説明

画像フィルタ回路及びフィルタリング処理方法

【課題】 高効率符号化方式の変換処理と、画像スケーリング処理を同一回路で実現する。
【解決手段】 4:2:2フォーマットの画像データから、画像データのdeltaによって決まるphaseに基づいた補間演算処理をすることで画像データ間の補間画像データを生成する補間演算処理部13と、第1の画像データの色差データと、第2の画像データの色差データとの所定の位相ずれ分(0.75)を、phaseに加算する加算手段14と、第1の画像データから第2の画像データへの変換、又は第2の画像データから第1の画像データへの変換が指示されたことに応じて、加算手段14による出力を選択し、位相ずれ分(0.75)が加算されたphaseを補間演算処理部13に供給する選択手段15とを備えることで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから補間画像データを生成する画像フィルタに関し、詳しくは、4:2:2フォーマットの画像データの画像スケーリング処理、高効率符号化方式の変換処理を一つの回路で実現する画像フィルタ回路及びフィルタリング処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタルテレビ放送の普及などに伴い、デジタル映像信号に関する技術が注目されている。映像信号は、コンポーネント信号と呼ばれる輝度信号Yと、2つの色差信号Cb,Crによって構成されている。
【0003】
一般に人間の視覚特性は、輝度信号Yと比較して、色差信号Cb,Crに対して感度が低いため、色差信号について間引いた信号を用い、符号化情報量を低減させることができる。そこで、コンポーネント信号としては、輝度信号Yに対して色差信号Cb,Crを間引くことなく用意した4:4:4フォーマットに対して、水平方向の色差信号Cb,Crを輝度信号Yの1/2のサイズとした4:2:2フォーマット、さらに垂直方向の色差信号Cb,Crを輝度信号Yの1/2のサイズとした4:2:0フォーマットなどが規定されている。
【0004】
具体的には、4:2:2フォーマットでは、各走査線の輝度信号2サンプルに対して、色差信号1サンプルが配置されることになり、4:2:0フォーマットでは、垂直方向の輝度信号2サンプルに対して色差信号1サンプルが配置される。このような、コンポーネント信号をデジタル符号化することでデジタル映像信号が生成されることになる。
【0005】
放送、通信、蓄積メディアなどで用いられるデジタル映像信号は、一般に、MPEG(Moving Picture Expert Group)技術によって、限られた周波数帯域幅での伝送を可能とするため高能率符号化、いわゆる圧縮符号化されている。例えば、MPEGは、主にCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、HD(Hard Disk)といった1.5Mbit/s程度の伝送レートを有するデジタル蓄積メディア用の画像音響符号化方式であるMPEG−1方式や、デジタル放送や、蓄積メディア、通信など汎用的に利用でき、さらに高ビットレートでの伝送を可能とした高品質の画像データを対象にしたMPEG−2方式などが標準化され、広く普及している。
【0006】
ところでMPEG−2では、輝度信号(Y)・色差信号(Cr、Cb)フォーマットとして、4:2:0、4:2:2、4:4:4の3つのフォーマットを使用することができる。中でも、4:2:2フォーマットは、国際電気通信連合(ITU)の無線通信セクタ(ITU−R)においてITU−R勧告601として規定されており、スタジオ内などの業務用として用いられることが多く、4:2:0フォーマットに較べて高画質なフォーマットとなっている。テレビ信号の高能率符号化には、MPEG−2方式が主に利用されている。なお、MPEG−1では、4:2:0フォーマットの画像のみを扱うことができる。
【0007】
ところで、デジタル映像信号は、高画質な映像を出力するためにMPEG−2方式で高能率符号化するのが主流となっており、映像信号処理装置としても、4:2:2フォーマットのMPEG−2方式で高能率符号化されたデジタル映像信号に対応した回路構成となっている。
【0008】
しかしながら、CD−ROMやHDなどに記録された映像コンテンツなどは、MPEG−1方式で高能率符号化されているため、別途、MPEG−1方式で高能率符号化されたデジタル映像信号を処理するための回路が必要となってしまい、回路規模が増大してしまう。そこで、従来の映像信号処理装置は、4:2:0フォーマットであるMPEG−1方式のデジタル映像信号を、4:2:2フォーマットに変換し、さらにMPEG1方式からMPEG−2方式に変換するMPEG変換処理回路を備えた構成となっている。
【0009】
具体的には、4:2:0フォーマットのMPEG−1方式のデジタル映像信号をデコードすると、xy平面上に配置された輝度データY、色差データCb,Crは、図12に示すようになる。これを、まず、図13に示すように4:2:2フォーマットに変換する。4:2:2フォーマットのMPEG−2方式のデジタル映像信号をデコードすると、図14に示すように、図13に示す輝度データYと、色差データCr、Cbとの位相関係と異なる位相関係になってしまう。
【0010】
したがって、図13に示すような輝度データYと、色差データCb,Crとの位相関係を、図14に示すようなMPEG−2方式のデジタル映像信号をデコードした輝度データYと、色差データCb,Crとの位相関係に揃えてやる必要がある。そこで、従来の映像信号処理装置が備えるMPEG変換処理回路では、図15に示すように、隣接する2点の色差データ、例えば、色差データD1、色差データD2からリニア補間を実行して色差データD2’を生成する。補間前輝度データ(Y Source data)と、補間前色差データ(C Source data)の隣り合うデータ同士の間隔を1に正規化すると、補間後色差データ(C destination data)は、Dn’=Dn×0.25+D(n+1)×0.75 (n=1,2,3・ ・ ・)というような一般式で表すことができる。
【0011】
このようにMPEG変換処理回路は、輝度データYと、色差データCb,Crの位相合わせをすることで、MPEG−1方式のデジタル映像信号を、MPEG−2方式のデジタル映像信号に変換していた。
【0012】
一方、映像信号処理装置は、上述したMPEG変換処理回路以外に、画像処理の一機能として画像を縮小又は拡大する縮小拡大処理を実行して画像のサイズを変更する画像スケーリング回路を備えている。画像スケーリング回路は、補間フィルタを備えており、画像を縮小する場合は、元の画像データの画素数を、この補間フィルタを通して減少させ、逆に画像を拡大する場合は、元の画像データの画素数を、この補間フィルタを通して増加させる。このような画像スケーリング回路では、極力、元の画像の画質を劣化させずに縮小、拡大処理を実行するように、例えば、Cubic関数などの近似曲線アルゴリズムを使ったポリフェーズフィルタなどを補間フィルタとして用いることが知られている(特許文献1参照。)。
【0013】
図16に、上述したようなMPEG変換処理回路と、ポリフェーズフィルタである画像スケーリング回路とを備えている従来の映像信号処理装置100の概略構成を示す。図16に示すように、映像信号処理装置100は、輝度データに対する処理を実行する輝度データ処理系と、色差データに対する処理を実行する色差データ処理系とがあり、補間前輝度データ(Y Source data)、補間前色差データ(C Source data)に対して画像スケーリング処理を施すポリフェーズフィルタである画像スケーリング回路102、104をそれぞれ個別に備えている。
【0014】
また、上述したようにMPEG変換処理は、補間前色差データに対してのみ実行すればよいので、画像スケーリング回路104の前段にMPEG変換処理回路103が設けられている。さらに、輝度データ処理系には、色差データ処理系に、MPEG変換処理回路103が設けられていることによるレイテンシ(遅延)を調節するためのシフトレジスタ101が設けられている。
【0015】
【特許文献1】特開2003−122338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、従来までの映像信号処理装置100では、MPEG−1方式で高能率符号化されたデジタル映像信号を再生する際にMPEG−2方式に変換するため、色差データCb,Crに対しては、MPEG変換処理回路103、画像のスケーリングを変更する画像スケーリング回路104をそれぞれ個別に備えた構成となっていたため回路規模が増大してしまうといった問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、上述したような問題を解決するために案出されたものであり、上述したようなMPEG変換処理回路が備える高効率符号化方式の変換処理機能と、画像スケーリング回路の備える画像スケーリング処理機能とを兼ね備えることで回路規模を大幅に削減した画像フィルタ回路及びフィルタリング処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するために、本発明に係る画像フィルタ回路は、輝度データ、色差データからなる4:2:2フォーマットの画像データから、上記画像データの拡大率又は縮小率によって決まる位相データに基づいた補間演算処理をすることで上記画像データ間の補間画像データを生成する補間演算処理手段と、第1の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第1の画像データの色差データと、第2の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第2の画像データの色差データとの所定の位相ずれ分を、上記位相データに加算する加算手段と、上記第1の画像データから上記第2の画像データへの変換、又は上記第2の画像データから上記第1の画像データへの変換が指示されたことに応じて、上記加算手段による出力を選択し、上記位相ずれ分が加算された上記位相データを上記補間演算処理手段に供給する選択手段とを備え、上記補間演算処理手段は、上記位相ずれ分が加算された上記位相データに基づいて、上記色差データ間の補間色差データを生成することを特徴とする。
【0019】
また、上述の目的を達成するために本発明に係るフィルタリング処理方法は、輝度データ、色差データからなる4:2:2フォーマットの画像データから、上記画像データの拡大率又は縮小率によって決まる位相データに基づいた補間演算処理をすることで上記画像データ間の補間画像データを生成する補間演算処理工程と、第1の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第1の画像データの色差データと、第2の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第2の画像データの色差データとの所定の位相ずれ分を、上記位相データに加算する加算工程と、上記第1の画像データから上記第2の画像データへの変換、又は上記第2の画像データから上記第1の画像データへの変換が指示されたことに応じて、上記加算工程による出力を選択し、上記位相ずれ分が加算された上記位相データを上記補間演算処理工程に供給する選択工程とを備え、上記補間演算処理工程は、上記位相ずれ分が加算された上記位相データに基づいて、上記色差データ間の補間色差データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、画像スケーリング処理、高効率符号化方式の変換処理を、従来までの画像スケーリング回路である画像フィルタ回路にて同時に実現することができるため、大幅な回路削減が実現可能となると共に、不要になった回路分のシステムレイテンシを削減することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明をする。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることはいうまでもない。
【0022】
{映像信号処理装置の装置構成}
図16で示したように、従来の映像信号処理装置100は、MPEG変換処理と、画像スケーリング処理を実行するために、色差データCb,Crに対する処理を実行する色差データ処理系において、それぞれ専用のMPEG変換処理回路103、画像スケーリング回路104を備えていた。また、映像信号処理装置100は、MPEG変換処理回路103が備えられたことに応じて、輝度データYに対する処理を実行する輝度データ処理系において、シフトレジスタ101を設けることが必須となってしまっており大幅な回路規模の増大を余儀なくされていた。
【0023】
ここで、映像信号処理装置100が備える輝度データ処理系の画像スケーリング回路102と、色差データ処理系の画像スケーリング回路104について説明をする。画像スケーリング回路102、104は、例えば、Cubic関数を用いたポリフェーズフィルタである。このポリフェーズフィルタは、4タップ(tap)のFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成されているとする。
【0024】
ポリフェーズフィルタは、補間前データ(Source data)間の任意の位置に、補間後データ(Destination data)を生成する補間フィルタである。例えば、ポリフェーズフィルタを用いると、図1に示すように、補間前データであるデータsrc(1)と、データsrc(2)との間に、データsrc(1)からphaseで示される位相分だけずれた位置に補間後データであるデータdst(1)を生成することができる。
【0025】
ここで使用するポリフェーズフィルタは、4タップフィルタであることから、タップ数分、つまり4つの補間フィルタ係数(Cubic係数)が必要となる。補間フィルタ係数は、図1に示すように、近似補間関数であるCubic関数の基準点(中心)を、補間データを生成する位置に合わせたときの、補間前データの位置におけるインパルス応答に相当する。
【0026】
この4つの補間フィルタ係数を重みとして、4つの補間前データに重み付けをして演算を施すことで、1つの補間後データを生成することができる。
【0027】
例えば、図2に示すように、補間フィルタ係数k1は、Cubic関数の基準点からのずれであるphaseをxとした場合に、(|x|−1)(|x|−|x|−1|)というCubic関数に代入することで求めることができる。同様に残りの補間フィルタ係数k0、k2、k3もCubic関数から算出することができる。このとき、Cubic関数のゼロクロスするポイント間を補間前データのピッチに合わせることで、補間前データ間を1で正規化し、phaseを求める補間後データの位相と等価にすることができる。
【0028】
このように、phaseが求まれば、Cubic関数を用いて補間フィルタ係数が算出され、自動的に補間後データを生成することができる。このphaseは、図1に示すように、補間前データを拡大する際の拡大率、又は縮小する際の縮小率の逆数であり、累積加算することで補間後データの画素位置を決定するdeltaと、補間前データの端部、補間後データの端部における位相のずれを示したoffsetとの関係から算出することができる。
【0029】
なお、補間後データの画素位置は、deltaを累積加算することで算出されるため、deltaが補間前データ間のピッチよりも長い場合、補間前データの数より、生成される補間後データの数が少なくなるため縮小処理となる。一方、deltaが補間前データ間のピッチよりも短い場合、補間前データの数より、生成される補間後データの数が多くなるため拡大処理となる。
【0030】
以上のようにして、ポリフェーズフィルタである画像スケーリング回路102、104は、4個の補間前データと、phaseにより補間後データを生成し、画像の拡大又は縮小といった画像スケーリングを実現することになる。
【0031】
このような処理を実現するために画像スケーリング回路102、104は、それぞれ図3(a)、(b)に示すような構成となっている。
【0032】
図3(a)に示すように、ポリフェーズフィルタである画像スケーリング回路102は、補間前輝度データをシフトさせるシフトレジスタ111、deltaを累積加算してphaseを求めるデルタアキュムレータ112、シフトレジスタ111から供給される4個の補間前輝度データと、アキュムレータ112から供給されるphaseを用いて、キュービック関数より、補間後輝度データを生成するキュービック関数ブロック113とを備えている。
【0033】
また、画像スケーリング回路104は、補間前色差データをシフトさせるシフトレジスタ121、deltaを累積加算してphaseを求めるデルタアキュムレータ122、シフトレジスタ121から供給される4個の補間前色差データと、アキュムレータ122から供給されるphaseを用いて、キュービック関数より、補間後色差データを生成するキュービック関数ブロック123とを備えている。なお、シフトレジスタ121は、色差データCb,Crを交互に入力するため、シフトレジスタ111よりもフリップフロップの段数が多くなっている。
【0034】
ところで、図16に示したように、従来の技術の映像信号処理装置100が備えるMPEG変換処理回路103では、MPEG−1方式のデジタル映像信号をデコードして、4:2:0フォーマットから4:2:2フォーマットへ変換した図13に示す画像データの色差データCb,Crをリニア補間することで輝度データYとの位相を揃えていた。
【0035】
なお、MPEG−1方式では、4:2:0フォーマットしか規定されていないが、説明のため、図12に示す4:2:0フォーマットの画像データを変換した、図13に示す4:2:2フォーマットの画像データをMPEG−1方式の4:2:2フォーマットと呼ぶことにする。
【0036】
上述したように画像スケーリング回路104は、補間前色差データの任意の位置に、つまり任意の位相に補間後色差データを生成することができるポリフェーズフィルタである。したがって、このポリフェーズフィルタは、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データの色差データCb,Crの位相を、輝度データYの位相と揃うようにフィルタリングすることもできると考えられる。つまり、ポリフェーズフィルタによって、画像のスケーリングを実行することはもちろんのこと、従来までは、MPEG変換処理回路103で担っていたMPEG−1方式からMPEG−2方式へと変換させることもできると考えられる。
【0037】
そこで、本発明を実施するための最良の形態として示す映像信号処理装置では、色差データCb,Crを処理する色差データ処理系に関して、図4に示すようなMPEG方式の変換機能を備えたポリフェーズフィルタ10を備えるものとする。
【0038】
図4に示すように、ポリフェーズフィルタ10は、補間前色差データをシフトさせるシフトレジスタ11、deltaを累積加算してphaseを求めるデルタアキュムレータ12、シフトレジスタ11から供給される4個の補間前色差データと、デルタアキュムレータ12から供給されるphaseを用いて、Cubic関数により、補間後色差データを生成するキュービック関数ブロック13と、offsetに固定値(例えば、0.75)を加算する加算器14と、offset又は固定値を加算されたoffsetのいずれかをセレクトし、デルタアキュムレータ12に供給するセレクタ15とを備えている。このように、ポリフェーズフィルタ10は、図3(b)で示した従来の画像スケーリング回路104に、加算器14と、セレクタ15とを加えた構成となっている。
【0039】
以下に、図3(b)に示した画像スケーリング回路104に加算器14と、セレクタ15とを備えたことで、ポリフェーズフィルタ10が、画像スケーリング機能に加え、MPEG方式の変換をも実行できることについて説明をする。
【0040】
図5は、図13に示すMPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データの水平方向の輝度データY、色差データCr、Cbを1ラインずつ抽出した様子を示している。輝度データYを補間前輝度データとし、色差データCb,Crを補間前色差データとする。このようなMPEG−1方式の画像データを、ポリフェーズフィルタ10にてMPEG−2方式に変換する場合、ポリフェーズフィルタ10を介して生成される補間後色差データを、図5に示すように、補間前輝度データと同じ位相に一つ置きで配置されるようにすればよい。
【0041】
図1、図2を用いて説明したように、Cubic関数を用いる場合、Cubic関数のゼロクロスするポイント間を補間前データのピッチに合わせることで、補間前データ間を1で正規化し、phaseを求める補間後データの位相と等価にすることができる。したがって、補間前色差データC3に着目すると、輝度データYと同一位相である補間後色差データC3’とするには、0.25だけ左水平方向に位相をシフトすればよいことが分かる。
【0042】
つまり、図2で示したphaseを0.75とすれば、このphaseと、4個の補間前色差データC1、C2、C3、C4を用いれば、ポリフェーズフィルタ10にて補間後色差データC3’を生成することができる。
【0043】
図4に示すポリフェーズフィルタ10では、加算器14でoffsetに0.75を加算し、MPEG−1方式から、MPEG−2方式へと変換する場合には、セレクタ15で、0.75を加算したoffsetを選択し、MPEG方式の変換をしない場合には、offsetを選択するようにしている。また、図6に示すポリフェーズフィルタ10’のように、デルタアキュムレータ12からの出力であるphaseに0.75を加算するような構成とした場合でも全く同じである。
【0044】
図5では、deltaを1として拡大処理、縮小処理を実行せずに、MPEG−1方式からMPEG−2方式への変換を実行している場合を示しており、図4、図6に示すポリフェーズフィルタ10、ポリフェーズフィルタ10’それぞれにおいてdeltaを1、offsetをゼロとし、0.75が加算された信号をセレクタ15で選択すれば、キュービック関数ブロック13にはphaseとして0.75が供給されることになる。これにより、ポリフェーズフィルタ10を介してフィルタリングされた補間後色差データは、MPEG−2方式の色差データの位相に変換されることになる。
【0045】
このように、ポリフェーズフィルタ10は、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データを、MPEG−2方式の4:2:2フォーマットの画像データへと変換することができる。
【0046】
つまり、ポリフェーズフィルタ10は、deltaを等倍として1を与えてやると、単にMPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データを、MPEG−2方式の4:2:2フォーマットの画像データに変換する。
【0047】
また、deltaに、縮小、拡大をさせるような値を与えてやれば、上述したMPEG−1方式からMPEG−2方式の変換に加えて、通常の画像スケーリングを同時に実行することができる。例えば、図7では、delta=2を与えたため、縮小率1/2の縮小処理と同時に、MPEG−1方式からMPEG−2方式への変換を実行することができる。
【0048】
{端部処理について}
続いて、画像スケーリングを実行する際の端部処理について説明をする。4つの補間データから1つの補間後データを生成し、画像スケーリングする際、つまり補間演算処理をする際には、画像の左端、右端、つまり有効画像データの開始点及び終了点を、どの補間前データを用いて生成するかが重要となる。この端部処理には、画像の切り出し方によって様々な手法が考案されているが、一般には、図8に示すように、最初の有効画像データを重複して用いて、輝度データY1,Y1,Y2,Y3から補間後輝度データY1’、色差データC1,C1,C2,C3から補間後色差データC1’を生成している。図3(a),(b)に示した従来のポリフェーズフィルタである画像スケーリング回路102,104でも画像スケーリングの際には、このような端部処理が実行されることになる。
【0049】
ところで、本発明のポリフェーズフィルタ10では、上述したように、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データを、MPEG−2方式の4:2:2フォーマットの画像データへと変換することができるが、このときの色差データの端部処理を、図9に示すように実行する。つまり、左端にある有効画像データである色差データC1に対応した補間後色差データC1’を生成する場合には、4個の補間前色差データのうち、この色差データC1を3個用いた、色差データC1,C1,C1,C2を用いることにする。
【0050】
{MPEG−2方式→MPEG−1方式}
実際には、あまり使用されることはないが、このポリフェーズフィルタ10では、MPEG−2方式の4:2:2:フォーマットの画像データを、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データに変換することもできる。
【0051】
MPEG−2方式からMPEG−1方式に変換するには、輝度データを右方向に0.25だけシフトすればよいので、図10に示すように、ポリフェーズフィルタ10に初期phaseとして0.25を与えればよいことになる。端部においては、左端にある有効画像データである輝度データC1に対応した補間後色差データC1’を生成する際に、4個の補間前色差データのうち、この色差データC1を2個用いた、色差データC1,C1,C2,C3を用いることになる。
【0052】
つまり、MPEG−1方式からMPEG−2方式への変換と同様に、ポリフェーズフィルタ10に対して、deltaを等倍として1を与えてやると、単にMPEG−2方式の4:2:2フォーマットの画像データを、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データに変換する。また、deltaに縮小、拡大をさせるような値を与えてやれば、上述したMPEG−2方式からMPEG−1方式の変換に加えて、通常の画像スケーリングを同時に実行することができる。
【0053】
{ポリフェーズフィルタ10の実装例}
続いて、図4に示したポリフェーズフィルタ10の実装例について説明をする。例えば、ポリフェーズフィルタ10は、図11に示す集積回路50に実装される。図11に示す集積回路50は、アキュムレートデルタ(Accumulate Delta)51と、データシフタ52と、キュービックファンクション(Cubic Function)53と、ディレイ(2ck Delay)54と、セレクタ55と、ディレイ(1ck Delay)56とを備えている。
【0054】
アキュムレートデルタ51は、図4に示すデルタアキュムレータ12、セレクタ15、加算器14に相当し、deltaとしてhppf_delta、offsetとしてhppf_offsetが入力されることでphaseであるphase_hcを生成する。このアキュムレートデルタ51は、図示しないCPUによってレジスタmpeg1_mode=1と設定されたことに応じて、図4に示したセレクタ15を加算器14からの出力となるように切り換えることになる。これにより、MPEG−1方式の4:2:2フォーマットの画像データを、MPEG−2方式の4:2:2フォーマットの画像データに変換することができる。
【0055】
データシフタ52は、図4に示すシフトレジスタ11に相当し、キュービックファンクション53は、図4に示すキュービック関数ブロック13に相当する。また、ディレイ54は、色差データCb,Crによるレイテンシを調整し、ディレイ56は、輝度データYと、色差データCb,Crとのレイテンシ調整する。
【0056】
なお、図11にポリフェーズフィルタ10の実装例として示した集積回路50は、一例であって、本発明を限定するものではない。
【0057】
このようにして、ポリフェーズフィルタ10は、MPEG変換処理と、画像スケーリング処理を実行するために、色差データCb,Crに対する処理を実行する色差データ処理系において、図16に示すように従来の映像信号処理装置100が備えていたMPEG変換処理回路103、画像スケーリング回路104で実行される機能を、ポリフェーズフィルタ10のみにて実行することができる。
【0058】
これにより、このようなポリフェーズフィルタ10を備えた場合、映像信号処理装置は、MPEG変換処理、画像スケーリング処理が実行できることをそのままとしながら、大幅な回路削減並びに当該映像信号処理装置のシステムレイテンシを削減することができる。
【0059】
なお、本発明は、MPEG−1方式、MPEG−2方式といった高効率符号化方式の種別に限定されるものではなく、4:2:2フォーマットにおける色差データに位相ずれがある全ての画像データ間の変換にて有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】Cubic関数を用いたフィルタリング処理について説明するための図である。
【図2】補間フィルタ係数について説明するための図である。
【図3】(a)は、輝度データ処理系における従来の画像スケーリング回路について説明するための図であり、(b)は、色差データ処理系における従来の画像スケーリング回路について説明するための図である。
【図4】本発明を実施するための最良の形態として示すポリフェーズフィルタの構成について説明するための図である。
【図5】同ポリフェーズフィルタにおけるMPEG−1方式からMPEG−2方式への変換処理について説明するための図である。
【図6】同ポリフェーズフィルタの別な構成について示した図である。
【図7】同ポリフェーズフィルタにおいて、MPEG−1方式からMPEG−2方式への変換処理を実行すると同時に、画像スケーリング処理を実行する様子を示した図である。
【図8】従来の補間演算処理に伴う端部処理について示した図である。
【図9】上記ポリフェーズフィルタによる補間演算処理に伴う端部処理について示した図である。
【図10】同ポリフェーズフィルタにおけるMPEG−2方式からMPEG−1方式への変換処理について説明するための図である。
【図11】同ポリフェーズフィルタを実装した際の実装例を示した図である。
【図12】MPEG−1方式の4:2:0フォーマット、画像データを示した図である。
【図13】MPEG−1方式の4:2:2フォーマット、画像データを示した図である。
【図14】MPEG−2方式の4:2:2フォーマット、画像データを示した図である。
【図15】従来のMPEG変換処理回路におけるMPEG−2方式から、MPEG−1方式への変換処理について説明するための図である。
【図16】従来の映像信号処理装置について説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
10 ポリフェーズフィルタ、11 シフトレジスタ、12 デルタアキュムレータ、13 キュービック関数ブロック、14 加算器、15 セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度データ、色差データからなる4:2:2フォーマットの画像データから、上記画像データの拡大率又は縮小率によって決まる位相データに基づいた補間演算処理をすることで上記画像データ間の補間画像データを生成する補間演算処理手段と、
第1の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第1の画像データの色差データと、第2の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第2の画像データの色差データとの所定の位相ずれ分を、上記位相データに加算する加算手段と、
上記第1の画像データから上記第2の画像データへの変換、又は上記第2の画像データから上記第1の画像データへの変換が指示されたことに応じて、上記加算手段による出力を選択し、上記位相ずれ分が加算された上記位相データを上記補間演算処理手段に供給する選択手段とを備え、
上記補間演算処理手段は、上記位相ずれ分が加算された上記位相データに基づいて、上記色差データ間の補間色差データを生成すること
を特徴とする画像フィルタ回路。
【請求項2】
上記第1の高効率符号化方式は、MPEG−1(Moving Picture Expert Group-1)方式であり、
上記第2の高効率符号化方式は、MPEG−2(Moving Picture Expert Group-2)方式であること
を特徴とする請求項1記載の画像フィルタ回路。
【請求項3】
輝度データ、色差データからなる4:2:2フォーマットの画像データから、上記画像データの拡大率又は縮小率によって決まる位相データに基づいた補間演算処理をすることで上記画像データ間の補間画像データを生成する補間演算処理工程と、
第1の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第1の画像データの色差データと、第2の高効率符号化方式に対応する4:2:2フォーマットの第2の画像データの色差データとの所定の位相ずれ分を、上記位相データに加算する加算工程と、
上記第1の画像データから上記第2の画像データへの変換、又は上記第2の画像データから上記第1の画像データへの変換が指示されたことに応じて、上記加算工程による出力を選択し、上記位相ずれ分が加算された上記位相データを上記補間演算処理工程に供給する選択工程とを備え、
上記補間演算処理工程は、上記位相ずれ分が加算された上記位相データに基づいて、上記色差データ間の補間色差データを生成すること
を特徴とするフィルタリング処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−115340(P2006−115340A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302091(P2004−302091)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】