説明

生物学的特異的反応物質の測定チップ、測定システムおよび測定方法

【課題】免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定または検出する測定チップ、測定システムおよび測定方法を提供する。
【解決手段】透明基板と、前記透明基板上に形成され試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の透明電極と、を備え、生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料液中の生物学的特異的反応物質を、生物学的特異的凝集反応を用いて測定または検出する測定チップ、測定システムおよび測定方法に関し、特に免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体試料中の被検査物質を検出するために、被検査物質に対して特異的に結合することが可能な抗体を利用する方法は従来、数多く考案されている。そのひとつに、抗原抗体反応によって生じた免疫凝集物を光学的に検出する方法がある。
【0003】
この方法では、まず、被検査物質を含む液体試料に被検査物質に特異的に結合することが可能な抗体を一定量加えて、凝集物を形成させる。次に、凝集物に光を照射すると、光は凝集物に当たって散乱する為に、液体試料を透過する光量が変化する。光量の変化は、透過光、反射光、散乱光のいずれかを測定することにより知ることができる。
【0004】
一般に透過光を測定する方法が免疫比濁法であり、散乱光を検出する方法が免疫比朧法として区別されているが、凝集物による光の散乱の影響を観察するという点では同じ検出原理であると言える。凝集物の量は、被検査物質の濃度に比例して変化するので、透過光、反射光、散乱光のいずれかを測定すれば、被検査物質の濃度を求めることが可能である。
【0005】
この方法について感度をさらに向上させる方法がラテックス凝集法である。前述の方法において、抗体をラテックスに結合させておくと、被検査物質と抗体が結合することによって、ラテックス粒子の凝集物が形成される。ラテックス粒子の凝集物は、抗原抗体反応性物質の凝集物よりもはるかに光の散乱が大きいので、より高感度な検出が可能である。
【0006】
ラテックス凝集法をさらに高感度化させる方法が、特許文献1により開示されている。図1から図4を用いて、文献1に開示されている測定装置および測定方法について説明する。図1は、反応用チップの断面図、図2は、反応測定装置のブロック図、図3および図4は、反応用チップの電極部分の拡大図である。スライドグラス1、2に、厚さ0.02mmの電極3、4が、電極間距離が0.5mmになるように挟み込まれている。ラテックス粒子24は、スライドグラス1、2および電極3、4で囲まれた導入路14に懸濁液として分散されている。電極3、4に、交流電源供給装置5を用いて交流電圧を印加し、上記反応系に電場を印加することによって、ラテックス粒子24がパールチェーンと呼ばれる直線的に並ぶ現象を起こす(19)。
【0007】
その後電場を停止すると直線的に並んでいたラテックス粒子24は再び分散する。パールチェーン化の際に抗原抗体反応性物質が存在すると、電場を停止後もラテックス粒子24の再分散が起こらず、パールチェーン化した粒子の存在がなおも認められる。したがって、電場を停止後も再分散しない、すなわち抗原抗体凝集反応に関与しているラテックス粒子24を、顕微鏡7、CCDカメラ8、画像処理ボード9、パーソナルコンピュータ10より成る画像処理装置により、ラテックス粒子24の凝集状態を測定して、抗原抗体反応性物質の存在を検出又は測定する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−83928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述した方法においては、電極は、略同一平面上に存在しており、それ故、形成されるパールチェーンは、図2に示すように、すべて前記略平面上に存在する。そして電場を停止したときの再分散も平面状に存在する。このとき、画像処理装置は前記略平面に対して垂直方向からのみしか観察できないため、パールチェーンに対しては横方向からの観察となり、前記略平面上の二次元情報しか得る事ができない。電場停止後のラテックス粒子の再分散度の割合を、画像処理装置を用いて測定するためには、個々のラテックス粒子の結合状態を正確に計測して、数値を出さなければならないので、画像認識の精度を高めるため、複数枚の画像を取得して平均を求める等の必要性があった。
【0009】
また、画像取得の観点からすれば、光学系の焦点を合わせるため、前記略平面上のパールチェーンは、できる限り同一平面上に存在する方がよい。そのため、20μm以下といった比較的厚みの狭い反応槽内でラテックス粒子のパールチェーン化を行う必要があり、反応チップの量産化が困難であると言う問題点もあった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、試料液中の生物学的特異的反応物質を、生物学的特異的凝集反応を用いて測定または検出する測定チップ、測定装置および測定方法に関し、特に免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の試料液中の生物学的特異的反応物質の測定チップは生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのチップであって、透明基板と、前記透明基板上に形成され試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極と、を備え、前記電圧を印加するための一対の電極が、透明電極であることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の生物学的特異的反応物質の測定チップは試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのチップであって、透明基板と、前記透明基板上に形成され少なくとも血液成分が含まれる試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極とを備え、前記電圧を印加するための一対の電極が、透明電極であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の生物学的特異的反応物質の測定システムは試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記単体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのシステムであって、透明基板と、前記透明基板上に形成され試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極とを備えた測定用チップと、前記電極に電圧を印加する手段と、前記導入路中の情報を取得する検出手段と、を備え、前記電極が透明電極であり、かつ前記検出手段が前記透明電極を通して前記情報を取得するよう配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定または検出する測定チップ、測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0016】
(実施の形態1)
まず、図5を用いて本発明の反応チップについて説明する。図5は、本発明の一実施形態を示す反応チップの断面図である。本発明の反応チップは、透明電極12が形成された一対の透明基板11を、スペーサ13を挟んで対向させて配置し、導入路14を形成している。導入路14には、試料液を注入するための注入孔15および排気孔16が形成されている。
【0017】
透明基板11の材料としては、導入路14内の画像情報もしくは光学的情報を取得できれば特に指定されるものではなく、例えば石英ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラスなどのガラス、もしくは石英などの無機物質、または、ポリメタクリル酸メチルまたはその共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネートなどの透明性を有する有機物質が挙げられる。透明基板11上に形成される透明電極12の材料としては、透明性を有しかつ良導電性の材料であればよいが、酸化インジウム錫(ITO)が最も好ましい。透明基板11上への透明電極12の形成方法は、スパッタ法、印刷法、ディップコート法などが選択できるが、特に透明基板11が有機物質である場合、焼成工程が不要なスパッタ法が好ましい。
【0018】
透明電極12は、特にパターンを形成する必要はなく、図6に示すように、外部装置と接続するための端子部17が形成されていればよい。端子部17は、外部装置と接続が可能な形状であれば良く、図6に示す形状に限定されるものではない。
【0019】
スペーサ13は、導入路14を形成し、かつ試料液を注入した場合に、試料液が漏れ出ることを防ぐことを目的としたもので、特に材料及び形成方法を限定されるものではないが、例えば、所定の形状に抜き取った粘着性の両面シートを挟み込むように、透明基板11を張り合わせることによって形成される。また、透明基板11がガラスの場合はエッチングを行うことによって導入路14を形成し、透明基板11とスペーサ13、導入路14を一体化して形成することも可能である。同様に、透明基板11が有機物質の場合は、射出成型法などで透明基板11とスペーサ13、導入路14を一体化形成することも可能である。
【0020】
上記のように作成した測定チップを用いて、生物学的特異的反応を行った場合について、図7および図8を用いて説明する。本発明における生物学的特異的反応では、導入路14に試料液を注入後、透明電極12に電圧を与えて試料液に電場を印加することにより、担体粒子18を直線的に配置して、パールチェーン19を形成させる。
【0021】
本発明における電圧は、交流電圧であることが望ましい。電圧波形は、方形波、矩形波、正弦波、三角波等を用いることができる。また、電界強度は、パールチェーン19を形成するため、5〜50V/mm程度を印加することが必要である。また、周波数は10kHz〜10MHzであればよい。
【0022】
本発明における担体粒子18は、ラテックス粒子や金コロイド等の人工的粒子や、赤血球細胞、リポソーム等の生体由来粒子を用いることができる。特にポリスチレン系ラテックス粒子は、任意の粒径サイズのものが入手し易く、また表面に生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質を結合し易すいので、好ましい。
【0023】
本発明における担体粒子18の粒径は、パールチェーン19の形成を妨げない範囲で選択可能であり、0.5〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明における生物学的特異的反応は、ある特定の物質とのみ反応する生体由来物質との反応のことであり、主たるものとしては、抗原と抗体との反応つまり抗原抗体反応もしくは免疫反応、および核酸の二本鎖形成反応などをあげることができる。
【0025】
上記のようにして形成したパールチェーン19は、電場を停止することにより担体粒子18に分散される。しかしながら、生物学的特異的反応により、凝集反応を起こしている担体粒子18は完全に分散されず、図8に示すように、試料液中には再分散された担体粒子20と、結合を維持した担体粒子21とが存在する。本発明における生物学的特異的反応物質の検出又は測定では、上記電場停止後の再分散された担体粒子20と、結合を維持した担体粒子21の存在する割合を測定して、生物学的特異的反応物質の検出又は測定を行う。
【0026】
次に、図9から図11を用いて本発明における生物学的特異的反応物質の検出又は測定方法について説明する。図9、図10および図11は、本発明における一実施形態を示す反応チップの平面図である。本発明において、1対の透明電極12は、垂直方向に配置されている。そのため、透明電極12に電圧を印加し、導入路内部に電場を印加すると、図9に示すように、パールチェーン19は垂直方向に形成される。図9においては、パールチェーン19は垂直方向に形成されているため、パールチェーン19を形成している個々の担体粒子18は重なって観察され、見かけ上、1つの粒子に見える。次に、電圧を停止すると、生物学的特異的反応物質が多い場合には、結合を維持した粒子が多く存在し、図10に示すように、パールチェーン19の再分散は比較的穏やかである。一方、生物学的特異的反応物質が少ない場合もしくは存在しない場合には、結合を維持した粒子はほとんど存在しておらず、図11に示すようにパールチェーン20は顕著に再分散される。本発明における測定チップは、透明基板11および透明電極12を用いているので、導入路14内部の様子を電極を通して垂直方向から観察して三次元情報を得る事が可能である。その場合の測定方法としては、画像認識を用いる方法に加え、光学的測定方法を用いることができる。
【0027】
画像認識を用いて測定する場合のシステムのブロック図を図12に示す。導入路14内部の担体粒子18の様子を、顕微鏡7、CCDカメラ8で画像として取得し、画像処理ボード9、パーソナルコンピュータ10を用いて、再分散された担体粒子20と、結合を維持した担体粒子21の存在する割合について、例えば5画面の平均値を元に計算し、生物学的特異的反応物質を検出又は測定する。
【0028】
光学式測定方法を用いて測定する場合のシステムのブロック図を図13に示す。導入路14内部の担体粒子18の様子は、光学的測定手段21を用いて測定する。光学的測定手段22は、導入路14内部の光学的特性を測定する手段であればよく、測定項目としては、吸光度、透過率、散乱光、反射光などが挙げられる。それぞれの測定項目において、スペクトル測定、特定波長測定、強度測定などの測定方法を用いることができる。中でも、特定波長の透過率測定は、最も簡単な構成で、光学的手段22を実現可能であり、好ましい。
【0029】
(実施の形態2)
本実施の形態を表す測定チップの平面図を図14に示す。図14は、チップの構成等は、実施の形態1で示した図6とほぼ同じであるが、注入孔15から導入路14までの間に、血球分離フィルタ23が存在する。本実施の形態では、試料液として、注入孔15から全血を点着した場合、血球フィルタ23において、赤血球、白血球などの血球成分が血球分離フィルタ23によって除去され、血漿成分のみが、導入路14に供給される。このことにより、一枚のチップに血液を点着するだけで、簡便に生物学的特異的反応物質の検出が可能となる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
実施例1で用いる測定チップを以下のようにして作製した。まず、絶縁基板として厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートのシートを準備した後、その表面にスパッタリングによって1000オングストローム(100nm)のITO薄膜を形成した。その後、この絶縁基板をカッティングプロッタを用いて所定の大きさに切り出して電極基板を2枚作製した。うち1枚には、注入孔および排気孔を形成した。次に、厚さ100μmの両面粘着ポリエチレンテレフタレートシートをカッティングプロッタを用いて所定の大きさに切り出した後、導入路部分を形成し、スペーサを作製した。最後に、作製したスペーサを挟んで2枚の電極基板と接着し、図6に示すような測定チップを作製した。
【0031】
次に、ラテックス粒子表面へ、抗CRP抗体を固定化してCRP測定用試薬を調製した。ラテックス粒子への生体物質の固定化は、公知の技術として知られており、本実施例では、化学結合法により固定化を行った。即ち、カルボニル基が修飾されているラテックス粒子に対して、EDCおよびN−ヒドロキシスルフォサクシイミドを反応させて、ラテックス粒子のカルボニル基をサクシイミジル化した。こうして得られた活性ラテックス粒子に抗CRP抗体を反応させて固定化を行った。最後に抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子を、固形分0.2重量%となるように緩衝液に分散させて、試薬を調製した。
【0032】
次に緩衝液中のCRP濃度が、それぞれ2×10−7mol/l、2×10−8mol/l、2×10−9mol/lとなるように調製し、それぞれ測定溶液A、測定溶液B、測定溶液Cとした。
【0033】
上記のように作製した測定溶液と試薬をそれぞれ1:1の割合で混合し、測定チップの注入孔15から導入路へ供給した。その後、図12に示すシステムを用いて、測定チップに20V/mmとなるように100kHzの交流電圧を印加してパールチェーンを形成後、電圧を停止して、ラテックス粒子を再分散させた。そのときの凝集率(結合を維持したラテックス粒子数/すべてのラテックス粒子数×100)を、図12に示す画像処理装置を用いて測定した結果を表1に示す。表1の結果から、測定溶液中のCRP濃度が定量的に測定可能であることが示された。
【0034】
【表1】

【0035】
(実施例2)
実施例1と同様に、測定チップ、試薬、および測定溶液を作製した。作製した測定溶液と試薬をそれぞれ1:1の割合で混合し、測定チップの注入孔15から導入路へ供給した。その後、図13に示すシステムを用いて、測定チップに20V/mmとなるように100kHzの交流電圧を印加してパールチェーンを形成後、電圧を停止して、ラテックス粒子を再分散させた。そのときの透過率を、図13に示す光学的測定手段を用いて測定した結果を表2に示す。表1の結果から、測定溶液中のCRP濃度が定量的に測定可能であることが示された。
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例3)
実施例3で用いる測定チップを以下のようにして作製した。電極基板およびスペーサは、実施例1と同様の方法で作製した。ただし、注入孔の位置および導入路は、図14に示す構造となるようにした。次に、血球分離フィルタを所定の大きさに切断し、図14に示すように、注入孔と導入路との間にくるようにスペーサ内に配置し、実施例1と同様に測定チップを作製した。
【0038】
また、実施例1と同様にラテックス粒子表面に抗CRP抗体を反応させて、CRP測定用の試薬を調製した。
【0039】
次に、あらかじめCRP濃度が分かっているヒト全血サンプルにそれぞれCRPを加え、最終CRP濃度が、それぞれ2×10−7mol/l、2×10−8mol/l、2×10−9mol/lとなるように調製し、それぞれ全血A、全血B、全血Cとした。
【0040】
上記のように作製した全血と試薬をそれぞれ1:1の割合で混合し、測定チップの注入孔15から導入路16へ供給した。注入孔15から点着された全血は、血球成分が血球フィルタ23にトラップされ、血漿は血球フィルタ23を通して、毛細管現象により導入路16へ入っていく。その後、図12に示すシステムを用いて、測定チップに40V/mmとなるように100kHzの交流電圧を印加してパールチェーンを形成後、電圧を停止して、ラテックス粒子を再分散させた。そのときの凝集率(結合を維持したラテックス粒子数/すべてのラテックス粒子数×100)を、図12に示す画像処理装置を用いて測定した結果を表3に示す。表3の結果から、全血中のCRP濃度が定量的に測定可能であることが示された。
【0041】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる生物学的特異的反応物質の測定チップ、測定システムおよび測定方法は、免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定または検出が可能になるので、免疫凝集反応を利用して、微小量の試料中の被検査物質を迅速、簡便かつ高精度に測定する技術等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来例の生物学的特異的反応チップの断面図
【図2】従来例の生物学的特異的反応物質の存在を検出又は測定するシステムのブロック図
【図3】従来例の電圧印加時の生物学的特異的反応チップ電極部分の拡大図
【図4】従来例の電圧停止時の生物学的特異的反応チップ電極部分の拡大図
【図5】実施の形態1の生物学的特異的反応チップの一形態を示す断面図
【図6】実施の形態1の生物学的特異的反応チップの一形態を示す斜視図
【図7】実施の形態1の電圧印加時の生物学的特異的反応チップの一形態を示す断面図
【図8】実施の形態1の電圧停止後の生物学的特異的反応チップの一形態を示す断面図
【図9】実施の形態1の電圧印加時の生物学的特異的反応チップの一形態を示す平面図
【図10】実施の形態1の電圧停止後の生物学的特異的反応チップの一形態を示す平面図
【図11】実施の形態1の電圧停止後の生物学的特異的反応チップの一形態を示す平面図
【図12】実施の形態1の生物学的特異的反応物質の存在を画像認識を用いて検出又は測定するシステムのブロック図
【図13】実施の形態1の生物学的特異的反応物質の存在を光学的測定法を用いて検出又は測定するシステムのブロック図
【図14】実施の形態2の生物学的特異的反応チップの一形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0044】
1,2 スライドグラス
3,4 電極
5 交流電源供給装置
6 オシロスコープ
7 蛍光顕微鏡
8 CCDカメラ
9 画像処理ボード
10 パーソナルコンピュータ
11 透明基板
12 透明電極
13 スペーサ
14 導入路
15 注入孔
16 排気孔
17 端子部
18 担体粒子
19 パールチェーン
20 再分散した担体粒子
21 結合を維持した担体粒子
22 光学的測定手段
23 血球分離フィルタ
24 ラテックス粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのチップであって、
透明基板と、前記透明基板上に形成され試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極と、を備え、
前記電圧を印加するための一対の電極が、透明電極であることを特徴とする生物学的特異的反応物質の測定チップ。
【請求項2】
前記一対の透明電極が、前記導入路を挟み込んで対向して配置されていることを特徴とする請求項1記載の測定チップ。
【請求項3】
前記透明電極が、ITOであることを特徴とする請求項1記載の測定チップ。
【請求項4】
前記導入路中に、試薬があらかじめ担持されていることを特徴とする請求項1記載の測定チップ。
【請求項5】
試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのチップであって、
透明基板と、前記透明基板上に形成され少なくとも血液成分が含まれる試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極とを備え、
前記電圧を印加するための一対の電極が、透明電極であることを特徴とする生物学的特異的反応物質の測定チップ。
【請求項6】
前記導入路中に、前記試料液中の血球成分を補足し、前記試料液中の液体成分のみを通過させる構造物が存在することを特徴とする請求項5記載の測定チップ。
【請求項7】
試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記単体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定するためのシステムであって、
透明基板と、前記透明基板上に形成され試料液が導入される導入路と、前記導入路中の試料液に電場を印加するための一対の電極とを備えた測定用チップと、
前記電極に電圧を印加する手段と、
前記導入路中の情報を取得する検出手段と、を備え、
前記電極が透明電極であり、かつ前記検出手段が前記透明電極を通して前記情報を取得するよう配置されていることを特徴とする生物学的特異的反応物質の測定システム。
【請求項8】
前記検出手段が、画像情報取得手段であることを特徴とする請求項7記載の測定システム。
【請求項9】
前記検出手段が、光学的測定手段であることを特徴とする請求項7記載の測定システム。
【請求項10】
前記光学的測定手段が、吸光度スペクトルまたは透過率スペクトル測定手段であることを特徴とする請求項9記載の測定システム。
【請求項11】
前記光学的測定手段が、特定波長の吸光度または透過率測定手段であることを特徴とする請求項9記載の測定システム。
【請求項12】
前記光学的測定手段が、散乱光強度測定手段であることを特徴とする請求項9記載の測定システム。
【請求項13】
前記電圧が交流電圧であることを特徴とする請求項7記載の測定システム。
【請求項14】
試料液中の生物学的特異的反応物質を、前記生物学的特異的反応物質の存在下、前記生物学的特異的反応物質と特異的に反応する物質が固定された担体粒子を含む試料液中に電場を印加し、前記担体粒子を直線的に配置した後、前記電場印加停止後の前記担体粒子の凝集および分散の割合によって検出又は測定する方法であって、
前記電場を印加する手段として、透明電極を用いることを特徴とする生物学的特異的反応物質の測定方法。
【請求項15】
前記担体粒子上での生物学的特異的凝集反応による生物学的特異的反応性物質の存在を検出または測定する方法が、画像認識であることを特徴とする請求項14記載の測定方法。
【請求項16】
前記担体粒子上での生物学的特異的凝集反応による生物学的特異的反応性物質の存在を検出または測定する方法が、光学的測定方法であることを特徴とする請求項14記載の測定方法。
【請求項17】
前記光学的測定方法が、吸光度スペクトルまたは透過率スペクトル測定であることを特徴とする請求項16記載の測定方法。
【請求項18】
前記光学的測定方法が、特定波長の吸光度または透過率測定であることを特徴とする請求項16記載の測定方法。
【請求項19】
前記光学的測定方法が、散乱光測定であることを特徴とする請求項16記載の測定方法。
【請求項20】
前記生物学的特異的凝集反応が、抗原抗体反応であることを特徴とする請求項14記載の測定方法。
【請求項21】
前記生物学的特異的凝集反応が、核酸の二本鎖形成反応であることを特徴とする請求項14記載の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−196943(P2008−196943A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31814(P2007−31814)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】