生体高分子分析装置
【課題】精度のよい生体高分子分析装置を提供する。
【解決手段】透明基板17上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子20を備える撮像素子3の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポット60を形成した生体高分子分析チップ10と、生体高分子分析チップ10に透明基板17側からスポット検出光を照射するスポット検出光源78と、光電変換素子20を駆動するコンピュータ73とからなる生体高分子分析装置70である。光電変換素子20により計測されるスポット検出光のスポット60表面における反射光に基づいてスポット60を検出するとともに、スポット60を検出した光電変換素子20の座標を記憶する記憶部を備え、プローブ60に結合した生体高分子を標識する標識物質からの発光の計測時に記憶部に記憶された座標の光電変換素子20のみを動作させる。
【解決手段】透明基板17上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子20を備える撮像素子3の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポット60を形成した生体高分子分析チップ10と、生体高分子分析チップ10に透明基板17側からスポット検出光を照射するスポット検出光源78と、光電変換素子20を駆動するコンピュータ73とからなる生体高分子分析装置70である。光電変換素子20により計測されるスポット検出光のスポット60表面における反射光に基づいてスポット60を検出するとともに、スポット60を検出した光電変換素子20の座標を記憶する記憶部を備え、プローブ60に結合した生体高分子を標識する標識物質からの発光の計測時に記憶部に記憶された座標の光電変換素子20のみを動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAマイクロアレイ等の生体高分子分析チップを用いた生体高分子分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のcDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、複数種類の配列既知のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて蛍光物質で標識したcDNA(以下、サンプルDNAという)を合成する。次に、サンプルDNAを蛍光物質で標識化してからDNAマイクロアレイ上に添加すると、サンプルDNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAマイクロアレイ上に固定される。サンプルDNAを標識する蛍光物質は励起されるとサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置から蛍光を発することになる。
【0005】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光の照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査する。励起光により励起された蛍光物質から発した蛍光を集光レンズで集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測し、これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したサンプルDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって、配列既知のmRNAのうち、どれが検体で発現しているかを同定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の光電変換素子を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイスの受光面にプローブDNA等の分子をスポットした生体高分子分析チップを開発している。このような生体高分子分析チップでは、スポットに付着したサンプルDNA等の生体高分子を標識する蛍光物質、発光物質等の標識物質からの光を各光電変換素子により計測する。固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しており、標識物質から発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射するため、僅かな光量でも計測が可能であるという利点がある。
【0007】
しかし、どの位置にスポットしたかは、ハイブリダイゼーションの前に把握することができなかった。このため、全ての光電変換素子で取り込まれたデータから蛍光の有無を判定しなければならず、ノイズを含むデータが多いと蛍光の有無そのものの判定精度が低くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、精度のよい生体高分子分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、透明基板上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子を備える撮像素子の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポットを形成した生体高分子分析チップと、前記生体高分子分析チップに前記透明基板側からスポット検出光を照射するスポット検出光源と、前記スポット検出光の前記スポットの表面における反射光強度に基づいて前記スポットの有無を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記各スポットは複数の前記光電変換素子の受光面上に形成され、前記検出手段は、前記各スポットに対応する複数の光電変換素子のうち蛍光があると判定された光電変換素子が複数ある場合、それらの蛍光データの平均値をそのスポットの蛍光データとすることが好ましい。
【0011】
前記検出手段により駆動され、前記撮像素子の受光面上に、蛍光色を発する液体及び蛍光色を発しない液体を選択的に滴下するスポッターを備えることが好ましい。
【0012】
前記スポッタは、前記蛍光色を発しない液体の滴下を、前記蛍光色を発する液体の滴下の後に行うことが好ましい。
【0013】
ここで、蛍光色を発しない液体としては、純水、あるいは純水に近い試料、例えば、プローブの溶液と同じ溶媒等を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生体高分子分析の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における生体高分子分析チップ10の概略平面図であり、図2は、図1の切断面IIに沿った矢視断面図である。
【0017】
この生体高分子分析チップ10は、透明基板17と、光電変換素子を透明基板17上に二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス30と、固体撮像デバイス30の受光面上において点在したスポット60,60,…と、を具備する。
【0018】
〔2〕固体撮像デバイス
図1〜図4を用いて固体撮像デバイス30について詳細に説明する。ここで、図3は、固体撮像デバイス30の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図であり、図4は、図2における固体撮像デバイス30の光電変換素子を示す拡大図である。
【0019】
この固体撮像デバイス30は透明基板17上に設けられている。透明基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0020】
この固体撮像デバイス30においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
【0021】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極31と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜25に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号に変換するものである。
【0022】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板17上に形成されている。また、透明基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0023】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0024】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0025】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0026】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0027】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0029】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極31がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極31は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0030】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜32によってまとめて被覆され、保護絶縁膜32は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。保護絶縁膜32の表面には、励起光フィルタ33が設けられる。
【0031】
以上のように構成された固体撮像デバイス30は、励起光フィルタ33の表面を受光面としており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0032】
〔3〕スポット
次に、スポット60について説明する。図1、図2、図4に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、固体撮像デバイス30の上面に配列されている。1つのスポット60は一本鎖プローブDNAが多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数の一本鎖プローブDNAは同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとに一本鎖プローブDNAの塩基配列が異なる配列となっている。一本鎖プローブDNAとしては、検体において既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。
【0033】
1つのスポット60は任意の数のダブルゲートトランジスタ20上に重なるとともに、他のスポット60,60,…と互いに離間するように形成されている。なお、1つのスポット60に重なったダブルゲートトランジスタ20の数は異なっていてもよい。
【0034】
〔4〕分析装置
生体高分子分析チップ10を分析装置にセッティングして生体高分子分析チップ10を用いるので、まず分析装置について図5、図6を用いて説明する。図5は、分析装置70に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図であり、図6は、分析装置70の構成を示したブロック図である。図5において、生体高分子分析チップ10は破断して示されている。
【0035】
分析装置70は、生体高分子分析チップ10がセッティングされる分析台71と、この分析台71に対して着脱できる生体高分子分析チップ10と、固体撮像デバイス30の受光面の上から受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、固体撮像デバイス30を駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコンピュータ73と、コンピュータ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、分析台71に埋め込まれたスポット検出光源78と、を備える。
【0036】
生体高分子分析チップ10が分析台71にセッティングされた場合には、固体撮像デバイス30のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ74の端子にそれぞれ接続されるようになっている。同様に、固体撮像デバイス30のボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ75の端子にそれぞれ接続されるようになっており、固体撮像デバイス30のドレインライン43,43,…がドレインドライバ76の端子にそれぞれ接続されるようになっている。また、生体高分子分析チップ10が分析台71にセッティングされた場合、固体撮像デバイス30のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されるようになっている。
【0037】
励起光照射装置72は分析台71に対向しており、分析台71に生体高分子分析チップ10が搭載された場合に、励起光照射装置72から面状に出射した励起光が生体高分子分析チップ10に照射されるようになっている。なお、励起光照射装置72は、出射する光の波長域を可変可能に設けられていても良い。
【0038】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。スポット検出光源78は、生体高分子分析チップ10の下方からスポット検出光61(可視光、例えば波長550nm)を照射する。
【0039】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス30を駆動するものである。
【0040】
コンピュータ73は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備え、励起光照射装置72,スポット検出光源78を点灯させる機能を有する。また、コンピュータ73は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に固体撮像デバイス30の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コンピュータ73は入力した二次元の画像データ画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0041】
また、コンピュータ73はドレインドライバ76から入力した電気信号をA/D変換することで、固体撮像デバイス30の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。そして、コンピュータ73は後述するように、固体撮像デバイス30より取得した2つの二次元の画像データの演算を行う機能を有する。
【0042】
コンピュータ73のRAMには、各ダブルゲートトランジスタにより出力されるデータが記録される。コンピュータ73のCPUは、記録されたデータをRAMから読み出し、後述する所定の演算を行い、演算結果を出力する。
【0043】
図7はコンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。スポット判定テーブルには、生体高分子分析チップ10の各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・に対応して第1〜第8行×A〜H列のセルが形成されている。スポット判定テーブルは、後述するように、スポット60の有無により所定の数字が書き込まれる。
【0044】
図8はコンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。スポットブロックテーブルは、スポットブロックナンバーが書き込まれたナンバー列と、スポット判定テーブルにおいてスポットブロックナンバーが書き込まれたセルの位置が書き込まれる位置内容列と、スポットブロックナンバーが書き込まれたセルにおいて検出される蛍光データの平均値が書き込まれる平均値列とからなる。
【0045】
〔5〕スポットの検出原理
ダブルゲートトランジスタ20上のスポット60の有無は、図4、図5に示すように、分析装置70のスポット検出光源78により、生体高分子分析チップの透明基板17側からスポット検出光61を照射し、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により検出される反射光62の光量により判定する。ここで、反射光62の光量によりスポット60の有無を検出する原理について説明する。
【0046】
スポット検出光61は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。保護絶縁膜32の屈折率をnprot、励起光フィルタ33の屈折率をnFLTとすると、スポット検出光61の保護絶縁膜32と励起光フィルタ33との界面でのp偏光反射率r12P、r12Sは次式(1)、(2)を満たす。
【数1】
【数2】
【0047】
上記θ1は、スポット検出光61が保護絶縁膜32から励起光フィルタ33に入射するときの入射角であり、上記θ2は励起光フィルタ33中へ出射する屈折角である。
【0048】
図4の左側に示すように、励起光フィルタ33に空気がある(スポット60がない)場合、空気の屈折率をnAIRとすると、励起光フィルタ33と空気との界面でのp偏光反射率r24P、r24Sは次式(3)、(4)を満たす。
【数3】
【数4】
【0049】
上記θ4は、励起光フィルタ33を透過し空気中へ出射するスポット検出光61の屈折角である。
【0050】
そして、2つの界面を合わせたP偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たす。
【数5】
【数6】
【0051】
ここで、δ2は次式(7)を満たす。なお、d2は励起光フィルタ33の膜厚である。
【数7】
【0052】
図9は生体高分子分析チップ10のスポット60が設けられていない部分におけるスポット検出光61のP偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sを式(5)、(6)に基づいて示したグラフである。なお、λ=550nm、nprot=1.87、nFLT=2.32、nAIR=1.0として計算している。
【0053】
一方、図4の右側に示すように、励起光フィルタ33にスポット60がある場合、スポットを構成する溶液の屈折率をnhybとすると、励起光フィルタ33とスポット60との界面でのp偏光反射率r23P、r23Sは次式(8)、(9)を満たす。
【数8】
【数9】
【0054】
上記θ3は、励起光フィルタ33を透過したスポット検出光61のスポット60中へ出射する屈折角である。
【0055】
そして、スポット60と空気との界面でのp偏光反射率r34P、r34Sは次式(10)、(11)を満たす。
【数10】
【数11】
【0056】
そして、励起光フィルタ33とスポット60との界面、及びスポット60と空気との界面の2つの界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率R24P、S偏光エネルギー反射率R24Sは、それぞれ次式(12)、(13)を満たす。
【数12】
【数13】
【0057】
ここで、δ3は次式(14)を満たす。なお、d3はスポット60の高さである。
【数14】
【0058】
この2つの界面の仮想的な境界面におけるP偏向反射率r234P、r234Sは、次式(15)、(16)を満たす。
【数15】
【数16】
【0059】
そして、この仮想的な界面、及びスポット60と空気との界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(17)、(18)を満たしている。
【数17】
【数18】
【0060】
ここで、φ3Pは上記仮想的な境界面におけるP偏光位相角、φ3Sは上記仮想的な境界面におけるS偏光位相角であり、次式(19)、(20)を満たしている。
【数19】
【数20】
【0061】
図10は生体高分子分析チップ10上のスポット60が設けられている部分におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(17)、(18)に基づいて示したグラフである。なお、λ=550nm、nprot=1.87、nFLT=2.32、nhyb=1.52、nAIR=1.0として計算している。
【0062】
スポット60がない場合、図9に示すように、低入射角(20度以下)では、偏向平均反射率は15%以上であるのに対し、スポット60がある場合、図10に示すように、低入射角(20度以下)では、偏向平均反射率は約5%程度である。このため、スポット60の有無により各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により検出される反射光62の強度に3〜5倍の光量差があり、光量が多ければスポット60がなく、少なければスポット60があると判別することができる。
【0063】
〔6〕スポットの検出操作
以下、分析装置70を用いた生体高分子分析チップ10の固体撮像デバイス30の受光面上のスポット60を検出する操作について説明する。
【0064】
スポットを検出するには、まず、固体撮像デバイス30の受光面上にスポット60を形成した生体高分子分析チップ10を分析装置70の分析台71にセットする。
【0065】
次いで、コンピュータ73により、スポット検出光源78を点灯させ、図4に示すようにスポット検出光61を生体高分子分析チップ10の透明基板17側から照射するとともに、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により反射光62の光量を検出し、スポット60の有無を判定する。スポット60の有無の判定結果はコンピュータ73のRAMに記憶される。
【0066】
ここで、生体高分子分析チップ10は、固体撮像デバイス30の受光面をあらかじめ幾つかの領域(スポットブロック)に分割し、各スポットブロックに1つずつスポットを形成したものである。つまり、スポットする位置はおおむね決められており、各スポットブロックは、スポット位置ずれを考慮してスポットがそれぞれ一つずつ入る程度の領域に設定されている。例えば図1に示すように、A〜H列×第1〜第8行の8×8のダブルゲートトランジスタ20,20,・・・からなる領域を、A1〜D4、E1〜H4、A5〜D8、E5〜H8に分け、各領域に1つずつスポット60が形成されている。なお、図1では、(B,1),(B,2),(C,1),(C,2),(C,5),(C,6),(D,5),(D,6),(F,2),(F,3),(G,2),(G,3),(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)に対応する各ダブルゲートトランジスタ20上にスポット60が形成されている。
【0067】
そして、分割されたスポットブロックごとにスポットブロックナンバーが割り当てられる。例えば、A1〜D4の領域に1、E1〜H4の領域に2、A5〜D8の領域に3、E5〜H8の領域に4のスポットブロックナンバーが割り当てられる。
【0068】
スポット60の有無の判定結果は、スポット判定テーブルに書き込まれる。例えば、図7に示すように、スポットブロック1の領域で反射率の違いによりスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応する座標のセル(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)には、ブロックナンバー「1」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック2の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)には、ブロックナンバー「2」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック3の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)には、ブロックナンバー「3」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック4の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)には、ブロックナンバー「4」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
【0069】
なお、各スポットブロックに対応するセルにあらかじめブロックナンバー「1」、「2」、「3」、「4」、・・・を書き込んでおき、スポット60がないと判定したセルに「0」の値を書き込んでもよい。
【0070】
スポット判定テーブルのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応する座標は、スポットブロックテーブルのブロックナンバーに対応する位置内容列に書き込まれ、各スポットにおける蛍光データの平均値の算出に用いられる。
【0071】
例えばブロックナンバー1の行の位置内容列には、ブロックナンバー「1」が書き込まれたセル(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー2の行の位置内容列には、ブロックナンバー「2」が書き込まれたセル(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー3の行の位置内容列には、ブロックナンバー「3」が書き込まれたセル(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー4の行の位置内容列には、ブロックナンバー「4」が書き込まれたセル(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)の座標が書き込まれている。
【0072】
なお、図1では各スポット60がそれぞれ4つのダブルゲートトランジスタ20上に形成されているので、各行の位置内容列には4つの座標が書き込まれているが、その数はスポット60の形成される位置や大きさによって変動する。
【0073】
〔7〕DNAサンプルの処理方法
上記生体高分子分析チップ10を用いたDNAサンプルの処理方法について説明する。
まず、作業者が検体からcDNAを採取して、場合によってPCR増幅を行い、得られたDNAに蛍光物質を結合させ、DNAを蛍光物質で標識する。蛍光物質は、分析装置の励起光照射装置から出射される励起光で励起されるものであってその励起光によって蛍光を発するものを選択するが、蛍光物質としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られたDNAは、溶液中に含まれている。以下では、このDNAをサンプルDNAという。
【0074】
次いで、作業者が、サンプルDNAを含有した溶液(以下、サンプルDNA溶液という)を固体撮像デバイス30の受光面に塗布する。ここで、固体撮像デバイス30の受光面にサンプルDNAを分布させるために、サンプルDNAを電気泳動させても良い。なお、サンプルDNA溶液をスポット60,60,…に順次又は同時に滴下しても良い。このとき、サンプルDNAが一本鎖となるようにサンプルDNA溶液は加熱されている。
【0075】
その後、プローブDNAとサンプルDNAとがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ10を所定の温度に冷却する。これにより、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なプローブDNAがあれば、これとハイブリダイズする。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがなければ、サンプルDNAはどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0076】
その後、固体撮像デバイス30の受光面に塗布したサンプルDNAのうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す。
【0077】
〔8〕DNAサンプルの検出方法
DNAサンプルの検出方法について説明する。まず、上記処理を行った固体撮像デバイス30を分析台71にセッティングし、励起光照射装置72を固体撮像デバイス30の受光面に対向させ、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をコンピュータ73に接続する。その後、コンピュータ73を起動し、分析装置70による蛍光データの計測動作を開始する。
【0078】
以下、分析装置70による蛍光データの計測動作について説明する。まず、コンピュータ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させ、励起光照射装置72から固体撮像デバイス30の受光面に向けて励起光を出射させるとともに、コンピュータ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、固体撮像デバイス30に撮像動作を行わせる。
【0079】
サンプルDNAが標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が放出され、対応するダブルゲートトランジスタ20に蛍光が入射して電子−正孔対を発生させる。
【0080】
その後、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれの蛍光データを取得し、RAMに記憶する。このとき、スポット判定テーブルのうち「1」、「2」、「3」、「4」のいずれかのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみから蛍光の有無を判定する。これにより、スポット60のないブロックナンバーの蛍光データから蛍光の有無を判定しなくてよいため、蛍光の有無を判定する蛍光データの数を制限しノイズとなるデータが減るので精度を高めることができる。
【0081】
次に、各スポットブロック毎に、スポット60があるダブルゲートトランジスタ20により検出された蛍光データの平均値を算出する。
【0082】
すなわち、図8に示すように、スポットブロックテーブルにおいて、ブロックナンバー1の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)に対応する各ダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データを加算し、加算したセル数で除した平均値Vt1が書き込まれる。
【0083】
同様に、ブロックナンバー2の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt2が書き込まれ、ブロックナンバー3の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt3が書き込まれ、ブロックナンバー4の行の位平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt4が書き込まれる。
【0084】
コンピュータ73はブロックナンバー1,2,3,4、・・・に対応する蛍光データの平均値Vt1,Vt2,Vt3,Vt4,・・・を1つのブロックの光強度とする二次元の画像データとして取得する。コンピュータ73は、取得された画像データを入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コンピュータ73の処理が終了する。
【0085】
作業者は、出力装置77により出力された画像データからハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればプローブDNAの塩基配列からサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによって検体中で発現している遺伝子を特定することができる。
【0086】
このように、本実施の形態では、ハイブリダイズさせてから励起光を出射して蛍光を検知する前に予めスポット位置を明確に判定することができるので、以降の作業を簡略化できる。つまり、例えば、スポットのある部分の蛍光の有無だけ作業者が判断すればよく、或いはスポット判定テーブルのうちいずれかのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみから蛍光の有無を判定するので精度を高くすることができる。
【0087】
また、複数のダブルゲートトランジスタ20により取得された蛍光データの平均値を求めることで、ノイズを除去し、S/N比を向上させることができる。また、蛍光データの平均値を1つのブロックの光強度とすることで、スポット60の大きさのバラツキが画像データにおける各ブロックの輝度に与える影響をキャンセルすることができる。
【0088】
〔変形例1〕
なお、固体撮像デバイス30の受光面を複数のスポットブロックに分けなくてもよい。この場合、スポットの有無の判定結果は、例えば図11に示すように、スポット判定テーブルに書き込まれる。すなわち、スポット60が有ると判定したダブルゲートトランジスタ20に対応するセルには、「1」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。そして、蛍光データを取得するときには、スポット判定テーブルのうち「1」の値が書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみを取得すればよい。
【0089】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態で用いる生体高分子分析チップ10の固体撮像デバイス30は、第1の実施の形態で用いるものと同様であり、その説明を割愛する。
【0090】
図12、図13は本実施の形態に用いる分析支援装置80である。図12は、分析支援装置80に生体高分子分析チップ10をセッティングした場合の概略側面図であり、図13は、分析支援装置80の回路構成を示したブロック図である。図12において、生体高分子分析チップ10は破断して示されている。
【0091】
分析支援装置80は、第1の実施の形態の分析支援装置70と同様に、分析台71と、励起光照射装置72と、生体高分子分析チップ10と、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、コンピュータ73と、出力装置77と、スポット検出光源78と、を備える。さらに、分析支援装置80は、コンピュータ73により制御されるスポッター79を備える。
【0092】
本実施の形態におけるコンピュータ73のRAMには、第1の実施の形態と同様に、スポット判定テーブル、スポットブロックテーブルが形成されている。そして本実施の形態のスポットブロックテーブルには、図14に示すように、第1の実施の形態と同様に、ナンバー列と、位置内容列と、平均値列とが設けられているとともに、さらに、ブロックID列が設けられている。
【0093】
ブロックID列には、各スポットブロックに滴下するスポット溶液の種類に応じて、所定のID名が書き込まれている。例えばスポットブロック1に対応するブロックナンバー1の行のブロックID列には、「テストサイト1」と書き込まれている。同様に、ブロックナンバー2の行のブロックID列には、「テストサイト2」、スポットブロック3に対応するブロックナンバー3の行のブロックID列には、「ポジティブコントロール」、ブロックナンバー4の行のブロックID列には、「ネガティブコントロール」と書き込まれている。ポジティブコントロールとは、必ず蛍光体が蛍光を発することを意味し、ネガティブコントロールとは、励起光を照射しても必ず蛍光を発しないことを意味する。
【0094】
コンピュータ73はスポッター79を駆動し、スポットブロックテーブルのブロックID列に書き込まれたID名に応じて、各スポットブロックに所定のスポット溶液を滴下する。例えば、「テストサイト1」のIDに対応するスポットブロック1には、テストスポット溶液1、「テストサイト2」のIDに対応するスポットブロック2には、テストスポット溶液2、「ポジティブコントロール」のIDに対応するスポットブロック3には、ポジティブスポット溶液、「ネガティブコントロール」のIDに対応するスポットブロック4には、ネガティブスポット溶液、を滴下させる。
【0095】
ここで、テストスポット溶液1,2としては、それぞれ任意の配列のcDNA(プローブDNA)の溶液、ポジティブスポット溶液としては、サンプルDNAの標識と同じ蛍光物質を含む溶液、又は、例えばサンプルDNAの標識と同じ蛍光物質で標識した任意の配列のDNA溶液のように、この蛍光物質をスポットした位置に固定化できる溶液、ネガティブスポット溶液としては、サンプルDNAについた蛍光物質と同一の蛍光物質を含まない液体、又は、サンプルDNAについた蛍光物質を固定化しない液体、つまりサンプルDNAとハイブリダイズする物質を含まない液体、例えば純水、またはDNAを含まないテストスポット溶液と同じ溶媒(バッファ溶液)を用いることができる。
【0096】
スポッター79は、スポット溶液槽と、洗浄槽と、各種スポット溶液をスポットブロックにスポットするスポット針と、スポット針を駆動する駆動装置とを備える。
【0097】
スポット溶液槽は各種スポット溶液に対応して1つずつ設けられており、各スポットブロックにスポットされるスポット溶液が貯留されている。洗浄槽にはスポット針の洗浄溶液(純水)が貯留されている。
【0098】
駆動装置はスポット針をスポット溶液槽、洗浄槽、及び固体撮像デバイス30上で前後、左右の水平方向、及び上下方向の3軸方向に駆動する。
スポット針はスポット溶液槽に浸されて先端にスポット溶液を付着させ、各スポットブロックにスポットする。
【0099】
スポッター79により各スポットブロックにスポット60を形成する動作について説明する。
まず、コンピュータ73により駆動される駆動装置がスポットブロック1に対応するテストスポット溶液1が貯留されたスポット溶液槽上にスポット針を水平移動させ、次いでスポット針を上下に動かしてスポット針の先端をスポット溶液槽内のスポット溶液に浸し、先端にスポット溶液を付着させる。次に、駆動装置が先端にスポット溶液が付着したスポット針を固体撮像デバイス30のスポットブロック1上に水平移動させる。
【0100】
次に、駆動装置がスポットブロック1上でスポット針を上下に運動させ、スポット針の先端に付着したスポット溶液をスポットブロック1上に滴下し、テストスポット1を形成する。
【0101】
その後、駆動装置がスポット針を洗浄槽上に移動し、スポット針を上下に動かしてスポット針の先端を洗浄槽内の洗浄溶液に浸し、スポット針の先端を洗浄する。
【0102】
その後、駆動装置は、スポットブロック2に対応するテストスポット溶液2が貯留されたスポット溶液槽上に洗浄されたスポット針を移動する。そして同様にしてスポットブロック2上にテストスポット溶液2を滴下してスポット60を形成する。以後同様にしてスポットブロック3にポジティブスポット溶液を滴下し、スポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下する。そして、スポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下したタイミングで、ネガティブスポットの検出操作を行う。
【0103】
すなわち、コンピュータ73により、スポット針がスポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下する際の駆動装置のタイミング信号を取り、その後、コンピュータ73により、スポット検出光源78を点灯させ、スポット検出光61を生体高分子分析チップ10の透明基板17側から照射するとともに、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により反射光62の光量を検出し、スポット60の有無を判定する。
【0104】
ネガティブスポット溶液は純水やバッファ溶液等であるので、乾燥させて実質的に消失してしまった後にそのスポットの位置を光学的に検出することは非常に困難である。これは表面に純水(屈折率約1.4)やバッファ溶液(屈折率約1.4以上)のようにネガティブスポット溶液の屈折率が空気の屈折率(約1.0)より高いので、ネガティブスポット溶液もポジティブスポット溶液もない部分、つまり空気の部分との屈折率の差により光学的に位置を検出するからである。本実施の形態では、ネガティブスポット溶液をスポットした後、直ちにスポットを検出するため、確実にネガティブスポット溶液のスポットを検出することができる。
【0105】
なお、テストスポット溶液、ポジティブスポット溶液、ネガティブスポット溶液を滴下するスポットブロックは任意である。また、滴下する順番も任意であるが、ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行うことが好ましい。ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行わない場合には、ネガティブスポットの検出を行った後に、その後滴下した他のスポット溶液によるスポットの検出を別途行う必要があるが、ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行うと、ネガティブスポット溶液のスポットとともに他の全てのスポットの検出も行うことができるからである。
【0106】
スポット60が図1と同様に形成されている場合、第1の実施の形態と同様に、コンピュータ73のRAMに図7と同様のスポット判定テーブルが作成され、RAMに作成されたスポットブロックテーブルの位置内容列には、図14に示すように、スポット判定テーブルのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応する座標が書き込まれる。
【0107】
そして、第1の実施の形態と同様にして、DNAサンプルの検出を行い、蛍光データを得ると、平均値列のセルには、対応する位置内容列に書き込まれた座標の各ダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データを加算し、加算したセル数で除した平均値Vt1,Vt2,Vt3,Vt4が書き込まれる。
【0108】
本実施の形態では、コンピュータ73のCPUが、ブロックID列に「ポジティブコントロール」と書き込まれた行の平均値列に書き込まれた蛍光データの平均値を、ポジティブコントロールデータVpcとして扱う。すなわち、Vpc=Vt3として扱う。また、ブロックID列に「ネガティブコントロール」と書き込まれた行の平均値列に書き込まれた蛍光データの平均値を、ネガティブコントロールデータVncとして扱う。すなわち、Vnc=Vt4として扱う。
【0109】
そして、コンピュータ73のCPUは、ネガティブコントロールにおける蛍光データの平均値Vncと他のテストサイト1,2における蛍光データの平均値Vt1,Vt2との大小を比較することで、各テストサイトにおけるハイブリダイズの有無を検出する。
【0110】
ネガティブスポット溶液にはDNAが含まれないため、ネガティブスポットには蛍光標識したサンプルDNAは結合しないため、理論上、ネガティブスポットからは蛍光が検出されないが、ゴミ等の不純物がダブルゲートトランジスタ20上にある場合には、ノイズとして蛍光が検出されることがある。すなわち、Vncはノイズの値そのものとなる。
【0111】
Vnc<Vt1となった場合は、テストスポット1に蛍光標識されたサンプルDNAがハイブリダイズしたものと考えられ、Vnc≧Vt1となった場合は、テストスポット1に蛍光標識されたサンプルDNAがハイブリダイズしなかったものと考えられる。Vt2についても同様である。
【0112】
また、コンピュータ73のCPUは、ポジティブコントロールにおける蛍光データの平均値Vpcと他のテストサイト1,2における蛍光データの平均値Vt1,Vt2との大小を比較することで、実験系自体の成否の検討を行う。
【0113】
ポジティブスポットには、蛍光標識したDNAが付着している。このため、どのような組成のサンプルDNA溶液を用いた場合でも、ポジティブスポットからは必ず蛍光が検出されるはずである。もしポジティブスポットから蛍光が検出されない場合には、例えば励起光が充分に照射されていない場合や、励起光フィルタ33やダブルゲートトランジスタ20が破損している場合など、実験系に何らかの問題があることが疑われ、実験系自体が成り立たないと判定する。一方、蛍光強度の値Vt1,Vt2,・・・がVpcよりも小さい場合には、実験系に問題がないと考えられ、蛍光データの信憑性を増すことができる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、スポット60に既知の塩基配列の一本鎖DNAを用いたが、その他の既知の生体高分子や低分子等を用いてもよい。例えば、既知のアミノ酸配列のペプチドやタンパク、タンパク質と結合する抗体、低分子リガンド、既知の細胞等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態における生体高分子分析チップ10の概略平面図である。
【図2】図1の切断面IIに沿った矢視断面図である。
【図3】固体撮像デバイス30の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図である。
【図4】図2における固体撮像デバイス30の光電変換素子を示す拡大図である。
【図5】分析装置70に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図である。
【図6】分析装置70の構成を示したブロック図である。
【図7】コンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。
【図8】コンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。
【図9】P偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sを式(5)、(6)に基づいて示したグラフである。
【図10】P偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(17)、(18)に基づいて示したグラフである。
【図11】コンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。
【図12】分析装置80に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図である。
【図13】分析装置80の構成を示したブロック図である。
【図14】コンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。
【符号の説明】
【0117】
1 生体高分子分析チップ
3 固体撮像デバイス(撮像素子)
17 透明基板
20 ダブルゲートトランジスタ(光電変換素子)
60 スポット
73 コンピュータ
78 スポット検出光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAマイクロアレイ等の生体高分子分析チップを用いた生体高分子分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のcDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、複数種類の配列既知のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて蛍光物質で標識したcDNA(以下、サンプルDNAという)を合成する。次に、サンプルDNAを蛍光物質で標識化してからDNAマイクロアレイ上に添加すると、サンプルDNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAマイクロアレイ上に固定される。サンプルDNAを標識する蛍光物質は励起されるとサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置から蛍光を発することになる。
【0005】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光の照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査する。励起光により励起された蛍光物質から発した蛍光を集光レンズで集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測し、これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したサンプルDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって、配列既知のmRNAのうち、どれが検体で発現しているかを同定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の光電変換素子を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイスの受光面にプローブDNA等の分子をスポットした生体高分子分析チップを開発している。このような生体高分子分析チップでは、スポットに付着したサンプルDNA等の生体高分子を標識する蛍光物質、発光物質等の標識物質からの光を各光電変換素子により計測する。固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しており、標識物質から発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射するため、僅かな光量でも計測が可能であるという利点がある。
【0007】
しかし、どの位置にスポットしたかは、ハイブリダイゼーションの前に把握することができなかった。このため、全ての光電変換素子で取り込まれたデータから蛍光の有無を判定しなければならず、ノイズを含むデータが多いと蛍光の有無そのものの判定精度が低くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、精度のよい生体高分子分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、透明基板上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子を備える撮像素子の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポットを形成した生体高分子分析チップと、前記生体高分子分析チップに前記透明基板側からスポット検出光を照射するスポット検出光源と、前記スポット検出光の前記スポットの表面における反射光強度に基づいて前記スポットの有無を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記各スポットは複数の前記光電変換素子の受光面上に形成され、前記検出手段は、前記各スポットに対応する複数の光電変換素子のうち蛍光があると判定された光電変換素子が複数ある場合、それらの蛍光データの平均値をそのスポットの蛍光データとすることが好ましい。
【0011】
前記検出手段により駆動され、前記撮像素子の受光面上に、蛍光色を発する液体及び蛍光色を発しない液体を選択的に滴下するスポッターを備えることが好ましい。
【0012】
前記スポッタは、前記蛍光色を発しない液体の滴下を、前記蛍光色を発する液体の滴下の後に行うことが好ましい。
【0013】
ここで、蛍光色を発しない液体としては、純水、あるいは純水に近い試料、例えば、プローブの溶液と同じ溶媒等を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生体高分子分析の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における生体高分子分析チップ10の概略平面図であり、図2は、図1の切断面IIに沿った矢視断面図である。
【0017】
この生体高分子分析チップ10は、透明基板17と、光電変換素子を透明基板17上に二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス30と、固体撮像デバイス30の受光面上において点在したスポット60,60,…と、を具備する。
【0018】
〔2〕固体撮像デバイス
図1〜図4を用いて固体撮像デバイス30について詳細に説明する。ここで、図3は、固体撮像デバイス30の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図であり、図4は、図2における固体撮像デバイス30の光電変換素子を示す拡大図である。
【0019】
この固体撮像デバイス30は透明基板17上に設けられている。透明基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0020】
この固体撮像デバイス30においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
【0021】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極31と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜25に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号に変換するものである。
【0022】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板17上に形成されている。また、透明基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0023】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0024】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0025】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0026】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0027】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0029】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極31がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極31は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0030】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜32によってまとめて被覆され、保護絶縁膜32は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。保護絶縁膜32の表面には、励起光フィルタ33が設けられる。
【0031】
以上のように構成された固体撮像デバイス30は、励起光フィルタ33の表面を受光面としており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0032】
〔3〕スポット
次に、スポット60について説明する。図1、図2、図4に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、固体撮像デバイス30の上面に配列されている。1つのスポット60は一本鎖プローブDNAが多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数の一本鎖プローブDNAは同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとに一本鎖プローブDNAの塩基配列が異なる配列となっている。一本鎖プローブDNAとしては、検体において既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。
【0033】
1つのスポット60は任意の数のダブルゲートトランジスタ20上に重なるとともに、他のスポット60,60,…と互いに離間するように形成されている。なお、1つのスポット60に重なったダブルゲートトランジスタ20の数は異なっていてもよい。
【0034】
〔4〕分析装置
生体高分子分析チップ10を分析装置にセッティングして生体高分子分析チップ10を用いるので、まず分析装置について図5、図6を用いて説明する。図5は、分析装置70に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図であり、図6は、分析装置70の構成を示したブロック図である。図5において、生体高分子分析チップ10は破断して示されている。
【0035】
分析装置70は、生体高分子分析チップ10がセッティングされる分析台71と、この分析台71に対して着脱できる生体高分子分析チップ10と、固体撮像デバイス30の受光面の上から受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、固体撮像デバイス30を駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコンピュータ73と、コンピュータ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、分析台71に埋め込まれたスポット検出光源78と、を備える。
【0036】
生体高分子分析チップ10が分析台71にセッティングされた場合には、固体撮像デバイス30のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ74の端子にそれぞれ接続されるようになっている。同様に、固体撮像デバイス30のボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ75の端子にそれぞれ接続されるようになっており、固体撮像デバイス30のドレインライン43,43,…がドレインドライバ76の端子にそれぞれ接続されるようになっている。また、生体高分子分析チップ10が分析台71にセッティングされた場合、固体撮像デバイス30のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されるようになっている。
【0037】
励起光照射装置72は分析台71に対向しており、分析台71に生体高分子分析チップ10が搭載された場合に、励起光照射装置72から面状に出射した励起光が生体高分子分析チップ10に照射されるようになっている。なお、励起光照射装置72は、出射する光の波長域を可変可能に設けられていても良い。
【0038】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。スポット検出光源78は、生体高分子分析チップ10の下方からスポット検出光61(可視光、例えば波長550nm)を照射する。
【0039】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス30を駆動するものである。
【0040】
コンピュータ73は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備え、励起光照射装置72,スポット検出光源78を点灯させる機能を有する。また、コンピュータ73は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に固体撮像デバイス30の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コンピュータ73は入力した二次元の画像データ画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0041】
また、コンピュータ73はドレインドライバ76から入力した電気信号をA/D変換することで、固体撮像デバイス30の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。そして、コンピュータ73は後述するように、固体撮像デバイス30より取得した2つの二次元の画像データの演算を行う機能を有する。
【0042】
コンピュータ73のRAMには、各ダブルゲートトランジスタにより出力されるデータが記録される。コンピュータ73のCPUは、記録されたデータをRAMから読み出し、後述する所定の演算を行い、演算結果を出力する。
【0043】
図7はコンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。スポット判定テーブルには、生体高分子分析チップ10の各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・に対応して第1〜第8行×A〜H列のセルが形成されている。スポット判定テーブルは、後述するように、スポット60の有無により所定の数字が書き込まれる。
【0044】
図8はコンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。スポットブロックテーブルは、スポットブロックナンバーが書き込まれたナンバー列と、スポット判定テーブルにおいてスポットブロックナンバーが書き込まれたセルの位置が書き込まれる位置内容列と、スポットブロックナンバーが書き込まれたセルにおいて検出される蛍光データの平均値が書き込まれる平均値列とからなる。
【0045】
〔5〕スポットの検出原理
ダブルゲートトランジスタ20上のスポット60の有無は、図4、図5に示すように、分析装置70のスポット検出光源78により、生体高分子分析チップの透明基板17側からスポット検出光61を照射し、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により検出される反射光62の光量により判定する。ここで、反射光62の光量によりスポット60の有無を検出する原理について説明する。
【0046】
スポット検出光61は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。保護絶縁膜32の屈折率をnprot、励起光フィルタ33の屈折率をnFLTとすると、スポット検出光61の保護絶縁膜32と励起光フィルタ33との界面でのp偏光反射率r12P、r12Sは次式(1)、(2)を満たす。
【数1】
【数2】
【0047】
上記θ1は、スポット検出光61が保護絶縁膜32から励起光フィルタ33に入射するときの入射角であり、上記θ2は励起光フィルタ33中へ出射する屈折角である。
【0048】
図4の左側に示すように、励起光フィルタ33に空気がある(スポット60がない)場合、空気の屈折率をnAIRとすると、励起光フィルタ33と空気との界面でのp偏光反射率r24P、r24Sは次式(3)、(4)を満たす。
【数3】
【数4】
【0049】
上記θ4は、励起光フィルタ33を透過し空気中へ出射するスポット検出光61の屈折角である。
【0050】
そして、2つの界面を合わせたP偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たす。
【数5】
【数6】
【0051】
ここで、δ2は次式(7)を満たす。なお、d2は励起光フィルタ33の膜厚である。
【数7】
【0052】
図9は生体高分子分析チップ10のスポット60が設けられていない部分におけるスポット検出光61のP偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sを式(5)、(6)に基づいて示したグラフである。なお、λ=550nm、nprot=1.87、nFLT=2.32、nAIR=1.0として計算している。
【0053】
一方、図4の右側に示すように、励起光フィルタ33にスポット60がある場合、スポットを構成する溶液の屈折率をnhybとすると、励起光フィルタ33とスポット60との界面でのp偏光反射率r23P、r23Sは次式(8)、(9)を満たす。
【数8】
【数9】
【0054】
上記θ3は、励起光フィルタ33を透過したスポット検出光61のスポット60中へ出射する屈折角である。
【0055】
そして、スポット60と空気との界面でのp偏光反射率r34P、r34Sは次式(10)、(11)を満たす。
【数10】
【数11】
【0056】
そして、励起光フィルタ33とスポット60との界面、及びスポット60と空気との界面の2つの界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率R24P、S偏光エネルギー反射率R24Sは、それぞれ次式(12)、(13)を満たす。
【数12】
【数13】
【0057】
ここで、δ3は次式(14)を満たす。なお、d3はスポット60の高さである。
【数14】
【0058】
この2つの界面の仮想的な境界面におけるP偏向反射率r234P、r234Sは、次式(15)、(16)を満たす。
【数15】
【数16】
【0059】
そして、この仮想的な界面、及びスポット60と空気との界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(17)、(18)を満たしている。
【数17】
【数18】
【0060】
ここで、φ3Pは上記仮想的な境界面におけるP偏光位相角、φ3Sは上記仮想的な境界面におけるS偏光位相角であり、次式(19)、(20)を満たしている。
【数19】
【数20】
【0061】
図10は生体高分子分析チップ10上のスポット60が設けられている部分におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(17)、(18)に基づいて示したグラフである。なお、λ=550nm、nprot=1.87、nFLT=2.32、nhyb=1.52、nAIR=1.0として計算している。
【0062】
スポット60がない場合、図9に示すように、低入射角(20度以下)では、偏向平均反射率は15%以上であるのに対し、スポット60がある場合、図10に示すように、低入射角(20度以下)では、偏向平均反射率は約5%程度である。このため、スポット60の有無により各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により検出される反射光62の強度に3〜5倍の光量差があり、光量が多ければスポット60がなく、少なければスポット60があると判別することができる。
【0063】
〔6〕スポットの検出操作
以下、分析装置70を用いた生体高分子分析チップ10の固体撮像デバイス30の受光面上のスポット60を検出する操作について説明する。
【0064】
スポットを検出するには、まず、固体撮像デバイス30の受光面上にスポット60を形成した生体高分子分析チップ10を分析装置70の分析台71にセットする。
【0065】
次いで、コンピュータ73により、スポット検出光源78を点灯させ、図4に示すようにスポット検出光61を生体高分子分析チップ10の透明基板17側から照射するとともに、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により反射光62の光量を検出し、スポット60の有無を判定する。スポット60の有無の判定結果はコンピュータ73のRAMに記憶される。
【0066】
ここで、生体高分子分析チップ10は、固体撮像デバイス30の受光面をあらかじめ幾つかの領域(スポットブロック)に分割し、各スポットブロックに1つずつスポットを形成したものである。つまり、スポットする位置はおおむね決められており、各スポットブロックは、スポット位置ずれを考慮してスポットがそれぞれ一つずつ入る程度の領域に設定されている。例えば図1に示すように、A〜H列×第1〜第8行の8×8のダブルゲートトランジスタ20,20,・・・からなる領域を、A1〜D4、E1〜H4、A5〜D8、E5〜H8に分け、各領域に1つずつスポット60が形成されている。なお、図1では、(B,1),(B,2),(C,1),(C,2),(C,5),(C,6),(D,5),(D,6),(F,2),(F,3),(G,2),(G,3),(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)に対応する各ダブルゲートトランジスタ20上にスポット60が形成されている。
【0067】
そして、分割されたスポットブロックごとにスポットブロックナンバーが割り当てられる。例えば、A1〜D4の領域に1、E1〜H4の領域に2、A5〜D8の領域に3、E5〜H8の領域に4のスポットブロックナンバーが割り当てられる。
【0068】
スポット60の有無の判定結果は、スポット判定テーブルに書き込まれる。例えば、図7に示すように、スポットブロック1の領域で反射率の違いによりスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応する座標のセル(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)には、ブロックナンバー「1」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック2の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)には、ブロックナンバー「2」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック3の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)には、ブロックナンバー「3」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
同様に、スポットブロック4の領域でスポット60が有ると判定されたダブルゲートトランジスタ20に対応するセル(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)には、ブロックナンバー「4」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。
【0069】
なお、各スポットブロックに対応するセルにあらかじめブロックナンバー「1」、「2」、「3」、「4」、・・・を書き込んでおき、スポット60がないと判定したセルに「0」の値を書き込んでもよい。
【0070】
スポット判定テーブルのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応する座標は、スポットブロックテーブルのブロックナンバーに対応する位置内容列に書き込まれ、各スポットにおける蛍光データの平均値の算出に用いられる。
【0071】
例えばブロックナンバー1の行の位置内容列には、ブロックナンバー「1」が書き込まれたセル(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー2の行の位置内容列には、ブロックナンバー「2」が書き込まれたセル(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー3の行の位置内容列には、ブロックナンバー「3」が書き込まれたセル(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)の座標が書き込まれ、ブロックナンバー4の行の位置内容列には、ブロックナンバー「4」が書き込まれたセル(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)の座標が書き込まれている。
【0072】
なお、図1では各スポット60がそれぞれ4つのダブルゲートトランジスタ20上に形成されているので、各行の位置内容列には4つの座標が書き込まれているが、その数はスポット60の形成される位置や大きさによって変動する。
【0073】
〔7〕DNAサンプルの処理方法
上記生体高分子分析チップ10を用いたDNAサンプルの処理方法について説明する。
まず、作業者が検体からcDNAを採取して、場合によってPCR増幅を行い、得られたDNAに蛍光物質を結合させ、DNAを蛍光物質で標識する。蛍光物質は、分析装置の励起光照射装置から出射される励起光で励起されるものであってその励起光によって蛍光を発するものを選択するが、蛍光物質としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られたDNAは、溶液中に含まれている。以下では、このDNAをサンプルDNAという。
【0074】
次いで、作業者が、サンプルDNAを含有した溶液(以下、サンプルDNA溶液という)を固体撮像デバイス30の受光面に塗布する。ここで、固体撮像デバイス30の受光面にサンプルDNAを分布させるために、サンプルDNAを電気泳動させても良い。なお、サンプルDNA溶液をスポット60,60,…に順次又は同時に滴下しても良い。このとき、サンプルDNAが一本鎖となるようにサンプルDNA溶液は加熱されている。
【0075】
その後、プローブDNAとサンプルDNAとがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ10を所定の温度に冷却する。これにより、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なプローブDNAがあれば、これとハイブリダイズする。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがなければ、サンプルDNAはどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0076】
その後、固体撮像デバイス30の受光面に塗布したサンプルDNAのうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す。
【0077】
〔8〕DNAサンプルの検出方法
DNAサンプルの検出方法について説明する。まず、上記処理を行った固体撮像デバイス30を分析台71にセッティングし、励起光照射装置72を固体撮像デバイス30の受光面に対向させ、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をコンピュータ73に接続する。その後、コンピュータ73を起動し、分析装置70による蛍光データの計測動作を開始する。
【0078】
以下、分析装置70による蛍光データの計測動作について説明する。まず、コンピュータ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させ、励起光照射装置72から固体撮像デバイス30の受光面に向けて励起光を出射させるとともに、コンピュータ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、固体撮像デバイス30に撮像動作を行わせる。
【0079】
サンプルDNAが標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が放出され、対応するダブルゲートトランジスタ20に蛍光が入射して電子−正孔対を発生させる。
【0080】
その後、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれの蛍光データを取得し、RAMに記憶する。このとき、スポット判定テーブルのうち「1」、「2」、「3」、「4」のいずれかのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみから蛍光の有無を判定する。これにより、スポット60のないブロックナンバーの蛍光データから蛍光の有無を判定しなくてよいため、蛍光の有無を判定する蛍光データの数を制限しノイズとなるデータが減るので精度を高めることができる。
【0081】
次に、各スポットブロック毎に、スポット60があるダブルゲートトランジスタ20により検出された蛍光データの平均値を算出する。
【0082】
すなわち、図8に示すように、スポットブロックテーブルにおいて、ブロックナンバー1の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(B,1),(B,2),(C,1),(C,2)に対応する各ダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データを加算し、加算したセル数で除した平均値Vt1が書き込まれる。
【0083】
同様に、ブロックナンバー2の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(C,5),(C,6),(D,5),(D,6)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt2が書き込まれ、ブロックナンバー3の行の平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(F,2),(F,3),(G,2),(G,3)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt3が書き込まれ、ブロックナンバー4の行の位平均値列のセルには、位置内容列に書き込まれた(G,6),(G,7),(H,6),(H,7)に対応するダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データの平均値Vt4が書き込まれる。
【0084】
コンピュータ73はブロックナンバー1,2,3,4、・・・に対応する蛍光データの平均値Vt1,Vt2,Vt3,Vt4,・・・を1つのブロックの光強度とする二次元の画像データとして取得する。コンピュータ73は、取得された画像データを入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コンピュータ73の処理が終了する。
【0085】
作業者は、出力装置77により出力された画像データからハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればプローブDNAの塩基配列からサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによって検体中で発現している遺伝子を特定することができる。
【0086】
このように、本実施の形態では、ハイブリダイズさせてから励起光を出射して蛍光を検知する前に予めスポット位置を明確に判定することができるので、以降の作業を簡略化できる。つまり、例えば、スポットのある部分の蛍光の有無だけ作業者が判断すればよく、或いはスポット判定テーブルのうちいずれかのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみから蛍光の有無を判定するので精度を高くすることができる。
【0087】
また、複数のダブルゲートトランジスタ20により取得された蛍光データの平均値を求めることで、ノイズを除去し、S/N比を向上させることができる。また、蛍光データの平均値を1つのブロックの光強度とすることで、スポット60の大きさのバラツキが画像データにおける各ブロックの輝度に与える影響をキャンセルすることができる。
【0088】
〔変形例1〕
なお、固体撮像デバイス30の受光面を複数のスポットブロックに分けなくてもよい。この場合、スポットの有無の判定結果は、例えば図11に示すように、スポット判定テーブルに書き込まれる。すなわち、スポット60が有ると判定したダブルゲートトランジスタ20に対応するセルには、「1」の値が書き込まれ、他のセルには「0」の値が書き込まれる。そして、蛍光データを取得するときには、スポット判定テーブルのうち「1」の値が書き込まれたセルに対応するダブルゲートトランジスタ20の蛍光データのみを取得すればよい。
【0089】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態で用いる生体高分子分析チップ10の固体撮像デバイス30は、第1の実施の形態で用いるものと同様であり、その説明を割愛する。
【0090】
図12、図13は本実施の形態に用いる分析支援装置80である。図12は、分析支援装置80に生体高分子分析チップ10をセッティングした場合の概略側面図であり、図13は、分析支援装置80の回路構成を示したブロック図である。図12において、生体高分子分析チップ10は破断して示されている。
【0091】
分析支援装置80は、第1の実施の形態の分析支援装置70と同様に、分析台71と、励起光照射装置72と、生体高分子分析チップ10と、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、コンピュータ73と、出力装置77と、スポット検出光源78と、を備える。さらに、分析支援装置80は、コンピュータ73により制御されるスポッター79を備える。
【0092】
本実施の形態におけるコンピュータ73のRAMには、第1の実施の形態と同様に、スポット判定テーブル、スポットブロックテーブルが形成されている。そして本実施の形態のスポットブロックテーブルには、図14に示すように、第1の実施の形態と同様に、ナンバー列と、位置内容列と、平均値列とが設けられているとともに、さらに、ブロックID列が設けられている。
【0093】
ブロックID列には、各スポットブロックに滴下するスポット溶液の種類に応じて、所定のID名が書き込まれている。例えばスポットブロック1に対応するブロックナンバー1の行のブロックID列には、「テストサイト1」と書き込まれている。同様に、ブロックナンバー2の行のブロックID列には、「テストサイト2」、スポットブロック3に対応するブロックナンバー3の行のブロックID列には、「ポジティブコントロール」、ブロックナンバー4の行のブロックID列には、「ネガティブコントロール」と書き込まれている。ポジティブコントロールとは、必ず蛍光体が蛍光を発することを意味し、ネガティブコントロールとは、励起光を照射しても必ず蛍光を発しないことを意味する。
【0094】
コンピュータ73はスポッター79を駆動し、スポットブロックテーブルのブロックID列に書き込まれたID名に応じて、各スポットブロックに所定のスポット溶液を滴下する。例えば、「テストサイト1」のIDに対応するスポットブロック1には、テストスポット溶液1、「テストサイト2」のIDに対応するスポットブロック2には、テストスポット溶液2、「ポジティブコントロール」のIDに対応するスポットブロック3には、ポジティブスポット溶液、「ネガティブコントロール」のIDに対応するスポットブロック4には、ネガティブスポット溶液、を滴下させる。
【0095】
ここで、テストスポット溶液1,2としては、それぞれ任意の配列のcDNA(プローブDNA)の溶液、ポジティブスポット溶液としては、サンプルDNAの標識と同じ蛍光物質を含む溶液、又は、例えばサンプルDNAの標識と同じ蛍光物質で標識した任意の配列のDNA溶液のように、この蛍光物質をスポットした位置に固定化できる溶液、ネガティブスポット溶液としては、サンプルDNAについた蛍光物質と同一の蛍光物質を含まない液体、又は、サンプルDNAについた蛍光物質を固定化しない液体、つまりサンプルDNAとハイブリダイズする物質を含まない液体、例えば純水、またはDNAを含まないテストスポット溶液と同じ溶媒(バッファ溶液)を用いることができる。
【0096】
スポッター79は、スポット溶液槽と、洗浄槽と、各種スポット溶液をスポットブロックにスポットするスポット針と、スポット針を駆動する駆動装置とを備える。
【0097】
スポット溶液槽は各種スポット溶液に対応して1つずつ設けられており、各スポットブロックにスポットされるスポット溶液が貯留されている。洗浄槽にはスポット針の洗浄溶液(純水)が貯留されている。
【0098】
駆動装置はスポット針をスポット溶液槽、洗浄槽、及び固体撮像デバイス30上で前後、左右の水平方向、及び上下方向の3軸方向に駆動する。
スポット針はスポット溶液槽に浸されて先端にスポット溶液を付着させ、各スポットブロックにスポットする。
【0099】
スポッター79により各スポットブロックにスポット60を形成する動作について説明する。
まず、コンピュータ73により駆動される駆動装置がスポットブロック1に対応するテストスポット溶液1が貯留されたスポット溶液槽上にスポット針を水平移動させ、次いでスポット針を上下に動かしてスポット針の先端をスポット溶液槽内のスポット溶液に浸し、先端にスポット溶液を付着させる。次に、駆動装置が先端にスポット溶液が付着したスポット針を固体撮像デバイス30のスポットブロック1上に水平移動させる。
【0100】
次に、駆動装置がスポットブロック1上でスポット針を上下に運動させ、スポット針の先端に付着したスポット溶液をスポットブロック1上に滴下し、テストスポット1を形成する。
【0101】
その後、駆動装置がスポット針を洗浄槽上に移動し、スポット針を上下に動かしてスポット針の先端を洗浄槽内の洗浄溶液に浸し、スポット針の先端を洗浄する。
【0102】
その後、駆動装置は、スポットブロック2に対応するテストスポット溶液2が貯留されたスポット溶液槽上に洗浄されたスポット針を移動する。そして同様にしてスポットブロック2上にテストスポット溶液2を滴下してスポット60を形成する。以後同様にしてスポットブロック3にポジティブスポット溶液を滴下し、スポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下する。そして、スポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下したタイミングで、ネガティブスポットの検出操作を行う。
【0103】
すなわち、コンピュータ73により、スポット針がスポットブロック4にネガティブスポット溶液を滴下する際の駆動装置のタイミング信号を取り、その後、コンピュータ73により、スポット検出光源78を点灯させ、スポット検出光61を生体高分子分析チップ10の透明基板17側から照射するとともに、各ダブルゲートトランジスタ20,20,・・・により反射光62の光量を検出し、スポット60の有無を判定する。
【0104】
ネガティブスポット溶液は純水やバッファ溶液等であるので、乾燥させて実質的に消失してしまった後にそのスポットの位置を光学的に検出することは非常に困難である。これは表面に純水(屈折率約1.4)やバッファ溶液(屈折率約1.4以上)のようにネガティブスポット溶液の屈折率が空気の屈折率(約1.0)より高いので、ネガティブスポット溶液もポジティブスポット溶液もない部分、つまり空気の部分との屈折率の差により光学的に位置を検出するからである。本実施の形態では、ネガティブスポット溶液をスポットした後、直ちにスポットを検出するため、確実にネガティブスポット溶液のスポットを検出することができる。
【0105】
なお、テストスポット溶液、ポジティブスポット溶液、ネガティブスポット溶液を滴下するスポットブロックは任意である。また、滴下する順番も任意であるが、ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行うことが好ましい。ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行わない場合には、ネガティブスポットの検出を行った後に、その後滴下した他のスポット溶液によるスポットの検出を別途行う必要があるが、ネガティブスポット溶液の滴下を最後に行うと、ネガティブスポット溶液のスポットとともに他の全てのスポットの検出も行うことができるからである。
【0106】
スポット60が図1と同様に形成されている場合、第1の実施の形態と同様に、コンピュータ73のRAMに図7と同様のスポット判定テーブルが作成され、RAMに作成されたスポットブロックテーブルの位置内容列には、図14に示すように、スポット判定テーブルのブロックナンバーが書き込まれたセルに対応する座標が書き込まれる。
【0107】
そして、第1の実施の形態と同様にして、DNAサンプルの検出を行い、蛍光データを得ると、平均値列のセルには、対応する位置内容列に書き込まれた座標の各ダブルゲートトランジスタ20で検出された蛍光データを加算し、加算したセル数で除した平均値Vt1,Vt2,Vt3,Vt4が書き込まれる。
【0108】
本実施の形態では、コンピュータ73のCPUが、ブロックID列に「ポジティブコントロール」と書き込まれた行の平均値列に書き込まれた蛍光データの平均値を、ポジティブコントロールデータVpcとして扱う。すなわち、Vpc=Vt3として扱う。また、ブロックID列に「ネガティブコントロール」と書き込まれた行の平均値列に書き込まれた蛍光データの平均値を、ネガティブコントロールデータVncとして扱う。すなわち、Vnc=Vt4として扱う。
【0109】
そして、コンピュータ73のCPUは、ネガティブコントロールにおける蛍光データの平均値Vncと他のテストサイト1,2における蛍光データの平均値Vt1,Vt2との大小を比較することで、各テストサイトにおけるハイブリダイズの有無を検出する。
【0110】
ネガティブスポット溶液にはDNAが含まれないため、ネガティブスポットには蛍光標識したサンプルDNAは結合しないため、理論上、ネガティブスポットからは蛍光が検出されないが、ゴミ等の不純物がダブルゲートトランジスタ20上にある場合には、ノイズとして蛍光が検出されることがある。すなわち、Vncはノイズの値そのものとなる。
【0111】
Vnc<Vt1となった場合は、テストスポット1に蛍光標識されたサンプルDNAがハイブリダイズしたものと考えられ、Vnc≧Vt1となった場合は、テストスポット1に蛍光標識されたサンプルDNAがハイブリダイズしなかったものと考えられる。Vt2についても同様である。
【0112】
また、コンピュータ73のCPUは、ポジティブコントロールにおける蛍光データの平均値Vpcと他のテストサイト1,2における蛍光データの平均値Vt1,Vt2との大小を比較することで、実験系自体の成否の検討を行う。
【0113】
ポジティブスポットには、蛍光標識したDNAが付着している。このため、どのような組成のサンプルDNA溶液を用いた場合でも、ポジティブスポットからは必ず蛍光が検出されるはずである。もしポジティブスポットから蛍光が検出されない場合には、例えば励起光が充分に照射されていない場合や、励起光フィルタ33やダブルゲートトランジスタ20が破損している場合など、実験系に何らかの問題があることが疑われ、実験系自体が成り立たないと判定する。一方、蛍光強度の値Vt1,Vt2,・・・がVpcよりも小さい場合には、実験系に問題がないと考えられ、蛍光データの信憑性を増すことができる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、スポット60に既知の塩基配列の一本鎖DNAを用いたが、その他の既知の生体高分子や低分子等を用いてもよい。例えば、既知のアミノ酸配列のペプチドやタンパク、タンパク質と結合する抗体、低分子リガンド、既知の細胞等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態における生体高分子分析チップ10の概略平面図である。
【図2】図1の切断面IIに沿った矢視断面図である。
【図3】固体撮像デバイス30の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図である。
【図4】図2における固体撮像デバイス30の光電変換素子を示す拡大図である。
【図5】分析装置70に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図である。
【図6】分析装置70の構成を示したブロック図である。
【図7】コンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。
【図8】コンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。
【図9】P偏光エネルギー反射率R14P、S偏光エネルギー反射率R14Sを式(5)、(6)に基づいて示したグラフである。
【図10】P偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(17)、(18)に基づいて示したグラフである。
【図11】コンピュータ73のRAMに作成されるスポット判定テーブルである。
【図12】分析装置80に生体高分子分析チップ10をセッティングした概略側面図である。
【図13】分析装置80の構成を示したブロック図である。
【図14】コンピュータ73のRAMに作成されるスポットブロックテーブルである。
【符号の説明】
【0117】
1 生体高分子分析チップ
3 固体撮像デバイス(撮像素子)
17 透明基板
20 ダブルゲートトランジスタ(光電変換素子)
60 スポット
73 コンピュータ
78 スポット検出光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子を備える撮像素子の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポットを形成した生体高分子分析チップと、
前記生体高分子分析チップに前記透明基板側からスポット検出光を照射するスポット検出光源と、
前記スポット検出光の前記スポットの表面における反射光強度に基づいて前記スポットの有無を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする生体高分子分析装置。
【請求項2】
前記各スポットは複数の前記光電変換素子の受光面上に形成され、
前記検出手段は、前記各スポットに対応する複数の光電変換素子のうち蛍光があると判定された光電変換素子が複数ある場合、それらの蛍光データの平均値をそのスポットの蛍光データとすることを特徴とする請求項1に記載の生体高分子分析装置。
【請求項3】
前記検出手段により駆動され、前記撮像素子の受光面上に、蛍光色を発する液体及び蛍光色を発しない液体を選択的に滴下するスポッターを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の生体高分子分析装置。
【請求項4】
前記スポッタは、前記蛍光色を発しない液体の滴下を、前記蛍光色を発する液体の滴下の後に行うことを特徴とする請求項3に記載の生体高分子分析装置。
【請求項1】
透明基板上に二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子を備える撮像素子の受光面上に特定の生体高分子と結合するプローブの溶液を滴下しスポットを形成した生体高分子分析チップと、
前記生体高分子分析チップに前記透明基板側からスポット検出光を照射するスポット検出光源と、
前記スポット検出光の前記スポットの表面における反射光強度に基づいて前記スポットの有無を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする生体高分子分析装置。
【請求項2】
前記各スポットは複数の前記光電変換素子の受光面上に形成され、
前記検出手段は、前記各スポットに対応する複数の光電変換素子のうち蛍光があると判定された光電変換素子が複数ある場合、それらの蛍光データの平均値をそのスポットの蛍光データとすることを特徴とする請求項1に記載の生体高分子分析装置。
【請求項3】
前記検出手段により駆動され、前記撮像素子の受光面上に、蛍光色を発する液体及び蛍光色を発しない液体を選択的に滴下するスポッターを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の生体高分子分析装置。
【請求項4】
前記スポッタは、前記蛍光色を発しない液体の滴下を、前記蛍光色を発する液体の滴下の後に行うことを特徴とする請求項3に記載の生体高分子分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−275576(P2006−275576A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91281(P2005−91281)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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