説明

生物材料を分離するための方法及び装置

様々な実施形態によれば、全組織サンプルから未分化細胞および/または間質細胞を分離するための、システムが提供されることが可能である。全組織サンプルは、患者から直接得られる適切な組織サンプルであることが可能である。組織サンプルは、患者への即時のまたは迅速な適用または再適用のために、選択された操作手順の間に、得られることが可能である。従って、自己由来の細胞が、全組織サンプルを得た後に実質的に直後に、患者に適用するために、手術時に得られることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、生物(生物学的な)材料を分離するための方法及び装置に係り、特に、多成分生物(生物学的な)材料から、選択されたフラクションを分離するためのシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、この開示に関係する背景情報を提供する、しかしながら、それは、必ずしも先行技術であるとは限らない。
【0003】
様々な細胞の(または生物学的な)材料は、人間の患者の治療または回復プロセスを補助するために使用されることが可能である。例えば、間質細胞(stromal cells)、分化可能なまたは多能性の幹細胞(pluripotent or multipotent stem cells)、または完全に分化した細胞(fully differentiated cells)などのような、選択された細胞タイプが、患者の治療に適用されることが可能である。例えば、幹細胞は、怪我、化学療法、または放射線療法に起因して損傷されることがある領域などのような、患者の罹患領域に適用されることが可能であって、幹細胞の分化及び罹患細胞の再生により、その領域の治療を助ける。
【0004】
幹細胞または間質細胞などのような、未分化細胞(undifferentiated cells)を使用して、人間の患者に治療の手順を実施する際に、未分化細胞が、患者自身の組織を含む、様々な源から得られることが可能である。従って、特定の自己由来の細胞が、患者の組織の様々な部分に適用され、または、その中に注入されることが可能である。一般的に、第一の手順の間に、全組織または全血液サンプルが、患者から得られることが可能であり、選択された細胞が、全組織または血液サンプルから分離されることが可能であり、選択され、分離された細胞は、後続する手順の間に、患者に再適用され、またはその中に注入されることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,374,678号明細書
【発明の概要】
【0006】
このセクションは、本発明のアスペクトの一般的な要約を提供し、その全範囲またはその特徴の全ての完璧な記述ではない。
【0007】
様々な実施形態によれば、システムが、全組織または全血液サンプルから、幹細胞および/または間質細胞を含む、未分化細胞を分離するために、設けられることが可能である。そのサンプルは、患者から直接得られた適切な組織または血液サンプルであることが可能である。そのサンプルは、患者に対する即時のまたは迅速な適用のために、サンプルから未分化細胞を分離する目的で、選択された操作手順の間に得られることが可能である。従って、自己由来の未分化細胞が、全組織または全血液サンプルを得た比較的直後に、患者に適用するために、手術中に得られることが可能である。
【0008】
適用可能性の更なる領域は、この中で提供される説明から、明らかになる。この説明及び特定の例は、例示の目的のみが意図されていて、請求項に記載された発明の範囲を規定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、分離システムの立面図である。
【図2A】図2Aは、図1の分離システムのブイ・システムの分解組立斜視図である。
【図2B】図2Bは、平面2B−2Bでの図1のブイ・システムの断面図である。
【図3】図3は、図1の分離システムを充填する方法の立面図である。
【図4】図4は、遠心分離システムの斜視図である。
【図5A】図5Aは、部分的に断面で示された図1の分離システムのブイ・システムの動作の立面図である。
【図5B】図5Bは、断面で示された、図1の分離システムのブイ・システムの動作の詳細図である。
【図6】図6は、図1の分離システムの中の分離された全組織または全血液サンプルの立面図である。
【図7】図7は、全組織または全血液サンプルの選択されたフラクション適用の環境の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに記載された図面は、選択された実施形態のみを例示する目的のためのものであって、可能な具体化の全てではなく、この開示の範囲を制限することは意図されていない。
【0011】
対応する参照符号は、添付図面の幾つかの図に亘って、対応するパーツを示している。
【0012】
例としての実施形態が、次に、添付図面を参照しながら、より十分に説明される。
【0013】
図1を参照すると、細胞分離システム20が示されている。細胞分離システム20は、適切な形態のコンテナ22を含むことが可能であり、それは、例えば、円筒状の外側の壁24を有していて、実質的に円形の底部壁26及び実質的に円形の上部壁即ち取り外し可能なキャップ28により閉じられた実質的に円筒状のコンテナなどのような形態である。コンテナ22は、長手方向軸Aに沿って伸び、頂部壁28及び底部壁26は、長手方向軸Aの方向で互いから分離されて配置され、長手方向軸Aに対して実質的に垂直に配置されている。しかしながら、コンテナ22が、例えば、多角形断面、正方形断面、または他の適切な形状などのような、適切な断面を有することが可能であることが理解されるであろう。
【0014】
分離システム20は、ブイ・システム30を含むことが可能であり、このブイ・システムは、コンテナ22の内側で位置の調整が可能であり、且つ底部壁26及び頂部壁28に対して、長手方向軸Aに沿って、一般的に軸方向に移動することが可能である。ブイ・システム30は、所望の、選択されたやり方で、壁24の内側の壁の表面32に接触するように構成されることが可能である。例えば、ブイ・システム30は、分離システム20が実質的に静止状態にある間、内側の壁の表面32に摩擦により係合するように構成されることが可能であり、以下において更に説明されるように、分離システム20で遠心分離が行われる間、コンテナ22に対して比較的自由に軸方向に移動する。様々な実施形態によれば、コンテナ22は、選択された力の下で、壁24が外側に、且つ長手方向軸Aに対して垂直に曲がることが可能であるように選択された材料から作られることが可能である。
【0015】
例えば、米国特許7,374,678(2008年5月20日発行)(その内容は、リファレンスによりこの中に組み込まれる)の中に開示されているように、コンテナ22は、遠心分離機の中に配置されることが可能であり、一般的に重力の力の数倍の、大きな力がコンテナ22の底部壁26の方向に加えられるように回転され、それにより、壁24が外側に曲がって、コンテナ22が圧縮されるようになる。この圧縮された状態において、円筒状の外側の壁24は、直径方向に伸びることが可能であり、それによって、内側の壁の表面32が、径方向にブイ・システム30から離れるように移動することが可能であるようになる。結果として生ずる、ブイ・システム30と内側の壁の表面32との間の隙間は、ブイ・システム30が、コンテナ22の内側で、且つ内側の壁の表面32に対して、軸方向に移動することを可能にする。
【0016】
ブイ・システム30は、この中で更に詳細に論じられるように、上部ブイ部分即ち部材42と下部ブイ部分即ち部材44との間に、分離即ち収集ボリューム40を含むことまたはそれを規定することが可能である。抜き出し部材即ちチューブ46は、抜き出しポート48を、ブイ・システム30に対応する抽出ポート50と、相互に接続することが可能である。抜き出しポート48は、頂部壁28の中を通って、コンテナの外側のまで、伸びることが可能であり、抽出ポート50は、ブイ30の内側の収集ボリューム40と連絡することが可能であり、それに対するアクセスを可能にする。抜き出しポート48は、ルアー・コネクタ52などのような、コネクタを含むことが可能であり、このコネクタは、キャップ即ちプラグ54で、選択的に閉じられるまたは遮断されることが可能である。
【0017】
導入ポート56は、頂部壁即ちキャップ28の中を通って伸び、コンテナ22の内側のボリューム57と連絡することも可能である。導入ポート56は、導入シリンジ60と相互に接続することが可能であるルアー・コネクタ(luer connector)即ち内部の傾斜壁58を含むことも可能である。キャップ即ちプラグ62は、材料がコンテナ22の中に導入された後に、選択的に、導入ポート56と相互に接続されることが可能であり、ルアー・コネクタ58をキャップまたは遮断する。第二のフラクション即ちプラズマ抜き出しポート64もまた、頂部壁即ちキャップ28により規定されることが可能であり、この抜き出しポートは、ルアー・ロック(luer lock)即ちコネクタ65を含むことが可能であり、そしてまた、キャップ即ちプラグ66で選択的にキャップまたは遮断されることも可能である。第二のフラクション即ちプラズマ抜き出しポート64は、キャップ28により規定されるポート即ちボアと接続されることが可能であり、ブイ・システム30とキャップ28との間のボリューム57の内部に配置された材料を、例えば、分離システム20で形成された分離ステップの後などのような、選択された時間で、引き抜きまたは取り除く。
【0018】
図2A及び2Bを参照すると、ブイ・システム30は、抽出ポート50、上部ブイ部分42、及び下部ブイ部分44を含むことが可能である。上部ブイ部分42は、脚部即ちアーム(70)を有することが可能であり、これらのアームは、環状のリング即ち部材72から軸方向に伸びて、下部ブイ部分44の上部横方向表面74に接触する。脚部70は、一般的に、コンテナ22の長手方向軸Aに対して平行に、伸びることが可能である。脚部70は、上部表面74に接触することが可能であり、上部ブイ部分42の環状のリング72を支持することを助ける。脚部70は、上部表面74に固定されまたは接続されることが可能であり、あるいは、固定されない状態で、上部表面74と単に接触することも可能である。
【0019】
脚部70は、適切な形態または数で形成されることが可能であり、それは、図2A及び2Bの中に示されているような二つの脚部、四本の脚部、適切な数の脚部、あるいは、他の適切な構造、形状または形態を含んでいる。例えば、コロネート゛(colonnade:柱廊)が、第一のブイ部分42及び第二のブイ部分44の外側のエッジの近傍に形成されることが可能であり、二つの部分42,44を、離して保持することを助ける。それとは関係なく、脚部70は、第二のブイ部分44から選択された距離で、第一のブイ部分42を支持することが可能である。更に他の形態において、脚部70が省略されることが可能である。
【0020】
環状の部材72は、中央のポスト即ちチューブ78から径方向に伸びるリング・スポーク即ち延長部材76につながることが可能である。リング・スポーク76は、一般的に、軸Aに対して垂直に伸びている。しかしながら、リング・スポークは、減少した抗力などのために、中心軸Aに対して角度を有して伸びることが可能である。チューブ78は、内部のボア80を規定し、このボアは、抜き出しポート50の経路即ち内部のボア82と連絡することが可能であり、ブイ・システム30の収集ボリューム40からの材料の除去を可能にする。中央のチューブ78は、外部の壁84を含んでいて、この壁は、環状のリング72の中心または中央部で、径方向のリング・スポーク76から軸方向に伸び、下部ブイ部分44に接触する。
【0021】
中央のポスト即ちチューブ78の接続即ち融着部分86は、内部のウエル即ちボア90の中で、下部ブイ部分44の中に伸びて、それに固定されることが可能である。ポスト78の接続部分86は、第二のブイ部分44に、接着され、鋳込まれ、融着され、スナップ・フィットされ、プレス嵌めされまたは干渉嵌めされることが可能である。接続部分86は、第一のブイ部分42を第二のブイ部分44に保持することが可能である。従って、中央のポスト78は、脚部70が、下部ブイ部分44から間隔を開けて、環状のリング72を保持すること助けることも可能であり、収集ボリューム40を規定する。それに代わって、中央のポスト78は、脚部70無しで、下部ブイ部分44から間隔を開けて、環状のリング72を保持することが可能である。
【0022】
フィン即ち持ち上げられた部分92は、下部ブイ部分44の表面74から、上方向に伸びることが可能である。フィン92は、稜即ち切り欠きある部分94を含むことが可能である。中央のポスト78はまた、フィン92に固定されることが可能であり、第二のブイ部分44から選択された距離で、第一のブイ部分42を固定することまたは保持することを助ける。
【0023】
下部ブイ部分44は、上部表面74、環状の即ち外側壁102及び下部表面45を含むことが可能である。下部ブイ部分44の上部表面74は、円錐形であって、環状の即ち外側壁102と上部表面74の交点即ち接続部により規定される外側の周囲のエッジ100から下方向に及び内側に角度が付けられまたは傾けられることが可能である。中央のポスト78の長手方向軸Bを含み、且つ、上部表面74、軸B、及び上部表面74の交点の線と交差する仮想平面内に、角度[α]が形成されている。この角度[α]は、約45度から約90度まで、好ましくは約75度などのような、適切な角度であることが可能である。それに代わって、上部表面74は、円錐形ではなく、窪んだ球形であることが可能である。
【0024】
下部ブイ部分44の中央の部分は、サンプ(sump:溜め)即ち低い部分103を規定することが可能であり、そこに、更にこの中で論じられるように、所定の量の材料が集められることが可能である。サンプ(溜め)103は、細胞フラクションなどのような、材料の選択された部分のペレットの形成を助けることが可能である。中央のポスト78は、軸方向のボア80を規定していて、ボア80をポスト78の外側の壁84により規定される外部の受け入れポート104に接続する貫通経路を含むことも可能である。ポート104は、サンプ(溜め)103の底部に配置されることが可能であり、チューブ78の中を通って、次に、抽出ポート50、抜き出しチューブ46、及び引き抜きポート48の中を通って、集められた材料を抜き出すことを可能にする。
【0025】
弁システム110は、中央のポスト即ちチューブ78の周りに配置されることが可能である。弁システム110は、シリコーン・ゴム材料などのような、適切な材料で作られた封止部材112を含むことが可能である。封止部材112は、丸い穴13などのような、中央の開口を含むディスクまたはワッシャとして構成されることが可能であり、中央のチューブ78を受け、その周りに取り付けられる。保持即ち弁駆動部材116は、上部開口が設けられたディスク即ちワッシャ117(表面領域で封止部材112と同様である)、及び取り付けまたは保持シリンダ即ちチューブ118(ディスク即ちワッシャ117から実質的に垂直に下方向に伸びる)を含むことが可能である。保持シリンダ118及びワッシャ117は、封止部材112の下方で、中央のチューブ78を受けてその周りに取り付けられる。保持シリンダ118は、表面74の上方で、フィン92のレッジ94と接触して、それにより支持されることも可能であり、それにより、フィン92に対して、チューブ78の周りに周囲の隙間を残して、シリンダ118を保持し、フィン92の間で、ウエッジ形のスペースの間の連絡をもたらす。簡単に言えば、封止部材112及びディスク117は、第一のブイ部分42に対して、フラッパー弁を形成することが可能である。保持部材116の上部ディスク117は、曲がること可能であり、この中で更に論じられるように、封止部材112を可能にし、第一のブイ部分42から遠ざかるように移動する。
【0026】
保持シリンダ118の高さは、開ける力が弁部分110に作用していないときに、それが、レッジ94に接触し、適切な高さでディスク117を支持し、封止部材112を環状の部材72の底部表面120に対して保持することを可能にする。リング・スポーク76は、環状の部材72と中央のチューブ即ちポスト78を相互に接続することが可能であるが、それだけではなく、スポーク部材76の間の経路122(即ち開口)形成する。経路122は、弁システム110により開けられたとき、材料が、分離ブイ・システム30の上方または外側領域から収集ボリューム40の中へ、移動することを可能にする。
【0027】
弁システム110は、封止部材112及び弁駆動部材116の両者を含む一体物として、形成されることが可能である。例えば、封止部材112は、駆動部分116のディスク117まで広がりまたはそれに付着するフレキシブルな材料、例えばシリコーン・ゴムなどのような材料、であることが可能である。それに代わって、封止部材112は、接着または他の接続機構で弁ディスク117に固定される、別個の部品であることが可能である。更に、それに代わって、封止部材112は、弁駆動部材116から分離され、弁駆動部材116のバイアス力で、適当な位置に保持されるのみであることが可能である。換言すれば、封止部材112は、駆動部材116と別に製造されること、あるいは、弁システム110と一緒に組み立てられことが可能である。
【0028】
弁駆動部材116は、この中で詳細に論じられるように、遠心力または圧力差の力などのような、力がそれに加えられたときに、曲がることが可能である材料から作られることが可能である。弁駆動部材116のために選択される材料は、アクリル、ポリカーボネイト、及び他の適切な弾性材料、及び、実質的に不活性材料を含むことが可能である。弁駆動部材116は、弾性材料、且つフレキシブルな材料から作られることが可能である。このようにして、駆動部材116は、第一のブイ部分42に対して、封止部材112上に、バイアス力即ち閉じる力をもたらすことが可能である。弁駆動部材116は、それ故に、開放位置から回復して、閉鎖位置に弁110を偏らせることが可能である。
【0029】
ブイ・システム30は、適切な材料から作られることが可能であって、分離システム20の中に配置され且つ分離される生物(生物学的な)材料に基づき選択される材料から作られることが可能である。ブイ・システム30は、しかしながら、約1.03g/mlから約1.10g/mlまでの範囲内、好ましくは、約1.045g/mlから約1.07g/mlまでの範囲内の平均密度を有する材料から作られることが可能である。ブイ分離システム30の密度即ち比重は、分離システム20の中に配置された材料に対して、分離コンテナ20の内側の領域または位置に、収集ボリューム40を配置するように、選択されることが可能である。ブイ・システム40の比重は、分離の間、分離された多成分材料の二つまたはそれ以上のフラクションの選択された境界面まで移動するように、選択されることが可能である。
【0030】
例えば、第二のブイ部分44は、単一の材料または複数の材料から作られることが可能であり、上部ブイ部分42は、単一の材料または複数の材料で作られても良い。密度は、部材のそれぞれが作られる材料の適切な部分を選択することにより、選択されることが可能である。ブイ・システム30の要素のそれぞれが作られる、材料の密度を選択することは、要素の相体的なボリューム、位置及び寸法を選択することと共に、材料の内側でのブイ・システム30の選択された配置を実現することを助けることが可能である。これらの材料は、システム20の中で分離される材料に対して実質的に不活性であるように、選択されても良い。
【0031】
図3〜7を参照しながら、分離システム20を使用する方法が示される。最初に、全組織サンプル140(例えば骨髄吸引液(bone marrow aspirate)、全血液、血液及び骨髄の組み合わせ)が、充填シリンジ60から導入することにより、分離システム20の内側に配置される。ブイ・システム30は、充填の間、分離コンテナ22の底部壁26の近くに配置されることが可能である。この中で更に論じられるように、ブイ・システム30は、遠心分離ステージの間、移動することが可能である。
【0032】
分離システム20の中に配置される全組織サンプル140は、適切な全組織サンプルであることが可能である。例えば、全組織サンプルは、全血液、骨髄吸引液、または全血液の混合物、及び骨髄吸引液を含むことが可能である。全組織サンプルは、米国特許第7,374,678号の中に記載されたものを含むことが可能であり、その内容は、上記のリファレンスによりこの中に組み込まれる。分離システム20の内部に配置された全組織サンプル140は、しかしながら、選択された部分またはフラクションの中に分離されることが可能であり、選択されたフラクションが、分離システム20から抜き出されることが可能である。
【0033】
分離システム20は、次いで、図4の中に示されているように、遠心分離デバイス150の中に配置されことが可能である。遠心分離デバイス150は、(分離ウエル)を備えた遠心分離部材即ちロータ152を含むことが可能であり、それらの分離ウエルは、分離システム20、及び適切なブランク、または他の分離システムを保持することが可能である。遠心分離機150は、GPS(R)血小板分離システムを備えた遠心分離機(Biomet 社から販売されている遠心分離機と同様な装置)を含むことが可能である。分離システム20は、遠心分離機の中で回転され、分離システム20の長手方向軸Aに沿って、底部壁26の方向へ、遠心力を作用させることが可能である。遠心分離の間に、多成分材料の材料が、成分の比重及び密度に基づいて、分離することが可能である。当業者により理解されるように、より密度が高い材料は、分離システム20の底部壁の方向へ移動し、より軽い材料は、頂部壁28の方向へ移動する。
【0034】
図5A及び5Bの中に示されているように、遠心分離の間に、密度が高い材料が底部壁26の方向へ移動するので、ブイ・システム30は、分離システム20の頂部壁28の方向へ移動することが可能である。ブイ・システム30は、分離コンテナ28の頂部の方向に、一般的に矢印Xの方向に、移動するので、遠心分離力、及び弁システム110の上にかかる材料の力は、弁システム110の外側のまたは周囲のエッジ112a及び117aなどのような、エッジを曲げること可能である。エッジ即ち外側の部分112a,117aが、下表面120から離れるように曲がりまたは移動するとき、弁が開けられまたはシールが外される。封止部材112は、環状の部材72の底部部分120などのような、環状の部材72に対して、開放位置からシールが離れまたはそこに移動する。
【0035】
図5Aの中に示されているように、且つ図5Bの中に詳細に示されているように、弁システム110のエッジ112a,117aが曲げられたとき、材料は、リング・スポーク76の間のボイド即ち経路122の中を通って、収集ボリューム40の中に、矢印Yの方向に移動されることが可能である。
【0036】
最初に、弁システム110は、遠心力及び収集ボリューム40の方向への全組織サンプル140の移動により、曲げられることが可能である。その後で、弁110は、開放位置に留まることが可能であり、遠心分離の間、ディスク112及び117のより密度が高いフレキシブルな材料と、プラズマなどのようなより密度が低い生物(生物学的な)材料との間の、密度の相違に起因して曲げられることが可能である。
【0037】
また、先に論じられているように、分離コンテナ22は、外側に曲がることが可能であり、遠心分離の間、ブイ・システム30がコンテナ22の内側で移動することを可能にする。ブイ・システム30は、選択された密度または比重を有していて、分離コンテナ22の内側で、遠心力により分離される、全サンプル140の適切な材料またはフラクションの選択された境界面まで移動することが可能である。コンテナ22の曲がりに起因して、ブイ・システム30と内壁32との間に、スペースが形成されることが可能である。このようにして、材料は、ブイ・システム30の周囲でで、Y’の方向に移動することも可能である。下部ブイ部分44は、ブイ・システム30が下部壁26から離れる動きを助ける円錐形下部表面45を含むことが可能である。
【0038】
図6の中に示されているように、一旦、遠心分離が十分に減速されまたは停止されたところで、弁システム110は、開ける力または外力が(例えば遠心力)無い状態で、駆動部材116のバイアス力により、閉じることが可能である。ブイ・システム30は、その選択された密度に起因して、収集ボリューム40が、分離されたサンプル140の内側の選択された境界面に配置されることを可能にすることが可能である。分離された全組織サンプル140は、分離コンテナ22の頂部壁28に最も近いことが可能である少なくとも第一のフラクション140a、及び、ブイ分離システム30の収集ボリューム40の内側にあることが可能である第二のフラクション140bを、含むことが可能である。コンテナ22が曲がるとき、第二のフラクション140bは、ブイ・システム30の周りを流れることが可能である。全サンプル140は、分離コンテナ22の底部壁26に最も近いことが可能である第三のフラクション140cを含むように、分離されても良い。
【0039】
遠心分離が停止された後、弁システム110は、第一のフラクション140aから、収集ボリューム40を閉じまたはシールすることが可能である。従って、分離または収集ボリューム40の内側での、第二のフラクション140bの抽出または除去の間、第一のフラクション140aは、第二のフラクション140bと干渉しまたはそれと混じることがない。弁システム110が、他のフラクションからの、選択されたフラクション即ち第二のフラクション140bの物理的な分離を維持することを助けることが可能であるので、分離された材料が、実質的に純粋に維持されることが可能である、高い収率を有している。
【0040】
一旦、分離が完了した後に、抽出引き抜きシリンジ即ちシステム160は、材料即ち選択されたフラクション140bを、分離ボリューム40から、チューブ46、抽出ポート50、中央のポスト即ちチューブ78、及び抜き出し孔104を介して、抜き出しポート48の相互接続を介して引き出すために使用されることが可能である。一旦、材料が、分離システム20から抜き出された後、例えば外科医などのようなユーザー170が、適切なやり方で、材料を患者180に適用することが可能である。例えば、抽出抜き出しシリンジ160は、針182に装着されまたはそれと相互接続されることが可能であり、それにより、患者180の中への選択されたフラクションの注入を可能にする。選択されたフラクション140bは、先に論じられているように、例えば組織再生、治療、または他の適切な目的などのような、選択された目的のために患者180に適用されることが可能である、未分化のおよび/または間質細胞を含むことが可能である。
【0041】
このようにして、分離システム20は、患者180への自己由来の細胞の導入を可能にすることが可能である。全組織サンプル140は、単一の操作手順の間に、送出シリンジ60を用いて、患者180から抜き出されることが可能である。遠心分離システム150は、適切に時間が調整された全組織サンプルの分離のために、手術室または手術室の近傍に配置されることが可能であり、選択されたフラクション140bの抽出抜き出しを可能にする。
【0042】
実施形態の以上の説明は、例示及び説明の目的で、提供されている。それは、包括的であることまたは本発明を限定することが意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般的に、特定の実施形態のみに限定されず、該当する場合には、互換性があり、且つ、特に示されまたは記載されていない場合であっても、選択された実施形態で使用されることが可能である。それらは、多くのやり方で変更されることも可能である。そのような変形は、本発明から逸脱するものとしてみなされるべきではなく、且つ、そのような変形の全てが、本発明の範囲の中に包められることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分材料を少なくとも二つのフラクションに分離するための分離システムであって、
内壁、第一の端部壁、及び第二の端部壁の内側で、ボリュームを規定する分離コンテナと;
力の影響の下で、多成分材料の選択された境界面まで移動するように構成された、前記ボリュームの中のブイ分離システムと;
を有し、
このブイ分離システムは、
第一のブイ部分と、第二のブイ部分と、弁装置と、を含んでいて;
第一のブイ部分は、第一のブイ部分の第一の側と第二の側との間の、経路を有し;
第二のブイ部分は、第一のブイ部分の第二の側から選択された距離にあって、この選択された距離は、第一のブイ部分の第二の側と第二のブイ部分との間の収集ボリュームを規定し;
前記弁装置は、封止部分及びフレキシブルな部分を有し、フレキシブルな部分は、第一のブイ部分に対して、封止部分を保持し、第一のブイ部分の中の前記経路をシールして、第一のブイ部分の第一の側の前記収集ボリュームの外側のボリュームから前記収集ボリュームを分離し;
前記弁装置は、力の適用により、第一のブイ部分からシールが開かれ、それにより、選択されたフラクションが前記収集ボリュームの中へ移動することを可能にするように構成されていること、
を特徴とする分離システム。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の分離システム:
遠心分離バケットを有する遠心分離システムを更に有し、
この遠心分離バケットは、前記分離コンテナを保持し、遠心分離バケットの中心軸の周りで前記分離コンテナを回転させて、前記分離コンテナの長手方向軸に沿って遠心力を加えるように構成されている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載の分離システム:
前記分離コンテナの第一の端部壁の中を通って伸びる抜き出しポートと;
第一のブイ部分と第二のブイ部分との間で、抜き出しポートと前記収集ボリュームを相互に接続し、前記弁装置が封止されたときに、間質細胞の抜き出しを可能にする接続チューブと;
を更に有し:
前記ブイ分離システムは、前記分離コンテナが前記遠心分離システムの中で遠心分離されたときに、多成分材料により前記ブイ分離システムに加えられる力に基づいて、前記分離コンテナに対して移動ように構成されている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1に記載の分離システム:
前記封止部分及び前記フレキシブルな部分は、互いに対して移動可能な別個の封止部材及びフレキシブルな部材であり;
この封止部材及びこのフレキシブルな部材のそれぞれは、第一のブイ部分から前記収集ボリュームの中に伸びる中央のチューブの周りで、前記弁装置を嵌め込む経路を規定する内側の壁を有し;
前記フレキシブルな部材の少なくとも一部は、第一のブイ部分に対して固定されている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項4に記載の分離システム:
前記中央のチューブの外側の壁の中を通って形成された抽出ポートが、前記収集ボリュームへの抜き出しのためのアクセスを可能にする。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項5に記載の分離システム:
第二のブイ部分は、上部壁を有していて、この上部壁が、間質細胞のペレットを集める中央のサンプを規定する。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項4に記載の分離システム:
前記フレキシブルな部材の周辺のエッジは、移動して、前記封止部材が第一のブイ部分からシールを開くことを可能にする。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項7に記載の分離システム:
前記フレキシブルな部材は、前記フレキシブルな部材の第二の部分に対して片持ち梁式に取り付けられて湾曲する第一の部分を含んでいる。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1に記載の分離システム:
前記分離コンテナの内壁は、円筒状のボリュームを実質的に規定し;
第一のブイ部分は、中央のポストの周りを伸びる環状の部材と、この中央のポストから前記環状の部材まで伸びるスポーク部材と、を含み;
前記スポーク部材及び前記環状の部材は、前記経路を規定し;
前記弁装置は、前記収集ボリュームに実質的に隣接する第一のブイ部分の第一の側と接触して、第一のブイ部分の中を通る前記経路をシールする。
【請求項10】
多成分材料を分離して少なくとも第一のフラクションを得るためのブイ分離システムを含む分離システムであって、
前記ブイ分離システムは、第一のブイ部分と、第二のブイ部分と、弁装置と、を有し;
第一のブイ部分は、第一のブイ部分の第一の側と第二の側との間の経路を有し;
第二のブイ部分は、第一のブイ部分の第二の側から選択された距離にあり、ここで、この選択された距離は、第一のブイ部分の第二の側と第二のブイ部分との間の収集ボリュームを規定し;
弁装置は、封止部材及びフレキシブルな部材を有し、このフレキシブルな部材は、第二のブイ部分と接触したとき、全体の選択された距離を、実質的に伸ばすために十分な寸法を有し、
前記フレキシブルな部材は、第一のブイ部分に対して前記封止部材を保持して、第一のブイ部分の中の前記経路をシールし、それにより、第一のブイ部分の第一の側の外側のボリュームからの、前記収集ボリュームの分離状態を維持すること;
前記弁装置は、力を作用させることにより、第一のブイ部分からシールが開かれ、それにより、第一のフラクションが前記収集ボリュームの中に移動することを可能にするように構成されていること、
を特徴とする分離システム。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項10に記載の分離システム:
内壁、第一の端部壁、及び第二の端部壁により規定されるボリュームを有する分離コンテナを、更に有している。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項10に記載の分離システム:
前記封止部材は、前記フレキシブルな部材に固定されている。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項11に記載の分離システム:
第一の端部壁の中を通って伸びる引き抜きポートと;
第一のブイ部分から伸びる抽出ポートと;
前記引き抜き部分と前記抽出部分を相互に接続するチューブと;
前記抽出部分から前記収集ボリュームの中に伸びるチューブと;
を更に有している。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項13に記載の分離システム:
前記チューブは、外側の壁を有していて、この外側の壁は、第一のブイ部分を、前記選択された距離で、第二のブイ部分に対して少なくとも部分的に固定して、第一のブイ部分と第二のブイ部分との間の前記収集ボリュームを規定し;
前記チューブの第一の端部は、第一のブイ部分まで伸び、
前記チューブの第二の端部は、第二のブイ部分の上部壁により規定されるサンプまで伸びている。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項13に記載の分離システム:
第二のブイ部分の前記上部壁は、チューブの軸に対して角度を付けて形成され;
その角度は、約45度から約90度までである。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項10に記載の分離システム:
前記フレキシブルな部材は、中央のハブ部分から径方向に伸びる第一のディスク部分を含んでいて、
この中央のハブ部分は、全体の選択された距離を実質的に伸ばし;
前記封止部材は、前記フレキシブルな部材により、第一のブイ部分に対して押圧されるように構成された環状の部材である。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項16に記載の分離システム:
前記フレキシブルな部材は、第二のブイ部分と前記封止部材との間に力を作用させて、第一のブイ部分の前記経路をシールするように構成されている。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項17に記載の分離システム:
第一のブイ部分は、チューブから環状の部分の内側の壁まで伸びるスポークを含んでいて;
前記経路は、前記スポークの外側の壁及び前記環状の部分の内側の壁により、少なくとも部分的に規定される。
【請求項19】
全組織サンプルから細胞を分離する方法であって:
分離コンテナ・システムの中に集められた全組織サンプルを配置し;
前記分離コンテナの中に配置された、集められた全組織サンプルに遠心力を作用させ;
遠心力を作用させている間に、且つ集められた全組織サンプルの材料の力で、ブイ分離システムを移動させ;
前記ブイ分離システムの第一のブイ部分を通る弁を開けて、第一のブイ部分と第二のブイ部分との間で、細胞フラクション収集ボリュームの中に入ることを可能にし;
遠心力を作用させることを停止したときに、前記弁を閉じて、前記収集ボリュームと第一のブイ部分の外側のボリュームとの間に物理的なバリアを形成し;
ここで、前記弁を開けることは、外部の力を作用させ、前記弁のフレキシブルな部分曲げて、前記弁の封止部分を、第一のブイ部分との接触状態から移動させることを含んでいること;
前記弁を閉じることは、前記フレキシブルな部分から外部の力を取り除き、前記フレキシブルな部分を回復させて、前記封止部分を、第一のブイ部分との接触状態に移動させることを含んでいること、を特徴とする方法。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項19に記載の方法:
前記外部の力は、少なくとも部分的に、遠心力であって;
前記弁を開けることは、前記収集ボリュームの外側のボリュームと、前記収集ボリュームの内側の圧力との間の圧力差に起因して生じ;
遠心力を作用させている間、前記弁を開放位置に維持することは、前記弁の密度が、前記収集ボリュームの中で、全組織サンプルの密度と比べて高いことに起因して生ずる。
【請求項21】
下記特徴を有する請求項19に記載の方法:
分離コンテナ・システムの中に集められた全組織サンプルを配置することは、分離コンテナ・システムの中に骨髄を配置することを含んでいる。
【請求項22】
下記特徴を有する請求項19に記載の方法:
分離コンテナ・システムの中に、集められた全組織サンプルを配置することは、分離コンテナ・システムの中に全血液を配置することを含んでいる。
【請求項23】
下記特徴を有する請求項19に記載の方法:
前記弁を開けることは、外部の力を、前記ブイ分離システムの少なくとも一部に対して固定されたフレキシブルな部分を作用させることを含んでいて、
ここで、外部の力を前記フレキシブルな部分に作用させることにより、前記フレキシブルな部分を湾曲させて、前記フレキシブルな部分を、前記ブイ分離システムの少なくとも一部により規定される経路から引き離し;
前記フレキシブルな部分を更に曲げることにより、第一のブイ部分を通る経路をシールする前記封止部分に対して加えられる力を取り除く。
【請求項24】
下記特徴を有する請求項23に記載の方法:
外部の力を前記フレキシブルな部分に作用させることは、外部の力をフレキシブルな部材に作用させて、前記フレキシブルな部材の第一の部分を、前記フレキシブルな部材の第二の部分に対して曲げることを含み;
第一の部分が、曲げられた形態にあるとき、前記封止部分が、開放位置に移動する。
【請求項25】
下記特徴を有する請求項19に記載の方法:
分離コンテナの中に、集められた全組織サンプルを配置することは、前記弁が閉鎖位置に偏らされた状態で、前記ブイ分離システムを含むコンテナの中に、集められた全組織サンプルを配置することを含んでいて、
前記弁を開けることは、力を作用させて、閉鎖位置にある前記弁のバイアス力に打ち勝つことを含んでいる。
【請求項26】
下記特徴を有する請求項25に記載の方法:
前記弁を閉じることは、外部の力を取り除いて、前記バイアス力が、前記弁を閉じるための主要な力になることを可能にすることを含んでいる。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−533304(P2012−533304A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520742(P2012−520742)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041942
【国際公開番号】WO2011/008836
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512012610)バイオメット・バイオロジクス,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】