説明

生体認証装置、生体認証方法及びプログラム

【課題】1対N認証において認証候補として用いられる登録データの個数を演算負荷の比較的少ない方法を用いて容易に絞りこむことが可能な、生体認証装置、生体認証方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る生体認証装置は、生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、前記静脈画像抽出部により抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出する特徴量算出部と、前記特徴量算出部が算出した前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証する生体認証部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置、生体認証方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の指紋をバイオメトリクス認証の対象とした認証装置が数多く提案されているが、近年、生体における血管(静脈)自体がバイオメトリクス認証の対象の1つとして着目されている。
【0003】
このような認証装置は、血管を通過するヘモグロビンが近赤外線帯域の光(近赤外光)を特異的に吸収するといった性質を利用して登録者の血管を撮像し、この撮像結果として得られる血管画像のデータを、所定のデータベースに登録する。
【0004】
また認証装置は、照合者の血管を撮像して、撮像結果として得られる血管画像のデータと、データベースに登録された複数の血管画像データとを順次照合し登録者本人を認証する、いわゆる「1対N認証」を実施する。(例えば、以下の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−242492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大規模な生体認証システムが必要な場合において、上記特許文献1に記載の方法のような1対N認証を行うと、照合すべきデータの個数Nが膨大であるために、ある一つの入力に対して必要な認証時間が、莫大な長さになってしまう。その結果、生体認証システムを利用する利用者の利便性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、1対N認証において認証候補として用いられる登録データの個数を演算負荷の比較的少ない方法を用いて容易に絞りこむことが可能な、生体認証装置、生体認証方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、前記静脈画像抽出部により抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出する特徴量算出部と、前記特徴量算出部が算出した前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証する生体認証部と、を備える生体認証装置が提供される。
【0009】
前記特徴量算出部は、前記部分静脈線に対応する画素の数を前記部分静脈線の長さとし、前記部分静脈線の近似直線が前記静脈画像のフレームとなす角度を前記部分静脈線の角度とすることが好ましい。
【0010】
前記特徴量算出部は、
前記部分静脈線の長さの正規化処理及び前記静脈画像の回転処理の少なくともいずれか一方を行って前記特徴量を補正する特徴量補正部を更に備え、前記特徴量補正部は、前記部分静脈線の長さの総和を算出し、当該部分静脈線の長さの総和を利用して、前記部分静脈線の長さを正規化し、前記静脈画像に対して主成分分析を行い、当該主成分分析によって算出される第1主成分が前記フレームとなす角度を利用して、前記部分静脈線の角度を補正することが好ましい。
【0011】
前記生体認証部は、前記部分静脈線の長さ及び前記部分静脈線の角度からなる座標系において、前記登録特徴量に対応する特徴点と、前記特徴量算出部により算出された特徴量に対応する特徴点とについて、互いに対応する特徴点を特定し、当該対応する特徴点間の距離に基づいて、前記特徴量の認証を行うことが好ましい。
【0012】
前記生体認証部は、ある特徴点について、対応すると考えられる特徴点候補が複数存在した場合、当該特徴点と前記特徴点候補とのユークリッド距離が最小のものを、前記特徴点に対応する特徴点とすることが好ましい。
【0013】
前記生体認証部は、ある特徴点について、対応すると考えられる特徴点候補が複数存在し、当該特徴点と前記特徴点候補とのユークリッド距離が互いに同一である場合には、前記特徴点候補の長さが最大であるものを、前記特徴点に対応する特徴点とすることが好ましい。
【0014】
前記登録特徴量には、前記部分静脈線の長さが長いものから順に、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度が格納されていてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出するステップと、抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出するステップと、算出した前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証するステップと、を含む生体認証方法が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、コンピュータに、生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出機能と、前記静脈画像抽出機能により抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出する特徴量算出機能と、前記特徴量算出機能により算出された前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証する生体認証機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、1対N認証において認証候補として用いられる登録データの個数を演算負荷の比較的少ない方法を用いて容易に絞りこむことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体認証装置の構成を示したブロック図である。
【図2】分岐点及び端点について説明するための説明図である。
【図3】同実施形態に係る特徴量の算出方法について示した説明図である。
【図4】同実施形態に係る特徴量算出部を示したブロック図である。
【図5】静脈画像の正規化について説明するための説明図である。
【図6】静脈画像の回転について説明するための説明図である。
【図7】静脈画像の回転について説明するための説明図である。
【図8】静脈線の分割処理について説明するための説明図である。
【図9】特徴量情報のフォーマットについて示した説明図である。
【図10】部分静脈線の長さの算出方法の変形例を示した説明図である。
【図11】特徴量情報の認証処理について説明するための説明図である。
【図12】特徴量情報の認証処理について説明するための説明図である。
【図13】同実施形態に係る生体認証方法の流れを示した流れ図である。
【図14】同実施形態に係る特徴量の算出方法の流れを示した流れ図である。
【図15】同実施形態に係る特徴量の比較方法の流れを示した流れ図である。
【図16】本発明の実施形態に係る生体認証装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)第1の実施形態
(1−1)生体認証装置の構成について
(1−2)生体認証方法について
(2)本発明の実施形態に係る生体認証装置のハードウェア構成について
(3)まとめ
【0021】
(第1の実施形態)
<生体認証装置の構成について>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る生体認証装置の構成について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る生体認証装置の構成を示した説明図である。なお、以下では、生体部位の一例として、指を例にとって説明を行うが、本発明に係る静脈が、指静脈に限定されるわけではない。
【0022】
本実施形態に係る生体認証装置10は、例えば図1に示したように、生体撮像部101と、撮像制御部103と、静脈画像抽出部105と、特徴量算出部107と、生体認証部109と、記憶部115と、を主に備える。
【0023】
生体撮像部101は、生体の一部(以下、生体表面とも称する。)BSに対して所定の波長帯域を有する近赤外光を照射する光源部と、撮像素子及びレンズ等の光学素子から構成される光学系と、を含む。
【0024】
近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。このような静脈パターンを良好に撮像するために、発光ダイオード等の光源部は、約600nm〜1300nm程度の波長、好ましくは、700nm〜900nm程度の波長を有する近赤外光を照射する。
【0025】
ここで、光源部が照射する近赤外光の波長が600nm未満又は1300nm超過である場合には、血液中のヘモグロビンに吸収される割合が小さくなるため、良好な静脈パターンを得ることが困難となる。また、光源部が照射する近赤外光の波長が700nm〜900nm程度である場合には、近赤外光は、脱酸素化ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収されるため、良好な静脈パターンを得ることができる。
【0026】
光源部から射出された近赤外光は、生体部位の表面に向かって伝搬し、直接光として、生体の側面などから内部に入射する。ここで、人体は良好な近赤外光の散乱体であるため、生体内に入射した直接光は四方に散乱しながら伝搬する。生体内を透過した近赤外光は、光学系を構成する光学素子に入射することとなる。
【0027】
生体撮像部101を構成する光学系は、1又は複数の光学素子と、1又は複数の撮像素子と、から構成される。
【0028】
人体の皮膚は、表皮層、真皮層及び皮下組織層の3層構造となっていることが知られているが、静脈の存在する静脈層は、真皮層に存在している。真皮層は、指表面に対して0.1mm〜0.3mm程度の位置から2mm〜3mm程度の厚みで存在している層である。したがって、このような真皮層の存在位置(例えば、指表面から1.5mm〜2.0mm程度の位置)にレンズ等の光学素子の焦点位置を設定することで、静脈層を透過した透過光を、効率よく集光することが可能となる。
【0029】
光学素子によって集光された静脈層を透過した透過光は、CCDやCMOS等の撮像素子に結像されて、静脈撮像データとなる。生成された静脈撮像データは、後述する静脈画像抽出部105に伝送される。
【0030】
撮像制御部103は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現される。撮像制御部103は、光源部、光学系及び撮像素子を制御して、撮像データを生成する。より詳細には、撮像制御部103は、光源部、光学系及び撮像素子を制御して生体表面を撮像し、撮像データを生成する。
【0031】
撮像制御部103は、撮像素子によって生成された撮像データを、後述する静脈画像抽出部105に出力させる。また、撮像制御部103は、得られた撮像データを、後述する記憶部115等に記録してもよい。また、記憶部115等への記録に際して、撮像制御部103は、生成した撮像データに撮像日や撮像時刻等を関連づけてもよい。なお、生成される撮像データは、RGB(Red−Green−Blue)信号であってもよいし、それ以外の色やグレースケール等の画像データであってもよい。
【0032】
静脈画像抽出部105は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈画像抽出部105は、生体撮像部101から伝送された撮像データのなかから、ユーザの静脈パターンを表す画像である生体情報(静脈画像)を抽出する。この静脈画像抽出部105は、例えば、画像平滑化部、輪郭抽出部、マスク画像生成部、切出部、静脈平滑化部、2値化部、太線化部、細線化部、サムネイル画像生成部といった処理部を更に有する。
【0033】
画像平滑化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像平滑化部は、生体撮像部101から伝送される静脈撮像データに対して、例えばガウシアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈撮像データに対応する静脈画像を平滑化する。
【0034】
輪郭抽出部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。輪郭抽出部は、画像平滑化部によって平滑化された静脈画像に対して、例えばLog(Laplacian of Gaussian)フィルタと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像における輪郭を強調して浮き彫りにする。
【0035】
マスク画像生成部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。マスク画像生成部は、輪郭抽出部によって輪郭が強調された静脈画像から、背景部分とのコントラストを基に、指輪郭などの輪郭線を検出する。また、マスク画像生成部は、検出された輪郭線に囲まれる指領域と、それ以外の領域とを、2値で示す画像(以下、これをマスク画像とも称する。)を生成する。
【0036】
切出部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。切出部は、輪郭抽出部によって輪郭が強調された静脈画像から、マスク画像生成部によって生成されたマスク画像を用いて、指輪郭に囲まれる指領域を含む所定サイズの画像を切り出す。
【0037】
静脈平滑化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈平滑部は、切出部によって切り出された静脈画像に対して、例えばメディアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像における静脈部分を平滑化する。
【0038】
2値化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。2値化部は、静脈平滑化部によって静脈部分が平滑化された静脈画像を、設定された輝度レベルを基準として、2値レベルに変換する。ここで、仮に、静脈が平滑化される前の静脈画像を2値化対象の画像とした場合、実際には一本の静脈が、2値化によって2本の静脈として分離される確率が高くなる。したがって、静脈が平滑化された静脈画像を2値化対象とすることで、実際の静脈に近似する状態での2値化が可能となる。
【0039】
太線化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。太線化部は、2値化部によって2値化された静脈画像に対して、例えばダイレーションと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈画像に含まれる静脈を太線化する。この結果、本来連結された静脈箇所であるにもかかわらず途切れていた静脈箇所が連結される。
【0040】
細線化部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。細線化部は、太線化部によって静脈部分が太線化された静脈画像に対して、例えばエロージョンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、静脈部分の静脈幅を一定とする。
【0041】
サムネイル画像生成部は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。サムネイル画像生成部は、静脈幅が一定となった静脈部分と、背景部分とを2値で示す静脈画像を細線化部から取得し、この静脈画像から、縦横サイズをn分の1倍に圧縮した画像であるサムネイル画像を生成する。
【0042】
このようにして静脈画像抽出部105は、静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す画像を、生体画像として抽出し、生体画像のサムネイル画像を生成する。静脈画像抽出部105は、静脈撮像データから抽出した静脈画像やサムネイル画像等のメタデータを、後述する特徴量算出部107及び生体認証部109に伝送する。また、静脈画像抽出部105は、抽出した静脈画像等を、これらの情報に固有の識別情報(例えば、識別番号等)と関連付けて、後述する記憶部115に格納してもよい。
【0043】
特徴量算出部107は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量算出部107は、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、部分静脈線それぞれの長さ及び角度を静脈画像の特徴量として算出する。特徴量算出部107は、算出した特徴量に関する情報(以下、特徴量情報とも称する。)を、後述する生体認証部109に伝送する。
【0044】
なお、特徴量算出部107については、以下で改めて詳細に説明する。
【0045】
生体認証部109は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。生体認証部109は、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像や、特徴量算出部107により算出された特徴量等を利用して、生体認証処理を行う処理部である。この生体認証部109は、図1に示したように、登録部111と、認証部113と、を更に備える。
【0046】
登録部111は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。登録部111は、特徴量算出部107により算出された特徴量及び静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像を互いに関連付けて、登録生体情報として記憶部115等に登録する。これらの登録生体情報のうち、登録された静脈画像は、いわゆるテンプレートとして、入力された静脈画像の本認証(最終的な認証)の際に利用される。また、登録された特徴量(以下、登録特徴量、登録特徴量情報とも称する。)は、本認証に先立つ予備的な認証(テンプレートの個数を絞り込むための認証)の際に利用される。
【0047】
認証部113は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。認証部113は、予め登録されている登録生体情報を利用して、入力された生体情報の認証を行う処理部である。より詳細には、認証部113は、特徴量算出部107により算出された特徴量情報を、予め登録されている登録特徴量情報に基づいて認証する。この特徴量情報の認証処理により、入力された特徴量情報に類似する登録特徴量情報が特定されることとなる。これにより、認証部113は、本認証の際に照合すべきテンプレートの個数を絞り込むことができる。その後、認証部113は、認証に成功した登録特徴量情報に関連付けられている登録静脈画像を利用して、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像の認証処理(本認証処理)を実施する。
【0048】
認証部113は、入力された生体情報と登録生体情報とが類似しているか否かを、算出した類似度に基づいて判定する。判定に用いられる類似度の例として、相互相関値および差分の総和を用いた類似度を挙げることができる。差分の総和を用いる方法の例としては、差分絶対値和(Sum of Absolute Difference:SAD)および差分自乗和(Sum of Squared Difference:SSD)がある。認証部113は、認証すべき生体情報の種類に応じて、任意の類似度を利用することが可能であるが、特徴量情報には、以下で改めて説明する方法を用いることが好ましく、テンプレートの認証には、相互相関値を用いることが好ましい。
【0049】
認証部113は、特徴量情報を認証する際、算出した類似度が所定の閾値以上となっているか否かを判定し、算出した値が所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する。また、認証部113は、静脈画像を認証する際、算出した相互相関値が所定の閾値以上となっているか否かを判定し、算出した値が所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する。認証の際に参照する閾値は、任意の方法で予め設定しておくことが可能であるが、例えば、本人拒否率が1%以下となるように設定されたものであることが好ましい。
【0050】
記憶部115は、本実施形態に係る生体認証装置10が備えるストレージ装置の一例である。記憶部115には、登録部111によって、登録特徴量情報及びテンプレートを含む登録生体情報が格納される。また、記憶部115には、生体撮像部101により生成された撮像データや、静脈画像抽出部105により抽出された静脈画像等が一時的に格納されてもよい。また、記憶部115には、生体情報の登録に関する履歴情報など、各種の履歴情報が記録されていてもよい。さらに、記憶部115には、本実施形態に係る生体認証装置10が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等が、適宜記録される。この記憶部115は、生体撮像部101、撮像制御部103、静脈画像抽出部105、特徴量算出部107、生体認証部109、登録部111、認証部113等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0051】
<特徴量算出部の構成について>
続いて、図2〜図10を参照しながら、本実施形態に係る特徴量算出部107の構成について、詳細に説明する。
【0052】
[特徴量算出部の概要]
まず、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る特徴量算出部107における特徴量算出処理の概要について説明する。図2は、静脈画像の分岐点及び端点について説明するための説明図であり、図3は、特徴量算出部107における特徴量の算出方法について示した説明図である。
【0053】
特徴量算出部107は、図2左側に示したような静脈画像があった場合に、この静脈画像から、分岐点及び端点に対応する画素を抽出する。図2左側に示した静脈画像の場合、図2右側に示したような分岐点及び端点が抽出される。特徴量算出部107は、抽出した分岐点及び端点に対応する画素の位置に基づいて、静脈画像中に存在する静脈線を、複数の部分静脈線に分割する。
【0054】
上述のようにして特徴量算出部107が分割した部分静脈線の一例を図3に示す。特徴量算出部107は、生成された複数の部分静脈線それぞれについて、部分静脈線の長さと角度とを算出する。ここで、部分静脈線の長さLは、部分静脈線に対応する画素の画素数として定義される。また、部分静脈線の角度θは、図3の右側の図に示したように、部分静脈線の近似直線を考え、この近似直線と静脈画像のフレームの横方向とのなす角として定義される。
【0055】
特徴量算出部107は、このようにして定義される部分静脈線の長さLと角度θとからなる特徴量の集合を、特徴量情報として生体認証処理に利用する。
【0056】
[特徴量算出部の詳細な構成について]
続いて、図4〜図10を参照しながら、本実施形態に係る特徴量算出部107の詳細な構成について、説明する。図4は、本実施形態に係る特徴量算出部を示したブロック図である。図5は、静脈画像の正規化について説明するための説明図である。図6及び図7は、静脈画像の回転について説明するための説明図である。図8は、静脈線の分割処理について説明するための説明図である。図9は、特徴量情報のフォーマットについて示した説明図である。図10は、部分静脈線の長さの算出方法の変形例を示した説明図である。
【0057】
本実施形態に係る特徴量算出部107は、図4に示したように、静脈線分割部121と、静脈画素カウント部123と、角度算出部125と、特徴量補正部127と、を更に備える。
【0058】
静脈線分割部121は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈線分割部121は、静脈画像抽出部105から入力された静脈画像中に存在する静脈線(静脈を表す直線又は曲線)を、複数の部分静脈線へと分割する。以下、静脈線分割部121が行う静脈線の分割処理を、図5を参照しながら、具体的に説明する。
【0059】
静脈線分割部121は、静脈画像が入力されると、まず、静脈画像中に存在する静脈線の分岐点及び端点を抽出する。その後、静脈線分割部121は、静脈線を、端点又は分岐点から、次の端点又は分岐点までの部分静脈線に分割する。
【0060】
図5に示したような静脈線が存在したとする。静脈線分割部121は、この静脈線中に存在する分岐点及び端点を抽出する。その結果、静脈線分割部121は、DP1及びDP2という2つの分岐点と、EP1〜EP4の4つの端点とを抽出する。
【0061】
続いて、静脈線分割部121は、ある端点に着目し、この端点から開始している静脈線を、次の分岐点又は端点に到達するまでたどっていく。図5の例では、静脈線分割部121は、EP1という端点に着目し、次の分岐点又は端点に到達するまでたどっていく。図5の場合、EP1という端点から静脈線をたどっていくと、DP1という分岐点に到達する。そこで、静脈線分割部121は、EP1〜DP1という静脈線を、部分静脈線PBL1とする。
【0062】
次に、静脈線分割部121は、分岐点DP1を開始点として、次の特徴点(分岐点又は端点)に到達するまで静脈線をたどっていく。その結果、静脈線分割部121は、端点EP2を終点とする部分静脈線PBL2と、分岐点DP2を終点とする部分静脈線PBL3と、を抽出する。
【0063】
続いて、静脈線分割部121は、分岐点DP2を開始点として、次の特徴点に到達するまで静脈線をたどっていく。その結果、静脈線分割部121は、端点EP3を終点とする部分静脈線PBL4と、端点EP4を終点とする部分静脈線PBL5とを抽出する。
【0064】
これにより、たどられていない静脈線が存在しないこととなるため、静脈線分割部121は、静脈線の分割処理を終了する。
【0065】
なお、上述の説明では、端点を開始点としたが、分岐点を開始点としても、同様に部分静脈線を抽出することができる。
【0066】
また、図5から明らかなように、端点は、開始点又は終点のいずれか一方にしかなり得ないが、分岐点は、開始点又は終点の一方又は双方が重複することとなる。
【0067】
静脈線分割部121は、このようにして部分静脈線を抽出していき、得られた部分静脈線に関する情報を、後述する静脈画素カウント部123及び角度算出部125に出力する。
【0068】
静脈画素カウント部123は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈画素カウント部123は、静脈線分割部121から出力された部分静脈線それぞれについて、静脈線に対応する画素の画素数をカウントする。すなわち、静脈画素カウント部123は、部分静脈線の長さLを特定する処理部である。例えば、図3左側に示した部分静脈線について、静脈画素カウント部123は、静脈線に対応する画素(すなわち、黒い色となっている画素)の個数をカウントして、部分静脈線の長さとする。
【0069】
静脈画素カウント部123は、静脈線分割部121から出力された部分静脈線の画素を上述のようにカウントして、後述する特徴量算出部127に出力する。
【0070】
角度算出部125は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。角度算出部125は、静脈線分割部121から出力された部分静脈線それぞれについて、その角度を算出する。より詳細には、角度算出部125は、部分静脈線それぞれについて、当該部分静脈線の近似直線を考え、この近似直線と静脈画像のフレーム(例えば、図3に示したような静脈画像フレームの横方向)とのなす角を、部分静脈線の角度θとする。
【0071】
角度算出部125は、部分静脈線の近似直線を、例えば、部分静脈線を表す直線又は曲線に対して最小二乗法を行って算出してもよく、部分静脈線を表す直線又は曲線に対して主成分分析を行い、得られた第1主成分に対応する方向を表す直線を、部分静脈線の近似直線としてもよい。
【0072】
ここで、静脈画像のフレームの横方向をx軸とし、縦方向をy軸とした場合に、部分静脈線の近似直線が、y=mx+cとして表されるとすると、角度算出部125は、θ=tan−1mで得られる値を、部分静脈線の角度とする。
【0073】
角度算出部125は、静脈線分割部121から出力された部分静脈線の角度を上述のように算出して、後述する特徴量算出部127に出力する。
【0074】
以上のようにして特定された部分静脈線の長さL及び角度θの集合が、静脈画像を特徴付ける静脈画像に固有の特徴量となる。
【0075】
特徴量補正部127は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量補正部127は、静脈線分割部121により抽出された部分静脈線に対して、部分静脈線の長さの正規化処理及び静脈画像の回転処理の少なくともいずれか一方を行って、特徴量を補正する。ここで、特徴量補正部127が実施する特徴量の補正処理について、図6〜図8を例に挙げながら、具体的に説明する。
【0076】
例えば図6に示したように、同じ指を撮像して得られた静脈画像であっても、静脈画像そのものの大きさ(画像サイズ)が異なっている場合には、生成される部分静脈線が同じであったとしても、部分静脈線の長さLが異なってしまう。その結果、特徴量情報自体が相異なるものとなってしまい、正確に認証されなくなってしまう可能性が高い。そのため、本実施形態に係る特徴量補正部127では、かかる静脈画像の画像サイズに関する問題を、部分静脈線の長さLを正規化することで解決する。
【0077】
ここで、ある静脈画像中に存在する静脈線が、静脈線分割部121における静脈線の分割処理により、N本の部分静脈線(部分曲線)に分割されたものとする。また、静脈画像カウント部123における部分静脈線の長さの特定処理により、各部分静脈線の長さが、L,L,L,・・・,L,・・・,Lと特定されたものとする。
【0078】
この場合、特徴量補正部127は、得られたこれらの情報を利用して、i番目の部分静脈線の長さLを、以下の式101のように正規化して、NLとする。以下の式101から明らかなように、この正規化処理は、部分静脈線の長さの総和を利用して行われる。
【0079】
【数1】

・・・(式101)


【0080】
ここで、上記式101において、Cは、正規化後の長さNLを所望の桁数の値とするための、任意係数である。
【0081】
また、図7に示したように、静脈画像が同じであったとしても、静脈画像に回転が生じていた場合を考える。このような場合、回転前後の静脈画像が同じであったとしても、部分静脈線それぞれが静脈画像のフレームとなす角度は変化してしまうこととなる。そこで、本実施形態に係る特徴量補正部127では、かかる静脈画像の回転に関する問題を、以下のようにして算出した角度だけ回転させることで解決する。
【0082】
すなわち、特徴量補正部127は、部分静脈画像の抽出元である静脈画像について、図8に例示したように、静脈線に対応する画素の配置を利用して主成分分析を実施し、第1主成分の方向を算出する。その後、特徴量補正部127は、図8に示したように第1主成分の方向と静脈画像のフレームの横方向とのなす角θPCAを定義し、その大きさを算出する。そして、特徴量補正部127は、第1主成分の方向が静脈画像のフレームの縦方向と平行となるように、角度を補正する。これにより、静脈画像の回転に関する問題を解決することができる。
【0083】
ここで、ある静脈画像中に存在する静脈線が、静脈線分割部121における静脈線の分割処理により、N本の部分静脈線(部分曲線)に分割されたものとする。また、角度算出部125における部分静脈線の角度の算出処理により、各部分静脈線の角度が、θ,θ,θ,・・・,θ,・・・,θと特定されたものとする。
【0084】
この場合、特徴量補正部127は、得られたこれらの情報を利用して、i番目の部分静脈線の角度θを、以下の式102のように補正して、Nθとする。
【0085】
【数2】

・・・(式102)


【0086】
このように、特徴量補正部127は、部分静脈線の長さL及び角度θの少なくともいずれか一方(好ましくは、双方)を補正して、補正後の長さ及び角度の組の集合を、静脈画像を特徴付ける特徴量とする。特徴量補正部127は、このようにして算出した特徴量に関する情報(特徴量情報)を、生体認証部109に出力する。
【0087】
この際、特徴量補正部127は、得られた特徴量情報を、補正後の部分静脈線の長さの長い順に並べ替えておくことが好ましい。なぜならば、部分静脈線の長さ(すなわち、部分静脈線の画素数)が多い部分静脈線ほど、静脈認証処理において重要性の高いものであると考えられるからである。
【0088】
また、特徴量補正部127は、全ての部分静脈線を特徴量情報として抽出しなくともよく、所定の閾値以上の長さを有する部分静脈線のみを、特徴量として登録してもよい。なぜなら、あまりにも短い部分静脈線は、静脈画像に含まれるノイズである可能性があり、また、静脈認証処理においても誤差の要因となる部分静脈線である可能性があるからである。特徴量情報として含まれる部分静脈線の本数を減らすことにより、特徴量情報を利用したメタデータ認証に要する処理時間を短縮することが可能となる。なお、上記閾値については、予備実験等で得られた結果に対して統計処理等を行うことにより、実験的に決定することが可能である。
【0089】
このようにして算出された特徴量情報のフォーマットの一例を、図9に示す。図9に示したように、特徴量情報は、まず、部分静脈線の本数Nがデータヘッドに記載されており、その後、部分静脈線の長さLの長いものから順に、長さL及び角度θの組がN個記載されている。
【0090】
かかる特徴量情報は、静脈線(部分静脈線)の特徴をマッピングした点であるため、生体認証時に入力データ又は登録データとしてCPU、ROM、RAM等に入出力されるものは、2次元のデータセットである。また、2次元データの項目は、以上説明したように、部分静脈線の長さ及び角度である。
【0091】
今、静脈画像のフレームサイズが、縦160ピクセル×横60ピクセルであるとすると、長さLの最大値は(160+600.5≒171程度であり、角度θの最大値は180度であるため、どちらの特徴量も1バイト(8ビット)で十分記録可能である。また、静脈画像中にN本の部分静脈線が存在したとすると、図9に示した特徴量情報が占めるメモリ量は、N個の2次元データを示す(N×2)バイトと、本数Nを示す1バイトの計(2N+1)バイトとなる。
【0092】
以上、本実施形態に係る生体認証装置10の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0093】
なお、上述のような本実施形態に係る生体認証装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0094】
また、上述の説明では、部分静脈線の長さLとして、部分静脈線の画素数を用いる場合について説明したが、ある状況下においては、図10に示した方法で算出した画素数を部分静脈線の長さLとしてもよい。
【0095】
すなわち、図10に示したように、分岐点DPaを開始点とし、分岐点DPbを終点とする部分静脈線PBLqが存在するものとする。この際、開始点と終点とを結んだ直線Lqを考え、この直線Lqの画素数をカウントする。実際の部分静脈線PBLqと直線Lqとの差が所定の閾値以下であれば、実際の部分静脈線PBLqはほぼ直線であるとみなし、直線Lqの画素数を、部分静脈線PBLqの長さLとしてもよい。
【0096】
<特徴量情報の認証処理について>
続いて、図11及び図12を参照しながら、本実施形態に係る生体認証部109(より詳細には、認証部113)で実施される特徴量情報の認証処理について、詳細に説明する。図11及び図12は、特徴量の認証処理について説明するための説明図である。
【0097】
先だって説明したように、本実施形態に係る特徴量算出部107は、各部分静脈線に対して、部分静脈線の長さLと角度θ(広がり方向)という2種類のパラメータを特徴量として関連付ける。そこで、本実施形態に係る生体認証部109(より詳細には、認証部113)は、この長さL及び角度θを座標軸とする座標系(L−θ座標系)を考慮して、特徴量情報の認証を行う。かかる座標系を考慮することで、ある1本の部分静脈線に関する特徴量は、この座標系における1点として表されることとなる。その結果、ある指に関する特徴量情報を、L−θ座標系における点の集合として捉えることが可能となる。
【0098】
登録特徴量情報(以下、登録情報とも称する。)として、N本の部分静脈線からなる特徴量情報が既に登録されており、認証されるべき特徴量情報(以下、認証情報とも称する。)として、N本の部分静脈線からなる特徴量情報が入力されたものとする。
【0099】
ここで、登録情報を、(Lr1,θr1),(Lr2,θr2),・・・,(Lri,θri),・・・,(LrN,θrN)と表すこととし、認証情報を、(Ln1,θn1),(Ln2,θn2),・・・,(Lni,θni),・・・,(LnN,θnN)と表すこととする。
【0100】
認証部113は、ある認証情報が入力されると、図11に例示したように、L−θ座標系における登録情報の分布及び認証情報の分布を考える。次に、認証部113は、L−θ座標系における各登録情報が表す点と、同座標系における各認証情報が表す点との対応関係を考え、登録情報が表す点に対応している認証情報の点(図11において点線で囲まれた点のペア)を特定していく。対応関係にある点を特定する際に、認証部113は、各登録点(Lri,θri)(i=1,2,・・・,N)について、当該登録点に最も近い認証点(Lnj,θnj)(j=1,2,・・・,N)を見つけ、この2点間の距離di,minを算出する。2点間の距離di,minは、以下の式103により算出されるユークリッド距離である。
【0101】
【数3】

・・・(式103)


【0102】
なお、図11に示したように、登録情報に対応する点の個数と、認証情報に対応する点の個数とが異なる場合も生じうる。この場合、個数が少ない方の点全てが、もう一方の側の点と対応付けられるように、認証部113は、処理を行う。すなわち、図11に示した例では、認証情報に対応する点の個数が、登録情報に対応する点の個数よりも少ないため、認証情報に対応する点全てが、いずれかの登録情報に対応する点と対応付けられるように、認証部113は、処理を実施する。
【0103】
登録点と認証点との対応付けが終了すると、認証部113は、算出したユークリッド距離の和Sを、以下の式104により算出する。式104から明らかなように、登録情報と認証情報が類似しているほど、算出されるユークリッド距離の和Sは、小さな値となる。したがって、認証部113は、算出したユークリッド距離の和Sが所定の閾値以下であった場合に、登録情報が認証情報と類似していると判断する。
【0104】
【数4】

・・・(式104)


【0105】
なお、認証部113は、登録情報と認証情報との類似度として、上述のようなユークリッド距離の和Sではなく、ユークリッド距離の平均を利用してもよい。また、類似しているか否かの判定に利用される閾値は、予備実験等で得られた結果に対して統計処理等を行うことにより、実験的に決定することが可能である。
【0106】
[登録点と認証点との対応付けについて]
次に、登録点と認証点との対応付け処理について、詳細に説明する。なお、以下では、登録点の方が少なかったものとして、説明を行う。また、登録点の集合をRと表すこととし、認証点の集合をNと表すこととする。
【0107】
ここで、Rの各点について、最も近いNの点を探索する場合に、以下の2種類の可能性を考慮する必要がある。
【0108】
(a)Rに含まれる2以上の点それぞれについて、最も近いNの点が同一の点となる可能性
(b)Rに含まれる2以上の点それぞれについて、最も近いNの点が同一の点であり、かつ、このNの点と該当するRの点との間の距離が同一である可能性
【0109】
上記(a)及び(b)に示した可能性を数学的に解決するためには、O(N!)の計算時間が要求されるため、本実施形態に係る特徴量を利用した認証を、いわゆるメタデータ認証として利用するには、計算時間の負荷が大きくなってしまう。そこで、本実施形態に係る認証部113では、上記(a)及び(b)に示した可能性について、以下のような方針で対処を行う。
【0110】
すなわち、上記(a)については、Rの2以上の点のうち、最も近いNとの距離が最小となる登録点を、着目している認証点に対応する登録点とする。
【0111】
また、上記(b)については、部分静脈線の角度に関する情報よりも部分静脈線の長さに関する情報の方が、静脈認証処理においては重要であると考え、Rの2以上の点のうち、長さLが最も長い登録点を、着目している認証点に対応する登録点とする。
【0112】
このような方針に則して処理を行うことで、認証部113は、上記(a)及び(b)に示した可能性を、O(N)のオーダーで解決することが可能となる。
【0113】
この対応方針について、図12を参照しながら、具体的に説明する。
図12に示したように、ある認証点naに対して、登録点r1及び登録点r2が、対応する登録点の候補となっている場合を考える。ここで、認証点naの長さをLaとし、登録点r1及び登録点r2の長さを、それぞれL1及びL2とする。
【0114】
認証部113は、まず、認証点naと登録点r1との間の距離d1及び認証点naと登録点r2との間の距離d2を算出する。ここで、距離d1と距離d2が等しくない場合には、より短い距離となっている登録点を、認証点naに対応する点と判断する。すなわち、認証部113は、d1<d2である場合には、登録点r1を認証点naに対応する登録点と判断し、d1>d2である場合には、登録点r2を認証点naに対応する登録点であると判断する。
【0115】
また、認証部113は、d1=d2である場合には、登録点r1の長さ座標L1と、登録点r2の長さ座標L2に着目する。登録点r1及び登録点r2が図12に示したような位置関係となっている場合、L2>L1であることから、認証部113は、登録点r2を認証点naに対応する登録点と判断する。
【0116】
以上を踏まえ、認証部113における登録点と認証点との対応付けの手順をまとめると、以下のようになる。
【0117】
(手順1)すべての登録点r∈Rに対して、最も近い認証点n∈Nを決定する。
【0118】
(手順2)登録点r∈R(i=1,2,3,・・・,N)に対して、その最も近い認証点n∈N(i=1,2,3,・・・,N)が、他の登録点r∈R(j≠i,j=1,2,3,・・・,N)の最も近い認証点となっているかを判断する。このようなパラメータjが存在しないパラメータiを特定し、パラメータiに対応するr及びnを、互いに対応する特徴点であると判断して、集合R及び集合Nの中から削除する。また、特定されたr及びnを、結果保存用のマトリックスCに移動する。
【0119】
(手順3a)(手順2)において、パラメータjが一つ以上存在するようなパラメータiが存在しなければ、(手順4)を実施する。
【0120】
(手順3b−1)(手順2)において、パラメータjが一つ以上存在するようなパラメータiが存在する場合、該当するパラメータjの集合について、dk,min(k=i|k∈j)の最小値の個数に着目する。最小値の個数が1である場合、該当するパラメータkから、r及びnを特定し、これらを互いに対応する特徴点であると判断して、集合R及び集合Nの中から削除する。また、特定されたr及びnを、結果保存用のマトリックスCに移動する。その後、(手順1)を実施する。
【0121】
(手順3b−2)(手順3b−1)において、dk,min(k=i|k∈j)の最小値が複数存在する場合、該当するパラメータkの集合について、長さ座標Lrkの最大値に着目する。長さ座標Lrkの最大値が1つである場合、パラメータkに対応するr及びnを、互いに対応する特徴点であると判断して、集合R及び集合Nの中から削除する。また、特定されたr及びnを、結果保存用のマトリックスCに移動する。その後、(手順1)を実施する。
【0122】
(手順3b−3)(手順3b−1)においてdk,min(k=i|k∈j)の最小値が複数存在し、かつ、(手順3b−2)において長さ座標Lrkの最大値が複数存在する場合には、それぞれのkに対応する角度θrkも互いに同一となっているはずである。かかる場合には、認証点nに対応する登録点として、どの登録点rを選択してもよい。したがって、かかる場合には、最初に比較したものを選択するなど、任意の決定方法を予め設定しておけばよい。このとき、選択したパラメータkに対するr及びnを、互いに対応する特徴点であると判断して、集合R及び集合Nの中から削除する。また、特定されたr及びnを、結果保存用のマトリックスCに移動する。その後、(手順1)を実施する。
【0123】
(手順4)処理を終了する。
【0124】
このような手順で処理を行うことにより、認証部113は、登録点と認証点との対応付けを簡便に行うことが可能となる。
【0125】
なお、対応する特徴点の特定に要する計算時間を考慮しなくとも良い場合には、より高度なアルゴリズムを利用して、より正確に対応する特徴点を決定してもよい。
【0126】
<生体認証方法について>
続いて、図13〜図15を参照しながら、本実施形態に係る生体認証方法について、その流れを説明する。図13は、本実施形態に係る生体認証方法の流れを示した流れ図である。図14は、本実施形態に係る特徴量の算出方法の流れを示した流れ図である。図15は、本実施形態に係る特徴量の比較方法の流れを示した流れ図である。
【0127】
[全体的な流れについて]
はじめに、図13を参照しながら、本実施形態に係る生体認証方法の全体的な流れを説明する。なお、以下の説明に先立ち、生体部位(例えば、指の一部)が撮像され、生体撮像画像が生成されているものとする。
【0128】
まず、生体認証装置10の静脈画像抽出部105は、生体撮像画像を利用して、静脈画像の抽出を行い(ステップS101)、抽出された静脈画像を、特徴量算出部107に出力する。
【0129】
特徴量算出部107は、上述の方法を利用して、静脈画像に基づいて、当該静脈画像に対応する特徴量を算出する(ステップS103)。特徴量の算出が終了すると、特徴量算出部107は、算出した特徴量に関する情報を、生体認証部109に出力する。
【0130】
生体認証部109は、実施すべき処理が、算出された特徴量情報の登録処理であるのか否かを判断する(ステップS105)。実施すべき処理が特徴量情報の登録処理である場合、生体認証部109の登録部111は、算出された特徴量情報を、所定のフォーマットで記憶部115等に登録する(ステップS107)。
【0131】
他方、実施すべき処理が特徴量情報の登録処理ではない場合、生体認証部109は、実施すべき処理が、算出された特徴量情報の認証処理であると判断する。そこで、生体認証部109の認証部113は、算出された特徴量を、認証すべき情報である認証情報として利用し(ステップS109)、認証情報の認証処理を開始する。
【0132】
まず、認証部113は、記憶部115等から、予め登録されている特徴量情報である登録特徴量情報を取得する(ステップS111)。続いて、認証部113は、登録特徴量情報と認証情報との比較を実施して(ステップS113)、登録特徴量情報に対応する登録点と、認証情報に対応する認証点との対応付けを行なう。登録点と認証点との対応付けが終了すると、認証部113は、登録特徴量情報と認証情報との類似度を算出して(ステップS115)、認証に成功したか否かを判断する。
【0133】
[特徴量算出処理の流れ]
ここで、図14を参照しながら、ステップS103で実施される特徴量の算出処理の流れを簡単に説明する。
【0134】
まず、特徴量算出部107の静脈線分割部121は、入力された静脈画像中に存在する静脈線を複数の部分静脈線に分割し(ステップS121)、生成された複数の部分静脈線に関する情報を、静脈画素カウント部123及び角度算出部125に出力する。
【0135】
続いて、静脈画素カウント部123は、各部分静脈線について、部分静脈線に対応する画素の画素数をカウントし、角度算出部125は、各部分静脈線について、当該部分静脈線の近似直線を利用して、部分静脈線の角度を算出する。これにより、各部分静脈線の長さ及び角度が算出されることとなる(ステップS123)。静脈画素カウント部123は、静脈画素のカウント結果を、特徴量補正部127に出力し、角度算出部125は、角度の算出結果を、特徴量補正部127に出力する。
【0136】
特徴量補正部127は、静脈画像の画像サイズに起因する問題及び/又は静脈画像の回転に起因する問題を取り除くために、入力された部分静脈線の長さ及び角度の補正を行う(ステップS125)。補正処理が終了すると、特徴量補正部127は、補正後の部分静脈線の長さ及び角度に関する情報を、生体認証部109に出力する。
【0137】
[特徴量の比較処理の流れ]
続いて、図15を参照しながら、ステップS113で実施される特徴量の比較処理の流れを簡単に説明する。なお、以下の説明に先立ち、認証部113は、各登録点について、全ての認証点との間の距離を算出しているものとする。
【0138】
認証部113は、まず、着目している登録点rに対して最も近い位置にある認証点nを特定する(ステップS131)。ここで、認証部113は、ある登録点に対応する認証点の候補が2つ以上存在する登録点rが存在しているか否かを判断する(ステップS133)。
【0139】
認証点の候補が2つ以上存在する登録点rが存在しない場合には、認証部113は、後述するステップS145を実施する。
【0140】
また、認証点の候補が2つ以上存在する登録点rが存在する場合、認証部113は、着目している登録点rとの距離が最小となる認証点nを特定する(ステップS135)。その後、認証部113は、特定した認証点nの個数が1つのみか否かを判断する(ステップS137)。
【0141】
特定した認証点nの個数が1つのみである場合には、認証部113は、後述するステップS145を実施する。
【0142】
また、特定した認証点nの個数が1つのみではない場合には、認証部113は、長さの座標値が最大の認証点nを特定する(ステップS139)。その後、認証部113は、特定した認証点nの個数が1つのみか否かを判断する(ステップS141)。
【0143】
特定した認証点nの個数が1つのみである場合には、認証部113は、後述するステップS145を実施する。
【0144】
また、特定した認証点nの個数が1つのみではない場合には、認証部113は、特定した複数の認証点nのうち、何れか一つを選択する(ステップS143)。
【0145】
続いて、認証部113は、着目している登録点rの対応付けを確定する(ステップS145)。着目している登録点rの対応付けが確定すると、認証部113は、全ての登録点の対応付けが終了したかを判断する(ステップS147)。全ての登録点の対応付けが終了していない場合には、認証部113は、ステップS133に戻って処理を継続する。また、全ての登録点の対応付けが終了した場合には、認証部113は、特徴量の比較処理を終了する。
【0146】
かかる処理を実施することで、本実施形態に係る生体認証方法では、1対N認証において認証候補として用いられる登録データの個数を演算負荷の比較的少ない方法を用いて容易に絞りこむことが可能となる。
【0147】
(ハードウェア構成について)
次に、図16を参照しながら、本発明の実施形態に係る生体認証装置10のハードウェア構成について、詳細に説明する。図16は、本発明の実施形態に係る生体認証装置10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0148】
生体認証装置10は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、生体認証装置10は、更に、ホストバス907、ブリッジ909、外部バス911、インターフェース913、センサ914、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923及び通信装置925を備える。
【0149】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919、又はリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、生体認証装置10内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。
【0150】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0151】
センサ914は、例えば、ユーザに固有の生体情報、又は、かかる生体情報を取得するために用いられる各種情報を検出する検出手段である。このセンサ914として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の各種の撮像素子を挙げることができる。また、センサ914は、生体部位を撮像するために用いられるレンズ等の光学系や光源等を更に有していてもよい。また、センサ914は、音声等を取得するためのマイクロフォン等であってもよい。なお、センサ914は、上述のもの以外にも、温度計、照度計、湿度計、速度計、加速度計などの様々な測定機器を備えていてもよい。
【0152】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、生体認証装置10の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。生体認証装置10のユーザは、この入力装置915を操作することにより、生体認証装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0153】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置917は、例えば、生体認証装置10が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、生体認証装置10が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0154】
ストレージ装置919は、生体認証装置10の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種データなどを格納する。
【0155】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、生体認証装置10に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0156】
接続ポート923は、機器を生体認証装置10に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS−232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、生体認証装置10は、外部接続機器929から直接各種データを取得したり、外部接続機器929に各種データを提供したりする。
【0157】
通信装置925は、例えば、通信網931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
【0158】
以上、本発明の実施形態に係る生体認証装置10の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0159】
(まとめ)
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、静脈画像中に存在する静脈線を複数の直線及び/又は曲線(すなわち、部分静脈線)に分割し、それぞれの部分静脈線の長さ及び角度を算出する。その後、算出された部分静脈線の長さ及び角度は、静脈画像に固有の特徴量情報として、静脈認証処理におけるメタデータ認証処理に利用される。かかる特徴量情報には、部分静脈線の長さ及び角度という2つのパラメータの組み合わせが複数記載されることとなるが、かかるパラメータの組み合わせは、長さと角度とを座標軸とする座標系において、一つの点に対応する。したがって、本発明の実施形態では、登録されている特徴量情報に対応する登録点の分布と、認証すべき特徴量情報に対応する認証点の分布とを比較することで、容易に特徴量情報を認証することが可能となる。このような点の分布の比較は、比較的演算負荷の比較的少ない方法を用いて実現することが可能であるため、1対N認証において認証候補として用いられる登録データの個数を容易に絞りこむことが可能となる。
【0160】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0161】
例えば、上記実施形態では、部分静脈線の長さLと組み合わせるもう一方のパラメータを、部分静脈線の角度θとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、部分静脈線の角度θに換えて、部分静脈線中に存在する屈曲点の個数を利用してもよい。また、特徴量は2つの成分にのみ限定されるわけではなく、部分静脈線の長さ、角度及び屈曲点の個数のように、3つ以上の成分の組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0162】
10 生体認証装置
101 生体撮像部
103 撮像制御部
105 静脈画像抽出部
107 特徴量算出部
109 生体認証部
111 登録部
113 認証部
115 記憶部
121 静脈線分割部
123 静脈画素カウント部
125 角度算出部
127 特徴量補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出部と、
前記静脈画像抽出部により抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部が算出した前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証する生体認証部と、
を備える、生体認証装置。
【請求項2】
前記特徴量算出部は、前記部分静脈線に対応する画素の数を前記部分静脈線の長さとし、前記部分静脈線の近似直線が前記静脈画像のフレームとなす角度を前記部分静脈線の角度とする、請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記特徴量算出部は、
前記部分静脈線の長さの正規化処理及び前記静脈画像の回転処理の少なくともいずれか一方を行って前記特徴量を補正する特徴量補正部を更に備え、
前記特徴量補正部は、
前記部分静脈線の長さの総和を算出し、当該部分静脈線の長さの総和を利用して、前記部分静脈線の長さを正規化し、
前記静脈画像に対して主成分分析を行い、当該主成分分析によって算出される第1主成分が前記フレームとなす角度を利用して、前記部分静脈線の角度を補正する、請求項2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記生体認証部は、
前記部分静脈線の長さ及び前記部分静脈線の角度からなる座標系において、前記登録特徴量に対応する特徴点と、前記特徴量算出部により算出された特徴量に対応する特徴点とについて、互いに対応する特徴点を特定し、当該対応する特徴点間の距離に基づいて、前記特徴量の認証を行う、請求項3に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記生体認証部は、
ある特徴点について、対応すると考えられる特徴点候補が複数存在した場合、当該特徴点と前記特徴点候補とのユークリッド距離が最小のものを、前記特徴点に対応する特徴点とする、請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記生体認証部は、
ある特徴点について、対応すると考えられる特徴点候補が複数存在し、当該特徴点と前記特徴点候補とのユークリッド距離が互いに同一である場合には、前記特徴点候補の長さが最大であるものを、前記特徴点に対応する特徴点とする、請求項5に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記登録特徴量には、前記部分静脈線の長さが長いものから順に、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度が格納されている、請求項3に記載の生体認証装置。
【請求項8】
生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出するステップと、
抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出するステップと、
算出した前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証するステップと、
を含む、生体認証方法。
【請求項9】
コンピュータに、
生体部位に対して所定波長の光を照射することで撮像された生体部位の静脈を含む画像から、静脈の位置を示す静脈画像を抽出する静脈画像抽出機能と、
前記静脈画像抽出機能により抽出された前記静脈画像中に存在する静脈に対応する線を複数の部分静脈線へと分割し、前記部分静脈線それぞれの長さ及び角度を前記静脈画像の特徴量として算出する特徴量算出機能と、
前記特徴量算出機能により算出された前記特徴量を、予め登録された特徴量である登録特徴量に基づいて認証する生体認証機能と、
を実現させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−203822(P2011−203822A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68268(P2010−68268)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】