説明

生化学検査装置および生化学検査方法

【課題】生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査装置において、識別コードを有さない消耗品を含む場合であっても容易に精度よく在庫管理を行う。
【解決手段】 生化学検査の検査内容が選択される検査内容選択部101と、生化学検査を実行する検査実行部120と、検査実行部が使用する検査用品の在庫管理を行う在庫管理部104と、検査内容選択部101において選択された検査内容を示す第1の情報T1を、検査実行部が使用する検査用品に関する第2の情報T2に変換する変換部102と、を具備し、在庫管理部104が第2の情報T2を用いて在庫管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の検体を点着用ノズルユニットにより比色タイプの乾式分析素子、電解質タイプの乾式分析素子などに点着し、検体中の所定の生化学物質の物質濃度、イオン活量等を求める生化学検査装置および生化学検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検体の小滴を点着供給するだけでこの検体中に含まれている特定の化学成分または有形成分を定量分析することのできる比色タイプの乾式分析素子や検体に含まれる特定イオンのイオン活量を測定することのできる電解質タイプの乾式分析素子が開発され、実用化されている。これらの乾式分析素子を用いた生化学検査装置は、簡単かつ迅速に検体の分析を行うことができるので、医療機関、研究所等において好適に用いられている。
【0003】
比色タイプの乾式分析素子を使用する比色測定法は、検体を乾式分析素子に点着させた後、これをインキュベータ内で所定時間恒温保持して呈色反応(色素生成反応)させ、次いで検体中の所定の生化学物質と乾式分析素子に含まれる試薬との組み合わせにより予め選定された波長を含む測定用照射光をこの乾式分析素子に照射してその光学濃度を測定し、この光学濃度から、予め求めておいた光学濃度と所定の生化学物質の物質濃度との対応を表す検量線を用いて該生化学物質の濃度を求めるものである。
【0004】
一方、電解質タイプの乾式分析素子を使用する電位差測定法は、上記の光学濃度を測定する代わりに、同種の乾式イオン選択電極の2個1組からなる電極対に点着された検体中に含まれる特定イオンの活量を、ポテンシオメトリで定量分析することにより求めるものである。
【0005】
上記いずれの方法においても、液状の検体は検体容器(採血管等)に収容して装置にセットすると共に、その測定に必要な乾式分析素子を装置に供給し、検体容器から所定方向に移動が可能な点着ノズルを有する点着ノズルユニットを利用して、検体を吸引し点着位置に搬送された乾式分析素子に点着を行う。
【0006】
上記の生化学検査装置には、上記のように、乾式分析素子、ノズルチップ、希釈用の混合カップ、希釈液容器、参照液容器などの測定に必要な消耗品が多数用いられている。そして、これらの消耗品の在庫管理は、検査に応じて各消耗品の使用量を検査担当者が帳簿や電子ファイル等に記録しておき、記録された使用量に基づいて消耗品の在庫管理を行うことが一般に行われている。
【0007】
特許文献1には、生体分析機において、試薬などの消耗品を特定する識別コードを読み取り、通信回線を通じて読み取られた識別コードを外部管理システムに伝達し、外部管理システムは読み取られた識別コードに対応する消耗品が出庫したものとして在庫管理を行う方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、ネットワークを介して消耗品のバーコード情報などの個別認識データと入出庫日や数量を含む消耗品に関するデータを取得して、取得したデータをユーザまたは装置ごとに蓄積し、消耗品在庫が所定の在庫数量を下回った場合には自動的に発注を行い、出庫日等のデータから計算される消耗品の発送予定日と現日付との間の期間が所定の日数を下回った場合には、配達物品の組合せ、運搬効率、手持ちの在庫数量などから配送計画を作成し、必要な消耗品をユーザに配送するシステムが開示されている。
【0009】
特許文献3には、各分析装置についての消費情報および計画された分析方法、分析回数などの消費予定情報に基づいて、各分析装置に貯蔵された消費財の消費状況、在庫状況、消費傾向、完全消費予定時期などを解析し、試薬ごとに各試薬供給者に発注作業を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−85423号公報
【特許文献2】特開2006−98415号公報
【特許文献3】特開2002−228667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、検査内容を決定する医師などは、健康診断、肝臓検査など所定の目的に応じた一連の検査からなる検査内容を、常に検査内容を構成する個々の検査ごとに指示するわけではなく、検査目的に応じた検査内容名だけで指示したい場合がある。この場合には、検査担当者は、検査内容名に基づいて検査内容を構成する個々の検査に用いる検査用品を調べ、それから検査用品ごとに使用量を記録して在庫管理を行う必要があり、手間が煩雑である。このため、使用量の記録漏れなどの人為ミスにより在庫管理に誤りが生じる可能性がある。
【0012】
また、特許文献1乃至3に記載した方法は、読み取られた識別コードなどの消費情報や検査予定に基づいて特定可能な消耗品については自動的に在庫管理を行うことができるものの、上記のように、検査目的に応じた検査内容名だけが情報として得られた場合には、検査内容に用いる消耗品については特定できないため、適用できない。
【0013】
本発明は、かかる問題に鑑みて、検査内容名などの検査内容を表す情報のみに基づいて検査内容に応じて容易に精度よく在庫管理を行うことができる生化学検査装置および生化学検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の生化学検査装置は、生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査装置であって、生化学検査の検査内容が選択される検査内容選択部と、生化学検査を実行する検査実行部と、前記検査実行部が使用する検査用品の在庫管理を行う在庫管理部と、前記検査内容選択部において選択された検査内容を示す第1の情報を、前記検査実行部が使用する検査用品に関する第2の情報に変換する変換部と、を具備し、前記在庫管理部が前記第2の情報を用いて在庫管理を行う、ことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の生化学検査方法は、生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査方法であって、生化学検査の検査内容が選択されるステップと、選択された検査内容を示す第1の情報を、使用する検査用品に関する第2の情報に変換するステップと、前記第2の情報を用いて前記検査用品の在庫管理を行うステップと、を具備することを特徴とするものである。
【0016】
上記「第1の情報」は、複数の検査項目からなる一連の検査内容を特定するものであればいかなる情報でもよく、一例として、健康診断検査セット、肝臓検査セットなどの検査内容名でもよく、複数の検査項目からなる一連の検査内容を表す識別子であってもよい。
【0017】
また、上記「第2の情報」は、検査用品の種類とその使用量を表す情報を含むものであれば、検査実行部が使用する検査用品に関するいかなる情報を含んでもよく、検査条件や検査方法などの検査内容についての情報など付加情報をさらに含んでもよい。
【0018】
また、本発明の生化学検査装置における前記変換部は、前記検査内容選択部において選択された検査内容に必要な検査用品の種類および使用量を、前記第1の情報に基づいて特定し、当該検査用品の種類および使用量を前記第2の情報とするものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の生化学検査装置は、前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を記憶した記憶部をさらに具備し、前記在庫管理部は、前記記憶部に記憶された対応関係を用いて、前記検査内容選択部において選択され得る複数の検査内容のうち、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を判別する判別部を具備することが好ましい。
【0020】
「検査用品が保有されていない検査内容」とは、検査内容を構成する検査項目の1つ以上について使用可能な検査用品の在庫がないことを意味する。
【0021】
また、本発明の生化学検査装置は、生化学検査がエラーであるか判断するエラー判断部をさらに具備し、前記検査実行部は、前記エラー判断部が生化学検査のエラーを判断した場合に再検査を実行するとともに前記実行された再検査に応じて前記第2の情報を更新するものであることが好ましい。
【0022】
再検査は、同一または類似の検査項目を実行する検査を含む。例えば、再検査は、同じ検査項目を同じ測定条件で行うものであってもよく、同じ検査項目を検体の希釈倍率などの測定条件を異ならせて行うものであってもよい。
【0023】
また、本発明の生化学検査装置における前記検査実行部は、再検査においては検体の希釈率を増加させる制御を行うとともに前記増加された希釈率に応じて前記第2の情報に含まれる希釈液の使用量を更新するものであることが好ましい。
【0024】
また、本発明の生化学検査装置は、前記判別部が判別した検査内容に関する情報を通知する通知部、をさらに具備するものであってもよい。
【0025】
上記「検査内容に関する情報」とは、所定回数以上分の検査用品が保有されていない検査内容を特定する情報を少なくとも含むものであればいかなる情報でもよく、検査内容を構成する各検査項目の検査結果などさらなる情報を含んでもよい。
【0026】
また、本発明の生化学検査装置は、前記判別部が判別した検査内容に不足している検査用品の注文を行う検査用品注文部、をさらに具備するものであってもよい。
【0027】
さらに、前記検査用品注文部は、一の検査内容に必要な全ての検査用品を1組として扱い、検査内容ごとに検査用品の注文を行うものであってもよい。
【0028】
また、本発明の生化学検査装置において、前記検査用品は、検体を試薬と反応させる試薬スライド、検体を希釈する希釈溶液、および検体または希釈溶液の吸引または滴下に使用されるノズルチップを含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の生化学検査装置は、生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査装置であって、生化学検査の検査内容が選択される検査内容選択部と、生化学検査を実行する検査実行部と、検査実行部が使用する検査用品の在庫管理を行う在庫管理部と、検査内容選択部において選択された検査内容を示す第1の情報を、検査実行部が使用する検査用品に関する第2の情報に変換する変換部と、を具備し、検査実行部が第2の情報に従って生化学検査を実行し、在庫管理部が第2の情報を用いて在庫管理を行う、ことを特徴とするものであるため、ユーザが個々に検査用品を特定しなくても、検査内容名などの検査内容を表す情報を選択するだけで検査内容に使用される各検査用品を特定できるため、容易かつ正確に在庫管理を行うことができる。また、識別コードを有さない消耗品を含む場合であっても検査内容に応じてその検査内容に使用される各検査用品を自動的に管理できるため、多様な種類の検査用品に対する汎用性が高く、容易かつ精度よく在庫管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における生化学分析用カートリッジを装填した生化学検査装置の概略構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態における生化学検査装置の要部機構の平面配置図
【図3】本発明の実施の形態における生化学検査装置の機能ブロック図
【図4】本発明の実施の形態における対応付けテーブルの例を示す図
【図5】本発明の実施の形態における検査用品テーブル(第2の情報)の例を示す図
【図6】本発明の実施の形態における在庫テーブルの例を示す図
【図7】本発明の実施の形態における生化学検査装置の処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。図1は本実施形態における生化学検査装置の概略機構を示す斜視図、図2は本実施形態における生化学検査装置の要部機構の平面配置図であり、図3は本実施形態における生化学検査装置の機能ブロック図である。
【0032】
図1に示す生化学検査装置1は、装置本体17の前部の一方(図の右側)に円形のサンプラトレイ2が、他方(図の左側)に円形のインキュベータ3が、両者の間に点着部4(図1では図示省略、図2参照)が、上部には左右に移動する点着ノズルユニット5がそれぞれ配設されている。また、サンプラトレイ2の近傍には、血液から血漿を分離する血液濾過ユニット6が設置されている。また、装置本体17内部には、サンプラトレイ2、インキュベータ3、点着部4、点着ノズルユニット5、血液濾過ユニット6からなる検査実行機構121に対して後述の各種制御をおこなう制御ユニット100が備えられる。
【0033】
以下、検査実行機構121の構成について詳細に説明し、その後、制御ユニット100の構成について説明する。
【0034】
サンプラトレイ2は、正転方向および逆転方向に回転駆動される円盤状の回転台21を有し、この回転台21の外周部の円弧状凹部には、円環形状が中心から放射状に等分割された5つの生化学分析用カートリッジ7が装填され、装填された5個の生化学分析用カートリッジ7が円弧状に並ぶ。
【0035】
図2に示す形態のサンプラトレイ2は、正転方向および逆転方向に回転駆動される円環状(ドーナツ状)の回転台22を有し、この回転台22にはその円環形状が中心から放射状に8個に等分割された生化学分析用カートリッジ7および消耗品カートリッジ8が装填され、全部のカートリッジ7,8の装填によって円環状となる。生化学分析用カートリッジ7および消耗品カートリッジ8は平面同形状であり、独自に着脱可能である。5つの生化学分析用カートリッジ7は、その測定項目に対応して必要とされる未使用の乾式分析素子11を保持する素子収容室71(図2では配置形状を示している)を有する。3つの消耗品カートリッジ8は、1つが多数のノズルチップ12(Nozzle Tip)を配列保持し、他の1つが多数の混合カップ13を保持し、残り1つが希釈液容器14および参照液容器15を保持する。消耗品カートリッジ8にはそれぞれの保持形態に対応した保持凹部が形成されている。
【0036】
上記のような生化学分析用カートリッジ7および消耗品カートリッジ8の装填により、サンプラトレイ2には、図1と同様に1つの検体容器10とその測定に必要な未使用の乾式分析素子11を組み合わせた複数組の検体と乾式分析素子11とを装填すると共に、消耗品としてのノズルチップ12、混合カップ13、参照液容器15および希釈液容器14を予め装填している。
【0037】
サンプラトレイ2の回転台21,22は、不図示の回転駆動機構により、点着ノズルユニット5の動作位置に正転方向または逆転方向に回転駆動される。その回転位置と、点着ノズルユニット5の移動位置を制御することにより、必要なノズルチップ12を取り出し、必要な検体や希釈液、参照液を吸引し、必要により混合するという、検体点着のための所定の動作が行われる。
【0038】
またサンプラトレイ2の中央部には、乾式分析素子11を搬送する搬送部9(図2参照)を備える。この搬送部9は、不図示の機構によってサンプラトレイ2の半径方向にスライド移動可能に配設された素子搬送部材91(挿入レバー)を有し、この素子搬送部材91の前進移動制御によってその先端部で乾式分析素子11を押して生化学分析用カートリッジ7から自動的に取り出して点着部4に搬送し、点着後の乾式分析素子11をインキュベータ3に搬送し、測定後にはインキュベータ3の中心方向にさらに乾式分析素子11を搬送して廃却するように設けられている。そして、回転台21,22の回転位置を制御して、順に生化学分析用カートリッジ7を点着部4に対応する位置に停止させて、必要な乾式分析素子11を生化学分析用カートリッジ7から取り出すことができる。
【0039】
上記のような生化学分析用カートリッジ7は任意に回転台21,22に装填でき、測定前の生化学分析用カートリッジ7の入れ替えも可能である。なお、生化学分析用カートリッジ7には識別部材が配設され、サンプラトレイ2への生化学分析用カートリッジ7の装填が検出され、検体ID、濾過の有無等が識別される。また、上記生化学分析用カートリッジ7と同形状である図2に示す消耗品カートリッジ8は、収容した消耗品の残量が少量になったときは、予めノズルチップ12および混合カップ13を載置した新しい消耗品カートリッジ8を用意して入れ替えることができる。
【0040】
ここで、生化学分析用カートリッジ7に装填される乾式分析素子11について説明する。検体の呈色度合を測定するために使用される比色タイプの乾式分析素子11は矩形状のマウント内に試薬層が配設されてなり、マウントの表面に点着孔が形成され、点着孔には検体が点着される。検体のイオン活性を測定するために使用される電解質タイプの乾式分析素子11は、2箇所の液供給孔が形成されている。一方の液供給孔には検体が点着され、他方の液供給孔にはイオン活量が既知である参照液が点着される。また、イオン活量を測定するために電位差測定手段の電位測定用プローブと電気的に接続される3対のイオン選択電極対が形成されている。比色タイプおよび電解質タイプに関わらず、各乾式分析素子11の裏面には各乾式分析素子11の検査項目やその検査項目の検査方法などを特定するための情報が記録された識別子であるバーコード(図示せず)が付設されている。
【0041】
乾式分析素子11の検査項目は、本発明の生化学分析装置において検査可能な種々の検査目的に応じた各種検査の種類を表すものである。検査項目の例として、検体である血液または血漿等に含まれる成分を測定する血中ブドウ糖測定(GLU)、血中アンモニア測定(NH3)、血液及び尿中のNa,K,Cl測定(Na-K-Cl)などがあげられる。
【0042】
上記点着部4(図2)は、乾式分析素子11に血漿、全血、血清、尿などの検体を点着するもので、点着ノズルユニット5によって比色測定タイプの乾式分析素子11には検体を、電解質タイプの乾式分析素子11には検体と参照液を点着する。
【0043】
この点着部4には、乾式分析素子11の底面を受ける載置台41と、上方の点着用開口を有する素子押え(図示せず)が設置され、両者の間を乾式分析素子11が移動する。点着部4の前段部分には、乾式分析素子11に設けられたバーコードを読み取るためのバーコードリーダー(不図示)が設置されている。このバーコードリーダーは、検査項目などを特定し、後の点着、測定を制御するため、および乾式分析素子11の搬送方向(前後、表裏)を検出するために設けられている。
【0044】
点着ノズルユニット5(図1)は検体のサンプリングを行うもので、横方向に水平移動する横移動ブロック51に上下移動する2つの上下移動ブロック52,52が設けられ、2つの上下移動ブロック52,52にそれぞれ固定された2つの点着ノズル53,53を有している。横移動ブロック51、2つの上下移動ブロック52,52は、図示しない駆動部により横移動および上下移動が制御され、2つの点着ノズル53,53は、一体に横移動すると共に、独自に上下移動するようになっている。例えば、一方の点着ノズル53は検体用であり、他方の点着ノズル53は希釈液用および参照液用である。
【0045】
両点着ノズル53,53は棒状に形成され、内部に軸方向に延びるエア通路が設けられ、下端にはピペット状のノズルチップ12がシール状態で嵌合される。この点着ノズル53,53にはそれぞれ不図示のシリンジポンプ等に接続されたエアチューブが連結され、吸引・吐出圧が供給される。使用後のノズルチップ12はチップ抜取り部で外されて落下廃却される。
【0046】
インキュベータ3は、点着部4の延長位置に配置され、図2に示すように、円盤状の回転部材31が図示しない回転駆動機構によって回転可能に設けられ、回転部材31の上には不図示の上位部材が配設され、回転部材31の円周上に乾式分析素子11を収納する素子室32が所定間隔で複数配設されてなる。素子室32の底面の高さは点着部4の搬送面の高さと同一に設けられ、点着部4から挿入された乾式分析素子11を素子室32内で、上位部材に付設された加熱手段の温度調整によって所定温度にインキュベーション(恒温保持)する。
【0047】
また、回転部材31の内孔は廃却口33に形成され、素子室32の測定後の乾式分析素子11がそのまま中心側に移動されると廃却口33に落下廃却される。なお、インキュベータ3の上面にはカバーが配設され、廃却口33の下方には測定後の乾式分析素子11を回収する回収箱が配設される。
【0048】
上記インキュベータ3には乾式分析素子11の測定を行う不図示の測定手段を備える。インキュベータ3には比色タイプの乾式分析素子11と電解質タイプの乾式分析素子11とが搬送されるもので、両者の測定が行える測定手段(測光手段と電位差測定手段)を備える。なお、点着部4の側方に電位差測定手段を備えた第2のインキュベータを配設し、これには電解質タイプの乾式分析素子11を分離搬送して、その電位差測定を行うようにしてもよい。
【0049】
比色測定法の場合は、回転部材31の各素子室32の底面中央に測光用の開口が形成され、この開口を通して測定手段の測光ヘッドによる乾式分析素子11の反射光学濃度の測定が行われる。インキュベータ3は回転部材31が往復回転駆動され、所定回転位置の下方に配設された測光ヘッドに対して、順次素子室32の乾式分析素子11の呈色反応の光学濃度の測定を行い、この一連の測定の後、逆回転して基準位置に復帰し、次の測定を行うように、所定角度範囲内で往復回転駆動を行うように制御するものである。
【0050】
また、イオン活量を測定する場合は、素子室32の側辺部に、イオン活量測定のための3対の開口が形成され、電位差測定手段の3対の電位測定用プローブが乾式分析素子11のイオン選択電極に接触可能に設けられる。そして、一方の液供給孔に検体が、他方の液供給孔に参照液が点着された乾式分析素子11では、イオン選択電極対の間にそれぞれ参照液と検体との間のイオン活量の差に対応する電位差が発生するため、電位測定用プローブにより各イオン選択電極対から生ずる電位差を測定すれば検体中の各イオン活量が測定できる。
【0051】
次に、血液濾過ユニット6(図1)は、サンプラトレイ2に保持された検体容器10(採血管)の内部に挿入され上端開口部に取り付けられたガラス繊維からなるフィルターを有するホルダー16を介して血液から血漿を分離吸引し、ホルダー16上端のカップ部に濾過された血漿を保持するようになっている。負圧を作用させる吸引部61の先端下方側にはホルダー16と吸着する吸盤部62が設けられ、この吸盤部62は不図示のポンプと接続される。吸引部61は支持柱63に対し、不図示の昇降機構により昇降移動するように支持されている。
【0052】
そして、血液からの血漿の分離は、吸引部61を下降して検体容器10のホルダー16に密着させる。ポンプを駆動して、検体容器10内の全血を吸い上げフィルターにより濾過しカップ部に血漿が供給される。その後、吸引部61を上昇して元の位置に移動して濾過を終了する。
【0053】
図1は上記のような機構を装置本体17(ケース)に設置した生化学検査装置1の外観を示すものであり、インキュベータ3の上部には表示窓18aを備えた操作パネル18が配設されている。サンプラトレイ2、点着ノズルユニット5は開閉可能な透明保護カバー19によって覆われている。サンプラトレイ2に対する生化学分析用カートリッジ7の装填、交換は、保護カバー19を開いて(外して)行われる。
【0054】
次に、本実施形態による生化学検査装置1の各機能ブロックを表す図3に基づいて、本体内部に備えられた制御ユニット100の構成について詳細に説明する。なお、図3において、上記に説明したサンプラトレイ2、インキュベータ3、点着部4、点着ノズルユニット5、血液濾過ユニット6を、これらの各要素により構成される検査実行機構121により表す。なお、本実施形態による生化学検査装置1は、生化学検査装置1により検査可能な各種の生化学検査を実行する検査実行部120を備え、検査実行部120は上記検査実行機構121と検査実行制御部103から構成され、検査実行制御部103による制御により各種の生化学検査に必要な各種処理を検査実行機構121に実行させることにより各種生化学分析処理を行うものである。
【0055】
図3に示すように、制御ユニット100は、生化学検査の検査内容が選択される検査内容選択部101と、生化学検査を実行する検査実行部120のうち検査実行制御部103と、検査実行部120が使用する検査用品の在庫管理を行う在庫管理部104と、検査内容選択部101において選択された検査内容を示す第1の情報を検査実行部120が使用する検査用品に関する第2の情報に変換する変換部102と、を具備する。また、在庫管理部104は、後述の記憶部109に記憶された対応関係を用いて、検査内容選択部101において選択され得る複数の検査内容のうち、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を判別する判別部105を備える。さらに、本実施形態による生化学検査装置1は、生化学検査がエラーであるか判断するエラー判断部106と、判別部105が判別した検査内容に不足している検査用品の注文を行う検査用品注文部107と、判別部105が判別した検査内容に関する情報を通知する通知部108を備える。また、制御ユニット100は後述する第1の情報と第2の情報との対応関係を表す対応付けテーブルT1、検査用品テーブルT2、在庫管理DBを記憶する記憶部109を備える。
【0056】
検査内容選択部101は、操作パネル18からのユーザ入力に応じて、生化学検査の検査内容を選択するものである。ここでは、ユーザが操作パネル18から所望の各種検査内容を、検査内容ごとに設けられた検査内容IDを入力し、検査内容選択部101は、かかる入力された検査内容IDに特定される検査内容を選択する。なお、検査内容選択部101は、周知の種々の方法を用いて検査内容を選択してよい。例えば、生化学検査装置1にネットワークを介して接続されたコンピュータ端末に医師による検査内容の指示が入力され、かかる入力に基づいて検査内容を選択してもよい。あるいは、生化学検査装置1に接続された端末の画面上でプルダウンメニューにより選択可能に検査内容が表示され、ユーザによるメニュー選択を検出して検査内容を選択してもよく、生化学検査装置1にネットワークを介して接続されたコンピュータ端末の画面上で各種検査内容を表すボタンがそれぞれ選択可能に表示され、ユーザによるボタンの押下操作を検出して検査内容を選択してもよい。
【0057】
変換部102は、検査内容選択部101において選択された検査内容IDを検査実行部120が使用する検査用品に関する第2の情報に変換する。本実施形態においては、この変換部102による処理に先立って、検査内容IDごとに第2の情報(検査用品テーブルT2)を特定する情報を対応付けた対応付けテーブルT1をユーザが予め作成し、記憶部109に記憶する。そして、変換部102は、検査内容選択部101により選択された検査内容IDを取得し、対応付けテーブルT1に基づいて、取得した検査内容IDに対応付けられた検査用品テーブルT2を第2の情報として抽出する。
【0058】
図4および図5を用いて、変換部102による処理をさらに詳細に説明する。図4は、第1の情報ごとに第2の情報を対応付けた対応付けテーブルT1の一例を表す図である。図5は、第2の情報である検査用品テーブルT2の一例を表す図である。図4に示すように、本実施形態における対応付けテーブルT1には、検査内容を表す検査内容IDごとに検査内容名と検査用品テーブルIDが対応付けられて登録されている。図5に示すように、検査用品テーブルT2には、対応する検査内容に用いられる全ての検査用品について検査用品ID、検査用品名およびその使用量がそれぞれ対応付けられている。なお、本実施形態では、検査用品テーブルT2は、対応する検査内容に使用される検査用品の種類や使用量をユーザが予め設定したものであり、検査内容に応じて各検査用品テーブルに登録された検査用品の種類や使用量が異なるものである。
【0059】
変換部102は、対応付けテーブルT1を参照して、検査内容選択部101が選択した検査内容IDを第2の情報である検査用品テーブルT2に変換する。具体的には、図4に示すように、変換部102は、検査内容選択部101が選択した検査内容IDが「YYY_0001」である場合には、対応付けテーブルT1に基づいて検査内容ID「YYY_0001」に対応付けられた検査用品テーブルID「ZZZ_0001」を取得し、取得した検査用品テーブルID「ZZZ_0001」に対応する検査用品テーブルT2(図5参照)を抽出する。
【0060】
また、対応付けテーブルT1には、検査内容ごとに、使用される検査用品の種類と使用量を特定可能に対応付けたものであれば任意の構成としてよい。例えば、図4に示した、対応付けテーブルT1から検査内容名のフィールドを省略してもよく、逆に、対応付けテーブルT1に検査項目名、検査項目コード、検体の種類、測定波長、点着液量、測定時間、データ処理方式、表示桁数や表示単位などの各種情報がさらに対応付けられていてもよい。
【0061】
上記「第1の情報」は、複数の検査項目からなる一連の検査内容を特定するものであればいかなる情報でもよく、一例として、健康診断検査セット、肝臓検査セットなどの検査内容名でもよく、複数の検査項目からなる一連の検査内容を表す識別子であってもよい。
【0062】
また、上記「第2の情報」は、検査用品の種類とその使用量を特定可能な情報であれば、検査実行部120が使用する検査用品に関するいかなる情報を含んでもよく、検査条件や検査方法などの検査内容についての情報など付加情報をさらに含んでもよい。例えば、検査用品テーブルT2は、検査用品名のフィールドを省略してもよく、さらなる情報を含んでもよい。
【0063】
在庫管理部104は、検査の実施に伴い消耗される各検査用品の在庫数を適宜算出し、在庫が不足しないように検査用品を管理する機能を有する。具体的には、在庫管理部104は、検査実行部120が使用する検査用品の在庫状態を登録した在庫管理DBについて、ユーザまたは各種アプリケーションの要求に応じて、検査用品テーブルなどの在庫管理DBを構成する種々のデータの新規登録、変更、削除および在庫管理DBからの所望の情報の抽出などを行う。
【0064】
図6は、在庫管理DBを構成する在庫テーブルT3を例示する図である。図6に示すように、本実施形態における在庫管理DBを構成する在庫テーブルT3には、検査用品IDごとに、検査用品の在庫数、検査用品の購入単位、検査用品の使用期限が対応付けられて登録されている。在庫管理部104は、一連の複数の検査項目からなる検査内容の終了ごとに記憶部109から検査用品テーブルT2を取得し、在庫テーブルT3から検査用品テーブルT2に登録された検査用品IDに対応する在庫数を検査用品テーブルT2に登録された使用量に応じて減算して在庫テーブルT3を更新する。
【0065】
また、本実施形態における在庫管理部104は、記憶部109に記憶された対応付けテーブルT1を用いて、検査内容選択部101において選択され得る複数の検査内容のうち、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を判別する判別部105を具備している。
【0066】
本実施形態においては、検査内容IDごとに所定の期間に実施される各検査内容の平均検査回数(所定回数)を対応付けた不図示の基準検査回数テーブルを在庫管理DBに予め登録されている。なお、この所定の期間は、発注から納品までの概算期間を任意に設定したものである。そして、判別部105は、対応付けテーブルT1および基準検査回数テーブルに基づいて、判断テーブルに登録された全種類の検査内容IDについてそれぞれ平均検査回数を実行するために必要な検査用品の数量の総和を算出し、検査用品ごとに必要な検査用品の数量の総和を対応付けた基準在庫テーブルT4(不図示)を作成して在庫管理DBに登録する。そして、判別部105は、基準在庫テーブルT4と在庫テーブルT3を比較して、両テーブルT3、T4に共通する検査用品IDについて、基準在庫テーブルT4に登録された数量よりも在庫が少ない検査用品を在庫僅少検査用品として特定するとともに特定された検査用品を使用する検査内容を在庫僅少検査セットとして特定する。
【0067】
なお、本実施形態に限定されず、所定回数は、各種検査の頻度などの使用条件やユーザの要求に応じて任意に設定できる。また、所定回数は、検査内容ごとに異なる値を設定してもよく、全ての検査内容に対して単一の値を設定してもよい。また、上記の在庫管理部104による在庫テーブルT3から検査用品テーブルT2に基づいて検査用品の在庫数を減算する処理、基準在庫テーブルT4の作成処理および判別部105による在庫の在庫僅少検査用品および在庫僅少検査内容を特定する処理は、ユーザの要求や使用条件に応じて任意のタイミングで実行してよい。また、基準在庫テーブルT4の作成は、判別部105による在庫の在庫僅少検査用品および在庫僅少検査内容を特定する処理ごとに毎回行う必要はなく、基準検査回数テーブルの更新時など所定の機会にのみに行ってもよい。
【0068】
また、判別部105は、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を特定可能なあらゆる方法で、かかる検査内容を特定してよい。
【0069】
また、在庫管理部104は、消費期限を過ぎた検査用品については在庫テーブルT4から、定期的に除去している。また、判別部105は、消費期限を過ぎた検査用品が使用不可になることによる検査用品の在庫不足が生じるのを防ぐために、上記概算期間の間に消費期限が切れる検査用品については、使用可能な検査用品から除去してもよい。かかる場合には、検査用品が検査時に消費期限を経過して使用不可となることにより在庫不足が生じることを防止することができる。また、在庫テーブルT3は、図6に関わらず任意の構成としてよい。例えば、購入単位や使用期限などのフィールドを省略してもよく、さらなるフィールドを設けてもよい。
【0070】
検査用品注文部107は、判別部105により在庫僅少検査セットが存在すると判別した場合に、判別部105から在庫僅少検査用品の検査用品IDを取得する。そして、検査用品注文部107は、取得した検査用品IDに基づいて、在庫管理部104に在庫管理DBに予め登録され、検査用品IDごとに発注先や購入単位などの発注に必要な発注情報を対応付けた不図示の発注先テーブルT5から発注に必要な発注情報を抽出させる。そして、検査用品注文部107は、抽出された発注情報に基づいて、ネットワークを介して生化学検査装置1に接続された周知の注文システムにより在庫僅少検査用品を発注する。
【0071】
なお、検査用品注文部107は、検査用品を特定する情報に基づいて検査用品を発注することができるものであれば、あらゆる周知の発注方法を適用可能である。例えば、検査用品注文部107が抽出された発注情報に基づいて直接電子メールやFAXによって発注先に検査用品を直接発注してもよく、検査用品注文部107が取得した検査用品IDおよびこの検査用品IDの発注依頼を化学検査装置1に接続された外部の注文システムに送信し、外部の注文システムが発注先および発注数などの発注に必要な発注情報を抽出して、発注先に検査用品の発注を行ってもよい。
【0072】
通知部108は、判別部105により在庫僅少検査セットが存在すると判別した場合に、判別部105から在庫僅少検査用品の検査用品IDを取得する。そして、通知部108は、在庫管理部104により取得した検査用品IDに対応する検査用品名を特定させる。そして特定された検査用品名および検査用品IDを表示窓18aに警告表示するとともに、ネットワークを介して生化学検査装置1に接続されたコンピュータ端末に送信し、検査内容に不足している検査用品を通知する。
【0073】
また、エラー判断部106は、検査実行制御部103から検査の実行結果の情報を取得し、実行された各検査項目の結果がそれぞれ再検査の必要なエラーであるか否かを判断する。検査実行制御部103は、エラー判断部106が検査項目の再検査が必要なエラーを判断した場合に再検査を実行するとともに検査用品テーブルT2を再検査に使用する検査用品に関する情報を含むように更新する。ここでは、検査実行制御部103は、検査用品テーブルT2に再検査に使用する検査用品の種類とその使用量を追加して、検査用品テーブルT2を更新する。
【0074】
一般的に、生化学検査装置においては、検体の粘度が高過ぎるために検査値がオーバーレンジとなって有効な検査ができないことがよく起こる。本実施形態では、エラー判断部106は、検出範囲を超えた検査値が検出されたオーバーレンジエラーを再検査の必要なエラーと判断し、それ以外のエラーを再検査不要なエラーと判断する。そして、検査実行制御部103は、オーバーレンジエラーの場合には、検査値を検出範囲内に収めるために検体の希釈率を高くする。即ち、検体を希釈液で希釈する濃度を小さくした後に、検査実行部120により再検査を行う。そして、検査実行制御部103は、ユーザにより再検査のために操作パネル18から設定された希釈率または対応付けテーブルT1に登録された所定の再検査用希釈率に基づいて、再検査に用いられる希釈液の量を算出し、再検査に用いられる希釈液の量を検査用品テーブルT2に追加して更新する。また、再検査に用いるノズルチップ12等の他の検査用品についても同様に、再検査で使用した数量を検査用品テーブルT2に追加して更新する。かかる検査用品テーブルT2の更新処理と再検査は任意の順番で実行してよく、同時に実行してもよい。
【0075】
図7は、生化学検査装置1の処理の流れを説明するフローチャートである。次いで、図7を用いて生化学検査装置1の動作について説明する。
【0076】
まず、分析を行う前に、装置外で検体を収容した検体容器10およびその測定項目に対応した複数種類の乾式分析素子11が装填された生化学分析用カートリッジ7を用意する。ここでは、健康診断セットを構成する複数の測定項目に対応する乾式分析素子11が生化学分析用カートリッジ7に装填されている。
【0077】
ユーザは、検体容器10および乾式分析素子11を対応して保持させた生化学分析用カートリッジ7を、保護カバー19を外してサンプラトレイ2に装填する。また、消耗品であるノズルチップ12、混合カップ13、希釈液容器14および参照液容器15をサンプラトレイ2に装填する。図2の形態では消耗品カートリッジ8を装填する。そして、健康診断セットの検査内容IDを操作パネル18から入力する。すると、検査内容選択部101は、入力された検査内容IDを取得して、取得した検査内容IDに特定される検査内容を選択する(S01)。
【0078】
次いで、変換部102は、対応付けテーブルT1に基づいて、取得した検査内容IDに対応する第2の情報を検査用品テーブルT2として取得する(S02)。
【0079】
次いで、検査実行制御部103は検査実行部120を制御して、各検査項目に対応する各乾式分析素子11に対し、生化学分析用カートリッジ7に装填された順に以下の検査項目実行処理を実行する(S03)。
【0080】
まず、血液濾過ユニット6により、検体容器10内の全血を濾過して血漿成分を得る。次に、サンプラトレイ2を回転させて測定する検体の生化学分析用カートリッジ7を点着部4に対応する位置に停止させる。搬送部9の素子搬送部材91によりその生化学分析用カートリッジ7から乾式分析素子11を点着部4に搬送する。
【0081】
そして、読み取られた検査項目がイオン活量測定の場合、希釈依頼項目の場合等に応じて異なる処理を行う。読み取られた検査項目が比色測定の場合は、サンプラトレイ2を回転させて点着ノズル53の下方にノズルチップ12を移動させ、点着ノズル53に装着する。続いて検体容器10を移動させ、点着ノズル53を下降してノズルチップ12に検体を吸引し、点着ノズル53を点着部4に移動して、乾式分析素子11に検体を点着する。
【0082】
そして、検体が点着された乾式分析素子11がインキュベータ3に挿入される。乾式分析素子11が挿入されると、インキュベータ3の素子室32を回転して、挿入された乾式分析素子11を順次測光ヘッドと対向する位置に移動する。そして、所定時間後測光ヘッドによる乾式分析素子11の反射光学濃度の測定が行われる。測定終了後、素子室32を挿入時の位置に戻し、素子搬送部材91によって測定後の乾式分析素子11を中心側に押し出して廃却する。そして、測定結果を出力し、使用済みのノズルチップ12を点着ノズル53から外して廃却する。
【0083】
また、読み取られた検査項目がイオン活量の測定の場合は、電解質タイプの乾式分析素子11が装填された生化学分析用カートリッジ7が生化学検査装置1に装填され、電解質タイプの乾式分析素子11を用いて検査が行われる。まず、一方の点着ノズル53にノズルチップ12を装着し、検体を吸引する。次に、他方の点着ノズル53に別のノズルチップ12を装着し、参照液容器15から参照液を吸引する。次いで、一方の点着ノズル53により検体を乾式分析素子11の一方の液供給孔に点着し、さらに、他方の点着ノズル53により参照液を乾式分析素子11の他方の液供給孔に点着する。
【0084】
そして、検体および参照液が点着された乾式分析素子11が、点着部4からインキュベータ3の素子室32に挿入される。この乾式分析素子11がインキュベータ3に挿入されると、電位差測定手段によるイオン活量の測定が行われる。測定終了後、素子搬送部材91によって測定後の乾式分析素子11をインキュベータ3の中心部の廃却口33に廃却する。そして測定結果を出力し、両方の使用済みのノズルチップ12,12を両点着ノズル53,53から外して廃却する。
【0085】
また、読み取られた検査項目が希釈依頼項目の場合については、後述の再検査処理(S05)と同様の処理となるため、ここでは省略する。
【0086】
そして、エラー判断部106は、測定結果が再検査を要するエラーか否かを判断し、再検査を要するエラーでなければ(S04のN)、検査項目実行処理を終了する。そして、検査実行制御部103は、生化学分析用カートリッジ7に装填された乾式分析素子11がなくなるまで、すなわち、検査セットの検査項目が全て終了するまで(S07のY)、上記検査項目実行処理(S03からS06)を繰り返す。
【0087】
一方、エラー判断部106は、測定結果が再検査を要するエラーか否かを判断し、再検査を要するエラーである場合には(S04のY)、再検査を実行する(S05)。具体的には、血液の濃度が濃すぎて正確な検査を行うことができない場合に、サンプラトレイ2を移動してノズルチップ12を点着ノズル53に装着する。次にサンプラトレイ2を移動して検体上で点着ノズル53を下降してノズルチップ12に検体を吸引する。サンプラトレイ2を移動して吸引した検体をノズルチップ12から混合カップ13に分注した後、使用済みのノズルチップ12を外す。次いで、新しいノズルチップ12を点着ノズル53に装着し、希釈液容器14からノズルチップ12に希釈液を吸引する。吸引した希釈液をノズルチップ12から混合カップ13に吐出する。そして、ノズルチップ12を混合カップ13内に挿入して吸引と吐出とを繰り返して撹拌を行う。撹拌を行った後、希釈した検体をノズルチップ12に吸引し、希釈した検体を吸引した点着ノズル53を点着部4に移動して、乾式分析素子11に検体を点着する。以下同様に、測光、素子廃却、結果出力およびチップ廃却を行って再検査処理を終了する。
【0088】
また、検査実行制御部103は、再検査処理を実行すると同時に、再検査で用いたノズルチップ12と乾式分析素子11と希釈液を使用した分量加算して検査用品テーブルT2を更新する(S06)。
【0089】
そして、検査用品テーブルT2を更新した後、検査実行制御部103は、生化学分析用カートリッジ7に装填された乾式分析素子11がなくなるまで、すなわち、検査セットの検査項目が全て終了するまで(S07のY)、次々検査項目実行処理(S03からS06)を繰り返す。
【0090】
そして、在庫管理部104は、検査実行制御部103による検査実行処理が終了すると(S07のN)、記憶部109から検査用品テーブルT2を取得し、在庫テーブルT3から検査用品テーブルT2に登録された検査用品を登録された数量分減算して在庫テーブルT3を更新する(S08)。
【0091】
そして、判別部105は、各検査内容を所定回数分実行するために必要な検査用品とその数量を登録した不図示の基準在庫テーブルT4を作成し、基準在庫テーブルT4と在庫テーブルT3と比較し、基準在庫テーブルT4に登録された数量よりも在庫の少ない検査用品を判別する(S09)。そして判別された検査用品を在庫僅少検査用品として特定するとともに、在庫僅少検査用品を使用する検査内容を在庫僅少検査セットとして特定する。
【0092】
次いで、通知部108は、在庫僅少検査用品および在庫僅少検査内容を、生化学検査装置1に外部接続されたコンピュータ端末に通知するとともに表示窓18aに警告表示する(S10)。
【0093】
そして、検査用品注文部107は、在庫僅少検査用品を検査用品IDに基づいて、発注先に発注して、本実施形態の生化学検査装置1の処理を終了する(S11)。
【0094】
上記のような実施の形態では、検査内容(第1の情報)に基づいて変換された検査用品テーブルT2(第2の情報)に基づいて在庫管理を行うことにより、ユーザが個々に検査用品を特定しなくても、検査内容を特定する情報を選択するだけで検査内容に使用される各検査用品を特定できるため、容易かつ正確に在庫管理を行うことができる。
【0095】
また、特許文献1乃至3に記載された方法では、個々の指示例えば試薬ごとに使用量が異なるために検査単位で識別コードを付すことができない希釈液などの消耗品や検査予定に登録されていない検査に用いられる消耗品などについては、手動で識別コードを入力する必要があり、記録漏れなどの誤りを十分には低減できなかった。しかしながら、上記実施形態では、識別コードを有さない消耗品を含む場合であっても検査内容に応じてその検査内容に使用される各検査用品を自動的に管理できるため、多様な種類の検査用品に対する汎用性が高く、容易かつ精度よく在庫管理を行うことができる。
【0096】
また、上記の実施形態では操作パネルにより検査内容の選択をしたが、これに替えて、医師などがネットワーク接続されたコンピュータ端末から検査内容の指示をし、これを入力として検査内容を選択してもよい。この場合、ネットワーク接続されたコンピュータ端末から検査内容に含まれる個々の検査項目や消耗品に精通していないユーザが検査内容を選択する可能性がある場合でも、ユーザが検査内容を調べたり検査担当者に確認することなく、検査内容を選択することにより容易かつ精度よく在庫管理を行うことができる。
【0097】
また、上記実施形態の生化学検査装置における在庫管理部104が、記憶部109に記憶された対応関係を用いて、検査内容選択部101において選択され得る複数の検査内容のうち、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を判別する判別部105を具備する。かかる判別部105は本発明に必須の構成ではないが、判別部105を備えることにより、必要に応じて検査用品が保有されていない検査内容を判別することができ、検査の可否の判断および消耗品の在庫管理を適切に行うことができる。
【0098】
また、上記実施形態において、生化学検査装置1は、生化学検査がエラーであるか判断するエラー判断部106を具備する。かかるエラー判断部106は本発明に必須の構成ではないが、上記の実施形態のようにエラー判断部106を備え、検査実行部120が、エラー判断部106が生化学検査のエラーを判断した場合に再検査を実行し、在庫管理部104が、実行された再検査に応じて第2の情報を更新する場合には、再検査に応じて生じた消耗品の消費をユーザが個々に在庫テーブルや管理台帳に入力する手間を省くとともに入力忘れなどの人為ミスを防止し、再検査に応じて生じた消耗品の消費を適切に反映して在庫管理を行うことができる。このため、さらに容易に精度よく在庫管理を行うことができる。
【0099】
また、上記実施形態において、生化学検査装置1における検査実行部120は、再検査においては検体の希釈率を増加させるとともに増加された希釈率に応じて第2の情報に含まれる希釈液の使用量を更新するものであるため、在庫管理部104は、再検査に応じて生じた消耗品の消費を適切に反映して在庫管理を行うことができる。このため、さらに容易に精度よく在庫管理を行うことができる。
【0100】
また、上記実施形態において、生化学検査装置1は、判別部105が判別した検査内容に関する情報を通知する通知部108を具備する。この通知部108は本発明に必須の構成ではないが、本実施形態では通知部108を備えたため、在庫に検査用品が保有されていない検査内容を検査担当または発注担当のユーザまたは発注システムなどに通知することにより、検査用品の欠品が発生しないよう注意を喚起することができ、検査の可否の判断および消耗品の在庫管理を適切に行うことができる。
【0101】
また、上記実施形態において、生化学検査装置1は、判別部105が判別した検査内容に不足している検査用品の注文を行う検査用品注文部108を具備する。この検査用品注文部108は本発明に必須の構成ではないが、本実施形態では検査用品注文部108を備えたため、検査内容に不足している検査用品を適切に注文することにより消耗品の在庫管理を確実に行うことができる。この結果、ユーザの負担が軽減され、測定作業の効率を向上できる。
【0102】
さらに、検査用品注文部108は、一の検査内容に必要な全ての検査用品を1組として扱い、検査内容ごとに検査用品の注文を行うものであってもよい。例えば、上記実施形態における検査用品テーブル2に登録された全検査用品が「健康診断セット用検査用品」として一括販売されている場合、「健康診断セット用検査用品」単位で発注してもよい。この場合には、個々の消耗品を注文する必要がないため注文漏れがなく、正確かつ容易に検査用品を注文できる。
【0103】
また、上記各実施形態では、生化学検査装置1は、生化学検査装置1の制御部100に検査内容選択処理、変換処理、在庫管理処理、判別処理、検査用品注文処理、通知処理、エラー判断処理を行う各プログラムを組み込むことにより、生化学検査の制御部を検査内容選択部、変換部、在庫管理部、判別部、検査用品注文部、通知部、エラー判断部として機能させるものであったが、これに変えて、検査内容選択部、変換部、在庫管理部、判別部、検査用品注文部、通知部、エラー判断部のいずれかまたはこれらの任意の組合せを生化学検査装置に接続された1台以上のコンピュータ端末に各処理を行うプログラムを分散して組み込むことにより、生化学検査装置1と同等の機能を実現する生化学検査システムを構築してもよい。
【0104】
上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。この他、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成や具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 生化学検査装置
2 サンプラトレイ
3 インキュベータ
4 点着部
5 点着ノズルユニット
7 生化学分析用カートリッジ
9 搬送手段
10 検体容器
11 乾式分析素子
21,22 回転台
91 素子搬送部材
100 制御ユニット
101 検査内容選択部
102 変換部
103 検査実行制御部
104 在庫管理部
105 判別部
106 エラー判断部
107 検査用品注文部
108 通知部
109 記憶部
120 検査実行部
T1 対応付けテーブル
T2 検査用品テーブル
T3 在庫テーブル
T4 基準在庫テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査装置であって、
生化学検査の検査内容が選択される検査内容選択部と、
生化学検査を実行する検査実行部と、
前記検査実行部が使用する検査用品の在庫管理を行う在庫管理部と、
前記検査内容選択部において選択された検査内容を示す第1の情報を、前記検査実行部が使用する検査用品に関する第2の情報に変換する変換部と、
を具備し、
前記在庫管理部が前記第2の情報を用いて在庫管理を行う、
ことを特徴とする生化学検査装置。
【請求項2】
前記変換部は、
前記検査内容選択部において選択された検査内容に必要な検査用品の種類および使用量を、前記第1の情報に基づいて特定し、当該検査用品の種類および使用量を前記第2の情報とする、
請求項1の生化学検査装置。
【請求項3】
前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を記憶した記憶部をさらに具備し、
前記在庫管理部は、
前記記憶部に記憶された対応関係を用いて、前記検査内容選択部において選択され得る複数の検査内容のうち、所定回数以上の生化学検査の実行が可能な検査用品が保有されていない検査内容を判別する判別部を具備する、
請求項1の生化学検査装置。
【請求項4】
生化学検査がエラーであるか判断するエラー判断部をさらに具備し、
前記検査実行部は、前記エラー判断部が生化学検査のエラーを判断した場合に再検査を実行するとともに前記第2の情報を前記再検査に使用する検査用品に関する情報を含むように更新する、
請求項1の生化学検査装置。
【請求項5】
前記検査実行部は、
再検査においては検体の希釈率を増加させる制御を行うとともに前記第2の情報を該第2の情報に含まれる希釈液の使用量が前記増加された希釈率に対応するように更新する、
請求項4の生化学検査装置。
【請求項6】
前記判別部が判別した検査内容に関する情報を通知する通知部、
をさらに具備する請求項3の生化学検査装置。
【請求項7】
前記判別部が判別した検査内容に不足している検査用品の注文を行う検査用品注文部、
をさらに具備する請求項3の生化学検査装置。
【請求項8】
前記検査用品注文部は、
一の検査内容に必要な全ての検査用品を1組として扱い、検査内容ごとに検査用品の注文を行う、
請求項7の生化学検査装置。
【請求項9】
前記検査用品は、
検体を試薬と反応させる試薬スライド、検体を希釈する希釈溶液、および検体または希釈溶液の吸引または滴下に使用されるノズルチップを含む、
請求項1から請求項8のいずれか1つの生化学検査装置。
【請求項10】
生体から採取される検体を生化学検査する生化学検査方法であって、
生化学検査の検査内容が選択されるステップと、
選択された検査内容を示す第1の情報を、使用する検査用品に関する第2の情報に変換するステップと、
前記第2の情報を用いて前記検査用品の在庫管理を行うステップと、
を具備する生化学検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211804(P2012−211804A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77183(P2011−77183)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】