説明

生地混練用縦型ミキサ

【課題】混練対象物が混練羽根により混練される際にグルテンが破壊されることなく、混練対象物が混練羽根により均質に混練されまでの時間を短くできる生地混練用縦型ミキサを提供すること。
【解決手段】筒状胴部5の内周面は水平断面形状が正多角形状に形成されていると共に、底壁6は周縁から中央に向けて下方に傾斜させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モータにより回転させられる回転翼により容器内の生地の混練をおこなう生地混練用縦型ミキサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の生地混練装置としては、麺の原料が投入されるミキサ胴体と、ミキサ胴体の内部にミキサ胴体に水平に配置され外周面に複数の攪拌棒が取り付けられた回転軸と、回転軸を回転駆動するモータと、ミキサ胴体内に練り水を供給する練り水受け皿とを備えた麺生地用ミキサ装置が知られている。
【0003】
この麺生地用ミキサ装置では、モータで回転軸を回転駆動して攪拌棒を回転させつつ、練り水受け皿からミキサ胴体内に練り水を供給することにより、ミキサ胴体内に投入された麺の原料を混練するようになっている。しかも、この麺生地用ミキサ装置では、ミキサ胴体の底部は、回転軸に垂直な面で切った切断面が、攪拌棒先端の回転軌跡に沿うように多角形に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この麺生地用ミキサ装置では、ミキサ胴体が水平方向に延びていると共に複数の攪拌棒が取り付けられた回転軸が水平に延びている為に、混練された麺生地をミキサ胴体の底部側から取り出す際に、回転軸や攪拌棒が邪魔になる傾向にある。
【0005】
これを解消するものとしては、水平断面形状が長方形で上端が開放する有底の容器と、容器の底部内に配設された練り羽根と、容器の中央を貫通し且つ前記練り羽根が一体に設けられた回転軸と、容器の外側に配設されて回転軸を駆動するモータを備えた混練調理器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この混練調理器では、原材料に水を加えたパン生地,麺生地等の混練対象物を容器内に投入して、混練対象物を回転軸と一体に回転する練り羽根で混練することにより、混練対象物にグルテンを生じさせ、上方から容易に混練対象物を取り出せるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−188763号公報
【特許文献2】特開2008−255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この混練調理器では、容器の底面が平坦であると共に容器の水平断面形状が長方形であるために、混練対象物が練り羽根により容器の長手側から短手側の部分への移動する際に、移動が必ずしもスムーズに行われるとは限らない。この結果、混練対象物が練り羽根(混練羽根)により均質に混練されまでの時間が長くかかるものと思われる。
【0009】
そこで、この発明は、混練対象物が混練羽根により混練される際に強弱の圧力を交互に受けるため効率よくグルテンが生成され、混練対象物が混練羽根により均質に混練されまでの時間を短くできる生地混練用縦型ミキサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、この発明は、上端が材料投入口として開放する筒状胴部及び前記筒状胴部の下端に連設された底壁が設けられた有底のミキサ胴本体と、前記ミキサ胴本体の底壁を貫通して前記ミキサ胴本体の底部内に突出する回転軸と、前記回転軸の前記底部内への突出部に設けられた混練羽根と、前記材料出入口に開閉可能に嵌着され且つ前記ミキサ胴体内に練り水を供給する水供給孔が設けられた練り水受け皿と、を備える生地混練用縦型ミキサであって、前記筒状胴部の内周面は水平断面形状が正多角形状に形成されていると共に、前記底壁は周縁から中央に向けて下方に傾斜させられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この構成によれば、混練対象物が混練羽根により混練される際に強弱の圧力を交互に受けるため効率よくグルテンが生成され、混練対象物が混練羽根により均質に混練されまでの時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る生地混練用縦型ミキサの概略的な縦断面図である。
【図1A】図1の水受け皿の拡大断面図である。
【図1B】図1の水受け皿の左側面図である。
【図2】図1のミキサ胴本体の左側面図である。
【図3】図1の生地混練用縦型ミキサの平面図である。
【図3A】図1の生地混練用縦型ミキサの変形例を示す平面図である。
【図4】図3のミキサ胴本体と混練羽根の拡大平面図である。
【図4A】図4のB1−B1線に沿う断面図である。
【図5】図1の練り水受け皿の平面図である。
【図6】図1のミキサ胴本体を展開した状態に形成したミキサ胴用打抜板の説明図である。
【図7】図6のミキサ胴用打抜板を折曲線に沿って折り曲げる際の平面図である。
【図8】図6のミキサ胴用打抜板から底板を形成する際の断面図である。
【図9】図6の胴板部を折曲線に沿って折り曲げた状態の説明図である。
【図10】図6の底板部を折曲線に沿って折り曲げた状態の説明図である。
【図11】図1の底板の中央に取り付けられる環状体の説明図である。
【図12】図11の環状体を図10の底板部の中央に取り付けた拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0014】
[構成]
図1は、この発明に係る生地混練用縦型ミキサを示したものである。
【0015】
図1において、1は縦型のミキサ胴本体(筒状混練容器)、2はミキサ胴本体1の底部(下部)内に配設された混練部材、3は混練部材2を回転させる回転軸、4は回転軸3を回転駆動する軸回転駆動装置である。
【0016】
ミキサ胴本体1は、周方向に回転しないように図示しないフレーム等の支持枠(支持部材)に着脱可能に取り付けられている。この支持枠(図示せず)には、軸線Oを上下方向に向けた回転軸3がベアリング(軸受)2a,2aを介して回転自在に取り付けられ(保持され)ている。
<ミキサ胴本体1>
また、ミキサ胴本体1は、上端が材料投入口(出入口)1aとして開放する筒状胴部5と、筒状胴部5の下端に連設された底壁6を備えている。
(筒状胴部5)
更に、筒状胴部5は、図3,図4に示したように周方向に鈍角を為して一体に連設された複数の平板状の側壁部5aから正多角形状に形成されていて、内周に平坦(平面的)な側壁面5a1を有する。
(底壁6)
また、底壁(底部)6は、図4に示したように複数の側壁面5a1にそれぞれ連設され且つ中央に向けて下方に傾斜させられた複数の底壁部6aから逆正多角錐状に形成されている。
【0017】
この底壁6の中央部には六角形状の取付孔6bが形成されていて、この取付孔6bには六角形状の環状体6cが嵌合されている。この環状体6cは底壁6に溶接等により一体に取り付けられている。また、環状体(環状板)6c内には軸挿通孔6dが形成されている。そして、ミキサ胴本体1の底部(下部)内には、図1,図4に示したように軸挿通孔6dを貫通する回転軸3の上端部が挿入配設されている。この回転軸3の上端部には図1に示したように雄ねじ筒7が嵌合され、雄ねじ筒7は止めネジ(固定ネジ)8で回転軸3の上端部に固定されている。
(混練部材2)
また、混練部材2は、雄ねじ筒7に螺着された袋ナット9と、袋ナット9に一体に設けられた混練羽根(混練部材本体)10を有する。この混練羽根10は、図3,図4に矢印A1で示した時計回り方向に回転軸3と一体に回転させられる。しかも、混練羽根10は、基端(回転軸3側端部)から先端に向かうに従って回転方向A1とは反対側に後退するように袋ナット9に一体に設けられている。その上、混練羽根10は、図2に示したように下縁から上縁に向かうに従って矢印A1で示した回転方向とは反対側に傾斜させられている。
【0018】
この構造において図4に示したように混練羽根10の先端の回転軌跡を11、とすると、筒状胴部5の各側壁部5aおよび側壁面5a1は回転軌跡11の略接線方向に延びていて、各側壁部5aから形成される筒状胴部5の断面形状は正多角形状に形成される。この筒状胴部5の断面形状は、本実施例では正12多角形状に形成されているが、必ずしも正12多角形状に限定されるものではなく、正三角形状,正四角形状,正五角形状等その他の多角形状も含まれる。このような筒状胴部5の側壁面5a1と回転軌跡11との間には、側壁面5a1と回転軌跡11の法線方向の部分において混練羽根10が回転可能な必要最小限の間隙S1が形成される。
【0019】
この条件では、生地が筒状胴部5の周方向に混練翼10により移動させられる際、すなわち側壁面5a1から隣接する側壁面5a1への移動させられる際に、混練羽根10の先端部と側壁面5a1との間で混練物にグルテン(グルテン組織)を生成させるのに必要な混練力を作用させることができる。しかも、この際に生地に無理な力が作用するのを回避して、混練により生じるグルテン組織に破壊が生ないようにできる。
【0020】
本実施例では、筒状胴部5の水平断面形状が正12多角形状に形成されている。この条件では、生地が筒状胴部5の周方向に混練翼10により移動させられる際、すなわち側壁面5a1から隣接する側壁面5a1への移動させられる際に、混練羽根10から生地に作用する力は、側壁面5a1,5a1の角度が90°以下の角度に形成するような正多角形(正三角形状,正四角形状等)に比べて小さくできる。このように隣接する側壁面5a1,5a1の角度が鈍角に形成されている場合、側壁面5a1,5a1の角度が90°以下の角度の正多角形に比べて、混練羽根10の先端部と側壁面5a1との間にグルテンを生成させる混練力を小さくできる。また、隣接する側壁面5a1,5a1の角度が鈍角に形成されている場合、側壁面5a1,5a1の角度が90°以下の角度の正多角形に比べて、生地に作用する力を小さくして、混練により生じる生地のグルテン組織に作用する力を小さくできる。この場合、混練により生じる生地のグルテン組織の破壊をより確実に防止できる。
【0021】
本実施例では、隣接する側壁面5a1,5a1の角度が鈍角に形成される一例として、筒状胴部5の水平断面形状を正12多角形状に形成された例を示しているが、必ずしも正12多角形に限定されない。例えば、筒状胴部5の水平断面形状が正五角形以上であれば、側壁面5a1,5a1の角度を鈍角に形成できる。
【0022】
また、隣接する側壁部5a,5aの連設部5bと回転軌跡11との間隙をS2とすると、筒状胴部5の水平断面形状を正多角形状に形成することで、間隙S2は間隙S1の部分から連設部5bに向かうに従って徐々に大きくなる。
【0023】
ここで、図4において、混練羽根10の下縁のある点Pにおける回転軌跡をP11とすると、混練羽根10と底壁6と間には図4Aに示したように回転軌跡P11と複数の各底壁部6aとの間に間隙S1と同様な間隙S1′が形成され、隣接する底壁部6a,6aとの連設部と回転軌跡P11との間には間隙S2と同様な間隙S2′が形成される。この間隙S2′は、混練羽根10の基端すなわち回転軸3側に向かうに従って徐々に小さくなる。
<軸回転駆動装置4>
この軸回転駆動装置4は、図1,図3に示したように、図示しない支持枠に固定された軸回転駆動モータ12と、この軸回転駆動モータ12の回転を回転軸3に伝達する回転力伝達機構13を有する。回転力伝達機構13は、軸回転駆動モータ12の出力軸12aに固定された駆動スプロケット14と、回転軸3に固定された従動スプロケット15と、スプロケット14,15に掛け渡された駆動チエーン16を有する。そして、軸回転駆動モータ12を作動させて出力軸12aを回転駆動すると、駆動スプロケット14が出力軸12aと一体に回転させられる。この回転は、駆動チェーン16及び従動スプロケット15を介して回転軸3に伝達され、回転軸3が矢印A1方向に回転駆動させられる。これにより、ミキサ胴本体1内の混練羽根10も回転軸3と一体に矢印A1方向に回転駆動させられる。
<練り水受け皿17>
図1に示したように、ミキサ胴本体1の材料投入口1aは練り水受け皿17で開閉可能に閉成されている。この練り水受け皿(加水皿)17は、多角形状の環状周壁18a及び底壁18bを有する透明な水受け皿本体18と、水受け皿本体18の環状周壁18aの外周面に一体に設けられた多角形状の環状体19を有する。この環状体19は、環状周壁18aの上端から内方に突出するフランジ(上部フランジ)F1と、環状周壁18aの外周面の上下方向の中間部から外方に突出するフランジ(下部フランジ)F2を有する。
【0024】
また、練り水受け皿17の底壁18bは、中央に向かうに従って下方に傾斜していて、逆円錐状に形成されている。これにより底壁18bの上面(符号省略)も、底壁18bの中央に向かうに従って下方に傾斜していて、逆円錐状に形成されている。
【0025】
また、フランジF2には、180°の間隔をおいて突部19a,19bが形成されている。そして、突部19aには環状周壁18aの接線方向に延びる係合軸20が一体に設けられ、突部19bにはクランプ用フック21が一体に設けられている。
【0026】
一方、図1,図3に示したように筒状胴部5の上端外周面には、周方向の180°の間隔をおいて軸係合フック22とキャッチクリップ23が取り付けられている。
【0027】
このキャッチクリップ23は、図1,図3に示したように筒状胴部5に固定されたベース24と、このベース24に上端部が支持軸25aを介して回動自在に取り付けられた操作レバー25と、操作レバー25に支持軸26aを介して回動自在に取り付けられ且つ縮小する方向にバネ根付勢された伸縮アーム26と、伸縮アーム26の先端部に取り付けられた係合軸27を有する。このキャッチクリップ23の構造には、例えば特開2007−63902号公報に開示されたものと同じ周知の構造が採用されているので、その詳細な説明は省略する。
【0028】
そして、練り水受け皿17の環状周壁18aを筒状胴部5の上端部内に嵌合し、環状周壁18aのフランジF2を筒状胴部5の上端に載置するとともに、フランジF2の突部19aに設けた係合軸20を筒状胴部5の軸係合フック22に係合させる。一方、キャッチクリップ23の操作レバー25を支持軸26aを中心に上方に回動させた状態で、キャッチクリップ23の係合軸27を練り水受け皿17のフランジF2に設けたクランプ用フック21に係合させた後、操作レバー25を支持軸26aを中心に下方に回動させることで、フランジF2の突部19a,19bを筒状胴部5の上端に押し付ける。これにより、練り水受け皿17は、水受け皿本体18がミキサ胴本体1の上部開口端である材料投入口1aに着脱可能に嵌着されて、材料投入口1aを閉成する。
【0029】
また、図5に示したように、水受け皿本体18の傾斜する底壁18bの中間部には、半径方向に延びる複数の水案内溝28が周方向の90°の間隔で形成されている。この水案内溝28の底部には、水受け皿本体18の半径方向に間隔をおいて溝内水供給孔(第1の水供給孔)29が複数形成されている。
【0030】
また、底壁18bには、水案内溝28より内側の同心円上で且つ水案内溝28と45°ずれた位置に中間水供給孔(第2の水供給孔)30が形成されている。更に、底壁18bの中央には中央水供給孔(第3の水供給孔)31が形成されている。
[作用]
次に、このような構成の生地混練用縦型ミキサの作用を説明する。
【0031】
筒状胴部5の材料投入口1aから混練材料として投入する。この混練材料としては、例えばそば粉や小麦粉等の麺生地用粉体(混練用粉体)或いは米粉等の粉体、塩等やその他の調味料、粉砕した野菜や海草類等その他の材料等がある。
【0032】
このような混練材料を筒状胴部5内に投入した後、材料投入口1aに練り水受け皿17を嵌合すると共に、フランジF2の突部19aに設けた係合軸20を筒状胴部5の軸係合フック22に係合させる。一方、キャッチクリップ23の操作レバー25を支持軸26aを中心に上方に回動させた状態で、キャッチクリップ23の係合軸27を練り水受け皿17のフランジF2に設けた軸係合フック22に係合させた後、操作レバー25を支持軸26aを中心に下方に回動させることで、フランジF2の突部19a,19bを筒状胴部5の上端に押し付ける。これにより、練り水受け皿17は、水受け皿本体18がミキサ胴本体1の上部開口端である材料投入口1aに着脱可能に嵌着されて、材料投入口1aを閉成する。
【0033】
次に、筒状胴部5内に投入した混練材料の種類やその投入量に応じた量の水を水受け皿本体18内に入れる。この水受け皿本体18に水が入れられると、この水は水供給孔29,30,31等から筒状胴部5内に流入させられる。
【0034】
これに伴い軸回転駆動モータ12を作動させて、軸回転駆動モータ12の出力軸12aの回転を回転力伝達機構13を介して回転軸3に伝達させることにより、回転軸3を図3の矢印A1方向に回転駆動させて、ミキサ胴本体1内の混練羽根10も回転軸3と一体に矢印A1方向に回転駆動させる。この混練羽根10の回転により、筒状胴部5内に投入した混練材料が水供給孔29,30,31等から供給される水と共に混練羽根10により混練させられる。
【0035】
このような混練に際して混練羽根10は、麺生地用混練物を傾斜する上面により上方にすくいあげるようにしながら筒状胴部5の周方向に回転させると共に、麺生地用混練物を遠心力により筒状胴部5の半径方向に移動させるようにする。
【0036】
この際、水が混練材料に少しずつ加えられて、混連材料と水が混練羽根10によりに攪拌されることにより、混連材料が少しずつ塊になる。そして、この混練が進行するに従い、混練材料の麺生地用粉体に必要量の水が加えられると、混練材料は麺生地用混練物の多数の塊になる。
【0037】
この麺生地用混練物の塊と筒状胴部5の内面との間および麺生地用混練物と混練羽根10の傾斜する上面との間には粘性による摩擦抵抗が生じて、麺生地用混練物の下部側及び筒状胴部5側が混練羽根10により混練される。
【0038】
これに伴い、麺生地用混練物は一部が、自重により混練羽根10と底壁6との間に入り込むと共に混練羽根10の回転に伴う遠心力により混練羽根10と筒状胴部5との間に入り込んで引きずるようにして混練される。しかし、混練羽根10と筒状胴部5の内面との間に間隔の狭い間隙S1と大きい間隙S2の部分があるために、混練羽根10から麺生地用混練物に強い力と弱い力が交互に作用する。これにより、混練羽根10と筒状胴部5の内面との間に入り込んだ一部の麺生地用混練物のグルテンが一層速く生成される。また、混練羽根10と底壁6との間に入り込んだ一部の麺生地用混練物のグルテンも同様な間隙S1′,S2′のために一層速く生成される。
(その他1)
上述したミキサー胴本体1を形成する場合、ステンレス板やアルミ合金板等の金属板から図6に示したようなミキサ胴用打抜板40を形成する。このミキサ胴用打抜板40は、図1,図4の筒状胴部5となる平板状胴板部41と、図1,図4の底壁6を形成するために平板状胴板部41の一縁に連設された鋸歯状部42を有する。この鋸歯状部42は、図4の底壁部6aとなる底板形成部42aを複数有する。この底板形成部42aは、頂角が鋭角の二等辺三角形の先端部を切り落として形成したような台形状に形成されていると共に、平板状胴板部41の一縁に沿って鋸歯状に配列されている。尚、台形状の複数の底板形成部42aは、下底側が平板状胴板部41の一縁に沿って波形状に連続させられている。また、図6中、43は図4の側壁部5aを形成するための平板状胴板部41の折曲線、44は平板状胴板部41に対する鋸歯状部42の折曲線である。
【0039】
このようなミキサ胴用打抜板40の平板状胴板部41を折曲線43に沿って図7のように折り曲げると共に、平板状胴板部41の両側縁41a,41bを合わせて溶接等により接合する。一方、複数の底板形成部42aを折曲線44に沿って図8に示したように内側に折り曲げると共に、隣接する底板部31,31の側縁同士を合わせて溶接等により接合する。これにより、図9,図10に示したような筒状胴板部5′および底板部6′が形成される。この底板部6′の中央部には、図10に示したように六角形状の取付孔6bが形成される。そして、図11に示したような外周面が六角形状で平板状の環状体6cを図12に示したように取付孔6bに嵌合して、この環状体6cを底板部6′に溶接等により取り付ける。
【0040】
このような工程で筒状胴板部5′および底板部6′が形成されるので、底板部6′の板厚が筒状胴板部5′の板厚と同じ厚さに形成できる。そして、このようにして形成された筒状胴板部5′および底板部6′の表面に耐摩耗加工やテフロン加工等の表面加工を施すことにより、ミキサー胴本体1の筒状胴部5および底壁6が形成される。
(その他2)
尚、以上説明した実施例では、底壁6を逆正多角錐状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、底壁6は、逆円錐状に形成してもよい(図3A参照)。
【0041】
以上説明したように、この発明の実施の形態では、上端が材料投入口1aとして開放する筒状胴部5及び前記筒状胴部5の下端に連設された底壁6が設けられた有底のミキサ胴本体1と、前記ミキサ胴本体1の底壁6を貫通して前記ミキサ胴本体1の底部内に突出する回転軸3と、前記回転軸3の前記底部内への突出部に設けられた混練羽根10と、前記材料投入口1aに開閉可能に嵌着され且つ前記ミキサ胴体1内に練り水を供給する水供給孔(29〜31)が設けられた練り水受け皿17と、を備えている。しかも、前記筒状胴部5の内周面は水平断面形状が正多角形状に形成されていると共に、前記底壁6は周縁から中央に向けて下方に傾斜させられている
この構成によれば、筒状胴部5が正多角形であるために、混練対象物が混練羽根により混練される際に、混練対象物が混練羽根10と筒状胴部5との間で強弱の圧力を交互に受けることで、混練羽根10と筒状胴部5との間で混練対象物にグルテンが速やかに生成され、一方圧力が逃げることにより混練羽根10と筒状胴部5との間で混練対象物に生成されたグルテン組織が破壊されることがない。従って、混練対象物が混練羽根により均質に混練されるまでの時間を短くできる。
【0042】
また、この発明の実施の形態の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記底壁6は前記複数の側壁面5a1にそれぞれ連設され且つ中央に向けて下方に傾斜させられた複数の底壁部6aから正多角形状に形成されている。
【0043】
この構成によれば、筒状胴部5および底壁6が正多角形であるために、混練対象物が混練羽根により混練される際に、混練羽根10と筒状胴部5との間および混練羽根10と底壁6との間でも強弱の圧力を交互に受けることで、混練羽根10と底壁6との間の混練対象物にもグルテンが速やかに生成され、一方圧力が逃げることにより混練羽根10と底壁6との間の混練対象物に生成されたグルテン組織が破壊されることがない。従って、筒状胴部5および底壁6が正多角形である場合には、筒状胴部5のみが正多角形状である場合よりも、混練対象物が混練羽根により均質に混練されるまでの時間を短くできる。
【0044】
更に、この発明の実施の形態の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記水供給孔(29〜31)は前記練り水受け皿17の周方向および半径方向に複数設けられている。
【0045】
この構成によれば、混練材料が混練羽根によりミキ胴本体1の周方向に移動させられながら、混練材料に水を複数の水供給孔(29〜31)からまんべんなく供給できる。
【0046】
また、この発明の実施の形態の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記練り水受け皿17は受皿上面が周縁から中央に向かうに従って下方に傾斜させられて、逆円錐状に形成されていると共に、前記受皿上面の最下端である中央に中央水供給孔が前記水供給孔の一つとしてとして形成されている。
【0047】
この構成によれば、練り水受け皿17に入れた水の全てを無駄なく利用できるので、混練材料と水との混合比を容易に設定できる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・ミキサ胴本体
1a・・・材料投入口
3・・・回転軸
5・・・筒状胴部
5a1・・・側壁面
6・・・底壁
6a・・・底壁部
10・・・混練羽根
17・・・練り水受け皿
28・・・水案内溝
29・・・水供給孔
30・・・水供給孔
31・・・中央水供給孔(水供給孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が材料投入口として開放する筒状胴部及び前記筒状胴部の下端に連設された底壁が設けられた有底のミキサ胴本体と、
前記ミキサ胴本体の底壁を貫通して前記ミキサ胴本体の底部内に突出する回転軸と、
前記回転軸の前記底部内への突出部に設けられた混練羽根と、
前記材料投入口に開閉可能に嵌着され且つ前記ミキサ胴体内に練り水を供給する水供給孔が設けられた練り水受け皿と、
を備える生地混練用縦型ミキサであって、
前記筒状胴部の内周面は水平断面形状が正多角形状に形成されていると共に、
前記底壁は周縁から中央に向けて下方に傾斜させられていることを特徴とする生地混練用縦型ミキサ。
【請求項2】
請求項1に記載の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記底壁は前記複数の側壁面にそれぞれ連設され且つ中央に向けて下方に傾斜させられた複数の底壁部から正多角形状に形成されていることを特徴とする生地混練用縦型ミキサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記水供給孔は前記練り水受け皿の周方向および半径方向に複数設けられていることを特徴とする生地混練用縦型ミキサ。
【請求項4】
請求項3に記載の生地混練用縦型ミキサにおいて、前記練り水受け皿は受皿上面が周縁から中央に向かうに従って下方に傾斜させられていると共に、前記受皿上面の最下端である中央に中央水供給孔が前記水供給孔の一つとしてとして形成されていることを特徴とする生地混練用縦型ミキサ。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−110993(P2013−110993A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258825(P2011−258825)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(591210932)株式会社大和製作所 (4)
【Fターム(参考)】