説明

生物由来の天然カルシウムをナノ化状態で提供する方法

【課題】生物由来のカルシウム含有物からカルシウム、つまり天然カルシウムをナノ化状態で提供すること。
【解決手段】天然カルシウム可溶化溶液の製造方法は、岩石及び有機酸を含有する水に対して、振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施すことを特徴とする。これによって、天然のカルシウムが溶液状で安定化して含有するための天然カルシウム可溶化溶液を提供できる。特に、岩石は粉砕した花崗岩が好ましく、有機酸はクエン酸であることが好ましい。また、超音波照射処理の照射時間は約1時間以上、さらには5〜10時間施されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来のカルシウム含有物からカルシウム、つまり天然カルシウムをナノ化状態で提供するための方法に関し、より詳細には、天然カルシウムをナノ化状態に溶解して安定化させる液体の製造方法、天然カルシウムがナノ化状態で溶解し安定化された液体の製造方法、それらの方法で製造された各液体及び当該液体を含んでなる機能性飲料、当該液体を用いて製造されるナノ化天然カルシウム粉末及び当該粉末を含有する機能性食品、並びに、液体中における天然カルシウムの安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の健康ブームにおいて、多様な機能性食品が市販されており、機能性食品の拡大に伴って、その製造(方法)においても様々な工夫がもたらされてきている。
【0003】
例えば、機能性食品の機能性をもたらす成分に自然成分・天然由来を求める需要が高まっており、有効成分(例えば、ビタミンCなどのビタミン類など)を化学工業的に合成するのではなく、天然素材物(例えば、植物、海洋生物、堆積物など)から効率よく抽出する技術が日々研究されている。また、天然素材の有効成分であっても、より効果的に摂取できるように、固体状の有効成分を人体が吸収しやすいように粉砕加工、さらには、超微細粉末化(ナノ化)するために、高度なマイクロナノ技術を用いたり、あるいは、消化器官での吸収性をより高めるために、薬剤による抽出加工技術で液体状にしたドリンク飲料で提供したりと、さまざまな試みがなされた調製がされている。
【0004】
特に、機能性飲食品としての有効性を高めて迅速で確実な効果を得るためには、上述したように、有効成分の人体への吸収率が高く、かつ、効率的に吸収される必要があり、多様な試みがなされている。とりわけ、日本人の食生活上で不足しがちなカルシウムで様々な提案がされている。
【0005】
例えば、可溶性カルシウムを含むカルシウム吸収効率の高い飲食品が提案されている。(特許文献1参照)また、水酸化カルシウム等の可溶性カルシウムと、安定化剤を添加してカルシウムを強化した牛乳が提案されている。(特許文献2参照)また、豆乳に可溶性カルシウムを含有したミネラル強化蛋白飲料が提案されている。(特許文献3参照)さらには、水酸化カルシウム等のカルシウム塩基とクエン酸等の酸との沈殿を少なくするように制御しつつオレンジ果汁等に含有させたカルシウム強化フルーツドリンクが開示されている。(特許文献4参照)さらにまた、他の食品成分の影響を受けにくく、かつ、他の食品成分への影響を与え難い可溶性に優れたカルシウム成分、及び該カルシウム成分を含む飲食品が提案されている。(特許文献5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−64566
【特許文献2】特表2005−523034
【特許文献3】特開2006−61064
【特許文献4】特表2004−530424
【特許文献5】特開2008−194021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本発明により与えられる。なお、前掲の特許文献の夫々は、引用をもって本明細書に組み込んで記載されているものとする。
【0008】
しかしながら、カルシウム単体あるいはカルシウム塩は、沈殿し易く、特に、結着剤や品質改良剤、安定剤などの食品添加剤と反応して沈殿する傾向があって、可溶性を維持できず、生物体内への吸収が困難となる問題がある。このように、カルシウムは摂取量が足りていない栄養素であるにも係わらず、その摂取効率が高くなく、カルシウムの吸収効率を改善することが懸案事項とされている。
【0009】
そこで、生物体内へのカルシウムの吸収効率を高めるため、また、カルシウムを自然に形成した天然素材物質(つまり、生物由来のカルシウム含有物)から抽出して機能性飲料又は機能性食品などの飲食品とする場合、天然カルシウムを超微細粉末化(つまり、ナノ化)することが有効であるが、原材料とする素材物質によってはナノ化が困難であったり、または、粉末化した成分を液体状にした場合でも、ナノ化が不完全で、有効成分が完全に溶解せずに溶液中に分散浮遊する状態となり、凝集し易く経時的に沈降又は沈殿固化してしまい、安定な液体の状態で提供することが不十分であった。
【0010】
また、天然カルシウムをナノ化した固体として提供する際にも、自然に形成した生物由来の天然カルシウムを含有する天然素材物質、例えば、天然のカルシウムを豊富に含有する魚貝類の貝殻を原材料物質とする場合、塩酸で確実に分解してナノ化することは可能であるが、塩酸などの有毒な薬品を飲食品の原材料の調製に使用することは好ましくないこともあった。さらに、工業的な手法を用いてナノ化することもできるが、高コストであり現実的ではなかった。
【0011】
このように、カルシウム不足に悩まされる現代人のカルシウムの摂取効率を高めるため、飲食品として安全に供給できる手法で、しかも生物由来の天然カルシウムをナノ化状態で提供すること、特に、天然カルシウムが完全に溶解した状態を保ち、安定して溶液中に含有する形態や、ナノ化した粉末の天然カルシウムを低コストで提供するためのさらなる検討が必要とされている。
【0012】
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、生物由来のカルシウム含有物(自然に生成したカルシウムを含有する天然のカルシウム含有素材物質)から天然カルシウムをナノ化状態で提供すること、そのための方法を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、天然カルシウムをナノ化状態に溶解して安定化させる液体の製造方法、天然カルシウムがナノ化状態で溶解し安定化された液体の製造方法、それらの方法で製造された各液体及び当該液体を含んでなる機能性飲料、並びに、当該液体を用いて製造されるナノ化天然カルシウム粉末及び当該粉末を含有する機能性食品、並びに、液体中における天然カルシウムの安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、岩石及び有機酸を水に添加して振動処理、好ましくは超音波照射処理を施し調製した溶液に、さらに魚介類の貝殻など生物由来のカルシウム含有物(天然のカルシウム含有素材物質)を混合して超音波照射処理を再度施すことによって、貝殻に含有されていた天然の炭酸カルシウムが溶出して、カルシウムイオンとして完全に溶解して液体中で安定であることを見出した。つまり、本発明者らは、天然カルシウムをナノ化状態にする方法、さらに、当該方法によってナノ化状態の天然カルシウムを得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の一視点において、天然カルシウム可溶化溶液の製造方法は、岩石及び有機酸を含有する水に対して、振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施すことを特徴とする。これによって、天然のカルシウムが溶液状で安定化して含有するための天然カルシウム可溶化溶液を提供できる。また、岩石は火成岩から選択して用いることができ、特に、花崗岩がより好ましい。花崗岩は粉砕して用いることが好ましく、粉砕した場合の花崗岩の粉砕物は、一辺が約0.5乃至1.5mm程度の立方体の形態が好ましい。この場合、有機酸は摂取可能な有機酸、特にクエン酸であることが好ましい。また、超音波照射処理の照射時間は約1時間以上、さらには5〜10時間施されることが好ましく、粉砕された花崗岩と粉末状のクエン酸が超音波によって十分攪拌されることで、天然カルシウム可溶化溶液中には、花崗岩が含有していた鉱物由来のミネラル金属が溶出され、このミネラル金属の作用によって天然のカルシウムを完全に溶解することができる、天然カルシウム可溶化溶液を製造できる。
【0015】
本発明の別の視点によると、本発明は、上記方法により製造された天然カルシウム可溶化溶液であり、例えば、岩石に花崗岩を用い、含有量を適宜変更することによって、岩石鉱物から溶出したミネラル金属を豊富に含む天然カルシウム可溶化溶液を提供することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の別の一視点において、天然カルシウム溶解溶液の製造方法は、上記の製造方法に続けて、生物由来のカルシウム含有物を加えて、さらに振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施すことを特徴とする。これによって、生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムが溶液状で安定化して含有する天然カルシウム溶解溶液を提供できる。
【0017】
また、本発明の天然カルシウム溶解溶液の製造方法において、生物由来のカルシウム含有物は、天然の炭酸カルシウムを豊富に含有する、貝類の貝殻、サンゴ、又はそれらの化石を用いることができるが、帆立貝又は牡蠣の貝殻を用いることが好ましく、その中でも特に、帆立貝が好ましい。生物由来のカルシウム含有物に帆立貝の貝殻を用いることによって、また、貝殻は粉砕して用いることが好ましく、粉砕した場合の貝殻粒子の粒径は、約0.5乃至1.5mm程度が好ましい。さらに、超音波照射処理を約1時間以上、さらには1乃至15時間程度施すことによって、天然カルシウム溶解溶液には帆立貝の貝殻が含有していた炭酸カルシウムが溶出して、天然カルシウムが完全に溶解し、溶液中にカルシウムイオンの状態で存在することによって、天然のカルシウムを溶液状態で含むことができる。
【0018】
本発明のさらに別の視点によると、本発明は、上記方法により製造された、上記の生物由来カルシウム含有物の天然カルシウムがイオン化して溶液状で安定化して含有する天然カルシウム溶解溶液であり、例えば、上記の天然カルシウム溶解溶液の製造方法において、その素材のほとんどが炭酸カルシウムからなる帆立貝などの貝類の貝殻を用いることによって、生物由来カルシウム含有物の天然カルシウムが溶液状に安定化して大量に含有する天然カルシウム溶解溶液を提供することができる。この場合、天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウム可溶化溶液に添加する生物由来カルシウム含有物の添加量を調節することによって、天然カルシウム溶解溶液に含有するナノ化された天然カルシウム量を調整することができる。それによって作製された天然カルシウム溶解溶液は、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和内で存在すれば、完全な溶解状態となり、透明な溶液として提供でき、また、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和点を超えてナノ粒子として析出しても、固化することはなく、ナノ化された天然カルシウムが溶液内で流動する(ナノ化流動状態)溶液として提供することができる。また、この天然カルシウムのナノ化流動状態溶液は水で希釈することにより透明な溶液の天然カルシウム溶解溶液として提供することができる。
【0019】
本発明のまた別の視点によると、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウム濃度が1%以上であり、さらに好ましくは、23%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解した状態ないしナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有されることを特徴とする。これにより、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和内で存在すれば、透明な天然カルシウム溶解溶液として提供でき、また、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和点を超えても、ナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液として提供することができる。
【0020】
本発明のまた別の視点によると、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウムの濃度が23%以下であり、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解した状態で含有されることを特徴とする。これにより、透明な溶液の天然カルシウム溶解溶液として提供することができる。
【0021】
本発明のまた別の視点によると、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウムの濃度が少なくとも28%以上であり、さらに好ましくは、50%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中にナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有されることを特徴とする。これにより、ナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液として提供することができる。
【0022】
また、本発明の別の視点によると、本発明のナノ化天然カルシウム粉末は、溶解した天然カルシウムが飽和状態の天然カルシウム溶解溶液に対して、生物由来のカルシウム含有物をさらに加えて溶解し、析出した天然カルシウムのナノ粒子を沈殿凝固・乾燥させることによって得ることができる。つまり、上記方法により製造された透明な液体(溶解した天然カルシウムが飽和状態)の天然カルシウム溶解溶液に対して、生物由来のカルシウム含有物をさらに加えることで、溶解された天然カルシウムがナノ粒子(ナノ化天然カルシウム)として析出し、ナノ化天然カルシウムを沈殿凝固させ乾燥することによって得ることができる。このようにして得られたナノ化天然カルシウム粉末は、天然カルシウム可溶化溶液に再度溶解することができる。
【0023】
また、本発明の別の視点によると、上記の天然カルシウム溶解溶液を用いた飲食品を提供でき、特に、天然カルシウム溶解溶液を用いると、視力の回復等、健康の改善に有効な機能性飲料を提供することができる。また、本発明の機能性飲料は、天然カルシウム可溶化溶液100mlに対して可溶化した天然カルシウムを1g以上、さらに上限で1.5gを透明な状態において含有することができ、この範囲で天然カルシウム溶解溶液のカルシウム濃度を調整することによって、機能性を高めた飲料を提供することができる。また、天然カルシウムがナノ化流動状態で含有する天然カルシウム溶解溶液を用いて飲料とすることも可能であり、例えば、天然カルシウム濃度が28%以上、さらには50%以上のナノ化流動状態で含有される天然カルシウム溶解溶液を含有する機能性飲料とすることもできる。さらに、これらの高濃度機能性飲料は希釈して飲用することもできる。さらにまた、本発明のこれらの機能性飲料は、寒天などの固形化剤(ゲル化剤)を添加して調製することで、機能性飲料を固形(ゲル状)にして、つまり機能性食品として提供することもできる。
【0024】
また、本発明の別の視点によると、上記ナノ化天然カルシウム粉末を用いた食品を提供でき、特に、ナノ化天然カルシウム粉末を用いることで、視力の回復等、健康の改善に有効な機能性食品、好ましくは嗜好食品、例えば飴菓子を提供することができる。また、本発明の機能性食品は、当該機能性食品の総質量ないし重量の少なくとも1質量%、さらには10質量%にナノ化天然カルシウム粉末を用いられることが好ましいが、含有量を調整することによって、機能性を高めた様々な種類の機能性食品を提供することができる。また、機能性食品は、球状、錠剤状、カプセル状などの形状に限らず任意の形態とすることができる。
【0025】
さらにまた、本発明のさらなる別の視点によると、本発明の天然カルシウム安定化方法は、岩石及び有機酸を含有する水に振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施し、さらに、生物由来のカルシウム含有物を加えて、さらなる超音波照射処理を施すことで、生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムを完全に溶解してイオン化し、天然カルシウムを溶液中に安定化することを特徴とする。ここで、岩石は火成岩などの花崗岩類を用い、特に、花崗岩を用いることが好ましいが、花崗岩と同様の鉱物を含有する岩石であれば制限されないで用いることができる。また、花崗岩は粉砕して用いることが好ましく、特に、0.5mm乃至1.5mm格が好ましい。さらに好ましくは、1.0mm格である。また、有機酸はクエン酸又は酢酸を用いることが好ましいが、特には、クエン酸が好ましく用いられる。生物由来のカルシウム含有物は、魚貝類の貝殻が好ましく用いられる。魚介類の貝殻は、自然に形成した炭酸カルシウムを豊富に含有するものであり、特に、帆立貝又は牡蠣の貝殻は、そのほとんどが炭酸カルシウムから構成されるものであり、なかでも、とりわけ帆立貝を用いることが好ましい。これによって、溶液中には、花崗岩に含有される鉱物からミネラル金属が溶出し、作用機序は明らかでないが、その溶出されたミネラル金属が貝殻を構成する天然カルシウムに作用して、天然カルシウムをイオン化することで、天然素材物質に含有する自然に生成した天然のカルシウムが安定して溶液中に含有することができるものと考えられる。花崗岩の鉱物からの溶出ミネラル成分としては、数10mg以下のK、Mg、Zn等が確認されている。また、超音波照射処理は、夫々、約1時間以上、さらには5〜10時間及び約1時間以上、さらには1〜15時間程度を施すことが好ましい。これによって、花崗岩由来のミネラル金属が生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムを安定した状態に保ち、或いは溶液中に天然カルシウムがナノ化状態で存在し、天然カルシウムが完全に安定化されることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、本発明の岩石及び有機酸を含有する水に対して振動処理、例えば、超音波照射処理を施す天然カルシウム可溶化溶液の製造方法によって、天然カルシウムを溶液状で安定して含有するための天然カルシウム可溶化溶液を得ることができる。また、この天然カルシウム可溶化溶液に、生物由来のカルシウム含有物(天然のカルシウム含有素材物質)、例えば、帆立貝や牡蠣の貝殻を加えて、さらなる超音波照射処理を施すことによって、天然カルシウムが沈殿せず、完全に溶解して安定した、天然カルシウム溶解溶液を得ることができる。特に、岩石に花崗岩を、有機酸にクエン酸を、貝殻に帆立貝を用いることが最も好ましい。これによって、天然カルシウム可溶化溶液のミネラル金属が天然カルシウムと反応して溶液状態を維持し、天然カルシウムを含有する、天然カルシウム溶解溶液を提供することができる。また、生物由来のカルシウム含有物、例えば、帆立貝や牡蠣の貝殻を過剰に加えることで、溶解されたナノ化天然カルシウムが溶液内で流動する天然カルシウム溶解溶液を得ることができ、この溶液は水に希釈して透明な天然カルシウム溶解溶液とすることができる。さらに、溶解した天然カルシウムが飽和状態の天然カルシウム溶解溶液に対して、生物由来のカルシウム含有物をさらに加えて溶解し、沈殿凝固・乾燥させることによってナノ化天然カルシウム粉末を得ることができる。このような、天然カルシウムを豊富に含有する天然カルシウム溶解溶液を機能性飲料として、また、ナノ化天然カルシウム粉末を機能性食品、好ましくは嗜好食品としての飴菓子の原材料として用いることで、視力回復、滋養強壮等の健康の改善に顕著な効果を発揮し、特に、視力回復においては、機能性飲料では飲用後約30分、機能性食品では飲食後3時間の短時間で著しい効果が発揮できる。
【0027】
さらにまた、岩石及び有機酸を含有する水に、振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施し、さらに、生物由来のカルシウム含有物を加えて超音波照射処理を再度施すことを特徴する、天然カルシウム安定化方法を提供できる。また、超音波照射処理は、夫々、5〜10時間及び1〜15時間程度を施すことが好ましい。特に、岩石では花崗岩を用い、有機酸にはクエン酸を用い、生物由来のカルシウム含有物には帆立貝の貝殻を用いることによって、また、特に、花崗岩及び生物由来のカルシウム含有物の添加量、粒径、濃度等を調節することによって、花崗岩由来のミネラル金属を十分に溶出して溶液中に含有させることで、帆立貝の貝殻由来の豊富な天然カルシウムを完全に液体中で安定化できる状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1で使用した超音波洗浄装置の正面図である。
【図2】実施例1で使用した超音波洗浄装置の洗浄槽を示す図である。
【図3】実施例1(1)の天然カルシウム可溶化溶液の成分分析を示す図である。
【図4】実施例1(2)の天然カルシウム溶解溶液の成分分析を示す図である。
【図5】カルシウムの違いにより天然カルシウム溶解溶液の溶解度を比較した図である。
【図6】実施例3の視力検査で用いた簡易試視力表を示す図である。
【図7】実施例3(1)の視力検査を示す図である。
【図8】本発明の機能性食品の様々な形態を示す図である。
【図9】実施例3(2)の視力検査を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、代表的な実施形態を中心に詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。特に、記載した数値ないし数値範囲については、その上限以下ないし下限以上の間において、任意の中間値を含むものとする。例えば、「1〜10」という場合、1、2、3、、、5、、、9、10と任意の中間値を含むものとする。
【0030】
生物由来のカルシウム含有物から天然カルシウムをナノ化状態で提供するための方法として、まず、本発明の天然カルシウム可溶化溶液の製造方法を説明する。
【0031】
ここで、ナノとは一般に「単位」のことを表し、1nm(ナノメートル)とは10億分の1m=100万分の1mm=1000分の1ミクロンとなり、ここまで物体を小さくする技術のことをナノ化という。この技術を生物(ヒト)が摂取するもの(ヒトの体に必要とされる多くの栄養素)において、活かすことができれば、細胞の一つ一つまで十分に吸収することができ、体内において吸収された栄養素等が十分にその機能を発揮することができる。本明細書において、「天然カルシウムをナノ化状態で提供する」とは、カルシウムが効率的に吸収され、体内で活躍できるようになるために、イオン化(カルシウムが水に溶けた状態)された状態(液体状)、又は、物理的に1nm程度の大きさ(固体状)で提供することをいい、ナノ化とも呼ぶ。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、天然カルシウム可溶化溶液の製造方法は、岩石及び有機酸を含有する水に対して振動処理を施すことを特徴とする。より具体的に説明すると、岩石(約10kg)、有機酸(約10kg)及び水(約10L)を、振動処理、好ましくは、超音波照射処理を施すことができる容器、例えば、超音波発振(照射)装置の槽に入れ、常温で超音波照射を約5時間〜10時間程度施すことによって、本発明の天然カルシウム可溶化溶液を作製することができる。
【0033】
本明細書でいう天然カルシウム可溶化溶液とは、固体の天然カルシウムを完全に溶解することができる溶液であるが、天然カルシウムを溶解し、かつ、溶解した天然カルシウムを常に溶液状態(つまり、カルシウムイオンの状態)で安定に保つことができる溶液を意味する。換言すると、天然カルシウム可溶化溶液は、溶解した天然カルシウムの沈降又は沈殿があっても、それら沈降又は沈殿の固化反応を全く起こさない溶液である。また、天然カルシウム可溶化溶液に溶解させるカルシウムは、自然界で自然に生成した生物由来の天然カルシウムである。
【0034】
上述したように、従来の手段で固体カルシウムを溶液中に溶解した場合、数日以内にカルシウムが沈降ないし沈殿固化してしまい、カルシウムを常時液体状で安定して供給できることはなかったが、本発明の天然カルシウム可溶化溶液によって溶液中で安定したカルシウムのナノ化が可能となった。
【0035】
まず、水に添加される岩石及び有機酸について説明する。
【0036】
岩石は、マグマが冷えたり、堆積物が続成作用を受けて固結した形態、または、既存の岩石が変成作用を受けた形態を有するものであり、地殻とマントルを構成する主要な物質が凝集して存在するものである。
【0037】
本発明で用いる岩石は、火成岩を用いることができ、火成岩には、火山岩及び深成岩があり、火山岩は流紋岩、安山岩及び玄武岩を含み、深成岩は花崗岩、閃緑岩及び斑レイ岩を含む。火成岩は、成分組成(化学組成(シリカの含有量))によって、酸性岩(流紋岩と花崗岩)、中性岩(安山岩と閃緑岩)、苦鉄質岩(玄武岩と斑レイ岩)に分類され、この順にシリカの含有量が減少している。
【0038】
このなかでも特に、多くのミネラル金属をバランスよく含有する、花崗岩を用いることができる。また、花崗岩は、その含有成分が流紋岩と同様であり、流紋岩も花崗岩と同様に好ましく用いることができ、例えば、流紋岩としては黒曜岩を用いることができる。花崗岩は、石材(通称:御影石として流通)としての流通性が高くて入手し易く、また、他の岩石と比較しても取り扱いの点で好ましく、さらにまた、市販のミネラルウォーター(天然水)のミネラル源でもあり、含有ミネラルが溶出し易いこともあって、特に好ましく用いることができる。花崗岩には、黒雲母花崗岩、両雲母花崗岩及び閃雲母花崗岩があり、種類に関係なく用いることができる。
【0039】
また、花崗岩の主要構成鉱物は、石英、カリ長石、斜長石、黒雲母、白雲母、普通角閃石であり、磁鉄鉱、柘榴石、ジルコン、燐灰石などの副成分鉱物を含むこともある。
【0040】
表1に、例として、産業技術総合研究所による岩石標準試料の一つであるJG-2(岐阜県蛭川村の苗木花崗岩)の組成を示す(単位は重量%)。なお、花崗岩は、その産地の地質・地形によって、含有鉱物の種類や比率が様々に異なっており、それに応じて、含有ミネラル金属及びその組成比が異なることもあるが、本発明の花崗岩は産地に関係なく用いることができる。
【0041】
【表1】

【0042】
本発明による天然カルシウム可溶化溶液の製造方法によって、花崗岩に含有されている多種多様のミネラル金属が、上述した有機酸及び超音波照射処理の作用により天然カルシウム可溶化溶液に溶出する。本発明で用いる岩石としては、上述した花崗岩類に属する岩石であれば、制限なく用いることができる。
【0043】
この溶出したミネラル金属が、溶液中に添加された天然の固形カルシウムに作用することで天然カルシウムは完全に溶解し、溶解した天然カルシウムが固化せずに、イオン化した状態となり、常に溶液状態ないしナノ粒子状態(「ナノ化状態」という)を保つことができるものと考えられる。
【0044】
また、本発明において使用する岩石は、可能な限り、粉砕した状態で用いることが好ましく、粉砕加工された状態で用いられることがより好ましい。岩石を粉砕して細かくすることによって、岩石に含有されるミネラル金属が溶出しやすくなるためである。粉砕した岩石であれば、適宜用いることができ、特に、粉砕加工された岩石の大きさは、一辺が約0.5mm乃至1.5mm程度の立方体形が好ましく用いられるが、さらには1mm程度がより好ましく、超音波処理で十分に攪拌される程度の大きさであれば、粒子形でもよく、その粒径に制限はない。また、岩石は市販されているものを入手して用いることができ、粉砕加工済みの市販の製品を用いてもよい。
【0045】
また、使用する岩石は、一例として、市販の約10kgの岩石の粉砕物を超音波処理槽(容量約30L)に充填して用いることが好ましいが、その使用量は特に制限されず、超音波処理槽及び超音波発振機の種類や性能に応じ適宜調節して使用することができる。岩石の添加量を変化させることによって、岩石から溶出するミネラル金属の含有量を調節することができ、添加されるカルシウム量に対応したミネラル金属を含有する天然カルシウム可溶化溶液を製造することができる。
【0046】
また、本発明で用いる有機酸はクエン酸が好ましく、無水化物であり、特に、粉末状が好ましく、市販されているものを適宜入手して用いることができる。また、クエン酸以外に、酢酸などの有機酸を用いてもよい。また、飲食品としての原材料に用いることができ、人体に無害な有機酸であれば、特に制限されないで、必要に応じて適宜用いることができる。有機酸の使用量も、岩石の場合と同様に、約10kgであるが、その使用量は適宜調節して用いてよい。また特に、クエン酸は、天然カルシウム可溶化溶液に添加される、生物由来のカルシウム含有物の大半を占める炭酸カルシウムを容易に溶解することができる。
【0047】
また、本発明で使用する水は、飲料用に適した水であればよく、例えば、各市町村の上水道から取水される水を用いることができるが、特に制限はない。水の使用量も、岩石及び有機酸の場合と同様に、約10L(約10Kg)であるが、その使用量は適宜調節して用いてよい。
【0048】
次に、本発明で用いる振動処理を説明する。振動処理は超音波照射処理が好ましく、超音波発振(照射)装置が好ましく使用される。
【0049】
本発明の天然カルシウム可溶化溶液の製造方法では、一例として、市販の約10kgの岩石(花崗岩)の粉砕物ないし粒子、約10kgの有機酸(無水クエン酸粉末)及び約10Lの水を容器等(約30L容量)に入れて超音波照射処理するが、例えば、超音波発振(照射)装置の槽に入れて、そのまま超音波照射処理することが好ましい。より具体的には、市販されている超音波洗浄装置であって、約30L容量サイズの槽を有する超音波洗浄装置を用いて超音波照射処理を行うことが好ましいが(図1及び2参照)、上記の原材料を十分に含んで超音波照射処理を施せることができれば、これに限定されるものではない。
【0050】
また、本発明の天然カルシウム可溶化溶液の製造方法で用いる超音波照射処理は、一例として、28KHz程度、900W程度の超音波照射を常温で約1時間以上、好ましくは約5〜10時間処理することができる。また、超音波は、岩石(花崗岩)粉砕物及び有機酸(無水クエン酸)粉末を含んだ水に対して、容器ないし超音波発振(照射)装置の槽の底部から水面に向かう方向、つまり、上方の垂直方向で照射することが好ましいが、横(水平)方向ないし斜め方向であってもよく、超音波発振が有効に作用すればよい。また超音波発振機の数も、必要に応じ、適宜選択すればよいが、十分強力な場合、一機でかなりの量の処理が可能である。この超音波照射を容易にするため、市販の超音波洗浄装置が好ましく用いられるが、上記容器ないし装置の槽の底部から水面に向かう方向で超音波照射を施せる装置であればよく、特に制限されない。例えば、図1及び2に示すような、洗浄槽と一体型の超音波洗浄装置が好ましく用いられ、また、このタイプの超音波発振(照射)装置は、超音波照射を洗浄槽の底部から水面方向に向かって施すことができる形態なので容易に操作することができ、特に好ましい。
【0051】
本発明で用いる超音波照射は、上記の超音波洗浄装置によって当該装置の槽の底部から水面へと向かう方向に照射することで、岩石の粉砕物、好ましくは花崗岩の粉砕物ないし粒子と、有機酸、好ましくは、無水クエン酸粉末を含んだ水を十分に攪拌することができる。これによって、花崗岩の粉砕物からミネラル金属が十分に溶出することができる。
【0052】
超音波照射処理時間は少なくとも約5時間施すことが好ましく、より長い時間(約10時間)まで施せば、溶液中に溶出するミネラル金属の濃度が高くなる。また、岩石粉砕物の大きさに応じて超音波照射の処理時間を適宜調整することができ、ミネラル金属の濃度を高めることができる。例えば、岩石粉砕物の大きさが小さければ超音波照射の処理時間は短くてもミネラル金属が十分に溶出するが、一方、岩石粉砕物の大きさが大きい場合は超音波照射の処理時間を長くすることでミネラル金属を十分に溶出させることができる。
【0053】
このようにして作製された溶液が、本発明の天然カルシウム可溶化溶液であり、この天然カルシウム可溶化溶液は、超音波照射処理と有機酸、特に、クエン酸の作用によって、岩石粉砕物から溶出されたミネラル金属を十分に溶出するものと考えられる。この天然カルシウム可溶化溶液中のミネラル金属の影響を受け、天然カルシウム可溶化溶液に添加される、生物由来のカルシウム含有物の自然に生成された固体カルシウムが容易に溶解される。
【0054】
また、攪拌処理後の容器ないし超音波発振(照射)装置の槽内には、その底部に岩石粉砕物ないし粒子が沈降するが、天然カルシウム可溶化溶液は、当該溶液(つまり、上澄)だけを注出して保存若しくは利用し、又は、別途、天然カルシウム源を添加して用いることもできる。あるいは、天然カルシウム可溶化溶液は、超音波照射処理を施した槽から注出せずにそのまま槽内に天然カルシウム源を添加させて用いることもできる。
【0055】
また、本発明の別の好ましい実施態様においては、上記攪拌処理を行った直後の容器ないし超音波発振(照射)装置の槽内の天然カルシウム可溶化溶液に、自然に生成したカルシウム源として、生物由来のカルシウム含有物を直接加え、超音波照射処理をさらに施すことによって、本発明の天然カルシウム溶解溶液を得ることができる。
【0056】
カルシウムは人体における様々な働きに対して有用に作用する機能を有することが知られているが、上述したように、サイズの大きい固形物から摂取するよりも、ナノ化状態、つまり、溶液(イオン化)状態や固体(ナノ化された微粉末)状態で摂取することで、消化器官等から容易かつ迅速に吸収されて、細胞に到達し、その効果を発揮するものと考えられる。特に、カルシウムは筋肉の働きに作用することが知られているが、他にも神経伝達の改善や老化の改善、滋養強壮などに有効であることが知られており、人体にとって有用な成分である。
【0057】
ここで、本明細書でいう天然カルシウム溶解溶液とは、固体カルシウム、特に、生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムを溶解した場合に、カルシウムの固化(沈殿固化)を生じないで、天然カルシウムが溶解された(固化を生じなければ、溶解されたナノ化天然カルシウムの懸濁ないし沈降ないし沈殿があってもよい)溶液状態を保つ(つまり、天然カルシウムの溶解された(イオン化)状態が安定化された)溶液を意味する。
【0058】
より具体的に説明すると、天然カルシウム溶解溶液は、上記で作製された天然カルシウム可溶化溶液に、生物由来のカルシウム含有物を約3kg加えて、常温で上記同様の振動処理、例えば、28kHz、900Wの超音波照射を約1〜15時間施すことによって作製される。生物由来のカルシウム含有物は、天然カルシウム可溶化溶液に添加すると、溶解され始め、さらに攪拌されることで、生物由来のカルシウム含有物は完全に溶解された状態となる。
【0059】
生物由来のカルシウム含有物の添加量は、上述の装置の場合、約3kgが好ましいが、製造される天然カルシウム溶解溶液の目的とするカルシウム濃度に依存して、適宜添加量を調節することができる。なお、この場合の濃度は約23%であるが、本発明の天然カルシウム溶解溶液における天然カルシウム濃度は1%以上であればよい。
【0060】
本発明で用いる生物由来のカルシウム含有物は、天然に生成したカルシウム素材で、かつ、容易に溶解できるものであり、これらの条件を有する天然素材物質であれば制限はされない。特に、炭酸カルシウムは、自然に生成した天然カルシウム素材の主な成分であり、また炭酸カルシウムは、有機酸、特に、クエン酸に溶解し易い。例えば、貝類の貝殻、サンゴ、又はそれらの化石を形成する主要物質は、海中の二酸化炭素とカルシウムから構成された炭酸カルシウムであるが、数%はタンパク質、カルシウム以外の海水中のミネラル成分などである。このように、貝類の貝殻は、カルシウムを豊富に含有するだけでなく、海水に含有されている有用なミネラルもバランスよく含有し、また、入手がし易く、さらに粉砕加工も容易なために、好ましく用いられる。特に、帆立貝又は牡蠣の貝殻はほぼ100%が炭酸カルシウムから構成されているため、好ましく用いられる。なかでも、帆立貝の貝殻はすでに食品添加物として使用されており、安全性の問題がないので、特に好ましい生物由来のカルシウム含有物である。帆立貝の貝殻の分析データを示すと、貝殻の成分としては、灰分98.6%、タンパク質1.2%、水分0.6%及び塩分0.01%であり(pH9.5)、さらに、灰分の成分としては、炭酸カルシウム98.1%、二酸化珪素0.5%、炭酸マグネシウム0.2%、無水リン酸0.2%及びその他1.0%である(北海道食品加工センターの分析データによる)。
【0061】
本発明において、生物由来のカルシウム含有物は、そのままの状態で用いてもよいが、粉砕した状態で用いることが好ましく、粉砕加工された状態で用いられることがより好ましい。粉末状にすることで、天然カルシウム可溶化溶液との反応性を高めることができるためである。生物由来のカルシウム含有物は、市販品を適宜用いることができる。例えば、粉砕加工された天然のカルシウム含有素材の大きさは、粒径約0.5mm乃至1.5mm程度が好ましいが、特に約1mm程度が好ましく、超音波照射処理で十分に攪拌される大きさであれば特に制限はない。
【0062】
約1時間以上、好ましくは1乃至15時間の超音波照射処理によって、上記容器ないし超音波発振(照射)装置の槽内の天然カルシウム可溶化溶液では、添加された生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムが、岩石粒子から溶出したミネラル金属の影響を受け、完全に溶解されるものと考えられる。超音波照射処理後の天然カルシウム可溶化溶液はpH約2の液体となる。このようにして作製された最終溶液は、その作用機序は未解明であるが、生物由来のカルシウム含有物の十分な天然カルシウムと岩石粉砕物ないし粒子から溶出したミネラル金属が安定化する作用を及ぼしているものと推定され、天然カルシウムが溶液中に安定化して含有する天然カルシウム溶解溶液となる。なお、生物由来のカルシウム含有物によっては、不溶解性の不純物ないし未溶解のカルシウム含有成分を含むために、作製された天然カルシウム溶解溶液を当該槽から注出する際には上澄み液を採取し、さらに、濾過処理することで不純物の混入を防ぐことができる。また、このようにして抽出した天然カルシウム溶解溶液は、超音波照射処理によって、一定の殺菌処理も同時になされるために、香味料などの添加物を添加して適宜調製するだけで機能性飲料として用いることができる。なお、必要に応じて、安定性を阻害しない範囲でのさらなる殺菌処理(食品衛生法に準じた殺菌処理)を施すこともできる。
【0063】
また、本発明のさらにまた別の実施態様において、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解ないしナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有される天然カルシウム溶解溶液を提供することができる。この溶液は長期間保存に対しても安定であり、水溶性を保持する。
【0064】
より具体的に説明すると、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウム可溶化溶液に添加する生物由来カルシウム含有物の添加量を調節することによって、天然カルシウム溶解溶液に含有するナノ化された天然カルシウム量を調整することができる。上述したように、本発明の天然カルシウム溶解溶液における天然カルシウム濃度は少なくとも1%以上であればよいが、それによって作製された天然カルシウム溶解溶液は、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和内で存在すれば、完全な溶解状態となり、透明な溶液として提供できる。例えば、上述で説明した方法、すなわち、上記で作製された天然カルシウム可溶化溶液に、生物由来のカルシウム含有物を約3kg加えて、常温で上記同様の振動処理(例えば、28kHz、900Wの超音波照射)を約1〜15時間施すことによって、溶解された天然カルシウムは当該溶液の飽和内で存在するので、完全な溶解状態となり、透明な溶液として提供できる。この場合、天然カルシウム溶解溶液中の天然カルシウム濃度は約23%である。一方、天然カルシウム可溶化溶液の容量に対しほぼ等量の生物由来のカルシウム含有物を添加した場合、例えば、上記で作製された本発明の天然カルシウム可溶化溶液を100ml(100g相当)注出し、100gの生物由来のカルシウム含有物を添加して、常温で振動処理(例えば、28kHz、900Wの超音波照射)を約1〜15時間施すことによって作製された天然カルシウム溶解溶液は、溶解された天然カルシウムが当該溶液の飽和点を超えるのでナノ粒子として析出し、懸濁状態ないし流動状態で天然カルシウム溶解溶液内に存在する。このようにして作製された天然カルシウム溶解溶液中の天然カルシウム濃度は約50%である。この場合、溶液内に溶解しているナノ粒子の天然カルシウムは、経時的に沈降ないし沈殿して、ナノ粒子の下層と液体の上層とに分離するが、振動を加えることによって容易に懸濁状態(流動状態)となり、下層のナノ粒子が固化することはない。また、この溶液の一部を注出(約10ml)し、水に加えると、再度、透明な天然カルシウム溶解溶液となることから、本発明の天然カルシウムのナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液は希釈して使用することができる。即ち、この懸濁状態のものは、希釈した場合の可溶性を保持し、その意味で「可溶性ナノ化流動状態」ということができる。
【0065】
また、本発明のさらなる別の実施態様において、溶解した天然カルシウムが飽和状態の天然カルシウム溶解溶液に対して、追加的に生物由来のカルシウム含有物を添加することで、ナノ化状態の天然カルシウム粉末、つまり、ナノ化天然カルシウム粉末を提供することができる。
【0066】
より具体的に説明すると、上述で作製された透明な液体(溶解した天然カルシウムが飽和状態)の天然カルシウム溶解溶液100mlに対して、生物由来のカルシウム含有物を約10g追加して、常温で、例えば、28kHz、900Wの超音波照射を約1〜15時間施すことによって溶液を作製(つまり、溶液中の天然カルシウム濃度が約28%の可溶性ナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液を作製)し、溶解した天然カルシウムの析出した天然カルシウムのナノ粒子を沈殿凝固させ、さらに約120℃で乾燥させるとナノ化天然カルシウムの粉末を得ることができる。このナノ粒子を沈殿凝固させて乾燥する工程は、一般に乾燥できる市販の乾燥機ないしヒーターなどの装置を用いることができるが、凍結乾燥(フリーズドライ)によって乾燥させることがより好ましい。この粉末は天然カルシウム源として天然カルシウム可溶化溶液に再度溶解して用いることもできる。さらにまた、この粉末はナノ化状態の天然カルシウムであるために、飲食品等として必要な原材料及び添加物を適宜添加して調製するだけで、消化器官等におけるカルシウムの吸収効率が高い機能性飲食品を提供することができる。
【0067】
本発明のさらに別の実施態様において、これらの天然カルシウム溶解溶液は、機能性飲食品として供給することができる。本発明の天然カルシウム可溶化溶液は、その原材料が岩石、有機酸及び水であり、特に、花崗岩及びクエン酸が好ましく用いられるために、花崗岩から溶出したミネラルを十分に含有するクエン酸飲料であり、そのままで機能性を有する飲料、つまりミネラル飲料としても供給することができるが、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、上述したように、生物由来のカルシウム含有物に含まれる天然カルシウムが天然カルシウム可溶化溶液に溶解した溶液であるために、天然カルシウム分が強化されたミネラル飲料として、より好ましい機能性飲料ないし機能性食品として供給することができる。
【0068】
また、本発明の天然カルシウム溶解溶液には香味料、香料などの添加物を適宜添加し、さらに、追加的な機能性添加物を添加して、機能性飲料として最適な組成に調製して供給することができる。この場合、機能性飲料に完全に天然カルシウムが溶解している状態で供給する、つまり、透明の液体で供給するためには、天然カルシウム可溶化溶液100mlに対して可溶化した天然カルシウムを1g以上、好ましくは約1.5g含有して調製して用いることが好ましい。さらに、例えば、本発明の天然カルシウム溶解溶液は、飲料品として好ましい飲み心地を付与するために、必要に応じて、香味料、香料などの添加物を適宜添加したり、また、別の有効成分をも添加することで、天然カルシウムだけでなく、より高い機能性を有する飲料品とすることができる。さらにまた、本発明の機能性飲料は透明な飲料だけに制限されず、ナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液を用いて飲料とすることも可能であり、例えば、天然カルシウム濃度が28%以上、さらには50%以上のナノ化流動状態で含有される天然カルシウム溶解溶液を含有する機能性飲料とすることもできる。さらに、これらの高濃度機能性飲料は希釈して飲用することもできる。さらにまた、本発明のこれらの機能性飲料は、寒天などの固形化剤(ゲル化剤)を添加して調製することで、機能性飲料を固形(ゲル状)にして、つまり機能性食品として提供することもできる。
【0069】
さらにまた、本発明のナノ化天然カルシウム粉末を機能性食品の原材料として用いることで、ナノ化された超微細粉末が、胃酸により溶解され、ヒトの消化器官等から容易に吸収されるので、様々な機能性食品の原材料として有用に用いることができる。本発明では、特に好ましくは、嗜好食品として飴菓子の原材料の一部として有用に用いることができるが、これに制限されない。また、本発明のナノ化天然カルシウム粉末は、機能性食品の全質量ないし重量の少なくとも1質量%、好ましくは10質量%で用いられることが好ましいが、機能性食品の種類に応じて、適宜含有量を調整して用いることができる。また、機能性食品は、球状、錠剤状、カプセル状など、原材料となるナノ化天然カルシウム粉末はその形状を制限することなく、任意の形態とすることができる。
【0070】
したがって、本発明の天然カルシウム可溶化溶液は天然ミネラルを含有する飲料として有用に利用できるが、天然カルシウム溶解溶液はさらにナノ化天然カルシウムを含有するので、天然カルシウム可溶化溶液よりも格段に高い効果を有する、より有効な高機能性飲料として活用することができる。さらにまた、ナノ化天然カルシウム粉末も高機能性食品に含有して活用することができる。例えば、天然カルシウム溶解溶液又はナノ化天然カルシウム粉末は、天然カルシウムをナノ化された状態の液体又は超微細粉末で提供するために、消化器官等でのカルシウムの吸収率を高めた、天然カルシウム含有飲料又は食品として提供することができ、健康・美容の改善に多大な効果をもたらし得る。
【0071】
このようにして、本発明の天然カルシウム溶解溶液又はナノ化天然カルシウム粉末を機能性飲料品又は機能性食品として用いた場合、例えば、視力回復、滋養強壮等の健康改善に著しい効果を発揮し、特に、視力回復においては、飲用後ないし飲食後約30分〜3時間で著しい効果が認められ、身体の機能回復をもたらすことができる。したがって、本発明の天然カルシウム可溶化溶液を基にして、天然カルシウムが溶解した天然カルシウム溶解溶液を供給することができるだけでなく、この天然カルシウム溶解溶液によってヒトの消化器官等で吸収効率の高いナノ化天然カルシウムが強化された機能性飲料として用いることも有用となり、さらに、得られた天然カルシウム溶解溶液に追加的な工程を加えるだけで、ナノ化天然カルシウム粉末をも得ることができ、この粉末によって人体にとって吸収効率の高いナノ化天然カルシウムが強化された機能性飲食品の原料として用いることも有用となる。
【実施例】
【0072】
以下に、具体的な実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0073】
(1)天然カルシウム可溶化溶液の作製
【0074】
超音波照射処理装置として、超音波洗浄装置(Shenzhen Jeken Ultrasonic Equipment Limited.社製、PT-series型式)を用いた。(図1及び2参照)超音波洗浄装置の洗浄槽(容量30L、縦横60×30cm、高さ40cm)図2)に、1mm格の花崗岩のほぼ立方体状の粉砕物(常陸稲田石砕株式会社、製品名:1mm格)10kg、粉末状の無水クエン酸(扶桑薬品社製)10kg及び水(長野県上田市上水道から取得)10Lを入れた。図2から分かるように、洗浄槽の約2/3までを水が覆った。なお、超音波発振機は、槽の底板に取り付けられている。上記装置の場合、洗浄槽の底部に30w出力の超音波発振機が5cmの間隔で30個取り付けられている。
【0075】
次いで、当該装置の超音波照射条件を28KHz、900Wに設定し、超音波照射を常温で10時間処理して、花崗岩の粉砕物及び無水クエン酸粉末を加えた水を攪拌した。超音波照射は、装置の槽の底部から水面に向かう方向、つまり、上向きの垂直方向で照射された。超音波照射による攪拌処理によって、装置の槽に入れた花崗岩の粉砕物は、次第に縮小して当初のサイズよりも小さくなった。攪拌終了後、無水クエン酸粉末は完全に溶解し、花崗岩の粉砕物は槽の底面に沈殿した。これによって作製された上澄溶液が、天然カルシウム可溶化溶液として得られた。得られた天然カルシウム可溶化溶液の一例の成分分析の結果を図3に示す。花崗岩の鉱物からの溶出ミネラル成分としては、カリウム(28.0mg/100g)、マグネシウム(10.5mg/100g)、亜鉛(0.30mg/100g)等が確認された。なお、得られた天然カルシウム可溶化溶液は、超音波洗浄装置の槽から注出して保存しても、若しくは飲料として用いてもよい。好ましくは、注出せずに、このままの状態で続けて次の天然カルシウム溶解溶液の工程に用いられてもよい。
【0076】
(2)天然カルシウム溶解溶液の作製
【0077】
上記実施例1(1)で作製された天然カルシウム可溶化溶液を、花崗岩の粉砕物が超音波洗浄装置の洗浄槽の底面に沈積したままの状態で、天然カルシウム溶解溶液の作製工程に用いた。上記超音波洗浄装置の槽内に、上記で作製した天然カルシウム可溶化溶液及び花崗岩の粉砕物が残ったまま、粒径約1mmの帆立貝の貝殻粉(長慶株式会社製、製品名:ホタテの微粒子)、3kgを投入した。その後、上記と同条件の超音波照射(28KHz、900W)を、常温でさらに15時間施して、帆立貝の貝殻粉を含有した天然カルシウム可溶化溶液を攪拌した。貝殻粉は天然カルシウム可溶化溶液に加えると泡を立てながら溶解し、当該貝殻粉を加えた天然カルシウム可溶化溶液は、懸濁がない有色透明の溶液となり、攪拌後に作製された天然カルシウム溶解溶液はpH約2であった。このようにして天然カルシウム溶解溶液を得た。作製された天然カルシウム溶解溶液で、経時的にも天然カルシウムは沈降又は沈殿することなく、溶解されて安定な状態を維持した。なお、得られた天然カルシウム溶解溶液を120℃で乾燥した場合の一例について100g中における成分分析の結果を図4に示す。
【比較例】
【0078】
(1)花崗岩と砂鉄による天然カルシウムの溶解性の比較
【0079】
本発明の天然カルシウム可溶化溶液における花崗岩の作用を確認するために、本発明の天然カルシウム可溶化溶液と、その原材料で花崗岩を砂鉄に置き換えて調製した溶液を作製し、それら2種類の溶液に対して帆立貝の貝殻を溶解させた場合の天然カルシウムの溶解状態を比較する実験を行った。以下に詳細を記す。
【0080】
100ccのビーカーを2つ用意して、1つのビーカー(a)に実施例1の(1)と同じ花崗岩の粉砕物10gを添加し、もう一方のビーカー(b)に鉄粉を10g加えた。鉄粉は、砂鉄(50gの砂鉄、東急ハンズ池袋店から購入)を用いた。次いで、実施例1の(1)で用いたものと同じ無水クエン酸粉末10gを各ビーカーにそれぞれ添加した。さらに、実施例1の(1)と同様の水20ccを各ビーカーに添加した。つまり、ビーカー(a)には、花崗岩(10g)、無水クエン酸(10g)及び水(20cc)を含み、一方で、ビーカー(b)には、砂鉄(10g)、無水クエン酸(10g)及び水(20cc)を含む。これら2つビーカー(a)及び(b)を、小型の超音波照射装置((株)プラタ社製)内の底面に並べた状態で設置した。当該装置は上部蓋を開けて、上から内部に対象物を配置する形状であり、その内部は100ccサイズのビーカーを底面に2つ並べて配置できる程度の体積があり、ビーカー(a)及び(b)は装置内部の底面に並べて配置した。上部蓋を閉じて、当該小型装置の超音波照射条件(50/60KHz、35W)により、超音波照射を常温で15時間に亘って処理し、各ビーカー内の混合物に振動を与えた。この小型装置の超音波照射は、装置の底部の左右に位置する発振機から斜め上方の方向に照射されて、各ビーカー内の混合物に振動を与えた。処理後、ビーカー(a)では、実施例1の(1)で作製した天然カルシウム可溶化溶液と同様に、花崗岩が小さくなってビーカーの底に沈積していたが、無水クエン酸粉末は完全に溶解した状態であった。一方、ビーカー(b)でも、砂鉄がビーカーの底に沈積していたが、無水クエン酸粉末は完全に溶けた状態であった。
【0081】
次いで、上記処理後の各ビーカー(a)及び(b)の溶液を用いて、天然カルシウムを溶解した。ビーカー(a)の底面に沈積した花崗岩及びビーカー(b)の底面に沈積した砂鉄は取り除かずに、各ビーカー(a)及び(b)内の各溶液に、実施例1の(2)と同様の帆立貝の貝殻粉3gをそれぞれ添加した。つまり、ビーカー(a)は、花崗岩(10g)、無水クエン酸(10g)及び水(20cc)の混合液に帆立貝の貝殻粉(3g)を添加した状態であり、一方、ビーカー(b)は、砂鉄(10g)、無水クエン酸(10g)及び水(20cc)の混合液に帆立貝の貝殻粉(3g)を添加した状態である。各ビーカー(a)及び(b)を上記の小型の超音波照射装置内に2つ並べて再度設置した。上部蓋を閉じ、当該装置の超音波照射条件(50/60KHz、35W)により、超音波照射を常温で15時間に亘って処理し、帆立貝の貝殻粉を添加した各ビーカー内の混合液に振動を与えた。この操作の途中で装置を一旦停止し、各ビーカー内の混合液に対して約20回攪拌処理を行った。攪拌処理はロッドを用いて各ビーカー内の混合液をかき回した。超音波処理後、各ビーカーを小型の超音波照射装置から取り出して比較した。ビーカー(a)及び(b)とも、帆立貝の貝殻粉は全て溶解していた。
【0082】
その後、ビーカー(a)及び(b)の溶液を室温で保管し、帆立貝の貝殻粉、つまり、天然カルシウムの溶解状態を経時的に観察した。この場合、ビーカー(a)の底面に沈積した花崗岩及びビーカー(b)の底面に沈積した砂鉄は取り除かなかった。ビーカー(a)の溶液(花崗岩を用いた溶液)では、超音波処理後から一週間経っても、溶解した天然カルシウムの沈殿又は沈降は全く観察されなかった。一方、ビーカー(b)の溶液(砂鉄を用いた溶液)では、超音波照射処理の直後には帆立貝の貝殻粉は完全に溶解していたが、数時間後には白色の沈降が観察され、さらに3日、4日後には、白灰色の沈殿が目立って現れ始めた。また、一週間経つと、さらなる沈殿も現れ、固化現象も観察された。このように、本発明の天然カルシウム可溶化溶液の原材料において、花崗岩の代わりに砂鉄を用いて作製した溶液(ビーカー(b))は、天然カルシウムが一旦は溶解しても、溶解した状態を維持することはできなかった。また、この固化物は、再流動性ないし再溶解性を示さなかった。
【0083】
(2)カルシウムの違いによる天然カルシウムの溶解度の比較
【0084】
実施例1の(1)で作製した溶液の上澄を100ml用いて、カルシウムの種類を変えて、カルシウムの溶解状態の比較を行った。ビーカーを2つ用意し、それぞれのビーカーに100mlの上記溶液を加えた。一方のビーカーには、実施例1の(2)と同様の帆立貝の貝殻粉30g添加し、もう一方のビーカーには、M社製カルシウム粒30gを添加し、各ビーカーを超音波照射装置内に設置した。実施例1の(2)と同条件の超音波照射(28KHz、900W)を常温で15時間施して、各ビーカー内の溶液を攪拌した。超音波処理後、各ビーカーを超音波照射装置から取り出して比較した。帆立貝を添加したビーカー内の溶液は透明であったが、M社製カルシウム粒を添加したビーカー内の溶液は白く濁っていた。(図5)この結果から分かるように、本発明の天然カルシウム可溶化溶液は完全に天然カルシウムを溶解した状態であるということが認められる。
【実施例2】
【0085】
(1)天然カルシウムが溶液内で流動する状態(ナノ化流動状態)で含有される天然カルシウム溶解溶液の作製
【0086】
実施例1の(1)と同じ条件で作製した天然カルシウム可溶化溶液100mlを注出し、実施例1の(2)と同様の帆立貝の貝殻100gを投入し、実施例1の(2)と同条件の超音波照射(28KHz、900W)を常温で15時間施して、帆立貝の貝殻粉を含有した溶液を攪拌した。超音波処理後の溶液を室温で保管したところ、溶解された帆立貝の貝殻の天然カルシウムがナノ粒子として析出し始め、約3日後にはナノ粒子の天然カルシウムが下層に移動して沈殿し、透明な溶液層の上層とに分層した。沈殿したナノ粒子の天然カルシウムが固化することはなくわずかな振動を与えるだけで、下層に沈殿していた天然カルシウムは溶液内に拡散して、ナノ粒子の天然カルシウムが流動する懸濁液となった。約3ヶ月経っても、下層にナノ粒子の天然カルシウムが沈殿してはいるが、ナノ粒子の天然カルシウムが固化することはなかった。この実施例2の(1)により、天然カルシウム可溶化溶液には、過溶解のナノ化状態の天然カルシウムが沈殿固化することなく、流動状に存在できることが分かった。
【0087】
また、この溶液を懸濁した状態で一部(少容量)を注出して、水(水道水)に加えると、実施例1の(2)と同様の透明な溶液となった。つまり、天然カルシウムがナノ化流動状態で含有される天然カルシウム溶解溶液は、天然カルシウムが過剰に溶解しているだけで、希釈して用いれば、実施例1の(2)と同様の天然カルシウム溶解溶液と同等であることが分かった。
【0088】
(2)ナノ化天然カルシウム粉末の作製
【0089】
実施例1の(2)と同じ条件で作製した天然カルシウム溶解溶液を100ml注出してビーカーに入れ、実施例1の(2)と同様の帆立貝の貝殻10gをさらに投入し、実施例1の(2)と同条件の超音波照射(28KHz、900W)を常温でさらに15時間施して、帆立貝の貝殻粉を含有した溶液を攪拌した。その後、作製した溶液を室温に保管すると、溶解した帆立貝の貝殻の天然カルシウムがナノ粒子として析出し始めた。析出したナノ粒子の天然カルシウムを沈殿凝固させて、約120℃で乾燥させると白色の粉末を得た(収量300g)。ナノ粒子が析出して沈降した天然カルシウム溶解溶液は、プロパンガスにかけたフライパン上で加熱調製することで、液体分を蒸発させてナノ粒子を沈殿凝固させて乾燥し、粉末として得られた。なお、この工程は、一般に乾燥できる市販の乾燥機ないしヒーターなどの装置を用いてもよいが、凍結乾燥(フリーズドライ)によって乾燥させることがより好ましい。得られた粉末(少量)を再度実施例1の(1)で作製した天然カルシウム可溶化溶液に添加すると、透明な溶液となった。この結果から、天然カルシウムがナノ化状態になった粉末を得ることができ、さらに、その粉末は再溶解して用いることができることが分かった。
【0090】
実施例1及び2から分かるように、本発明の天然カルシウム可溶化溶液から出発して、天然カルシウムを液体に溶解した状態(イオン化)でも固体(粉末)としてもナノ化可能状態で提供でき、これらを総称して「ナノ化状態」ということができる。
【実施例3】
【0091】
(1)機能性飲料の作製
【0092】
実施例1の(2)で作製した天然カルシウム溶解溶液を機能性飲料として調製した。天然カルシウム溶解溶液の作製に用いた超音波洗浄装置の槽から、作製された天然カルシウム溶解溶液を花崗岩の粉砕物の沈殿を含まないように、濾過して、機能性飲料を製造するための装置ないし設備に移した。天然カルシウム溶解溶液を飲料として飲みやすくするため、また、さらなる機能を加えるために、天然カルシウム溶解溶液100mlに対して、紅こうじ(20%)(CDフーズ、3P−D20)、バナナ熟成分(10%)(市販品)、柿ポリフェノール(10%)(酒井果樹園、紅つるし柿)、オリゴ糖(10%)(原料屋、ラフィースオリゴ糖)、松(5%)、生レモン果汁(5%)(市販品)、生グレープ果汁(10%)(麻屋葡萄酒株式会社、無添加葡萄ジュース)、熊笹エキス(10%)、フコダイン(モズク抽出)(10%)(有限会社新屋水産、沖縄産もずく)を添加して、総量200Lの溶液を調製した。この溶液(200L)をステンレス製容器(内径567mm、外高890mm)に入れ、攪拌装置によって90℃で30分間の攪拌処理(食品衛生法に準じた殺菌処理)を施して、機能性飲料として調製した。この攪拌処理によって、これらの成分は均一に混合された。攪拌処理は、スクリューが設けられている、ハンディタイプの攪拌装置(リョービPD−196VR)を用いたが、上記成分が均一に混合することができる装置を用いればよく、装置の種類は特に制限されない。なお、上記添加物の含有率は、適宜調整して変更することが可能であり、添加物もこれらに限らず、適宜選択することができる。調製後の溶液を18L缶に分注し、さらに容量50mlずつに分注して瓶詰めし、機能性飲料を得た。なお、本実施例では、機能性飲料に完全に天然カルシウムが溶解している状態で供給するため、つまり、飲料が透明の液体で供給するために、天然カルシウム可溶化溶液100mlに対して可溶化した天然カルシウムが約1.5g含有された状態で用いたが、これに限らず、飲料が透明の液体になる範囲で天然カルシウムを含有するように適宜調製して用いてもよい。
【0093】
また、飲料は透明の液体に制限されず、ナノ化流動状態の天然カルシウム溶解溶液を用いて飲料とすることも可能であり、例えば、上述した天然カルシウム濃度が28%以上、50%以上等の高濃度の天然カルシウムを含有する機能性飲料とすることもできる。さらに、これらの高濃度機能性飲料は希釈して飲用することもできる。
【0094】
さらにまた、本発明の機能性飲料は、寒天などの固形化剤(ゲル化剤)を添加して調製することで、機能性飲料を固形(ゲル状)にして、つまり機能性食品として提供することもできる。
【0095】
効果(視力回復)
【0096】
実施例3の(1)で作製した機能性飲料を14名のパネルに飲用してもらい、飲用前と飲用後30分の視力検査を実施した。視力検査は、通常、眼科で用いられる視力検査表と同様のタイプの簡易試視力表(図6)を用いて行った。その結果を図7に示す。
【0097】
この結果から、視力回復においては、男女年齢を問わず、14名すべてのパネルにおいて、飲用後約30分で著しい効果が認められ、少なくとも視力が0.4、最大で1.4上昇した。これらのパネルは、その後、1本/日を少なくとも2ヶ月間継続して飲用することで、視力の回復を維持することが可能であった。
【0098】
(2)機能性食品の作製
【0099】
実施例2の(2)で作製したナノ化天然カルシウム粉末を原料の一部に用いて、機能性嗜好食品、具体的には、飴菓子(ブルーベリー味の球状キャンディー)を作製した。
【0100】
飴の全質量に対し、球状の飴の中心部と外皮にそれぞれ、ナノ化天然カルシウム粉末を8%及び2%用いた。つまり、飴の全質量の10%に該当する量でナノ化天然カルシウム粉末を用いた。当該カルシウム粉末は、4gの飴に対して、400mgを用いたが、これは飴2個分の量に相当する。飴は、天然カルシウム粉末以外の原材料としては、中心部に植物油脂、香料及びクエン酸を用い、外皮に砂糖、水飴、植物油脂、香料、クエン酸、ビタミンC、ビタミンE及びアントシアニンを用いて、従来の飴の製法に従って作製した。なお、本実施例では、ナノ化天然カルシウム粉末は、機能性食品の全質量の10質量%で用いたが、これに限らず、機能性食品の種類に応じて、適宜含有率を調整して用いてもよい。なお、天然カルシウム粉末以外の原材料は、飴菓子の原材料に用いることができるものであれば、これらに限定されることなく、またそれらの含有率も適宜調整して用いてよい。さらに機能性食品の形態も任意の形態としてよい。(図8)
【0101】
効果(視力回復)
【0102】
実施例3の(2)で作製した飴を10名のパネルに一度に2個摂取してもらい、摂取前と摂取後3時間の視力検査を実施した。視力検査は、通常、眼科で用いられる視力検査表と同様のタイプの簡易試視力表(図6)を用いて行った。図9にその結果を示す。
【0103】
この結果から、視力回復においては、男女年齢を問わず、10名すべてのパネルにおいて、摂取後約3時間で著しい効果が認められ、少なくとも視力が0.5、最大で0.9上昇した。これらのパネルは、その後、2個/日を継続して摂取することで、視力の回復を維持することが可能であった。
【0104】
また、この飴(一度に2個)を摂取して眠気テストを行ったところ、1100kmの高速道路を13時間かけてその間眠気を感ずることなく走行できた。
【0105】
以上、本発明の天然カルシウム溶解溶液を機能性飲料、ナノ化天然カルシウム粉末を機能性食品の原材料の一部として用いた場合、視力回復に顕著な効果が認められたが、さらに、滋養強壮等にも効果を発揮することができる。特に、視力回復においては、本発明にかかる機能性飲料又は機能性食品の飲用又は飲食後約30分乃至3時間で著しい効果が認められるなど、本発明の天然カルシウムをナノ化状態で提供することによって、高い視力回復効果を有する様々な形態が提供できるものと期待される。健康上の機能的効果については、その代表例として、簡易的に測定可能である視力に関して示したが、これは、本発明の機能性飲料ないし食品が、その摂取により有効に人体に作用を及ぼした結果であり、滋養強壮他の効果についても同様に機能しているものと推察される。
【0106】
本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、液体状ないし粉末で得られるナノ化状態の天然カルシウムを利用することにより、視力回復、滋養強壮等に著しい効果を発揮する。これにより、本発明は、生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムがナノ化された溶液状態に安定した状態、又はナノ化粉末で供給することができるだけでなく、それらを用いて、高機能性飲料又は飲食品として、健康及び美容等に寄与することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石及び有機酸を含有する水に対して第一の振動処理を施し、さらに、生物由来のカルシウム含有物を加えて第二の振動処理を施す、天然カルシウム溶解溶液の製造方法。
【請求項2】
前記岩石は火成岩である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記火成岩は花崗岩である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機酸はクエン酸又は酢酸である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記生物由来のカルシウム含有物は、貝殻、サンゴ又はこれらの化石から選択される請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記貝殻は帆立貝の貝殻である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第一および第二の振動処理は、超音波照射処理を1時間以上施されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項9】
天然カルシウム濃度が1%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解した状態ないしナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項10】
天然カルシウム濃度が23%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解した状態ないしナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項11】
天然カルシウム濃度が23%以下であり、溶解された天然カルシウムが溶液中に透明に溶解した状態で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項12】
天然カルシウム濃度が少なくとも28%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中にナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項13】
天然カルシウム濃度が50%以上であり、溶解された天然カルシウムが溶液中にナノ化流動状態(溶液中にナノ化粒子として存在)で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した天然カルシウム溶解溶液。
【請求項14】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて作製した飽和状態の天然カルシウム溶解溶液に生物由来のカルシウム含有物をさらに加えて溶解し、溶解した天然カルシウム(ナノ粒子)を沈殿凝固及び乾燥させて得られるナノ化天然カルシウム粉末。
【請求項15】
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の天然カルシウム溶解溶液を用いる機能性飲料品。
【請求項16】
天然カルシウム可溶化溶液100mlに対して可溶化した天然カルシウムを1g以上含有する請求項15に記載の機能性飲料品。
【請求項17】
請求項15又は16の機能性飲料品を用いて固形化した機能性飲食品。
【請求項18】
請求項14に記載のナノ化天然カルシウム粉末を用いる機能性食品。
【請求項19】
前記機能性食品の総量(質量ないし重量)に対して少なくとも1質量%のナノ化天然カルシウム粉末を含有する請求項18に記載の機能性食品。
【請求項20】
岩石及び有機酸を含有する水に第一の超音波照射処理を施し、さらに、生物由来のカルシウム含有物を加えて、第二の超音波照射処理を施すことで、該生物由来のカルシウム含有物の天然カルシウムを溶液中に安定化する、天然カルシウム安定化方法。
【請求項21】
前記岩石は火成岩である請求項20に記載の天然カルシウム安定化方法。
【請求項22】
前記火成岩は花崗岩である請求項21に記載の天然カルシウム安定化方法。
【請求項23】
前記有機酸はクエン酸である請求項20に記載の天然カルシウム安定化方法。
【請求項24】
前記生物由来のカルシウム含有物は貝類の貝殻、サンゴ、又はこれらの化石である請求項20に記載の天然カルシウム安定化方法。
【請求項25】
前記貝殻は帆立貝の貝殻である請求項24に記載の天然カルシウム安定化方法。
【請求項26】
前記第一の超音波照射処理は1時間以上であり、前記第二の超音波照射処理は1時間以上である請求項20乃至25のいずれか一項に記載の天然カルシウム安定化方法。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−120539(P2012−120539A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45562(P2012−45562)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2009−155728(P2009−155728)の分割
【原出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(509185309)自然工房株式会社 (2)
【Fターム(参考)】