説明

生物試料を処理するための方法

本発明は、i)生物試料を提供する、並びにii)生物試料を:(1)1から最大100重量%の少なくとも一つのポリオール、および(2)0から99重量%の少なくとも一つの添加剤、を含む組成物と接触させ、ここで成分(1)および(2)の合計が100重量%に等しい:方法段階を含む、生物試料を処理する方法。本発明はさらに前記方法により得られた生物試料、処理された生物試料を分析するための方法、生物試料を処理するための装置、前記装置の使用、種々のキット及び組成の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物試料を処理する方法、この方法によって得ることのできる生物試料、処理された生物試料を分析する方法、生物試料を処理するための装置、これらの装置の使用、さまざまなキット、および組成物の使用に関する。
【0002】
長い間、科学者は生物試料の病理学的および/または組織学的研究だけに注目してきている。そのような試験のための試料の保存および/または安定化は、あるとしても、通常は、ホルムアルデヒド溶液に入れることによって、および/または試料をパラフィンに包埋することによって実施された。しかし保存目的のための生物試料の冷蔵または冷凍さえ、長い間の現状であり続けている。
【0003】
たとえば核酸またはタンパク質といった、生物試料のある種の成分の検出が、特に医学的および臨床診断の分野で非常に有益であると認識されて初めて、新規なより有効なおよびより経済的な保存および/または安定化試薬および/または方法が必要であることが明らかになった。
【0004】
これらの発展の経過において、まさに、分子生物学的研究に重要なのは、試料が天然環境から採取された直後でさえ速やかな変化を生じうる、新鮮試料成分の状態(遺伝子発現またはタンパク質パターン)であり、そのためたとえば検査室への輸送中の予想外の遅延などの結果としての、未処理状態での試料の長期保存さえ、分子生物学的分析を歪めるかまたは実際に全く不可能にする可能性があることが判った。
【0005】
試料の採取と分析との間により長い時間が経過するほど、より速やかな変化が起こるのは、まさに生物試料の核酸状態である。特にリボ核酸(RNA)は、遍在するRNアーゼの結果として、非常に速やかに分解される。また、核酸の分解は、たとえば、ストレス遺伝子の誘導およびしたがって、試料の転写パターンを同様に大きく改変する新規のmRNA分子の合成を伴う。したがって、分析すべき遺伝子発現プロファイルを保持するためには、試料を直ちに安定化する必要がある。
【0006】
試料の即時安定化は、核酸の分析だけでなく、生物試料の詳細なプロテオーム研究にも必要であり、なぜならタンパク質パターンもまた、試料採取直後に変化を受けるからである。これはまず分解またはde novo合成の結果であり、それだけでなく、非常に迅速に起こるたとえばリン酸化/脱リン酸化といったタンパク質修飾の変化の結果である。
【0007】
タンパク質化学的および分子生物学的な分析は、医学的および臨床診断の分野だけでなく、法医学、製薬学、食品分析、農業、環境分析および多数の研究プロジェクトといった他の分野でもますます用いられるため、試料の分子構造の完全性の保持、および、これに関連して、その即時安定化は、したがってこれらすべての分野における最重要な前提条件である。
【0008】
長年の間に、幅広い非常に異なる生物試料を安定化するために、さまざまな非常に異なる安定化試薬および/または方法が開発されている。
【0009】
始めに既に述べたように、組織学的組織研究のために試料をホルムアルデヒド水溶液によって安定化しおよびその後に安定化試料を包埋することは長く知られている。しかし、核酸は非常に不十分にしか安定化されず、そのことが、存在する核酸または核酸断片の定量的検出でなくせいぜい定性的検出を可能にするだけであるため、そのような安定化は分子生物学的方法の使用にはたいていの場合は適さない。さらに、ホルムアルデヒド水溶液のような架橋安定剤を用いる安定化は、組織からの核酸またはタンパク質の抽出可能性の低下に繋がる。また、ホルムアルデヒド水溶液は毒性学的理由から許容されない。
【0010】
今度は核酸の非常に良好な定性検出を与えるたとえばUS5.010,184,US5.300,545,WO−A−02/00599およびWO−A−02/00600に記載されるような陽イオン性洗浄剤のような安定化試薬は、単細胞、または一つだけの細胞層を構成する試料だけに適する。組織の小片中の核酸を安定化するためには、しかし、そのような安定化試薬は不十分である。
【0011】
さらに、定性検出の目的のために核酸が安定化されうる試薬および方法は、原則として、同時のタンパク質安定化に適しない。さらに、安定剤はたとえば核酸を保存するが細胞または組織構造は保存しないため、この方法で安定化された試料は組織学的研究に使用できない。
【0012】
たとえば、高濃度の硫酸アンモニウムを含むさらに別の安定化試薬(たとえば、US6,204,375を参照)は、異なる組織中の核酸の安定化に大変適している。しかし,それらは概ね、たとえば、血液、血清または血漿といった、細胞を含むかまたは細胞を含まない体液の安定化における使用には適せず、およびまた、たとえば、脂肪組織といったある種の組織にはそれほど良好な安定化特性を有しない。
【0013】
上記すべては、同時に組織試料中のRNA、DNAおよびタンパク質を安定化しおよび組織学的に組織試料を保存するのが特に難しいことを示す。さらに、細胞または他の生物試料について行われた研究は、必ずしも緻密組織に適用できない。他の生物試料と比較して、緻密組織試料中の核酸の安定化は、一つの特別の困難を含む。組織はいくつかの層から成り、および、組成、成分および構造に関して不均一である。緻密組織試料中の核酸を安定化するためには、安定化試薬は、細胞表面上、または一つの細胞層内だけでなく、多層試料材料の内部深くでも作用しなければならない。さらに、全く同一の生物試料内で、たとえば細胞構造、膜構造、区画化に関して、および生体分子、たとえばタンパク質、糖質および/または脂質含量に関して異なる、非常に異なる型の組織および/または細胞にしばしば対処しなければならない。
【0014】
先行技術で公知でありおよび非常に頻繁に用いられる、組織試料をすべての成分を含めて安定化する一つの形は、試料を凍結または深凍結することである。ここでは、採取直後に、試料はその天然の環境中で、−80℃未満の液体窒素中で凍結される。このように処理された試料はその後、完全性に何ら変化が起こることなく、約−70℃にて事実上無限に保存されうる。しかし、輸送中、保存または幅広い目的および利用の間、試料の解凍は防がれなければならないため、そのような方法のすべては非常に複雑な物流上の要件を必要とする。特別の試料容器のためおよび試料の永続的冷却のための追加コストの他に、液体窒素の使用は非常に複雑であるだけでなく特別の予防措置を用いて初めて実施できる。
【0015】
さらに、凍結試料材料、特に試料の個々の成分のその後の分析は、通常は非常に困難な試みである。たとえば、試料の保存、輸送または処理中の解凍または初期解凍は、特にRNAの分解に繋がる。これは、解凍または初期解凍を受けている試料はもはや再現可能な結果を与えないことを意味する。加えて、手作業でまたは複雑な技術装置を用いて処理、たとえば切断するのが非常に困難なのは、まさに凍結状態の組織片である。
【0016】
処理凍結試料の処理の短所を減らすため、特にRNAの単離のために、移行溶液と呼ばれる溶液もまた記載されている。ここで、凍結組織はまず、−70℃から−80℃へ予冷された溶液へ移され、そこで数時間(少なくとも16時間)約−20℃にて保存される。その後、移行溶液を含浸した試料は、短時間だけ、たとえば試料を分割するのに必要なだけ、試料の核酸状態に変化を生じることなく−4℃から室温までの作業温度へ加温されうる。しかし、特に室温での、以降の分析、および試料の保存は不可能である。たとえばWO−A−2004/72270から公知であるそのような移行溶液は主に一価アルコールから成る。
【0017】
通例の移行溶液で処理された試料の短所は、それらが室温では非常に短時間しか安定でないこと、つまり処理時間が非常に限られており、および特に多数の試料を処理する場合、特に切断および剪断手順が含まれる場合、非常に容易に超過することである。さらに、移行は非常にゆっくりでしかなく、そのため後で直接実験が続かない可能性があり、およびほとんどの場合一日の待ち時間が生じる。同様に、そのように処理された試料の輸送は、移行を−20℃以下の温度で行わなければならないだけでなく、続いて試料の安定保存を行わなければならないため、試料を損傷することなく室温では不可能である。また、試料の輸送は−20℃以下でのみ可能であり、そのことは輸送中にたとえばドライアイスといった冷却手段の使用を必要とする。さらに、たとえば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールのようなWO−A−2004/72270で使用される一価アルコールは易燃性、揮発性または毒性であり、およびしたがって、それらを使用する際には一定の安全予防措置が必要であることを考慮しなければならない。
【0018】
従来の移行溶液の使用は、たとえば、適当な大きさへの剪断または切断といった試料処理の改善に繋がる一方、それらは機器要件を低減もせず(移行用の溶液は−70から−80℃へ予冷しなければならず、およびしたがってまだ適当な装置を必要とするため)、移行溶液処理された試料を室温にて長い時間安定化することを可能にもしない。
【0019】
本発明は先行技術の短所を克服する目的に基づいた。
【0020】
特に、本発明は、易燃性、揮発性、発がん性、催奇形性、環境的に危険性または毒性の物質がもしあれば可能な最小量の使用で、生物試料の十分な安定化に繋がる、生物試料を安定化する方法を提供する目的に基づいた。
【0021】
さらに、本発明は、凍結および新鮮生物試料の両方が、可能な限り穏和な温度で、たとえばまた室温にて、生物試料の発現プロファイルまたはプロテオームに有害に影響することなく安定化されうる方法によって、生物試料を安定化する方法を提供する目的に基づいた。
【0022】
さらに、生物試料を安定化する方法は、安定化された生物試料の組織学的分析、および生物試料中に存在する生体分子の分析の、両方を可能にすべきである。これに関連して、安定化方法は、特に、安定化された生物試料中の、タンパク質および核酸の両方の定性的および定量的分析を可能にすべきである。さらに、生物試料の安定化は、たとえばゲル分析によってまたは一定量の核酸が得られるまでのPCRサイクルの数によって決定されうる核酸の品質に、およびたとえば酵素の場合には適当な活性検定法によって測定されうるタンパク質の品質に、悪影響を与えないかまたは与えるならばごくわずかであるべきである。
【0023】
さらに、生物試料を安定化する方法は、穏和な温度で、たとえば室温にて分析されうるだけでなく、必要に応じて、そのような分析の前または後で可能な限り長くそのような穏和な温度にて保存されうる、安定化された生物試料を結果として生じるべきである。
【0024】
生体分子の場合、「安定化」の語は、生体分子の分解、修飾、誘導または活性の変化の阻害を意味すると理解される。生物試料の組織学的分析の場合、「安定化」の語は好ましくは、試料形態の実質的変化の防止を意味すると理解される。
【0025】
さらに、本発明は、本発明に記載の安定化方法を用いる、生物試料が簡単な方法で安定化されうる方法による装置を提供する目的に基づいた。
【0026】
始めに言及された目的を達成するのに寄与する方法は、下記の方法段階を含む、生物試料を処理する方法である
i)生物試料を提供する、および
【0027】
ii)生物試料を下記を含む組成物と接触させる
(α1)1から最大100重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%および非常に好ましくは少なくとも50重量%、たとえば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99重量%の、少なくとも一つのポリオール、および
(α2)0から99重量%、好ましくは0から95重量%、特に好ましくは0.1から50重量%、さらにより好ましくは0.5から25重量%、より好ましくは1から15重量%および非常に好ましくは2.5から10重量%、たとえば最大0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95または99重量%の、少なくとも一つの添加剤,
ここで成分(α1)および(α2)の合計は100重量%の量になる。
【0028】
驚くべきことに、ポリオール含有組成物によって、新しく単離された生物試料を安定化でき、および、たとえば液体窒素中で凍結されている生物試料のような凍結生物試料を組織学的または分子生物学的分析のために調製できることが見出されている。ここで、組成物と接触させられている生物試料を、0℃未満の温度へ冷却すること、およびそのような低温にて保存または分析することは不必要であり、そのため本発明に記載の方法は複雑な機械無しで、特に冷却装置または冷却手段無しで、実施されうる。
【0029】
方法段階i)で提供された生物試料は、使用される生物試料が当業者に公知の任意の生物試料である、凍結または非凍結生物試料の形を取ることができる。好ましい生物試料は、生体分子、たとえば天然、好ましくは単離された直鎖、分枝または環状の、RNAのような核酸RNA、特にmRNA、siRNA、miRNA、snRNA、tRNA、hnRNA、またはリボザイム、DNAなど、合成または修飾核酸、たとえばオリゴヌクレオチド、特にPCRに使用されるプライマー、プローブまたは標準、ジゴキシゲニン−、ビオチン−または蛍光−標識化核酸、またはPNAとして知られるもの(「ペプチド核酸」)、天然の、好ましくは単離されたタンパク質またはオリゴペプチド、合成または修飾タンパク質またはオリゴペプチド、たとえば蛍光標識とまたは酵素とカップリングされた抗体、またはホルモン、増殖因子、脂質、オリゴ糖、多糖、糖質、プロテオグルカン、血液、精液、脳脊髄液、唾液、痰または尿のような体液、血液を処理する際に得られる液体、たとえば血清または血漿、白血球画分または「バフィーコート」、ヒル唾液、糞便、塗沫標本、穿刺液、フケ、毛髪、皮膚断片、法医学試料、食品または環境試料であって、遊離のまたは結合した生体分子、特に遊離のまたは結合した核酸、または代謝産物および代謝体を含むもの、未変化の生物、好ましくは未変化の非生存生物、好ましくは昆虫および哺乳類、特にヒト由来のたとえば組織切片、組織断片または臓器の形の多細胞生物の組織、たとえば足場依存性または懸濁細胞培養の形の単離細胞、オルガネラ、たとえば葉緑体またはミトコンドリア、小胞、核または染色体、植物、植物の一部、植物組織または植物細胞、細菌、ウイルス、ウイロイド、プリオン、酵母および真菌または真菌の一部から成る群から選択される。
【0030】
本発明に記載の方法の方法段階i)で使用される非凍結生物試料は、好ましくは新しく調製された生物試料、たとえば新鮮組織試料または、生きたまたは死んだ生物から新しく単離された血球、または、生物試料としての合成生体分子の場合は、新しく合成された核酸またはタンパク質である。これに関連して、「新鮮」生物試料とは好ましくは、本発明によると、方法段階ii)で組成物と接触させられる前96時間以下、好ましくは48時間以下、特に好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下、特に好ましくは60分間以下および非常に好ましくは10分間以下に採取されている試料、または合成生体分子の場合には、96時間以下、好ましくは48時間以下、特に好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下、特に好ましくは60分間以下および非常に好ましくは10分間以下に合成されているものを意味すると解される。しかし、「新鮮」生物試料の語はまた、上記の時間内に採取されている、また組成物、たとえばホルムアルデヒド水溶液のような従来の固定剤、エオシンのような色素、抗体などと接触させられる前に前処理もされている試料を含む。これに関連して、新鮮細胞または組織試料の調製は、この目的について当業者に公知であるすべての調製方法によって、組織試料の場合にはたとえば外科用メスによってたとえば手術中または死後に、血球試料の場合には新しく採取された血液の遠心分離によって、などで、実施されうる。新鮮生物試料が使用される場合、方法段階ii)で使用される組成物は、主に組成物を安定化させる役割を果たす。
【0031】
本発明に記載の方法の方法段階i)で使用される凍結生物試料は、好ましくは、上記の方法で単離された後、方法段階ii)で組成物と接触させられる前に、0℃以下の温度へ、好ましくは−20℃以下の温度へ、および非常に好ましくは−70℃以下の温度へ、たとえば液体窒素と接触させることによって、まず冷却されている生物試料である。この方法で凍結されている生物試料が本発明に記載の方法に使用される場合、方法段階ii)に使用される組成物は主に移行組成物の役割を果たす。
【0032】
組成物中に存在するポリオール(α1)は、好ましくはジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、ヘプタオール、オクタオールまたはノナオールの形を取り、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオールまたはヘキサオールが特に好ましく、ジオールおよびトリオールがより好ましく、およびトリオールが非常に好ましい
【0033】
さらに、本発明によると、ポリオール(α1)が2から20炭素原子を有すること、および、したがって、C2−ポリオール、C3−ポリオール、C4−ポリオール、C5−ポリオール、C6−ポリオール、C7−ポリオール、C8−ポリオール、C9−ポリオール、C10−ポリオール、C11−ポリオール、C12−ポリオール、C13−ポリオール、C14−ポリオール、C15−ポリオール、C16−ポリオール、C17−ポリオール、C18−ポリオール、C19−ポリオールまたはC20−ポリオールであることが好ましい。特に好ましいのは、しかし、2から12炭素原子を有するポリオール、すなわちC2−ポリオール、C3−ポリオール、C4−ポリオール、C5−ポリオール、C6−ポリオール、C7−ポリオール、C8−ポリオール、C9−ポリオール、C10−ポリオール、C11−ポリオールまたはC12−ポリオールであり、および非常に好ましくは2から6炭素原子を有するポリオール、すなわちC2−ポリオール、C3−ポリオール、C4−ポリオール、C5−ポリオール、C6−ポリオールである。
【0034】
原則として、ポリオールは直鎖、分枝または環状でありうる。直鎖または分枝ポリオールの場合は、ポリオールが分子内の最長の炭化水素鎖の両端に付加されたOH基を有することが特に有利でありうる。
【0035】
本発明に記載の方法に使用される組成物の特に好ましい実施形態によると、組成物は、ポリオール(α1)として、0℃を上回る、特に好ましくは5℃を上回る、より好ましくは10℃を上回る、特に好ましくは15℃を上回る、および非常に好ましくは20℃を上回る融点を有するポリオールを含み、融点は好ましくはリンドストローム(Lindstroem)融点測定装置によってキャピラリーで測定されている。
【0036】
本発明に記載の特に適しているポリオールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジヒドロキシアセトン、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−メトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メトキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−エトキシ−1,3−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−2,3−プロパンジオール、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,4−ヘプタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,3−オクタンジオール1,4−オクタンジオール、1,5−オクタンジオール、1,6−オクタンジオール、1,7−オクタンジオール、1,2−ノナジオール、1,9−ノナジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ウンデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、ヘプタエチレングリコール、ヘプタプロピレングリコール、オクタエチレングリコール、オクタプロピレングリコール、ノナエチレングリコール、ノナプロピレングリコール、デカエチレングリコール、デカプロピレングリコール、シス−またはトランス−1,2−シクロペンタンジオール、シス−またはトランス−1,3−シクロペンタンジオール、シス−またはトランス−1,2−シクロヘキサンジオール、シス−またはトランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−またはトランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−またはトランス−1,2−シクロヘプタンジオール、シス−またはトランス−1,3−シクロヘプタンジオール、シス−またはトランス−1,4−シクロヘプタンジオール、1,2,3−シクロペンタントリオール、1,2,4−シクロペンタントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,2,4−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘプタントリオール、1,2,4−シクロヘプタントリオール、1,2,3−プロパントリオール、3−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−ブタントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、2,3,5−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2,3−オクタントリオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2,3−ノナトリオール、1,2,9−ノナトリオール、1,2,3−デカントリオール、1,2,10−デカントリオール、1,2,3−ウンデカントリオール、1,2,11−ウンデカントリオール、1,2,3−ドデカントリオール、1,1,12−ドデカントリオール、2,2,−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、1,2,3,4−ペンタンテトラオール、1,2,3,5−ペンタンテトラオール、1,2,3,4−ヘキサンテトラオール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,2,3,4−ヘプタンテトラオール、1,2,3,7−ヘプタンテトラオール、1,2,3,4−オクタンテトラオール、1,2,3,8−オクタンテトラオール、1,2,3,4−ノナンテトラオール、1,2,3,9−ノナンテトラオール、1,2,3,4−デカンテトラオール、1,2,3,10−デカンテトラオール、トリメチルオール−プロパノール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールまたはアラビトール、ヘキサンヘキソール、1,2,3,4,5−ペンタンペントールおよび1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキサオールのような糖アルコールを含む群からのポリオールから選択されるがそれに限定されない。
【0037】
本発明に記載の組成物では、ポリオールは個別にまたは2、3、4または5つの異なるポリオールの混合物の形で存在する可能性があり、2つの異なるジオールの混合物、2つの異なるトリオールの混合物、2つの異なるテトラオールの混合物、1つのジオールおよび1つのトリオールの混合物、1つのジオールおよび1つのテトラオールの混合物、および1つのトリオールおよび1つのテトラオールの混合物が特に好ましく、および2つの異なるトリオールの混合物がポリオール混合物として非常に好ましい。
【0038】
組成物中に随意的に存在した添加剤(α2)は、ポリオール以外の他の溶媒の、または、界面活性剤、たとえばプロテアーゼ阻害剤PMSFまたは市販製品ANTI−RNアーゼ(アンビオン社(Ambion)、米国セント・オースチン(St.Austin))、RNAセキュア(登録商標)(アンビオン社)またはDEPCといった核酸またはタンパク質の分解を阻害する阻害剤、アルキル化剤、アセチル化剤、ハロゲン化剤、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、粘度調整剤、着色料、特に一定の細胞構造を特異的に染色する着色料、緩衝化合物、たとえばHEPES、MOPSまたはTRIS、保存料、たとえばEDTAまたはEGTAのような錯化剤、たとえば2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)、プテリン、硫化水素、アスコルビン酸、NADPHのような還元剤、トリカルボキシエチルホスフィン(TCEP)およびヘキサメチルリン酸トリアミド(Me2N)3P、5,5'−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)のような酸化剤、細胞透過性を改善する物質、たとえばDMSOまたはDOPE、たとえばグアニジウムイソチオシアナートまたは塩酸グアニジウムのようなカオトロピック物質、たとえばホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドのような固定剤、たとえばパラホルムアルデヒドのような架橋添加剤、およびこれらの添加剤の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6つの混合物を含む群から選択される添加剤の形を取りうる。
【0039】
ポリオール以外の溶媒は、水、でなければ、好ましくは一価アルコール(モノオール)、ケトン、ジメチルスルホキシド、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、カルボン酸、カルボキサミド、ニトリル、ニトロアルカンおよびエステルを含む群から選択されるポリオール以外の有機溶媒の形を取ることができ、適当な溶媒はたとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、アセトン、アニソール、ベンゾニトリル、1−メトキシ−2−プロパノール、キノリン、シクロヘキサノン、ジアセチン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、トルエン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、アジピン酸ジメチル、炭酸ジメチル、亜硫酸ジメチル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、エチルベンゼン、ホルムアミド、トリ酢酸グリセロール、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチル−ホルムアミド、N−メチル−N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチル−ホルムアミド、N,N−ジメチルチオホルムアミド、N,N−ジエチル−チオホルムアミド、N−メチル−N−エチルチオホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ニトロエタン、ニトロメチルトルエンおよびリン酸トリエチルから成る群から選択されうる。
【0040】
成分(α1)および(α2)の組成物は、好ましくは2つの成分を単に混合して調製される。ポリオール(α1)が室温を上回る融点を有する場合、ポリオールを融点まで加熱しおよび次いでそれを添加剤と混合するのが好ましい可能性がある。しかし、組成物が調製される際に成分(α1)または(α2)の一方が固体でありおよび1つの成分が液体である場合は、成分を液体成分に溶解することもまた実行可能である。このように、たとえば、固体ポリオールを液体添加剤に溶解でき、または固体添加剤を液体ポリオールに溶解できる。
【0041】
本発明に従って適する組成物は、たとえば、下記の組成物である(特記しない限りすべての割合は容量である。さらに、特記しない限り、各成分のすべての容量パーセントは、市販の最大濃度のうちの一つでの対応化合物の量に関する):5%N,N−ジメチルアセトアミド+10%メタノール+20%アセトン+25%DMSO+40%ジエチレングリコール、25%1,2−プロパンジオール+75%アセトン、25%1,2−プロパンジオール+75%ジエチレングリコール、25%1,2−プロパンジオール+75%DMSO、25%1,2−プロパンジオール+75%エタノール、25%1,2−プロパンジオール+75%エチレングリコール、25%1,3−プロパンジオール+75%1,2−プロパンジオール、25%1,3−プロパンジオール+75%アセトン、25%1,3−プロパンジオール+75%ジエチレングリコール、25%1,3−プロパンジオール+75%DMSO、25%1,3−プロパンジオール+75%エタノール、25%1,3−プロパンジオール+75%エチレングリコール、25%アセトン+75%メタノール、25%ジエチレングリコール+75%アセトン、25%ジエチレングリコール+75%DMSO、25%ジエチレングリコール+75%エタノール、25%ジエチレングリコール+75%メタノール、25%ジエチレングリコール+75%N,N−ジメチルアセトアミド、25%ジヒドロキシアセトン+75%1,2−プロパンジオール、25%ジヒドロキシアセトン+75%1,3−プロパンジオール、25%ジヒドロキシアセトン+75%ジエチレングリコール、25%ジヒドロキシアセトン+75%エチレングリコール、25%ジヒドロキシアセトン+75%トリエチレングリコール、25%エチレングリコール+75%ジエチレングリコール、25%エチレングリコール+75%DMSO、25%エチレングリコール+75%エタノール、25%1,2,3−プロパントリオール+75%1,2−プロパンジオール、25%1,2,3−プロパントリオール+75%1,3−プロパンジオール、25%1,2,3−プロパントリオール+75%ジエチレングリコール、25%1,2,3−プロパントリオール+75%ジヒドロキシアセトン、25%1,2,3−プロパントリオール+75%DMSO、25%1,2,3−プロパントリオール+75%エチレングリコール、25%1,2,3−プロパントリオール+75%N,N−ジエチルアセトアミド、25%1,2,3−プロパントリオール+75%トリエチレングリコール、25%N,N−ジエチルアセトアミド+75%1,3−プロパンジオール、25%N,N−ジエチルアセトアミド+75%1,2−プロパンジオール、25%N,N−ジエチルアセトアミド+75%ジエチレングリコール、25%N,N−ジエチルアセトアミド+75%エチレングリコール、25%N,N−ジエチルアセトアミド+75%トリエチレングリコール、25%トリエチレングリコール+75%1,2−プロパンジオール、25%トリエチレングリコール+75%1,3−プロパンジオール、25%トリエチレングリコール+75%アセトン、25%トリエチレングリコール+75%ジエチレングリコール、25%トリエチレングリコール+75%DMSO、25%トリエチレングリコール+75%エタノール、25%トリエチレングリコール+75%エチレングリコール、50%N,N−ジエチルアセトアミド+50%1,3−プロパンジオール、50%1,2−プロパンジオール+50%アセトン、50%1,2−プロパンジオール+50%ジエチレングリコール、50%1,2−プロパンジオール+50%DMSO、50%1,2−プロパンジオール+50%エタノール、50%1,2−プロパンジオール+50%エチレングリコール、50%1,3−プロパンジオール+50%1,2−プロパンジオール、50%1,3−プロパンジオール+50%アセトン、50%1,3−プロパンジオール+50%ジエチレングリコール、50%1,3−プロパンジオール+50%DMSO、50%1,3−プロパンジオール+50%エタノール、50%1,3−プロパンジオール+50%エチレングリコール、50%ジエチレングリコール+50%アセトン、50%ジエチレングリコール+50%DMSO、50%ジエチレングリコール+50%メタノール、50%ジエチレングリコール+50%N,N−ジメチルアセトアミド、50%ジヒドロキシアセトン+50%1,2−プロパンジオール、50%ジヒドロキシアセトン+50%1,3−プロパンジオール、50%ジヒドロキシアセトン+50%ジエチレングリコール、50%ジヒドロキシアセトン+50%エタノール、50%ジヒドロキシアセトン+50%エチレングリコール、50%ジヒドロキシアセトン+50%トリエチレングリコール、50%エチレングリコール+50%アセトン、50%エチレングリコール+50%ジエチレングリコール、50%エチレングリコール+50%DMSO、50%エチレングリコール+50%エタノール、50%1,2,3−プロパントリオール+50%1,2−プロパンジオール、50%1,2,3−プロパントリオール+50%1,3−プロパンジオール、50%1,2,3−プロパントリオール+50%ジエチレングリコール、50%1,2,3−プロパントリオール+50%ジヒドロキシアセトン、50%1,2,3−プロパントリオール+50%DMSO、50%1,2,3−プロパントリオール+50%エチレングリコール、50%1,2,3−プロパントリオール+50%N,N−ジエチルアセトアミド、50%1,2,3−プロパントリオール+50%トリエチレングリコール、50%N,N−ジエチルアセトアミド+50%1,2−プロパンジオール、50%N,N−ジエチルアセトアミド+50%ジエチレングリコール、50%N,N−ジエチルアセトアミド+50%エチレングリコール、50%N,N−ジエチルアセトアミド+50%トリエチレングリコール、50%トリエチレングリコール+50%1,2−プロパンジオール、50%トリエチレングリコール+50%1,3−プロパンジオール、50%トリエチレングリコール+50%アセトン、50%トリエチレングリコール+50%ジエチレングリコール、50%トリエチレングリコール+50%DMSO、50%トリエチレングリコール+50%エタノール、50%トリエチレングリコール+50%エチレングリコール、75%1,2−プロパンジオール+25%アセトン、75%1,2−プロパンジオール+25%ジエチレングリコール、75%1,2−プロパンジオール+25%DMSO、75%1,2−プロパンジオール+25%エタノール、75%1,2−プロパンジオール+25%エチレングリコール、75%1,3−プロパンジオール+25%1,2−プロパンジオール、75%1,3−プロパンジオール+25%アセトン、75%1,3−プロパンジオール+25%ジエチレングリコール、75%1,3−プロパンジオール+25%DMSO、75%1,3−プロパンジオール+25%エタノール、75%1,3−プロパンジオール+25%エチレングリコール、75%ジエチレングリコール+25%アセトン、75%ジエチレングリコール+25%DMSO、75%ジエチレングリコール+25%メタノール、75%ジエチレングリコール+25%N,N−ジメチルアセトアミド、75%ジヒドロキシアセトン+25%エタノール、75%ジヒドロキシアセトン+25%1,2−プロパンジオール、75%ジヒドロキシアセトン+25%1,3−プロパンジオール、75%ジヒドロキシアセトン+25%ジエチレングリコール、75%ジヒドロキシアセトン+25%エチレングリコール、75%ジヒドロキシアセトン+25%トリエチレングリコール、75%エチレングリコール+25%アセトン、75%エチレングリコール+25%ジエチレングリコール、75%エチレングリコール+25%DMSO、75%1,2,3−プロパントリオール+25%1,2−プロパンジオール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%1,3−プロパンジオール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%ジエチレングリコール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%ジヒドロキシアセトン、75%1,2,3−プロパントリオール+25%DMSO、75%1,2,3−プロパントリオール+25%エタノール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%エチレングリコール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%N,N−ジエチルアセトアミド、75%1,2,3−プロパントリオール+25%トリエチレングリコール、75%N,N−ジエチルアセトアミド+25%1,3−プロパンジオール、75%N,N−ジエチルアセトアミド+25%1,2−プロパンジオール、75%N,N−ジエチルアセトアミド+25%ジエチレングリコール、75%N,N−ジエチルアセトアミド+25%エチレングリコール、75%N,N−ジエチルアセトアミド+25%トリエチレングリコール、75%トリエチレングリコール+25%1,2−プロパンジオール、75%トリエチレングリコール+25%1,3−プロパンジオール、75%トリエチレングリコール+25%アセトン、75%トリエチレングリコール+25%ジエチレングリコール、75%トリエチレングリコール+25%DMSO、75%トリエチレングリコール+25%エタノール、75%トリエチレングリコール+25%エチレングリコール、90%1,3−プロパンジオール+10%メタノール、90%ジヒドロキシアセトン+10%メタノール、90%エチレングリコール+10%メタノール、90%1,2,3−プロパントリオール+10%メタノール、90%トリエチレングリコール+10%メタノール、95%1,2−プロパンジオール+5%N,N−ジメチルアセトアミド、95%1,3−プロパンジオール+5%N,N−ジメチルアセトアミド、95%エチレングリコール+5%N,N−ジメチルアセトアミド、95%1,2,3−プロパントリオール+5%N,N−ジメチルアセトアミド、95%トリエチレングリコール+5%N,N−ジメチルアセトアミド、≧96重量%1,2,6−ヘキサントリオール、(99.5重量%1,2,3−プロパントリオール、≧80重量%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、≧90重量%1,2,4−ブタントリオール、75%1,2,3−プロパントリオール+25%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)、50%1,2,3−プロパントリオール+50%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)、25%1,2,3−プロパントリオール+75%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)、75%1,2,3−プロパントリオール+25%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、50%1,2,3−プロパントリオール+50%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、25%1,2,3−プロパントリオール+75%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、75%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)+25%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、50%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)+50%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、25%1,2,6−ヘキサントリオール(96重量%)+75%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(80重量%)、4.72M1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキサオールおよび,2,3,4,5−ペンタンペントール(飽和水溶液)。
【0042】
方法段階ii)で生物試料と組成物を接触させることは、好ましくは生物試料を組成物に浸漬することによって実施され、それは、接触させる操作に際して、試料全体が組成物を含浸しうるように、好ましくは液体形で存在する。生物試料として液体または単離細胞またはたとえば粒状試料が使用される場合、接触させることは、生物試料を組成物と混合することによって、または生物試料を組成物に懸濁することによって実施される。代替として、選択された温度で固体である組成物は、液体生物試料(たとえば血液、血漿、尿、唾液)に直接溶解されうる。
【0043】
生物試料と接触させる操作中、組成物は流動体で、特に好ましくは液体形で存在することがさらに好ましく、ここで組成物の20℃にて測定される粘度は、通常は1ないし1000000mPasの範囲に、好ましくは1ないし100000mPasの範囲に、および特に好ましくは1ないし10000mPasの範囲にある。代替として、しかし、組成物はまた固体でありおよび液体生物試料と接触させられることが可能である。
【0044】
本発明に記載の方法の特定の一実施形態に従って、生物試料を組成物と接触させることは、−80℃ないし+80℃の範囲の、好ましくは0℃ないし+80℃の範囲の、さらにより好ましくは2、3、4、5、6、7または8℃ないし+80℃の範囲の、およびより好ましくは18℃ないし+80℃の範囲の温度にて、たとえば少なくとも−20℃、−19℃、−18℃、−17℃、−16℃、−15℃、−14℃、−13℃、−12℃、−11℃、−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、−1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、室温、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃または60℃の温度にて実施されることが好ましい。
【0045】
「生物試料を組成物と接触させること」が「−80℃ないし+80℃の範囲の温度にて」または上記で言及される他の温度の一つにて実施されるという表現は、生物試料を組成物と接触させた後に得られる混合物の温度が上記の温度以内であることを意味する。したがって、生物材料は、−20℃未満の温度で凍結された試料、たとえば液体窒素中で保存された試料の形を取ることができ、およびそのような場合、ある量の組成物、またはある温度の組成物は、凍結生物試料を組成物と接触させた後に得られる混合物の温度(およびしたがってまた生物試料の温度)が上記の温度以内であるように用いられる。
【0046】
本発明に記載の方法の特定の一実施形態によると、好ましくは上記温度条件下で、方法段階ii)で組成物と接触させた後の生物試料は、方法段階ii)に続く方法段階iii)で、−80℃ないし+80℃の範囲の、好ましくは0℃ないし+80℃の範囲の、さらにより好ましくは2、3、4、5、6、7または8℃ないし最大+80℃の範囲の、およびより好ましくは18℃ないし+80℃の範囲の温度にて、たとえば少なくとも−20℃、−19℃、−18℃、−17℃、−16℃、−15℃、−14℃、−13℃、−12℃、−11℃、−10℃、−9℃、−8℃、−7℃、−6℃、−5℃、−4℃、−3℃、−2℃、−1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、室温、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃または60℃の温度にてさらに保存されることもまた好ましい可能性があり、ここでそのような保存は少なくとも1日、好ましくは少なくとも2日、より好ましくは少なくとも3日、随意的に少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月でなければ少なくとも12ヶ月の期間にわたって実施されうる。
【0047】
本発明に記載の方法は、処理された生物試料を室温にて、冷蔵温度にて、またはより高い温度でさえ、生物試料中の核酸またはタンパク質といった生体分子の認識可能な分解をこの結果として生じることなく、保存することを可能にする。これは従来の安定化方法に対して重要な長所であり、なぜなら本方法は液体窒素のまたは冷却装置の使用無しに実施でき、および安定化された試料はまた液体窒素のまたは冷却装置の使用無しに保存されうるためである。
【0048】
本発明に記載の処理後、および必要に応じて可能な保存段階iii)の前でなければ後、組織学的研究に適する組織切片が後で生物試料からより簡単な方法で調整されうるように、処理された生物試料はまた適当な包埋手段に、たとえばパラフィンなどに包埋されうる。
【0049】
本発明に記載の方法の特定の一実施形態によると、方法段階i)およびii)後に加えて方法段階
iv)組成物と接触させられた生物試料の組織学的分析、または、組成物と接触させられた生物試料中の、またはそれに由来する、生体分子の分析、
を行うのがさらに好ましい可能性があり、
ここでこの方法段階iv)はまた、必要に応じて、上記の方法段階iii)に記載の保存の前または後に実施されうる。
【0050】
組織学的研究とは、好ましくは、組織、組織切片、細胞の、または細胞内構造の形態学的状態を、たとえば顕微鏡法によって、および、必要に応じて、当業者に公知である染色または標識化方法を用いて、分析するのに適した任意の研究方法を意味すると理解される。
【0051】
分析されうる適当な生体分子は、当業者に公知であるすべての生体分子、特に天然、修飾または合成核酸、天然、修飾または合成タンパク質またはオリゴペプチド、ホルモン、増殖因子、代謝基質、脂質、オリゴ糖またはプロテオグルカンである。適当な核酸は、当業者に公知であるすべての核酸、特にリボ核酸(RNA)、たとえばmRNA、siRNA、miRNA、snRNA、t−RNA、hnRNAまたはリボザイム、またはデオキシリボ核酸(DNA)である。原則として、それらはプリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドまたはC−グリコシドである任意の種類のヌクレオチドの形を取りうる。核酸は、一本鎖、二本鎖または多重鎖、直鎖、分枝または環状でありうる。それは、たとえばDNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)のような細胞内に存在する分子に相当する可能性があり、または相補DNA(cDNA)、アンチセンスRNA(aRNA)または合成核酸のようにin vitroで生成されうる。核酸は、少数のサブユニット、少なくとも2個のサブユニット、好ましくはたとえばオリゴヌクレオチドのような8個以上のサブユニット、たとえばある種の発現ベクターのような数百個のサブユニットから最大数千個のサブユニット、またはゲノムDNAのようなはるかに多数のサブユニットから成る可能性がある。好ましくは、核酸は、その核酸が導入されたかまたは天然に存在する細胞内で、ポリペプチドの発現を可能にする調節配列と機能的に結合しているポリペプチドのコード情報を構成する。このように、核酸の好ましい一実施形態は発現ベクターである。別の一実施形態では、それはpDNA(プラスミドDNA)、siRNA、siRNA二重鎖またはsiRNAヘテロ二重鎖であり、「siRNA」の語は二本鎖RNA(dsRNA)を酵素「ダイサー」で切断することによって生成されおよび酵素複合体「RISC」(RNA誘導サイレンシング複合体)に導入された長さ約22塩基のリボ核酸を意味すると解される。
【0052】
これに関連して、「組成物と接触させた生物試料中のまたはそれに由来する生体分子の分析」の表現は、分析がin situおよびex situの両方で、すなわちたとえば生物試料からの生体分子の単離後に、起こりうることを意味する。生物試料由来の生体分子が分析目的で単離されるべき場合は、特に細胞、組織または他の複雑なまたは緻密な試料の場合には、試料をまずホモジナイズすることが有利である可能性があり、それは機械的方法によって、たとえばカニューレ、乳鉢、ローターステーターホモジナイザー、ボールミルなどによって、通常は界面活性剤および/またはカオトロピック物質を含む適当な溶解緩衝液を用いることによる化学的手段によって、たとえばプロテアーゼを用いる酵素的手段によって、またはこれらの方法の組み合わせによって実施されうる。
【0053】
組織学的分析を実施するために、または生物試料中のまたはそれに由来する生体分子の分析を実施するために、当業者に公知でありおよび当業者が適当と判断するすべての分析方法、好ましくは光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、共焦点レーザー走査型顕微鏡法、レーザー顕微解剖、走査型電子顕微鏡法、ウェスタンブロッティング、サザンブロッティング、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降法、アフィニティクロマトグラフィー、変異分析、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、特に二次元PAGE、HPLC、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RFLP分析(制限断片長多型分析)、SAGE分析(遺伝子発現の連続分析)、FPLC分析(迅速タンパク質液体クロマトグラフィー)、質量分析、たとえばMALDI−TOF質量分析またはSELDI質量分析、マイクロアレイ分析、リキチップ(LiquiChip)分析、酵素活性分析、HLAタイピング、配列決定、WGA(全ゲノム増幅)、RT−PCR、リアルタイムPCRまたはリアルタイムRT−PCR、RNアーゼ保護分析またはプライマー伸長分析から成る群から選択される方法を使用することが可能である。
【0054】
本発明に記載の方法の特定の一実施形態によると、方法段階iv)は、生物試料の組織学的分析、および生物試料中のまたはそれに由来する生体分子の分析の両方を含む。本発明に記載の方法の別の特定の一実施形態によると、方法段階iv)は、生物試料中のまたはそれに由来する核酸の分析、および生物試料中のまたはそれに由来するタンパク質の分析の両方を含む。
【0055】
本発明に記載の方法によって処理された生物試料はまた、始めに言及された目標を達成するのに貢献する。
【0056】
成分として:
(β1)液体を充填レベルhまで受け入れるための少なくとも一つのポートを有する少なくとも一つの容器、
(β2)少なくとも一つのポートを密閉するための少なくとも一つの蓋、
(β3)蓋(β2)の少なくとも一つに結合されている少なくとも一つの浸漬補助具、および
(β4)軸Lについて回転可能に配置され、および少なくとも一つの容器(β1)内の液体を混合するための案内羽根を含む混合装置
を含む、生物試料を処理するための第一の装置もまた、始めに言及された目標を達成するのに貢献する。
【0057】
本発明に記載の組成物が生物試料を処理するのに使用される場合、これはまず試料を組成物中に浸漬するのが困難であるという問題、次に組成物中に試料を浸漬した後に生じる特に生物試料の直接周囲の不均一性を得るために有利である、組成物の良好な混合が、組成物中に存在するポリオールの種類および量に依存する組成物の高粘度が理由で困難になるという問題を、結果として生じうる。
【0058】
これらの問題は、本発明に記載の第一の装置によって克服することができ、なぜなら浸漬補助具(β3)が生物試料の組成物中への浸漬を可能にし、および混合装置(β4)が組成物の混合、およびしたがって組成物による試料の均一な浸透を可能にするためである。
【0059】
使用される容器(β1)は、当業者に公知でありおよびこの目的に適する任意の容器の形を取りうる。本発明にしたがって好ましい容器は、US6,602,718に、およびUS2004/0043505A1に記号12の容器として、US2005/0160701A1に記号14の容器として、US2003/0086830A1に記号152の容器として、US2003/0087423A1に記号12の容器として、またはWO2005/014173A1に記号100の容器として開示される容器である。生物試料を受け入れるのに適当な容器に関するこれらの広報の開示は参照により本開示に含まれおよび本発明の開示の一部をなす。
【0060】
円筒形の容器が容器(β1)として使用される場合、容器(β1)の直径は好ましくは5ないし500mmの範囲、特に好ましくは10ないし200mmの範囲、および非常に好ましくは10ないし30mmの範囲にある。
【0061】
使用される蓋(β2)は、当業者に公知でありおよびこの目的に適する任意の蓋の形を取りうる。本発明にしたがって好ましい蓋は、US6,602,718に、およびUS2004/0043505A1に記号22の蓋として、US2005/0160701A1に記号40の蓋として、US2003/0086830A1に記号14の蓋として、US2003/0087423A1に記号14の蓋として、またはWO2005/014173A1に記号22の蓋として開示される蓋である。生物試料を受け入れるのに適当な容器を密閉するのに適当な蓋に関するこれらの広報の開示もまた参照により本開示に含まれおよび本発明の開示の一部をなす。
【0062】
本発明に記載の第一の装置の特定の一実施形態によると、充填レベルhは、容器(β1)の全高Hの20から99%、特に好ましくは40から90%、および非常に好ましくは50から80%である。
【0063】
容器(β1)および蓋(β2)の他に、本発明に記載の第一の装置はまた浸漬補助具(β3)を含む。
【0064】
この浸漬補助具(β3)は、原則として、容器(β1)内に存在する液体のたとえば表面上にあるか、または、浸漬補助具(β3)が生物試料の容器を含む場合は蓋(β2)が閉じられる際に浸漬補助具(β3)の中または上に位置する、試料を液体中へ完全に浸漬するのに適した、任意の装置の形を取りうる。
【0065】
最も単純な場合には、浸漬補助具(β3)は、断面が容器(β1)の断面にほぼ対応するスタンプの形を取りうる。ここで、蓋を閉じることが液体の圧縮を結果として生じないように、浸漬補助具(β3)の少なくとも一部に、蓋(β3)を閉じる際に容器(β1)中に存在する液体が通って脱出しうる開口部を付けることが好ましい。好ましくは、したがって、浸漬補助具(β3)の少なくとも一部が、メッシュ様またはふるい様の材料製である。液体の脱出を可能にする開口部を付けられていない浸漬補助具(β3)の場合には、浸漬補助具(β3)および試料の間のスペーサーとして働き、そのため液体および試料は完全に接触する、浸漬補助具(β3)の下の突起を付けることもまた実行可能であるが、しかしそのような場合、浸漬補助具(β3)の浸漬に際して液体の圧縮を回避するために、浸漬補助具(β3)の断面は、容器(β1)の断面より小であるべきである。
【0066】
単純なスタンプの他に、浸漬補助具(β3)はまた試料ホルダーとして設計されうる。そのような浸漬補助具はたとえばUS2003/0087423に記号152の試料ホルダーとして記載される。試料ホルダーの構造および性質に関するUS2003/0087423の開示は参照により本開示に含まれおよび本発明の開示の一部をなす。特に、この試料ホルダーには、生物試料が通って試料ホルダーの内部へ導入されうるポートを付けることができ、試料が導入された後はこのポートを密閉できる。再び、容器(β1)内に存在する液体が蓋(β2)を閉じる際に試料ホルダー内に位置する試料と接触できるように、側面パネルまたは底は少なくとも一部がメッシュ様またはふるい様の材料製であることが好ましい。さらに、試料ホルダーはまた、たとえば生物試料をクランプすることができる、クランプされた試料が蓋(β2)を閉じる際に液体内に浸漬されるような方法で蓋(β2)に固定されている、単純なクランプとして設計できる。
【0067】
本発明によると浸漬補助具(β3)は容器(β1)を、容器(β1)の密閉状態の充填レベルh以下、しかし特に好ましくは80%以下、さらにより好ましくは充填レベルhの50%以下に達する、最大で高さh'まで貫通することが好ましい。
【0068】
さらに、本発明に記載の第一の装置は、軸Lについて回転可能に配置された、および少なくとも一つの容器(β1)中の液体を混合するための案内羽根を含む、混合装置(β4)を含む。好ましくは、これらの案内羽根は、容器(β1)の直径と比較して、毎分10回転の回転速度で混合装置(β4)を軸Lについて均一に回転する際、容器(β1)の全高Hの90%まで水で満たされている場合に、容器(β1)の中心へ導入した過マンガン酸カリウム1gを含む水1Lの色素溶液1滴(2μl)が、室温にて、1分後、好ましくは60秒後、特に好ましくは30秒後、さらにより好ましくは15秒後、および非常に好ましくは10秒後に、容器(β1)の全体で見かけ上均一な色素の分布を与えるような方法で、配置、設計および大きさが決められている。
【0069】
最も単純な場合には、この混合装置(β4)は、浸漬補助具の上、下、または同レベルに配置されたピンから成ることができ、そのピンの長さは容器(β1)の直径にほぼ対応し、およびその中心は蓋の中心へ継手を介して結合されている。蓋(β2)が回して閉められる際、容器(β1)の内部のピンの動きは液体の混合に繋がる。
【0070】
原則として、たとえば容器(β1)が密閉される際のように、蓋(β2)が回される際にだけ混合が起こるように、混合装置(β4)は蓋(β2)と堅く、好ましくは一体化して結合されうる。容器(β1)の外側に、特に好ましくは底の下または蓋(β2)の上に位置する、たとえば混合装置(β4)と結合されたホイールによって、でなければ混合装置(β4)と結合されたレバーによって、混合装置(β4)を作動させることができるように配置することもまた実行可能である。そのような場合、混合装置(β4)はまた、蓋(β2)が回されていない時にも作動可能であり、そのことは特に、装置内で無菌環境を維持すべき場合に有利である。さらに、容器(β1)上に位置する特定のねじ、および特定の蓋(β2)の適当な組み合わせを使用することが可能であり、その組み合わせは、容器へねじを介して蓋を閉めることができ、および、一旦蓋がねじ全部を通過したら、蓋が容器上で自由に回転されうる点で特徴づけられる。そのような蓋はチャイルドプロテクションとしてたとえば毒性物質または腐食性物質の容器について知られている。この場合には、混合装置(β4)はまた蓋が回される際にだけ作動しうる一方、蓋の回転は必ずしも容器(β1)が開く結果にならない。
【0071】
本発明に記載の第一の装置の特定の一実施形態によると、浸漬補助具(β3)は混合装置(β4)の成分である。この場合、液体を混合するための案内羽根は、浸漬補助具(β3)上で配列されているかまたは浸漬補助具(β3)の一部をなす。
【0072】
本発明に記載の第一の装置の特に好ましい一実施形態によると、装置は、少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて一つ以上の添加剤を含む本発明に記載の方法に関連して記載される組成物で、全高Hの少なくとも10%まで、特に好ましくは少なくとも20%まで、より好ましくは少なくとも30%まで、さらにより好ましくは少なくとも40%までおよび非常に好ましくは少なくとも50%まで満たされる。
【0073】
さらに、本発明によると、本発明に記載の第一の装置がたとえばWO2005/014173A1に記載される針によって貫通される蓋(β2)を含むことが好ましい可能性があり、これに関連して、容器が本発明に記載の方法に関連して記載される組成物で満たされること、減圧が容器に行き渡ること、および浸漬補助具が蓋を開けなくてさえ高さhに沿って縦に移動されうるように容器内に配置されることが特に好ましい。このように、生物試料として規定量の液体を、たとえば規定量の血液を、容器(β1)内の減圧によって、蓋を通して容器(β1)内へ吸引すること、この液体試料を、少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む組成物中へ、浸漬補助具(β3)の垂直運動によって注入すること、および次いで液体生物試料および組成物を混合装置(β4)によってよく混合することが可能である。
【0074】
成分として:
(β1)充填レベルhまで液体を受容するための少なくとも一つのポートを有しおよび断面積A容器を有する少なくとも一つの容器、ここで容器は少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む本発明に記載の方法に関連して記載される組成物で、充填レベルhまで満たされる、
(β2)少なくとも一つのポートを密閉するための少なくとも一つの蓋、および
(β5)断面積A体部を有し、容器(β1)または蓋(β2)と結合されていない、および容器内に位置し、比A体部/A容器が好ましくは約0.02ないし0.95%、特に好ましくは約0.1ないし0.9%および非常に好ましくは約0.2ないし0.5%の範囲にある、少なくとも一つの体部
を含む、生物試料を処理するための第二の装置もさらに、上述の目標を達成するのに貢献する。
【0075】
「容器(β1)または蓋(β2)と結合されていない」の表現は、体部(β5)が容器内で、特に組成物内で、自由に動けることを意味すると解される。生物試料、たとえば、組成物の高い粘度のため最初は組成物の表面上に留まる小さい組織断片が、本発明に記載のこの第二の装置に導入される際、組成物の組成物への十分な浸漬は、本発明に記載のこの装置を用いて、図5に示す通り、装置を軸L'について傾けることによってまた達成されうる。これは容器(β1)内の体部(β5)を断面A容器に対して垂直に動かし、それは移動する体部に沿ってそのため生じる流れの結果として、組成物の混合に繋がる。
【0076】
容器(β1)としておよび蓋(β2)として特に好ましいのは、本発明に記載の第一の装置に関連して始めに既に記載されている容器および蓋である。
【0077】
本発明に記載のこの第二の装置の特定の一実施形態によると、装置が組成物で満たされる充填レベルhは、容器(β1)の全高Hの20から99%、特に好ましくは40から90%、および非常に好ましくは50から80%に達する。
【0078】
これに関連して、体部(β5)は任意の形状を取りうるが、しかし好ましくは球または直方体、しかし特に好ましくは球である。さらに、複数の体部(β5)が、たとえば2、3、4または5、必要に応じてまた最大10、20または30個のそのような体部が、容器(β1)内に存在しうる。
【0079】
体部は、組成物の密度を少なくとも5%、特に好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも50%、および非常に好ましくは少なくとも100%上回る密度の材料製であることがさらに好ましい。
【0080】
容器(β1)の直径が5ないし500mmの範囲に、特に好ましくは10ないし200mmの範囲に、および非常に好ましくは10ないし30mmの範囲にある、本発明に記載のこの第二の装置の特に好ましい一実施形態によると、体部(β5)は、1ないし20mm、特に好ましくは5ないし10mmの範囲にある直径を有する鋼球の形を取る。原則として、体部(β5)はまた磁性である可能性があり、その場合、体部(β5)はたとえば攪拌子の形を取りうる。
【0081】
さらに、本発明に記載の第二の装置がたとえばWO2005/014173A1に記載される針によって貫通される蓋(β2)を含むことが好ましい可能性があり、特に好ましいこれに関連してまた、減圧が容器に行き渡ることが特に好ましい。このように、生物試料として規定量の液体を、たとえば規定量の血液を、容器(β1)内の減圧によって、蓋を通して容器(β1)内へ吸引すること、および、容器(β1)を動かすことによって、好ましくは軸L'について傾けるまたは回転することによって、生物試料および組成物の均一な混合を確実にすることが可能である。
【0082】
特に好ましい一実施形態では、本発明に記載の第一および第二の装置の両方が、特に容器の内部が無菌でありうる。
【0083】
(γ1)少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む、本発明に記載の方法に関連して記載される組成物、および
(γ2)当業者がこの組成物を受容するのに適すると判断する、上記の装置のうちの一つまたは別の容器、好ましくは密閉可能な容器、たとえばグライナー(Greiner)チューブ、ファルコン(Falcon)チューブ、エッペンドルフ(Eppendorf)ベッセルまたは公報US6,602,718、US2004/0043505A1、US2005/0160701A1、US2003/0086830A1、US2003/0087423A1またはWO2005/014173A1に記載される容器のうちの一つ
を含むキットは、さらに、始めに言及された目的を達成するのに貢献する。
【0084】
これに関連して、組成物は、たとえばまた本発明に記載の第二の装置でそうであるように、組成物は装置または容器(γ2)に既に入れられている可能性がある。しかし、キットが、さらなる成分として、組成物で満たされていておよびそれによって組成物の規定量が、好ましくは無菌条件下で、装置または容器(γ2)に充填されうる、投与装置(γ4)を含むこともまた可能である。そのような投与装置(γ4)は、たとえばソープディスペンサーの形に設計されうる。
【0085】
(γ1)少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む、本発明に記載の方法に関連して記載される組成物、および
(γ3)生物試料中のまたはそれに由来する生体分子を分析するための、または生物試料の形態を分析するための試薬
を含むキットは、さらに、始めに言及された目的を達成するのに貢献する。
【0086】
生物試料中のまたはそれに由来する生体分子を分析するための、または生物試料の形態を分析するための試薬は、原則として、当業者に公知である、生物試料の形態学的分析のためにまたはそれにおいて、または生物試料中のまたはそれに由来する生体分子の分析のためにまたはそれにおいて、使用されうるすべての試薬の形を取りうる。これらの試薬は特に、随意的に蛍光色素でまたは酵素で標識された、細胞または細胞成分、抗体を染色するための色素、たとえばDEAE−セルロースまたはシリカメンブレンのような吸収マトリクス、酵素基質、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、たとえばエタノールまたはフェノール、緩衝水溶液、RNアーゼフリー水、溶解試薬、アルコール溶液などのような溶媒を含む。
【0087】
(γ1)少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む、本発明に記載の方法に関連して記載される組成物、
(γ2)この組成物を受容するのに適すると当業者が判断する、上記の装置のうちの一つまたは別の容器、好ましくは密閉可能な容器、および
(γ3)生物試料中のまたはそれに由来する生体分子を分析するための、または生物試料の形態を分析するための試薬
を含むキットは、さらに、始めに言及された目的を達成するのに貢献する。
【0088】
再び、組成物を装置または容器(γ2)に分注することができ、でなければキットは適当な投与装置(γ4)を含む。
【0089】
生物試料を処理するための、上記の装置の、または上記のキットの使用、生物試料を処理するための本発明に記載の方法における、本発明に記載の装置のまたは上記のキットのうちの一つの使用、および本発明に記載の方法に関連して記載される通りの、少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む組成物の、生物試料を処理するための、特に生物試料を安定化するための使用もまた、始めに言及された目的を達成するのに貢献する。
【0090】
方法段階:
(σ1)方法段階i)、ii)およびiv)を含む本発明に記載の方法による生物試料の分析を含む診断方法による疾患の診断、および
(σ2)診断された疾患の治療的処置
を含む、疾患を治療する方法もまた、始めに言及された目的を達成するのに貢献する。
【0091】
本発明はここで非限定的な図面および実施例を用いてより詳細に説明される。
【0092】
図1に示す装置は、全高Hの容器1を含み、容器1は、蓋2で密閉されうる。容器1は、組成物、好ましくは液体組成物で、好ましくは少なくとも一つのポリオールおよび必要に応じて少なくとも一つの添加剤を含む組成物で、充填レベルhまで満たされる。浸漬補助具3は、メッシュまたはふるいのように設計されており、蓋2と接続されている。試料5は、浸漬補助具3を浸漬する前は、組成物の表面上に位置しているが、蓋2を閉める際、組成物に浸漬され、その方法の間に容器1を閉じる時に浸漬補助具3は容器1をレベルh'まで貫通する。蓋2を回して閉める際、浸漬補助具3の上に配列される、混合装置の案内羽根4は、組成物の混合を結果として生じる。図1aおよび1bから見える通り、混合装置の案内羽根4は異なる形に設計されうる。図1aおよび1bは、4つの案内羽根4を示すが、しかし原則として、軸Lについて混合装置を回転することが容器1内の組成物の十分な混合を確実にする限り、4つより少ないかまたは4つより多い案内羽根4を用いることもまた可能である。図2によると、案内羽根4はまた浸漬補助具4の下に配置でき、一方、図3に示す通り、案内羽根4はまた浸漬補助具3の成分でありうる。この場合、浸漬補助具3はたとえば放射状に(すなわち軸Lに対して垂直に)伸びる一つ以上の突起を持つことができ、その突起はたとえば小さいブレードの形に設計される。本発明によると、図3に示す通り、案内羽根4が生物試料5と可能な限り近い場合が特に好ましく、なぜならそのような場合には、試料の直接周辺での組成物の可能な限り徹底した混合、およびしたがって試料5の組成物での特に均一な浸透を確実にできるからである。図3に示す装置はさらにまた、蓋2が閉められておりおよび動かされていない時でさえ、その上で混合装置の案内羽根4を動かすことができるホイール6を含む。
【0093】
図4は、浸漬補助具3がUS2003/0087423A1から公知である通りの試料容器を含む装置を示す。ここでは、浸漬補助具3は、試料容器が付いていて、また、浸漬補助具が軸Lについて回転される際に斜めの側面パネルが案内羽根4として作用するように、斜めの側面パネルを有するような方法で設計できる(およびしたがって上から見た場合に菱形の輪郭を有する)(図4b参照)。
【0094】
図5は、本発明に記載の第二の装置の一実施形態を示す。この装置は始めに記載された組成物で最大で充填レベルhまで満たされ、鋼球7が容器1の内部に位置する。装置が軸L'について傾けられる際、鋼球は図5に示す矢印の方向へ移動し、組成物の混合を結果として生じる。
【実施例】
【0095】
1.本発明にしたがって処理された試料の組織学的分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を、各例で表1に詳細を示す組成物1mlを用いて処理し、および1日間25℃のインキュベーター内で保存した。保存後、組織片を溶液から取り出し、プラスチック箱に移し、および、従来の手順後、エタノール上昇系列中でおよびキシレン中でインキュベートし、およびパラフィンに包埋する。ミクロトームを用いて、パラフィン包埋組織から切片を調製し、およびこれらの切片をスライドグラス上でヘマトキシリン−エオシンを用いて従来の方法で染色する。染色された組織切片を光学顕微鏡下で観察する。結果を表1にまとめる:
【0096】
【表1】

【0097】
表1に見られる通り、本発明に記載の方法は、新鮮組織試料を室温条件で安定化することを可能にし、なおそのように安定化された試料を用いる組織学的分析が可能である。
【0098】
1a.1,2,3−プロパントリオール−および3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール処理試料の組織学的分析
この実験のために、25%1,2,3−プロパントリオールおよび75%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオールおよびパラホルムアルデヒド飽和水溶液(交差活性化添加剤)から構成される組成物を調製する。最終組成物を調製するために、トリオール混合物の90容量%をパラホルムアルデヒド溶液の10容量%と混合する。
【0099】
臓器の摘出直後、ラット肝臓および筋組織をそのように調製された最終組成物で処理し、および1日間室温にて(18〜25℃)保存する。保存後、組織片を溶液から取り出し、プラスチック箱に移し、および、従来の手順後、エタノール上昇系列中でおよびキシレン中でインキュベートし、およびパラフィンに包埋する。ミクロトームを用いて、パラフィン包埋組織試料から切片を調製し、およびこれらの切片をスライドグラス上でヘマトキシリン−エオシンを用いて従来の方法で染色する。染色された組織切片を光学顕微鏡下で観察する。
【0100】
安定化溶液が組織を固定すること、およびこのように処理された組織が組織学的研究に適していることが明らかに示される。
【0101】
2.本発明にしたがって処理された保存試料のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を、各例で異なる溶液1ml(表2参照)を用いて処理し、および室温にて最長28日間および4〜8℃にて冷蔵庫で最長3ヶ月保存した。保存後、RNAを保存試料から単離する。
【0102】
RNAを単離するために、組織を保存後に溶液から取り出し、およびたとえばキアゲン社(QIAGEN)(ドイツ、ヒルデン(Hilden))のRLT緩衝液のような市販のグアニジウムイソチオシアネート緩衝液350μlを組織10mg当たりに加える。試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いて、2×2分間20Hzにて5mm鋼球を用いてホモジナイズし、その方法の間、グアニジウムイソチオシアネート緩衝液が先行技術から公知である方法で細胞を溶解しおよび放出されたタンパク質を変性する。その後、溶解物を3分間14000rpmにて遠心分離する。組織10mgに相当する、350μlを上清から取り出す。これらの試料へ、1容(350μl)の70%エタノールを加え、および試料を約5秒間、ピペッティング上下の反復によって、またはボルテックスによって混合する。その後、溶解物を、たとえばキアゲン社のRNイージー(RNeasy)カラムのような、市販のシリカ膜を含むスピンカラムに加え、および遠心分離(1分間10000×gにて)によって膜を通過させる。RNAは膜に結合して残り、および続いて市販のグアニジウムイソチオシアネートを含む第一の洗浄緩衝液、たとえばキアゲン社の緩衝液RW1を用いて洗浄する。結合している可能性がある総DNAがあれば酵素的に除去するために、DNアーゼIを含む適当な緩衝液を続いてカラムに加え、および15分間室温にてインキュベートして、結合したDNAを分解する。その後、試料を、市販のグアニジウムイソチオシアネートを含む第一の洗浄緩衝液、たとえばキアゲン社の緩衝液RW1を用いて再び、およびその後トリスを含むかまたはトリスおよびアルコールを含む第二の洗浄緩衝液、たとえばキアゲン社の緩衝液RPEを用いて洗浄する。ここで、洗浄緩衝液はそれぞれの場合で遠心分離(1分間10000×gにて)によって膜を通過する。トリスを含むかまたはトリスおよびアルコールを含む第二の洗浄緩衝液に関する洗浄段階を、より少量を用いて反復し、その方法において膜は遠心分離(2分間最大速度にて、この場合には20000×g)によって同時に乾燥される。溶出のために、精製されたRNAを膜から離すため、RNアーゼフリー水40μlを膜上へピペットで入れる。1分間10〜30℃の範囲の温度でのインキュベート後、溶出液を遠心分離(1分間10000×gにて)によって膜を通過させ、および溶出を完全にするため溶出段階を反復する。
【0103】
単離されている総RNAの量は、水で希釈後に測光法で波長260nmでの光吸収を測定することによって測定される。このように得られたRNAの品質は、測光法で280nmでの光吸収に対する260nmでの光吸収の比を測定することによって測定される。単離段階の結果を表2に示す。
【0104】
新鮮生物試料を室温にて本発明に記載の方法によって安定化することが可能であったこと、および最長3ヶ月の保存期間後でさえ十分な量のRNAがこれらの試料からまだ単離できることが表2からわかり、このRNAの品質は280nmでの光吸収に対する260nmでの光吸収の比によって特徴づけられる。
【0105】
【表2】

【0106】
2a.本発明にしたがって処理された試料のRNA分析
添加剤を含む組成物のRNA安定化特性を試験するために、異なる量のパラホルムアルデヒドを含む組成物を、実施例1aに記載の通りに調製する(表2a参照)。臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を各例で最終組成物1.5mlを用いて処理し、および3日間室温にて保存する。その後、RNAを実施例2に記載される方法にしたがって単離する。各例で3試料を試験する。
【0107】
単離された総RNAの量は、水で希釈後に測光法で波長260nmでの光吸収を測定することによって測定される。このように得られたRNAの品質は、測光法で280nmでの光吸収に対する260nmでの光吸収の比を測定することによって測定される。単離段階の結果を表2aに示す。試験した3試料の平均値を各例で示す。加えて、単離されたRNAを、エチジウムブロマイドで染色されるアガロースゲルで分析する。このために、たとえば溶出液10μlを1%ホルムアルデヒドアガロース−MOPSゲルで分離する。結果を図8cに示す。
【0108】
【表2a】

【0109】
結果は、本発明に記載の組成物が、架橋添加剤(パラホルムアルデヒド)の混合にもかかわらず、驚くべきことに非常に良好な品質および収量でRNAの単離を可能にすることを示す。本発明に記載の方法はこのように、試料の形態を維持することだけでなく、核酸のような分子成分を安定化することも可能にする。
【0110】
2b.本発明にしたがって処理された試料の長期保存後のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を1mlの組成物a)25%3−メチル−1,2,5−ペンタントリオールおよび75%1,2,6−ヘキサントリオールを用いて処理し、および4〜8℃にて冷蔵庫で最大12ヶ月保存する。同様に、ラット腎臓組織を1mlの組成物b)25%1,2,3−プロパントリオールおよび75%3−メチル−1,2,5−ペンタントリオールを用いて処理しおよび保存する。
【0111】
【表2b】

【0112】
表2bに詳細に示す時に、組成物a)およびb)中で保存された試料から、実施例2に示す方法を用いてRNAを単離する。
【0113】
単離されたRNAを、エチジウムブロマイドで染色されるアガロースゲルで分析する。このために、たとえば1.0%ホルムアルデヒドアガロース−MOPSゲルを調製する。組成物a)を用いた試料の結果を図9aに示し、および組成物b)を用いた試料の結果を図9bに示す。
【0114】
両方の図は明らかに、非常に長期にわたってさえ、本発明に記載の方法がRNAを凍結することなく保存することを示す。
【0115】
3.本発明にしたがって処理された保存試料のDNA分析
臓器の摘出直後、ラット肺組織を、各例で異なる溶液1ml(表3参照)を用いて処理し、および6日間25℃にて保存した。保存後、DNAを保存試料から単離する。
【0116】
DNAを単離するために、組織を保存後に溶液から取り出し、および組織10mg当たりキアゲン社(QIAGEN)の緩衝液ALT180μlを加える。試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いて、45秒間25Hzにて、5m鋼球を用いてホモジナイズする。プロテアーゼK溶液(キアゲン社より)40μlを添加した後、溶解物を振とうしながら1時間55℃にてインキュベートする。インキュベート後、キアゲン社の緩衝液ALのような市販のグアニジン塩酸塩を含む溶解緩衝液220μlを加え、および試料をボルテックスによって混合する。100%エタノール220μlと混合後、シリカ膜を含むカラム(キアゲン社のキアンプミニスピン(QIAamp Mini Spin)カラム)に試料を加え、および溶解物を1分間10000rpmでの遠心分離によって膜を通過させる。DNAは膜に結合して残り、および市販のグアニジン塩酸塩を含む第一の洗浄緩衝液、たとえばキアゲン社の緩衝液AW1を用いて、およびその後アルコールを含む第二の洗浄緩衝液、たとえばキアゲン社の緩衝液AW2を用いて洗浄する。この方法では、各洗浄緩衝液を遠心分離(1分間10000×gにて、または3分間14000×gにて)によって膜を通過させる。DNAを、AE溶出緩衝液(キアゲン社)60μlを加えることによって溶出する。1分間インキュベート後、溶出緩衝液を遠心分離(1分間10000×gにて)によって膜を通過させおよび溶出を繰り返す。
【0117】
単離されている総DNAの量は、水で希釈後に測光法で波長260nmでの光吸収を測定することによって測定される。このように得られたRNAの品質は、測光法で280nmでの光吸収に対する260nmでの光吸収の比を測定することによって測定される。単離段階の結果を表3に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
本発明に記載の安定化方法はまた、6日間室温にての保存後でさえ、安定化試料中のDNAを良好な品質および良好な収量で単離するのを可能にすること、および、したがって、本発明に記載の安定化方法はRNAの安定化(実施例2参照)およびDNAの安定化の両方に適することが表3からわかる。
【0120】
4.本発明にしたがって処理されている保存試料のタンパク質分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を、各例で異なるトリオール1ml(表4参照)を用いて処理し、および、2日間および7日間25℃にてインキュベーター内で保存した。保存後、保存試料からのタンパク質抽出物を調製する。ラットからの摘出後に液体窒素中で直接凍結されおよび以後−80℃にて保存されている肝臓組織を対照として用いる。
【0121】
タンパク質抽出物を調製するために、組織を保存後に安定化組成物から取り出し、および400μlの通例の抽出緩衝液、この場合には8M尿素、100mMリン酸二水素ナトリウムおよび10mMトリス、pH8.0の組成物を組織10mg当たりに加え、および試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いてホモジナイズする。結果として生じる溶解物を、不溶成分を沈澱するため、15秒間最高速度(たとえば約20000×g)にて遠心分離する。タンパク質性の上清を取り出し、およびタンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)検定法によって測定する。各例でタンパク質3μgをSDS−ポリアクリルアミドゲルで通例の方法によって分離し、およびゲル中のタンパク質をクマシー(Coomassie)染色によって染色する(図6参照)。染色されたタンパク質バンドのパターンは、対照と比較して、保存中に変化していない。タンパク質は安定なままであり、およびなんら分解を受けない。
【0122】
同一の試料を加えた別のSDS−ポリアクリルアミドゲルを、取扱説明書に従ってセミドライブロッティング装置でニトロセルロース膜にブロットする。膜を先行技術に従ってスキムミルクで飽和させ、ERK2特異的抗体、たとえばキアゲン社のTaq100抗体と、取扱説明書に従ってハイブリダイズし、および免疫検出を実施する。結果はまた図6に示す。
【0123】
処理試料中のタンパク質もまた、7日間室温にて保存後でさえ、以前と同じに未変化のままでありおよび分解しておらず、および良好な収量で単離できることが図6からわかる。したがって、本発明に記載の安定化方法は、核酸の安定化(実施例2および3を参照)およびタンパク質の安定化の両方に適する。
【0124】
【表4】

【0125】
5.本発明にしたがって処理されている保存試料のタンパク質分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を、各例で異なるトリオール1ml(表5参照)を用いて処理し、および2日間4〜8℃にて冷蔵庫に保存する。臓器の摘出直後に液体窒素中で凍結されておりおよび−80℃にて凍結保存された組織が、陽性対照として用いられる。
【0126】
保存後、組織を安定化溶液から取り出し、およびキアゲン社(QIAGEN)の「リキチップ広域Ser/Thrキナーゼ」("LiquiChip Broad−Range Ser/Thr−Kinase")ハンドブックに記載される抽出緩衝液400μlを組織10mg当たりに加える。試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いて、5分間30Hzにて5mm鋼球を用いてホモジナイズし、および続いて卓上遠心機で3分間14000rpmにて遠心分離する。上清を取り出し、および抽出緩衝液で1:10希釈する。このように得られた試料を、キアゲン社の「リキチップ広域Ser/Thrキナーゼ」キットを対応する装置(リキチップリーダー)と共に用いて取扱説明書に従ってキナーゼの活性について検定する。タンパク質を添加しない、製造元の検定緩衝液1を陰性対照として用いる。各試料は2連で調製および測定する。
【0127】
各キナーゼ基質(HH:ヒストンH1、MBP:ミエリン塩基性タンパク質)を用いて測定された蛍光の平均値(MFI=中間蛍光強度)の形の結果を図7に示す。
【0128】
結果は、本発明に記載の処理、および本発明に記載の方法に従った生物試料の保存の後、試料から単離されたタンパク質は再び活性を示すことができることを明らかに示す。安定化試薬はしたがって、未変性のおよび活性なタンパク質に依存する下流分析にも適する。
【0129】
【表5】

【0130】
5a.本発明にしたがって処理された試料の長期保存後のタンパク質分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を各例で、25%3−メチル−1,2,5−ペンタントリオールおよび75%1,2,6−ヘキサントリオールの組成物1.5mlで処理し、および最大6ヶ月25℃にてインキュベーター内で、または2〜8℃にて冷蔵庫で保存する。タンパク質抽出物を保存試料から表5aに示す時点に調製する。
【0131】
【表5a】

【0132】
タンパク質抽出物を調製するために、組織を保存後に安定化組成物から取り出し、および400μlの通例の抽出緩衝液、この場合にはキアゲン社(QIAGEN)の哺乳類溶解緩衝液を、組織10mg当たりに加え、および試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いてホモジナイズする。結果として生じる溶解物を、不溶成分を沈澱するため、15秒間最高速度(たとえば約20000×g)にて遠心分離する。タンパク質性の上清を取り出し、およびタンパク質濃度を、たとえばピアース社(Pierce)のBCA検定法によって測定する。
【0133】
各例でタンパク質3μgをSDS−ポリアクリルアミドゲルで通例の方法によって分離し、および取扱説明書に従ってセミドライブロッティング装置でニトロセルロース膜にブロットする。膜を先行技術に従ってスキムミルクで飽和させ、アクチン特異的抗体およびERK2特異的抗体、たとえばキアゲン社のTaq100抗体と、取扱説明書に従ってハイブリダイズし、および免疫検出を実施する。ERK2特異的抗体を用いた結果を図9cに示し、およびアクチン特異的抗体を用いた結果を図9cに示す。
【0134】
図9cおよび9dから、安定化試料中のタンパク質を長期にわたって凍結せずに室温のような高い温度でさえ保存するのが可能であることがわかる。
【0135】
5b.本発明にしたがって処理されている試料のELISA法によるタンパク質分析
臓器の摘出直後、ラット腎臓組織を、各例で25%3−メチル−1,2,5−ペンタントリオールおよび75%1,2,6−ヘキサントリオールの組成物1.5mlで処理し、および7日間25℃にてインキュベーター内で保存する。臓器の摘出後に液体窒素中で直ちに凍結されおよび−80℃にて保存されている組織試料を対照として用いる。保存後、タンパク質抽出物を調製する。
【0136】
タンパク質抽出物を調製するために、組織を保存後に安定化組成物から取り出し、および200μlの通例の抽出緩衝液、この場合にはキアゲン社(QIAGEN)の哺乳類溶解緩衝液を組織10mg当たりに加え、および試料をたとえばキアゲン社のティシュライザー(TissueLyzer)のようなボールミルを用いてホモジナイズする。結果として生じる溶解物を、不溶成分を沈澱するため、15秒間最高速度(たとえば約20000×g)にて遠心分離する。タンパク質性の上清を取り出し、およびタンパク質濃度を、たとえばピアース社(Pierce)のBCA検定法によって測定する。溶解物を濃度2.5mg/mlに統一し、およびこの希釈溶解物20μlを分析に使用する。分析はGAPDHおよびTBPについて「リキチップ(LiquiChip)細胞シグナル伝達検出キット」によって適合する「コアキット」と共に対応するワークステーション(リキチップワークステーション)で取扱説明書(キアゲン社)に従って実施する。
【0137】
組織を含まない純粋な緩衝液試料を、バックグラウンドの測定に使用する。バックグラウンドを試料データから差し引く。各試料は3連で調製および測定する。
【0138】
結果を表5bに検出された各タンパク質(GAPDH、TBP)について測定された蛍光の平均値(MFI=中間蛍光強度)の形でまとめる。
【0139】
【表5b】

【0140】
結果は、本発明に記載の方法に従った生物試料の安定化および保存の後、これらの試料のタンパク質分析もまたELISAを基礎とする方法によって可能であることを明らかに示す。対照と同等のタンパク質の量を、7日間25℃にて保存後でさえ検出できる。
【0141】
6.本発明にしたがって処理および高温にて保存されている試料のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット腎臓組織を、各例で1mlの1,2,4−ブタントリオール(1)、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(2)、1,2,6−ヘキサントリオール(3)、および75%1,2,3−プロパントリオールおよび25%1,2,6−ヘキサントリオールの混合物(4)で処理し、および1日間40℃にて、または2時間50℃にてインキュベーター内で保存した。
【0142】
代替的に、ラット肺組織を、臓器の摘出後、各例で1mlの1,2,4−ブタントリオール(1)または3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール(2)で処理し、および1日間4°〜8℃にて冷蔵庫で保存する。RNAを単離するために試料の一部を取り出した後(a)、組織試料を1時間40℃にて溶液中で保存する。その後、試料の別の一部を取り出し(b)および単離RNAに用いる。その後、溶液中の残りの組織試料を再び交互に1時間4〜8℃にて冷蔵庫で、および1時間40℃にてインキュベーター内で保存する。4サイクル後、40℃での最後のインキュベート後の残りを、RNAを単離するのに用いる(c)。
【0143】
保存後、保存試料からRNAを実施例2に記載の通り単離する。
【0144】
単離されたRNAを、エチジウムブロマイドで染色されるアガロースゲルで分析する。このために、たとえば1.0%ホルムアルデヒドアガロース−MOPSゲルを調製する。40℃での保存の結果を図8に示し、および50℃での保存の結果を図8aに示す。4℃および40℃の間での交互の保存の結果を図8bに示す。
【0145】
図8、8aおよび8bから、40℃または50℃での保存後でさえ、本発明に従って安定化された試料から、十分な量の未変化RNAが単離されうることがわかる。
【0146】
7.異なるポリオールを用いて本発明にしたがって処理されている試料のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット脾臓組織を各例で1mlの1,2,3,4,5−ペンタンペントール(飽和水溶液)(1)、1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキサオール(4.72M水溶液)(2)または1,2,3−プロパントリオール(3)で処理し、および1日間25℃にてインキュベーター内で(a)、または3日間4〜8℃にて冷蔵庫で保存(b)した。
【0147】
保存後、保存試料からRNAを実施例2に記載の通り単離する。
【0148】
単離されたRNAを、エチジウムブロマイドで染色されるアガロースゲルで分析する。このために、たとえば1.0%ホルムアルデヒドアガロース−MOPSゲルを調製する。結果を図9に示す。
【0149】
図9から、生物試料の安定化はペンタオールまたはヘキサオールを用いてもまた達成されうることがわかる。
【0150】
8.本発明に記載の方法にしたがって単離されたタンパク質の処理
精製された逆転写酵素であるキアゲン社(QIAGEN)の「オムニスクリプト(Omniscript)」酵素を用いて、安定化試薬は単離されたタンパク質を安定化するのに適していることを証明した。
【0151】
各例で精製酵素5μgを10倍容の表6に示す安定化試薬で処理する。混合物を一夜4〜8℃にて冷蔵庫で保存する。酵素を安定化試薬から回収するため、ニッケル−NTA−アフィニティ結合に基づく自動精製を、「バイオスプリント(Biosprint)」装置でキアゲン社の取扱説明書に従って実施する。精製前に、すべての試料をキアゲン社の検定緩衝液で総量1mlとし、および各例で50μgの磁気ビーズ懸濁液を用いた。使用した対照は、第一に同一条件下で保存されたキアゲン社の保存緩衝液中のオムニスクリプト5μg(試料6)、および第二に安定化溶液中での前保存無しのオムニスクリプト5μgで単純に精製法へ供されたもの(試料7)であった。さらに、実験に使用された逆転写酵素1μlをPCRで直接に陽性対照として、すなわち保存および/または精製無しで使用する(試料8)。
【0152】
【表6】

【0153】
精製酵素を、続いてのPCRで逆転写酵素活性を調べるのに用いる。このために、精製後のタンパク質濃度を通例のブラッドフォード(Bradford)反応によって測定し(結果は表6を参照)、および精製酵素をDTT(キアゲン社)と共にRT保存緩衝液に対して透析する。各例で2μlの透析されたタンパク質画分を逆転写に用いる。逆転写を実施するため、1反応当たり2μlの10倍濃縮逆転写酵素緩衝液、10mM dNTPミックス、2μMオリゴ−dT15(キアゲン社のオムニスクリプトキット)、Hela細胞由来総RNA75ngから成り、および蒸留水で1反応当たり総量18μlとする反応混合物をすべての反応について調製する。この混合物を反応容器間で分け、および各例でそれぞれのオムニスクリプト画分2μlを加える。逆転写は1時間37℃にて進行する。逆転写酵素の代わりに水を加えて陰性対照(試料9)とする。
【0154】
ヒトβ−アクチン転写物の1.6kb断片を次にPCRで増幅する。このために、2μlの10倍濃縮PCR緩衝液、4mM dNTPミックス、0.4μlの25mM塩化マグネシウム溶液、各例で0.8mlのプライマー、4μlの5倍濃縮溶液および0.25mlのTaq−DNAポリメラーゼ(キアゲン社のPCRキット)から成り、および蒸留水で1反応当たり総量19μlとする反応混合物をすべての反応について調製する。反応混合物を反応容器間で分け、および各例で前に作製したcDNA1μlを加える。使用したテンプレート無し対照はcDNAの代わりに水である(NTC試料)。増幅は下記の通り進行する:5分間93℃、各例で30サイクルの30秒93℃、30秒55℃および90秒72℃、その後1サイクルの5分間72℃。各反応は2連用意する。
【0155】
増幅後、各例でPCR反応10μlを1%アガロース−TAEゲルに加え、および1時間120Vにて分離する。使用したサイズマーカーはインビトロジェン社(Invitrogen)の「低分子DNA質量ラダー(Low DNA Mass Ladder)」である。結果を図10および10aに示す。
【0156】
図10から、本発明に記載の方法はタンパク質の活性に重大に影響することなく、単離タンパク質を保存および再精製するのにもまた適することがわかる。
【0157】
9.本発明にしたがって処理されている試料のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット脾臓組織を、各例で表7に示す組成物1mlを用いて処理し、および7日間25℃にて保存した。その後、これらの試料からRNAを実施例2に記載の方法に従って単離する。
【0158】
このように単離されたRNAの挙動を、下流分析でPCR分析によって測定する。脾臓組織から単離されおよび−80℃にて凍結されたRNAを対照として用いた。
【0159】
単離されたRNAの挙動を測定するため、各例で総RNA10ngを含む総量25μlを、リアルタイムRT−PCR用の適当なマスターミックス、たとえばキアゲン社(QIAGEN)のクオンティテクト(Quantitect)プローブRT−PCRキット、およびたとえばABI社の、市販アッセイのプライマーおよび試料と共に、取扱説明書に従って使用する。増幅は、たとえばABI社の7700装置のような適当なリアルタイム増幅装置で実施する。増幅は各例で2連で実施した。得られたct値の平均を求め、および標準偏差を決定する。ct値は、使用したRNA中の転写物量の相対的定量に使用できる。結果を表7に示す。
【0160】
【表7】

【0161】
表7から、本発明にしたがって処理された試料から単離されうるRNAもまた、下流分析によく適することがわかる。
【0162】
10.本発明にしたがって処理されている凍結試料のRNA分析
臓器の摘出直後、ラット肝臓組織を液体窒素中で凍結しおよび次いで液体窒素中で保存した。各例でこれらの試料20から50mgを、次いで各例で1mlの表8に示す組成物と共にインキュベートし、および3日間4から8℃にて保存した。その後、このように前処理された試料からRNAを実施例2に記載の通り単離した。結果を表8に示す。
【0163】
表8から、本発明に記載の方法は新鮮生物試料を安定化するのにだけでなく、生体分子の分析のために凍結試料を調製するのにも適することがわかる。
【0164】
【表8】

【0165】
11.本発明にしたがって処理された試料の誘導分析
生物からの生物試料の採取は、細胞でのストレス反応を引き起こす。遺伝子発現プロファイルは、まずRNA分解によって、しかし次にまた新しい転写物の合成の誘導によって、直ちに変化し始める。生物試料の本発明に記載の処理は、したがって、分解だけでなく、誘導もまた防がなければならない。本発明に従った試料の処理による誘導の即時防止を検出するために、臓器の摘出直後のラット肺組織を、25%3−メチル−1,3,5−ペンタントリオールおよび75%1,2,6−ヘキサントリオールから成る組成物1mlを用いて処理し、および2時間、4時間および24時間25℃にて保存する。PBSを用いて処理しおよび等しく保存した組織試料、および臓器の摘出後に直ちに液体窒素中で凍結しおよび−80℃にて保存した組織試料を対照とする。その後、RNAを実施例2に記載の方法に従って単離する。
【0166】
単離RNAのさらなる分析を実施するために、各例で総RNA50ngを含む総量25μlを、リアルタイムRT−PCR用の適当なマスターミックス、たとえばキアゲン社(QIAGEN)のクオンティテクトSYBRグリーン(Quantitect SYBRGreen)RT−PCRキットと共に、取扱説明書に従って使用する。増幅は、たとえばABI社の7700装置のような適当なリアルタイム増幅装置で実施した。増幅は各例で2連で実施した。得られたct値の平均を求め、および標準偏差を決定する。ct値は、使用したRNA中の転写物量の相対的定量に使用できる。このために、標的転写物だけでなく、ストレスによって誘導されていない転写物もまた各試料について内部対照として増幅され、この場合にはGAPDHである。試験すべき転写物の量を、対照転写物の検出量と関連づけ、および液体窒素中で凍結されている対象と比較した試験すべき転写物の量の変化をデルタ−デルタ−ct法(機器製造元ABIによって指定された計算)を用いて決定する。液体窒素中での即時凍結は、転写物のいかなる誘導または分解も妨げ、そのためこの試料は参照(0時点)に相当する。PBSまたは本発明に記載の組成物中での試料の保存中の転写物量の変化は、数学的におよびグラフで決定した。PBS中での保存はc−fos遺伝子の転写を誘導すること、および、結果として、c−fos転写物の量が顕著に増加することが明らかになる。試料が本発明に従って処理される場合は、しかし、誘導の抑制が成功する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、混合装置(β4)が浸漬補助具(β3)の上に配置される、本発明に記載の第一の装置の一実施形態の側面図を示す。図1aおよび1bは、浸漬補助具(β3)の下に配置される異なる設計の案内羽根を有する2つの混合装置(β4)の断面を示す。
【図2】図2は、混合装置(β4)が浸漬補助具(β3)の下に配置される、本発明に記載の第一の装置の別の一実施形態の側面図を示す。
【図3】図3は、混合装置(β4)が浸漬補助具(β3)の成分である、本発明に記載の第一の装置の別の一実施形態の側面図を示す。
【図4】図4は、浸漬補助具(β3)が試料容器を含みおよび混合装置(β4)が浸漬補助具(β3)の成分である、本発明に記載の第一の装置の一実施形態の側面図を示す。図4aは蓋へ接続されている浸漬補助具(β3)の側面図を示す。図4bは案内羽根として斜めの側面パネルを有するように設計されている浸漬補助具(β3)を示す。
【図5】図5は、本発明に記載の第二の装置の一実施形態の側面図を示す。図5aは、内部に位置する体部(β5)を有する装置の平面図を示す。
【図6】図6は、実施例4で得られたSDSポリアクリルアミドゲルおよび実施例4で得られたウェスタンブロットを示す。
【図7】図7は、実施例5で得られた酵素活性分析の結果を、棒グラフの形で示す。
【図8】図8、8aおよび8bは、試料が高温にて保存された後のアガロース−ホルムアルデヒド−MOPSゲルの形で、実施例6で得られたRNA分析の結果を示す。 図8cは、アガロース−ホルムアルデヒド−MOPSゲルの形で、実施例2aで得られたRNA分析の結果を示す。
【図9】図9は、試料がペントールまたはヘキサオール中で安定化された後のアガロース−ホルムアルデヒド−MOPSゲルの形で、実施例7で得られたRNA分析の結果を示す。 図9aおよび9bは、アガロース−ホルムアルデヒド−MOPSゲルの形で、実施例2bで得られたRNA分析の結果を示す。 図9cおよび9dは、BCA検定によって、実施例5aで得られたタンパク質分析の結果を示す。
【図10】図10および10aは、PCR反応後に行われたアガロース−TAEゲルの形で、実施例8で実施された、本発明にしたがって安定化されたタンパク質の活性の分析の結果を示す(キアゲン社(QIAGEN)の逆転写酵素「オムニスクリプト(Omniscript)」)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)生物試料を提供する、並びに
ii)生物試料を:
(α1)1から最大100重量%の少なくとも一つのポリオール、および
(α2)0から99重量%の少なくとも一つの添加剤、
を含む組成物と接触させ、ここで成分(α1)および(α2)の合計が100重量%に等しい
:方法段階を含む、生物試料を処理する方法。
【請求項2】
生物試料が凍結生物試料である、請求項1で請求される方法。
【請求項3】
生物試料が非凍結生物試料である、請求項1で請求される方法。
【請求項4】
ポリオールがジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、ヘプタオール、オクタノールまたはノナオールである、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項5】
ポリオールがジオールまたはトリオールである、請求項4で請求される方法。
【請求項6】
ポリオールが2から20個の炭素原子を有する、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項7】
ポリオールが1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、2,3,5−ヘキサントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパノール、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む群から選択される、請求項1および4から6のいずれかで請求される方法。
【請求項8】
組成物が少なくとも二つのポリオールの混合物を含む、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項9】
添加剤が界面活性剤、核酸またはタンパク質の分解を阻害する阻害剤、粘度調整剤、着色料、緩衝化合物、保存料、錯化剤、還元剤、細胞透過性を改善する物質、カオトロピック物質、固定剤、ポリオール以外の他の溶媒類、およびこれらの添加剤のうち少なくとも2つの混合物を含む群から選択される、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項10】
生物試料を組成物と接触させるのが、−80℃ないし+80℃の範囲の温度にて実施される、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項11】
生物試料を組成物と接触させるのが、0℃ないし+80℃の範囲の温度にて実施される、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項12】
方法段階i)およびii)に加えて、
iii)組成物と接触させた生物試料の、−80℃ないし+80℃の範囲の温度での保存、
の方法段階をさらに含む、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項13】
組成物と接触させた生物試料の保存が、0℃ないし+80℃の範囲の温度にて実施される、請求項12で請求される方法。
【請求項14】
請求項1および12で定義される通りの方法段階i)およびii)および必要に応じてiii)に加えて、
iv)組成物と接触させた生物試料の組織学的分析、または組成物と接触させた生物試料中のまたはそれに由来する生体分子の分析
:の方法段階をさらに含む、生物試料を分析する方法。
【請求項15】
方法段階iv)が組織学的分析および生体分子の分析の両方を含む、請求項14で請求される方法。
【請求項16】
方法段階iv)がタンパク質の分析および核酸の分析の両方を含む、請求項14または15で請求される方法。
【請求項17】
生物試料が、生物、単離細胞、オルガネラ、細菌、真菌、または真菌の一部、ウイルス、ウイロイド、プリオン、組織、組織断片、組織切片、体液、天然の、随意的に単離された、タンパク質、合成または修飾タンパク質、天然の、随意的に単離された、核酸、合成または修飾核酸、他の生体分子たとえば脂質、糖質、代謝産物および代謝体、植物または植物の一部、糞便、塗沫標本、穿刺液、食品試料、環境試料、法医学試料を含む、前記請求項のいずれかで請求される方法。
【請求項18】
成分として:
(β1)液体を充填レベルhまで受け入れるための少なくとも一つのポートを有する少なくとも一つの容器(1)、
(β2)少なくとも一つのポートを密閉するための少なくとも一つの蓋(2)、
(β3)蓋(β2)の少なくとも一つに結合されている少なくとも一つの浸漬補助具(3)、および
(β4)軸Lについて回転可能に配置され、および少なくとも一つの容器(β1)内の液体を混合するための案内羽根(4)を含む混合装置
を含む、生物試料を処理するための装置。
【請求項19】
充填レベルhが容器(β1)の全高Hの50から80%に達する、請求項18で請求される装置。
【請求項20】
浸漬補助具(β3)が容器の断面にまたがる、請求項18または19で請求される装置。
【請求項21】
浸漬補助具(β3)が混合装置(β4)の成分である、請求項18から20のいずれかで請求される装置。
【請求項22】
浸漬補助具(β3)が生物試料用の少なくとも一つの受容手段を含む、請求項18から21のいずれかで請求される装置。
【請求項23】
浸漬補助具(β3)が少なくとも一つの蓋(β2)と一体化して接続されている、請求項19から22のいずれかで請求される装置。
【請求項24】
成分として:
(β1)充填レベルhまで液体を受容するための少なくとも一つのポートを有しおよび断面積A容器を有する少なくとも一つの容器(1)、ここで容器は請求項1および4から9に定義される組成物で充填レベルhまで満たされる、
(β2)少なくとも一つのポートを密閉するための少なくとも一つの蓋(2)、および
(β5)断面積A体部を有し、容器(β1)または蓋(β2)と結合されていない、および容器(β1)内に位置する、少なくとも一つの体部(7)
を含む、生物試料を処理するための装置。
【請求項25】
(γ1)請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物、および
(γ2)請求項18から24のいずれかで請求される装置、または別の密閉可能な容器
を含むキット。
【請求項26】
(γ1)請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物、および
(γ3)生物試料中のまたはそれに由来する生体分子を分析するための、または生物試料の形態を分析するための、試薬
を含むキット。
【請求項27】
(γ1)請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物、
(γ2)請求項18から24のいずれかで請求される装置、または別の密閉可能な容器、および
(γ3)生物試料中のまたはそれに由来する生体分子を分析するための、または生物試料の形態を分析するための、試薬
を含むキット。
【請求項28】
生物試料を処理するための、請求項18から24のいずれかで請求される装置の、または請求項25から27のいずれかで請求されるキットの使用。
【請求項29】
請求項1から17のいずれかで請求される方法における、請求項18から24のいずれかで請求される装置の、または請求項25から27のいずれかで請求されるキットの使用。
【請求項30】
請求項18から24のいずれかで請求される装置または請求項25から27のいずれかで請求されるキットが使用される、処理された生物試料を調製する方法。
【請求項31】
請求項18から24のいずれかで請求される装置または請求項26または27で請求されるキットが使用される、生物試料を分析するための方法。
【請求項32】
請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物と、生物試料を接触させることによって得られる、処理された生物試料。
【請求項33】
生物試料を処理するための、請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物の使用。
【請求項34】
請求項1から17のいずれかで定義される方法における、請求項1および4から9のいずれかで定義される組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−522542(P2009−522542A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547976(P2008−547976)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070267
【国際公開番号】WO2007/077199
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】