説明

画像を再形成できる印刷材

【課題】画像の再形成が可能な印刷材を提供する。
【解決手段】多数の垂直方向に拡張可能なユニット26、28を備え、垂直方向に拡張可能なユニット26,28は寸法可変物質を有し、多数の垂直方向に拡張可能なユニット26,28は寸法可変物質に寸法変化を生ぜしめる刺激により個別に指定できる、画像を再形成できる印刷材が提供される。前記垂直方向に拡張可能なユニット26,28の各々は、刺激を付与するための、電極、発光器、発熱器、これらの組み合わせからなる群より選択される刺激部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を再形成できる印刷材、例えばフレキソグラフィー印刷用刷版などの画像を再形成できる刷版、並びに画像を再形成できる印刷材を用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソグラフィー印刷市場は重要な市場である。フレキソグラフィー印刷法による印刷例として、印刷により装飾を施したトイレットペーパー、袋、段ボール、及びその他の材料、例えば金属箔、セロファン、ポリエチレン、これ以外のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0003】
フレキソグラフィー印刷法では、支持体に転写される画像が版面に凸像として形成された刷版を用いて印刷が行われる。詳細には、フレキソグラフィーに用いられる版面には、単一の同一画像を支持体に印刷するためにのみ使用可能な、半永久的な凸像すなわち支持体に形成される画像の反転凸像が形成される。新しい画像や別の画像が必要になると、新たな刷版の製作が行われ、それまで使用されていた刷版は保管又は処分される。刷版の製作や多数枚の刷版の保管にかかるコストが高いため、フレキソグラフィー印刷ジョブはプロセスの費用対効果に鑑みて刷版あたり100万枚単位の同一印刷を行うことが必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷材を廃棄することなく、印刷材に形成される画像を変更できる印刷材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ゆえに、本明細書では、例えばフレキソグラフィー印刷で使用される画像を再形成できる印刷材、並びに画像を再形成できる印刷材を用いた画像形成方法が開示される。
【0006】
実施形態では、多数の垂直方向に拡張可能なユニットを備え、垂直方向に拡張可能なユニットは寸法可変物質を有し、多数の垂直方向に拡張可能なユニットは前記物質の寸法の変化を発生させる刺激により個別に指定可能である、画像を再形成できる印刷材が記載されている。各ユニットは寸法可変物質の上に印刷部を有してもよく、各ユニットはユニットと関連付けられた、刺激を付与する刺激部により個別に指定可能である。
【0007】
画像を再形成できることから、印刷材の製造すべき印刷材数を低減できる。画像を再形成できる印刷材を用いると、印刷を継続する前に印刷材を交換する必要がないため、総印刷時間を短縮できる。また、画像を再形成できる印刷材を用いて、幅の広い文書印刷用ダイレクトマーキングエンジンの現像を行うことができる。
【0008】
本明細書で開示されている印刷材は画像を再形成できる印刷材である。実施形態では、画像を再形成できるとは、同一の印刷材を2以上の異なる画像の形成に再利用できることをいう。例えば、実施形態において、画像を再形成できるとは、1つの画像を形成するために使用した印刷材を廃棄するのではなく、その印刷材の寿命の間、任意数の異なる画像の形成に使用できることを意味する。印刷材は1つの画像の形成における使用にとどまらない点で画像を再形成できるといえる。よって、同一の印刷材を用いて複数の異なる画像を形成できる。
【0009】
画像を再形成できる印刷材の例として、画像を再形成できるフレキソグラフィー印刷用刷版など、画像を再形成できる刷版が挙げられる。
【0010】
実施形態において、画像を再形成できる印刷材は、チャネル又は開口部などの多数の孔を設けた層を有する。複数の層を形成してもよい。孔は、印刷材を用いて受像支持体上に画像を形成する際に受像支持体に対向する層の画像形成面又は画像形成側に少なくとも開放されている。使用の際、トナー及び/又はインクなどのマーキング材料が印刷材のこの画像形成面に付与され、受像支持体が印刷材の画像形成面と接触されて画像が受像支持体に転写される。
【0011】
個々の孔は印刷材によって形成される画像の画素に対応するものとみなすこともできる。孔のサイズや形状、隣接孔との間隔は任意に設定できるが、本実施形態では孔の平均幅すなわち平均寸法は、例えば約1μm〜約200μmとすることができ、具体的には約1μm〜約100μm、約1μm〜約50μm、もしくは約1μm〜約10μmとすることができる。これに加え、各孔の位置はマーキング材料が受像支持体面に供給される個々の位置となることから、孔間の間隔が小さければ小さいほど、高品質、高解像度、高濃度の画像を形成できる。この点で、例えば隣接孔との平均間隔を約0.01μm〜約1,000μmとすることができ、具体的には例えば約0.1μm〜約1,000μmもしくは約0.1μm〜約100μmとすることができる。層に孔を設ける方法として任意の技術を適宜用いることができる。孔間の間隔を狭くした高解像度印刷材を得るには、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて層に孔を形成してもよい。1枚の印刷材に設けられる孔の総数は約100〜約100,000,000、例えば約10,000〜約75,000,000とすることができる。例えば、画像を再形成できる印刷材がレターサイズ(例えば8.5×11インチ)の用紙の印刷に適したサイズの印刷材であれば、当該印刷材に形成される孔の数は約50,000〜約50,000,000とすることができる。
【0012】
ある実施形態では、孔は層を厚さ方向を貫くように延出する通孔として形成されてもよい。別の実施形態では、孔は層の厚さ方向を貫かずある一定の深さまで延出してもよい。ある実施形態では、孔が層の厚さ方向を貫かず、あるいは印刷材の画像形成側と反対側に設けられる層は、その側で孔を閉じるベースを含んで形成される。この場合孔は印刷材の画像形成側において開放された状態である。このようにして、孔は後述するピストンやマイクロピストンなどの垂直方向に伸張可能なユニットを収容できる。
【0013】
実施形態において、層厚は適宜設定してよく、例えば、約2μm程度に薄くてもよいし、約4cm程度に厚くてもよい。よって、層厚を約300μm乃至約1cmに設定してもよい。
【0014】
実施形態において、印刷材はピストン又はマイクロピストンなどの、垂直方向に伸張可能な多数のユニットを備える。このようなユニットは前述の多数の孔に収容でき、ユニットの総数は孔の総数と等しい。実施形態において、垂直方向に伸張可能なユニットとは、印刷材の画像形成面の平面と略直交する方向である垂直方向において拡張もしくは伸張・復元が可能なユニットをいう。よって、垂直方向に伸張可能なユニットは、層の画像形成面に対し伸張・後退すべく孔内で伸縮できる。
【0015】
孔、あるいは垂直方向に伸張可能なユニットは、寸法可変物質を少なくとも有する。実施形態において、寸法可変物質とは、熱、光、電気、磁気などの刺激を与えられると、伸縮するなどして寸法を変更できる任意の物質をいう。実施形態において、寸法可変物質は刺激に反応して寸法を増大させ、刺激がなくなれば実質的に元の寸法に復元する。実施形態において、寸法可変物質は刺激に反応して体積を約10%〜約250%、具体的には約10%〜約150%増大させることができる。
【0016】
寸法可変物質が固体又はゲル状物質である場合、層の孔内及び/又は孔内に収容される垂直方向に拡張可能なユニット内に配置できる形状とすることができる。寸法可変物質が低粘性及び/又は高流動性物質である場合、弾性プラスチックなどの固形の拡張可能な容器に液状物質を封入することが望ましい。封入された寸法可変物質は、孔及び/又はユニット内に配置できる。但し、孔及び/又は垂直方向に伸張可能なユニットの空間内に寸法可変物質を密閉できる技術であれば任意の技術にて物質を孔及び/又はユニット内に収容してよい。
【0017】
寸法可変物質として、外的刺激に対する反応として寸法変化を起こす任意の物質を使用できる。外的刺激としては電場、磁場、光、熱、これらの組合せなどが挙げられる。適切な刺激のもとで寸法変化を起こす物質にはいくつかのタイプがあり、それらは全てここで寸法可変物質として適切に用いられる。寸法可変物質の例については後述する。
【0018】
少なくとも刺激としての電場の印加に反応して寸法変化を生じる物質の例として、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電子活性ポリマー類が挙げられる。適切な例として、電気的に活性化される誘電性シリコーン、フルオロエラストマ類及びアクリル酸エラストマ類が挙げられる。シリコーン及びアクリル酸部分を含むポリマー類も適切に用いられる。市販されているシリコーンエラストマ類の例として、Nusil Technology社のNuSil CF19-2186及びDow Corning社のHS3が挙げられる。アクリル酸エラストマの例として、3M Corp社の4900 VHBアクリル酸シリーズ、例えばVHB 4910が挙げられる。適切に用いられる市販のフルオロエラストマの例として、Dow Corning 730が挙げられる。2種以上のエラストマからなる混合物も適切に用いられる。例えば、適切な混合物はシリコーンエラストマとアクリル酸エラストマとからなる。シリコーン、アクリル酸及びハロゲン化エラストマ構造ユニットを含む共重合体も適切に用いられる。特定の例として、アクリル酸、アクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリル酸塩、デシルアクリル酸塩、ドデシルアクリル酸塩、ヘキシルアクリル酸塩、イソノニルアクリル酸塩、イソオクチルメタクリル酸塩、2-エチルヘキシルメタクリル酸塩などのアクリル酸モノマーを重合することで生じる2以上の構造ユニットの任意の組み合わせからなる共重合体が挙げられる。シリコーンエラストマを用いると作用変形(actuated strain)は117%、予め歪ませたフィルムを用いたアクリル酸エラストマを用いると作用変形は最大215%となる(R. Pelrine 他、Science誌、2000年、836、及びPelrine 他、Proceedings SPIE、2001年、4329、335〜349頁)。
【0019】
電場刺激に反応する別の種類の物質として、屈熱性液晶エラストマ類が挙げられる。屈熱性液晶エラストマは屈熱性液晶ポリマーを架橋させることで作製できる。液晶エラストマは、自己組織化液晶の特性と、ゴム弾性を有するネットワークポリマーの特性を組み合わせた特性を有する。寸法可変物質は、混和性低分子量液晶と混合された側鎖型メソゲンポリマーから構成される。ポリマーはメソゲンモノマーを重合して得られる。ポリマー構造のメソゲンユニットはポリマーに液晶挙動を付与する。メソゲンユニットは当業者には公知である。メソゲンユニットとして、チアノ-ビフェニル構造が挙げられる。モノマーの重合性部分はアクリル酸塩もしくはエチレンとしてもよい。架橋剤は2種以上のアクリル酸塩基を有するポリアクリル酸塩モノマーとしてもよい。適切に用いられる低分子液晶として、4-シアノ-4'-アルキルオキシ-ビフェニル化合物が挙げられる。特定の例は、モノマーとして4-シアノ-4'-ヘキシル-アクリル酸塩、架橋剤として1、6-ヘキシルジアクリル酸塩、低分子量液晶として4-シアノ-4'-ヘキシルオキシ-ビフェニルを含む。例えば、R. Kishi他、Chemistry Lett.、1994年、2257頁、R. Kishi、 Ch. 9、Polymer Sensors and Actuators、及びY. Osada他、 Eds、Springer-Verlag、2000年を参照されたい。
【0020】
電場刺激に反応するカーボンナノチューブアクチュエータも寸法可変物質として適切に用いられる。例えば、R. H. Baughman他、Science誌、284号、1999年、1340頁を参照されたい。
【0021】
電場刺激に反応する別の種類の物質として、ポリマーゲルが挙げられる。ポリマーゲルは、架橋ネットワークと、ネットワークの間隙を埋める流体とを含んでいてもよい。流体は連続相として媒体に浸透する。流体が水である場合、物質はハイドロゲルと呼ばれる。電場の印加により物質は膨張・収縮する。電場に反応するハイドロゲルの適切な例として、N、N'-mエチレンビスアクリルアミドなどの架橋成分の存在下、アクリルアミドをフリーラジカル重合することにより調製されるポリアクリルアミドゲルが挙げられるが、これに限定されない。電場が印加されると、200倍の量の崩壊が起こる(T. Tanaka他、Science誌、216号、1982年、467頁)。
【0022】
電場に反応する物質の他の例として、架橋ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパン)スルホン酸(Y. Osada他、Nature誌、1992年、242頁)及び水中におけるポリ(アクリル酸)の架橋ナトリウム塩(R. Kishi他、J. Chem. Soc. Faraday Trans.1、1989年、655頁)。
【0023】
少なくとも刺激としての光(可視光や紫外線など)に反応して寸法変化を生じる物質の例として、低分子量光互変性化合物と混合されたポリマーフィルムが挙げられる。適切な例として、カロテンもしくはシアノスチルベンと混合されたナイロン、スピロベンゾピランと混合されたポリスチレンが挙げられる(H. S. Blair他、ポリマー、1980年、1475、H. S. Blair他、Polymer、1982年、779)。光互変性化合物をポリマーと電子対共有結合させることにより、光に反応して大規模な変化を生じ得る物質が得られる。更に適切な系として、主鎖にアゾベンゼン基を有するポリアミド及びポリアミド、主鎖にスチルベン基を有するポリキノリン、主鎖にビオロゲン基を有するポリテトラヒドロフラン、主鎖にアゾベンゼン光互変性基を有するポリアルキルアクリル酸塩が挙げられる。
【0024】
光互変性分子を組み込んだポリマーゲルも、光刺激により寸法変化を生じ得る。適切な例として、照射により収縮する少量の光互変性クリソフェニンGを含有するエチレングリコールジメタクリル酸塩と架橋された、水で膨張するポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリル酸塩)が挙げられる。4-フェニル-アゾフェニル-トリメチルアンモニウムイオンの存在下における架橋ポリ(メタクリル酸)にも同様の挙動が知られている。100%以上の可逆変形を起こすトリフェニルメタンロイコシアニド含有ポリアクリルアミドゲルも適切に用いられる。いずれかのトリフェニルメタンロイコシアニド基含有ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルによっても、不連続体積相転移が達成される。
【0025】
桂皮基もしくはシンナミリデン酢酸などの、光応答性部分を含むポリマーも適切に用いられる。これらの物質は交流周波数により光可逆性[2+2]光付加を生じる。光応答性ポリマーは特定周波数の紫外線を照射することで伸展及び/又は凝固し、逆の光互変性反応を起こす別の周波数の光を照射すると元の形状に復帰してもよい。この方法の利点は、固体の寸法可変物質を利用する点にある。その特定の例として、ポリマーと架橋剤とからなるポリマーネットワークにグラフト接合された桂皮酸が挙げられる。適切なポリマーとしてはn-ブチルアクリル酸塩、ヒドロキシエチルメタクリル酸塩もしくはエチレングリコール-1-アクリル酸塩-2-桂皮酸などのアルキルアクリル酸塩が挙げられる。架橋剤は、種々の分子量を有するポリ(プロピレングリコール)-ジメタクリル酸塩としてもよい。別の方法としては、ネットワーク形成時に電子対共有結合によりポリマーネットワークに桂皮部分を含有させることが挙げられる。この場合、光互変性分子はポリマーネットワークに光架橋を行うことが可能なアクリル酸塩もしくはメタクリル酸塩基を含有してもよい。適切な例として、シンナミリデン酢酸基を含有するstar-ポリ(エチレングリコール)が挙げられる(A. Lendlein他、Nature誌、2005年、879頁)。
【0026】
光による寸法変化が可能な別の種類に属する化合物についての考察がM. Irie、Appl. 光互変性ポリマー、1992年、174頁に記載されている。この文献を参照により本明細書に援用する。これらの物質はいずれも光に反応する寸法可変物質として使用できる。
【0027】
少なくとも刺激としての熱に反応して寸法変化を生じる物質の例として、プロトン性溶媒中にN-イソプロピルアクリルアミド及びアクリル酸の重合体を含む、上記ハイドロゲルが挙げられる(J. of Intelligent Materials Systems and Structures、2000年、541)。この物質は電場だけでなく熱にも反応して寸法変化を生じる。寸法変化を生じる物質の更に別の例として、50°Cに加熱されると元の体積の60%膨張/収縮する、エチレン-ビニルアルコールポリマーにグラフト接合されたN-イソプロピルアクリルアミド、あるいは水中のポリエチレンフィルム(H. Kubota他、J. Appl. Polym. Sci.、1994年、925)、水中に溶媒としてステアリルアクリル酸塩及びメチルアクリル酸塩を含有する架橋共重合体(Macromol. Rapid Commun.、1996年、539)、加熱されると最大100%の収縮特性を示す、水中に種々の割合で溶媒としてのヒドロキシエチルアクリル酸塩及びヒドロキシプロピルアクリル酸塩からなる共重合体(A. Safrani、Radiation Physics and Chemistry、1999年、121頁)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
実施形態において、刺激としての熱に反応する寸法可変物質は元の体積の少なくとも約10%から最大約250%以上、例えば物質の元の体積の約50%から約150%拡張及び/又は収縮してもよい。
【0029】
磁場に反応して寸法変化を生じる物質の例として、リオトロピック液晶が挙げられる。リオトロピック液晶はポリマー形成ゲルの1種であり、溶媒と混合されると液晶挙動を示す。適切な寸法変化リオトロピック液晶物質として、ジオキサン、クロロホルム、塩化メチレンなどの適切な溶媒中、並びにこれら溶媒と、メタノール、エタノールなどの別の溶媒との混合溶媒中においてコレテリック(choleteric)液晶秩序を有するポリ((-ベンジルL-グルタミン酸塩)が挙げられる。水素結合溶媒中でリオトロピック液晶を形成するポリ(p-フェニルテレフタルアミド(KEVLAR)及びポリ(p-ベンズアミド)などのポリアリールアミド類も使用できる。
【0030】
寸法可変物質は刺激に対して電気化学的寸法変化を生じる物質であってもよい。このような物質では少なくとも電場を印加して物質に化学変化を生ぜしめ、これにより所望の寸法変化を起こさせる。一例として、酸化還元反応により寸法変化を起こす共役ポリマーが挙げられる。この場合、電場の印加により物質にイオンの注入・抽出と関連した寸法変化を起こさせ、所望の寸法変化を生ぜしめる。電気化学的寸法変化を生じる物質の例として、印加された電場と直交する方向に約10〜20%の異方性膨張を起こすNaDBSなどのドデシルベンゼンスルホン酸塩イオンをドープしたポリピロール(Material Research Society、2004年、第782巻、101-107頁、E. W. H. Jager他、Adv. Mater、2001年、76頁、及びY. Berdichevsky他、Mat. Res. Symp. Proc. V. 782、2004年、101-107頁)などの固体電解質及びイオン性ポリマー-金属複合物を有する導電性ポリマーが挙げられる。ドープされたポリピロールフィルムも電圧が印加されると変形する(K. Yamada他、Jpn. J. Appl. Phys. 1998年、5798頁)。別の適切な酸化還元活性共役ポリマーとして、ポリアニリン類及びポリチオフェン類が挙げられる。また、ポリフェロセニルジムエチルシラン類も適切に用いられる(M. Peter他、Langmuir、2004年、891頁)。
【0031】
M. Shahinpoor他、Smart Mater. Struct.、1998年、R15に、イオン性ポリマー-金属複合物についての考察がなされており、これらの物質はいずれも本発明において寸法可変物質として使用できる。
【0032】
従って、寸法可変物質は電場、磁場、光、熱、これらの組み合わせなどの刺激に反応し得る。既述の如く同一の寸法可変物質が1種以上の刺激に反応する場合もあり、上記寸法可変物質例は記載された刺激にのみ反応するわけではない。
【0033】
孔及び/又はユニットにおいて寸法可変物質に刺激を与える目的で、各孔及び/又はユニットを、寸法可変物質に刺激を与える刺激部と関連付けてもよい。選択された寸法可変物質及び当該寸法可変物質が反応する刺激に応じて、刺激部は電場印加用電極、可視光もしくは紫外線などの光刺激を与えるための発光器、熱刺激を与えるためのヒータもしくは加熱ユニット、これらの組み合わせを備えることができる。刺激部は孔の外側に設置されてもよい。例えば、刺激部は孔の外縁、下部などに設けることができる。刺激部は垂直方向に伸張可能なユニットの外側を構成してもよい。すなわち、刺激部は各孔の中及び/又は周囲における層の一部を構成してもよいし、層の外部に、各孔/ユニットを個別に指定できるよう層と関連した状態で設けられてもよい。また、各ユニットの一部を構成してもよい。実施形態において、刺激部と寸法可変物質との関連に関わらず、各孔/ユニットは印刷材により印刷される画像の設計を制御すべく、外的に付与される刺激により個別に指定できる。これについては後述する。
【0034】
多数の孔を設けた層の材料として、実施形態の物質は、寸法可変物質に寸法変化を生じさせる刺激の印加と実質上干渉しない。例えば、寸法可変物質が電場の印加に反応して寸法変化を起こす場合、寸法可変物質は電場の印加と干渉しない非導電性材料としてもよい。ある実施形態では、層の材料として任意のポリマー又はプラスチック材料を適宜使用できる。適切な材料として、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルフォン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。ポリスチレン-アクリロニトリル、ポリエチレン-アクリル酸エステル、ビニリデンクロリド-ビニルクロリド、ビニルアセテート-ビニリデンクロリド、スチレン-アルキド樹脂のような共重合体材料も使用できる。共重合体は、ブロック、ランダム又は交互共重合体とすることができる。
【0035】
ポリカーボネート類の例として、N、N'-ジフェニル-N、N'-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-[1、1'-ビフェニル]-4、4'-ジアミン及びジエチレングリコールビスクロロホルメートの縮合から得られるポリ(ビスフェノール-A-炭酸塩)及びポリエーテルカーボネートが挙げられる。
【0036】
ポリスチレン類の例として、ポリスチレン、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(メチルスチレン)などをが挙げられる。
【0037】
ポリオレフィン類の例として、ポリクロロプレン、ポリエチレン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、並びにポリ(エチレン/アクリル酸)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)、ポリ(エチレン/メタクリル酸)、ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリ(エチレン/無水マレイン酸)などのエチレン共重合体が挙げられる。
【0038】
ポリアクリレート類の例として、ポリ(メチルメタクリル酸エステル)、ポリ(シクロヘキシルメタクリル酸エステル)、ポリ(n-ブチルメタクリル酸エステル)、ポリ(sec-ブチルメタクリル酸エステル)、ポリ(イソブチルメタクリル酸エステル)、ポリ(tert-ブチルメタクリル酸エステル)、ポリ(n-ヘキシルメタクリル酸エステル)、ポリ(n-デシルメタクリル酸エステル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸エステル)、ポリ(ヘキサデシルメタクリル酸エステル)、ポリ(イソボルニルメタクリル酸エステル)、ポリ(イソプロピルメタクリル酸エステル)、ポリ(イソデシルメタクリル酸エステル)、ポリ(イソオクチルメタクリル酸エステル)、ポリ(ネオペンチルメタクリル酸エステル)、ポリ(オクチルメタクリル酸エステル)、ポリ(n-プロピルメタクリル酸エステル)、ポリ(フェニルメタクリル酸エステル)、及びこれらに対応するアクリル酸エステルポリマーが挙げられる。この他、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ベンジルアクリル酸エステル)、ポリ(ベンジルメタクリル酸エステルエステル)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリル酸エステル)、ポリ(トリエチレングリコールジメタクリル酸エステル)が挙げられる。市販されている上記材料の例として、アクリル酸エステルポリマー及びメタクリル酸エステルポリマー(アクリルOID(TM)A10、アクリルOID(TM)B72)、アクリル酸及びアルファ−アクリル酸の重合エステル誘導体(以上Rohm and Haas Company製)、重合ブチルメタクリル酸であるLUCITE(TM)44、LUCITE(TM)45、LUCITE(TM)46(Du Pont Company製)が挙げられる。
【0039】
実施形態において、誘導体とは高分子成分から誘導された樹脂をいう。高分子成分は通常は誘導体に組み込まれる。従って、ポリビニル誘導体の例として、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ステアリン酸ビニル)などが挙げられる。市販のポリビニル誘導体として、PARLON(TM)(Hercules Powder Company製)などの塩化ゴム、Vinylite VYHH及びVMCH(Bakelite Corporation製)などのポリ塩化ビニルとポリ酢酸ビニルの共重合体、GLYPTAL(TM)2469(General Electric Co.製)などのアルキド樹脂が挙げられる。
【0040】
ポリウレタン類の例として、例えば、NEOREZ(TM)966、NEOREZ(TM)R-9320(NeoResins Inc.製)などのような脂肪族ポリウレタン類及び芳香族性ポリウレタン類、THECOTHANE(R)、CARBOTHANE(R)、TECHOPHYLIC(R)(米国マサチューセッツ州ウィルミントンのThermadics社製)などのポリウレタン類とポリエステル類及びポリカーボネート類の共重合体、BAYDUR(R)とBAYFIT(R)、BAYFLEX(R)とBAYTEC(R)などのポリウレタンポリマー(Bayer社製)が挙げられる。
【0041】
ポリアミドの例として、Nylon6、Nylon66、TACTEL(TM)(Du Pont社の登録商標)、ARLEN(TM)(三井化学株式会社製)及びTORLON(R)などの変性ポリアミド類が挙げられる。
【0042】
ポリエステル類の例として、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)などが挙げられる。
【0043】
シリコーン樹脂の例として、ポリジメチルシロキサン、DC-801、DC-804、DC-996(全てDow Corning Corp.製造)及びSR-82(GE Silicones社製)が挙げられる。シリコーン樹脂の他の例として、塩化メチル中で溶液から鋳造により成膜できるシリコーンポリカーボネートなどの共重合体を含む。このような共重合体は米国特許第3,994,988号に開示されている。シリコーン樹脂の他の例として、米国特許第3,878,263号及び第3,663,650号に記載された、シロキサン変性アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、COATOSILR1757シランなどのメタクリルシラン、SILQUESTRA-174NT、SILQUESTRA-178、SILQUESTRY-9936及びCOATOSILR1706、SILQUESTRA-171、SILQUESTRA-151(以上GE Silicones社製)などのビニルシラン材料が挙げられる。また、UVHC3000、UVHC8558、UVHC8559(以上GE Silicones社製)などの溶剤ベースのシリコーンコーティングを用いてもよい。アミノ機能化シリコーン類はポリウレタン類及びポリイミド類を形成する他のポリマーと結合されていてもよい。アミノ機能化シリコーン類の例として、DMS-A11、DMS-A12、DMS-A15、DMS-A21、DMS-A32(Gelest Inc.製)が挙げられる。Gelest Inc.によると、シリコーン膜はまた、ビニル端末ポリジメチルシロキサン類のRTV添加硬化を通して作成できる。
【0044】
シリコーンベースのコーティングバインダの他の例として、シリコーン材料のSYLGARDRシリーズから得られる硬化エラストマが挙げられる。このような材料の例として、Dow Corning Corp.より市販されているSYLGARDR182、SYLGARDR184、SYLGARDR186が挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂の例として、Radcure Inc.製のUVACURE1500シリーズなどのシクロ芳香族エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂、D.E.R.661、D.E.R.671、D.E.R.692H(以上Dow Corning Corp.より入手可能)などのビスフェノール-Aベースのエポキシ樹脂が挙げられる。別の例として、LAROMER(TM)EA81、LAROMER(TM)LR8713、LAROMER(TM)LR9019などの芳香族エポキシアクリル酸エステル、及びLAROMER(TM)LR9023(以上BASF社より入手可能)などの変性芳香族エポキシアクリル酸エステルが挙げられる。
【0046】
フォトリソグラフィーによるチャネル製造に適した市販のフォトレジストポリマーの例として、近紫外域に吸収帯を有するビス-アリールジアジド感光性架橋剤からなるKTFR(Kodak社製)に必要な成膜特性及び接着特性を付与すべくポリイソプレン環化ポリマーを添加したもの、WB2000、WB3000シリーズ及びMX1000、MX3000、MX9000シリーズ(以上Du Pont社製)などのドライフィルムフォトレジスト、Shell Chemical社より入手可能なビスフェノール-Aノボラックの多機能グリシジルエーテル誘導体であってEPONR樹脂SU-8として知られる商品、並びにCytek Industries、 Inc.より入手可能なPOWDERLINKR1174が挙げられる。
【0047】
実施形態では、寸法可変物質上に印刷部が設けられる。実施形態では、印刷部とは、マーキング材料の転写のために受像支持体に接触されるべく設計された構成部品をいう。実施形態では、印刷部を寸法可変物質上に配置するとは、印刷部が寸法可変物質上に配置されることをいい、特に孔及び/又はユニット内の寸法可変物質の最上部を形成することをいう。ここで、印刷部は寸法可変物質と接触していなくてもよい。この印刷部はユニットの最上部を構成し、又は孔内に配置され、寸法可変物質の寸法変化により孔から突出可能である。
【0048】
寸法可変物質に刺激が与えられると、寸法可変物質は寸法変化により層の開放側、画像形成面側に垂直に伸張する。例えばフレキソグラフィー印刷での使用を含む実施形態において、寸法可変物質の寸法変化量は印刷部上面(又はユニットの他の上面部)を孔又はユニットの開口部から約0.4mm〜約2mm、例えば約0.4mm〜約1mm垂直方向に延出させ得る量でなければならない。この上昇位置は、上昇部分が印刷可能位置となる高さに相当する。この延出位置において、刺激され当該高さまで拡張された寸法可変物質に対応する印刷材の領域が印刷される。一方、刺激を受けず非刺激状態すなわち収縮状態にある残りの部分は印刷されない。画像を再形成できる印刷材の画像形成面と接触する位置に移動された受像支持体に画像を転写できる印刷可能位置に印刷部を配置すべく、寸法変化動作によって印刷部が更に上昇され、孔/ユニット外に出る。
【0049】
印刷可能位置に到達するためにユニット上面が伸張すべき印刷高さと、刺激が与えられることで寸法可変物質に生じる体積変化が分かれば、孔及び/又はユニット内に収容される寸法可変物質の量、例えば厚さは容易に決定できる。例えば、収容されるべき寸法可変物質の最小厚さは(長さ/印刷可能位置に到達するために上昇すべき高さ)×(刺激に反応した寸法変化における膨張の割合)より決定できる。よって、印刷可能位置が印刷材面の0.5mm上部にあり、物質が刺激により100%膨張する場合、収容されるべき寸法可変物質の最小厚さは0.5mmとなる。更に、印刷可能位置が印刷材面の0.5mm上部にあり、物質が刺激により50%膨張する場合、収容されるべき寸法可変物質の最小厚さは1.0mmとなる。
【0050】
印刷部が存在する場合、印刷部は単にユニット内の寸法可変物質上に配置される。但し印刷部を寸法可変物質に付着させることが望ましく、及び/又は付着させない場合でも印刷部をユニット及び/又は孔内に除去不可能な状態に保持・収容することが望ましい。
【0051】
印刷部としては任意の材料を適宜利用できるが、実施形態の材料は印刷材と接触された受像支持体上に確実に画像を形成し得る硬度を有するものである。適切な重合材料としては、ロックウェルR硬度が約10〜約250、例えば約50〜約200である物質など、固体材料が挙げられる。例えば、ポリスチレンのロックウェルR硬度は約104〜約120である。Kolon KOPA(R)KN173MS低摩擦Nylon6(米国API-Kolon社より市販)のロックウェルR硬度は約215と高い。この点では任意のプラスチック材料が利用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネートなどの熱可塑性ポリマー、フェノールホルムアルデヒド、ウレアホルムアルデヒド、ポリエステル、メラミンホルムアルデヒドなどの熱硬化性ポリマーが挙げられる。ポリマーの更なる例として、ポリスチレン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンなどが挙げられる。ポリスチレン-アクリロニトリル、ポリエチレン-アクリル酸塩、ビニリデンクロリド-ビニルクロリド、ビニルアセテート-ビニリデンクロリド、スチレン-アルキド樹脂のような共重合体材料も使用できる。共重合体は、ブロック、ランダム又は交互共重合体とすることができる。上記材料の更なる例については既に述べた。更に、アルミニウムやカーボンブラックなどの粒子を含有する強化ポリマー、金属、セラミック、ガラスなどでできたファイバを含有する強化ポリマーは硬度が高いという利点がある。当然ながらマーキング材料を弾かない物質が望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本明細書に記載される実施形態を図面に示す。図2には、多数の孔を設けた、画像を再形成できる印刷材の層の一例が示されている。画像を再形成できる印刷材は、チャネルもしくは開口部である多数の孔15を設けた層10を有する。図2は印刷材の上面、すなわち画像形成面を示している。
【0053】
図1は、垂直方向に拡張可能なユニット、具体的には画像を再形成できる印刷材のマイクロピストン20を図示している。図中、ユニット20は、寸法可変物質30を包囲するように設けられた、ここでは電極である刺激部25を含む。印刷部35は寸法可変物質30の上部または上面に位置する。図1よりわかるように、印刷部35は刺激部25により印加又は除去される刺激に対する寸法可変物質の反応により、垂直方向21に沿って伸縮する。
【0054】
図3は画像を再形成できる印刷材を用いて画像を形成する方法を図示している。受像支持体上に画像を形成する際の、画像を再形成できる印刷材のユニットの使用法について図3を参照しながら説明する。
【0055】
寸法可変物質が反応する刺激が与えられると、寸法可変物質は例えば膨張することで拡張する。画像を再形成できる印刷材の画像形成側に開口部が設けられ、ユニットの他方側に制約があるため、寸法可変物質は開口部に向かって垂直に伸張すべく膨張する。ゆえに、膨張状態すなわちオン状態において、寸法可変物質は印刷部すなわちピストンカップを押し上げる。収縮状態すなわちオフ状態において、寸法可変物質はユニット内の低い位置にある。受像支持体上に形成される画像位置に対応するユニット内の寸法可変物質を選択的に膨張させることで画像が形成される。これにより、選択された位置にオン状態のピストン(画素)で構成される凸画像部が形成される。画像は、画像を再形成できる印刷材の画像形成面に付与されるトナーやインクなどのマーキング材料50により、受像支持体60上に転写される。標準的なフレキソグラフィー印刷材と同様、ピストンが上昇している部分のみにおいてマーキング材料が受像支持体に転写される。
【0056】
図3において、右側のユニット26は、ユニット内の寸法可変物質に適切な刺激が与えられ、寸法可変物質が印刷可能なオン位置に伸張された状態にある。オン状態の画素のみが印刷材の画像形成面と接触された受像支持体に画像を転写する。左側のユニット28は収縮したオフ状態にあり、受像支持体60とは接触していない。上に詳述したように、各画素のオン、オフ状態は個別に可逆的に切り換えられ、新たな画像を形成できる。
【0057】
印刷材を受像支持体と接触させた後、印刷材表面に追加のマーキング材料を付与するなどすることで、印刷材によって続けて同一画像を形成できる。また、既述の如く別の画素のオン・オフ位置を選択的に切り換えることで、同一の印刷材によって別の画像を形成できる。後続印刷を行う前に、印刷材の画像形成面にマーキング材料を追加することが望ましい。印刷材による画像形成サイクルは何度でも繰り返せる。
【0058】
受像支持体への転写中もしくは転写後にドラム又はプレートを使用してもよい。例えば、高品質印刷を確実に行うため、画像を支持体に転写する際に支持体を印刷材に押圧するためのトップドラム又はトッププレートを用いてもよい。トップドラム又はトッププレートは画像を支持体に定着させるべく加熱されてもよい。トップドラム又はトッププレートを加熱することは、トナーが支持体に永久定着される際に溶融を必要とすることから、トナー粒子を使用する場合に特に有用である。
【0059】
画像形成にあたり、画像を再形成できる印刷材は受像支持体として中間転写印刷材上に画像を形成するために使用されてもよい。形成された画像は最終支持体上に転写され、印刷される。あるいは、画像を再形成できる印刷材は、印刷される支持体である受像支持体に画像を直接転写するために使用されてもよい。
【0060】
本発明ではマーキング材料としてインクや乾燥トナーなど任意の着色材料を利用できる。マーキング材料は、一般的な色であるブラック、マゼンタ、シアン、イエローなど所望の色を有していてもよい。マーキング材料の組成は適宜選択でき、任意のトナー又はインク組成物を使用できる。着色剤混合物を使用してもよい。
【0061】
上述したシステムは所望の支持体上への多色画像の印刷にも応用できる。例えば、画像を再形成できる、各々異なる単一色の粒子を含有する複数の印刷材を、印刷される支持体が通過することで多色画像が印刷される。あるいは、画像を再形成できる1枚の印刷材に異なる色の着色マーキング材料を連続的に充填することで多色印刷を行うこともできる。この実施形態では、後続の着色マーキング材料を付与すべく印刷材を用いる前に、印刷材の画像形成面に付与された着色マーキング材料をクリーニングすることが好ましいことは明らかである。この点では、任意のクリーニングステーション又はクリーニングデバイスを使用できる。
【0062】
本明細書では、画像を再形成できる印刷材の用途として、例えば印刷材をベルトで搬送し画像転写ステーションにおいて受像支持体に接触させるフレキソグラフィー印刷法による支持体への画像の印刷について主に説明したが、画像を再形成できる印刷材の用途はフレキソグラフィー印刷法に限定されない。画像を再形成できる印刷材はダイレクトマーキングエンジンを用いた印刷など、印刷材を利用して行われる任意の印刷作業に応用できる。このようなデバイスでは、まず所望の画像を印刷材に担持せしめ、印刷材にマーキング材料を付与し、画像を1つ以上の受像支持体に印刷する。次いで印刷材の画像形成面がクリーニングされ、印刷工程が反復される。画像を再形成できる印刷材はオフセットシステムにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】画像を再形成できる印刷材の、垂直方向に拡張可能なユニットを示す図
【図2】画像を再形成できる印刷材の、多数の孔を有する層を示す図
【図3】画像を再形成できる印刷材によって画像を形成する方法を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の垂直方向に拡張可能なユニットを備え、前記垂直方向に拡張可能なユニットは寸法可変物質を有し、前記多数の垂直方向に拡張可能なユニットは前記寸法可変物質に寸法変化を生ぜしめる刺激により個別に指定できる、画像を再形成できる印刷材。
【請求項2】
前記垂直方向に拡張可能なユニットの各々は、刺激を付与するための、電極、発光器、発熱器、これらの組み合わせからなる群より選択される刺激部を含む、請求項1記載の画像を再形成できる印刷材。
【請求項3】
前記寸法可変物質は、少なくとも電場の印加に反応して寸法変化を生じる物質、少なくとも光に反応して寸法変化を生じる物質、少なくとも熱に反応して寸法変化を生じる物質、少なくとも磁場の印加に反応して寸法変化を生じる物質、電気化学的寸法変化を生じることで刺激に反応する物質より選択される物質であり、電気化学的寸法変化を生じる物質は固体電解質及びイオン性ポリマー-金属複合物を含む導電性ポリマー、ドープされたポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェロセニルジメチルシランを含む、請求項1記載の画像を再形成できる印刷材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−98952(P2007−98952A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270423(P2006−270423)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】