生着のための細胞を調製するための方法
本発明は、増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法であって、前駆細胞がCD47/IAP受容体の作動薬と接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、生着のための細胞を調製するための方法、及び再生細胞治療の範囲内における前記方法によって得られる傾向にある細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
最近10年間に渡る、胎児及び成人組織中における幹細胞のより優れた特徴の発見は、細胞治療のための開かれた新たな可能性を有する。これらの原始的な、又は完全に分化していない、高い自己再生能力を有する「前駆細胞」は、完全に分化した細胞を生じさせ得、又は患者へ一度投与された場合において、特異的に分化した表現型を獲得し得る。前駆細胞は、例えば、末梢血、骨髄及び脂肪組織、並びに他の特化した組織、例えば臍帯血を含む、胎児又は成人の組織から単離され得る。
【0003】
前駆細胞群の同定及び単離のための非常に洗練された方法は、臨床において展開されるべき幹細胞をベースとした治療の開発を強く促進している。さらに、ヒト胎児組織の使用に関する倫理的問題を回避する手段として、成人組織由来の前駆細胞の単離及び移植が好ましい。
【0004】
前駆細胞を用いた再生細胞治療は、例えば、罹病器官の機能を回復させるために、又は生理学的修復機構が損なわれているときに組織の復元が必要とされているような、器官が危険にさらされている疾患に特に関連があると思われる。
【0005】
従って、前駆細胞治療の適用の一つの有名な分野は、心疾患に関する。これらの場合において、主要な目的は、新規の血管樹の増殖又は出現を促進することによって、組織灌流を向上させること、或いは現存する血管の機能を改善することである。前駆細胞治療の適用の他の例はまた、血管再生、及び血管前駆体を用いた欠陥のある心臓組織の修復を含む。
【0006】
大部分の例において、対象となる前駆細胞は、全身循環へと送達される。したがって、現在の手法は、当該循環中におけるそれらの効果を直接的に及ぼす、移植細胞の能力に、又は標的組織に到達し、それらの中に結合し、そして先天性の及びあまり理解されていない機構を通じた、利益のある効果を起こさせる能力に大部分が依存している。
【0007】
治療効果を最大化するために、前駆細胞の局所的投与がまた、試みられた。より多くの比率の移植された前駆細胞が、組織中に生着し、そしてそれは利益のある効果の向上を提供するだろうと期待される。しかし、移植細胞は通常、局所的基質へ付着することができず、そして大部分が不可解のままであるが、アポトーシスを含むと思われる機構を通じて、速やかに受容組織から排除される。
【0008】
したがって、生着される細胞の付着能力の欠如、特に標的組織に特異的な付着能力の欠如は、標的組織への細胞生着を危うくし得、そして投与された細胞の著しい損失へとつながり得る(Aicher et al.(2003)Circulation 107:2134−9)。その結果、投与された細胞は、例えば先天的免疫応答経路を通じてイン・サイチュ(in situ)で破壊され、血流に入り、そして肝臓及び脾臓のような器官によって排除されるか、又は肺毛細血管中で捕捉されるかのいずれかであり得る。
【0009】
さらに、細胞治療は、標的組織への投与細胞の生着を超える、さらなる制限を受ける。生着された細胞は、標的組織の復元への関与について有効ではない可能性がある。特に、生着された細胞の不具合は、中期間および長期間の生存の減少によるものであり得、或いは、それらの特性の幾つかの喪失、例えばそれらの血管新生活性(angiogenic activity)及び/又は血管形成活性(vasculogenic)の喪失、例えば、増殖因子の減少、及びサイトカイン分泌、又は分化のための及び所望のフェノタイプを獲得するための能力の低下によるものであり得る。
【0010】
細胞治療に対する上で言及された障害に加えて、他の問題が、生着のための細胞が単離された個体を苦しめる病変から生じる。例えば、糖尿病患者、肥満患者、アテローム性動脈硬化患者、高血圧患者、又は喫煙患者由来の、循環する血管内皮前駆細胞(EPC)は、健常対象のものよりも付着性ではなく、このことは、これらの細胞の、欠陥のある血管新生及び血管形成特性をもたらすことが知られている(Werner and Nickenig(2006)Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.26:257−266;Werner and Nickenig(2006)J.Cell.Mol.Med.10:318−332;Callaghan et al.(2005).Antioxid.Redox Signal 7:1476−1482;Loomans et al.(2005)Antioxid.Redox Signal 7:1468−1475;Roberts et al.(2005)J.Cell.Mol.Med.9:583−591)。
【0011】
移植に先立って、EPC調製物を成長因子と共に処理することが、血管新生促進効果を向上させ得ることが以前に提案された。したがって、脂肪組織由来サイトカインであるレプチンは、ビトロネクチン(vitronectin)で被覆した培養プレートへの、及び成熟内皮細胞へのEPCの付着を著しく向上させ得ることが示された(Schroeter et al.(2006)114:121)。しかし、かかる処置は、インビボにおいては評価されなかった。
【0012】
したがって、生着されるべき細胞を調製するための既存の方法を改良することが、本発明の目的である。
【0013】
血液の凝固、及び特に動脈血栓症は、血小板凝集に関与する。凝集した血小板の必須の機能は、脱顆粒化し、そしてそれらの内容物を血流へ放出することである。血小板α顆粒は、トロンボスポンジン(Thrombospondin)−1(TSP1)を含み、そしてそれは、放出された血小板タンパク質の25%までを構成する。TSP1は、血小板−血小板、血小板−内皮細胞、及び血小板−細胞外マトリックスブリッジの形成に関与することによって、そして単球−マクロファージ、リンパ球、好中球、好塩基球、及び線維芽細胞にさえ関わる炎症反応にさらに関与することによって、血小板凝集の向上を促進する。
【0014】
TSP1は、トロンビンの活性化を後に行う、血小板が放出するタンパク質として最初は同定された。TSP1はまた、血管壁中において、機械的損傷後又は糖尿病の間は平滑筋細胞によって、及び血栓症の間、層流血流の摂動の後、又は連続的な低酸素症の後においては内皮細胞によって発現され得る。
【0015】
TSP1は、複数のドメインを有する、独特かつ複雑な構造を有し、そしてそれは、多くの特定の細胞外受容体を活性化する。したがって異なるドメインは、以下に詳述される通り、単一の細胞のタイプにおいて、時折明らかに逆のシグナル経路を誘導し得る。
【0016】
TSP1は、細胞表面において、スカベンジャー受容体CD36と主に相互作用し、同様に、インテグリン関連タンパク質(Integrin−Associated Protein)(CD47/IAP)及びインテグリンと相互作用する。
【0017】
TSP1は、典型的な内因性抗血管新生因子として主に知られている。TSP1は、腫瘍において抗血管新生機能を果たし、そしてそれらの進行を阻害する。TSP1はまた、再内皮化(re−endothelialisation)を阻害し、その後の血管障害及びインビボにおける網膜血管新生を阻害する。
【0018】
TSP1の抗血管新生効果は、少なくとも一つのそのタイプIドメイン、及びCD36受容体の活性化によって媒介される。実際TSP1は、そのタイプIドメインのCSVTCG配列を通じてCD36と結合する(Guo et al.,(1997)Cancer Res,57:1735−1742)。微小血管内皮細胞、及び腫瘍内皮細胞において、CD36と結合するTSP1は、カスパーゼの活性化、p38−MAPK、及びp59−Fynキナーゼのリン酸化を誘導し、それはアポトーシスをもたらす(Jimenez et al(2000)Nature Medicine 6:41−48)。TSP1はまた、線維芽細胞のアポトーシスを引き起こすことが知られており(Graf et al.(2002)Apoptosis 7:493−498)、どのようにしてTSP1が組織の修復及び血管新生を危険にさらすかに関するさらなる手がかりである。
【0019】
別の周知のTSP1受容体は、準偏在性(quasi−ubiquitous)インテグリン関連タンパク質(CD47/IAP)である。CD47/IAPへのTSP1の結合は、配列RFYVVMWK(4N1−1、配列番号3)を特に含む、TSP1のカルボキシ末端で起こる。
【0020】
4N1−1(Frazier(1993)J.Biol.Chem.268:8808−14)として知られるトロンボスポンジン−1のC末端ドメイン由来のペプチド、又はその誘導体である4N1Kは、CD47/IAPと、TSP1と同様の様式で結合し得る。CD47/IAP結合ドメインは、種とTSPアイソフォームとの間で高度に保存されている。
【0021】
TSP1及び4N1−1によるCD47の活性化は、成熟内皮細胞中のCAMファミリータンパク質の発現を誘導することが示された。したがってTSP1は、CAM発現血管内皮への、循環細胞、特にα4β1インテグリン発現炎症性細胞の動員を可能とする(Narizhneva et al.(2005;FASEB J.19:1158−60)。
【0022】
しかし、かかる機構は、循環する未分化前駆細胞について説明されていない。さらに、TSP1又は4N1−1によるCD47の活性化はまた、アポトーシス及び成熟内皮細胞の死滅を誘導する(Freyberg et al.(2000)Biochem Biophys Res Commun 271:584−588;Freyberg et al.(2001)Biochem Biophys Res Commun 286:141−149;Graf et al.(2003)Apoptosis 8:531−538)。したがって、CD47作動薬は、抗血管新生剤として知られ、そしてそれは、血管新生及び固形腫瘍の成長を防止するための新規潜在的手法において使用され得る(Manna et al.(2004)Cancer Res 64:1026−1036)。CD47の発現及び活性化はまた、インビボにおける血管新生モデルにおいて、血管新生及び内皮細胞の死滅を阻害することと関連している(Isenberg et al.(2007)Circ.Res.100:712−20)。
【0023】
TSP1が、細胞内骨格及び接着斑プラークの分解、増殖阻害、カスパーゼの活性化、及び最終的にアポトーシスへとつながることがさらに提案された。さらに、TSP1は、正常内皮細胞の機能及び生存の強力な促進剤である一酸化炭素(NO)シグナルを阻害する(Isenberg et al.(2006)J.Biol.Chem.281:26069−80;Isenberg et al.(2007)J.Biol.Chem.282:15404−15)。したがって、内皮細胞のアポトーシスは、TSP1の抗血管新生効果の主要な特徴であると思われる。
【0024】
さらに、TSP1は、糖尿病の骨髄由来の前駆細胞によって発現され得る(Li et al(2006)Circ Res 98:697−704)。この場合において、TSP1が成熟内皮細胞において抗血管新生を行う役割を維持しているとき、TSP1は、血管損傷後における前駆細胞の付着及び再内皮細胞化(re−endothelialization)への前駆細胞の貢献を阻害することが示された。
【0025】
したがって、先の研究の観点から、TSP1及びCD47作動薬は、細胞の付着を増大させることができず、したがって、血管形成促進(pro−angiogenic)療法又は血管新生を促進することができないと思われる。
【0026】
さらに、血小板凝集における既知の血栓形成促進性効果(Voit et al.(2003)FEBS Lett.544:240−5)にも関わらず、大量の4N1Kペプチドの全身注射が致死性のものではなく、そして全凝固パラメータを調節しない(Bonnefoy et al.(2006)Blood 107:955−64)点に注目することは特に興味深い。したがって、4N1−1、4N1K又は派生ペプチドは、健常対象において著しい毒性効果を有するとは思われない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の説明
本発明は、TSP1によって、又はRFYVVMWK(配列番号3)を含むTSP1誘導体によって処理された、分化時において内皮細胞を産生する可能性の高い細胞が、細胞外マトリックスへと付着し、そして内皮細胞へと分化する増大した能力を有し、そしてそれらが虚血組織において機能的な血管系を回復することを支援することが可能であるという、発明者による予想外の発見から特に生じている。
【0028】
したがって、本発明は、増大した付着性を有する前駆細胞を調製するインビトロでの方法であって、前駆細胞がCD47/IAP受容体の作動薬と接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法に関する。
【0029】
本発明はまた、増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法であって、前駆細胞がRFYVVMWK若しくはRFYVVMWK類縁体を含む、又はからなるポリペプチドと接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、BSA、又は組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン又はフィブリンゲル上における、30分間のPBMCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図2】図2は、増加する濃度の組み換えTSP1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン上における、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図3】図3は、PPP、組み換えTSP1、若しくはペプチド4N1−1の不在下、又は存在下における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、16時間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs ゼラチン+ビトロネクチン)。
【図4】図4は、BSA、又は組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1又は4N1−2を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン、又はフィブリンゲル上への、30分間のPBMCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図5】図5は、BSA、増加する濃度の組み換えTSP1、又は増加する濃度のペプチド4N1−1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着の比較試験を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図6】図6は、BM−MNCをペプチド4N1−1(50mM)で、0、1、5、10、30又は120分間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図7】図7は、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又は対照としてのBSAを用いて(左側のパネル;*p<0.05 vs BSA)、或いはGST結合組み換えドメインNH2であるヒトTSP1のタイプI、タイプII、若しくはタイプIII、又はGSTタグ単体(右側のパネル)を用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着を示す。
【図8】図8は、BSA、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン、又はフィブリンゲル上への、15分間のHUCB−EPCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図9】図9は、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、又はBSAを用いた2時間の前処理後における、IL1βで活性化されたマウス内皮単層上への、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図10】図10は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた2時間の前処理後における、IL1βで活性化されたマウス内皮単層上への、30分間の、蛍光ラベルされたBM−MNC付着の顕微鏡写真を示す(倍率400倍)。
【図11】図11は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた30分間の刺激前及び刺激後における、BM−MNCの表面上でのインテグリンβ1、β2、β3及びαV、並びにPSGL1の発現を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図12】図12は、対照のBSA、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、4N1−2、又はCSVTCGを用いた2時間の前処理後、5日間培養されたBM−MNCの内皮細胞分化を示す(*p<0.05 vs BSA、又は対照)。
【図13】図13は、対照のBSA、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、4N1−2、又はCSVTCGを用いて、培養前に2時間(左側のパネル)、或いは連続的に5日間(真ん中のパネル)、或いはスタウロスポリンと共に最終的に6時間(右側のパネル)処理した後、培地中で5日後におけるBM−MNCのアポトーシスを示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図14】図14は、画像解析により細胞面積を測定することによる、BSA、又はペプチド4N1−1(50μM)を用いて2時間前処理し、そして30分間付着させた後における、ゼラチン−ビトロネクチンマトリックス上へのBM−MNCの拡散を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図15】図15は、ペプチド4N1−1(50μM)を用いて0、10、若しくは60秒、又は10若しくは30分間前処理した後における、FACSの前方散乱光(FSc)及び側方散乱光(SSc)によって測定される、BM−MNC形状の速やかな変化を示す。データは、FSc及びSScの点の分布として示される。
【図16】図16は、ペプチド4N1−1(50μM)を用いて又は用いないで、60秒間前処理した後に、FACSの前方散乱光(FSc)及び側方散乱光(SSc)によって測定される、BM−MNC形状の速やかな変化を示す。データは、FSc及びSSc分布の個々のプロファイルとして示される。
【図17】図17は、生体顕微鏡検査によって観測される、FeCl3で誘導される血栓症前(−2〜0分)、及び血栓症後におけるC57BL/6野生型マウスの腸間膜静脈におけるBM−MNCの時間依存的動員(1分あたりの新しい細胞の相互作用、毎分)を示す(*p<0.05 vs t=0分)。
【図18】図18は、ペプチド4N1−1又はBSAで2時間前処理された後、C57BL/6マウスの腸間膜静脈において、血栓症に罹患した表面上におけるBM−MNCの回転速度(損傷後の最初の10分間における平均回転速度)を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図19】図19は、ペプチド4N1−1又はBSAで2時間前処理された後、C57BL/6マウスの腸間膜静脈における、血栓症に罹患した表面上へ安定して付着したBM−MNCの数(損傷後の最初の10分間における、累積した安定な付着)を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図20】図20は、BSA又はペプチド4N1−1で2時間前処理されたBM−MNCの結紮及び注射から14日経過後における、虚血性後肢皮膚血流量を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図21】図21は、BSA又はペプチド4N1−1で2時間前処理されたBM−MNCの結紮及び注射から14日経過後における、微小血管造影スコアを示す(*p<0.05 vs BSA)。灌流される血管ネットワークは、X線画像解析を通じて定量化される。
【図22】図22は、ペプチド4N1−1又は対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、野生型又はOb/Obレプチン欠損肥満マウスから得られたBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA;**p<0.05野生型 vs Ob/Ob)。
【図23】図23は、ペプチド4N1−1又は対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、非糖尿病の野生型マウス、又はストレプトゾトシンで処置された糖尿病の野生型マウスから得られたBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA対照;**p<0.05非糖尿病 vs 糖尿病)。
【図24】図24は、BSA、又は、野生型若しくはTSP1−/−SWISSマウスから得られた血小板脱顆粒化産物(PDP)を用いて2時間前処理した後、フィブリンゲル上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図25】図25は、生体顕微鏡検査によって観測される、FeCl3で誘導される血栓症前(−2〜0分)、及び血栓症後における、野生型、又はTSP1−/−SWISSマウスの腸間膜静脈における野生型BM−MNCの時間依存的動員(1分あたりの新しい細胞の相互作用、毎分)を示す(*p<0.05 vs 野生型)。
【図26】図26は、ペプチド4N1−1、4NGG、4N1−2、7N3、7NGG、若しくは組み換えTSP1、又は対照としてのBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図27】図27は、組み換えTSP1、SDF1、EphB2−Fc、VEGF−豊富培地EBM2、又は組み換えマウスレプチン、対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図28】図28は、対照BSA、マウスモノクローナル抗ヒトCD47IgG1クローンB6H12、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1を用いて30分間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、15分間の、HUCB−EPCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図29】図29は、スタウロスポリンの存在下における0時間(対照)又は6時間後の懸濁液における、又はペプチド4N1−1(斜線のバー)又は4N1−2(黒色のバー)を用いて、10及び120分間の前処理に引き続き、培地中24時間後の懸濁液におけるBM−MNCのアポトーシスを示す(*p<0.05 vs 対照)。
【図30】図30は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた30分間の刺激前及び刺激後における、BM−MNCの表面上でのインテグリンβ1、β2、及びβ3、並びにαV、及びPSGL1の共発現を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において意図される、表現「増大した付着性」は、本発明の方法を用いて調製された前駆細胞が、未処理の前駆細胞よりも高い付着を示すことを意味する。より高い付着は、試験組織上における、又は試験基質上、例えばゼラチン/ビトロネクチン、又はフィブリンのゲル上における付着性前駆細胞の数を定量することによって決定され得る。
【0032】
調製された前駆細胞が、個体の標的組織中における生着を目的としていることが特に好ましい。したがって、本発明はまた、個体の標的組織中における生着のための前駆細胞を調製するための方法であって、生着されるべき前記前駆細胞が、生着に先立って、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され、又はRFYVVMWK若しくはRFYVVMWK類縁体を含む、又はからなるポリペプチドと接触される、前記方法に関する。
【0033】
本明細書において意図される、表現「生着」は、標的組織内への細胞の送達及び付着、又は取り込みに関する。
【0034】
本明細書において意図される、表現「標的組織」は、類似の又は異なる表現型を有し、全体的に一つの又は幾つかの特性を示し、その環境からそれを区別可能とする任意の細胞群に関する。本明細書において意図される標的組織は、多細胞生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒト中において見られ得る。好ましくは、当該組織は、非液体組織である。より好ましくは、当該組織は、心筋及び骨格筋、脳、膵臓、皮膚、腎臓、血管及び他の血管構造から構成される群から選択される。
【0035】
本明細書において意図される、表現「前駆細胞」は、一つ以上の細胞のタイプに分化する傾向にある、ディビジョン・コンピテント細胞(division−competent cell)である。好ましくは、前駆細胞は分化していない。前駆細胞は幹細胞を、特に成人の幹細胞及び胎児の幹細胞を含む。
【0036】
本明細書において意図される、表現「細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞」は、増大した付着性のような特性を示し、個体へ送達されたときに、その後に、標的組織中における成功した付着又は取り込みを一般的に示す、上で定義された前駆細胞に関する。
【0037】
本明細書において意図される、表現「細胞治療」は、欠如、障害又は疾患を処置するための、個体における生細胞の送達に関する。
【0038】
当業者にとって明らかなことであるが、調製されるべき前駆細胞が真核細胞であることが好ましい。より好ましくは、前駆細胞は、標的組織中において見られる細胞とタイプにおいて類似しており、又は分化時に、標的組織中において見られる細胞とタイプが類似の細胞を産生する傾向にある。特に、前駆細胞は、内皮細胞へと分化する傾向にあり、すなわち当該前駆細胞は内皮前駆細胞(EPC)である。
【0039】
好ましくは、前駆細胞は、脂肪組織、骨髄、肝臓、脾臓、及び血液から構成される群から選択される組織に由来する。当業者にとって明らかであろうことだが、前駆細胞は、精製された形態で、又は前駆細胞と同一の組織に特に由来し得る他の細胞を含む、精製されていない形態のいずれかで使用され得る。当該前駆細胞が骨髄に由来し、そして血管を修復することを特に目的とするとき、非分画の骨髄単核細胞(BM−MNC)は、前駆細胞の非精製形態として使用され得る。
【0040】
好ましくは、前駆細胞は、個体のものよりも同一種のものである。前駆細胞はまた、個体由来のものであることが特に好ましい。
【0041】
同様に好ましくは、上で定義された方法において使用される前駆細胞は、CD47/IAP受容体を発現する。
【0042】
本明細書において使用される、表現「CD47/IAP受容体を発現する」は、調製されるべき前駆細胞が、CD47/IAP受容体をコードするmRNA、若しくはそのRNA前駆体、及び/又はCD47/IAP受容体からなるタンパク質を含む。好ましくは、mRNAは、配列番号1の配列を含む。同様に好ましくは、CD47/IAP受容体は、配列番号2の配列からなる。mRNA、又はその前駆体の検出は、当業者に周知の種々の技術、例えばRT−PCRによって行われ得る。タンパク質の検出はまた、当業者に周知の種々の技術、例えば抗CD47/IAP抗体を使用する免疫検出によって行われ得る。
【0043】
本明細書において意図される、表現「CD47/IAP受容体の作動薬」は、TSP1タンパク質又はRFYVVMWKペプチド(配列番号3)の結合によって誘導される応答と事実上類似している、CD47/IAP受容体の応答を誘導する傾向にある任意の分子に関する。例として、Wang and Frazier(1998)Mol.Biol.Cell 9:865−874に記載されたように、CD47/IAPの作動薬は、血管平滑筋細胞におけるα2β1インテグリンの発現及び活性化を促進する傾向にある。
【0044】
例えば、CD47/IAP受容体の作動薬は、抗CD47作動薬抗体、例えばGresham et al.(1989)J.Cell.Biol.108:1935−1943;Wang and Frazier(1998)Mol Cell Biol 9:865−874;Ticchioni et al.FASEB J(2001)15:341−350;及びBarazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866によって記載されたB6H12抗体、Wilson et al.(1999)J Immunol.163:3621−3628によって記載されたCIKm1抗体、又はWang and Frazier(1998)Mol Cell Biol 9:865−874によって記載された1F7抗体であり得る。
【0045】
当該作動薬はまた、Jiang et al.(1999)J Biol Chem 274:559−562;Babic et al.(2000)J Immunol 164:3652−3658;Seiffert et al.(2001)Blood 97:2741−2749;及びLiu et al.(2006)J Mol Biol 365:680−693によって記載されたSIRPα1タンパク質であり得る。
【0046】
しかし、当該作動薬は、アミノ酸配列VVMを含むポリペプチドであることが好ましい。
【0047】
かかる作動薬は、当業者に周知である。
【0048】
特にそれらは、以下に記載されたような、CD47/IAP受容体結合ペプチドから選択される:
−Voit et al.(2003)FEBS Letters 544:240−245;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866(配列RFYVVMWKのペプチド4N1−1);
−Gao et al.(1996)J Cell Biol 135:533−544;Wang et al.(1999)J Cell Biol 147:389−399;Kanda et al.(1999)Exp Cell Res 252:262−272;Ticchioni et al.(2001)FASEB J 15:341−350;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866;及びLi et al.(2005)J Immunol 174:654−661(配列KRFYVVMWKK、配列番号4のペプチド4N1K);
−Wilson et al.(1999)J Immunol 163:3621−3628;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866;及びIsenberg et al(2006)J Biol Chem 281:26069−26080(配列FIRVVMYEGKK(配列番号9)のペプチド7N3);並びに
−米国特許第6,469,138号明細書(RFYVVMWKQVTQS(配列番号10);及びFIRVVMYEGKK(配列番号9))。
【0049】
好ましくは、当該作動薬は、RFYVVMWK(4N1−1、配列番号3)、例えばKRFYVVMWKK(4N1K、配列番号4)若しくはRFYVVMWKの誘導体を含む、又はからなるポリメプチドである。
【0050】
4N1−1は、ヒトTSP1の1034〜1041番のアミノ酸を特に表す。
【0051】
本明細書において意図される、RFYVVMWKの誘導体は、当該誘導体が、CD47/IAP受容体に対するRFYVVMWKと、本質的に同一の作動薬特性を示すという条件下において、少なくとも一つのアミノ酸の挿入、欠失又は挿入によって、及び/又は化学的処理によってRFYVVMWKから得られる任意のポリペプチドに関する。
【0052】
好ましくは、当該作動薬は、TSP1タンパク質の断片である。本明細書において意図されるTSP1タンパク質は、GenBank参照番号NP−003237及び配列番号5で特に表されるヒトTSP1タンパク質、GenBank参照番号AAA50611及び配列番号6で特に表されるマウスTSP1タンパク質、又はGenBank参照番号NP−0001013080及び配列番号7で特に表されるラットTSP1タンパク質であることが好ましい。最も好ましくは、TSP1タンパク質は、ヒトTSP1である。特に、当業者にとって明らかであろうことだが、RFYVVMWKを含むTSP1タンパク質の任意の断片は、本明細書において意図されるCD47/IAP受容体の作動薬と考えられ得る。
【0053】
好ましくは、当該作動薬がTSP1タンパク質の断片であるとき、それはタイプIリピート及びCD36作動薬ドメイン、例えば配列CSVTCG(配列番号8)のいずれも含まない。
【0054】
本明細書において意図されるRFYVVMWKペプチドの「類縁体」は、形状、電荷分布、及び親水性/疎水性分布において、ペプチドRFYVVMWKと類似している任意の分子に関する。
【0055】
上で定義された方法の別の有利な実施形態において、調製された前駆細胞は、標的組織中において成熟細胞へと分化する傾向にあり、そして前記方法に従って調製されなかった類似の細胞と比較して、調製された細胞の分化が加速される。
【0056】
上で定義された方法のさらなる実施形態において、当該細胞は、好ましくは10秒〜2時間、作動薬と接触される。
【0057】
別の実施形態において、上の方法は、例えばゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンのゲル上において、調製された細胞中の付着細胞をさらに選択するステップを含む。
【0058】
実際に、異なる細胞は、作動薬接触段階において異なるように応答し得、したがって、細胞を付着画分及び非付着画分へと分離し得、そして向上した付着能力を有する画分を使用することは、治療的細胞生着率を向上させるために有利である。
【0059】
本発明はまた、細胞生着を必要とする個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞の使用に関し、又は細胞生着を必要とする個体を処置するための方法であって、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された治療上有効な量の細胞が、前記個体へ投与される、前記方法に関する。それはまた、細胞生着を必要とする個体を治療するための、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関する。
【0060】
本発明は、血管系の機能不全を患う個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された作動薬の少なくとも一つの使用にさらに関し、又は血管系の機能不全を患う個体を処置するための方法であって、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された少なくとも一つの作動薬の治療上有効な量が、前記個体へ投与される、前記方法に関する。それはまた、血管系の機能不全を患う個体を処置するための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された作動薬に関する。
【0061】
本発明はまた、血管系の機能不全を患う個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドの少なくとも一つの使用に関し、又は血管系の機能不全を患う個体を処置するための方法であって、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドの少なくとも一つの治療上有効な量が前記個体に投与される、前記方法に関する。それはまた、血管系の機能不全を患う個体を処置するための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドに関する。
【0062】
本明細書において意図される個体は、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに関する。
【0063】
好ましくは、個体は、血管系の機能不全を患っている。より好ましくは、個体は、血管の再生又は新生を必要としている。最も好ましくは、個体は、アテローム性動脈硬化、糖尿病、肥満、心筋梗塞、コロナロパシー(coronaropathy)、糖尿病性網膜症、腎血管硬化症、脳虚血、血栓症、内皮機能不全、肺高血圧、外傷性皮膚創傷、潰瘍、及び熱傷から構成される群から選択される病変を患う。
【0064】
本発明はまた、上で定義された個体が、上で定義された細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞を用いた処置から利益を受けるか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、上で定義された前駆細胞、好ましくは細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞と同一タイプの前駆細胞が、上で定義されたCD47/IAP受容体の作動薬と、又は上で定義された、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなるポリペプチドと接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、患者は細胞治療において有効であることが知られている前記前駆細胞を用いた処置から利益を受ける可能性があると決定されること
を含む、前記方法に関する。
【0065】
本発明はまた、上で定義された個体が、上で定義された増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得るか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、上で定義された前駆細胞が、上で定義されたCD47/IAP受容体の作動薬と、又は上で定義された、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなるポリペプチドと接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、上で定義された増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得る可能性があると決定されること
を含む、前記方法に関する。
【0066】
逆に、本発明は、野生型のTSP1発現をノックアウトしたマウスにおいて、分化時に内皮細胞を産生する傾向にある細胞において、血栓部位へと動員される能力が減少したことを示した。さらに、これらの動物から単離されたTSP1欠損血小板によって放出される血小板の脱顆粒化産物は、分化時に内皮細胞を産生する傾向にある細胞の、インビトロにおける固定化された細胞外マトリックスへの付着を刺激する能力の減少を示した。
【0067】
したがって、本発明は、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止するための方法であって、CD47/IAP受容体の少なくとも一つの拮抗薬の有効量が前記個体へ投与される、前記方法に関する。
【0068】
本発明はまた、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止することを目的とする医薬の製造のための、CD47/IAP受容体の少なくとも一つの拮抗薬の使用に関する。それはまた、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止するための、CD47/IAP受容体の拮抗薬に関する。
【0069】
本明細書において意図される、表現「CD47/IAP受容体の拮抗薬」は、CD47/IAP受容体の活性を阻害する、及び/又はCD47/IAP受容体を不活性化する傾向にある任意の化合物であって、しかし同様にTSP1の結合を阻害する傾向にある任意の化合物、そして同様にRFYVVMWK配列を含有する作動薬、又は任意のRFYVVMWK配列様作動薬の、それらの同種受容体、例えば、特にCD47/IAP受容体への結合を阻害する傾向にある任意の化合物に関する。
【0070】
好ましくは、病的過程は、糖尿病性網膜症及びアテローム性動脈硬化である。
【0071】
かかる使用又は方法は、特に細胞治療の範囲内において、非標的組織への及び/又は好ましくない部位における、投与された治療細胞の所望ではない付着又は生着を防止するために有用であり得る。この特定の場合において、CD47/IAP受容体拮抗薬は、前駆細胞の付着が防止され得る部位に、局所的に投与され得る。
【実施例】
【0072】
材料及び方法
試薬及び抗体
ヒト組み換えTSP1は、EMP−Genetechにより製造され、そしてヒト精製TSP1は、Dr.Arnaud Bonnefoy、Inserm Unit U553、Hopital St Louis(Paris)により調製された。合成ペプチド4N1−1(RFYVVMWK、配列番号3)及び4N1−2(RFYVVM、配列番号11)を、Bachem Ltdから得た。ペプチド7N3(FIRVVMYEGKK、配列番号9)、4NGGと呼ばれる変異した4N1−1(RFYGGMWK、配列番号:12)、及び7NGGと呼ばれる変異した7N3(FIRGGMYEGKK、配列番号:13)は、NeoMPS,Franceにより合成された。精製ヒトフィブロネクチン及びトロンビン、スタウロスポリン及びウシ血清アルブミン(BSA)をSigmaから得、フィブリノーゲンをAmerican Diagnosticaから得た。
【0073】
細胞表面受容体の蛍光ラベル化及び阻害のために、マウスモノクローナル抗ヒトCD47IgG1(クローンB6H12)、及びFITC結合抗マウスインテグリンβ1アルメニアン(harmenian)ハムスターIgGをSanta Cruzから購入した。B6H12と適合した対照アイソタイプマウスIgG1はChemiconより提供された。ビオチン結合抗マウスインテグリンβ2ラットIgG2akappa、フィコエリトリン結合抗マウスPSGL1ラットIgG1kappa、FITC結合アルメニアンハムスターIgG、ビオチン結合ラットIgG2a−kappa、フィコエリトリン結合ラットIgG1kappa、及びPer−CP結合ストレプトアビジンを、BD Pharmingenから購入した。フィコエリトリン結合抗マウスインテグリンβ3アルメニアンハムスターIgG、ビオチン結合抗マウスインテグリンαvラットIgG1kappa、フィコエリトリン結合アルメニアンハムスターIgG、及びビオチン結合ラットIgG1kappaは、eBiosciencesより提供された。分析を、Becton−DikinsonのCanto−II蛍光支援セルソーター(FACS)を用いて行った。
【0074】
組み換えヒトストローマ由来因子1α(SDF1)を、Calbiochemから購入し、組み換えキメラエフリン−B2-Fc(EphB2−Fc)を、R&D Systemsから得、そして組み換えヒトレプチンはBiovisionから提供された。
【0075】
動物
10週齢のC57Bl/6及びSwiss遺伝的背景を有する野性型雄マウス(Charles River)を使用した。雄TSP欠損SWISSマウスを、Dr.Arnaud Bonnefoy、Inserm Unit U553、Hopital St Louis(Paris,France)から得た。生体顕微鏡検査に関しては、マウスを4週齢で使用した。C57Bl6遺伝的背景を有する肥満Ob/Obレプチン欠損トランスジェニックマウスを、Harlan−Franceから得た。1型糖尿病(インスリン依存性)を雄C57Bl6マウスに、ストレプトゾトシン(streptozotocine)(膵臓のベータ細胞を破壊することが知られている)を毎日、1〜2週間、血糖が300mg/kgに達するまで注射することによって導入した。当該マウスはその後、糖尿病と見なされ、そして2か月間、標準食餌(standard chow diet)で飼育される。
【0076】
細胞培養
C57BL/6雄マウスの大腿骨及び上腕を注意深く切開し、骨髄を抽出及び解離し、そして骨髄単核細胞(BM−MNC)を、フィコール(Ficoll)勾配(Histopaque−1083,Sigma)での分画遠心法(2,000r.p.m、25分)によって分離した。BM−MNCをその後PBSで洗浄し、そしてペレット化した(pelleted)(2,000r.p.m、10分)。
【0077】
FACSアッセイに関して、新鮮細胞を、指示されたペプチド及び時間で処理し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定化し、そして細胞の大きさの分布を前方散乱光及び側方散乱光の分析によって決定するために、Beckman−Coulter Epics−XLセルソーターを用いて分析した。データは、点分布図として又は個々のFsc及びSscの分布特性としてのいずれか一方で示された。
【0078】
代わりに、BM−MNCを再懸濁し、そして内皮細胞基本成長培地(endothelial basal growth medium)(EBM;Clonetics)、又は血管内皮増殖因子−165(VEGF)及び線維芽細胞増殖因子−2(FGF2)を豊富に含み、そしてウシ胎仔血清(FCS、20%)をさらに添加したEBM2(Clonetics)で培養された。細胞をゼラチン(0.1%)−ビトロネクチン(0.5%μg/ml;Sigma)であらかじめ被膜したウェル中で培養した。ペプチド濃度及び時間の指示された条件で培養した後、個々の細胞が占める領域を決定するために、ImageJ画像解析ソフトウェアを用いて、当該細胞の範囲を定めることによって細胞拡散を測定した。50個超の細胞を3つの独立した細胞培養に関する3つのランダムに選択した領域において測定した(倍率400倍)。拡散を一細胞あたりの相対面積単位(relative area units)で表現した。
【0079】
マウスの循環血液を、後方の眼窩洞(retro−orbital sinus)における静脈穿刺を通じて得、そしてヘパリン(5UI/ml)を含有する抗凝結バッファーと混合した。循環末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配遠心分離(Histopaque−1083、Sigma)(2,000r.p.m、25分)を通じて精製した。そして血小板の混入を排除するために、細胞をPBS中で2度洗浄かつペレット化した(2,000r.p.m、5分)。
【0080】
SV40形質転換マウス骨髄内皮細胞(ATCCからのSVEC)を、24ウェルプラーク中、20%FCSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(DMEM)中で、それらが完全培養密度に達するまで(7日間)増殖させた。細胞−細胞付着実験に先立って、SVEC単層を、5nMマウスインターロイキン−1β(Calbiochem)で2時間活性化した。
【0081】
Hopital Lariboisiere and Inserm倫理ガイドラインに従って標準的な手順によって、ヒト臍帯血(30〜50ml)を、ヘパリン(15UI/ml、Sanofi)を含有する滅菌チューブ中に集めた。PBMCを、フィコール勾配遠心分離(Histopaque−1077、Dominique Dutscher)を通じて単離した。成熟内皮細胞を除去するために、単核細胞(6.106細胞/ml)を培養ディッシュ(100×20mm)中、37℃、5%CO2で16時間、播種した。付着細胞を除去した。非付着細胞を培養し、そして6ウェルプレート(107細胞/ウェル)において、L−グルタミン、HEPESバッファー(25mM;Eurobio)、抗生剤及び抗真菌剤(ペニシリン10000単位/ml、ストレプトマイシン10,000μg/ml、ファンギゾン(fungizone)25μg/ml)及び20%FCS(Dominique Dutscher)、並びに10ng/ml VEGF(R&D Systems)を備えたM199成長培地(Gibco)中のコラーゲンタイプ1マトリックス(Colli;90μg/ml、Sigma)上で、ヒト臍帯血由来内皮前駆細胞(HUCB−EPC)へと分化させた。
【0082】
細胞調製物の前処理
ゼラチン/ビトロネクチン、フィブリンゲル又は活性化SVEC単層上への細胞付着における、TSP1又はそのカルボキシ末端配列由来のペプチド、4N1−1、及び4N1-2の効果を評価するために、特定の長さの時間でのPBS洗浄及び培養以前に、2.106/ml BM−MNC若しくはPBMC、又は106/ml HUCB−EPCを、TSP1(50〜100μM)、又は4N1−1若しくは4N1−2ペプチド(100μM)、又は対照BSA(1%)の存在下、又はマウスモノクローナル抗ヒトCD47 IgG1 B6H12(40μg/ml)、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1(40μg/ml)の存在下、5%CO2下のインキュベーター中、37℃で2時間前処理した。付着実験に関して、上清を除去し、付着細胞をPBSにて軽く洗浄した。高倍率視野あたりの付着細胞の数を、倒立型位相コントラスト顕微鏡(inverted phase−contrast microscope)を高倍率(400倍)で使用して、1ウェルあたり3〜5つの領域で集計した。
【0083】
血小板の欠乏した血漿
マウスの循環血液を、後方眼窩洞の静脈穿刺(retro−orbital sinus puncture)を通じて得、そしてヘパリン(5UI/ml)を含有する抗凝結バッファーと混合し、そして赤血球及び白血球を除去するために、2000r.p.mで15分間遠心分離した。上清を回収し、そして血小板を除去するために、11,000r.p.mで5分間遠心分離した。この最後の上清は、血小板の欠乏した血漿(PPP)と見なされた。
【0084】
血小板脱顆粒化産物
ペントバルビタールナトリウム(Pentobarbital−Na)の過剰用量(Cerval、France)を通じた末端麻酔(terminal anesthesia)の後、マウス血液を、心臓内穿刺を通じて得た。血液をACD−Cバッファー(クエン酸130mM、クエン酸三ナトリウム(trisodic citrate)124mM、グルコース110mM)を用いて抗凝固され、そして自発的血小板活性化を防止するために、プロスタグランジンE1(PGE1 10〜8M)と共に、1時間、室温でインキュベートした。血液をその後、15分間、120gで、15℃にて遠心分離し、血小板に富んだ血漿(PRP)を回収した。PRPをその後、洗浄バッファー(NaCl 140mM、KCl 5mM、クエン酸三ナトリウム 12mM、グルコース 10mM、ショ糖 12.5mM、pH6.0)と混合し、そして15分間、1,200gで遠心分離した。血小板が反応バッファー(HEPES 10mM、NaCl 140mM、KCl 3mM、MgCl2 0.5mM、NaHCO3 5mM、グルコース 10mM、pH7.4)中にて再懸濁される前に、血小板のペレットを洗浄し、そして15分間、1,200gにて、再度ペレット化した。血小板を数え、当該懸濁液を600,000血小板/μlへと調整し、そして機能的凝集試験に先立ちPGE1を除去するために、室温で30分間放置した。
【0085】
血小板凝集を、Born(1962)による濁度法に従うChronolog血小板凝集計(Kordia、Holland)を用いて測定した。血小板懸濁液(400μl)を、37℃で5分間インキュベートし、そして攪拌しながら血小板凝集計へと入れた。0%の光透過を、血小板懸濁液を用いて較正し、100%透過をバッファー単体に合わせた。光透過の記録を、カルシウム及び他の作動薬、例えばトロンビン受容体活性化ペプチド−6(TRAP、100μM)及びアデノシン二リン酸(ADP 10μM)の添加後に開始した。5分間の凝集−脱顆粒の後、血小板を15秒間、パルス遠心分離(pulsed centrifugation)し、そして除去した。上清は、血小板脱顆粒化産物(PDP)を含有した。
【0086】
骨髄由来EPC標識化
BM−MNCを、EBM培地中、5日間、ゼラチン/ビトロネクチン上で培養した。非付着細胞を除去した後、2つの内皮細胞特性に関する二重標識化を通じてEPCを同定した:Dil標識化・アセチル化・低濃度リポタンパク質(Dil−Ac−LDL;1μg/ml、BioHarbor Products;赤色の蛍光)の結合、及びFITC標識されたBS1−レクチン(1μg/ml、Sigma;緑色の蛍光)の結合。二重蛍光により、1ウェルあたり3〜5つの領域中におけるEPCの顕微鏡による同定及び集計(倍率400倍)が可能となった。実験を、少なくとも3回繰り返し、そして結果をEPCのパーセンテージとして表現した。
【0087】
インテグリン及びPSGL1の、細胞表面の発現
細胞表面のタンパク質発現を決定するために、FITC結合抗インテグリンβ1、ビオチン結合抗インテグリンβ2、PE結合抗インテグリンβ3、ビオチン結合抗インテグリンαv、PE結合抗PSGL1抗体、又はそれらに適合した対照アイソタイプ(全て0.5mg/l)と共に、45分間、PBS−BSA2%中でインキュベーションする前に、BM−MNCを、PBS−BSA5%を用いて、30分間ブロッキングした。BM−MNCをペレット化し(5分、2,000r.p.m)、そしてPBS−BSA2%と共に再懸濁した。標識化された細胞のパーセンテージを、Canto−IIセルソーター(Becton−Dikinson)を用いたフローサイトメトリーにより決定した。非免疫アイソタイプ対照抗体標識細胞のパーセンテージは、補正された。
【0088】
核形態学の観察を通じたアポトーシスの評価
BM−MNCを、EBM中、TSP1、又は4N1−1及び4N1−2ペプチドの継続的な存在下で、或いは最後の24時間のみ処理されて、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で5日間増殖させた。スタウロスポリン(2μg/ml、6時間)を、アポトーシス誘導のための陽性対照として使用した。非付着細胞を除去し、そして付着細胞をPBS−PFA 4%で固定化し、その後、DNA塩基間における結合後に蛍光性となるDAPI(ジアミジノフェニルインドール、0.01mg/ml)を添加した。核形態学を、蛍光顕微鏡検査法によって分析し、そして断片化又はクロマチンの凝縮を示したアポトーシス核のパーセンテージを1ウェルあたり3〜5つの領域中において計算した(倍率400倍)。実験を少なくとも3回繰り返した。
【0089】
無傷DNA内容物の定量を通じたアポトーシス評価
BM−MNCを単離し、そして4N1−1ペプチドを用いて10又は120分間処理し、PBSで洗浄し、そしてEBM中、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で24時間まで培養した。未処理の新鮮細胞を、生細胞のための対照とした。アポトーシスの陽性対照として、懸濁液中の細胞をスタウロスポリン(2μg/ml、6時間)で処理した。処理及び培養後、非付着及び付着細胞を採取し、そして別々に分析し、氷冷した70%エタノールのPBS溶液で固定化し、そしてトリトン(Triton)X−100(0.05%)、ヨウ化プロピジウム(PI;50μg/ml)及びRNase−A(100μg/ml)を含むPBS中、45分間インキュベートした。PIは、DNA塩基間における結合の後に蛍光性となる。DNA内容物をその後、蛍光支援細胞ソーティング(FACS;Beckman−Coulter)によって分析し、そしてDNAの断片化、及び蛍光の減少を示したアポトーシス核のパーセンテージを測定した。実験を3回繰り返した。
【0090】
実験的血栓症におけるBM−MNCの時間依存的動員
発明者は、Kurz他(1990)Thromb Res 60:269−280による、動脈血栓症の実験モデルを適用し、そして塩化鉄(FeCl3)を化学誘導物質として使用した。野生型C57bl6、Swiss、又はTSP1欠損Swissマウスは、ペントバルビタールを用いた末端麻酔後に、及び追加の鎮痛剤としてキシロカイン5%を局所に皮膚へ塗布した後に、腹壁切開手術された。BM−MNCを、蛍光染料「Cell Tracker−Orange」(5μM;分子プローブ)、及び合成ペプチド4N1−1若しくは4N1−2(100μM)、又は対照BSA(1%)を用いて2時間前処理した。BM−MNCをPBSで洗浄し、そして後方の眼窩洞を通じた血液循環へと投与した(2.106細胞/100μl/動物)。腸間膜動脈−静脈対を切開し、そしてリアルタイム生体顕微鏡検査にさらした。調製された全マウスを、VHSレコーダーと接続されたアナログカメラ(analogic camera)(LHESA Electronicl、40イメージ/秒)を取り付けた、又はAct−1画像収集ソフトウェア(Nikon)とリンクした、高解像度ニューメリック(numeric)カメラ(DXM1200、Nikon)とつながった、落射蛍光顕微鏡(Ellipse TE300)の台に載せた。選択された小静脈の無傷血管壁上における基本的BM−MNC動員を2分間記録した。FeCl3(500mM)を含有する寒天ゲル(1%)片(1〜2mm3)をその後、局所的に適用して、拡散を通じた進行性の血管内血栓を誘導した。血栓症に罹患した血管表面上におけるBM−MNCの動員を、さらに15分間記録した。記録を分析し、そして新規BM−MNC/血管壁相互作用の数を毎分ごとに計算した。安定した付着(30秒超の間静止している付着細胞)を集計し、そして血栓症の誘導後、初めの10分間にわたって蓄積した。血管壁と相互作用するBM−MNCの平均回転速度を、較正されたスクリーン上における時間にわたる移動距離を測定し、そしてμm/秒へと変換することによって血栓症誘導後における最初の10分間にわたって、一細胞あたりで計算した。
【0091】
実験的な後肢虚血の間における、BM−MNCの血管新生促進効果
麻酔マウス(m=8〜10動物/群)は、右大腿深動脈の近位起始部(proximal origin)における動脈結紮を受け、後肢虚血を誘導された。全てのマウスの操作を、我々の団体の倫理規則及びガイドラインに従って行った。結紮されたマウスへ、上で示したように調製されたBM−MNCを注射した。虚血14日後、後肢における血管新生を、2つの独立した方法を使用して調べた:血管密度を、高解像度ミクロ血管造影を通じて評価した。麻酔動物へ、腹部大動脈中に挿入された、シリンジと連結されたカテーテルを通じて、較正されたポンプの制御下において、造影剤として硫酸バリウムを注射した。このシステムにより、一定の注入量の連続的なモニタリングを行うことができた。後肢血管系の画像を、X線ミクロ血管造影を介して得た。血管造影スコアは、血管で占められる画像画素を定量することによって決定され、そしてパーセンテージで表現された。皮膚血流量における変化を、画像分析ソフトウェアと接続されたLaser Dopplerにより分析した。証明変動及び室温は、虚血性の右肢において得られる値を、非虚血性の対照である左肢の値で割った割合として後肢灌流を表現することによって考慮された。
【0092】
統計分析
全ての実験を、少なくとも3回繰り返した。インビトロの実験に関して、統計分析を、StudentのT検定を用いて行った。血管新生の結果を、ANOVA検定を用いて分析し、そしてグループ間の比較(m=5〜10動物/グループ)を、Mann−Whitney検定を用いて行った。有意性は、p<0.05の時に得られた。
【0093】
実施例1
マウスBM−MNC、マウスPBMC、及びヒトHUCB−EPC付着における血小板タンパク質の効果
マウスBM−MNC及びHUCB−EPC付着を、インビトロで評価した。精製若しくは組み換え血小板タンパク質、又はCD47/IAP受容体のペプチド作動薬の効果を特徴付けした。主に2つの手法を使用した:
1.ゼラチン/ビトロネクチン対照マトリックス又はフィブリンゲル上における30分間の細胞付着を測定する以前における、血小板タンパク質と共にした、細胞の2時間のプレインキュベーション。
2.溶液中血小板タンパク質の存在下で、ゼラチン/ビトロネクチン対照マトリックス又はフィブリンゲル上における、16時間の細胞付着
【0094】
−ゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンゲル上へのBM−MNCの付着における、BM−MNCをTSP1又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
BM−MNCを、組み換え若しくは精製TSP1又はペプチド4N1−1で2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンマトリックス又はフィブリンゲルへのそれらの付着を30分間測定した。TSP1を用いた前処理、及び特に4N1−1ペプチドを用いた前処理は、BSAを用いた場合と比較して、ゼラチン/ビトロネクチンへの付着(それぞれ、+160.6%、p<0.05;及び+249.6%、p<0.05)及びフィブリンへの付着(それぞれ、+74.0%、p<0.05;及び+186.0%、p<0.05)を強く刺激した(図1)。BM−MNCを、組み換えTSP1を1〜40mg/mlの増大する濃度で2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。TSP1は、5μg/ml超から、ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNCの付着を有意に刺激した。BSAの場合と比較して、最大刺激は20μg/mlにおいて到達された(+179.3%、p<0.05)(図2)。4N1−1ペプチドを用いた刺激は、フィブリンゲル上へのものよりも、ゼラチン/ビトロネクチン上へのものの方が相対的により強力であり、そして100nMから用量依存的であった(図5)。100μMの4N1−1ペプチドは、TSP1の最も効果的な試験用量(100nM)よりも、約6倍効果的に付着を刺激した。BM−MNC付着の4N1−1ペプチド刺激が完了し、そしてたった5〜30分間のプレインキュベーションの後においてほぼ最大効果を生じた(図6)。細胞の付着能力の増大は、刺激開始後少なくとも2時間維持された。
【0095】
−ゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンゲル上へのPBMCの付着における、PBMCをTSP1又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
4N1−1ペプチドと共にするPBMCのプレインキュベーションは、BM−MNCにおける場合と同様の効果を誘導し、そしてゼラチン−ビトロネクチンへのそれらの付着を刺激し(+403.2%、p<0.05)、そしてフィブリンゲル上への付着をさらに刺激した(+1,107.8%、p<0.05)(図4)。
【0096】
−ゼラチン/ビトロネクチンへの16時間のBM−MNC付着に対する、溶液中のTSP1、4N1−1ペプチド及びPPPの効果:
付着を、位相差顕微鏡による直接的細胞集計を通じて定量する以前に、BM−MNCを16時間、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で、PPP、組み換えTSP1(100μg/ml)、又はペプチド4N1−1(100μM)の存在下、インキュベートした。図3で報告されたように、TSP1は、ゼラチン/ビトロネクチン対照と比較して3倍超付着を刺激した(+206.8%、p<0.05)。合成ペプチド4N1−1はまた、2時間のプレインキュベーションを用いた場合よりもあまり有効ではないが、16時間かけて有意に付着を増大させた。
【0097】
−ゼラチン/ビトロネクチン上へのBM−MNCの付着における、BM−MNCをヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又はTSP1の種々の組み換えドメインと共にプレインキュベーションをしたことの効果:
BM−MNCを2時間、BSA(対照)、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又はペプチドGST単体若しくはヒトTSP1の組み換えドメインNH2、I、II、及びIIIと連結したペプチドGSTで前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。図7で示されるように、ペプチド4N1−1は、BSAと比較して特に強くBM−MNCの付着を刺激した(+310.4%、p<0.05)。組み換え及び精製TSP1も、付着を有意に刺激した(それぞれ+65.6及び+143.8%、p<0.05)。それら各々の効果の間に有意差は存在しなかった(p=0.058)。試験された組み換えGST結合TSP1ドメインは、対照GST単体と比較して効果を有さなかった。一方、ペプチドCSVTCGを用いた付着はBSAの場合と比較して21%の阻害を示した(p<0.05)。
【0098】
代わりに、BM−MNCを2時間、BSA(対照)、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、7N3、及び4N1−2,又は変異配列4NGG若しくは7NGGで前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。図26で示されるように、トロンボスポンジン−1のカルボキシ末端における2つのCD47活性化部位に相当する両方のペプチド(4N1−1及び7N3)は、BSAと比較してBM−MNC付着を有意に刺激した(p<0.05)。変異ペプチドを用いたBM−MNC付着の有意な調節は存在しなかった。
【0099】
比較の目的のために、BM−MNCを、BSA(対照)、ヒト組み換えTSP1、又は前駆細胞付着又は分化を調節することが知られている他の因子、例えば組み換えヒト間質由来因子1α(SDF1;100ng/ml)、組み換えキメラエフリン−B2−Fc(EphB2−Fc;3μg/ml)、VEGF−豊富培養培地EBM2(50%)、又は組み換えヒトレプチン(1及び100ng/ml)を用いて2時間前処理した。ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNC付着を、30分後に測定した。図27に示すように、EBM2培地及びレプチン(100ng/ml)は、BSAと比較して(p<0.05)、又はペプチド4N1−1で得られる刺激と比較して、BM−MNC付着において中等度の増加(2倍未満)を刺激した(図7)。SDF1又はEphB2−Fcを用いたBM−MNC付着の有意な調節はなかった。
【0100】
−ゼラチン/ビトロネクチン及びフィブリンゲル上へのHUCB−EPCの付着における、HUCB−EPCをヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
HUCB−EPCを、2時間、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1を用いて2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチン及びフィブリンゲル上へのそれらの付着を15分後に測定した。図8に示されるように、組み換え若しくは精製TSP1、及びペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAと比較して、ゼラチン/ビトロネクチン上(それぞれ+106.3%;+52.5%;及び+58.5%、p<0.05)及びフィブリンゲル上(それぞれ+106.3%;+52.5%;及び+58.5%、p<0.05)の両方への付着を有意に刺激した。TSP1のタイプ又はペプチド4N1−1のいずれかを用いて得られる刺激範囲は、両タイプのマトリックスにおいて同等であった。
【0101】
PBS洗浄及び培養以前に、HUCB−EPCを、対照BSA(1%)の存在下、又はマウスモノクローナル抗ヒトCD47 IgG1 B6H12(40μg/ml)、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1(40μg/ml)の存在下、5%CO2下のインキュベーター中、37℃で2時間前処理した。図28で示されるように、B6H12を用いた前処理は、BSA又は対照マウスIgG1と比較して、ゼラチン/ビトロネクチン上への付着を有意に刺激した(それぞれ、+14.6%、又は+16.6%、p<0.05)。これは、抗CD47抗体が、作動薬として機能し得、そして作動薬ペプチドと同様の付着促進効果を示し得ることを示唆している。
【0102】
−内皮細胞単層上へのBM−MNCの付着における、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1と共にBM−MNCをプレインキュベーションしたことの効果:
BM−MNCを、組み換え若しくは精製ヒトTSP1(10μg/ml)を用いて、又はペプチド4N1−1(100μM)を用いて2時間前処理し、そして30分後に、インターロイキン−1βで前もって活性化されたマウス内皮細胞単層上へのそれらの付着を測定した。図9において示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAと比較して、付着を強力に刺激した(+359.5%、p<0.05)。組み換え及び精製TSP1はまた、有意な刺激を誘導した(それぞれ+34.2%及び+40.5%、p<0.05)。マウス内皮細胞単層へのBM−MNC付着に対する4N1−1の効果を、蛍光顕微鏡によって証明することができた(図10)。
【0103】
−ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNCの付着における、TSP1、又はペプチド4N1−1と共にBM−MNCをプレインキュベーションしたことの効果:
トランスジェニック肥満マウス(Ob/Ob遺伝型、レプチン欠損)、及び糖尿病マウス(ストレプトゾトシン誘導1型糖尿病)から得たマウスBM−MNCの付着を、インビトロで評価した。30分間の、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックスへのBM−MNC付着の測定前に、BM−MNCを、対照BSA又は4N1−1と、2時間プレインキュベーションした。肥満Ob/Ob BM−MNCは、野生型対照と比較して、インビトロにおいて付着の減少を示し(−31%;p<0.05)(図22)、そしてそれはEPCの機能障害と整合がとれる。しかし付着は、4N1−1を用いた前処理によって、少なくとも野生型BM−MNCと同程度の強さで、著しく向上した(関連性BSA対照と比較して、それぞれ894.7%及び1,245.0%、p<0.05対対照)。ストレプトゾトシンで処理したマウスから得られた糖尿病BM−MNC(図23)は、非糖尿病細胞と比較して、有意ではなく、基本付着レベルが減少する傾向を示した(−19%;p>0.05)。しかし、糖尿病BM−MNCの付着は、4N1−1を用いた前処理によって著しく向上し、そして糖尿病細胞は、非糖尿病細胞よりも4N1−1対して有意により大きく応答した(それらの関連BSA対照と比較してそれぞれ270.3%対587.8%;p<0.05対対象、及び細胞タイプ間においてp<0.05)。
【0104】
実施例2
TSP1又はペプチド4N1−1及び4N1−2を用いた刺激の後、BM−MNCにおける細胞表面付着タンパク質の発現
発明者が、ペプチド4N1−1を用いた前処理後における増大したBM−MNC付着を観測した後、発明者は、当該ペプチドがそれらの表面における付着タンパク質の発現を調節するか否か決定することとした。したがってBM−MNCを、対照BSA又はペプチド4N1−1(50μM)を用いて30分間前処理し、そしてインテグリン及びPSGL1発現を分析した。免疫標識及びFACSにより分析した。図11に示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAの場合と比較して、インテグリンβ1発現(30.7%〜48.1%、p<0.05)、インテグリンαV発現(22.8%〜64.8%、p<0.05)、及びPSGL1(44.4%〜61.8%、p<0.05)を刺激した。さらに、4N1−1は、有意ではないものの(p=0.07)、インテグリンβ3発現を刺激する傾向を示したが(72.0%〜79.4%)、4N1−1は、これらの実験において、インテグリンβ2発現を調節することができなかった(p>0.5)。
【0105】
図30に示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAを用いた場合と比較して、インテグリンβ1及びβ2の同時共発現(29.8%〜54.4%、p<0.05)、インテグリンβ1及びβ3の同時共発現(22.4%〜53.1%、p<0.05)、インテグリンβ2及びβ3の同時共発現(67.4%〜75.6%、p<0.05)、又はインテグリンβ1及びβ2及びβ3の同時共発現(18.8%〜44.8%、p<0.05)、インテグリンαVとPSGL1の同時共発現(11.5%〜48.4%、p<0.05)を刺激した。したがって、4N1−1は、BM−MNC表面にある複数の付着受容体の同時発現を強く刺激した。
【0106】
実施例3
ペプチド4N1−1を用いた刺激後における、BM−MNC拡散の調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、インビトロにおける、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上への細胞拡散の程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1(100μM)、又は対照BSAを用いて前処理し、そして30分間、付着のために放置した(図14)。4N1−1は、個々の細胞により占められる領域において、BSAの場合と比較して41%の細胞拡散増大を刺激した(p<0.05)。
【0107】
実施例4
ペプチド4N1−1を用いた刺激後におけるBM−MNCの形状の調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、ペプチド4N1−1により引き起こされた細胞形状変化を調べた。BM−MNCを、増加する時間で、4N1−1(50μM)を用いて前処理し、そして速やかにFACSによって分析して、セルソーターの前方散乱光及び側方散乱光チャンネル(FSc及びSSc)におけるそれらの形状分布を決定した(図15)。60秒と同程度の時間の処理は、細胞形状における有意な変化を引き起こすために十分であり、そしてそれは、速やかかつ活発な細胞骨格の再構築を示唆した。図16は、BSA又は4N1−1を用いて10分間インキュベーションした後における、個々のFSc及びSScにおけるBM−MNCの形状分布を示し、そしてそれは、当該群にわたる、BM−MNCの形状及び構造の全体的な均質化を明らかにした。
【0108】
実施例5
ペプチド4N1−1を用いた刺激後における、BM−MNCアポトーシスの調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、ペプチド4N1−1により引き起こされるアポトーシスの程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1(100μM)又は対照BSAを用いて前処理し、そして5日間培養し、又は4N1−1の継続的な存在下において5日間培養し、又はスタウロスポリンと共に6時間培養した(図13)。4N1−1及び4N1−2ペプチドは、BSAと比較して、培養5日後でさえアポトーシスを有意に刺激しなかった。
【0109】
発明者は、第二の方法を使用して、ペプチド4N1−1及び4N1−2で処理したBM−MNCにおけるアポトーシスの程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1及び4N1−2(50μM)で10又は120分間前処理し、そして、血清及び成長因子を用いた完全EBN2培地中で24時間まで培養し、潜在的なアポトーシス反応を進行させた(図29)。未処理の新鮮細胞を対照として用い、そして懸濁液中、6時間のスタウロスポリンによるアポトーシスの誘導が同様に観測された。培養後、付着及び非付着細胞を別々に採取し、そして分析した。ペプチド4N1−1及び4N1−2は、スタウロスポリン又は対照と比較して、付着細胞及び非付着細胞のいずれにおいても、120分のインキュベーション後においてさえ、アポトーシスを有意に刺激しなかった。BMC付着の最適刺激を誘導するCD47作動薬を用いた処理に関して、アポトーシスの誘導は見られなかった。対照的に、アポトーシス促進性のスタウロスポリンを用いたたった6時間の処理は、72.5%の細胞死の増加を誘導した(*p<0.05)。
【0110】
実施例6
BM−MNCの内皮細胞分化における、TSP1、並びにペプチド4N1−1、4N1−2及びCSVTCGの効果
TSP1及びペプチド4N1−1が、インビトロにおけるBM−MNC付着を刺激する先の観察の後、発明者は、処理されたBM−MNCの内皮細胞分化を測定した。BM−MNCを5日間培養し、その後2時間組み換え若しくは精製TSP1を用いて、又はペプチド4N1−1、4N1−2及びCSVTCG(TSP1配列由来のペプチド)を用いて2時間前処理した。EPC分化BM−MNCを、Dil−Ac−LDLの結合及びBS1レクチンの結合による二重標識化後に、蛍光顕微鏡により同定した。
【0111】
2時間の前処理後における内皮細胞分化を刺激する、組み換え及び精製TSP1並びに4N1−1の傾向が観察された(それぞれ、+28.0%;+28.9%;及び28.9% vs BSA;p<0.05)(図12)。
【0112】
実施例7
実験的血栓症の間における、TSP1によるBM−MNC動員の調節
発明者は、血管壁の血栓症部位におけるBM−MNCの動員、及びこの工程におけるTSP1の寄与を証明しようとした。この目的を達成するために、蛍光標識BM−MNCを、後方の眼窩洞経由で野生型マウス又はTSP1欠損マウスへ注射した。その後、FeCl3を用いて、野生型C57BL/6マウスの腸間膜静脈に損傷を誘導し、そして血液凝固が進行したときに、BM−MNC動員を局所的に観測した。腸間膜管をさらした麻酔マウスを、倒立型蛍光顕微鏡のレンズの下に置き、損傷部位の境界に位置合わせし、そしてリアルタイムで、血管壁とのBM−MNC相互作用を記録した。
【0113】
−ペプチド4N1−1を用いた前処理は、血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNC動員を刺激する。
図17に示されるように、血栓症に罹患した血管表面上へのBM−MNCの特異的動員を、FeCl3を接種したC57BL/6型マウスの腸間膜静脈において評価した。実験的血栓症は、血栓症前と同一の血管断片又は無傷の隣接断片のいずれかと比較して、血栓症に罹患した血管表面と相互作用し、そして当該血管表面に沿って回転するBM−MNCの増加率(毎分おきにおける新規相互作用の数)へ翻訳された。血栓症を罹患した表面へのBM−MNC動員は、2〜6分の間の血栓症後誘導においてピークに達し(+241.8%; vs 無傷;p<0.05)、12分の後に基準レベルへと減少した。
【0114】
血栓症を罹患した表面へのBM−MNC動員は、血栓症誘導後2〜6分間の間でピークに達し(+241.8%;vs無傷;p<0.05)、12分後に基準レベルへと減少した。対照BSAと比較した、損傷後の最初の10分の間における、BM−MNCと血栓症を罹患した血管表面との相互作用のタイプに対するペプチド4N1−1前処理の効果をさらに特徴付けした。その結果、ペプチド4N1−1は、血管内血栓部位において12倍以上、平均BM−MNC回転速度を強く減少させ(149.8〜12.8μm/秒;p<0.05)(図18)、そして安定的な付着の数を14倍以上、急激に増大させた(0.3〜4.3の安定的付着;p<0.05))(図19)。これは、4N1−1で処理したBM−MNCの、血栓症に罹患した血管表面と相互作用し、かつ安定的に結合する能力を増大させたことを示した。
【0115】
実施例8
ペプチド4N1−1を用いた細胞治療における、BM−MNCの血管新生促進機能の刺激
BM−MNCの血管新生促進機能におけるペプチド4N1−1の効果、及び細胞治療におけるそれらの有効性がその後、試験された。後肢虚血のマウスモデルが使用された。C57BL/6の右大腿動脈を結紮し、そして後方の眼窩洞を通じて、ペプチド4N1−1又は対照BSAで前処理されたBM−MNCの血管内投与で、血管新生を刺激した。無傷の左大腿動脈を対照として使用した。虚血性血管新生後を14日後に2つの手順で評価した:(i)後肢再灌流評価のための、足部皮膚血流のレーザー・ドップラー・イメージング(laser−doppler imaging)(図20)、及び(ii)血管新生スコアの決定のための機能的血管ネットワークのX線ミクロ血管造影(図21)。ペプチド4N1−1を用いたBM−MNCの前処理は、BSAを用いた場合と比較して、皮膚再灌流におけるそれらの効果を著しく刺激し(+30.20%、p<0.05)、そして灌流血管ネットワークのより多くの拡張をもたらした(+41.45%、p<0.05)。
【0116】
実施例9
TSP1の阻害の間におけるBM−MNC付着及び再動員の調節
−血小板脱顆粒化産物を用いたプレインキュベーション後におけるフィブリンゲル上へのBM−MNC付着におけるTSP1遺伝的欠損の効果:
BM−MNCを、野生型又はTSP1欠損血小板のいずれかから得られる血小板脱顆粒化産物(PDP)を用いて2時間前処理し(希釈係数1:10、EBM中)、そしてそれらのフィブリンゲルへの付着を30分後に測定した。野生型血小板から得られた血小板脱顆粒化産物(PDP−WT)を用いた前処理は、BSAの場合と比較して、著しくBM−MNC付着を刺激したが(+36.9%、p<0.05)、TSP1−/−の血小板から得られた血小板脱顆粒化産物(PDP−TSP1−/−)を用いた場合では、刺激しなかった(+10.4%、p=0.21 vs BSA;及びp<0.05 vs PDP−WT)(図24)。
【0117】
−血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNC動員における、TSP1遺伝的欠損の効果
血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNCの動員における、内因性TSP1の寄与を決定するために、野生型BM−MNC投与の後における野生型及びTSP1欠損SWISSマウスの腸間膜静脈を使用した。
【0118】
図25において示されるように、野生型マウスにおいて、発明者は、損傷部位において、血栓症誘導後1〜3分間の間において最大比率の動員を示す、循環性BM−MNCの特異的動員を観察し(最大+250.0%;p<0.05)、そして8分後に基準レベルへの減少を観察した。野生型と比較して、TSP1欠損マウスにおいて、この現象のほぼ全ての抑止が測定された。TSP1不在下におけるBM−MNC動員のこの下方制御は、1分間あたりの、損傷部位における細胞動員の最大比率における減少へと翻訳され(−71.0% vs 野生型マウス、p<0.05)、そして野生型マウスと比較して、動員期間の開始及び終了において少なくとも3分間の遅れに翻訳された。これは、例えば遺伝的欠失を通じたTSP1−CD47シグナルの排除又は除去が、前駆細胞の局所的付着及び生着を阻害し得ることを示唆している。
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、生着のための細胞を調製するための方法、及び再生細胞治療の範囲内における前記方法によって得られる傾向にある細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
最近10年間に渡る、胎児及び成人組織中における幹細胞のより優れた特徴の発見は、細胞治療のための開かれた新たな可能性を有する。これらの原始的な、又は完全に分化していない、高い自己再生能力を有する「前駆細胞」は、完全に分化した細胞を生じさせ得、又は患者へ一度投与された場合において、特異的に分化した表現型を獲得し得る。前駆細胞は、例えば、末梢血、骨髄及び脂肪組織、並びに他の特化した組織、例えば臍帯血を含む、胎児又は成人の組織から単離され得る。
【0003】
前駆細胞群の同定及び単離のための非常に洗練された方法は、臨床において展開されるべき幹細胞をベースとした治療の開発を強く促進している。さらに、ヒト胎児組織の使用に関する倫理的問題を回避する手段として、成人組織由来の前駆細胞の単離及び移植が好ましい。
【0004】
前駆細胞を用いた再生細胞治療は、例えば、罹病器官の機能を回復させるために、又は生理学的修復機構が損なわれているときに組織の復元が必要とされているような、器官が危険にさらされている疾患に特に関連があると思われる。
【0005】
従って、前駆細胞治療の適用の一つの有名な分野は、心疾患に関する。これらの場合において、主要な目的は、新規の血管樹の増殖又は出現を促進することによって、組織灌流を向上させること、或いは現存する血管の機能を改善することである。前駆細胞治療の適用の他の例はまた、血管再生、及び血管前駆体を用いた欠陥のある心臓組織の修復を含む。
【0006】
大部分の例において、対象となる前駆細胞は、全身循環へと送達される。したがって、現在の手法は、当該循環中におけるそれらの効果を直接的に及ぼす、移植細胞の能力に、又は標的組織に到達し、それらの中に結合し、そして先天性の及びあまり理解されていない機構を通じた、利益のある効果を起こさせる能力に大部分が依存している。
【0007】
治療効果を最大化するために、前駆細胞の局所的投与がまた、試みられた。より多くの比率の移植された前駆細胞が、組織中に生着し、そしてそれは利益のある効果の向上を提供するだろうと期待される。しかし、移植細胞は通常、局所的基質へ付着することができず、そして大部分が不可解のままであるが、アポトーシスを含むと思われる機構を通じて、速やかに受容組織から排除される。
【0008】
したがって、生着される細胞の付着能力の欠如、特に標的組織に特異的な付着能力の欠如は、標的組織への細胞生着を危うくし得、そして投与された細胞の著しい損失へとつながり得る(Aicher et al.(2003)Circulation 107:2134−9)。その結果、投与された細胞は、例えば先天的免疫応答経路を通じてイン・サイチュ(in situ)で破壊され、血流に入り、そして肝臓及び脾臓のような器官によって排除されるか、又は肺毛細血管中で捕捉されるかのいずれかであり得る。
【0009】
さらに、細胞治療は、標的組織への投与細胞の生着を超える、さらなる制限を受ける。生着された細胞は、標的組織の復元への関与について有効ではない可能性がある。特に、生着された細胞の不具合は、中期間および長期間の生存の減少によるものであり得、或いは、それらの特性の幾つかの喪失、例えばそれらの血管新生活性(angiogenic activity)及び/又は血管形成活性(vasculogenic)の喪失、例えば、増殖因子の減少、及びサイトカイン分泌、又は分化のための及び所望のフェノタイプを獲得するための能力の低下によるものであり得る。
【0010】
細胞治療に対する上で言及された障害に加えて、他の問題が、生着のための細胞が単離された個体を苦しめる病変から生じる。例えば、糖尿病患者、肥満患者、アテローム性動脈硬化患者、高血圧患者、又は喫煙患者由来の、循環する血管内皮前駆細胞(EPC)は、健常対象のものよりも付着性ではなく、このことは、これらの細胞の、欠陥のある血管新生及び血管形成特性をもたらすことが知られている(Werner and Nickenig(2006)Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.26:257−266;Werner and Nickenig(2006)J.Cell.Mol.Med.10:318−332;Callaghan et al.(2005).Antioxid.Redox Signal 7:1476−1482;Loomans et al.(2005)Antioxid.Redox Signal 7:1468−1475;Roberts et al.(2005)J.Cell.Mol.Med.9:583−591)。
【0011】
移植に先立って、EPC調製物を成長因子と共に処理することが、血管新生促進効果を向上させ得ることが以前に提案された。したがって、脂肪組織由来サイトカインであるレプチンは、ビトロネクチン(vitronectin)で被覆した培養プレートへの、及び成熟内皮細胞へのEPCの付着を著しく向上させ得ることが示された(Schroeter et al.(2006)114:121)。しかし、かかる処置は、インビボにおいては評価されなかった。
【0012】
したがって、生着されるべき細胞を調製するための既存の方法を改良することが、本発明の目的である。
【0013】
血液の凝固、及び特に動脈血栓症は、血小板凝集に関与する。凝集した血小板の必須の機能は、脱顆粒化し、そしてそれらの内容物を血流へ放出することである。血小板α顆粒は、トロンボスポンジン(Thrombospondin)−1(TSP1)を含み、そしてそれは、放出された血小板タンパク質の25%までを構成する。TSP1は、血小板−血小板、血小板−内皮細胞、及び血小板−細胞外マトリックスブリッジの形成に関与することによって、そして単球−マクロファージ、リンパ球、好中球、好塩基球、及び線維芽細胞にさえ関わる炎症反応にさらに関与することによって、血小板凝集の向上を促進する。
【0014】
TSP1は、トロンビンの活性化を後に行う、血小板が放出するタンパク質として最初は同定された。TSP1はまた、血管壁中において、機械的損傷後又は糖尿病の間は平滑筋細胞によって、及び血栓症の間、層流血流の摂動の後、又は連続的な低酸素症の後においては内皮細胞によって発現され得る。
【0015】
TSP1は、複数のドメインを有する、独特かつ複雑な構造を有し、そしてそれは、多くの特定の細胞外受容体を活性化する。したがって異なるドメインは、以下に詳述される通り、単一の細胞のタイプにおいて、時折明らかに逆のシグナル経路を誘導し得る。
【0016】
TSP1は、細胞表面において、スカベンジャー受容体CD36と主に相互作用し、同様に、インテグリン関連タンパク質(Integrin−Associated Protein)(CD47/IAP)及びインテグリンと相互作用する。
【0017】
TSP1は、典型的な内因性抗血管新生因子として主に知られている。TSP1は、腫瘍において抗血管新生機能を果たし、そしてそれらの進行を阻害する。TSP1はまた、再内皮化(re−endothelialisation)を阻害し、その後の血管障害及びインビボにおける網膜血管新生を阻害する。
【0018】
TSP1の抗血管新生効果は、少なくとも一つのそのタイプIドメイン、及びCD36受容体の活性化によって媒介される。実際TSP1は、そのタイプIドメインのCSVTCG配列を通じてCD36と結合する(Guo et al.,(1997)Cancer Res,57:1735−1742)。微小血管内皮細胞、及び腫瘍内皮細胞において、CD36と結合するTSP1は、カスパーゼの活性化、p38−MAPK、及びp59−Fynキナーゼのリン酸化を誘導し、それはアポトーシスをもたらす(Jimenez et al(2000)Nature Medicine 6:41−48)。TSP1はまた、線維芽細胞のアポトーシスを引き起こすことが知られており(Graf et al.(2002)Apoptosis 7:493−498)、どのようにしてTSP1が組織の修復及び血管新生を危険にさらすかに関するさらなる手がかりである。
【0019】
別の周知のTSP1受容体は、準偏在性(quasi−ubiquitous)インテグリン関連タンパク質(CD47/IAP)である。CD47/IAPへのTSP1の結合は、配列RFYVVMWK(4N1−1、配列番号3)を特に含む、TSP1のカルボキシ末端で起こる。
【0020】
4N1−1(Frazier(1993)J.Biol.Chem.268:8808−14)として知られるトロンボスポンジン−1のC末端ドメイン由来のペプチド、又はその誘導体である4N1Kは、CD47/IAPと、TSP1と同様の様式で結合し得る。CD47/IAP結合ドメインは、種とTSPアイソフォームとの間で高度に保存されている。
【0021】
TSP1及び4N1−1によるCD47の活性化は、成熟内皮細胞中のCAMファミリータンパク質の発現を誘導することが示された。したがってTSP1は、CAM発現血管内皮への、循環細胞、特にα4β1インテグリン発現炎症性細胞の動員を可能とする(Narizhneva et al.(2005;FASEB J.19:1158−60)。
【0022】
しかし、かかる機構は、循環する未分化前駆細胞について説明されていない。さらに、TSP1又は4N1−1によるCD47の活性化はまた、アポトーシス及び成熟内皮細胞の死滅を誘導する(Freyberg et al.(2000)Biochem Biophys Res Commun 271:584−588;Freyberg et al.(2001)Biochem Biophys Res Commun 286:141−149;Graf et al.(2003)Apoptosis 8:531−538)。したがって、CD47作動薬は、抗血管新生剤として知られ、そしてそれは、血管新生及び固形腫瘍の成長を防止するための新規潜在的手法において使用され得る(Manna et al.(2004)Cancer Res 64:1026−1036)。CD47の発現及び活性化はまた、インビボにおける血管新生モデルにおいて、血管新生及び内皮細胞の死滅を阻害することと関連している(Isenberg et al.(2007)Circ.Res.100:712−20)。
【0023】
TSP1が、細胞内骨格及び接着斑プラークの分解、増殖阻害、カスパーゼの活性化、及び最終的にアポトーシスへとつながることがさらに提案された。さらに、TSP1は、正常内皮細胞の機能及び生存の強力な促進剤である一酸化炭素(NO)シグナルを阻害する(Isenberg et al.(2006)J.Biol.Chem.281:26069−80;Isenberg et al.(2007)J.Biol.Chem.282:15404−15)。したがって、内皮細胞のアポトーシスは、TSP1の抗血管新生効果の主要な特徴であると思われる。
【0024】
さらに、TSP1は、糖尿病の骨髄由来の前駆細胞によって発現され得る(Li et al(2006)Circ Res 98:697−704)。この場合において、TSP1が成熟内皮細胞において抗血管新生を行う役割を維持しているとき、TSP1は、血管損傷後における前駆細胞の付着及び再内皮細胞化(re−endothelialization)への前駆細胞の貢献を阻害することが示された。
【0025】
したがって、先の研究の観点から、TSP1及びCD47作動薬は、細胞の付着を増大させることができず、したがって、血管形成促進(pro−angiogenic)療法又は血管新生を促進することができないと思われる。
【0026】
さらに、血小板凝集における既知の血栓形成促進性効果(Voit et al.(2003)FEBS Lett.544:240−5)にも関わらず、大量の4N1Kペプチドの全身注射が致死性のものではなく、そして全凝固パラメータを調節しない(Bonnefoy et al.(2006)Blood 107:955−64)点に注目することは特に興味深い。したがって、4N1−1、4N1K又は派生ペプチドは、健常対象において著しい毒性効果を有するとは思われない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の説明
本発明は、TSP1によって、又はRFYVVMWK(配列番号3)を含むTSP1誘導体によって処理された、分化時において内皮細胞を産生する可能性の高い細胞が、細胞外マトリックスへと付着し、そして内皮細胞へと分化する増大した能力を有し、そしてそれらが虚血組織において機能的な血管系を回復することを支援することが可能であるという、発明者による予想外の発見から特に生じている。
【0028】
したがって、本発明は、増大した付着性を有する前駆細胞を調製するインビトロでの方法であって、前駆細胞がCD47/IAP受容体の作動薬と接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法に関する。
【0029】
本発明はまた、増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法であって、前駆細胞がRFYVVMWK若しくはRFYVVMWK類縁体を含む、又はからなるポリペプチドと接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、BSA、又は組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン又はフィブリンゲル上における、30分間のPBMCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図2】図2は、増加する濃度の組み換えTSP1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン上における、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図3】図3は、PPP、組み換えTSP1、若しくはペプチド4N1−1の不在下、又は存在下における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、16時間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs ゼラチン+ビトロネクチン)。
【図4】図4は、BSA、又は組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1又は4N1−2を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン、又はフィブリンゲル上への、30分間のPBMCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図5】図5は、BSA、増加する濃度の組み換えTSP1、又は増加する濃度のペプチド4N1−1を用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着の比較試験を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図6】図6は、BM−MNCをペプチド4N1−1(50mM)で、0、1、5、10、30又は120分間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図7】図7は、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又は対照としてのBSAを用いて(左側のパネル;*p<0.05 vs BSA)、或いはGST結合組み換えドメインNH2であるヒトTSP1のタイプI、タイプII、若しくはタイプIII、又はGSTタグ単体(右側のパネル)を用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間のBM−MNCの付着を示す。
【図8】図8は、BSA、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1用いた2時間の前処理後における、ゼラチン−ビトロネクチン、又はフィブリンゲル上への、15分間のHUCB−EPCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図9】図9は、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、又はBSAを用いた2時間の前処理後における、IL1βで活性化されたマウス内皮単層上への、30分間のBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図10】図10は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた2時間の前処理後における、IL1βで活性化されたマウス内皮単層上への、30分間の、蛍光ラベルされたBM−MNC付着の顕微鏡写真を示す(倍率400倍)。
【図11】図11は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた30分間の刺激前及び刺激後における、BM−MNCの表面上でのインテグリンβ1、β2、β3及びαV、並びにPSGL1の発現を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図12】図12は、対照のBSA、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、4N1−2、又はCSVTCGを用いた2時間の前処理後、5日間培養されたBM−MNCの内皮細胞分化を示す(*p<0.05 vs BSA、又は対照)。
【図13】図13は、対照のBSA、組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、4N1−2、又はCSVTCGを用いて、培養前に2時間(左側のパネル)、或いは連続的に5日間(真ん中のパネル)、或いはスタウロスポリンと共に最終的に6時間(右側のパネル)処理した後、培地中で5日後におけるBM−MNCのアポトーシスを示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図14】図14は、画像解析により細胞面積を測定することによる、BSA、又はペプチド4N1−1(50μM)を用いて2時間前処理し、そして30分間付着させた後における、ゼラチン−ビトロネクチンマトリックス上へのBM−MNCの拡散を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図15】図15は、ペプチド4N1−1(50μM)を用いて0、10、若しくは60秒、又は10若しくは30分間前処理した後における、FACSの前方散乱光(FSc)及び側方散乱光(SSc)によって測定される、BM−MNC形状の速やかな変化を示す。データは、FSc及びSScの点の分布として示される。
【図16】図16は、ペプチド4N1−1(50μM)を用いて又は用いないで、60秒間前処理した後に、FACSの前方散乱光(FSc)及び側方散乱光(SSc)によって測定される、BM−MNC形状の速やかな変化を示す。データは、FSc及びSSc分布の個々のプロファイルとして示される。
【図17】図17は、生体顕微鏡検査によって観測される、FeCl3で誘導される血栓症前(−2〜0分)、及び血栓症後におけるC57BL/6野生型マウスの腸間膜静脈におけるBM−MNCの時間依存的動員(1分あたりの新しい細胞の相互作用、毎分)を示す(*p<0.05 vs t=0分)。
【図18】図18は、ペプチド4N1−1又はBSAで2時間前処理された後、C57BL/6マウスの腸間膜静脈において、血栓症に罹患した表面上におけるBM−MNCの回転速度(損傷後の最初の10分間における平均回転速度)を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図19】図19は、ペプチド4N1−1又はBSAで2時間前処理された後、C57BL/6マウスの腸間膜静脈における、血栓症に罹患した表面上へ安定して付着したBM−MNCの数(損傷後の最初の10分間における、累積した安定な付着)を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図20】図20は、BSA又はペプチド4N1−1で2時間前処理されたBM−MNCの結紮及び注射から14日経過後における、虚血性後肢皮膚血流量を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図21】図21は、BSA又はペプチド4N1−1で2時間前処理されたBM−MNCの結紮及び注射から14日経過後における、微小血管造影スコアを示す(*p<0.05 vs BSA)。灌流される血管ネットワークは、X線画像解析を通じて定量化される。
【図22】図22は、ペプチド4N1−1又は対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、野生型又はOb/Obレプチン欠損肥満マウスから得られたBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA;**p<0.05野生型 vs Ob/Ob)。
【図23】図23は、ペプチド4N1−1又は対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、非糖尿病の野生型マウス、又はストレプトゾトシンで処置された糖尿病の野生型マウスから得られたBM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA対照;**p<0.05非糖尿病 vs 糖尿病)。
【図24】図24は、BSA、又は、野生型若しくはTSP1−/−SWISSマウスから得られた血小板脱顆粒化産物(PDP)を用いて2時間前処理した後、フィブリンゲル上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図25】図25は、生体顕微鏡検査によって観測される、FeCl3で誘導される血栓症前(−2〜0分)、及び血栓症後における、野生型、又はTSP1−/−SWISSマウスの腸間膜静脈における野生型BM−MNCの時間依存的動員(1分あたりの新しい細胞の相互作用、毎分)を示す(*p<0.05 vs 野生型)。
【図26】図26は、ペプチド4N1−1、4NGG、4N1−2、7N3、7NGG、若しくは組み換えTSP1、又は対照としてのBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図27】図27は、組み換えTSP1、SDF1、EphB2−Fc、VEGF−豊富培地EBM2、又は組み換えマウスレプチン、対照としてBSAを用いて2時間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、30分間の、BM−MNCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図28】図28は、対照BSA、マウスモノクローナル抗ヒトCD47IgG1クローンB6H12、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1を用いて30分間前処理した後における、ゼラチン−ビトロネクチン上への、15分間の、HUCB−EPCの付着を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【図29】図29は、スタウロスポリンの存在下における0時間(対照)又は6時間後の懸濁液における、又はペプチド4N1−1(斜線のバー)又は4N1−2(黒色のバー)を用いて、10及び120分間の前処理に引き続き、培地中24時間後の懸濁液におけるBM−MNCのアポトーシスを示す(*p<0.05 vs 対照)。
【図30】図30は、ペプチド4N1−1、又はBSAを用いた30分間の刺激前及び刺激後における、BM−MNCの表面上でのインテグリンβ1、β2、及びβ3、並びにαV、及びPSGL1の共発現を示す(*p<0.05 vs BSA)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において意図される、表現「増大した付着性」は、本発明の方法を用いて調製された前駆細胞が、未処理の前駆細胞よりも高い付着を示すことを意味する。より高い付着は、試験組織上における、又は試験基質上、例えばゼラチン/ビトロネクチン、又はフィブリンのゲル上における付着性前駆細胞の数を定量することによって決定され得る。
【0032】
調製された前駆細胞が、個体の標的組織中における生着を目的としていることが特に好ましい。したがって、本発明はまた、個体の標的組織中における生着のための前駆細胞を調製するための方法であって、生着されるべき前記前駆細胞が、生着に先立って、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され、又はRFYVVMWK若しくはRFYVVMWK類縁体を含む、又はからなるポリペプチドと接触される、前記方法に関する。
【0033】
本明細書において意図される、表現「生着」は、標的組織内への細胞の送達及び付着、又は取り込みに関する。
【0034】
本明細書において意図される、表現「標的組織」は、類似の又は異なる表現型を有し、全体的に一つの又は幾つかの特性を示し、その環境からそれを区別可能とする任意の細胞群に関する。本明細書において意図される標的組織は、多細胞生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒト中において見られ得る。好ましくは、当該組織は、非液体組織である。より好ましくは、当該組織は、心筋及び骨格筋、脳、膵臓、皮膚、腎臓、血管及び他の血管構造から構成される群から選択される。
【0035】
本明細書において意図される、表現「前駆細胞」は、一つ以上の細胞のタイプに分化する傾向にある、ディビジョン・コンピテント細胞(division−competent cell)である。好ましくは、前駆細胞は分化していない。前駆細胞は幹細胞を、特に成人の幹細胞及び胎児の幹細胞を含む。
【0036】
本明細書において意図される、表現「細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞」は、増大した付着性のような特性を示し、個体へ送達されたときに、その後に、標的組織中における成功した付着又は取り込みを一般的に示す、上で定義された前駆細胞に関する。
【0037】
本明細書において意図される、表現「細胞治療」は、欠如、障害又は疾患を処置するための、個体における生細胞の送達に関する。
【0038】
当業者にとって明らかなことであるが、調製されるべき前駆細胞が真核細胞であることが好ましい。より好ましくは、前駆細胞は、標的組織中において見られる細胞とタイプにおいて類似しており、又は分化時に、標的組織中において見られる細胞とタイプが類似の細胞を産生する傾向にある。特に、前駆細胞は、内皮細胞へと分化する傾向にあり、すなわち当該前駆細胞は内皮前駆細胞(EPC)である。
【0039】
好ましくは、前駆細胞は、脂肪組織、骨髄、肝臓、脾臓、及び血液から構成される群から選択される組織に由来する。当業者にとって明らかであろうことだが、前駆細胞は、精製された形態で、又は前駆細胞と同一の組織に特に由来し得る他の細胞を含む、精製されていない形態のいずれかで使用され得る。当該前駆細胞が骨髄に由来し、そして血管を修復することを特に目的とするとき、非分画の骨髄単核細胞(BM−MNC)は、前駆細胞の非精製形態として使用され得る。
【0040】
好ましくは、前駆細胞は、個体のものよりも同一種のものである。前駆細胞はまた、個体由来のものであることが特に好ましい。
【0041】
同様に好ましくは、上で定義された方法において使用される前駆細胞は、CD47/IAP受容体を発現する。
【0042】
本明細書において使用される、表現「CD47/IAP受容体を発現する」は、調製されるべき前駆細胞が、CD47/IAP受容体をコードするmRNA、若しくはそのRNA前駆体、及び/又はCD47/IAP受容体からなるタンパク質を含む。好ましくは、mRNAは、配列番号1の配列を含む。同様に好ましくは、CD47/IAP受容体は、配列番号2の配列からなる。mRNA、又はその前駆体の検出は、当業者に周知の種々の技術、例えばRT−PCRによって行われ得る。タンパク質の検出はまた、当業者に周知の種々の技術、例えば抗CD47/IAP抗体を使用する免疫検出によって行われ得る。
【0043】
本明細書において意図される、表現「CD47/IAP受容体の作動薬」は、TSP1タンパク質又はRFYVVMWKペプチド(配列番号3)の結合によって誘導される応答と事実上類似している、CD47/IAP受容体の応答を誘導する傾向にある任意の分子に関する。例として、Wang and Frazier(1998)Mol.Biol.Cell 9:865−874に記載されたように、CD47/IAPの作動薬は、血管平滑筋細胞におけるα2β1インテグリンの発現及び活性化を促進する傾向にある。
【0044】
例えば、CD47/IAP受容体の作動薬は、抗CD47作動薬抗体、例えばGresham et al.(1989)J.Cell.Biol.108:1935−1943;Wang and Frazier(1998)Mol Cell Biol 9:865−874;Ticchioni et al.FASEB J(2001)15:341−350;及びBarazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866によって記載されたB6H12抗体、Wilson et al.(1999)J Immunol.163:3621−3628によって記載されたCIKm1抗体、又はWang and Frazier(1998)Mol Cell Biol 9:865−874によって記載された1F7抗体であり得る。
【0045】
当該作動薬はまた、Jiang et al.(1999)J Biol Chem 274:559−562;Babic et al.(2000)J Immunol 164:3652−3658;Seiffert et al.(2001)Blood 97:2741−2749;及びLiu et al.(2006)J Mol Biol 365:680−693によって記載されたSIRPα1タンパク質であり得る。
【0046】
しかし、当該作動薬は、アミノ酸配列VVMを含むポリペプチドであることが好ましい。
【0047】
かかる作動薬は、当業者に周知である。
【0048】
特にそれらは、以下に記載されたような、CD47/IAP受容体結合ペプチドから選択される:
−Voit et al.(2003)FEBS Letters 544:240−245;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866(配列RFYVVMWKのペプチド4N1−1);
−Gao et al.(1996)J Cell Biol 135:533−544;Wang et al.(1999)J Cell Biol 147:389−399;Kanda et al.(1999)Exp Cell Res 252:262−272;Ticchioni et al.(2001)FASEB J 15:341−350;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866;及びLi et al.(2005)J Immunol 174:654−661(配列KRFYVVMWKK、配列番号4のペプチド4N1K);
−Wilson et al.(1999)J Immunol 163:3621−3628;Barazi et al.(2002)J Biol Chem 277:42859−42866;及びIsenberg et al(2006)J Biol Chem 281:26069−26080(配列FIRVVMYEGKK(配列番号9)のペプチド7N3);並びに
−米国特許第6,469,138号明細書(RFYVVMWKQVTQS(配列番号10);及びFIRVVMYEGKK(配列番号9))。
【0049】
好ましくは、当該作動薬は、RFYVVMWK(4N1−1、配列番号3)、例えばKRFYVVMWKK(4N1K、配列番号4)若しくはRFYVVMWKの誘導体を含む、又はからなるポリメプチドである。
【0050】
4N1−1は、ヒトTSP1の1034〜1041番のアミノ酸を特に表す。
【0051】
本明細書において意図される、RFYVVMWKの誘導体は、当該誘導体が、CD47/IAP受容体に対するRFYVVMWKと、本質的に同一の作動薬特性を示すという条件下において、少なくとも一つのアミノ酸の挿入、欠失又は挿入によって、及び/又は化学的処理によってRFYVVMWKから得られる任意のポリペプチドに関する。
【0052】
好ましくは、当該作動薬は、TSP1タンパク質の断片である。本明細書において意図されるTSP1タンパク質は、GenBank参照番号NP−003237及び配列番号5で特に表されるヒトTSP1タンパク質、GenBank参照番号AAA50611及び配列番号6で特に表されるマウスTSP1タンパク質、又はGenBank参照番号NP−0001013080及び配列番号7で特に表されるラットTSP1タンパク質であることが好ましい。最も好ましくは、TSP1タンパク質は、ヒトTSP1である。特に、当業者にとって明らかであろうことだが、RFYVVMWKを含むTSP1タンパク質の任意の断片は、本明細書において意図されるCD47/IAP受容体の作動薬と考えられ得る。
【0053】
好ましくは、当該作動薬がTSP1タンパク質の断片であるとき、それはタイプIリピート及びCD36作動薬ドメイン、例えば配列CSVTCG(配列番号8)のいずれも含まない。
【0054】
本明細書において意図されるRFYVVMWKペプチドの「類縁体」は、形状、電荷分布、及び親水性/疎水性分布において、ペプチドRFYVVMWKと類似している任意の分子に関する。
【0055】
上で定義された方法の別の有利な実施形態において、調製された前駆細胞は、標的組織中において成熟細胞へと分化する傾向にあり、そして前記方法に従って調製されなかった類似の細胞と比較して、調製された細胞の分化が加速される。
【0056】
上で定義された方法のさらなる実施形態において、当該細胞は、好ましくは10秒〜2時間、作動薬と接触される。
【0057】
別の実施形態において、上の方法は、例えばゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンのゲル上において、調製された細胞中の付着細胞をさらに選択するステップを含む。
【0058】
実際に、異なる細胞は、作動薬接触段階において異なるように応答し得、したがって、細胞を付着画分及び非付着画分へと分離し得、そして向上した付着能力を有する画分を使用することは、治療的細胞生着率を向上させるために有利である。
【0059】
本発明はまた、細胞生着を必要とする個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞の使用に関し、又は細胞生着を必要とする個体を処置するための方法であって、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された治療上有効な量の細胞が、前記個体へ投与される、前記方法に関する。それはまた、細胞生着を必要とする個体を治療するための、上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関する。
【0060】
本発明は、血管系の機能不全を患う個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された作動薬の少なくとも一つの使用にさらに関し、又は血管系の機能不全を患う個体を処置するための方法であって、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された少なくとも一つの作動薬の治療上有効な量が、前記個体へ投与される、前記方法に関する。それはまた、血管系の機能不全を患う個体を処置するための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、CD47/IAP受容体の上で定義された作動薬に関する。
【0061】
本発明はまた、血管系の機能不全を患う個体を処置することを目的とした医薬の製造のための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドの少なくとも一つの使用に関し、又は血管系の機能不全を患う個体を処置するための方法であって、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドの少なくとも一つの治療上有効な量が前記個体に投与される、前記方法に関する。それはまた、血管系の機能不全を患う個体を処置するための、好ましくは上で定義されたインビトロでの方法によって調製された細胞に関連する、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなる、上で定義されたポリペプチドに関する。
【0062】
本明細書において意図される個体は、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに関する。
【0063】
好ましくは、個体は、血管系の機能不全を患っている。より好ましくは、個体は、血管の再生又は新生を必要としている。最も好ましくは、個体は、アテローム性動脈硬化、糖尿病、肥満、心筋梗塞、コロナロパシー(coronaropathy)、糖尿病性網膜症、腎血管硬化症、脳虚血、血栓症、内皮機能不全、肺高血圧、外傷性皮膚創傷、潰瘍、及び熱傷から構成される群から選択される病変を患う。
【0064】
本発明はまた、上で定義された個体が、上で定義された細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞を用いた処置から利益を受けるか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、上で定義された前駆細胞、好ましくは細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞と同一タイプの前駆細胞が、上で定義されたCD47/IAP受容体の作動薬と、又は上で定義された、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなるポリペプチドと接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、患者は細胞治療において有効であることが知られている前記前駆細胞を用いた処置から利益を受ける可能性があると決定されること
を含む、前記方法に関する。
【0065】
本発明はまた、上で定義された個体が、上で定義された増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得るか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、上で定義された前駆細胞が、上で定義されたCD47/IAP受容体の作動薬と、又は上で定義された、RFYVVMWKを含む若しくはからなる、又はRFYVVMWK類縁体を含む若しくはからなるポリペプチドと接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、上で定義された増大した付着性を有する前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得る可能性があると決定されること
を含む、前記方法に関する。
【0066】
逆に、本発明は、野生型のTSP1発現をノックアウトしたマウスにおいて、分化時に内皮細胞を産生する傾向にある細胞において、血栓部位へと動員される能力が減少したことを示した。さらに、これらの動物から単離されたTSP1欠損血小板によって放出される血小板の脱顆粒化産物は、分化時に内皮細胞を産生する傾向にある細胞の、インビトロにおける固定化された細胞外マトリックスへの付着を刺激する能力の減少を示した。
【0067】
したがって、本発明は、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止するための方法であって、CD47/IAP受容体の少なくとも一つの拮抗薬の有効量が前記個体へ投与される、前記方法に関する。
【0068】
本発明はまた、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止することを目的とする医薬の製造のための、CD47/IAP受容体の少なくとも一つの拮抗薬の使用に関する。それはまた、細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における細胞付着又は細胞生着を防止するための、CD47/IAP受容体の拮抗薬に関する。
【0069】
本明細書において意図される、表現「CD47/IAP受容体の拮抗薬」は、CD47/IAP受容体の活性を阻害する、及び/又はCD47/IAP受容体を不活性化する傾向にある任意の化合物であって、しかし同様にTSP1の結合を阻害する傾向にある任意の化合物、そして同様にRFYVVMWK配列を含有する作動薬、又は任意のRFYVVMWK配列様作動薬の、それらの同種受容体、例えば、特にCD47/IAP受容体への結合を阻害する傾向にある任意の化合物に関する。
【0070】
好ましくは、病的過程は、糖尿病性網膜症及びアテローム性動脈硬化である。
【0071】
かかる使用又は方法は、特に細胞治療の範囲内において、非標的組織への及び/又は好ましくない部位における、投与された治療細胞の所望ではない付着又は生着を防止するために有用であり得る。この特定の場合において、CD47/IAP受容体拮抗薬は、前駆細胞の付着が防止され得る部位に、局所的に投与され得る。
【実施例】
【0072】
材料及び方法
試薬及び抗体
ヒト組み換えTSP1は、EMP−Genetechにより製造され、そしてヒト精製TSP1は、Dr.Arnaud Bonnefoy、Inserm Unit U553、Hopital St Louis(Paris)により調製された。合成ペプチド4N1−1(RFYVVMWK、配列番号3)及び4N1−2(RFYVVM、配列番号11)を、Bachem Ltdから得た。ペプチド7N3(FIRVVMYEGKK、配列番号9)、4NGGと呼ばれる変異した4N1−1(RFYGGMWK、配列番号:12)、及び7NGGと呼ばれる変異した7N3(FIRGGMYEGKK、配列番号:13)は、NeoMPS,Franceにより合成された。精製ヒトフィブロネクチン及びトロンビン、スタウロスポリン及びウシ血清アルブミン(BSA)をSigmaから得、フィブリノーゲンをAmerican Diagnosticaから得た。
【0073】
細胞表面受容体の蛍光ラベル化及び阻害のために、マウスモノクローナル抗ヒトCD47IgG1(クローンB6H12)、及びFITC結合抗マウスインテグリンβ1アルメニアン(harmenian)ハムスターIgGをSanta Cruzから購入した。B6H12と適合した対照アイソタイプマウスIgG1はChemiconより提供された。ビオチン結合抗マウスインテグリンβ2ラットIgG2akappa、フィコエリトリン結合抗マウスPSGL1ラットIgG1kappa、FITC結合アルメニアンハムスターIgG、ビオチン結合ラットIgG2a−kappa、フィコエリトリン結合ラットIgG1kappa、及びPer−CP結合ストレプトアビジンを、BD Pharmingenから購入した。フィコエリトリン結合抗マウスインテグリンβ3アルメニアンハムスターIgG、ビオチン結合抗マウスインテグリンαvラットIgG1kappa、フィコエリトリン結合アルメニアンハムスターIgG、及びビオチン結合ラットIgG1kappaは、eBiosciencesより提供された。分析を、Becton−DikinsonのCanto−II蛍光支援セルソーター(FACS)を用いて行った。
【0074】
組み換えヒトストローマ由来因子1α(SDF1)を、Calbiochemから購入し、組み換えキメラエフリン−B2-Fc(EphB2−Fc)を、R&D Systemsから得、そして組み換えヒトレプチンはBiovisionから提供された。
【0075】
動物
10週齢のC57Bl/6及びSwiss遺伝的背景を有する野性型雄マウス(Charles River)を使用した。雄TSP欠損SWISSマウスを、Dr.Arnaud Bonnefoy、Inserm Unit U553、Hopital St Louis(Paris,France)から得た。生体顕微鏡検査に関しては、マウスを4週齢で使用した。C57Bl6遺伝的背景を有する肥満Ob/Obレプチン欠損トランスジェニックマウスを、Harlan−Franceから得た。1型糖尿病(インスリン依存性)を雄C57Bl6マウスに、ストレプトゾトシン(streptozotocine)(膵臓のベータ細胞を破壊することが知られている)を毎日、1〜2週間、血糖が300mg/kgに達するまで注射することによって導入した。当該マウスはその後、糖尿病と見なされ、そして2か月間、標準食餌(standard chow diet)で飼育される。
【0076】
細胞培養
C57BL/6雄マウスの大腿骨及び上腕を注意深く切開し、骨髄を抽出及び解離し、そして骨髄単核細胞(BM−MNC)を、フィコール(Ficoll)勾配(Histopaque−1083,Sigma)での分画遠心法(2,000r.p.m、25分)によって分離した。BM−MNCをその後PBSで洗浄し、そしてペレット化した(pelleted)(2,000r.p.m、10分)。
【0077】
FACSアッセイに関して、新鮮細胞を、指示されたペプチド及び時間で処理し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定化し、そして細胞の大きさの分布を前方散乱光及び側方散乱光の分析によって決定するために、Beckman−Coulter Epics−XLセルソーターを用いて分析した。データは、点分布図として又は個々のFsc及びSscの分布特性としてのいずれか一方で示された。
【0078】
代わりに、BM−MNCを再懸濁し、そして内皮細胞基本成長培地(endothelial basal growth medium)(EBM;Clonetics)、又は血管内皮増殖因子−165(VEGF)及び線維芽細胞増殖因子−2(FGF2)を豊富に含み、そしてウシ胎仔血清(FCS、20%)をさらに添加したEBM2(Clonetics)で培養された。細胞をゼラチン(0.1%)−ビトロネクチン(0.5%μg/ml;Sigma)であらかじめ被膜したウェル中で培養した。ペプチド濃度及び時間の指示された条件で培養した後、個々の細胞が占める領域を決定するために、ImageJ画像解析ソフトウェアを用いて、当該細胞の範囲を定めることによって細胞拡散を測定した。50個超の細胞を3つの独立した細胞培養に関する3つのランダムに選択した領域において測定した(倍率400倍)。拡散を一細胞あたりの相対面積単位(relative area units)で表現した。
【0079】
マウスの循環血液を、後方の眼窩洞(retro−orbital sinus)における静脈穿刺を通じて得、そしてヘパリン(5UI/ml)を含有する抗凝結バッファーと混合した。循環末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配遠心分離(Histopaque−1083、Sigma)(2,000r.p.m、25分)を通じて精製した。そして血小板の混入を排除するために、細胞をPBS中で2度洗浄かつペレット化した(2,000r.p.m、5分)。
【0080】
SV40形質転換マウス骨髄内皮細胞(ATCCからのSVEC)を、24ウェルプラーク中、20%FCSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(DMEM)中で、それらが完全培養密度に達するまで(7日間)増殖させた。細胞−細胞付着実験に先立って、SVEC単層を、5nMマウスインターロイキン−1β(Calbiochem)で2時間活性化した。
【0081】
Hopital Lariboisiere and Inserm倫理ガイドラインに従って標準的な手順によって、ヒト臍帯血(30〜50ml)を、ヘパリン(15UI/ml、Sanofi)を含有する滅菌チューブ中に集めた。PBMCを、フィコール勾配遠心分離(Histopaque−1077、Dominique Dutscher)を通じて単離した。成熟内皮細胞を除去するために、単核細胞(6.106細胞/ml)を培養ディッシュ(100×20mm)中、37℃、5%CO2で16時間、播種した。付着細胞を除去した。非付着細胞を培養し、そして6ウェルプレート(107細胞/ウェル)において、L−グルタミン、HEPESバッファー(25mM;Eurobio)、抗生剤及び抗真菌剤(ペニシリン10000単位/ml、ストレプトマイシン10,000μg/ml、ファンギゾン(fungizone)25μg/ml)及び20%FCS(Dominique Dutscher)、並びに10ng/ml VEGF(R&D Systems)を備えたM199成長培地(Gibco)中のコラーゲンタイプ1マトリックス(Colli;90μg/ml、Sigma)上で、ヒト臍帯血由来内皮前駆細胞(HUCB−EPC)へと分化させた。
【0082】
細胞調製物の前処理
ゼラチン/ビトロネクチン、フィブリンゲル又は活性化SVEC単層上への細胞付着における、TSP1又はそのカルボキシ末端配列由来のペプチド、4N1−1、及び4N1-2の効果を評価するために、特定の長さの時間でのPBS洗浄及び培養以前に、2.106/ml BM−MNC若しくはPBMC、又は106/ml HUCB−EPCを、TSP1(50〜100μM)、又は4N1−1若しくは4N1−2ペプチド(100μM)、又は対照BSA(1%)の存在下、又はマウスモノクローナル抗ヒトCD47 IgG1 B6H12(40μg/ml)、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1(40μg/ml)の存在下、5%CO2下のインキュベーター中、37℃で2時間前処理した。付着実験に関して、上清を除去し、付着細胞をPBSにて軽く洗浄した。高倍率視野あたりの付着細胞の数を、倒立型位相コントラスト顕微鏡(inverted phase−contrast microscope)を高倍率(400倍)で使用して、1ウェルあたり3〜5つの領域で集計した。
【0083】
血小板の欠乏した血漿
マウスの循環血液を、後方眼窩洞の静脈穿刺(retro−orbital sinus puncture)を通じて得、そしてヘパリン(5UI/ml)を含有する抗凝結バッファーと混合し、そして赤血球及び白血球を除去するために、2000r.p.mで15分間遠心分離した。上清を回収し、そして血小板を除去するために、11,000r.p.mで5分間遠心分離した。この最後の上清は、血小板の欠乏した血漿(PPP)と見なされた。
【0084】
血小板脱顆粒化産物
ペントバルビタールナトリウム(Pentobarbital−Na)の過剰用量(Cerval、France)を通じた末端麻酔(terminal anesthesia)の後、マウス血液を、心臓内穿刺を通じて得た。血液をACD−Cバッファー(クエン酸130mM、クエン酸三ナトリウム(trisodic citrate)124mM、グルコース110mM)を用いて抗凝固され、そして自発的血小板活性化を防止するために、プロスタグランジンE1(PGE1 10〜8M)と共に、1時間、室温でインキュベートした。血液をその後、15分間、120gで、15℃にて遠心分離し、血小板に富んだ血漿(PRP)を回収した。PRPをその後、洗浄バッファー(NaCl 140mM、KCl 5mM、クエン酸三ナトリウム 12mM、グルコース 10mM、ショ糖 12.5mM、pH6.0)と混合し、そして15分間、1,200gで遠心分離した。血小板が反応バッファー(HEPES 10mM、NaCl 140mM、KCl 3mM、MgCl2 0.5mM、NaHCO3 5mM、グルコース 10mM、pH7.4)中にて再懸濁される前に、血小板のペレットを洗浄し、そして15分間、1,200gにて、再度ペレット化した。血小板を数え、当該懸濁液を600,000血小板/μlへと調整し、そして機能的凝集試験に先立ちPGE1を除去するために、室温で30分間放置した。
【0085】
血小板凝集を、Born(1962)による濁度法に従うChronolog血小板凝集計(Kordia、Holland)を用いて測定した。血小板懸濁液(400μl)を、37℃で5分間インキュベートし、そして攪拌しながら血小板凝集計へと入れた。0%の光透過を、血小板懸濁液を用いて較正し、100%透過をバッファー単体に合わせた。光透過の記録を、カルシウム及び他の作動薬、例えばトロンビン受容体活性化ペプチド−6(TRAP、100μM)及びアデノシン二リン酸(ADP 10μM)の添加後に開始した。5分間の凝集−脱顆粒の後、血小板を15秒間、パルス遠心分離(pulsed centrifugation)し、そして除去した。上清は、血小板脱顆粒化産物(PDP)を含有した。
【0086】
骨髄由来EPC標識化
BM−MNCを、EBM培地中、5日間、ゼラチン/ビトロネクチン上で培養した。非付着細胞を除去した後、2つの内皮細胞特性に関する二重標識化を通じてEPCを同定した:Dil標識化・アセチル化・低濃度リポタンパク質(Dil−Ac−LDL;1μg/ml、BioHarbor Products;赤色の蛍光)の結合、及びFITC標識されたBS1−レクチン(1μg/ml、Sigma;緑色の蛍光)の結合。二重蛍光により、1ウェルあたり3〜5つの領域中におけるEPCの顕微鏡による同定及び集計(倍率400倍)が可能となった。実験を、少なくとも3回繰り返し、そして結果をEPCのパーセンテージとして表現した。
【0087】
インテグリン及びPSGL1の、細胞表面の発現
細胞表面のタンパク質発現を決定するために、FITC結合抗インテグリンβ1、ビオチン結合抗インテグリンβ2、PE結合抗インテグリンβ3、ビオチン結合抗インテグリンαv、PE結合抗PSGL1抗体、又はそれらに適合した対照アイソタイプ(全て0.5mg/l)と共に、45分間、PBS−BSA2%中でインキュベーションする前に、BM−MNCを、PBS−BSA5%を用いて、30分間ブロッキングした。BM−MNCをペレット化し(5分、2,000r.p.m)、そしてPBS−BSA2%と共に再懸濁した。標識化された細胞のパーセンテージを、Canto−IIセルソーター(Becton−Dikinson)を用いたフローサイトメトリーにより決定した。非免疫アイソタイプ対照抗体標識細胞のパーセンテージは、補正された。
【0088】
核形態学の観察を通じたアポトーシスの評価
BM−MNCを、EBM中、TSP1、又は4N1−1及び4N1−2ペプチドの継続的な存在下で、或いは最後の24時間のみ処理されて、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で5日間増殖させた。スタウロスポリン(2μg/ml、6時間)を、アポトーシス誘導のための陽性対照として使用した。非付着細胞を除去し、そして付着細胞をPBS−PFA 4%で固定化し、その後、DNA塩基間における結合後に蛍光性となるDAPI(ジアミジノフェニルインドール、0.01mg/ml)を添加した。核形態学を、蛍光顕微鏡検査法によって分析し、そして断片化又はクロマチンの凝縮を示したアポトーシス核のパーセンテージを1ウェルあたり3〜5つの領域中において計算した(倍率400倍)。実験を少なくとも3回繰り返した。
【0089】
無傷DNA内容物の定量を通じたアポトーシス評価
BM−MNCを単離し、そして4N1−1ペプチドを用いて10又は120分間処理し、PBSで洗浄し、そしてEBM中、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で24時間まで培養した。未処理の新鮮細胞を、生細胞のための対照とした。アポトーシスの陽性対照として、懸濁液中の細胞をスタウロスポリン(2μg/ml、6時間)で処理した。処理及び培養後、非付着及び付着細胞を採取し、そして別々に分析し、氷冷した70%エタノールのPBS溶液で固定化し、そしてトリトン(Triton)X−100(0.05%)、ヨウ化プロピジウム(PI;50μg/ml)及びRNase−A(100μg/ml)を含むPBS中、45分間インキュベートした。PIは、DNA塩基間における結合の後に蛍光性となる。DNA内容物をその後、蛍光支援細胞ソーティング(FACS;Beckman−Coulter)によって分析し、そしてDNAの断片化、及び蛍光の減少を示したアポトーシス核のパーセンテージを測定した。実験を3回繰り返した。
【0090】
実験的血栓症におけるBM−MNCの時間依存的動員
発明者は、Kurz他(1990)Thromb Res 60:269−280による、動脈血栓症の実験モデルを適用し、そして塩化鉄(FeCl3)を化学誘導物質として使用した。野生型C57bl6、Swiss、又はTSP1欠損Swissマウスは、ペントバルビタールを用いた末端麻酔後に、及び追加の鎮痛剤としてキシロカイン5%を局所に皮膚へ塗布した後に、腹壁切開手術された。BM−MNCを、蛍光染料「Cell Tracker−Orange」(5μM;分子プローブ)、及び合成ペプチド4N1−1若しくは4N1−2(100μM)、又は対照BSA(1%)を用いて2時間前処理した。BM−MNCをPBSで洗浄し、そして後方の眼窩洞を通じた血液循環へと投与した(2.106細胞/100μl/動物)。腸間膜動脈−静脈対を切開し、そしてリアルタイム生体顕微鏡検査にさらした。調製された全マウスを、VHSレコーダーと接続されたアナログカメラ(analogic camera)(LHESA Electronicl、40イメージ/秒)を取り付けた、又はAct−1画像収集ソフトウェア(Nikon)とリンクした、高解像度ニューメリック(numeric)カメラ(DXM1200、Nikon)とつながった、落射蛍光顕微鏡(Ellipse TE300)の台に載せた。選択された小静脈の無傷血管壁上における基本的BM−MNC動員を2分間記録した。FeCl3(500mM)を含有する寒天ゲル(1%)片(1〜2mm3)をその後、局所的に適用して、拡散を通じた進行性の血管内血栓を誘導した。血栓症に罹患した血管表面上におけるBM−MNCの動員を、さらに15分間記録した。記録を分析し、そして新規BM−MNC/血管壁相互作用の数を毎分ごとに計算した。安定した付着(30秒超の間静止している付着細胞)を集計し、そして血栓症の誘導後、初めの10分間にわたって蓄積した。血管壁と相互作用するBM−MNCの平均回転速度を、較正されたスクリーン上における時間にわたる移動距離を測定し、そしてμm/秒へと変換することによって血栓症誘導後における最初の10分間にわたって、一細胞あたりで計算した。
【0091】
実験的な後肢虚血の間における、BM−MNCの血管新生促進効果
麻酔マウス(m=8〜10動物/群)は、右大腿深動脈の近位起始部(proximal origin)における動脈結紮を受け、後肢虚血を誘導された。全てのマウスの操作を、我々の団体の倫理規則及びガイドラインに従って行った。結紮されたマウスへ、上で示したように調製されたBM−MNCを注射した。虚血14日後、後肢における血管新生を、2つの独立した方法を使用して調べた:血管密度を、高解像度ミクロ血管造影を通じて評価した。麻酔動物へ、腹部大動脈中に挿入された、シリンジと連結されたカテーテルを通じて、較正されたポンプの制御下において、造影剤として硫酸バリウムを注射した。このシステムにより、一定の注入量の連続的なモニタリングを行うことができた。後肢血管系の画像を、X線ミクロ血管造影を介して得た。血管造影スコアは、血管で占められる画像画素を定量することによって決定され、そしてパーセンテージで表現された。皮膚血流量における変化を、画像分析ソフトウェアと接続されたLaser Dopplerにより分析した。証明変動及び室温は、虚血性の右肢において得られる値を、非虚血性の対照である左肢の値で割った割合として後肢灌流を表現することによって考慮された。
【0092】
統計分析
全ての実験を、少なくとも3回繰り返した。インビトロの実験に関して、統計分析を、StudentのT検定を用いて行った。血管新生の結果を、ANOVA検定を用いて分析し、そしてグループ間の比較(m=5〜10動物/グループ)を、Mann−Whitney検定を用いて行った。有意性は、p<0.05の時に得られた。
【0093】
実施例1
マウスBM−MNC、マウスPBMC、及びヒトHUCB−EPC付着における血小板タンパク質の効果
マウスBM−MNC及びHUCB−EPC付着を、インビトロで評価した。精製若しくは組み換え血小板タンパク質、又はCD47/IAP受容体のペプチド作動薬の効果を特徴付けした。主に2つの手法を使用した:
1.ゼラチン/ビトロネクチン対照マトリックス又はフィブリンゲル上における30分間の細胞付着を測定する以前における、血小板タンパク質と共にした、細胞の2時間のプレインキュベーション。
2.溶液中血小板タンパク質の存在下で、ゼラチン/ビトロネクチン対照マトリックス又はフィブリンゲル上における、16時間の細胞付着
【0094】
−ゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンゲル上へのBM−MNCの付着における、BM−MNCをTSP1又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
BM−MNCを、組み換え若しくは精製TSP1又はペプチド4N1−1で2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンマトリックス又はフィブリンゲルへのそれらの付着を30分間測定した。TSP1を用いた前処理、及び特に4N1−1ペプチドを用いた前処理は、BSAを用いた場合と比較して、ゼラチン/ビトロネクチンへの付着(それぞれ、+160.6%、p<0.05;及び+249.6%、p<0.05)及びフィブリンへの付着(それぞれ、+74.0%、p<0.05;及び+186.0%、p<0.05)を強く刺激した(図1)。BM−MNCを、組み換えTSP1を1〜40mg/mlの増大する濃度で2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。TSP1は、5μg/ml超から、ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNCの付着を有意に刺激した。BSAの場合と比較して、最大刺激は20μg/mlにおいて到達された(+179.3%、p<0.05)(図2)。4N1−1ペプチドを用いた刺激は、フィブリンゲル上へのものよりも、ゼラチン/ビトロネクチン上へのものの方が相対的により強力であり、そして100nMから用量依存的であった(図5)。100μMの4N1−1ペプチドは、TSP1の最も効果的な試験用量(100nM)よりも、約6倍効果的に付着を刺激した。BM−MNC付着の4N1−1ペプチド刺激が完了し、そしてたった5〜30分間のプレインキュベーションの後においてほぼ最大効果を生じた(図6)。細胞の付着能力の増大は、刺激開始後少なくとも2時間維持された。
【0095】
−ゼラチン/ビトロネクチン又はフィブリンゲル上へのPBMCの付着における、PBMCをTSP1又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
4N1−1ペプチドと共にするPBMCのプレインキュベーションは、BM−MNCにおける場合と同様の効果を誘導し、そしてゼラチン−ビトロネクチンへのそれらの付着を刺激し(+403.2%、p<0.05)、そしてフィブリンゲル上への付着をさらに刺激した(+1,107.8%、p<0.05)(図4)。
【0096】
−ゼラチン/ビトロネクチンへの16時間のBM−MNC付着に対する、溶液中のTSP1、4N1−1ペプチド及びPPPの効果:
付着を、位相差顕微鏡による直接的細胞集計を通じて定量する以前に、BM−MNCを16時間、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上で、PPP、組み換えTSP1(100μg/ml)、又はペプチド4N1−1(100μM)の存在下、インキュベートした。図3で報告されたように、TSP1は、ゼラチン/ビトロネクチン対照と比較して3倍超付着を刺激した(+206.8%、p<0.05)。合成ペプチド4N1−1はまた、2時間のプレインキュベーションを用いた場合よりもあまり有効ではないが、16時間かけて有意に付着を増大させた。
【0097】
−ゼラチン/ビトロネクチン上へのBM−MNCの付着における、BM−MNCをヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又はTSP1の種々の組み換えドメインと共にプレインキュベーションをしたことの効果:
BM−MNCを2時間、BSA(対照)、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチドCSVTCG、4N1−1、又はペプチドGST単体若しくはヒトTSP1の組み換えドメインNH2、I、II、及びIIIと連結したペプチドGSTで前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。図7で示されるように、ペプチド4N1−1は、BSAと比較して特に強くBM−MNCの付着を刺激した(+310.4%、p<0.05)。組み換え及び精製TSP1も、付着を有意に刺激した(それぞれ+65.6及び+143.8%、p<0.05)。それら各々の効果の間に有意差は存在しなかった(p=0.058)。試験された組み換えGST結合TSP1ドメインは、対照GST単体と比較して効果を有さなかった。一方、ペプチドCSVTCGを用いた付着はBSAの場合と比較して21%の阻害を示した(p<0.05)。
【0098】
代わりに、BM−MNCを2時間、BSA(対照)、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1、7N3、及び4N1−2,又は変異配列4NGG若しくは7NGGで前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチンへのそれらの付着を30分後に測定した。図26で示されるように、トロンボスポンジン−1のカルボキシ末端における2つのCD47活性化部位に相当する両方のペプチド(4N1−1及び7N3)は、BSAと比較してBM−MNC付着を有意に刺激した(p<0.05)。変異ペプチドを用いたBM−MNC付着の有意な調節は存在しなかった。
【0099】
比較の目的のために、BM−MNCを、BSA(対照)、ヒト組み換えTSP1、又は前駆細胞付着又は分化を調節することが知られている他の因子、例えば組み換えヒト間質由来因子1α(SDF1;100ng/ml)、組み換えキメラエフリン−B2−Fc(EphB2−Fc;3μg/ml)、VEGF−豊富培養培地EBM2(50%)、又は組み換えヒトレプチン(1及び100ng/ml)を用いて2時間前処理した。ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNC付着を、30分後に測定した。図27に示すように、EBM2培地及びレプチン(100ng/ml)は、BSAと比較して(p<0.05)、又はペプチド4N1−1で得られる刺激と比較して、BM−MNC付着において中等度の増加(2倍未満)を刺激した(図7)。SDF1又はEphB2−Fcを用いたBM−MNC付着の有意な調節はなかった。
【0100】
−ゼラチン/ビトロネクチン及びフィブリンゲル上へのHUCB−EPCの付着における、HUCB−EPCをヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1と共にプレインキュベーションをしたことの効果:
HUCB−EPCを、2時間、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1を用いて2時間前処理し、そしてゼラチン/ビトロネクチン及びフィブリンゲル上へのそれらの付着を15分後に測定した。図8に示されるように、組み換え若しくは精製TSP1、及びペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAと比較して、ゼラチン/ビトロネクチン上(それぞれ+106.3%;+52.5%;及び+58.5%、p<0.05)及びフィブリンゲル上(それぞれ+106.3%;+52.5%;及び+58.5%、p<0.05)の両方への付着を有意に刺激した。TSP1のタイプ又はペプチド4N1−1のいずれかを用いて得られる刺激範囲は、両タイプのマトリックスにおいて同等であった。
【0101】
PBS洗浄及び培養以前に、HUCB−EPCを、対照BSA(1%)の存在下、又はマウスモノクローナル抗ヒトCD47 IgG1 B6H12(40μg/ml)、又は適合された対照アイソタイプマウスIgG1(40μg/ml)の存在下、5%CO2下のインキュベーター中、37℃で2時間前処理した。図28で示されるように、B6H12を用いた前処理は、BSA又は対照マウスIgG1と比較して、ゼラチン/ビトロネクチン上への付着を有意に刺激した(それぞれ、+14.6%、又は+16.6%、p<0.05)。これは、抗CD47抗体が、作動薬として機能し得、そして作動薬ペプチドと同様の付着促進効果を示し得ることを示唆している。
【0102】
−内皮細胞単層上へのBM−MNCの付着における、ヒト組み換え若しくは精製TSP1、又はペプチド4N1−1と共にBM−MNCをプレインキュベーションしたことの効果:
BM−MNCを、組み換え若しくは精製ヒトTSP1(10μg/ml)を用いて、又はペプチド4N1−1(100μM)を用いて2時間前処理し、そして30分後に、インターロイキン−1βで前もって活性化されたマウス内皮細胞単層上へのそれらの付着を測定した。図9において示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAと比較して、付着を強力に刺激した(+359.5%、p<0.05)。組み換え及び精製TSP1はまた、有意な刺激を誘導した(それぞれ+34.2%及び+40.5%、p<0.05)。マウス内皮細胞単層へのBM−MNC付着に対する4N1−1の効果を、蛍光顕微鏡によって証明することができた(図10)。
【0103】
−ゼラチン/ビトロネクチンへのBM−MNCの付着における、TSP1、又はペプチド4N1−1と共にBM−MNCをプレインキュベーションしたことの効果:
トランスジェニック肥満マウス(Ob/Ob遺伝型、レプチン欠損)、及び糖尿病マウス(ストレプトゾトシン誘導1型糖尿病)から得たマウスBM−MNCの付着を、インビトロで評価した。30分間の、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックスへのBM−MNC付着の測定前に、BM−MNCを、対照BSA又は4N1−1と、2時間プレインキュベーションした。肥満Ob/Ob BM−MNCは、野生型対照と比較して、インビトロにおいて付着の減少を示し(−31%;p<0.05)(図22)、そしてそれはEPCの機能障害と整合がとれる。しかし付着は、4N1−1を用いた前処理によって、少なくとも野生型BM−MNCと同程度の強さで、著しく向上した(関連性BSA対照と比較して、それぞれ894.7%及び1,245.0%、p<0.05対対照)。ストレプトゾトシンで処理したマウスから得られた糖尿病BM−MNC(図23)は、非糖尿病細胞と比較して、有意ではなく、基本付着レベルが減少する傾向を示した(−19%;p>0.05)。しかし、糖尿病BM−MNCの付着は、4N1−1を用いた前処理によって著しく向上し、そして糖尿病細胞は、非糖尿病細胞よりも4N1−1対して有意により大きく応答した(それらの関連BSA対照と比較してそれぞれ270.3%対587.8%;p<0.05対対象、及び細胞タイプ間においてp<0.05)。
【0104】
実施例2
TSP1又はペプチド4N1−1及び4N1−2を用いた刺激の後、BM−MNCにおける細胞表面付着タンパク質の発現
発明者が、ペプチド4N1−1を用いた前処理後における増大したBM−MNC付着を観測した後、発明者は、当該ペプチドがそれらの表面における付着タンパク質の発現を調節するか否か決定することとした。したがってBM−MNCを、対照BSA又はペプチド4N1−1(50μM)を用いて30分間前処理し、そしてインテグリン及びPSGL1発現を分析した。免疫標識及びFACSにより分析した。図11に示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAの場合と比較して、インテグリンβ1発現(30.7%〜48.1%、p<0.05)、インテグリンαV発現(22.8%〜64.8%、p<0.05)、及びPSGL1(44.4%〜61.8%、p<0.05)を刺激した。さらに、4N1−1は、有意ではないものの(p=0.07)、インテグリンβ3発現を刺激する傾向を示したが(72.0%〜79.4%)、4N1−1は、これらの実験において、インテグリンβ2発現を調節することができなかった(p>0.5)。
【0105】
図30に示されるように、ペプチド4N1−1を用いた前処理は、BSAを用いた場合と比較して、インテグリンβ1及びβ2の同時共発現(29.8%〜54.4%、p<0.05)、インテグリンβ1及びβ3の同時共発現(22.4%〜53.1%、p<0.05)、インテグリンβ2及びβ3の同時共発現(67.4%〜75.6%、p<0.05)、又はインテグリンβ1及びβ2及びβ3の同時共発現(18.8%〜44.8%、p<0.05)、インテグリンαVとPSGL1の同時共発現(11.5%〜48.4%、p<0.05)を刺激した。したがって、4N1−1は、BM−MNC表面にある複数の付着受容体の同時発現を強く刺激した。
【0106】
実施例3
ペプチド4N1−1を用いた刺激後における、BM−MNC拡散の調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、インビトロにおける、ゼラチン/ビトロネクチンマトリックス上への細胞拡散の程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1(100μM)、又は対照BSAを用いて前処理し、そして30分間、付着のために放置した(図14)。4N1−1は、個々の細胞により占められる領域において、BSAの場合と比較して41%の細胞拡散増大を刺激した(p<0.05)。
【0107】
実施例4
ペプチド4N1−1を用いた刺激後におけるBM−MNCの形状の調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、ペプチド4N1−1により引き起こされた細胞形状変化を調べた。BM−MNCを、増加する時間で、4N1−1(50μM)を用いて前処理し、そして速やかにFACSによって分析して、セルソーターの前方散乱光及び側方散乱光チャンネル(FSc及びSSc)におけるそれらの形状分布を決定した(図15)。60秒と同程度の時間の処理は、細胞形状における有意な変化を引き起こすために十分であり、そしてそれは、速やかかつ活発な細胞骨格の再構築を示唆した。図16は、BSA又は4N1−1を用いて10分間インキュベーションした後における、個々のFSc及びSScにおけるBM−MNCの形状分布を示し、そしてそれは、当該群にわたる、BM−MNCの形状及び構造の全体的な均質化を明らかにした。
【0108】
実施例5
ペプチド4N1−1を用いた刺激後における、BM−MNCアポトーシスの調節
ペプチド4N1−1を用いた処理の後におけるBM−MNC付着の増大を観察した後、発明者は、ペプチド4N1−1により引き起こされるアポトーシスの程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1(100μM)又は対照BSAを用いて前処理し、そして5日間培養し、又は4N1−1の継続的な存在下において5日間培養し、又はスタウロスポリンと共に6時間培養した(図13)。4N1−1及び4N1−2ペプチドは、BSAと比較して、培養5日後でさえアポトーシスを有意に刺激しなかった。
【0109】
発明者は、第二の方法を使用して、ペプチド4N1−1及び4N1−2で処理したBM−MNCにおけるアポトーシスの程度を調べた。BM−MNCを、4N1−1及び4N1−2(50μM)で10又は120分間前処理し、そして、血清及び成長因子を用いた完全EBN2培地中で24時間まで培養し、潜在的なアポトーシス反応を進行させた(図29)。未処理の新鮮細胞を対照として用い、そして懸濁液中、6時間のスタウロスポリンによるアポトーシスの誘導が同様に観測された。培養後、付着及び非付着細胞を別々に採取し、そして分析した。ペプチド4N1−1及び4N1−2は、スタウロスポリン又は対照と比較して、付着細胞及び非付着細胞のいずれにおいても、120分のインキュベーション後においてさえ、アポトーシスを有意に刺激しなかった。BMC付着の最適刺激を誘導するCD47作動薬を用いた処理に関して、アポトーシスの誘導は見られなかった。対照的に、アポトーシス促進性のスタウロスポリンを用いたたった6時間の処理は、72.5%の細胞死の増加を誘導した(*p<0.05)。
【0110】
実施例6
BM−MNCの内皮細胞分化における、TSP1、並びにペプチド4N1−1、4N1−2及びCSVTCGの効果
TSP1及びペプチド4N1−1が、インビトロにおけるBM−MNC付着を刺激する先の観察の後、発明者は、処理されたBM−MNCの内皮細胞分化を測定した。BM−MNCを5日間培養し、その後2時間組み換え若しくは精製TSP1を用いて、又はペプチド4N1−1、4N1−2及びCSVTCG(TSP1配列由来のペプチド)を用いて2時間前処理した。EPC分化BM−MNCを、Dil−Ac−LDLの結合及びBS1レクチンの結合による二重標識化後に、蛍光顕微鏡により同定した。
【0111】
2時間の前処理後における内皮細胞分化を刺激する、組み換え及び精製TSP1並びに4N1−1の傾向が観察された(それぞれ、+28.0%;+28.9%;及び28.9% vs BSA;p<0.05)(図12)。
【0112】
実施例7
実験的血栓症の間における、TSP1によるBM−MNC動員の調節
発明者は、血管壁の血栓症部位におけるBM−MNCの動員、及びこの工程におけるTSP1の寄与を証明しようとした。この目的を達成するために、蛍光標識BM−MNCを、後方の眼窩洞経由で野生型マウス又はTSP1欠損マウスへ注射した。その後、FeCl3を用いて、野生型C57BL/6マウスの腸間膜静脈に損傷を誘導し、そして血液凝固が進行したときに、BM−MNC動員を局所的に観測した。腸間膜管をさらした麻酔マウスを、倒立型蛍光顕微鏡のレンズの下に置き、損傷部位の境界に位置合わせし、そしてリアルタイムで、血管壁とのBM−MNC相互作用を記録した。
【0113】
−ペプチド4N1−1を用いた前処理は、血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNC動員を刺激する。
図17に示されるように、血栓症に罹患した血管表面上へのBM−MNCの特異的動員を、FeCl3を接種したC57BL/6型マウスの腸間膜静脈において評価した。実験的血栓症は、血栓症前と同一の血管断片又は無傷の隣接断片のいずれかと比較して、血栓症に罹患した血管表面と相互作用し、そして当該血管表面に沿って回転するBM−MNCの増加率(毎分おきにおける新規相互作用の数)へ翻訳された。血栓症を罹患した表面へのBM−MNC動員は、2〜6分の間の血栓症後誘導においてピークに達し(+241.8%; vs 無傷;p<0.05)、12分の後に基準レベルへと減少した。
【0114】
血栓症を罹患した表面へのBM−MNC動員は、血栓症誘導後2〜6分間の間でピークに達し(+241.8%;vs無傷;p<0.05)、12分後に基準レベルへと減少した。対照BSAと比較した、損傷後の最初の10分の間における、BM−MNCと血栓症を罹患した血管表面との相互作用のタイプに対するペプチド4N1−1前処理の効果をさらに特徴付けした。その結果、ペプチド4N1−1は、血管内血栓部位において12倍以上、平均BM−MNC回転速度を強く減少させ(149.8〜12.8μm/秒;p<0.05)(図18)、そして安定的な付着の数を14倍以上、急激に増大させた(0.3〜4.3の安定的付着;p<0.05))(図19)。これは、4N1−1で処理したBM−MNCの、血栓症に罹患した血管表面と相互作用し、かつ安定的に結合する能力を増大させたことを示した。
【0115】
実施例8
ペプチド4N1−1を用いた細胞治療における、BM−MNCの血管新生促進機能の刺激
BM−MNCの血管新生促進機能におけるペプチド4N1−1の効果、及び細胞治療におけるそれらの有効性がその後、試験された。後肢虚血のマウスモデルが使用された。C57BL/6の右大腿動脈を結紮し、そして後方の眼窩洞を通じて、ペプチド4N1−1又は対照BSAで前処理されたBM−MNCの血管内投与で、血管新生を刺激した。無傷の左大腿動脈を対照として使用した。虚血性血管新生後を14日後に2つの手順で評価した:(i)後肢再灌流評価のための、足部皮膚血流のレーザー・ドップラー・イメージング(laser−doppler imaging)(図20)、及び(ii)血管新生スコアの決定のための機能的血管ネットワークのX線ミクロ血管造影(図21)。ペプチド4N1−1を用いたBM−MNCの前処理は、BSAを用いた場合と比較して、皮膚再灌流におけるそれらの効果を著しく刺激し(+30.20%、p<0.05)、そして灌流血管ネットワークのより多くの拡張をもたらした(+41.45%、p<0.05)。
【0116】
実施例9
TSP1の阻害の間におけるBM−MNC付着及び再動員の調節
−血小板脱顆粒化産物を用いたプレインキュベーション後におけるフィブリンゲル上へのBM−MNC付着におけるTSP1遺伝的欠損の効果:
BM−MNCを、野生型又はTSP1欠損血小板のいずれかから得られる血小板脱顆粒化産物(PDP)を用いて2時間前処理し(希釈係数1:10、EBM中)、そしてそれらのフィブリンゲルへの付着を30分後に測定した。野生型血小板から得られた血小板脱顆粒化産物(PDP−WT)を用いた前処理は、BSAの場合と比較して、著しくBM−MNC付着を刺激したが(+36.9%、p<0.05)、TSP1−/−の血小板から得られた血小板脱顆粒化産物(PDP−TSP1−/−)を用いた場合では、刺激しなかった(+10.4%、p=0.21 vs BSA;及びp<0.05 vs PDP−WT)(図24)。
【0117】
−血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNC動員における、TSP1遺伝的欠損の効果
血栓症に罹患した血管壁へのBM−MNCの動員における、内因性TSP1の寄与を決定するために、野生型BM−MNC投与の後における野生型及びTSP1欠損SWISSマウスの腸間膜静脈を使用した。
【0118】
図25において示されるように、野生型マウスにおいて、発明者は、損傷部位において、血栓症誘導後1〜3分間の間において最大比率の動員を示す、循環性BM−MNCの特異的動員を観察し(最大+250.0%;p<0.05)、そして8分後に基準レベルへの減少を観察した。野生型と比較して、TSP1欠損マウスにおいて、この現象のほぼ全ての抑止が測定された。TSP1不在下におけるBM−MNC動員のこの下方制御は、1分間あたりの、損傷部位における細胞動員の最大比率における減少へと翻訳され(−71.0% vs 野生型マウス、p<0.05)、そして野生型マウスと比較して、動員期間の開始及び終了において少なくとも3分間の遅れに翻訳された。これは、例えば遺伝的欠失を通じたTSP1−CD47シグナルの排除又は除去が、前駆細胞の局所的付着及び生着を阻害し得ることを示唆している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増大した付着性を有する前駆細胞を調製するインビトロでの方法であって、前駆細胞がCD47/IAP受容体の作動薬と接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法。
【請求項2】
前記調製された前駆細胞が、個体の標的組織中の付着を目的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調製された前駆細胞が、前記標的組織中の成熟細胞へと分化する傾向にあり、そして前記調製された細胞の分化が、前記方法に従って調製されなかった類似の細胞に対して加速される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆細胞が、前記個体に由来する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記作動薬が、配列VVMを含むポリペプチドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記作動薬が、配列RFYVVMWKを含む又はからなるポリペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作動薬がTSP1タンパク質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記作動薬が、抗CD47作動薬抗体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆細胞が、10秒〜2時間、前記作動薬と接触される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
付着細胞の選択のステップを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆細胞が、脂肪組織、骨髄、肝臓、及び血液から構成される群から選択される組織に由来する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆細胞が、内皮細胞へと分化する傾向にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆細胞が骨髄単核細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細胞生着を必要とする個体を処置するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載のインビトロでの方法によって調製された細胞。
【請求項15】
前記個体が、血管系の機能不全を患う、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記個体が、血管の再生又は新生を必要としている、請求項14又は15の細胞。
【請求項17】
前記個体が、アテローム性動脈硬化、糖尿病、肥満、心筋梗塞、コロナロパシー(coronaropathy)、糖尿病性網膜症、腎血管硬化症、脳虚血、血栓症、内皮機能不全、肺高血圧、外傷性皮膚創傷、潰瘍、及び熱傷から構成される群から選択される病変を患う、請求項14〜16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
個体が、細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞を用いた処置から利益を受けるか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、前駆細胞、好ましくは細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞と同一タイプの前駆細胞が、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、前記患者は細胞治療において有効であることが知られている前記前駆細胞を用いた処置から利益を受ける可能性があると決定されること
を含む、前記方法。
【請求項19】
個体が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の、インビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得るか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された前駆細胞が、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、請求項1〜13のいずれか一項に記載の、前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得る可能性があると決定されること
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記個体が、請求項16又は17に定められた通りである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD47/IAP受容体の作動薬が、請求項5〜8のいずれか一項において定められた通りである、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
血管系の機能不全を患う個体を処置するためのCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項23】
前記個体が、請求項16又は17に定められた通りである、請求項22に記載のCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項24】
前記CD47/IAP受容体の作動薬が、請求項5〜8のいずれか一項において定められた通りである、請求項22又は23に記載のCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項25】
細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における、細胞付着又は細胞生着を防止するための、CD47/IAP受容体の拮抗薬。
【請求項26】
前記病的過程が、糖尿病性網膜症及びアテローム性動脈硬化である、請求項25に記載のCD47/IAP受容体の拮抗薬。
【請求項1】
増大した付着性を有する前駆細胞を調製するインビトロでの方法であって、前駆細胞がCD47/IAP受容体の作動薬と接触され、それにより増大した付着性を示す前駆細胞を産生する、前記方法。
【請求項2】
前記調製された前駆細胞が、個体の標的組織中の付着を目的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調製された前駆細胞が、前記標的組織中の成熟細胞へと分化する傾向にあり、そして前記調製された細胞の分化が、前記方法に従って調製されなかった類似の細胞に対して加速される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆細胞が、前記個体に由来する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記作動薬が、配列VVMを含むポリペプチドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記作動薬が、配列RFYVVMWKを含む又はからなるポリペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作動薬がTSP1タンパク質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記作動薬が、抗CD47作動薬抗体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆細胞が、10秒〜2時間、前記作動薬と接触される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
付着細胞の選択のステップを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆細胞が、脂肪組織、骨髄、肝臓、及び血液から構成される群から選択される組織に由来する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆細胞が、内皮細胞へと分化する傾向にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆細胞が骨髄単核細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細胞生着を必要とする個体を処置するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載のインビトロでの方法によって調製された細胞。
【請求項15】
前記個体が、血管系の機能不全を患う、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記個体が、血管の再生又は新生を必要としている、請求項14又は15の細胞。
【請求項17】
前記個体が、アテローム性動脈硬化、糖尿病、肥満、心筋梗塞、コロナロパシー(coronaropathy)、糖尿病性網膜症、腎血管硬化症、脳虚血、血栓症、内皮機能不全、肺高血圧、外傷性皮膚創傷、潰瘍、及び熱傷から構成される群から選択される病変を患う、請求項14〜16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
個体が、細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞を用いた処置から利益を受けるか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された、前駆細胞、好ましくは細胞治療において有効であることが知られている前駆細胞と同一タイプの前駆細胞が、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、前記患者は細胞治療において有効であることが知られている前記前駆細胞を用いた処置から利益を受ける可能性があると決定されること
を含む、前記方法。
【請求項19】
個体が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の、インビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得るか否かを決定するためのインビトロでの方法であって、以下のステップ:
(i)前記個体から採取された前駆細胞が、CD47/IAP受容体の作動薬と接触され;
(ii)前記接触された前駆細胞の付着性が評価され;
それにより、前記前駆細胞が増大した付着性を示す場合には、請求項1〜13のいずれか一項に記載の、前駆細胞を調製するためのインビトロでの方法によって調製された細胞を用いた処置から利益を得る可能性があると決定されること
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記個体が、請求項16又は17に定められた通りである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD47/IAP受容体の作動薬が、請求項5〜8のいずれか一項において定められた通りである、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
血管系の機能不全を患う個体を処置するためのCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項23】
前記個体が、請求項16又は17に定められた通りである、請求項22に記載のCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項24】
前記CD47/IAP受容体の作動薬が、請求項5〜8のいずれか一項において定められた通りである、請求項22又は23に記載のCD47/IAP受容体の作動薬。
【請求項25】
細胞付着又は細胞生着を示唆する病的過程を示す個体における、細胞付着又は細胞生着を防止するための、CD47/IAP受容体の拮抗薬。
【請求項26】
前記病的過程が、糖尿病性網膜症及びアテローム性動脈硬化である、請求項25に記載のCD47/IAP受容体の拮抗薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2010−536331(P2010−536331A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520588(P2010−520588)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060714
【国際公開番号】WO2009/024538
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060714
【国際公開番号】WO2009/024538
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】
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