説明

産業機械

【課題】所定の異常が発生した場合に移動体を対象物から離脱させることができるとともに、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる産業機械の提供。
【解決手段】三次元測定機は、コラム243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられ、被測定物に対して接近離脱するスピンドル244と、カウンタウエイト71にてスピンドル244の重量を平衡させることでスピンドル244をスライド移動させる際の負荷を軽減する平衡機構7と、所定の異常状態が検出されたときに、スピンドル244が被測定物から離脱する離脱方向Aに向かってカウンタウエイト71を付勢する付勢手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械に関し、特に、対象物に対して接近離脱する移動体を備え、この移動体を移動させることで対象物を測定、または加工する産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定子を有する移動体を対象物に対して接近離脱させることで対象物を測定する測定機や、工具を有する移動体を対象物に対して接近離脱させることで対象物を加工する加工機械等の産業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の三次元測定機では、鉛直軸方向に移動可能なZ軸スピンドル(移動体)の下端にタッチプローブ(測定子)が固定されている。そして、Z軸スピンドルを鉛直軸方向に移動させることでタッチプローブを被測定物(対象物)に対して接近離脱させて被測定物を測定している。
また、特許文献1に記載の三次元測定機は、Z軸スピンドルに接続され、Z軸スピンドルの重量との平衡を保つためのバランスウエイト(平衡保持部材)を備え、Z軸スピンドルを移動させる際の負荷を軽減している。このような負荷軽減機構によれば、例えば、Z軸スピンドルをモータの回転力等によって移動させる場合において、モータにかかる負荷を軽減させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−356012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような測定機等では、測定子等にかかる負荷が過大になった場合や、測定機等への電力供給が遮断された場合などの所定の異常状態が発生したときには、移動体の移動を瞬時に停止させることができないため、対象物を損傷してしまう場合があるという問題がある。したがって、このような所定の異常状態が発生したときには、移動体を対象物から離脱させることが望ましい。
そこで、例えば、平衡保持部材の重量を移動体の重量よりも大きく設定しておき、測定機等への電力供給が遮断された場合に、平衡保持部材の重量によって移動体を対象物から離脱させる構成が考えられる。
しかしながら、このような構成によると、負荷軽減機構としての機能が劣化し、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、所定の異常が発生した場合に移動体を対象物から離脱させることができるとともに、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる産業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の産業機械は、対象物に対して接近離脱する移動体と、前記移動体を移動させる際の負荷を軽減させる負荷軽減機構とを備え、前記移動体を移動させることで前記対象物を測定、または加工する産業機械であって、所定の異常状態が検出されたときに、前記移動体が前記対象物から離脱する離脱方向に向かって前記移動体を付勢する付勢手段を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、産業機械は、所定の異常状態が検出されたときに、移動体を付勢する付勢手段を備えるので、所定の異常が発生した場合に移動体を対象物から離脱させることができる。また、負荷軽減機構から独立した付勢手段を備えることによって、負荷軽減機構としての機能を維持することができるので、所定の異常が発生していない場合には、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる。
なお、負荷軽減機構としては、前述した平衡保持部材を備える平衡機構の他、エアバランス機構等を採用することができる。
【0008】
本発明では、前記負荷軽減機構は、前記移動体に接続され、前記移動体の重量との平衡を保つための平衡保持部材を備え、前記付勢手段は、前記平衡保持部材を付勢することで前記移動体を付勢することが好ましい。
このような構成によれば、前述した産業機械と同様の作用効果を奏することができる。
【0009】
本発明では、前記平行保持部材の前記離脱方向は、鉛直下方向とされ、前記付勢手段は、前記平衡保持部材の鉛直上方向側に配設され、前記平衡保持部材を前記離脱方向に向かって押圧するための押圧部材と、前記押圧部材を把持し、前記所定の異常状態が検出されたときに、前記押圧部材を解放する把持部とを備えることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、所定の異常状態が検出されると、把持部にて押圧部材が解放され、解放された押圧部材は平衡保持部材上に自由落下する。そして、平衡保持部材は、自由落下した押圧部材の重量によって離脱方向に向かって付勢される。したがって、所定の異常が発生した場合に移動体を対象物から離脱させることができるとともに、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる。
また、付勢手段は、押圧部材を自由落下させることによって平衡保持部材を付勢するので、産業機械への電力供給が遮断された場合であっても移動体を対象物から離脱させることができる。
【0011】
本発明では、前記付勢手段は、前記平衡保持部材を前記離脱方向に向かって押圧するための弾性力を有する弾性部材と、前記弾性部材の弾性力を保持し、前記所定の異常状態が検出されたときに、前記弾性部材の弾性力を解放する弾性力保持部とを備えることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、所定の異常状態が検出されると、弾性力保持部にて弾性部材の弾性力が解放され、解放された弾性部材の弾性力によって、平衡保持部材は離脱方向に向かって付勢される。したがって、所定の異常が発生した場合に移動体を対象物から離脱させることができるとともに、移動体を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる。
また、付勢手段は、弾性部材の弾性力によって平衡保持部材を付勢するので、産業機械への電力供給が遮断された場合であっても移動体を対象物から離脱させることができる。
【0013】
本発明では、前記産業機械は、測定子を有する前記移動体を移動させることで前記対象物を測定する測定機であることが好ましい。
このような測定機によれば、前述した産業機械と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る三次元測定機1を示す全体模式図である。図2は、三次元測定機1の概略構成を示すブロック図である。なお、図1では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸、及びY軸として説明する。以下の図面においても同様である。
【0015】
産業機械としての三次元測定機1は、図1に示すように、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2の駆動制御を実行するモーションコントローラ3と、操作レバー等を介してモーションコントローラ3に指令を与え、三次元測定機本体2を手動で操作するための操作手段4と、モーションコントローラ3に所定の指令を与えるとともに、三次元測定機本体2上に設置された被測定物W(対象物)の形状解析等の演算処理を実行するホストコンピュータ5と、ホストコンピュータ5に接続される入力手段61、及び出力手段62とを備える。なお、入力手段61は、三次元測定機1における測定条件等をホストコンピュータ5に入力するものであり、出力手段62は、三次元測定機1による測定結果を出力するものである。
【0016】
三次元測定機本体2は、被測定物Wの表面に当接される測定子211Aを先端側(−Z軸方向側)に有するプローブ21と、プローブ21の基端側(+Z軸方向側)を保持するとともに、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22が立設される定盤23とを備える。なお、定盤23には、三次元測定機本体2のキャリブレーションをするための半径既知の基準球231が設置され、この基準球231は、定盤23上の複数位置に設置することができる。
移動機構22は、プローブ21の基端側を保持するとともに、プローブ21のスライド移動を可能とするスライド機構24と、スライド機構24を駆動することでプローブ21を移動させる駆動機構25とを備える。
【0017】
スライド機構24は、定盤23におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる2つのビーム支持体241と、各ビーム支持体241にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム242と、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム242上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるコラム243と、コラム243の内部に挿入されるとともに、コラム243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるスピンドル244とを備える。
【0018】
したがって、移動機構22は、X,Y,Z軸の各軸方向にプローブ21を移動させる複数の移動軸を備えている。そして、スピンドル244は、−Z軸方向側の端部においてプローブ21の基端側を保持している。なお、プローブ21としては、複数の種類のプローブが用意されており、これらのプローブの中から選択してスピンドル244に保持させることができる。すなわち、三次元測定機1は、測定子211Aを有し、被測定物Wに対して接近離脱する移動体としてのスピンドル244を移動させることで被測定物Wを測定する測定機である。
【0019】
駆動機構25は、図1、及び図2に示すように、各ビーム支持体241のうち、+X軸方向側のビーム支持体241を支持するとともに、Y軸方向に沿ってスライド移動させるY軸駆動部251Yと、ビーム242上をスライドさせてコラム243をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動部251X(図1において図示略)と、コラム243の内部をスライドさせてスピンドル244をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動部251Z(図1において図示略)とを備える。
【0020】
X軸駆動部251X、Y軸駆動部251Y、及びZ軸駆動部251Zには、図2に示すように、コラム243、各ビーム支持体241、及びスピンドル244の各軸方向の位置を検出するためのX軸スケールセンサ252X、Y軸スケールセンサ252Y、及びZ軸スケールセンサ252Zがそれぞれ設けられている。なお、各スケールセンサ252X,252Y,252Zは、コラム243、各ビーム支持体241、及びスピンドル244の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。
【0021】
ここで、前述したように、スピンドル244は、鉛直方向(Z軸方向)に沿ってスライド移動するので、Z軸駆動部251Zには、スピンドル244の重量による負荷がかかる。このため、コラム243の内部には、スピンドル244の重量を平衡させることでスピンドル244をスライド移動させる際の負荷を軽減する負荷軽減機構としての平衡機構7(図3参照)が設けられている。なお、平衡機構7を含むコラム243の内部構成については後に詳述する。
【0022】
モーションコントローラ3は、図2に示すように、操作手段4、またはホストコンピュータ5からの指令に応じて駆動機構25を制御する駆動制御部31と、各スケールセンサ252X,252Y,252Zから出力されるパルス信号を計数するカウンタ部32とを備える。
カウンタ部32は、各スケールセンサ252X,252Y,252Zから出力されるパルス信号をカウントしてスライド機構24の移動量(s、s、s)を計測する。そして、カウンタ部32にて計測されたスライド機構24の移動量(以下、スケール値Sとする)は、ホストコンピュータ5に出力される。
【0023】
ホストコンピュータ5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備えて構成され、モーションコントローラ3に所定の指令を与えることで三次元測定機本体2を制御するものであり、移動指令部51と、移動量取得部52と、測定値算出部53と、形状解析部54と、記憶部55と、異常状態検出部56とを備える。
移動指令部51は、モーションコントローラ3の駆動制御部31に所定の指令を与え、三次元測定機本体2のスライド機構24に移動をさせる。具体的に、例えば、移動指令部51は、測定子211Aを被測定物Wの表面に当接させた状態でプローブ21を被測定物Wの表面に倣って移動させるための移動方向、及び移動速度からなる移動ベクトルを指令値として出力する。
【0024】
移動量取得部52は、カウンタ部32にて計測されたスケール値Sを所定のサンプリング間隔で取得する。
測定値算出部53は、移動量取得部52にて取得されたスケール値Sに基づいて測定値、すなわち測定子211Aの位置を算出する。
形状解析部54は、測定値算出部53にて算出された測定値を合成して被測定物Wの表面形状データを算出し、算出された被測定物Wの表面形状データに基づく形状解析を行う。
【0025】
記憶部55は、ホストコンピュータ5で用いられるデータを記憶するものであり、例えば、入力手段61を介して入力される測定条件や、出力手段62を介して出力される測定結果等を記憶する。なお、入力手段61を介して入力される測定条件としては、例えば、移動量取得部52にてスケール値Sを取得するサンプリング間隔等がある。
異常状態検出部56は、三次元測定機1における所定の異常状態を検出するものであり、例えば、測定子211Aにかかる負荷が過大になった場合を異常状態として検出する。そして、異常状態検出部56は、所定の異常状態を検出すると、モーションコントローラ3を介して三次元測定機本体2への電力供給を遮断する。
【0026】
〔コラムの内部構成〕
図3は、コラム243の内部構成を示す模式図である。なお、図3(A)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていないときのコラム243の内部を示す図である。また、図3(B)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されたときのコラム243の内部を示す図である。
コラム243の内部には、前述した平衡機構7の他、図3に示すように、スピンドル244を付勢する付勢手段8が設けられている。
【0027】
平衡機構7は、スピンドル244の重量を平衡させるための機構であり、カウンタウエイト71と、スピンドル244、及びカウンタウエイト71を接続する滑車部72とを備える。
平衡保持部材としてのカウンタウエイト71は、スピンドル244に接続され、スピンドル244の重量との平衡を保つものであり、スピンドル244の重量と略同一の重量に設定されている。また、カウンタウエイト71には、−Y軸方向に向かって突出する突出部711が形成されている。
滑車部72は、スピンドル244、及びカウンタウエイト71を接続するワイヤ721と、中心軸722Aを中心として回転自在に配設される定滑車722とを備える。
【0028】
付勢手段8は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されたとき、すなわち三次元測定機本体2への電力供給が遮断されたときに、スピンドル244が被測定物Wから離脱する離脱方向A(図3(B)参照)に向かってカウンタウエイト71を付勢するものであり、ロッド81と、エアシリンダ82とを備える。
押圧部材としてのロッド81は、カウンタウエイト71における突出部711の鉛直上方向側(+Z軸方向)に配設され、カウンタウエイト71を離脱方向A(鉛直下方向(−Z軸方向))に向かって押圧するものである。
把持部としてのエアシリンダ82は、ロッド81を内部に収納するとともに、エアコンプレッサ(図示略)を介して供給される空気圧によってロッド81を把持する。また、エアシリンダ82は、エアコンプレッサへの電力供給が遮断され、空気圧の供給が停止すると、ロッド81を解放して自由落下させる。
【0029】
したがって、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていない場合には、図3(A)に示すように、カウンタウエイト71は、付勢手段8にて付勢されていないので、スピンドル244をスライド移動させる際の負荷を軽減することができる。
また、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出された場合には、図3(B)に示すように、エアシリンダ82にてロッド81が解放され、解放されたロッド81はカウンタウエイト71の突出部711上に自由落下する。そして、カウンタウエイト71は、自由落下したロッド81の重量によって離脱方向Aに向かって付勢される。したがって、スピンドル244は、離脱方向Aに向かって付勢されるので、スピンドル244を被測定物Wから離脱させることができる。すなわち、付勢手段8は、カウンタウエイト71を付勢することでスピンドル244を付勢している。
【0030】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)三次元測定機1は、所定の異常状態が検出されたときに、カウンタウエイト71を付勢する付勢手段8を備えるので、所定の異常が発生した場合にスピンドル244を被測定物Wから離脱させることができる。また、平衡機構7から独立した付勢手段8を備えることによって、平衡機構7としての機能を維持することができるので、所定の異常が発生していない場合には、スピンドル244を移動させる際の負荷を十分に軽減させることができる。
【0031】
(2)付勢手段8は、ロッド81(押圧部材)を自由落下させることによってカウンタウエイト71(平衡保持部材)を付勢するので、三次元測定機本体2への電力供給が遮断された場合であってもスピンドル244を対象物から離脱させることができる。
(3)エアシリンダ82は、空気圧によってロッド81を把持するので、例えば、電力を用いて把持する場合と比較して発熱量が小さい。したがって、付勢部材8の発熱による三次元測定機1の測定誤差への影響を低減させることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るコラム243の内部構成を示す模式図である。なお、図4(A)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていないときのコラム243の内部を示す図である。また、図4(B)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されたときのコラム243の内部を示す図である。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
前記第1実施形態では、カウンタウエイト71には、突出部711が形成されていた。これに対して、本実施形態では、平衡保持部材としてのカウンタウエイト71Aには、図4に示すように、−Y軸方向に向かって突出するとともに、−Z軸方向側に凹む受皿状の受皿部712が形成されている点で異なる。
また、前記第1実施形態では、付勢手段8は、ロッド81と、エアシリンダ82とを備えていた。これに対して、本実施形態では、付勢手段8Aは、落下式ウエイト83と、把持部84とを備えている点で異なる。
【0034】
押圧部材としての落下式ウエイト83は、カウンタウエイト71Aにおける受皿部712の鉛直上方向側に配設され、カウンタウエイト71Aを離脱方向A(鉛直下方向)に向かって押圧するものである。
把持部84は、落下式ウエイト83を収納するウエイトホルダ841と、落下式ウエイト83を把持する電磁弁842とを備える。この電磁弁842は、電力供給がされている状態で閉塞し、落下式ウエイト83を把持する。また、電磁弁842は、電力供給が遮断されると開放され、落下式ウエイト83を自由落下させる。
【0035】
したがって、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていない場合には、図4(A)に示すように、カウンタウエイト71Aは、付勢手段8Aにて付勢されていないので、スピンドル244をスライド移動させる際の負荷を軽減することができる。
また、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出された場合には、図4(B)に示すように、電磁弁842にて落下式ウエイト83が解放され、解放された落下式ウエイト83はカウンタウエイト71Aの受皿部712上に自由落下する。そして、カウンタウエイト71Aは、自由落下した落下式ウエイト83の重量によって離脱方向Aに向かって付勢される。したがって、スピンドル244は、離脱方向Aに向かって付勢されるので、スピンドル244を被測定物Wから離脱させることができる。
【0036】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1),(2)と同様の作用、効果を奏することができる。
【0037】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係るコラム243の内部構成を示す模式図である。なお、図5(A)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていないときのコラム243の内部を示す図である。また、図5(B)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されたときのコラム243の内部を示す図である。
【0038】
前記第1実施形態では、カウンタウエイト71には、突出部711が形成され、前記第2実施形態では、カウンタウエイト71Aには、受皿部712が形成されていた。これに対して、本実施形態では、平衡保持部材としてのカウンタウエイト71Bは、図5に示すように、略直方体状の形状を有している点で異なる。
また、前記第1実施形態では、付勢手段8は、ロッド81と、エアシリンダ82とを備え、前記第2実施形態では、付勢手段8Aは、落下式ウエイト83と、把持部84とを備えていた。これに対して、本実施形態では、付勢手段8Bは、板バネ部85と、ピン86とを備えている点で異なる。
【0039】
弾性部材としての板バネ部85は、中心軸85Aを中心として回動自在に配設され、図5(A)に示すように、ピン86にて固定された状態で弾性力が保持されている。
弾性力保持部としてのピン86は、図5(A)に示すように、電力供給がされている状態で板バネ部85を固定し、板バネ部85の弾性力を保持している。そして、ピン86は、電力供給が遮断されるとX軸方向に沿って移動することで板バネ部85から離脱し、板バネ部85の弾性力を解放する。
【0040】
したがって、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていない場合には、図5(A)に示すように、カウンタウエイト71Bは、付勢手段8Bにて付勢されていないので、スピンドル244をスライド移動させる際の負荷を軽減することができる。
また、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出された場合には、図5(B)に示すように、ピン86にて板バネ部85の弾性力が解放され、板バネ部85は、中心軸85Aを中心として図5中反時計回りに回転する。そして、カウンタウエイト71Bは、板バネ部85と当接し、その弾性力によって離脱方向Aに向かって付勢される。したがって、スピンドル244は、離脱方向Aに向かって付勢されるので、スピンドル244を被測定物Wから離脱させることができる。
【0041】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の効果を奏することができる。
すなわち、付勢手段8Bは、板バネ部85の弾性力によってカウンタウエイト71Bを付勢するので、三次元測定機本体2への電力供給が遮断された場合であってもスピンドル244を対象物から離脱させることができる。
【0042】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係るコラム243Cの内部構成を示す模式図である。なお、図6(A)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていないときのコラム243Cの内部を示す図である。また、図6(B)は、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されたときのコラム243Cの内部を示す図である。
【0043】
前記各実施形態では、コラム243は、Z軸方向、すなわち鉛直方向に沿って延出する筒状に形成され、スピンドル244は、コラム243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられていた。これに対して、本実施形態では、コラム243Cは、図6に示すように、Y軸方向、すなわち水平方向に沿って延出する筒状に形成され、スピンドル244Cは、コラム243Cの内部をY軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられている点で異なる。
【0044】
また、前記各実施形態では、負荷軽減機構は、カウンタウエイト71,71A,71Bを備える平衡機構7として構成されていた。これに対して、本実施形態では、負荷軽減機構は、コラム243Cの内部に設けられ、スピンドル244Cを下方側から支持する支持部245として構成されている点で異なる。
さらに、前記各実施形態では、付勢手段8,8A,8Bは、カウンタウエイト71,71A,71Bを付勢することでスピンドル244を付勢していた。これに対して、本実施形態では、付勢手段9は、スピンドル244Cに接続される接続部材91と、スピンドル244C、及び接続部材91を接続する滑車部92と、ロッド93と、エアシリンダ94とを備え、接続部材91を付勢することでスピンドル244Cを付勢している点で異なる。
【0045】
滑車部92は、スピンドル244C、及び接続部材91を接続するワイヤ921と、中心軸922Aを中心として回転自在に配設される定滑車922とを備える。
ロッド93は、前記第1実施形態におけるロッド81と同様の構成を有し、接続部材91の鉛直上方向側に配設され、接続部材91を離脱方向Aに向かって押圧するものである。
エアシリンダ94は、前記第1実施形態におけるエアシリンダ82と同様の構成を有し、エアコンプレッサへの電力供給が遮断され、空気圧の供給が停止すると、ロッド93を解放して自由落下させる。
【0046】
したがって、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出されていない場合には、図6(A)に示すように、スピンドル244Cは、支持部245に支持され、付勢手段9にて付勢されていないので、スピンドル244Cをスライド移動させる際の負荷を軽減することができる。
また、異常状態検出部56にて所定の異常状態が検出された場合には、図6(B)に示すように、エアシリンダ94にてロッド93が解放され、解放されたロッド93は接続部材91上に自由落下する。そして、接続部材91は、自由落下したロッド93の重量によって離脱方向Aに向かって付勢される。したがって、スピンドル244Cは、離脱方向Aに向かって付勢されるので、スピンドル244Cを被測定物Wから離脱させることができる。
【0047】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1),(2)と同様の作用、効果を奏することができる。
【0048】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
すなわち、付勢手段の構成は、前記各実施形態の構成に限らず、所定の異常状態が検出されたときに、移動体が対象物から離脱する方向に向かって移動体を付勢するものであればどのような構成であってもよい。
【0049】
例えば、前記各実施形態では、異常状態検出部56は、所定の異常状態を検出すると、モーションコントローラ3を介して三次元測定機本体2への電力供給を遮断していた。これに対して、異常状態検出部を、所定の異常状態を検出すると、三次元測定機本体に対して制御信号を出力するように構成し、付勢手段を、制御信号が入力されたときに、移動体が被測定物から離脱する離脱方向に向かって付勢するように構成してもよい。
また、前記各実施形態では、異常状態検出部56は、ホストコンピュータ5に設けられていたが、例えば、三次元測定機本体2に設けられていてもよい。このように構成すれば、ホストコンピュータ5上で発生するシステムエラーを検出することはできないものの、測定子211Aにかかる負荷が過大になった場合などの異常状態を迅速に検出することができる。
【0050】
前記各実施形態では、付勢手段8,8A,8B,9は、重力、弾性力によって移動体を付勢していた。これに対して、例えば、電力などによって移動体を付勢してもよい。要するに、付勢手段は、移動体が対象物から離脱する離脱方向に向かって移動体を付勢することができればよい。なお、停電などにより電力供給が遮断された場合であっても移動体を付勢することが望ましいので、電力以外の力によって移動体を付勢する前記各実施形態の構成が好ましい。また、重力、弾性力によって移動体を付勢する際に、空気圧などを補助的に用いて更に付勢するように付勢手段を構成してもよい。
【0051】
前記各実施形態では、負荷軽減機構は、平衡機構7、または支持部245として構成されていたが、例えば、エアバランス機構などによって構成してもよい。要するに、移動体を移動させる際の負荷を軽減させる機構であればよい。
前記各実施形態では、産業機械として三次元測定機1を例示したが、表面形状測定機などの他の測定機であってもよく、さらには、加工機械であってもよい。要するに、対象物に対して接近離脱する移動体を備え、この移動体を移動させることで対象物を測定、または加工する産業機械であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機を示す全体模式図。
【図2】前記実施形態における三次元測定機の概略構成を示すブロック図。
【図3】前記実施形態におけるコラムの内部構成を示す模式図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るコラムの内部構成を示す模式図。
【図5】本発明の第3実施形態に係るコラムの内部構成を示す模式図。
【図6】本発明の第4実施形態に係るコラムの内部構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0053】
1…三次元測定機(産業機械)
7…平衡機構(負荷軽減機構)
8,8A,8B,9…付勢手段
71,71A,71B…カウンタウエイト(平衡保持部材)
81…ロッド(押圧部材)
82…エアシリンダ(把持部)
83…落下式ウエイト(押圧部材)
84…把持部
85…板バネ部(弾性部材)
86…ピン(弾性力保持部)
211A…測定子
244,244C…スピンドル(移動体)
245 支持部(負荷軽減機構)
A…離脱方向
W…被測定物(対象物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して接近離脱する移動体と、前記移動体を移動させる際の負荷を軽減させる負荷軽減機構とを備え、前記移動体を移動させることで前記対象物を測定、または加工する産業機械であって、
所定の異常状態が検出されたときに、前記移動体が前記対象物から離脱する離脱方向に向かって前記移動体を付勢する付勢手段を備えることを特徴とする産業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の産業機械において、
前記負荷軽減機構は、
前記移動体に接続され、前記移動体の重量との平衡を保つための平衡保持部材を備え、
前記付勢手段は、
前記平衡保持部材を付勢することで前記移動体を付勢することを特徴とする産業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の産業機械において、
前記平行保持部材の前記離脱方向は、鉛直下方向とされ、
前記付勢手段は、
前記平衡保持部材の鉛直上方向側に配設され、前記平衡保持部材を前記離脱方向に向かって押圧するための押圧部材と、
前記押圧部材を把持し、前記所定の異常状態が検出されたときに、前記押圧部材を解放する把持部とを備えることを特徴とする産業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の産業機械において、
前記付勢手段は、
前記平衡保持部材を前記離脱方向に向かって押圧するための弾性力を有する弾性部材と、
前記弾性部材の弾性力を保持し、前記所定の異常状態が検出されたときに、前記弾性部材の弾性力を解放する弾性力保持部とを備えることを特徴とする産業機械。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の産業機械において、
前記産業機械は、測定子を有する前記移動体を移動させることで前記対象物を測定する測定機であることを特徴とする産業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12576(P2010−12576A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176647(P2008−176647)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】