説明

生物体廃棄物における物質循環技術及び設備

【課題】生物体廃棄物を埋め立てや堆肥化、焼却する代わりにその炭素や窒素、ミネラル等を貯留し土壌へ循環させる方法である。
【解決手段】乾燥窯や凝縮器、熱風炉等を組み合わせた「低酸素熱風密閉式循環システム」及び「薫留‐凝縮‐乾留」工程に基づいてごみを処理する。ごみは乾燥窯へ投入して薫留乾燥や殺菌消臭、固液分離、無機化し、凝縮器で同窯の排ガス中の蒸発液を凝縮回収し、「生物酢液」を精製する。同窯から出た薫留乾物は「生物体」や「人工物」等に分類し、前者は炭素や窒素等が貯留されている薫留生物体で、「生物薫肥」や「炭素窒素剤」を精製する。後者は熱風炉で乾留し、発生した熱風は再び乾燥窯に吸込まれ、繰り返し熱・物質移動を行う。本発明では、ダイオキシンや温室効果ガス、有害物質のゼロエミッションを実現し、生物ごみの栄養元素を100%土壌に還すことでその物質循環が生かせ、肥沃な土壌を育め、土壌有機炭素貯留量を増やせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は「生物体(バイオマス)廃棄物」における栄養元素貯留循環技術及び設備について触れる。ここで触れる生物体廃棄物とは、生ごみと食品加工や農林牧漁業廃棄物等中の生物体廃棄物及び家畜家禽糞又は下水汚泥等(以下「ごみ」又は「生物体廃棄物」と称す) のことを指す。即ちこれも生ごみや下水汚泥等の廃棄物処理の新しい方式である。本発明では、生態学や生物学、環境学、土壌学、植物栄養肥料学、化学、熱学、廃棄物処理、バイオマスエネルギー等の技術分野に触れる。
【背景技術】
【0002】
生物体廃棄物処理の1例として生ごみ処理の現状を見てみよう。今採用されている生ごみ処理は主に埋め立てや堆肥化、焼却(発電)という3つの方式がある。ごみ埋め立ての場合、大量の土地を占用するほか、悪臭を生じ、ろ液の浸出、メタンガスCH4と二酸化炭素CO2等の温室効果ガスが発生する。堆肥の場合はメタンや亜酸化窒素N2O等の温室効果ガスも生成し、また良質な肥料を製造するのは難しく、炭素・窒素等の揮発損失は大きい。焼却処理は本来土壌に還すべき生物体中の炭素・窒素も人為的に「短絡」揮発され、大量に焼却した結果、二酸化炭素・窒素酸化物等の排出汚染や資源損失が発生し、また発がん性物質であるダイオキシンも生じ易い。これは人類の重大な「過ち」であるかもしれない。さらにこの処理には非常に高いコストがかかる割に、エネルギーへの還元率は低い。この従来式生ごみ焼却処理プロセスは、ダイオキシン生成の条件を備えることから排ガス中のダイオキシン包含量は比較的高く、大気中のダイオキシンの90%はごみ焼却による。このごみ焼却をいち早く進めてきた国又は地域ではすでにダイオキシン被害が深刻である。このことから埋め立てや堆肥化、焼却(発電)の各方式はそれぞれ致命的弊害を抱え、いずれも無害処理を達成することができなく、理想的な処理方法とは言えない。
【0003】
先進国が埋め立て処理から焼却処理を主として転向して以来、ダイオキシン等の致命的な危害の発現により、ごみ焼却技術の「先進性」に対し懐疑的である。一方発展途上国では、依然として埋め立て処理が主流であったが、年々焼却処理が増加傾向にあり、この処理の「メリット」について物議を醸す中「焼却」事業が発展しつつある。疑う余地なく、従来式のごみ焼却が発展し続け、結果としてダイオキシンが倍増し、地球の生態環境と我々の生存環境を著しく破壊しようとしている。これはまさに人類社会の発展による最大の危機、-生態の災難-である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−1169号公報
【特許文献2】特開2008−20093号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】George Tchobanoglous,Hilary Theisen,Samuel Vigil 「INTEGRATED SOLID WASTER MANAGEMENT」Engineering Principles and Management Issues 1993 by McGraw-Hill,Inc. 田中勝監訳代表 「廃棄物処理総論」廃棄物工学の原理と廃棄物処理の問題 エヌ・ティー・エス 1998年
【非特許文献2】福本勤著 産業・都市・放射性「廃棄物処理技術」 新増補:ダイオキシン類ゼロ化技術(増訂2版) 共立出版株式会社 1998年
【非特許文献3】下平利和著 自然と共生する循環型社会形成のための 生態系に学ぶ「廃棄物処理技術」 ほおずき書籍 2011年
【非特許文献4】NPO法人生ごみリサイクル全国ネットーワーク著 ガイドブックNo.2「生ごみのふしぎ!」 日報出版株式会社 2010年
【非特許文献5】久馬一剛編 「最新土壌学」 朝倉書店 1997年
【非特許文献6】山崎耕宇等著 「植物栄養・肥料学」 朝倉書店 1993年
【非特許文献7】西尾道徳著 「農業と環境汚染」日本と世界の土壌環境政策と技術 農文協 2005年
【非特許文献8】惣田いく(上に日下に立という漢字)夫等著 「物質と生命科学」 現代図書 2011年
【非特許文献9】松原聡著 「環境生物科学」(改訂版) 裳華房 2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ごみ焼却処理の技術的問題点では、我々は考えている2つの望ましくないことがある。
【0007】
その1、燃やすことは望ましくない。生物体(バイオマス)廃棄物を「焼却」するもったいないだけではなく、温室効果ガスや有害排ガスも発生する。焼却する場合に生物体廃棄物中の炭素や窒素等の栄養元素は土に戻られず温室効果ガスや有害排ガス、水蒸気等に転換して大気中に排出しまい、貴重な土壌の有機栄養資源の「短絡」損失が生ずる。焼却を続ければ、生態系における物質循環の悪化や土壌有機炭素貯留量の減少、土壌肥沃度の低下、地球温暖化等の問題を解決することは難しくなるだろう。
【0008】
その2、湿式焼却することは望ましくない。ごみの湿式焼却はダイオキシンが生じやすい。従来のごみ焼却方法は湿式焼却で、乾燥と燃焼プロセスは同一の焼却炉で行っている。生ごみに水分を多く含んでるため、乾燥及び燃焼初期における焼却炉内温度を低下させることにつながり、800℃以下(特に250〜600℃の間)で焼却すると、水蒸気と塩化物との不完全燃焼でダイオキシンの発生しやすくなる。
【0009】
本発明では、生ごみや汚水汚泥等の生物体廃棄物の焼却とダイオキシンや温室効果ガス、有害物質の大気中への排出を避け、埋め立てや堆肥化、焼却する代わりに生物体中の炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素等を100%程に貯留し、炭素を緩効・惰効化、栄養元素を可給態化又は無機化して土壌へ循環させ、肥沃な土壌を育め、土壌有機炭素貯留量を増やせる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生物体(バイオマス)廃棄物におけるエネルギーと栄養元素(炭素や窒素、ミネラル等)を貯留して土壌へ循環させる技術(「炭素・窒素貯留技術」又は「物質循環技術」と称す)は、乾燥窯や凝縮器(又は凝縮槽)、熱風炉等を組み合わせた「低酸素熱風密閉式循環システム」及び「薫留(薫煙蒸留)‐凝縮‐乾留」工程に基づいてごみ(生ごみと食品加工や農林牧漁業廃棄物及び家畜家禽糞又は下水汚泥等)を薫留乾燥や殺菌消臭、固液分離してからその蒸発液は凝縮回収し、その薫留乾物は「生物体」や「人工物」等に分類し(うち生物体に炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素が貯留されており、且つ炭素が惰効化、栄養元素が可給態化又は無機化され)、それぞれ「生物酢液」や「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」(土壌全元素剤-生物複合肥料)等を精製して生物ごみの栄養元素を100%貯留して植物の全元素肥料として土壌に還すことでその物質循環が生かせ、肥沃な土壌を育め、土壌有機炭素貯留量を増やせ、またダイオキシンや温室効果ガス、有害物質のゼロエミッションを実現する生態系における「物質循環技術」である。
【0011】
本発明の技術的特徴は、下記プロセスの複合により実現する。
【0012】
(1)、乾燥窯や凝縮器(コンデンサーとサイクロン分離器又は凝縮槽等)、生物酢液貯留装置、熱風炉、太陽光発電システム、二段ヒートポンプとヒートパイプ余熱回収システム(以下「余熱回収システム」と称す)等を組み合わせた「低酸素熱風密閉式循環システム」(以下「密閉式システム」と称す)を設置する。この「密閉式システム」でごみを「薫留‐凝縮‐乾留」の処理工程を行う。
【0013】
(2)、まず湿ごみを熱風乾燥窯へ送り込み、薫留乾燥・固液分離・炭素や窒素などの元素が分解させると同時に殺菌消臭する。熱風乾燥窯に吸い込まれた熱風は前工程の熱風炉で調製した熱風である。
【0014】
(3)、薫留乾燥プロセスの熱風温度は110〜150℃(最高200℃以下)である。この温度域は、ごみの薫留乾燥や水分蒸発、固液分離をさせると同時に殺菌消毒除臭し、また燃焼反応も発生せず、代わりに生物体中の炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素を分解し-惰効化・可給態化又は無機化させて貯留する。またごみ湿式焼却と違い、ダイオキシンの産生を徹底的に抑えられる。
【0015】
(4)、「密閉式システム」で、排ガスとごみ蒸発液は大気へ排出しない。乾燥と燃焼のプロセス間にサイクロンや凝縮器等の凝縮分離装置を設置し、乾燥窯出口から出る排ガスを冷却し、排ガス中の薫留水蒸気(蒸発液)を凝縮分離回収し、静置・ろ過・再蒸留等の工程を経て、自然資源として生態的な「生物酢液」を精製する。この生物酢液は抗菌消臭防虫の多機能に優れ、優良な「抗菌消臭剤」又は「生物液肥」である。
【0016】
(5)、二段ヒートポンプとヒートパイプ余熱回収システムを構築し、生物体の蒸発液の凝縮回収に用いられる凝縮器の冷却水の温度を下げて循環使用する上に、冷却水が排ガスから奪った熱量は余熱回収システムの低温側で放出させ、ヒートパイプの役でその高温側に通過流れの循環ガスに伝え、その循環ガスの温度は150℃以上に達して再び乾燥窯に送り込まれ、湿ごみを繰り返し循環乾燥する。
【0017】
(6)、乾燥窯から出た薫留乾燥物は無菌無臭無水の環境で自動制御で行う「風力選別機」、「鉄・アルミ磁力選別機」、「粉砕機」また「高密度複合選別機」等の工程を経て、「再利用類」(金属やプラスチック等)、「生物体」(厨芥類生ごみや剪定枝、草、落葉、紙ごみ又は農林牧漁業廃棄物等の自然物)、「人工物」(プラスチックごみ、ゴム、布ごみ等の容器包装類や工業製品に由来するごみ)と「不可燃物」(無機物)の4種類に分類し回収処理する。そのうちの「生物体」はそれらの炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素が貯留されている薫留生物体乾物で、原料として粉砕、篩い分け、成分添加等の工程を経て生態的な「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」(土壌全元素剤-生物複合肥料) 等を精製する。「人工物」(容器包装類ごみ) は乾燥した可燃物で、本システムの太陽光発電における高温熱風炉に投入、高温低酸素燃焼(乾留)され、循環ガスが高温まで加熱される。熱風炉より発生した高温熱風は熱風炉出口で熱風炉をバイパスした循環ガスと混合させて温度を調整した後再び乾燥窯に吸込まれ、湿ごみを薫留乾燥し続ける。このように湿ごみの薫留乾燥には太陽エネルギーを利用し、人工物ごみを燃焼し、「密閉式システム」の中で循環ガスは繰り返し熱・物質移動を行う。
【0018】
(7)、凝縮器を通過流れの脱水された循環ガスはアフターサイクロン分離器でさらに脱水し、「生物酢液」を再分離回収する。サイクロン分離器出口の脱水した循環ガスはパイプラインにより電熱高温熱風炉に戻り、(6)に述べたように熱風又は循環ガスとして、繰り返し熱・物質移動を行う。
【0019】
(8)、本発明の高温熱風を発生する熱風炉の燃焼性状は高温低酸素燃焼になる。太陽光発電システムを設置し、「電熱乾燥可燃物高温熱風炉」の「高温空気加熱器」に給電する。一定量の空気と循環ガスが900℃以上加熱し、熱風炉内に噴入し、高温低酸素燃焼性状を維持すると同時に「人工物」の乾燥可燃ごみを高温気流中に送り込んで乾留を行う。発生した高温熱風とパイパス管路の循環ガスと混合、調温してから再び乾燥窯へ送り込まれ、繰り返し湿ごみを薫留乾燥する。太陽エネルギーと人工物乾燥ごみの燃焼はともに熱源となり、化石燃料を節約する。
【0020】
本発明の上記の生物体廃棄物の処理技術は「炭素・窒素貯留技術」又は「物質循環技術」と称し、「薫留-凝縮法」とも称する。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように、従来のごみ焼却に存在している問題は、生物体ごみの焼却と湿式焼却することで炭素・窒素等の「短絡」揮発損失やダイオキシン、温室効果ガス、有害排ガス等の発生する-であるが、本発明ではこれらの問題はすべて解決した。本発明「炭素・窒素貯留技術」では、生物体(バイオマス)廃棄物を発酵・焼却する代わりに、「密閉式システム」で「薫留-凝縮-乾留」等の処理工程を行い、薫留したごみの乾燥物質を「生物体」と「人工物」等に分類処理することで、炭素や窒素、ミネラル等が分離・貯留され、且つ炭素は緩効・惰効性炭素(プール)となり、窒素とミネラル等は100℃以上の煙薫留乾燥でそれらの栄養元素を全量全元素貯留・可給態化又は無機化され、全元素肥料とすると植物が直接吸収できる。だから、最終的には「生物酢液」や「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」等の生態系素材を得る。生物体廃棄物の「炭素・窒素貯留技術」により、ダイオキシン発生を抑えることができ、炭素・窒素酸化物、メタンガスを発生させることなく、温室効果ガス(CO2,CH4,N2O等)や有害物質ゼロエミッションを実現した。故に本発明は、生物体廃棄物の栄養元素を惰効性炭素や可給態又は無機態窒素、ミネラルの形で土壌に還すことでそれらの物質循環が生かせ、肥沃な土壌を育め、土壌有機炭素貯留量を増やせる生態系における「物質循環技術」である。
【0022】
また、燥窯の熱源方式は以下の4つからなる。1)乾燥な「人工物」(非生物体)可燃ごみを燃料とする太陽光発電システムで給電する電熱乾燥可燃物高温熱風炉(本炉内に高温空気加熱器を設置する)。2) 乾燥可燃ごみと石炭(或は重油やガス等)を燃料とする熱風炉。3)太陽光発電システムにより給電する電熱熱風炉。4) 乾燥窯内はその他工業生産のプロセスで出る高温排ガスと本系統の乾燥可燃物熱風炉。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスフロー図1である。図1では、乾燥窯内は可燃人工物乾燥ごみを燃料とし、太陽光発電システムで給電する電熱式可燃乾燥ごみ複合熱風炉で調製した高温熱風を使ってごみを薫留乾燥するのである。
【図2】「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスフロー図2である。図2では、乾燥窯内は可燃乾燥人工物ごみと石炭や重油等を燃料とする混合熱風炉で調製した高温熱風を使ってごみを薫留乾燥するのである。
【図3】「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスフロー図3である。図3では、乾燥窯内は太陽光発電システムで給電する電熱炉で調製した高温ガスを使ってごみを薫留乾燥するのである。
【図4】「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスフロー図4である。図4では、乾燥窯内はその他工業生産のプロセスで出る高温排ガスと本系統の乾燥ごみ熱風炉で調製した高温熱風を使ってごみを薫留乾燥するのである。
【図5】「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスの系統図である。図5は図1に示す技術的系統図であり、本発明の「物質循環技術」におけるごみ処理技術の系統図の一つである(図2〜4の技術的系統図はここでは省略するが、図5を参照できる)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における具体的実施方法は4つあり、当該『説明書』(プロセス(2))と図面説明及び図1〜4に述べた通りである。この4つ方式ではごみ乾燥窯でごみの薫留乾燥に使う熱源に違いがある。次に、図1と図5の具体的な実施例を紹介する。
【実施例】
【0025】
図5は本発明の「物質循環技術」におけるごみ処理プロセスの系統図である。この処理プロセスに使う燃料は乾燥した可燃人工物ごみで、また太陽光発電システムにより高温熱風炉(高温空気燃焼炉)に給電する。
【0026】
図5に示す通り、本発明の「物質循環技術」におけるごみ処理技術では以下の手順を含める。(1)乾燥窯1、蒸発液冷却分離回収装置(サイクロン分離器21、23と凝縮器3)、生物酢液貯蔵タンク41,42、熱風炉5、太陽光発電システム6、二段余熱回収システム10等を組み合わせたごみ「薫留-凝縮-乾留」処理工程の「密閉式システム」を設置する。(2)湿ごみをごみホッパ86へ投入し、ホッパ下部の給塵機87により乾燥窯1に送り込み、薫留乾燥・固液分離・炭素惰効化・窒素とミネラル可給態化又は無機化する同時に殺菌消臭する。(3)乾燥窯1の熱風温度は110〜150℃である。(4)乾燥窯内での蒸発した排ガス中の水蒸気(蒸発液)はサイクロン分離器21と水冷凝縮器3で遠心及び凝縮分離・回収を行い、トラップ25と34とろ過器26と35を別々に通り生物酢液貯蔵タンク41と42へと貯蔵される。(5)凝縮器3の冷却水にて奪った熱量は余熱回収システム10で回収され、ヒートパイプの高温側から放出熱量は循環ガス復管103のガスへ伝え、加熱し、加熱された熱風管104のガスは乾燥窯内の循環ガスの一部となり、高温熱風炉5出口の循環回路1の高温熱風管15と混合させて乾燥窯1に送り込み、乾燥窯内の湿ごみを薫留乾燥を行う。(6)凝縮器3を通って脱水後の排ガスはサイクロン分離器23に入りさらに脱水され、トラップ27とろ過器28等の装置でさらに生物酢液を回収し貯蔵タンク42へゆく。サイクロン分離器23出口ですでに脱水した循環ガスはパイプラインを通り一部は高温熱風炉5(循環ガス回路1)へ戻り、他の一部は余熱回収システム10(循環ガス回路2)に戻って別々に加熱された後バイパス管18の循環ガスと混合させて温度調節し、再度乾燥窯に送り込まれ次の熱・物質移動を行う。(7)薫留乾燥後のごみは乾燥窯1の乾燥ごみ出口から出た後、無菌無臭無水の状況の下で自動「風力選別機」111、「磁力選別機」112、「粉砕機」113と「高密度複合選別機」114を経て、再利用115及び116、包装類(人工物)117、生物体(自然物)118、また無機物119等の無害無臭の資源物質に分別されそれぞれ処理を加え利用する。そのうちの生物体(自然物)118は炭素と窒素が分離貯留された薫留生物体で、「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」を精製する。人工物可燃乾燥ごみ117は本システムの電熱乾燥可燃物高温熱風炉5で乾留し、循環ガスを加熱し、高温熱風炉5出口の発生した高温熱風(循環ガス回路1)と余熱回収システム10で加熱した熱風(循環ガス回路2)と混合した後、再び乾燥窯1に吸込まれ、繰り返しごみの薫留乾燥-熱・物質移動を行う。このように循環ガスは2つの回路を通り絶え間なく循環利用される。(8)太陽光発電システム6を設置し、電熱可燃乾燥ごみ高温熱風炉5内の高温空気加熱器51へ供電し、一定量の空気と循環ガスを900℃以上にまで予熱して熱風炉へ噴入し、高温空気燃焼を維持させる。循環回路1の循環ガスは加熱後乾燥窯1に送り込まれ湿ごみを乾燥させる。バイパス管18の作用はバイパス内の循環ガスの比率により乾燥窯の熱風温度を調整する。以上の工程を実施することにより生物体廃棄物中の炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素が分解され、それぞれ惰効性炭素(プール)と可給態又は無機態窒素とミネラル等の形で貯留されたので、それぞれ「生物酢液」と「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」等を精製する。
【0027】
以上が本発明の具体的実施例の1つである。次に主な設備の特徴を紹介する。
【0028】
(1)乾燥窯:本システムの乾燥窯1の特徴は横置円筒回転式、直火式熱風乾燥窯である(或は円筒は回転せず、円筒内部にミキサー式撹拌機を設置して湿ごみを撹拌する)。直火式とは直接燃焼式、即ち、熱風炉で発生した熱風が材料と直接接触させ利用することである。乾燥窯円筒の直径及び長さはごみ処理量をもとに確定される。乾燥窯には湿ごみ入口11、乾燥物出口12、熱風入口13と排ガス出口14を設置し、回転式乾燥窯下部にはローラーと駆動システムを備え、回転数は1回転/分以下である。ごみ乾燥窯円筒内の内壁には防腐塗装を施す。内壁に一定数の放射状リフタ板を設置し、ドラム内でのごみがリフタにより持ち上げられたり自由落下したりすることで材料の分散、熱風の偏流を防止する。よく撹拌し、薫留乾燥の効率を高める。ドラム外壁は断熱材で保温する。熱風とごみの流動は同じ方向(順流式)にも反対方向(逆流式)にもできる。圧力、温度、湿度等の自動感知や防燃防爆装置そしてモニター監視システムも設置する。同窯内のガス温度は110〜150℃で、ごみの薫留乾燥を行うだけで燃焼はしない。
【0029】
(2)サイクロン分離器:サイクロン分離器21と23の特徴は開孔内筒式低圧損、高捕集効率のサイクロン(この前の発明)で、除塵と除液の機能を備える。サイクロン分離器の排塵と排液は自動制御で行う。排液はトラップ25,27とろ過器26,28を別々に通った後生物酢液貯蔵タンク41,42に入る。
【0030】
(3)凝縮器(又は凝縮槽):凝縮器3は排ガス循環回路のサイクロン分離器21と23の間につながっている。その特徴はステンレス製フィン付き凝縮器で、外側は循環ガス、パイプ内は冷却水が通る。冷却器機能はパイプラインを循環する冷却水が凝縮器内のフィン表面温度を低温維持し、外側を流れの排ガスの水蒸気は露点温度まで冷えたフィン表面に接触して結露する。こうして循環ガス中の水蒸気を凝結させて水となり析出される。最後にトラップ34とろ過器35等を通り生物酢液貯蔵タンク42に集められる。貯蔵タンクの生物酢液は静置、ろ過、再蒸留等の工程を経て生物酢液製品を精製する。化学検査の結果により、生物酢液とは有機酸、アルコール類、ケトン類、フェノール類を主成分とする多機能に優れた有機資源液体で除臭剤又は生物液肥になる。
【0031】
(4) 熱風発生炉(熱風炉):熱風炉はごみ乾燥に必要な熱源を供給するための装置である。本発明の熱源装置の特徴は以下の4つからなる。1).可燃乾燥ごみを燃料とし、太陽光発電システムの給電による電熱式可燃乾燥ごみ複合熱風炉で、炉内は電熱ガス予熱装置(図1と図5)を設置する。2).可燃乾燥ごみと石炭や重油、ガス等を燃料とする複合熱風炉(図2)。3).太陽光発電システムの給電による電熱炉(図3)。4).その他工場生産工程の温度150℃以上の排ガス(セメントキルンプロセスからの排ガス、発電所のタービンからの排気、様々なボイラーや炉窯等からの排気等)が乾燥ごみ熱風炉に加わる(図4)。本発明における各熱風炉の技術的特徴は炉内に電熱ガス予熱装置を設置し、高温低酸素燃焼を維持できる。湿ごみを焼却せず乾燥窯で乾燥を経た後の乾燥ごみを燃焼する(乾留)。また「密閉式システム」で、送風機52はごみピットから悪臭空気を吸い込み、負圧を維持すると同時に臭気は熱風炉内に送り込まれ燃焼し、送風量は燃料の無炎燃焼性状を維持するだけに限る。熱風炉内に入る風量の多くは循環ガスとなり、加熱後再び乾燥窯に入り湿ごみを薫留乾燥し、循環し続ける。本システムではいかなる気体も大気中に排出させない。
【0032】
(5)太陽光発電システムと余熱回収システム:太陽光発電システム6と2段ヒートポンプとヒートパイプ熱回収システム10は本発明のごみ栄養元素貯留技術における新エネルギー利用と省エネの特徴である。前者は燃料炉5内の高温空気加熱器51及びすべての工程に給電し、この装置の設置により複合熱風炉での高温低酸素燃焼を助ける。後者は凝縮器3のパイプライン側の冷却水の循環利用を保証する上で、余熱回収システムの低温側を通った凝縮器の冷却水復管33から奪った熱量はヒートパイプで同システムの高温側を流れの循環ガスに伝える。その循環ガスの温度は150℃以上まで加熱されて再び乾燥窯に送り込まれ、湿ごみを繰り返し乾燥する。太陽光発電と余熱回収システムの応用により本発明の固液分離と栄養元素貯留の全工程において石炭や重油等の鉱物燃料を使う必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明では、産業上の利用では問題はない。建設コストと運営コストでは、ともに焼却式より大幅に低減し、また生物体廃棄物が無駄ゼロ、100%資源に地球生態系の物質循環することを実現できる。ごみ埋め立てや堆肥化、焼却する際に炭素と窒素は気化する(CO2,CH4,N2O等が大気中に排出される)代わりに「生物酢液」と「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」として地球への「炭素や窒素、ミネラル等の補充」となり、炭素や窒素、ミネラルの土への循環を強化し、土壌有機炭素貯留量と栄養元素を増加し、肥沃な土壌つくりとグリーンな農業の発展と生態系のバランスを促す。そして未来のバイオエネルギー作物の開発・生産を助け、地球温暖化を防止し、社会の持続可能な発展を促進する。
【0034】
本発明の生物体資源を活かして土壌に「充炭素、充窒素等」により、さらに深い意味がある「バイオエネ循環法則」という未来のバイオ燃料の時代はもう遠くない。本発明に基づいて推論した「バイオエネ循環法則」は次の通りである。
【0035】
「-本発明の「炭素・窒素貯留技術」により生物体廃棄物から炭素・窒素剤(土壌全元素剤)をつくり、生物体中の有機炭素や窒素等を大地に還す-土壌有機炭素貯留量と栄養元素を増加-肥沃な土壌(山地や砂漠を含む)を育む-バイオエネルギー作物を大規模に開発・植え-バイオ燃料を大規模に生産-一方生物体(バイオエネ作物を含む)廃棄物で炭素窒素剤をつくり生物体中の有機炭素や窒素等を大地に還す-」。これは未来のバイオエネ時代のエネルギー再生法則である。
【0036】
生態系における物質循環と生態系のバランスも「持続可能な形」や「可変な形」になる。「バイオエネ循環法則」によりバイオ燃料は完全に化石燃料の代替物となれ、地球温暖化を防止できるだろう。資源、環境と持続可能な発展等の問題は解決できる。「持続可能な発展」の3 本柱(経済性、生態系のバランス、社会的責任)を「炭素・窒素貯留技術」(物質循環技術)の梁で繋ぐことができる。
【符号の説明】
【0037】
次は用語の説明である。
「生物体廃棄物」―生ごみと食品加工や農林牧漁業廃棄物等中の生物体(バイオマス)廃棄物及び家畜家禽糞又は下水汚泥等である。また「生物体」は「自然物」ともいい、その対義語は「人工物」である。「生物体」(自然物)の例は生ごみや雑草、植木剪定枝、落葉、わら、紙くず等であり、「人工物」の例はプラスチックごみやゴム、合成繊維ごみ等である。
「薫留」―100℃以上の煙ガスで薫煙・蒸留し、水分を蒸発させ、燃焼の反応を生じさせず固液分離をすることである。
「炭素・窒素貯留技術」―即ち「物質循環技術」である。本発明の「低酸素熱風密閉式循環システム」と「薫留‐凝縮‐乾留」工程に基づく生物体廃棄物処理技術で、「薫留-凝縮法」とも称する。この処理法で、生物体廃棄物中の炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素等が分解され、それぞれ惰効性炭素(プール)と水溶性窒素・ミネラル等の形で貯留され、「生物酢液」と「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」(土壌全元素剤)等として土壌に還し、生態系の物質循環が起こるから、「物質循環技術」とも称する。
「バイオエネ循環法則」―本発明の「炭素・窒素貯留技術」により生物体廃棄物から炭素窒素剤(土壌全元素剤)をつくり、生物体中の有機炭素や窒素等を大地に還すことにより土壌有機炭素貯留量と栄養元素を増加し、肥沃な土壌を育んで、山地や砂漠を改造し、バイオエネルギー作物を大規模に開発と植え、バイオ燃料を大規模に生産し、また再び生物体廃棄物より炭素窒素剤をつくり、生物体中の有機炭素や窒素等を大地に還すというバイオ時代のバイオエネルギー再生法則である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の生物体(バイオマス)廃棄物におけるエネルギーと栄養元素(炭素や窒素、ミネラル等)を貯留して土壌へ循環させる技術(「炭素・窒素貯留技術」又は「物質循環技術」)は、生ごみや生物体廃棄物の埋め立てや堆肥化、焼却を避け、乾燥窯や凝縮器(又は凝縮槽)、熱風炉等を組み合わせた「低酸素熱風密閉式循環システム」及び「薫留‐凝縮‐乾留」工程に基づいてごみ(生ごみと食品加工や農林牧漁業廃棄物及び家畜家禽糞又は下水汚泥等)を薫留乾燥や殺菌消臭、固液分離してからその蒸発液は凝縮回収し、その薫留乾物は「生物体」や「人工物」等に分類し(うち生物体に炭素や窒素、ミネラル等のエネルギーと栄養元素が貯留されており、且つ炭素が惰効化、栄養元素が可給態化又は無機化され)、それぞれ「生物酢液」や「生物薫肥」又は「炭素窒素剤」(土壌全元素剤-生物複合肥料)等を精製して生物ごみの栄養元素を100%貯留して植物の全元素肥料として土壌に還すことでその物質循環が生かせ、肥沃な土壌を育め、土壌有機炭素貯留量を増やせ、またダイオキシンや温室効果ガス、有害物質のゼロエミッションを実現する生態系における「物質循環技術」である。
【請求項2】
本発明の生物体廃棄物処理システムに二段ヒートポンプとヒートパイプ余熱回収システムを構築し、生物体の蒸発液の凝縮回収に用いられる凝縮器の冷却水の温度を下げて循環使用する上に、冷却水が排ガスから奪った熱量は余熱回収システムの低温側で放出させ、ヒートパイプの役でその高温側に通過流れの循環ガスに伝え、その循環ガスの温度は150℃以上に達して再び乾燥窯に送り込まれ、湿ごみを繰り返し循環乾燥し、熱効率は80%以上になる。
【請求項3】
本発明の生物体廃棄物処理システムに太陽光発電システムを設置し、「電熱乾燥可燃物高温熱風炉」の「高温空気加熱器」に給電し、一定量の空気と循環ガスが900℃以上加熱し、熱風炉内に噴入し、高温低酸素燃焼性状を維持すると同時に「人工物」の乾燥可燃ごみを高温気流中に送り込んで乾留を行い、発生した高温熱風とパイパス管路の循環ガスと混合、調温してから再び乾燥窯へ送込まれ、繰り返し湿ごみを薫留乾燥する。太陽エネルギーと人工物乾燥ごみの燃焼はともに熱源となり、化石燃料を節約する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96219(P2012−96219A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103915(P2011−103915)
【出願日】平成23年5月8日(2011.5.8)
【出願人】(711004654)
【氏名又は名称原語表記】Gakushin Kyo
【住所又は居所原語表記】Okayama,Akaiwa―shi,Sanyo 3−2−2
【Fターム(参考)】