生物学的活性ケイ酸
本発明は、特有の構造と特定の生物学的活性で特徴付けられたサブナノ粒子サイズのケイ酸の低モル質量凝縮誘導体に関する。生体分子と相互作用して、その構造と生物学的機能を改変するこの開示されたサブナノケイ酸(SNSA)の調製方法および適用方法が開示された。本発明のケイ酸誘導体の好ましい適用分野は、構造および生体信号の伝達または膜輸送プロセスを調整することである。この物質の構造、調製および安定化の方法、またはこの物質からなる薬剤の組成および疾病の予防および診断への適用方法が開示される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
1.技術分野
本発明は、特殊な構造と顕著な生物学的活性の特徴を有するケイ酸の低モル質量凝縮誘導体に関する。ここで開示されケイ酸の出願は生体分子に相互作用してその構造および生体機能を顕著に改善することを開示する。この発明のケイ酸の好ましい適用分野は蛋白質の構造と生体機能を改善することであり、これには特に生物学的情報伝達または膜輸送過程での可逆的なリン酸化が含まれる。この物質の構造、製造方法および安定化、この物質からなる薬剤の組成および疾患の予防、診断および治療の適用方法が開示される。
2.背景技術
タンパク質のリン酸化は、情報伝達、膜輸送または筋肉収縮などのような生物過程において極めて重要な過程である。リン酸化は、リン酸分子をタンパク質鎖の(チロシンやセリンのような)ヒドロキシアミノ酸と結合させることで達成される。リン酸化は、常にリン酸分子の脱結合で元の構造に戻される可逆的な方法でタンパク質構造と生物活動を改善する。
【0002】
特定の蛋白質リン酸化促進物資は、リン酸基をアデノシン3リン酸(ATP)からリン酸基を蛋白質基質に転移する蛋白質キナーゼ(PK)である。蛋白質フォスファターゼ(PP)は、反対に蛋白質結合リン酸基を分離するように作用する。これら蛋白質キナーゼとフォスファターゼの逆方向の機能は平衡し、情報伝達と膜輸送のような幾つかの複合細胞過程を規制する。
【0003】
ある種の蛋白質リン酸化工程とそれにつながるシグナルカスケードの機能障害は幾つかの疾病において重要な因子であると認められている。可逆的なリン酸化工程の目的を持った調節は癌のような疾病に対する新しい治療法を見つけるために期待される手法であると考えられる。
【0004】
この概念は肺癌における腫瘍成長を促進する蛋白質キナーゼのHER−2およびHER−3を阻止する単一クローン抗体での腫瘍治療における最近の成功によって確認されている。しかしこの抗体による腫瘍抑制作用は、時が経つに従って、宿主の器官がそれを抗原性蛋白質と認識してそれを無効化する抗−抗体を生成するためにその有効性に制限がある。医療ニーズに合わないある蛋白質キナーゼまたはフォスファターゼの抑制または調節を目的とした非抗原性薬剤が提供されている。
【0005】
P型−ATPアーゼ(アデノシンー3フォスファターゼ)のスーパーファミリーのメンバーは、アデノシン3リン酸(ATP)の加水分解から得られるエネルギーを用いて生体膜を横切って輸送することを含んだ構造的に関連した蛋白質である。従ってこれらATPアーゼは膜を横切る「イオンポンプ」膜として類別される。実際に、各ポンプ周期はATPアーゼ蛋白質のリン酸化とそれに続く非リン酸化が含まれる。
【0006】
幾つかの疾患がある種のATPアーゼポンプの不都合な機能に関係しており、この酵素を抑制したり調整する医薬物質での治療可能性の開発を示唆している。ATPアーゼの構造的解明のかなりの進歩にも拘わらず、その作用メカニズムや医薬物質による調節については十分に解明されていない。
【0007】
1つの典型的なP型―ATPアーゼはNa,K−ATPアーゼまたはナトリウムポンプであり、これは、イオン恒常性および薄膜の電位、PH、温度または水の浸透性のような細胞機能の広い範囲を制御する。このナトリウムポンプには、筋肉収縮、神経シグナル伝達、腎臓のナトリウム保持率、または血管緊張のような重要な生理的過程の調節が含まれている。ナトリウムポンプの厳しい機能障害は、重大な高血圧や心疾患のような幾つかの病状態に明白に関与している。
【0008】
従来技術におけるNa,K−ATPアーゼの阻害剤として、心不全の治療に長時間適用されるハーブ由来の強心ステロイドがある。しかし、致命的な毒性がヒトの体重Kgあたり0.1−0.25mgの範囲のLD50服用致死量を持った高い毒性があり、治療のための服用範囲が著しく狭い。従って強心剤のステロイドダイオキシンは患者1日当たり4−5mgの服用が適当であり、患者1日あたり8−10mgでは致死毒性となる。非毒性ナトリウムポンプ阻害剤を見つけることが心不全症、高血圧および関連疾病の治療においては治療の大きな関心事である。
【0009】
ナトリウムポンプの心臓非毒性調節剤は、内因性のジギタリス様の要素(EDLFs)であろうと推定される。その存在は実験データの一致体によって指示されるが、EDLFsの構造は現在に至るまで開示されていない。最近のデータは、Na,K−ATPアーゼの役割は細胞膜のレベルでシグナルトランスデューサーであることを確信的に示しており、それはナトリウムポンプ調節剤の潜在的治療応用の新しい分野であることを暗示している。(Xie,z,Askihari,A;Eur.J,Biochem.2002,269,2434-2439)
H+/K−ATPアーゼ又はプロトンポンプは、ATPアーゼファミリーの他の1つのメンバーであり、胃の空腔から回収された1個のカリウムイオン(K+)を交換するに際して細胞質から水素イオン(H+)を輸送するものである。H+/K−ATPアーゼに直接結合して不活性化するプロトンポンプ阻害剤(PPI)は、従来技術において胃における胃酸過多症の処置のための治療剤、例えば、オメブラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾール(US5232706)として開示されている。しかしながら、これらPPI剤の過剰摂取は、便秘、咳、めまいまたは背痛のような副作用をもたらす。
【0010】
真核細胞内のカルシウムの恒常性は偏在して存在するカルシウムポンプとして知られCa−ATPアーゼによって維持される。形質膜のCa−ATPアーゼはカルシウムチャンネルを通した遊離Ca2+イオンの流入を妨げ、酵素的反応と細胞内シグナリング過程の広範なスペクトルを制御する重要な役割を果たす。筋肉細胞において、Ca−ATPアーゼは、筋肉の弛緩中にCaを貯える筋質網状筋小胞体内にCa2+イオンを戻す。このデータは、Ca-ポンプ調節物質は、例えば、筋肉収縮病における治療への応用可能性を強く示唆しており、しかしサプシガージンのような従来技術の阻害剤は、高度の細胞毒性のために使用が制限される。
【0011】
幾つかのバナジウム化合物は、Na,K−ATPアーゼ、H/K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼの阻害剤および他のP型ATPアーゼ酵素の従来技術での阻害剤として確認されている。最も多く使用されるのはメタバナジン酸塩(VO3)n-またはデカバナジン酸[V10O28]6-であり、それはマイクロモル範囲およびサブマイクロモル範囲においてIC50(半抑制濃度)値でATPアーゼを阻害するが、その結果はバナジン塩の瞬時の構造改変のために再現性がない。生化学関連のバナジウムオリゴマーであると考えられているデカバナジン酸は、生理学的なpHでは、安定ではないが、一旦形成されると、その効果を調査することができるほどその崩壊が遅い。その問題ある構造にも拘わらず、バナジン酸またはその過酸化物誘導体の過バナジン酸は、蛋白質フォスファターゼの非常に効率的な阻害のために実験室使用が広まっており、それは補完的なキナーゼの研究において一義的に重要である。
【0012】
バナジン酸は、多くの細胞型においてインシュリンの迅速な作用に驚くほど似ている。高血糖のねずみに経口投与すると、バナジン酸は糖分摂取と新陳代謝を刺激して、正常血糖状態に導く。加えて、バナジン酸は、インシュリンに対する組織反応と肝臓の血糖レベルを回復させると共に糖質の新陳代謝のための鍵となる酵素の新規の合成を促進する。糖尿病治療におけるバナジン酸化合物の臨床的な効果は、ヒトにおいては短時間の実施のみで確認されている。
【0013】
糖尿病におけるバナジン酸化合物のインシュリン類似使用に対する新しい興味にも拘わらず、バナジン酸誘導体の毒物学は興味を起こしている。ヒトにおいては高い胃腸障害が通常の毒性効果として報告されており、多量摂取を施した動物実験においては腎臓および肝臓に強毒性の厳しい徴候が現れることが報告されている。バナジン酸の長期使用は、多くは腎臓、脾臓、睾丸 肝臓および骨における進行性の組織蓄積と毒性効果の生成に大きく関与する。毒性はバナジンの酸化状態および過バナジン酸>バナジン酸>バナジルの順でのバナジンの配位および投与方法も依存している。[Domingo,J.L:「バナジン酸および糖尿病 バナジン酸の毒性とは何か?」 Mol.Cell. Biochemistry 2000,302,185-187]
ABC(ATP結合カセット)輸送体蛋白質は体内異物の排除を含む多くの細胞機能に関連した膜蛋白質の重要な分野を形成する。これらのATP−駆動放出ポンプは通常細胞の恒常性にとって必須のものであるが、例えば癌患者の化学療法ではそれほど望まれない。これは制癌剤に抵抗がある腫瘍を造るABC型多剤放出ポンプ(MDR)の過剰発現に対する癌細胞の生き残り戦略である。細胞成長阻害剤を大量に適用することは、毒性の副作用を顕著に強めるので、単に一時的な解決策に過ぎない。ある種のATP−アーゼ駆動多剤放出ポンプの選択的な阻害は、癌治療において重要な利点を示すが、しかし従来技術によるMDR阻害剤は効果が小さい。
【0014】
本発明の目的は、高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病、および創傷治癒のような種々の疾患の予防、診断および治療に有効な新しい薬剤的活性物質を提供することにある。
【0015】
この目的は、独立の請求項の開示によって解決される。好ましい態様は、本明細書の記述、従属する請求項、図面および実施例中に開示されている。
3.ケイ酸の説明
シリコンと酸素の結合物であるシリカは、まさに最も豊富な地殻成分である。広い意味合いで「シリカ」はすべての化学的結合形式において二酸化ケイ素を含み、それにおいてシリコン分子は、酸素分子により囲まれている。通常、結晶質石英として発見される二酸化ケイ素のSiO2は、実際には、化学式Si(OH)4を持つオルトケイ酸の無水物である。生物界におけるオルトケイ酸の至るところでの存在にも拘わらずシリコンを含み又は同元素を必要とする単一の生物分子は認められていない。
【0016】
オルトケイ酸は、アルカリケイ酸塩を陰イオン交換樹脂と共に処理するか、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)のようなテトラアルキルオルトケイ酸塩の加水分解によって得られる。新しくつくられたケイ酸溶液は極めて不安定であるが一方において速やかに重合してコロイド粒子、非結晶ゲルおよび、最終的には多孔性または凝縮固体物質が得られる。図1に示されるように、ケイ酸とその同族誘導体環の水を連続的に排除することによって線型、分枝、環状あるいは多環状凝縮生成物が得られる。低モル質量n≦20の凝縮生成物は、nがSiOx単位体の数として示される同族体として分類される。この単純なオルトケイ酸の同族凝縮生成物は古典的な化学式によって記載されるが、これらを個々に分離することは非常に難しい課題である。
【0017】
これらの凝縮生成物の一般式は[SiOx(OH)4-2x]nであり、ここで"n"は、凝縮されたSiOx(OH)4-2x単位の数を表し、xは、1−2間の値を採る。従ってシクロトリシリシックのような単純なシクロシリカ誘導体の式においてx=1であるとき、n=3で[Si3O3(OH)6]であり、シクロテトラシリシックはn=4で[Si4O4(OH)4]であり、シクロペンタシリシックはn=5で[Si5O5(OH)10]である。個々の種における構造は、29SiNMRスペクトルおよび安定した誘導体の変化により定められる。図1はx=1.5ときの角柱状の6量体[Si6O9(OH)6]、立方体状の8量体[Si8O12(OH)8]、角柱状の10量体[Si10O20(OH)10]のような多凝縮ケイ酸ケージ体を含む従来技術による少モル質量のケイ酸種の概要を示すものである。
【0018】
さらに進んだ(n>10)のケイ酸の凝縮生成物は、シリカ粒子と非結晶ゲルの形成で瞬間的にさらなる重合が進行するので一般的に非常に不安定であると考えられる(図2参照)。より高いオリゴマーまたはサブ粒子サイズの低重合シリカの中間生成物が推定されるが、その詳細は余り徹底的には研究されていない。実際に、多凝縮生成物は、濃度、温度およびpHに依存した分布を持ったある種の平衡混合物を形成する。組成の著しい不安定さと低制御性のためにサブコロイド状(Φ<5nm)の重合ケイ酸種の実用重要性は限られたものであると考えられる。
【0019】
ケイ酸のさらに進んだn>2,000を持った重合生成物はΦ>5nmの直径を持ったナノ粒子である。これらは固体のナノまたはマイクロ粒子として記載され、特有の物理化学特性によって特徴付けられている。水媒質でシリカナノ粒子は拡張された技術的用途を持ったコロイド状の懸濁液を形成する[US 3,702,866;US 3,707,979;US 4,061,724]。同様にゼオライトのような狭く制御された内部空孔を持った固体シリカ粒子は広い技術的応用を持っている。
【0020】
Φ>10nmのシリカナノ粒子は、一般に蛋白質を付着する不活性固体担体粒子として評価されている。この大きいシリカナノ粒子に対する蛋白質の物理的な吸着又は化学的結合は、免疫細胞とエフェクターの相互作用によって顕著な効果を示す。大きいシリカ粒子に対する幾つかの抗原性蛋白質の秩序ある結合は、引き出される免疫反応を顕著に促進させることができる[Tan,W.et al 「シリカナノ粒子に基づくバイオ技術」、Medical Research Review 2004, 24,621-638 ]。
【0021】
しかしながら、この先行技術の大きいシリカナノ粒子への蛋白質の結合は、異種核生成によって蛋白質の好ましくない凝縮が起こる、集合プロセスおよび凝縮による構造変化は蛋白質の生物的性質を失わせる原因となる。蛋白質の制御されない凝縮は、主としてアルツハイマー病におけるアミロイド斑の形成のような幾つかの病跡に関係する。
【0022】
日本臓器による特許群[US 5,534,509; 5,685,896および5,807,951]は、20,000-1,000,000g/モル(DA)の範囲における好ましいモル重量質量を持ち、490-16,500の範囲の重合度で平衡する重合シリカについての生理的調整機能を特許請求している。しかしながら、引用発明の好ましい分子重量範囲では、記載された化合物は殆どコロイド状シリカ粒子又は不溶性ゲルである。このような大きい寸法のコロイド状粒子および不溶性ゲルが請求された生物制御活性を提供するには大きな疑問がある。最初に出願して以来15年間、これら請求されたシリカ重合体の生物活性を確認する科学論文もなくまた実際使用もされていない。
4.発明の概要
本発明は、特別に構成された寸法がナノ寸法以下のシリカ粒子を持ち、従ってサブナノケイ酸(SNSA)として分類される生物活性ケイ酸に関するものである。この分類は下記一般式1中のサイズΦおよび重合度nで示され、それは直径Φ>5nmおよびn>2,000ナノサイズのシリカ粒子である。
【0023】
本発明のケイ酸SNSAの一般式Iは以下の通りである。
[SiOx(OH)4-2x]n (1)
ここで、
Siは、Q1,Q2,Q3およびQ4タイプのSi原子であり、
nは、12から2,000の間の整数を示し、また
x は、1.2から1.8の間の数を示し、また
そこでは、物質は内部コアと外部シェルからなり、また
そこでは、内部コア中には75%以上のQ4タイプのケイ素が含まれまた外部シェル中には75%以上のQ2およびQ3およびQ4タイプのケイ素が含まれる。
【0024】
本発明の物質は構造的に分子直径(Φ)が0.3<Φ<5nm、好ましくは0.6<Ф<3nmの範囲のケイ酸分子として記述される。本発明の生物学的活性ケイ酸における凝縮シリカ(SiOx)ユニットまたはより詳細に記述された[SiOx(OH)4-2x]nユニットの数nは、12<n<2000,好ましくは20<n<300である。従って本発明の生物活性サブナノケイ酸は、0.7−140kg/mol(KD)の範囲、好ましくは1.4−20kg/mol(KDa)の範囲でモル質量を有する。
【0025】
本発明の物質において必須の構造形態は、分子の「外部シェル」に配列され、稠密かつ均等に分布された遊離SiOH(シラノール)基を持った分子の回転楕円形または殆ど回転楕円形状にある。本発明の物質の外部シェルにおける異常に多い遊離SiOHは水中で高い溶解度(>5%m/m)を示し、オルトケイ酸の酸性度に比べて著しく高い酸性度の故にケイ「酸」としての分類が正当化される。本発明によればこの外部シェル上の夥しい数の遊離SiOH(シラノール)を持ったほぼ回転楕円形構造は、凝縮された(SiOx)nの「n」の値を驚異的に狭くすることで最適に達成される。シラノール結合の最高の表面密度を持ったほぼ回転楕円形の構造の安定性を得るための最適な範囲は12から2,000の範囲、好ましくは16から1,000、または19から400の範囲、最も好ましく最高の安定範囲としては28から128の範囲のn数の個別の「n」数値を持った凝縮[SiOx(OH)4-2x]nにより達成される。
【0026】
さらにまた、本発明は、式(I)の生物活性ケイ酸を好ましくは大規模入手が可能な先駆体からの合成によって製造する方法、および生物活性を有する本発明の物質の安定化と化学的な導出をする方法を提供するものである。
【0027】
本発明の物質においては、好ましくはそのシグナル伝達および膜輸送プロセスを含む蛋白質の構造および活性の改変が可能である。本発明のケイ酸の適用分野は一定のシグナル蛋白質および輸送ATPアーゼ又はATP駆動放出ポンプにおける可逆的なリン酸化の離脱機能に起因するかまたは関係する。本発明の物質は蛋白質のリン酸化を調節するかまたはP型ATPアーゼおよびヒトにおけるNa,K−ATPアーゼを忌避する強心ステロイドを忌避するために用いられるバナジン酸のような従来技術による薬剤に比べて相当程度の技術進歩を提供する。その機能は類似しているが本発明のシリカ製品は、毒性においても、従来技術のバナジン酸や強心剤に比べて医薬用途において決定的な利点がある。
【0028】
本発明の化合物は、ATP−アーゼポンプおよび幾つかの結合イオン好ましくは陽イオンと相互作用をする。ATPアーゼ蛋白質の強力な忌避作用を通して、本発明の物質は、ATPアーゼにより調整された胃酸過多やNa,K−ATPアーゼの強く関係した高血圧のような種々の心臓血管関連疾病の場合のようにこれらの薄膜ポンプでの機能障害に起因するかまたは関連する病状の診断に新しい方法を提供する。ATP制御の輸送蛋白質の影響によって、本発明の物質は、ABC輸送体の場合のような代謝物や身体異物の排除を調節することができる。
【0029】
本発明の物質の重要な適用は、蛋白質との相互作用および蛋白質の特有の構造範囲に対する独特の能力によってもたらされる。本発明のケイ酸物質による生体分子、好ましくは蛋白質またはグリコ蛋白質の構造および分子内または分子間の相互作用を変化させる。
【0030】
本発明のケイ酸物質の外表面または外部シェルにおける遊離シラノール基の高密度かつ均等な分布によって、本発明の物質の化学的または生体的特性は、pHやイオン強度に強く影響される。この本発明の物質のアルカリイオンの濃度からの構造依存性は、ここで記載される回収メカニズムによる細胞内又は細胞間のイオン濃度を調節するための生物学的活性ケイ酸物質のメカニズムを与える。本発明のケイ酸物質の蛋白質との独特な相互作用とその三次構造および生物学的性状調節によって本発明の物質は、すべてではないが、例示した高血圧、胃酸過多または糖尿病のような疾病の診断、予防、診察に応用することができる。さらに本発明の物質の治療への適用分野としては骨疾患、心疾患および神経変性病がある。
【0031】
本発明の物質の実際的な適用としては、蛋白質、好ましくは膜蛋白質、受容体蛋白質、シグナル蛋白質との相互作用により生化学および生理学的プロセスの改変が関係する。特定の蛋白質キナーゼまたはフォスファターゼの構造および特性を改変することによって、可逆的なリン酸化を与える。ここに記載された本発明の物質の性能は欠点のあるリン酸化プロセスに起因するか関連する特定の疾患の治療に利用できる。このメカニズムはここに開示された本発明の能力は糖尿病の病気の徴候をこの疾病の治療のための新しい提案を提供することにより低下させることで説明できる。
【0032】
本発明の構造と生物学的活性を持った一般式(I)のサブナノケイ酸(SNSA)をみるために個々に提供された一貫した実験的立証は、有毒性のバナジウム誘導体またはNa,K−ATPアーゼまたはH/K−ATPアーゼ阻害性抗酸剤のための強心ステロイドのような先行技術によるATPアーゼポンプ阻害物質と比較して顕著な技術的進歩が得られる。
5.好ましい実施の態様の詳細な説明
本発明の目的は構造と生物的機能に対する特定の調節に起因した蛋白質のような生体分子に特定的に相互作用をする物質を提供することにある。ここに記載された本発明の物質の対象とする主な目標は、好ましくは細胞内シグナリングと膜輸送をする可逆的リン酸化プロセスを含むような蛋白質である。
【0033】
溶液は、直径Φ>5を持つナノ粒子の直径よりも小さい直径を持った多凝縮(重合)させた水溶性ケイ酸である本発明の物質により提供され、それ故に本発明の物資はサブナノケイ酸(SNSA)として類別される。本発明の物質の特有のサイズおよび分子構造は、特に大きい生体分子、好ましくは、蛋白質とその構造および生物学的機能を改質することによって相互作用させる。この発見は、これまでの構造特定の生物学的作用が単一ケイ酸になく、そのオリゴまたは重合凝縮誘導体にもないことが確認されていないのでさらに以外である。本発明は、一般式(I)の物質の構造および特性、その製造法および安定化法、少なくとも1個の一般式(I)の物質からなる薬剤の組成および疾病の予防、診断および治療における適用方法を開示するものである。
【0034】
本発明のケイ酸物質はバナジン酸、強心ステロイド、抗酸剤、抗癌剤、ATP-アーゼ阻害剤、薬剤放出ポンプ阻害剤およびモノクローン抗体に基づく治療剤のような先行技術による化合物の欠点を克服するものであることを述べることは重要なことである。これらの先行技術による化合物は、蛋白質、好ましくはリン酸化によって含まれる物質と相互作用および蛋白質キナーゼやフォスファターゼのような膜輸送プロセスによって含まれる化合物あるいはATP-アーゼのATP-駆動ABC薬剤放出ポンプと相互作用すると述べられている。現状のSNSAの毒性潜在力(AT)は従来剤の毒性潜在力よりもその大きさが少なくとも1桁低く、現在に至るまで本発明のケイ酸SNSAについては望まれない影響は確認されていない。
5.1構造
本発明の物質の詳細な記述のためには、通常は記号QS (s=0−4)が個々のSi原子の結合型を表すために適用される。この類別において、Q4タイプのSi原子は、近接する酸素原子(s)を介して4個の隣接するSi原子が連結し、Q3では3個、Q2では2個、Q1では1個のSi原子が近接する酸素原子を通して連結する。残りのSi原子の価はSi−OH(シラノール)結合(s)に含まれる。従ってQ3タイプのSi原子は単一のSi−OH結合中に含まれ、Q2タイプのSiは2個並列型Si(OH)2に結合される。Q1タイプのSi原子は3個の−OH結合−Si(OH)3を随伴し、Q0タイプのSi原子を持ったケイ酸は、4個のSi(OH)4 であるが、一方においてQ4タイプSi原子は−OH基を持たない。
【0035】
本発明は下記一般式(I)で示される物質に関するものである。
[SiOx(OH)4-2x]n (1)
ここで、
Siは、Q1,Q2,Q3およびQ4タイプのSi原子であり、
nは、12から2,000の間の整数を示し、また
xは、1.2から1.8の間の数を示し、また
そこでは、物質は内部コアと外部シェルからなり、また
そこでは、内部コア中には75%以上のQ4タイプのケイ素が含まれまた外部シェル中には75%以上のQ2およびQ3およびQ4タイプのケイ素が含まれる。
【0036】
これは、一般式(I)の本発明の物質は、全Q4タイプのSi原子の75%以上からなる内部コアおよび全Q3およびQ2およびQ1タイプのSi原子一切の75%以上からなる内部コアまたは外部シェルによって構成されることが本発明の物質にとって必須であることを意味する。
【0037】
従って、本発明の物質は、75%以上のQ4タイプSi原子からなる内部コア構成物と75%以上のQ3およびQ2およびQ1タイプのSi原子からなる外部シェル構成物の層状構造として組み立てられる。
【0038】
結局、SNSA物質の内部は、75%以上、好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上のQ4タイプのSi原子を含む内部コアとして規定される。
従って、外部シェルは、Q3およびQ2およびQ1タイプのSi原子全体の75%以上からなるSNSA物質の一部として規定される。
【0039】
Q4タイプのSi原子で占められた内部コアとQ3およびQ2タイプのSi原子の外部シェルからなる回転楕円体形状を持った本発明のSNSA の構造設計は図3に示される。
本発明の物質は、長期安定性と低レベルの毒性によって特徴付けられた低モル質量凝縮ケイ酸として組み立てられている。オルトケイ酸および誘導体の連続したオリゴ化と重合により得られた他の物質の背景における局所的特性は、図4に示される。この図面は、単純なオリゴマー分子から高モル質量の重合シリカ粒子およびゲルの凝縮生成物の成長の大きさを概観的に示したものである。
【0040】
特性(寸法、モル質量、重合度、溶解度)によるケイ酸凝縮生成物の分類別を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
これらの構造的限定値は主として一般的に受容可能な限界値に相当するが、正確にはサブナノ粒子領域では正確性は低い。
従って本発明の生物活性物質はΦ≦0.3nm、好ましくはΦ≦0.6nmを持ったオリゴマー凝縮シリカ種およびΦ>5nm、好ましくはΦ>3nmのシリカナノ粒子の間の中間領域のサブナノケイ酸(SNSA)として規定される大きい分類に属する(表1)。
【0043】
従って、本発明のサブナノサイズのシリカ粒子は、0.3nmから10nm、好ましくは0.3nmから5nm、および最も好ましくは0.6nmから3nmの直径を有する。
実際に非常に多数の可能性のある同族体と増加する重合度「n」を持った等比数列での構造異性体からなる12<n<300、さらに20<n<300を持ったサブナノ粒子領域について注目することは重要なことである。ここに記載された本発明の生物学的活性SNSA物質は、サブナノ粒子領域において、考えられほとんど無限の構造選択の個々に非常に狭い下位集合のうちから構成される。
【0044】
本発明のサブナノ粒子寸法の凝縮ケイ酸分子種は、12<n<2,000、好ましくは14<n<1,500、さらに好ましくは18<n<500、さらにより好ましくは19<n<400、最も好ましくは20<n<300の重合度で、xは1.0および2.0の間の数で示される、化学式[SiOx(OH)4-2x]nを有する。
【0045】
本発明の化合物については、xは1.2から1.8の範囲、好ましくは1.3から1.7の範囲、さらに好ましくは1.4から1.6の範囲、最も好ましくは1.45から1.55の範囲である。最適なケースは、x=1.5であり、化学式[SiO1.5(OH)]nが得られる。
【0046】
「本発明の物質」は、安定した生物学的活性を有し、かつここで開示されるような構造基準(C1−C12)によって示すことができる分子種によってのみで分類別することができる。Φ≦5nm、好ましくはΦ≦3nm、モル質量≦120kg/mol(kDa)、好ましくは、≦20kg/mol(kDa)の境界よりも低い領域における意外に安定した生物学的活性種の発見は、先行技術で述べられたこの領域において非常に不安定なシリカ種に比べて重要な技術的進歩である。
【0047】
一般式(I)の本発明のSNSAの分類に適用され、非常に変化に富んだ不規則な構造を持ったシリカから識別される種構造基準(C1−C12)は、本発明によって規定され、以下のように述べられる。
C1 0.3≦Φ≦5nm、 好ましくは0.6≦Φ≦3nmの範囲の分子直径Φ(nm)を持った回転楕円形もしくはほぼ回転楕円形である。回転楕円形もしくはほぼ回転楕円形への近似は、対称もしくは均一なSi−O−SiおよびSi−OH結合の配置への傾向を反映している。本発明の物質は厳密な構造対象性を持つものではないが、その構造要素は好ましくは外部シェル上でのSi−OH基の規則的な交互分布を含めほぼ対称的である。図5は外部シェルにおいて遊離Si−OH基の均等化された分布を持った本発明のケイ酸分子の回転楕円体の形状を示したものである。
C2 0.7−140kg/mol(kDa)の範囲、好ましくは、1.0−100kg/mol(kDa)の範囲、さらに好ましくは1.2−70kg/mol(kDa)の範囲、またさらに好ましくは、1.3−40kg/mol(kDa)の範囲、最も好ましくは1.4−20kg/mol (kDa)、の範囲あるいは本発明の物質が分子種として特徴付けられるのを正当化する領域におけるモル質量。
C3 12≦n≦2,000の範囲、好ましくは16≦n≦1200の範囲、さらに好ましくは17≦n≦700、更により好ましくは、19≦n≦400の範囲、最も好ましくは、20≦n≦300の範囲の凝縮シリカユニットの数「n」である。さらに一般式(I)の可溶性物質が好ましい。水中溶解度はn=16からn=1200範囲の物質によって提供された。
【0048】
ここに開示されたケイ酸の分子寸法および安定性は、本出願の実施例によって示されるように、動的光散乱法(DSL)、核磁気共鳴装置(NMR)、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、粘度計、赤外線(IR)およびラマン分析器、蛍光スペクトル分析記、透過型電子顕微鏡装置(TEM)、N2吸収等温吸着曲線その他の技術のような物理的な方法によって特徴付けられる。
C4 Q3、Q2、Q1タイプのSi原子すべての合計値とQ4タイプのSi 原子の比率値は1.5および2.5の間、好ましくは1.75および2.25の間、さらに好ましくは、1.9および2.1の間、最も好ましくはほぼ2である。
【0049】
Q1タイプのSi原子のほとんどが外部シェル中に含まれるQ1タイプのSi原子のQ2タイプのSi原子に対する割合は、30%以下、好ましくは、20%以下、さらに好ましくは12%以下、最も好ましくは6%以下である。従って、もし別の指定がなければ、Q1タイプのSi 原子はQ2タイプのSi原子の合計中に含まれる。
【0050】
Q3タイプとQ2タイプ(Q1タイプを含む)のSi原子の比率値は0.5と1.5との間、好ましくは0.65と1.35との間、さらに好ましくは、0.8と1.2との間、最も好ましくは、0.9と1.1との間である。
【0051】
Q4タイプのSi原子の少なくとも75%、好ましくは80%、さらに好ましくは85%が内部コア中に含まれる。
Q3およびQ2タイプのSi原子のすべての少なくとも75%、好ましくは80%、さらに好ましくは85%は外部シェル中に含まれる。
C5 Q4、Q3、Q2タイプのSi原子の平衡した比率が、本発明のシリカ構造および生物学的活性の好ましい実施態様において考慮されている。平衡とはQ4、Q3、Q2タイプのSi原子が等しいか、1:1:1に極めて近いことを意味し、近いとは、理想的な平衡である1:1:1の比率から最大30%、好ましくは20%さらに好ましくは10%の偏差があるとして定義される。従って、Q4、Q3、Q2タイプのSi原子の理想的な平衡比率から容認される偏差は、最大1:0.7:0.7から1:1.3:1.3、好ましくは1:0.8:0.8から1:1.2:1.2、さらに好ましくは1:0.9:0.9から1:1.1:1.1である。1:1:1に近いQ4:Q3:Q2タイプのSi原子の平衡分布は29SiNMRスペクトルによって裏付けられている。
C6 ほぼ(1:1:1)の理想的な平衡比率を持った本発明の生物学的活性分子種の化学式は[SiO1.5(OH)n]で表される。この一般式は、n≦10の領域におけるプリズム型6量体での[Si6O9(OH)6]、立方体型8量体での、[Si8O12(OH)8]またはプリズム型での10量体での[Si10O20(OH)10]のような多凝縮シリカケージの一般式に類似している(図1参照)。類似の一般式を持ったこれらの先行技術の多環状シリカケージ種は、重要な技術進歩を達成する12<n<2000の領域におけるここで示されるような生物学的活性サブナノケイ酸のような生物学的活性を示さない。
【0052】
最適な比率(1:1:1)の平衡によって、相当量の遊離シラノール(Si−OH) 基はSI原子の全量とほぼ等しくなる。本発明の大量のシラノ基は本発明の物質の「ケイ酸」を決定的に正当化する。さらにこの遊離(Si)−OHの「n」の高い値は、本発明のサブナノ回転楕円体ケイ酸の好ましい構造的態様を可能にする。この条件はSNSA 物質の生体分子、好ましくはプロテンとの本発明の最適な相互作用にとってさらに必須である。
C7 本発明の構造の内殻は多かれ少なかれ、Q4Si原子の小型のシリカ骨組み(SiO2)によって形成される。この内殻の組立は、モノケイ酸または3個から6個のSi原子、好ましくは4個または5個のSi原子を持ったその単純な線型または環状誘導体である中央種ユニットによって始められる。もしくは、プリズム型6量体、立方体型8量体もしくはプリズム型10量体ケイ酸骨組みのようなケージ型多環状シリカユニットが種ユニットとして使用される。
C8 同様にQ4タイプのSi原子の内部シェルは種ユニットの近傍に形成されている。シクロシリカ種ユニットで始められ、各Q2タイプのSi元素は、いずれも2つのケイ酸ユニットで凝縮され、従って各連続したシェルは等比級数的に先のレベルのSi原子の2倍を含む。Q3Si原子を持った種としてケージ型シリカで始めると、近傍のシェルは同数のSi原子を持つようになる。直線的に凝縮されたケイ酸オリゴマーはそれらの混合Q2およびQ3タイプSi原子に基づいて異なる発展をする。ここにアウトラインを示すQ4タイプのSi原子を持った内部シェルの概略的な成長パターンを図6に示す。本発明の構造の殆どすべての態様において、層中のSi原子の数とタイプは以前の層におけるSi原子の数とタイプによって特定される。Q3およびQ2のSi原子を持った外部シェルの構造によって同様の数値的制限が存在する。これはいくらかの数値的な値、例えば比例級数を形成する数値は実施例に開示されたように層の構造において予定される。
【0053】
従って、12と2000との間のnの領域のすべての整数からの1つの計算値は、本発明のC1−C12の構造基準の達成のために好ましい。それは20から300の最小範囲または最大範囲の12から2000における凝縮されたケイ酸のn値の1つの好ましい計算値は他のものよりも一層好ましいことを意味する。
【0054】
意外なことに、生物学的活性を有する本発明のSNSAは、動的光分散(DLS)スペクトルでの鋭いピークによる立証として分子直径値の狭い分布が特徴付けられている。これは本発明の方法によって得られた生成物がサイズ排除クロマトグラフィによってさらに確認されたように、モル質量の非常に狭い分散に対応していることを意味している。「n」の計算値に対する本発明の構造の態様は分子構造の更なる規則性を示す実施例により述べられる。
【0055】
上述の構造的な特徴は、合成段階での特定の準備条件(濃度、PH値、温度、攪拌度)による幾つかの要因による本発明によって定められる。これらのパラメータはSNSAの種が発生する合成の「誘導」段階において区別してセットされ、これによって分子の制御的な成長が行われる。この段階内での操作パラメータの値と活動力(段階の持続時間により変化)は、SNSA の生成の結果が、一般的な操作条件のもとで、熱力学的に好ましい計算値付近の「n」凝縮度のきわめて狭い分布によって特徴付けられる。
【0056】
「安定」段階での条件は、SNSAの成長を停止し、生成物に当業者の認識よりも決定的に高い安定度を与えるように変性される。個々で開示される準備方法は、従来の方法とは著しく異なる方法であって、非常に大きいモル質量とシリカユニットの凝縮度「n」のより広いガウス分布が得られる。
【0057】
ここに開示された本発明の合成法によれば常に本発明の物質の混合物が生成し、これらの生成物は、請求項1に開示された制限によって規定される。従って、単一のn値を持った単一の化合物が合成されるのみではないことは当業者にとって明らかである。本発明の物質は、nが12から2000の最大範囲内、好ましくは、nが16から1200の範囲内、さらに好ましくは、nが18から500の範囲内、なおさらに好ましくは、19から400の範囲内、最も好ましくは20から300の範囲内のn値の狭い分布の混合物として分類される。
【0058】
従って、本発明の重要な態様は、従来技術による不活性な重合物および/またはコロイド状シリカ粒子に比べて、本発明の物質は、ここに開示された範囲内のn値の狭い分布を有する。本発明の物質は、明らかにnが12から2000の最大範囲を超えるガウス分布を持つものではない。もし本発明の物質の分析に動的光散乱(DLS)またはサイズ排除クロマトグラフ(SEC)のような分析方法を使用した場合は、個々に開示された範囲内に入る単一のn計算値に相当する本発明の物質の分子直径Φおよびモル質量Mrの狭い分布が検出され、n値は特有の好ましいn値付近の25%、好ましくは20%、さらに好ましくは15%異なる。従ってnが12から2000の最大範囲内において、本発明の物質は単一のn計算値の付近で25%、好ましくは20%、さらに好ましくは15%の比較的狭い分布で合成される。本発明の物質に本発明の合成を実施するとき、例えば、n値は36,45,92,96、180,192,288,360,450,552,654,720,810,990が本発明の物質の混合物における最も好ましい化合物であり、一方本発明の混合物の他の化合物は、同様には分布されないか12≦n≦2000の範囲内のガウス分布であり、むしろn値が、好ましいn値を持った化合物から25%以上、好ましくは20%、さらに好ましくは15%以上異ならない範囲内のn値を持った化合物が見られる。例えば、本発明の混合物においては、最も好ましい値が96で、すべての発明物質の約25%がこのn値を持ち、例えば本発明の混合物が最も好ましいn値が96ですべての発明物質の約25%がこのn値を持ち、残りの75%が12から2000のn値を持たない場合には、代わりにn値は好ましいn値の96付近を狭く分布する。「狭い分布」とは、n値が最も好ましいn値の約±25%、好ましくは±20%、さらに好ましくは±15%であることを意味する。上記の例に関しては、本発明の物質の25%についてn値が96であり、残りの75%の本発明の物質は72と120との間のn値(25%分布)、好ましくは77と115との間のn値(20%分布)、さらに好ましくは82と110との間のn値(15%分布)を持つ。
【0059】
従ってここで使用される用語「狭い分布(ROD)」とはROD=n−0.25nからROD=n+0.25n、好ましくはROD=n−0.20nからROD=n+0.20n、さらに好ましくはROD=n−0.15nからROD=n+0.15nの分布(ROD)範囲内の1つの個別の最も好ましいn値付近での本発明の物質の分布を云う。またさらに絶対数で定義することが好ましい場合には、分布の範囲はn値が600から2000の範囲では、ROD=n−125からn+125、好ましくはROD=n−100からn+100、さらに好ましくはROD=n−75からn+75、またn値が300から600の範囲では、ROD=n−60からn+60、好ましくはROD=n−40からn+40、さらに好ましくはROD=n−20からn+20、またn値が30から300の範囲では、ROD=n−30からn+30、好ましくはROD=n−20からn+20、さらに好ましくはROD=n−10からn+10である。
【0060】
さらに、特有でかつ好ましい個々のn値を持った物質は反応パラメータによって支持され、さらに反応時間や温度および濃度によってn=12からn=300の低い範囲で好ましいn値を持った物質が形成され、一方、他の反応パラメータはn=300からn=1000又は1500又は2000の高い範囲の好ましいn値に導くことを述べなくてはならない。
【0061】
しかし、特定の好ましいnの数とは関係なく、ここに開示され、規定された範囲内で本発明の混合物は実例をもたらし、本明細書で述べかつ実証されたように開示され立証された活性を示す。
C9 シクロシリカリングを含む4個または5個のSi原子を持った構成パターンユニットは、本発明の物質の構成において内部または外部シェルの構築に好ましい。他のパターンについては排除されないが、しかし3個のSi原子を持ったシクロシリカは構造に著しい稠密化と張力を与える。6個のSi原子を含むリングは排除されないが、しかしより大きいシクロシリカは全体の構造枠を緊密さと安定性を低下させる。構造的組立体の緊密な構成は、張力構造要素を欠くとともに内部空分子の選択的な全体的安定性を与える。
C10 稠密で均一に分布した高い遊離性のSi−OH基を持った外部表面は、本発明のSNSA種の生体分子、好ましくはプロテンとの相互作用を完成させるための決定的な構造的な要求である。遊離OH基はSi−O−Si結合によって連結されたQ3およびQ2タイプのSi原子によって作り上げられたシリカの枠組と結合する。Q3タイプのSi原子は1個の−OH基を、またQ2タイプのSi原子は2個の−OH基を持つので、Si−OH(シラノール)基の全数は、外部シェルにおけるSi原子のSi−OHの数より50%ほど高い。すべてのサブナノシリカ分子にとってシラノール基の数は最も好ましい一般式[SiO1.5(OH)n]に従ったSi「n」原子と等しい。
【0062】
本発明のSNSAの表面におけるSi−OH基の密度は、表面の平方ナノメータ(nm2)当たりのSi−OH基の数で表されるαOHによって規定される。ここに提示されたデータは、外部Si原子によって規定された領域の表面積A=R24πで計算された。VdW(ファン デル ワールス(Van der Waals))表面での計算は分子サイズの評価には十分であるが、SiOHの密度には十分でない。
【0063】
本発明のケイ酸の外部シェルにおけるシラノール基の密度は、αOH>2.5、好ましくはαOH>3.5の遊離Si−OH基/nm2の平均値で与えられる。非結晶シリカαOH>2のシラノール基の値は、遊離のシラノール基の化学誘導体化によって決められ3.0から6.0基/nm2の密度値が得られている。しかしながら、固体粒子によるこれらのαOH値は内部および外部Si−OH基の合計を反映するものであり、従って外部表面における遊離OH基の密度は相当に低い。
【0064】
非結晶シリカ粒子と内部および外部Si−OH基と比較すると、本発明のケイ酸分子における内部Si−OH基の貢献度はむしろ低い。外部シェルのQ3、Q2およびQ1に結合される遊離のSi−OH基の稠密で均一な配置によって(図7参照)本発明の生物学的活性ケイ酸は高い比率の内部シラノール基を持った先行技術のシリカ粒子に比べて決定的な技術的進歩を提供する。
【0065】
コンピュータのモデルデータは、外部表面において規則的にQ3およびQ2タイプのSi−OH基を変えるSi−OH基の分離はその不規則で無作為な配置として好ましいことを指摘している。さらに、この構造的特殊性は、生体分子、好ましくはプロテンとの相互作用の最適な態様に重要な貢献をしている。本発明の分子が外部Q3および表面におけるQ3およびQ2タイプのSi−OH基の比率は実施例に開示するようにIRスペクトルによって走査される。
C11 nの計算値は、外部シェルのSi原子によって規定された外部表面におけるSi−OH基/nm2の表面密度の計算によって示される。重合度の関数としてのSi−OH基の密度は一定の値ではなく、あるいは直線的な変化を示さない本発明は、幾つかの個々の重合度値「n」の意外な存在を開示する。高いシラノール密度を持ったこれらのn値は、本発明の記述における実施例に開示されている
C12 主な構造基準C1−C10の達成は、ここに開示したような範囲において第一の安定なケイ酸化合物が確認された一般式(I)の本発明の物質の安定性にとって必須であることを述べることは重要である。
【0066】
Q4:Q3およびQ2Si原子のほぼ平衡な比率のための本発明のケイ酸の外部シェルにおけるシラノール密度の計算は、一般式(I)におけるn値の関数として非線型変化を示す。このことは幾つかの「n」値が18<n<300の範囲からの他のものと同様に、シラノール基の稠密な分布と言う基準によく適合していることを示す。
5.2 調製と特性
物質の調製は以下の一般式(I)で示される。
【0067】
[SiOx(OH)4-2X]n
ここで、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の数を示す。
【0068】
物質の調製は以下のステップを含む:
a)無機シリコン化合物またはテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩を水または水溶剤混合液と混合するステップ、
b)60分間未満撹拌しながらpH値6.2−4.5で誘導段階を行うステップ、
c)直線的勾配で徐々にpHを減らしながら微調整してpH値4.5−3.8で凝縮段階を行うステップと、
d)pH値2.1±0.3またはpH>8.4に溶液のpH値を急速に変えて安定段階を行うステップ
を含み、
完全な調製を行うために必要な温度は4℃から8℃の範囲とすべきである。
【0069】
ステップC直線的勾配でpH値を徐々に減少させる操作が少なくとも5分間行われる。
本発明のさらなる態様は上記の方法で入手可能な物質である。
本発明の重要な実施態様は、好ましくは多く利用できるシリコン化合物から生物学的活性SNSA誘導体の選択的合成をすることである。また本発明は、大量にランダムに凝縮された低モル質量ケイ酸合成混合物または生物学的抽出物から生物学的活性SNSA因子を分離するための方法を提供することからなる。
【0070】
本発明の活性ケイ酸の調製はシリカ、アルカリケイ酸塩または4塩化ケイ素のようなシリコンハロゲン化物などの大量に入手可能な無機シリコン化合物から合成方法で行うことができる。合成のための別のタイプの出発物質は、テトラ・エチル・オルトケイ酸塩(TEOS)またはテトラ・メチル・オルトケイ酸塩(TMOS)に例示されるテトラ・アルコキシ・オルトケイ酸塩、またあるいはポリヒドロキシ化合物を持つ加水分解可能なシリコン複合体などのいくつかのシリコン有機誘導体である。
【0071】
1つの好ましい実施態様は、本発明の物質への「in situ」で合成されたモノケイ酸の変換を制御する多パラメータである。しかし先行技術の方法、すなわちアルカリケイ酸塩のプロトン付加反応や類似の方法で得られたモノケイ酸は、先行技術の文献に記載されるように高重合化生成物へ瞬時に変換される。
【0072】
本発明は、出発物質が瞬時に重合化されることを防ぎつつ、高い収率で、in situ で調製されたケイ酸を、本発明の生物学的活性サブナノケイ酸SNSAに変換する方法を開示する。本発明の各方法は、(i)目的ある低モル質量凝縮へと誘導する「誘導段階」(ii)制御されていない不規則な重合化せずに、本発明のSNSAの選択的で高意収率で調製を行う「凝縮段階」(iii)生成物が十分に安定される「安定段階」からなる。
【0073】
本発明のSNSAの調製方法の選択性と高生産性は厳密に制御された濃度、pH,温度、各反応ステップの所要時間により達成される。作業パラメータは、製造の各段階で区別して定められた。従って、本発明のSNSAのテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩Si(OR)4の選択加水分解と変換は、厳密に実施され制御される「誘導段階」、「凝縮段階」および「安定段階」からなる。
【0074】
1つの好ましい実施態様は、式中のRがメチル、エチル、プロピルまたは出発物質が0.02−0.6モル=L-1の範囲に凝縮されたブチルを示す式Si(OR)4を持ったテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩の変換である。Siテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩からの本発明の調製はここに述べているように本発明に従って行われ、この「in situ」で生成されたケイ酸は本発明の物質へ目的ある変換を行い制御されない重合化を防ぐ。
【0075】
テトラ・アルキル・オルトケイ酸塩と水またはアルコールが入った水の反応の「誘導段階」では、4.5−6.2のpH値、好ましくは5.4±0.4のpH値が適用される。この誘導段階は短い期間であり、好ましくは10分間の長さで60分間より長くはかからず、その間強力に撹拌することが推奨される。次の「凝縮段階」では、4.5−3.8のpH値で微調整が必要であり、直線勾配に沿って少なくとも5分間で徐々に減少させる必要がある。
【0076】
本発明の重要な特徴は、本発明の物質の合成と安定におけるすべての段階で温度が厳密に制御されていることである。誘導段階の好ましい温度範囲は4℃から50℃で好ましくは15℃から40℃である。規定のpH値や温度値からの偏差と依存は、生成物の組成と活性により大きく変化する。本発明のシリカのより高い重合化を妨げるために凝縮プロセスを取りやめることは、溶液のpH値を2.1±0.3またはpH≧8.5に急速に変化させることで達成される。
【0077】
アルカリケイ酸塩、好ましくはケイ酸ナトリウムなどの別の大きいシリコン化合物あるいはアモルファスシリコンやケイ酸塩鉱物から本発明のサブナノケイ酸を調製することにおいても誘導、重合および安定に類似した段階が述べられている。
5.3 特徴
DLSとゼータ電位
本発明の凝縮ケイ酸種の動的光散乱(DLS)測定は、好ましい直径範囲0.6<Φ<3.0nmで安定種が存在することを示した。動的光散乱とゼータ電位を適用してSNSAの大きさを測定することで、pHと濃度に依存するシステムの安定性が詳細に確立された。ゼータ電位アセスメントと組み合わせたDLS技術は、大きさがΦ>3.0nmより大きい連合/凝集粒子の形成を制御するためにうまく適用された。
【0078】
凝縮に関するナノサイズ粒子の安定性はLondon-Van der Waals引力と静電反発力の平衡に依存することが知られている。静電反発はイオン強度と表面電位(ネルンスト電位)に依存し、懸濁液のpH値を調整することで変更できる。ネルンスト電位は、実験的に利用できないが、ゼータ(ζ)電位であるせん断面における界面動電位はモニターすることができる。ゼータ電位がおよそl30mVlより大きい場合には分散は一般的には安定であると見做され、一方粒子は等電点近くで凝集する傾向があり、それはゼータ電位がゼロのpHとして定義される。そのため、SNSAを含む懸濁液中のゼータ電位の測定は制御されたpH値で調べられた。
【0079】
本発明の凝縮ケイ酸種の動的光散乱(DLS)測定は、好ましい直径範囲0.6<Φ<3.0nmで安定種のが存在することを示した。
サイズ排除クロマトグラフィは溶液中のケイ酸オリゴマーとポリマーを分子サイズに基づいて分離することに基づいている。この方法は単量体および重合ケイ酸サンプルと比較して本発明の物質を特徴づけるために利用された。シリカベースのゲルは、生物学的活性ケイ酸との非常に強い不可逆の相互作用のために使用は勧められない。高性能サイズ排除クロマトグラフィ装置で固定相としての有機ポリマーベースのゲルを使って非常に良好で再現性のある結果が得られた。本発明の物質は紫外線、可視光領域で測定可能な吸収がないので、検知システムに基づく屈折率が適用された。
【0080】
本発明で開示された低モル質量凝縮ケイ酸種は、よく水に溶け、溶液はコロイド状で特定のpH値で室温で長期間非常に安定している。8.5から13.0の範囲の基準pHの安定性はさらなる凝縮を妨げる陰イオン化されたSi−O基の反発により起こる。生物学的活性SNSAの実験的ゼータ電位測定は、種が非常に安定して凝集しない表面陰電荷であることを確認するおよそ(−50mV)のゼータ電位値を提供した。
【0081】
意外にも本発明のサブナノ回転楕円形凝縮ケイ酸は、好ましくはpH1.8−2.2の酸性の範囲でもまた非常に安定する。特定の酸性pH範囲における重合化傾向は低く、pHが〜2.0でおよそゼロ荷電ポイントで凝縮傾向が低減されることで説明できる。上記で特定されるような基準および狭い酸性範囲の両方における安定性によれば、不溶性シリカ粒子とシリカゲルに自発的に重合する低分子濃度不安定ケイ酸種の先行技術と比較して、ここに開示されたサブナノケイ酸誘導体は明白な技術的進歩を有していることを意味する。
【0082】
ここに記載されたケイ酸の電荷依存安定性は、遊離Si−OH基の外部表面の処理にとりわけ影響される。基準pH値が塩基性の場合、媒体は外部表面に陰電荷の対称で密集した隔壁を提供する。従ってすべての分子は互いに反発し溶液は非常に安定を維持する。陰電荷カバーは本発明の物質の粒子の凝集と変換を防ぐのに非常に効果的な保護的役割を果たす。
【0083】
上に概要的に示した静電気因子の他に、本発明の物質は際立った熱力学安定性に対するさらに重大な構造的根拠を有している。実際には、本発明のケイ酸は主にQ4タイプのSi−O結合の小型内部シリカコアにより形成され、好ましくは表面に表れる遊離Si−OH基の最大数を持つ外部シェルにより囲まれている。遊離シラノール(Si−OH)結合と凝縮(Si−O−Si)基の相互交換は、分子内で行われるが、これはSi−OH基の外部処理よりも回転楕円形の好ましい安定性全体にはあまり影響しない。
【0084】
低い負のゼータ値(−50mV)は粒子が非常に安定し負の表面電荷を持つことを示す。ゼータ値が0に近づくと、粒子が安定せず凝集する傾向にあることを意味する。しかしこの現象は本発明の生物学的活性SNSAケイ酸の場合には生じない。ゼータ値が大きくなると粒子サイズも大きくなる。ゼータ値は溶剤の種類、測定溶液のpHおよび固体粒子の濃度と種類に依存する。本発明の場合には、ゼータ値は大きく負でpHは約9−9.5である。サンプルは定常濃度または定常pHで比較された。測定されたゼータ値の完全な再生およびSNSA粒子の流体力学的径は達成された。これは上に特定する状況で粒子が表面陰電荷されていて非常に安定しており、凝集しないことを意味する。
不活性支持物質の安定
加熱、先進的な真空乾燥、凍結乾燥や他の手続きにより本発明の水溶液から水を強力に除去することは生物学的活性の大きな損失となる。予想される原因は、Si−O−Si共有結合を構築し2000よりもn倍大きな粒子を形成することで水の多分子間排出(縮合)を起こしてしまうことである。
【0085】
本発明は不活性支持物質を用いて、あるいは不活性支持物質の上で乾燥が行われる場合、本発明のSNSA物質の活性は十分に維持することができることを示している。本発明の適切な支持物質は水溶性で医薬的に中性の固体または非揮発性の液体である。好ましい支持物質は、エチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトールに例示されるポリオールのような多ヒドロキシル化有機物質である。最も好ましい支持物質は、中性物質としてすでに医薬品製剤に許可されたもので、本発明の「医薬品製剤」の章に記載されている。Si−O−Siの同時形成下で、脱水を開始、支持または触媒しない、いかなる適切な基質も使用できることが好ましい。このような好ましい支持物質は中性物質で、正負電荷を持つ官能基のないことが好ましい。
【0086】
水溶液中または中性物質上での本発明のケイ酸の長期間の安定は、DLSとゼータ電位の定期的な評価およびATPアーゼ阻害測定により調査された。SNSA溶液は室温での数か月間の貯蔵で安定することが確認された。さらに、本発明の支持物質上でのSNSAの活性は少なくとも24か月完全に保存される。この本発明の不活性物質上での本発明の物質の長期間の安定は、疾病を予防または治療する際に本発明を適用する最適な形を提供する。
凝集
初期種が物理的処置(加熱、超音波)を施された場合または化学薬品(pH変化、希釈、塩)により改善される場合には可逆性と考えられるが、、本発明のサブナノ凝縮シリカ種は凝集をすることができる。シラノール基の新規の結合(Si−O−Si)によりSNSAをより高いモル質量種へ変換することで、不溶性シリカ粒子を形成する場合には不可逆性とすることができる。このプロセスは溶液のイオン濃度を上昇させる、すなわち無機塩類を添加により促進される。
粘性
粘性はオリゴマーとポリマー中のモノケイ酸を変換させる非常に高感度の方法である。ゾルとして分類されるシリカのコロイド溶液中の分散粒子の大きさを確立することが可能である。
NMR
核磁気共鳴(NMR)分光法は、外部磁場での核スピンの電波への反応に基づき、特定の型の原子の第一と第二の配位圏の研究にとりわけ応用することができる。NMRはノンゼロスピンを持つこれらの原子核のみに観察される。しかし各化学要素のほとんどにはこの要求に合う同位元素がある。マジック角回転技術は液体のみではなく固体でもNMR分光法をうまく適用させることができる。従って、ナノ粒子の凝固プロセスにおける中間種の構造、外部と内部表面活性部位多孔性ナノ物質、原子配位およびホストゲスト相互作用を研究するのにNMRは広く利用されている。Si原子の結合性についての情報は29SiNMRスペクトルの測定により得ることができる。
【0087】
これは、「s」がシロキサン(O−Si)結合で「4−s」がいくつかのSi−OH(シラノ−ル)基である因子Q5で表される。29SiNMRスペクトルには、Q4、Q3,Q2およびQ1タイプのSi原子に対応する生物学的活性ケイ酸化学シフト値が見出されている。このデータにより本発明の構造は好ましくは4次(Q4)Si原子により形成された内部コアと、Q3,Q2およびQ1タイプのSi原子により形成された外部シェルを持つことが確認されている。ガウス曲線を積分した割合によりQ4、Q3,Q2型Si原子のバランス比を求める。
IRとラマン分光法
フーリエ変換型赤外(FTIR)分光法とラマン分光法は電磁放射線を使った振動分光法の2つの別の理論である。FTIR分光法は、赤外線の吸収に基づき、一方ラマン分光法は原子振動による非弾性の可視光線またはほぼ可視光線を含むものである。両分光法技術は、短い範囲と中間範囲の配列に関する情報、すなわちシリカの相対位置などの、最隣接原子やより大きな集団での多面体の結合方法を示す情報を提供する。
【0088】
フーリエ変換型赤外(FTIR)分光法とラマン分光法は、サブナノメートルスケールで識別可能な指標となる原子クラスタから入射放射に対する異なる応答に基づくもので、シリカナノ粒子の構造分析に優れたツールである。様々な分光法の中で比較すると、ラマン分光法は非結晶性物質を検知して異なる結晶性シリカ物質を明らかにするという能力において有利である。さらに水は非弾性光散乱に乏しいが有機分子のラマン散乱断面積は非常に大きいので、ラマン分光法を水中で安定化された結晶性ナノ粒子の構造を証明するための方法として利用することが期待される。
【0089】
ラマン分光法は、密ナノ粒子のミクロンサイズの自己集合の構造的障害の度合を証明するものである。構造的な欠陥に関する実態はサンプルから集められたスペクトルから得られる。960cm-1の近くででのラマン散乱は、シリコン‐酸素点欠陥(破壊されたSi−O−Si結合)を示し、ナノ粒子の領域構造は250−650cm-1の範囲でSiO4環状に形成された複数要素バンドの形状に適合することで定量化されている。非結晶性シリカの主要なスペクトラルの特徴は、6,4,3それぞれの員環により形成された帯域はほぼ450cm-1であり、信号は495cm-1と606cm-1である。
【0090】
FTIR分光法のみで、表面ヒドロキシル基の様々なタイプを明らかに確認することができ、従って対応活性部位の数を定量化することができる。一般に、酸性部位を分析するために表面OH基のO−H結合延伸モードが使用される。急激なIRピークが3550−3800cm-1で観察され、ほぼ3745cm-1のピークが末端シラノ基で、またほぼ3615cm-1がSi(OH)酸性部位で生じる。
蛍光性
本発明のケイ酸の調剤は蛍光分光法によりモニターされた。このアッセイは、特定のインジケータPDMPO[2−(4−ピリジル)−5−((4−2−カルバモイルジメチルアミノエチル)メトキシ)−フェニルーオキサゾール]のスペクトル中に蛍光シフトと強度の増加をつくりだすシリカの重合化を観察することに基づく。これは蛍光シフトがPDMPOと高分子ケイ酸の相互作用によるものであると思われる。
【0091】
実際には、本発明の物質の製剤中にケイ酸の重合化をモニターするために、PDMPOの蛍光発光強度510nm(338nm exc.)が使用される。
安全性
本発明のケイ酸誘導体は、静脈内と腹腔内に単回投与したマウスとラットから判断すると体重1kgあたり240から300mg/kgの範囲のLD50値を持つ。強心ステロイド急性毒性値は大変高く、Digoxinは例えば体重1kgあたりLD50=0.1mg/kgである。ジギタリス配糖体の致死量は維持量の約20倍であるが、それは治療量と中毒量の狭い範囲を示す。
【0092】
先行技術のバナジン酸塩または強心ステロイドと比べて、本発明のケイ酸が毒性を減らすことは開示された物質の主要な利点である。先行技術のバナジン酸塩と比べて本発明の物質の明らかなより低い毒性は、新規の化合物のヒトの治療への適用に重要な利点を提供する。
5.4 生物学的活性
蛋白質との相互作用
ここに開示されている本発明のサブナノ凝縮ケイ酸の1つの重要な実際的な実施態様は、蛋白質、すなわち図8と図9に示す特定の構造領域を持つ蛋白質と相互作用する本発明の能力を結果の結果としてもたらされるものである。この相互作用は標的蛋白質の構造を修正して生物学的な特徴を変更する。あり得るメカニズムの1つとして、酵素の活性部位への作用薬のアクセスを妨げたり、または蛋白質の開不安定構造に近接することである。本発明のSNSAは、例えばリン酸の一部分を添加することを防いで暴露されていない活性部位を持つ閉鎖構造を安定させることにより、ATPフューエル酵素を抑制することができる(図8)。
【0093】
本発明の好ましい実施態様は、ここに記載されるSNSAと信号導入と膜輸送における可逆リン酸化プロセスに直接含まれる蛋白質の直接的な相互作用である。SNSAを持つ領域の分子間の相互作用により生成される蛋白質の内部構造の調整は、特に特定の生物学的活性を変更することができる。構造と生物学的活性についての本発明の調整は、先行技術である大きな直径を持つシリカナノ粒子の相互作用と比較して、確実な技術的進歩をもたらす。さらに重要な進歩は、先行技術の大きな非溶性シリカ粒子の異種相互作用とは異なる本発明の同種の相互作用である。
【0094】
とりわけ凝縮されたケイ素の重要な構造的な特徴は、図5に示すように、ほぼ回転楕円形で分子表面上でSi−OH結合のほとんどすべてが遊離結合を示すことである。0.6<Φ<3nmの範囲の好ましい直径を持つ本発明のサブナノケイ酸分子は、外面上でほとんどすべてがSi−OH基を示すことができる。小型内部シリカコア(Si−OH結合のない)と外表面上の密集した外側を向いたSi−OH結合により、本発明の物質は生体高分子、好ましくは蛋白質と相互作用するように最適に設計されている。
【0095】
好ましい分子直径Φ≦3nmを持つことで、本発明の凝縮ケイ酸はほぼすべての蛋白質よりもかなり小さい。SNSAがより大きな蛋白質分子と相互作用することは、例えばSNSAが蛋白質の確定された内部領域に結合しあるいは同一の分子内の2つ以上の領域に架橋する場合に分子内として分類することができる。別の好ましい実施態様は、例えば2つの類似または異なる蛋白質分子を架橋することで「分子内に」相互作用するSNSA分子が提供されることである。図10に示す固体基質としての大きなシリカナノ粒子(Φ>10nm)を持つ蛋白質の相互作用の従来技術と比較して、上に述べた両方の好ましい実施態様は大きな技術的進歩を意味する。本発明の物質のΦ<5nmの大きさは、通常相互作用する蛋白質よりも小さい。従って物質SNSAは、蛋白質のよく確定された構造領域であるいは構造領域間での、分子内相互作用にむしろ関与しているのである。相互作用の本発明の様態は、蛋白質のシリカナノ粒子の先行技術の相互作用と比べて明白な技術的な進歩を含んでいる。
【0096】
小型内部コアと外部シェル上に高密度の遊離Si−OH結合を持つ小さな回転楕円形は、蛋白質や他の生体高分子の本発明の相互作用の基本的な前提条件である。図8は、P型ATPアーゼの領域Pと領域Nを持つ本発明の分子の仮定される相互作用を示す。
【0097】
蛋白質と相互作用するように用いられる可逆リン酸化反応シリカナノ粒子を含む蛋白質と相互作用する先行技術のバナジン酸塩は、基質(キャリア)として分類されるが、それはバナジン酸塩の大きさΦ(>>5nm)は同等であるが、通常分子間ヒト炭酸脱水酵素III(hCAIII)を排除する単純蛋白質の大きさよりも極めて大きいからである。単純蛋白質は蛋白質変異体の最も安定したものであり、結合と非結合蛋白質間の動的平衡が確立し、そして次にシリカ粒子と混合を可能にしてくれる。
Na,K−ATPアーゼ
ここに開示されるサブナノケイ酸SNSAは、サブマイクロモル範囲のNa,K−ATPアーゼとII型のP型ATPアーゼによる効力のある無機阻害剤として認識された。SNSA因子は、Na,K−ATPアーゼの細胞内部位に結合することが見いだされ、この抑制はウアバイン結合には優位性がない。サブナノケイ酸と蛋白質領域「N」(ヌクレオチド結合)と領域「P」(リン酸結合)の相互作用についての本発明のメカニズムは、図8に示される。本発明のSNSAは、イオンポンプのE1構造のNa,K−ATPアーゼと相互作用し、最初の2つの細胞間カチオン結合部位の1つに平衡解離定数の変更を引き起こす構造的再配置が生じる。本発明のSNSAがNa,K−ATPアーゼのリン酸化サイクルへ介入するメカニズムは図9に示される。MCS抑制状態では、2つの非特定結合部位の1つに1つのカチオン(H+、Na+、K+)が結合されていることが見出された。また高Na+濃度では、別のNa+イオンが高Na+選択イオン結合部位に結合された。
Ca−ATPアーゼ
本発明の物質SNSAは、50−80nMのIC50で小胞体(SERCA)のCa−ATPアーゼポンプを抑制する。これは先行技術の例えばシクロピアゾン酸、2,5−(tブチル)―1,4−ベンゾヒドロキノン(tBuBHQ)またはシクロオキシゲナーゼー2阻害剤であるセレコキシブ、クルクミンおよびメリチンなどのSERCA阻害剤がマイクロモル(μM)範囲であることと比べて大きな進歩となる。本発明のケイ酸は先行技術のSERCA阻害剤のタプシガルギン(thapSigargin)(IC50がサブナノモル範囲)ほど効力はないが、ここに開示するSNSAは、実際の毒性が1000倍低い利点を有する。
【0098】
SNSAによるSR Ca−ATPアーゼの抑制は本発明の物質の蛋白質領域との相互作用と類似している。しかし、ヒル関数に当てはめると、ヒル係数nH=2.56は、異なる抑制メカニズムが生じることを示すNa,K−ATPアーゼの場合と比べてかなり高い。
【0099】
ナトリウムポンプの抑制メカニズムの相違は、含まれるアルカリイオンと本発明のSNSAに小さいが重要な相互作用を起こすことである。
H−ATPアーゼ
本発明の物質SNSAは、効力(IC50が80nMまで)で胃H+/K+−ATPアーゼ(胃プロトンポンプ)を抑制する。この酵素は電気的中性を交換する際に胃腺の内腔にH+を隠している壁細胞に集中している。本発明のケイ酸SNSAは、最近の抗酸化薬候補となる高い効力を持つ可逆H+/K+−ATPアーゼ阻害剤として開示されている。 膜ポンプとの可逆相互作用によりその薬理作用は、標的蛋白質と結合した後胃液酸度を低下させることができる。これは、例えば、オメプラゾールや、酵素に共有反応し特に可逆であるいは酵素に非共有結合する置換ベンゾイミダゾールなどの先行技術の合成プロトンポンプ阻害剤(PPI)に比べて重要な技術的進歩を示す。
蛋白質フォスファターゼPTENの抑制
ここに開示されるサブナノケイ酸SNSAは、腫瘍抑制PTEN(pHospHatase and tenSin homologue deleted on chromosome 10)を阻害する。このサブナノケイ酸SNSAは、二重活性を持つチロシンフォスファターゼで、蛋白質と脂質の両物質を脱リン酸化する。また例えばPtdIns(3)P,PtdIns(3,4)P2,PtdIns(3,4,5)P3などの3−リン酸化ホスファチジルイノシトール(PI)に対して高い特異性を持つ。細胞内のPtdIns (3,4,5)P3レベルを減少させることで、PTENはPI3Kの影響を弱めるので、それによりアポトーシスの原因となる特定の下流信号経路を終端させる。
【0100】
これらの効果をもたらすPI3K/PTEN信号の1つの作用因子は、ウイルス遺伝子蛋白質v−aktの哺乳動物相同物である蛋白質キナーゼB(PKB/Akt)である。PKBは、リン酸化反応を引き起こすPH領域にPI(3,4,5)P3を結合して成長因子の促進に応じてプラズマ膜により補強される。PKBは2つの別の部位、トレオニンー308(T308)とセリンー473(S473)を含み、これらはキナーゼによりリン酸化され、換言するとPI(3,4,5)により活性化される。PKBのリン酸化反応は、LY294002とWortmanninなどのPI3K阻害剤の影響を受けやすい。他方、PTEN阻害化合物は結果としてPKBのリン酸化反応を増大させる。
【0101】
実施例に開示されるように、SNSA120μg/mlは、蛋白質フォスファターゼPTENの抑制効果として説明されるPKBリン酸化反応を促進する。この効果はバナジン酸塩による効果と非常に類似しているが、本発明の物質は極めて毒性が低いという重要な利点を持つ。
SNSAの生物学的アッセイ
ここに開示される生物活性サブナノケイ酸SNSAは、とりわけヒトIgGとプロテインAなどの免疫グロブリン間相互作用に対して、固有のそして用量に依存した影響を及ぼす。この非常に驚くべき反応は、0.2から4μg/mlの濃度のIgG蛋白質で被覆されたプレートを使ってELISA技術により立証される。これらのプレートをアルカリ性フォスファターゼと結合させた蛋白質Aで処理し、PDNPでPBS−Tweenで洗浄すると、405nmのところに発色反応が認められ、これは比較対象としての定常的な定率光学濃度(OD)値と考えられる。
【0102】
IgGが被覆され洗浄されたプレートにSNSAの増加させながら1時間処理して、次に制御と同じ工程(洗浄、BSAで飽和、プロテインAの被覆)を施すことで、添付の実施例に示されるような測定光学濃度値の用量依存の効果の増大が認められる。この増加は、10−300ng/ml領域で線形であり、生物流体を含む本発明のSNSA物質のための高感度アッセイに適切な方法を提供する。
5.5 治療への適用
本発明の物質と本発明の物質を含む医薬製剤は医薬的に活性剤または活性成分として非常に有用であり、医学の分野において医療、予防、診断に使用することができる。
【0103】
さらに、一般式(I)の本物質は、ATPアーゼ、特にNa,K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼまたはH/K−ATPアーゼを抑制したりあるいは蛋白質キナーゼB/PTENシステムのようなキナーゼとフォスファターゼの作用を調節するのに有用である。さらに述べると、一般式(I)の本物質は、現在の医学で深刻な問題である抗生物質や細胞静止薬などの薬物に対して、生物が発達させた抵抗性の増大に本質的に関わっているATP結合カセット蛋白質に作用する。
【0104】
これらの活性により本発明の物質は、高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病、創傷治癒などの治療のための高い効力を持つ薬物と診断用化合物として有用である。
【0105】
さらに本発明の物質は、食欲をコントロールしたり創傷治癒に有用であり、さらに高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の予防および高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多の診断用に組成を調製するのにも有用である。
胃酸過多
本発明の物質は、IC50=0.8μg/mlのH/K−ATPアーゼを抑制するのに非常に効力の高い非毒性阻害剤である。SNSAは4−メチルヒスタアミンにより胃酸分泌反応を減少させることが知られている。本発明の物質SNSAは、0.01から25mg/kgの範囲の投与量でラットやイヌなどの哺乳動物に経口および非経口投与により作用する。本発明の物質は、抗コリンメカニズムでは作用しないので、ドライマウスや視力障害などの現在の抗酸薬の副作用は予期されない。そのため本発明の物質は、胃酸過多の管理や治療に有効である。
【0106】
胃食道逆流障害(GERD)は、食事と関連する頻繁にみられる病気であり、下部食道括約筋が閉鎖されたまま腹部からの酸が食道に逆流または押し戻される場合に起こる。その原因はしばしばはっきりしないが、恐らく胃酸の逆流の最も一般的な原因は胃酸の過剰生成である。本発明のサブナノケイ酸SNSAを好ましくは食事後に体重1kgあたり0.1−80mg/kg摂取すると、胃食道逆流障害(GERD)の発現を非常に効果的に抑えることができる。
高血圧
高血圧は医療従事者にとって治療の難しい主要な疾病である。高血圧は、心臓疾患、心不全、心臓麻痺、脳卒中および腎不全などの主要なリスク要因である。降圧療法は、高血圧にともなう疾病率や死亡率の上昇を低減または排除するのに効果的である。
【0107】
本発明のケイ酸物質は、本態性高血圧症を治療するために明白な治療の可能性を持つことが開示されている。この物質の高血圧の病理生理学における相互作用の主要なターゲットは、心臓血管と腎臓レベルでのNa,K−ATPアーゼであり、これらは従来あまり注目されていなかった。
【0108】
実験的観察によれば、SNSAは、プラズマ中にナトリウムイオンを回復する腎臓のナトリウムポンプを抑制するNa+を尿排泄することを高める。高血圧患者にとって、腎臓のNa,K−ATPアーゼの抑制とその後の利尿は正常なプラズマ量と血圧を回復させるものである。
【0109】
血管と心臓のNa,K−ATPアーゼを並列して抑制することは、それぞれナトリウムの排泄を増加させ利尿により血圧を低下させる効果に匹敵する高血圧への効果を結果として得る。
【0110】
本発明のケイ酸は、高血圧ラットの動脈血圧を低下させることを開示している。ケイ酸が血管あるいは心臓のナトリウムポンプに作用すると、腎臓のNa,K−ATPアーゼに選択的に作用するという結論を導くことができる。
糖尿病
インシュリンは標的細胞のプラズマ膜上の受容体に結合し、このインシュリン受容複合体が形成される場合には、ブドウ糖が標的細胞中に入ることができ、ブドウ糖はエネルギー源として使用されるか、またはエネルギー貯蔵のためにグリコーゲンに転換される。インシュリン受容体は蛋白質である。アルファとベータの2つの異なるペプチドユニットの2つの複製物からなる。1つのインシュリン分子は、各アルファサブユニットに結合する必要があり、この結合の後に、次にベータサブユニットが受容体の蛋白質の細胞質末端の形状を変化させる信号を送信する。この変化により細胞質蛋白質キナーゼ活性部位が露出され、ブドウ糖の摂取につながる他の反応を始めるインシュリン受容体物質のリン酸化を引き起こす。
【0111】
本発明の物質を糖尿病のマウスに投与することで、抗糖尿病の顕著な可能性が明らかにされた。ビスーL−グルタミンーバナジン酸塩複合体VGlu2と治療に使用された糖尿病治療薬ロシグリタゾンとを比較する試験が行われた。本発明のケイ酸誘導体SNSAは、糖尿病治療薬ロシグリタゾン(Rosglitazone)と同様にブドウ糖レベルを著しく減少させ、また使用されるバナジウムーグルタミン酸塩複合体VGlu2を著しく減少させる。このデータは本発明の物質が可能性のある抗糖尿病薬として無機塩類より有効であることを示している。
【0112】
SNSAの可能なメカニズムは、添付の実施例で示唆するように、インシュリン受容体(IR)と相互作用するインシュリン擬似作用である。これにはインシュリン受容体と結合するフォスフォチロシン フォスファターゼ PTP1Bの抑制を含めることができる。このフォスファターゼは、インシュリン信号とインシュリン感性を低下させるインシュリン受容体のリン酸化反応の程度を低下させる。PTP1Bはインシュリンの効果を模倣する。
食欲のコントロール
本発明のケイ酸は対照実験と比べて実験動物(ラット)で食糧摂取量を減らすことが見いだされている。観察される生理学的効果の作用メカニズムは、SNSAが胃中のグレリンの生成を減らすことができることである。あるいは、SNSAの生物活性はグレリン−NPY回路中の重要な信号化合物であるAMP依存性蛋白質キナーゼ(AMPK)に影響を及ぼす。このAMP依存性蛋白質キナーゼの修正あるいは信号回路の規定に関わる結合フォスファターゼの内の1つを修正することが、非常に効果的に食欲をコントロールするためにこの新規な治療戦略の目的であることが示唆されている。
【0113】
とりわけ動物実験の結果は、グルコース耐性を向上させ体重減少を促進する両方に対して非常に有望な戦略を提供し、また体重増加を促進する2型糖尿病のための現在ある他のほとんどの薬物に対して潜在的な有利性を提供することを示している。
癌
本発明のサブナノ凝縮ケイ酸は、様々なタイプの細胞培養のin vitroで示されたように毒性が低レベルであることが認められている。Jurkat細胞、ヒトとネズミのT−リンパ球、樹状細胞およびマクロファージの生存可能性は、50μモル濃度までSNSAにより著しくは変更されない。
【0114】
培養中の癌細胞は本発明のSNSA物質と異なる方法で反応する。標準HeLa細胞またはマウスMP細胞は、半数阻害濃度が0.1から20モルの範囲で抑制される。
これまでの研究では、細胞内遊離Ca2+(Cai)レベルを増加させる薬剤は、アンドロゲン非依存転移性前立腺がん細胞においてもアポトーシスを活性化させることができることが示されている。ここに開示されるSNSAは、カルシウムホメオスタシスを維持するために極めて重要なカルシウムATPアーゼポンプに対して有効な阻害剤であり、それ自体ではすべての細胞のタイプにアポトーシスを引き起こすことができる。比較実験のマウスの腫瘍の量が12日後に165%に増えるに対して、SNSAを処方したマウスの腫瘍は最初の量から45%減少した。
【0115】
蛋白質チロシンフォスファターゼ(PTPs)などの蛋白質フォスファターゼは癌関連信号プロセスに阻害効果と刺激効果の両方を示すことができる。さらに蛋白質フォスファターゼは、癌細胞の付着、血管への輸送、拡散や転移を制御するのに非常に重要な役割を持つ。このプロセスをさらに理解すると新規の治療のターゲットを確認することができる。本発明のサブナノケイ酸が攻撃的な癌細胞の分岐や拡散を効果的に減少させることが見出された。これは致命的な結果となるがんの転移を予防して制御するための新規の治療的アプローチを提供する。
薬剤排出ポンプ
ここに開示するケイ酸SNSSは、P糖蛋白質のようなATP駆動多剤排出ポンプを非常に効果的に抑制する。これは過剰発現された排出ポンプが癌細胞から蛍光染色を取り除くことを調べることでin vitroで確認された。排出ポンプを効果的に抑制することは、細胞毒性薬に対する獲得耐性を減少させて本発明の物質を癌の化学療法に適切に利用するものである。耐性に内在するメカニズは、細胞ホメオスタシスの制御に関連する機能を利用していると考えられる。ATP結合カセットトランスポーターファミリに属する形質膜薬剤排出トランスポータであるP−糖蛋白質が過剰発現することで腫瘍が多剤耐性するというのは1つの重要なメカニズムを示している。
【0116】
また細胞質と細胞内細胞小器官のpH勾配は抗腫瘍薬剤への耐性に関係する。酸性の細胞小器官内でまたは細胞外の環境内で薬物を隔離して中和することは1つのメカニズムとして提案されている。P−蛋白質のような多剤排出トランスポータを過剰発現する細胞と排出トランスポータを発現しない細胞の両方に、酸性の小胞体のターンオーバーが増えることは化学耐性のメカニズムのさらなる重要な特徴である。細胞毒性薬に耐性のある酸性の小胞体は、酸性の細胞小器官から薬剤を隔離するリソソーム型小胞体の酸性化を上昇させること、および分泌経路で細胞から薬剤を押出すことの両方に関与する。
骨粗鬆症、歯石
本発明のケイ素は物質として水酸アパタイト核形成を含むシリカ鉱化作用のための基質として作用することができる。この発見は骨の再生や歯石の形成を促進するために本発明のSNSAを適用する道を開くものである。
アルミニウム拮抗性によるアルツハイマー症
本発明の物質の好ましい実施態様は、アルツハイマー症におけるアミロイド斑の形成のような病状に含まれる蛋白質の好ましくない凝集やクロイツフェルトヤコブ病におけるプリオンの凝集の予防に関するものである。アルミニウム元素(Al)とアルミニウム塩は神経毒として認識され、アルツハイマー症を助長すると考えられる原因要素の1つであると見做されている。体重1kgあたり0.1から15mg/kg量の本発明のサブナノケイ酸SNSAを日常的に摂取すると、動物実験では消化管へのアルミニウムの取り込みを減らすことができるので、従ってこの金属を、脳細胞組織を含む体内に蓄積することを遅らせることができる。経口摂取によりSNSAを使用することでアルミニウムの尿中排泄(87.0から54.2nモル/mモルのクレアチニン)は著しく減少する(p=0.021)。尿中のアルミニウムの低減は、アルツハイマー病においてアルミニウムの体内蓄積を減らすために非侵襲的な治療として本発明のケイ酸を将来長期間にわたり使用することの有用性を裏付けるものである。この結果により、ここに開示されるSNSAが、アルツハイマー症やクロイツフェルトヤコブ病などの神経変性の病気を予防したり、治療するための防御要素が得られるシリコンの栄養補給の適切な生体利用形態であることが確認される。
創傷治癒
上皮成長因子(EGF)のようないくつかの成長因子は、成長因子受容体に結合し受容体の構造を変えることで、創傷治癒において重要な役割を果たす。この変更はPI3キナーゼ(PI3K)のような多くの細胞内蛋白質のリン酸化反応を起こす蛋白質キナーゼを活性化する。
【0117】
本発明の物質SNSAは主にファスファターゼの結合を抑制することでPI3キナーゼの作用を改善することが証明された。これによりここに開示されたケイ酸SNSAを、未対処の医療ニーズである創傷治癒を促進するために適用することができる。
5.6 医薬品製剤
治療と予防におけるここで開示されているケイ酸SNSAの発明的な適用事例においては、それを安定した医薬品形態で提供することが必要である。本発明の好ましい実施態様においては、無機あるいは有機のいずれでもよい不活性基質上でSNSAを使用する。好ましい基質材料はいくつかの脂肪族ポリオール類(マニトール、ソルビトール、キシリトール、ペンタエリスリトール及びスレイトール等)、糖類、澱粉などである。
【0118】
ここで開示されているケイ酸SNSAの発明的な適用に用いられるのに適している基質としては、ラクトース、サクロース、マニトール、及びソルビトールなどの糖類や小麦、コーンライス、及びジャガイモなどから得られる澱粉、そして微結晶性セルロースなどのセルロース類が含まれる。組成物中の基質の量は組成物全体の約5−約95重量%で、好ましくは約25−約75重量%、より好ましくは約30−約60重量%、そして最も好ましくは約40−約50重量%である。
【0119】
他の本発明による医薬品製剤は本発明による物質SNSAとアミノ酸、アミノ糖類、あるいはアミノ−アルコールなどの有機窒素含有化合物との結合に基づいている。
一般式(1)で示される化合物は、オプションとして基本的に非毒性の薬学的に許容される基質、賦形剤、補助剤、あるいは希釈剤を用いて薬学的活性塩として投与することもできる。本発明による医薬品は公知の方法で、適切な投与量レベルで、通常の固体あるいは液体基質あるいは希釈剤と通常の薬学的に作られる補助剤内でつくられる。好ましい薬剤及び製剤は経口投与あるいは皮膚あるいは経皮投与に適した投与形態で提供される。これらの投与形態には、例えば、錠剤、タブレット、フィルム・タブレット、被覆タブレット、カプセル、粉末あるいはデポジット剤などの形状が含まれる。その他の経口投与形態も可能である。
【0120】
本発明によるケイ酸物質あるいは医薬品製剤あるいはそれらの物質を含む剤形は、吸入、注射(静脈、腹膜内、筋肉内、皮下)、上皮あるいは粘膜ライニング(口腔粘膜、直腸、及び子宮上皮ライニング、鼻咽腔粘膜、腸粘膜)を介しての吸収、経口、経腸、経皮、局所的、皮内、胃腸内、子宮内、血管内、鼻腔内、口内、舌下経由、あるいは薬学技術で利用可能なその他の手段で投与することができる。
【0121】
これらの開示されている方法を用いて、一般式(1)で示される少なくとも1つの物質あるいはその薬学的に許容される塩を活性成分として含んでいる本発明の医薬品組成物は、通常、意図する投与形態、つまり、経口用タブレット、カプセル(固体充填、準固体充填あるいは液体充填)、粉末、経口ゲル、座薬、分散性顆粒、シロップなどの剤形に対して適切に選択されると共に、通常の薬剤規範に合致して選択される適切な基材物質と共に投与される。例えば、タブレットあるいはカプセルの形態で経口投与するためには、活性成分をいずれかの経口用非毒性の薬学的に許容される不活性基質、例えばラクトース、澱粉、サクロース、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マニトール、エチルアルコール(液体形態)などと組み合わせることができる。さらに、望ましい、あるいは必要な場合は、適切な結合剤、潤滑剤、分解剤、及び発色剤をその混合物に組み込むこともできる。粉末及び錠剤は本発明の組成物を約5−約95%の割合で含むことができる。
【0122】
適切な結合剤は澱粉、ゼラチン、天然糖、コーン甘味剤、アカシアやアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン・グリコール及びロウなどの天然あるいは人工のガムなどがある。これらの投与形態で使用するために用いられる潤滑剤としては、ホウ酸、ナトリウムベンゾエート、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。分解剤としては、澱粉、メチルセルロース、グアールガムなどがある。必要な場合、甘味剤や香料及び保存剤も含むこともできる。上に述べた用語のいくつか、つまり、分解剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤などについてはより以下により詳細に述べる。
【0123】
さらに、本発明の組成物は、治療効果、つまり抗ヒスタミン活性などを最適化するために、1つあるいは複数の成分あるいは活性成分の放出量を管理しながら放出するように抑制放出形態で調製することができる。抑制放出用に適した形状としては、それぞれの層の分解速度が異なっており、活性成分を含浸させた制御放出ポリマー性基材を含み、そうした含浸あるいはカプセル化多孔ポリマー性基質を含んでいる複数の層で構成される層状タブレットなどがある。
【0124】
液状製剤としては溶液、懸濁液、及びエマルジョンがある。一例としては、非経口注射用の水あるいは水−プロピレン溶液や、甘味剤や経口溶液ようの混濁剤、懸濁剤、エマルジョンの添加などがある。液体形状の製剤としては鼻腔内投与のための溶液も含まれる。
【0125】
吸入に適したエアロゾル製剤は溶液や粉末形態の固体を含んでいてもよく、それらは例えば窒素などの不活性圧縮ガスなどの薬学的に許容される基剤と組み合わせてもよい。
座薬をつくるためには、ココアバターなどの脂肪酸とグリセリドの混合物などの低温溶解性ロウを最初に溶解して、活性成分を攪拌などの混合方式で均等に分散させる。解けた均等の混合物を適切なサイズの型に注ぎ込み、冷却して固化する。
【0126】
使用直前に、経口投与あるいは非経口投与用の液状製剤に変えられることを意図した液状製剤も含まれる。そうした液状製剤には溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。
1つの好ましい形態は皮膚あるいは経皮用パッチ(貼付剤)である。本発明による物質は経皮的にも投与可能である。経皮用組成物はクリーム、エアロゾル及び/又はエマルジョンの形態をとることができ、この目的のために従来の技術で用いられているマトリックスあるいはレザーバー・タイプの経皮用パッチに含めることが出来る。
【0127】
本発明のパッチ剤に適した溶媒は、浄水、アセトンやブタノンや2−ペンタノン及び3−ペンタノンなどのケトン類;エタノールやプロパノールやイソプロパノールやブタノールやイソブタノールやセク−ブタノールやテルト・ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル・エステル、酢酸プロピルエステルなどのエステル類から選択することができる。さらに、上記溶媒の混合物を用いることもできる。上に述べた溶媒あるいは溶媒混合物と共に適切な共溶媒を用いることもでき、その共溶媒は乳酸、サリチル酸、サクシン酸、尿素、マギリョール(登録商標)812(Chemische Werke Huls, Mari,ドイツ)、トリグリセリド類、エチルオレエート、グリセリルモノドデカノエート、オレイン、オレエート、マクロゴル(登録商標)6000、及びレシチンで構成される群から選択することができる。
【0128】
接着剤内での溶媒の量あるいは溶媒と共溶媒の総量は重量ベースでその接着剤の0.5−70%の範囲であればよく、好ましくは重量ベースでその接着剤の約3−約60%、より好ましくは約10−約50重量%、さらに好ましくは約20−約40重量%、そして最も好ましくは重量ベースでその接着剤の約10−約30%の範囲である。
【0129】
カプセルという用語は、上記活性成分で構成される組成物を保持あるいは包むための、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、あるいは変性ゼラチン、あるいは澱粉でできた特別のコンテナーあるいは容器を意味している。硬いシェルのカプセルは、通常、ゲル強度が比較的高い骨あるいは豚皮ゼラチンの混合物でつくられる。このカプセル自体は少量の染料、不透明化剤、可塑剤、及び保存剤などを含んでいてもよい。
【0130】
タブレットとは活性成分と適切な希釈剤を含んだ、圧縮あるいは成型された容量形態を意味する。タブレットは湿式造粒法、乾式造粒法、あるいは当業者に公知の成形方法で得られる混合物や顆粒を圧縮することでつくることができる。
【0131】
経口用ゲルとは親水性の準固体基質内に分散あるいは溶解された活性成分を意味する。
構成用粉末とは活性成分と水や果汁内に懸濁させることができる適切な希釈剤を含む粉末混合体を意味する。
【0132】
分解剤という用語は組成物に加えてそれがバラバラになって(分解して)医薬成分を放出できるようにするための物質を意味する。適切な分解剤には澱粉、「ナトリウム・カルボキシメチル澱粉などの「冷水可溶性」修正澱粉、イナゴマメ、カラヤ、グアル、トラガカント及び寒天などの天然及び人造ガム、メチルセルロース及びナトリウム・カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、それにナトリウム・クロスカルメローズなどのナトリウム・セルロースなどのセルロース誘導体、アルギニン酸及びアルギン酸ナトリウム、ベントナイトなどの粘土、そして沸騰性混合物などである。組成物内の分解剤の量はその組成物に対して重量ベースで約1−約40%の範囲であってよく、好ましくは2−約30%、より好ましくは約3−20%、そして最も好ましくは約5−約10%である。
【0133】
結合剤とは粉末を結合あるいは「接着」して顆粒を形成することにより接着性にし、その剤形内での「接着剤」として機能する物質を意味する。結合剤は希釈剤や充填剤にすでに存在する接着力を増強する。
【0134】
本発明の一般式(I)による物質の製剤及び投与に関する技術は「Remington's PHarmaceutical Sciences」 Mack Publishing Co., Easton PAに見出すことができる。本発明の少なくとも1つの物質及び/又は薬学的に許容できるその塩を含む適切な組成物は、適切な液体薬学基質内にその組成物を溶解した溶液でもよいし、タブレット、錠剤、フィルム・タブレット、被覆タブレット、糖衣錠、カプセル、粉末及びデポジット、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。
SNSAは蛋白質に基づく治療の効果を向上させる
治療用蛋白質は特に抗リューマチ及び抗癌治療領域で医薬品市場のかなりの部分を占めるに至っている。その高度に個別的な生物活性と厳密に定義された治療特性は非蛋白質性薬剤物質と比較して非常に大きな利点を有している。しかしながら、蛋白質製剤には重要な欠陥があり、それはそれらの薬品の生化学的性質と強い関連性がある。オリゴペプチドやポリペプチドなどのモル質量が小さな蛋白質は、生きている生物の酵素ネットワークによって急速に分解されてしまうので、その利用可能性はかなり低減されてしまう。抗リューマチ薬などのモル質量が大きな蛋白質の適用は感染や悪影響の頻度の増大という傾向と関連している。蛋白質に基づく癌治療の重大な欠陥はそれらの免疫原性、つまり、それらがホスト生物による抗−抗体を生成して蛋白質製剤の効果を徐々に無効にしてしまう傾向と関連している。
【0135】
サイズがナノ以下のケイ酸はペプチド及び蛋白質とこれまでになかった反応を行うことで、いくつかのペプチドと蛋白質の構造と性質をかなり修正することができる。これらの相互作用は治療用蛋白質の利用可能性と生分解性に相当程度の影響を及ぼすことができ、それらの治療目的での適用において実際的な利点をもたらしてくれる。
【0136】
蛋白質治療の効果を改善するための本発明によるSNSAの適用には、SNSA
とインシュリンや血管腸ペプチド(VIP)などの小型ペプチド、あるいは抗リューマチ治療におけるAbatacept、Adalimumab、Certolizumab、Etanercent、Golinumab、Infliximabなどとの組み合わせ、あるいはCetuximab、Gemtuzumab、herceptin、Ibritumomab、あるいはTituximabとの組み合わせなども可能である。
微量要素ケイ素のための栄養補助剤としてのSNSA
ケイ素は生物系内には普遍的に存在しており、その濃度は生きている生物の(0.05−3.5%)の範囲である。種々の形態のケイ素、そしてSiとOの組み合わせはいくつかの藻類スポンジ及び植物の固体構造の基本的な成分である。ケイ素は接続組織合成と骨結晶化において不可欠の役割を果たしているが、そのメカニズムはまだそれほど理解されていない。ヒトの通常の栄養摂取における一日あたりのシリカの摂取量はほぼ20−50mgの範囲で、同じ量のケイ素が主として尿によって排出される。栄養性ケイ素の主な供給源は水を含む植物やその他の飲料物である。
【0137】
高齢の人々のケイ素がケイ素を取り込む能力が低下していく傾向は、骨収縮や接続組織関連の疾病の頻度の増大と関連していると思われる。ヒトにおいてはケイ素欠乏が臨床的にどのような影響を及ぼすかについてはまだ明らかではないが、高齢の生物の栄養素からケイ素を取り込む能力の低下については、十分に明らかにされている。本発明によるナノサイズ以下のケイ酸(SNSA)は、細胞膜を透過し、ほとんどのタイプの細胞で、細胞内濃度が細胞外の環境と均衡するので、生物学的に利用可能な天然のケイ酸を豊富に提供することができる。
6.
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】先行技術の化学構造:ケイ酸の線形、分岐環状、多重環状ケージ型凝縮オリゴマー性の誘導体。
【図2】不安定な低モル質量オリゴマーと固体粒子あるいはアモルファス・ポリマー(シリカゲル)に急速に変換される水溶性高級オリゴマーをつくりだすオルトケイ酸のポリマー化(多重凝縮)のスキーム。
【図3】内部コアが主としてQ4タイプのSi原子で構成され、外部シェルがQ3及びQ2タイプのSi原子及び隣接−OH基で構成されている、本発明の物質の構造的実施例。
【図4】SNSAが低モル質量ケイ酸種と5nm以上の大きさのシリカ粒子の間で示してある、凝縮ケイ酸誘導体の全容を示す三次元図。。
【図5】内径1.45nmに対応する間隔を充填した分子モデルで示してある、本発明によるサブナノケイ酸SNSA構造の球面形状。
【図6】シクロテトラ・ケイ酸単位からの本発明のSNSA分子の内部シェル形成のスキームであり、最初の2つの層は4+8=12個のQ4タイプのSi原子を含んでおり、形状的に変化していき、全部で24個のQ3及びQ4タイプのSi原子で完了させることができる。
【図7】本発明によるサブナノケイ酸分子を示すボール−スティック・モデルであり、球体の外面上でのSi−OH基の均等な分布を示している。Q3及びQ2タイプのSi原子と隣接−OH基はランダムに分布しているが、統計的に見れば均等分布で、特定の空間グループ形成についての偏りは示されていない。
【図8】本発明におけるケイ酸SNSAとATPアーゼ蛋白質のヌクレオチド(N)及びフォスファターゼ(P)との相互作用のメカニズム。
【図9】本発明によるサブナノケイ酸SNSA(直径:16nm)のCAIII蛋白質(29kDa)との分子内相互作用への関与。
【図10】従来技術における直径12nmのシリカナノ粒子とヒト免疫グロブリンIgGとの相互作用と本発明におけるSNSAとIgGの相互作用の比較。
【図11】式Si36O90H36で示される本発明のサブナノケイ酸のスティック・ボール・モデルで示す構造式。
【図12】式Si46O115H46で示される本発明のケイ酸SNSAの空間充填モデルで示す分子モデル。
【図13】式Si42O100H32で示される本発明のサブナノケイ酸のボール・スティック・モデルで示す分子構造。
【図14】直径2.2nmを有しモル質量6.2kDaに対応するSNSA b−118の動的光散乱DLS図とゼータ電位。
【図15】標準曲線値から推定されるモル質量4.2kDaのSNSA(b−101)のサイズ排除クロマトグラフィ図。
【図16】PEG標準によるサイズ排除クロマトグラフィ標準曲線。
【図17】PTEチューブ内で記録された水中の本発明によるケイ酸SNSA(b101)の29Si NMRスペクトル。
【図18】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNSAによるウサギ骨髄Na+、K+−ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図19】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNS b−101によるSR Ca2+−ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図20】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNS b−101によるH+/K+ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図21】SNSAとリン酸化−脱リン酸化プロセスのメカニズムをAKT1及びAKT2としても知られている蛋白質キナーゼPKBで示す。
【図22】THP1癌細胞内のPKBリン酸化に対するSNSAの影響をバナジン酸ナトリウムと過バナジン酸ナトリウムと比較。
【図23】蛋白質フォスファターゼPTEN/AKTシステムに対するSNSAの影響と、Fcと蛋白質A間の相互作用に対するSNSAのELISAで評価した影響による光学密度のウォートマンニン(Wortmanin)(AKT阻害剤として知られる)の薬物依存増大効果との比較。
【図24】THP1癌細胞内のERKリン酸化に対するSNSAの影響をバナジン酸塩とそのペルヒドロール複合体と比較。
【図25】IgGと酵素ラベル蛋白質Aとの間の相互作用に対する本発明のSNSAの薬物依存影響度に基づくELISAアッセイ方式。
【図26】IgGと蛋白質Aとの間の相互作用に対するSNSAの影響をELISAで評価した光学密度の薬物依存の増大。
【図27】Fcと蛋白質A間の相互作用に対するSNSAの影響をELISAで評価した光学密度の薬物依存の増大。
【図28】フィリップス社CM 20 TEMで記録したSNSA(b−119)の透過電子顕微鏡画像であり、加速:200kV、倍率:480,000倍。
【図29】BRUKERのTensor 37スペクトロメータを用いてART技術で記録したSNSAサンプルb−131のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル。
【図30】pH2で固体基質上でのSNSA溶液の長期保存における安定性。Na,K−ATPアーゼの阻害によるアセスメント(実施例22)。
【図31】ラットでの糖尿病モデルで誘発されたストレプトゾトシンで評価されたSNSAの抗糖尿病効果(実施例23)。
【図32】擬似インシュリンあるいはPTP1B阻害剤としてのSNSAの抗糖尿病メカニズム。
【図33】乳癌細胞MB−435の分岐に対する2つの用量でのSNSAの効果。
【発明を実施するための形態】
【0139】
実施例
実施例1
Si36O90H36で示される本発明によるサブナノケイ酸の構造は図1のボール・スティック・モデルで示されている。大きなボールは酸素元素への中間のSi原子、小さな白いボールは水素原子への中間のSi原子を示している。
実施例2
空間充填モデル(図12)で示す式Si46O115H46の本発明によるサブナノケイ酸の構造。大きな球はSi原子であり、中間のOと白い小さな球は水素。
実施例3
式Si40O100H32で示される本発明のサブナノケイ酸の構造。図13にボール・スティック・モデルで示してある。大きな球はO原子への中間にあるSi原子で、小さな白い球はH原子への中間のSi原子。
実施例4A
テトラ−アルキル−オルソ−シリケートからのSNSAの調製
ABCRから購入した29.5ml (200mMol)のテトラメトキシシランSi(OMe)4を500ml丸底ボトルPTE容器内で100mlの蒸留水と混合した。誘導段階で、少量の希釈酢酸をゆっくり加えてpHは6.2から4.1に調整した。誘導段階での温度は5分未満の時間で42℃に上昇された。凝縮段階では、溶液のpHを4.1から3.9に調整し、温度を42℃から25℃に低下させた。凝縮段階の継続時間はサイズ排除クロマトグラフィSECによる工程管理データに基づいて、40−50分の間に設定された。安定化段階の始めの時点で、溶液のpHを1N NaOHを用いて9.0に急速に上昇させた。TMOSの加水分解で得られたメタノールをゆっくり加熱される水槽(40−45℃)を用いて真空回転蒸発器(Buchi Rotavap)で取り除いた。最終的に得られた溶液のpHは0.1N NaOH溶液を用いて8.9−9.1の範囲に調整した。
【0140】
最終生成物のサブナノケイ酸内における含有量を、モル質量がより高いポリマー性副産物を確認するサイズ排除クロマトグラフィで評価した。動的光散乱(DLS)によってSNSAの量アセスメントを行ったところ、1.6nmで鋭いピークが存在していることが示され、モル質量がより高い関連要素は存在しなかった。
実施例4B
水溶性アルカリケイ酸塩からのSNSAの調製
市販のケイ酸ナトリウム(試薬グレード、Sigma -Aldrich)10mlを水で1:10で希釈してSiO2溶液(含有量:2.7%)を得た。この希釈溶液100mlをポリプロピレン・フラスコに入れて、外部バスで冷却して、同様に冷却した1N HCl溶液で処理して、誘導段階の最後に10分間かけて、8−10℃から20℃への温度勾配でpHを急速に2とした。pHを4.0として38±2℃の温度で、凝縮段階を30分間行った。1NNaOHを用いてpHを9.2以上に急速に上げることで安定化が達成された。
実施例5
6gの粉末シリカゲル60(Sigma Aldrich)を50mlの1N NaOHに懸濁させた。ろ過し、冷却した(8−10℃)の最終溶液をゆっくり加えて事前に中性洗浄したタイプAmberite 120Aの陽イオン樹脂で攪拌したところ、溶液のpHは4.1±0.2に上昇した。真空ろ過で上澄液を急速に分離した。この誘導段階の後、溶液の温度を8−10℃から40±2℃で非線形勾配で加熱した。凝縮段階は32−35℃の温度範囲で60分間行った。最終的に得られた溶液を1Nの塩酸を加えて安定化させたところ、pHは2.1となった。
実施例6
SNSAの動的光散乱及びゼータ電位
Malvern Instruments社のZetaster装置を用いて、SNSA(バッチ116)の動的光散乱及びゼータ電位についての評価を行った。合成バッチ116によって提供された濃度24.0mg/mlのSNSAストック溶液から、測定サンプルを希釈した。分子直径が1.6nmでモル質量4.1kDaのサンプルが得られた。
実施例7
SNSAの動的光散乱及びゼータ電位
Malvern Instruments社のZetaster装置を用いて、SNSA(バッチ118)の動的光散乱及びゼータ電位についての評価を行った。合成バッチ118によって提供された濃度24.0mg/mlのSNSAストック溶液から、測定サンプルを希釈した。分子直径が1.6nmでモル質量4.1kDaのサンプルが得られた。このSNSAサンプルに対してデータは分子直径が2.2nmであること、そしてモル質量が6.2kg/mol(kDa)であることを示した(図14)。
実施例8
SNSAのサイズ排除クロマトグラフィ分析
図15のサイズ排除クロマトグラフィをSNSAサンプル・バッチ118に対して行った。使用機材:Kontron Instruments Pump System 525、TSKゲルG2500 PWXLカラム(寸法:300x7.8mm)、溶媒:水、流速:0.5ml/min、検出:Jasco屈折率検出装置・RI−2031プラス、SECでの測定保持時間11.2分値とポリエチレン・グリコール標準曲線との相関性。図16は本発明による物質サンプルSNSA−118が6.2kDaに相当することを示している。SEC法は製造プロセスと長時間保存における生成物の安定性に対する厳密な管理を可能にしてくれる。
【0141】
これらのデータは図14に示されているサンプルSNSA b−118のDLS図との相関性を持っており、分子直径は2.2nmという狭い範囲で示されており、これはモル質量6.2kDaにほぼ相当し、n値は92−96の範囲である。
実施例9
サイズ排除クロマトグラフィ標準曲線
図16に示す保持時間とモル質量の関係を示しているサイズ排除クロマトグラフィ標準曲線は以下の条件で得たものである。使用機材:Kontron Instruments Pump System 525、TSKゲルG2500 PWXLカラム(寸法:300x7.8mm)、溶媒:水、流速:0.5 ml/min、検出:Jasco屈折率検出装置・RI−2031プラス。
【0142】
標準曲線を作成するために、市販のポリ−エチレン−グリコール(PEG)、ポリ−スチロール−スルホネート、あるいはポリアクリル酸のサンプルをそれぞれ20−80μlのサンプルを用いた。図16はPEG標準の基づくデータを示している。
実施例10
SNSAの29Si NMRスペクトル調査
液体サンプルのNMRスペクトルを100.6MHzで作動するJEOL Eclipse 400NMRスペクトロメータで集めた。比較のために、それらのサンプルの固体状態29Si CP−MSAS NMRスペクトルを4mmプローブを用いて、59.6MHzで作動するBruker MSL 300 スペクトロメータに記録した。クロス分極測定のために、5.1μsのn/2パルス遅延、10msの接触時間、そして12sの循環遅延を用いた。通常のNMRの共通「ガラス・ヒル」を回避するために、PTEF(テフロン)チューブで測定を行った。
【0143】
図17は、水中24mg/mlの濃度でのSNSAサンプルb−109の29Si NMRスペクトルを示している。
実施例11
SNSAはウサギ骨髄Na,K−ATPアーゼを抑制する
高濃度のNa,K−ATPアーゼによる薄膜はラビットエンザイムに対して37℃で2,000から2,400μmol P1/h/mg蛋白質の範囲の特殊なATPアーゼ活性を提供する外側骨髄からから生成された。Na,K−ATPアーゼの酵素活性は25mMのイミダゾール(pH 7.2)、100mMのNaCl、10mMのKCl、5mMのMgCl2、1.5mMのNa2ATP、5nMのNa,K−ATPアーゼ、2mMのPEP、450単位/mlのピルビン酸IC50nase及び乳酸デハイドロデジェナーゼ、さらに最初に80μM NADHを含む緩衝液内で判定された。すべての実験は37℃の温度で行われた。
【0144】
阻害剤がない場合の酵素活性を基準として用いた。SNSプローブによるラビットNa,K−ATPアーゼの抑制を図18に示してある。この酵素活性の濃度依存抑制効果を用いてSNSの半抑制濃度IC50を計算したところ、0.32−0.5μg/mLの値が得られた。SNSAサンプル(b−118)に対してサイズ排除クロマトグラフィでモル質量Mrは6.2kDaと計算され、また、IC50は0.45μg/mLの値が得られた。結果として、このサンプルのIC50は72ナノモル/Lと判定された。SNAのこの抑制ポテンシャルはバナジン酸塩のそれとほぼ同じで、同じ酵素に対して1.0μMOL/LのIC50を示す2つの水溶性心臓グリコシドであるウアバイン及びヘレブリンよりは10倍以上高かった。
【0145】
ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma-Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイはSNSAによっては影響を受けなかった。SNS化合物の抑制作用は阻害剤溶液を加えた(1−10μl)のキュベットに上記緩衝液を混合している際に十分に発揮された。ウアバインが過剰に存在していると、Na,K−ATPアーゼが十分に抑制され、このことはSDS電気泳動でさらに制御されたのでその酵素製剤の純度が高かったことを示した(データは示さず)。標準化個別活性はSNSAを少しづつ増やしながら追加した場合の残留活性と基準活性との比率で計算した。
実施例12
SNSAによるウサギ骨髄Ca−ATPアーゼの抑制
Ca−ATPアーゼはウサギ腰筋筋肉から作成し、すべての手順は4℃以下の温度で行われた。生成された薄膜内の蛋白質含有率は前に述べた手順で判定され、最終密度勾配分離後に、2−3mg/mlの範囲であることが分かった。固有酵素活性は20℃で約2μmol P1/h/mg蛋白質であった。
【0146】
酵素活性は、25mM HEPES、1mM MgCl2、50mM KCl、及び0.2mM Ca2+を含む緩衝液を用いて、Na,K−ATPアーゼの場合と同様に、結合ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイによって判定された(図19)。ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社(Mannheim)から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma-Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。
【0147】
単離された試料のバックグランド酵素活性は1μMのtharpSigarginを加えて得られた。Ca−ATPアーゼ試料の固有活性は20℃及びpH7.5でほぼ1.8単位/mgであった(加水分解されたATPの1.8μMol/mg蛋白質/分に相当)。
実施例13
SNSAによるブタ胃H/K−ATPアーゼの抑制
これまでに公開されている方法を用いて豚胃粘膜から胃H,K−ATPアーゼを得た。この方法では分画及び密度勾配遠心分離が用いられた。胃から粗胃粘膜薄膜を集めて0.25Mサクロース、5nm PIPES/Tris及び1mM EGTAを含みpHが6.8の溶液内に均一に分散した。この均一化されたのもをSrovall GSAロータ内で45分間、11,000rpmの回転速度で遠心分離した。上澄液をBeckman (Fullerton,CA)のタイプ30ロータで1時間、30,000rpmの回転速度で遠心分離した。ミクロソーム・ペレットを0.25Mサクロース、5mM PIPES/Tris及び1mM EGTAを含む溶液(pH6.8)に再懸濁させた。
【0148】
このミクロソーム懸濁液をZ−60帯状ロータを用いて精製した。単離された粒子内で、H,K−ATPアーゼの90%は細胞質を上側に向けた体側壁細胞の方向を向いていた。H,K−ATPアーゼの固有ATPアーゼ活性をピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイによって判定した。ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社(Mannheim)から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma -Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。H,K−ATPアーゼ含有粒子試料の固有活性は37℃で1時間経過した後、総蛋白質1ミリグラムあたり80−100mmol Piの範囲であった。IC50値はKによって刺激されたATPアーゼ活性を50%抑制する阻害剤濃度に基づいて定義した。0.78μg/mlというIC50値はOriginTM 5.0を用いて得られた実験データにS字状結腸の機能に関する非線形最小二乗を適用することによって計算された。サンプル・サイズは3回のアッセイに基づいて判定され、それぞれのアッセイは各化合物の3つのサンプルを用いて測定された。
【0149】
0.78μg/mlという図形的に判定された半抑制濃度IC50を図20に示す。
実施例14
PTEN(クロモソーム10上でのホスフェート及びテンシン)に対するSNSAの活性
試料: NIH3T3線維芽細胞(LGC Promochem, ATCC)、Dulbecco's Modified Eagle's Media (DMEM: Sigma社提供)、新生子牛の血清(NCS: GIBCO Invitrogen社提供)、ウォートマンニン(Wortmannin、Calbiochem社提供)、抗P-PKB (S373)抗体(Cell Signalling社提供)、抗Mass-PKB抗体(Upstate社提供)及びECLウェスターン・ブロッティング分析システム(Amersham Biosciences社提供)
方法: 線維芽細胞NIH3T3を密度が十分になるまで6ウェル・プレート内で成長させた。その後、それらの細胞をその蛋白質キナーゼB(PKB)代謝機能と0%DMEM内で一昼夜枯渇させた。テストを開始する前に、培養液を取り除いて、PKBの化を刺激するために新生子牛の血清(NCS)を加えた。1.5%血清を加えた後、細胞を5分間培養した後、200nmウォートマンニン、PI3K阻害剤、あるいはSNSA b−101(120μg/ml)を線維芽細胞に加えて、25分間培養してから、PBSで洗浄して取り除いた。最終的に、細胞を4xSDSゲル付加緩衝液で溶解して、10分間煮沸した。
【0150】
すべての細胞溶解物サンプルを9%SDS-PAGE (Laemmli et al,)にかけて、ニトロセルロース膜に移してから、TBST緩衝液内に5%の濃度でミルク粉末を溶かしたもので30分間ブロックした。抗PKB抗体(1:1000)あるいは抗ホスホPKB(S473)抗体(1:2000)をTBST内に3%のミルクを溶かした溶液で4℃の温度で一昼夜その薄膜を培養することで、ウェスターン・ブロット分析を行った。その後、その薄膜をTBST緩衝液で10分間、少なくとも3回洗浄した。最後に、TBST内に3%の濃度でミルク粉末を溶かした溶液内で、ホースラディッシュ・ペロキシダーゼ(BIORAD)(1:1000)と結合させた二次抗マウス血清を用いて、室温で1時間培養した。薄膜をTBST緩衝液で3回、各10分間洗浄した。最後に、ECL溶液(Amersham Biosciences)でウェスターン・ブロットが形成され、信号を富士フィルム社のデジタル・ブラック・ボックスで検出した。
【0151】
結果: 本発明のケイ酸SNSAを120μg/ml用いたところ、PKB脱リン酸化が明確に促進された(図21)。このことは、PI3K抑制標準ウォートマンニン(Wortmanin)と比較してほぼ類似した実験で証明されたPTEN(図22)に対する抑制効果として説明できるであろう(図23)。
実施例15
TPH1内でのERK−フォスファターゼに対するSNSAの活性
白血病細胞下部THP1を処理した後、SNSAは信号発信を増幅させ、ERK1およびERK2活性化(リン酸化)をもたらした。SNSA (b−101)の効果はERK1およびERK2の活性化によるバナジン酸塩の効果と非常に類似している。H2O2によるバナジウム酸ナトリウムのペロキシ化はERK1およびERK2の活性化を協力に促進する(図24)。逆に、H2O2でSNSAを処理するとERKに対する影響は弱まり、このことはSNSAがバナジン酸塩と比較してペロキシ化に対してそれほど影響を受けないことを示している。
【0152】
SNSAによる処理後のTHP1細胞の増殖は、24時間後及び48時間後にもそれほどの変化は認められなかった。観察を開始してから96時間後に増殖のわずかな抑制が観察された。SNSAは癌THP1細胞の生存可能性を抑止しない(C=成長培養液mlあたり160μl)。 バナジン酸塩と比較して、SNSAは細胞に対して毒性を示さないことははっきりしている。
【0153】
SNSAで処理された癌細胞BC細胞株BT20はEGFRリン酸化を若干増大させた。
実施例16
SNSAと蛋白質との相互作用
生物活性ケイ酸SNSAとヒトIgG蛋白質との相互作用を、以下の手順でELISA技術で定量的に評価した。
【0154】
96ウェルELISAプレートをヒトIgG(Sigma 14506)の1μg/ml溶液200μlを炭酸ナトリウム緩衝液、pH 9.5 (40mM NaCO3および60mM NaHCO3)に溶かしたもので被覆し、4℃で一昼夜培養した。翌日、溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄した。そして次に、PBS内で200μlの2%BSAを用いて室温で培養して、遊離結合サイトを飽和させた。1時間後にBSA溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、さらにPBSで3回洗浄した。ウェルは事前に希釈したSNSAのストック溶液(b−118)を1000−10ng/mlの割合で処理した。室温で2時間SNSAで培養して、取り除いたあと、PBS&0.05% Tween20で3回、PBSで3回洗浄した。
【0155】
1ウェルあたり100μlの蛋白質Aを用いて室温で2時間培養し、アルカリ性フォスファターゼ共役(Sigma P-7488) をPBSに1:2000の割合で希釈した。溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、H2Oで3回洗浄した。各ウェルで100μlの基質溶液pNPP (Sigma N1891)を用いて室温で120分間培養し、405nmでの光学密度(OD)をMRX Microplate Reader (Dynatech Laboratories)を用いて測定した。
【0156】
SNSAの精密なアッセイを行うための方法を、ELISA法で得られた結果と共に図25にします。これらのウェルを蛋白質Aと選択的に反応するIgG(20μg/ウェル)を用いて培養したので、すべてのウェルで同じ強度の発色反応がもたらされるだろうと予想された。驚くべきことに、溶液に加えられる本発明のケイ酸の量に比例して発色反応の強度が増大した。明らかに、OD曲線はSNSAの1mlあたり10ngから300ngの範囲で濃度に比例して増大し(図26)、SNSAの濃度がより高くなったときだけ変化の割合が減少した。IgG分子と蛋白質Aとの相互作用の、このSNSAの容量に依存した増大に関する観察は、高い応用可能性を示すものである。というのは、それは生物由来のものを含めて種々のサンプルでのナノグラム範囲での本発明のSNSA の非常に精密はアッセイを可能にしてくれるからである。
実施例17
SNSAのアッセイ
96ウェルELISAプレートをChromePureヒトIgG Fcフラグメント(Dianova)100μg/ml溶液を炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5) (40mM Na2CO3および60mM NaHCO3)に溶かしたもの200μlで被覆して、4℃で一昼夜培養した。翌日に溶液を取り出して、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄した後、さらにBSAを2%の濃度でPBSに溶かしたもの200μlで室温で培養して、結合サイトを飽和させた。1時間後にBSA溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄して、さらにPBSで3回洗浄した。これらのウェルを1000−10ng/mlの範囲で事前に希釈したストック溶液SNSA(b−118)100μlで処理した。SNSAで室温で2時間で培養した後、取り出してPBS&0.05% Tween20で3回、そしてPBSで3回洗浄した。蛋白質A−アルカリ性フォスファターゼ共役(Sigma P−7488)をPBS内に1:2000の割合で希釈させたものを1ウェルあたり100μl用いて室温で2時間培養した。溶液を取り出し、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、そしてH2Oで3回洗浄した。各ウェルを100μlの基質溶液pNPP(Sigma N1891)を用いて室温で120分間培養し、405nmでの光学密度(OD)をMRX Microplate Reader (Dynatech laboratories)で測定した。
【0157】
図27に示す図はヒトFcフラグメントを用いてELISA法で得た結果を示している。ウェルを蛋白質Aと選択的に反応する同じ量のFc(20μg)を用いて培養した後、すべてのウェル内で同じ強度の発色反応が起きることが予想された。驚くべきことに、溶液に加えられる本発明のケイ酸の量に比例して発色反応の強度が増大した。明らかに、OD曲線はSNSAの1mlあたり10nから300ngの範囲で濃度に比例して増大した。知られている濃度のSNSAで得られた標準曲線で、1−1000ng/mlの範囲の未知の濃度でのSNSAの定量アッセイを行うことができた。
実施例18
糖尿モデルへのSNSの適用
糖尿病マウスdb/dbに体重1kgあたり24mgの用量でSNSA(b−118)を投与したところ、投与から2時間以内に血液グルコース・レベルが48%低下し、さらにバナジン酸塩はさらに減少し(52.5%)、そして糖尿病薬は22%低下した。SNSAによる血液グルコース・レベルの長期的減少は賦形剤だけで措置した個体と比較して、投与から24時間及び48時間後にそれぞれ19%及とわずかなものであった。このテストでのSNSAの長期効果は48時間後にでもBGLを32%低下させるbis−L−バナジウム酸グルタミルより弱かった。
実施例20
透過電子顕微鏡(TEM)によるSNSAの特徴づけ
サブナノケイ酸溶液の標本をドロップ・コーティングして、400メッシュ銅グリッド(Ted Pella)上に支承されたカーボン被覆パルロディオン・フィルム上に沈着させて、制御された条件下で乾燥させた。TEM測定はPhillips社CM透過電子顕微鏡で行われ、磁界はナノ・ケイ酸フィルム表面と平行にかけられた。
【0158】
200kVの加速電圧で調査されたSNSA標本の特徴的なTEM画像(図28)が得られた。倍率は480,000倍であった。この図は、回転楕円形のシリカ種の存在を示しており、その分子直径は2.5−4.0nmの範囲で、分子直径が5.0nmより大きい通常のシリカナノ粒子よりはっきりと小さかった。
【0159】
用いられた透過電子顕微鏡技術は、溶媒液を急速に蒸発させた後、実際に「固体」粒子を示した。実際に、SNSA溶液を急速に「脱水」すると、溶媒液分子を取り除くだけでなく、凝縮されたケイ酸分子内及び分子間の水も除去した。これたの分子内及び分子間の水の凝縮は通常の種と比較してSNSA誘導体を構造的に改変して団粒化させた。
実施例21
フーリエ変換IR顕微鏡によるSNSAの特徴づけ
フーリエ変換インフラ・レッド(FTIR)顕微鏡を用いて、本発明によるサブナノ・ケイ酸の特徴づけを行った。スペクトルはBRUCKER-Optics社(Rosenheim, Germany)のTensor 37 FTIRスペクトロメータを用い、40000−400cm-1の範囲で、解像度4cm-1でATR Miracle Pike法を用いて記録した。
【0160】
サンプルは水1mlあたり24mgの濃度のSNSA(b130およびb131)ストック溶液から、2枚のポリエチレン・フォイルに鋏まれた薄い液体フィルムとして得られた。PEフォイルと溶媒のスペクトルは別々に測定され、バックグランドとして差し引かれた。ガウス−ローレンツSUM関数を用いてピーク曲線あてはめ(fitting)を行った。
【0161】
結果:水性溶液内でSNSA(b−130)標本のFTIRスペクトルを図29に示す。このスペクトルは、本発明で開示されているような構造を有する溶解SNSAに関して予想されたように、1300と800/cmの間に主要赤外線吸収帯を含んでいる。
【0162】
1130/cmでの最も主要な帯は本発明で示されているQ4タイプのケイ素原子に対応する内部のSi−O−Si結合の非対称伸縮振動のせいであろうと判断される。この吸収帯はいくつかの個別ピークが重なったものである。1130/cmでのこの帯を1192/cm、1160/cm、及び1119/cmでのピークに当てはめることは満足すべきものと判断された。
【0163】
1017/cmの強いピークは1087/cmでの非対称伸縮振動T03と942/cmでのシランール基の伸縮振動の間にある。サイズが5nmより大きなコロイド状シリカ粒子を含んだシリカ・ゾルにおいては、この帯の強度はより低く、そのピークは1060/cmに移動しており、SNSAのスペルトルには示されていない。同様に、固体シリカ粒子の外面のSi−O−Si結合に対応する1060/cmでのIR吸収帯も存在していない。
【0164】
回転楕円形表面上の遊離Si−OH基が高密度で存在している本発明のSNSA分子の構造を証明するさらなる証拠は、880/cmの位置にさらにIR帯が高頻度で存在していることである。本発明によるサブナノケイ酸のフーリエ変換赤外線スペクトルはここで述べられているそれらの構造と一致している。これには、Q4:Q3及びQ2タイプのケイ素原子間の仮想均衡比及び回転楕円形状分子の外部シェル上に高密度で存在している遊離シラノール基が含まれる。
実施例22
長期保存におけるSNSAの安定性
本発明のケイ酸(SNSA)サンプルを長期間保存した場合の安定性をウサギの骨髄から単離されたNa,K−ATPアーゼに対する抑制ポテンシャルについて実験的に判定することで調べた。このテスト法は本願明細書の実施例11に詳細に述べてある。
【0165】
3つの異なったSNSA試料を8ヶ月室温で保存した場合の安定性について調べ、それぞれの測定セット用に作成されたばかりの標準ウアベイン8H2O(Sigma-Munich)サンプルの抑制ポテンシャルと比較した。心臓ステロイド・ウアベインの平均IC50は0.72μg/mlでのもので、この標準のIC50の1.36あるいは1μmol/Lに相当する。
【0166】
1) SNSA (b109) 23.8mg/ml、pH=2.0−2.1
2) SNSA (b111) 24.2mg/ml、pH=8.9−9.1
3) SNSA (b102) 固体基盤としてのSorbitol (Sigma)上に4.8%m/mの割合で沈着
これらのサンプルの抑制ポテンシャルは実施例11で定義したようにIC50として各測定セットに対して示されている。固体基盤上に沈着されたSNSAの場合、IC50はその溶液の実際のSNSA含有量に基づいて計算された。
【0167】
図30の図はこの研究の結果を示している。やや酸性のpH2.0の場合の本発明によるサブナノケイ酸の安定性は非常に高い。4−5ヶ月保存した場合だけ、活性のかなりの低減が観察される。pHが9.0以上の塩基性の場合も、本発明によるSNSAの安定性について、同様のことが言える。本発明による固体基板上に沈着された本発明によるSNSA物質の安定性が実質的に変わらない点も注目に値する。
実施例23
SNSAは糖尿病モデルSTZの血液グルコースを減少させる
本発明によるサブナノケイ酸の経口投与がストレプトゾトシン(STZ)で誘発させた糖尿病ラット・モデルでの上昇した血液グルコースを低減できるかどうかをどうかを調べた。SNSAの推定効果をこの糖尿病モデルで事前に確認されているバナジウム酸Lグルタミン複合体の効果と比較した。
【0168】
20匹の糖尿病にかかっていないウィスター(Wister)ラット(体重:185−205g)を各個体に体重1kgあたり50mgの用量でストレプトゾトシン(STZ)を静脈注射を1回注射した。
【0169】
STZ投与から5日目に、措置されたラットはそれらの糖尿病の病状に対応した血液グルコース・レベルの上昇(>250mg/dL)を示した。STZで誘発された糖尿病を有するラットは適用された治療法に応じて、SNSAグループ(6匹)、バナジン酸塩グループ(3匹)、トリグリタゾン・グループ(4匹)、比較対象グループ(3匹)の4つのグループに分けられた。毎日の用量は、SNSAグループの場合は体重1kgあたり12.5mg、トリグリタゾン・グループの場合は体重1kgあたり20mg、バナジン酸塩−bis−L−グルタミン複合体[VO3(Glm)2]グループの場合は体重1kgあたり25mgであった。比較対象グループには同じ量の賦形剤を与えた。SNSAグループのうちの1匹は「糖尿病」レベル以下で、研究対象から外された。
【0170】
結果: 治療の開始から1224、及び48時間後に評価された平均グルコース・レベル値を図31に示す。
STZ誘発糖尿病モデルに関する実験は、本発明によるケイ酸SNSAが糖尿病を持った個体での血液グルコース・レベルをかなり低下させた。バナジン酸塩及び比較対象として用いられた糖尿病トリグリタゾンと比較して、SNSA の場合はかなり低い用量で抗糖尿病効果がもたらされたことは注目に値する。バナジン酸塩と比較して二桁以上SNSAの毒性が低いことは、糖尿病治療における本発明の生物活性ケイ酸の適用の有用性を支えるさらに有力な根拠であろう。
【0171】
SNSAで想定可能なメカニズムは図32に示してあるように、インシュリン・レセプタ(IR)との相互作用によるインシュリン模倣作用として理解することができるかもしれない。これには、インシュリン・レセプタに結合したホスホチロシン・フォスファターゼPTP1Bの抑制は関係している可能性もある。このフォスファターゼはインシュリン信号発信及びインシュリン選択性を低下させるインシュリン・レセプタのリン酸化の程度を低下させる。
実施例24
十二指腸潰瘍の治療へのSNSAの適用
本発明によるSNSAはH/K−ATPアーゼとも記載されるプロトン・ポンプの非常に強力な抑制因子である。この薬学的作用は胃/十二指腸潰瘍の重要な原因の一つである胃酸過多の治療に実際的な重要性を持っている。
【0172】
標準的な実験室での餌と生水に自由にアクセスできる初期体重が200±10gの雌のウィスター・ラット24匹を実験に用いた。10%システアミン−塩化水素水溶液(Sigma-Aldrich)を1日に3−4時間の間隔をおいて3回皮下注射した。この投与形態は高度の潰瘍反応と低い死亡率をもたらすものであった。
【0173】
供試動物は以下の通り3通りに措置された。
− SNSA−5グループ: 8匹のラットに対して、3時間毎に0.5mlの水に5mgのSNSAを溶かしたものを与えた。
− SNSA−5グループ: 8匹のラットに対して、3時間毎に0.5mlの水に3mgのSNSAを溶かしたものを与えた。
− 比較グループ: 8匹のラットに対して賦形剤だけを与えた。
【0174】
【表2】
【0175】
結論として、SNSAで措置した動物は比較グループの動物と比較して、十二指腸潰瘍の発症率がかなり低かった。解剖病理検査の結果、本発明のケイ酸が胃酸過多を低下させることで、非常に強力な予防的役割を果たしている証拠が得られた。
実施例25
癌細胞の分岐及び伝播に対するSNSAの影響
Invitrogen 社(Bremen DE)から入手したダルベッコ修正イーグルの高グルコース培養液内で、MDA−MB−435細胞を95%空気、5%二酸化炭素の環境下で37℃の温度で培養した。移行及び侵入アッセイを行うために、最終濃度が1・105細胞/mlの無血清細胞培養液を用いた。化学誘引剤として10%ウシ胎児血清(FBS)を含んでいる培養液を24ウェル・プレートのすべてのウェルに加えた。
【0176】
0.8mmの孔サイズの薄膜を有するフルオブロック(FluoBlok)挿入物を上記化学誘引剤を含んだ各ウェルに入れて、上側のチェンバーと下側のチェンバーをつくった。細胞(5・104)を上側のチェンバーに入れて37℃の温度で24時間培養した。侵入に関する研究は細胞培養液に希釈させた62.5mg/mlのマトリゲル(Matrigel)(Bioscience, Canaan, CT)で事前に被覆したフルオブロック(FluoBlok)薄膜を用いて48時間の時間をかけて行った。挿入された薄膜は事前に被覆され、細胞と培養液を加える前に1時間組織培養器内で安定化させた。
【0177】
細胞移行及び侵入の程度を調べるために、薄膜の上面と底面の両方に附着している細胞をHank社の均衡化塩溶液(HBSSInvitrogen)で洗浄した。細胞はHemaColor溶液1定着液で固定した。デジタルCCDカメラ(Hamamatsu PHotonics, 日本)を備えたライカ(Leica)社の顕微鏡を用いて、ランダム・デジタル画像(10枚はフィルターの上面から、10枚はその底面から)を得た。
【0178】
調査されたセグメントの顕微鏡画像(図33)は措置を受けなかった乳癌細胞が分岐していることを証拠付けている。細胞の分岐の抑制あるいは阻止は、SNSAで措置した細胞のスライドで明らかである。SNSAの用量が低くても分岐の抑制傾向が認められるが、本願の生物活性ケイ酸の用量を高くすると、分岐は行われない。
実施例26
骨粗鬆症モデルにおける本発明のSNSAの適用
本発明の研究の目的は卵巣切除した(Ovx)ラットにおける骨粗鬆症モデルを用いて、骨の健康に対する本発明のサブナノケイ酸の効果を調べることであった。Ovxラットは閉経後の女性における骨喪失を阻止するための薬剤の研究に適していることが分かっている。この研究の目的は毎日SNSAを投与した場合の動物における骨形成に対する効果を比較対象グループとの比較において調べることであった。
【0179】
生後6ヶ月のウィスター・ラット18匹を通常の手術手順で卵巣切除あるいは卵巣摘出した。卵巣摘出手術は卵巣切除と同じだが、卵巣は切り離されなかった。卵巣を摘出されたラットは比較対象グループの個体と同様に苦痛やストレスに苦しむので、これら2つのグループの比較は重要であった。
【0180】
この研究はランダムに3つのグループに分けた18匹の個体において行われた。3つのグループとは、卵巣切除した2つのグループと、卵巣摘出した1つのグループである。
− Ovx−SNSグループの個体(8匹)には日常の餌と水に加えて、体重1kgあたり5.0mgのSNSAを経口投与した。
− 卵巣切除した5匹のラットで構成されるOvx-比較対象グループには研究全期間を通じて通常の餌と水が与えられた。
− 卵巣摘出されたラット(5匹)の場合、卵巣は切り離されなかった。研究は手術から10日後に開始され、12週間続いた。すべての個体は研究終了後に致死された。血液の化学的組成、体重、各器官の重量が測定されて、他のグループと比較された。骨密度計ODR-1000/W(Hologic Inc.)を用いて、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)技術で腰椎のL2−L5で骨鉱物密度(BMD)を測定した。軟組織を取り除いた後、第三腰椎の石灰質を取り除いていないサンプルを調べた。
【0181】
結果: 我々が得たデータは、Ovxグループでの17β−エスタジオール・レベルが、実験の終了時においては、摘出グループよりかなり低かったことを示している。卵巣切除されたラットは、卵巣摘出グループと比較して体重が増えた。
【0182】
SNSAで措置した個体では、骨形成が増大したことが明らかになった。これは比較対象グループと比較して類骨表面が増大していること(OS/BS)によって裏づけられている。SNSAで措置した個体では卵巣摘出グループで観察されたような脾柱骨体積の減少(BV/TV)が観察されなかった。OVX比較対象グループで骨形成に関するパラメータが低下したしたのと違って、SNSA措置グループは卵巣摘出グループをほぼ同様の値を示した。
【0183】
SNSAを個体に対して1日5mg投与すると、卵巣切除によってもたらされる骨形成の劣化をかなりおぎなってくれた。結論として、本発明によるサブナノケイ酸は骨粗鬆症の予防と治療のための有益な薬剤であり、骨の健康に相当程度貢献するものである。
実施例27
硫黄マスタード・モデルにおけるSNSAの傷治癒効果
侵攻性の化学物質によってつくりだされる重篤な皮膚損傷を治療するための局所的使用における本発明のサブナノケイ酸の効果を標準的な動物モデルでテストした。化学名がbis−(2−クロロエチル)硫化物(省略名:HD)である皮膚に水ぶくれをつくる戦争用化学薬剤を乳離れしたばかりのブタでテスト物質として用いた。
【0184】
乳離れしたばかりの2匹の雌ブタを液体HDに2時間暴露して、腹部皮膚面に直径3−4cmの十分な厚みの皮膚損傷をつくりだした。HDへの露出から2−6時間後にははっきりとした紅斑がつくられ、それが水疱に変化した。第1の個体の損傷をA1−A6とし、第2の個体の損傷をB1−B6とした。調査対象の製品による局所的な治療はHDへの露出から24時間後に開始し、以下に述べる用量で1日に3回適用した。
− A1−A3は0.5mlのSNSA (1.5mg/ml)を局所用組成物として適用した。
− A4−A5は0.5ml賦形剤(偽薬)で処置した。
− B1−B3は0.5mlのSNSA (2.5mg/ml)を局所用組成物として適用した。
− B4−B6は緩衝液にマフェナイドを溶かしたもの(50mg/ml)で処置した。
【0185】
動物達は8週間臨床的に観察され、水疱の直径、病理的経過、そして治癒状態を測定された。最初の12日間に尿検査とガス・クロマトグラフィ/質量分光分析アッセイを組み合わせて主要HD代謝産物(チオジグリコール、TDG)の尿による分泌及び臨床病理検査が行われた。皮膚の回復と経皮水分ロス(TEWL)に対するバリアー機能の復活を観察した。
【0186】
結果: 露出後3あるいは4日目には経皮水分ロスが激しく、処方しても効き目はなかった。皮膚障害の十分な買う服は露出後36日から46日の期間に観察された。皮膚回復に要する時間は本発明によるサブナノケイ酸SNSAを適用することにより好適に短縮され、その用量が高い(2.5mg)の場合に最も良い結果が得られた。
【0187】
1日あたり2.5mgの用量で本発明のSNSAを適用すると皮膚回復に要する期間が23%短縮された(46.3日ではなく35.7日)。SNSA適用から41.3日目にはTEWLバリアー機能の復活し、偽薬を与えた場合の53.3日と比較して、復活に要する時間が22.5%短縮された。
【0188】
2.5mg用量で本発明のSNSAを適用すると、5%酢酸マフェナイドによる標準的な措置よりはるかに好成績であった。20倍の用量で用いられる従来の製品と比較して、本発明によるSNSAは著しい技術的進歩をもたらすことが確認された(50mg対2.5mg)。
【0189】
【表3】
【0190】
結論として、本発明によるサブナノケイ酸は損傷した皮膚を効率的に回復させ、皮膚回復及び皮膚機能の復活に要する時間を短縮させる。
実施例28
日焼け治療に対する局所処方用サブナノケイ酸の適用
太陽に長期間、遮蔽物なしで露出した場合、特にタイプUV−A(300−400nm)およびUV−B(260−290nm)の紫外線照射への露出によって起こされた日焼けに対して局所処方によって本発明のサブナノケイ酸をテストした。
【0191】
フィッツパトリック分類でタイプIIの若い男性(23歳)と若い女性(23歳)は胸部の皮膚領域にグレートIの(受動的)日焼けを示していた。日焼けの原因は、ババリアの高度950mの場所で夏季に真昼の太陽に1.5時間遮蔽物なしで露出したことである。
【0192】
彼らの皮膚は濃い赤色に変わり、痛みがあり、男性の方は日焼けした箇所に布が触ることさえ耐えられなかった。
0.5%m/vSNSA、1.5%m/v重炭酸ナトリウム、及び15%m/vグリセリン及び蒸留水を含む局所処方をテストした。本発明によるSNSAの局所処方用製剤を赤くなった領域の75%に薄く均一に層状に塗布し、残りの25%には処置をほどこさなかった。
【0193】
太陽に露出してから2.5時間後に最初の適用がなされた。適用された用量は皮膚表面面積100cm2に対して2.5mgSNSAであった。痛みの緩和はすぐ明らかになり、テストされた人達は日焼け感覚が緩和したと語った。その組成物を含むSNSA製剤を第1日目に3回、翌日に2回処方した。皮膚温度はデジタル接触温度計で+0.15℃の精度で測定され、痛みについては視覚アナログ・スケール(VAN)によって、そして皮膚の色は溶液の熱量分析で用いられる標準カラー・スケールとの比較で測定された。
【0194】
SNSAの最初の適用後、皮膚温度は1.8−2.4℃低下した。SNSAで措置した痛み、色、及び温度測定の合計スコアをその胸部領域の未措置領域の合計パラメータと比較した。
【0195】
上記の痛み、温度、及び色の測定結果によれば、SNSAによる治療は比較対象としての未措置領域と比較して62−76%の改善を示した。
【発明の詳細な説明】
【0001】
1.技術分野
本発明は、特殊な構造と顕著な生物学的活性の特徴を有するケイ酸の低モル質量凝縮誘導体に関する。ここで開示されケイ酸の出願は生体分子に相互作用してその構造および生体機能を顕著に改善することを開示する。この発明のケイ酸の好ましい適用分野は蛋白質の構造と生体機能を改善することであり、これには特に生物学的情報伝達または膜輸送過程での可逆的なリン酸化が含まれる。この物質の構造、製造方法および安定化、この物質からなる薬剤の組成および疾患の予防、診断および治療の適用方法が開示される。
2.背景技術
タンパク質のリン酸化は、情報伝達、膜輸送または筋肉収縮などのような生物過程において極めて重要な過程である。リン酸化は、リン酸分子をタンパク質鎖の(チロシンやセリンのような)ヒドロキシアミノ酸と結合させることで達成される。リン酸化は、常にリン酸分子の脱結合で元の構造に戻される可逆的な方法でタンパク質構造と生物活動を改善する。
【0002】
特定の蛋白質リン酸化促進物資は、リン酸基をアデノシン3リン酸(ATP)からリン酸基を蛋白質基質に転移する蛋白質キナーゼ(PK)である。蛋白質フォスファターゼ(PP)は、反対に蛋白質結合リン酸基を分離するように作用する。これら蛋白質キナーゼとフォスファターゼの逆方向の機能は平衡し、情報伝達と膜輸送のような幾つかの複合細胞過程を規制する。
【0003】
ある種の蛋白質リン酸化工程とそれにつながるシグナルカスケードの機能障害は幾つかの疾病において重要な因子であると認められている。可逆的なリン酸化工程の目的を持った調節は癌のような疾病に対する新しい治療法を見つけるために期待される手法であると考えられる。
【0004】
この概念は肺癌における腫瘍成長を促進する蛋白質キナーゼのHER−2およびHER−3を阻止する単一クローン抗体での腫瘍治療における最近の成功によって確認されている。しかしこの抗体による腫瘍抑制作用は、時が経つに従って、宿主の器官がそれを抗原性蛋白質と認識してそれを無効化する抗−抗体を生成するためにその有効性に制限がある。医療ニーズに合わないある蛋白質キナーゼまたはフォスファターゼの抑制または調節を目的とした非抗原性薬剤が提供されている。
【0005】
P型−ATPアーゼ(アデノシンー3フォスファターゼ)のスーパーファミリーのメンバーは、アデノシン3リン酸(ATP)の加水分解から得られるエネルギーを用いて生体膜を横切って輸送することを含んだ構造的に関連した蛋白質である。従ってこれらATPアーゼは膜を横切る「イオンポンプ」膜として類別される。実際に、各ポンプ周期はATPアーゼ蛋白質のリン酸化とそれに続く非リン酸化が含まれる。
【0006】
幾つかの疾患がある種のATPアーゼポンプの不都合な機能に関係しており、この酵素を抑制したり調整する医薬物質での治療可能性の開発を示唆している。ATPアーゼの構造的解明のかなりの進歩にも拘わらず、その作用メカニズムや医薬物質による調節については十分に解明されていない。
【0007】
1つの典型的なP型―ATPアーゼはNa,K−ATPアーゼまたはナトリウムポンプであり、これは、イオン恒常性および薄膜の電位、PH、温度または水の浸透性のような細胞機能の広い範囲を制御する。このナトリウムポンプには、筋肉収縮、神経シグナル伝達、腎臓のナトリウム保持率、または血管緊張のような重要な生理的過程の調節が含まれている。ナトリウムポンプの厳しい機能障害は、重大な高血圧や心疾患のような幾つかの病状態に明白に関与している。
【0008】
従来技術におけるNa,K−ATPアーゼの阻害剤として、心不全の治療に長時間適用されるハーブ由来の強心ステロイドがある。しかし、致命的な毒性がヒトの体重Kgあたり0.1−0.25mgの範囲のLD50服用致死量を持った高い毒性があり、治療のための服用範囲が著しく狭い。従って強心剤のステロイドダイオキシンは患者1日当たり4−5mgの服用が適当であり、患者1日あたり8−10mgでは致死毒性となる。非毒性ナトリウムポンプ阻害剤を見つけることが心不全症、高血圧および関連疾病の治療においては治療の大きな関心事である。
【0009】
ナトリウムポンプの心臓非毒性調節剤は、内因性のジギタリス様の要素(EDLFs)であろうと推定される。その存在は実験データの一致体によって指示されるが、EDLFsの構造は現在に至るまで開示されていない。最近のデータは、Na,K−ATPアーゼの役割は細胞膜のレベルでシグナルトランスデューサーであることを確信的に示しており、それはナトリウムポンプ調節剤の潜在的治療応用の新しい分野であることを暗示している。(Xie,z,Askihari,A;Eur.J,Biochem.2002,269,2434-2439)
H+/K−ATPアーゼ又はプロトンポンプは、ATPアーゼファミリーの他の1つのメンバーであり、胃の空腔から回収された1個のカリウムイオン(K+)を交換するに際して細胞質から水素イオン(H+)を輸送するものである。H+/K−ATPアーゼに直接結合して不活性化するプロトンポンプ阻害剤(PPI)は、従来技術において胃における胃酸過多症の処置のための治療剤、例えば、オメブラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾール(US5232706)として開示されている。しかしながら、これらPPI剤の過剰摂取は、便秘、咳、めまいまたは背痛のような副作用をもたらす。
【0010】
真核細胞内のカルシウムの恒常性は偏在して存在するカルシウムポンプとして知られCa−ATPアーゼによって維持される。形質膜のCa−ATPアーゼはカルシウムチャンネルを通した遊離Ca2+イオンの流入を妨げ、酵素的反応と細胞内シグナリング過程の広範なスペクトルを制御する重要な役割を果たす。筋肉細胞において、Ca−ATPアーゼは、筋肉の弛緩中にCaを貯える筋質網状筋小胞体内にCa2+イオンを戻す。このデータは、Ca-ポンプ調節物質は、例えば、筋肉収縮病における治療への応用可能性を強く示唆しており、しかしサプシガージンのような従来技術の阻害剤は、高度の細胞毒性のために使用が制限される。
【0011】
幾つかのバナジウム化合物は、Na,K−ATPアーゼ、H/K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼの阻害剤および他のP型ATPアーゼ酵素の従来技術での阻害剤として確認されている。最も多く使用されるのはメタバナジン酸塩(VO3)n-またはデカバナジン酸[V10O28]6-であり、それはマイクロモル範囲およびサブマイクロモル範囲においてIC50(半抑制濃度)値でATPアーゼを阻害するが、その結果はバナジン塩の瞬時の構造改変のために再現性がない。生化学関連のバナジウムオリゴマーであると考えられているデカバナジン酸は、生理学的なpHでは、安定ではないが、一旦形成されると、その効果を調査することができるほどその崩壊が遅い。その問題ある構造にも拘わらず、バナジン酸またはその過酸化物誘導体の過バナジン酸は、蛋白質フォスファターゼの非常に効率的な阻害のために実験室使用が広まっており、それは補完的なキナーゼの研究において一義的に重要である。
【0012】
バナジン酸は、多くの細胞型においてインシュリンの迅速な作用に驚くほど似ている。高血糖のねずみに経口投与すると、バナジン酸は糖分摂取と新陳代謝を刺激して、正常血糖状態に導く。加えて、バナジン酸は、インシュリンに対する組織反応と肝臓の血糖レベルを回復させると共に糖質の新陳代謝のための鍵となる酵素の新規の合成を促進する。糖尿病治療におけるバナジン酸化合物の臨床的な効果は、ヒトにおいては短時間の実施のみで確認されている。
【0013】
糖尿病におけるバナジン酸化合物のインシュリン類似使用に対する新しい興味にも拘わらず、バナジン酸誘導体の毒物学は興味を起こしている。ヒトにおいては高い胃腸障害が通常の毒性効果として報告されており、多量摂取を施した動物実験においては腎臓および肝臓に強毒性の厳しい徴候が現れることが報告されている。バナジン酸の長期使用は、多くは腎臓、脾臓、睾丸 肝臓および骨における進行性の組織蓄積と毒性効果の生成に大きく関与する。毒性はバナジンの酸化状態および過バナジン酸>バナジン酸>バナジルの順でのバナジンの配位および投与方法も依存している。[Domingo,J.L:「バナジン酸および糖尿病 バナジン酸の毒性とは何か?」 Mol.Cell. Biochemistry 2000,302,185-187]
ABC(ATP結合カセット)輸送体蛋白質は体内異物の排除を含む多くの細胞機能に関連した膜蛋白質の重要な分野を形成する。これらのATP−駆動放出ポンプは通常細胞の恒常性にとって必須のものであるが、例えば癌患者の化学療法ではそれほど望まれない。これは制癌剤に抵抗がある腫瘍を造るABC型多剤放出ポンプ(MDR)の過剰発現に対する癌細胞の生き残り戦略である。細胞成長阻害剤を大量に適用することは、毒性の副作用を顕著に強めるので、単に一時的な解決策に過ぎない。ある種のATP−アーゼ駆動多剤放出ポンプの選択的な阻害は、癌治療において重要な利点を示すが、しかし従来技術によるMDR阻害剤は効果が小さい。
【0014】
本発明の目的は、高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病、および創傷治癒のような種々の疾患の予防、診断および治療に有効な新しい薬剤的活性物質を提供することにある。
【0015】
この目的は、独立の請求項の開示によって解決される。好ましい態様は、本明細書の記述、従属する請求項、図面および実施例中に開示されている。
3.ケイ酸の説明
シリコンと酸素の結合物であるシリカは、まさに最も豊富な地殻成分である。広い意味合いで「シリカ」はすべての化学的結合形式において二酸化ケイ素を含み、それにおいてシリコン分子は、酸素分子により囲まれている。通常、結晶質石英として発見される二酸化ケイ素のSiO2は、実際には、化学式Si(OH)4を持つオルトケイ酸の無水物である。生物界におけるオルトケイ酸の至るところでの存在にも拘わらずシリコンを含み又は同元素を必要とする単一の生物分子は認められていない。
【0016】
オルトケイ酸は、アルカリケイ酸塩を陰イオン交換樹脂と共に処理するか、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)のようなテトラアルキルオルトケイ酸塩の加水分解によって得られる。新しくつくられたケイ酸溶液は極めて不安定であるが一方において速やかに重合してコロイド粒子、非結晶ゲルおよび、最終的には多孔性または凝縮固体物質が得られる。図1に示されるように、ケイ酸とその同族誘導体環の水を連続的に排除することによって線型、分枝、環状あるいは多環状凝縮生成物が得られる。低モル質量n≦20の凝縮生成物は、nがSiOx単位体の数として示される同族体として分類される。この単純なオルトケイ酸の同族凝縮生成物は古典的な化学式によって記載されるが、これらを個々に分離することは非常に難しい課題である。
【0017】
これらの凝縮生成物の一般式は[SiOx(OH)4-2x]nであり、ここで"n"は、凝縮されたSiOx(OH)4-2x単位の数を表し、xは、1−2間の値を採る。従ってシクロトリシリシックのような単純なシクロシリカ誘導体の式においてx=1であるとき、n=3で[Si3O3(OH)6]であり、シクロテトラシリシックはn=4で[Si4O4(OH)4]であり、シクロペンタシリシックはn=5で[Si5O5(OH)10]である。個々の種における構造は、29SiNMRスペクトルおよび安定した誘導体の変化により定められる。図1はx=1.5ときの角柱状の6量体[Si6O9(OH)6]、立方体状の8量体[Si8O12(OH)8]、角柱状の10量体[Si10O20(OH)10]のような多凝縮ケイ酸ケージ体を含む従来技術による少モル質量のケイ酸種の概要を示すものである。
【0018】
さらに進んだ(n>10)のケイ酸の凝縮生成物は、シリカ粒子と非結晶ゲルの形成で瞬間的にさらなる重合が進行するので一般的に非常に不安定であると考えられる(図2参照)。より高いオリゴマーまたはサブ粒子サイズの低重合シリカの中間生成物が推定されるが、その詳細は余り徹底的には研究されていない。実際に、多凝縮生成物は、濃度、温度およびpHに依存した分布を持ったある種の平衡混合物を形成する。組成の著しい不安定さと低制御性のためにサブコロイド状(Φ<5nm)の重合ケイ酸種の実用重要性は限られたものであると考えられる。
【0019】
ケイ酸のさらに進んだn>2,000を持った重合生成物はΦ>5nmの直径を持ったナノ粒子である。これらは固体のナノまたはマイクロ粒子として記載され、特有の物理化学特性によって特徴付けられている。水媒質でシリカナノ粒子は拡張された技術的用途を持ったコロイド状の懸濁液を形成する[US 3,702,866;US 3,707,979;US 4,061,724]。同様にゼオライトのような狭く制御された内部空孔を持った固体シリカ粒子は広い技術的応用を持っている。
【0020】
Φ>10nmのシリカナノ粒子は、一般に蛋白質を付着する不活性固体担体粒子として評価されている。この大きいシリカナノ粒子に対する蛋白質の物理的な吸着又は化学的結合は、免疫細胞とエフェクターの相互作用によって顕著な効果を示す。大きいシリカ粒子に対する幾つかの抗原性蛋白質の秩序ある結合は、引き出される免疫反応を顕著に促進させることができる[Tan,W.et al 「シリカナノ粒子に基づくバイオ技術」、Medical Research Review 2004, 24,621-638 ]。
【0021】
しかしながら、この先行技術の大きいシリカナノ粒子への蛋白質の結合は、異種核生成によって蛋白質の好ましくない凝縮が起こる、集合プロセスおよび凝縮による構造変化は蛋白質の生物的性質を失わせる原因となる。蛋白質の制御されない凝縮は、主としてアルツハイマー病におけるアミロイド斑の形成のような幾つかの病跡に関係する。
【0022】
日本臓器による特許群[US 5,534,509; 5,685,896および5,807,951]は、20,000-1,000,000g/モル(DA)の範囲における好ましいモル重量質量を持ち、490-16,500の範囲の重合度で平衡する重合シリカについての生理的調整機能を特許請求している。しかしながら、引用発明の好ましい分子重量範囲では、記載された化合物は殆どコロイド状シリカ粒子又は不溶性ゲルである。このような大きい寸法のコロイド状粒子および不溶性ゲルが請求された生物制御活性を提供するには大きな疑問がある。最初に出願して以来15年間、これら請求されたシリカ重合体の生物活性を確認する科学論文もなくまた実際使用もされていない。
4.発明の概要
本発明は、特別に構成された寸法がナノ寸法以下のシリカ粒子を持ち、従ってサブナノケイ酸(SNSA)として分類される生物活性ケイ酸に関するものである。この分類は下記一般式1中のサイズΦおよび重合度nで示され、それは直径Φ>5nmおよびn>2,000ナノサイズのシリカ粒子である。
【0023】
本発明のケイ酸SNSAの一般式Iは以下の通りである。
[SiOx(OH)4-2x]n (1)
ここで、
Siは、Q1,Q2,Q3およびQ4タイプのSi原子であり、
nは、12から2,000の間の整数を示し、また
x は、1.2から1.8の間の数を示し、また
そこでは、物質は内部コアと外部シェルからなり、また
そこでは、内部コア中には75%以上のQ4タイプのケイ素が含まれまた外部シェル中には75%以上のQ2およびQ3およびQ4タイプのケイ素が含まれる。
【0024】
本発明の物質は構造的に分子直径(Φ)が0.3<Φ<5nm、好ましくは0.6<Ф<3nmの範囲のケイ酸分子として記述される。本発明の生物学的活性ケイ酸における凝縮シリカ(SiOx)ユニットまたはより詳細に記述された[SiOx(OH)4-2x]nユニットの数nは、12<n<2000,好ましくは20<n<300である。従って本発明の生物活性サブナノケイ酸は、0.7−140kg/mol(KD)の範囲、好ましくは1.4−20kg/mol(KDa)の範囲でモル質量を有する。
【0025】
本発明の物質において必須の構造形態は、分子の「外部シェル」に配列され、稠密かつ均等に分布された遊離SiOH(シラノール)基を持った分子の回転楕円形または殆ど回転楕円形状にある。本発明の物質の外部シェルにおける異常に多い遊離SiOHは水中で高い溶解度(>5%m/m)を示し、オルトケイ酸の酸性度に比べて著しく高い酸性度の故にケイ「酸」としての分類が正当化される。本発明によればこの外部シェル上の夥しい数の遊離SiOH(シラノール)を持ったほぼ回転楕円形構造は、凝縮された(SiOx)nの「n」の値を驚異的に狭くすることで最適に達成される。シラノール結合の最高の表面密度を持ったほぼ回転楕円形の構造の安定性を得るための最適な範囲は12から2,000の範囲、好ましくは16から1,000、または19から400の範囲、最も好ましく最高の安定範囲としては28から128の範囲のn数の個別の「n」数値を持った凝縮[SiOx(OH)4-2x]nにより達成される。
【0026】
さらにまた、本発明は、式(I)の生物活性ケイ酸を好ましくは大規模入手が可能な先駆体からの合成によって製造する方法、および生物活性を有する本発明の物質の安定化と化学的な導出をする方法を提供するものである。
【0027】
本発明の物質においては、好ましくはそのシグナル伝達および膜輸送プロセスを含む蛋白質の構造および活性の改変が可能である。本発明のケイ酸の適用分野は一定のシグナル蛋白質および輸送ATPアーゼ又はATP駆動放出ポンプにおける可逆的なリン酸化の離脱機能に起因するかまたは関係する。本発明の物質は蛋白質のリン酸化を調節するかまたはP型ATPアーゼおよびヒトにおけるNa,K−ATPアーゼを忌避する強心ステロイドを忌避するために用いられるバナジン酸のような従来技術による薬剤に比べて相当程度の技術進歩を提供する。その機能は類似しているが本発明のシリカ製品は、毒性においても、従来技術のバナジン酸や強心剤に比べて医薬用途において決定的な利点がある。
【0028】
本発明の化合物は、ATP−アーゼポンプおよび幾つかの結合イオン好ましくは陽イオンと相互作用をする。ATPアーゼ蛋白質の強力な忌避作用を通して、本発明の物質は、ATPアーゼにより調整された胃酸過多やNa,K−ATPアーゼの強く関係した高血圧のような種々の心臓血管関連疾病の場合のようにこれらの薄膜ポンプでの機能障害に起因するかまたは関連する病状の診断に新しい方法を提供する。ATP制御の輸送蛋白質の影響によって、本発明の物質は、ABC輸送体の場合のような代謝物や身体異物の排除を調節することができる。
【0029】
本発明の物質の重要な適用は、蛋白質との相互作用および蛋白質の特有の構造範囲に対する独特の能力によってもたらされる。本発明のケイ酸物質による生体分子、好ましくは蛋白質またはグリコ蛋白質の構造および分子内または分子間の相互作用を変化させる。
【0030】
本発明のケイ酸物質の外表面または外部シェルにおける遊離シラノール基の高密度かつ均等な分布によって、本発明の物質の化学的または生体的特性は、pHやイオン強度に強く影響される。この本発明の物質のアルカリイオンの濃度からの構造依存性は、ここで記載される回収メカニズムによる細胞内又は細胞間のイオン濃度を調節するための生物学的活性ケイ酸物質のメカニズムを与える。本発明のケイ酸物質の蛋白質との独特な相互作用とその三次構造および生物学的性状調節によって本発明の物質は、すべてではないが、例示した高血圧、胃酸過多または糖尿病のような疾病の診断、予防、診察に応用することができる。さらに本発明の物質の治療への適用分野としては骨疾患、心疾患および神経変性病がある。
【0031】
本発明の物質の実際的な適用としては、蛋白質、好ましくは膜蛋白質、受容体蛋白質、シグナル蛋白質との相互作用により生化学および生理学的プロセスの改変が関係する。特定の蛋白質キナーゼまたはフォスファターゼの構造および特性を改変することによって、可逆的なリン酸化を与える。ここに記載された本発明の物質の性能は欠点のあるリン酸化プロセスに起因するか関連する特定の疾患の治療に利用できる。このメカニズムはここに開示された本発明の能力は糖尿病の病気の徴候をこの疾病の治療のための新しい提案を提供することにより低下させることで説明できる。
【0032】
本発明の構造と生物学的活性を持った一般式(I)のサブナノケイ酸(SNSA)をみるために個々に提供された一貫した実験的立証は、有毒性のバナジウム誘導体またはNa,K−ATPアーゼまたはH/K−ATPアーゼ阻害性抗酸剤のための強心ステロイドのような先行技術によるATPアーゼポンプ阻害物質と比較して顕著な技術的進歩が得られる。
5.好ましい実施の態様の詳細な説明
本発明の目的は構造と生物的機能に対する特定の調節に起因した蛋白質のような生体分子に特定的に相互作用をする物質を提供することにある。ここに記載された本発明の物質の対象とする主な目標は、好ましくは細胞内シグナリングと膜輸送をする可逆的リン酸化プロセスを含むような蛋白質である。
【0033】
溶液は、直径Φ>5を持つナノ粒子の直径よりも小さい直径を持った多凝縮(重合)させた水溶性ケイ酸である本発明の物質により提供され、それ故に本発明の物資はサブナノケイ酸(SNSA)として類別される。本発明の物質の特有のサイズおよび分子構造は、特に大きい生体分子、好ましくは、蛋白質とその構造および生物学的機能を改質することによって相互作用させる。この発見は、これまでの構造特定の生物学的作用が単一ケイ酸になく、そのオリゴまたは重合凝縮誘導体にもないことが確認されていないのでさらに以外である。本発明は、一般式(I)の物質の構造および特性、その製造法および安定化法、少なくとも1個の一般式(I)の物質からなる薬剤の組成および疾病の予防、診断および治療における適用方法を開示するものである。
【0034】
本発明のケイ酸物質はバナジン酸、強心ステロイド、抗酸剤、抗癌剤、ATP-アーゼ阻害剤、薬剤放出ポンプ阻害剤およびモノクローン抗体に基づく治療剤のような先行技術による化合物の欠点を克服するものであることを述べることは重要なことである。これらの先行技術による化合物は、蛋白質、好ましくはリン酸化によって含まれる物質と相互作用および蛋白質キナーゼやフォスファターゼのような膜輸送プロセスによって含まれる化合物あるいはATP-アーゼのATP-駆動ABC薬剤放出ポンプと相互作用すると述べられている。現状のSNSAの毒性潜在力(AT)は従来剤の毒性潜在力よりもその大きさが少なくとも1桁低く、現在に至るまで本発明のケイ酸SNSAについては望まれない影響は確認されていない。
5.1構造
本発明の物質の詳細な記述のためには、通常は記号QS (s=0−4)が個々のSi原子の結合型を表すために適用される。この類別において、Q4タイプのSi原子は、近接する酸素原子(s)を介して4個の隣接するSi原子が連結し、Q3では3個、Q2では2個、Q1では1個のSi原子が近接する酸素原子を通して連結する。残りのSi原子の価はSi−OH(シラノール)結合(s)に含まれる。従ってQ3タイプのSi原子は単一のSi−OH結合中に含まれ、Q2タイプのSiは2個並列型Si(OH)2に結合される。Q1タイプのSi原子は3個の−OH結合−Si(OH)3を随伴し、Q0タイプのSi原子を持ったケイ酸は、4個のSi(OH)4 であるが、一方においてQ4タイプSi原子は−OH基を持たない。
【0035】
本発明は下記一般式(I)で示される物質に関するものである。
[SiOx(OH)4-2x]n (1)
ここで、
Siは、Q1,Q2,Q3およびQ4タイプのSi原子であり、
nは、12から2,000の間の整数を示し、また
xは、1.2から1.8の間の数を示し、また
そこでは、物質は内部コアと外部シェルからなり、また
そこでは、内部コア中には75%以上のQ4タイプのケイ素が含まれまた外部シェル中には75%以上のQ2およびQ3およびQ4タイプのケイ素が含まれる。
【0036】
これは、一般式(I)の本発明の物質は、全Q4タイプのSi原子の75%以上からなる内部コアおよび全Q3およびQ2およびQ1タイプのSi原子一切の75%以上からなる内部コアまたは外部シェルによって構成されることが本発明の物質にとって必須であることを意味する。
【0037】
従って、本発明の物質は、75%以上のQ4タイプSi原子からなる内部コア構成物と75%以上のQ3およびQ2およびQ1タイプのSi原子からなる外部シェル構成物の層状構造として組み立てられる。
【0038】
結局、SNSA物質の内部は、75%以上、好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上のQ4タイプのSi原子を含む内部コアとして規定される。
従って、外部シェルは、Q3およびQ2およびQ1タイプのSi原子全体の75%以上からなるSNSA物質の一部として規定される。
【0039】
Q4タイプのSi原子で占められた内部コアとQ3およびQ2タイプのSi原子の外部シェルからなる回転楕円体形状を持った本発明のSNSA の構造設計は図3に示される。
本発明の物質は、長期安定性と低レベルの毒性によって特徴付けられた低モル質量凝縮ケイ酸として組み立てられている。オルトケイ酸および誘導体の連続したオリゴ化と重合により得られた他の物質の背景における局所的特性は、図4に示される。この図面は、単純なオリゴマー分子から高モル質量の重合シリカ粒子およびゲルの凝縮生成物の成長の大きさを概観的に示したものである。
【0040】
特性(寸法、モル質量、重合度、溶解度)によるケイ酸凝縮生成物の分類別を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
これらの構造的限定値は主として一般的に受容可能な限界値に相当するが、正確にはサブナノ粒子領域では正確性は低い。
従って本発明の生物活性物質はΦ≦0.3nm、好ましくはΦ≦0.6nmを持ったオリゴマー凝縮シリカ種およびΦ>5nm、好ましくはΦ>3nmのシリカナノ粒子の間の中間領域のサブナノケイ酸(SNSA)として規定される大きい分類に属する(表1)。
【0043】
従って、本発明のサブナノサイズのシリカ粒子は、0.3nmから10nm、好ましくは0.3nmから5nm、および最も好ましくは0.6nmから3nmの直径を有する。
実際に非常に多数の可能性のある同族体と増加する重合度「n」を持った等比数列での構造異性体からなる12<n<300、さらに20<n<300を持ったサブナノ粒子領域について注目することは重要なことである。ここに記載された本発明の生物学的活性SNSA物質は、サブナノ粒子領域において、考えられほとんど無限の構造選択の個々に非常に狭い下位集合のうちから構成される。
【0044】
本発明のサブナノ粒子寸法の凝縮ケイ酸分子種は、12<n<2,000、好ましくは14<n<1,500、さらに好ましくは18<n<500、さらにより好ましくは19<n<400、最も好ましくは20<n<300の重合度で、xは1.0および2.0の間の数で示される、化学式[SiOx(OH)4-2x]nを有する。
【0045】
本発明の化合物については、xは1.2から1.8の範囲、好ましくは1.3から1.7の範囲、さらに好ましくは1.4から1.6の範囲、最も好ましくは1.45から1.55の範囲である。最適なケースは、x=1.5であり、化学式[SiO1.5(OH)]nが得られる。
【0046】
「本発明の物質」は、安定した生物学的活性を有し、かつここで開示されるような構造基準(C1−C12)によって示すことができる分子種によってのみで分類別することができる。Φ≦5nm、好ましくはΦ≦3nm、モル質量≦120kg/mol(kDa)、好ましくは、≦20kg/mol(kDa)の境界よりも低い領域における意外に安定した生物学的活性種の発見は、先行技術で述べられたこの領域において非常に不安定なシリカ種に比べて重要な技術的進歩である。
【0047】
一般式(I)の本発明のSNSAの分類に適用され、非常に変化に富んだ不規則な構造を持ったシリカから識別される種構造基準(C1−C12)は、本発明によって規定され、以下のように述べられる。
C1 0.3≦Φ≦5nm、 好ましくは0.6≦Φ≦3nmの範囲の分子直径Φ(nm)を持った回転楕円形もしくはほぼ回転楕円形である。回転楕円形もしくはほぼ回転楕円形への近似は、対称もしくは均一なSi−O−SiおよびSi−OH結合の配置への傾向を反映している。本発明の物質は厳密な構造対象性を持つものではないが、その構造要素は好ましくは外部シェル上でのSi−OH基の規則的な交互分布を含めほぼ対称的である。図5は外部シェルにおいて遊離Si−OH基の均等化された分布を持った本発明のケイ酸分子の回転楕円体の形状を示したものである。
C2 0.7−140kg/mol(kDa)の範囲、好ましくは、1.0−100kg/mol(kDa)の範囲、さらに好ましくは1.2−70kg/mol(kDa)の範囲、またさらに好ましくは、1.3−40kg/mol(kDa)の範囲、最も好ましくは1.4−20kg/mol (kDa)、の範囲あるいは本発明の物質が分子種として特徴付けられるのを正当化する領域におけるモル質量。
C3 12≦n≦2,000の範囲、好ましくは16≦n≦1200の範囲、さらに好ましくは17≦n≦700、更により好ましくは、19≦n≦400の範囲、最も好ましくは、20≦n≦300の範囲の凝縮シリカユニットの数「n」である。さらに一般式(I)の可溶性物質が好ましい。水中溶解度はn=16からn=1200範囲の物質によって提供された。
【0048】
ここに開示されたケイ酸の分子寸法および安定性は、本出願の実施例によって示されるように、動的光散乱法(DSL)、核磁気共鳴装置(NMR)、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、粘度計、赤外線(IR)およびラマン分析器、蛍光スペクトル分析記、透過型電子顕微鏡装置(TEM)、N2吸収等温吸着曲線その他の技術のような物理的な方法によって特徴付けられる。
C4 Q3、Q2、Q1タイプのSi原子すべての合計値とQ4タイプのSi 原子の比率値は1.5および2.5の間、好ましくは1.75および2.25の間、さらに好ましくは、1.9および2.1の間、最も好ましくはほぼ2である。
【0049】
Q1タイプのSi原子のほとんどが外部シェル中に含まれるQ1タイプのSi原子のQ2タイプのSi原子に対する割合は、30%以下、好ましくは、20%以下、さらに好ましくは12%以下、最も好ましくは6%以下である。従って、もし別の指定がなければ、Q1タイプのSi 原子はQ2タイプのSi原子の合計中に含まれる。
【0050】
Q3タイプとQ2タイプ(Q1タイプを含む)のSi原子の比率値は0.5と1.5との間、好ましくは0.65と1.35との間、さらに好ましくは、0.8と1.2との間、最も好ましくは、0.9と1.1との間である。
【0051】
Q4タイプのSi原子の少なくとも75%、好ましくは80%、さらに好ましくは85%が内部コア中に含まれる。
Q3およびQ2タイプのSi原子のすべての少なくとも75%、好ましくは80%、さらに好ましくは85%は外部シェル中に含まれる。
C5 Q4、Q3、Q2タイプのSi原子の平衡した比率が、本発明のシリカ構造および生物学的活性の好ましい実施態様において考慮されている。平衡とはQ4、Q3、Q2タイプのSi原子が等しいか、1:1:1に極めて近いことを意味し、近いとは、理想的な平衡である1:1:1の比率から最大30%、好ましくは20%さらに好ましくは10%の偏差があるとして定義される。従って、Q4、Q3、Q2タイプのSi原子の理想的な平衡比率から容認される偏差は、最大1:0.7:0.7から1:1.3:1.3、好ましくは1:0.8:0.8から1:1.2:1.2、さらに好ましくは1:0.9:0.9から1:1.1:1.1である。1:1:1に近いQ4:Q3:Q2タイプのSi原子の平衡分布は29SiNMRスペクトルによって裏付けられている。
C6 ほぼ(1:1:1)の理想的な平衡比率を持った本発明の生物学的活性分子種の化学式は[SiO1.5(OH)n]で表される。この一般式は、n≦10の領域におけるプリズム型6量体での[Si6O9(OH)6]、立方体型8量体での、[Si8O12(OH)8]またはプリズム型での10量体での[Si10O20(OH)10]のような多凝縮シリカケージの一般式に類似している(図1参照)。類似の一般式を持ったこれらの先行技術の多環状シリカケージ種は、重要な技術進歩を達成する12<n<2000の領域におけるここで示されるような生物学的活性サブナノケイ酸のような生物学的活性を示さない。
【0052】
最適な比率(1:1:1)の平衡によって、相当量の遊離シラノール(Si−OH) 基はSI原子の全量とほぼ等しくなる。本発明の大量のシラノ基は本発明の物質の「ケイ酸」を決定的に正当化する。さらにこの遊離(Si)−OHの「n」の高い値は、本発明のサブナノ回転楕円体ケイ酸の好ましい構造的態様を可能にする。この条件はSNSA 物質の生体分子、好ましくはプロテンとの本発明の最適な相互作用にとってさらに必須である。
C7 本発明の構造の内殻は多かれ少なかれ、Q4Si原子の小型のシリカ骨組み(SiO2)によって形成される。この内殻の組立は、モノケイ酸または3個から6個のSi原子、好ましくは4個または5個のSi原子を持ったその単純な線型または環状誘導体である中央種ユニットによって始められる。もしくは、プリズム型6量体、立方体型8量体もしくはプリズム型10量体ケイ酸骨組みのようなケージ型多環状シリカユニットが種ユニットとして使用される。
C8 同様にQ4タイプのSi原子の内部シェルは種ユニットの近傍に形成されている。シクロシリカ種ユニットで始められ、各Q2タイプのSi元素は、いずれも2つのケイ酸ユニットで凝縮され、従って各連続したシェルは等比級数的に先のレベルのSi原子の2倍を含む。Q3Si原子を持った種としてケージ型シリカで始めると、近傍のシェルは同数のSi原子を持つようになる。直線的に凝縮されたケイ酸オリゴマーはそれらの混合Q2およびQ3タイプSi原子に基づいて異なる発展をする。ここにアウトラインを示すQ4タイプのSi原子を持った内部シェルの概略的な成長パターンを図6に示す。本発明の構造の殆どすべての態様において、層中のSi原子の数とタイプは以前の層におけるSi原子の数とタイプによって特定される。Q3およびQ2のSi原子を持った外部シェルの構造によって同様の数値的制限が存在する。これはいくらかの数値的な値、例えば比例級数を形成する数値は実施例に開示されたように層の構造において予定される。
【0053】
従って、12と2000との間のnの領域のすべての整数からの1つの計算値は、本発明のC1−C12の構造基準の達成のために好ましい。それは20から300の最小範囲または最大範囲の12から2000における凝縮されたケイ酸のn値の1つの好ましい計算値は他のものよりも一層好ましいことを意味する。
【0054】
意外なことに、生物学的活性を有する本発明のSNSAは、動的光分散(DLS)スペクトルでの鋭いピークによる立証として分子直径値の狭い分布が特徴付けられている。これは本発明の方法によって得られた生成物がサイズ排除クロマトグラフィによってさらに確認されたように、モル質量の非常に狭い分散に対応していることを意味している。「n」の計算値に対する本発明の構造の態様は分子構造の更なる規則性を示す実施例により述べられる。
【0055】
上述の構造的な特徴は、合成段階での特定の準備条件(濃度、PH値、温度、攪拌度)による幾つかの要因による本発明によって定められる。これらのパラメータはSNSAの種が発生する合成の「誘導」段階において区別してセットされ、これによって分子の制御的な成長が行われる。この段階内での操作パラメータの値と活動力(段階の持続時間により変化)は、SNSA の生成の結果が、一般的な操作条件のもとで、熱力学的に好ましい計算値付近の「n」凝縮度のきわめて狭い分布によって特徴付けられる。
【0056】
「安定」段階での条件は、SNSAの成長を停止し、生成物に当業者の認識よりも決定的に高い安定度を与えるように変性される。個々で開示される準備方法は、従来の方法とは著しく異なる方法であって、非常に大きいモル質量とシリカユニットの凝縮度「n」のより広いガウス分布が得られる。
【0057】
ここに開示された本発明の合成法によれば常に本発明の物質の混合物が生成し、これらの生成物は、請求項1に開示された制限によって規定される。従って、単一のn値を持った単一の化合物が合成されるのみではないことは当業者にとって明らかである。本発明の物質は、nが12から2000の最大範囲内、好ましくは、nが16から1200の範囲内、さらに好ましくは、nが18から500の範囲内、なおさらに好ましくは、19から400の範囲内、最も好ましくは20から300の範囲内のn値の狭い分布の混合物として分類される。
【0058】
従って、本発明の重要な態様は、従来技術による不活性な重合物および/またはコロイド状シリカ粒子に比べて、本発明の物質は、ここに開示された範囲内のn値の狭い分布を有する。本発明の物質は、明らかにnが12から2000の最大範囲を超えるガウス分布を持つものではない。もし本発明の物質の分析に動的光散乱(DLS)またはサイズ排除クロマトグラフ(SEC)のような分析方法を使用した場合は、個々に開示された範囲内に入る単一のn計算値に相当する本発明の物質の分子直径Φおよびモル質量Mrの狭い分布が検出され、n値は特有の好ましいn値付近の25%、好ましくは20%、さらに好ましくは15%異なる。従ってnが12から2000の最大範囲内において、本発明の物質は単一のn計算値の付近で25%、好ましくは20%、さらに好ましくは15%の比較的狭い分布で合成される。本発明の物質に本発明の合成を実施するとき、例えば、n値は36,45,92,96、180,192,288,360,450,552,654,720,810,990が本発明の物質の混合物における最も好ましい化合物であり、一方本発明の混合物の他の化合物は、同様には分布されないか12≦n≦2000の範囲内のガウス分布であり、むしろn値が、好ましいn値を持った化合物から25%以上、好ましくは20%、さらに好ましくは15%以上異ならない範囲内のn値を持った化合物が見られる。例えば、本発明の混合物においては、最も好ましい値が96で、すべての発明物質の約25%がこのn値を持ち、例えば本発明の混合物が最も好ましいn値が96ですべての発明物質の約25%がこのn値を持ち、残りの75%が12から2000のn値を持たない場合には、代わりにn値は好ましいn値の96付近を狭く分布する。「狭い分布」とは、n値が最も好ましいn値の約±25%、好ましくは±20%、さらに好ましくは±15%であることを意味する。上記の例に関しては、本発明の物質の25%についてn値が96であり、残りの75%の本発明の物質は72と120との間のn値(25%分布)、好ましくは77と115との間のn値(20%分布)、さらに好ましくは82と110との間のn値(15%分布)を持つ。
【0059】
従ってここで使用される用語「狭い分布(ROD)」とはROD=n−0.25nからROD=n+0.25n、好ましくはROD=n−0.20nからROD=n+0.20n、さらに好ましくはROD=n−0.15nからROD=n+0.15nの分布(ROD)範囲内の1つの個別の最も好ましいn値付近での本発明の物質の分布を云う。またさらに絶対数で定義することが好ましい場合には、分布の範囲はn値が600から2000の範囲では、ROD=n−125からn+125、好ましくはROD=n−100からn+100、さらに好ましくはROD=n−75からn+75、またn値が300から600の範囲では、ROD=n−60からn+60、好ましくはROD=n−40からn+40、さらに好ましくはROD=n−20からn+20、またn値が30から300の範囲では、ROD=n−30からn+30、好ましくはROD=n−20からn+20、さらに好ましくはROD=n−10からn+10である。
【0060】
さらに、特有でかつ好ましい個々のn値を持った物質は反応パラメータによって支持され、さらに反応時間や温度および濃度によってn=12からn=300の低い範囲で好ましいn値を持った物質が形成され、一方、他の反応パラメータはn=300からn=1000又は1500又は2000の高い範囲の好ましいn値に導くことを述べなくてはならない。
【0061】
しかし、特定の好ましいnの数とは関係なく、ここに開示され、規定された範囲内で本発明の混合物は実例をもたらし、本明細書で述べかつ実証されたように開示され立証された活性を示す。
C9 シクロシリカリングを含む4個または5個のSi原子を持った構成パターンユニットは、本発明の物質の構成において内部または外部シェルの構築に好ましい。他のパターンについては排除されないが、しかし3個のSi原子を持ったシクロシリカは構造に著しい稠密化と張力を与える。6個のSi原子を含むリングは排除されないが、しかしより大きいシクロシリカは全体の構造枠を緊密さと安定性を低下させる。構造的組立体の緊密な構成は、張力構造要素を欠くとともに内部空分子の選択的な全体的安定性を与える。
C10 稠密で均一に分布した高い遊離性のSi−OH基を持った外部表面は、本発明のSNSA種の生体分子、好ましくはプロテンとの相互作用を完成させるための決定的な構造的な要求である。遊離OH基はSi−O−Si結合によって連結されたQ3およびQ2タイプのSi原子によって作り上げられたシリカの枠組と結合する。Q3タイプのSi原子は1個の−OH基を、またQ2タイプのSi原子は2個の−OH基を持つので、Si−OH(シラノール)基の全数は、外部シェルにおけるSi原子のSi−OHの数より50%ほど高い。すべてのサブナノシリカ分子にとってシラノール基の数は最も好ましい一般式[SiO1.5(OH)n]に従ったSi「n」原子と等しい。
【0062】
本発明のSNSAの表面におけるSi−OH基の密度は、表面の平方ナノメータ(nm2)当たりのSi−OH基の数で表されるαOHによって規定される。ここに提示されたデータは、外部Si原子によって規定された領域の表面積A=R24πで計算された。VdW(ファン デル ワールス(Van der Waals))表面での計算は分子サイズの評価には十分であるが、SiOHの密度には十分でない。
【0063】
本発明のケイ酸の外部シェルにおけるシラノール基の密度は、αOH>2.5、好ましくはαOH>3.5の遊離Si−OH基/nm2の平均値で与えられる。非結晶シリカαOH>2のシラノール基の値は、遊離のシラノール基の化学誘導体化によって決められ3.0から6.0基/nm2の密度値が得られている。しかしながら、固体粒子によるこれらのαOH値は内部および外部Si−OH基の合計を反映するものであり、従って外部表面における遊離OH基の密度は相当に低い。
【0064】
非結晶シリカ粒子と内部および外部Si−OH基と比較すると、本発明のケイ酸分子における内部Si−OH基の貢献度はむしろ低い。外部シェルのQ3、Q2およびQ1に結合される遊離のSi−OH基の稠密で均一な配置によって(図7参照)本発明の生物学的活性ケイ酸は高い比率の内部シラノール基を持った先行技術のシリカ粒子に比べて決定的な技術的進歩を提供する。
【0065】
コンピュータのモデルデータは、外部表面において規則的にQ3およびQ2タイプのSi−OH基を変えるSi−OH基の分離はその不規則で無作為な配置として好ましいことを指摘している。さらに、この構造的特殊性は、生体分子、好ましくはプロテンとの相互作用の最適な態様に重要な貢献をしている。本発明の分子が外部Q3および表面におけるQ3およびQ2タイプのSi−OH基の比率は実施例に開示するようにIRスペクトルによって走査される。
C11 nの計算値は、外部シェルのSi原子によって規定された外部表面におけるSi−OH基/nm2の表面密度の計算によって示される。重合度の関数としてのSi−OH基の密度は一定の値ではなく、あるいは直線的な変化を示さない本発明は、幾つかの個々の重合度値「n」の意外な存在を開示する。高いシラノール密度を持ったこれらのn値は、本発明の記述における実施例に開示されている
C12 主な構造基準C1−C10の達成は、ここに開示したような範囲において第一の安定なケイ酸化合物が確認された一般式(I)の本発明の物質の安定性にとって必須であることを述べることは重要である。
【0066】
Q4:Q3およびQ2Si原子のほぼ平衡な比率のための本発明のケイ酸の外部シェルにおけるシラノール密度の計算は、一般式(I)におけるn値の関数として非線型変化を示す。このことは幾つかの「n」値が18<n<300の範囲からの他のものと同様に、シラノール基の稠密な分布と言う基準によく適合していることを示す。
5.2 調製と特性
物質の調製は以下の一般式(I)で示される。
【0067】
[SiOx(OH)4-2X]n
ここで、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の数を示す。
【0068】
物質の調製は以下のステップを含む:
a)無機シリコン化合物またはテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩を水または水溶剤混合液と混合するステップ、
b)60分間未満撹拌しながらpH値6.2−4.5で誘導段階を行うステップ、
c)直線的勾配で徐々にpHを減らしながら微調整してpH値4.5−3.8で凝縮段階を行うステップと、
d)pH値2.1±0.3またはpH>8.4に溶液のpH値を急速に変えて安定段階を行うステップ
を含み、
完全な調製を行うために必要な温度は4℃から8℃の範囲とすべきである。
【0069】
ステップC直線的勾配でpH値を徐々に減少させる操作が少なくとも5分間行われる。
本発明のさらなる態様は上記の方法で入手可能な物質である。
本発明の重要な実施態様は、好ましくは多く利用できるシリコン化合物から生物学的活性SNSA誘導体の選択的合成をすることである。また本発明は、大量にランダムに凝縮された低モル質量ケイ酸合成混合物または生物学的抽出物から生物学的活性SNSA因子を分離するための方法を提供することからなる。
【0070】
本発明の活性ケイ酸の調製はシリカ、アルカリケイ酸塩または4塩化ケイ素のようなシリコンハロゲン化物などの大量に入手可能な無機シリコン化合物から合成方法で行うことができる。合成のための別のタイプの出発物質は、テトラ・エチル・オルトケイ酸塩(TEOS)またはテトラ・メチル・オルトケイ酸塩(TMOS)に例示されるテトラ・アルコキシ・オルトケイ酸塩、またあるいはポリヒドロキシ化合物を持つ加水分解可能なシリコン複合体などのいくつかのシリコン有機誘導体である。
【0071】
1つの好ましい実施態様は、本発明の物質への「in situ」で合成されたモノケイ酸の変換を制御する多パラメータである。しかし先行技術の方法、すなわちアルカリケイ酸塩のプロトン付加反応や類似の方法で得られたモノケイ酸は、先行技術の文献に記載されるように高重合化生成物へ瞬時に変換される。
【0072】
本発明は、出発物質が瞬時に重合化されることを防ぎつつ、高い収率で、in situ で調製されたケイ酸を、本発明の生物学的活性サブナノケイ酸SNSAに変換する方法を開示する。本発明の各方法は、(i)目的ある低モル質量凝縮へと誘導する「誘導段階」(ii)制御されていない不規則な重合化せずに、本発明のSNSAの選択的で高意収率で調製を行う「凝縮段階」(iii)生成物が十分に安定される「安定段階」からなる。
【0073】
本発明のSNSAの調製方法の選択性と高生産性は厳密に制御された濃度、pH,温度、各反応ステップの所要時間により達成される。作業パラメータは、製造の各段階で区別して定められた。従って、本発明のSNSAのテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩Si(OR)4の選択加水分解と変換は、厳密に実施され制御される「誘導段階」、「凝縮段階」および「安定段階」からなる。
【0074】
1つの好ましい実施態様は、式中のRがメチル、エチル、プロピルまたは出発物質が0.02−0.6モル=L-1の範囲に凝縮されたブチルを示す式Si(OR)4を持ったテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩の変換である。Siテトラ・アルキル・オルトケイ酸塩からの本発明の調製はここに述べているように本発明に従って行われ、この「in situ」で生成されたケイ酸は本発明の物質へ目的ある変換を行い制御されない重合化を防ぐ。
【0075】
テトラ・アルキル・オルトケイ酸塩と水またはアルコールが入った水の反応の「誘導段階」では、4.5−6.2のpH値、好ましくは5.4±0.4のpH値が適用される。この誘導段階は短い期間であり、好ましくは10分間の長さで60分間より長くはかからず、その間強力に撹拌することが推奨される。次の「凝縮段階」では、4.5−3.8のpH値で微調整が必要であり、直線勾配に沿って少なくとも5分間で徐々に減少させる必要がある。
【0076】
本発明の重要な特徴は、本発明の物質の合成と安定におけるすべての段階で温度が厳密に制御されていることである。誘導段階の好ましい温度範囲は4℃から50℃で好ましくは15℃から40℃である。規定のpH値や温度値からの偏差と依存は、生成物の組成と活性により大きく変化する。本発明のシリカのより高い重合化を妨げるために凝縮プロセスを取りやめることは、溶液のpH値を2.1±0.3またはpH≧8.5に急速に変化させることで達成される。
【0077】
アルカリケイ酸塩、好ましくはケイ酸ナトリウムなどの別の大きいシリコン化合物あるいはアモルファスシリコンやケイ酸塩鉱物から本発明のサブナノケイ酸を調製することにおいても誘導、重合および安定に類似した段階が述べられている。
5.3 特徴
DLSとゼータ電位
本発明の凝縮ケイ酸種の動的光散乱(DLS)測定は、好ましい直径範囲0.6<Φ<3.0nmで安定種が存在することを示した。動的光散乱とゼータ電位を適用してSNSAの大きさを測定することで、pHと濃度に依存するシステムの安定性が詳細に確立された。ゼータ電位アセスメントと組み合わせたDLS技術は、大きさがΦ>3.0nmより大きい連合/凝集粒子の形成を制御するためにうまく適用された。
【0078】
凝縮に関するナノサイズ粒子の安定性はLondon-Van der Waals引力と静電反発力の平衡に依存することが知られている。静電反発はイオン強度と表面電位(ネルンスト電位)に依存し、懸濁液のpH値を調整することで変更できる。ネルンスト電位は、実験的に利用できないが、ゼータ(ζ)電位であるせん断面における界面動電位はモニターすることができる。ゼータ電位がおよそl30mVlより大きい場合には分散は一般的には安定であると見做され、一方粒子は等電点近くで凝集する傾向があり、それはゼータ電位がゼロのpHとして定義される。そのため、SNSAを含む懸濁液中のゼータ電位の測定は制御されたpH値で調べられた。
【0079】
本発明の凝縮ケイ酸種の動的光散乱(DLS)測定は、好ましい直径範囲0.6<Φ<3.0nmで安定種のが存在することを示した。
サイズ排除クロマトグラフィは溶液中のケイ酸オリゴマーとポリマーを分子サイズに基づいて分離することに基づいている。この方法は単量体および重合ケイ酸サンプルと比較して本発明の物質を特徴づけるために利用された。シリカベースのゲルは、生物学的活性ケイ酸との非常に強い不可逆の相互作用のために使用は勧められない。高性能サイズ排除クロマトグラフィ装置で固定相としての有機ポリマーベースのゲルを使って非常に良好で再現性のある結果が得られた。本発明の物質は紫外線、可視光領域で測定可能な吸収がないので、検知システムに基づく屈折率が適用された。
【0080】
本発明で開示された低モル質量凝縮ケイ酸種は、よく水に溶け、溶液はコロイド状で特定のpH値で室温で長期間非常に安定している。8.5から13.0の範囲の基準pHの安定性はさらなる凝縮を妨げる陰イオン化されたSi−O基の反発により起こる。生物学的活性SNSAの実験的ゼータ電位測定は、種が非常に安定して凝集しない表面陰電荷であることを確認するおよそ(−50mV)のゼータ電位値を提供した。
【0081】
意外にも本発明のサブナノ回転楕円形凝縮ケイ酸は、好ましくはpH1.8−2.2の酸性の範囲でもまた非常に安定する。特定の酸性pH範囲における重合化傾向は低く、pHが〜2.0でおよそゼロ荷電ポイントで凝縮傾向が低減されることで説明できる。上記で特定されるような基準および狭い酸性範囲の両方における安定性によれば、不溶性シリカ粒子とシリカゲルに自発的に重合する低分子濃度不安定ケイ酸種の先行技術と比較して、ここに開示されたサブナノケイ酸誘導体は明白な技術的進歩を有していることを意味する。
【0082】
ここに記載されたケイ酸の電荷依存安定性は、遊離Si−OH基の外部表面の処理にとりわけ影響される。基準pH値が塩基性の場合、媒体は外部表面に陰電荷の対称で密集した隔壁を提供する。従ってすべての分子は互いに反発し溶液は非常に安定を維持する。陰電荷カバーは本発明の物質の粒子の凝集と変換を防ぐのに非常に効果的な保護的役割を果たす。
【0083】
上に概要的に示した静電気因子の他に、本発明の物質は際立った熱力学安定性に対するさらに重大な構造的根拠を有している。実際には、本発明のケイ酸は主にQ4タイプのSi−O結合の小型内部シリカコアにより形成され、好ましくは表面に表れる遊離Si−OH基の最大数を持つ外部シェルにより囲まれている。遊離シラノール(Si−OH)結合と凝縮(Si−O−Si)基の相互交換は、分子内で行われるが、これはSi−OH基の外部処理よりも回転楕円形の好ましい安定性全体にはあまり影響しない。
【0084】
低い負のゼータ値(−50mV)は粒子が非常に安定し負の表面電荷を持つことを示す。ゼータ値が0に近づくと、粒子が安定せず凝集する傾向にあることを意味する。しかしこの現象は本発明の生物学的活性SNSAケイ酸の場合には生じない。ゼータ値が大きくなると粒子サイズも大きくなる。ゼータ値は溶剤の種類、測定溶液のpHおよび固体粒子の濃度と種類に依存する。本発明の場合には、ゼータ値は大きく負でpHは約9−9.5である。サンプルは定常濃度または定常pHで比較された。測定されたゼータ値の完全な再生およびSNSA粒子の流体力学的径は達成された。これは上に特定する状況で粒子が表面陰電荷されていて非常に安定しており、凝集しないことを意味する。
不活性支持物質の安定
加熱、先進的な真空乾燥、凍結乾燥や他の手続きにより本発明の水溶液から水を強力に除去することは生物学的活性の大きな損失となる。予想される原因は、Si−O−Si共有結合を構築し2000よりもn倍大きな粒子を形成することで水の多分子間排出(縮合)を起こしてしまうことである。
【0085】
本発明は不活性支持物質を用いて、あるいは不活性支持物質の上で乾燥が行われる場合、本発明のSNSA物質の活性は十分に維持することができることを示している。本発明の適切な支持物質は水溶性で医薬的に中性の固体または非揮発性の液体である。好ましい支持物質は、エチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトールに例示されるポリオールのような多ヒドロキシル化有機物質である。最も好ましい支持物質は、中性物質としてすでに医薬品製剤に許可されたもので、本発明の「医薬品製剤」の章に記載されている。Si−O−Siの同時形成下で、脱水を開始、支持または触媒しない、いかなる適切な基質も使用できることが好ましい。このような好ましい支持物質は中性物質で、正負電荷を持つ官能基のないことが好ましい。
【0086】
水溶液中または中性物質上での本発明のケイ酸の長期間の安定は、DLSとゼータ電位の定期的な評価およびATPアーゼ阻害測定により調査された。SNSA溶液は室温での数か月間の貯蔵で安定することが確認された。さらに、本発明の支持物質上でのSNSAの活性は少なくとも24か月完全に保存される。この本発明の不活性物質上での本発明の物質の長期間の安定は、疾病を予防または治療する際に本発明を適用する最適な形を提供する。
凝集
初期種が物理的処置(加熱、超音波)を施された場合または化学薬品(pH変化、希釈、塩)により改善される場合には可逆性と考えられるが、、本発明のサブナノ凝縮シリカ種は凝集をすることができる。シラノール基の新規の結合(Si−O−Si)によりSNSAをより高いモル質量種へ変換することで、不溶性シリカ粒子を形成する場合には不可逆性とすることができる。このプロセスは溶液のイオン濃度を上昇させる、すなわち無機塩類を添加により促進される。
粘性
粘性はオリゴマーとポリマー中のモノケイ酸を変換させる非常に高感度の方法である。ゾルとして分類されるシリカのコロイド溶液中の分散粒子の大きさを確立することが可能である。
NMR
核磁気共鳴(NMR)分光法は、外部磁場での核スピンの電波への反応に基づき、特定の型の原子の第一と第二の配位圏の研究にとりわけ応用することができる。NMRはノンゼロスピンを持つこれらの原子核のみに観察される。しかし各化学要素のほとんどにはこの要求に合う同位元素がある。マジック角回転技術は液体のみではなく固体でもNMR分光法をうまく適用させることができる。従って、ナノ粒子の凝固プロセスにおける中間種の構造、外部と内部表面活性部位多孔性ナノ物質、原子配位およびホストゲスト相互作用を研究するのにNMRは広く利用されている。Si原子の結合性についての情報は29SiNMRスペクトルの測定により得ることができる。
【0087】
これは、「s」がシロキサン(O−Si)結合で「4−s」がいくつかのSi−OH(シラノ−ル)基である因子Q5で表される。29SiNMRスペクトルには、Q4、Q3,Q2およびQ1タイプのSi原子に対応する生物学的活性ケイ酸化学シフト値が見出されている。このデータにより本発明の構造は好ましくは4次(Q4)Si原子により形成された内部コアと、Q3,Q2およびQ1タイプのSi原子により形成された外部シェルを持つことが確認されている。ガウス曲線を積分した割合によりQ4、Q3,Q2型Si原子のバランス比を求める。
IRとラマン分光法
フーリエ変換型赤外(FTIR)分光法とラマン分光法は電磁放射線を使った振動分光法の2つの別の理論である。FTIR分光法は、赤外線の吸収に基づき、一方ラマン分光法は原子振動による非弾性の可視光線またはほぼ可視光線を含むものである。両分光法技術は、短い範囲と中間範囲の配列に関する情報、すなわちシリカの相対位置などの、最隣接原子やより大きな集団での多面体の結合方法を示す情報を提供する。
【0088】
フーリエ変換型赤外(FTIR)分光法とラマン分光法は、サブナノメートルスケールで識別可能な指標となる原子クラスタから入射放射に対する異なる応答に基づくもので、シリカナノ粒子の構造分析に優れたツールである。様々な分光法の中で比較すると、ラマン分光法は非結晶性物質を検知して異なる結晶性シリカ物質を明らかにするという能力において有利である。さらに水は非弾性光散乱に乏しいが有機分子のラマン散乱断面積は非常に大きいので、ラマン分光法を水中で安定化された結晶性ナノ粒子の構造を証明するための方法として利用することが期待される。
【0089】
ラマン分光法は、密ナノ粒子のミクロンサイズの自己集合の構造的障害の度合を証明するものである。構造的な欠陥に関する実態はサンプルから集められたスペクトルから得られる。960cm-1の近くででのラマン散乱は、シリコン‐酸素点欠陥(破壊されたSi−O−Si結合)を示し、ナノ粒子の領域構造は250−650cm-1の範囲でSiO4環状に形成された複数要素バンドの形状に適合することで定量化されている。非結晶性シリカの主要なスペクトラルの特徴は、6,4,3それぞれの員環により形成された帯域はほぼ450cm-1であり、信号は495cm-1と606cm-1である。
【0090】
FTIR分光法のみで、表面ヒドロキシル基の様々なタイプを明らかに確認することができ、従って対応活性部位の数を定量化することができる。一般に、酸性部位を分析するために表面OH基のO−H結合延伸モードが使用される。急激なIRピークが3550−3800cm-1で観察され、ほぼ3745cm-1のピークが末端シラノ基で、またほぼ3615cm-1がSi(OH)酸性部位で生じる。
蛍光性
本発明のケイ酸の調剤は蛍光分光法によりモニターされた。このアッセイは、特定のインジケータPDMPO[2−(4−ピリジル)−5−((4−2−カルバモイルジメチルアミノエチル)メトキシ)−フェニルーオキサゾール]のスペクトル中に蛍光シフトと強度の増加をつくりだすシリカの重合化を観察することに基づく。これは蛍光シフトがPDMPOと高分子ケイ酸の相互作用によるものであると思われる。
【0091】
実際には、本発明の物質の製剤中にケイ酸の重合化をモニターするために、PDMPOの蛍光発光強度510nm(338nm exc.)が使用される。
安全性
本発明のケイ酸誘導体は、静脈内と腹腔内に単回投与したマウスとラットから判断すると体重1kgあたり240から300mg/kgの範囲のLD50値を持つ。強心ステロイド急性毒性値は大変高く、Digoxinは例えば体重1kgあたりLD50=0.1mg/kgである。ジギタリス配糖体の致死量は維持量の約20倍であるが、それは治療量と中毒量の狭い範囲を示す。
【0092】
先行技術のバナジン酸塩または強心ステロイドと比べて、本発明のケイ酸が毒性を減らすことは開示された物質の主要な利点である。先行技術のバナジン酸塩と比べて本発明の物質の明らかなより低い毒性は、新規の化合物のヒトの治療への適用に重要な利点を提供する。
5.4 生物学的活性
蛋白質との相互作用
ここに開示されている本発明のサブナノ凝縮ケイ酸の1つの重要な実際的な実施態様は、蛋白質、すなわち図8と図9に示す特定の構造領域を持つ蛋白質と相互作用する本発明の能力を結果の結果としてもたらされるものである。この相互作用は標的蛋白質の構造を修正して生物学的な特徴を変更する。あり得るメカニズムの1つとして、酵素の活性部位への作用薬のアクセスを妨げたり、または蛋白質の開不安定構造に近接することである。本発明のSNSAは、例えばリン酸の一部分を添加することを防いで暴露されていない活性部位を持つ閉鎖構造を安定させることにより、ATPフューエル酵素を抑制することができる(図8)。
【0093】
本発明の好ましい実施態様は、ここに記載されるSNSAと信号導入と膜輸送における可逆リン酸化プロセスに直接含まれる蛋白質の直接的な相互作用である。SNSAを持つ領域の分子間の相互作用により生成される蛋白質の内部構造の調整は、特に特定の生物学的活性を変更することができる。構造と生物学的活性についての本発明の調整は、先行技術である大きな直径を持つシリカナノ粒子の相互作用と比較して、確実な技術的進歩をもたらす。さらに重要な進歩は、先行技術の大きな非溶性シリカ粒子の異種相互作用とは異なる本発明の同種の相互作用である。
【0094】
とりわけ凝縮されたケイ素の重要な構造的な特徴は、図5に示すように、ほぼ回転楕円形で分子表面上でSi−OH結合のほとんどすべてが遊離結合を示すことである。0.6<Φ<3nmの範囲の好ましい直径を持つ本発明のサブナノケイ酸分子は、外面上でほとんどすべてがSi−OH基を示すことができる。小型内部シリカコア(Si−OH結合のない)と外表面上の密集した外側を向いたSi−OH結合により、本発明の物質は生体高分子、好ましくは蛋白質と相互作用するように最適に設計されている。
【0095】
好ましい分子直径Φ≦3nmを持つことで、本発明の凝縮ケイ酸はほぼすべての蛋白質よりもかなり小さい。SNSAがより大きな蛋白質分子と相互作用することは、例えばSNSAが蛋白質の確定された内部領域に結合しあるいは同一の分子内の2つ以上の領域に架橋する場合に分子内として分類することができる。別の好ましい実施態様は、例えば2つの類似または異なる蛋白質分子を架橋することで「分子内に」相互作用するSNSA分子が提供されることである。図10に示す固体基質としての大きなシリカナノ粒子(Φ>10nm)を持つ蛋白質の相互作用の従来技術と比較して、上に述べた両方の好ましい実施態様は大きな技術的進歩を意味する。本発明の物質のΦ<5nmの大きさは、通常相互作用する蛋白質よりも小さい。従って物質SNSAは、蛋白質のよく確定された構造領域であるいは構造領域間での、分子内相互作用にむしろ関与しているのである。相互作用の本発明の様態は、蛋白質のシリカナノ粒子の先行技術の相互作用と比べて明白な技術的な進歩を含んでいる。
【0096】
小型内部コアと外部シェル上に高密度の遊離Si−OH結合を持つ小さな回転楕円形は、蛋白質や他の生体高分子の本発明の相互作用の基本的な前提条件である。図8は、P型ATPアーゼの領域Pと領域Nを持つ本発明の分子の仮定される相互作用を示す。
【0097】
蛋白質と相互作用するように用いられる可逆リン酸化反応シリカナノ粒子を含む蛋白質と相互作用する先行技術のバナジン酸塩は、基質(キャリア)として分類されるが、それはバナジン酸塩の大きさΦ(>>5nm)は同等であるが、通常分子間ヒト炭酸脱水酵素III(hCAIII)を排除する単純蛋白質の大きさよりも極めて大きいからである。単純蛋白質は蛋白質変異体の最も安定したものであり、結合と非結合蛋白質間の動的平衡が確立し、そして次にシリカ粒子と混合を可能にしてくれる。
Na,K−ATPアーゼ
ここに開示されるサブナノケイ酸SNSAは、サブマイクロモル範囲のNa,K−ATPアーゼとII型のP型ATPアーゼによる効力のある無機阻害剤として認識された。SNSA因子は、Na,K−ATPアーゼの細胞内部位に結合することが見いだされ、この抑制はウアバイン結合には優位性がない。サブナノケイ酸と蛋白質領域「N」(ヌクレオチド結合)と領域「P」(リン酸結合)の相互作用についての本発明のメカニズムは、図8に示される。本発明のSNSAは、イオンポンプのE1構造のNa,K−ATPアーゼと相互作用し、最初の2つの細胞間カチオン結合部位の1つに平衡解離定数の変更を引き起こす構造的再配置が生じる。本発明のSNSAがNa,K−ATPアーゼのリン酸化サイクルへ介入するメカニズムは図9に示される。MCS抑制状態では、2つの非特定結合部位の1つに1つのカチオン(H+、Na+、K+)が結合されていることが見出された。また高Na+濃度では、別のNa+イオンが高Na+選択イオン結合部位に結合された。
Ca−ATPアーゼ
本発明の物質SNSAは、50−80nMのIC50で小胞体(SERCA)のCa−ATPアーゼポンプを抑制する。これは先行技術の例えばシクロピアゾン酸、2,5−(tブチル)―1,4−ベンゾヒドロキノン(tBuBHQ)またはシクロオキシゲナーゼー2阻害剤であるセレコキシブ、クルクミンおよびメリチンなどのSERCA阻害剤がマイクロモル(μM)範囲であることと比べて大きな進歩となる。本発明のケイ酸は先行技術のSERCA阻害剤のタプシガルギン(thapSigargin)(IC50がサブナノモル範囲)ほど効力はないが、ここに開示するSNSAは、実際の毒性が1000倍低い利点を有する。
【0098】
SNSAによるSR Ca−ATPアーゼの抑制は本発明の物質の蛋白質領域との相互作用と類似している。しかし、ヒル関数に当てはめると、ヒル係数nH=2.56は、異なる抑制メカニズムが生じることを示すNa,K−ATPアーゼの場合と比べてかなり高い。
【0099】
ナトリウムポンプの抑制メカニズムの相違は、含まれるアルカリイオンと本発明のSNSAに小さいが重要な相互作用を起こすことである。
H−ATPアーゼ
本発明の物質SNSAは、効力(IC50が80nMまで)で胃H+/K+−ATPアーゼ(胃プロトンポンプ)を抑制する。この酵素は電気的中性を交換する際に胃腺の内腔にH+を隠している壁細胞に集中している。本発明のケイ酸SNSAは、最近の抗酸化薬候補となる高い効力を持つ可逆H+/K+−ATPアーゼ阻害剤として開示されている。 膜ポンプとの可逆相互作用によりその薬理作用は、標的蛋白質と結合した後胃液酸度を低下させることができる。これは、例えば、オメプラゾールや、酵素に共有反応し特に可逆であるいは酵素に非共有結合する置換ベンゾイミダゾールなどの先行技術の合成プロトンポンプ阻害剤(PPI)に比べて重要な技術的進歩を示す。
蛋白質フォスファターゼPTENの抑制
ここに開示されるサブナノケイ酸SNSAは、腫瘍抑制PTEN(pHospHatase and tenSin homologue deleted on chromosome 10)を阻害する。このサブナノケイ酸SNSAは、二重活性を持つチロシンフォスファターゼで、蛋白質と脂質の両物質を脱リン酸化する。また例えばPtdIns(3)P,PtdIns(3,4)P2,PtdIns(3,4,5)P3などの3−リン酸化ホスファチジルイノシトール(PI)に対して高い特異性を持つ。細胞内のPtdIns (3,4,5)P3レベルを減少させることで、PTENはPI3Kの影響を弱めるので、それによりアポトーシスの原因となる特定の下流信号経路を終端させる。
【0100】
これらの効果をもたらすPI3K/PTEN信号の1つの作用因子は、ウイルス遺伝子蛋白質v−aktの哺乳動物相同物である蛋白質キナーゼB(PKB/Akt)である。PKBは、リン酸化反応を引き起こすPH領域にPI(3,4,5)P3を結合して成長因子の促進に応じてプラズマ膜により補強される。PKBは2つの別の部位、トレオニンー308(T308)とセリンー473(S473)を含み、これらはキナーゼによりリン酸化され、換言するとPI(3,4,5)により活性化される。PKBのリン酸化反応は、LY294002とWortmanninなどのPI3K阻害剤の影響を受けやすい。他方、PTEN阻害化合物は結果としてPKBのリン酸化反応を増大させる。
【0101】
実施例に開示されるように、SNSA120μg/mlは、蛋白質フォスファターゼPTENの抑制効果として説明されるPKBリン酸化反応を促進する。この効果はバナジン酸塩による効果と非常に類似しているが、本発明の物質は極めて毒性が低いという重要な利点を持つ。
SNSAの生物学的アッセイ
ここに開示される生物活性サブナノケイ酸SNSAは、とりわけヒトIgGとプロテインAなどの免疫グロブリン間相互作用に対して、固有のそして用量に依存した影響を及ぼす。この非常に驚くべき反応は、0.2から4μg/mlの濃度のIgG蛋白質で被覆されたプレートを使ってELISA技術により立証される。これらのプレートをアルカリ性フォスファターゼと結合させた蛋白質Aで処理し、PDNPでPBS−Tweenで洗浄すると、405nmのところに発色反応が認められ、これは比較対象としての定常的な定率光学濃度(OD)値と考えられる。
【0102】
IgGが被覆され洗浄されたプレートにSNSAの増加させながら1時間処理して、次に制御と同じ工程(洗浄、BSAで飽和、プロテインAの被覆)を施すことで、添付の実施例に示されるような測定光学濃度値の用量依存の効果の増大が認められる。この増加は、10−300ng/ml領域で線形であり、生物流体を含む本発明のSNSA物質のための高感度アッセイに適切な方法を提供する。
5.5 治療への適用
本発明の物質と本発明の物質を含む医薬製剤は医薬的に活性剤または活性成分として非常に有用であり、医学の分野において医療、予防、診断に使用することができる。
【0103】
さらに、一般式(I)の本物質は、ATPアーゼ、特にNa,K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼまたはH/K−ATPアーゼを抑制したりあるいは蛋白質キナーゼB/PTENシステムのようなキナーゼとフォスファターゼの作用を調節するのに有用である。さらに述べると、一般式(I)の本物質は、現在の医学で深刻な問題である抗生物質や細胞静止薬などの薬物に対して、生物が発達させた抵抗性の増大に本質的に関わっているATP結合カセット蛋白質に作用する。
【0104】
これらの活性により本発明の物質は、高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病、創傷治癒などの治療のための高い効力を持つ薬物と診断用化合物として有用である。
【0105】
さらに本発明の物質は、食欲をコントロールしたり創傷治癒に有用であり、さらに高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の予防および高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多の診断用に組成を調製するのにも有用である。
胃酸過多
本発明の物質は、IC50=0.8μg/mlのH/K−ATPアーゼを抑制するのに非常に効力の高い非毒性阻害剤である。SNSAは4−メチルヒスタアミンにより胃酸分泌反応を減少させることが知られている。本発明の物質SNSAは、0.01から25mg/kgの範囲の投与量でラットやイヌなどの哺乳動物に経口および非経口投与により作用する。本発明の物質は、抗コリンメカニズムでは作用しないので、ドライマウスや視力障害などの現在の抗酸薬の副作用は予期されない。そのため本発明の物質は、胃酸過多の管理や治療に有効である。
【0106】
胃食道逆流障害(GERD)は、食事と関連する頻繁にみられる病気であり、下部食道括約筋が閉鎖されたまま腹部からの酸が食道に逆流または押し戻される場合に起こる。その原因はしばしばはっきりしないが、恐らく胃酸の逆流の最も一般的な原因は胃酸の過剰生成である。本発明のサブナノケイ酸SNSAを好ましくは食事後に体重1kgあたり0.1−80mg/kg摂取すると、胃食道逆流障害(GERD)の発現を非常に効果的に抑えることができる。
高血圧
高血圧は医療従事者にとって治療の難しい主要な疾病である。高血圧は、心臓疾患、心不全、心臓麻痺、脳卒中および腎不全などの主要なリスク要因である。降圧療法は、高血圧にともなう疾病率や死亡率の上昇を低減または排除するのに効果的である。
【0107】
本発明のケイ酸物質は、本態性高血圧症を治療するために明白な治療の可能性を持つことが開示されている。この物質の高血圧の病理生理学における相互作用の主要なターゲットは、心臓血管と腎臓レベルでのNa,K−ATPアーゼであり、これらは従来あまり注目されていなかった。
【0108】
実験的観察によれば、SNSAは、プラズマ中にナトリウムイオンを回復する腎臓のナトリウムポンプを抑制するNa+を尿排泄することを高める。高血圧患者にとって、腎臓のNa,K−ATPアーゼの抑制とその後の利尿は正常なプラズマ量と血圧を回復させるものである。
【0109】
血管と心臓のNa,K−ATPアーゼを並列して抑制することは、それぞれナトリウムの排泄を増加させ利尿により血圧を低下させる効果に匹敵する高血圧への効果を結果として得る。
【0110】
本発明のケイ酸は、高血圧ラットの動脈血圧を低下させることを開示している。ケイ酸が血管あるいは心臓のナトリウムポンプに作用すると、腎臓のNa,K−ATPアーゼに選択的に作用するという結論を導くことができる。
糖尿病
インシュリンは標的細胞のプラズマ膜上の受容体に結合し、このインシュリン受容複合体が形成される場合には、ブドウ糖が標的細胞中に入ることができ、ブドウ糖はエネルギー源として使用されるか、またはエネルギー貯蔵のためにグリコーゲンに転換される。インシュリン受容体は蛋白質である。アルファとベータの2つの異なるペプチドユニットの2つの複製物からなる。1つのインシュリン分子は、各アルファサブユニットに結合する必要があり、この結合の後に、次にベータサブユニットが受容体の蛋白質の細胞質末端の形状を変化させる信号を送信する。この変化により細胞質蛋白質キナーゼ活性部位が露出され、ブドウ糖の摂取につながる他の反応を始めるインシュリン受容体物質のリン酸化を引き起こす。
【0111】
本発明の物質を糖尿病のマウスに投与することで、抗糖尿病の顕著な可能性が明らかにされた。ビスーL−グルタミンーバナジン酸塩複合体VGlu2と治療に使用された糖尿病治療薬ロシグリタゾンとを比較する試験が行われた。本発明のケイ酸誘導体SNSAは、糖尿病治療薬ロシグリタゾン(Rosglitazone)と同様にブドウ糖レベルを著しく減少させ、また使用されるバナジウムーグルタミン酸塩複合体VGlu2を著しく減少させる。このデータは本発明の物質が可能性のある抗糖尿病薬として無機塩類より有効であることを示している。
【0112】
SNSAの可能なメカニズムは、添付の実施例で示唆するように、インシュリン受容体(IR)と相互作用するインシュリン擬似作用である。これにはインシュリン受容体と結合するフォスフォチロシン フォスファターゼ PTP1Bの抑制を含めることができる。このフォスファターゼは、インシュリン信号とインシュリン感性を低下させるインシュリン受容体のリン酸化反応の程度を低下させる。PTP1Bはインシュリンの効果を模倣する。
食欲のコントロール
本発明のケイ酸は対照実験と比べて実験動物(ラット)で食糧摂取量を減らすことが見いだされている。観察される生理学的効果の作用メカニズムは、SNSAが胃中のグレリンの生成を減らすことができることである。あるいは、SNSAの生物活性はグレリン−NPY回路中の重要な信号化合物であるAMP依存性蛋白質キナーゼ(AMPK)に影響を及ぼす。このAMP依存性蛋白質キナーゼの修正あるいは信号回路の規定に関わる結合フォスファターゼの内の1つを修正することが、非常に効果的に食欲をコントロールするためにこの新規な治療戦略の目的であることが示唆されている。
【0113】
とりわけ動物実験の結果は、グルコース耐性を向上させ体重減少を促進する両方に対して非常に有望な戦略を提供し、また体重増加を促進する2型糖尿病のための現在ある他のほとんどの薬物に対して潜在的な有利性を提供することを示している。
癌
本発明のサブナノ凝縮ケイ酸は、様々なタイプの細胞培養のin vitroで示されたように毒性が低レベルであることが認められている。Jurkat細胞、ヒトとネズミのT−リンパ球、樹状細胞およびマクロファージの生存可能性は、50μモル濃度までSNSAにより著しくは変更されない。
【0114】
培養中の癌細胞は本発明のSNSA物質と異なる方法で反応する。標準HeLa細胞またはマウスMP細胞は、半数阻害濃度が0.1から20モルの範囲で抑制される。
これまでの研究では、細胞内遊離Ca2+(Cai)レベルを増加させる薬剤は、アンドロゲン非依存転移性前立腺がん細胞においてもアポトーシスを活性化させることができることが示されている。ここに開示されるSNSAは、カルシウムホメオスタシスを維持するために極めて重要なカルシウムATPアーゼポンプに対して有効な阻害剤であり、それ自体ではすべての細胞のタイプにアポトーシスを引き起こすことができる。比較実験のマウスの腫瘍の量が12日後に165%に増えるに対して、SNSAを処方したマウスの腫瘍は最初の量から45%減少した。
【0115】
蛋白質チロシンフォスファターゼ(PTPs)などの蛋白質フォスファターゼは癌関連信号プロセスに阻害効果と刺激効果の両方を示すことができる。さらに蛋白質フォスファターゼは、癌細胞の付着、血管への輸送、拡散や転移を制御するのに非常に重要な役割を持つ。このプロセスをさらに理解すると新規の治療のターゲットを確認することができる。本発明のサブナノケイ酸が攻撃的な癌細胞の分岐や拡散を効果的に減少させることが見出された。これは致命的な結果となるがんの転移を予防して制御するための新規の治療的アプローチを提供する。
薬剤排出ポンプ
ここに開示するケイ酸SNSSは、P糖蛋白質のようなATP駆動多剤排出ポンプを非常に効果的に抑制する。これは過剰発現された排出ポンプが癌細胞から蛍光染色を取り除くことを調べることでin vitroで確認された。排出ポンプを効果的に抑制することは、細胞毒性薬に対する獲得耐性を減少させて本発明の物質を癌の化学療法に適切に利用するものである。耐性に内在するメカニズは、細胞ホメオスタシスの制御に関連する機能を利用していると考えられる。ATP結合カセットトランスポーターファミリに属する形質膜薬剤排出トランスポータであるP−糖蛋白質が過剰発現することで腫瘍が多剤耐性するというのは1つの重要なメカニズムを示している。
【0116】
また細胞質と細胞内細胞小器官のpH勾配は抗腫瘍薬剤への耐性に関係する。酸性の細胞小器官内でまたは細胞外の環境内で薬物を隔離して中和することは1つのメカニズムとして提案されている。P−蛋白質のような多剤排出トランスポータを過剰発現する細胞と排出トランスポータを発現しない細胞の両方に、酸性の小胞体のターンオーバーが増えることは化学耐性のメカニズムのさらなる重要な特徴である。細胞毒性薬に耐性のある酸性の小胞体は、酸性の細胞小器官から薬剤を隔離するリソソーム型小胞体の酸性化を上昇させること、および分泌経路で細胞から薬剤を押出すことの両方に関与する。
骨粗鬆症、歯石
本発明のケイ素は物質として水酸アパタイト核形成を含むシリカ鉱化作用のための基質として作用することができる。この発見は骨の再生や歯石の形成を促進するために本発明のSNSAを適用する道を開くものである。
アルミニウム拮抗性によるアルツハイマー症
本発明の物質の好ましい実施態様は、アルツハイマー症におけるアミロイド斑の形成のような病状に含まれる蛋白質の好ましくない凝集やクロイツフェルトヤコブ病におけるプリオンの凝集の予防に関するものである。アルミニウム元素(Al)とアルミニウム塩は神経毒として認識され、アルツハイマー症を助長すると考えられる原因要素の1つであると見做されている。体重1kgあたり0.1から15mg/kg量の本発明のサブナノケイ酸SNSAを日常的に摂取すると、動物実験では消化管へのアルミニウムの取り込みを減らすことができるので、従ってこの金属を、脳細胞組織を含む体内に蓄積することを遅らせることができる。経口摂取によりSNSAを使用することでアルミニウムの尿中排泄(87.0から54.2nモル/mモルのクレアチニン)は著しく減少する(p=0.021)。尿中のアルミニウムの低減は、アルツハイマー病においてアルミニウムの体内蓄積を減らすために非侵襲的な治療として本発明のケイ酸を将来長期間にわたり使用することの有用性を裏付けるものである。この結果により、ここに開示されるSNSAが、アルツハイマー症やクロイツフェルトヤコブ病などの神経変性の病気を予防したり、治療するための防御要素が得られるシリコンの栄養補給の適切な生体利用形態であることが確認される。
創傷治癒
上皮成長因子(EGF)のようないくつかの成長因子は、成長因子受容体に結合し受容体の構造を変えることで、創傷治癒において重要な役割を果たす。この変更はPI3キナーゼ(PI3K)のような多くの細胞内蛋白質のリン酸化反応を起こす蛋白質キナーゼを活性化する。
【0117】
本発明の物質SNSAは主にファスファターゼの結合を抑制することでPI3キナーゼの作用を改善することが証明された。これによりここに開示されたケイ酸SNSAを、未対処の医療ニーズである創傷治癒を促進するために適用することができる。
5.6 医薬品製剤
治療と予防におけるここで開示されているケイ酸SNSAの発明的な適用事例においては、それを安定した医薬品形態で提供することが必要である。本発明の好ましい実施態様においては、無機あるいは有機のいずれでもよい不活性基質上でSNSAを使用する。好ましい基質材料はいくつかの脂肪族ポリオール類(マニトール、ソルビトール、キシリトール、ペンタエリスリトール及びスレイトール等)、糖類、澱粉などである。
【0118】
ここで開示されているケイ酸SNSAの発明的な適用に用いられるのに適している基質としては、ラクトース、サクロース、マニトール、及びソルビトールなどの糖類や小麦、コーンライス、及びジャガイモなどから得られる澱粉、そして微結晶性セルロースなどのセルロース類が含まれる。組成物中の基質の量は組成物全体の約5−約95重量%で、好ましくは約25−約75重量%、より好ましくは約30−約60重量%、そして最も好ましくは約40−約50重量%である。
【0119】
他の本発明による医薬品製剤は本発明による物質SNSAとアミノ酸、アミノ糖類、あるいはアミノ−アルコールなどの有機窒素含有化合物との結合に基づいている。
一般式(1)で示される化合物は、オプションとして基本的に非毒性の薬学的に許容される基質、賦形剤、補助剤、あるいは希釈剤を用いて薬学的活性塩として投与することもできる。本発明による医薬品は公知の方法で、適切な投与量レベルで、通常の固体あるいは液体基質あるいは希釈剤と通常の薬学的に作られる補助剤内でつくられる。好ましい薬剤及び製剤は経口投与あるいは皮膚あるいは経皮投与に適した投与形態で提供される。これらの投与形態には、例えば、錠剤、タブレット、フィルム・タブレット、被覆タブレット、カプセル、粉末あるいはデポジット剤などの形状が含まれる。その他の経口投与形態も可能である。
【0120】
本発明によるケイ酸物質あるいは医薬品製剤あるいはそれらの物質を含む剤形は、吸入、注射(静脈、腹膜内、筋肉内、皮下)、上皮あるいは粘膜ライニング(口腔粘膜、直腸、及び子宮上皮ライニング、鼻咽腔粘膜、腸粘膜)を介しての吸収、経口、経腸、経皮、局所的、皮内、胃腸内、子宮内、血管内、鼻腔内、口内、舌下経由、あるいは薬学技術で利用可能なその他の手段で投与することができる。
【0121】
これらの開示されている方法を用いて、一般式(1)で示される少なくとも1つの物質あるいはその薬学的に許容される塩を活性成分として含んでいる本発明の医薬品組成物は、通常、意図する投与形態、つまり、経口用タブレット、カプセル(固体充填、準固体充填あるいは液体充填)、粉末、経口ゲル、座薬、分散性顆粒、シロップなどの剤形に対して適切に選択されると共に、通常の薬剤規範に合致して選択される適切な基材物質と共に投与される。例えば、タブレットあるいはカプセルの形態で経口投与するためには、活性成分をいずれかの経口用非毒性の薬学的に許容される不活性基質、例えばラクトース、澱粉、サクロース、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マニトール、エチルアルコール(液体形態)などと組み合わせることができる。さらに、望ましい、あるいは必要な場合は、適切な結合剤、潤滑剤、分解剤、及び発色剤をその混合物に組み込むこともできる。粉末及び錠剤は本発明の組成物を約5−約95%の割合で含むことができる。
【0122】
適切な結合剤は澱粉、ゼラチン、天然糖、コーン甘味剤、アカシアやアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン・グリコール及びロウなどの天然あるいは人工のガムなどがある。これらの投与形態で使用するために用いられる潤滑剤としては、ホウ酸、ナトリウムベンゾエート、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。分解剤としては、澱粉、メチルセルロース、グアールガムなどがある。必要な場合、甘味剤や香料及び保存剤も含むこともできる。上に述べた用語のいくつか、つまり、分解剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤などについてはより以下により詳細に述べる。
【0123】
さらに、本発明の組成物は、治療効果、つまり抗ヒスタミン活性などを最適化するために、1つあるいは複数の成分あるいは活性成分の放出量を管理しながら放出するように抑制放出形態で調製することができる。抑制放出用に適した形状としては、それぞれの層の分解速度が異なっており、活性成分を含浸させた制御放出ポリマー性基材を含み、そうした含浸あるいはカプセル化多孔ポリマー性基質を含んでいる複数の層で構成される層状タブレットなどがある。
【0124】
液状製剤としては溶液、懸濁液、及びエマルジョンがある。一例としては、非経口注射用の水あるいは水−プロピレン溶液や、甘味剤や経口溶液ようの混濁剤、懸濁剤、エマルジョンの添加などがある。液体形状の製剤としては鼻腔内投与のための溶液も含まれる。
【0125】
吸入に適したエアロゾル製剤は溶液や粉末形態の固体を含んでいてもよく、それらは例えば窒素などの不活性圧縮ガスなどの薬学的に許容される基剤と組み合わせてもよい。
座薬をつくるためには、ココアバターなどの脂肪酸とグリセリドの混合物などの低温溶解性ロウを最初に溶解して、活性成分を攪拌などの混合方式で均等に分散させる。解けた均等の混合物を適切なサイズの型に注ぎ込み、冷却して固化する。
【0126】
使用直前に、経口投与あるいは非経口投与用の液状製剤に変えられることを意図した液状製剤も含まれる。そうした液状製剤には溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。
1つの好ましい形態は皮膚あるいは経皮用パッチ(貼付剤)である。本発明による物質は経皮的にも投与可能である。経皮用組成物はクリーム、エアロゾル及び/又はエマルジョンの形態をとることができ、この目的のために従来の技術で用いられているマトリックスあるいはレザーバー・タイプの経皮用パッチに含めることが出来る。
【0127】
本発明のパッチ剤に適した溶媒は、浄水、アセトンやブタノンや2−ペンタノン及び3−ペンタノンなどのケトン類;エタノールやプロパノールやイソプロパノールやブタノールやイソブタノールやセク−ブタノールやテルト・ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル・エステル、酢酸プロピルエステルなどのエステル類から選択することができる。さらに、上記溶媒の混合物を用いることもできる。上に述べた溶媒あるいは溶媒混合物と共に適切な共溶媒を用いることもでき、その共溶媒は乳酸、サリチル酸、サクシン酸、尿素、マギリョール(登録商標)812(Chemische Werke Huls, Mari,ドイツ)、トリグリセリド類、エチルオレエート、グリセリルモノドデカノエート、オレイン、オレエート、マクロゴル(登録商標)6000、及びレシチンで構成される群から選択することができる。
【0128】
接着剤内での溶媒の量あるいは溶媒と共溶媒の総量は重量ベースでその接着剤の0.5−70%の範囲であればよく、好ましくは重量ベースでその接着剤の約3−約60%、より好ましくは約10−約50重量%、さらに好ましくは約20−約40重量%、そして最も好ましくは重量ベースでその接着剤の約10−約30%の範囲である。
【0129】
カプセルという用語は、上記活性成分で構成される組成物を保持あるいは包むための、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、あるいは変性ゼラチン、あるいは澱粉でできた特別のコンテナーあるいは容器を意味している。硬いシェルのカプセルは、通常、ゲル強度が比較的高い骨あるいは豚皮ゼラチンの混合物でつくられる。このカプセル自体は少量の染料、不透明化剤、可塑剤、及び保存剤などを含んでいてもよい。
【0130】
タブレットとは活性成分と適切な希釈剤を含んだ、圧縮あるいは成型された容量形態を意味する。タブレットは湿式造粒法、乾式造粒法、あるいは当業者に公知の成形方法で得られる混合物や顆粒を圧縮することでつくることができる。
【0131】
経口用ゲルとは親水性の準固体基質内に分散あるいは溶解された活性成分を意味する。
構成用粉末とは活性成分と水や果汁内に懸濁させることができる適切な希釈剤を含む粉末混合体を意味する。
【0132】
分解剤という用語は組成物に加えてそれがバラバラになって(分解して)医薬成分を放出できるようにするための物質を意味する。適切な分解剤には澱粉、「ナトリウム・カルボキシメチル澱粉などの「冷水可溶性」修正澱粉、イナゴマメ、カラヤ、グアル、トラガカント及び寒天などの天然及び人造ガム、メチルセルロース及びナトリウム・カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、それにナトリウム・クロスカルメローズなどのナトリウム・セルロースなどのセルロース誘導体、アルギニン酸及びアルギン酸ナトリウム、ベントナイトなどの粘土、そして沸騰性混合物などである。組成物内の分解剤の量はその組成物に対して重量ベースで約1−約40%の範囲であってよく、好ましくは2−約30%、より好ましくは約3−20%、そして最も好ましくは約5−約10%である。
【0133】
結合剤とは粉末を結合あるいは「接着」して顆粒を形成することにより接着性にし、その剤形内での「接着剤」として機能する物質を意味する。結合剤は希釈剤や充填剤にすでに存在する接着力を増強する。
【0134】
本発明の一般式(I)による物質の製剤及び投与に関する技術は「Remington's PHarmaceutical Sciences」 Mack Publishing Co., Easton PAに見出すことができる。本発明の少なくとも1つの物質及び/又は薬学的に許容できるその塩を含む適切な組成物は、適切な液体薬学基質内にその組成物を溶解した溶液でもよいし、タブレット、錠剤、フィルム・タブレット、被覆タブレット、糖衣錠、カプセル、粉末及びデポジット、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。
SNSAは蛋白質に基づく治療の効果を向上させる
治療用蛋白質は特に抗リューマチ及び抗癌治療領域で医薬品市場のかなりの部分を占めるに至っている。その高度に個別的な生物活性と厳密に定義された治療特性は非蛋白質性薬剤物質と比較して非常に大きな利点を有している。しかしながら、蛋白質製剤には重要な欠陥があり、それはそれらの薬品の生化学的性質と強い関連性がある。オリゴペプチドやポリペプチドなどのモル質量が小さな蛋白質は、生きている生物の酵素ネットワークによって急速に分解されてしまうので、その利用可能性はかなり低減されてしまう。抗リューマチ薬などのモル質量が大きな蛋白質の適用は感染や悪影響の頻度の増大という傾向と関連している。蛋白質に基づく癌治療の重大な欠陥はそれらの免疫原性、つまり、それらがホスト生物による抗−抗体を生成して蛋白質製剤の効果を徐々に無効にしてしまう傾向と関連している。
【0135】
サイズがナノ以下のケイ酸はペプチド及び蛋白質とこれまでになかった反応を行うことで、いくつかのペプチドと蛋白質の構造と性質をかなり修正することができる。これらの相互作用は治療用蛋白質の利用可能性と生分解性に相当程度の影響を及ぼすことができ、それらの治療目的での適用において実際的な利点をもたらしてくれる。
【0136】
蛋白質治療の効果を改善するための本発明によるSNSAの適用には、SNSA
とインシュリンや血管腸ペプチド(VIP)などの小型ペプチド、あるいは抗リューマチ治療におけるAbatacept、Adalimumab、Certolizumab、Etanercent、Golinumab、Infliximabなどとの組み合わせ、あるいはCetuximab、Gemtuzumab、herceptin、Ibritumomab、あるいはTituximabとの組み合わせなども可能である。
微量要素ケイ素のための栄養補助剤としてのSNSA
ケイ素は生物系内には普遍的に存在しており、その濃度は生きている生物の(0.05−3.5%)の範囲である。種々の形態のケイ素、そしてSiとOの組み合わせはいくつかの藻類スポンジ及び植物の固体構造の基本的な成分である。ケイ素は接続組織合成と骨結晶化において不可欠の役割を果たしているが、そのメカニズムはまだそれほど理解されていない。ヒトの通常の栄養摂取における一日あたりのシリカの摂取量はほぼ20−50mgの範囲で、同じ量のケイ素が主として尿によって排出される。栄養性ケイ素の主な供給源は水を含む植物やその他の飲料物である。
【0137】
高齢の人々のケイ素がケイ素を取り込む能力が低下していく傾向は、骨収縮や接続組織関連の疾病の頻度の増大と関連していると思われる。ヒトにおいてはケイ素欠乏が臨床的にどのような影響を及ぼすかについてはまだ明らかではないが、高齢の生物の栄養素からケイ素を取り込む能力の低下については、十分に明らかにされている。本発明によるナノサイズ以下のケイ酸(SNSA)は、細胞膜を透過し、ほとんどのタイプの細胞で、細胞内濃度が細胞外の環境と均衡するので、生物学的に利用可能な天然のケイ酸を豊富に提供することができる。
6.
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】先行技術の化学構造:ケイ酸の線形、分岐環状、多重環状ケージ型凝縮オリゴマー性の誘導体。
【図2】不安定な低モル質量オリゴマーと固体粒子あるいはアモルファス・ポリマー(シリカゲル)に急速に変換される水溶性高級オリゴマーをつくりだすオルトケイ酸のポリマー化(多重凝縮)のスキーム。
【図3】内部コアが主としてQ4タイプのSi原子で構成され、外部シェルがQ3及びQ2タイプのSi原子及び隣接−OH基で構成されている、本発明の物質の構造的実施例。
【図4】SNSAが低モル質量ケイ酸種と5nm以上の大きさのシリカ粒子の間で示してある、凝縮ケイ酸誘導体の全容を示す三次元図。。
【図5】内径1.45nmに対応する間隔を充填した分子モデルで示してある、本発明によるサブナノケイ酸SNSA構造の球面形状。
【図6】シクロテトラ・ケイ酸単位からの本発明のSNSA分子の内部シェル形成のスキームであり、最初の2つの層は4+8=12個のQ4タイプのSi原子を含んでおり、形状的に変化していき、全部で24個のQ3及びQ4タイプのSi原子で完了させることができる。
【図7】本発明によるサブナノケイ酸分子を示すボール−スティック・モデルであり、球体の外面上でのSi−OH基の均等な分布を示している。Q3及びQ2タイプのSi原子と隣接−OH基はランダムに分布しているが、統計的に見れば均等分布で、特定の空間グループ形成についての偏りは示されていない。
【図8】本発明におけるケイ酸SNSAとATPアーゼ蛋白質のヌクレオチド(N)及びフォスファターゼ(P)との相互作用のメカニズム。
【図9】本発明によるサブナノケイ酸SNSA(直径:16nm)のCAIII蛋白質(29kDa)との分子内相互作用への関与。
【図10】従来技術における直径12nmのシリカナノ粒子とヒト免疫グロブリンIgGとの相互作用と本発明におけるSNSAとIgGの相互作用の比較。
【図11】式Si36O90H36で示される本発明のサブナノケイ酸のスティック・ボール・モデルで示す構造式。
【図12】式Si46O115H46で示される本発明のケイ酸SNSAの空間充填モデルで示す分子モデル。
【図13】式Si42O100H32で示される本発明のサブナノケイ酸のボール・スティック・モデルで示す分子構造。
【図14】直径2.2nmを有しモル質量6.2kDaに対応するSNSA b−118の動的光散乱DLS図とゼータ電位。
【図15】標準曲線値から推定されるモル質量4.2kDaのSNSA(b−101)のサイズ排除クロマトグラフィ図。
【図16】PEG標準によるサイズ排除クロマトグラフィ標準曲線。
【図17】PTEチューブ内で記録された水中の本発明によるケイ酸SNSA(b101)の29Si NMRスペクトル。
【図18】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNSAによるウサギ骨髄Na+、K+−ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図19】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNS b−101によるSR Ca2+−ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図20】半数阻害濃度(IC50)値の測定によるSNS b−101によるH+/K+ATPアーゼの濃度依存阻害。
【図21】SNSAとリン酸化−脱リン酸化プロセスのメカニズムをAKT1及びAKT2としても知られている蛋白質キナーゼPKBで示す。
【図22】THP1癌細胞内のPKBリン酸化に対するSNSAの影響をバナジン酸ナトリウムと過バナジン酸ナトリウムと比較。
【図23】蛋白質フォスファターゼPTEN/AKTシステムに対するSNSAの影響と、Fcと蛋白質A間の相互作用に対するSNSAのELISAで評価した影響による光学密度のウォートマンニン(Wortmanin)(AKT阻害剤として知られる)の薬物依存増大効果との比較。
【図24】THP1癌細胞内のERKリン酸化に対するSNSAの影響をバナジン酸塩とそのペルヒドロール複合体と比較。
【図25】IgGと酵素ラベル蛋白質Aとの間の相互作用に対する本発明のSNSAの薬物依存影響度に基づくELISAアッセイ方式。
【図26】IgGと蛋白質Aとの間の相互作用に対するSNSAの影響をELISAで評価した光学密度の薬物依存の増大。
【図27】Fcと蛋白質A間の相互作用に対するSNSAの影響をELISAで評価した光学密度の薬物依存の増大。
【図28】フィリップス社CM 20 TEMで記録したSNSA(b−119)の透過電子顕微鏡画像であり、加速:200kV、倍率:480,000倍。
【図29】BRUKERのTensor 37スペクトロメータを用いてART技術で記録したSNSAサンプルb−131のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル。
【図30】pH2で固体基質上でのSNSA溶液の長期保存における安定性。Na,K−ATPアーゼの阻害によるアセスメント(実施例22)。
【図31】ラットでの糖尿病モデルで誘発されたストレプトゾトシンで評価されたSNSAの抗糖尿病効果(実施例23)。
【図32】擬似インシュリンあるいはPTP1B阻害剤としてのSNSAの抗糖尿病メカニズム。
【図33】乳癌細胞MB−435の分岐に対する2つの用量でのSNSAの効果。
【発明を実施するための形態】
【0139】
実施例
実施例1
Si36O90H36で示される本発明によるサブナノケイ酸の構造は図1のボール・スティック・モデルで示されている。大きなボールは酸素元素への中間のSi原子、小さな白いボールは水素原子への中間のSi原子を示している。
実施例2
空間充填モデル(図12)で示す式Si46O115H46の本発明によるサブナノケイ酸の構造。大きな球はSi原子であり、中間のOと白い小さな球は水素。
実施例3
式Si40O100H32で示される本発明のサブナノケイ酸の構造。図13にボール・スティック・モデルで示してある。大きな球はO原子への中間にあるSi原子で、小さな白い球はH原子への中間のSi原子。
実施例4A
テトラ−アルキル−オルソ−シリケートからのSNSAの調製
ABCRから購入した29.5ml (200mMol)のテトラメトキシシランSi(OMe)4を500ml丸底ボトルPTE容器内で100mlの蒸留水と混合した。誘導段階で、少量の希釈酢酸をゆっくり加えてpHは6.2から4.1に調整した。誘導段階での温度は5分未満の時間で42℃に上昇された。凝縮段階では、溶液のpHを4.1から3.9に調整し、温度を42℃から25℃に低下させた。凝縮段階の継続時間はサイズ排除クロマトグラフィSECによる工程管理データに基づいて、40−50分の間に設定された。安定化段階の始めの時点で、溶液のpHを1N NaOHを用いて9.0に急速に上昇させた。TMOSの加水分解で得られたメタノールをゆっくり加熱される水槽(40−45℃)を用いて真空回転蒸発器(Buchi Rotavap)で取り除いた。最終的に得られた溶液のpHは0.1N NaOH溶液を用いて8.9−9.1の範囲に調整した。
【0140】
最終生成物のサブナノケイ酸内における含有量を、モル質量がより高いポリマー性副産物を確認するサイズ排除クロマトグラフィで評価した。動的光散乱(DLS)によってSNSAの量アセスメントを行ったところ、1.6nmで鋭いピークが存在していることが示され、モル質量がより高い関連要素は存在しなかった。
実施例4B
水溶性アルカリケイ酸塩からのSNSAの調製
市販のケイ酸ナトリウム(試薬グレード、Sigma -Aldrich)10mlを水で1:10で希釈してSiO2溶液(含有量:2.7%)を得た。この希釈溶液100mlをポリプロピレン・フラスコに入れて、外部バスで冷却して、同様に冷却した1N HCl溶液で処理して、誘導段階の最後に10分間かけて、8−10℃から20℃への温度勾配でpHを急速に2とした。pHを4.0として38±2℃の温度で、凝縮段階を30分間行った。1NNaOHを用いてpHを9.2以上に急速に上げることで安定化が達成された。
実施例5
6gの粉末シリカゲル60(Sigma Aldrich)を50mlの1N NaOHに懸濁させた。ろ過し、冷却した(8−10℃)の最終溶液をゆっくり加えて事前に中性洗浄したタイプAmberite 120Aの陽イオン樹脂で攪拌したところ、溶液のpHは4.1±0.2に上昇した。真空ろ過で上澄液を急速に分離した。この誘導段階の後、溶液の温度を8−10℃から40±2℃で非線形勾配で加熱した。凝縮段階は32−35℃の温度範囲で60分間行った。最終的に得られた溶液を1Nの塩酸を加えて安定化させたところ、pHは2.1となった。
実施例6
SNSAの動的光散乱及びゼータ電位
Malvern Instruments社のZetaster装置を用いて、SNSA(バッチ116)の動的光散乱及びゼータ電位についての評価を行った。合成バッチ116によって提供された濃度24.0mg/mlのSNSAストック溶液から、測定サンプルを希釈した。分子直径が1.6nmでモル質量4.1kDaのサンプルが得られた。
実施例7
SNSAの動的光散乱及びゼータ電位
Malvern Instruments社のZetaster装置を用いて、SNSA(バッチ118)の動的光散乱及びゼータ電位についての評価を行った。合成バッチ118によって提供された濃度24.0mg/mlのSNSAストック溶液から、測定サンプルを希釈した。分子直径が1.6nmでモル質量4.1kDaのサンプルが得られた。このSNSAサンプルに対してデータは分子直径が2.2nmであること、そしてモル質量が6.2kg/mol(kDa)であることを示した(図14)。
実施例8
SNSAのサイズ排除クロマトグラフィ分析
図15のサイズ排除クロマトグラフィをSNSAサンプル・バッチ118に対して行った。使用機材:Kontron Instruments Pump System 525、TSKゲルG2500 PWXLカラム(寸法:300x7.8mm)、溶媒:水、流速:0.5ml/min、検出:Jasco屈折率検出装置・RI−2031プラス、SECでの測定保持時間11.2分値とポリエチレン・グリコール標準曲線との相関性。図16は本発明による物質サンプルSNSA−118が6.2kDaに相当することを示している。SEC法は製造プロセスと長時間保存における生成物の安定性に対する厳密な管理を可能にしてくれる。
【0141】
これらのデータは図14に示されているサンプルSNSA b−118のDLS図との相関性を持っており、分子直径は2.2nmという狭い範囲で示されており、これはモル質量6.2kDaにほぼ相当し、n値は92−96の範囲である。
実施例9
サイズ排除クロマトグラフィ標準曲線
図16に示す保持時間とモル質量の関係を示しているサイズ排除クロマトグラフィ標準曲線は以下の条件で得たものである。使用機材:Kontron Instruments Pump System 525、TSKゲルG2500 PWXLカラム(寸法:300x7.8mm)、溶媒:水、流速:0.5 ml/min、検出:Jasco屈折率検出装置・RI−2031プラス。
【0142】
標準曲線を作成するために、市販のポリ−エチレン−グリコール(PEG)、ポリ−スチロール−スルホネート、あるいはポリアクリル酸のサンプルをそれぞれ20−80μlのサンプルを用いた。図16はPEG標準の基づくデータを示している。
実施例10
SNSAの29Si NMRスペクトル調査
液体サンプルのNMRスペクトルを100.6MHzで作動するJEOL Eclipse 400NMRスペクトロメータで集めた。比較のために、それらのサンプルの固体状態29Si CP−MSAS NMRスペクトルを4mmプローブを用いて、59.6MHzで作動するBruker MSL 300 スペクトロメータに記録した。クロス分極測定のために、5.1μsのn/2パルス遅延、10msの接触時間、そして12sの循環遅延を用いた。通常のNMRの共通「ガラス・ヒル」を回避するために、PTEF(テフロン)チューブで測定を行った。
【0143】
図17は、水中24mg/mlの濃度でのSNSAサンプルb−109の29Si NMRスペクトルを示している。
実施例11
SNSAはウサギ骨髄Na,K−ATPアーゼを抑制する
高濃度のNa,K−ATPアーゼによる薄膜はラビットエンザイムに対して37℃で2,000から2,400μmol P1/h/mg蛋白質の範囲の特殊なATPアーゼ活性を提供する外側骨髄からから生成された。Na,K−ATPアーゼの酵素活性は25mMのイミダゾール(pH 7.2)、100mMのNaCl、10mMのKCl、5mMのMgCl2、1.5mMのNa2ATP、5nMのNa,K−ATPアーゼ、2mMのPEP、450単位/mlのピルビン酸IC50nase及び乳酸デハイドロデジェナーゼ、さらに最初に80μM NADHを含む緩衝液内で判定された。すべての実験は37℃の温度で行われた。
【0144】
阻害剤がない場合の酵素活性を基準として用いた。SNSプローブによるラビットNa,K−ATPアーゼの抑制を図18に示してある。この酵素活性の濃度依存抑制効果を用いてSNSの半抑制濃度IC50を計算したところ、0.32−0.5μg/mLの値が得られた。SNSAサンプル(b−118)に対してサイズ排除クロマトグラフィでモル質量Mrは6.2kDaと計算され、また、IC50は0.45μg/mLの値が得られた。結果として、このサンプルのIC50は72ナノモル/Lと判定された。SNAのこの抑制ポテンシャルはバナジン酸塩のそれとほぼ同じで、同じ酵素に対して1.0μMOL/LのIC50を示す2つの水溶性心臓グリコシドであるウアバイン及びヘレブリンよりは10倍以上高かった。
【0145】
ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma-Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイはSNSAによっては影響を受けなかった。SNS化合物の抑制作用は阻害剤溶液を加えた(1−10μl)のキュベットに上記緩衝液を混合している際に十分に発揮された。ウアバインが過剰に存在していると、Na,K−ATPアーゼが十分に抑制され、このことはSDS電気泳動でさらに制御されたのでその酵素製剤の純度が高かったことを示した(データは示さず)。標準化個別活性はSNSAを少しづつ増やしながら追加した場合の残留活性と基準活性との比率で計算した。
実施例12
SNSAによるウサギ骨髄Ca−ATPアーゼの抑制
Ca−ATPアーゼはウサギ腰筋筋肉から作成し、すべての手順は4℃以下の温度で行われた。生成された薄膜内の蛋白質含有率は前に述べた手順で判定され、最終密度勾配分離後に、2−3mg/mlの範囲であることが分かった。固有酵素活性は20℃で約2μmol P1/h/mg蛋白質であった。
【0146】
酵素活性は、25mM HEPES、1mM MgCl2、50mM KCl、及び0.2mM Ca2+を含む緩衝液を用いて、Na,K−ATPアーゼの場合と同様に、結合ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイによって判定された(図19)。ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社(Mannheim)から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma-Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。
【0147】
単離された試料のバックグランド酵素活性は1μMのtharpSigarginを加えて得られた。Ca−ATPアーゼ試料の固有活性は20℃及びpH7.5でほぼ1.8単位/mgであった(加水分解されたATPの1.8μMol/mg蛋白質/分に相当)。
実施例13
SNSAによるブタ胃H/K−ATPアーゼの抑制
これまでに公開されている方法を用いて豚胃粘膜から胃H,K−ATPアーゼを得た。この方法では分画及び密度勾配遠心分離が用いられた。胃から粗胃粘膜薄膜を集めて0.25Mサクロース、5nm PIPES/Tris及び1mM EGTAを含みpHが6.8の溶液内に均一に分散した。この均一化されたのもをSrovall GSAロータ内で45分間、11,000rpmの回転速度で遠心分離した。上澄液をBeckman (Fullerton,CA)のタイプ30ロータで1時間、30,000rpmの回転速度で遠心分離した。ミクロソーム・ペレットを0.25Mサクロース、5mM PIPES/Tris及び1mM EGTAを含む溶液(pH6.8)に再懸濁させた。
【0148】
このミクロソーム懸濁液をZ−60帯状ロータを用いて精製した。単離された粒子内で、H,K−ATPアーゼの90%は細胞質を上側に向けた体側壁細胞の方向を向いていた。H,K−ATPアーゼの固有ATPアーゼ活性をピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロジェナーゼ・アッセイによって判定した。ホスホエノルピルビエート(PEP)、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロジェナーゼ、NADH及びATP(ジナトリウム塩)はRoche社(Mannheim)から提供を受けた。その他の試薬はすべてMerck (Darmstadt)あるいはSigma -Aldrich (Deisenhofen)から購入したもので、最高品質のものであった。H,K−ATPアーゼ含有粒子試料の固有活性は37℃で1時間経過した後、総蛋白質1ミリグラムあたり80−100mmol Piの範囲であった。IC50値はKによって刺激されたATPアーゼ活性を50%抑制する阻害剤濃度に基づいて定義した。0.78μg/mlというIC50値はOriginTM 5.0を用いて得られた実験データにS字状結腸の機能に関する非線形最小二乗を適用することによって計算された。サンプル・サイズは3回のアッセイに基づいて判定され、それぞれのアッセイは各化合物の3つのサンプルを用いて測定された。
【0149】
0.78μg/mlという図形的に判定された半抑制濃度IC50を図20に示す。
実施例14
PTEN(クロモソーム10上でのホスフェート及びテンシン)に対するSNSAの活性
試料: NIH3T3線維芽細胞(LGC Promochem, ATCC)、Dulbecco's Modified Eagle's Media (DMEM: Sigma社提供)、新生子牛の血清(NCS: GIBCO Invitrogen社提供)、ウォートマンニン(Wortmannin、Calbiochem社提供)、抗P-PKB (S373)抗体(Cell Signalling社提供)、抗Mass-PKB抗体(Upstate社提供)及びECLウェスターン・ブロッティング分析システム(Amersham Biosciences社提供)
方法: 線維芽細胞NIH3T3を密度が十分になるまで6ウェル・プレート内で成長させた。その後、それらの細胞をその蛋白質キナーゼB(PKB)代謝機能と0%DMEM内で一昼夜枯渇させた。テストを開始する前に、培養液を取り除いて、PKBの化を刺激するために新生子牛の血清(NCS)を加えた。1.5%血清を加えた後、細胞を5分間培養した後、200nmウォートマンニン、PI3K阻害剤、あるいはSNSA b−101(120μg/ml)を線維芽細胞に加えて、25分間培養してから、PBSで洗浄して取り除いた。最終的に、細胞を4xSDSゲル付加緩衝液で溶解して、10分間煮沸した。
【0150】
すべての細胞溶解物サンプルを9%SDS-PAGE (Laemmli et al,)にかけて、ニトロセルロース膜に移してから、TBST緩衝液内に5%の濃度でミルク粉末を溶かしたもので30分間ブロックした。抗PKB抗体(1:1000)あるいは抗ホスホPKB(S473)抗体(1:2000)をTBST内に3%のミルクを溶かした溶液で4℃の温度で一昼夜その薄膜を培養することで、ウェスターン・ブロット分析を行った。その後、その薄膜をTBST緩衝液で10分間、少なくとも3回洗浄した。最後に、TBST内に3%の濃度でミルク粉末を溶かした溶液内で、ホースラディッシュ・ペロキシダーゼ(BIORAD)(1:1000)と結合させた二次抗マウス血清を用いて、室温で1時間培養した。薄膜をTBST緩衝液で3回、各10分間洗浄した。最後に、ECL溶液(Amersham Biosciences)でウェスターン・ブロットが形成され、信号を富士フィルム社のデジタル・ブラック・ボックスで検出した。
【0151】
結果: 本発明のケイ酸SNSAを120μg/ml用いたところ、PKB脱リン酸化が明確に促進された(図21)。このことは、PI3K抑制標準ウォートマンニン(Wortmanin)と比較してほぼ類似した実験で証明されたPTEN(図22)に対する抑制効果として説明できるであろう(図23)。
実施例15
TPH1内でのERK−フォスファターゼに対するSNSAの活性
白血病細胞下部THP1を処理した後、SNSAは信号発信を増幅させ、ERK1およびERK2活性化(リン酸化)をもたらした。SNSA (b−101)の効果はERK1およびERK2の活性化によるバナジン酸塩の効果と非常に類似している。H2O2によるバナジウム酸ナトリウムのペロキシ化はERK1およびERK2の活性化を協力に促進する(図24)。逆に、H2O2でSNSAを処理するとERKに対する影響は弱まり、このことはSNSAがバナジン酸塩と比較してペロキシ化に対してそれほど影響を受けないことを示している。
【0152】
SNSAによる処理後のTHP1細胞の増殖は、24時間後及び48時間後にもそれほどの変化は認められなかった。観察を開始してから96時間後に増殖のわずかな抑制が観察された。SNSAは癌THP1細胞の生存可能性を抑止しない(C=成長培養液mlあたり160μl)。 バナジン酸塩と比較して、SNSAは細胞に対して毒性を示さないことははっきりしている。
【0153】
SNSAで処理された癌細胞BC細胞株BT20はEGFRリン酸化を若干増大させた。
実施例16
SNSAと蛋白質との相互作用
生物活性ケイ酸SNSAとヒトIgG蛋白質との相互作用を、以下の手順でELISA技術で定量的に評価した。
【0154】
96ウェルELISAプレートをヒトIgG(Sigma 14506)の1μg/ml溶液200μlを炭酸ナトリウム緩衝液、pH 9.5 (40mM NaCO3および60mM NaHCO3)に溶かしたもので被覆し、4℃で一昼夜培養した。翌日、溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄した。そして次に、PBS内で200μlの2%BSAを用いて室温で培養して、遊離結合サイトを飽和させた。1時間後にBSA溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、さらにPBSで3回洗浄した。ウェルは事前に希釈したSNSAのストック溶液(b−118)を1000−10ng/mlの割合で処理した。室温で2時間SNSAで培養して、取り除いたあと、PBS&0.05% Tween20で3回、PBSで3回洗浄した。
【0155】
1ウェルあたり100μlの蛋白質Aを用いて室温で2時間培養し、アルカリ性フォスファターゼ共役(Sigma P-7488) をPBSに1:2000の割合で希釈した。溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、H2Oで3回洗浄した。各ウェルで100μlの基質溶液pNPP (Sigma N1891)を用いて室温で120分間培養し、405nmでの光学密度(OD)をMRX Microplate Reader (Dynatech Laboratories)を用いて測定した。
【0156】
SNSAの精密なアッセイを行うための方法を、ELISA法で得られた結果と共に図25にします。これらのウェルを蛋白質Aと選択的に反応するIgG(20μg/ウェル)を用いて培養したので、すべてのウェルで同じ強度の発色反応がもたらされるだろうと予想された。驚くべきことに、溶液に加えられる本発明のケイ酸の量に比例して発色反応の強度が増大した。明らかに、OD曲線はSNSAの1mlあたり10ngから300ngの範囲で濃度に比例して増大し(図26)、SNSAの濃度がより高くなったときだけ変化の割合が減少した。IgG分子と蛋白質Aとの相互作用の、このSNSAの容量に依存した増大に関する観察は、高い応用可能性を示すものである。というのは、それは生物由来のものを含めて種々のサンプルでのナノグラム範囲での本発明のSNSA の非常に精密はアッセイを可能にしてくれるからである。
実施例17
SNSAのアッセイ
96ウェルELISAプレートをChromePureヒトIgG Fcフラグメント(Dianova)100μg/ml溶液を炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5) (40mM Na2CO3および60mM NaHCO3)に溶かしたもの200μlで被覆して、4℃で一昼夜培養した。翌日に溶液を取り出して、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄した後、さらにBSAを2%の濃度でPBSに溶かしたもの200μlで室温で培養して、結合サイトを飽和させた。1時間後にBSA溶液を取り除いて、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回洗浄して、さらにPBSで3回洗浄した。これらのウェルを1000−10ng/mlの範囲で事前に希釈したストック溶液SNSA(b−118)100μlで処理した。SNSAで室温で2時間で培養した後、取り出してPBS&0.05% Tween20で3回、そしてPBSで3回洗浄した。蛋白質A−アルカリ性フォスファターゼ共役(Sigma P−7488)をPBS内に1:2000の割合で希釈させたものを1ウェルあたり100μl用いて室温で2時間培養した。溶液を取り出し、プレートをPBS&0.05% Tween20で3回、そしてH2Oで3回洗浄した。各ウェルを100μlの基質溶液pNPP(Sigma N1891)を用いて室温で120分間培養し、405nmでの光学密度(OD)をMRX Microplate Reader (Dynatech laboratories)で測定した。
【0157】
図27に示す図はヒトFcフラグメントを用いてELISA法で得た結果を示している。ウェルを蛋白質Aと選択的に反応する同じ量のFc(20μg)を用いて培養した後、すべてのウェル内で同じ強度の発色反応が起きることが予想された。驚くべきことに、溶液に加えられる本発明のケイ酸の量に比例して発色反応の強度が増大した。明らかに、OD曲線はSNSAの1mlあたり10nから300ngの範囲で濃度に比例して増大した。知られている濃度のSNSAで得られた標準曲線で、1−1000ng/mlの範囲の未知の濃度でのSNSAの定量アッセイを行うことができた。
実施例18
糖尿モデルへのSNSの適用
糖尿病マウスdb/dbに体重1kgあたり24mgの用量でSNSA(b−118)を投与したところ、投与から2時間以内に血液グルコース・レベルが48%低下し、さらにバナジン酸塩はさらに減少し(52.5%)、そして糖尿病薬は22%低下した。SNSAによる血液グルコース・レベルの長期的減少は賦形剤だけで措置した個体と比較して、投与から24時間及び48時間後にそれぞれ19%及とわずかなものであった。このテストでのSNSAの長期効果は48時間後にでもBGLを32%低下させるbis−L−バナジウム酸グルタミルより弱かった。
実施例20
透過電子顕微鏡(TEM)によるSNSAの特徴づけ
サブナノケイ酸溶液の標本をドロップ・コーティングして、400メッシュ銅グリッド(Ted Pella)上に支承されたカーボン被覆パルロディオン・フィルム上に沈着させて、制御された条件下で乾燥させた。TEM測定はPhillips社CM透過電子顕微鏡で行われ、磁界はナノ・ケイ酸フィルム表面と平行にかけられた。
【0158】
200kVの加速電圧で調査されたSNSA標本の特徴的なTEM画像(図28)が得られた。倍率は480,000倍であった。この図は、回転楕円形のシリカ種の存在を示しており、その分子直径は2.5−4.0nmの範囲で、分子直径が5.0nmより大きい通常のシリカナノ粒子よりはっきりと小さかった。
【0159】
用いられた透過電子顕微鏡技術は、溶媒液を急速に蒸発させた後、実際に「固体」粒子を示した。実際に、SNSA溶液を急速に「脱水」すると、溶媒液分子を取り除くだけでなく、凝縮されたケイ酸分子内及び分子間の水も除去した。これたの分子内及び分子間の水の凝縮は通常の種と比較してSNSA誘導体を構造的に改変して団粒化させた。
実施例21
フーリエ変換IR顕微鏡によるSNSAの特徴づけ
フーリエ変換インフラ・レッド(FTIR)顕微鏡を用いて、本発明によるサブナノ・ケイ酸の特徴づけを行った。スペクトルはBRUCKER-Optics社(Rosenheim, Germany)のTensor 37 FTIRスペクトロメータを用い、40000−400cm-1の範囲で、解像度4cm-1でATR Miracle Pike法を用いて記録した。
【0160】
サンプルは水1mlあたり24mgの濃度のSNSA(b130およびb131)ストック溶液から、2枚のポリエチレン・フォイルに鋏まれた薄い液体フィルムとして得られた。PEフォイルと溶媒のスペクトルは別々に測定され、バックグランドとして差し引かれた。ガウス−ローレンツSUM関数を用いてピーク曲線あてはめ(fitting)を行った。
【0161】
結果:水性溶液内でSNSA(b−130)標本のFTIRスペクトルを図29に示す。このスペクトルは、本発明で開示されているような構造を有する溶解SNSAに関して予想されたように、1300と800/cmの間に主要赤外線吸収帯を含んでいる。
【0162】
1130/cmでの最も主要な帯は本発明で示されているQ4タイプのケイ素原子に対応する内部のSi−O−Si結合の非対称伸縮振動のせいであろうと判断される。この吸収帯はいくつかの個別ピークが重なったものである。1130/cmでのこの帯を1192/cm、1160/cm、及び1119/cmでのピークに当てはめることは満足すべきものと判断された。
【0163】
1017/cmの強いピークは1087/cmでの非対称伸縮振動T03と942/cmでのシランール基の伸縮振動の間にある。サイズが5nmより大きなコロイド状シリカ粒子を含んだシリカ・ゾルにおいては、この帯の強度はより低く、そのピークは1060/cmに移動しており、SNSAのスペルトルには示されていない。同様に、固体シリカ粒子の外面のSi−O−Si結合に対応する1060/cmでのIR吸収帯も存在していない。
【0164】
回転楕円形表面上の遊離Si−OH基が高密度で存在している本発明のSNSA分子の構造を証明するさらなる証拠は、880/cmの位置にさらにIR帯が高頻度で存在していることである。本発明によるサブナノケイ酸のフーリエ変換赤外線スペクトルはここで述べられているそれらの構造と一致している。これには、Q4:Q3及びQ2タイプのケイ素原子間の仮想均衡比及び回転楕円形状分子の外部シェル上に高密度で存在している遊離シラノール基が含まれる。
実施例22
長期保存におけるSNSAの安定性
本発明のケイ酸(SNSA)サンプルを長期間保存した場合の安定性をウサギの骨髄から単離されたNa,K−ATPアーゼに対する抑制ポテンシャルについて実験的に判定することで調べた。このテスト法は本願明細書の実施例11に詳細に述べてある。
【0165】
3つの異なったSNSA試料を8ヶ月室温で保存した場合の安定性について調べ、それぞれの測定セット用に作成されたばかりの標準ウアベイン8H2O(Sigma-Munich)サンプルの抑制ポテンシャルと比較した。心臓ステロイド・ウアベインの平均IC50は0.72μg/mlでのもので、この標準のIC50の1.36あるいは1μmol/Lに相当する。
【0166】
1) SNSA (b109) 23.8mg/ml、pH=2.0−2.1
2) SNSA (b111) 24.2mg/ml、pH=8.9−9.1
3) SNSA (b102) 固体基盤としてのSorbitol (Sigma)上に4.8%m/mの割合で沈着
これらのサンプルの抑制ポテンシャルは実施例11で定義したようにIC50として各測定セットに対して示されている。固体基盤上に沈着されたSNSAの場合、IC50はその溶液の実際のSNSA含有量に基づいて計算された。
【0167】
図30の図はこの研究の結果を示している。やや酸性のpH2.0の場合の本発明によるサブナノケイ酸の安定性は非常に高い。4−5ヶ月保存した場合だけ、活性のかなりの低減が観察される。pHが9.0以上の塩基性の場合も、本発明によるSNSAの安定性について、同様のことが言える。本発明による固体基板上に沈着された本発明によるSNSA物質の安定性が実質的に変わらない点も注目に値する。
実施例23
SNSAは糖尿病モデルSTZの血液グルコースを減少させる
本発明によるサブナノケイ酸の経口投与がストレプトゾトシン(STZ)で誘発させた糖尿病ラット・モデルでの上昇した血液グルコースを低減できるかどうかをどうかを調べた。SNSAの推定効果をこの糖尿病モデルで事前に確認されているバナジウム酸Lグルタミン複合体の効果と比較した。
【0168】
20匹の糖尿病にかかっていないウィスター(Wister)ラット(体重:185−205g)を各個体に体重1kgあたり50mgの用量でストレプトゾトシン(STZ)を静脈注射を1回注射した。
【0169】
STZ投与から5日目に、措置されたラットはそれらの糖尿病の病状に対応した血液グルコース・レベルの上昇(>250mg/dL)を示した。STZで誘発された糖尿病を有するラットは適用された治療法に応じて、SNSAグループ(6匹)、バナジン酸塩グループ(3匹)、トリグリタゾン・グループ(4匹)、比較対象グループ(3匹)の4つのグループに分けられた。毎日の用量は、SNSAグループの場合は体重1kgあたり12.5mg、トリグリタゾン・グループの場合は体重1kgあたり20mg、バナジン酸塩−bis−L−グルタミン複合体[VO3(Glm)2]グループの場合は体重1kgあたり25mgであった。比較対象グループには同じ量の賦形剤を与えた。SNSAグループのうちの1匹は「糖尿病」レベル以下で、研究対象から外された。
【0170】
結果: 治療の開始から1224、及び48時間後に評価された平均グルコース・レベル値を図31に示す。
STZ誘発糖尿病モデルに関する実験は、本発明によるケイ酸SNSAが糖尿病を持った個体での血液グルコース・レベルをかなり低下させた。バナジン酸塩及び比較対象として用いられた糖尿病トリグリタゾンと比較して、SNSA の場合はかなり低い用量で抗糖尿病効果がもたらされたことは注目に値する。バナジン酸塩と比較して二桁以上SNSAの毒性が低いことは、糖尿病治療における本発明の生物活性ケイ酸の適用の有用性を支えるさらに有力な根拠であろう。
【0171】
SNSAで想定可能なメカニズムは図32に示してあるように、インシュリン・レセプタ(IR)との相互作用によるインシュリン模倣作用として理解することができるかもしれない。これには、インシュリン・レセプタに結合したホスホチロシン・フォスファターゼPTP1Bの抑制は関係している可能性もある。このフォスファターゼはインシュリン信号発信及びインシュリン選択性を低下させるインシュリン・レセプタのリン酸化の程度を低下させる。
実施例24
十二指腸潰瘍の治療へのSNSAの適用
本発明によるSNSAはH/K−ATPアーゼとも記載されるプロトン・ポンプの非常に強力な抑制因子である。この薬学的作用は胃/十二指腸潰瘍の重要な原因の一つである胃酸過多の治療に実際的な重要性を持っている。
【0172】
標準的な実験室での餌と生水に自由にアクセスできる初期体重が200±10gの雌のウィスター・ラット24匹を実験に用いた。10%システアミン−塩化水素水溶液(Sigma-Aldrich)を1日に3−4時間の間隔をおいて3回皮下注射した。この投与形態は高度の潰瘍反応と低い死亡率をもたらすものであった。
【0173】
供試動物は以下の通り3通りに措置された。
− SNSA−5グループ: 8匹のラットに対して、3時間毎に0.5mlの水に5mgのSNSAを溶かしたものを与えた。
− SNSA−5グループ: 8匹のラットに対して、3時間毎に0.5mlの水に3mgのSNSAを溶かしたものを与えた。
− 比較グループ: 8匹のラットに対して賦形剤だけを与えた。
【0174】
【表2】
【0175】
結論として、SNSAで措置した動物は比較グループの動物と比較して、十二指腸潰瘍の発症率がかなり低かった。解剖病理検査の結果、本発明のケイ酸が胃酸過多を低下させることで、非常に強力な予防的役割を果たしている証拠が得られた。
実施例25
癌細胞の分岐及び伝播に対するSNSAの影響
Invitrogen 社(Bremen DE)から入手したダルベッコ修正イーグルの高グルコース培養液内で、MDA−MB−435細胞を95%空気、5%二酸化炭素の環境下で37℃の温度で培養した。移行及び侵入アッセイを行うために、最終濃度が1・105細胞/mlの無血清細胞培養液を用いた。化学誘引剤として10%ウシ胎児血清(FBS)を含んでいる培養液を24ウェル・プレートのすべてのウェルに加えた。
【0176】
0.8mmの孔サイズの薄膜を有するフルオブロック(FluoBlok)挿入物を上記化学誘引剤を含んだ各ウェルに入れて、上側のチェンバーと下側のチェンバーをつくった。細胞(5・104)を上側のチェンバーに入れて37℃の温度で24時間培養した。侵入に関する研究は細胞培養液に希釈させた62.5mg/mlのマトリゲル(Matrigel)(Bioscience, Canaan, CT)で事前に被覆したフルオブロック(FluoBlok)薄膜を用いて48時間の時間をかけて行った。挿入された薄膜は事前に被覆され、細胞と培養液を加える前に1時間組織培養器内で安定化させた。
【0177】
細胞移行及び侵入の程度を調べるために、薄膜の上面と底面の両方に附着している細胞をHank社の均衡化塩溶液(HBSSInvitrogen)で洗浄した。細胞はHemaColor溶液1定着液で固定した。デジタルCCDカメラ(Hamamatsu PHotonics, 日本)を備えたライカ(Leica)社の顕微鏡を用いて、ランダム・デジタル画像(10枚はフィルターの上面から、10枚はその底面から)を得た。
【0178】
調査されたセグメントの顕微鏡画像(図33)は措置を受けなかった乳癌細胞が分岐していることを証拠付けている。細胞の分岐の抑制あるいは阻止は、SNSAで措置した細胞のスライドで明らかである。SNSAの用量が低くても分岐の抑制傾向が認められるが、本願の生物活性ケイ酸の用量を高くすると、分岐は行われない。
実施例26
骨粗鬆症モデルにおける本発明のSNSAの適用
本発明の研究の目的は卵巣切除した(Ovx)ラットにおける骨粗鬆症モデルを用いて、骨の健康に対する本発明のサブナノケイ酸の効果を調べることであった。Ovxラットは閉経後の女性における骨喪失を阻止するための薬剤の研究に適していることが分かっている。この研究の目的は毎日SNSAを投与した場合の動物における骨形成に対する効果を比較対象グループとの比較において調べることであった。
【0179】
生後6ヶ月のウィスター・ラット18匹を通常の手術手順で卵巣切除あるいは卵巣摘出した。卵巣摘出手術は卵巣切除と同じだが、卵巣は切り離されなかった。卵巣を摘出されたラットは比較対象グループの個体と同様に苦痛やストレスに苦しむので、これら2つのグループの比較は重要であった。
【0180】
この研究はランダムに3つのグループに分けた18匹の個体において行われた。3つのグループとは、卵巣切除した2つのグループと、卵巣摘出した1つのグループである。
− Ovx−SNSグループの個体(8匹)には日常の餌と水に加えて、体重1kgあたり5.0mgのSNSAを経口投与した。
− 卵巣切除した5匹のラットで構成されるOvx-比較対象グループには研究全期間を通じて通常の餌と水が与えられた。
− 卵巣摘出されたラット(5匹)の場合、卵巣は切り離されなかった。研究は手術から10日後に開始され、12週間続いた。すべての個体は研究終了後に致死された。血液の化学的組成、体重、各器官の重量が測定されて、他のグループと比較された。骨密度計ODR-1000/W(Hologic Inc.)を用いて、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)技術で腰椎のL2−L5で骨鉱物密度(BMD)を測定した。軟組織を取り除いた後、第三腰椎の石灰質を取り除いていないサンプルを調べた。
【0181】
結果: 我々が得たデータは、Ovxグループでの17β−エスタジオール・レベルが、実験の終了時においては、摘出グループよりかなり低かったことを示している。卵巣切除されたラットは、卵巣摘出グループと比較して体重が増えた。
【0182】
SNSAで措置した個体では、骨形成が増大したことが明らかになった。これは比較対象グループと比較して類骨表面が増大していること(OS/BS)によって裏づけられている。SNSAで措置した個体では卵巣摘出グループで観察されたような脾柱骨体積の減少(BV/TV)が観察されなかった。OVX比較対象グループで骨形成に関するパラメータが低下したしたのと違って、SNSA措置グループは卵巣摘出グループをほぼ同様の値を示した。
【0183】
SNSAを個体に対して1日5mg投与すると、卵巣切除によってもたらされる骨形成の劣化をかなりおぎなってくれた。結論として、本発明によるサブナノケイ酸は骨粗鬆症の予防と治療のための有益な薬剤であり、骨の健康に相当程度貢献するものである。
実施例27
硫黄マスタード・モデルにおけるSNSAの傷治癒効果
侵攻性の化学物質によってつくりだされる重篤な皮膚損傷を治療するための局所的使用における本発明のサブナノケイ酸の効果を標準的な動物モデルでテストした。化学名がbis−(2−クロロエチル)硫化物(省略名:HD)である皮膚に水ぶくれをつくる戦争用化学薬剤を乳離れしたばかりのブタでテスト物質として用いた。
【0184】
乳離れしたばかりの2匹の雌ブタを液体HDに2時間暴露して、腹部皮膚面に直径3−4cmの十分な厚みの皮膚損傷をつくりだした。HDへの露出から2−6時間後にははっきりとした紅斑がつくられ、それが水疱に変化した。第1の個体の損傷をA1−A6とし、第2の個体の損傷をB1−B6とした。調査対象の製品による局所的な治療はHDへの露出から24時間後に開始し、以下に述べる用量で1日に3回適用した。
− A1−A3は0.5mlのSNSA (1.5mg/ml)を局所用組成物として適用した。
− A4−A5は0.5ml賦形剤(偽薬)で処置した。
− B1−B3は0.5mlのSNSA (2.5mg/ml)を局所用組成物として適用した。
− B4−B6は緩衝液にマフェナイドを溶かしたもの(50mg/ml)で処置した。
【0185】
動物達は8週間臨床的に観察され、水疱の直径、病理的経過、そして治癒状態を測定された。最初の12日間に尿検査とガス・クロマトグラフィ/質量分光分析アッセイを組み合わせて主要HD代謝産物(チオジグリコール、TDG)の尿による分泌及び臨床病理検査が行われた。皮膚の回復と経皮水分ロス(TEWL)に対するバリアー機能の復活を観察した。
【0186】
結果: 露出後3あるいは4日目には経皮水分ロスが激しく、処方しても効き目はなかった。皮膚障害の十分な買う服は露出後36日から46日の期間に観察された。皮膚回復に要する時間は本発明によるサブナノケイ酸SNSAを適用することにより好適に短縮され、その用量が高い(2.5mg)の場合に最も良い結果が得られた。
【0187】
1日あたり2.5mgの用量で本発明のSNSAを適用すると皮膚回復に要する期間が23%短縮された(46.3日ではなく35.7日)。SNSA適用から41.3日目にはTEWLバリアー機能の復活し、偽薬を与えた場合の53.3日と比較して、復活に要する時間が22.5%短縮された。
【0188】
2.5mg用量で本発明のSNSAを適用すると、5%酢酸マフェナイドによる標準的な措置よりはるかに好成績であった。20倍の用量で用いられる従来の製品と比較して、本発明によるSNSAは著しい技術的進歩をもたらすことが確認された(50mg対2.5mg)。
【0189】
【表3】
【0190】
結論として、本発明によるサブナノケイ酸は損傷した皮膚を効率的に回復させ、皮膚回復及び皮膚機能の復活に要する時間を短縮させる。
実施例28
日焼け治療に対する局所処方用サブナノケイ酸の適用
太陽に長期間、遮蔽物なしで露出した場合、特にタイプUV−A(300−400nm)およびUV−B(260−290nm)の紫外線照射への露出によって起こされた日焼けに対して局所処方によって本発明のサブナノケイ酸をテストした。
【0191】
フィッツパトリック分類でタイプIIの若い男性(23歳)と若い女性(23歳)は胸部の皮膚領域にグレートIの(受動的)日焼けを示していた。日焼けの原因は、ババリアの高度950mの場所で夏季に真昼の太陽に1.5時間遮蔽物なしで露出したことである。
【0192】
彼らの皮膚は濃い赤色に変わり、痛みがあり、男性の方は日焼けした箇所に布が触ることさえ耐えられなかった。
0.5%m/vSNSA、1.5%m/v重炭酸ナトリウム、及び15%m/vグリセリン及び蒸留水を含む局所処方をテストした。本発明によるSNSAの局所処方用製剤を赤くなった領域の75%に薄く均一に層状に塗布し、残りの25%には処置をほどこさなかった。
【0193】
太陽に露出してから2.5時間後に最初の適用がなされた。適用された用量は皮膚表面面積100cm2に対して2.5mgSNSAであった。痛みの緩和はすぐ明らかになり、テストされた人達は日焼け感覚が緩和したと語った。その組成物を含むSNSA製剤を第1日目に3回、翌日に2回処方した。皮膚温度はデジタル接触温度計で+0.15℃の精度で測定され、痛みについては視覚アナログ・スケール(VAN)によって、そして皮膚の色は溶液の熱量分析で用いられる標準カラー・スケールとの比較で測定された。
【0194】
SNSAの最初の適用後、皮膚温度は1.8−2.4℃低下した。SNSAで措置した痛み、色、及び温度測定の合計スコアをその胸部領域の未措置領域の合計パラメータと比較した。
【0195】
上記の痛み、温度、及び色の測定結果によれば、SNSAによる治療は比較対象としての未措置領域と比較して62−76%の改善を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
[SiOx(OH)4-2x]n
で示される物質であって、この式で
Si原子はQ1,Q2,Q3及びQ4タイプのSi原子であり、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の範囲の数を示し、さらに、
上記物質が内部コアと外部シェルによって構成され、
Q4タイプのSi原子の75%以上が上記内部コアに含まれ、Q1,Q2,Q3タイプのSi原子の75%以上が外部シェルに含まれている物質。
【請求項2】
回転楕円形あるいはほぼ回転楕円形の形状を有する、請求項1記載の物質。
【請求項3】
直径が0.3nm−5.0nmの範囲である、請求項1または2記載の物質。
【請求項4】
直径が0.6nm−3.0nmの範囲である、請求項3記載の物質。
【請求項5】
モル質量が0.7−140kDaである、請求項1−4のいずれか1項記載の物質。
【請求項6】
モル質量が1.4−20kDaである、請求項5記載の物質。
【請求項7】
上記外部シェルのQ1,Q2,Q3タイプのSi原子に取り付けられているSi−OH基が高濃度で均等に分散されている、請求項1−6のいずれか1項記載の物質。
【請求項8】
nが20−300の範囲の整数である、請求項1−7のいずれか1項記載の物質。
【請求項9】
分布範囲が好ましいn値前後で、最大分布範囲がn−0.25nからn+0.25nの範囲であり、nが請求項1で定義されている値の平均値である、請求項1−8のいずれか1項記載の物質。
【請求項10】
Q3およびQ2タイプのSi原子の合計とQ4タイプのSi原子との数値比率が1.5−2.5の間の範囲にある、請求項1−9のいずれか1項記載の物質。
【請求項11】
固体あるいは非揮発性液体形態の中性ポリヒロロキシル化基質上に蒸着させるか、あるいは固体あるいは非揮発性液体形態の薬学的に許容される基質上に直接蒸着させることで安定化される、請求項1−10のいずれか1項記載の物質。
【請求項12】
少なくとも室温で3ヶ月間保存した場合にその生物学的活性が85%以上保持される長期的安定性を有する、請求項1−11のいずれか1項記載の物質。
【請求項13】
一般式(I)
[SiOx(OH)4-2x]n
で示される物質を調製する方法であって、この式で、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の範囲の数を示し、さらに
a)無機シリカ化合物あるいはアルキルまたはその他の加水分解可能なオルトケイ酸塩を水あるいは水と溶剤の混合物内に混入するステップと、
b)60分間未満の時間で攪拌しながら6.2−4.5のpH値で誘導を実行するステップと、
c)反応系のpHを4.5−3.8の範囲に減少するように制御しつつ凝縮を行うステップと、
d) その溶液のpH値を2.1±0.3か8.4以上に急速に変えることによって安定化させるステップ
から構成され、調製中の温度を4℃から80℃の範囲に制御する方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法で入手可能な物質。
【請求項15】
治療、予防、および診断における生物学的活性剤としての、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項16】
キナーゼ、フォスファターゼ、薄膜ATPアーゼ、Na,K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼ、H/K−ATPアーゼ、及びABCトランスポータ蛋白質の活性を調整する、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項17】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病の治療及び傷治癒のための薬剤を調製するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項18】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の予防のための薬剤を調製のための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項19】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の診断のための組成物を調製するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項20】
医学応用分野でのペプチド類及び蛋白質の生物学的利用能および治療効果を改善するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項21】
骨、軟骨、及び腱の改善と骨粗鬆症治するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項22】
皮膚、毛髪及び爪の健康の改善するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項23】
火傷、創傷、あるいは病原体の作用さらには刺激性化学品によって悪影響を受けた皮膚の健康状態を回復するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項24】
高齢者の体内に生物学的ケイ素を補給するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項25】
少なくとも1つの、薬学的に許容される基質、補助剤および/または溶剤と共に、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の少なくとも1つ物質で構成される薬剤。
【請求項1】
一般式(I)
[SiOx(OH)4-2x]n
で示される物質であって、この式で
Si原子はQ1,Q2,Q3及びQ4タイプのSi原子であり、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の範囲の数を示し、さらに、
上記物質が内部コアと外部シェルによって構成され、
Q4タイプのSi原子の75%以上が上記内部コアに含まれ、Q1,Q2,Q3タイプのSi原子の75%以上が外部シェルに含まれている物質。
【請求項2】
回転楕円形あるいはほぼ回転楕円形の形状を有する、請求項1記載の物質。
【請求項3】
直径が0.3nm−5.0nmの範囲である、請求項1または2記載の物質。
【請求項4】
直径が0.6nm−3.0nmの範囲である、請求項3記載の物質。
【請求項5】
モル質量が0.7−140kDaである、請求項1−4のいずれか1項記載の物質。
【請求項6】
モル質量が1.4−20kDaである、請求項5記載の物質。
【請求項7】
上記外部シェルのQ1,Q2,Q3タイプのSi原子に取り付けられているSi−OH基が高濃度で均等に分散されている、請求項1−6のいずれか1項記載の物質。
【請求項8】
nが20−300の範囲の整数である、請求項1−7のいずれか1項記載の物質。
【請求項9】
分布範囲が好ましいn値前後で、最大分布範囲がn−0.25nからn+0.25nの範囲であり、nが請求項1で定義されている値の平均値である、請求項1−8のいずれか1項記載の物質。
【請求項10】
Q3およびQ2タイプのSi原子の合計とQ4タイプのSi原子との数値比率が1.5−2.5の間の範囲にある、請求項1−9のいずれか1項記載の物質。
【請求項11】
固体あるいは非揮発性液体形態の中性ポリヒロロキシル化基質上に蒸着させるか、あるいは固体あるいは非揮発性液体形態の薬学的に許容される基質上に直接蒸着させることで安定化される、請求項1−10のいずれか1項記載の物質。
【請求項12】
少なくとも室温で3ヶ月間保存した場合にその生物学的活性が85%以上保持される長期的安定性を有する、請求項1−11のいずれか1項記載の物質。
【請求項13】
一般式(I)
[SiOx(OH)4-2x]n
で示される物質を調製する方法であって、この式で、
nは12−2000の範囲の整数を示し、
xは1.2−1.8の範囲の数を示し、さらに
a)無機シリカ化合物あるいはアルキルまたはその他の加水分解可能なオルトケイ酸塩を水あるいは水と溶剤の混合物内に混入するステップと、
b)60分間未満の時間で攪拌しながら6.2−4.5のpH値で誘導を実行するステップと、
c)反応系のpHを4.5−3.8の範囲に減少するように制御しつつ凝縮を行うステップと、
d) その溶液のpH値を2.1±0.3か8.4以上に急速に変えることによって安定化させるステップ
から構成され、調製中の温度を4℃から80℃の範囲に制御する方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法で入手可能な物質。
【請求項15】
治療、予防、および診断における生物学的活性剤としての、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項16】
キナーゼ、フォスファターゼ、薄膜ATPアーゼ、Na,K−ATPアーゼ、Ca−ATPアーゼ、H/K−ATPアーゼ、及びABCトランスポータ蛋白質の活性を調整する、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項17】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症、歯石、アルツハイマー症、クロイツフェルトヤコブ病の治療及び傷治癒のための薬剤を調製するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項18】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の予防のための薬剤を調製のための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項19】
高血圧、糖尿病、骨不全、心臓血管関連疾病、神経変性病態、癌、胃酸過多、骨粗鬆症の診断のための組成物を調製するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項20】
医学応用分野でのペプチド類及び蛋白質の生物学的利用能および治療効果を改善するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項21】
骨、軟骨、及び腱の改善と骨粗鬆症治するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項22】
皮膚、毛髪及び爪の健康の改善するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項23】
火傷、創傷、あるいは病原体の作用さらには刺激性化学品によって悪影響を受けた皮膚の健康状態を回復するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項24】
高齢者の体内に生物学的ケイ素を補給するための、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の物質の使用。
【請求項25】
少なくとも1つの、薬学的に許容される基質、補助剤および/または溶剤と共に、請求項1−12及び請求項14のいずれか1項記載の少なくとも1つ物質で構成される薬剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図5】
【図9】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図5】
【図9】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2011−529973(P2011−529973A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520392(P2011−520392)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005717
【国際公開番号】WO2010/012507
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511028652)シーナトゥール ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005717
【国際公開番号】WO2010/012507
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511028652)シーナトゥール ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]