説明

生体系への送達を高める手段及び方法

本発明は、ペプチド又はポリペプチドであって、(a)(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートで、(ii)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、存在する場合、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートで、(iii)アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、存在する場合、1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基で、(iv)アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、存在する場合、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基で、及び/又は(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化したN末端で、エステル化又はチオエステル化し、エステルは、当該α−ヒドロキシ酸又は当該β−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、当該アルカン酸グアニジニウム又は当該グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間で形成される、及び/又は(b)1つ又は複数のジスルフィドを含有し、当該ジスルフィドは、存在する場合、Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールとの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成される、ペプチド又はポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド又はポリペプチドであって、
(a)(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートで、エステル化又はチオエステル化されるか、(ii)1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基が存在する場合、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートがエステル化又はチオエステル化されるか、(iii)1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基がエステル化又はチオエステル化されるか、(iv)1つ又は複数のCys残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基がエステル化又はチオエステル化されるか、及び/又は(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化したN末端でエステル化され、該エステルは、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間で形成される、並びに/又は(b)Cys残基が存在する場合、1つ又は複数のジスルフィドを含有し、当該ジスルフィドが該Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成される、ペプチド又はポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、特許出願及び製造業者のマニュアルを含む多くの文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性には関係がないと考えられ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
ペプチド若しくはタンパク質の性質を有するか、又は核酸を含む薬学的活性物質の数が増えている。多くの場合、このような薬剤の投与は侵襲的な方法でしか達成することができない。侵襲的な投与は、医療スタッフしか行うことができないことが多く、また、少なくとも患者にとっては負担になることが多い。さらに、静脈投与は、肝臓における薬剤の著しい分解を伴うことが多い。しかし、残念ながら、上述の薬剤は帯電しているので、その大部分は、非侵襲的な投与に利用することができない。一般的に、特に負の電荷に帯電しているため、このような薬学的活性物質にとって細胞膜は通過することができない障壁となる。
【0004】
アンテナペディアペプチドを含む、膜貫通ペプチドとも呼ばれるペプチド群が存在する(例えば、非特許文献1を参照されたい)。これらの膜貫通ペプチドは、単独で、又はタンパク質「カーゴ(cargo)」と連結して、効率的に細胞の原形質膜を横断することができる。膜貫通ペプチドは一般的に両親媒性であり、生理的pHで多くの正の電荷を保有する。実際、最も効率的な細胞貫通ペプチドの1つは、単純なポリ−アルギニンである。これまでのところ、D−ペプチドとL−ペプチドとの間に違いは報告されていないので、細胞移入機構は、荷電状態の結果であると考えられる。
【0005】
非特許文献2は、血管脳関門透過性が高い磁気共鳴造影剤の設計及び化学合成を説明している。この造影剤は、誘導体化アミロイド−βペプチドである。誘導体化は、アスパラギル/グルタミル−4−アミノブタン残基によるAsp残基及びGlu残基の置換を含む。言い換えれば、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩のカルボキシレートは、1,4−ジアミノ−ブタンとアミド結合を形成する。これらの修飾によって、誘導体化ペプチドが血管脳関門を通過することが可能になると考えられる。
【0006】
非特許文献3は、ミセル及びリポソームの構成物質としてグアニジニウム−コレステロール陽イオン性脂質を記載しており、ここでは、トランスフェクトされるポリヌクレオチドがミセル又はリポソームの内腔に存在する。グアニジニウム基は、一対の水素結合を確立することができるポリヌクレオチドのホスフェート残基との相互作用に特に十分適していると考えられることが報告されている。結果として、DNA/脂質の集合体の自然形成が容易又は可能になる。
【0007】
非特許文献4は、脂溶性ジヒドロピリジンのイオン性で脂質不溶性のピリジニウム塩への酸化還元変換に基づく化学送達系を記載している。血液及び脳の酸化還元電位がそれぞれ、酸化が脳では起こるが、血液では起こらないようなものであるので、酸化型は中枢神経系で捕捉されることになる。結果として、血管脳関門を通って、このような化学送達系と操作可能に連結する薬剤の効果的な移動が見られる。
【0008】
しかし従来技術は、ヒト又は動物の体内におけるタンパク質、核酸、リポソーム又はミセルの膜状障壁通過能を高める単純で可逆的且つ非免疫原性の手段を提供することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zorco and Langel, Advanced Drug Delivery Reviews, 57, 529-545 (2005)
【非特許文献2】Poduslo et al. (Biochemistry 43, 6064-6075 (2004))
【非特許文献3】Vigneron et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 9682-9686 (1996))
【非特許文献4】Prokai et al. (Med. Res. Rev. 20, 367-416 (2000))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえにこれらの制限を考慮すると、本発明の根底にある技術的課題は、薬学的活性物質の薬理学的特性を変える、改良又は代替の手段及び方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明は、ペプチド又はポリペプチドに関するものであって、(a)(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、或いはグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートでエステル化又はチオエステル化されるか、(ii)1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートが存在する場合、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートでエステル化又はチオエステル化されるか(iii)1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基が存
在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基でエステル化又はチオエステル化されるか、(iv)1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基でエステル化又はチオエステル化しされるか、及び/又は(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのN末端でエステル化又はチオエステル化したペプチド又はポリペプチドであって、前記N末端はα−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化され、前記エステルは、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、アルカン酸グアニジニウム又は該グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間で形成される、並びに/又は(b)Cys残基が存在する場合、1つ又は複数のジスルフィドを含有するペプチド又はポリペプチドであって、該ジスルフィドは、Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールとの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成されるペプチド又はポリペプチドに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】天然Arg残基(右側)に対して、本発明に従って修飾した例示的なGlu残基(左側、中央)を示す図である。示されるように、Glu残基はペプチド含有物中に包含され、主鎖の窒素及びカルボニル炭素における自由原子価が側にある。
【図2】Asp残基又はGlu残基と同様に、天然Lys残基及び天然Arg残基、を含むペプチド(左側)の概略図である。本発明に従ってAsp残基及びGlu残基は修飾される(右側)。
【図3】ペプチド主鎖及び側鎖の修飾を示す例示的な概略図である。
【図4】アルギニン−エステル修飾ペプチドが、SCF−レポータ構築物の小胞体への送出(export)を遮断することを示すグラフ図である。Y軸:レポータ構築物のゴルジ染色(青色)を示す細胞の%:2時間の前処理及び1時間のERへのゴルジ輸送。Arg正常ペプチドは、非処理細胞のERへのゴルジ輸送に相当する。
【図5】アルギニン−エステルペプチドの送達及び細胞表面へのSCF輸送の阻害(16時間)を示す図である。左側:ペプチドなし、正常なSCF膜染色。右側:アルギニン−エステルペプチド(100μM)、細胞内SCF染色への移行。
【図6】本発明の核酸の例を示す図である。示した核酸は、遊離5’ヒドロキシル基及び遊離3’ヒドロキシル基でホスホ−ジエステル結合を形成することによって、核酸部分がより長くなり得る。
【図7】最初のジスルフィド還元、その後の分子内切断によるin vivoホスフェートエステル切断機構を示す図である。
【図8】実施例1のペプチドのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【図9】実施例1のペプチドの質量スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、最大30個のアミノ酸から成るアミノ酸の縮合ポリマーを表す。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、30個を超えるアミノ酸の縮合ポリマーを表す。用語「ポリペプチド」はタンパク質を含むことが理解される。好ましいポリペプチドはタンパク質である。さらに、用語「ペプチド」及び「ポリペプチド」の両方は、タンパク質断片及び合成分子を含む。また、その大きさに応じて、抗体、並びにその断片及び誘導体は、この用語のいずれかに含まれる。好ましくは、本発明のペプチド又はポリペプチドは、対応する天然ペプチド若しくはポリペプチド、又は(a)に従ってエステル化及び/又はチオエステル化するか、及び/又は(b)に従って1つ又は複数のジスルフィドを含有するという点でしかその薬理学的特性が改良されていないペプチド若しくはポリペプチドとは異なる。
【0014】
用語「エステル化(された)」及び「チオエステル化(された)」は、1つ又は複数のエステル官能基−C(=O)O−又はチオエステル官能基−C(=S)O−の存在を表し、エステル又はチオエステルの酸構成部分、アルコール構成部分又はチオール構成部分は、エステル化又はチオエステル化前の形態のペプチド又はポリペプチドによって与えられる。同じことが、ジスルフィドの硫黄原子の1つが上記ペプチド又はポリペプチドのCys残基のスルフヒドリル基によって与えられるという点で(b)のジスルフィドに適用される。言い換えれば、用語「エステル化された」、「チオエステル化された」及び「ジスルフィド形成された」は、その構成部分に関する本発明のペプチド又はポリペプチド、即ち(a)に従ってエステル化又はチオエステル化されず、且つ(b)に従って1つ又は複数のジスルフィドを含有していないペプチド又はポリペプチドの構造的特徴を与え、好ましくは一方に天然ペプチド又はポリペプチド、及びもう一方に上記グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール又はアルカン酸グアニジニウムを与える。
【0015】
本発明のペプチド及びポリペプチドは、構成部分に関して規定され、即ち一方でその薬理学的特性が改良されたペプチド又はポリペプチド、もう一方で本明細書に規定のグアニジニウム基含有化合物(グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム等)が自然に存在するペプチド又はポリペプチドである。これらの構成部分は、エステル結合、チオエステル結合及び/又はジスルフィド結合によって、本発明のペプチド及びポリペプチドにおいて互いに共有結合する。例示的なペプチド/ポリペプチドは、本明細書に包含される実施例及び図面に示す。
【0016】
本発明のグアニジニウムアルカノールは、グアニジニウム基−NH−C(=NH)−NH2及びヒドロキシル基を保有するアルカンである。好ましい一実施の形態では、さらなる官能基は存在しない。ω−グアニジニウムアルカン−1−オールも好ましい。同じことが、本発明のグアニジニウムアルカンチオール及びアルカン酸グアニジニウムに準用される。したがって、アルカン酸グアニジニウムは、カルボキシル基及びグアニジニウム基を保有するアルカンである。ω−グアニジニウムアルカン−1−オイック酸が好ましい。
【0017】
上記のように、PEG鎖−CH2CH2(OCH2CH2k−は、1つ又は複数の上記グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール及び/又はアルカン酸グアニジニウムの存在下で上記のアルカンの代わりをすることができ、これによって上記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、上記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、上記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGが生じる。アルカン部分をPEGで置き換えることは、本発明のペプチド又はポリペプチドによる治療の副作用を低減する手段である。
【0018】
実施の形態(v)は、オプション(i)〜オプション(iv)がいずれも利用することができないか、又はこれらのオプションを既に使い果たしている場合、グアニジニウム基又はさらなるグアニジニウム基を導入する経路を開放する。好ましいα−ヒドロキシ酸は、グリコール酸(2−ヒドロキシエタン酸)及び乳酸(2−ヒドロキシプロパン酸)である。好ましいβ−ヒドロキシ酸は、3−ヒドロキシプロパン酸である。
【0019】
例示的な実施形態は、図1及び図2に示す。
【0020】
ペプチド又はポリペプチドにおける1つ又は複数のグアニジニウム基の導入によって、当該ペプチド又はポリペプチドの生体膜通過能が有意に高まる(本明細書に添付の実施例を参照されたい)。グアニジニウム基の導入と同時に、このような膜通過の重大な障害としてカルボキシレートの負電荷が消失するので、実施の形態(i)及び実施の形態(ii)は特に都合が良い。言い換えれば、単一の評価基準によって、2つの異なる機構によっ
て、ペプチド又はポリペプチドの例えば細胞膜のような生物学的障壁の通過能が高まる。
【0021】
本発明のペプチド又はポリペプチドに存在するエステル、チオエステル及びジスルフィドの共通の特徴は、生理的条件下でのその可逆性である。膜等の生物学的障壁を通過する際、当該ジスルフィドは、その還元型と平衡状態であり、当該エステル又はチオエステルは容易に加水分解又は切断する。正味の効果は、一時的にしかエステル化又はチオエステル化しない、及び/又は一時的にしか1つ又は複数のジスルフィドを含有しないペプチド又はポリペプチドである。エステル化/チオエステル化/ジスルフィド形態では、ペプチド又はポリペプチドが生物学的障壁を通過する送達の増大を示す一方で、当該障壁を通過する際、本発明のエステル、チオエステル又はジスルフィドがないか、又は実質的にない形態のペプチド又はポリペプチドが回収され、それ自体が活性物質送達を目的としたペプチド又はポリペプチドを構成する。用語「送達」は、作用物質の生物、組織又は細胞内の部位への輸送を表す。結果として、誘導体形態のペプチド又はポリペプチド、即ち本発明のペプチド又はポリペプチドは、免疫系の有害反応を防ぐのに十分短い半減期を有する。
【0022】
生物学的障壁を通過した後のエステル基又はチオエステル基の切断、及びジスルフィドの還元のさらなる結果として、平衡が移動形態へと移る。結果として、エステル若しくはチオエステルの切断、又はジスルフィドの還元の際、ペプチド又はポリペプチドが生物学的障壁内に効果的に捕捉される。
【0023】
これと一致して、移動ペプチドは、本明細書に添付の実施例に記載されるように、完全な生体活性を示す。この原理の説明に関しては、図3を参照されたい。
【0024】
エステラーゼは、腫瘍、脳及び細胞内部で特に活性があることが知られているので、エステル化及びチオエステル化が特に都合がいい。したがって、本発明のペプチド又はポリペプチドによる腫瘍及び癌の治療は、血液脳関門を通るペプチド又はポリペプチド活性物質の送達の場合を特に想定している。
【0025】
全てのオプション(a)の(i)〜(v)及び(b)が利用可能である場合、所望のグアニジニウム基が導入されるだけでなく、生物学的障壁の通過を妨げるカルボキシレートの負荷電が取り除かれるので、オプション(i)及びオプション(ii)を利用することが好ましい。
【0026】
本発明のグアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルケンチオール、又はアルカン酸グアニジニウムにおけるアルキル鎖の長さに関しては、炭素数が4個のアルキル鎖等のより長いアルキル鎖が優先される。
【0027】
本発明のペプチド又はポリペプチドにおけるグアニジニウム基の空間分布に関して(ここで、用語「グアニジニウム基」はアルギニン残基に含まれるグアニジニウム基を含む)、当該グアニジニウム基が、当該ペプチド又はポリペプチドの配列にわたって可能な限り均一に分布することが好ましい。言い換えれば、可能であれば、ペプチド又はポリペプチドの1つの領域にグアニジニウム基が凝集するのは避けるが、残りの当該本発明のペプチド又はポリペプチドが、グアニジニウム残基を含まないか又は本質的に含まないのが好ましい。凝集しつつも、生物学的障壁を通る本発明のペプチド又はポリペプチドの取り込みをなくすことによって、より均一な分布と比べて、或る程度取り込みを低減することができる(Rothbard et al., J. Med. Chem. 45, 3612-3618 (2002)を参照されたい)。均一な分布、即ち凝集の回避は、以下の手段のいずれか1つによって達成することができる。ペプチドの場合、特に20個以下の残基を有するペプチドの場合、本発明のペプチドは、アミノ酸構成要素から合成によって得ることができ、エステル化アミノ酸が所望の位置で使用されている。即ち、例えばAsp又はGluの代わりに、上記で規定のように側鎖
カルボキシレートでエステル化したAsp又はGluを使用する。より長いペプチド及びポリペプチドの場合、この合成アプローチはあまり好ましくない。したがって、一方で天然のペプチド又はポリペプチド、又は薬理学的特性が改善されるペプチド又はポリペプチドと、もう一方で上記で規定のグアニジニウム基含有化合物(グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、並びにグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEG)とのモル比を制御することによって、均一な分布を得ることができる。必要であれば、変性条件を使用して、確実にエステル化される全ての官能基を等しく接近可能にすることができる。
【0028】
ペプチド又はポリペプチド活性物質の送達等の薬理学的特性を高める手段として従来技術の細胞貫通ペプチドを使用するのを避けることによって、このようなペプチド又はポリペプチド活性物質の作製が顕著により経済的になる。さらに、当該細胞貫通ペプチドの起こり得る長期的なアレルギー作用又は免疫原性作用が避けられる。
【0029】
(i)〜(iv)のいずれか1つに従ってエステル化又はチオエステル化せず、且つ(v)に従ってアミド化及びエステル化又はチオエステル化せず、且つ(b)に従ってジスルフィドを含有しないペプチド又はポリペプチドに対して、本発明のポリペプチド又はペプチドが薬学的活性がないか、又はより低い程度しか薬学的活性がない場合では、本発明のペプチド又はポリペプチドはプロドラッグ形態である。その後、送達の際のエステル及び/又はチオエステルの切断、及び/又はジスルフィドの還元によって、遅延及び/又は送達依存的に薬学的に活性のあるペプチド又はポリペプチドが生じる。送達には、生物学的障壁の通過が含まれる。
【0030】
本発明のペプチド又はポリペプチドの好ましい実施の形態において、グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、以下の構造:
HX−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式I)
(式中、Xは、O又はSであり、
1及びR2はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
nは、2〜15の整数であり、
3は、H又は炭素数が1〜5のアルキルであり、
4及びR5は独立して、H、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、R4基又はR5基を受けるNは、ヘテロアリール環の環原子であり、及び/又はR4及びR5は共に、ヘテロアリール環を与えるように選択され得る)を有する。
【0031】
代替的な実施の形態において、上記で規定のものよりも大きいnの値が意図的に想定されている。このようなより大きい値には、n=20、25又は30が含まれる。
【0032】
より好ましい実施の形態において、グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、以下の構造:
HX−(CH2n−NR−C(=NH)−NH2(式II)
(式中、Xは、O又はSであり、
nは、2〜10の整数であり、
Rは、H又は炭素数が1〜5のアルキルである)を有する。
【0033】
さらに好ましい実施の形態において、アルカン酸グアニジニウムが、以下の構造:
HOOC−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式III)
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜5のアル
キル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
nは、2〜15の整数であり、
3は、H又は炭素数が1〜5のアルキルであり、
4及びR5は独立して、H、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、R4基又はR5基を受けるNは、ヘテロアリール環の環原子である可能性があり、及び/又はR4及びR5は共に、ヘテロアリール環を与えるように選択され得る)を有する。
【0034】
代替的な実施の形態において、上記で規定のものよりも大きいnの値が意図的に想定されている。このようなより大きい値には、n=20、25又は30が含まれる。
【0035】
好ましくは、上記アルカン酸グアニジニウムはクレアチン又はグアニジニノ(guandinino)酢酸であり、その式を以下に示す:
HOOC−CH2−N(CH3)−C(=NH)−NH2(クレアチン)
HOOC−CH2−NH−C(=NH)−NH2(グアニジニノ酢酸)
【0036】
より好ましい実施の形態において、アルカン酸グアニジニウムが、以下の構造:
HOOC−CHR1−(CH2n-1−N(R2)−C(=NH)−NH2(式IV)
(式中、R1は、H又はNH2であり、
nは、2〜10の整数であり、
2は、H又は炭素数が1〜5のアルキルである)を有する。
【0037】
好ましい一実施の形態において、上記アルカン酸グアニジニウムはアルギニン、即ちR1がNH2であり、R2がHであり、nが4である。
【0038】
概して、好ましいnの値は、4〜9、より好ましくは4〜6である。
【0039】
好ましい実施の形態において、上記炭素数が1〜5のアルキルはメチルである。
【0040】
本発明のペプチド又はポリペプチドのさらに好ましい実施の形態において、上記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又は上記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGがそれぞれ、以下の構造:
HX−CH2CH2(OCH2CH2k−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式V)
(式中、kは、1〜12の整数であり、X、R3、R4及びR5は、上記で規定されるようなものである)を有する。
【0041】
本発明のペプチド又はポリペプチドのさらに好ましい実施の形態において、上記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、以下の構造:
HOOC−CH2CH2(OCH2CH2k−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式VI)
(式中、kは、1〜12の整数であり、X、R3、R4及びR5は、上記で規定されるようなものである)を有する。代替的に、当該グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、以下の式:
HOOC−CH2(OCH2CH2k−N(R3)−C(=NR4)−NHR5
を有する。
【0042】
このような化合物は、例えば他端でα−ハロ(α−ブロモ又はα−ヨード)酢酸t−ブチルエステルを、保護グアニジニウム基(例えばN,N’ビス−Z、又はN−トシル保護基)を保有するPEG分子の遊離末端ヒドロキシ基と反応させることによって利用可能である。酸性条件下でのt−ブチルエステル保護基の最終的な除去によって、上記で規定の
ようにヒドロキシル基によってエステル化できる状態にある所望の(例えばペプチド又はポリペプチドの)化合物が生成される。
【0043】
好ましくは、kは1〜3である。
【0044】
本発明のペプチド又はポリペプチドの好ましい実施の形態において、−C(=NR4)−NHR5は、ピリミジン−2−イル、キナゾリン−2−イル、イミダゾール−2−イル又はベンズイミダゾール−2−イルである。言い換えれば、また上記の好ましい実施の形態で述べられるように、本発明のグアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのグアニジニウム基は、上述のヘテロアリール環等の環に含まれ得る。
【0045】
さらに好ましい実施の形態において、上記アルカン酸グアニジニウム又は上記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、それぞれSer残基、Thr残基、Tyr残基又はCys残基のヒドロキシル基又はスルフヒドリル基によって、直接エステル化又はチオエステル化しないが、ポリマーリンカー又はオリゴマーリンカーの代わりに、同様にペプチド又はポリペプチドによるエステル化に利用可能な官能基を含む。好ましくは、またさらなる説明のために、当該ポリマーリンカー又はオリゴマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、又はアルキルジオール、好ましくはアルキル−1,ω−ジオール、又はグリセロール等のポリオールである。したがって、好ましいリンカーは、一般式HO(CH2CH2O)iH又はHO(CH2jOH又はHO−CH2−[(CH(OH)](j-2)−CH2−OHを有する。好ましいiの値は、1〜10、より好ましくは2、3、4又は5の整数である。好ましいjの値は、1〜20の整数、好ましくは2〜10の値である。本発明のアルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGがこのようなリンカーと連結する場合、一方でアルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基と、もう一方でリンカーの末端ヒドロキシル基との間でエステル結合を形成する。結果として、エステル化に利用可能な末端ヒドロキシル基を有するグアニジニウム基含有部分が得られ、この末端ヒドロキシル基は、リンカーと、本発明のアルカン酸グアニジニウムとの間又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGとの間のエステル結合に関与しないリンカーの末端ヒドロキシル基である。得られた分子は、ペプチド又はポリペプチドのカルボキシレートによってエステル化することができる遊離ヒドロキシル基を有する。したがって得られた分子は、ペプチド又はポリペプチドのC末端のカルボキシレート、或いは存在する場合、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートによってエステル化することができる。言い換えれば、当該分子は、主要な実施の形態で言及されるように、グアニジニウムアルカノールの代わりになり得る。リンカーによってエステル化する、好ましいアルカン酸グアニジニウムは、以下の式VI及び式VII(式中、好ましいi及びjの値は上記で規定されるようなものであり、R1、R2、R3、R4及びR5は、式III及び式IVと共に記載されるように規定される)で示す。
HO(CH2CH2O)iC(=O)−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式VIII)
HO(CH2jOC(=O)−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式IX)
【0046】
同じことが、グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGに準用される。
【0047】
本発明のペプチド又はポリペプチドのさらに好ましい実施の形態において、(a)上記で規定されるようにエステル化又はチオエステル化しない場合、C末端のカルボキシレー
トは、脂肪族アルコールによってエステル化し、及び/又は(b)α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸によってアミド化しない場合、N末端のアミノ基は、脂肪酸によってアミド化する。用語「アミド化された」又は「アミド化」は、カルボキシレートとアミノ基との間のアミド結合−CO−NH−の形成を表す。
【0048】
本発明のペプチド又はポリペプチドにおける脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸の存在によって、当該ペプチド又はポリペプチドの疎水性が高まり、それによって送達中に通過する膜の脂質二重層の脂溶性環境に対する親和性が増大する。このように、この好ましい実施の形態のペプチド又はポリペプチドは、膜付着及び膜内在化を容易にする2つの異なる種類の部分、即ち上記脂肪族アルコール及び/又は上記脂肪酸によって与えられる疎水基、及び1つ又は複数のグアニジニウム基を含む。
【0049】
本発明の脂肪酸は、長い脂肪族末端を有するカルボン酸である。この末端は、飽和又は不飽和であり、非分岐であるのが好ましい。本発明の脂肪酸は、炭素数が少なくとも4である。好ましくは、当該脂肪酸の炭素数は30以下である。
【0050】
本発明の脂肪族アルコールは、炭素数が少なくとも4の第1級又は第2級アルコールである。本発明の脂肪族アルコールは、飽和であっても、又は不飽和であってもよい。好ましくは、当該脂肪族アルコールの炭素数は30以下である。
【0051】
好ましい実施の形態において、上記脂肪族アルコール及び/又は上記脂肪酸は、炭素数が5〜15、好ましくは炭素数が9である。
【0052】
したがって、好ましい脂肪族アルコールとしては、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール及び1−ペンタデカノールが挙げられる。同様に、好ましい本発明の脂肪酸としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸及びペンタデカン酸が挙げられる。それぞれより好ましくは、1−ノナノール及びノナン酸である。
【0053】
本発明のペプチド又はポリペプチドのさらに好ましい実施の形態において、存在する場合、任意のArg残基(複数可)を含むグアニジニウム基の数が、4〜20、より好ましくは7〜15、及び最も好ましくは9であり、少なくとも1つのグアニジニウム基が、上記に規定されるように、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGに含まれる。本発明のペプチド又はポリペプチドは、正味の負電荷がないことも好ましい。したがって、C末端カルボキシレートを含む、全てのAsp残基及びGlu残基のカルボキシレートの総数が20個未満である場合、本発明のペプチド又はポリペプチドは、全ての当該カルボキシレートでエステル化することが好ましい。
【0054】
本発明のペプチド又はポリペプチドの好ましい実施の形態において、当該ペプチド又はポリペプチドは、ペプチド−PNAキメラの一部である。用語「PNA」は、「ペプチド核酸」を表し、以下でさらに考察される。
【0055】
本発明は、核酸であって、(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、以下の位置の1つ又は複数:(i)5’末端の5’ヒドロキシル基、(ii)3’末端の3’ヒドロキシル基、(iii)5’末
端又は3’末端の2’ヒドロキシル基、及び(iv)内部の2’ヒドロキシル基でエステル化する、(b)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEGによって、1つ、複数又は全てのホスフェートでエステル化する、及び/又は(c)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されたPEGによって、2’ヒドロキシル基をアセタールに変換する、核酸にも関する。
【0056】
好ましい実施の形態において、オプション(b)のみを使用する。
【0057】
好ましくは、上記アセタールはホルムアルデヒドアセタールである。代替的に、当該アセタールのアルデヒド成分は、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドである可能性があり、一般式Ra−CHO(Raは本明細書で以下に規定される)を有する。上記2’ヒドロキシル基をアセタールに変換する手段及び方法は、当該技術分野で記載され、さらに以下に表す。
【0058】
2’ヒドロキシル基に言及する限りにおいて、本発明の核酸はRNAであるか、又はこれを含むことが理解される。オリゴリボヌクレオチドの2’ヒドロキシル位置を誘導体化する方法は、当該技術分野で既知であり、例えばRastogi and Usher(Nucleic Acids Research 23, 4872-4877(1995))に記載される。はっきりと想定されるさらなる種類の核酸(即ちRNAの他に)は以下でさらに考察される。
【0059】
核酸の例を図6に示す。図6に示すホスフェートは、3つのエステル結合に関与し、その内の2つは、リボースの第2級ヒドロキシル基を有し、3番目のエステル結合は上記で規定のグアニジニウムアルカノールを有する。(i)グアニジニウムアルカノールのヒドロキシル基が第1級ヒドロキシ基であり、(ii)対応するホスフェートエステルが、本発明の核酸の外部の接近可能な表面に位置するので、in vivo条件下で、グアニジニウムアルカノールを有するエステルは、エステラーゼによって加水分解又は切断する。このことは、糖−ホスフェート骨格の一部である、したがってより安定性があるエステル結合には適用されない。
【0060】
さらに好ましい実施の形態において、in vivoにおいて、グアニジニウムアルカノールを有するエステル、又は脂肪族アルコールを有するエステルは、2段階機構によって本発明の核酸の1つ、複数又は全てのホスフェートで切断することができる。例えば、Parang et al.(Current Medicinal Chemistry, 2000, 7, 995-1039)によって記載されるように、分子内転位しやすい官能基を遊離させる第1の切断で誘発される分子内脱離によって、ホスフェートを切断することができる。例を図7に挙げる。図7では、スルフィドの切断によって、2−メルカプトエステルを形成し、この2−メルカプトエステルは次にチイランの形成によって、分子内切断を受ける。同様に、「セーフティキャッチ」ストラテジーも想定され、アルコールに対してβ位にケトン等の電子求引基を有する構築物を、(電子求引性ではない)アセタールとして一時的に保護することができる。アセタールの合成後の除去又はin vivo切断によって、電子求引性のケトン基が放出され、これによりβ−脱離によるホスフェート切断が促進される。
【0061】
さらに好ましい実施の形態において、グアニジニウムアルカノールによってエステル化しない場合、1つ又は複数の末端ホスフェートは、脂肪族アルコールによってエステル化する。
【0062】
リン酸が三塩基酸であるので、末端ホスフェートは、1当量又は2当量のアルコールによってエステル化することができる。したがって、末端ホスフェートは、1当量のグアニジニウムアルカノールと、1当量の脂肪族アルコールとでエステル化することができる。
また、末端ホスフェートのエステル化には、2当量の脂肪族アルコールも想定される。また、グアニジニウムアルカノール又は脂肪族アルコールのいずれかである1当量だけのアルコールを末端ホスフェートと連結させることができる。
【0063】
本明細書で使用される用語「核酸」は、一本鎖核酸及び二本鎖核酸の両方を包含する。
【0064】
好ましい本発明の二本鎖核酸は、1つの末端ホスフェート(第1の鎖の5’末端ホスフェート)で1当量の脂肪族アルコール、もう1つの末端ホスフェート(第2の鎖の5’末端ホスフェート)で1当量のグアニジニウムアルカノールによってエステル化する。任意で、好ましい本発明の二本鎖核酸では、上記で規定の(a)の(i)〜(iv)、及び/又は(b)の位置の1つ又は複数を上記で規定のようにエステル化することができる。この場合、(b)のホスフェートは内部ホスフェートであることが理解される。
【0065】
好ましい本発明の一本鎖核酸は、5’末端ホスフェートで1当量の脂肪族アルコール、及び上記で規定の位置(b)の1つ又は複数で少なくとも1当量のグアニジニウムアルカノールによってエステル化する。この場合、(b)のホスフェートは内部ホスフェートであることが理解される。代替的に、又は1つ又は複数の内部ホスフェートでグアニジニウムアルカノールによってエステル化するのに加えて、上記の好ましい本発明の一本鎖核酸は、上記で規定の(a)の(i)〜(iv)の位置の1つ又は複数で1つ又は複数のアルカン酸グアニジニウムによってエステル化する。
【0066】
本発明のペプチド又はポリペプチドにおけるカルボキシレートのエステル化に類似して、本発明の核酸におけるホスフェートのエステル化は、二重の目的を果たす:(i)グアニジニウム基の導入、及び(ii)負の電荷の除去。グアニジニウムアルカノールによるエステル化という単一の評価基準によって、両方の目的が達成される。
【0067】
さらに好ましい実施の形態において、上記アルカン酸グアニジニウム又は上記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、(a)の(i)〜(iv)のいずれか1つに規定の核酸のヒドロキシル基によって直接エステル化しないが、ポリマーリンカー又はオリゴマーリンカーの代わりに、同様に核酸によるエステル化に利用可能な官能基を含む。好ましくは、またさらなる説明のために、当該ポリマーリンカー又はオリゴマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、又はアルキルジオール、好ましくはアルキル−1,ω−ジオール、又はグリセロール等のポリオールである。したがって、好ましいリンカーは、一般式HO(CH2CH2O)iH又はHO(CH2jOH又はHO−CH2−[(CH(OH)](j-2)−CH2−OHを有する。好ましいiの値は、1〜10、より好ましくは2、3、4又は5の整数である。好ましいjの値は、1〜20の整数、好ましくは2〜10の値である。本発明のアルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGがこのようなリンカーと連結する場合、一方でアルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基と、もう一方でリンカーの末端ヒドロキシル基との間でエステル結合を形成する。結果として、エステル化に利用可能な末端ヒドロキシル基を有するグアニジニウム含有部分が得られ、この末端ヒドロキシル基は、リンカーと、本発明のアルカン酸グアニジニウムとの間又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGとの間のエステル結合に関与しないリンカーの末端ヒドロキシル基である。言い換えれば、得られた分子は、核酸のホスフェートによってエステル化することができる遊離ヒドロキシル基を有する。したがって得られた分子は、上記の(b)に規定の核酸のホスフェートによってエステル化することができる。即ち、当該分子は、本発明の核酸に関する実施の形態の項目(b)で言及するグアニジニウムアルカノールの代わりになり得る。リンカーによってエステル化する、好ましいアルカン酸グアニジニウムを本明細書の上記で示す。式VI及び式VIIを参照されたい。同じことが、グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換
されたPEGに準用される。
【0068】
さらに好ましい実施の形態において、上記の核酸は、DNA、RNA又はsiRNAである。本発明による核酸分子としては、DNA、例えばcDNA又はゲノムDNA、及びRNAが挙げられる。本明細書で使用される用語「RNA」には、全ての形態のRNA(mRNA、ncRNA(非コード化RNA)、tRNA及びrRNAを含む)が含まれることが理解される。用語「非コード化RNA」は、siRNA(低分子干渉RNA)、miRNA(マイクロRNA)、rasiRNA(反復配列関連低分子干渉RNA(repeat
associated RNA))、snoRNA(核小体低分子RNA)及びsnRNA(核内低分子RNA)を含む。好ましくは、「RNA」に言及する実施の形態は、mRNAに関する。同時に、上記で言及される特定の形態を含む、他の形態のRNAが、各実施の形態で意図的に想定される。さらにRNAウイルスのRNAの場合等では、ゲノムRNAが含まれる。
【0069】
さらに、DNA又はRNAの合成又は半合成の誘導体及び混合ポリマー、センス鎖及びアンチセンス鎖のような、当該技術分野で既知の分子を模した核酸が含まれる。これらは、当業者が容易に分かるような、付加的な非天然ヌクレオチド塩基又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有し得る。このような本発明の核酸を模した分子又は核酸誘導体としては、ホスホロチオエート核酸、ホスホルアミデート核酸、2’−O−メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)及びロックド核酸(LNA)が挙げられる(例えばBraasch and Corey, Chemistry & Biology 8, 1-7(2001)を参照されたい)。LNAは、2’酸素と4’炭素との間のメチレン結合によってリボース環が拘束されるRNA誘導体である。
【0070】
本発明のために、ペプチド核酸(PNA)は、ポリアミド型のDNA類似体である。アデニン、グアニン、チミン及びシトシンの対応する誘導体の単量体単位は市販されている(例えばPerceptive Biosystems製)。PNAは、DNA又はRNAの糖−ホスフェート骨格の代わりにアミド骨格を有する合成DNA模倣体である。結果として、DNAの或る特定の成分(例えばリン、酸化リン、又はデオキシリボース誘導体)はPNAには存在しない。Nielsen et al., Science 254:1497 (1991)、及びEgholm et al., Nature 365:666 (1993)で開示されるように、PNAは、相補的なDNA鎖と特異的に強く結合し、ヌクレアーゼで分解されない。さらに、これらは酸性条件下で安定であり、プロテアーゼにも耐性がある(Demidov et al. (1994), Biochem. Pharmacol., 48, 1310-1313)。この静電的に中性の骨格によって、対応するDNA−DNA二本鎖の安定性に比べて、相補的なDNAとの結合力が強くなる(Wittung et al. (1994), Nature 368, 561-563、Ray and Norden (2000), Faseb J., 14, 1041-1060)。実際、PNAは、DNA自体がDNAと結合するよりもDNAと強く結合する。これはおそらく、2つの鎖の間に静電反発力がなく、またポリアミド骨格がより可塑性であるためである。このため、PNA/DNA二本鎖は、DNA/DNA二本鎖より広い範囲のストリンジェント条件下で結合し、多重ハイブリダイゼーションを行うのを容易にする。強い結合のために、DNAよりも小さいプローブを使用することができる。さらに、PNA/DNA 15−merの単一塩基ミスマッチが、DNA/DNA 15−mer二本鎖での4℃〜16℃に対して、8℃〜20℃、融点(Tm)を下げるので、PNA/DNAハイブリダイゼーションを使用する方が、単一塩基ミスマッチを決定することができる可能性が高くなる。これによって、完全なマッチとミスマッチとの識別が改善される。その不変的な性質のため、2つの負に荷電したDNA鎖間の鎖間反発力を無効にする必要がないため、PNAはまた、低塩条件又は無塩条件下でのDNAサンプルのハイブリダイゼーションを可能にする。結果として、標的DNAは、ハイブリダイゼーション条件下でより少ない二次構造しか有さず、プローブ分子により接近しやすい。
【0071】
さらに、上記の本発明の核酸はPNAであることが想定される。PNAは、グアニジニウム基を受ける部分の導入によって、ポリアミド骨格のα−炭素で誘導体化し、それによってPNAである本発明の核酸を得ることができる。
【0072】
本発明のPNAキメラは、1つ又は複数のPNA部を含む分子である。残りのキメラ分子は、1つ又は複数のDNA部(PNA−DNAキメラ)、或いは1つ又は複数の(ポリ)ペプチド部((ポリ)ペプチド−PNAキメラ)を含み得る。本発明の(ポリ)ペプチド−DNAキメラは、1つ又は複数の(ポリ)ペプチド部と、1つ又は複数のDNA部とを含む分子である。また、PNA部、ペプチド部及びDNA部を含む分子が想定される。キメラ分子部の長さは、1個〜N−1個の塩基、その同等物又はアミノ酸の範囲である可能性があり、「N」は全分子の塩基、その同等物及びアミノ酸の総数である。
【0073】
上記のPNA、(ポリ)ペプチド、PNAキメラ及びペプチド−DNAキメラに付随する用語「誘導体」は、PNA、(ポリ)ペプチド及びDNAとは異なる1つ又は複数のさらなる基又は置換基を含む分子に関する。当該技術分野で既知であり、且つこれらの分子の合成に使用される基又は置換基(例えば、保護基)及び/又はこれらの分子を伴う用途のための基又は置換基(例えば、ラベル及び(切断可能な)リンカー)が全て想定されている。
【0074】
さらに本発明は、1つ又は複数のグアニジニウム基を受けるリポソーム又はミセルであって、当該1つ又は複数のグアニジニウム基が、生理的条件下で切断可能な官能基によって、リポソーム又はミセルと連結する、1つ又は複数のグアニジニウム基を受けるリポソーム又はミセルに関する。
【0075】
本発明のリポソームは、リン脂質と、任意でコレステロールとを含む膜二重層を有する小胞、好ましくは球状小胞である。リポソームは、(卵ホスファチジルエタノールアミンのような)混合脂質鎖を有する、又はDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)のような純粋な界面活性剤成分を有する天然由来のリン脂質を含み得る。通常、しかし定義によるものではないが、リポソームは水溶液のコアを含有する。リポソームは、その特有の性質のために薬剤送達に使用される。本発明のために、生体系への送達が望まれているリポソーム(例えばその内部に1つ又は複数の薬学的活性物質を含有するリポソーム)が想定される。リポソームは、疎水性膜内に水溶液領域を封入し得る。溶解された親水性溶質は、脂質を容易に通り抜けることはできない。疎水性化学物質は膜に溶解することができ、このようにしてリポソームは、疎水性分子と親水性分子との両方を保有することができる。分子を作用部位に送達するために、リポソームの脂質二重層を細胞膜等の他の二重層と融合し、このようにしてリポソーム含有物を送達することができる。(通常、膜を通って拡散することができない)DNA又は薬剤等の作用物質の溶液中にリポソームを作製することによって、当該作用物質は、脂質二重膜を通って(自由に)送達することができる。DNAの宿主細胞への形質転換又はトランスフェクションのためのリポソームの使用は、リポフェクションとして知られている。リポソーム研究のさらなる進歩によって、リポソームを体内の免疫系、具体的には網内系(RES)の細胞による検出から回避させることが可能となっている。これらのリポソームは「ステルスリポソーム」として知られており、膜の外側に埋め込まれたPEG(ポリエチレングリコール)で構築される。本体内で不活性のPEGコーティングによって、薬物送達機構に対する循環寿命が長くなる。
【0076】
本発明のミセルは通常、脂質に分散される界面活性剤分子の集合体である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲溶媒に接触した親水性「頭部」領域を有する集合体を形成し、ミセル中心で疎水性尾部領域を捕捉する。代替的に、ミセルは二重層構造を有し得る。ミセル中心は、例えば生体系への送達が望まれる薬学的活性物質のような物質をさらに含み得
る。一般的に、ミセルは略球状である。ミセルの形状及び大きさは、その界面活性剤分子の分子幾何構造と、界面活性剤濃度、温度、pH及びイオン強度等の溶液条件とに応じたものである。
【0077】
一般的にミセルは、コレステロールを含まない。本発明のリポソーム及びミセルの両方がコレステロールを含まないか、又はコレステロールが存在する場合、当該コレステロールが非変性の天然コレステロールであるのが好ましい。
【0078】
本発明のために、上記グアニジニウム基の全て又はそのかなりの画分が、上記リポソーム又はミセルの外表面に位置していることが重要である。
【0079】
好ましい実施の形態において、上記官能基はエステル基である。生理的条件下で切断可能なさらなる本発明の官能基は、アセタール、ジスルフィド、チオエステル、及びホスフェートエステルである。
【0080】
さらに好ましい実施の形態において、上記のリポソーム又はミセルは、(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のヒドロキシル基で、及び/又は(b)グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、ホスフェート及びカルボキシレート等の1つ又は複数の酸性基でエステル化する。
【0081】
好ましくは、上記ヒドロキシル基は、第1級ヒドロキシル基、即ち−CH2R断片と結合したヒドロキシル基である。エステル化の際に第1級ヒドロキシル基は、第2級又は第3級ヒドロキシル基に比べて、より迅速に及び/又はより大きく切断されるエステルを生じる。より迅速な切断及び/又はより大きい切断は、上記グアニジニウム基を含まないか又は実質的に含まないリポソーム又はミセルのより迅速な形成及び/又はより大きい形成を伴うために好ましく、それらの接触は、生体膜等の生物学的障壁の通過能を一時的に高めるのに有用である。
【0082】
本発明のリポソーム又はミセルのさらに好ましい実施の形態において、上記リポソーム又はミセルの第1級アミノ基は、グアニジニウム基に変換される。第1級アミノ基は、市販又は既知の「グアニジル化(guanidylation)試薬」を使用することによってグアニジニウム構造に変換することができる。第1級アミンのグアニジニル化(guanidinylation)に好適な手段及び方法は、例えばFeichtinger et al.(J. Org. Chem. 63, 8432-8439 (1998))又はBrand and Brand(Organic Syntheses 3, 440 (1955))に記載されている。Feichtinger et al.によれば、グアニジル化試薬の両方の窒素が保護され、有機溶媒において高収率で反応が起こる。それから反応完了の際、主に酸切断によって保護基を取り除かなければいけない。Brand and Brandによれば、グアニジル化剤は、非反応形態で塩として維持される(窒素は共有結合的に保護されない)。その後、塩基性pHで水/水溶液混合物中に第1級アミンを添加すると、所望の生成物が得られる。後者の手法であれば、最終的に保護基を取り除く必要はない。
【0083】
さらに好ましい実施の形態において、ヒドロキシル基はホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、モノ−アシルグリセロール、及びジ−アシルグリセロールから選択される脂質のヒドロキシル基(当該脂質はリポソーム若しくはミセルに含まれる)、又はリポソーム若しくはミセルに含まれるPEG部分の末端ヒドロキシル基である。リポソーム及びミセルの構成物質の極性頭部基としてのPEG部分の使用は、当該技術分野で既知である。
【0084】
好ましくは、上記の第1級アミノ基は、ホスファチジルエタノールアミン又はPEG部分の第1級アミノ基であり、ここでは、PEG部分の末端ヒドロキシル部分が第1級アミノ基に置き換わる。
【0085】
好ましくは、本発明の核酸、リポソーム又はミセルに含まれるグアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、並びにグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、本発明のペプチド及びポリペプチドと共に本明細書中の上記に規定されるようなものである。これらの化合物に関するさらなる説明及びさらに好ましい実施の形態は、本発明の核酸、リポソーム及びミセルに準用される。
【0086】
本発明は、本発明のペプチド又はポリペプチド、及び/又は本発明の核酸、及び/又は本発明のリポソーム又はミセルを含む薬学的組成物にも関する。
【0087】
薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は希釈剤をさらに含み得る。好適な薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は希釈剤の例は、当該技術分野で既知であり、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、エマルション(例えば油/水エマルション)、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液等が含まれる。このような担体を含む組成物は、既知の従来方法によって調製することができる。これらの薬学的組成物は、好適な用量で被験者に投与することができる。好適な組成物の投与は様々な方法(例えば静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、局所投与、皮内投与、鼻内投与又は気管支内投与)によって達成することができる。この組成物はまた標的部位に直接、例えば微粒子銃(biolistic)送達(「遺伝子銃」とも呼ばれる)によって外部若しくは内部の標的部位に投与してもよい。担当医及び臨床学的因子によって、投与計画を決定する。医学分野で既知のように、いずれか1人の患者に対する投薬量は、多くの因子(患者の大きさ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間及び投与経路、全身の健康状態、及び同時投与する他の薬剤を含む)によって変わる。タンパク質の薬学的活性物質が、1用量当たり1ng〜10mg/kg(体重)の量で存在し得るが、特に上述の因子を考慮して、この例示的範囲前後の用量が想定される。また計画が連続注入である場合、1分当たり体重1kg当たり1μg〜10mg単位の範囲であるものとする。
【0088】
本発明はさらに、ポリマー、リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法であって、当該ポリマー、リポソーム又はミセルは、1つ又は複数のカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及び/又はホスフェート基を有し、これらの基の少なくとも1つを修飾する工程であって、
【0089】
【化1】

【0090】
(式中、それぞれの式VIIに関して独立して、
(a)Xは、−(C=O)であり、Yは、O又はSであり、
(b)Xは、−O又は−Sであり、Yは、(C=O)又は(CHRa)−Oであり、
(c)X−Yは、−S−Sであり、又は
(d)Xは、−O−P(=O)ORPであり、Yは、O又はSであり、且つ
Jはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜15のアルキル、及び[CHR]o−NR’−CH(NHR’’)−NH−R’’’から選択され、
R、R’、R’’、R’’’、Ra及びRpはそれぞれ独立して、H、炭素数が1〜15のアルキル、及び置換又は非置換のアリールから選択され、R及びR’、R’及びR’’、及び/又はR’’及びR’’’は共に、環状構造を形成するように選択されてもよく、
アルキルは置換されてもよく、
mは、0〜10の整数であり、Jが[CHR]o−NR’−CH(NHR’’)−NH−R’’’の場合は、mは1であり、
oは、1〜15の整数であり、且つ
pは、0又は1であり、pが0の場合は、R’を受けるNの自由原子価は、Hで満たされる)を与える、修飾する工程を含む、ポリマー、リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法を提供する。
【0091】
式VIIには、本発明の方法で想定される、上記カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はホスフェート基の修飾が含まれる。したがって、X−Y部分は(a)の場合、エステル基又はチオエステル基であり、(b)の場合、エステル基、チオエステル基又はアセタール基であり、(c)の場合、ジスルフィドであり、(d)の場合、ホスフェート又はチオホスフェートである。Xは、(a)〜(d)で示されるように自由原子価を含有し、これは、修飾されるカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はホスフェート基を、上記ポリマーリポソーム又はミセルと連結させる結合である。
【0092】
Jは、[CHR]o−NR’−CH(NHR’’)−NH−R’’’であってもよいので、本発明の方法は、上記カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はホスフェート基のいずれか1つでビス−グアニジニウム置換基を導入することができる。
【0093】
好ましくは、mとoとの合計は、4、5又は6である。アルキルがメチルであるのも好ましい。
【0094】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、上記ポリマーは、ペプチド、ポリペプチド又は核酸である。
【0095】
したがって、上記の本発明のペプチド、ポリペプチド又は核酸は、本発明の方法によって入手可能である。
【0096】
本発明は、ペプチド又はポリペプチドの生物学的障壁通過能を高める方法であって、(a)1つ又は複数のエステル又はチオエステルを(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートで、(ii)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、存在する場合、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートで、(iii)アルカン酸グアニジニウムによって、存在する場合、1つ又は複数のSer残基、
Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基で、(iv)アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、存在する場合、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基で、及び/又は(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化したN末端で形成する工程であって、エステルが、当該α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、当該アルカン酸グアニジニウム又は当該グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間で形成される、形成する工程、及び/又は(b)1つ又は複数のジスルフィドを形成する工程であって、当該ジスルフィドが、存在する場合、Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールとの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成される、形成する工程を含む、ペプチド又はポリペプチドの生物学的障壁通過能を高める方法も提供する。
【0097】
本明細書に上記された本発明の主な実施の形態の定義、利点及び好ましい実施の形態は、上記された本発明のペプチド又はポリペプチドの生物学的障壁通過能を高める方法にも準用される。
【0098】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、生物学的障壁が、細胞膜、粘膜及び血液脳関門から選択される。
【0099】
さらに好ましい実施の形態において、上記された本発明のペプチド又はポリペプチドの生物学的障壁通過能を高める方法が、(a)C末端が、上記に規定のようにエステル化しない場合、脂肪族アルコールによって、C末端のカルボキシレートでエステル又はチオエステルを形成する工程、及び/又は(b)脂肪酸によって、N末端のアミノ基をアミド化する工程をさらに含む。
【0100】
より好ましい実施の形態において、上記脂肪族アルコール及び/又は上記脂肪酸は、炭素数が5〜15、好ましくは炭素数が9である。
【0101】
それぞれ、上記脂肪酸又は上記脂肪族アルコールに関し、本発明のペプチド又はポリペプチドと共に本明細書に上記された定義、利点及び好ましい実施の形態は、本発明の方法にも準用される。
【0102】
さらに好ましい実施の形態において、存在する場合、任意のArg残基(複数可)のものを含む、エステル、チオエステル、アセテート、ジスルフィド及び/又はホスフェートエステルの形成時のグアニジニウム基の数が、5〜20、より好ましくは7〜15、及び最も好ましくは9である。
【0103】
さらに本発明は、核酸の生物学的障壁通過能を高める方法であって、(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、以下の位置の1つ又は複数:(i)5’末端の5’ヒドロキシル基、(ii)3’末端の3’ヒドロキシル基、(iii)5’末端又は3’末端の2’ヒドロキシル基、及び(iv)内部の2’ヒドロキシル基でエステルを形成する工程、(b)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEGによって、1つ又は複数のホスフェートでエステルを形成する工程、及び/又は2’ヒドロキシル基と、グアニジニウムアルカノールとの間、又はグアニジニウム基で置換されたPEGとの間でアセタールを形成する工程を含む、核酸の生物学的障壁通過能を高める方法を提供する。
【0104】
好ましくは、上記アセタールはホルムアルデヒドアセタールである。代替的に、当該ア
セタールのアルデヒド成分は、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドである可能性があり、一般式Ra−CHO(Raは本明細書で以下に規定される)を有する。
【0105】
グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウム基で置換されたPEGによってホスフェート基でエステル化する核酸は、改良した標準的なプロトコル(Vinayak et al., Nucleic Acids Research, 20, 1265-1269 (1992)、Ogilvie et al., P.N.A.S. 85, 5764-5768 (1988))によって調製することができる。固定支持体からバイオポリマーを切断するのに利用される塩基性条件下で取り除かれる標準的なシアノエチル保護基の代わりに、塩基に不安定な基(Fmoc)又は還元に不安定な部分(ニトロ、ベンジル、トリクロロエチル)で保護される、グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウム基で置換されたPEGを利用することができる。塩基に不安定なグアニジニウム保護基の場合、合成オリゴヌクレオチドを切り離す最終的な塩基処理と共に、グアニジニウム保護基が取り除かれる。還元条件下で切断可能なグアニジニウム保護基の場合、固体支持体からオリゴヌクレオチドを切断し、最終的にグアニジニウム保護基を取り除いた後に、還元条件下でのさらなる工程が必要である。
【0106】
アセタール基を介して、グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウム基で置換されたPEGによって、2’位で誘導体化される核酸は、改良された標準的なプロトコル(例えばRastogi et. al., Nucleic Acids Research 23, 4872-4873 (1995))によって調製することができる。グアニジニウムアルカノール又は一端をグアニジニウム基で置換したPEGは、2’位にヒドロキシル基を有するアセタールを形成するのに使用することができる。アセタールは、オリゴヌクレオチドを固体支持体から切断している間は安定である。
【0107】
さらに好ましい実施の形態において、上記方法は、脂肪族アルコールによって、1つ又は複数の末端ホスフェートをエステル化することをさらに含む。
【0108】
本発明の核酸と共に記載される定義、利点及び好ましい実施の形態は、本発明の核酸の生物学的障壁通過能を高める方法に準用される。
【0109】
さらに本発明は、リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法であって、(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、該リポソーム又はミセルの1つ又は複数のヒドロキシル基でエステルを形成する工程、及び/又は(b)グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、ホスフェート又はカルボキシレート等の1つ又は複数の酸性基でエステルを形成する工程、及び/又は(c)上記リポソーム又はミセルの第1級アミノ基をグアニジニウム基に変換する工程を含む、リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法を提供する。
【0110】
本発明のリポソーム又はミセルの調製は、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGを使用して、当該リポソーム又はミセルの1つ又は複数のヒドロキシル基でエステルを形成することによって達成することができる。当該リポソーム又はミセルのヒドロキシル基は、ホスファチジルグリセロール等の構成両親媒性脂質によって与えられ得る。例えば、ホスファチジルグリセロール又はホスファチジルジオール(アルキルによってエステル化したか、又は2つの遊離端がそれぞれヒドロキシル基を受けるPEG鎖を有するリン脂質)は、カルボン酸グアニジニウムによって、遊離末端のヒドロキシル基又はスルフヒドリル基でエステル化する。例えば、DCC−HOBT−DMAPカップリングを介してDMF/DCM混合物中で、市販のN,N’−ビス−tert−ブトキシカルボニルグアニジニウム酢酸をホスファチジルグリセロールと
カップリングさせることができる。精製後、TFA処理によってビス−Boc基を取り除き、所望の化合物を生成する。
【0111】
本発明のリポソーム又はミセルの調製は、例えばホスファチジル−セリン(ホスファチジル−セリンは、当該リポソーム又はミセルの構成物質である)によってエステル化する、グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGを使用することによっても達成することができる。この場合、アミノ酸部分(セリン)の遊離カルボキシレートは、当該グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによってエステル化する。
【0112】
上記リポソーム又はミセルの第1級アミノ基をグアニジニウム基に変換することは、例えばホスファチジルエタノールアミンのような第1級アミノ基を有する陽イオン性界面活性剤(当該陽イオン性界面活性剤は、当該リポソーム又はミセルの構成物質である)を、過剰な第1級アミンをグアニジニウム基に変換可能な試薬(例えば1,3−ジ−Boc−2−メチルイソチオ尿素)で処理することによって容易に達成することができる。例えば、非求核塩基(例えばTEA又はDIEA)の存在下、室温で24時間〜48時間、DCM(ジクロロメタン)中で2当量〜3当量の1,3−ジ−Boc−2−メチルイソチオ尿素とホスファチジルエタノールアミンを反応させることができる。UV−ニンヒドリンモニタリングによって、反応をモニタリングすることができる。溶媒の蒸発及び反応材料の単離の際に、Boc基を切断するのに必要なTFAによる最終処理によって、遊離グアニジニウム基を有する所望の生成物が生成される。
【0113】
第1級アミノ基をグアニジニウム基に変換する方法は、本明細書に上記される。
【0114】
本発明のリポソーム及びミセルと共に記載される、定義、利点及び好ましい実施の形態は、本発明のリポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法に準用される。特に、上記グアニジニウムアルカノール、上記グアニジニウムアルカンチオール、上記アルカン酸グアニジニウム、上記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、上記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、又は上記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGは、本明細書の上記で規定されるようなものであるのが好ましい。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は、本発明を説明するが、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0116】
実施例1
融合(即ち細胞貫通)ペプチドを使用しない、SCF(幹細胞因子)の20−merペプチド阻害剤の送達
標的ペプチド(SCFのER送出に必要):
【化2】

対応するアルギニン−エステル−ペプチド(即ちこのペプチドは、グアニジニウムアルカノールでグルタミン酸塩のカルボキシレートをエステル化することによって本発明に従って修飾する):
【化3】

【0117】
アスパラギン酸側鎖をメチルエステルで保護した:Boc−Asp(OMe)−OH
【0118】
I.シュードアルギニン由来のSFC誘導体:
グアニジニウム基をエステル結合を介してグルタミン酸側鎖に化学的に組み込み、4つの炭素のアルキル鎖(ブチル)によってカルボン酸から分離した。グアニジニウム保護基はビス−Z(N,N’ビスベンジルオキシカルボニル)である。
【0119】
ストラテジー:Boc/Fmocストラテジー。
使用前駆体:Fmoc−Glu(OブチルグアニジニウムビスZ)−OH。
樹脂:Boc−Val−Pam樹脂RAPPポリマー。0.59mmol/g。0.2mmol規模の合成。
カップリング剤:前駆体にはBOP、及び残余はHCTU。
【0120】
手動カップリングを使用して、固相ペプチド合成を達成した。TFA切断は、短時間(1×1分)であり、ビスZ切断が避けられる。標準的な20%ピペリジンサイクルを使用して、Fmoc基を取り除いた。最終的に、HF切断を行った。HPLC(図8を参照されたい)及びMS−Maldi−TOF(期待値M+H=3346、実測値3347、図9を参照されたい)によって、生成物の純度及び同一性を確認した。
【0121】
II.前駆体の合成:
Fmoc−Glu(OビスZグアニジニウムブチル)−OH
出発材料:Fmoc−Glu−OtBu
【0122】
【化4】

【0123】
実験プロトコル
DMEM含有10%血清においてカバーガラス上でCos−7細胞を一晩平板培養した。分析のために、本発明者らは、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で1mMのペプチドを懸濁し、完全培地中で最終濃度に希釈した。本発明者らは、15分後又は30分後、PBSで1回細胞を洗浄し、10分間パラホルムアルデヒド(4%)で固定し、PBS中で画像を撮影した。
【0124】
ストラテジーを改良するために、(i)より長い炭素スペーサを使用して、起こり得る
副反応(ラクタム形成)を避け、(ii)全てのBoc化学反応を利用して、鎖集合を単純化した。この場合、6−アミノ−1−ヘキサノールから始まり、Boc固相ペプチド合成できる状態にあるアミノ酸が得られる:
【0125】
【化5】

【0126】
実施例2
【0127】
【化6】

【0128】
1−(2−(ベンジルオキシ)エチル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンの合成
49.9mg(1mmol、1当量)のNaHを、乾燥THF 10mL中、窒素下で懸濁した。298.3mg(1mmol、1当量)の1−(6−ヒドロキシエチル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンの乾燥THF溶液10mLを10分滴下した。溶液を室温で1時間撹拌し、0.12mL(1mmol、1当量)の臭化ベンジルを滴下した。反応物を室温で2時間30分撹拌し、TLCで確認した。44.9mg(1mmol、1当量)のNaHを添加した。5時間30分(総反応時間)後では、TLCは、ほとんど前進が見られず、反応物を一晩撹拌させた。水を幾らか添加し、有機溶媒を真空下で取り除いた。水相をエーテルで3回抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、蒸発させ、430.0mgの無色油を得た。シリカ上のフラッシュクロマトグラフィ(溶離液 AcO
Et:ペンタン 1:9、Rf=0.26)でこの油を精製し、無色油として315.5mg(0.8mmol)の1−(2−(ベンジルオキシ)エチル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンを得た(収率=80%)。
【0129】
実施例3
【0130】
【化7】

【0131】
2−グアニジノエチルベンゾエートトリフラート塩の合成
4mL(52mmol、65当量)のTFAを、315.5mg(0.8mmol、1当量)の1−(2−(ベンジルオキシ)エチル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンに添加し、室温で3時間撹拌した。溶液を蒸発させ、淡橙色油として336.9mg(1.1mmol)の2−グアニジノエチルベンゾエートトリフラート塩を得た(収率=110%)。
【0132】
実施例4
【0133】
【化8】

【0134】
N−(N−(2−(ベンジルオキシ)エチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドの合成
164.5mg(0.4mmol、1当量)の2−グアニジノエチルベンゾエートトリフラート塩を幾らかのアセトン中に溶解した。4MのNaOH溶液4mLを添加した。86.1mg(0.44mmol、1.1当量)のトルエン−4−スルホニル−クロリドをアセトン中に溶解し、反応混合物に添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、この反応物を6MのHCl溶液で中性にした。アセトンを真空下で取り除いた。水相をAcOEtで3回抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥し、蒸発させ、174.8mgの無色油を得た。白色結晶が週末にわたって(over week end)形成された。これらの結晶をAcOEtで洗浄し、周囲の油を取り除いた。83.8mg(0.24mmol)のN−(N−(2−(ベンジルオキシ)エチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドを白色結晶として回収した(収率=60%)。
【0135】
実施例5
【0136】
【化9】

【0137】
N−(N−(2−ヒドロキシエチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドの合成
83.8mg(0.24mmol)のN−(N−(2−(ベンジルオキシ)エチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドをMeOH中、窒素下で溶解した。活性炭上の10%パラジウムを数mg添加した。3回真空水素通気を行った後、反応物をH2雰囲気下で激しく撹拌した。2時間後では、TLC(溶離液 AcOEt:ペンタン
9:1)による変化が見られず、活性炭上のパラジウムを出発量の約5倍添加した。反応物を一晩撹拌した。反応が完了まで余程遠くなければ、TLCによって、より極性のある生成物の形成が示された。1mLの酢酸を添加した。1時間後に反応が完了した。反応物をセライトで濾過し、溶媒を蒸発させ、白色固体として62.8mg(0.24mmol)のN−(N−(2−ヒドロキシエチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドを得た(収率=100%)。
【0138】
実施例6
【0139】
【化10】

【0140】
ベンゾイン1−イミノ−13,13−ジメチル−1−(4−メチルフェニルスルホンアミド)−6,11−ジオキソ−5,12−ジオキサ−2,10−ジアザテトラデカン−9−カルボン酸無水物の合成
62.8mg(0.24mmol、1当量)のN−(N−(2−ヒドロキシエチル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド及び82.7mg(0.24mmol、1当量)のBoc−L−グルタミン酸1−ベンジルエステルを乾燥ジクロロメタン中、窒素下で溶解した。7.45mg(0.05mmol、0.2当量)のDMAP及び55.3mg(0.26mmol、1当量)のDCCを添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。白色析出物が現れ、それを濾過で取り除いた。溶媒を真空下で蒸発させ、184.1mgの白色固体を得た。この白色固体をジクロロメタン中に溶解し、分取TLC(溶離液 純AcOEt、Rf=0.65)で精製した。83.2mg(0.14mmol)のベンゾイン1−イミノ−13,13−ジメチル−1−(4−メチルフェニルスルホンアミド)−6,11−ジオキソ−5,12−ジオキサ−2,10−ジアザテトラデカン−9−カルボン酸無水物を無色油として回収した(収率=60%)。1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=1.12(m,1H),1.41(s,9H),1.86(m
,1H),2.18(m,1H),2.39(m,5H),3.41(m,1H),3.61(m,1H),4.01(m,1H),4.26(m,1H),4.35(m,1H),5.17(q,J=11.98Hz,2H),5.33(d,J=8.83Hz,1H),6.49(m,2H),7.22(d,J=8.20Hz,2H),7.34(m,5H),7.77(d,J=8.19Hz,2H).
【0141】
実施例7
【0142】
【化11】

【0143】
1−(6−ヒドロキシへキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンの合成
7.255g(24.99mmol、1当量)の1,3−ジ−Boc−2−メチルイソチオ尿素、4.101g(34.98mmol、1.4当量)の6−アミノ−1−ヘキサノール及び614.5mg(5mmol、0.2当量)のDMAPを140mLのジクロロメタンに溶解した。反応物を室温で撹拌した後、TLC(溶離液 AcOEt:ペンタン 3:7)を行った。約60時間後、反応が完了した。溶媒を真空下で蒸発させた(フードの下でNaOCl溶液中で気体発生、MeSHの蒸発)。得られた油をジクロロメタン中に溶解し(白色フレークは依然として存在する)、1MのKHSO4溶液で3回、及びブラインで1回洗浄した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を真空下で蒸発させ、10.43gの無色油を得た。シリカ上のフラッシュクロマトグラフィ(溶離液 AcOEt:ペンタン 1:1、Rf=0.43)でこの油を精製し、無色油(一晩で白色固体になった)として8.447g(23.50mmol)の1−(6−ヒドロキシへキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンを得た(収率=94%)。1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=1.42(m,5H),1.52(s,10H),1.53(s,10H),1.58(t,J=6.94Hz,2H),1.64(m,2H),3.61(m,2H),3.65(t,J=6.64Hz,2H).
【0144】
実施例8
【0145】
【化12】

【0146】
1−(2−(ベンジルオキシ)ヘキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンの合成
1.300g(32.49mmol、1.3当量)の水素化ナトリウムを、170mLの乾燥THF中、窒素下で懸濁した。乾燥THF中に溶解した8.983g(24.99
mmol、1当量)の1−(6−ヒドロキシへキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンを懸濁液に滴下した。反応物を室温で45分間撹拌した。3.6mL(29.99mmol、1.2当量)の臭化ベンジルを10分滴下した。反応物を室温で一晩撹拌した。TLCで反応物を確認したら、反応は完了していなかった。0.833g(20.82mmol)の水素化ナトリウムを添加した。1時間後、TLCが変わらなかったので、0.810g(20.24mmol)の水素化ナトリウムを添加した。3時間後、TLCに進展が見られなかったので、1.396g(34.89mmol)の水素化ナトリウム及び1.6mL(13.33mmol)の臭化ベンジルを添加した。反応物を一晩撹拌したが、TLCは依然として変わらなかった。溶液が透明になるまで水を添加することで反応を停止させた。THFを真空下で取り除いた。水相をエーテルで3回抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、蒸発させ、15.44gの淡黄色油を得た。シリカ上のフラッシュクロマトグラフィ(溶離液 AcOEt:ペンタン 1:9、Rf=0.43)でこの油を精製し、無色油として3.78gの1−(2−(ベンジルオキシ)ヘキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンを得た(収率=34%)。1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=1.39(m,5H),1.50(s,9H),1.51(s,9H),1.61(m,5H),3.45(m,4H),4.50(m,2H),7.28(m,1H),7.34(m,4H).
【0147】
実施例9
【0148】
【化13】

【0149】
2−グアニジノへキシルベンゾエートトリフラート塩の合成
4.61(10.3mmol、1当量)の1−(2−(ベンジルオキシ)ヘキシル)−N,N’−ジ−Boc−グアニジンを49mL(669mmol、65当量)のTFA中に溶解した。反応物を室温で3時間撹拌した。TFAを真空下で取り除き、6.06gの茶色油を得た(収率=162%)。
【0150】
実施例10
【0151】
【化14】

【0152】
N−(N−(6−(ベンジルオキシ)ヘキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドの合成
6.06g(10.3mmol、1当量)の粗2−グアニジノへキシルベンゾエートトリフラート塩をアセトン中に溶解し、50mLの4M NaOH溶液を添加した。2.377g(12.4mmol、1.2当量)のトルエン−4−スルホニル−クロリドをアセトン中に溶解し、反応混合物に添加した。溶液全体に茶色油が現れたら、分解が完了するまでアセトンを添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。37%HCl溶液を添加することによって、反応物を中性にした(リトマスでpH=6)。アセトンを真空下で取り除き、水相をAcOEtで3回抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させ、5.23gの淡黄色油を得た。シリカ上のフラッシュクロマトグラフィ(溶離液 AcOEt:ペンタン 6:4、Rf=0.52)でこの油を精製し、無色油として3.20g(7.9mmol)のN−(N−(6−(ベンジルオキシ)ヘキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドを得た(収率=77%)。1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=1.27(m,5H),1.44(m,2H),1.55(m,2H),2.38(s,3H),3.11(s,2H),3.44(t,J=6.62Hz,3H),4.48(s,2H),6.30(s,3H),7.22(d,J=8.20,2H),7.28(m,1H),7.33(m,2H),7.73(d,J=8.19Hz,2H).
【0153】
実施例11
【0154】
【化15】

【0155】
N−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドの合成
3.20g(7.9mmol)のN−(N−(6−(ベンジルオキシ)ヘキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドをMeOH中、窒素下で溶解した。数mgの活性炭上の10%パラジウムを添加した。1mLの酢酸を添加した。3回真空水素通気を行った後、反応物をH2雰囲気下で激しく撹拌した。反応物を室温で3時間激しく撹拌して、TLCで確認した。変化が見られなかったので、2mLの酢酸を添加した。1時間後、TLCで変化が見られなかったので、より多くの活性炭上の10%パラジウムを添加した。3日後、TLCで完全な変化が見られ、溶液をセライトで濾過し、溶媒を乾燥させ、淡黄色油として2.480gのN−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミドを得た(収率=100%)。
【0156】
実施例12
【0157】
【化16】

【0158】
1−ベンジル5−(6−(3−トシルグアニジノ)ヘキシル)2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンジオエートの合成
2.48g(7.9mmol、1当量)のN−(N−(6−ヒドロキシへキシル)カルバミミドイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド及び2.67g(7.9mmol、1当量)のBoc−L−グルタミン酸1−ベンジルエステルを乾燥ジクロロメタン中、窒素下で溶解した。198.9mg(1.58mmol、0.2当量)のDMAP及び1.810g(8.7mmol、1.1当量)のDCCを室温で添加した。反応物を一晩撹拌したら、白色析出物が現れた。濾過によって析出物を取り除き、溶媒を蒸発させ、5.99gの混合黄色油/固体化合物を得た。シリカ上のフラッシュクロマトグラフィ(溶離液
純AcOEt、Rf=0.71)でこの化合物を精製し、4.83gの淡黄色油を得た(収率=97%)。
【0159】
実施例13
【0160】
【化17】

【0161】
1−イミノ−17,17−ジメチル−1−(4−メチルフェニルスルホンアミド)−10,15−ジオキソ−9,16−ジオキサ−2,14−ジアザオクタデカン−13−カルボン酸の合成
103.6mg(0.16mmol)の1−ベンジル5−(6−(3−トシルグアニジノ)ヘキシル)2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンジオエートをMeOH中、窒素下で溶解した。活性炭上の10%パラジウムを数mg添加した。3回真空水素通気を行った後、反応物をH2雰囲気下で2日間激しく撹拌した。反応物をセライトで濾過し、溶媒を蒸発させ、74.4mgの無色油を得た(収率=86%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートでエステル化又はチオエステル化されるか、
(ii)1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基が存在する場合、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートで、エステル化又はチオエステル化されるか、
(iii)1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基で、エステル化又はチオエステル化されるか、
(iv)1つ又は複数のCys残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基で、エステル化又はチオエステル化される
及び/又は
(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化したN末端でエステル化され、エステルはα−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間で形成される、
並びに/又は
(b)Cys残基が存在する場合、Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールとの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成される1つ又は複数のジスルフィドを含有する、
ペプチド又はポリペプチド。
【請求項2】
前記グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、以下の構造を有する、請求項1に記載のペプチド又はポリペプチド。
HX−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式I)
式中、Xは、O又はSであり、
1及びR2はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
nは、2〜15の整数であり、
3は、H又は炭素数が1〜5のアルキルであり、
4及びR5は独立して、H、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、R4基又はR5基を受けるNは、ヘテロアリール環の環原子であってもよく、及び/又はR4及びR5は共に、ヘテロアリール環を与えるように選択されてもよい。
【請求項3】
前記グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、以下の構造を有する、請求項1又は2に記載のペプチド又はポリペプチド。
HX−(CH2n−NR−C(=NH)−NH2(式II)
式中、Xは、O又はSであり、
nは、2〜10の整数であり、
Rは、H又は炭素数が1〜5のアルキルである。
【請求項4】
前記アルカン酸グアニジニウムが、以下の構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
HOOC−(CR12n−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式III)
式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
nは、2〜15の整数であり、
3は、H又は炭素数が1〜5のアルキルであり、
4及びR5は独立して、H、炭素数が1〜5のアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され、R4基又はR5基を受けるNは、ヘテロアリール環の環原子であってもよく、及び/又はR4及びR5は共に、ヘテロアリール環を与えるように選択されてもよい。
【請求項5】
前記アルカン酸グアニジニウムが、以下の構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
HOOC−CHR1−(CH2n-1−N(R2)−C(=NH)−NH2(式IV)
式中、R1は、H又はNH2であり、
nは、2〜10の整数であり、
2は、H又は炭素数が1〜5のアルキルである。
【請求項6】
nが4〜9、好ましくは4〜6である、請求項2〜5のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項7】
前記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又は前記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGがそれぞれ、以下の構造を有する、請求項2〜6のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
HX−CH2CH2(OCH2CH2k−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式V)
式中、kは、1〜12の整数であり、X、R3、R4及びR5は、請求項2で規定される通りである。
【請求項8】
前記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGが、以下の構造を有する、請求項2〜7のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
HOOC−CH2CH2(OCH2CH2k−N(R3)−C(=NR4)−NHR5(式VI)
式中、kは、1〜12の整数であり、X、R3、R4及びR5は、請求項4で規定される通りである。
【請求項9】
kが1〜3である、請求項2〜8のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項10】
−C(=NR4)−NHR5が、ピリミジン−2−イル、キナゾリン−2−イル、イミジダゾール−2−イル又はベンズイミダゾール−2−イルである、請求項2又は4〜9のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項11】
(a)前記C末端のカルボキシレートが、前記のようにエステル化又はチオエステル化しない場合、脂肪族アルコールによってエステル化し、及び/又は
(b)前記N末端のアミノ基が、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸によってアミド化されない場合、脂肪酸でアミド化する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項12】
前記脂肪族アルコール及び/又は前記脂肪酸は、炭素数が5〜15、好ましくは炭素数が9である、請求項11に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項13】
存在する場合、任意のArg残基を含むグアニジニウム基の数が、4〜20、より好ましくは7〜15、及び最も好ましくは9であり、少なくとも1つのグアニジニウム基が、請求項1〜10のいずれか一項に規定される通りの、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、アルカン酸グアニジニウム、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEG、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGに含まれる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項14】
前記ペプチド又はポリペプチドが、ペプチド−PNAキメラの一部である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド。
【請求項15】
核酸であって、
(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、以下の位置の1つ又は複数:
(i)5’末端の5’ヒドロキシル基、
(ii)3’末端の3’ヒドロキシル基、
(iii)5’末端又は3’末端の2’ヒドロキシル基、及び
(iv)内部の2’ヒドロキシル基
でエステル化され、
(b)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEGによって、1つ、複数又は全てのホスフェートでエステル化され、及び/又は
(c)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されたPEGによって、2’ヒドロキシル基がアセタールに変換される、核酸。
【請求項16】
グアニジニウムアルカノールによってエステル化されない場合、1つ又は複数の末端ホスフェートは、脂肪族アルコールによってエステル化される、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
前記核酸が、DNA、RNA又はsiRNAである、請求項15又は16に記載の核酸。
【請求項18】
生理的条件下で切断可能な官能基によって、リポソーム又はミセルと連結された、1つ又は複数のグアニジニウム基を有するリポソーム又はミセル。
【請求項19】
前記官能基がエステル基である、請求項18に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項20】
(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のヒドロキシル基で、及び/又は
(b)グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、ホスフェート及びカルボキシレート等の1つ又は複数の酸性基でエステル化された、請求項18又は19に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項21】
前記リポソーム又はミセルの第1級アミノ基が、グアニジニウム基に変換された、請求項18〜20のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項22】
前記ヒドロキシル基が、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、モノ−アシルグリセロール、及びジ−アシルグリセロールから選択される、前記リポソーム又はミセルに含まれる脂質のヒドロキシル基、又は該リポソーム又はミセルに含まれる
PEG部分の末端ヒドロキシル基である、請求項20又は21に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項23】
前記第1級アミノ基が、ホスファチジルエタノールアミン又はPEG部分の第1級アミノ基であり、該PEG部分の末端ヒドロキシル部分が、第1級アミノ基に置換された、請求項21又は22に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項24】
前記グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、請求項2、3、6又は10のいずれか一項に規定される通りのグアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸或いは請求項18〜23のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項25】
前記アルカン酸グアニジニウムが、請求項4〜7のいずれか一項に規定される通りのアルカン酸グアニジニウムである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸或いは請求項16〜22のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項26】
前記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又は前記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGが、請求項7又は9に規定される通りのものである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸或いは請求項18〜23のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項27】
前記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGが、請求項8又は9に規定される通りのものである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の核酸或いは請求項18〜23のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセル。
【請求項28】
請求項1〜13又は18のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチド、及び/又は請求項14〜17又は24〜27のいずれか一項に記載の核酸、及び/又は請求項18〜27のいずれか一項に記載のリポソーム又はミセルを含む薬学的組成物。
【請求項29】
1つ又は複数のカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及び/又はホスフェート基を有する、ポリマー、リポソーム又は、ミセルの生物学的障壁通過能を高める方法であって、これらの該基の少なくとも1つを修飾して式VIIの化合物を生成する工程を含む方法。
【化1】

式VII
式中、それぞれの式VIIに関して独立して、
(a)Xは、−(C=O)であり、Yは、O又はSであり、
(b)Xは、−O又は−Sであり、Yは、(C=O)又は(CHRa)−Oであり、
(c)X−Yは、−S−Sであり、又は
(d)Xは、−O−P(=O)ORPであり、Yは、O又はSであり、且つ
Jはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、NH2、炭素数が1〜15のアルキル、及び[CHR]o−NR’−CH(NHR’’)−NH−R’’’から選択され、
R、R’、R’’、R’’’、Ra及びRpはそれぞれ独立して、H、炭素数が1〜15のアルキル、及び置換又は非置換のアリールから選択され、R及びR’、R’及びR’’、及び/又はR’’及びR’’’は共に、環状構造を形成するように選択されてもよく、
アルキルは置換されてもよく、
mは、0〜10の整数であり、Jが[CHR]o−NR’−CH(NHR’’)−NH−R’’’の場合は、mは1であり、
oは、1〜15の整数であり、且つ
pは、0又は1であり、pが0の場合は、R’を受けるNの自由原子価は、Hで満たされる。
【請求項30】
前記ポリマーが、ペプチド、ポリペプチド又は核酸である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(a)
(i)グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、C末端のカルボキシレートで、エステル又はチオエステルを形成する工程
(ii)1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基が存在する場合、グアニジニウムアルカノール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のAsp残基又はGlu残基の側鎖カルボキシレートで、エステル又はチオエステルを形成する工程
(iii)1つ又は複数のSer残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウムによって、1つ又は複数のSer残基、Thr残基又はTyr残基のヒドロキシル基で、エステル又はチオエステルを形成する工程
(iv)1つ又は複数のCys残基が存在する場合、アルカン酸グアニジニウム又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、1つ又は複数のCys残基のスルフヒドリル基で、エステル又はチオエステルを形成する工程
及び/又は
(v)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、α−ヒドロキシ酸又はβ−ヒドロキシ酸で予めアミド化したN末端で、該α−ヒドロキシ酸又は該β−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基と、該アルカン酸グアニジニウム又は該グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGのカルボキシル基との間でエステル又はチオエステルを形成する工程、並びに/又は
(b)1つ又は複数のジスルフィドを形成する工程であって、該ジスルフィドが、存在する場合、Cys残基のスルフヒドリル基と、グアニジニウムアルカンチオールとの間、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGとの間で形成される
工程を含む、ペプチド又はポリペプチドの生物学的障壁通過能を高める方法。
【請求項32】
前記生物学的障壁が、細胞膜、粘膜及び血液脳関門から選択される、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
(a)前記C末端が、請求項31に規定される通りにエステル化しない場合、脂肪族アルコールによって、該C末端のカルボキシレートでエステル又はチオエステルを形成する工程、及び/又は
(b)脂肪酸によって、前記N末端のアミノ基をアミド化する工程をさらに含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記脂肪族アルコール及び/又は前記脂肪酸は、炭素数が5〜15、好ましくは炭素数が9である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
存在する場合、任意のArg残基の数を含む、エステル、チオエステル、アセテート、ジスルフィド及び/又はホスフェートエステルの形成時のグアニジニウム基の数が、5〜20、より好ましくは7〜15、及び最も好ましくは9である、請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
核酸の生物学的障壁通過能を高める方法であって、
(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、以下の位置の1つ又は複数:
(i)5’末端の5’ヒドロキシル基、
(ii)3’末端の3’ヒドロキシル基、
(iii)5’末端又は3’末端の2’ヒドロキシル基、及び
(iv)内部の2’ヒドロキシル基
でエステルを形成する工程、
(b)グアニジニウムアルカノール、又はグアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEGによって、1つ又は複数のホスフェートでエステルを形成する工程、及び/又は
(c)2’ヒドロキシル基と、グアニジニウムアルカノールとの間、又はグアニジニウム基で置換されたPEGとの間でアセタールを形成する工程を含む、核酸の生物学的障壁通過能を高める方法。
【請求項37】
脂肪族アルコールによって、1つ又は複数の末端ホスフェートをエステル化することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法であって、
(a)アルカン酸グアニジニウム、又はグアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGによって、該リポソーム又はミセルの1つ又は複数のヒドロキシル基でエステルを形成する工程、及び/又は
(b)グアニジニウムアルコール、グアニジニウムアルカンチオール、グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又はグアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGによって、ホスフェート又はカルボキシレート等の1つ又は複数の酸性基でエステルを形成する工程、及び/又は
(c)前記リポソーム又はミセルの第1級アミノ基をグアニジニウム基に変換する工程を含む、リポソーム又はミセルの生物学的障壁通過能を高める方法。
【請求項39】
前記グアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールが、請求項2、3、6又は7のいずれか一項に規定される通りのグアニジニウムアルカノール又はグアニジニウムアルカンチオールである、請求項31〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アルカン酸グアニジニウムが、請求項4〜7のいずれか一項に規定される通りのアルカン酸グアニジニウムである、請求項31〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記グアニジニウム基で置換されると共に遊離ヒドロキシル基を有するPEG、又は前記グアニジニウム基及びスルフヒドリル基で置換されたPEGが、請求項7又は9に規定される通りのものである、請求項31〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記グアニジニウム基及びカルボキシル基で置換されたPEGが、請求項8又は9に規定される通りのものである、請求項31〜41のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−504929(P2010−504929A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529603(P2009−529603)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008396
【国際公開番号】WO2008/037463
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509087988)
【Fターム(参考)】