説明

生体関連物質検出装置

【課題】微細加工性や製造コストの低廉さに優れ、DNAなどのバイオ物質の付着性がよく、作業が繁雑となり高価かつ環境汚染等の懸念がある標識部室が不要で、高速簡便なDNAのハイブリダイゼーション検出できる装置を提供する。
【解決手段】 印刷によって絶縁体上に形成された、少なくともいずれか一方が炭素を主成分とする少なくとも1対の電極と、前記電極間に溶液を接触保持させる機構と、(A)前記電極間に電圧を印加する電圧印加手段および前記電極の電流を検出する電流検出手段、または、(B)前記電極間の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記少なくとも1対の電極の少なくとも一方に、一本鎖標識核酸を固定化してなり、印加電圧または電流が交流を含む信号である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質、おもにDNA、ハイブリダイズしたDNA等の電気的検出・識別に特に好適に用いられる生体関連物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体関連物質たとえば遺伝子(DNA)の検出には、検出すべきDNAと相補的な塩基配列を有するDNA(一本鎖核酸プローブ)を所定の位置に固定化させたDNAチップを用いる方法が一般的である。この方法では、検体となる複数のDNA(検体DNA)に蛍光物質や放射性物質等の識別子(マーカー)を付着標識化させた後、前記のDNAチップを検体DNAが含まれる溶液中で処理する。検体DNAの遺伝子配列がDNAチップ上の固定化された核酸プローブの配列と一致したとき、検体DNAとチップ上の一本鎖DNAとが結合して二本鎖DNAとなる現象、すなわちハイブリダイゼーションが起こり、二本鎖が形成される。二本鎖となって結合した検体DNA、標識化された前記蛍光物質や放射性物質を検出することによって、検体DNAがどの位置の電極にあらかじめ固定化されたどのDNAと同一構造であるかを知ることができる。
【0003】
前記従来方式の蛍光体や放射性物質を用いたDNA検出方法では、ひとつのチップ上で検出精度向上や検出するDNAの種類を増すため、微細なピッチで既知のDNAを基板上に配置・固定化するDNAチップ(非特許文献2参照)製造装置、紫外線等の励起光源を照射し3色の蛍光を検出するスキャナと呼ばれる微細検出装置(非特許文献3参照)、さらには多数のDNAのハイブリダイゼーションの検出を解析する演算装置を含むシステムやソフトウェアが必要である。そのため、DNAチップそのものが高価になるとともに、製造装置や検出装置の大型化、微細精密化、高コスト化が避けられない。また、蛍光物質や放射性物質などの検出のための処理時間、DNA解析のための演算時間等処理から検出までのタクトタイムが長く、簡便な検出手法とはいえなかった。
【0004】
また、DNAのハイブリダイゼーション等を電気化学的に検出する方法も知られている(特許文献1〜2参照)。これらの方法では、多種のDNAを固定化したものを準備するのではなく、特定の検出したい塩基配列のDNA一本鎖核酸プローブを電極にあらかじめ固定化させ、検体とハイブリダイゼーションさせ二本鎖となったDNAに特異的に結合する金属錯体等を標識する。この標識インターカレータが可逆的電気化学反応すなわち酸化還元反応を起こすことで繰り返し簡便高速高精度に、二本鎖DNAを、電気化学的I−V特性の変化として捕らえてハイブリダイズ検出を行い特定のDNAの存在を検知することが示されている。
【0005】
ところが、この方法にあっては、DNAを固定化する電極の材質が金である必要性がありコストの問題があるほか、重金属錯体によるインターカレータの中心となる金属は、たとえば、亜鉛、ルテニウム、コバルトのような重金属であり発ガン性が報告されている。
【0006】
そのうえ、検出後の廃棄処理において対環境汚染の問題があった。さらにインターカレータを二本鎖DNAに結合させる必要があるなど、測定のいっそうの簡易化・医療衛生現場における普及拡大の観点からも課題があった。また電気化学的手法では、電流スケールがnA単位、電圧が1V以下程度となりインターカレータ可逆性があったとしても、低周波・直流回路において検出回路には高い耐雑音性が要求されるなどの課題があった。また、一般的な電気化学的手法は、基準電極、作用電極、補助電極の3電極法が用いられ、基準電極と作用電極の電位を測定することが行われており、電解液中に3つの電極を浸して測定を行うため、容器が大きくなり測定数や測定回数・測定結果の観点では明らかに利便性、優位性に欠けるものであった。また、ポテンショスタットなどの電気化学測定器を用いて測定を行う場合も同様であった。
【0007】
一方、交流インピーダンスによる手法もしられている(特許文献3参照)。この方法は、上記方法と同様に、一本鎖核酸プローブを電極に固定化させ、ハイブリダイズし二本鎖となったときに標識化された分子の電気化学作用による電極間のインピーダンス変化によってハイブリダイズの有無を検知するものし、周波数に対するインピーダンス曲線の変化やインピーダンスの複素平面表示の変化によってこれを判断検知しようとするものである(特許文献1〜3参照)。
【0008】
上記交流インピーダンス方法は、ハイブリダイゼーションの前後で、電気化学的に活性なレポーターでラベル付けされた標的分子との分子相互作用の有無を交流インピーダンスで検出する方法である。この方法は、いわゆるインターカレータとなる物質の有無によるインピーダンス変化を検出する必要があり、前述の特許文献1および非特許文献2とは方式が異なるが、前述と同様な課題があった。
【0009】
一方、電極に固定化された一本鎖拡散プローブとハイブリダイズした二本鎖DNAのインピーダンスの変化を、電気化学的拡散を記述したワールブルグインピーダンスを含むランドルスの等価回路にあてはめて、検出するハイブリダイゼーションの検出方法も知られている(特許文献4参照)。この検出方法は、周波数に対するインピーダンスの変化すなわちボード線図の微細な変化によって検知し、完全一致結合および1塩基違いのミスマッチの差をも検知しようとするもので、標識分子いわゆるインターカレータによる電気化学反応に依存しない交流インピーダンス変化によるDNAハイブリダイゼーションの検出方法である。
【0010】
さらに、特許文献4に記載された交流インピーダンスを利用する手法においては、標識分子いわゆるインターカレータによる増感を行わない利点がある。すなわち、電極、電極に固定化されたDNA、溶液、対向する電極の等価回路構成において、電極に固定化されたDNAあるいは検体DNAとハイブリダイズして二本鎖となったDNA部分を、界面の静電容量とワールブルグインピーダンスの並列回路、溶液部分を溶液抵抗、対向電極部分を界面の静電容量と抵抗の並列回路として、集中定数等価回路として扱い周波数に対して、界面部分の一本鎖DNAと二本鎖DNAのキャパシタンスの差による全体のインピーダンスの変化によって、ハイブリダイゼーションの有無のうち塩基配列の完全一致や1塩基ミスマッチまで識別可能としている。
【0011】
さらに、上記特許文献4の交流インピーダンスを利用する方法では、通常溶液と電極面での電位勾配のある2重層の厚さは数nmとであるとされることから考えると、DNAの固定化の様相とハイブリダイズ後の様相が、このような電気2重層の厚みや拡散インピーダンスが適用される拡散層の厚みと一致させることは困難であると考えられる。ワールブルグインピーダンスと溶液抵抗の直列接続回路とDNAのキャパシタンスとの並列回路に単純化するのは困難である。
【0012】
すなわち、前述のように界面のインピーダンスとDNAのインピーダンスの単純化を行うには、DNAの付着密度を高くすることが必要と考えられるが、製造コストからみて固定化させるDNA密度を高くすることは不利であり、DNAの存在は、溶液の拡散インピーダンス適用部分や電気2重層部分の限られた位置に存在するとは限らない。
また、電極表面上に這うような形態でハイブリダイズ後の二本鎖DNAが散在するとも考えられ、等価回路に合致させるには、高密度の固定化DNAが必要であって廉価普及可能DNAチップや生体関連物質検出装置を提供する目的には合致しないといわざるを得ない。また、交流インピーダンス実測結果でも、従来より一般的に知られているインピーダンス曲線となり、またインターカレータを有する場合と比べても、顕著な曲線の変化が少なく特性曲線は相似的であり実用化においては自動測定における判定方法や測定確度に課題があると推測される。
【0013】
また、電極に固定化されたDNAを含む溶液のインピーダンスを、特許文献4と同様なワールブルグインピーダンスを含む集中定数型等価回路で示す方法も開示されている(特許文献7〜8)。その内容は、単分子層抵抗、定位相要素、ワールブルグインピーダンスと反応抵抗の直列回路、の3つを並列接続した回路と溶液抵抗の直列接続で示している。ここでインピーダンスの複素平面表示いわゆるコールコールプロットで、完全な相補的結合に対してミスマッチの位置によってプロットの半径が変化することが報告されている。これらの手法では、電極素材に金電極が使用されておりDNA検出装置の低コスト化には不適当であった。また、コールコールプロットの曲率判定では、ハイブリダイズによる微小な特性の変化を曲率半径だけで捕らえるには不十分と考えられる。
尚、非特許文献5〜6に参照されるスキャナは、先願特許の特許文献4に従来より用いられるDNAチップ用スキャナとして参考図を記載したものである。
【特許文献1】特許第2573443号公報
【特許文献2】特表2003-516165 核酸反応の電気的検出に関する方法および組成物
【特許文献3】特開2004-177399 ハイブリダイゼーションの検出方法
【特許文献4】特開2005−69728号公報
【非特許文献1】東芝レビュー vol.56No.7p.60−61、DNAチップ
【非特許文献2】アジレントDNAマイクロアレイ インターネットHP<http://www.chem.agilent.com/scripts/generic.asp?lPage=10408&indcol=Y&prodcol=Y>
【非特許文献3】アジレントDNA マイクロアレイスキャナ インターネットHP<http://www.chem.agilent.com/Scripts/PDSLocal.asp?lPage=398&LL=Y&CountryCode=JP>
【非特許文献4】Biophysical Journal vol.84 May,2003 “AC Impedance Spectroscopy of Native DNA and M-DNA”
【非特許文献5】Analytical Chemistry vol.76,No.14 “Electrochemical Detection of Single-Nucleotide Mismatches: Application of M-DNA”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡便・低コストかつ高精度に、DNA等の生体関連物質を検出することのできる生体関連物質検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、DNA等の生体関連物質を固体化させる電極に、DNAに対する付着性に優れ、基材に微細で自在なパターンを廉価で形成することが容易な炭素を主成分とする印刷電極を使用すること、さらには、周波数に対するインピーダンス値を、たとえば等価的にキャパシタンスと見なして実軸や虚軸に分離することなく周波数に対する等価キャパシタンスの演算のみを行い、ピークが表れる周波数およびその変化、ピーク値およびその変化と必要であればコールコールプロットやボード線図をあわせながら前記等価的キャパシタンス特性を主たる判定材料として用いることでDNAの完全な相補的結合によるハイブリダイズおよびミスマッチ結合によるハイブリダイズを選択検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
請求項1に記載の生体関連物質の検出方法および検出装置は、上記の課題を解決するために、印刷によって絶縁体上に形成された、少なくともいずれか一方が炭素を主成分とする少なくとも1対の電極と、前記電極間に溶液を接触保持させる機構と、(A)前記電極間に電圧を印加する電圧印加手段および前記電極の電流を検出する電流検出手段、または、(B)前記電極間の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記少なくとも1対の電極の少なくとも一方に、一本鎖標識核酸を固定化してなり、印加電圧または電流が交流を含む信号であることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、あらゆるパターンの電極を微細に形成でき、交流インピーダンス法によってDNAのハイブリダイズを検出することができる。
【0018】
請求項2に記載の生体関連物質検出装置は、前記少なくとも1対の電極の一方が、炭素含有量が50質量%未満である電極材料からなることを特徴としている。
上記の構成によれば、微細パターンや廉価性、生体関連物質固定の容易さ等が必要でない場合、一方の電極を金属で作成し共通電極としたりフレキシブルな生体関連物質検出装置の設計ができる。
【0019】
請求項3に記載の生体関連物質の検出方法および検出装置は、上記の課題を解決するために、絶縁体上に少なくとも2行2列以上の壺状構造体を配置し、前記壺状構造体の内面に前記少なくとも1対の電極を備えてなることを特徴としている。
上記の構成によれば、同一種類の一本鎖核酸プローブで複数の測定を行い、測定値の偏差を求めることができ、いくつかのミスマッチ結合があったとしても確度の高い測定結果を得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の生体関連物質検出装置は、第一の絶縁体上に、前記壺状構造体を配置し、前記壺状構造体の内面にいずれか一方の電極をそれぞれ備え、前記壺状構造体の上面を密着被覆してなる第二の絶縁体を備え、前記第二絶縁体上に前記いずれか一方の電極に対向する他方の電極を備えてなり、かつ、前記各他方の電極の少なくとも先端部が、前記壺状構造体中に貯留された溶液中に浸漬されてなり、前記第一の絶縁体または前記第二の絶縁体に一体化して電子回路および該電子回路と電極との接続手段を内包してなることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、壺状構造に検体を滴下した後、溢流を防止するための、壺状構造体上面に密着被覆するカバーとして、第二の絶縁体を構成し、かつ測定電子回路の一部を介して電気コネクタに接続するので、検体滴下後、簡易にコネクタに接続しかつ測定電子回路の一部を内包することができる。このため、コネクタを介して全ての測定信号を伝達するのではなく信号処理がされた電気信号を介してコネクタに接続、主たる検出回路へ信号を導くため安定して耐雑音性に優れた特性を得ることができる。また、印刷電極とともに電子回路を一体化することは、印刷技術を用いて可能であり、製造コスト状からも一連の加工製作工程を構築することが容易である。
【0022】
請求項5に記載の生体関連物質検出装置は、上記の課題を解決するために、各他方の電極は、溶液に接触した状態で前記壺状構造体上面を密着被覆してなる平板にて構成されてなることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、片側電極は比較的単純な構成とすることができるため、全面大面積でもかまわず製造コスト削減が可能である。また、一本鎖核酸プローブを固定化させる電極が近傍にないので本来一本鎖核酸プローブを付着させたくない片側電極の不要なコンタミネーションを回避することが容易となる。また、片側電極をアース共通にできるので耐雑音性も向上し、櫛形の電極コネクタは、片側の母材のみでよく取り扱いは容易となる。
【0024】
請求項6に記載の生体関連物質検出装置は、上記の課題を解決するために、壺状構造体とその一部に形成された少なくとも1対の電極とからなる構造を少なくとも2組以上備え、少なくとも2種類以上の一本鎖標識核酸を該電極に固定化し、生体関連物質を前記壺状構造体に貯溜された溶液に含有させてなり、これらの電極に直流電圧または電流あるいは低周波電圧または電流を印加する手段、前記直流信号または低周波信号と交流信号を時間的に個別に印加する手段、および直流信号または低周波信号と交流信号を混合して印加する手段を備え、前記電極と電圧または電流の印加手段とを切り替える機能を備えてなることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、配置された電極に既知のDNAの一本鎖標識核酸(一本鎖プローブ)を固定すれば、検体がどの核酸とハイブリダイズしたかによって、特定のDNAのみならず複数のDNA診断を行うことも可能となる。いわゆるDNAチップと同様な試験を簡易的に行うことができる。
【0026】
請求項7に記載の生体関連物質の検出方法および検出装置は、上記の課題を解決するために、印加電圧または電流と、検出した電流値または電圧値とからインピーダンスの虚軸成分および実軸成分を演算する軸成分演算手段と、周波数を可変する周波数可変手段とを備えたことを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、従来用いられてきたコールコールプロットすなわちナイキストプロットを描くことができ、その軌跡の半径によってハイブリダイズやミスマッチハイブリダイズを検出することに加えて実軸、虚軸成分から容易にインピーダンスを求めることができるので、DNAのハイブリダイズを検出することができる。
【0028】
請求項8に記載の生体関連物質検出装置は、上記の課題を解決するために、直流信号または低周波信号を印加する第一の信号印加手段と、前記直流信号または低周波信号と交流信号とを時間的に個別に印加する第二の信号印加手段と、前記直流信号または低周波信号と交流信号とを混合して印加する混合印加手段と、を備えたことを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、交流インピーダンスの測定前に、直流信号を印加することで非可逆的な酸化還元反応を生じさせ、溶液中の電極界面やDNAに不用意に付着している分子の影響をあらかじめ電気化学的に除去し、交流インピーダンス測定時の初期に不要な電流の移動を回避して精密な測定を行うことができる。
【0030】
請求項9に記載の生体関連物質検出装置は、ランダム信号を発生するランダム信号発生手段と、該ランダム信号によって交流信号を変調する交流信号変調手段と、該ランダム信号によって変調された信号を復調する信号復調手段と、を備えたことを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、検出に必要であるとして印加された信号のみを取り出すことができ、検出に不必要な雑音成分を意図的に除去することができ信号レベルが小さい場合でも精度の高い測定が可能である。
【0032】
請求項10に記載の生体関連物質の検出方法および検出装置は、上記の課題を解決するために、電極から取り出された導電経路が櫛形状に配列され、電気的コネクタに嵌合可能な形態に母材とともに形成されてなることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、複数の壺状構造を持つDNAチップ状の生体関連物質検出装置であっても、簡単に電気コネクタに接続することができ、簡易な検出装置を提供することができる。
【0034】
請求項11記載の生体関連物質検出装置は、上記の課題を解決するために、周波数を可変させ、周波数に対するインピーダンスに角周波数を乗じ、逆数をとった特性のピーク値およびピーク値の位置する周波数を演算する演算手段を備えてなることを特徴としている。
【0035】
生体関連物質の検出方法は、請求項1〜11の構成によってインピーダンスZを求めたとき、これを容量成分に置き換えれば数式1で示されるが、これに基づいて数式2によって等価静電容量Cを求め周波数に対してプロットするものである。
【0036】
【数1】

【0037】
・・・数式1
【0038】
【数2】

【0039】
・・・数式2


【発明の効果】
【0040】
本発明の生体関連物質検出装置は、以上のように、印刷によって絶縁体上に形成された、炭素を主成分とする少なくとも1対の電極(炭素印刷電極)と交流インピーダンス計測とを含む構成である。
【0041】
本発明の構成によれば、DNAを固定化する電極の材質が金などの高価な材料である必要性がなくコストを低減できるほか、重金属錯体によるインターカレータの発ガン性や廃棄処理における環境汚染の問題がないと言う効果がある。また従来の電気化学的手法では、電流スケールがnA単位、電圧が1V以下程度となりインターカレータに可逆性があったとしても、高い耐雑音性が要求されたが、本発明の生体関連物質検出装置は、交流インピーダンス法によることができるので、周波数の排他性を利用して耐雑音性を向上することが容易である。また、前述もしたように一般的な電気化学的手法は、基準電極、作用電極、補助電極の3電極法が用いられてきたが本発明では小型化、測定の簡易性において効果がある。さらには、炭素電極は低廉で各種パターンの印刷が容易なため、DNAセンシング部分を容易にアレイ化して、その測定データを平均化処理して測定確度を向上させたり、固定化するDNAの種類を複数準備して測定データを比較することでデータの有意性を検証したりできるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。
本発明の生体関連物質検出装置は、炭素印刷電極、炭素印刷電極に固定化された生体関連物質、もうひとつの電極、電極間に溶液を保持する機構、電極間に電圧を印加し電流を検出する電流検出手段とを備え、電極間に印可する電圧が交流成分を有し電圧と電流から交流インピーダンスを測定し周波数に対して等価容量を演算してその曲線の形状を判断する構成を有している。
【0043】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の基本的な概略構成を示す説明図である。本実施の形態の生体関連物質検出装置は、絶縁体基板2上に、印刷形成された炭素印刷電極4と、同様に対向する電極5とが形成されている。電極5は、炭素印刷電極であっても、より導電性の高い金属電極であってもかまわない。炭素印刷電極4および電極5は、それぞれ、電極導通パターン10、11に電気的に接続されている。この電極導通パターン10、11が、それぞれ炭素印刷電極4、電極5と同じ連続した材料のパターンとして提供されても良いことは言うまでもない。
炭素印刷電極4と電極5との間に、溶液7を保持するために、溶液保持側壁8、9が設けられ各電極を取り囲み容器状になっている。溶液7を保持する構造は、電極間に電流の媒体として存在し、容易に溢失しなければ、後述する壺状構造であってもかまわない。図2は、図1の下側面の炭素印刷電極4を含む絶縁体基板2部分のみを取り出した説明図である。ここで、炭素印刷電極4には、一本鎖標識核酸(DNA)6が固定化されている。
【0044】
図3は、絶縁体上に少なくとも2行2列以上の壺状構造体を配置し、前記壺状構造体の内面に少なくとも1対の電極を備えた構成を示す説明図である。絶縁体基板2にウェル(測定つぼ)1(壺状構造体)が、マトリクス状に配置された様子を示す。図4は、図3のより詳細な拡大構造説明図であり、ウェル(測定つぼ)1の内面に、炭素印刷電極4および電極5が印刷されている様子と、その電極が電極導通パターン10、11を介してコネクタ接触金属12、13に電気的に接続されている例を示している。ウェル1の形成密度は特に限定されないが、少なくとも2行2列以上で構成されていることがより好ましい。
【0045】
図5は、図4に示す絶縁体基板2の断面構造を示す説明図である。ウェル1の内面側壁に、炭素印刷電極4と電極5とが形成されている概略構成を示している。電極5は、電極導通パターン10を介してコネクタ接触金属12に電気的に接続され、さらに、コネクタのメス型であるコネクタ母材14の内面のコネクタ接触金属13に接触して電気的に接続されている。すなわち、絶縁体基板2は、ウェル1や電極導通パターン10を有する母体でありながら、コネクタのオス型としての機能を兼ねている。絶縁体基板3は、ウェル1の母材である絶縁体基板2に平面的に密着され、溶液が外部に漏れ溢失しない構造となっている。絶縁体基板2が溶液が溢失する区尾製となっている場合は、絶縁体基板3は、不要である。尚、炭素印刷電極4と電極5とは、互いに位置関係が逆転していてもよい。
【0046】
図6は、図4〜図5に示す絶縁体基板2上の全体的な平面構造を示した説明図である。簡単のため嵌合するメス型コネクタは図示していない。コネクタから接続された電線が切替スイッチ15(切り替え手段)を介して検出回路16(電流検出手段)に入力されている様子を示す。切替スイッチ15により、ウェル1と検出回路16との接続を切り替えることができるため、ウェルを複数で構成し、検出回路16は一組とする構成とすることができる。
【0047】
図7は、対向する1対の電極4,5のいずれか一方が、ウェル1内部の炭素印刷電極であり、もう一方がウェル1の上面に密着する絶縁体基板3(第二の絶縁体)に電気的に連続的に接続された電極導通パターン11の一部として攻勢され、その先端部がウェル1中の溶液中に浸漬している場合を示している。この形態の場合、溶液が対向する電極対の両方に接触するように充填されているか、または、溶液注入後傾けたり回転させて電極対が溶液に接触するようにする。
【0048】
図8は、対向する1対の電極が電気的に接続された電極導通パターンの別実施形態を示す断面図である。電極は、絶縁体基板3の外部上面で接続する構造で絶縁体基板3を貫通して、ウェル1の溶液中に漬かる構造体になっている。このような構成とすることにより、電極をウェル内の溶液に浸漬させるために基板全体を傾斜させるなどの動作が不要となる。
【0049】
図9は、電極導通パターンの他の実施形態を示す断面図である。この形態では、電極5は、ウェルの存在部分全面を被覆する連続した一面のパターンとして構成されている。この場合、図7に示す電極導通パターン11のように複雑に形成する必要がないというメリットがある。
【0050】
図10は、本発明の生体関連物質検出装置をより単純化し、実験用として簡易に構成した場合の説明図である。炭素印刷電極4と電極5とをサンドイッチ構造に対向させ、その間に溶液7を保持するようにし、各電極を検出回路17へ接続してある。
【0051】
本発明の生体関連物質検出装置は、一体型の信号処理装置またはコネクタ等により接続される信号処理装置をさらに備える構成であってもよい。前記信号処理装置の出力コネクタは、例えば、各種メモリコネクタに接続可能な形態とし、前記メモリコネクタを介して読み取れる信号形式に変換する変換手段をさらに備えていてもよい。
【0052】
図4〜9、図15に示した生体関連物質検出装置は、コネクタ部分をパーソナルコンピュータやデジタルカメラ、家電機器などでも用いられるフラッシュメモリのコネクタに機械的に接続可能な形態に設計してもよい。また、測定回路装置が組み込まれた中継装置を介して前記フラッシュメモリに電気信号として記録するように中継装置の出力コネクタを構成し、中継装置すなわち測定回路装置を直接パーソナルコンピュータ本体に付属させたり、パーソナルコンピュータに接続されるフラッシュメモリのリーダライタに接続し、生体関連物質検出装置の信号がパーソナルコンピュータに取り込まれるように構成にしてもよい。これによって、既存のCDRやDVDドライブでDNAチップの情報を読み取り、医療機関に送信する代わりに、本発明の交流法によるDNA測定結果を、フラッシュメモリ読み取り部分から読み取り、医療機関に送信したり新たなDNA検出装置を購入したりする医療システムと結合できる。
【0053】
図16は、本発明の生体関連物質検出装置をそのような医療システムに組み込んだ場合の概略構成を示す説明図である。インターネット接続環境にある、家庭や事務所・小規模医療機関の領域23,23’では、検体31を、本発明の生体関連物質検出装置の一部を構成するバイオセンシング電極機構33にアプライする。該電極機構33は、本発明の生体関連物質検出装置の一部を構成する電気回路30と接続されている。該電気回路30を通じて、検体31に関する生体関連情報の検出結果が、パーソナルコンピュータ28上のメモリーリーダライター32により読み取られ、データとして格納できるようになっている。
【0054】
パーソナルコンピュータ28に格納されたデータは、 患者自身が、家庭用プリンタ29により印刷することもできる。該データは、インターネット通信網(携帯電話通信網等)27上にアップロードされる。また、アップロードされた生体関連情報は、医療機関・検査機関26に送られ、各家庭や事務所・小規模医療機関の領域23には、前記インターネット通信網(携帯電話通信網等)27を通じて、前記医療機関・検査機関26から、診断データ、家庭治療指示事項等をダウンロードして購入できるようになっている。パーソナルコンピュータ28に格納されたデータや、前記診断データ等は、 患者自身が、家庭用プリンタ29により印刷することもできる。
【0055】
医療機関・検査機関26は、診断、データ蓄積を行うほか、バイオ関連解析を自身で、または、外部機関に委託する等して行い、解析情報をフィードバックする。医療機関・検査機関26は、患者が必要な情報を購入した対価として診断費用等を患者の口座やクレジットカードで構成される取引窓口24から診断費用等を引き落とすことが可能である。
【0056】
本発明の生体関連物質検出装置は、ランダム信号を発生するランダム信号発生手段と、該ランダム信号によって交流信号を変調する交流信号変調手段と、該ランダム信号によって変調された信号を復調する信号復調手段と、をさらに備えた構成であってもよい。図17は、そのようなランダム信号を発生するランダム信号発生手段により、繰り返し信号波形をランダムに欠損させて同期検波する概略構成を示す説明図である。このような構成を採用することにより、検出に必要な信号のみを取り出すことができ、検出に不必要な雑音成分を意図的に除去することができる。これにより、信号レベルが小さい場合でも、より精度の高い測定が可能となる。図17では、変調された信号を正弦波1波長として記載してあるが実際には、ランダム信号のパルス幅の期間に多数波長の正弦波すなわちランダム信号の周波数より高い周波数の正弦波信号を変調するケースが考えられる。
【0057】
以下に本発明の、生体関連物質の検出装置の他の実施の形態について詳細に説明する。
【0058】
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、炭素電極上へのオリゴDNAの固定化を以下のように行う。まず、炭素電極を0.5 M酢酸緩衝液(pH 5)に浸漬し、銀/塩化銀電極を対極として1.5V、1分間電圧を印加し、炭素電極を活性化する。オリゴDNA(レジオネラDNA、レジオネラ菌の16S rRNAの遺伝子配列より作製) 10ppmを含む0.2 M燐酸緩衝液(pH7)に炭素電極を浸漬し、銀/塩化銀電極を対極として0.5V、3分間電圧を印加し、オリゴDNAを炭素電極上に固定化する。固定化に用いたオリゴDNA(本実施の形態では、レジオネラDNA)の塩基配列は以下の通りである。

オリゴDNA(レジオネラDNA)=TTGGACATCCCTGCCAGT
次に、オリゴDNAプローブとオリゴDNA結合炭素電極とのハイブリダイゼーション処理およびインピーダンス測定を説明する。前記オリゴDNAを図2に示した電極導通パターン10上に固定化された一本鎖標識核酸6とした図10の簡易な生体関連物質検出装置として構成する。前述の通りレジオネラDNAが固定化されている炭素印刷電極4を用い、銀/塩化銀電極を一方の対向電極5とし、両電極を40 ppmオリゴDNAプローブ、すなわち前記レジオネラDNAと相補的な配列を有するDNA、を含む0.02 M燐酸(pH7)-0.3M NaCl緩衝液中に浸漬する。次いで、両電極間に42℃、10分間0.5Vの電圧を印加することにより、ハイブリダイゼーション処理を行う。オリゴDNAプローブの塩基配列(前記レジオネラDNAと相補的な配列である。)は以下の通りである。
オリゴDNAプローブ=AACCTGTAGGGACGGTCA
前記ハイブリダイゼーション処理をした後に、10mM Tris-HCl pH 7.0でハイブリダイゼーション処理後の炭素印刷電極4および電極5を2回洗浄し、周波数を100 HZから15 MHZまで自動掃引しながらインピーダンスを測定した。交流インピーダンス測定装置にはヒューレットパッカード社製の4914Aインピーダンス/ゲインアナライザーを用いた。
【0059】
測定結果を図13に示す。図13中横軸はインピーダンスの実数成分、縦軸はインピーダンスの虚数成分を示す。○はレジオネラDNAを炭素印刷電極4に固定化させた場合(レジオネラ電極のみ)、△は前記レジオネラ電極にポリCプローブをハイブリダイズさせた場合、□は前記レジオネラ電極にレジオネラDNAプローブをハイブリダイズさせた場合を示す。Cole Cole plotのパターンは、いずれも2つの円弧からなり、ハイブリダイズ処理することにより、100〜300Ω平行移動し、右側の円弧の傾きが緩やかになる。このプロット変化が、DNAハイブリダイゼーションを示し、Cole Cole plotのパターン変化によりハイブリダイズの有無を判定することができる。
【0060】
異なる測定結果を図11、12に示す。図中横軸はインピーダンス測定時の周波数、縦軸は周波数に対するインピーダンスに角周波数を乗じ、逆数をとった値すなわちインピーダンスの等価容量を示している。図11は、レジオネラDNA結合炭素電極に異なる配列のオリゴDNA(polyCオリゴDNA、塩基配列はCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC)が結合した場合の結果を、図12は、レジオネラDNA結合炭素電極に相補鎖DNAが結合した場合の結果を示す。図11に示すように相補的でない配列同士のハイブリダイズ処理ではキャパシタンス成分は減少するがピーク周波数の変化は見られない。図12に示すように相補的なオリゴDNA間でのハイブリダイズ処理では、140Hz付近に見られるキャパシタンスのピークが120Hz付近にシフトし、且つ減少した。これらの結果から明らかであるようにハイブリダイズしない場合とハイブリダイズする場合とではインピーダンスに角周波数を乗じ、逆数をとった値(回路のキャパシタンス)のピーク周波数が異なり、ハイブリダイズの有無を判定することができる。
【0061】
図14は、本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置に用いる等価回路図である。図15は、本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置に用いる簡易等価回路図である。等価回路の模式図を示す。ここで、静電容量20a~cは、溶液と電極界面の静電容量とを、静電容量19a~cは、標識DNAの静電容量成分を、静電容量18a~cは、ハイブリダイズしたDNAすなわち検体の静電容量成分をそれぞれ示す。静電容量21は、溶液全体の静電容量を、抵抗器22は、溶液全体の抵抗を示す。静電容量20a~cには、並列に抵抗成分が接続されることが物理的に考えられるが静電容量の増分を問題にするため記載していない、実際の現象においては、このように単純化することが可能かどうか現在の研究レベルでは微視的な挙動、すなわちDNAが末端で電極に結合して溶液中に藻草のように漂っているのか、はたまた長い構造であるDNAが、折れ曲がった複数の箇所で電極などの基材に結合しているのかが明らかにされていない。しかしながら、少なくとも個体として静電容量を有するDNAがハイブリダイズして結合した部分は容量が増加するはずである。ここで記載した集中定数の等価回路はこのような前提に基づいており、かつ基本的な結合部分の一要素を取り出して図示したので、実際にはDNAの数量だけ図示した等価回路がメッシュ状に結合されてなることは容易に想像できる。
【0062】
図18は、本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の概略構成を示す説明図である。発振器40と直流電源37の出力をスイッチ36aおよびスイッチ36bで切り替えて炭素電極によるDNAセンサー部分35に電流を供給するようになっている、一方炭素電極によるDNAセンサー部分35の両端の電圧の検出は、電極の近傍でいわゆる4端子法によって電線その他のインピーダンスを含まないように電圧検出端子34aと34bの間で行う。電流検出は、電流検出器38によって行う。図には記載していないが、スイッチ36aと36bのオンオフや、供給する直流電圧や交流電圧の大きさや周波数は、電気回路30によって総合的に制御される。直流電圧を印可するのは、DNAのインピーダンスによる検出の前に、直流電圧で酸化あるいは還元反応等の不可逆的な電気化学反応を促進させてしまい、電極面の付着物や溶液を清浄化あるいは安定化させる意味をもっている。増幅器またはゲイン調節器39は、DNAを含んだ溶液に微少電流を流したときインピーダンスによる電源電圧の降下がないような十分な供給能力をもったオペアンプ等の増幅器機能と、電圧をDNAを含んだ溶液の種類や状態に応じて適正な大きさに調節するゲイン調節の役割を持っている。
【0063】
図19は、絶縁体基板2上の炭素印刷電極4に固定化された標識DNA43a,43bと等価回路における静電容量変化の対応を示した説明図である。図19(a)において、絶縁体基板2には、炭素印刷電極4に標識DNA43a、43bが固定化されており、等価回路で基板部分に相当する静電容量45に対して、標識DNA43aに相当する静電容量46が並列接続された模式図である。ここで基板部分に相当する静電容量45は、基板と溶液を含むDNAが固定された近傍の静電容量であると考えてよい。図19(b)は、検体DNA42が、標識DNA43bにハイブリダイズする様子を示した模式図である。ここでは、相補的な配列のDNAが結合することになる。
図19(c)は、標識DNA43a、43bのいずれにもハイブリダイズされ、ハイブリダイズ後のDNA44a、44bとなった状態を示す模式図である。同図は、ハイブリダイズによって付加された静電容量47が、標識DNA43aに相当する静電容量46にさらに並列接続された等価回路を示している。ここで等価回路は、一組のDNAのハイブリダイズを模擬したもので実際に全体の等価回路は、電極面でこの等価回路が並列に接続されさらに対向する電極へ向かう溶液抵抗や溶液静電容量が直列接続される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の生体関連物質の検出装置の用途としては、例えば、レジオネラ菌やサルモネラ菌など、重要な感染性細菌ではなくかつ存在そのものが重度の生命存亡の危機に関わらない細菌の検出、すなわち検出精度が高度に要求されないが存在の有無が検査等により必要とされる用途に用いられる。すなわち、本発明の生体関連物質検出装置はインターカレータ等の標識物質を利用しない電気的方式であるので簡便で利用価値が高い。具体的には、公衆浴場や温泉地において毎日容易にレジオネラ菌の存在確認検出を実施することができるようになる。さらに、精度を求めるためには、既存のバイオチップのようにマトリクス状に電極対を配置してその結果を平均化しても良いし、それぞれの測定つぼの電極に多少異なったDNAを固定化させて、検出値の差異によってキャリブレーションを行うことも容易にできるので、前記の公衆浴場や温泉地など以外の医療用途にも十分利用可能性は高いものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の基本的な概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の構造図1の一部の立体図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置平面図の拡大詳細図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置平面図全体の拡大図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置平面図の拡大詳細図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の断面図である。
【図10】インピーダンス測定セル(炭素電極と銅電極の複合セル)の模式図である。
【図11】レジオネラ電極を固定化した電極にレジオネラDNAプローブをハイブリダイズした場合の状態変化を示すグラフである。
【図12】レジオネラDNAを固定化した炭素印刷電極に対しハイブリダイゼーションが行われていない状態(電極ミスマッチ)を示すグラフである。
【図13】コールコールプロットによる測定結果を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置に用いる等価回路図である。
【図15】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置に用いる簡易等価回路図である。
【図16】本発明の生体関連物質検出装置を用いたビジネスモデルの概念例を示す説明図である。
【図17】繰り返し信号波形をランダムに欠損させて同期検波する概略構成を示す説明図である。
【図18】本発明の一実施の形態に係る生体関連物質検出装置の概略構成を示す説明図である。
【図19】DNAのハイブリダイゼーションと静電容量との関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ウェル(測定つぼ)
2 絶縁体基板(絶縁体,第一の絶縁体)
3 絶縁体基板(絶縁体,第二の絶縁体)
4 炭素印刷電極
5 電極
6 一本鎖標識核酸(DNA)
7 溶液
8 溶液保持側壁
9 溶液保持側壁
10 電極導通パターン
11 電極導通パターン
12 コネクタ接触金属
13 コネクタ接触金属
14 コネクタ母材
15 切替スイッチ
16 検出回路
17 測定装置
18a 静電容量
18b 静電容量
18c 静電容量
19a 静電容量
19b 静電容量
19c 静電容量
20a 静電容量
20b 静電容量
20c 静電容量
21 静電容量
22 溶液全体の抵抗成分
23,23’ 家庭や事務所・小規模医療機関の領域
24 取引窓口
25 バイオ関連解析(バイオ診断情報)
26 医療・研究機関、検査機関
27 インターネット
28 パーソンナルコンピュータ
29 家庭用プリンタ
30 電気回路
31 検体
32 メモリーリーダライター
33 バイオセンシング電極機構
34a、34b 電圧検出端子
35 炭素印刷電極によるDNAセンサー部分
36a、36b スイッチ
37 直流電源
38 電流検出器
39 増幅器またはゲイン調節器
40 発振器
41 信号処理・検出測定部
42 検体DNA
43a、43b 電極に固定化された標識DNA
44a、44b ハイブリダイズした後のDNA
45 静電容量
46 静電容量
47 静電容量の増分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷によって絶縁体上に形成された、少なくともいずれか一方が炭素を主成分とする少なくとも1対の電極と、前記電極間に溶液を接触保持させる機構と、(A)前記電極間に電圧を印加する電圧印加手段および前記電極の電流を検出する電流検出手段、または、(B)前記電極間の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記少なくとも1対の電極の少なくとも一方に、一本鎖標識核酸を固定化してなり、印加電圧または電流が交流を含む信号であることを特徴とする生体関連物質検出装置。
【請求項2】
前記少なくとも1対の電極の一方が、炭素含有量が50質量%未満である電極材料からなることを特徴とする請求項1記載の生体関連物質検出装置。
【請求項3】
絶縁体上に少なくとも2個以上の壺状構造体を配置し、前記壺状構造体の内面に前記少なくとも1対の電極を備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の生体関連物質検出装置。
【請求項4】
第一の絶縁体上に、前記壺状構造体を配置し、前記壺状構造体の内面にいずれか一方の電極をそれぞれ備え、前記壺状構造体の上面を密着被覆してなる第二の絶縁体を備え、前記第二絶縁体上に前記いずれか一方の電極に対向する他方の電極を備えてなり、かつ、前記各他方の電極の少なくとも先端部が、前記壺状構造体中に貯留された溶液中に浸漬されてなり、前記第一の絶縁体または前記第二の絶縁体に一体化して電子回路および該電子回路と電極との接続手段を内包してなることを特徴とする請求項3記載の生体関連物質検出装置。
【請求項5】
各他方の電極は、溶液に接触した状態で前記壺状構造体上面を密着被覆してなる平板にて構成されてなる請求項4記載の生体関連物質検出装置。
【請求項6】
壺状構造体とその一部に形成された少なくとも1対の電極とからなる構造を少なくとも2組以上備え、少なくとも2種類以上の一本鎖標識核酸を該電極に固定化し、生体関連物質を前記壺状構造体に貯溜された溶液に含有させてなり、これらの電極に直流電圧または電流あるいは低周波電圧または電流を印加する手段、前記直流信号または低周波信号と交流信号を時間的に個別に印加する手段、および直流信号または低周波信号と交流信号を混合して印加する手段を備え、前記電極と電圧または電流の印加手段とを切り替える機能を備えてなることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。
【請求項7】
印加電圧または電流と、検出した電流値または電圧値とからインピーダンスの虚軸成分および実軸成分を演算する軸成分演算手段と、周波数を可変する周波数可変手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。
【請求項8】
直流信号または低周波信号を印加する第一の信号印加手段と、前記直流信号または低周波信号と交流信号とを時間的に個別に印加する第二の信号印加手段と、前記直流信号または低周波信号と交流信号とを混合して印加する混合印加手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。
【請求項9】
ランダム信号を発生するランダム信号発生手段と、該ランダム信号によって交流信号を変調する交流信号変調手段と、該ランダム信号によって変調された信号を復調する信号復調手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。
【請求項10】
電極から取り出された導電経路が櫛形状に配列され、電気的コネクタに嵌合可能な形態に母材とともに形成されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。
【請求項11】
周波数を可変させ、周波数に対するインピーダンスに角周波数を乗じ、逆数をとった特性のピーク値およびピーク値の位置する周波数を演算する演算手段を備えてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の生体関連物質検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−171134(P2007−171134A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373041(P2005−373041)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】