説明

生体適合性管腔内プロテーゼを提供する二酸化炭素アシスト法。

生体適合性管腔内プロテーゼの製造方法が提供され、かつこの方法は、有毒物質が高密度化二酸化炭素組成物に吸収されるように、調整された条件下で、管腔内プロテーゼの重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療機器、詳細には、生体適合性の医療機器を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般的に、閉塞又は部分的に閉塞された動脈及び他の血管の治療において、経皮経管バルーン動脈形成術の補助として使用される。バルーン動脈形成術の1例として、ガイディングカテーテル又はシースは、経皮で、大腿動脈を通って、患者の心臓血管系へと導入され、ガイディングカテーテルの遠位末端が、疾患部近辺に位置するまで血管系内を前進させられる。遠位末端にバルーンを有する拡張カテーテル及びガイドワイヤは、拡張カテーテル内へガイドワイヤをスライドさせて、ガイディングカテーテルを通して導入される。ガイドワイヤが最初にガイディングカテーテルから患者の血管系へと進入し、動脈病変部と交わるように案内される。その後、拡張カテーテルが、拡張バルーンが動脈病変部と交差して適切に位置決めされるまで、予め進んだガイドワイヤ上を進む。一旦、病変部向かいに位置すると、相対的に高い圧で、放射線不透過性液で拡張式バルーンを所定サイズに膨らませ、動脈壁の内側に対して病変のアテローム硬化プラークを放射状に圧迫し、それにより動脈の管腔を拡大させる。次いで、バルーンを萎ませて小さい形状にしたので、拡張カテーテルを患者の血管系から引き抜き、血流を拡張された動脈を通って再開させることができた。
【0003】
バルーン血管形成は、時には短期又は長期に失敗に終わることもある(再狭窄)。即ち、血管は、術後すぐに、突然閉鎖してしまうか、又はその後の数ヶ月にわたり徐々に再狭窄を起こすこともある。血管形成術の後の再狭窄に対抗するため、通常ステントとよばれる埋込み型管腔内プロテーゼを使用して、長期の血管開通性を実現する。ステントは、構造的に血管壁を支持し、それにより管腔開通性を保持する足場として機能し、かつデリバリーカテーテルによって病変部位に輸送される。
【0004】
ステントのタイプには、バルーン拡張式ステント、バネ様自己拡張式ステント及び熱拡張式ステントを含むことができる。バルーン拡張式ステントは、拡張カテーテルにより配達され、拡張可能部材、例えば拡張式バルーン、により小さい初期直径からより大きく拡張された直径へと、可塑的に変形される。自己拡張式ステントは、デリバリーカテーテルの周りで半径方向に圧縮可能なバネ部材として形成される。圧縮自己拡張式ステントは、通常、デリバリーシースにより圧縮された状態で保持される。病変部位への配達の際に、デリバリーシースは引っ込められ、ステントを膨張させることができる。熱拡張式ステントは、熱が適用されると、小さい初期直径からより大きい第二の直径へと膨張する能力のある形状記憶合金から形成される。
【0005】
重合物質は、管腔内プロテーゼ、例えばステント、及び被検者の体内で使用される他のタイプの医療機器に、ますます使用されている。被検者の体内への埋込みのために、医療機器産業で従来利用される重合物質は、ポリウレタン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリビニル樹脂、シリコーン樹脂(例えば、シリコーンゴム及びポリシロキサン)、ポリカーボネート、ポリフルオロカーボン樹脂、合成樹脂及びポリスチレンを含むが、これらに限定はされない。
【0006】
多くの慣用の重合物質は、多数の汚染物(例えば残留モノマー、オリゴマー、溶剤残分、触媒、開始剤等々)はもとより一連の添加剤(例えば、可塑剤、抗酸化剤、UV安定剤等々)も含有する。例えば、流延溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、クロル有機物(chloroorganics)、芳香族化合物、テトラヒドロフラン(THF)等々は、ステント製造に通常使用される。更に、種々の有毒有機溶剤及び可塑剤は、埋め込み型デバイス、例えば管腔内プロテーゼ、の重合物質に薬剤を含浸させるために、通常使用される。これらの物質は、これらのデバイスの製造の間に、重合物質中に微量残存することもあり、また埋込み型デバイスが侵食される場合には特に、これらのデバイス又はそこから溶離した薬剤を受け入れる患者は、これらの潜在的有毒物質に曝されることもある。
【0007】
溶剤及び潜在的有毒物質を除去し、かつ重合物質の生体適合性を強化するために、医療機器、例えば管腔内プロテーゼ、に利用される重合物質を精製することが望ましい。不運なことに、慣用の精製法は、重合物質に熱を適用することを含むことがある。加熱は、重合物質の物理特性を変性させるので、物質の生体適合性にマイナスに影響する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、その開示が本明細書中に、完全に記載されているかの如く、全体として、参考に組み入れられている、2002年11月14日提出の米国仮出願No.60/426126の利益を請求する。
【0009】
本発明の実施態様による生体適合性管腔内プロテーゼの製法は、高密度化二酸化炭素を利用して、有毒物質を除去する。本発明の実施態様により、管腔内プロテーゼの重合物質を、高密度化二酸化炭素組成物に浸漬し、重合物質からの有毒物質(例えば、有機溶剤(極性又は非極性)、未重合モノマー、重合触媒及び重合開始剤等々)を、これに吸収させる。用語「有毒物質」は、被検者に有害であり得る、全てのタイプの異物、汚染物質、化学物質、物理的不純物等を含むが、これらに限定はされない。次いで、有毒物質を含有する高密度化二酸化炭素組成物を、重合物質から(完全に又は部分的に)除去し、二酸化炭素の密度を減少させて、有毒物質を二酸化炭素組成物から容易に分離する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この後、本発明の実施態様が示される添付図を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は多数の異なる形で実施でき、明細書中に記載の態様に限定されると解釈すべきではない。むしろこれらの態様は、この開示を徹底させ完全にするために提供され、本発明の範囲を当業者に完全に示唆するものである。
【0011】
明細書中で使用されるように、用語「生体適合性」は、生命のある構成要素、例えば細胞又は組織、との接触時に毒性を生じない物質を示すことを意図とする。
【0012】
用語「投与計画」は、明細書中で、体外投与薬剤及び体内投与薬剤の両方を記述するために使用される。投与計画は、薬剤の量及び各服用量が摂取されるべき時間の両方を含む。投与計画は、薬剤を食物と一緒に摂取すべきかどうか、かつ他の薬剤を忌避すべきかどうかを示すこともできる。
【0013】
用語「溶離」は、本明細書中で、重合物質から薬剤が放出されることを意味するために使用される。溶離は、拡散機構を介する基体からの物質の放出、又は物質/基体の分解又は侵食の結果としての重合物質/基体からの放出にもあてはまる。
【0014】
明細書中で使用されるように、用語「侵食性(erodible)」は、所望の期間、その構造的完全性を保持し、その後、実質的に引張強度及び質量を失わせる多数のプロセスのうちの何れかを徐々に受ける物質の能力のことである。そのようなプロセス例は、酵素及び非酵素加水分解、酸化、酵素アシスト酸化等を含み、従って、生体吸収、分解及び生理学的環境との相互作用時の、患者の組織が吸収、代謝、呼吸及び/又は排泄できる成分への自動的減成を含む。用語「侵食性」及び「分解可能な」は、明細書中で同義的に使用することが意図されている。
【0015】
用語「疎水性」は、水に可溶でないことを意味するために、明細書中で使用される。
【0016】
用語「親水性」は、水に可溶であることを意味するために、明細書中で使用される。
【0017】
用語「管腔」は、身体通路の内部オープンスペース又は空洞の何れかを意味するために、明細書中で使用される。
【0018】
用語「ポリマー」及び「重合物質」は、同意語であり、限定はされないが、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等を含むと広く解釈することができる。
【0019】
用語「プロテーゼ」は、限定されないが、ステント、薬物送達デバイス等々を含む、何かの治療理由又は目的のために被検者の体内に移植される任意のタイプの管腔内プロテーゼ又は他のデバイスを示すために、本明細書中に広い意味で使用される。
【0020】
本明細書中で、用語「被検者」は、医療、家畜病治療、検査及び/又はスクリーニング目的のための人間及び動物(例えば、哺乳類被検者)の両方を記述するのに使用される。
【0021】
用語「有毒物質」は、被検者に有害であり得る、全てのタイプの異物、汚染物質、化学物質、物理的不純物等を含むことを意図とするが、これらに限定はされない。
【0022】
本明細書中で使用されるように、「XとYとの間」及び「約XとYとの間」のようなフレーズは、X及びYを含むと解釈すべきである。
【0023】
本明細書中で使用されるように、「約XとYとの間」のようなフレーズは、「約Xと約Yとの間」を意味する。
【0024】
本明細書中で使用されるように、「約XからYまで」のようなフレーズは、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0025】
ところで、本発明の実施態様による、生体適合性管腔内プロテーゼ(例えばステント等)の製造方法が、図1を参照して説明される。本発明の実施態様は、管腔内プロテーゼ製造に付随の、限定されないが、押出し、引抜成形、射出成形、圧縮成形等々を含む多数の製造工程と一緒に使用することができる。更に、本発明の実施態様は、バッチ、半連続又は連続工程で利用することができる。
【0026】
重合物質を含む(例えば、重合物質から製造されるか又は重合物質の部分又は完全コーティングを有する)管腔内プロテーゼ(例えば、ステント、薬物送達デバイス等々)を、用意する(ブロック100)。重合物質は、先の製造ステップの結果として、1種以上の有毒物質を微量含有することがある。例えば、限定はされないが、有機溶剤(極性又は非極性)、例えばDMSO、ジメチルアセトイミド(DMAc)、ジメチルホルアミド(DMF)、クロル−有機物、芳香族化合物(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、THF、TFF、ジグリアックグリコール(diglyac glycol)、エステル等を含む種々の流延溶媒の残量が、存在することもあり、このことは、当業者に理解されるであろう。更に、当業者に理解されるように、未重合モノマー、オリゴマー、重合開始剤、触媒等が存在することもある。オリゴマーは、線状又は環式の望ましくない、低分子量分子である。
【0027】
本発明の実施態様によれば、有毒物質の濃度を、特定の有毒物質に基づく100万分率(ppm)で、所定の受容できる値まで減じることができる。例えば、管腔内プロテーゼの重合物質中に、200、400、600、800又は1000ppmより高いレベルで存在する有毒物質「A」は、「受容できる」値、例えば、20、50、100、200又は400ppm等々まで減じることができる。
【0028】
管腔内プロテーゼ(及び本発明の実施態様により)に使用できる、典型的な重合物質は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリフルオロカーボン樹脂、合成樹脂及びポリスチレンを含むが、これらに限定はされない。更に、管腔内プロテーゼの重合物質は、侵食性であってよい(あるいは管腔内プロテーゼは、侵食性コーティングを有してよい)又は非侵食性であってよい(あるいは管腔内プロテーゼは、非侵食性コーティングを有してよい)。
【0029】
本発明の実施態様による管腔内プロテーゼは、種々の物質から製造することができる。更に、本発明の実施態様による、ポリマーコーティングを有する管腔内プロテーゼは、金属製プロテーゼ又はポリマー製プロテーゼであってよい。
【0030】
管腔内プロテーゼに利用できる(かつ本発明の実施態様による)典型的な侵食性物質は、外科用消化管縫糸、絹、木綿、リポソーム、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスホエステル)、ポリエステル、ポリアミド(例えばD−グルコースから誘導されるポリアミド)、ポリホスファゼン、ポリ(p−ジオキサン)、ポリ(アミノ酸)、ポリグラクチン、及びそのコポリマー、侵食性ヒドロゲル、天然ポリマー、例えばコラーゲン及びキトサン等々を含むが、これらに限定されることはない。例えば、Healy et al.への米国特許No.5723508を参照のこと。好適な侵食性ポリマーの詳細な例は、脂肪族ポリエステルポリマー、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D−乳酸/グリコール酸)(Poly(D-lactic-co-glycolic acid))、ポリ(L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)(ポリ(ヒドロキシブチレートバレレート)を含む)、ポリ(ヒドロバレレート)、ポリジオキサノン、ポリ(プロピレンフマレート)等々を含み、これらのコポリマー、例えばポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロックコポリマー及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンテトラフタレート)、ポリ(乳酸/リジン)、ポリ(ε−カプロラクトンコポリマー)、ポリ(L−乳酸コポリマー)等々を含むが、これらに限定されることはない。例えば、J.Oh et al.へのPCT出願WO99/59548、2ページを参照のこと。侵食性ポリマーの追加例は、Cook et al.への米国特許No.5916585、9段53行から10段22行までに記載される。ポリマーの分子量(即ち平均分子量)は、1000、10000、100000、又は500000から2000000又は4000000ダルトンまで又はそれ以上であってよい。管腔内プロテーゼに利用できる(かつ本発明の実施態様による)典型的な非侵食性物質は、フルオロポリマー、ポリエステル、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン等々及び/又はセラミックス、例えばヒドロキシアパタイトを含むが、これらに限定はされない。
【0031】
更に、管腔内プロテーゼは、種々の薬剤を含んでよい。一般に、(本発明の実施態様による)プロテーゼ物質及び/又はコーティングに包含されるのに好適な薬剤は、限定されはしないが、薬物及び他の生物学的に活性な物質を含み、かつ多種多様な作用を遂行することが意図され、これらの作用とは、抗癌治療(例えばレサン(Resan))、抗血餅形成又は抗血小板形成、平滑筋細胞増殖の防止、移動防止、血管壁内の増殖の防止を含むが、これらに限定はされない。薬剤は、抗腫瘍薬、抗有糸分裂剤、抗炎症剤、抗血小板薬、抗凝血薬、抗線維素剤、抗トロンビン剤、抗増殖剤、抗生物質、抗酸化剤及び抗アレルギー物質並びにこれらの組み合わせを含んでよい。抗腫瘍剤及び/又は抗有糸分裂剤の例は、パクリタキセル(細胞増殖抑制性及び抗炎症性)及びその類似物及び医薬のタキソール(TAXOL:登録商標名、Bristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.)系の全化合物、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.,フランクフルト、ドイツからのTAXOTERE(登録商標名))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシンヒドロクロリド(例えばPharmacia&Upjohn,Peapack N.J.からのADRIAMYCIN(登録商標名))及びマイトマイシン(例えばBristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのMUTAMYCIN(登録商標名))を含む。抗炎症剤の例は、シロリムス及びその類似体(エベロリムス及びリムス系医薬中の全ての化合物を含むが、これらに限定はされない)、グルココルチコイド、例えばデキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン及びベタメタゾン及び非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリン、インドメタシン及びイブプロフェンを含む。抗血小板薬、抗凝血薬、抗線維素剤及び抗トロンビン剤の例は、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト(vapiprost)、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖蛋白IIB/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組み換えヒルジン、及びトロンビン阻害薬、例えばアンギオマックス(Angiomax(登録商標名):Biogen,Inc.,Cambridge,Mass)を含む。細胞増殖抑止剤又は抗増殖剤又は増殖阻害剤の例は、エベロリムス、アクチノマイシンD並びにその誘導体と類似体(Sigma-Aldrich,Milwaukee,Wis.により製造又はCOSMEGEN(登録商標名):Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.から市販)、アンジオペプチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、例えばカプトプリル(例えば、Bristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのCAPOTEN(登録商標名)及びCAPOZIDE(登録商標名))、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、Prinivilo及びMerck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.からのPRINZIDE(登録商標名))、カルシウムチャンネル遮断剤(例えばニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール降下剤、Merck & Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.からの商標名MEVACOR)、モノクロナール抗体(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的な抗体)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、及び酸化窒素を含む。抗アレルギー剤の例は、ペルミロラストカリウムである。使用できる他の治療物質又は薬剤は、αインターフェロン、遺伝子改変された上皮細胞及びデキサメタゾンを含む。
【0032】
Shockey et al.への米国特許No.4994033、Sahatian et al.への同5674192及びWolff et al.への同5545208は、所望の投与量の薬物を含有する吸収されやすい/生分解性のポリマー又はヒドロゲルを含むカテーテルを開示している。薬物送達を組み込んだステントは、例えば、それぞれ、全体として、参考に、本明細書中に組み入れられている、Turnlund et al.への米国特許No.5766710、Buscemi et al.への同5769883、Eury et al.への同5605696、Buscemi et al.への同5500013、Buscemi et al.への同5551954及びEuryへの同5443458に見ることができる。
【0033】
図1にもどって参照して、管腔内プロテーゼの重合物質は、微量の有毒物質を高密度化(例えば、液体又は超臨界の)二酸化炭素組成物に吸収させるのに十分な時間及び調整された条件下に、高密度化二酸化炭素組成物に浸漬する(ブロック110)。二酸化炭素は、無毒生、非引火性、化学的不活性、完全に回収可能、豊富かつ安価である。二酸化炭素は、多数の液体特性と気体特性との間にある特性を有する。室温及び、その蒸気圧以上で、二酸化炭素は、有機溶剤に匹敵する密度の液体として存在するが、優れた湿潤性及び非常に低い粘性を有する。その臨界温度及び圧力(31℃及び73.8bar)より上で、二酸化炭素は超臨界状態にあり、気体様粘度及び液体様密度を有する。温度又は圧力における小さな変化は、超臨界二酸化炭素の密度、粘度及び誘電特性において劇的な変化を引き起こし、超臨界二酸化炭素を並外れて整調可能で、用途が広く、かつ選択的な溶剤にする。
【0034】
本発明の実施態様によれば、高密度化二酸化炭素組成物は、組成物中で不均一又は均一であってよく、即ち、1層組成物であるか又は追加の層を1つ以上、例えば、マイクロエマルジョン、エマルジョン、分散液、懸濁液等の形で含んでよい。高密度化二酸化炭素組成物は、二酸化炭素を含む、二酸化炭素からなる又は基本的には二酸化炭素からなってよい。複数の相が高密度化二酸化炭素組成物中に見られる場合は、二酸化炭素は連続相であってよい。
【0035】
1つ以上の他の成分が高密度化二酸化炭素中に含まれてもよく、例えば補助溶媒(即ち、水又は有機補助溶媒、例えばエタノール及びメタノール)、界面活性剤等が含まれてもよい。1つ以上の有機補助溶媒が含まれる場合には、それらは(又は少なくともそれぞれのうちの1つが)極性又は非極性であってよい。1つ以上の界面活性剤が含まれる場合は、それらは、親油性基又は親水性基のどちらかに結合した二酸化炭素親和性基を含んでよく、慣用の界面活性剤は、親水性基と結合した親油性基又は各1つ以上を含む。高密度化二酸化炭素組成物は、二酸化炭素少なくとも30、40、50、60、70、80又は90重量%を含んでよい。高密度化二酸化炭素組成物中に水が存在する場合は、水は、組成物の約0.01、0.1又は0.5から約1、5、10又は20重量%まで、あるいはそれ以上を含んでよい。
【0036】
制御された条件下で、管腔内プロテーゼの重合物質を高密度化二酸化炭素組成物へ浸漬することは、限定はしないが、高密度化二酸化炭素組成物に附随する以下のパラメーター:温度、温度変化率、圧力、圧力変化率、組成物量等、の1つ以上を、所定のパターンで制御することを含む。これらのパラメーター1つ以上における変更は(高密度化二酸化炭素組成物を「チューニング」するとも呼ばれる)、微量の有毒物質を選択的に吸収するようにおこなうことができる。更に、これらのパラメーター1つ以上における変更は有毒物質除去の効率及び有効性の両方を制御することができる。
【0037】
図1に戻って参照し、有毒物質を含有する高密度化二酸化炭素組成物を、重合物質との接触からはずす(ブロック120)。除去は、完全除去又は一部除去を含んでよい。その中に伴出される微量の有毒物質がそこから分離されるように、除去された高密度化二酸化炭素組成物の密度を低下させる(ブロック130)。次いで、分離された有毒物質は、廃棄される(ブロック140)。当業者に理解されるように、除去された高密度化二酸化炭素組成物の密度は、圧力を減じ及び/又は温度を上げることにより低下させることができる。
【0038】
図1に関して前記された本発明の実施態様は、当業者に公知の装置を使用して実施することができる。管腔内プロテーゼの重合物質を高密度化二酸化炭素組成物中へ十分な時間浸漬させる(ブロック110)ことは、閉鎖チャンバ(例えば圧力容器)内で実施することができる。高密度化二酸化炭素組成物の密度の低下(ブロック130)は、閉鎖チャンバ、例えば重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬させるチャンバとは別の閉鎖チャンバ、内で実施することもできる。
【0039】
本発明の実施態様により、有毒物質又は他物質の選択的除去は、多種多様の公知マスキング技術の何れかを介して遂行することができる。例えば、有毒物質が重合物質のマスクされていない部分からのみ除去されるように、管腔内プロテーゼの1つ以上の部分にマスクを施すことができる。マスキング技術は、当業者によく理解されており、ここで更になお記述する必要はない。
【0040】
本発明の実施態様により提供される、管腔内プロテーゼは、血管系以外に、限定はしないが、胆道、食道、腸、気管−気管支道、尿道等々を含む身体部位で使用することができる。
【0041】
前記記述は、本発明を説明し、これを限定すると解釈すべきではない。本発明のいくつかの典型的態様が記載されるが、本発明の新規教示及び利点に実質的に反することなく典型的態様で多くの変更が可能であることは、当業者に容易に認識されるであろう。従って、そのような変更のすべては、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲に含まれることが意図される。本発明は、以下の請求項により定義され、その等価物もその中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施態様により、重合物質に薬剤を含浸させる操作のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性管腔内プロテーゼの製造方法であって、該製造方法は、
その1部が重合物質からできている、管腔内プロテーゼを用意し、但し、重合物質は有毒物質1種以上を含有し、
有毒物質が高密度化二酸化炭素組成物に吸収されるように、重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬し、かつ
有毒物質を含有する高密度化二酸化炭素組成物を重合物質から除去する
ことを含む、方法。
【請求項2】
1種以上の有毒物質は、有機溶剤(極性又は非極性)、未重合モノマー、重合触媒、オリゴマー及び重合開始剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高密度化二酸化炭素組成物は、液体組成物であり、かつ浸漬ステップ及び除去ステップは、閉鎖されたチャンバ内で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
浸漬ステップは、重合物質から選択的に有毒物質が吸収されるために、高密度化二酸化炭素組成物の圧力及び/又は温度を調節することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
その中に伴出された有毒物質をそこから分離させるように、除去された高密度化二酸化炭素組成物の密度を低下させ、かつ
分離させた有毒物質を除去する
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
密度を低下させるステップは、高密度化二酸化炭素組成物の圧力を減じ及び/又は温度を上昇させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
高密度化二酸化炭素組成物中の二酸化炭素は、超臨界状態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素は補助溶媒、界面活性剤及び共活性剤を1種以上含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
管腔内プロテーゼは、ステントである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬する前に、重合物質の1つ以上の部分をマスキングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
重合物質は、侵食性である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
重合物質は、非侵食性である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
重合物質は、管腔内プロテーゼの1つ以上の部分上のコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
侵食性重合物質は、外科用消化管縫糸、絹、木綿、リポソーム、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスホエステル)、ポリエステル、ポリアミド、ポリホスファゼン、ポリ(p−ジオキサン)、ポリ(アミノ酸)、ポリグラクチン、侵食性ヒドロゲル、コラーゲン、キトサン、ポリ(乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D−乳酸/グリコール酸)、ポリ(L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロバレレート)、ポリジオキサノン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンテトラフタレート)、ポリ(乳酸/リジン)、ポリ(L−乳酸)及びポリ(ε−カプロラクトン)コポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
生体適合性管腔内プロテーゼの製造方法であって、該製造方法は、
その1部が重合物質からできている、管腔内プロテーゼを用意し、但し、重合物質は有毒物質1種以上を含有し、
有毒物質が高密度化二酸化炭素組成物に吸収されるように、重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬し、但し、高密度化二酸化炭素組成物の圧力及び/又は温度を調節して、重合物質から選択的に有毒物質を吸収させ、
有毒物質を含有する高密度化二酸化炭素組成物を重合物質から除去し、
その中に伴出された有毒物質をそこから分離させるように、除去された高密度化二酸化炭素組成物の密度を低下させ、かつ
分離させた有毒物質を除去する
ことを含む、方法。
【請求項16】
1種以上の有毒物質は、有機溶剤(極性又は非極性)、未重合モノマー、重合触媒、オリゴマー及び重合開始剤からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高密度化二酸化炭素組成物は、液体組成物であり、かつ浸漬ステップ及び除去ステップは、閉鎖されたチャンバ内で実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
密度を低下させるステップは、高密度化二酸化炭素組成物の圧力を減じ及び/又は温度を上昇させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
高密度化二酸化炭素組成物中の二酸化炭素は、超臨界状態で存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
管腔内プロテーゼは、ステントである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
重合物質を高密度化二酸化炭素組成物に浸漬する前に、重合物質の1つ以上の部分をマスキングすることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
重合物質は、侵食性である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
重合物質は、非侵食性である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
二酸化炭素は補助溶媒、界面活性剤及び共活性剤を1種以上含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
重合物質は、管腔内プロテーゼの1つ以上の部分上のコーティングである、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
侵食性重合物質は、外科用消化管縫糸、絹、木綿、リポソーム、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスホエステル)、ポリエステル、ポリアミド、ポリホスファゼン、ポリ(p−ジオキサン)、ポリ(アミノ酸)、ポリグラクチン、侵食性ヒドロゲル、コラーゲン、キトサン、ポリ(乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D−乳酸/グリコール酸)、ポリ(L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸/グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロバレレート)、ポリジオキサノン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンテトラフタレート)、ポリ(乳酸/リジン)、ポリ(L−乳酸)及びポリ(ε−カプロラクトン)コポリマーからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−506214(P2006−506214A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510351(P2005−510351)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033644
【国際公開番号】WO2004/047873
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505175744)サインコア,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (15)
【Fターム(参考)】