説明

産業用ロボット

【課題】サーボモータを駆動源とした旋回台又はア−ムとを有する産業用ロボットにおいて、減速機がロボットに組付けられた後、減速機の交換や旋回台又はア−ムを取り外すことなく、関節機構の減速比を簡単に変更できる構造を有する産業用ロボットを提供。
【解決手段】サーボモータ駆動軸軸心 15bに対し偏心した円周面 15aを持ちサーボサーボモータ12を固定したモータ取付け部材17と、偏心した円周面 15aに嵌合する補合円周面25を有し旋回台又はア−ム 2上面に設けたモータ取付けフランジ26と、を有し、
嵌合する補合円周面25に対し偏心した円周面 15aを相対回転することにより、前記モータ駆動軸軸心 15bと減速機入力軸軸心 13bとの距離を可変にでき、
ピニオン14のみを交換することにより、サーボモータ12と減速機出力軸21の減速比を可変にできることを特徴とする産業用ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベースに回転可能に支持された減速機と、減速機出力軸に固定された旋回台又はア−ムと、減速機入力軸に固定されたギヤと、ギヤと噛み合うピニオンを固定したサーボモータ駆動軸をもち、位置検出器などのセンサーを備え、サーボ機構により駆動されるサーボモータと、を有する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に産業用ロボットは、高トルク・低速回転数で使用される。このため、低トルク・高速回転数を特徴とするサーボモータで駆動される産業用ロボットは、関節機構とサーボモータとの間に減速機を介在させることで、産業用ロボットの作業対象や可搬質量に応じた高トルク・低速回転数を得ることができる。そこで、かかる産業用ロボットの作業対象や可搬質量に応じたトルク・回転数を得るためには、異なる減速比の減速機を豊富に取り揃えることが必要になる。しかし、減速比違いの減速機をあらかじめ用意する場合、各減速比の減速機を管理する工数、スペースやコストが増大する課題があった。かつ、減速機がロボットに組付けられた後、仕様変更により減速機を組み替えるときは、旋回台又はア−ムを取り外す必要があった。そこで、減速機の交換や旋回台又はア−ムを取り外しすることなく、関節機構の減速比を簡単に変更できる構造が求められている。
【特許文献1】特開2002−317857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このための従来技術としては、例えば特許文献1に開示するものがあり、このものは、減速機入力軸軸心とサーボモータ駆動軸軸心とを平行に配置し、かつ両者間の距離を一定に保つサーボモータ取り付けフランジを設け、減速機入力軸とサーボモータ駆動軸との間にサーボモータ駆動軸の出力軸回転速度を減速する前段減速部を設け、前段減速部の減速機入力軸に固定されたギヤと、ギヤと噛み合うモータ駆動軸に固定されたピニオンとを入れ替えることで、減速機単体での減速比の取り揃えが容易にできる構造としている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載する発明を、ベースに回転可能に支持された減速機と、減速機出力軸に固定された旋回台又はア−ムとを有する産業用ロボットに適用すると、減速比違いの減速機をあらかじめ用意する場合、各減速比の減速機を管理する工数、スペースやコストが増大することはなくなるが、高価なギヤ・ピニオンをセットで複数用意する必要があり、さらに、減速機がロボットに組付けられた後、仕様変更により減速機を組み替えるときは、ギヤを取り替えるためには旋回台又はア−ムを取り外す必要があり、減速機の組み替えと変わらない工数・コストが必要となるという課題があった。
【0005】
本発明の課題はかかる従来の課題を解決した、位置検出器などのセンサーを備え、サーボ機構により駆動されるサーボモータを駆動源とした旋回台又はア−ムとを有する産業用ロボットにおいて、減速機がロボットに組付けられた後、減速機の交換又は高価なギヤ・ピニオンをセットで複数用意する必要やギヤを取り替えるため旋回台又はア−ムを取り外す必要がなく、関節機構の減速比を簡単に変更できる構造を有する産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、ベースと、ベース上面に回転可能に支持された減速機と、減速機出力軸に固定された旋回台又はア−ムと、減速機入力軸に固定されたギヤと、ギヤと噛み合うピニオンを固定したサーボモータ駆動軸を有し、位置検出器などのセンサーを備え、サーボ機構により駆動されるサーボモータと、を有する産業用ロボットにおいて、
前記サーボサーボモータ駆動軸軸心に対し偏心した円周面を持ちサーボサーボモータを固定したモータ取付け部材と、前記偏心した円周面に嵌合する補合円周面を有しかつ前記旋回台又はア−ム上面に設けられたモータ取付けフランジと、を有し、
前記嵌合する補合円周面に対し偏心した円周面を相対回転することにより、前記モータ駆動軸軸心と減速機入力軸軸心との距離を可変にすることができ、
前記ピニオンのみを交換することにより、サーボモータと減速機出力軸の減速比を可変にできることを特徴とする産業用ロボットによって上述した本発明の課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、嵌合する補合円周面に対し偏心した円周面を相対回転することにより、モータ駆動軸軸心と減速機入力軸軸心との距離を可変にすることができ、小型のピニオンのみを交換することにより、サーボモータと減速機出力軸の減速比を可変にできるようにしたので、減速機がロボットに組付けられた後、減速機の交換又は高価なギヤ・ピニオンをセットで複数用意する必要やギヤを取り替えるため旋回台又はア−ムを取り外す必要がなく、モータ取付けフランジからサーボサーボモータを固定したモータ取付け部材を取り外し、ピニオンのみを交換するだけで、関節機構の減速比を簡単に変更できる構造を有する産業用ロボットを提供するものとなった。加えて、小型のピニオンのみを交換するだけとしたので、大型のギヤを共通化することができ、多数の変速比のロボットに適用でき、スケールメリットにより大きなコスト低減ができるものとなった。
【0008】
好ましくは、前記偏心した円周面と、これに嵌合する補合円周面とは、ピンにより相対回転位置を固定するようにし、モータ取付け部材に明けたピン穴と、モータ取付けフランジに明けたピン穴とを、周方向で合わせてピンで固定できる。
さらに好ましくは、前記偏心した円周面と、これに嵌合する補合円周面とは、ピンにより相対回転位置を固定するようにし、予め前記モータ取付け部材に周方向に複数個明けたピン穴の1と、前記モータ取付けフランジに明けたピン穴とを、両者を周方向で合わせてピンで固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の産業用ロボットの関節構造を簡略化して示す概略側面断面図、図2は図1の上面図で、減速機入力軸に固定されたギヤと、このギヤと噛み合うサーボモータ駆動軸に固定したピニオンのギヤトレインとを簡略化して示す、要部上面図、図3は図2のピニオンを変速比の異なるピニオンに取り替えた後の変速比変更後のギヤトレインを簡略化して示し、図4は図3とは異なる実施形態で、図2のピニオンを図3とは異なる変速比のピニオンに取り替えた後の変速比変更後のギヤトレインを簡略化して示す。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態の産業用ロボットは、ベース 1と、ベース上面21に回転可能に支持された減速機11と、減速機11出力軸21に固定された旋回台又はア−ム 2と、減速機11入力軸15に固定されたギヤ13と、ギヤ13と噛み合うピニオン14を固定したサーボモータ駆動軸18を有し、図示しない位置検出器などのセンサーを備え、図示しないサーボ機構により駆動されるサーボモータ12と、を有する産業用ロボットにおいて、
前記サーボモータ駆動軸軸心 15bに対し偏心した円周面 15aを持ちサーボサーボモータ12を固定したモータ取付け部材17と、偏心した円周面 15aに嵌合する補合円周面25を有し旋回台又はア−ム 2上面に設けたモータ取付けフランジ26と、を有し、
嵌合する補合円周面25に対し偏心した円周面 15aを相対回転することにより、前記モータ駆動軸軸心 15bと減速機入力軸軸心 13bとの距離を可変にすることができ、
ピニオン14のみを交換することにより、サーボモータ12と減速機出力軸21の減速比を可変にできることを特徴とする産業用ロボットとした。
【0011】
偏心した円周面 15aと、これに嵌合する補合円周面25とは、ピン24により相対回転位置を固定するようされ、予めモータ取付け部材17に明けたピン穴22と、モータ取付けフランジ26に明けたピン穴27とを、周方向で合わせてピン24で固定できる。
【0012】
減速機がロボットに組付けられた後、関節機構の総減速比を変更したい場合、図1のピニオン14を固定したサーボモータ12を取り外すと、図1の上面図である図2において、ピニオン14が外された状態となる。次にモータ取付け部材17からサーボモータ12を取り外し、図2のピニオン14を歯数が異なる図3のピニオン16に交換し、ピニオン16とギヤ13が噛み合うように、予めモータ取付けフランジ26に明けたピン穴27に対し、モータ取付け部材17を周方向に回転させて歯数が異なるピニオン16に合ったモータ取付け部材17の周方向位置のピン穴22に位相を合わせて、ピン24を打ち込み固定することにより、偏心した円周面 15aとこれに嵌合する補合円周面25とは相対回転位置を固定でき、歯数が異なるピニオン16を固定したサーボモータ12をモータ取付けフランジ26に取り付けて作業を終える。
【0013】
図4は図3とは異なる実施形態で、予めモータ取付け部材17に、周方向に複数個明けたピン穴22の1と、モータ取付けフランジ26に明けたピン穴27とを、両者を周方向で合わせてピン24で固定することにより、偏心した円周面 15aとこれに嵌合する補合円周面25とは相対回転位置を固定したもので、歯数が異なるピニオン16を固定したサーボモータ12をモータ取付けフランジ26に取り付けて作業を終える。モータ取付け部材17の複数個明けたピン穴22は歯数が異なるピニオン16のそれぞれに応じた位置に設けられる。
【0014】
本発明の実施形態の産業用ロボットでは、嵌合する補合円周面25に対し偏心した円周面 15aを相対回転することにより、前記モータ駆動軸軸心 15bと減速機入力軸軸心 13bとの距離を可変にすることができ、小型のピニオン14のみを交換することにより、サーボモータ12と減速機出力軸21の減速を可変にできるようにしたので、減速機11がロボットに組付けられた後、減速機11の交換や旋回台又はア−ム 2を取り外すことなく、モータ取付けフランジ26から、サーボサーボモータ12を固定したモータ取付け部材17を取り外し、ピニオン14のみを交換するだけで、関節機構の減速比を簡単に変更できる構造を有する産業用ロボットを提供するものとなった。加えて、小型のピニオンのみを交換するだけとしたので、大型のギヤを共通化することができ、多数の変速比のロボットに適用でき、スケールメリットにより大きなコスト低減ができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の産業用ロボットの関節構造を簡略化して示す概略側面断面図。
【図2】図1の上面図で、減速機入力軸に固定されたギヤと、このギヤと噛み合うサーボモータ駆動軸に固定したピニオンのギヤトレインとを簡略化して示す、要部上面図。
【図3】図2のピニオンを変速比の異なるピニオンに取り替えた後の変速比変更後のギヤトレインを簡略化して示す。
【図4】図3とは異なる実施形態で、図2のピニオンを図3とは異なる変速比のピニオンに取り替えた後の変速比変更後のギヤトレインを簡略化して示す。
【符号の説明】
【0016】
2 :旋回台又はア−ム、3 :サーボモータ、13:ギヤ、14、16:ピニオン
12:サーボサーボモータ、 15a:偏心した円周面、 15b:サーボモータ駆動軸軸心
17:モータ取付け部材、21:減速機出力軸、25:補合円周面、26:モータ取付けフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ベース上面に回転可能に支持された減速機と、減速機出力軸に固定された旋回台又はア−ムと、減速機入力軸に固定されたギヤと、ギヤと噛み合うピニオンを固定したサーボモータ駆動軸を有し、位置検出器などのセンサーを備え、サーボ機構により駆動されるサーボモータと、を有する産業用ロボットにおいて、
前記サーボサーボモータ駆動軸軸心に対し偏心した円周面を持ちサーボサーボモータを固定したモータ取付け部材と、前記偏心した円周面に嵌合する補合円周面を有しかつ前記旋回台又はア−ム上面に設けられたモータ取付けフランジと、を有し、
前記嵌合する補合円周面に対し偏心した円周面を相対回転することにより、前記モータ駆動軸軸心と減速機入力軸軸心との距離を可変にすることができ、
前記ピニオンのみを交換することにより、サーボモータと減速機出力軸の減速比を可変にできることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記偏心した円周面と、これに嵌合する補合円周面とは、ピンにより相対回転位置を固定するようにし、前記モータ取付け部材に明けたピン穴と、前記モータ取付けフランジに明けたピン穴とを、周方向で合わせて前記ピンで固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記偏心した円周面と、これに嵌合する補合円周面とは、ピンにより相対回転位置を固定するようにし、予め前記モータ取付け部材に周方向に複数個明けたピン穴の1と、前記モータ取付けフランジに明けたピン穴とを、両者を周方向で合わせてピンで固定することを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−131712(P2010−131712A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310469(P2008−310469)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】