説明

画像レーダ装置

【課題】不要な距離変化を推定する際に、同じレンジに存在する複数の反射点間の干渉の影響で増大する補償量の推定誤差を低減する。
【解決手段】レンジヒストリから時系列データを抽出する時系列データ抽出手段201と、短時間フーリエ変換を適用してドップラヒストリを生成するドップラヒストリ生成手段202と、短時間ドップラヒストリを切り出すヒストリ切出し手段203と、短時間ドップラヒストリからドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率推定手段204〜206と、ドップラ周波数の変化率に基づいて目標とレーダとの間のレンジの変化を推定するレンジ変化算出手段207と、レンジの変化に基づいて補償量を算出する補償量算出手段208と、補償量に基づいてレンジヒストリの不要なレンジおよび位相の変化を補償する運動補償器21とを有する2次元フーリエ変換補償回路20を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する目標に対して電波を送信することにより目標からの反射波を受信して、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを生成し、レンジヒストリのクロスレンジ圧縮により目標の画像を得る画像レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SAR(Synthetic Aperture Radar)やISAR(Inverse SAR)などの画像レーダは、観測対象(以下目標)上の反射点を、レーダからの距離であるレンジ、およびレーダと目標との間の相対運動で発生するドップラ周波数で分離して目標に関する電波画像を生成する。
【0003】
ところが、上記相対運動に含まれる不要な成分の影響で、画像上で各反射点のレンジとドップラが変化し、結果として画像はぼけてしまう。これに対して、従来の画像レーダ装置は、以下のような対策が取られている。
【0004】
従来の画像レーダ装置は、送信機で変調され、送受信アンテナを介して目標に照射された高周波パルスを受信し、これをパルス圧縮して得られるレンジプロフィールの時間履歴(以下、レンジヒストリと称す)において、目標とレーダとの間の不要な相対運動の影響で発生する上述のレンジとドップラの変化を、まず受信信号を短時間フーリエ変換して得られるドップラプロフィールの時間履歴(以下、ドップラヒストリと称す)に基づいて推定する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ドップラヒストリ上には、目標上の複数の各反射点の軌跡が存在する。従来方法は、これらの軌跡を同じ傾きの直線とみなし、ドップラヒストリの振幅分布を2次元フーリエ変換して得られるスペクトル上で、原点を通る傾きの異なる複数の積分経路を設定する。そして、従来方法は、各積分経路に沿ったスペクトルの積分結果の最大値に基づいてスペクトル上の直線を特定し、その情報に基づいて目標上の反射点のドップラ周波数の時間に対する1次変化を推定した。
【0006】
さらに、その情報から、2次のレンジと位相の変化を推定する(位相の2次の変化は、ドップラの1次の変化に対応)。最終的に、この推定結果に基づき、各反射点のレンジとドップラ周波数との変化をなくすような補償を行い、画像のぼけを除去することができる。また、この処理を前処理として用いた後に、別の方法を適用して、さらに補償精度を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−74832号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。従来のレーダ装置は、高精度な運動補償を行うために、受信信号上の各反射点の位相変化に基づいて距離変化を推定する際に、同じレンジに存在する複数の反射点間の干渉の影響で補償量の推定誤差が増大するという問題があった。
【0009】
また、受信信号上の各反射点の位置変化に基づいて補償量を推定する際に、補償量の推定精度が不足する問題があった。
【0010】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、不要な距離変化を推定する際に、同じレンジに存在する複数の反射点間の干渉の影響で増大する補償量の推定誤差を低減することのできる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像レーダ装置は、移動する目標に対して電波を送信し、目標からの反射波を受信して、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを生成し、レンジヒストリのクロスレンジ圧縮により目標の画像を得る画像レーダ装置において、レンジヒストリから時系列データを抽出する時系列データ抽出手段と、抽出された時系列データに短時間フーリエ変換を適用してドップラプロフィールの時間履歴であるドップラヒストリを生成するドップラヒストリ生成手段と、生成されたドップラヒストリから区分時間領域のドップラヒストリである短時間ドップラヒストリを切り出すヒストリ切出し手段と、切り出された短時間ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡のドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率推定手段と、複数の短時間ドップラヒストリに対して推定されたドップラ周波数の変化率に基づいて全時間におけるドップラ周波数の変化を推定し、推定結果に基づいて目標とレーダとの間のレンジの変化を推定するレンジ変化算出手段と、推定されたレンジの変化に基づいて、レンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量および位相補償量を算出する補償量算出手段と、算出されたレンジ補償量および位相補償量に基づいてレンジヒストリの不要なレンジおよび位相の変化を補償する運動補償器とを有する2次元フーリエ変換補償回路を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒストリを区分領域に分割して、各区分領域ごとに2次元フーリエ変換を適用して求めたヒストリの変化率に基づいて補償量を推定することにより、不要な距離変化を推定する際に、同じレンジに存在する複数の反射点間の干渉の影響で増大する補償量の推定誤差を低減することのできる画像レーダ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の画像レーダ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
本発明の画像レーダ装置は、区分領域ごとに分割されたヒストリに対してフーリエ変換を施すことにより、推定誤差を低減した補償量を推定できることを特徴とするものである。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における画像レーダ装置の構成図である。図1において、送信機1は、目標へ照射する広帯域パルスを生成・増幅する。送受切換器2は、送信と受信の切換えを行う。送受信アンテナ3は、送信機1で生成された広帯域パルスを目標に対して送信し、反射した広帯域パルスを受信するアンテナである。
【0015】
受信機4は、送受信アンテナで受信した信号を、送受切換器2を介して受信する。さらに、パルス圧縮器5は、受信信号をパルス圧縮する。パルス圧縮された信号は、粗補償回路10、2D−FT補償回路20、精細補償回路30による補償処理を経て、クロスレンジ圧縮器40に入力される。
【0016】
粗補償回路10は、粗補償量推定器100および運動補償器11で構成され、運動の粗補償を行う。粗補償量推定器100は、画像再生の際にぼけや画質の劣化の原因となる不要な運動成分を粗い精度で推定して、この運動成分を補償するための補償量を設定する。そして、運動補償器11は、推定された運動補償量を用いて運動を補償する。
【0017】
2D−FT補償回路20は、2次元フーリエ変換(2D−FT)補償回路のことであり、2D−FT補償量推定器200および運動補償器21で構成され、運動の補償を行う。2D−FT補償量推定器200は、2次元フーリエ変換に基づいて不要な運動成分を推定して、この運動成分を補償するための補償量を設定する。そして、運動補償器21は、推定された運動補償量を用いて運動を補償する。
【0018】
精細補償回路30は、精細補償量推定器300および運動補償器31で構成され、運動の精細補償を行う。精細補償量推定器300は、不要な運動成分を精細に推定して補償量を設定する。そして、運動補償器31は、推定された運動補償量を用いて運動を補償する。
【0019】
クロスレンジ圧縮器40は、粗補償回路10、2D−FT補償回路20、精細補償回路30により順次運動補償された後の信号を、フーリエ変換して開口合成後のレーダ画像を得るクロスレンジ圧縮回路である。
【0020】
実施の形態1における画像レーダ装置は、2D−FT補償回路20内の2D−FT補償量推定器200の働きにより、不要な距離変化を推定する際に、同じレンジに存在する複数の反射点間の干渉の影響で増大する補償量の推定誤差を低減することを特徴としている。そこで、この2D−FT補償量推定器200の詳細構成について、次に説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1の画像レーダ装置における2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。図2の2D−FT補償量推定器200は、時系列データ抽出手段201、ドップラヒストリ生成手段202、ヒストリ切出し手段203、2D−FT手段204、スペクトル画像傾き推定手段205、ドップラ変化率算出手段206、レンジ変化算出手段207、および補償量算出手段208を備えており、さらに、記憶部として、STFT点数記憶部291、ヒストリ切出し点数記憶部292、およびスペクトル画像傾き記憶部293を備えている。
【0022】
さらに、図3は、本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像傾き推定手段205の内部構成図であり、図2におけるスペクトル画像傾き推定手段205の詳細構成を示したものである。
【0023】
図3のスペクトル画像傾き推定手段205は、スペクトル画像傾き推定メイン手段211aおよび211b、ゼロ傾き切換手段212、既知傾き付加手段213、2D−FT手段214、既知傾き除去手段215、およびスペクトル画像傾き出力手段216で構成される。
【0024】
ここで、スペクトル画像傾き推定メイン手段211a、211bは、同一の機能を有し、スペクトル画像傾き推定メイン手段211aが第1のスペクトル画像傾き推定メイン手段に相当し、スペクトル画像傾き推定メイン手段211bが第2のスペクトル画像傾き推定メイン手段に相当する。また、2D−FT手段214は、2D−FT手段204と同一の機能を有し、第2の2D−FT手段に相当する。
【0025】
さらに、図4は、本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像傾き推定メイン手段211の内部構成図であり、図3におけるスペクトル画像傾き推定メイン手段211aおよび211bの詳細構成を示したものである。
【0026】
図4の、スペクトル画像傾き推定メイン手段211は、Y値設定手段221、傾き候補設定手段222、X連続値算出手段223、X切捨て値設定手段224、X差分値算出手段225、隣接X値積分手段227、加重正規化ベクトル生成手段226、およびピーク傾き検出手段228を備えており、さらに、記憶部として、積分結果記憶部294を備えている。
【0027】
以下、これら図1〜4の構成図に基づいて、本実施の形態1の画像レーダ装置における具体的な処理について説明する。送信機1は、時間とともに周波数が変化する信号(チャープ信号)に変調された高周波パルスを発生し、送受切換器2を介して送受信アンテナ3に供給する。
【0028】
送受信アンテナ3は、供給された高周波パルスを目標6に対して送信する。送信した高周波パルスは、目標6で反射され、この反射された信号(エコー)は、送受信アンテナ3に入り、送受切換器2を介して受信機4で復調される。
【0029】
受信機4で復調された信号は、送信信号の瞬時周波数に対して、画像レーダ装置と目標6との間の電波伝搬の往復に要する時間分を遅延したものである。したがって、パルス圧縮器5において、送信信号を用いて受信信号にマッチドフィルタをかけることにより、遅延に相当した時間にインパルスを得ることができる。このことにより、レンジ分解能が向上する。この圧縮後の波形を以下では、レンジプロフィールと呼ぶ。
【0030】
目標6に対して高周波パルスを照射して、受信信号をパルス圧縮する上述の一連の処理を、目標6とレーダとの相対位置関係を変えながら繰り返し、得られたレンジプロフィールを蓄積する。以下の説明において、照射された高周波パルスの番号を、ヒットh(h=0、1、2、…、H−1:ただし、Hは、ヒット数)と呼ぶことにする。
【0031】
また、レンジのサンプリング周波数をBsとすると、サンプリング周期は、1/Bsとなる。サンプリング開始時刻からの遅延がt[s]の受信信号は、t/(1/Bs)=tBs点目にサンプリングされる。
【0032】
このサンプリング番号を、以下ではレンジセルm(m=0、1、2、…、M−1:ただし、Mは、レンジセル数)と表す。なお、遅延t[s]は、光速をC[m/s]として、距離差tC/2[m]に相当する。よって、1レンジ分解能セルは、C/(2Bs)[m]になる。
【0033】
以下では、蓄積されたHヒット分のレンジプロフィールを、2次元配列S_0(m、h)で与える。S_0(m、h)は、レンジプロフィールの時間履歴を与えることから、これをレンジヒストリと呼ぶことにする。
【0034】
次に、レンジと直交するクロスレンジ方向の圧縮原理について述べる。図5は、本発明の実施の形態1におけるクロスレンジ方向の圧縮原理に関する説明図である。図5に示すxy平面内を移動する目標は、目標上の仮想的な重心位置Gまでの距離を固定するように適当な補償をすると、目標からの受信信号は、同じ目標が空間内に固定されたGを中心に等価的な回転をしている場合の受信信号と等しいとみなすことができる。
【0035】
レーダを基準とした上記重心位置ベクトル方向の単位ベクトルをii_0、等価的な回転運動(また、回転運動のみを行う目標の場合は、その回転運動)を与える角速度ベクトルをww、中心周波数に対応する波長をλとすると、Gを基準とした位置ベクトルがrr_pで与えられる点Pのドップラ周波数f_pは、近似的に次式(1)で与えられる。
【0036】
【数1】

【0037】
すなわち、ドップラ周波数f_pは、点Pの(ii_0×ww)方向の位置に比例した値となることが分かる。
【0038】
ここで、ii_0と(ii_0×ww)は、直交することから、目標からの受信信号に関するレンジとドップラ周波数との2次元分布は、目標上の反射強度分布をii_0と(ii_0×ww)で定義される2次元平面に投影した画像に対応することとなる。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態1における目標を2次元平面に投影した画像の例示図である。ISARは、上述のレンジヒストリを、各レンジごとにヒット方向にフーリエ変換することで、受信信号のレンジおよびドップラ分布、すなわち、目標に関する2次元の電波画像を得る。
【0040】
ここで、図7は、本発明の実施の形態1において、画像中の曲線が、複数の反射点の各時間におけるレンジを表す軌跡を示した図である。また、図8は、本発明の実施の形態1において、画像中の曲線が、複数の反射点の各時間におけるドップラ位置を表す軌跡を示した図である。
【0041】
ISARは、上述のように、各反射点をレンジとドップラ周波数で分離していることから、例えば、この図7や図8のように、受信信号中で各反射点のレンジやドップラ周波数が変化すると画像がぼけてしまう。
【0042】
そこで、レンジやドップラ周波数の変化を取り除くように補償をする必要がある。まず始めに、粗補償回路10中の粗補償量推定器100は、目標の追尾や従来の受信信号に基づく推定処理の結果等を用いて、各ヒットhにおけるレーダと重心との間の距離変化r_raw(h)を推定する。
【0043】
推定された距離変化r_raw(h)に基づいて、位相変化φ_raw(h)、およびサンプリング間隔相当の距離幅で規格化したレンジ変化(以下では規格化レンジ変化と称す)m_raw(h)を、それぞれ次式(2)、(3)で算出する。
【0044】
【数2】

【0045】
次に、運動補償器11は、これらの値に基づいて、S_0(m、h)のレンジと位相を次式(4)で補償して、粗補償後のレンジヒストリs_1(m、h)を得る。
【0046】
【数3】

【0047】
ただし、式(4)中の処理であるAlignは、レンジを補償する処理であり、次式(5)〜(7)で与えられる。
【0048】
【数4】

【0049】
ここでは、レンジの補償量が1レンジセル以下の精度で与えられることを想定して、式(5)〜(7)で示したように、レンジのスペクトルの位相の補正に基づいてレンジ補償を行っている。
【0050】
粗補償回路10による補償の後に、2D−FT補償回路20は、その内部の2D−FT補償量推定器200において、受信信号を短時間フーリエ変換(Short Time Fourier Transform:STFT)をして得られるドップラヒストリに基づいて補償量の推定を行う。
【0051】
図2の時系列データ抽出手段201は、レンジヒストリs_1(m、h)から、ドップラヒストリを生成するためのデータ列d(h)を抽出する。ここで、図9は、本発明の実施の形態1におけるレンジヒストリの模式図であり、図中の太い線が、いくつかの反射点の軌跡を表している。
【0052】
時系列データ抽出手段201は、注目する反射点の軌跡が含まれるように、図9中に横線で示す、レンジの切出し範囲(切出し範囲のレンジ最小値m_stt、レンジ最大値m_end)を設定し、次式(8)により切出し範囲を総和して、d(h)を得る。
【0053】
【数5】

【0054】
ここで、次段以降の準備のため、d(h)をh<0およびh>H−1の範囲にも拡張しておき、その値を0としている。なお、m_stt、m_endについては、全レンジ範囲のデータを総和するようにm_stt=0、m_end=M−1としても構わない。
【0055】
次に、ドップラヒストリ生成手段202は、d(h)より、まず、次式(9)で与えられるドップラヒストリ生成用配列d_cut(h’、h_c)を生成する。
【0056】
【数6】

【0057】
ここで、D_cutは、d(h)からデータを切出す切出し点数であり、STFT点数記憶部291にあらかじめ蓄積されている値(以下では、この値をSTFT点数と称す)を読み出す。また、D_hokanは、ドップラヒストリ生成の際のゼロ詰め後点数であり、h_cは、切出し中心ヒットであり、h’は、ドップラヒストリ生成の際のヒットである。
【0058】
ここでは、D_cut≦D_hokanとすることで、ドップラヒストリをD_hokan/D_cut倍にゼロ詰め補間して、ドップラヒストリを詳細化する。
【0059】
次に、ドップラヒストリ生成手段202は、次式(10)に示すように、d_cut(h’、h_c)についてh’方向にフーリエ変換を行って、ドップラヒストリdop_hist(k’、h_c)を得る。
【0060】
【数7】

【0061】
ただし、k’は、ドップラヒストリにおけるドップラセル番号である。ここでは、次段の処理を考慮して、dop_hist(k’、h_c)をh_c<0およびh_c>H−1の範囲に拡張して、0をセットしておく。
【0062】
ドップラヒストリ上には、複数の反射点の軌跡が現れる。ISAR画像上で、各反射点がドップラ方向にぼけない場合には、ドップラヒストリ上のそれぞれの反射点の軌跡は、等ドップラの直線となっている。
【0063】
しかし、ISAR画像上の各反射点がドップラ方向にぼける場合には、各反射点の軌跡は、ヒットの変化とともにドップラ方向に変化している(すなわち、各反射点のドップラ周波数がヒットの変化とともに変化する)。
【0064】
ただし、このドップラ周波数の変化は、同じ目標の位置変化によって発生していることから、その変化量自体は、全反射点でほぼ等しいと期待される。以下では、その変化量を推定する。
【0065】
ヒストリ切出し手段203は、ヒストリ切出し点数記憶部292に蓄積されたヒストリの切出し点数D2_cutに基づいて、入力したヒストリ(ここではドップラヒストリ)を切出す。
【0066】
入力したヒストリを、以下では、一般的にimg00(y、x0)と表す。ここで、img00(y、x0)におけるy軸がdop_hist(k’、h_c)におけるk’軸に、同じくx0軸がh_c軸にそれぞれ対応する。
【0067】
ヒストリ切出し手段203は、次式(11)に示すように、中央x値であるx_cを変えながらimg00(y、x0)からx方向の幅がD2_cutの短時間ヒストリを切出し、これを、img0(y、x、x_c)としてヒストリ切出し点数記憶部292に格納する。
【0068】
【数8】

【0069】
図10は、本発明の実施の形態1における短時間ヒストリの切出しの例示図である。図10において、x_c=x_c1の時には横線の領域が切出され、x_c=x_c2の時には斜線の領域が切出される。この切出し幅D2_cutが短くなるにつれ、その画像上の軌跡を直線とみなせるようになる。
【0070】
すなわち、D2_cutを短くした場合には、各区分領域での軌跡の変化を推定する問題は、画像上の同じ傾きの直線の傾きを推定する問題に簡単化できると期待される。
【0071】
次に、2D−FT手段204は、各x_cごとに得られた2次元画像を2次元フーリエ変換してそれぞれスペクトルを得る。
【0072】
ここで、img0(y、x、x_c)において、x_cを与えた場合に定まるyとxに関する2次元配列を、改めて一般的にimg(y、x)と呼ぶことにする。ここで、img(y、x)のy方向の画素数をN_y、x方向の画素数をN_xとする。
【0073】
img(y、x)を振幅検出した後に2次元フーリエ変換し、下式(12)に示すように、img(y、x)のスペクトルfimg(f_y、f_x)を得る。
【0074】
【数9】

【0075】
ここで、f_x、f_yは、それぞれx、y方向の空間周波数である。次に、スペクトル画像傾き推定手段205は、入力されたスペクトル画像fimg(f_y、f_x)に基づいて、複素画像img(y、x)上の軌跡の傾きを推定する。
【0076】
図11および図12は、本発明の実施の形態1における傾きを推定する際の説明図である。画像|img(y、x)|上で傾き(x方向に1画素進む間にy方向に進む画素数)aが等しくy切片が異なる任意の直線(図11)は、スペクトル画像上で原点を通り、傾きaが次式(13)で与えられる直線に変換される(図12参照)。
【0077】
【数10】

【0078】
図3に示したように、スペクトル画像傾き推定手段205内部のスペクトル画像傾き推定メイン手段211aは、2D−FT手段204より入力されたスペクトル画像fimg(f_y、f_x)で、原点を通り、傾きが異なる複数の積分経路を設定して、それぞれの積分経路に沿った積分値の最大値に基づいてスペクトル画像内の直線を検出する。
【0079】
図4に示したように、スペクトル画像傾き推定メイン手段211a内部のpY値設定手段221は、積分経路を設定するために、2N_x点のスペクトル画像のf_y方向の値を設定する。まず、次式(14)のfy0(i_ny)を設定する。
【0080】
【数11】

【0081】
次に、スペクトル画像のf_y方向の画素番号が0〜N_y−1で与えられることを想定し、次式(14)’のモジュロ演算でf_y(i_ny)を与える。
【0082】
【数12】

【0083】
傾き候補設定手段222は、N_A種類の傾きa_cand(i_nA)(i_nA=0、1、・・、N_A−1)を設定し、これを順に出力する。次に、X連続値算出手段223は、傾き候補設定手段222から出力された各A_cand(i_nA)ごとに、次式(15)で、各f_y0(i_ny)に対するf_x(i_ny)の値を得る。
【0084】
【数13】

【0085】
ここで得られたf_x(i_ny)は、連続値であるが、積分を行う際には、画素を特定するために、これを離散化して表現する必要がある。
【0086】
ここでは、連続値の近傍の隣接する2画素の線形補間により積分値を算出する。そのために、X切捨て値設定手段224は、f_x(i_ny)の小数点以下を切り捨てた値f_xom0(i_ny)を得る。
【0087】
つぎに、f_xom0(i_ny)の値が、スペクトル画像の外、すなわち、f_xom0(i_ny)<0もしくは、f_xom0(i_ny)>N_x−1である場合を考える。
【0088】
スペクトル画像上で、画像の一端から外に出た軌跡は、折り返しにより反対側の端から表れることから、ここでは、次式(16)のモジュロ演算により、折り返し後のfxの値f_xom(i_ny)を得る。
【0089】
【数14】

【0090】
同様に、次式(17)によりf_xom(i_ny)より1大きな画素番号f_xomp1(i_ny)を得る。
【0091】
【数15】

【0092】
図13は、本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像上での積分処理の説明図である。この図13には、黒丸で示した連続値f_x(i_ny)に対して、f_xom(i_ny)に対応するセルをクロス斜線のハッチングで、f_xomp1(i_ny)に対応するセルを縦線のハッチングでそれぞれ示している。
【0093】
X差分値算出手段225は、次式(18)により、f_x(i_ny)とfxom0(i_ny)の差分値delta_fx(i_ny)を算出する。
【0094】
【数16】

【0095】
加重正規化ベクトル生成手段226は、積分の際の各f_yごとの重みベクトルW(i_ny)を次式(19)により設定する。
【0096】
【数17】

【0097】
ここで、Win_data(fimg(f_y、f_x))は、入力したスペクトル画像fimg(f_y、f_x)から定まる重みである。一般に、fimg(f_y、f_x)においては、直流から離れるに従って信号レベルが低くなることから、傾きの推定精度向上のために、直流から遠い高域側の信号を持ち上げることが有用である。
【0098】
このことを踏まえ、例えば、Win_data(fimg(f_y、f_x))として、各f_yにおけるfimg(f_y、f_x)の振幅最大値を等しくするような重みや、各f_yにおけるfimg(f_y、f_x)の総電力を等しくするような正規化系の重みが考えられる。
【0099】
また、Win(i_ny)は、Win_data(fimg(f_y、f_x))による正規化系の重みを補正するための重みであり、目的に応じて適当な重みを用いる。
【0100】
例えば、高域側のレベルの持ち上げすぎを緩和するためには、高域側、すなわち、i_nyの値でいうとi_ny=0またはi_ny=2N_y−1付近でレベルが下がる重み(例えば、ハニング重みなど)を用いる。
【0101】
隣接X値積分手段227は、次式(20)により線積分を行い、積分結果s_intを積分結果記憶部294に格納する。
【0102】
【数18】

【0103】
スペクトル画像傾き推定メイン手段211aは、以上の処理を傾きA_cand(i_nA)を変えて繰り返す。
【0104】
そしてピーク傾き検出手段228は、全ての積分経路に関する積分が終わった後に、積分値の最大値を探索し、その時の傾きをA_estとして得る。そして、式(13)のAにA_estを代入して得られる傾きaを入力画像img(x、y)上の軌跡の傾きの推定結果a_estとして出力する。スペクトル画像傾き推定メイン手段211aにより推定された傾きの推定結果a_estは、第1の傾き量に相当する。
【0105】
次に、図3におけるゼロ傾き切換手段212は、傾きa_estを調べ、この値がゼロであるか否かによって、後段の処理を切換える。まず、傾きがゼロでない場合には、この傾きa_estをスペクトル画像傾き出力手段216に送る。
【0106】
また、傾きがゼロの場合には、2次元フーリエ変換に基づく傾き推定が、傾きゼロ付近で精度が低く、ゼロと誤推定することが多いことを踏まえ、再度傾きを推定するために、既知傾き付加手段213の処理に進む。
【0107】
既知傾き付加手段213は、ヒストリ切出し手段203から入力されるimg(y、x)に対して、軌跡の傾きが、精度の低いゼロ付近から外れるように、次式(21)に示すように、既知の傾きa_0の補償を行う。
【0108】
【数19】

【0109】
2D−FT手段214は、このimg_2(y、x)に対して2次元フーリエ変換を適用してfimg_2(f_y、f_x)を得る。スペクトル画像傾き推定メイン手段211bは、fimg_2(f_y、f_x)に対して、前述の原点を通る直線の検出を行い、a_est2を得る。スペクトル画像傾き推定メイン手段211bにより推定された傾きの推定結果a_est2は、第2の傾き量に相当する。
【0110】
既知傾き除去手段215は、前段のスペクトル画像傾き推定メイン手段211bで得られた傾きa_est2から、既知傾き付加手段213で付加された既知の傾きa_0を差し引き、得られたa_estをスペクトル画像傾き出力手段216に出力する。この差分として得られたa_estは、第3の傾き量に相当する。
【0111】
スペクトル画像傾き出力手段216は、ゼロ傾き切換手段212から得られた第1の傾き量であるa_est、または、既知傾き除去手段215から得られた第3の傾き量であるa_estを出力する。そして、スペクトル画像傾き推定手段205の出力である傾きa_estをスペクトル画像傾き記憶部293に蓄積する。
【0112】
図2の2D−FT補償量推定器200は、ヒストリ切出し手段203でヒストリを切出してからスペクトル画像傾き記憶部293に傾きを蓄積するまでの処理を、切出し位置の中心を与えるx_cを変えながら繰り返す。ここでは、x_cをヒットの中心の意味でh_cと表し、蓄積された傾きをh_cに対する傾きとしてa_est(h_c)と表す。
【0113】
入力されたヒストリがドップラヒストリの場合、a_est(h_c)は、1ヒットあたりのドップラ周波数セルの変化率である。そこで、ドップラ変化率算出手段206は、まず、a_est(h_c)を1[s]当りのドップラ周波数[Hz]の変化率α_est[Hz/s]に次式(22)で換算する。
【0114】
【数20】

【0115】
ここで、PRIは、パルス繰り返し周期である。次に、各中心ヒットh_cにおける時刻t(h_c)を次式(23)で与える。
【0116】
【数21】

【0117】
ここで、図14は、本発明の実施の形態1におけるドップラの変化率を推定する処理の説明図である。図14に示すように、各時間t(h_c)、α_est(h_c)の組にP次の最小二乗法を適用して、ドップラ周波数の変化率α_fit(t)を次式(24)のように時刻tに対するP次の多項式で表す。
【0118】
【数22】

【0119】
レンジ変化算出手段207は、まず、各時刻tにおけるドップラ周波数変化f_fit(t)を次式(25)で得る。
【0120】
【数23】

【0121】
次に、各時刻tにおけるこのドップラ周波数変化f_fit(t)と、これに対応する距離変化r_fit(t)の関係が式(26)で与えられることを踏まえ、r_fit(t)を式(27)のように得る。
【0122】
【数24】

【0123】
r_fit(t)に対応する位相φ_2DFT(t)は、次式(28)のように与えられる。
【0124】
【数25】

【0125】
また、レンジのサンプリング周期Δ_rを基準としたレンジ変化である規格化レンジ変化m_fit(t)は、次式(29)で与えられる。
【0126】
【数26】

【0127】
補償量算出手段208は、上記φ_fit(t)とm_fit(t)に基づいて各ヒット時刻t(h_c)における位相φ_2DFT(h_c)と規格化レンジ変化m_2DFT(h_c)を算出した上でこれを出力する。
【0128】
2D−FT補償量推定器200の後段の運動補償器21は、補償量算出手段208より出力されたφ_2DFT(h_c)とm_2DFT(h_c)を式(4)のφ_raw(h)とm_raw(h)に代入し、さらに、S_0(m、h)に、粗補償回路10より得られるレンジヒストリs_1(m、h)を代入して粗補償後のレンジヒストリに残存する不要な運動を補償する。
【0129】
2D−FT補償回路20による補償結果をs_2(m、h)と表す。s_2(m、h)においては、以上のように2D−FTに基づく補償を行ったので、不要なレンジとドップラ周波数の変化が低減されている。
【0130】
よって、s_2(m、h)に後述のクロスレンジ圧縮を適用するのみでも、ISAR画像が結像する可能性があるが、ここでは、s_2(m、h)に不要な運動成分が残存していることを考慮し、精細補償回路30を用いて、残存する不要な運動成分をさらに補償する。
【0131】
精細補償回路30内では、2D−FT補償回路20の出力であるレンジヒストリs_2(m、h)から、補償量を推定する際のデータ列d_2(h)を、式(8)のs_1(m、h)にs_2(m、h)を代入することで得る。
【0132】
ただし、前段の2D−FT補償回路20の処理で補償誤差が低減されたのを踏まえ、切出し範囲を設定するm_sttとm_endの間隔を、2D−FT補償量推定器200における間隔より狭く設定する。
【0133】
この間隔を狭くすることにより、異なるレンジに存在する反射点と干渉して補償量の補償精度が劣化する問題を低減できる。さらに、精細補償量推定器300は、d_2(h)に、次式(30)のFFT処理を適用する。
【0134】
【数27】

【0135】
次に、FFT後の信号D_2(k)の絶対値を最大とするk=k_maxを、次式(31)のように探索する。
【0136】
【数28】

【0137】
次に、次式(32)に従って、D_2(k)を、−k_maxだけサーキュラシフトする。
【0138】
【数29】

【0139】
ここで、shift(A(x)、xshift)は、配列A(x)をxshiftだけサーキュラシフトさせるオペレータである。この処理により、D_2(k)、すなわち、d_2(h)に含まれる信号のうち、電力最大の信号成分がDC成分となる。
【0140】
次に、D_3(k)に対して、次式(33)のように、DC成分付近の成分のみを抽出し、他の周波数成分を抑圧するためのフィルタ処理を行う。
【0141】
【数30】

【0142】
ここで、Win(k)は、DC付近の信号成分のみを抽出し、他の周波数成分を抑圧するための適当な重み係数である。例えば、この重みを通過帯域幅2W_k+1ドップラセルの矩形フィルタとして構成する場合には、Win(k)は、次式(34)で与えられる。
【0143】
【数31】

【0144】
以上の処理により、DC成分付近の信号のみを抽出できる。すなわち、次に実施する補償量の推定において、抽出信号d_2(h)に含まれる、ドップラ周波数が異なる複数の反射点の信号間の干渉の影響を低減できる。
【0145】
なお、干渉の影響を低減させるためには、上記フィルタの通過帯域幅を狭める必要があるが、注目する反射点の信号について、不要な運動に基づいて発生するドップラの広がり成分を通過させるためには、フィルタの帯域幅を広げる必要がある。
【0146】
ここで、不要な運動に基づいて発生するドップラの広がりは、一般に、不要な運動成分が大きくなるに従って広くなることから、不要な運動成分の影響が小さいほど、フィルタの通過帯域幅を絞って干渉の影響を低減しやすくなる。
【0147】
s_2(m、h)については、前段の2D−FT補償回路20で不要な運動成分が大幅に低減されていると期待されることから、通過帯域幅を狭くして、より干渉の影響を低減できると期待される。
【0148】
次に、精細補償量推定器300は、D_4(k)を次式(35)で逆FFTしてd_4(h)を得る。
【0149】
【数32】

【0150】
そして、d_4(h)の位相に対して、従来方法と同様に2πごとの位相の折り返しの除去(アンラップ)処理、および、アンラップ後の位相に対する適当な次数の最小二乗法を適用して、不要な運動成分に基づく位相変化を得る。
【0151】
さらに、この位相変化を式(28)の関係に基づいて距離変化に換算する。さらに、得られた距離変化を規格化レンジ変化に換算した上で、この値と前記の最小二乗法適用後の位相変化を出力する。
【0152】
精細補償量推定器300の後段の運動補償器31は、得られた規格化レンジ変化と位相変化に基づいてs_2(m、h)の運動補償を行い運動補償後のレンジヒストリs_3(m、h)を得る。
【0153】
クロスレンジ圧縮器40は、得られたレンジヒストリs_3(m、h)に対して、次式(36)のヒット方向のフーリエ変換を適用し、最終的にISAR画像img(m、k)を得る。
【0154】
【数33】

【0155】
以上のように、本実施の形態1によれば、ドップラヒストリを区分領域に分割して、各区分領域ごとに、2次元フーリエ変換を適用して各反射点のドップラ変化率を推定している。区分領域の幅を狭く設定することで、ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡を直線とみなすことができる。さらに、各反射点は同じ目標上に存在することから、ドップラの変化率もほぼ等しくなると期待される。
【0156】
さらに、一般に2次元フーリエ変換によって、画像上の同じ傾きの直線は、原点を通る互いに同じ傾きの直線に変換されることから、例えドップラヒストリ上に複数の反射点の信号が存在する場合においても、上記ドップラヒストリの区分領域のスペクトルにおける原点を通る直線の探索を行うことで、信号間の干渉の影響を低減して補償量を推定することができる。
【0157】
さらに、2D−FT補償回路20において、2次元フーリエ変換に基づく運動補償を行うことで、精細補償回路でレンジとドップラの幅を絞りながら補償量の推定を行えるので、干渉の影響を低減して補償量を高精度に推定できる。
【0158】
さらに、2D−FT補償回路20においては、各区分的なドップラヒストリ上の各反射点のドップラ周波数の変化率に高次の最小二乗法を適用して、ドップラ周波数の変化を推定するため、干渉の影響を低減しながら、補償量を高次成分まで推定できる。
【0159】
さらに、ドップラヒストリ生成の際にゼロ詰め補間を行ってドップラセルの幅を小さくしているので、補償量を高精度に推定できる利点がある。
【0160】
さらに、ドップラヒストリ生成のためのデータ列を隣接する複数のレンジの信号を総和して抽出するので、注目する反射点がレンジを移動しても、その反射点の信号を用いることができるようになり、補償量を高精度に推定できる利点がある。
【0161】
さらに、各区分的なドップラヒストリ上の各反射点のドップラ周波数の変化率を、2次元フーリエ変換を用いて得られるスペクトル画像上での原点を通る直線の検出問題に簡単化して、これを、原点を通り傾きの異なる複数種類の積分経路に沿ったスペクトル画像の積分と、その積分結果のピーク検出により行うため、複数の反射点の干渉の影響を低減して、高精度に補償量を推定できる利点がある。
【0162】
さらに、積分経路に沿った積分を行う際に、高周波成分を持ち上げたり、持ち上げすぎを抑制するような重みを加えるため、変化率の推定精度が向上する利点がある。さらに、積分経路に沿った積分を行う際に、積分経路付近のセルの振幅の線形補間に基づいて積分を行うため、変化率の推定精度が向上する利点がある。
【0163】
さらに、区分的なドップラヒストリに変化率を推定した後に、変化率がゼロであるかどうかを判定し、変化率がゼロでないと判定された場合には、そのまま出力し、仮に変化率がゼロと判定された場合には、区分的なドップラヒストリに既知のドップラの変化率が加わるような補償をした上で、再度スペクトル画像を生成して変化率を推定し、先程加えた既知の変化率を差し引いた結果を最終的な変化率の推定結果として出力するので、変化率がゼロ近傍で、値が引きずられてゼロと誤りやすい場合にも、変化率を正しく推定できる。
【0164】
実施の形態2.
本実施の形態2では、2D−FT補償量推定器200の別の構成例について説明する。図15は、本発明の実施の形態2における2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。実施の形態1における図2の2D−FT補償量推定器200と比較すると、図15の2D−FT補償量推定器200は、時系列データ補償手段231、STFT点数変更手段232、および修正補償量記憶部295をさらに備えている点を特徴としている。
【0165】
以下、図1と図15を用いて、本実施の形態2の具体的な処理について説明する。送信機1で高周波パルスを発生して、粗補償回路10で粗い補償を行うまでの処理、および、2D−FT補償量推定器200で得られた補償量に基づいて運動補償を行った後に、クロスレンジ圧縮器40でクロスレンジ圧縮を行うまでの処理については、実施の形態1と同様である。
【0166】
図15の2D−FT補償量推定器200は、時系列データ抽出手段201で抽出された時系列データd(h)に対して推定された補償量を用いて、補償する処理を繰り返して逐次的に補償量を得ることを行う。そこで、補償量算出手段208は、算出した補償量を逐次、修正補償量記憶部295に記憶させる。
【0167】
時系列データ補償手段231は、時系列データ抽出手段201で得られた時系列データd(h)に対して、修正補償量記憶部295に蓄積された位相変化φ_comp(h)を用いて、次式(37)の補償を行う。
【0168】
【数34】

【0169】
ただし、初期状態では、φ_comp(h)=0(h=0、1、2、…、H−1)とする。また、修正補償量記憶部295には、規格化レンジ変化の初期値もn_comp(h)=0(h=0、1、…、H−1)として蓄積されている。
【0170】
次に、ドップラヒストリ生成手段202は、STFT点数記憶部291に蓄積されたSTFT点数D_cutに基づいて、実施の形態1と同様にして、ドップラヒストリを生成する。ただし、STFT点数記憶部291に蓄積されたSTFTのための点数D_cutの値は、STFT点数変更手段232によって変更される。このSTFT点数変更手段232の動作については後述する。
【0171】
ヒストリ切出し手段203以降、補償量算出手段208までの処理は、実施の形態1と同一であり、説明を省略する。
【0172】
補償量算出手段208で算出された位相変化と規格化レンジ変化をそれぞれ、φ_comp0(h)とn_comp0(h)とすると、補償量算出手段208は、修正補償量記憶部295にすでに蓄積されているφ_comp(h)とn_comp(h)に、前述のφ_comp0(h)とn_comp0(h)を次式(38)、(39)のように加算した結果を、新たな更新データであるφ_comp(h)とn_comp(h)として修正補償量記憶部295に記憶させる。
【0173】
【数35】

【0174】
こうして得られた新たな補償量で、時系列データ抽出手段201の出力である時系列データd(h)の補償を行い、これ以降、補償量算出手段208までの一連の処理をある所定の回数、もしくは、蓄積される補償量の変化が十分小さくなるまで繰り返す。そして、補償量算出手段208は、最終的に更新されたφ_comp(h)とn_comp(h)を出力する。
【0175】
次に、STFT点数変更手段232の動作について説明する。STFTを行う際、切出し点数D_cutが大きいほど、ドップラヒストリの分解能は高くなる。しかし、D_cutが大きいほどドップラヒストリ生成時の時間分解能が劣化するため、反射点のドップラ周波数が大きく変動する場合には、ドップラヒストリ上の各反射点のドップラ周波数幅が広がる。これを言い換えると、ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡が太くなってしまう。
【0176】
ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡が太くなった場合には、ドップラ変化率の推定精度も劣化することを踏まえ、STFT点数変更手段232は、最初は、D_cutを小さな値に設定する。
【0177】
そして、STFT点数変更手段232は、ドップラ分解能の向上を図るために、修正補償量記憶部295に蓄積されたφ_comp(h)とn_comp(h)でd(h)の補償を行うごとにD_cutを大きくしていく。補償を行っていることによりドップラ周波数の変化幅も狭くなることから、D_cutを大きくしてもドップラヒストリ上の軌跡の幅は、広くならないと期待される。
【0178】
実施の形態2によれば、ドップラの変化幅が大きい目標についても、STFT点数を徐々に大きくして補償量の算出を繰り返すことにより、高いドップラ分解能で安定して運動の補償を行うことができる。
【0179】
実施の形態3.
本実施の形態3では、実施の形態2で説明した補償量の繰り返し算出を実現するための2D−FT補償量推定器200の別の構成例について説明する。図16は、本発明の実施の形態3における2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。
【0180】
実施の形態2における図15の2D−FT補償量推定器200と比較すると、図16の2D−FT補償量推定器200は、STFT点数変更手段232の代わりにドップラヒストリ切出し点数変更手段241を備えている点が異なる。実施の形態2では、繰り返し算出される補償量に伴って、STFT点数を徐々に大きくしていったが、本実施の形態3では、繰り返し算出される補償量に伴って、ヒストリ切出し点数を変更していくことを特徴としている。
【0181】
以下、図1と図16を用いて、本実施の形態3の具体的な処理について説明する。実施の形態2と同様に、初期状態では、修正補償量記憶部295には、位相変化φ_comp(h)=0(h=0、1、2、…、H−1)、規格化レンジ変化n_comp(h)=0(h=0、1、…、H−1)が蓄積されている。
【0182】
各ループで、修正補償量記憶部295に蓄積された補償量を用いて、時系列データの補償を行い、補償後のデータにドップラヒストリ生成手段202、ヒストリ切出し手段203、2D−FT手段204、スペクトル画像傾き推定手段205、ドップラ変化率算出手段206、レンジ変化算出手段207を適用し、規格化レンジと位相の補償量を推定する。
【0183】
そして、推定された補償量を修正補償量記憶部295に蓄積された各補償量に加算し、ある一定のループ数に達するか、または、各補償量のループ間の変化がある一定値以下になった場合にループを打ち切る。そして、補償量算出手段208は、最終的に更新された各補償量を出力することとなり、これら一連の処理は、実施の形態2とほぼ同一である。
【0184】
ただし、各ループにおいて、実施の形態2では、STFT点数記憶部291に蓄積されたD_cutを変化させたが、上述したように、本実施の形態3では、ヒストリ切出し点数記憶部292に蓄積されたヒストリの切出し点数D2_cutを変化させる。
【0185】
D2_cutが大きくなるにつれ、変化率の推定分解能は向上するが、時間分解能が劣化し、変化率が大きく変化する場合には、切出したヒストリ上のドップラ変化率の値が変化してしまうため、推定精度は劣化する。
【0186】
これらの性質を踏まえつつ、ヒストリの切出し幅を調整することで(例えば、「ドップラ変化率」の変化が小さくなるに従いドップラヒストリの切出し幅D2_cutを大きくしてドップラ変化率の推定分解能を向上させる等)、ドップラ変化率の推定精度を向上させることができる。よって、最終的に補償量の推定精度も向上すると推定される。
【0187】
上述の説明では、STFT点数記憶部291に蓄積されたD_cutを一定にさせる形で処理を説明したが、実施の形態2の処理のように、各ループごとにSTFT点数記憶部291に蓄積されたD_cutとヒストリ切出し点数記憶部292に蓄積されたD2_cutの両者を同時に変更させても構わない。
【0188】
図17は、本発明の実施の形態3における別の2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。図17においては、各ループでドップラヒストリ切出し点数変更手段241およびSTFT点数変更手段232を用いてD_cutとD2_cutを同時に変化させることを特徴としており、図15と図16の構成を兼ね備えたものに相当する。この両者のパラメータを同時に適切に調整することにより、補償量の推定精度は、さらに向上すると期待される。
【0189】
実施の形態3によれば、ヒストリの切出し幅を調整して補償量の算出を繰り返すことにより、ドップラ変化率の推定精度を向上させることができ、最終的に補償量の推定精度も向上させることができる。さらに、実施の形態2で説明したようにSTFT点数も同時に適切に調整して補償量の算出を繰り返すことにより、補償量の推定精度をさらに向上させることができ、ドップラの変化幅が大きい目標についても、高いドップラ分解能で安定して運動の補償を行うことができる。
【0190】
実施の形態4.
本実施の形態4では、さらに、2D−FT補償量推定器200の別の構成例について説明する。図18は、本発明の実施の形態4における2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。実施の形態1における図2の2D−FT補償量推定器200と比較すると、図18の2D−FT補償量推定器200は、ドップラヒストリ生成手段202およびSTFT点数記憶部291の代わりに、幅安定型ドップラヒストリ生成手段251および基準ドップラヒストリ幅記憶部296を備えている点を特徴としている。
【0191】
以下、図1と図18を用いて、本実施の形態4の具体的な処理について説明する。実施の形態2において説明したように、ドップラヒストリ生成のためのSTFT点数を大きくすると、時間分解能が劣化して、ドップラヒストリ上の軌跡の幅が太くなる。また、逆に、STFT点数を小さくしすぎるとドップラ分解能が劣化して、同じくドップラヒストリ上の軌跡の幅が太くなる。すなわち、STFT点数には、軌跡の幅を最小にするための最適値がある。
【0192】
本実施の形態4では、時系列データd(h)からドップラヒストリを生成する際に、各中心ヒットh_cにおけるドップラプロフィール上の反射点のドップラ周波数幅が、全ての中心ヒットで最小値または最小値にほぼ等しくなるように、STFT点数を制御する。
【0193】
そのために、幅安定型ドップラヒストリ生成手段251は、基準ドップラヒストリ幅記憶部296に蓄積された基準ドップラ周波数幅W_stを読み出し、各h_cにおいて、反射点のドップラ周波数幅が上記W_stに最も近くなるか、または、ほぼ等しくなるように、STFT切出し点数D_cut(h_c)を調節する。ここで、W_stについては、予測される目標の運動緒元に基づいて適切に設定するか、または、単にゼロとする。
【0194】
実施の形態4によれば、各中心ヒットh_cにおいて、目標のドップラ周波数の変化やドップラ分解能を踏まえた切出し点数D_cut(h_c)が設定され、結果として、補償量の推定精度を向上させることができる。
【0195】
実施の形態5.
本実施の形態5では、さらに、2D−FT補償量推定器200の別の構成例について説明する。図19は、本発明の実施の形態5における2D−FT補償量推定器200の内部構成図である。実施の形態1における図2の2D−FT補償量推定器200と比較すると、図19の2D−FT補償量推定器200は、ヒストリ切出し手段203および2D−FT手段204の代わりに、FFTヒストリ算出手段261、FFTヒストリ切出し手段262、および1D−FT手段263を備えている点を特徴としている。
【0196】
以下、図1と図19を用いて、本実施の形態5の具体的な処理について説明する。本実施の形態5は、実施の形態1〜4における2D−FT手段204の処理を効率化することを目的としている。ドップラヒストリ生成手段202でドップラヒストリを生成するまでの処理は、実施の形態1〜4と同様である。
【0197】
入力したヒストリを、以下では、一般的にimg00(y、x0)と表す。FFTヒストリ算出手段261は、次式(40)により、入力したヒストリ(ここではドップラヒストリ)の絶対値をレンジまたはドップラ方向にフーリエ変換して、fimg00(f_y、x0)を得る。
【0198】
【数36】

【0199】
次に、FFTヒストリ切出し手段262は、次式(41)に示すように、中央x値であるx_cを変えながらfimg00(f_y、x0)からx方向の幅がD2_cutの区分ヒストリを切出し、これを、fimg0(f_y、x、x_c)としてヒストリ切出し点数記憶部292に格納する。
【0200】
【数37】

【0201】
次に、1D−FT手段263は、各x_cごとに得られた2次元画像をx方向に1次元フーリエ変換してそれぞれスペクトルを得る。ここで、fimg0(f_y、x、x_c)において、x_cを与えた場合に定まるf_yとxに関する2次元配列を改めて一般的にfimg1(f_y、x)と呼ぶことにする。ここで、fimg1(f_y、x)のf_y方向の画素数をN_yとし、x方向の画素数をN_xとする。
【0202】
1D−FT手段263は、fimg1(f_y、x)をx方向に1次元フーリエ変換し、この絶対値をとることで、最終的にfimg(f_y、f_x)を得る。このfimg(f_y、f_x)は、式(12)のfimg(f_y、f_x)と等しい。
【0203】
ただし、式(12)では、切出した区分的なヒストリに対して毎回2次元フーリエ変換を行っているため、同じx0のプロフィールを何回もy方向にフーリエ変換しており、計算の効率が悪かった。
【0204】
これに対して、本実施の形態5で述べた方法は、FFTヒストリ算出手段261を用いて先にy方向に1次元のフーリエ変換を行った後に、これを切出して、1D−FT手段263を用いてx方向のフーリエ変換を行うため、y方向のフーリエ変換が重複する問題が発生しない。
【0205】
実施の形態5によれば、FFTヒストリ算出手段、FTTヒストリ切出し手段、および1D−FT手段を組み合わせることにより、2D−FT手段と同様の効果を得るとともに、フーリエ変換の重複を回避することができ、計算負荷の低減を図ることができる。
【0206】
実施の形態6.
実施の形態1〜5では、ドップラヒストリの振幅分布に区分的な2次元フーリエ変換処理を適用して補償量を推定した。本実施の形態6では、レンジヒストリの振幅分布に区分的な2次元フーリエ変換処理を適用して補償量を推定する場合について説明する。
【0207】
図20は、本発明の実施の形態6における粗補償量推定器100の内部構成図である。図20の粗補償量推定器100は、ヒストリ切出し手段103、2D−FT手段104、スペクトル画像傾き推定手段105、レンジヒストリ変化算出手段171、および補償量算出手段108を備えるとともに、記憶部としてヒストリ切出し点数記憶部192およびスペクトル画像傾き記憶部193を備えている。
【0208】
レンジヒストリ変化算出手段171以外の構成要素は、基本的には、2D−FT補償量推定器200に備えられていたものと同等の機能を有する。以下、図1、図20を用いて、本実施の形態6の具体的な処理について説明する。
【0209】
ヒストリ切出し手段103は、ヒストリ切出し点数記憶部192に蓄積された切出し点数Gに基づき、中心ヒットh_cを変えながらレンジヒストリS_0(m、h)から区分レンジヒストリrhc(m、h_rhc、h_c)を次式(42)のように切出す。
【0210】
【数38】

【0211】
ただし、S_0(m、h)については、h<0およびh>H−1で0になるように拡張されているものとする。次に、2D−FT手段104は、各切出したレンジヒストリの絶対値を2次元フーリエ変換する。スペクトル画像傾き推定手段105は、実施の形態1〜5と同様に、入力された2次元画像(この場合はレンジヒストリ)上の軌跡の傾きを推定する。
【0212】
各中心ヒットh_cごとに切出されたレンジヒストリに対して、同様の処理を繰り返し、それぞれで得られた傾きをスペクトル画像傾き記憶部193にa_est(h_c)として蓄える。
【0213】
a_est(h_c)は、1ヒットあたりのレンジセルの変化率である。そこで、レンジヒストリ変化算出手段171は、まず、a_est(h_c)を1[s]当りのレンジ[m]の変化率v_est[m/s]に次式(43)で換算する。
【0214】
【数39】

【0215】
次に、各中心ヒットh_cにおける時刻t(h_c)とv_est(h_c)の組に、P次の最小二乗法を適用して、レンジの変化率v_fit(t)を、次式(44)のように時刻tの多項式で表す。
【0216】
【数40】

【0217】
よって、不要な運動によって発生する目標のレンジの変化r_fit(t)は、次式(45)で与えられる。
【0218】
【数41】

【0219】
補償量算出手段108は、このレンジ変化に基づいて補償量を推定する。その後、粗補償量推定器100の後段の運動補償器11でレンジヒストリS_0(m、h)の補償を行う処理は、実施の形態1〜5のいずれかと同様である。
【0220】
実施の形態6によれば、レンジヒストリの振幅分布に区分的な2次元フーリエ変換処理を適用することにより、粗補償回路10においても補償の精度を向上させることができる。
【0221】
なお、上述したように、本発明の画像レーダ装置は、区分領域ごとに分割されたヒストリに対してフーリエ変換を施すことにより、推定誤差を低減した補償量を推定できることを特徴とする。そして、このような補償量の推定を2D−FT補償回路20に適用した場合を実施の形態1〜5で説明し、粗補償回路10に適用した場合を実施の形態6で説明した。
【0222】
これらに基づいて、図1に示した粗補償回路10、2D−FT補償回路20、精細補償回路30の3つの補償回路により推定誤差の低減を図るばかりでなく、任意の2つの補償回路の組合せによって、あるいは、粗補償回路10または2D−FT補償回路20単体としても、推定誤差の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の実施の形態1における画像レーダ装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるレーダ装置の2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像傾き推定手段の内部構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像傾き推定メイン手段の内部構成図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるレーダ装置の観測のジオメトリである。
【図6】本発明の実施の形態1における目標のISAR画像の一例である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるレンジヒストリの一例である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるドップラヒストリの一例である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるレンジヒストリから信号を切出す処理を説明する模式図である。
【図10】本発明の実施の形態1におけるドップラヒストリから短時間ドップラヒストリを切出す処理を説明する模式図である。
【図11】本発明の実施の形態1における複数の同じ傾きの直線を含む2次元画像の一例である。
【図12】本発明の実施の形態1において、図11の2次元画像を2次元フーリエ変換して得られるスペクトル画像の一例である。
【図13】本発明の実施の形態1におけるスペクトル画像上での積分処理を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態1におけるドップラの変化率を推定する処理を説明する図である。
【図15】本発明の実施の形態2における2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図16】本発明の実施の形態3における2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図17】本発明の実施の形態3における別の2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図18】本発明の実施の形態4における2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図19】本発明の実施の形態5における2D−FT補償量推定器の内部構成図である。
【図20】本発明の実施の形態6における粗補償量推定器の内部構成図である。
【符号の説明】
【0224】
1 送信機、2 送受切換器、3 送受信アンテナ、4 受信機、5 パルス圧縮器、6 目標、10 粗補償回路、11 運動補償器、20 2D−FT補償回路、21 運動補償器、30 精細補償回路、31 運動補償器、40 クロスレンジ圧縮器、100 粗補償量推定器、103 ヒストリ切出し手段、104 2D−FT手段、105 スペクトル画像傾き推定手段、108 補償量算出手段、171 レンジヒストリ変化算出手段、192 ヒストリ切出し点数記憶部、193 スペクトル画像傾き記憶部、200 2D−FT補償量推定器、201 時系列データ抽出手段、202 ドップラヒストリ生成手段、203 ヒストリ切出し手段、204 2D−FT手段、205 スペクトル画像傾き推定手段、206 ドップラ変化率算出手段、207 レンジ変化算出手段、208 補償量算出手段、211、211a、211b スペクトル画像傾き推定メイン手段、212 ゼロ傾き切換手段、213 既知傾き付加手段、214 2D−FT手段、215 既知傾き除去手段、216 スペクトル画像傾き出力手段、221 Y値設定手段、222 傾き候補設定手段、223 X連続値算出手段、224 X切捨て値設定手段、225 X差分値算出手段、226 加重正規化ベクトル生成手段、227 隣接X値積分手段、228 ピーク傾き検出手段、231 時系列データ補償手段、232 STFT点数変更手段、241 ドップラヒストリ切出し点数変更手段、251 幅安定型ドップラヒストリ生成手段、261 FFTヒストリ算出手段、262 FFTヒストリ切出し手段、263 1D−FT手段、291 STFT点数記憶部、292 ヒストリ切出し点数記憶部、293 スペクトル画像傾き記憶部、294 積分結果記憶部、295 修正補償量記憶部、296 基準ドップラヒストリ幅記憶部、300 精細補償量推定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する目標に対して電波を送信し、前記目標からの反射波を受信して、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを生成し、前記レンジヒストリのクロスレンジ圧縮により前記目標の画像を得る画像レーダ装置において、
前記レンジヒストリから時系列データを抽出する時系列データ抽出手段と、
抽出された前記時系列データに短時間フーリエ変換を適用してドップラプロフィールの時間履歴であるドップラヒストリを生成するドップラヒストリ生成手段と、
生成された前記ドップラヒストリから区分時間領域のドップラヒストリである短時間ドップラヒストリを切り出すヒストリ切出し手段と、
切り出された前記短時間ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡のドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率推定手段と、
複数の短時間ドップラヒストリに対して推定された前記ドップラ周波数の変化率に基づいて全時間におけるドップラ周波数の変化を推定し、推定結果に基づいて目標とレーダとの間のレンジの変化を推定するレンジ変化算出手段と、
推定された前記レンジの変化に基づいて、前記レンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量および位相補償量を算出する補償量算出手段と、
算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて前記レンジヒストリの不要なレンジおよび位相の変化を補償する運動補償器と
を有する2次元フーリエ変換補償回路を備えることを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像レーダ装置において、
前記ドップラ変化率推定手段は、
切り出された前記短時間ドップラヒストリの振幅分布に2次元フーリエ変換を適用してスペクトル画像を生成する2次元フーリエ変換手段と、
生成された前記スペクトル画像に基づいて複素画像上の軌跡の傾きを推定するスペクトル画像傾き推定手段と、
推定された前記傾きに基づいてドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率算出手段と
を備えることを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像レーダ装置において、
前記スペクトル画像傾き推定手段は、
生成された前記スペクトル画像上の原点を通る直線の傾きを第1の傾き量として推定する第1のスペクトル画像傾き推定メイン手段と、
前記第1の傾き量がゼロであるか否かを判定し、前記第1の傾き量がゼロの場合とゼロでない場合で処理を切換えるゼロ傾き切換手段と、
前記ゼロ傾き切換手段で前記第1の傾き量がゼロであると判定された場合に、前記ヒストリ切出し手段で切り出された前記短時間ドップラヒストリに対して、既知の傾き量の補償を行う既知傾き付加手段と、
前記既知の傾き量による補償後の短時間ドップラヒストリの振幅分布に2次元フーリエ変換を適用してスペクトル画像を生成する第2の2次元フーリエ変換手段と、
前記第2の2次元フーリエ変換手段で生成された前記スペクトル画像上の原点を通る直線の傾きを第2の傾き量として推定する第2のスペクトル画像傾き推定メイン手段と、
前記第2のスペクトル画像傾き推定メイン手段で推定された前記第2の傾き量から、前記既知傾き付加手段で付加された前記既知の傾き量を差し引いて第3の傾き量を推定する既知傾き除去手段と、
前記ゼロ傾き切換手段で前記第1の傾き量がゼロでないと判定された場合には、前記第1の傾き量を出力し、前記ゼロ傾き切換手段で前記第1の傾き量がゼロであると判定された場合には、前記第3の傾き量を出力するスペクトル画像傾き出力手段と
を備えることを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像レーダ装置において、
前記第1のスペクトル画像傾き推定メイン手段および前記第2のスペクトル画像傾き推定メイン手段は、
XYの2次元平面からなるスペクトル画像に対して、積分経路のY値を設定するY値設定手段と、
前記積分経路の前記スペクトル画像上での傾きの候補を設定する傾き候補設定手段と、
前記Y値設定手段で設定された前記Y値と、前記傾き候補設定手段で設定された前記傾きに基づいて、Xの連続値を設定するX連続値算出手段と、
前記X連続値算出手段で設定されたXの連続値の小数点以下を切り捨てて、切り捨てにより離散化されたX切捨て値を得るX切捨て値設定手段と、
前記Xの連続値と前記X切捨て値との差分値を算出するX差分値算出手段と、
算出された前記差分値に基づいて、前記X切捨て値で設定される前記2次元平面上のセルと、前記セルと隣接する、前記X切捨て値に1を加えた値で設定されるセルのそれぞれの振幅値を線形補間した上で、積分を行う隣接X値積分手段と
各Y値において前記スペクトル画像を全X値における振幅の最大値で正規化した上で、さらに、各Yごとに重み付けを行うための重みベクトルを生成する加重正規化ベクトル生成手段と、
前記隣接X値積分手段による積分結果のピークを探索し、前記ピークが現れた積分経路の傾きに基づいて入力された前記短時間ドップラヒストリ上の軌跡の傾きを算出するピーク傾き検出手段と
を備えることを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記ドップラ変化率算出手段は、各区分領域の中心時刻と各区分領域におけるドップラ周波数の変化率の算出結果のペアに対して高次の最小二乗法等のフィッティング法を適用して各時刻におけるドップラ周波数の変化率を時刻に対する多項式として求め、
前記レンジ変化算出手段は、前記多項式を積分して得られるドップラ周波数の時間変化を用いてレンジの時間変化を算出する
ことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記時系列データ抽出手段は、反射点がレンジを越えて移動していることを想定してレンジの切出し範囲を設定し、切出し範囲を総和して時系列データを生成することを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記ドップラヒストリ生成手段は、時系列データから切出した区分データ列にゼロ詰めを行ってドップラヒストリをドップラ周波数方向に補間することを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量を記憶する修正補償量記憶部と、
前記修正補償量記憶部に記憶された前記位相補償量に基づいて前記時系列データ抽出手段で抽出された時系列データの位相を補償する時系列データ補償手段と、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて、前記ドップラヒストリ生成手段で実行する短時間フーリエ変換に用いる時系列データの点数を変更するSTFT点数変更手段と
をさらに備え、
前記前記ドップラヒストリ生成手段は、前記時系列データ補償手段により補償された時系列データを、STFT点数変更手段で変更された時系列データの点数を用いて短時間フーリエ変換を行うことにより新たなドップラヒストリを生成し、
前記補償量算出手段は、前記新たなドップラヒストリに対応して算出したレンジ補償量および位相補償量と、前記修正補償量記憶部に記憶されている前回のレンジ補償量および位相補償量とをそれぞれ加算することにより更新後のレンジ補償量および位相補償量を算出して前記修正補償量記憶部に記憶させ、前記更新後のレンジ補償量および位相補償量の変化量が所定値以内になるか、もしくは所定回数算出するまで補償量の算出処理を繰り返し行う
ことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量を記憶する修正補償量記憶部と、
前記修正補償量記憶部に記憶された前記位相補償量に基づいて前記時系列データ抽出手段で抽出された時系列データの位相を補償する時系列データ補償手段と、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて、前記ヒストリ切出し手段で前記短時間ドップラヒストリを切り出す切出し点数を変更するドップラヒストリ切出し点数変更手段と
をさらに備え、
前記前記ドップラヒストリ生成手段は、前記時系列データ補償手段により補償された時系列データに対して短時間フーリエ変換を行うことにより新たなドップラヒストリを生成し、
前記ヒストリ切出し手段は、前記ドップラヒストリ切出し点数変更手段で変更された切出し点数を用いて新たな短時間ドップラヒストリを切出し、
前記補償量算出手段は、前記新たな短時間ドップラヒストリに対応して算出したレンジ補償量および位相補償量と、前記修正補償量記憶部に記憶されている前回のレンジ補償量および位相補償量とをそれぞれ加算することにより更新後のレンジ補償量および位相補償量を算出して前記修正補償量記憶部に記憶させ、前記更新後のレンジ補償量および位相補償量の変化量が所定値以内になるか、もしくは所定回数算出するまで補償量の算出処理を繰り返し行う
ことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量を記憶する修正補償量記憶部と、
前記修正補償量記憶部に記憶された前記位相補償量に基づいて前記時系列データ抽出手段で抽出された時系列データの位相を補償する時系列データ補償手段と、
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて、前記ドップラヒストリ生成手段で実行する短時間フーリエ変換に用いる時系列データの点数を変更するSTFT点数変更手段と
前記補償量算出手段で算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて、前記ヒストリ切出し手段で前記短時間ドップラヒストリを切り出す切出し点数を変更するドップラヒストリ切出し点数変更手段と
をさらに備え、
前記前記ドップラヒストリ生成手段は、前記時系列データ補償手段により補償された時系列データを、STFT点数変更手段で変更された時系列データの点数を用いて短時間フーリエ変換を行うことにより新たなドップラヒストリを生成し、
前記ヒストリ切出し手段は、前記ドップラヒストリ切出し点数変更手段で変更された切出し点数を用いて新たな短時間ドップラヒストリを切出し、
前記補償量算出手段は、前記新たな短時間ドップラヒストリに対応して算出したレンジ補償量および位相補償量と、前記修正補償量記憶部に記憶されている前回のレンジ補償量および位相補償量とをそれぞれ加算することにより更新後のレンジ補償量および位相補償量を算出して前記修正補償量記憶部に記憶させ、前記更新後のレンジ補償量および位相補償量の変化量が所定値以内になるか、もしくは所定回数算出するまで補償量の算出処理を繰り返し行う
ことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像レーダ装置において、
前記ヒストリ切り出し手段は、
区分ヒストリ上の軌跡の傾きを推定するために、入力された前記ドップラヒストリの振幅分布に対して、1次元フーリエ変換を行ってFFTヒストリを算出するFFTヒストリ算出手段と、
短時間2次元フーリエ変換を行う際の切出し点数に基づいて前記FFTヒストリをヒット方向に切出すFFTヒストリ切出し手段と
を有し、
前記ドップラ変換率推定手段は、
前記FFTヒストリ切出し手段で切出されたFFTヒストリをヒット方向にフーリエ変換して、入力された前記ドップラヒストリのスペクトル画像を生成する1D−FT手段と、
生成された前記スペクトル画像に基づいて複素画像上の軌跡の傾きを推定するスペクトル画像傾き推定手段と、
推定された前記傾きに基づいてドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率算出手段と
を有する
ことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項12】
請求項1に記載の画像レーダ装置において、
前記ドップラヒストリ生成手段は、ドップラヒストリ生成のための短時間フーリエ変換において、ゼロ詰め後のデータ点数を一定に保ちつつ、前記時系列データを短時間フーリエ変換したときの反射点が所定の基準ドップラヒストリ幅以内になるように前記時系列データの切出し点数を変更しながら前記ドップラヒストリを生成することを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の画像レーダ装置において、
運動補償後のレンジヒストリから時系列信号を抽出し、前記時系列信号をフィルタリング処理し、フィルタリング処理後の時系列信号の位相変化に基づいて、前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を推定し、前記不要なレンジ変化に基づいてレンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量と位相補償量を算出する精細補償量推定器と、
前記精細補償量推定器の出力である前記レンジ補償量および前記位相補償量を用いて前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を補償する精細運動補償器と
を有する精細補償回路をさらに備え、
前記精細補償量推定器は、前記2次元フーリエ変換補償回路内の前記運動補償器により補償されたレンジヒストリを運動補償後のレンジヒストリとして取り込むことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項14】
移動する目標に対して電波を送信し、前記目標からの反射波を受信して、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを生成し、前記レンジヒストリのクロスレンジ圧縮により前記目標の画像を得る画像レーダ装置において、
レンジヒストリから各区分時間領域のレンジヒストリである短時間レンジヒストリを切出すヒストリ切出し手段と、
前記ヒストリ切出し手段で切り出された前記短時間レンジヒストリ上の各反射点の軌跡のレンジ変化率を推定するレンジ変化率推定手段と、
前記レンジ変化率を統合して全時間におけるレンジの変化を推定するレンジヒストリ変化算出手段と、
前記レンジヒストリ変化算出手段で推定された前記レンジの変化に基づいてレンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量および位相補償量を算出する補償量算出手段と、
算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいてレンジヒストリの不要なレンジおよび位相の変化を補償する粗運動補償器と
を有する粗補償回路を備えることを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像レーダ装置において、
レンジヒストリから時系列データを抽出する時系列データ抽出手段と、
抽出された前記時系列データに短時間フーリエ変換を適用してドップラプロフィールの時間履歴であるドップラヒストリを生成するドップラヒストリ生成手段と、
生成された前記ドップラヒストリから区分時間領域のドップラヒストリである短時間ドップラヒストリを切り出すヒストリ切出し手段と、
切り出された前記短時間ドップラヒストリ上の各反射点の軌跡のドップラ周波数の変化率を推定するドップラ変化率推定手段と、
複数の短時間ドップラヒストリに対して推定された前記ドップラ周波数の変化率に基づいて全時間におけるドップラ周波数の変化を推定し、推定結果に基づいて目標とレーダとの間のレンジの変化を推定するレンジ変化算出手段と、
推定された前記レンジの変化に基づいて、前記レンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量および位相補償量を算出する補償量算出手段と、
算出された前記レンジ補償量および前記位相補償量に基づいて前記レンジヒストリの不要なレンジおよび位相の変化を補償する運動補償器と
を有する2次元フーリエ変換補償回路をさらに備え
前記時系列データ抽出手段は、前記粗補償回路内の前記粗運動補償器により補償されたレンジヒストリから時系列データを抽出することを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像レーダ装置において、
運動補償後のレンジヒストリから時系列信号を抽出し、前記時系列信号をフィルタリング処理し、フィルタリング処理後の時系列信号の位相変化に基づいて、前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を推定し、前記不要なレンジ変化に基づいてレンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量と位相補償量を算出する精細補償量推定器と、
前記精細補償量推定器の出力である前記レンジ補償量および前記位相補償量を用いて前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を補償する精細運動補償器と
を有する精細補償回路をさらに備え、
前記精細補償量推定器は、前記2次元フーリエ変換補償回路内の前記運動補償器により補償されたレンジヒストリを運動補償後のレンジヒストリとして取り込むことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項17】
請求項14に記載の画像レーダ装置において、
運動補償後のレンジヒストリから時系列信号を抽出し、前記時系列信号をフィルタリング処理し、フィルタリング処理後の時系列信号の位相変化に基づいて、前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を推定し、前記不要なレンジ変化に基づいてレンジヒストリのレンジおよびドップラの不要な変化の影響を補償するためのレンジ分解能で規格化したレンジ補償量と位相補償量を算出する精細補償量推定器と、
前記精細補償量推定器の出力である前記レンジ補償量および前記位相補償量を用いて前記運動補償後のレンジヒストリに残存する不要なレンジ変化を補償する精細運動補償器と
を有する精細補償回路をさらに備え、
前記精細補償量推定器は、前記粗補償回路内の前記粗運動補償器により補償されたレンジヒストリを運動補償後のレンジヒストリとして取り込むことを特徴とする画像レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−343290(P2006−343290A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171474(P2005−171474)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】