説明

生体成分測定装置

【課題】より正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる生体成分測定装置を実現すること。
【解決手段】 光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置において、前記光源から出射されたレーザ光の一部および前記生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段と、該ビームスプリッタ手段により光路変換された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、、前記反射光または前記参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置に関し、特に、より正確で安定した生体内物質の定量を行うことができるための改善を施した生体成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光を利用した分光法などにより、光源から被測定対象に照射すると、被測定対象に含まれる成分に特有の波長域においてその成分の量に応じた吸光特性を示すことから、被測定対象からの反射光などの測定光から吸光度(特定成分による光の吸収度)を算出し、その吸光スペクトルに基づいて被測定対象に含まれる成分を分析する手法が知られている。
【0003】
特に生体の内部組織(たとえば人体・動物の血管中血液や組織中の組織液に含まれる各種物質(血液中の血糖値などの成分の濃度など)など)の成分の測定を行う生体成分測定装置では、特許文献1のように波長可変レーザと共焦点系を用いて、波長可変レーザから出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光や生体を透過した光を測定して生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置が提案されている。
【0004】
具体的には、被測定対象としての生体の内部組織に2波長以上の波長の各レーザ光を照射し、その生体の内部組織で反射した光や生体を透過した光から吸光度スペクトルを求めた後、生体の内部組織の成分を周知の試験にて算出し、吸光度スペクトルと生体の内部組織の成分との相関関係を表す式(以下、相関式という)を作成し、これをあらかじめ記憶するとともに、生体の内部組織の反射光や生体を透過した光から算出された吸光度を相関式に代入することで、その生体の内部組織の成分が測定されていた。
【0005】
さらに、特許文献1の生体成分測定装置では、共焦点光学系と生体とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を備えるものであり、移動駆動機構により前記共焦点光学系と前記生体とを相対的に3次元的に移動させることで前記生体に対して前記共焦点光学系の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、生体の内部組織の3次元的なデータを得ることにより、測定を行う生体の部位を確実に特定し、当該部位における生体の成分の測定を非侵襲でかつ確実に行うことが可能な生体成分測定装置について提案されている。
【0006】
このような従来の生体成分測定装置は、生体を侵襲して血液を採取せずに(具体的には、指先や耳たぶを穿刺したりして、血液を実際に採取せずに)、生体に光を照射してその生体による反射光や生体を透過した光を検出して光が生体により吸収された度合(吸光度)に基づいて目的の成分の濃度などを測定することができる点で有効であった。
【0007】
このような生体成分測定装置に関連する先行技術文献として下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−301944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の生体成分測定装置では、波長可変レーザの出力光の強度変動がそのまま生体内散乱光の強度変動となり、この変動による誤差は本質的に取り除けないという問題点があった。
すなわち、従来の生体成分測定装置では、波長可変レーザの出力光の強度が変動するので、正確な吸光スペクトル測定ができないという問題点があった。
【0010】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、より正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる生体成分測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記光源から出射されたレーザ光の一部および前記生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段と、
該ビームスプリッタ手段により光路変換された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記ビームスプリッタ手段により光路変換された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする生体成分測定装置である。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の生体成分測定装置において、
前記参照光測定部は、
前記ビームスプリッタ手段が光路変換した前記反射光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集束された前記反射光を通過させるピンホールと、
前記ピンホールを通過した前記反射光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する第1の受光素子と、
前記データ信号をAD変換して前記分析手段に出力するAD変換手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の生体成分測定装置において、
前記反射光測定部と前記生体とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を備え、
前記移動駆動機構により前記反射光測定部と前記生体とを相対的に3次元的に移動させることで前記生体に対して前記反射光測定部の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、前記生体の内部組織の3次元的なデータを得ることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記光源から出射されたレーザ光を分岐する分岐手段と、
該分岐手段により分岐された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記分岐手段により分岐された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記分岐手段により分岐されたレーザ光である参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記被測定対象の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記レーザ光の一部を透過し前記光源から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換する第1のビームスプリッタ手段と、
前記第1のビームスプリッタ手段を透過して入射する前記レーザ光の一部を光路変換し前記レーザ光の他の部分を透過して前記生体の内部組織により反射された反射光を光路変換する第2のビームスプリッタ手段と、
前記第1のビームスプリッタ手段により光路変換された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記第2のビームスプリッタ手段により光路変換された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記第1のビームスプリッタにより光路変換された参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体成分測定装置において、
前記光源の出力光を被測定対象の表面に照射する光ファイバと、
この光ファイバの照射に基づく被測定対象の表面における反射光を検出する第2の受光素子と、
この第2の受光素子の検出信号に基づき前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する光源駆動回路、
を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の生体成分測定装置において、
前記分析手段は、前記第2の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づいて前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項6に記載の生体成分測定装置において、
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記光源駆動回路は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項6に記載の生体成分測定装置において、
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記分析手段は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項6に記載の生体成分測定装置において、
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記分析手段は、
前記第2の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した第1の規格化信号と、前記第3の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した第2の規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の生体成分測定装置において、
前記光源駆動回路は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする。
【0022】
請求項12記載の発明は、請求項11に記載の生体成分測定装置において、
前記分析手段は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号の少なくともいずれかで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項13記載の発明は、請求項11に記載の生体成分測定装置において、
前記分析手段は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号のそれぞれで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この結果、本発明の生体成分測定装置は、光源から出射されたレーザ光の一部および生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段と、ビームスプリッタ手段により光路変換された光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、反射光または参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段と、を備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【0025】
また、本発明の生体成分測定装置では、本発明の生体成分測定装置は、光源から出射されたレーザ光を分岐する分岐手段と、反射光または分岐手段により分岐されたレーザ光である参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段と、を備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【0026】
また、本発明の生体成分測定装置では、レーザ光の一部を透過し光源から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換する第1のビームスプリッタ手段と、第1のビームスプリッタ手段を透過して入射するレーザ光の一部を光路変換しレーザ光の他の部分を透過して生体の内部組織により反射された反射光を光路変換する第2のビームスプリッタ手段と、反射光または第1のビームスプリッタにより光路変換された参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段と、を備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る生体成分測定装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【図3】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【図4】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【図5】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【図6】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【図7】本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置に関し、特に、より正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる生体成分測定装置に関する。以下、図面を用いて本発明の生体成分測定装置を説明する。
【0029】
<実施例1>
図1は、本発明に係る生体成分測定装置の一実施例を示す構成図であり、図1における生体成分測定装置の特徴は、ビームスプリッタ手段が波長可変レーザあるいは固定波長レーザなどの光源から出射されたレーザ光の一部および生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させ、参照光測定部がビームスプリッタ手段により光路変換された光源から出射されたレーザ光を参照光として測定し、分析手段が反射光または参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する点である。
【0030】
(構成の説明)
図1において本発明に係る生体成分測定装置は、主に、生体の内部組織に投光する光源の一例である赤外光を出力する波長可変レーザあるいは固定波長レーザなどのレーザダイオード1と、レーザダイオード1からのレーザ光を平行光とするための平行光手段の一例であるコリメータレンズなどのレンズ2と、レーザダイオード1から出射されレンズ2により平行光とされたレーザ光の一部および生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段の一例であるプリズム3と、プリズム3により光路変換された光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部4と、プリズム3により光路変換された生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部5と、プリズム3を透過した透過光を集光して生体の内部組織に照射し、生体の内部組織からの反射光を平行光としてプリズム3に出射する対物レンズを含むレンズ系の一例である対物レンズ6と、反射光または参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段7とから構成される。
【0031】
また、特に図示しないが、本発明の生体成分測定装置では、載置台が設けられ、載置台上に被験者の腕などの生体が載置されるようになっている。たとえば、載置台に被験者の腕が載置され、その被験者の腕などの生体の上方にレーザダイオード1が備えられる構成となる。
【0032】
なお、本発明の生体成分測定装置のレーザダイオードは、波長可変レーザであってもよいし、波長可変レーザの代わりに出射するレーザ光の波長が異なる複数のレーザを切り換えて用いるように構成することも可能である。
【0033】
参照光測定部4は、プリズム3により光路変換されたレーザダイオード1から出射されたレーザ光の一部(プリズム3でもれ出てくる光)を集光する第1の集光手段の一例であるレンズ41と、レンズ41の光軸上に設けられ、レンズ41により集光された参照光を通過させる第1のピンホール42と、光電子増倍管やフォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)などで構成され第1のピンホール42を通過した参照光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する受光素子43と、受光素子43と電気的に接続され受光素子43からの出力信号を受信し、この出力信号に基づきAD変換(アナログデジタル変換)するAD変換手段44と、から構成される。
【0034】
反射光測定部5は、プリズム3により光路変換された反射光を集光する第2の集光手段の一例であるレンズ51と、レンズ51の光軸上に設けられ、レンズ51により集光された反射光を通過させる第2のピンホール52と、光電子増倍管やフォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)などで構成され第2のピンホール52を通過した反射光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する受光素子53と、受光素子53と電気的に接続され受光素子53からの出力信号を受信し、この出力信号に基づきAD変換するAD変換手段54と、から構成される。
【0035】
なお、第1・第2のピンホール42、52は、図示しない絞りを設けることや、径が異なる複数のピンホールを設けてそれらを切り替え可能に構成することなどにより、通過する反射光の光量を調整できるように構成することも可能である。
【0036】
分析手段7は、CPU(Central Processing Unit)やROM(ReAD Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェースなどがバスに接続されて構成されるコンピュータなどで構成されている。CPUは、ROMに記憶されているデータ解析用のプログラムなどの各種プログラムを読み出してRAMに適宜展開して各種処理を実行するようになっている。
【0037】
分析手段7は、AD変換手段44、54からの各出力信号に基づき、参照光・反射光の光量変化を測定する。また分析手段7は、AD変換手段44から得られた参照光の波長ごとの光量変化に基づいて、AD変換手段54から得られた生体の内部組織の反射光の波長ごとの光量変化を補正して生体の内部組織の吸収による減衰量を算出し、この吸光度スペクトルに基づき生体の内部組織に含まれる成分を分析する。
【0038】
具体的には、分析手段7にあらかじめ記憶されている吸光度スペクトルと生体の内部組織の各種成分との相関関係を表す関係式(検量線)に生体の内部組織からの反射光から算出された吸光度を代入し、生体の内部組織に係る各種成分を測定・分析する。
【0039】
(動作説明)
このような構成で、本発明の生体成分測定装置は、以下の動作(1−1)〜(1−12)と(2−1)〜(2−6)とを行う。
【0040】
(1−1)
レーザダイオード1がレーザ光を出射する。
なお、レーザダイオード1が波長可変レーザであれば出射するレーザ光の波長を変化させたりして以下(1−1)〜(1−12)、(2−1)〜(2−6)の動作をあらかじめ定められたスケジュールやタイミングなどにしたがって断続的に行い、反射光・参照光を測定し続けるものでもよい。
(1−2)
レーザダイオード1からのレーザ光はレンズ2により平行光とされてプリズム3に入射する。
【0041】
ここで、プリズム3に入射した平行光は、プリズム3を透過して生体に照射される光とプリズム3により反射などにより光路変換・変更されて参照光測定部4へ出射される一部の光とに分けられる。
プリズム3を透過した光に関する動作を(1−3)以降に記載すると共に、プリズム3により光路変換・変更されて参照光測定部4へ出射される一部に関する動作を(2−1)に記載する。
【0042】
(1−3)
プリズム3に入射した平行光は、プリズム3を透過して対物レンズ6に入射する。
(1−4)
対物レンズ6は、入射した平行光を集光・集束し生体(生体の内部組織)に照射する。
(1−5)
対物レンズ6は、生体の内部組織により反射された反射光を平行光としてプリズム3に照射する。
なお、反射光は生体の内部組織の吸収を受け、レーザダイオード1から投光された光のうち特定の波長の光が減衰するものである。
【0043】
(1−6)
プリズム3は、入射した反射光を反射し、光路変換させてレンズ51に入射させる。
(1−7)
レンズ51は、プリズム3からの反射光を集光してピンポール52に入射させる。レンズ51は、プリズム3からの反射光をピンホール52の位置で集束してピンホール52を通過させる位置に配置される。
【0044】
(1−8)
ピンホール52に集光された反射光は、ピンホール52を通過して受光素子53に入射する。
(1−9)
受光素子53は、第1のピンホール51を通過した反射光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する。
【0045】
(1−10)
AD変換手段54は、受光素子53からの出力信号に基づきAD変換して、分析手段7に受光素子53が受光した反射光の光量に応じたデータ信号を出力する。
(1−11)
分析手段7は、AD変換手段54からの反射光の光強度を示すデータ信号を受信すると反射光のスペクトルを検出する。
(1−12)
分析手段7は、後述の(2−6)で得られる参照光の波長ごとの光量変化に基づいて(1−11)で得られた生体の内部組織の反射光の波長ごとの光量変化を補正して、生体の内部組織の吸収による減衰量を算出し、この吸光度スペクトルに基づき生体の内部組織に含まれる成分を分析する。
【0046】
具体的には、分析手段7にあらかじめ記憶されている吸光度スペクトルと生体の内部組織の各種成分との相関関係を表す関係式(検量線)に、生体の内部組織からの反射光から算出された吸光度を代入することにより、生体の内部組織に係る各種成分を測定・分析する。
【0047】
また、分析手段7は上述の光学系で異なる波長(たとえば、目的物質の吸収波長と吸収の少ない波長)における散乱、反射光を測定し、生体の内部組織のある成分(たとえばグルコース)による吸収に係る相関関係式(検量線)を用いて成分分析(たとえば血糖値測定)を行う。
【0048】
なお、分析手段7と生体との距離が離れている場合、反射光は光ファイバなどの第1の導光手段(図示せず)を介して受光素子53からAD変換手段54に導光されるため、導光手段の材質や長さなどによる影響や、周囲温度変化などの環境による影響を受ける。
そのため、参照光を受光素子43からAD変換手段54に導光するための第2の導光手段(図示せず)の引き回しを反射光の第1の導光手段の引き回し経路と同じようにすることで、参照光も測定光と同程度の影響を受けるようにするものでもよい。
【0049】
参照光は、生体の内部組織による吸収の影響がないため、第2の導光手段の設置状況や周囲環境による影響のみを受けている。したがって、分析手段7は、参照光の波長ごとの光量変化に基づいて、生体の内部組織による反射後の測定光の波長ごとの光量変化を補正することにより生体の内部組織の吸収による減衰量を算出でき、この吸光度スペクトルに基づき生体の内部組織に含まれる成分を分析できる。
【0050】
(2−1)
プリズム3により光路変換・変更されて参照光測定部4へ出射される一部の光は、参照光測定部4のレンズ41に入射する。
本発明の生体成分測定装置は、この光を参照光として生体成分分析に用いる。参照光は、分析手段7が生体の内部組織により反射された反射光が生体の内部組織による反射前の光からどの程度減衰しているかを検出する比較対象として用いられるものである。
(2−2)
レンズ41は、入射した光を集光・集束してピンホール42に入射させる。レンズ41は、プリズム3からの光をピンホール42の位置で集束してピンホール42を通過させる位置に配置される。
【0051】
(2−3)
ピンホール42に集光された参照光は、ピンホール42を通過して受光素子43に入射する。
(2−4)
受光素子43は、ピンホール42を通過した参照光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する。
(2−5)
AD変換手段44は、受光素子43からの出力信号に基づきAD変換して、分析手段7に受光素子43が受光した参照光の光量に応じたデータ信号を出力する。
(2−6)
分析手段7は、AD変換手段44からの参照光の光強度を示すデータ信号を受信すると参照光のスペクトルを検出する。
【0052】
なお、本発明の生体成分測定装置は、たとえばレーザダイオード1が波長可変レーザであれば出射するレーザ光の波長を変化させて上述(1−1)〜(1−12)、(2−1)〜(2−6)の動作をあらかじめ定められたスケジュールやタイミングなどにしたがって断続的に行い、反射光・参照光を測定し続ける。
【0053】
この結果、本発明の生体成分測定装置は、光源から出射されたレーザ光の一部および生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段と、ビームスプリッタ手段により光路変換された光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、反射光または参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段と、を備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【0054】
また、本発明の生体成分測定装置はレーザ光、共焦点系を用いているため、分光を行うために照射した光について、生体で内の散乱した光をほぼすべて受光し、信号処理に用いることができる点でも有効である。
【0055】
(x、y、z軸方向の位置調整についての説明)
ここで、本発明の生体成分測定装置は、レンズ系を深さ方向(z軸方向)に動かすことができ、これで対象物内の焦点位置を可変できるものでもよい。また、本発明の生体成分測定装置は、x軸、y軸方向にスキャンできる機構を持ち、これにより生体内(皮膚組織内)の3次元情報を得ることができるものでもよい。
【0056】
たとえば、本発明の生体成分測定装置は、上述の対物レンズ6などから構成される共焦点光学系と生体とを相対的に3次元的に移動させる図示しない移動駆動機構が設けられており、移動駆動機構の駆動により生体に対して共焦点光学系の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、生体の内部組織の3次元的なデータを得ることができるような構成であってもよい。
【0057】
具体的には、本実施形態では、作業者が分析手段7を構成するコンピュータを操作することで移動駆動機構を作動させることができるようになっており、移動駆動機構4の作動により、共焦点光学系のうち、レーザダイオード1、レンズ2、プリズム3、対物レンズ6、レンズ51、ピンホール52、受光素子53などが、図示しない載置台上に載置された生体に対して一体的に3次元方向、すなわちx軸方向、y軸方向およびz軸方向にμm(マイクロメータ)レベルで微小移動されるようになっている。
【0058】
ここで、x軸方向およびy軸方向は、生体の表皮面に略平行な平面内の互いに直交する方向であり、以下、x軸方向およびy軸方向をあわせて生体の表皮面に平行な平面方向または単に平面方向という。また、z軸方向は、x軸方向およびy軸方向に直交し、生体の表皮面からの深さを表す方向であり、以下、生体の表皮面からの深さ方向または単に深さ方向という。
【0059】
つまり、本実施形態では、移動駆動機構は、分析手段7を構成するコンピュータにおける作業者のキーボードなどの操作に基づくCPUからの指示に応じて、共焦点光学系の上記各部材をx軸方向やy軸方向すなわち生体の表皮面に平行な平面方向に微小量ずつ移動させることで、共焦点光学系の対物レンズ6の焦点位置Fを生体の内部組織中で平面方向に2次元的にスキャンさせることができるようになっている。
【0060】
また、移動駆動機構は、作業者の操作に基づくCPUからの指示に応じて、共焦点光学系の上記各部材をz軸方向すなわち深さ方向に微小量ずつ移動させることで、共焦点光学系の対物レンズ6の焦点位置Fを深さ方向に微小量ずつ移動させることができるようになっている。
【0061】
そして、これにより、焦点位置Fの平面方向の2次元スキャンを生体内で深さを変えて行うことで、生体の内部組織の3次元的にデータを得ることができるようになっている。
【0062】
このような構成で、本発明の生体成分測定装置は、次のような動作を行い、レンズ系を深さ方向(z軸方向)、x、y軸方向に位置調整して、これにより生体内(皮膚組織内)の3次元情報を取得する。
【0063】
以下の動作説明では、生体成分測定装置により被験者のたとえば腕などの真皮組織にレーザ光を照射し、その反射光を受光素子で受光して得られるデータに基づいてその被験者の血液中のグルコースによるレーザ光の吸光度を測定して血液内の血糖値の定量を行う場合について、本発明の動作説明の一例として説明する。
【0064】
たとえば、本発明の生体成分測定装置では、生体の内部組織のうち、図示しない真皮組織a1のグルコース濃度のデータを3次元的に収集し、真皮組織a2中に存在する毛細血管の位置を特定して、その毛細血管の位置におけるグルコース濃度を血液中のグルコース濃度すなわち血糖値として測定する。
【0065】
そのために、まず、共焦点光学系2をz軸方向、すなわち生体の表皮面からの深さ方向に移動させながら、生体における真皮組織a2の位置を特定する。
【0066】
生体の皮膚組織を構成する表皮組織a1、真皮組織a2および皮下組織a3は、グルコースなどに特定されない全成分による吸光度、すなわちグルコースや水、脂肪などにより吸収される分を含む全吸光度が照射されるレーザ光の波長に応じてそれぞれの組織で異なるという特性を有する。たとえば、レーザ光の波長が1450nmである場合には、真皮組織a2の吸光度が表皮組織a1や皮下組織a3の吸光度より格段に大きい。また、実際の観測においても、レーザ光の波長を適宜選択すると、表皮組織a1、真皮組織a2、皮下組織a3でレーザ光の吸光度が比較的明確に変化することが観測される。
【0067】
そこで、本発明の生体成分測定装置では、図示しない移動駆動機構を作動させて、対物レンズ6の焦点位置Fが表皮面に近い位置に集束されるように位置調整を行った後、共焦点光学系をZ軸方向に微小移動させて焦点位置Fを深さ方向に微小量ずつ移動させながら各位置でレーザ光の全成分による吸光度を測定する。そして、吸光度が大きく増加した位置で焦点位置Fが表皮組織a1から真皮組織a2に移行し、さらに共焦点光学系をz軸方向に移動させて、吸光度が大きく減少した位置で焦点位置Fが真皮組織a2から皮下組織a3に移行したと判断して、真皮組織a2の深さ方向の位置の範囲を特定する。
【0068】
なお、真皮組織a2の深さ方向の位置の特定においては、本実施形態のように全成分による吸光度を用いる代わりに、前述したグルコース濃度の変化で特定することも可能である。前述したように、角質層を含み毛細血管があまり発達していない表皮組織a1や、主に脂肪組織で構成される皮下組織a3に比べ、真皮組織a2は組織内に毛細血管が発達していてグルコース濃度が高い。そのため、グルコース濃度が高い深さ方向の範囲を真皮組織a2の深さ方向の位置の範囲として特定することができる。
【0069】
続いて、真皮組織a2であると判断された深さ方向の範囲内で、共焦点光学系2をx軸方向およびy軸方向に移動させ、対物レンズ6の焦点位置Fを生体の表皮面に平行な平面方向に微小量ずつ移動させて真皮組織a2中で2次元スキャンさせながら、その各位置でグルコース濃度を測定する。すると、各位置におけるグルコース濃度を2次元的にマッピングした場合、たとえば図中に斜線を付して示された部分のように、グルコース濃度が周囲より高い部分が検出される。
【0070】
この2次元スキャンによるマッピングを、焦点位置Fを深さ方向(z軸方向)に微小移動させながら行うと、グルコース濃度の3次元分布を得ることができる。
【0071】
前述したように、グルコースは毛細血管から組織内に高い浸透性を有するとはいえ、真皮組織a2中における濃度より毛細血管中の濃度の方が高いから、グルコース濃度が周囲より高く線状に検出された部分は、真皮組織a2中の毛細血管であると判別することができる。
【0072】
本実施形態では、このように周囲よりもグルコース濃度が高く線状に検出された部分を真皮組織a2中の毛細血管であるとしてその位置を特定し、その毛細血管の位置におけるグルコース濃度を毛細血管内を流れる血液中の血糖値として測定するようになっている。
【0073】
本実施形態では、上記のように、グルコースや水、脂肪などの全成分による吸光度やグルコース濃度により真皮組織a2の深さ方向の位置の範囲を特定し、グルコース濃度に基づいて真皮組織a2中の毛細血管の位置を特定することができる。このようにして毛細血管の位置が特定できれば、その位置における他の成分の濃度などを測定することで、血液中のグルコース以外の成分の濃度などの測定を行うことが可能となる。
【0074】
その際、このようにしてグルコース以外の成分の濃度などを測定する場合には、前述したグルコースの場合と同様に、たとえばその成分による吸収が大きい波長領域内で波長を種々変化させて得られるデータ信号に基づいて算出されるその成分による吸光度を重み付け加算するための各重み付け定数と、重み付け加算された吸光度とその成分とを対応付ける検量線をあらかじめ作成し、ROMに記憶させておくことが必要となる。
【0075】
また、真皮組織a2における毛細血管以外の組織部分の位置を特定することもできるから、上記と同様の手法により、真皮組織a2の毛細血管以外の組織部分における種々の生体成分の濃度などの測定を行うことが可能となる。さらには、本実施形態では、表皮組織a1、真皮組織a2および皮下組織a3の位置をそれぞれ区別して特定して測定を行うことができるため、それぞれの組織における種々の生体成分を的確に区別してその濃度などの測定を行うことが可能となる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る生体成分測定装置によれば、異なる波長のレーザ光を用いた共焦点光学系により、生体の内部組織においてその深さ方向や平面方向の位置を特定して生体成分の測定を行うことが可能となる。そのため、たとえば真皮組織a2における生体成分の測定を行う場合などのように、生体の内部組織を構成する各部位の厚み、すなわち表皮組織a1や真皮組織a2などの厚みなどに個人差がある場合であっても、各部位の吸光度の違いなどを利用して、目的とする部位の深さ方向の位置範囲を特定できるので、確実に目的とする部位を特定し、その部位における生体成分の測定を行うことが可能となる。
【0077】
<実施例2>
なお、本発明の生体成分測定装置は、実施例1で説明したような構成のほか、レーザダイオード1から出射されるレーザ光を生体に出射するための光と参照光として利用するための光とに分岐して、反射光または参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析し従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができるものとするものでもよい。
また、参照光測定部4の構成は、分析手段7が参照光を測定できるものであればどのような構成であってもよい。
【0078】
図2はこのような本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図であり、図1と共通する部分については適宜省略して説明する。
【0079】
図2において、参照光測定部4は、レーザダイオード1から出射される光を分岐する分岐手段45と、レーザダイオード1から出射される光を参照光として受光し光量に応じたデータ信号を出力する受光素子43と、受光素子43と電気的に接続され受光素子43からの出力信号を受信し、この出力信号に基づきAD変換するAD変換手段44とから構成される。
【0080】
この場合、本発明の生体成分測定装置では、以下の動作を行う。
(1)レーザダイオード1はレーザ光を出射する。
(2)レーザダイオード1から出射される光は、分岐手段45によりレーザダイオード1から出射されるレーザ光を「生体に出射するための光」と「参照光として利用するための光」とに分岐される。
(3)参照光測定部4は、分岐手段45により分岐された一方の光である参照光の光量に応じたデータ信号を変換して出力する。
(4)反射光測定部5は、分岐手段により分岐された他方の光であって生体によって反射される反射光の光量に応じたデータ信号をAD変換して出力する。
(5)分析手段7は、実施例1の動作と同様に参照光の波長ごとの光量変化に基づいて生体の内部組織の反射光の波長ごとの光量変化を補正することにより生体の内部組織の吸収による減衰量を算出し、この吸光度スペクトルに基づき生体の内部組織に含まれる成分を分析する。
【0081】
この結果、本発明の生体成分測定装置は、光源から出射されたレーザ光を分岐する分岐手段と、反射光または分岐手段により分岐されたレーザ光である参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段とを備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【0082】
<実施例3>
なお、本発明の生体成分測定装置は、実施例1、2で説明したような構成のほか、レーザダイオード1からのレーザ光の一部を透過しレーザダイオード1から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換するプリズムなどの第1のビームスプリッタ手段とから構成される参照光測定部と、第1のビームスプリッタ手段を透過して入射するレーザ光の一部を光路変換しレーザ光の他の部分を透過して生体の内部組織により反射された反射光を光路変換するプリズムなどの第2のビームスプリッタ手段とから構成される反射光測定部とから構成されるものでもよい。
【0083】
図3はこのような本発明の生体成分測定装置の他の一実施例の構成図であり、図1と共通する部分については適宜省略して説明する。
【0084】
図3において、本発明の生体成分測定装置は、生体の内部組織に投光する光源の一例である赤外光を出力する波長可変レーザあるいは固定波長レーザなどのレーザダイオード1と、レーザダイオード1からのレーザ光を平行光とするための平行光手段の一例であるコリメータレンズなどのレンズ2と、参照光測定部4と、反射光測定部5と、分析手段7とから構成される。
【0085】
実施例3における生体成分測定装置の参照光測定部4は、レンズ2を介して入射するレーザダイオード1からのレーザ光の一部を透過しレーザダイオード1から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換する第1のビームスプリッタ手段46と、第1のビームスプリッタ手段46からのレーザ光を集光する第1の集光手段の一例であるレンズ41と、レンズ41の光軸上に設けられ、レンズ41により集光された反射光を通過させる第1のピンホール42と、レーザダイオード1から出射される光を参照光として受光し光量に応じたデータ信号を出力する受光素子43と、受光素子43と電気的に接続され受光素子43からの出力信号を受信し、この出力信号に基づきAD変換するAD変換手段44とから構成される。
【0086】
実施例3における生体成分測定装置の反射光測定部5は、第1のビームスプリッタ手段46からの入射光を一部および生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させる第2のビームスプリッタ手段56と、第2のビームスプリッタ手段56から入射される生体の内部組織により反射された反射光を集光する第1の集光手段の一例であるレンズ51と、レンズ51の光軸上に設けられ、レンズ51により集光された反射光を通過させる第1のピンホール52と、レーザダイオード1から出射される光を参照光として受光し光量に応じたデータ信号を出力する受光素子53と、受光素子53と電気的に接続され受光素子53からの出力信号を受信し、この出力信号に基づきAD変換するAD変換手段54とから構成される。
【0087】
この場合、本発明の生体成分測定装置では、以下の動作を行う。
(1)レーザダイオード1はレーザ光を出射する。
(2)レーザダイオード1から出射されるレーザ光の一部は第1のビームスプリッタ手段46を透過して反射光測定部5の第2のビームスプリッタ手段56に入射し、レーザダイオード1から出射されたレーザ光の他の部分が第1のビームスプリッタ手段46により光路変換されて参照光測定部4のレンズ41に入射する。
(3)参照光測定部4は、分岐手段により分岐された一方の光である参照光の光量に応じたデータ信号をアナログデジタル変換して出力する。
(4)反射光測定部5は、分岐手段により分岐された他方の光であって生体によって反射される反射光の光量に応じたデータ信号をアナログデジタル変換して出力する。
(5)分析手段7は、実施例1の動作と同様に参照光の波長ごとの光量変化に基づいて生体の内部組織の反射光の波長ごとの光量変化を補正して、生体の内部組織の吸収による減衰量を算出でき、この吸光度スペクトルに基づき生体の内部組織に含まれる成分を分析する。
【0088】
なお、本実施例の生体成分測定装置は、第1・第2のビームスプリッタ手段の間に第2のビームスプリッタ56を透過して第1のビームスプリッタ46に入射する反射光をあらかじめ定められたタイミングで遮断するフィルタや非反射板などにより構成され、たとえば回転ターレット機構などにより構成される遮断手段を具備するものであってもよい。
【0089】
この場合、たとえば分析手段7を構成するコンピュータは、この遮断手段を制御し、図示しない記憶手段に格納されているあらかじめ定められたタイミングまたはあらかじめ定められた測定間隔で、第2のビームスプリッタ56を透過して第1のビームスプリッタ46に入射する反射光を遮断する。
一方、分析手段7を構成するコンピュータは、この遮断手段を制御してあらかじめ定められたタイミングで第1のビームスプリッタ手段を透過したレーザ光を第2のビームスプリッタ手段に入射させる。
こうすれば、本実施例の生体成分測定装置は、第2のビームスプリッタ56を透過した反射光を含んでいないレーザダイオード1からの参照光に基づいて生体成分測定を行える点で有効である。
【0090】
この結果、本発明の生体成分測定装置は、レーザ光の一部を透過し光源から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換する第1のビームスプリッタ手段と、第1のビームスプリッタ手段を透過して入射するレーザ光の一部を光路変換しレーザ光の他の部分を透過して生体の内部組織により反射された反射光を光路変換する第2のビームスプリッタ手段と、反射光または第1のビームスプリッタにより光路変換された参照光のスペクトルを測定して生体の内部組織を分析する分析手段とを備えることにより、従来よりも比較的正確で安定した生体内物質の定量を行うことができる。
【0091】
上記各実施例において、レーザーダイオード1から被測定対象に照射される光強度を所定の値に維持するように、レーザーダイオード1を自動出力制御ループ8で駆動することにより、安定した測定が行える。
【0092】
図4は、このような構成を前述図1の実施例に適用した例を示す構成図である。図4の実施例では、レーザーダイオード1の出力光の一部を光ファイバ81を介して被測定対象の表面に照射させてその反射光を第2の受光素子82で検出し、この第2の受光素子82の出力信号を光源駆動手段83に与えてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0093】
これにより、レーザーダイオード1の温度変化および空間強度変動に起因する出力光強度を抑制でき、安定した成分測定結果が得られる。
【0094】
また、第2の受光素子82の出力信号をAD変換手段84を介して分析手段7に加え、受光素子53の出力信号を第2の受光素子82の出力信号で除算して規格化することにより、レーザーダイオード1の出力変動分や被測定対象の表面反射による変動分を補償できる。
【0095】
図5は、図4のレーザーダイオード1として、その出力光をモニタする図示しない第3の受光素子が内蔵されたものを用いた実施例を示す構成図である。第3の受光素子の出力信号も光源駆動手段83に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0096】
また、第3の受光素子の出力信号もAD変換手段11を介して分析手段7に入力され、受光素子53の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算して規格化する。これにより、分析手段7は、2つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分や被測定対象の表面反射による変動分を高精度に補償する。
【0097】
図6は、図5の実施例において、受光素子43の出力信号も光源駆動手段83に入力するようにしたものである。受光素子43は、レーザーダイオード1の出力光の空間変動分を検出するものであり、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0098】
また、AD変換手段44を介して分析手段7に入力される受光素子43の出力信号も、受光素子53の出力信号を除算して規格化する。これにより、分析手段7は、3つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分と空間変動分および被測定対象の表面反射による変動分をさらに精度よく補償する。
【0099】
図7は図6の実施例から、光ファイバ81と第2の受光素子82およびAD変換手段84からなる信号系統を省いたものである。図7の構成によれば、光源駆動手段83は、第3の受光素子と受光素子43の出力信号に基づいてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。そして分析手段7は、受光素子53の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算した規格化信号と受光素子53の出力信号を受光素子43の出力信号で除算した規格化信号に基づき、レーザーダイオード1の出力変動分および空間変動分を精度よく補償する。
【0100】
なお、図5および図6の実施例ではレーザーダイオード1としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用いているが、装置に求められる補償精度に応じて、図4のように第3の受光素子が内蔵されていないものを用いてもよい。
【0101】
また、図2および図3の実施例においても、AD変換手段44を介して分析手段7に入力される受光素子43の出力信号で受光素子53の出力信号を除算して規格化することにより、レーザーダイオード1の出力変動分や被測定対象の表面反射による変動分を精度よく補償できる。
【0102】
<その他の実施例>
なお、本発明に係る生体成分測定装置は、共焦点光学系を用いた生体の内部組織(たとえば人体・動物の血管中血液や組織中の組織液に含まれる各種物質(血液中の血糖値などの成分の濃度など)など)の成分の測定を行う生体成分測定装置に係る技術全般に適用可能とするものである。
【0103】
以上説明したように、本発明の生体成分測定装置では、光源の出力光を別途受光(参照光)し、生体内散乱光と参照光の強度を演算することで誤差を低減して生体内物質の定量を行うことができる点で有効である。
【0104】
<付記項1>
前記反射光測定部は、
前記レーザから出射されたレーザ光を集光して前記被測定対象に光照射する対物レンズと、
前記ビームスプリッタ手段により光路変換された反射光を集光する第2の集光手段と、
前記レンズ系により集光された反射光を通過させる第2のピンホールと、
前記ピンホールを通過した反射光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する第2の受光素子と、
前記データ信号をAD変換して前記分析手段に出力する第2のAD変換手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の生体成分測定装置。
【符号の説明】
【0105】
1 光源
2 レンズ
3 プリズム(ビームスプリッタ手段
4 参照光測定部
41 レンズ
42 ピンホール
43 受光素子
44 AD変換手段
45 分岐手段
46 第1のビームスプリッタ手段
5 反射光測定部
51 レンズ
52 ピンホール
53 受光素子
54 AD変換手段
56 第2のビームスプリッタ手段
6 対物レンズ
7 分析手段
8 自動出力制御ループ
81 光ファイバ
82 受光素子
83 光源駆動手段
84 AD変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記光源から出射されたレーザ光の一部および前記生体の内部組織により反射された反射光をそれぞれ光路変換させるビームスプリッタ手段と、
該ビームスプリッタ手段により光路変換された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記ビームスプリッタ手段により光路変換された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項2】
前記参照光測定部は、
前記ビームスプリッタ手段が光路変換した前記反射光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集束された前記反射光を通過させるピンホールと、
前記ピンホールを通過した前記反射光を受光して光量に応じたデータ信号を出力する第1の受光素子と、
前記データ信号をAD変換して前記分析手段に出力するAD変換手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記反射光測定部と前記生体とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を備え、
前記移動駆動機構により前記反射光測定部と前記生体とを相対的に3次元的に移動させることで前記生体に対して前記反射光測定部の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、前記生体の内部組織の3次元的なデータを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記生体の内部組織の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記光源から出射されたレーザ光を分岐する分岐手段と、
該分岐手段により分岐された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記分岐手段により分岐された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記分岐手段により分岐されたレーザ光である参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項5】
光源から出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光を測定して前記被測定対象の成分の測定を行う生体成分測定装置において、
前記レーザ光の一部を透過し前記光源から出射されたレーザ光の他の部分を光路変換する第1のビームスプリッタ手段と、
前記第1のビームスプリッタ手段を透過して入射する前記レーザ光の一部を光路変換し前記レーザ光の他の部分を透過して前記生体の内部組織により反射された反射光を光路変換する第2のビームスプリッタ手段と、
前記第1のビームスプリッタ手段により光路変換された前記光源から出射されたレーザ光を参照光として測定する参照光測定部と、
前記第2のビームスプリッタ手段により光路変換された前記生体の内部組織により反射される反射光を測定する反射光測定部と、
前記反射光または前記第1のビームスプリッタにより光路変換された参照光のスペクトルを測定して前記生体の内部組織を分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項6】
前記光源の出力光を被測定対象表面に照射する光ファイバと、
この光ファイバの照射に基づく被測定対象表面における反射光を検出する第2の受光素子と、
この第2の受光素子の検出信号に基づき前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する光源駆動回路、
を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体成分測定装置。
【請求項7】
前記分析手段は、前記第2の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づいて前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項8】
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記光源駆動回路は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項9】
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項10】
前記光源としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した第1の規格化信号と、前記第3の受光素子の検出信号で前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した第2の規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項11】
前記レーザー駆動回路は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記光源の出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の生体成分測定装置。
【請求項12】
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号の少なくともいずれかで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項11に記載の生体成分測定装置。
【請求項13】
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および参照光の検出信号のそれぞれで前記被測定対象の内部組織により反射された反射光の検出信号を除算した規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記被測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項11に記載の生体成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−131038(P2011−131038A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47723(P2010−47723)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】