このため、各光発生装置10は、拡散符号系列として、例えば、65536ビット長の「+1」と「−1」からなるPN(Pseudorandom Noise)系列を発生させるための拡散符号系列発生器11を備えている。この拡散符号系列発生器11は、例えば、アダマール系列やM系列、あるいは、ゴールド符号系列をPN系列として発生する。
【0029】
なお、上記したアダマール系列、M系列、あるいは、ゴールド符号系列は、一般的にスペクトラム拡散変調に用いられるものと同様であるため、その発生方法に関する詳細な説明は省略するが、以下に簡単に説明しておく。アダマール系列は、「+1」と「−1」からなるアダマール行列の各行または各列を取り出して得られる系列である。M系列は、「0」または「+1」の状態を記憶する1ビットのレジスタをn段並べたシフトレジスタを用い、同シフトレジスタの中間から帰還した値と最終段における値との排他的論理和を初段に接続することにより得られる2値系列である。ただし、この2値系列をPN系列とするために、レベル変換を行い、値「0」を「−1」に変換する。ゴールド符号系列は、基本的には、2種類のM系列を用意し、これらを加算して得られる符号系列である。このため、ゴールド符号系列は、M系列に比して、格段に系列数を増やすことができる系列である。そして、これらの系列の特徴として、異なる系列は互いに直交する性質を有しており、積和演算を行うことによって「0」、すなわち、自己以外には相関が「0」となることが挙げられる。
【0030】
そして、拡散符号系列発生器11は、クロックジェネレータ31から供給されるクロック周波数2fを入力する。この入力したクロック周波数2fに基づき、拡散符号系列発生器11は、PN系列の生成周波数、言い換えれば、PN系列の最小発生間隔に相当するチップレートがf以下となるPN系列を発生させる。
【0031】
このように、拡散符号系列発生器11の発生したPN系列は、制御部3に出力されるとともに、第1乗算器12に出力される。第1乗算器12は、ベースバンド出力器13によって出力される直流信号と、拡散符号系列発生器11から供給されるPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。なお、以下の説明においては、このスペクトラム拡散変調された直流信号を一次変調信号ともいう。
【0032】
そして、一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。第2乗算器14は、一次変調信号を入力するとともに、クロックジェネレータ31から供給されるクロック周波数2fをも入力する。そして、第2乗算器14は、入力した一次変調信号をクロック周波数2fで変調する。なお、以下の説明においては、この変調した一次変調信号を二次変調信号ともいう。
【0033】
ここで、一次変調信号と二次変調信号について説明する。上述したように一次変調信号は、ベースバンド信号としての直流信号を、拡散符号系列発生器11から供給されたチップレートfのPN系列を用いて、スペクトラム変調した信号である。このため、一次変調信号の周波数帯域は、一般的に図12で示すようなパワースペクトラムを示す。すなわち、一次変調信号は、図12に示すように、直流(DC)および直流近傍の周波数における強い信号成分を有するとともに、周波数f(チップレートf)における信号強度が小さくなるパワースペクトラムを有する。これに対して、二次変調信号は一次変調信号をさらにクロック周波数2fで変調したもの、言い換えれば、チップレートfの2倍のクロック周波数で変調したものである。このため、二次変調信号のパワースペクトラムは、図3で示すように、周波数fを中心とする周波数2fのメインローブを有するパワースペクトラムとなる。これにより、二次変調信号においては、周波数fにおける信号強度が最も強くなり、直流および直流近傍の周波数における信号強度が極めて小さくなるとともに、周波数2fにおける信号強度が極めて小さくなる。
【0034】
このように、第2乗算器14によって変調された二次変調信号は、光源ドライバ15に出力される。光源ドライバ15は、二次変調信号に基づいて、光源16を駆動(発光)させるものである。光源16は、例えば、半導体レーザ、発光ダイオード、固体レーザ、ガスレーザなどのうちから適宜採用される。そして、光源16は、600〜1000nmの波長範囲のうち、図3に示した二次変調信号のパワースペクトラムを有する特定波長成分の光(以下、被変調光という)を発生するものである。
【0035】
なお、この第1実施形態においては、上述のように、光出射部1は6つの光発生装置10を備えた構成とされる。この場合、各光発生装置10の光源16は、例えば、695,730,780,805,830,950nmなどの波長成分を有する被変調光をそれぞれ発生するものとする。
【0036】
そして、光出射部1から出射された被変調光は、光合成器17(例えば、光ファイバーなど)を介して、生体内部に向けて入射される。なお、この場合、光合成器17を省略して、直接、光出射部1から生体内部に向けて被変調光を入射するように実施することも可能である。
【0037】
光検出部2は、図4に示すように、生体内部を反射しながら伝播した被変調光を検出し、同検出した被変調光が有する生体情報に関連する生体情報信号を出力するものである。このため、光検出部2は、光合成器21(例えば、光ファイバーなど)を介して、生体中を伝播して出射された被変調光を受光する光受光器22を備えている。なお、この場合、光合成器21を省略して、直接、生体中を伝播して出射された被変調光を光受光器22が受光するように実施することも可能である。
【0038】
光受光器22は、例えば、フォトダイオードやホトマルチプライヤなどを主要構成部品とするものであり、その有効検出帯域幅が2fに設定されている。そして、光受光器22は、受光した被変調光に対応する電気的な検出信号を時系列的に増幅器23に出力する。
【0039】
増幅器23は、光受光器22から出力された電気的な検出信号(アナログ信号)の強度を増幅する。ここで、上述したように、光出射部1の光源16から出射される被変調光は、二次変調信号に基づいて出射されるものである。このため、光受光器22が受光する被変調光も、図3に示したパワースペクトラムを有する光となる。すなわち、光受光器22が受光した被変調光のパワースペクトラムも直流および直流近傍の周波数における信号成分が極めて小さいため、増幅器23は、入力した電気的な検出信号のうちの直流および直流近傍の周波数における信号成分を除去してから検出信号を増幅する。
【0040】
このように、増幅器23が検出信号を増幅すると、同増幅された検出信号はローパスフィルタ(LPF)24に出力される。LPF24は、そのカットオフ周波数が2fに設定されている。これにより、LPF24は、増幅器23から入力した検出信号のうち、その周波数が2fよりも大きな信号成分を除去(カット)してADコンバータ25に出力する。ここで、LPF24を通過した後の電気的な検出信号のパワースペクトラムは図5に示すようになる。なお、上述したように、光出射部1から出射された被変調光のパワースペクトラムは、図3に示すように、周波数2f近傍で信号強度が極めて小さくなるため、LPF24のカットオフ周波数を厳密に2fに調整しなくても問題ない。
【0041】
ADコンバータ25は、LPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。具体的には、ADコンバータ25は、制御部3のクロックジェネレータ31からディレイ32によって適宜遅延されたクロック周波数4fを入力し、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。ここで、光受光器22の有効検出帯域幅2fの2倍のサンプリング周波数4fによってADコンバータ25がデジタル変換処理を実行することにより、一般に広く知られた標本化定理(サンプリング定理やナイキストの定理ともいわれる)が成立する。
【0042】
すなわち、標本化定理によれば、目的の信号を正確に再現するためには、目的の信号の周波数の少なくとも2倍以上のサンプリング周波数を用いてサンプリングする必要がある。ここで、標本化定理における「目的の信号」は光受光器22が受光する生体内を伝播した被変調光に対応する「電気的な検出信号(アナログ信号)」であり、「目的の信号の周波数」は光受光器22の有効検出帯域幅と一致する2fであり、サンプリング周波数を4fとすることにより、ADコンバータ25によるデジタル変換処理において標本化定理が成立する。言い換えれば、光受光器22の有効検出帯域幅2fに一致する被変調光が有する情報(すなわちアナログの検出信号)は、情報の欠落などを生じることなく正確にデジタル信号に変換される。
【0043】
そして、ADコンバータ25は、サンプリング周波数4fで電気的な検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換すると、同変換したデジタル信号を第1乗算器26に出力する。第1乗算器26は、変換されたデジタル信号を入力するとともに、制御部3のディレイ32を介してクロックジェネレータ31から遅延して供給されるクロック周波数2fを入力する。そして、第1乗算器26は、クロックジェネレータ31から入力したクロック周波数2fを用いてデジタル信号を復調する。なお、以下の説明においては、第1乗算器26によって復調された信号を一次復調信号という。このように、デジタル信号を復調すると、第1乗算器26は、一次復調信号を第2乗算器27に出力する。
【0044】
第2乗算器27は、第1乗算器26から入力した一次復調信号と、制御部3のディレイ32を介して光出射部1の拡散符号系列発生器11から遅延して供給されたPN系列との積を取る。このように、PN系列を取得することにより、第2乗算器27は、複数の光出射部1のうちの特定の光出射部1からの被変調光に対応する一次復調信号をスペクトラム逆拡散して復調することができる。そして、第2乗算器27は、スペクトラム逆拡散によって復調した電気的な検出信号すなわち二次復調信号を累算器28に出力する。
【0045】
累算器28は、供給された二次復調信号に対して、光出射部1の拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列の1周期以上に渡り加算する。そして、累算器28は、特定の光出射部1から出射されて生体中で減衰した被変調光、言い換えれば、生体情報を含む被変調光に対応する生体情報信号を制御部3に出力する。ここで、図4に示すように、第2乗算器27および累算器28は、光出射部1から出射される特定波長の数に合わせて複数(本実施形態においては一つの光出射部1あたり6つ、複数の受光可能な光出射部1が存在する場合には、存在する各光出射部1の数を乗算した数)設けられる。これにより、生体中を伝播した各被変調光に対応する生体情報信号を同時に得ることができる。
【0046】
以上のように構成した生体情報計測装置Sについて、制御部3の作動制御に基づき、生体情報である脳内の血中酸素濃度を計測する場合を例示して説明する。この脳内の血中酸素濃度の計測においては、図6に示すように、頭部Tの表面にて、丸印で示す位置a〜f(以下、入射位置a〜fという)にそれぞれ光出射部1から出射された被変調光が入射される。また、頭部Tの内部を伝播し、四角印で示す位置A〜F(以下、受光位置A〜Fという)に到達した被変調光(以下、この被変調光を反射光という)がそれぞれの光検出部2によって検出される。ここで、入射位置a〜fと受光位置A〜Gとは、互いにマトリックス状に配置される。なお、以下の作動説明においては、入射位置a〜fに被変調光を出射する各光出射部1を光出射部a〜fと示し、受光位置A〜Gに到達した反射光を検出する各光検出部2を光検出部A〜Gと示す。
【0047】
なお、図6は、生体情報計測装置Sのごく一部を示したものである。このため、入射位置と受光位置の数すなわちチャンネル数については、図示した数に限定されるものではない。したがって、より多くの入射位置と受光位置を、例えば、マトリックス状に配置して脳内の血中酸素濃度を計測することもできる。なお、チャンネルの配置に関しては、マトリックス状以外に、例えば、千鳥配置やある光出射部1を中心として周囲に光検出部2を複数配置するドーナツ状の配置などを採用可能であることはいうまでもない。
【0048】
まず、光出射部a〜fによる光の出射について説明する。オペレータは、図示しない入力装置を操作して、頭部Tの内部に対し出射する被変調光の特定波長を制御部3に指示する。このとき、オペレータは、出射する被変調光に関し、複数の特定波長を制御部3に指示することができる。制御部3は、同指示に従い、光出射部a〜fに対して、指示された特定波長を有する被変調光を発生させるためのベースバンド出力器13を作動させる。これにより、指定された特定波長を有する被変調光を発生する光発生装置10が発光を開始する。
【0049】
すなわち、各光出射部a〜fの光発生装置10においては、拡散符号系列発生器11が、例えば、PN系列としてゴールド符号系列を発生する。そして、拡散符号系列発生器11は、発生したPN系列を制御部3に対して出力するとともに、第1乗算器12に出力する。そして、第1乗算器12は、ベースバンド出力器13から供給された直流信号(ベースバンド信号)とPN系列との積を取り、直流信号をスペクトラム拡散変調する。
【0050】
続いて、スペクトラム拡散変調された一次変調信号は、第2乗算器14に出力される。そして、第2乗算器14がクロックジェネレータ31から供給されるクロック周波数2fを用いて一次変調信号を変調した二次変調信号を光源ドライバ15に供給することにより、各光出射部a〜fの光源16(例えば、半導体レーザ)は、特定波長を有する被変調光を入射位置a〜fに出射する。これにより、入射位置a〜fから出射される被変調光は、頭部Tの頭蓋骨を透過して脳表層に入射し、脳表層内を乱反射しながら、言い換えれば、減衰しながら伝播する。そして、被変調光は、再び頭部Tの頭蓋骨を透過し、頭部Tの表面に到達する。
【0051】
次に、光検出部A〜Fによる反射光の検出について説明する。頭部Tの表面に到達した被変調光は、受光位置A〜Fに対応する光検出部A〜Fにより反射光として検出される。すなわち、光検出部A〜Fにおいては、光受光器22が受光位置A〜Fのそれぞれに到達した反射光をすべて受光し、同受光した反射光に応じた電気的な検出信号を時系列的に増幅器23に出力する。そして、増幅器23は入力した電気的な検出信号のうちの直流および直流近傍の周波数における信号成分を除去してから検出信号を増幅し、LPF24は、この増幅された検出信号を通過させることにより周波数が2fよりも大きな信号成分をカットする。
【0052】
続いて、ADコンバータ25がLPF24を通過した電気的な検出信号(アナログ信号)をサンプリング周波数4fでデジタル変換処理を行う。そして、同デジタル変換処理された電気的な検出信号は第1乗算器26に出力され、第1乗算器26は入力した電気的な検出信号(デジタル信号)をクロック周波数2fを用いて復調し、同復調した検出信号すなわち一次復調信号を第2乗算器27に出力する。このように復調処理することにより、復調信号は、光受光器22の有効検出帯域幅2fの全体を使った信号となる。言い換えれば、光受光器22によって受光し得る被変調光が有する情報、すなわち、脳表層を伝播した被変調光の減衰状態を欠落させることなく、正確にデジタル信号化した一次復調信号を第2乗算器27に出力することができる。
【0053】
ところで、受光位置A〜Fには、入射位置a〜fから出射されたそれぞれの被変調光が反射光として到達する。例えば、受光位置Aには、周辺に位置する入射位置a,b,c,dから出射された被変調光は言うまでもなく、入射位置e,fから出射された被変調光も反射光として到達する。このような状況において、制御部3は、受光位置Aに到達した反射光のうち、例えば、入射位置a,b,c,dから出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号のみが得られるように、光検出部Aを制御する。この制御部3による制御を具体的に説明する。
【0054】
制御部3は、上述したように、各光発生装置10の拡散符号系列発生器11からPN系列を取得する。一方、光検出部Aの第2乗算器27は、制御部3を介して、光出射部a〜fの拡散符号系列発生器11によって発生されたPN系列を取得する。このとき、制御部3は、ディレイ32を介して、光出射部a,b,c,dの各拡散符号系列発生器11が発生した異なるPN系列を光検出部Aの対応する第2乗算器27に供給する。
【0055】
これにより、各第2乗算器27は、第1乗算器26から出力された一次復調信号と制御部3から供給された対応するPN系列との積を取り、言い換えれば、スペクトラム逆拡散して得られた二次復調信号をそれぞれの累算器28に出力する。そして、各累算器28は、出力された二次復調信号をPN系列の1周期以上に渡り加算する。このように、出射された被変調光に対応する第2乗算器27と累算器28による積和処理により、二次復調信号と供給されたPN系列との相関を取ることができ、光出射部a,b,c,dのそれぞれから出射された複数の被変調光に対応した複数の生体情報信号を同時に出力することができる。
【0056】
すなわち、上述したように、PN系列に関しては、異なる系列が互いに直交する性質、言い換えれば、異なる系列同士の積の値が「0」となる性質を有している。このため、制御部3がある第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給した場合には、第1乗算器26から出力された一次復調信号のうち、光出射部aから出射された特定の被変調光に対応する一次復調信号以外の一次復調信号と光出射部aのPN系列との積の値は「0」となる。このため、累算器28によってPN系列の1周期以上に渡り加算される二次復調信号も「0」となり、相関は「0」となる。
【0057】
したがって、制御部3から供給されたPN系列を有しない(または一致しない)一次変調信号および二次復調信号、言い換えれば、生体情報信号は、選択的に排除され、特定の第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号が制御部3に出力される。同様に、制御部3が他の第2乗算器27に対して、例えば、光出射部aの他の対応する拡散符号系列発生器11によるPN系列を供給することによって、これらの第2乗算器27および累算器28からは光出射部aから出射された他の特定の被変調光の反射光に対応する生体情報信号が同時に制御部3に出力される。さらに同様に、制御部3から第2乗算器27に対して他の光出射部b,c,dのPN系列がそれぞれ供給された場合には、光出射部b,c,dから出射された複数の被変調光の反射光に対応するそれぞれの生体情報信号が同時に制御部3に出力される。
【0058】
これにより、光検出部Aは、光出射部a〜fから出射された特定波長を有する被変調光のうち、光出射部a〜dによって出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号を制御部に出力する。なお、光検出部B〜Fについても、光検出部Aと同様にして、制御部3によって制御されることにより、光出射部a〜fのうちの特定の光出射部から出射された被変調光の反射光に対応する生体情報信号を複数同時に出力する。
【0059】
そして、再びオペレータによって、頭部Tの内部に出射する被変調光の他の特定波長(本実施形態においては、合計6つの特定波長)が指示されると、制御部3は、指示されたそれぞれの特定波長を有する被変調光について上記作動制御と同様の制御を同時に実行する。これにより、それぞれの光検出部A〜Fは、光出射部a〜fから出射される他の特定波長を有する被変調光の反射光のうち、複数の特定の光出射部から出射された反射光に対応する生体情報信号を制御部3に複数同時に出力することができる。
【0060】
このように光検出部A〜Fから生体情報信号が出力されると、制御部3は、出力された生体情報信号に基づいて、被検体の脳内における血中酸素濃度を算出し、同算出した血中酸素濃度を表示部4に出力する。そして、表示部4は、所定の態様で脳内の血中酸素濃度を表示する。なお、血中酸素濃度の算出方法に関しては、本発明に直接関係しないため、詳細な説明を省略するが、以下に簡単に説明しておく。
【0061】
本実施形態においては、濃度と光の減衰の関係を表すランバート・ベール(Lambert-Beer)の法則に従い、血液中のヘモグロビンの濃度差による被変調光の減衰、言い換えれば、ヘモグロビンによる被変調光の吸光度合いに基づいて、血中酸素濃度を算出する。血液中のヘモグロビンは、酸素と結合して血管中を流れ、各細胞に対して酸素を供給する役目を果たす。このため、動脈中を流れる血液は酸素と結合したヘモグロビン(以下、酸素化ヘモグロビンという)の濃度(量)が大きく、静脈中を流れる血液は酸素と結合していないヘモグロビン(以下、還元ヘモグロビンという)の濃度(量)が大きくなる。
【0062】
このように、血液中に存在する酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、図7に概略的に示すように、出射した光(被変調光)の波長に対して分子吸光係数が非線形的に変化する光吸収スペクトルをそれぞれ有する。この酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの光吸収スペクトルすなわち分子吸光係数、出射した光(被変調光)の強度および酸素化ヘモグロビンまたは還元ヘモグロビンによって反射された反射光の強度を用いたランバート・ベールの法則に従うことにより、動脈中、毛細血管中、静脈中の血中酸素濃度を算出することができる。
【0063】
したがって、このランバート・ベールの法則に従えば、制御部3は、6つの特定波長に対するそれぞれの分子吸光係数、6つの特定波長を有する被変調光の出射強度および光検出部A〜Fから出射された生体情報信号によって表される6つの特定波長を有する反射光の強度を用いて、動脈または静脈、特に、毛細血管中の血中酸素濃度をより正確に、かつ、詳細に算出することができる。
【0064】
そして、制御部3は、算出した動脈中、毛細血管、静脈中の血中酸素濃度を表示部4に供給するとともに、同表示部4に対して所定の表示態様により前記血中酸素濃度を表示するように指示する。この指示により、表示部4は、供給された血中酸素濃度をディスプレイ上に所定の表示態様により表示する。ここで、表示部4は、以下に説明するような表示態様によって血中酸素濃度を表示する。
【0065】
例えば、上述したように、ある光検出部2(例えば、光検出部A)は複数の中から特定の光出射部1(例えば、光出射部a〜d)を識別し、同識別した光出射部1から出射された被変調光の反射光を選択的に検出することができる。これにより、計測ポイントを密に、言い換えれば、計測ポイントの解像度を大幅に向上させることができるため、制御部3は、血中酸素濃度を面状に捉えて計算することができる。したがって、この場合には、表示部4は、制御部3から供給された血中酸素濃度を2次元的な表示態様によって表示する。このように、血中酸素濃度を2次元的に表示することにより、脳の活動に伴う血流の変化を詳細に観察することができる。
【0066】
なお、オペレータが、例えば、図7にて分子吸光係数が非線形的に大きく変化する波長範囲にある特定波長(例えば、830,780nmなど)を指示すれば、光出射部a〜fは、同指示された特定波長を有する被変調光を出射することができる。これにより、分子吸光係数が非線形的に変化する波長領域であっても、光検出部A〜Fによって出力される検出信号を用いることにより、動脈、毛細血管中、または静脈の血中酸素濃度の変化をより正確に捉えることができる。
【0067】
また、上述したように、制御部3が光検出部2の第2乗算器27に供給するPN系列を変更することにより、光検出部2は、識別する光出射部1を選択的に切り替えることができる。これにより、脳内の血中酸素濃度を3次元的に計測することもできる。すなわち、光は、所定の角度を有して出射された場合、反射物までの距離に応じて、反射光の到達位置が変化する。具体的には、ある出射点から光を入射し、反射物までの距離が短い場合には、反射光の到達位置は、出射点に近いすなわち脳表皮の浅い位置となる。一方、反射物までの距離が長い場合には、反射光の到達位置は、出射点から遠いすなわち脳表皮の深い位置となる。上述したように頭部Tの内部に被変調光を出射した場合には、頭部Tの内部にて被変調光が乱反射するためその厳密な光路は特定できないものの、上記の傾向をおおむね有する。
【0068】
このため、制御部3が、光検出部2と光出射部1との配置距離が変化するように、光検出部2に光出射部1を識別させることによって、深さ方向の血中酸素濃度を計測することができる。これにより、制御部3は、深さ方向ごとの血中酸素濃度を計算により合成することができる。したがって、この場合には、表示部4は、制御部3から供給された血中酸素濃度を3次元的な表示態様によって表示する。このように、脳内の動脈、毛細血管中、または静脈中の血中酸素濃度を3次元的に表示することにより、脳の活動に伴う血流の変化を3次元的に観察することができる。
【0069】
以上の説明からも理解できるように、この第1実施形態によれば、第2変調手段としての第2乗算器14が第1の周波数としての周波数f(すなわちチップレートf)の2倍となる第2の周波数としての周波数2fで二次変調信号を生成することにより、二次変調信号におけるパワースペクトラムは、周波数fを中心として直流(DC)および直流近傍の周波数から周波数2fまで広がるメインローブのパワースペクトラムとすることができる。その結果、光発生装置10によって出射される近赤外光においては、直流および直流近傍の周波数や周波数2fにおける出力(強度)が極めて小さくなる。したがって、光出射部1から出射された近赤外光を用いることにより、スペクトラム拡散における直流問題を効率よく回避することができる。
【0070】
また、信号成分除去手段としての増幅器23およびLPF24によって直流および直流近傍の周波数および周波数2f以上の信号成分が除去された電気的な検出信号(アナログ信号)の信号帯域幅は、光受光器22における有効検出帯域幅2fと一致するものとなる。その結果、光受光器22における有効検出帯域幅を極めて効率よく利用することができる。
【0071】
そして、信号変換手段としてのADコンバータ25は、LPF24から出力された電気的な検出信号(アナログ信号)を、ディレイ32によって遅延処理されて周波数2fの2倍となる第3の周波数としての周波数4fすなわちサンプリング周波数4fによってデジタル信号に変換する。言い換えれば、ADコンバータ25は、光受光器22における有効検出帯域幅の2倍となるサンプリング周波数4fによってアナログ信号をデジタル信号に変換する。このように、光受光器22における有効検出帯域幅2fの2倍、すなわち、アナログ信号の信号帯域の2倍のサンプリング周波数4fによってデジタル信号に変換することによって、光受光器22における有効検出帯域幅の全域に相当するアナログ信号が有する情報を極めて良好にデジタル信号として再現することができる。これにより、スペクトラム拡散における周波数の利用効率を大幅に向上させることができる。
【0072】
このように、生体情報計測装置Sを用いて生体情報を計測することにより、スペクトラム拡散における直流問題の影響を排除するとともに、近赤外光の出射と検出および検出した近赤外光の電気的な検出信号への変換に必要な周波数の利用効率を向上を向上させることができる。したがって、得られる生体情報の精度をも大幅に向上させることができる。
【0073】
b.第2実施形態
上記第1実施形態においては、光出射部1のベースバンド出力器13が直流信号を出力し、第1乗算器12が出力された直流信号に対して拡散符号系列発生器11から供給されるPN系列を乗算するように実施した。これにより、直流信号がスペクトラム拡散変調されて一次変調信号を生成するように実施した。このように直流信号をスペクトラム拡散変調することに代えて、任意のクロック周波数によって生成されるパルス状の矩形信号をスペクトラム拡散変調して実施することも可能である。以下、この第2実施形態を詳細に説明するが、上記第1実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
この第2実施形態における生体情報計測装置Sは、図8に示すように、図1に示した上記第1実施形態における光出射部1のベースバンド出力器13に代えて、発信器51が設けられている。発信器51は、クロックジェネレータ31が発生するクロック周波数の半分以下に予め設定された任意のクロック周波数(より具体的には第1の周波数としての周波数fの半分以下)で作動し、所定の振幅を有するベースバンド信号としての矩形信号を発生するものである。そして、発信器51は、発生させた矩形信号を第1乗算器12に対して出力する。これにより、第1乗算器12は、上記第1実施形態と同様に、発信器51によって出力される矩形信号と、拡散符号系列発生器11から供給されるPN系列との積を取ることによって矩形信号をスペクトラム拡散変調し、同変調した矩形信号を一次変調信号として第2乗算器14に出力する。
【0075】
また、この第2実施形態における生体情報計測装置Sは、図9に示すように、図1に示した上記第1実施形態における光検出部2に比して、第3乗算器52が追加されている。第3乗算器52は、第2乗算器27から入力したスペクトラム逆拡散によってベースバンド信号(すなわち発信器51によって発生される矩形信号)を含む二次復調信号と、制御部3のディレイ32を介して光出射部1の発信器51から遅延して供給された矩形信号との積を取ることによって復調し、被変調光が生体内を伝播したときの影響すなわち被変調光の減衰の程度を表す振幅成分の値を計算する。そして、第3乗算器52は、振幅成分の値を累算器28に出力する。
【0076】
このように構成した第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、制御部3が作動を制御することにより、上記第1実施形態と同様の効果が期待できる。
【0077】
c.第2実施形態の変形例
上記第2実施形態においては、光出射部1の発信器51から出力された矩形信号を、直接、第1乗算器12がスペクトラム拡散変調するように実施した。この場合、より正確に生体情報信号が得られるように、送受信される信号間で誤り訂正を実行するように実施することも可能である。
【0078】
すなわち、この第2実施形態の変形例においては、図8にて破線で示すように、上記第2実施形態における発信器51によって出力される矩形信号に対して誤り訂正符号を付与する誤り訂正符号付加回路61が追加されている。誤り訂正符号付加回路61は、発信器51によって出力される矩形信号すなわちビット列に対して、予め設定した任意のビット数列ごとに誤り訂正符号ビット列を付加する。ここで、誤り訂正符号としては、例えば、周知のCRC(Cyclic Redundancy Check)符号やパリティー符号などを採用するとよい。
【0079】
そして、この第2実施形態の変形例の光検出部2においては、図9にて破線で示すように、誤り訂正符号付加回路61によって誤り訂正符号の付与された二次復調信号(データ列)の整合性をチェックするとともに誤りを修復するための誤り検査回路62と、同誤り検査回路62によって修復が不能であるときに正しいデータ列に置き換える補間回路63とが設けられている。
【0080】
誤り検査回路62は、第2乗算器27からスペクトラム逆拡散によってベースバンド信号(すなわち発信器51および誤り訂正符合付加回路61によって発生される誤り訂正符合に付加された矩形信号)を含む二次復調信号と、制御部3のディレイ32を介して光出射部1の発信器51から遅延して供給された矩形信号とに基づいて、二次復調信号の整合性をチェックするものである。そして、誤り検査回路62は、二次復調信号におけるデータ列が正しい場合には、二次復調信号を修復することなく補間回路63に出力する。また、誤り検査回路62は、二次復調信号におけるデータ列に誤りがあるものの修復可能である場合には、誤りを有するデータ列における該当ビットを修復して補間回路63に出力する。さらに、誤り検査回路62は、二次復調信号におけるデータ列に誤りがあり修復不能である場合には、そのまま二次復調信号を補間回路63に出力する。
【0081】
補間回路63は、誤り検査回路62から整合性をチェックされた二次復調信号と、制御部3のディレイ32を介して光出射部1の発信器51から遅延して供給された矩形信号とに基づいて、誤り検査回路62によって修復不能の二次復調信号を補間処理して第3乗算器52に出力するものである。すなわち、補間回路63は、上述したように、誤り検査回路62によって正しいデータ列を有する二次復調信号すなわち修復する必要のない二次復調信号およびビット修復された二次復調信号については、第3乗算器52に対して二次復調信号を出力する。また、補間回路63は、誤り検査回路62によって修復が不能とされた二次復調信号が有する誤ったデータ列を正しいデータ列に置き換えて第3乗算器52に出力する。具体的には、補間回路63は、例えば、誤ったデータを含むデータ列から最後に到着した正しいデータ列を利用したり、誤り訂正符号付加回路61によって誤り訂正符号の付与されたデータ列を1単位として誤ったデータ列の前後の正しいデータ列を利用したりして誤ったデータを含むデータ列を置き換えることにより修復する。
【0082】
そして、第3乗算器52は、補間回路63から正しいデータ列を有する二次復調信号を入力するとともに、上記第2実施形態と同様に、同入力した二次復調信号と、制御部3のディレイ32を介して光出射部1の発信器51から遅延して供給された矩形信号との積を取ることによって復調し、被変調光が生体内を伝播したときの影響すなわち被変調光の減衰の程度を表す振幅成分の値を計算する。そして、第3乗算器52は、振幅成分の値を累算器28に出力する。
【0083】
このように構成した第2実施形態の変形例においても、上記第1実施形態と同様に、制御部3が作動を制御することにより、上記第1実施形態と同様の効果が期待できる。さらに、この第2実施形態の変形例においては、光出射部1から出射された被変調光と光検出部2によって検出された生体情報信号を含む被変調光との整合性をチェックすることができるため、より正確に生体情報信号を得ることができる。
【0084】
c.第3実施形態
上記第1および第2実施形態においては、拡散符号系列発生器11が常に同一の拡散率によりPN系列を発生するように実施した。ここで、拡散率とは、生成されるPN系列の一周期の時間をチップレートの逆数で除算したものをいう。
【0085】
ところで、スペクトラム拡散変調においては、拡散率を大きくするほど、スペクトラム逆拡散すなわち復調した際の信号帯域幅が狭くなるものの信号のSN比が高まる性質を有している。その逆に、拡散率を小さくするほど、スペクトラム逆拡散した際の信号のSN比が低下するものの信号帯域幅が広くなる性質を有している。このようなスペクトラム拡散変調の性質を利用することにより、光検出部2によってより良好に被変調光を検出することができる。以下、この第3実施形態を詳細に説明するが、上記第1および第2実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、この第3実施形態は、上記第1および第2実施形態に適用できるものであるため、上記第1実施形態に適用した場合を代表して説明する。
【0086】
上述したように、光出射部1が特定波長を有する被変調光を生体中に出射する場合には、同被変調光が生体中を伝播するときの吸収散乱状態が異なるため、光の入射位置によって光検出部2によって検出される被変調光すなわち検出信号の強度が異なる。すなわち、生体に対して、ある位置から入射した被変調光は、伝播中における吸収散乱が小さく、光検出部2によって検出される検出信号の強度が大きくなる場合がある。一方、他の位置から入射した被変調光は、伝播中における吸収散乱が大きく、光検出部2によって検出される検出信号の強度が小さくなる場合がある。
【0087】
このように、検出信号の強度に差が生じる場合には、オペレータは、制御部3に対して、光検出部2の光受光器22によって検出される検出信号の強度が小さいすなわちSN比が低いと判断される光出射部1の拡散符号系列発生器11における拡散率を標準値CRcよりも大きなCRlに変更するように指示する。一方、オペレータは、制御部3に対して、光検出部2の光受光器22によって検出される検出信号の強度が大きいすなわちSN比が高いと判断される光出射部1の拡散符号系列発生器11における拡散率を標準値CRcよりも小さなCRsに変更するように指示する。ここで、標準値CRcは基準となる拡散率を表しており、一般的に「2」の16乗(65536)の値に設定され、CRlは「2」の17〜32乗、CRsは「2」の4〜15乗程度に設定される。なお、これらCRc,CRl,CRsの値の設定に関しては、限定されるものではなく種々の値に設定可能であることはいうまでもない。
【0088】
そして、制御部3は、オペレータの指示に従い、拡散符号系列発生器11がPN系列を発生するときの拡散率をCRlまたはCRsに変更する。これにより、検出信号のSN比が低いと判断される光出射部1においては、拡散符号系列発生器11の拡散率CRcがより大きなCRlに変更されることによって、生体情報信号の信号帯域幅は小さくなるもののSN比は改善される。一方、検出信号のSN比が高いと判断される光出射部1においては、拡散符号系列発生器11の拡散率CRcがより小さなCRsに変更されることによって、生体情報信号のSN比が若干低くなるものの、同信号の信号帯域幅が広がるため、広帯域の生体情報が得られる。
【0089】
ところで、一般的に、上述したPN符号(例えば、アダマール系列、M系列またはゴールド符号系列)を用いたスペクトラム拡散変調における直交性は、同一の拡散率のときに保障されるものである。このため、拡散率が異なる被変調光を同時に生体内に出射した場合には、これら各被変調光間の直交性が保障されない可能性がある。したがって、この第3実施形態においては、拡散符号系列発生器11は、拡散率が異なる被変調光間においても直交化を保障することができる直交可変拡散率(OVSF:Orthogonal Variable Spreading Factor)符号をPN符号として採用する。
【0090】
この直交可変拡散率符号は、図10に示すように、拡散率1から拡散率2(n+1)まで順次規則的に生成できることが知られている。そして、この直交可変拡散率符号では、同一拡散率であるときは言うまでもなく、異なる拡散率であるときにも直交性が保障されることがよく知られている。したがって、この第3実施形態において、拡散符号系列発生器11がこの直交可変拡散率符号をPN符号として採用することにより、上述した拡散率を異ならせて同時に生体内に被変調光を出射する場合であっても、出射された被変調光間で直交性が保障される。
【0091】
これにより、図11にて概略的に示すように、光出射部1と光検出部2との配置において、例えば、検出信号の強度が強い領域と弱い領域とが隣接する場合であっても、被変調光同士が互いに影響(妨害)することない。したがって、極めて良好に二次復調信号を得ることができて、正確な生体情報信号を得ることができる。
【0092】
本発明の実施に当たっては、上記第1ないし第3実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、上記各実施形態においては、生体情報計測装置Sが血液の吸光特性を利用して生体情報として血中酸素濃度を算出する場合に適用して実施した。しかしながら、光出射部1を構成する複数の光発生装置10が発生するそれぞれの特定波長を適宜変更することにより、他の吸光特性、例えば、生体の密度、水分や、血中のグルコース濃度、血糖値、脂質量、あるいは、脈拍などの変化に伴う吸光特性、例えば、酸素飽和度などを計測可能であることはいうまでもない。このように、他の吸光特性を利用する場合であっても、本発明に係る生体情報計測装置Sを用いることにより、生体情報をより正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体情報計測装置の概略を示すブロック図である。
【図2】図1の光出射部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2の第2乗算器によって変調された後におけるスペクトラム拡散のパワースペクトラムを示すグラフである。
【図4】図1の光検出部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4のLPFを通過した後における電気的な検出信号のパワースペクトラムを示すグラフである。
【図6】図1の生体情報計測装置を脳内の血中酸素濃度の計測に適用した場合における入射位置と受光位置の配列を一部抜き出して示した図である。
【図7】酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの波長に対する分子吸光係数の変化を概略的に示したグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る光出射部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る光検出部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係り、直交可変拡散率符号を説明するための図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係り、拡散率の変更状況を説明するための図である。
【図12】一般的なスペクトラム拡散におけるパワースペクトラムを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1…光出射部、10…光発生装置、11…拡散符号系列発生器、12…第1乗算器、13…ベースバンド出力器、14…第2乗算器、15…光源ドライバ、16…光源、2…光検出部、22…光受光器、23…増幅器、24…LPF、25…ADコンバータ、26…第1乗算器、27…第2乗算器、28…累算器、3…制御部、31…クロックジェネレータ、32…ディレイ、4…表示部、S…生体情報計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のベースバンド信号を生成して出力するベースバンド信号出力手段と、前記ベースバンド信号をスペクトラム拡散変調するための拡散符号系列を第1の周波数により生成する拡散符号系列生成手段と、同拡散符号系列生成手段によって生成された拡散符号系列を用いて前記ベースバンド信号をスペクトラム拡散して一次変調信号を出力する第1変調手段と、前記第1の周波数の2倍となる第2の周波数を用いて前記第1変調手段によって出力された一次変調信号を変調して二次変調信号を出力する第2変調手段と、少なくとも1つの光源を有して前記第2変調手段から出力された前記二次変調信号に基づいて生体内に特定波長を有する近赤外光を出射する光発生手段とを有する光出射部と、
前記光出射部から出射されて前記生体内を伝播した近赤外光を受光するとともに同受光した近赤外光を電気的な検出信号に変換して出力する受光手段と、同受光手段から出力された電気的な検出信号の信号帯域のうち、直流および直流近傍の周波数における信号成分および前記第2の周波数以上の信号成分を除去して出力する信号成分除去手段と、前記近赤外光が前記生体内を伝播することに伴う遅延を加味した前記第2の周波数の2倍となる第3の周波数を用いて前記信号成分除去手段によって出力された電気的な検出信号をデジタル信号に変換する信号変換手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記第2の周波数を用いて前記信号変換手段によって変換されたデジタル信号を復調して一次復調信号を出力する第1復調手段と、前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記拡散符号系列を用いて前記一次復調信号をスペクトラム逆拡散して二次復調信号を出力する第2復調手段と、同第2復調手段から出力された二次復調信号を用いて前記生体の代謝に伴う生体情報に関連する生体情報信号を出力する生体情報信号出力手段とを有する光検出部とを備えたことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載した生体情報計測装置において、
前記第2の周波数を、前記光検出部の受光手段が前記生体内を伝播した近赤外光を有効に検出可能な有効検出帯域幅と一致させたことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載した生体情報計測装置において、
前記光出射部におけるベースバンド信号出力手段は、直流信号を生成して出力することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載した生体情報計測装置において、
前記光出射部におけるベースバンド信号出力手段は、前記第1の周波数の半分以下の任意の周波数により略パルス状の信号を生成して出力するものであり、
前記光検出部は、さらに、
前記近赤外光を前記生体内で伝播させることに伴う遅延を加味した前記略パルス状の信号を用いて前記第2復調手段によって出力された前記二次復調信号を復調する第3復調手段を有することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載した生体情報計測装置において、
前記光出射部は、さらに、
前記ベースバンド信号出力手段によって出力された略パルス状の信号に対して誤り訂正符号を付加する誤り訂正符号付加手段を有し、
前記光検出部は、さらに、
前記第2復調手段から出力された前記二次復調信号に含まれる前記誤り訂正符号を用いて同二次復調信号の整合性を検査する誤り検査手段と、
前記誤り検査手段による検査によって前記二次復調信号に誤りが存在するときに同二次復調信号を補間により修復する補間手段とを有することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載した生体情報計測装置において、
前記光出射部における拡散符号系列生成手段は、
前記光検出部における受光手段によって受光される前記生体内を伝播した近赤外光の光強度に応じて、前記拡散符号系列の拡散率を変更することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載した生体情報計測装置において、
前記拡散符号系列生成手段は、
前記光検出部における受光手段によって受光される前記生体内を伝播した近赤外光の光強度が小さくSN比が低いときに前記拡散率を大きく変更して前記拡散符号系列を生成し、前記光強度が大きくSN比が高いときに前記拡散率を小さく変更して前記拡散符号系列を生成することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項8】
請求項6に記載した生体情報計測装置において、
前記拡散符号系列生成手段は、
前記変更した拡散率の異なる拡散符号系列間での直交性を保障する直交可変拡散率符号を拡散符号系列として生成することを特徴とする生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−101052(P2009−101052A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277513(P2007−277513)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(501222910)株式会社スペクトラテック (12)
【Fターム(参考)】