生産計画方法および装置
【課題】複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画方法であって、製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化、ならびに品質のグレードに応じて制約条件を変化させる柔軟な生産計画の立案ができる、生産計画方法および装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、求めた生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、情報表示ステップと、調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップとを有する。
【解決手段】ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、求めた生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、情報表示ステップと、調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理工程を経て製品を生産する生産プロセスでの生産計画案を作成する、生産計画方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業をはじめとする製造業界の多くでは、複数の処理工程を経て製品を生産する生産プロセスに対して、需要家からの注文製品および受注見込み製品の生産計画を作成するために生産計画システムが使用されている。
【0003】
生産管理システムでは、納期、需要家、注文量および製品仕様等の注文情報を基に、各通過工程で生産すべき中間製品の量、品種、期日等の生産枠(ロット)を立案している。一般的に製品製造プロセスでは、製品リードタイム(発注から納品までの期日)、納期達成率、在庫量、余材料、燃料原単位、通過工程の生産性等の複数の製造評価指標を基に、製造性能の良し悪しを判断する。
【0004】
これら複数の製造評価指標については、往々にして互いにトレードオフの関係を持っているため、製造評価指標を評価関数または制約式として定式化した最適化問題の解を生産計画とする生産計画立案方法が取られることが多く、コンピュータを用いた生産計画システムとして一般的に実現されている。
【0005】
このような生産計画立案方法に関する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、生産計画の良し悪しを判断するための評価関数が最良となるように、注文ごとの各製造工程における処理タイミングでの処理量を算出することで、納期を満足しつつ各製造工程の仕掛を平準化し、かつ、最短製造工期となる生産計画方法が開示されている。
【0006】
なお、[発明を実施するための形態]で参照する先行技術文献を含めて、以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−260462号公報
【特許文献2】特開2004−171329号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小島正和 他著「内点法」朝倉書店(2001)p.154-163 ISBN 4-254-27519-6
【非特許文献2】Nello Cristianini 他著「An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel-based Learning Methods」Cambridge University Press (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、製品スペックが高く要求される経営環境化では、一時的に各通過工程の生産性を落としてでも製品品質を確保するような制約を製造条件に課してロットを作成している場合が多い。特に、各製造プロセスでは、その製造プロセスで製造される中間製品の品質を矯正するための調整設備を設置しており、ここでの矯正処理が高生産化にとってはネックとなる場合が多い。目標とする製品品質を必要以上に高くして製造条件を厳しくすると、納期を満足するようなロットを作成しにくくなり、ある需要家の製品が納期に間に合わないという事態が生ずる懸念がある。
【0010】
なお、厳しい製造条件をロットに含まれる製品すべてが必要とするわけではないため、製品に求められる品質と生産性を両立させた柔軟なロット作成方法が求められている。
【0011】
このような状況に対して、特許文献1に開示の方法では、あらかじめ制約条件を決めて生産計画を立案しているため、求められる品質のグレードに応じて制約条件を変化させる柔軟な生産計画の立案はできていない。また、製品品質は複数の製造条件の影響を複雑に受けており、この製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化についても考慮されていない。
【0012】
本発明では、これら従来技術の問題点に鑑み、製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化、ならびに品質のグレードに応じて制約条件を変化させる柔軟な生産計画の立案ができる、生産計画方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の発明によって解決できる。
【0014】
[1] 複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画方法であって、
ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、
読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、
前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、
求めた生産計画を生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、
求めた生産計画を出力表示する、情報表示ステップと、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップと、
を有することを特徴とする生産計画方法。
【0015】
[2] 上記[1]に記載の生産計画方法において、
前記制約条件決定ステップは、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を決定するステップであることを特徴とする生産計画方法。
【0016】
[3] 複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画装置であって、
制約条件データ、生産計画データ、製造実績データ、製品情報データを保持する記憶手段と、
該記憶手段から読込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求め、この新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求めて生産計画データとして前記記憶手段に書き込む、生産計画装置本体と、
前記生産計画データを出力表示する、情報表示手段と、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力手段と、
を具備することを特徴とする生産計画装置。
【0017】
[4] 上記[3]に記載の生産計画装置において、
前記新たな制約式を求めるにあたっては、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を構成することを特徴とする生産計画装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロットに含まれる製品の品質グレードに応じて制約条件を変化させてロットを作成するようにしたので、生産性と品質を両立させた生産が可能となる。また、製造実績データから制約条件を作成するようにしたため、製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】熱間圧延プロセスにおける構成例を示す図である。
【図2】ロットにおける制約条件の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る生産計画装置の構成例を示す図である。
【図4】生産計画DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図5】製造実績DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図6】製品情報DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図7】本発明に係る生産計画方法における処理手順例を示す図である。
【図8】制約条件決定における詳細処理手順例を示す図である。
【図9】Step71で取得した製造実績データの一例を示す図である。
【図10】横軸を操業条件A、縦軸を操業条件Bとして、ベクトルxi(i:製品No.)を散布図として図示したものである。
【図11】式(1)によって最適化されたパラメータベクトル wを用いて計算された制約w・xを図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
鉄鋼業における熱間圧延プロセスを例に、図面および数式を参照にしながら以下に詳細に説明を行う。
【0021】
図1は、熱間圧延プロセスにおける構成例を示す図である。図中、11は連続鋳造機、12は加熱炉、13は粗圧延機、14は仕上圧延機、および15は巻取り機をそれぞれ表す。
【0022】
連続鋳造機11で鋳造されたスラブは、加熱炉12にて約1200℃まで熱せられたのち粗圧延機13と仕上圧延機14にて数ミリの厚さまで圧延され、巻取り機5にて巻取られて熱延コイルとなる。
【0023】
各設備で処理するスラブの順序やまとまり(以下、ロットと称する)には制約がある。図2は、ロットにおける制約条件の一例を示す図である。
【0024】
図2に示す制約目的(1)は、ロール表面の肌荒れ防止を目的とする。圧延を続けるとロール表面に肌荒れが起こり、その表面の微小な凹凸が圧延材に転写されることで圧延材表面の品質が悪化するのを防止するために設けた製造制約条件である。ロール圧延距離とは、新しいロールが圧延機に組み込まれて圧延を開始してからこれまでに圧延された圧延材の長さの合計値である。ここでの制約条件は、表面肌荒れを防止するために、ロール圧延距離を最大XXX(m)に規制することを意味している。
【0025】
制約目的(2)は、エッジ転写防止を目的とする。圧延材の幅を、直前に製造した圧延材の幅より極端に大きくしてはいけない、という制約条件である。幅が狭い圧延材の次に幅が急劇に広い材を圧延すると、幅狭材の端部が当たった圧延ロールの部分が摩耗しており、幅広材を圧延したときにその圧延ロールの摩耗部分が圧延材の中央部に転写され、不良な断面形状を形成してしまう。この制約条件はこれを防止するものであり、後続して製造される圧延材の幅が、直前に圧延した圧延材の幅よりYYY(mm)より大きくしてはいけないことを意味する。これらの制約を満たすようにロット編成を計画しなければならない。
【0026】
図3は、本発明に係る生産計画装置の構成例を示す図である。図中、1は生産計画装置本体、2は制約条件DB、3は生産計画DB、4は製造実績DB、5は製品情報DB、6は双方向バス、7は双方向バス、8は出力表示装置、9は入力装置、101はCPU、102はRAM、および103は双方向バスをそれぞれ表す。
【0027】
本発明に係る生産計画装置は、生産計画装置本体1、制約条件DB(データベース)2、生産計画DB3、製造実績DB4、製品情報DB5、各製造プロセスにある管理コンピュータ(図示せず)にデータを双方向に流す双方向バス6、本社受注管理コンピュータ(図示せず)にデータを双方向に流す双方向バス7、出力表示装置8、入力装置9を具備している。なお、生産計画装置本体1は、演算処理装置であるCPU101と記憶装置であるRAM102を有し、双方向バス103を介して制約条件DB2、生産計画DB3、製造実績DB4、および製品情報DB5とデータの送受信を行っている。
【0028】
制約条件DB2には、製造計画を計算するための最適化モデルで使用する制約条件が格納されており、前述した図2がその例である。
【0029】
図4は、生産計画DBに格納されているデータ例を示す図である。生産計画DB3には、生産計画装置本体1で計算された生産計画が格納されている。例えば図示のように、スラブNo.毎に、加熱炉装入時刻(製造開始時刻)、コイル巻取り完了時刻(製造完了時刻)が収められている。
【0030】
図5は、製造実績DBに格納されているデータ例を示す図である。製造実績DB4には、製造実績情報が格納されており、例えば、品質合否判定の結果、詳細な操業条件が収められている。
【0031】
図6は、製品情報DBに格納されているデータ例を示す図である。製品情報DB5には、図示のように、スラブ情報および製品寸法・需要家名などといった製品情報が格納されている。
【0032】
なお、生産計画装置本体1は、例えばパーソナルコンピュータにより実現することができる。この場合、CPU101は中央演算処理装置により実現され、RAM102はランダムアクセスメモリにより実現され、制約条件DB2・生産計画DB3・製造実績DB4・製品情報DB5はメモリ等の記憶手段により実現(一つの記憶手段上に複数のDBを実装しても、またはそれぞれのDB毎に独立した記憶手段を対応させるようにしてもよい)され、双方向バス6・7・103は通信ケーブル等の通信手段により実現され、出力表示装置8はモニタ等の外部出力手段により実現され、入力装置9はキーボードなど外部入力手段により実現される。
【0033】
次に、本発明に係る生産計画方法における処理手順例について説明する。図7は、本発明に係る生産計画方法における処理手順例を示す図である。
【0034】
処理が開始されると、図7に示すStep71の情報読込にて、図5に該当するこれまでの製造実績データと図6に該当する生産計画対象となる製品データとを製造実績DB4と製品情報DB5から読み込む。同時に、入力装置9から入力された後述する調整係数 Cの値を読み込む。
【0035】
次に、Step72の制約条件決定にて、ロットを作るタイミング毎に制約条件を決定する。さらに図8は、制約条件決定における詳細処理手順例を示す図であり、この図に従って制約条件決定の詳細説明を行う。
【0036】
Step721:条件実績ベクトルxの構成、および、調整係数Cの設定
図7のStep71で図5の製造実績データと図6の製品データを取得したならば、Step721でCPU101は、各製造条件を行にもつベクトルであり各行の値が製造実績データの値であるベクトル xi (i:製品No.)をすべての実績製品No. iについて構成する。Step71にて取得された目標とする品質を満足したO.K.データに対して、操業条件をどの程度安全サイドに余裕をもって造り込むかを予め決めておく調整係数 C を設定する。
【0037】
Step722:制約条件ベクトルwの求解
式(1)を既存の最適化アルゴリズムを用いて解くことで、(生産計画の計算で使用される)新たな制約式を構成するための制約条件ベクトル wを求める。以下の式(1)は最適化モデルであり、s.t. (subject toの略)で記述されている各数式を満たしつつ、minで書かれている数式を最小化するような変数 w とξを計算するものである。このための公知の技術としては、例えば、非特許文献1に記載の方法を用いるとよい。
【0038】
【数1】
【0039】
Step723:新たな制約条件w・xの作成、および、制約条件の更新
求めた制約条件ベクトル w と製造条件を行とする変数ベクトル x から(生産計画の計算で使用される)新たな制約式 w・xを構成し、RAMに102に格納し制約条件の更新を行う。ここで、wの各要素は、製造実績データの各要素に対応した重みとしての意味を持つ。
【0040】
図7ならびに図8に示す一連の最適化方法は、1/|w| をマージン、ξを制約緩和を表すパラメータ、制約式 x・w を分離超平面とみなすことで、操業実績データ xiのN.G.データを操業不可能領域に、O.K.データの一部であって調整係数Cによって決められた安全サイドに作りこむためのデータを操業可能領域に分離する片側ソフトマージンを最大化する特殊なサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)と見なすことが出来る。
【0041】
そして、ここでは分離超平面が区分線形の場合を示しているが、適宜カーネルを取りこむことで非線形の制約条件を構成する方法にも容易に拡張できる。サポートベクターマシンについては、例えば非特許文献2に記載の技術がある。
【0042】
以上で制約条件決定の詳細説明を終り、図7の説明に戻る。次のStep73の生産計画立案でCPU101は、図2に該当する制約条件を制約条件DB2から読み込み、Step72で算出した制約式をRAM102から読み込み、制約条件DB2から読み込んだ制約条件とRAM102から読み込んだ制約条件から、例えば、特許文献2に開示の技術を用いて、生産計画を立案する。
【0043】
次のStep74の情報書込でCPU101は、Step73で立案した生産計画を生産計画DB3に書き込む。生産計画DB3に書き込まれた生産計画は、双方向バス6を通じて各プロセスに設置されているコンピュータに実行指示情報として、適宜送信される。また同時に、Step723にて求めてRAM102に格納されている制約式 x・wと、Step73で立案した生産計画を出力表示装置8に表示する。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0045】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、更に、前述した構成要素を応用した構成要素を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【実施例】
【0046】
具体例を挙げて、制約条件を導出するステップ72の処理をさらに説明する。
【0047】
図9は、Step71で取得した製造実績データの一例を示す図である。この図9のデータをもとに、ベクトル x1 =(15,000、-100)、x2 =(10,000、250)、x3 =(50,000、498)、x4 =・・・を構成する。ベクトルの1つ目の要素は操業条件Aの値とを、2つ目の要素は操業条件Bの値を表している。
【0048】
図10は、横軸を操業条件A、縦軸を操業条件Bとして、ベクトルxi(i:製品No.)を散布図として図示したものである。白抜き丸印は品質を満足した時のO.K.データを意味し、反対に黒抜き丸印は品質を満足しなかった時のN.G.データを意味する。
【0049】
そして図には、操業条件Aと操業条件Bに対するこれまでの制約条件を図示している。これは、「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」となる操業条件A、Bの目標設定を強く推奨していることを意味している。そのため「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」となっている製造実績が多い。製品No.S0001と製品No.S0002は「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」を満たして製造された製品であり、S0003は「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」に違反して製造された製品である。 これらの制約条件を設けることで、N.G.製品をできるだけ出さないようになっている。
【0050】
図11は、式(1)によって最適化されたパラメータベクトル wを用いて計算された制約w・xを図示したものである。すべてのO.K.データは制約条件 xi・w≦1+ξi を満たし、すべてのN.G.データは制約条件 xi・w≧1 を満たしている。また、新しい制約条件w・xは、従来の制約条件である「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」(図10参照)よりも制約が緩い。したがって、N.G.製品を出さない製造目標を従来よりも柔軟に設定できていることが確認できる。
【符号の説明】
【0051】
1 生産計画装置本体
2 制約条件DB
3 生産計画DB
4 製造実績DB
5 製品情報DB
6 双方向バス
7 双方向バス
8 出力表示装置
9 入力装置
11 連続鋳造機
12 加熱炉
13 粗圧延機
14 仕上圧延機
15 巻取り機
101 CPU
102 RAM
103 双方向バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理工程を経て製品を生産する生産プロセスでの生産計画案を作成する、生産計画方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業をはじめとする製造業界の多くでは、複数の処理工程を経て製品を生産する生産プロセスに対して、需要家からの注文製品および受注見込み製品の生産計画を作成するために生産計画システムが使用されている。
【0003】
生産管理システムでは、納期、需要家、注文量および製品仕様等の注文情報を基に、各通過工程で生産すべき中間製品の量、品種、期日等の生産枠(ロット)を立案している。一般的に製品製造プロセスでは、製品リードタイム(発注から納品までの期日)、納期達成率、在庫量、余材料、燃料原単位、通過工程の生産性等の複数の製造評価指標を基に、製造性能の良し悪しを判断する。
【0004】
これら複数の製造評価指標については、往々にして互いにトレードオフの関係を持っているため、製造評価指標を評価関数または制約式として定式化した最適化問題の解を生産計画とする生産計画立案方法が取られることが多く、コンピュータを用いた生産計画システムとして一般的に実現されている。
【0005】
このような生産計画立案方法に関する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、生産計画の良し悪しを判断するための評価関数が最良となるように、注文ごとの各製造工程における処理タイミングでの処理量を算出することで、納期を満足しつつ各製造工程の仕掛を平準化し、かつ、最短製造工期となる生産計画方法が開示されている。
【0006】
なお、[発明を実施するための形態]で参照する先行技術文献を含めて、以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−260462号公報
【特許文献2】特開2004−171329号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小島正和 他著「内点法」朝倉書店(2001)p.154-163 ISBN 4-254-27519-6
【非特許文献2】Nello Cristianini 他著「An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel-based Learning Methods」Cambridge University Press (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、製品スペックが高く要求される経営環境化では、一時的に各通過工程の生産性を落としてでも製品品質を確保するような制約を製造条件に課してロットを作成している場合が多い。特に、各製造プロセスでは、その製造プロセスで製造される中間製品の品質を矯正するための調整設備を設置しており、ここでの矯正処理が高生産化にとってはネックとなる場合が多い。目標とする製品品質を必要以上に高くして製造条件を厳しくすると、納期を満足するようなロットを作成しにくくなり、ある需要家の製品が納期に間に合わないという事態が生ずる懸念がある。
【0010】
なお、厳しい製造条件をロットに含まれる製品すべてが必要とするわけではないため、製品に求められる品質と生産性を両立させた柔軟なロット作成方法が求められている。
【0011】
このような状況に対して、特許文献1に開示の方法では、あらかじめ制約条件を決めて生産計画を立案しているため、求められる品質のグレードに応じて制約条件を変化させる柔軟な生産計画の立案はできていない。また、製品品質は複数の製造条件の影響を複雑に受けており、この製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化についても考慮されていない。
【0012】
本発明では、これら従来技術の問題点に鑑み、製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化、ならびに品質のグレードに応じて制約条件を変化させる柔軟な生産計画の立案ができる、生産計画方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の発明によって解決できる。
【0014】
[1] 複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画方法であって、
ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、
読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、
前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、
求めた生産計画を生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、
求めた生産計画を出力表示する、情報表示ステップと、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップと、
を有することを特徴とする生産計画方法。
【0015】
[2] 上記[1]に記載の生産計画方法において、
前記制約条件決定ステップは、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を決定するステップであることを特徴とする生産計画方法。
【0016】
[3] 複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画装置であって、
制約条件データ、生産計画データ、製造実績データ、製品情報データを保持する記憶手段と、
該記憶手段から読込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求め、この新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求めて生産計画データとして前記記憶手段に書き込む、生産計画装置本体と、
前記生産計画データを出力表示する、情報表示手段と、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力手段と、
を具備することを特徴とする生産計画装置。
【0017】
[4] 上記[3]に記載の生産計画装置において、
前記新たな制約式を求めるにあたっては、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を構成することを特徴とする生産計画装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロットに含まれる製品の品質グレードに応じて制約条件を変化させてロットを作成するようにしたので、生産性と品質を両立させた生産が可能となる。また、製造実績データから制約条件を作成するようにしたため、製造条件同士の品質への交互作用も考慮した制約条件の定式化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】熱間圧延プロセスにおける構成例を示す図である。
【図2】ロットにおける制約条件の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る生産計画装置の構成例を示す図である。
【図4】生産計画DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図5】製造実績DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図6】製品情報DBに格納されているデータ例を示す図である。
【図7】本発明に係る生産計画方法における処理手順例を示す図である。
【図8】制約条件決定における詳細処理手順例を示す図である。
【図9】Step71で取得した製造実績データの一例を示す図である。
【図10】横軸を操業条件A、縦軸を操業条件Bとして、ベクトルxi(i:製品No.)を散布図として図示したものである。
【図11】式(1)によって最適化されたパラメータベクトル wを用いて計算された制約w・xを図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
鉄鋼業における熱間圧延プロセスを例に、図面および数式を参照にしながら以下に詳細に説明を行う。
【0021】
図1は、熱間圧延プロセスにおける構成例を示す図である。図中、11は連続鋳造機、12は加熱炉、13は粗圧延機、14は仕上圧延機、および15は巻取り機をそれぞれ表す。
【0022】
連続鋳造機11で鋳造されたスラブは、加熱炉12にて約1200℃まで熱せられたのち粗圧延機13と仕上圧延機14にて数ミリの厚さまで圧延され、巻取り機5にて巻取られて熱延コイルとなる。
【0023】
各設備で処理するスラブの順序やまとまり(以下、ロットと称する)には制約がある。図2は、ロットにおける制約条件の一例を示す図である。
【0024】
図2に示す制約目的(1)は、ロール表面の肌荒れ防止を目的とする。圧延を続けるとロール表面に肌荒れが起こり、その表面の微小な凹凸が圧延材に転写されることで圧延材表面の品質が悪化するのを防止するために設けた製造制約条件である。ロール圧延距離とは、新しいロールが圧延機に組み込まれて圧延を開始してからこれまでに圧延された圧延材の長さの合計値である。ここでの制約条件は、表面肌荒れを防止するために、ロール圧延距離を最大XXX(m)に規制することを意味している。
【0025】
制約目的(2)は、エッジ転写防止を目的とする。圧延材の幅を、直前に製造した圧延材の幅より極端に大きくしてはいけない、という制約条件である。幅が狭い圧延材の次に幅が急劇に広い材を圧延すると、幅狭材の端部が当たった圧延ロールの部分が摩耗しており、幅広材を圧延したときにその圧延ロールの摩耗部分が圧延材の中央部に転写され、不良な断面形状を形成してしまう。この制約条件はこれを防止するものであり、後続して製造される圧延材の幅が、直前に圧延した圧延材の幅よりYYY(mm)より大きくしてはいけないことを意味する。これらの制約を満たすようにロット編成を計画しなければならない。
【0026】
図3は、本発明に係る生産計画装置の構成例を示す図である。図中、1は生産計画装置本体、2は制約条件DB、3は生産計画DB、4は製造実績DB、5は製品情報DB、6は双方向バス、7は双方向バス、8は出力表示装置、9は入力装置、101はCPU、102はRAM、および103は双方向バスをそれぞれ表す。
【0027】
本発明に係る生産計画装置は、生産計画装置本体1、制約条件DB(データベース)2、生産計画DB3、製造実績DB4、製品情報DB5、各製造プロセスにある管理コンピュータ(図示せず)にデータを双方向に流す双方向バス6、本社受注管理コンピュータ(図示せず)にデータを双方向に流す双方向バス7、出力表示装置8、入力装置9を具備している。なお、生産計画装置本体1は、演算処理装置であるCPU101と記憶装置であるRAM102を有し、双方向バス103を介して制約条件DB2、生産計画DB3、製造実績DB4、および製品情報DB5とデータの送受信を行っている。
【0028】
制約条件DB2には、製造計画を計算するための最適化モデルで使用する制約条件が格納されており、前述した図2がその例である。
【0029】
図4は、生産計画DBに格納されているデータ例を示す図である。生産計画DB3には、生産計画装置本体1で計算された生産計画が格納されている。例えば図示のように、スラブNo.毎に、加熱炉装入時刻(製造開始時刻)、コイル巻取り完了時刻(製造完了時刻)が収められている。
【0030】
図5は、製造実績DBに格納されているデータ例を示す図である。製造実績DB4には、製造実績情報が格納されており、例えば、品質合否判定の結果、詳細な操業条件が収められている。
【0031】
図6は、製品情報DBに格納されているデータ例を示す図である。製品情報DB5には、図示のように、スラブ情報および製品寸法・需要家名などといった製品情報が格納されている。
【0032】
なお、生産計画装置本体1は、例えばパーソナルコンピュータにより実現することができる。この場合、CPU101は中央演算処理装置により実現され、RAM102はランダムアクセスメモリにより実現され、制約条件DB2・生産計画DB3・製造実績DB4・製品情報DB5はメモリ等の記憶手段により実現(一つの記憶手段上に複数のDBを実装しても、またはそれぞれのDB毎に独立した記憶手段を対応させるようにしてもよい)され、双方向バス6・7・103は通信ケーブル等の通信手段により実現され、出力表示装置8はモニタ等の外部出力手段により実現され、入力装置9はキーボードなど外部入力手段により実現される。
【0033】
次に、本発明に係る生産計画方法における処理手順例について説明する。図7は、本発明に係る生産計画方法における処理手順例を示す図である。
【0034】
処理が開始されると、図7に示すStep71の情報読込にて、図5に該当するこれまでの製造実績データと図6に該当する生産計画対象となる製品データとを製造実績DB4と製品情報DB5から読み込む。同時に、入力装置9から入力された後述する調整係数 Cの値を読み込む。
【0035】
次に、Step72の制約条件決定にて、ロットを作るタイミング毎に制約条件を決定する。さらに図8は、制約条件決定における詳細処理手順例を示す図であり、この図に従って制約条件決定の詳細説明を行う。
【0036】
Step721:条件実績ベクトルxの構成、および、調整係数Cの設定
図7のStep71で図5の製造実績データと図6の製品データを取得したならば、Step721でCPU101は、各製造条件を行にもつベクトルであり各行の値が製造実績データの値であるベクトル xi (i:製品No.)をすべての実績製品No. iについて構成する。Step71にて取得された目標とする品質を満足したO.K.データに対して、操業条件をどの程度安全サイドに余裕をもって造り込むかを予め決めておく調整係数 C を設定する。
【0037】
Step722:制約条件ベクトルwの求解
式(1)を既存の最適化アルゴリズムを用いて解くことで、(生産計画の計算で使用される)新たな制約式を構成するための制約条件ベクトル wを求める。以下の式(1)は最適化モデルであり、s.t. (subject toの略)で記述されている各数式を満たしつつ、minで書かれている数式を最小化するような変数 w とξを計算するものである。このための公知の技術としては、例えば、非特許文献1に記載の方法を用いるとよい。
【0038】
【数1】
【0039】
Step723:新たな制約条件w・xの作成、および、制約条件の更新
求めた制約条件ベクトル w と製造条件を行とする変数ベクトル x から(生産計画の計算で使用される)新たな制約式 w・xを構成し、RAMに102に格納し制約条件の更新を行う。ここで、wの各要素は、製造実績データの各要素に対応した重みとしての意味を持つ。
【0040】
図7ならびに図8に示す一連の最適化方法は、1/|w| をマージン、ξを制約緩和を表すパラメータ、制約式 x・w を分離超平面とみなすことで、操業実績データ xiのN.G.データを操業不可能領域に、O.K.データの一部であって調整係数Cによって決められた安全サイドに作りこむためのデータを操業可能領域に分離する片側ソフトマージンを最大化する特殊なサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)と見なすことが出来る。
【0041】
そして、ここでは分離超平面が区分線形の場合を示しているが、適宜カーネルを取りこむことで非線形の制約条件を構成する方法にも容易に拡張できる。サポートベクターマシンについては、例えば非特許文献2に記載の技術がある。
【0042】
以上で制約条件決定の詳細説明を終り、図7の説明に戻る。次のStep73の生産計画立案でCPU101は、図2に該当する制約条件を制約条件DB2から読み込み、Step72で算出した制約式をRAM102から読み込み、制約条件DB2から読み込んだ制約条件とRAM102から読み込んだ制約条件から、例えば、特許文献2に開示の技術を用いて、生産計画を立案する。
【0043】
次のStep74の情報書込でCPU101は、Step73で立案した生産計画を生産計画DB3に書き込む。生産計画DB3に書き込まれた生産計画は、双方向バス6を通じて各プロセスに設置されているコンピュータに実行指示情報として、適宜送信される。また同時に、Step723にて求めてRAM102に格納されている制約式 x・wと、Step73で立案した生産計画を出力表示装置8に表示する。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0045】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、更に、前述した構成要素を応用した構成要素を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【実施例】
【0046】
具体例を挙げて、制約条件を導出するステップ72の処理をさらに説明する。
【0047】
図9は、Step71で取得した製造実績データの一例を示す図である。この図9のデータをもとに、ベクトル x1 =(15,000、-100)、x2 =(10,000、250)、x3 =(50,000、498)、x4 =・・・を構成する。ベクトルの1つ目の要素は操業条件Aの値とを、2つ目の要素は操業条件Bの値を表している。
【0048】
図10は、横軸を操業条件A、縦軸を操業条件Bとして、ベクトルxi(i:製品No.)を散布図として図示したものである。白抜き丸印は品質を満足した時のO.K.データを意味し、反対に黒抜き丸印は品質を満足しなかった時のN.G.データを意味する。
【0049】
そして図には、操業条件Aと操業条件Bに対するこれまでの制約条件を図示している。これは、「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」となる操業条件A、Bの目標設定を強く推奨していることを意味している。そのため「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」となっている製造実績が多い。製品No.S0001と製品No.S0002は「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」を満たして製造された製品であり、S0003は「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」に違反して製造された製品である。 これらの制約条件を設けることで、N.G.製品をできるだけ出さないようになっている。
【0050】
図11は、式(1)によって最適化されたパラメータベクトル wを用いて計算された制約w・xを図示したものである。すべてのO.K.データは制約条件 xi・w≦1+ξi を満たし、すべてのN.G.データは制約条件 xi・w≧1 を満たしている。また、新しい制約条件w・xは、従来の制約条件である「操業条件A≦350、かつ、操業条件B≦35,000」(図10参照)よりも制約が緩い。したがって、N.G.製品を出さない製造目標を従来よりも柔軟に設定できていることが確認できる。
【符号の説明】
【0051】
1 生産計画装置本体
2 制約条件DB
3 生産計画DB
4 製造実績DB
5 製品情報DB
6 双方向バス
7 双方向バス
8 出力表示装置
9 入力装置
11 連続鋳造機
12 加熱炉
13 粗圧延機
14 仕上圧延機
15 巻取り機
101 CPU
102 RAM
103 双方向バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画方法であって、
ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、
読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、
前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、
求めた生産計画を生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、
求めた生産計画を出力表示する、情報表示ステップと、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップと、
を有することを特徴とする生産計画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生産計画方法において、
前記制約条件決定ステップは、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を決定するステップであることを特徴とする生産計画方法。
【請求項3】
複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画装置であって、
制約条件データ、生産計画データ、製造実績データ、製品情報データを保持する記憶手段と、
該記憶手段から読込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求め、この新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求めて生産計画データとして前記記憶手段に書き込む、生産計画装置本体と、
前記生産計画データを出力表示する、情報表示手段と、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力手段と、
を具備することを特徴とする生産計画装置。
【請求項4】
請求項3に記載の生産計画装置において、
前記新たな制約式を求めるにあたっては、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を構成することを特徴とする生産計画装置。
【請求項1】
複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画方法であって、
ロットを作るタイミング毎にそれまでの製造実績データと生産計画対象となる製品データとを読み込む、情報読込ステップと、
読み込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求める、制約条件決定ステップと、
前記新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求め生産計画とする、生産計画立案ステップと、
求めた生産計画を生産計画データベースに書き込む、情報書込ステップと、
求めた生産計画を出力表示する、情報表示ステップと、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力ステップと、
を有することを特徴とする生産計画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生産計画方法において、
前記制約条件決定ステップは、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を決定するステップであることを特徴とする生産計画方法。
【請求項3】
複数の通過工程からなる製品製造プロセスにおける生産計画装置であって、
制約条件データ、生産計画データ、製造実績データ、製品情報データを保持する記憶手段と、
該記憶手段から読込んだ製造実績データの内、品質を満足するデータと品質を満足しないデータとを分離する新たな制約式を求め、この新たな制約式に基いて定式化した最適化問題の解を求めて生産計画データとして前記記憶手段に書き込む、生産計画装置本体と、
前記生産計画データを出力表示する、情報表示手段と、
目標とする品質を満足したデータに対して、操業条件をどの程度安全サイドに造り込むかを表す調整係数の入力を受け持つ係数入力手段と、
を具備することを特徴とする生産計画装置。
【請求項4】
請求項3に記載の生産計画装置において、
前記新たな制約式を求めるにあたっては、
各要素の値が製造実績データの値である製造実績ベクトルと、該製造実績ベクトルの各要素に対応した重みを要素にもつパラメータベクトルを構成し、
前記製造実績ベクトルと前記パラメータベクトルからなる関数として第二の制約式を構成し、
該第二の制約式は、目標とする品質を満足したデータに対する前記関数の値と、品質を満足していないデータに対する前記関数の値とが異なる符号となる不等式で表現され、目標とする品質を満足したデータの制約緩和を表すパラメータであるダミー変数を持ち、
前記パラメータベクトルの値は、前記パラメータベクトルと前記ダミー変数を変数として前記第二の制約式を制約条件とし、前記調整係数と前記パラメータベクトルと前記ダミー変数によって構成され、目標とする品質を満足するデータの一部を操業可能領域に分離するマージンの最大化を図る評価関数を用いる最適化問題の解として決定し、
決定したパラメータベクトルによって、前記新たな制約式を構成することを特徴とする生産計画装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−155702(P2012−155702A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272233(P2011−272233)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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