説明

産業機械用制御回路

【課題】 エネルギーロスが極端に少ない上に、必要な作業機には必要な流量を供給できるようにした産業機械用制御回路を提供する。
【解決手段】 パイロット通路12がパイロット圧制御手段14の設定圧制御部14a〜14cに連通したとき、パイロット圧制御手段14の設定圧を、流量設定弁13が第1切換位置である全開位置に切り換わるのに必要な圧力に設定し、パイロット通路12とパイロット圧制御手段14の設定圧制御部14a〜14cとの連通が遮断されたとき、パイロット圧制御手段14の設定圧を、流量設定弁13が第2切換位置である絞り位置に切り換わるのに必要な圧力に設定する構成にした点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフォークリフト等の産業機械に用いる産業機械用制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして特許文献1に記載された制御回路が従来から知られている。この従来の制御回路は、定吐出量形ポンプに優先弁を接続するとともに、この優先弁の制御流ポートをステアリング系回路に接続し、余剰流ポートを作業機系回路に接続している。
そして、定吐出量形ポンプから吐出された流量のうち、一定流量すなわち制御流量は上記制御流ポートを介してステアリング系回路に優先的に供給され、定吐出量形ポンプの吐出容量から上記制御流量を差し引いた余剰流量が、常に作業機系回路に供給される。
【0003】
上記のようにした作業機系回路には、複数の作業機系切換弁を設けるとともに、これら作業機系切換弁を中立位置に保っているとき、言い換えるとこれら切換弁に接続した作業機を作動させていないときには、上記余剰流量のすべてが、すべての作業機系切換弁の中立流路を経由してタンクに戻される。
【特許文献1】特開2000−007300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の制御回路では、作業機系回路に設けた作業機用切換弁のすべてを中立位置に保持しているときには、言い換えると、いずれの作業機も作動していないときには、上記余剰流量の全量がタンクに環流される。このタンクに環流される流量が多ければ多いほど、エネルギーロスが大きくなるという問題があった。
また、上記のようにエネルギーロスが発生すると、当然のこととして発熱量も大きくなるが、発熱量が大きくなればそれを冷却するための装置などが必要になるので、当該回路の製造コストが上昇するという問題もあった。
【0005】
さらに、上記従来の制御回路では、定吐出量形ポンプを使用しているので、例えば、作動させる作業機に応じて、その供給流量を調整することもできなかった。
この発明の目的は、エネルギーロスが極端に少ない上に、必要な作業機には必要な流量を供給できるようにした産業機械用制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、定吐出量形ポンプと、この定吐出量形ポンプに接続された優先弁と、この優先弁の制御流ポートに接続したステアリング系回路と、優先弁の余剰流ポートに接続するとともに複数の作業機系切換弁を設けた作業機系回路と、この作業機系回路であって複数の作業機系切換弁に対して上流となる位置に設けるとともにパイロット室の圧力に応じて第1切換位置である全開位置、第2切換位置である絞り位置あるいはノーマル位置であるドレン位置に切換可能にした流量設定弁と、この流量設定弁のパイロット室に連通するパイロット通路と、このパイロット通路に設けるとともにあらかじめ設定した流量を上記パイロット通路に供給するための流量制御弁と、これら流量制御弁の下流側に設けるとともに、設定圧制御部の圧力に応じて設定圧を高低2段階に制御可能にしたパイロット圧制御手段と、上記パイロット通路をパイロット圧制御手段の設定圧制御部に連通させたり、その連通を遮断したりするパイロット制御弁とを備え、パイロット通路がパイロット圧制御手段の設定圧制御部に連通したとき、パイロット圧制御手段の設定圧を、流量設定弁が第1切換位置である全開位置に切り換わるのに必要な圧力に設定し、パイロット通路とパイロット圧制御手段の設定圧制御部との連通が遮断されたとき、パイロット圧制御手段の設定圧を、流量設定弁が第2切換位置である絞り位置に切り換わるのに必要な圧力に設定する構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、作業機系回路に接続した作業機を作動していないとき、流量設定弁がドレン位置に切り換わるので、余剰流量は作業機系切換弁を経由することなく、直接タンクに戻されることになる。このように作業機系切換弁を経由しない分、エネルギーロスが少なくなるとともに、エネルギーロスが少ない分、発熱量も少なくなるので、冷却装置などが必要なくなり、当該回路の製造コストも下げることができる。
しかも、第1の発明によれば、特定の作業機に必要な流量を適切に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、フォークリフトにこの発明の産業機械用制御回路を用いたときの第1実施形態を示すもので、定吐出量形ポンプPを備えている。そして、この定吐出量形ポンプPには、供給通路1を接続するとともに、この供給通路1は優先弁2の流入ポート3に連通させている。このようにした優先弁2は、その制御流ポート4をステアリング系回路5に接続し、余剰流ポート6を作業機系回路7に接続している。
【0009】
そして、上記優先弁2はステアリング系回路5に制御流量Q1を優先的に供給し、この制御流量Q1以上の余剰流量Q2を作業機系回路7に供給するが、上記制御流量Q1は制御オリフィス8とスプリング9とによって決められる。すなわち、上記優先弁2は、その一方のパイロット室2aに制御オリフィス8の上流側の圧力を導き、他方のパイロット室2bに制御オリフィス8の下流側の圧力を導く構成にするとともに、上記他方のパイロット室2bにスプリング9を設けている。
【0010】
このようにした優先弁2は、制御オリフィス8前後の差圧が、スプリング9のバネ力に等しくなるように作動する。言い換えると、制御オリフィス8前後の差圧を一定に保って、ステアリング系回路5に供給される制御流量Q1を常に一定に保つようにしている。そして、上記制御流量Q1以上の余剰流量Q2が流入ポート3に流入したときには、その余剰流量Q2を余剰流ポート6から流出するものである。
なお、図中符号10,11はダンパーオリフィスである。
【0011】
また、優先弁2の上流側においてパイロット通路12を上記供給通路1から分岐させているが、このパイロット通路12には流量制御弁13を接続するとともに、この流量制御弁13の下流側に、この発明のパイロット圧制御手段としての減圧弁14を接続している。上記流量制御弁13は、供給通路1に供給された流量のうち、パイロット通路12にパイロット圧を発生させるために必要な最少流量を、パイロット流量Q3としてパイロット通路12に導くものである。そして、前記した定吐出量形ポンプPの最大吐出量は、上記制御流量Q1と、複数の作業機が必要とする合計流量である余剰流量Q2と、上記パイロット流量Q3とを合計した流量にしている。
【0012】
一方、上記減圧弁14は、その一方の側にスプリング14aを設けるとともに、このスプリング14aのバネ力を調整する制御ピストン14bをピストン室14cに設けている。そして、制御ピストン14bに圧力が作用したときには、上記スプリング14aがたわんでそのバネ力を大きくする。反対に、制御ピストン14bに圧力が作用していないときには、スプリング14aが伸びた状態を保ってそのバネ力を弱くする。
【0013】
また、上記バネ力が強ければ、減圧弁14の設定圧が高圧になり、バネ力が弱ければその設定圧が低圧になる。
なお、上記スプリング14a、ピストン14bおよびピストン室14cでこの発明の設定圧制御部を構成するものである。
【0014】
さらに、優先弁2の余剰流ポート6に接続した作業機系回路7には、リフトシリンダ15を制御する第1作業機系切換弁16と、チルトシリンダ17を制御する第2作業機系切換弁18と、図示していないアタッチメント用アクチュエータを制御する第3作業機系切換弁19とを備えている。これら第1,2,3作業機系切換弁16,18,19のそれぞれは、センターオープンタイプで、それらが図示の中立位置にあるとき、余剰流ポート6から流出した作動流体をタンクTに環流させる。
【0015】
上記第1作業機系切換弁16にはパイロットポート20を設けているが、このパイロットポート20は、当該切換弁16が中立位置およびリフトシリンダ15を下降させる下降位置にあるときタンクTに連通し、リフトシリンダ15を上昇させる上昇位置においてフルストロークしたとき、そのパイロットポート20を閉じる構成にしている。
そして、このパイロットポート20は、制御通路21を介して前記減圧弁14のピストン室14cに連通している。さらにこの制御通路21は、パイロット制御弁22に接続しているが、このパイロット制御弁22の構成は次の通りである。
【0016】
上記パイロット制御弁22は、パイロット通路12に連通する第1ポート22aと、上記制御通路21に連通する第2ポート22bと、第2作業機系切換弁18のパイロットポート23にパイロット通路24を介して連通する第3ポート22cとを備えている。そして、このパイロット制御弁22の両端にパイロット室22d,22eを設けるとともに、この両パイロット室22d,22eのそれぞれにはセンタリングスプリング25を設けている。
また、上記一方のパイロット室22dには上記した制御通路21の圧力が導かれ、他方のパイロット室22eには第2作業機系切換弁18に通じるパイロット通路24の圧力が導かれる構成にしている。
【0017】
上記のようにしたパイロット制御弁22は、そのセンタリングスプリング25の作用で図示のノーマル位置にあるとき、第1〜3ポート22a〜22cを開口させ、パイロット通路12と制御通路21およびパイロット通路12とパイロット通路24とを連通させる。また、一方のパイロット室22dの圧力作用で、パイロット制御弁22が図面右側位置に切り換わると、第1ポート22aと第2ポート22bとが開口して、パイロット通路12と制御通路21とを連通させるとともに、第3ポート22cを閉じてパイロット通路12と24との連通を遮断する。
【0018】
反対に、他方のパイロット室22eの圧力作用で、パイロット制御弁22が図面左側位置に切り換わると、第1ポート22aと第3ポート22cとが開口して、パイロット通路12と24とを連通させるとともに、第2ポート22bを閉じて、パイロット通路12と制御通路21との連通を遮断する。
【0019】
また、第2作業機系切換弁18のパイロットポート23は、その切換弁18が図示の中立位置にあるときに開口するとともに、それを第3作業機系切換弁19のパイロットポート26に連通させる。そして、第2作業機系切換弁18が図示の中立位置から左右いずれかの制御位置に切り換えられたとき、このパイロットポート23が閉じられる構成にしている。
【0020】
さらに、上記第3作業機系切換弁19のパイロットポート26も、その切換弁19が図示の中立位置にあるとき開口してこのポート26をタンクTに連通させる。そして、第3作業機系切換弁19が図示の中立位置から左右いずれかの制御位置に切り換えられたとき、このパイロットポート26が閉じられる構成にしている。
なお、図中符号27はメインリリーフ弁、28はステアリング系回路5のリリーフ弁である。
【0021】
また、上記優先弁2と第1作業機系切換弁16との間には、流量設定弁29を設けている。この流量設定弁29は、パイロット通路12に連通させたパイロット室29aを設けるとともに、このパイロット室29aとは反対側にはスプリング29bのバネ力を作用させている。なお、上記スプリング29bを設けた室はタンクに連通させている。
【0022】
上記のようにした流量設定弁29は、三位置に切換可能で、パイロット室29aにパイロット圧が作用していないときにスプリング29bのバネ力の作用で図示のノーマル位置すなわちドレン位置を保持する。このドレン位置において、その流入ポート29cが全開状態にあるタンクポート29dに連通し、第1,2,3作業機系切換弁16,18,19に連通する連通ポート29eを閉じる構成にしている。
【0023】
また、パイロット室29aに2段階のパイロット圧が作用することによって、流量設定弁29は、第1切換位置(a)と第2切換位置(b)とに切り換え可能にしているが、上記2段階のパイロット圧は、減圧弁14の高圧設定と低圧設定とに対応する。そして、パイロット室29aに減圧弁14の低圧設定に相当する圧力が作用すると、流量設定弁29は上記第2切換位置(b)に切り換わる。この第2切換位置(b)において、上記流入ポート29cと連通ポート29e、および流入ポート29cとタンクポート29dとが絞りを介して連通することになる。
【0024】
ただし、流入ポート29cとタンクポート29dとの連通過程における絞りよりも、流入ポート29cと連通ポート29eとの連通過程における絞りの方が、その開度が大きくなる構成にしている。したがって、優先弁2を通過した余剰流量Q2のうち、その一部が絞りを経由してタンクポート29dからタンクに戻されるが、余剰流量Q2から上記タンクへ環流する流量を差し引いた流量が連通ポート29eから流出する。
【0025】
また、パイロット室29aに減圧弁14の高圧設定に相当する圧力が作用すると、流量設定弁29は上記第1切換位置(a)に切り換わる。この第1切換位置(a)において、上記流入ポート29cと連通ポート29eとが全開状態で連通するとともに、流入ポート29cとタンクポート29dとの連通が遮断される。したがって、余剰流量Q2の全量が連通ポート29eから流出する。
つまり、この第1実施形態においては、流量設定弁29が第1切換位置(a)に切り換わるか、第2切換位置(b)に切り換わるかによって、連通ポート29eから流出する流量を2段階に制御できることになる。
【0026】
次に、この第1実施形態の作用を説明する。
今、作業機系回路7の第1,2,3作業機系切換弁16,18,19を中立位置に保って、リフトシリンダ15、チルトシリンダ17および図示していないアタッチメント用アクチュエータを作動していないときには、各切換弁16,18,19のパイロットポート20,23および26のそれぞれがタンクTに連通する。
【0027】
上記のように、パイロットポート20,23および26のそれぞれがタンクTに連通していれば、パイロット制御弁22のパイロット室22dおよび22eには圧力が立たないので、パイロット制御弁22は図示の中立位置を保ち、第1〜3ポート22a〜22cを開口する。したがって、パイロット通路12もタンクTに連通することになる。このようにパイロット通路12がタンクTに導かれるので、パイロット通路12内はタンク圧に保たれる。
【0028】
パイロット通路12内がタンク圧を維持していれば、流量設定弁29のパイロット室29aもタンク圧になるので、流量設定弁29は図示のドレン位置を保つ。流量設定弁29が図示のドレン位置を保てば、余剰流量Q2の全量が、流入ポート29cおよび全開状態にあるタンクポート29dを経由してタンクTに直接戻される。
【0029】
このように、余剰流量Q2の全量が流入ポート29cから全開状態にあるタンクポート29dを経由してタンクTに直接戻されるので、例えば、この余剰流量が第1,2,3作業機系切換弁16,18,19を介してタンクTに戻される場合よりも、その圧力損失が極端に少なくなる。言い換えると、そのエネルギーロスが少なくなる。
【0030】
上記の状態から、例えば、第2,3作業機系切換弁18,19を中立位置に保ちながら、第1作業機系切換弁16を図面右側であるリフトの上昇位置側にフルストロークすると、パイロットポート20が閉じられる。このようにパイロットポート20が閉じられると、制御通路21はパイロット通路12と同圧になる。
【0031】
一方、パイロット通路24側はパイロットポート23,26を介してタンクTに流通している。言い換えると、第1ポート22aと第3ポート22cとの流通過程では流体の流れによる圧力損失が発生するので、パイロット通路12側の圧力がパイロット通路24側の圧力よりも高くなる。したがって、パイロット通路12側と同圧である上記制御通路21側の圧力が、パイロット通路24側の圧力よりも相対的に高くなる。
【0032】
このように、制御通路21側の圧力が高くなるので、パイロット制御弁22のパイロット室22d側の圧力も相対的に高くなる。そのため、パイロット制御弁22は図面右側位置に切り換わり、第1,2ポート22a,22bを連通し、第3ポート22cを閉じる。これによって、パイロット通路12の圧力が、第1ポート22a→第2ポート22b→制御通路21を介して、減圧弁14のピストン室14cに導かれる。
【0033】
上記のようにピストン室14cに導かれた圧力がピストン14bに作用すると、それにともなってピストン14bが移動してスプリング14aをたわませ、そのバネ力を強くするとともに、当該減圧弁14の設定圧力を高圧設定にする。減圧弁14の設定圧力が高圧設定になれば、流量設定弁29のパイロット室29aに作用するパイロット圧も高くなるので、流量設定弁29は第1切換位置(a)に切り換わる。
上記流量設定弁29が第1切換位置(a)に切り換わると、流入ポート29cと連通ポート29eとが全開状態で連通するので、余剰流量Q2の全量が第1作業機系切換弁16を介してリフトシリンダ15に供給される。
【0034】
なお、第1作業機系切換弁16を図面左側位置である下降位置に切り換えると、リフトシリンダ15をタンクTに連通させるので、リフトシリンダ15は自重の作用で下降するとともに、このときにはパイロットポート20がタンクTに連通する。このようにパイロット通路12がパイロットポート20を介してタンクTに連通するので、流量設定弁29は、図示のノーマル位置を保持し、定吐出量形ポンプPの吐出流全量が、タンクポート29dから直接タンクTに戻される。したがって、このときのエネルギーロスを最少に保つことができる。
【0035】
一方、第1作業機系切換弁16を中立位置に保った状態で、第2あるいは第3作業機系切換弁18あるいは19をフルストロークすると、パイロットポート23あるいは26が閉じられる。このようにパイロットポート23あるいは26が閉じられると、パイロット通路24はパイロット通路12と同圧になる。一方、制御通路21側はパイロットポート20を介してタンクTに流通している。言い換えると、第1ポート22aと第2ポート22bとの流通過程では流体の流れによる圧力損失が発生するので、パイロット通路12側の圧力が制御通路21側の圧力よりも高くなる。したがって、パイロット通路12側と同圧である上記パイロット通路24側の圧力が、制御通路21側の圧力よりも相対的に高くなる。
【0036】
上記のように、パイロット通路24側の圧力が高くなるので、パイロット制御弁22のパイロット室22e側の圧力も相対的に高くなる。したがって、パイロット制御弁22は図面左側位置に切り換わり、第1,3ポート22a,22cを連通し、第2ポート22bを閉じる。このように第2ポート22bが閉じられるので、ピストン室14cには圧力が作用しない。そのため、減圧弁14はそのスプリング14aをたわませることなく、設定圧を低圧設定にする。
【0037】
上記のように減圧弁14が低圧設定になれば、流量設定弁29のパイロット室29aに作用するパイロット圧が、その低圧設定に対応した圧力になるので、流量設定弁29は第2切換位置(b)に切り換わる。流量設定弁29が第2切換位置(b)に切り換わると、流入ポート29cと連通ポート29eおよび流入ポート29cとタンクポート29dのそれぞれが、絞りを介して連通するので、余剰流量Q2のうち、その一部が絞りを経由してタンクポート29dからタンクに戻されるが、余剰流量Q2から上記タンクへ環流する流量を差し引いた流量が連通ポート29eから流出する。言い換えると、第1作業機系切換弁16を右側位置にフルストロークしたときよりも、少ない流量がチルトシリンダ17あるいはアタッチメント用アクチュエータに供給されることになる。
【0038】
上記のように、この第1実施形態によれば、定吐出量形ポンプを用いながら、動作させるアクチュエータに応じて供給流量を可変にすることができる。しかも、作業機系回路に接続した作業機を使用していないときには、余剰流量Q2の全量を、各作業機系切換弁を通過させることなく、全開状態にある流量設定弁29を介してタンクTに戻すので、圧力損失も少なく、その分、エネルギーロスも少なくなる。
なお、上記減圧弁14は、この発明のパイロット圧制御手段を構成するもので、このパイロット圧制御手段は、流量設定弁29に対するパイロット圧を2段階に制御できることが、最大の特徴である。
【0039】
図2はフォークリフトにこの発明の産業機械用制御回路を用いたときの第2実施形態を示すもので、特に、パイロット圧制御手段が、第1実施形態と相違するもので、その他は第1実施形態と同一である。したがって、この第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については同一符号を付するとともに、それら同一構成要素の詳細な説明を省略する。
【0040】
第2実施形態におけるパイロット圧制御手段は、流量制御弁13とパイロット制御リリーフ弁30とからなる。上記流量制御弁13はその流出ポート側をパイロット通路12に連通する一方、流量制御弁13とパイロット通路12との連通過程に上記パイロット制御リリーフ弁30を接続している。そして、このリリーフ弁30は、その流出ポート側をタンクTに連通している。
【0041】
上記のようにしたパイロット制御リリーフ弁30は、その一方の側にスプリング30aを設けるとともに、このスプリング30aのバネ力を調整する制御ピストン30bをピストン室30cに設けている。そして、制御ピストン30bに圧力が作用したときには、上記スプリング30aがたわんでそのバネ力を大きくする。
【0042】
反対に、制御ピストン30bに圧力が作用していないときには、スプリング30aが伸びた状態を保ってそのバネ力を弱くする。上記バネ力が強ければ、パイロット制御リリーフ弁30の設定圧が高くなり、バネ力が弱ければその設定圧が低くなる。そして、上記ピストン室30cは、第2実施形態と同じ制御通路21に連通している。なお、上記スプリング30a、ピストン30bおよびピストン室30cでこの発明の設定圧制御部を構成するものである。
【0043】
したがって、第1作業機系切換弁16をフルストロークしたとき、パイロット通路12の圧力が、第1ポート22a→第2ポート22b→制御通路21を介してパイロット制御リリーフ弁30bを介して上記ピストン室30cに導かれて制御ピストン30bに作用する。このように制御ピストン30bにパイロット圧が作用すれば、スプリング30aをたわませるので、パイロット制御リリーフ弁30の設定圧が高くなる。したがって、この高く設定された圧力が流量設定弁29のパイロット室29aに作用し、流量設定弁29を第1切換位置(a)に切り換える。
【0044】
一方、第2作業機系切換弁18あるいは第3作業機系切換弁19をフルストロークすると、第1実施形態と同様に、パイロット通路12と制御通路21との連通が遮断されるので、ピストン室30cには圧力が作用しない。したがって、このリリーフ弁30はそのスプリング30aをたわませることなく、相対的に低い設定圧に保たれる。
そのため、この相対的に低く設定された圧力が流量設定弁29のパイロット室29aに作用し、流量設定弁29を第2切換位置(b)に切り換える。その他の構成および作用は第1実施形態と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の第1実施形態の回路図である。
【図2】この発明の第2実施形態の回路図である。
【符号の説明】
【0046】
P 定吐出量形ポンプ
2 優先弁
4 制御流ポート
5 ステアリング系回路
6 余剰流ポート
7 作業機系回路
12 パイロット通路
13 流量制御弁
14 パイロット圧制御手段である減圧弁
14a 設定圧制御部を構成するスプリング
14b 設定圧制御部を構成する制御ピストン
14c 設定圧制御部を構成するピストン室
16 第1作業機系切換弁
18 第2作業機系切換弁
19 第3作業機系切換弁
22 パイロット制御弁
29 流量設定弁
29a パイロット室
30 パイロット圧制御手段であるリリーフ弁
30a 設定圧制御部を構成するスプリング
30b 設定圧制御部を構成する制御ピストン
30c 設定圧制御部を構成するピストン室
T タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定吐出量形ポンプと、この定吐出量形ポンプに接続された優先弁と、この優先弁の制御流ポートに接続したステアリング系回路と、優先弁の余剰流ポートに接続するとともに複数の作業機系切換弁を設けた作業機系回路と、この作業機系回路であって複数の作業機系切換弁に対して上流となる位置に設けるとともにパイロット室の圧力に応じて第1切換位置である全開位置、第2切換位置である絞り位置あるいはドレン位置に切換可能にした流量設定弁と、この流量設定弁のパイロット室に連通するパイロット通路と、このパイロット通路に設けるとともにあらかじめ設定した流量を上記パイロット通路に供給するための流量制御弁と、これら流量制御弁の下流側に設けるとともに、設定圧制御部の圧力に応じて設定圧を高低2段階に制御可能にしたパイロット圧制御手段と、上記パイロット通路をパイロット圧制御手段の設定圧制御部に連通させたり、その連通を遮断したりするパイロット制御弁とを備え、パイロット通路がパイロット圧制御手段の設定圧制御部に連通したとき、パイロット圧制御手段の設定圧を、流量設定弁が第1切換位置である全開位置に切り換わるのに必要な圧力に設定し、パイロット通路とパイロット圧制御手段の設定圧制御部との連通が遮断されたとき、パイロット圧制御手段の設定圧を、流量設定弁が第2切換位置である絞り位置に切り換わるのに必要な圧力に設定する構成にした産業機械用制御回路。
【請求項2】
上記パイロット圧制御手段は、上記パイロット通路に設けた減圧弁からなる請求項1記載の作業機械用制御回路。
【請求項3】
上記パイロット圧制御手段は、上記パイロット通路に設けた流量制御弁とその下流側に設けたパイロット制御リリーフ弁からなる請求項1記載の作業機械用制御回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−52763(P2006−52763A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233270(P2004−233270)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】