説明

産品情報表示体および産品真偽判別方法

産品情報の信憑性を高め、産品の信頼性や安全性を十分に確保することが可能であるとともに、コストが低く、経済的な産品情報表示体Aを提供する。表示体Aは、産品に付され、該産品に関する情報が可視的情報表示Cとして付与されているとともに、不可視的情報識別手段Dが付与されている。不可視的情報識別手段Dは、特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種若しくは二種以上の元素、あるいは二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質である情報提示物質からなり、該情報提示物質に前記可視的情報表示が表示する産品情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、生鮮食品、加工食品、あるいは工業製品などの産品に付され、その産品に関する情報が可視的情報表示として付与されたラベル、包装袋、包装箱、包装帯、あるいはタグなどの産品情報表示体に関する。
【背景技術】
従来、生鮮食品、加工食品、あるいは工業製品などの種々の産品において、その生産主、生産時期、あるいは生産地などの産品に関する情報(以下、産品情報という)が表示されたラベル、包装袋、包装箱、包装帯、あるいはタグなどの表示体が付されていた。これにより、消費者、小売業者、あるいは卸売り業者などは、表示体に表示された産品情報を見ることによって、その産品が、誰により、いつ、どこで生産されたものであるかなどを認識することができる。
ところが、近年、生産段階、流通段階、あるいは小売り段階において、初めから偽りの産品情報が表示された表示体を産品に付したり、あるいは真正な産品情報が表示された表示体を偽りの産品情報が表示された表示体に付け替えたりするなどして、産品を偽装することが多発している。このため、産品情報の信憑性が低くなり、産品の信頼性や安全性が確保できないという問題があった。
そこで、産品情報の信憑性を高めるために、その産品情報のうちの一ないし複数の情報が記録された不可視的情報識別手段を表示体に付与することが考えられている。この不可視的情報識別手段として、例えば、産品情報を磁気記録する磁気記録チップや、産品情報を記録するICチップなどが知られている。これによれば、不可視的情報識別手段に記録されている産品情報を読み取り、その読み取った産品情報と表示体に可視的に表示されている産品情報とを照合することにより、産品情報の真偽を判別することができる。
しかしながら、磁気記録チップやICチップ等は、いずれも記録された産品情報が簡単に解析されてしまう上に、偽りの産品情報が簡単に記録されてしまい、産品情報の偽造や改竄が容易に行われる。このため、産品情報の信憑性を高めるには未だ至っておらず、産品の信頼性や安全性を十分に確保できていないという問題があった。また、磁気記録チップやICチップ等はコストが高く、特に生鮮食品などの低価格の産品に用いることは実質上困難であるという問題があった。
この発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、産品情報の信憑性を高め、産品の信頼性や安全性を十分に確保することが可能であるとともに、コストが低く経済的な産品情報表示体と、その産品情報表示体を用いてそれが付された産品の真偽を判別する産品真偽判別方法との提供を目的とする。
【発明の開示】
この発明は、産品に付され、該産品に関する情報が可視的情報表示として付与された産品情報表示体であって、該表示体に不可視的情報識別手段が付与されており、該不可視的情報識別手段は、特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種若しくは二種以上の元素、あるいは二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質である情報提示物質からなり、該情報提示物質に前記可視的情報表示が表示する産品に関する情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられていることを特徴とする。
なお、「産品」の語は、生鮮食品、加工食品、工業産品など、すべての産品を含む意味で用いられる。「産品に関する情報」の語は、産品の生産主、生産時期、生産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、農薬情報(散布時期、量、種類等)、加工条件(温度、時間等)、賞味期限、品質保持期限、成分、添加物、流通業者における仕入れ情報や在庫管理輸送履歴情報、輸入業者における輸送履歴情報、加工業者における原料・加工方法・ロット記号情報、販売業者における仕入れ情報や陳列情報など、すべての産品情報を含む意味で用いられる。また、「表示体」の語は、ラベル、包装袋、包装箱、包装帯、あるいはタグなど、産品情報を表示するすべてのものを含む意味で用いられる。
これによれば、表示体に対して特定の波長領域を照射し、その照射に伴って情報提示物質から放射された蛍光を検出し、その情報提示物質の検出結果に基づいて情報提示物質に関連付けられた産品情報を特定するので、第三者が不可視的情報識別手段に係る産品情報を解析することは困難である。しかも、仮に第三者が情報提示物質から放射された蛍光を検出しても、同じ蛍光を放射するような情報提示物質を含む表示体を製造するには特別の設備や技術を要するので、第三者が偽表示体を製造することは実質的に困難である。
従って、不可視的情報識別手段に係る産品情報の偽造や改竄が防止されるので、不可視的情報識別手段に係る産品情報は可視的情報表示として付与された産品情報を十分に担保することとなり、産品情報の信憑性が高まり、産品の信頼性や安全性を十分に確保することが可能となる。
また、このように情報提示物質からなる不可視的情報識別手段が付与された表示体は、磁気記録チップやICなどの従来の不可視的情報識別手段が付与された表示体に比べてコストを大幅に低減させることができ経済的である。このため、生鮮食品等の低価格の産品に当該表示体を利用することができ、消費者や取引者の生鮮食品等に対する信憑性が一層高まり、生鮮食品等の信頼性や安全性をより一層十分に確保することが可能となる。
また、前記情報提示物質は、特定の波長領域の電磁波の照射に対して線スペクトルを放射するものであるのが好ましい。
これによれば、線スペクトルは波長幅が非常に狭く、かつ蛍光強度が非常に高いため、情報提示物質の蛍光を精度良く検出することができる。
また、前記情報提示物質は、不完全3d殻を有する遷移元素、または/および不完全4f殻を有する遷移元素を含むものであるのが好ましい。
これによれば、情報提示物質は上述の線スペクトルを確実に放射するので、情報提示物質の蛍光をより一層精度良く検出することができる。
また、この発明は、産品に関する情報が可視的情報表示として付与されるとともに、該可視的情報表示が表示する産品に関する情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられた情報提示物質からなる不可視的情報識別手段が付与された産品情報表示体を用いて、該産品情報表示体が付された産品の真偽を判別する産品真偽判別方法であって、検出手段により前記産品情報表示体に対して所定の波長領域の電磁波を照射して、その電磁波の照射に伴って前記情報提示物質から放射される蛍光を検出し、情報提示物質の蛍光の検出結果に基づいて、情報提示物質に関連付けられた産品に関する情報を特定し、その特定した産品に関する情報と、前記産品情報表示体に可視的情報表示として付与された産品に関する情報とを照合することにより、産品情報表示体が付された産品の真偽を判別することを特徴とする。
これによれば、産品情報表示体が付された産品の真偽を簡単かつ確実に判別することができる。このため、例えば小売業者が産品を真偽判別した場合、小売業者は安心して卸売業者から産品を入荷することができるとともに、真正な産品を自信を持って消費者に提供することができる一方、消費者は安心して小売業者から産品を購入することができ、もって産品の流通の活性化を図ることが可能となる。
また、このような産品真偽判別方法においては、情報提示物質の蛍光の検出結果と情報提示物質に関連付ける産品に関する情報を、情報提示物質から蛍光を検出する現場から離れた場所に設置された所定のデータバンクで一元管理することが好ましい。
このようにすると、データバンクにおいて産品情報を一元管理して、第三者が不可視的情報識別手段に係る産品情報を解析することをより困難にし、産品情報の信憑性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
第1A図は、産品情報表示体が付された産品の例であり、キュウリの生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示および不可視情報表示としてラベルに付与された状態を示す斜視図である。
第1B図は、産品情報表示体が付された産品の例であり、ホウレン草の生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示および不可視情報表示として包装袋に付与された状態を示す斜視図である。
第1C図は、産品情報表示体が付された産品の例であり、キャベツの生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示および不可視情報表示として包装帯に付与された状態を示す斜視図である。
第2図は、情報提示物質の蛍光の検出結果の一例を示すスペクトル分析図である。
第3A図は、産品情報と情報提示物質に関する情報との対応関係の例であり、産品の種類が情報提示物質の種類に対応する場合を示す図である。
第3B図は、産品情報と情報提示物質に関する情報との対応関係の例であり、産品の生産主がある情報提示物質の含有量に対応する場合を示す図である。
第3C図は、産品情報と情報提示物質に関する情報との対応関係の例であり、産品に関する情報を示す数値データの各桁が情報提示物質の種類に対応し、かつ該数値データの各桁の数値が各情報提示物質の含有量に対応する場合を示す図である。
第3D図は、産品情報と情報提示物質に関する情報との対応関係の例であり、産品の生産主が情報提示物質(希土類元素含有化合物)の可視光スペクトルの時間減衰特性に対応する場合を示す図である。
第4図は、産品流通システムの全体構成を示す概略図である。
第5図は、第4図の読取装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
第6図は、第4図の産品流通システムの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
次にこの発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[産品情報表示体]
この産品情報表示体(A)は、産品(B)に付されるラベル、包装袋、包装箱、包装帯、あるいはタグなどであって、産品(B)に関する情報(以下、産品情報という)が可視的情報表示(C)として付与されるとともに、不可視的情報識別手段(D)が付与されている。
前記産品(B)は、農産物、食肉、あるいは魚介類などの生鮮食品や、缶詰、冷凍食品、あるいはレトルト食品などの加工食品や、家電製品、服飾品、装身具、鞄、靴、アクセサリー、時計、指輪、衣服、文房具、食器、インテリア製品などの工業製品をはじめとして、市場において流通するすべての産品をいう。
前記産品情報は、産品(B)に関する情報であればどのような情報であってもよい。たとえば、産品(B)の生産主、生産時期、生産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、農薬情報(散布時期、量、種類等)、加工条件(温度、時間等)、賞味期限、品質保持期限、成分、添加物などが挙げられる。また、前記産品情報は、産品(B)の流通段階で新たに発生する情報でもよく、流通業者における仕入れ情報や在庫管理履歴情報、輸送業者における輸送履歴情報、加工業者における原料・加工方法やロット記号情報、販売業者における仕入れ情報や陳列情報等も含まれる。
このような産品情報は、上述のように可視的情報表示(C)として表示体(A)に付与される。この可視的情報表示(C)の付与方法(表示方法)としては、産品情報を文字、絵記号、あるいはバーコードとして、表示体(A)に印刷する方法等を挙げることができる。
例えば、第1A図は、キュウリ(B)の生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示(C)としてラベル(A)に付与された状態を示している。また、第1B図は、ホウレン草(B)の生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示(C)として包装袋(A)に付与された状態を示している。あるいはまた、第1C図は、キャベツ(B)の生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報が可視的情報表示(C)として包装帯(A)に付与された状態を示している。
前記不可視的情報識別手段(D)は、特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種若しくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質である情報提示物質からなり、該情報提示物質に前記可視的情報表示(C)が表示する産品情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられている。
前記情報提示物質は、X線領域の蛍光を利用する場合は、表示体(A)に対して一般に含有されることのない一種若しくは二種以上の元素、あるいは二種以上の元素の化合物(酸化物、硫化物、有機錯体など)、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質が好ましい。
このように表示体(A)に対して一般に含有されることのない元素としては、原子番号31から原子番号88までの元素、好ましくはランタノイド系元素、さらに好ましくはネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)を一種または二種以上の組合せにおいて用いるのがよい。これらの元素は、各種プラスチック、塗料、インク、紙、繊維、あるいは金属中にほとんど含有されることがなく、またスペクトル分析による測定が容易であり、さらに経済的かつ衛生的で、酸化物等としての入手も容易である点で好ましい。
また、前記情報提示物質は、赤外光から紫外光までの蛍光を利用する場合は、波長幅の狭い線スペクトルの蛍光を呈する、一種若しくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物(酸化物、硫化物、有機錯体など)、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質が好ましい。
このような波長幅の狭い線スペクトルの蛍光を呈する物質としては、不完全3d殻を有する遷移元素、または/および不完全4f殻を有する遷移元素が添加された単結晶や、不完全3d殻を有する遷移元素、または/および不完全4f殻を有する遷移元素が添加されたガラスや、不完全3d殻を有する遷移元素、または/および不完全4f殻を有する遷移元素を中心とした錯体などが挙げられる。これら情報提示物質は、所定の波長領域の電磁波、好ましくは紫外線から赤外線までの波長領域の電磁波、さらに好ましくは可視光線から近赤外線までの波長領域の電磁波が照射されると、その電磁波の照射に伴って波長幅が非常に狭く、かつ蛍光強度が非常に高い線スペクトルを放射するため、該線スペクトルに基づいて情報提示物質を精度良く検出することができる。
また、前記情報提示物質は、ユーロピウム(Eu3+)を含む酸化イットリウム(Y)のように、所定の母体物質に対して遷移元素を付与したものであってもよい。この母体物質は、酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、ハロゲン化物、混晶、さらにはアモルファス物質、ガラスなども含まれる。例えば、遷移元素がキレート化合物のように化学結合の形で含まれているもの、結晶格子を構成する他の原子またはイオンを置換したもの、結晶格子の中に割り込んで含まれるもの、あるいはガラスの中の隙間に含まれるものなどが挙げられる。
また、前記情報提示物質は、その表面が重水素、有機物などの表面修飾材で修飾されたものや、母体材料以外の物質で周囲を被覆されたものであってもよい。これによれば、粒径や構造を固定化させることができ、かつ発光効率を向上させることができるとともに、特定の溶媒に解けやすくなり、周囲の物質とより馴染むことができる。
また、前記情報提示物質は、噴射、吹き付け、塗布、吸着、注入、充填、貼付、浸透、混合、添加、あるいは化学結合(重合、架橋、イオン結合等)により、表示体(A)の表面あるいは内部またはそれらの一部に付与される。
具体的には、例えば、表示体(A)がプラスチックの場合、ドラムタンブラー等によりドライブレンドした後に直接成形する方法や、エクストルーダーによりコンパウンド加工する方法や、インターナルミキサーあるいは加熱ロールによるコンパウンドあるいは成形を実施する方法などが挙げられる。また、マスターバッチ化した上での使用を実施してもよい。なお、表示体(A)に情報提示物質を設ける際、均一な分布と分散を確保するために、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩、あるいは脂肪酸エステルを滑剤として使用してもよい。
また、情報提示物質は、表示体(A)に直接付与してもよいし、あるいは可視的情報表示(C)のインクや塗料に予め含ませておいて、可視的情報表示(C)を表示体(A)に印字することにより表示体(A)に付与してもよい。
また、前記情報提示物質は、表示体(A)の外観や物性への影響を抑えるために、前記表示体(A)の固有の性質に影響を与えない微量の範囲で含有されるのが好ましい。
前記表示体(A)の固有の性質に影響を与えない微量の範囲としては、表示体(A)の種類などにより様々に変動し得るが、好ましくは表示体(A)に対して0.1ppmから1000ppmまでの範囲(0.1ppmおよび1000ppmを含む)、さらに好ましくは0.5ppmから200ppm(0.5ppmおよび200ppmを含む)までの範囲がよい。
このように0.1ppm以上とするのは、主として一般に現在の使用に供されている検出の精度との関係のためであり、1000ppm以下とするのは、多くの表示体(A)の外観や物性に影響を与えないためである。また、その範囲の中でも0.5ppmから200ppmとするのは、測定の信頼性を十分に確保しつつ、また経済的負担も低く抑え、さらに表示体(A)の固有の性質に与える影響も極めて低いものとなし得るためである。
また、前記情報提示物質は、上述のように可視的情報表示(C)が表示する産品情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられている。即ち、前記情報提示物質の種類、含有量、時間的減衰特性、作製履歴、あるいはそれらの組み合わせ等と、可視的情報表示(C)が表示する産品情報の一ないし複数の情報とが互いに対応しており、そのような情報提示物質が表示体(A)に含有されることによって、産品情報のうちの一ないし複数の情報が表示体(A)に不可視的に内有されることになる。
しかして、表示体(A)に特定の波長領域の電磁波を照射して、その電磁波の照射に伴って情報提示物質から放射される蛍光を検出し、その情報提示物質の蛍光の検出結果に基づいて情報提示物質の種類、含有量、時間的減衰特性、作成履歴等を特定すれば、それに対応する産品情報を特定することができる。なお、情報提示物質の蛍光の検出結果は、例えば第2図に示すように、横軸を情報提示物質等のエネルギー値(情報提示物質等の種類に対応)、かつ縦軸を情報提示物質の蛍光強度(情報提示物質の含有量に対応)としたスペクトル分析図などにより表される。
例えば、第3A図に示すように、産品情報が産品(B)の種類(a、b、c)であり、それら産品(B)の種類(a、b、c)が情報提示物質の種類(X、Y、Z)に対応する場合、情報提示物質の蛍光の検出結果に基づいて情報提示物質の種類X、Y、またはZが特定されれば、産品(B)の種類a、b、またはcを特定することができる。
また、第3B図に示すように、産品情報が産品(B)の生産主(L、M、N)であり、それら産品(B)の生産主(L、M、N)が情報提示物質の含有量(α、β、γ)に対応する場合、情報提示物質の蛍光の検出結果により前記ある情報提示物質の含有量α、β、またはγ程度が特定されれば、産品(B)の生産主L、M、またはNを特定することができる。
また、第3C図に示すように、産品情報が産品(B)に関する所定の情報を示す数値データであり、この数値データの各桁が情報提示物質の種類(X、Y、Z)に対応し、かつ数値データの各桁の数値が各情報提示物質の含有量に対応する場合、情報提示物質の蛍光の検出結果により情報提示物質の種類X、YおよびZの各含有量が特定されれば、産品情報としての数値データを特定することができる。これによれば、数値データがバーコード的な情報を有することなり、様々な産品情報を情報提示物質X、Y、Zを介して表示体(A)に付与することができる。なお、第3C図の例では、情報提示物質の含有量(ピーク値)を10倍して四捨五入したものを数値データとして用いている。
また、第3D図に示すように、産品情報が産品(B)の生産主(L、M、N)であり、それら産品(B)の生産主(L、M、N)が情報提示物質の時間減衰特性(1a、1b、1c)に対応する場合、情報提示物質の時間減衰特性1a、1b、または1cが特定されれば、産品(B)の生産主L、M、またはNを特定することができる。この情報提示物質の時間減衰特性とは、横軸を時間とした場合における情報提示物質(希土類元素含有化合物)の可視光線スペクトルにおける蛍光強度の減衰についての特性のことをいう。第3D図では3種類の情報提示物質の可視光線スペクトルにおける時間的減衰特性を図示している。
このように、表示体(A)に対して特定の波長領域を照射し、その照射に伴って情報提示物質から放射された蛍光を検出し、その情報提示物質の検出結果に基づいて情報提示物質に関連付けられた産品情報を特定するので、第三者が不可視的情報識別手段に係る産品情報を解析することは困難である。しかも、仮に第三者が情報提示物質から放射された蛍光を検出しても、同じ蛍光を放射するような情報提示物質を含む表示体を製造するには特別の設備や技術を要するので、第三者が偽表示体を製造することは実質的に困難である。
なお、上記の各例では、情報提示物質に関連付けられる情報は、可視的情報表示(C)の信頼性を担保できるように、可視的情報表示(C)にかかる産品情報と関連してさえいれば、可視的情報表示(C)には直接表示されていない情報であってもよい。
従って、不可視的情報識別手段(D)に係る産品情報の偽造や改竄が防止されるので、不可視的情報識別手段(D)に係る産品情報は可視的情報表示として付与された産品情報を十分に担保することとなり、産品情報の信憑性が高まり、産品の信頼性や安全性を十分に確保することが可能となる。
また、このように情報提示物質からなる不可視的情報識別手段(D)が付与された表示体は、磁気記録チップやICなどの従来の不可視的情報識別手段(D)が付与された表示体に比べてコストを大幅に低減させることができ経済的である。このため、生鮮食品などの低価格の産品に当該表示体を利用することができ、消費者や取引者の生鮮食品等に対する信憑性が一層高まり、生鮮食品等の信頼性や安全性をより一層十分に確保することが可能となる。
[産品流通システム]
次に、前記産品情報表示体(A)を用いた産品流通システムについて一例を説明する。
第4図は、前記産品流通システムの全体構成を示す概略図である。
第4図において、(1)は産品(B)を生産する生産者、(2)は前記生産者(1)からバラで入荷した産品(B)に包装等を行う出荷団体(個人であってもよい)、(3)は前記出荷団体(2)から入荷した前記産品(B)を卸売市場において競り落とす卸売業者、(4)は前記卸売業者(3)から前記産品(B)を入荷するスーパーストア等の小売業者、(5)は前記小売業者(4)から産品(B)を購入する消費者、(6)は表示体(A)を製造する表示体製造業者である。なお、(10)は、前記表示体(A)に不可視的状態に付与されている産品情報を読み取るための読取装置(10)であり、前記小売業者(4)の店舗または倉庫等に設置されている。
この読取装置(10)は、第5図に示すように、各部の制御や、各種画面の表示、データの授受等、種々の演算等を行う中央演算処理装置(CPU)を有する制御部(101)と、各種処理を実行するためのプログラムが格納されているROM(Read Only Memory)(102)と、前記制御部(101)が各種処理を実行するときに必要なデータやプログラムが適宜記憶されるRAM(Random Access Memory)(103)と、各種操作ボタン等からなる操作部(104)と、各種画面を表示する表示部(105)と、前記表示体(A)から情報提示物質の蛍光を検出する検出部(106)と、産品情報と情報提示物質に関する情報とが互いに対応するように設定された参照テーブルを記憶する記憶部(107)とを備えてなる。
前記検出部(106)は、発光部(106a)と受光部(106b)とを備えてなり、発光部(106a)から特定の波長領域の電磁波を発光することにより表示体(A)に対して電磁波を照射し、その電磁波の照射に伴って表示体(A)の情報提示物質から放射された蛍光を受光部(106b)により受光することにより情報提示物質の蛍光を検出する。
前記記憶部(107)は、上述のように産品情報と情報提示物質に関する情報とが互いに対応するように設定された参照テーブルを記憶するものである。この参照テーブルは、例えば第3A図〜第3D図に示すように、産品(B)の生産主、生産時期、生産地などの産品情報と、情報提示物質の含有量、スペクトルデータ、時間的減衰特性、作成履歴などの情報提示物質に関する情報とが互いに対応するように設定されている。
前記制御部(101)は、前記検出部(106)による情報提示物質の蛍光の検出結果に基づいて情報提示物質に関する情報を特定したあと、前記記憶部(107)の参照テーブルを記憶することにより該情報提示物質に関する情報に対応する産品情報を特定し、さらにその特定した産品情報を表示部(105)に表示せしめる機能を有する。なお、前記制御部(101)は、表示体(A)に情報提示物質が付与されていないなどの理由から、産品情報を特定できなかった場合は、その旨を表示部(105)に表示せしめる機能を有してもよい。
[産品流通システムの流れ]
次に前記産品流通システムの流れについて第6図に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明および図面では、「ステップ」を「S」と略記する。
まず、前記表示体製造業者(6)は、表示体(A)を製造するに際して、産品の生産主、生産時期、あるいは生産地等の産品情報を可視的情報表示(C)として表示体(A)に付与するとともに、その産品情報の一ないし複数の情報が関連付けられた情報提示物質を表示体(A)に含有させることによって、産品情報の一ないし複数の情報を表示体(A)に不可視的な状態で付与する(S1)。
前記生産者(1)は、自己が生産した産品を前記出荷団体(2)に出荷する(S2)。
前記出荷団体(2)は、前記生産者(1)から入荷した産品について、前記表示体製造業者(6)で製造された表示体(A)により包装等を行い、前記卸売市場に出荷する(S3)。
前記卸売業者(3)は、前記卸売市場において前記産品を競り落として、それをスーパーストア等の小売業者(4)に出荷する(S4)。
前記小売業者(4)は、前記卸売業者(3)から入荷した産品について、前記読取装置(10)を用いて産品の表示体(A)から不可視的状態の産品情報を読みとるとともに、表示体(A)に可視的情報表示(C)として表示されている産品情報を肉眼で読み取り、それら産品情報を互いに照合して、産品情報の真偽を判別する(S5)。
前記消費者(5)は、その産品情報の真偽が確認された産品を購入する(S6)。
このように、小売業者(4)が産品の真偽を簡単かつ確実に判別し得るので、小売業者は安心して卸売業者から産品を入荷することができるとともに、真正な産品を自信を持って消費者に提供することができる。また、消費者(5)は安心して小売業者から産品を購入することができ、もって産品の流通の活性化を図ることが可能となる。
なお、この産品流通システムでは、小売業者(4)のみが産品情報の真偽を判別するものとしたが、出荷団体(2)、卸売業者(3)、あるいは消費者(5)が産品情報の真偽を判別するものとしてもよい。特に消費者(5)が産品情報の真偽を判別する場合、読取装置は表示体(A)に対して特定の電磁波を照射するだけの小型のものであって、消費者(5)はその電磁波の照射に伴って表示体(A)の情報提示物質から放射される蛍光の色等から産品情報を把握するものが好ましい。
また、この産品流通システムでは、小売業者(4)が有する読取装置(10)が参照テーブルを記憶し、この読取装置(10)のみで表示体(A)から不可視的状態の産品情報を読みとることができるものとしたが、不可視的情報の読み取りと判別は、情報提示物質情報またはその蛍光スペクトル情報を現場で読み取るための複数の読取端末装置と、現場から離れた場所に設置され、該複数の読取端末装置とネットワークを介して接続されたサーバコンピュータ等からなるデータバンクとによって行ってもよい。この場合、データバンクは、読取端末装置が送信してきた情報提示物質情報または蛍光スペクトル情報を受信し、予め記憶している情報提示物質情報または蛍光スペクトル情報と産品情報とを関連付けた参照テーブルと、受信した情報提示物質情報または蛍光スペクトル情報を照合することによって、産品情報を特定し、前記読取端末装置にフィードバックする。そして、読取端末装置は、データバンクからフィードバックされた産品情報を表示する。このようにすると、多数の産品情報をデータバンクにおいて一元管理することができる。
また、前記産品流通システムは、出荷団体(2)、卸売業者(3)、および小売業者(4)を含むものとしたが、それらの団体または業者を含まないものとしてもよいし、あるいは産地仲買人、仲卸売業者、あるいは商社などのその他の業者を含むものとしてもよい。
また、可視的情報表示(C)で表示された産品情報の一ないし複数の情報が関連付けられた情報提示物質を表示体(A)に付与するものとしたが、さらにその他の情報が関連付けられた情報提示物質を表示体(A)に付与してもよい。これによれば、表示体(A)に可視的に表示されていない産品情報についても表示体(A)に不可視的に内有させることができる。
また、情報提示物質と産品情報との対応関係は所定期間ごとに更新していくものとしてもよい。これによれば、第三者による産品情報の偽造および改竄がより困難となり、産品情報の信憑性をより一層高めることができる。
また、一の産品(B)に対して一の表示体(A)を付するものとしたが、一の産品(B)に対して複数の表示体(A)を付してもよい。例えば、第2B図のホウレン草(B)において、一のホウレン草(B)に対して異なる産品情報が付与された包装袋とラベルを付すことが考えられる。具体的には、産品名「ホウレン草」等の固定化された産品情報を可視的および不可視的に付与した包装袋(A)でホウレン草(B)を包装するとともに、生産時期、賞味期限、品質保持期限等の所定期間ごとに変化する産品情報を可視的および不可視的に付与したラベルを包装袋(A)に貼り付ける。これによれば、所定期間ごとに変化する産品情報が付与されたラベルを、固定化された産品情報が付与された包装袋(A)とは別に製造することができるので、所定期間ごとに変化する産品情報を産品(B)に流通に応じてタイムリーに付与することができる。
また、上記産品流通システムでは表示体(A)には出荷段階で判明する産品情報を付与するようにしたが、産品(B)の流通の各段階において産品を取り扱う中間業者または団体がそれぞれ産品を取り扱う上で発生する新たな産品情報を、可視的情報表示(C)として表示体(A)に追加的に付与するようにしてもよい。この流通の各段階において発生する新たな産品情報としては、たとえば流通業者による仕入れ情報や在庫管理履歴情報、輸送業者による輸送履歴情報、加工業者による原料・加工方法・ロット記号情報、販売業者による仕入れ情報や陳列情報などを挙げることができる。表示体(A)に可視的情報表示(C)を追加する方法としては、この新たな産品情報を示す文字、絵記号、バーコード等を印刷表示する方法等を挙げることができる。
また、産品(B)の流通の各段階において発生する上述した新たな産品情報は、不可視的情報識別手段(D)として表示体(A)に追加的に付与するようにしてもよい。表示体(A)に不可視的情報識別手段(D)を追加する方法としては、新たな産品情報が関連付けられている情報提示物質を含ませたインク等を表示体(A)に塗布したり、そのようなインク等を任意の文字等として印字する方法や、情報提示物質が付与されたシールやワッペンを表示体(A)に貼り付ける方法等を挙げることができる。
また、産品(B)の流通の各段階において発生する上述した新たな産品情報は、既に表示体(A)に付与されている情報提示物質に、新たに関連付けることによって、表示体(A)に追加するようにしてもよい。この場合、情報提示物質とこれに関連付けられた産品情報とをサーバコンピュータ等からなるデータバンクが一元管理するシステム構成とし、流通業者等は追加する産品情報をデータバンクに送信して、データバンクにおいて、既に表示体(A)に付与されている情報提示物質の情報に当該新たな産品情報を関連付けるようにすることことができる。

【図2】


【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
産品に付され、該産品に関する情報が可視的情報表示として付与された産品情報表示体であって、
該表示体に不可視的情報識別手段が付与されており、
該不可視的情報識別手段は、特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種若しくは二種以上の元素、あるいは二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素若しくは化合物を含む物質である情報提示物質からなり、
該情報提示物質に前記可視的情報表示が表示する産品に関する情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられていることを特徴とする産品情報表示体。
【請求項2】
前記情報提示物質は、特定の波長領域の電磁波の照射に対して線スペクトルを放射するものである請求の範囲第1項に記載の産品情報表示体。
【請求項3】
前記情報提示物質は、不完全3d殻を有する遷移元素、または/および不完全4f殻を有する遷移元素を含むものである請求の範囲第1項または第2項に記載の産品情報表示体。
【請求項4】
産品に関する情報が可視的情報表示として付与されるとともに、該可視的情報表示が表示する産品に関する情報のうちの一ないし複数の情報が関連付けられた情報提示物質からなる不可視的情報識別手段が付与された産品情報表示体を用いて、該産品情報表示体が付された産品の真偽を判別する産品真偽判別方法であって、
検出手段により前記産品情報表示体に対して所定の波長領域の電磁波を照射して、その電磁波の照射に伴って前記情報提示物質から放射される蛍光を検出し、
情報提示物質の蛍光の検出結果に基づいて、情報提示物質に関連付けられた産品に関する情報を特定し、
その特定した産品に関する情報と、前記産品情報表示体に可視的情報表示として付与された産品に関する情報とを照合することにより、産品情報表示体が付された産品の真偽を判別することを特徴とする産品真偽判別方法。
【請求項5】
情報提示物質の蛍光の検出結果と情報提示物質に関連付ける産品に関する情報を、情報提示物質から蛍光を検出する現場から離れた場所に設置された所定のデータバンクで一元管理することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の産品真偽判別方法。

【国際公開番号】WO2004/027738
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537539(P2004−537539)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010827
【国際出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【出願人】(501120937)
【Fターム(参考)】