画像レーダ装置
【課題】目標とレーダの間の相対運動が未知である等の場合でも、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができるとともに、クロスレンジスケーリングを実施できるようにする。
【解決手段】レンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路2や、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路3などを設ける。
【解決手段】レンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路2や、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路3などを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダで観測対象である目標の電波画像を取得する画像レーダ装置に関し、特に目標と画像レーダ装置の間の相対運動が未知である場合や相対運動の推定結果に誤差が含まれる場合において、距離の時間変化の影響で発生する画像のぼけを補償する技術や、画像の軸を物理的な長さの軸に換算する際のスケーリング係数を推定して、生成画像の軸を物理的な長さの軸にスケーリングする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像レーダ装置では、下記の(1)〜(3)の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返し実施する。
(1)送信機が高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器を介して送受信アンテナに出力することにより、その送受信アンテナから高周波信号を空間に向けて放射させる高周波信号送信処理
(2)空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信する高周波信号受信処理
(3)受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得するレンジプロフィール取得処理
【0003】
画像レーダ装置は、上記の一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得すると、そのレンジヒストリからレーダ画像を生成する。
ここで、レンジヒストリは、一般的に2次元分布として与えられ、その2次元分布の一軸は、レンジプロフィールと同じであり、高周波信号の照射を開始してからの経過時間[s](以下、「ファストタイム」と称する)、または、その経過時間に電波の速度の1/2を乗じたレンジ[m]で与えられる。
その2次元分布の他方の一軸は、相対位置関係を変えながら行う観測の時刻(以下、「スロータイム」または「観測時刻」と称する)、または、観測番号を表すヒットで与えられる。
【0004】
レーダ画像を得る代表的なレーダとして、合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)と、逆合成開口レーダ(Inverse SAR:ISAR)が挙げられる。
SARは、例えば、レーダが空間内を移動しながら地表面などの観測対象を観測することで得られたレンジプロフィールを適切に合成することで、あたかも大口径のアンテナを空間に配置したような効果を得るものであり、レンジに直交するクロスレンジ方向についても高分解能化させたレーダ画像を得ることができる。
ISARは、レーダが運動する目標を観測することで、SARと同様の効果を得て、クロスレンジ方向を高分解能化させたレーダ画像を得るものである。
例えば、目標に固定された座標系内でのレーダ位置の変化を考えれば、SARと同じ効果が得られることが容易に理解される。
【0005】
相対運動が自らの運動で定められ、かつ、その運動をユーザが比較的高精度に計測できるSARと比べて、相対運動が観測対象の運動で定められ、かつ、その運動を比較的高精度に計測することが困難なISARの方が、相対運動が未知又は推定誤差が大きくなる状況が発生し易い。
しかし、SARにおいても、レーダプラットフォームに搭載する運動センサの精度が低い場合には、相対運動が大きくなる可能性がある。
このような観点から、以下では、特にSARとISARを区別せず、画像レーダと呼ぶことにする。
なお、SARとISARの中間、即ち、レーダと目標の両者が移動する場合(例えば、航空機から海上を航行中の船を観測する場合)も画像化が可能であり、この場合も画像レーダの範疇に含まれる。
【0006】
目標における高周波信号の反射点のレンジ位置を知るには、レンジプロフィール上で該当点のレンジを計測すればよいので、本来観測は1回で十分である。しかし、クロスレンジ位置を知るには、距離の変化情報が必要になるので、上記のように、複数回の観測を実施してレンジヒストリを取得する。
例えば、等速直線運動をするレーダから固定目標を観測するような場合を想定すると、レーダと反射点の軌道方向の位置が近くなるほど距離が近くなる。
したがって、距離の変化を観測することにより、例えば、レーダと軌道方向の位置が等しくなる時刻を、距離変化が0になる観測時刻(または、距離が最も小さくなる観測時刻)として得ることができる。
この観測時刻と相対運動情報であるレーダの速度及びレーダの初期位置から、その点の軌道方向の位置(クロスレンジ位置に相当する)を特定することができる。
【0007】
実際のレーダ画像化処理では、複数の反射点の信号が重畳する受信信号から、各反射点の距離変化を直接計測して、距離に直交する方向の位置を特定することは困難であり、実際は、何らかの信号処理に基づいて実施されることとなる。
画像レーダにおける画像化方法は、各種提案されており、それを説明するための相対運動のモデルも色々なものがある。
ここでは、説明の便宜上、相対運動によるレーダと目標上の反射点の距離の変化が、「レーダと目標中心の間の距離の変化」と、「目標中心を中心とする回転運動」との合成によって発生すると考えられるモデルを採用する。
【0008】
最初に、目標に固定された座標系を考えると、この座標系の中で、レーダは静止目標を観測しながら移動する。
このとき、目標中心とレーダの間の距離を一定とするような補償を行った上で、レーダと目標中心の位置を固定するような座標系を考える。
この座標系においては、レーダと目標中心が静止し、目標のみが目標中心を中心にして回転するため、レーダと目標上の各反射点の間の距離変化は、レーダと目標中心の間の距離の変化と、目標中心を中心とする回転運動とによって発生したとみなせる。
なお、レーダと目標中心の間の距離の変化を引き起こす運動は、回転運動(rotational motion)に対する並進運動(translational motion)と呼ばれることがあり、以下でも、この用語を用いる。
【0009】
目標とレーダ間の距離が目標の大きさと比べて十分大きい場合、並進運動の影響は各反射点に等しく寄与するとみなせる。よって、この成分は、各反射点の距離方向に直交する方向の位置特定に役に立たないばかりか、レーダ画像をレンジ方向にぼけさせてしまう。また、その成分によっては、クロスレンジ方向にもぼけさせてしまう。
したがって、この成分については、正しく推定して補償してやる必要がある。この補償処理を並進運動補償と称する。
【0010】
並進運動の補償は、レンジ軸方向のぼけの要因となる。
レンジ分解能を超えた各反射点のレンジ移動を推定して、そのレンジ移動を補償するレンジ補償と、ドップラー軸方向のぼけの要因となる「位相の時間に対する2次以上の変化」を推定して、その2次以上の変化を補償する位相補償に大別される。
【0011】
次に、並進運動の影響が完全に補償された場合を考える。
直交座標系の原点に回転中心があり、z軸周りに角速度ω[rad/s]で回転する目標を−x方向の十分遠方から観測する場合を想定する。
この場合、ある想定した瞬時時刻における位置が[rPcosθP,rPsinθP,z]で与えられる点Pの回転中心を基準とする距離LP[m]は、下記の式(1)で与えられる。
また、距離変化に相当する+x方向のラジアル速度VP[m/s]は、下記の式(2)で与えられる。
【0012】
点Pのx座標をxP、y座標をyPとすると、これらはrPcosθP,rPsinθPと表される。
したがって、各反射点の距離-ラジアル速度の2次元分布はy軸方向の−ω倍の伸縮を除けば、xy平面に投影した目標の反射点位置を表すこととなる。
このため、並進運動補償後に残存する相対運動である回転運動の角速度ωが分かれば、距離-ラジアル速度の2次元分布をy軸方向に−1/ω倍伸縮させることで、目標の反射点のxy平面に投影した位置を特定することができる。
【0013】
一般のレーダでは、ラジアル速度を得るために、ドップラー周波数を用いる。これは、並進運動補償後のレンジヒストリをレンジセル毎にヒット方向にフーリエ変換することで得られる。
レンジドップラー周波数画像上の点Pのドップラー周波数をFP[Hz]とすると、FPは、送信波長をλ[m]として、下記の式(3)のように表される。
【0014】
即ち、レンジドップラー画像もy軸方向の伸縮を除けば、xy平面に投影した目標の反射点の位置を表すことになる。
そして、y軸方向の伸縮が正しい画像を得るためには、既知であるλを除けば、前述の角速度ωが必要になる。そして、この値は相対運動が未知な状況では一般に未知である。
なお、回転軸が上記のz軸のようにレンジ軸に直交しない一般的な場合には、回転運動をレンジ軸周りの回転と、レンジに直交する軸周りの回転とに分離した場合の後者の成分の角速度が必要となる。レンジ軸周りの回転は距離変化に寄与しないため、レーダ画像にも影響を及ぼさない。
【0015】
クロスレンジ軸方向の単位ベクトルic太字は、レンジ軸方向の単位ベクトルをir太字、回転角速度ベクトルをω太字とすると、下記の式(4)のベクトル演算で定められる。ic,ir,ωはベクトルを表すものであるため、式(4)では、ic,ir,ωを太字で表しているが、電子出願の関係上、明細書の文書中では、太字を使用することができないため、「ic太字」、「ir太字」、「ω太字」のように表記している。
【0016】
レンジドップラー画像のドップラー周波数軸を物理的な長さの軸であるクロスレンジ軸にスケーリングする問題はクロスレンジスケーリング問題と呼ばれる。
なお、上記観測時刻方向のフーリエ変換のように、信号処理によってクロスレンジ方向の分解能を向上させる処理を、以下では、クロスレンジ圧縮と称する。
【0017】
画像のドップラー周波数分解能は、観測時間をT[s]とすると、1/T[Hz]で与えられるので、これをクロスレンジに換算したクロスレンジ分解能Δc[m]は、下記の式(5)のようになる。
式(5)において、Δθ[rad]は観測中の総回転角である。
【0018】
原理的には、観測中の目標の総回転角Δθが大きければ大きいほど、クロスレンジ分解能が向上する。
しかし、距離LPやラジアル速度VPを示す式(1),(2)から容易に理解されるように、各反射点は回転角の変化とともに、そのレンジとラジアル速度(言い換えると、ドップラー周波数)が変化するので、総回転角Δθが大きくなる程、各反射点は、画像上でレンジとドップラー周波数の分解能セルを越えて移動してしまう。
即ち、上記のような単純なフーリエ変換処理では、総回転角Δθが大きい場合に、却って分解能が劣化してしまうことがある。
【0019】
この問題を解決する画像再生方法の一つとして、以下の非特許文献1に記載されているポーラーフォーマット法(以下、「従来方法1」と称する)がある。
従来方法1では、並進運動補償後の各ヒットにおけるレンジプロフィールについて、さらに、回転中心のレンジを完全にゼロとするような補償を行った後に、そのレンジプロフィールをフーリエ変換して得られる周波数分布(レンジプロフィールの軸をレンジ[m]とみなした場合は空間周波数分布)を、周波数平面上で、その送信帯域と各観測における目標の回転角に応じた位置に曲座標配置している。
【0020】
そして、そのデータを矩形グリッド上でリサンプリングして、逆2次元フーリエ変換することで、回転に基づく前述のぼけが解消されて、クロスレンジ方向も正しく物理的長さにスケーリングされた画像を得ることができる(元が周波数分布の場合は、得られる画像の2軸は時間になるが、これについては、既知の係数(光速/2)を乗ずることで、容易に物理的長さに変換可能である)。
しかし、従来方法1では、 以下の問題がある。
(i)周波数平面での曲座標配置を実現するために、各観測における回転角の変化量(回転角速度ωが一定の場合は、そのω)を知る必要があるが、相対運動の情報を有さない場合や、相対運動の推定誤差が大きい場合には、実現が困難である問題がある。
(ii)通常必要なレベルの並進運動補償に加えて、レーダと目標中心の間の距離を0に保つような補償が必要となるが、相対運動の情報を有さない場合や、相対運動の推定誤差が大きい場合には、実現が困難である問題がある。
【0021】
また、別の画像再生方法として、以下の非特許文献2に記載されている方法(以下、「従来方法2」と称する)が挙げられる。
この方法では、通常の並進運動補償に加えて、何らかの方法で、レーダと目標中心の間の距離変化を完全に0にするような補償が既になされているものと仮定する。
その上で、目標の等価的な回転加速度ベクトルが観測中一定であるとの仮定の下に、回転運動によって発生するぼけを、レンジ軸方向、ドップラー軸方向の順に2段階で補償している。
【0022】
第1段階では、等回転目標上の各反射点の観測中のレンジ変化が、レンジ分解能のオーダでは、以下の性質を有することを利用している。
(a)ヒットに対する1次変化と近似的にみなせる
(b)その1次変化の係数は、回転角速度の大きさによらず、回転中心のドップラー周波数が0の場合の各反射点のドップラーセルの位置と既知係数のみから近似的に定まる
従来方法2では、ぼけた画像をドップラーセル毎に、そのセル位置で定まる係数の1次変化分を補償している。これにより、画像のレンジ軸方向のぼけが近似的に解消される。
【0023】
第2段階では、画像のドップラー軸方向のぼけの原因となる「各反射点の距離変化によって発生する受信信号の位相変化」が、以下の性質を有することを利用している。
(a)近似的にヒットに対する2次の変化とみなせる
(b)その2次変化の係数の大きさは、回転中心が0レンジである場合の各レンジ位置に近似的に比例する。
【0024】
従来方法2では、並進運動補償の際に2次の距離変化によって発生する2次の位相変化を推定する一般的な方法の一つであるPD(Phase Difference)法を各レンジセルのデータに適用して、その位相の2次変化係数をレンジセル毎に推定する。
次に、これらの推定結果から、係数の大きさがレンジ位置に比例することを踏まえて、外れ値を排除して平滑しながら、各レンジにおける位相の2次係数を推定する。
そして、各レンジにおける位相の2次係数に基づいて、その不要な位相変化を打ち消すような補償を行った後に再度画像化する。
【0025】
以上の処理により、従来方法2では、回転角速度を推定する必要なしに、回転の運動の影響で発生する画像のぼけを近似的に補償することができる。
しかし、従来方法2では、以下の問題がある。
(i)クロスレンジスケーリングを実現できないので、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができない問題がある
(ii)回転の補償に際して近似的な処理を行なっているので、これに基づく誤差が発生する問題がある
(iii)通常の並進運動補償では、補償の対象としないレンジの1次変化を完全に0とする補償まで含めた並進運動補償がなされたものと仮定するが、その実現方法が明確ではないので、実現が困難である問題がある
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Jakowatz Jr.,C.V.,Wahl,D.E.,Eichel,P.H.,Ghiglia,D.C.,and Thompson,P.A.“Spotlight-mode synthetic aperture radar: a signal processing approach,”Kluwer Achademic Publishers,1999. の2〜3章
【非特許文献2】Munoz-Ferreras J.M., and Perez-Martfnez F.,“Uniform rotational motion compensation for inverse synthetic aperture radar with non-cooperative targets,”IET Radar Sonar Navig.,Vol.2,No.1,pp.25−34,Feb. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来の画像レーダ装置は以上のように構成されているので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合には、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができない。また、クロスレンジスケーリングを実現できないので、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができないなどの課題があった。
【0028】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合でも、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができるとともに、クロスレンジスケーリングを実施して、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明に係る画像レーダ装置は、高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路とを設け、レーダ画像生成回路が、回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路とを設け、レーダ画像生成回路が、回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するように構成したので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合でも、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができるとともに、クロスレンジスケーリングを実施して、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジヒストリ取得回路1を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の並進運動補償回路2を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数変化量推定回路5を示す構成図である。
【図6】2次位相係数変化量推定回路5におけるスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の内部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7を示す構成図である。
【図8】2次位相係数評価値分布の一例を示す模式図である。
【図9】軌跡傾き信頼度分布算出回路71の処理内容を示す説明図である。
【図10】軌跡傾き信頼度分布算出回路71及び信頼度分布最大位置特定器72の処理内容を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態2による画像レーダ装置の2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態4による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態5による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
図1において、レンジヒストリ取得回路1は高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得する回路である。
【0033】
並進運動補償回路2はレンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する回路である。
回転レンジセル移動補償回路3は並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回路である。
【0034】
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4は回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎(または、レンジ分解能セルを更に細かく分割されたサブレンジセル毎)に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布を出力する回路である。
2次位相係数変化量推定回路5はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する回路である。
【0035】
回転角速度換算回路6は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回路である。
2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数とレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4より出力された2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定する回路である。
【0036】
0次レンジ補償回路8は2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する回路である。
回転考慮レーダ画像生成回路9は回転角速度換算回路6により推定された角速度に基づいて、回転を考慮した画像再生を行うことで、0次レンジ補償回路8による補償後のレンジヒストリから、画像の両軸が物理的な長さの軸にスケーリングされているレーダ画像を生成する回路である。
【0037】
図2はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジヒストリ取得回路1を示す構成図である。
図2において、送信機31は高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器32に出力する。
送受切換器32は高周波信号の送信時と受信時で、信号の流れる方向を切り換える切換器である。
送受信アンテナ33は送受切換器32から出力された高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信して、その受信信号を送受切換器32に出力する。
【0038】
受信機34は送受切換器32から出力された受信信号を増幅して検波する。
レンジ圧縮器35は高周波信号の送信波形に基づいて、受信機34により検波された受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する処理を実施する。
なお、送信機31、送受切換器32、送受信アンテナ33、受信機34及びレンジ圧縮器35における一連の処理が、レーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返されることで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリが取得される。
【0039】
図3はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の並進運動補償回路2を示す構成図である。
図3において、一般並進運動補償回路41はレンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、そのレンジ移動と2次以上の変化を補償する回路である。
1次位相変化補償器42は一般並進運動補償回路41による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する処理を実施する。
【0040】
図4はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4を示す構成図である。
図4において、レンジ補間器51は回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、レンジ方向に補間後のレンジヒストリをレンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52に出力する処理を実施する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52はレンジセル毎(あるいは、サブレンジセル毎)に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する回路である。
【0041】
図5はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数変化量推定回路5を示す構成図である。
図5において、スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求め、そのスペクトル画像から上記2次元画像上の直線の傾きを推定する回路である。
2次位相係数変化量算出回路62はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きから2次位相係数レンジ変化係数を算出する回路である。
【0042】
図6は2次位相係数変化量推定回路5におけるスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の内部を示す構成図である。
図6において、軌跡傾き信頼度分布算出回路71はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布の重み付けを実施して、重み付け後の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求めるとともに、そのスペクトル画像上で直流成分に相当する原点を通り、傾きが異なる複数の直線状の積分経路を設定し、その積分経路に沿って重み付けスペクトル画像の振幅分布を線積分した結果を、各積分経路の傾きに対する信頼度として出力する回路である。
【0043】
信頼度分布最大位置特定器72は軌跡傾き信頼度分布算出回路71から出力された各積分経路の傾きに対する信頼度の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する処理を実施する。
軌跡傾き換算器73は信頼度分布最大位置特定器72により検出された信頼度が最大の積分経路の傾きを、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに換算する処理を実施する。
【0044】
図7はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7を示す構成図である。
図7において、傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸(例えば、縦軸y)に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸(例えば、横軸x)上の座標(y=a(x+x0)で表される場合のx0)であるゼロ交差点を推定するために、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、2次位相係数が0になっているレンジであると推定する回路である。
【0045】
次に動作について説明する。
まず、レンジヒストリ取得回路1は、下記の(1)〜(3)の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得する。
(1)送信機31が高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器32を介して送受信アンテナ33に出力することにより、その送受信アンテナ33から高周波信号を空間に向けて放射させる送信処理
(2)送受信アンテナ33が空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、受信機34が受信信号を検波する受信処理
(3)レンジ圧縮器35が受信機4により検波された受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得するレンジプロフィール取得処理
【0046】
並進運動補償回路2は、レンジヒストリ取得回路1がレンジヒストリを取得すると、そのレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する。
具体的には、以下のようにして、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する。
並進運動補償回路2の一般並進運動補償回路41は、一般的な並進運動の補償処理を適用することで、レンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、そのレンジ移動と2次以上の変化を補償する。
なお、一般的な並進運動の補償処理として、様々な方法が提案されているが、一般的な並進運動の補償処理では、レンジヒストリにおける位相の1次変化は、補償の対象とされていない。
【0047】
1次位相変化補償器42は、一般並進運動補償回路41による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する。
以下、1次位相変化補償器42による位相の1次変化の補償処理を具体的に説明する。
1次位相変化補償器42は、下記に示すように、一般並進運動補償回路41のレンジ補償で推定されたレンジ変化をヒットに対する1次関数で近似し、これに相当する位相変化を一般的な並進運動補償後のレンジヒストリから差し引く処理を行う。
【0048】
ここで、総ヒット数をH、ヒット番号をh(h=−H/2,−H/2+1,・・・,H/2−1)、パルス繰り返し周期をΔt[s]とする。第hヒットにおける観測時刻t(h)[s]は、下記の式(6)で与えられる。
なお、総ヒット数Hは偶数でも奇数でもよいが、奇数の場合には、ヒット番号をh=−(H−1)/2,・・・,(H−1)/2と設定する。
【0049】
レンジセル数をM、レンジセル番号をm(m=0,1,・・・,M−1)、レンジ分解能(後述するレンジピクセルスペーシング)をΔr[m]とする。
また、一般的な並進運動補償後のレンジヒストリをs1(h,m)で表し、レンジ変化の1次関数の傾き(1ヒット当たりのレンジセル変化量)をa1[cell]とする。
この場合、中心周波数をf0[Hz]、光速をc[m/s]とすると、このレンジ変化に相当する位相変化φ1(h)[rad]は、下記の式(7)で与えられる。
【0050】
1次位相変化補償器42は、式(6)及び式(7)の関係を用いて、一般的な並進運動の補償処理では補償されない位相の1次変化φ1(h)を下記の式(8)のように補償して、補償後のレンジヒストリs2(h,m)を取得する。
【0051】
上述したように、目標上の各反射点は、回転の影響で、その位置に応じたレンジ変化をする。
そのレンジ変化は、角速度が一定で、かつ、角度変化範囲が比較的小さい状況では、近似的に時間に対する1次変化とみなせ、かつ、クロスレンジ位置が同じであれば、同じとみなすことができる(クロスレンジ位置が同じ点は、同じドップラー周波数(あるいは、同じラジアル速度)であることを考えると理解しやすい)。
1次位相変化補償器42の処理は、一般的な並進運動補償によって、レンジ変化が0となったクロスレンジ位置のドップラー周波数を0[Hz]にすることを目的としている。
【0052】
回転レンジセル移動補償回路3は、回転運動によって発生するぼけのうちのレンジ方向の成分ぼけを補償する。
以下、回転レンジセル移動補償回路3によるレンジ方向のぼけの補償処理を具体的に説明する。
【0053】
ここで、回転運動によって生じる時刻t=0からの回転角をθ(t)とすると、t=0における回転中心を基準とするレンジとクロスレンジがxP,yPである点の回転角θ(t)におけるレンジrP(θ(t))は、下記の式(9)で与えられる。ただし、r0は
並進運動補償後の回転中心のレンジである。
ここで、cosθ(t),sinθ(t)は次式で表すことができる。
【0054】
ここで、2次以上の項を無視し、θ(t)=ωtとおくと、クロスレンジ位置yPの点のt=0からのレンジ変化δr(yP,t)は、下記の式(12)で与えられる。
よって、クロスレンジ位置yP毎に異なる1次のレンジ変化を補償してやればよいが、実際は、角速度ωとクロスレンジ位置yPは不明である。
【0055】
そこで、セル番号がd(d=−H/2,−H/2−1,・・・,H/2−1:d=0がドップラー周波数0)で与えられるドップラーセルについて考える。
このセルの中心点のクロスレンジ位置(上述のyP相当)は、クロスレンジ分解能Δcを用いると、dΔcで与えられる。
よって、この点のレンジ変化は、dΔcωtになる。
ところで、上述したように、Δc=λ/(2ωT)と与えられることを踏まえると、下記の式(13)が得られる。
【0056】
即ち、第dドップラーセルの中心点については、そのレンジ変化は角速度ωによらず、式(13)で与えられることになる。
ここで、時刻tの代わりに、ヒットhを用いるものとし、式(13)のδr(dΔc,t)をドップラーセル番号dに対するヒットhのレンジ変化δr(d,h)で表すと、下記の式(14)が得られる。
【0057】
回転レンジセル移動補償回路3は、以上を踏まえて、並進運動補償後のレンジヒストリs2(h,m)をヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像S2(d,m)を生成し、このドップラーセルd毎に式(14)で与えられる各ヒットのレンジ変化を打ち消すように補償する。
具体的には、dcドップラーセルの反射点について補償する際には、レンジヒストリs2(h,m)のdcドップラーセル付近の信号を通過させ、それ以外の信号の通過を阻止する性質の適当な重み係数Wdc(d,m)を導入し、下記の式(15)の重み付け画像Sチルダdc(d,m)(明細書の文書中では、電子出願の関係上、Sの上部の「〜」を表現することができないので、「Sチルダ」と表記する)を取得する(当然のことながら、dcドップラーセルが画像の端部付近の場合には折り返しを考慮して、通過帯域を設定すればよい)。
【0058】
回転レンジセル移動補償回路3は、重み付け画像Sチルダdc(d,m)を取得すると、その重み付け画像Sチルダdc(d,m)をドップラーセル方向に逆フーリエ変換して、dcドップラーセル付近の反射点に関するレンジヒストリsチルダdc(h,m)を取得する。
次に、回転レンジセル移動補償回路3は、式(14)のdにdcを代入することで得られるδr(dc,h)を打ち消すようにレンジヒストリsチルダdc(h,m)を補償し、補償後のレンジヒストリsチルダdc(h,m)をヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を取得する。
【0059】
そして、回転レンジセル移動補償回路3は、そのレンジドップラー画像におけるdcドップラーセルの全レンジデータを、別途用意している配列S3(d,m)におけるd=dcのセルに格納する。
なお、全てのdcドップラーセルについて同様の処理を実施して得られた配列S3(d,m)が、回転運動によるレンジ移動補償後のレンジドップラー画像に相当する。
その配列S3(d,m)をドップラーセル方向に逆フーリエ変換することで、回転運動によるレンジ移動補償後のレンジヒストリs3(h,m)が得られる。
【0060】
回転レンジセル移動補償回路3の処理では、回転中心が少なくともゼロドップラーセルに位置していることを期待している。
この観点から、前段の並進運動補償回路2では、レンジ変化がゼロであるドップラーセル(クロスレンジ)位置に回転中心が存在するという考えの下に、このセルをゼロドップラー(クロスレンジ)に配置するために1次の位相変化を補償している。
【0061】
ここで、点Pの位相変化φP(t)は、式(9)のrP(θ(t))でθ(t)=ωtとした値を用いることで、下記の式(16)のように表すことができる。
先に説明した回転レンジセル移動補償回路3では、式(16)に現れる三角関数を角度変化に対する1次以下の多項式で表しているが、ここでは、レンジセルの変化より感度の高い位相変化に着目することを考慮して、これより次数の高い2次以下の多項式で表すことにする。
この場合、式(16)の位相変化φP(t)は、下記の式(17)で近似される。
【0062】
式(17)において、2次の位相変化2πxPω2t2/λが、回転運動によってレンジドップラー画像をドップラー軸方向にぼけさせる主要な成分に相当する。
2次位相係数は、回転中心のレンジを基準とするレンジxPに比例することを踏まえ、ここでは、2次位相係数をレンジxPの関数α2(xP)として、下記の式(18)で表すようにする。
【0063】
式(18)より明らかなように、xPとα2(xP)の組が得られれば、|ω|を定めることができる。
さらに、下記の式(19)で表される2次位相係数のレンジに対する変化の割合である2次位相係数レンジ変化係数β2が得られた場合にも、ここから|ω|を定めることができる。
【0064】
|ω|を推定する際、xPとα2(xP)の組を用いる場合は、レンジxPを知る必要がある。言い換えると、回転中心のレンジを特定する必要があるのに対し、2次位相係数レンジ変化係数を用いる場合は、xPそのものは必要としないので、回転中心のレンジも推定不要となる。よって、推定が容易になると考えられる。
これらの観点に基づき、2次位相係数変化量推定回路5では、2次位相係数レンジ変化係数β2を推定し、回転角速度換算回路6では、2次位相係数レンジ変化係数β2を|ω|に換算する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4では、2次位相係数レンジ変化係数β2の推定を可能にするために、各レンジにおける2次位相係数の各候補値について、その確からしさについての評価値の分布である2次位相係数評価値分布を生成する(図8を参照)。
【0065】
即ち、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4は、回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎(または、レンジ分解能セルを更に細かく分割されたサブレンジセル毎)に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布を出力する。
以下、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4の処理内容を具体的に説明する。
【0066】
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4のレンジ補間器51は、回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、レンジ方向に補間後のレンジヒストリをレンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52に出力する。
レンジヒストリのレンジ方向の補間には、一般的なゼロ詰め補間等を用いることができる。
この処理により、レンジヒストリのレンジ方向のセル幅(以下、「レンジピクセルスペーシング」と称する)が、元のレンジピクセルスペーシングΔrより小さくなり、セル数も増える。補間後のレンジセルについても、これまで通り、レンジセルと呼ぶことにする。
レンジ補間後のレンジピクセルスペーシングをΔrs[m]とし、補間後のレンジセル数をMsとする。
【0067】
後段の処理では、本来、各反射点のレンジ位置xPに対する特性を取り扱う必要があるが、これを各レンジセルの中心レンジに対する特性で代用する際、レンジ補間器51を組み入れることで、反射点の真のレンジと、その反射点の属するレンジセルの中心レンジとの差異を小さくして、これに基づく誤差の影響を低減することができる。
【0068】
なお、レンジのピクセルスペーシングが補間前から十分小さいと判断される場合には、レンジ補間器51の処理を省略することも可能である。
この場合、実際は、レンジ補間器51が不要となるが、その場合も、1倍の補間をしたとみなすことは可能である。
この点を踏まえ、以下では、説明の効率上、レンジ補間をしない場合も含めて、その処理の内容を統一的に説明する。
【0069】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、レンジセル毎(あるいは、サブレンジセル毎)に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する。
ここで取り扱う推定問題は、一般的な並進運動補償で取り扱われる問題と密接に関連している。
例えば、SARでは、レーダプラットフォームに搭載している運動センサの情報を用いて、レンジ分解能程度の補償を実現することができるが、波長オーダの精度が必要となる位相補償の誤差が残存していることがある。
このような問題に対して、受信信号そのものから位相誤差を推定する方法が各種提案されている。
【0070】
特に2次の位相誤差は、その影響が大きく、頻繁に発生する基本的な誤差であり、これに特化した推定方法も各種提案されている(例えば、Map Drift(MD)法や、Phase Difference(PD)法など)。
これらの方法を2次位相係数の推定に応用するのは有益である。ただし、並進運動補償においては、推定対象である位相誤差は、どのレンジセルにおいてもほぼ等しいという前提がおかれる場合が多い。そして、この前提に基づいて、各レンジセルで得られた位相変化の推定結果や変化量、中間指標等をレンジセル方向に統合(例えば、平均や積分等)することで、最終的な推定精度を向上させることが多い。
【0071】
しかし、ここで我々が取り扱う問題においては、2次の位相変化がレンジ毎に異なるため、従来の並進運動補償における処理をそのまま用いることはできない。
即ち、基本的には、レンジセル毎に得られた推定結果をそのまま用いざるを得ない。したがって、レンジセル方向に統合しないことによる精度劣化が生じて問題となる可能性がある。
【0072】
上述した回転運動によるレンジセル移動を補償した後に、各レンジにおける2次の位相誤差を補償して画像を結像させることが目的の従来方法2(非特許文献2を参照)においては、上記のPD法を適用して、2次の位相変化をレンジセル毎に推定する。
そして、この推定結果群に、推定を大きく失敗している外れ値が混入していることを危惧し、これを検出して除去する処理を適用する。
その後に、推定結果を平滑して、各レンジセルの2次位相変化を最終的に決定する。
しかし、この方法では、外れ値の混入数が増えるにつれて、推定に用いるデータ数が減少して推定精度が劣化する。また、外れ値の除去自体に失敗する可能性も高くなり、推定精度が劣化する。
【0073】
PD法においては、各レンジセルでの推定処理において、候補となる2次位相係数の各々について評価値が算出され、この評価値が最高の2次位相係数が、真の2次位相係数である可能性が高いと考えられる。
従来方法2では、この観点に基づき、各レンジセルにおいて評価値が最も高い2次位相係数を、そのレンジセルにおける仮の推定結果としている。
【0074】
しかし、画像上の反射点分布や雑音の状況によっては、真の2次位相係数の評価値が最高にならない場合がある。
例えば、PDやMDでは、原理的に、合成開口の前半のデータのみ、後半のデータのみの各々で生成した画像間のドップラーずれに相当する量を推定し、その推定結果から2次位相係数を得ている。その際、反射点分布の状態によっては、反射点間の干渉の影響を受けて、真値とは大きく異なる候補値の評価値が大きくなる場合がある。
従来方法2の外れ値は、このような影響を受けて発生した可能性が高い。ただし、このような状況においても、真値の評価値は、例え最高とはならなくても、高い値を保持しているので、この情報をうまく用いれば、推定精度を向上できる可能性がある。
この観点で、本発明では、評価値の分布全体に基づいて2次位相係数を推定するようにしている。
【0075】
以下、レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52の処理内容を具体的に説明する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52では、PDやMD等の2次位相係数の候補値に対しても、何らかの評価値を算出できるような2次位相推定法を用いて、レンジセル、候補値毎の2次位相係数評価値分布を算出する。
以下、PDを用いる場合を例にして説明する。
【0076】
あるレンジセルにおける位相2次の位相係数の真値がa2で与えられたとする。
注目レンジセルの受信信号g(t)が2次の位相誤差の含まれない信号s(t)を用いて、下記の式(20)で与えられるとする。
【0077】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、注目レンジセルの受信信号g(t)からから観測時間の前半の信号gs(t)と、後半の信号ge(t)を下記の式(21),(22)のように抽出する。
【0078】
ここで、s(t)=γPej2πfptと、振幅γPでドップラー周波数fPの1点のみが存在する単純な場合を想定すると、下記の式(23)で得られるgP(t)の位相の1次変化の中に2次係数a2が現れる。
これを得るためには、gP(t)をフーリエ変換して得られるスペクトルを確認すればよい。
【0079】
時間により変動しない項を無視すると、gP(t)のスペクトルGP(f)は下記の式(24)で与えられる。
【0080】
|GP(f)|を最大とするfをfmax[Hz]とすると、a2[1/s2]は下記の式(25)で得られる。
【0081】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、以上を踏まえて、|GP(f)|相当の値を2次位相係数評価値分布とする。
以上の説明では、観測時刻tを連続値として取り扱っているが、その観測時刻がヒットhとパルス繰り返し周期Δtで表現される離散時刻になっていても同様である。
【0082】
また、s(h,ms)のヒット前半の配列をss(h2,ms)、後半の配列をse(h2,ms)(h2=−H/4,・・・,H/4−1)として、sP(h2,ms)=se(h2,ms)ss(h2,ms)*をヒットh2方向にフーリエ変換して得られる配列をG0(d2,ms)(d2=−H/4,・・・,H/4−1)で表すものとする。
ここで、G0(d2,ms)のd2方向の軸の単位はセルであるが、式(25)と、観測時刻を2分割したことで、ドップラー分解能が2倍に劣化したことを踏まえると、セル番号2をA倍することで、2次位相係数に対する分布に換算することができる。
【0083】
ここでは、 上記のG0(d2,ms)をd2軸方向にゼロ詰め補間して、この方向のセル数を増やすとともにセル幅を狭くする。ゼロ詰め補間により点数をNintp倍にする。
この結果得られた配列をG(ds,ms)(ds=−Hs/2,・・・,Hs/2−1)で表すものとする。ただし、Hs=(H/2)Nintpである。
この場合、セル番号d2から2次位相係数への換算係数Δa2は、下記の式(27)で与えられる。
このG(ds,ms)を2次位相係数評価値分布とする。
【0084】
ここでは、PD法を用いるものを説明したが、PD法に限るものではなく、MD法などの他の方法で代用させることも可能である。
MD法では、ヒット前半と後半で、それぞれ画像を生成し、その画像間の相互相関のピーク位置から画像間のずれを計測し、その画像間のずれを2次位相変化係数に換算するようにする。
したがって、各ずれに対する相互相関値も、PD法の場合と同様に、候補2次位相変化係数の評価値として用いることができる。
【0085】
2次位相係数変化量推定回路5は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布を受けると、その2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する。
以下、2次位相係数変化量推定回路5による2次位相係数レンジ変化係数の推定処理を具体的に説明する。
2次位相係数評価値分布が示す2次元画像としては、一般的なs(y,x)という画像を想定する。
この画像のx軸方向の画素数はNx、y軸方向の画素数はNyである。これをG(ds,ms)と関連付ける場合、dsとyが対応し、msとxが対応する。
【0086】
まず、2次位相係数変化量推定回路5のスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61は、画像上の同じ傾きの直線は、いずれも、その画像を2次元フーリエ変換して得られるスペクトル画像上で原点(直流成分)を通り、元の直線の傾きに依存した傾きの直線状に投影されるというフーリエ変換の性質を利用して、元の画像上の直線の傾きを推定する。
一般的に、 x−y2次元無限平面上の傾きaの直線は、フーリエ変換の性質より、これを2次元フーリエ変換したfx−fy2次元無限周波数平面上で、原点を通り、傾きAが下記の式(28)で与えられる直線に変換される。
【0087】
この関係は、2次元画像s(y,x)上の直線群の傾きa(図9(a)を参照)と、これを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル画像S(fy,fx)上の直線の傾きA(図9(b)を参照)とにおいて、x方向の画素数Nxとy方向の画素数Nyが等しい特別な場合には同様に成立する。
x方向の画素数Nxとy方向の画素数Nyが異なる一般的な場合には、両傾きの関係は、各軸方向の空間分解能がそれぞれ1/Nx,1/Nyとなる影響を踏まえ、下記の式(29)で与えられる。
【0088】
いずれにしても、スペクトル画像上の傾きが分かれば、上式の関係に基づいて、元の画像上の直線群の傾きaを算出することができる。
特に、スペクトル画像S(fy,fx)上で傾きを推定するメリットは、直線が定点(原点)を通るので、その定点を通る直線検出問題に簡単化して、傾きを推定できることである。
【0089】
スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、以上を踏まえて、2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の絶対値である振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を生成し、そのスペクトル画像の絶対値である振幅分布を取得する。
定点を通る直線の検出は、定点を通り、傾きが異なる経路に沿ったスペクトル画像の線積分結果のピーク検出によって実施することができる。
2次元画像上の直線群の傾きaとして予想される値を一つ以上用意して、各々に応じたスペクトル画像上の積分経路を積分経路群として設定する。
【0090】
例えば、aの候補値をa_cand(ia)(ia=0,1,・・・,Na−1: Naはaの候補数)とする。
候補値として、acを中心とするWa幅の等間隔値とする場合、 a_cand(ia)は、下記の式(30)のように与えられる。
a_cand(ia)=ac+(Wa/Na)×(ia−1/2) (30)
候補値は、必ずしも等間隔値である必要はなく、a_cand(ia)として不等間隔な値を設定することも可能である。ただし、後段でa_cand(ia)が等間隔であることを想定した処理が存在する場合には、等間隔な値を設定する。
a_cand(ia)に対するスペクトル画像上の積分経路の傾きA_cand(ia)は、下記の式(31)で与えられる。
A_cand(ia)=−(Ny/Nx)1/a_cand(ia) (31)
【0091】
次に、軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、fy方向の2Ny点の位置fy0(iy) (iy =0,1,・・・,2Ny−1)を下記の式(32)のように設定する。
fy0(iy)=iy−Ny (32)
また、スペクトル画像のfy方向の画素番号が0からNy−1で与えられると想定し、下記の式(33)でfy(iy)を取得する。
fy(iy)=fy0(iy) mod Ny (iy=0、1、…、2Ny−1) (33)
【0092】
次に、軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、各iyに対するfx方向の画素番号fx(iy)を下記の式(34)で与える。
fx(iy)=(1/A_cand(ia))fy(iy)=−(Nx/Ny)a_cand(ia) (34)
これにより、2Ny組の(fx(iy),fy(iy))でスペクトル画像上の積分経路が設定される。
【0093】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、スペクトル画像の振幅分布S(y,x)と、各a_cand(ia)に対する積分経路を設定する配列fx(iy),fy(iy)に基づいて、スペクトル画像の振幅分布の線積分を行う。
その際、fx(iy)の値が小数の場合があることを考慮して、fx(iy)に隣接する2つ画素番号の画素の値の線形補間により値を決定する。
まず、floor(Z)を実数Zの小数点以下を切り捨てるオペレータとして、 fx(iy)より小さい側と大きい側の画素番号fx_sml0(iy),fx_lrg0(iy)を下記の式(35),(36)で取得する。
fx_sml0(iy)=floor(fx(iy)) (35)
fx_lrg0(iy)=fx_sml0(iy)+1 (36)
【0094】
また、線形補間に用いるための fx(iy)とfx_sml0(iy)、fx_lrg0(iy)までの距離d_sml(iy),d_lrg(iy)を下記の式(37),(38)で取得する。
d_sml(iy)=fx(iy)−fx_sml0(iy) (37)
d_lrg(iy)=1−d_sml(iy) (38)
fx_sml0(iy)とfx_lrg0(iy)が、0からNx−1の間の外の値を指す場合があることを踏まえ、下記の式(39),(40)により、それぞれに対応する画素番号fx_sml(iy),fx_lrg(iy)を取得する。
fx_sml(iy)=fx_sml0(iy) mod Nx (39)
fx_lrg(iy)=fx_lrg0(iy) mod Nx (40)
【0095】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、以上を踏まえて、傾きが様々に異なる経路に沿ったスペクトル画像の線積分を行う。
その際、線積分用画像としては、下記の(a)〜(c)に示す方法等が考えられる。
(a)S(fy,fx)をそのまま用いる方法
(b)S(fy、fx)の原点からfy方向に離れるほど、信号の大きさが小さくなって、傾きの検出感度が劣化してしまう場合を考慮し、S(fy,fx)の値を各fyにおいて、S(fy,*)(ここで、*は、スペクトル画像のfx方向の画素番号0からNx−1の全てを表す表現である)の最大値や2乗総和値等で正規化したスペクトル画像(以下、直線強調スペクトル画像)を用いる方法
(c)(b)と同様の目的で、各fyの2乗総和値でスペクトル画像を正規化するが、その際、後段の処理を考慮して、上記の正規化後の全スペクトル画像の画素の値を、さらに元のS(fy,fx)の全画素についての2乗総和値で割ったスペクトル画像(総電力保持直線強調スペクトル画像)を用いる方法
以下の説明では、(a)(b)(c)のいずれの方法で得られたスペクトル画像についても、スペクトル画像をS1(fy,fx)で表現する。
【0096】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、各iyに対する線積分用の値z(iy)を下記の式(41)で取得する。
z(iy)= S1(fy(iy)
,fx_sml(iy))×d_lrg(iy)+ S1(fy(iy)
,fx_lrg(iy))×d_sml(iy)
(41)
【0097】
この値z(iy)を全てのiyについて総和することで、a_cand(ia)に対する積分値が得られる。
この際も、単にそのまま総和するのみならず、例えば、原点付近の値を重視するなど、何らかの重みW(iy)を乗じて総和することも可能である。
よって、以下では、軌跡傾き信頼度分布算出回路71が線積分値Z0を得るものとする。
なお、重みW(iy)については、その総和がある一定値Wtであり(ただし、Wt>0)、下記の式(43)を満足するように設定する。
【0098】
特に、Wt=2Ny、W(iy)=1(iy=0,1,・・・,Ny)とした場合に、z(iy)をそのまま総和したのと同じ結果が得られる。Wtは、後段の処理において本質的な値ではなく、同じ処理をa_cand(ia)を変えて繰り返し処理する際に、同じ値に設定していればよい。
【0099】
各a_cand(ia)によって定まる積分経路に沿って、以上の処理に基づいて得られる積分値Z0を、iaに対する配列Z0(ia)で表すものとする。
Z0(ia)の値は、積分経路がスペクトル画像上の軌跡に沿っていれば、言い換えると、a_cand(ia)が元の画像上の各軌跡の傾きに近ければ近いほど、高い値になる。
即ち、Z0(ia)の値が高い場合の傾きa_cand(ia)ほど、真の傾きaの候補値として、より確からしいとみなすことができる。この観点で、各a_cand(ia)についての上記Z(ia)を軌跡傾き信頼度分布と称する。
【0100】
図10に示す軌跡傾き信頼度分布において、そのピーク位置が、真の傾きaになっていると期待される。
以上のようにして、軌跡傾き信頼度分布算出回路71では、軌跡の傾きに関する信頼度分布を取得する。
【0101】
信頼度分布最大位置特定器72は、軌跡傾き信頼度分布算出回路71が信頼度分布を取得すると、その信頼度分布の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する。
即ち、信頼度分布最大位置特定器72は、一般的なピーク探索を実施することにより、上記のZ(ia)を最大とするiaを検出する。
【0102】
軌跡傾き換算器73は、信頼度分布最大位置特定器72により検出されたiaに相当する軌跡傾き候補a_cand(ia)を得て、その軌跡傾き候補a_cand(ia)を傾きaの推定結果aestとして2次位相係数変化量算出回路62に出力する。
なお、傾きaの推定結果aestは、G(ds,ms)が入力画像の場合には、あくまで、ds方向に1セル進んだ間にms方向に進む画素数(小数も許容)である。
【0103】
2次位相係数変化量算出回路62は、軌跡傾き換算器73から傾きaの推定結果aestを受けると、その推定結果aestを、前述のレンジ補間後のレンジピクセルスペーシングΔrsと、dsから2次位相係数への換算係数Δa2とを用いて、下記の式(44)により、2次位相係数のレンジに対する変化の割合である2次位相係数レンジ変化係数β2に換算する。
【0104】
回転角速度換算回路6は、2次位相係数変化量算出回路62が傾きaの推定結果aestを2次位相係数レンジ変化係数β2に換算すると、下記の式(45)によって、その2次位相係数レンジ変化係数β2を目標の等価的な回転運動の角速度の大きさ|ω|に換算する。
この角速度の大きさ|ω|によって、前述のポーラーフォーマット法等における周波数平面上での信号の配置の角度を特定することができる。
【0105】
2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7は、回転中心が備えるべき性質である「2次位相係数が0」となるレンジを推定し、このレンジを現在の回転中心のレンジとみなすようにする。また、後段の画像再生のために、このレンジを0レンジにするためのレンジ補償量を推定する。
即ち、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7の傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4より出力された2次位相係数評価値分布G(ds,ms)に対して、両軸方向のスケーリングを考慮した傾きが式(44)に示す2次位相係数レンジ変化係数β2であり、かつ、2次位相係数が0となるレンジが様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施する。
【0106】
傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81は、各積分経路に沿った線積分を実施した結果、線積分の値が最大となる積分経路では、軌跡と一致していると考え、その積分経路において、2次係数が0となるレンジを、2次位相係数が0となるレンジ(ゼロ交差レンジ)とみなし、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
【0107】
0次レンジ補償回路8は、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7から2次位相係数が0となるレンジを受けると、そのレンジが0になるように、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する。
即ち、0次レンジ補償回路8は、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリs2(h,m)において、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7から出力されたレンジが0になるように、全ヒットに渡って補償する。その補償結果を配列srot(h,m)に格納する。
【0108】
なお、レンジヒストリs2(h,m)においては、既に並進運動によるレンジ変化の影響が補償されている。特に1次の位相変化を補償することで、回転中心が備えるべき条件の一つである「レンジ変化が0」のクロスレンジ上の点が、0ドップラーセルに配置されている。
また、回転中心が備えるべきもう一つの条件である「2次位相係数が0(言い換えると、観測中のドップラー周波数の変化が0)」となるレンジを0レンジに配置することで、「レンジ変化が0、かつ、2次位相係数が0」、言い換えると、観測中の画像上の移動が0の位置、即ち、回転中心をゼロドップラーに配置できる効果がある。
【0109】
回転考慮レーダ画像生成回路9は、回転角速度換算回路6により推定された角速度に基づいて、回転を考慮した画像再生を行うことで、0次レンジ補償回路8による補償後のレンジヒストリから、画像の両軸が物理的な長さの軸にスケーリングされているレーダ画像を生成する。
即ち、回転考慮レーダ画像生成回路9は、並進運動の補償後に、回転中心のレンジが補償されたレンジヒストリを、一般的なポーラーフォーマット法のように、回転を考慮した方法で画像再生することで、回転の影響により発生したぼけが正しく補償され、かつ、正しくクロスレンジスケーリングがなされているレーダ画像を生成する。
【0110】
以下、回転考慮レーダ画像生成回路9の処理内容を具体的に説明する。
回転考慮レーダ画像生成回路9は、並進運動の影響と、回転中心のレンジずれが完全に補償されたと期待されるレンジヒストリ(配列srot(h,m)に格納されているレンジヒストリ)をレンジ方向にフーリエ変換してレンジプロフィールのスペクトルに関するヒストリ(レンジスペクトルヒストリ)であるu(h,n)(n=−M/2,・・・,M/2−1)を取得する。
このレンジスペクトルを周波数空間で、送信パルスの中間周波数及び帯域幅と、回転により変化する角度η(h)(目標固定座標系でのレーダから回転中心を見た方向の角度)に応じた位置に配置する。
ここで、η(h)は、下記の式(46)で表される。
【0111】
ここで、第nレンジスペクトルセルにおける周波数をf(n)として、例えば、中心周波数をfc、送信帯域幅をBとすると、第nレンジスペクトルセルにおける周波数f(n)は、下記の式(47)のように表される。
【0112】
回転考慮レーダ画像生成回路9は、レンジスペクトルヒストリu(h,n)を、公知の「Central Slice Theorem」を根拠に、fr−fc周波数平面上で、n,h毎に下記の式(48)で定まる位置に曲座標配置する。
【0113】
以上により、目標の反射強度に関する周波数分布が得られる。
この周波数分布を適切な位置の矩形グリッドでリサンプリングして、これを2次元逆フーリエ変換することで、時間平面における目標の反射強度分布が得られる。
この画像の両軸を既知の(高速/2)倍することで、物理的な長さの軸にすることができる。即ち、クロスレンジスケーリングが実現されたレーダ画像が得られる。
そして、このレーダ画像においては、上記周波数平面での一連の処理の効果で、回転によるぼけが補償されている。
【0114】
この実施の形態1では、以上のような構成を採用することにより、以下の効果を奏することができる。
[1]
並進運動の補償処理において、特に、一般的には補償を必要としない1次の位相変化を補償するので、並進運動後にレンジ変化が0になったクロスレンジレンジ上の点をゼロドップラーセルに配置することができるようになり、以下の効果が得られる。
【0115】
(a1)
従来方法2に基づいて、回転によるレンジ移動を補償する際には、回転中心のドップラーセルを基準とする各ドップラー位置に応じて補償量を変える必要があった。そのため、回転中心がどのドップラーセルに位置するかを知る必要があった。
しかし、従来方法2では、単に並進運動が完全に記載されていると仮定すると述べられているのみで、回転中心のドップラーセルを知る方法や、0ドップラー周波数に配置する方法が具体的に開示されていない。
しかし、この実施の形態1では、上記の処理により、これを具体的に実現することができる。
なお、1次の位相変化を補償する代わりに、回転中心が、その位相変化相応のドップラーシフトがなされていると考えて、各ドップラーセルにおける上記補償において、各ドップラー周波数をこのシフトの分だけ補正して補償することも可能であるが、この実施の形態1で示した方法と本質的な相違は無い。
【0116】
(a2)
後段の回転を考慮した画像再生においては、レーダと回転中心は固定されている必要がある。この処理により、回転中心のドップラー周波数相当の移動を補償して回転中心が固定という条件の達成に寄与している。
従来方法1であるポーラーフォーマット法は、基本的に、レーダと目標の間の相対運動をかなり精度良く把握できているときの方法であり、相対運動の情報が既知情報として精度良く与えられることが期待できない場合においては、このような補償は困難であった。
【0117】
[2]
この実施の形態1では、レンジセル毎の2次位相係数を推定する際、各レンジにおける各候補値についての評価値全体の分布を用いて、2次位相係数のレンジに対する変化を推定しているので、その精度を高くすることができる効果がある。
これに対して、従来方法2では、各レンジにおける評価値の最大位置のみに基づいて推定することに相当する。よって、干渉等の影響による外れ値の影響を受け易く、推定精度が低い問題があった。
【0118】
[3]
レンジ毎の2次位相係数を推定する際、信号をレンジ方向に補間しているため、反射点の真のレンジと、その反射点が所属するレンジセルの中心との差を小さくできる。
これにより、レンジセル毎に、2次位相係数の推定に関する評価指標を算出する際、上記のレンジ差に基づく誤差の発生を低減することができる。
同様に、レンジセル毎に、類似の処理を行う従来方法2では、このような工夫が施されていないので、これに基づく誤差が低減されていない問題がある。
【0119】
[4]
2次位相係数のレンジ変化の係数を推定する際、この問題を画像上の直線(群)の傾き推定問題に帰着させ、さらに、フーリエ変換の性質を利用することで、これを既知の定点を通る直線の検出問題に簡単化して問題を解くようにしているので、2次位相係数のレンジ変化の係数を高精度に安定して推定することができる。
これに対し、従来方法では、最大位置の情報のみに基づいて推定を行い、その最大位置は、目標上の反射点分布によっては、反射点間の干渉等の影響を受けて、真の位置とは大きく異なる位置に発生することもある。このような場合に、外れ値を検出・除去して、再度推定を行っても、情報量の更なる欠落によって推定精度が劣化する。また、外れ値の発生頻度が増えれば、除去自体が困難になる問題がある。
この実施の形態1では、たまたま、あるレンジで真値とは異なる位置に最大値が発生した場合にも、真値に存在するある程度高いピークの情報(最大ではなくても、ある程度高いピークの情報)を利用して、精度劣化を極力抑えることができる。
【0120】
[5]
従来方法を記載している非特許文献では、2次位相係数と、レンジ位置の関係から回転角速度を推定できることが示唆されている。
しかし、これは、実際には、あるレンジ位置の回転中心を基準とするレンジと、その2次位相係数の組があって定まる話であり、その実現に向けては、回転中心のレンジが既知である必要がある。この回転中心のレンジは、未知であることから、実際は、非特許文献で示唆された方法は実現困難である。
これに対して、この実施の形態1では、 2次位相係数のレンジ変化から回転角速度を求めており、未知である回転中心のレンジを必要とせずに、回転角速度を推定することができる効果がある。
【0121】
[6]
従来方法1であるポーラーフォーマット法を実現するためには、回転中心をゼロレンジに固定した上で処理する必要があるが、この具体的な実現方法は、特にレーダと目標の間の相対運動が未知である状況においては示されておらず、実際は、回転を考慮した高精度な画像化を行うことは困難である。
これに対して、この実施の形態1では、先に述べた1次位相変化の補償により、回転中心が満たすべき条件の一つであるレンジの変化が0であるクロスレンジ、即ち、回転中心が含まれるクロスレンジを0ドップラーに配置するため、クロスレンジのドップラー周波数に相当するラジアル速度まで0にしている。
さらに、回転中心が満たすべき別の条件である「回転運動によって発生する2次の位相係数が0のレンジ」を、先に述べた評価値分布上において、傾きが既に定まった2次位相係数レンジ係数で定まり、切片の異なる複数の経路に沿った線積分結果の最大値探索により推定することも実現できる。即ち、回転中心のレンジ特定できる。
よって、このレンジをゼロとするような補償が実現されるので、回転運動を考慮した画像再生で必要となる回転中心のレンジを0に完全に固定する補償が実現される。
【0122】
[7]
これまで述べた回転角速度の推定と、回転中心のレンジを0に完全に固定する補償の実現により、これらを用いた回転運動を考慮した画像再生を実現することができる効果がある。
即ち、従来方法1では、特に相対運動が未知な状況において、実際には画像を再生できないか、未知量の推定誤差が大き過ぎて低画質な画像しか生成できなかった問題を解決できる利点がある。
【0123】
[8]
従来方法2では、回転運動の情報を知ることなく、回転に基づくレンジ変化の補償とドップラー周波数変化の補償を多段的に処理して、回転による画像のぼけの補償を実現しているが、これは実際の運動を近似モデルに置き換えた上で実現しているので、この近似に基づく信号の歪みを引き起こし、画質が低下する可能性がある。
この実施の形態1では、従来方法2と類似の方法を回転の推定、回転中心の固定のみに利用しており、実際の画像化は回転を考慮した精密な方法で実現しているので、従来方法2で発生するようなタイプの画質の劣化は生じない効果がある。
【0124】
[9]
従来方法2では、回転により発生するぼけの補償はできるものの、クロスレンジスケーリングは実現できない。
これに対して、この実施の形態1では、回転により発生するぼけの補償に加え、クロスレンジスケーリングまでも実現することができる。
【0125】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10は2次位相係数評価値分布と、2次位相係数レンジ変化係数の推定結果とに基づいて、2次位相係数が0となるレンジを推定し、さらに、その推定結果に基づいて、2次位相係数が0となるレンジを0レンジにするための補償量を算出する回路である。
【0126】
図12はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置の2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10を示す構成図である。
図12において、前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路91はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸(例えば、縦軸y)に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸(例えば、横軸x)上の座標(軌跡をy=a(x+x0)で表される場合のx0)であるゼロ交差点を推定するために、直線の傾きaに基づいて、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像をx軸に総和して、各々のyの総和値を最大とするyの値y0からゼロ交差点を推定する回路である。
【0127】
次に動作について説明する。
この実施の形態2と上記実施の形態1では、ゼロ交差レンジを推定する方法が異なっている。
2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡が、x−y平面において、y=a(x+x0)で表せる場合のx0を推定する問題において、
この実施の形態2では、x=0の位置を中心に、y’=y−axとなるように、各々のx毎に、何らかの方法で全画素を−axだけ平行移動させている。
その際、画像の端部から出た画素は、循環シフトの要領で、そのまま反対側の端に移動させる。以上は一般的な1次のレンジ補償等で出てくる処理である。
【0128】
補償後の画像において、元の軌跡はy’=ax0で表される。
よって、求めたいゼロ交差レンジx0は、補償後の画像をx方向に総和した分布において、その値のピークとなるyであるymaxを用いて、下記の式(49)のように表される。
x0=ymax/a (49)
【0129】
前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路91では、以上の原理に基づいてゼロ交差レンジを推定して、そのゼロ交差レンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
これ以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0130】
この実施の形態2の構成を採用することにより、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1と比較した場合の効果としては、ゼロ交差レンジの推定に用いる評価指標分布を、一般的な1次のレンジ補償相当の処理と、配列の一軸方向の総和で得ることができるので、容易に構成でき、かつ、処理負荷も低減できる可能性があることが挙げられる。
【0131】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジがゼロ交差レンジであると判定して、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する回路である。
【0132】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1,2で、2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを利用して、ゼロ交差レンジを推定するものを示したが、この実施の形態3では、2次位相係数評価値分布から求まる各レンジの2次位相係数(各レンジにおいて、評価値を最大とする2次位相係数の候補値)だけを見て、その2次位相係数が0に最も近くなるレンジセルをゼロ交差レンジと推定するようにしている。
【0133】
即ち、2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11は、2次位相係数評価値分布から求まる各レンジの2次位相係数を比較し、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを特定する。
そして、そのレンジがゼロ交差レンジであると判定して、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
これ以外の処理は、上記実施の形態1,2と同じである。
【0134】
この実施の形態3の構成を採用することにより、上記実施の形態1,2と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1,2と比較した場合の効果としては、ゼロ交差レンジを推定する際に、前段で推定された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに基づく、2次位相係数評価値分布の線積分処理(実施の形態1)や、補償と総和処理(実施の形態2)を実施する必要がないので、処理負荷が低減され、かつ、回路も簡単化される効果を奏することができる。
【0135】
実施の形態4.
図14はこの発明の実施の形態4による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを推定し、そのレンジをゼロ交差レンジとして0次レンジ補償回路8に出力する回路である。
【0136】
次に動作について説明する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、並進運動補償回路2から並進運動補償後のレンジヒストリを受けると、そのレンジヒストリをレンジ方向に区分的な領域(レンジ方向の重複許容)に分割する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、各区分領域において、一般的な並進運動補償で実施されるレンジセルの移動量推定処理を実施する。
【0137】
移動量がゼロとなるレンジの区分領域内には、ゼロクロスレンジが存在すると考えることができる。
区分領域内のゼロ交差レンジについては、その区分領域内のレンジヒストリの振幅値をヒット方向に総和(または、電力比較の観点では、2乗和)して得られる分布において、値が最大となるレンジ、または、分布形状が最も鋭くなったピーク位置として得ることができる。
【0138】
そこで、並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、区分領域内のレンジヒストリの振幅値をヒット方向に総和して得られる分布において、値が最大となるレンジがゼロ交差レンジであると推定する。あるいは、分布形状が最も鋭いピーク位置のレンジがゼロ交差レンジであると推定する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、推定したゼロ交差レンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0139】
この実施の形態4の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜3と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜3との比較では、一般的な並進運動補償で用いられるレンジ移動推定方法をそのまま応用できるので、既に保持する装置の改修コストをあまりかけずに流用できる効果がある。
【0140】
実施の形態5.
図15はこの発明の実施の形態5による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数推定回路13はHough変換等の画像上の直線の検出を行う一般的な方法に基づき、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、その軌跡の傾きと切片から2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、その2次位相係数が0になっているレンジを推定する回路である。
【0141】
次に動作について説明する。
2次位相係数推定回路13は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布G(ds,ms)を受けると、画像上の直線を検出する一般的な方法であるHough変換を実施することで、その2次位相係数評価値分布G(ds,ms)が示す2次元画像上の軌跡を検出する。
【0142】
2次位相係数推定回路13は、2次元画像上の軌跡を検出すると、その軌跡の傾き(ds方向に1セル進んだ間にms方向に進む画素数aest(小数も許容))と、その軌跡のゼロクロスレンジセル(その軌跡と、ds=0との交点のレンジセルmX(小数許容))とを取得する。
【0143】
2次位相係数推定回路13は、軌跡の傾きとゼロクロスレンジセルを取得すると、前述のレンジ補間後のレンジピクセルスペーシングΔrs,dsと、2次位相係数への換算係数Δa2を用いて、下記の式(50)より、2次位相係数レンジ変化係数β2を算出し、また、下記の式(51)より、ゼロ交差レンジrXを算出する。
【0144】
2次位相係数推定回路13は、2次位相係数レンジ変化係数β2とゼロ交差レンジrXを算出すると、その2次位相係数レンジ変化係数β2を回転角速度換算回路6に出力し、そのゼロ交差レンジrXを0次レンジ補償回路8に出力する。
2次位相係数推定回路13以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0145】
この実施の形態5の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜4との比較では、一般的なHough変換を用いて装置を構成することができる効果を奏する。
さらに、2次位相係数推定回路13において、2次位相係数レンジ変化係数β2とゼロ交差レンジrXを同時に得ることができるので、装置構成が簡素化される利点がある。
【0146】
実施の形態6.
図16はこの発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
ゼロ交差レンジ推定回路21はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、その軌跡の傾きから軌跡のゼロ交差レンジを推定する回路である。
【0147】
レンジセル毎2次位相補償回路22は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数とゼロ交差レンジ推定回路21により推定されたゼロ交差レンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、その補償量にしたがって回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する回路である。
【0148】
レーダ画像生成回路23はレンジセル毎2次位相補償回路22による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成する回路である。
クロスレンジスケーリング回路24は回転角速度換算回路6により推定された回転運動の角速度に基づいて、レーダ画像生成回路23により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施する回路である。
【0149】
次に動作について説明する。
この実施の形態6では、従来方法2と同様に、回転による画像のぼけを補償(回転によるレンジの変化と、回転によるドップラーの変化とを2段階で補償)し、補償後の画像をフーリエ変換することでレンジドップラー画像を生成する。
また、この実施の形態6では、従来方法では実施できないクロスレンジスケーリングを実施する。
【0150】
レンジヒストリ取得回路1、並進運動補償回路2、回転レンジセル移動補償回路3、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4及び2次位相係数変化量推定回路5の処理内容は、上記実施の形態1と同様である。
【0151】
ゼロ交差レンジ推定回路21は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布を受けると、その2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、その軌跡の傾きから軌跡のゼロ交差レンジを推定する。
即ち、ゼロ交差レンジ推定回路21は、下記に示す(a)〜(e)のいずれかの回路と同様の処理を実施することで、軌跡のゼロ交差レンジを推定する。
(a)2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7
(b)2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10
(c)2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11
(d)並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12
(e)2次位相係数推定回路13
【0152】
なお、上記(a)では、上記実施の形態1等で詳述したように、推定に用いる入力値が異なる。そのため、その入力値を得るためのブロック間の配線や関連するブロックも異なる。
図16では、(a)や(b)を用いることを想定している構成図を示しているが、(c)を用いる場合には、2次位相係数変化量推定回路5からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線が不要となる。
(d)を用いる場合には、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4及び2次位相係数変化量推定回路5からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線が不要になる代わりに、並進運動補償回路2からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線を追加する必要がある。
(e)を用いる場合には、 図17に示すような構成になる。
これらは、ゼロ交差レンジ推定回路21又はそれに相応する回路の入力を踏まえて適宜組みかえればいい。
【0153】
レンジセル毎2次位相補償回路22は、ゼロ交差レンジ推定回路21がゼロ交差レンジを推定すると、そのゼロ交差レンジと2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数から、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、その補償量にしたがって回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する。
即ち、レンジセル毎2次位相補償回路22は、そのゼロ交差レンジと2次位相係数レンジ変化係数から各レンジの2次位相係数を算出する。
そして、回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおいて、その2次位相係数から、各レンジで残存するドップラー変化を引き起こす2次の位相変化を算出し、その2次の位相変化を打ち消すように補償する。
【0154】
レーダ画像生成回路23は、レンジセル毎2次位相補償回路22による補償後のレンジヒストリ(並進運動と回転運動の影響によるぼけが大部分補償されたと期待されるレンジヒストリ)をヒット方向にフーリエ変換することで、レンジドップラー画像を生成する。
レーダ画像生成回路23により生成されたレンジドップラー画像では、従来方法2と同様に、レンジとドップラー周波数方向のぼけの主要成分が補償されている。
【0155】
クロスレンジスケーリング回路24は、レーダ画像生成回路23がレンジドップラー画像を生成すると、回転角速度換算回路6により推定された回転運動の角速度の大きさ|ω|に基づいて、そのレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さに相当するクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施する。
ドップラー周波数[Hz]からクロスレンジ[m]への換算係数は、上記の式(3)に基づくと、λ/(2・|ω|)で表される。
したがって、その換算係数をレンジドップラー画像のドップラー周波数[Hz]に掛けて、クロスレンジ軸にすればいい。
【0156】
なお、ドップラーセル番号[cell]からドップラー周波数[Hz]への換算係数は、観測時間Tを用いて1/Tと表される。
よって、レンジドップラー画像のドップラー方向の軸がドップラーセル番号で表現されている場合には、そのドップラーセル番号を、λ/(2・|ω|T)倍することでクロスレンジ軸に変換することができる。
以上により、従来方法2と類似の流れで生成した、回転によるぼけの主成分が補償されたレンジドップラー画像についても、これをクロスレンジスケーリングした画像にすることができる。
【0157】
この実施の形態6の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜5と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜5との比較では、回転角速度の大きさと回転中心のレンジ(ゼロ交差レンジ)の推定のために生成された回転によるレンジ移動が補償されたレンジヒストリや、レンジに対する2次位相係数レンジ変化率を再利用して、回転によるぼけの主成分が補償されたレンジヒストリを、処理負荷の増大をほとんど引き起こさずに生成することができ、かつ、これを処理負荷が回転を考慮した画像再生法より低い、ヒット方向のフーリエ変換でレンジドップラーにすることができ、かつ、これを既に推定された回転角速度の大きさを用いた簡単なスケーリングでレンジクロスレンジ画像にすることができるので、処理負荷低減の観点で効果がある。
【0158】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0159】
1 レンジヒストリ取得回路、2 並進運動補償回路、3 回転レンジセル移動補償回路、4 レンジセル毎2次位相係数候補評価回路、5 2次位相係数変化量推定回路、6 回転角速度換算回路、7 2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路、8 0次レンジ補償回路、9 回転考慮レーダ画像生成回路、10 2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路、11 2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路、12 並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路、13 2次位相係数推定回路、21 ゼロ交差レンジ推定回路、22 レンジセル毎2次位相補償回路、23 レーダ画像生成回路、24 クロスレンジスケーリング回路、31 送信機、32 送受切換器、33 送受信アンテナ、34 受信機、35 レンジ圧縮器、41 一般並進運動補償回路、42 1次位相変化補償器、51 レンジ補間器、52 レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路、61 スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路、62 2次位相係数変化量算出回路、71 軌跡傾き信頼度分布算出回路、72 信頼度分布最大位置特定器、73 軌跡傾き換算器、81 傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路、91 前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダで観測対象である目標の電波画像を取得する画像レーダ装置に関し、特に目標と画像レーダ装置の間の相対運動が未知である場合や相対運動の推定結果に誤差が含まれる場合において、距離の時間変化の影響で発生する画像のぼけを補償する技術や、画像の軸を物理的な長さの軸に換算する際のスケーリング係数を推定して、生成画像の軸を物理的な長さの軸にスケーリングする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像レーダ装置では、下記の(1)〜(3)の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返し実施する。
(1)送信機が高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器を介して送受信アンテナに出力することにより、その送受信アンテナから高周波信号を空間に向けて放射させる高周波信号送信処理
(2)空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信する高周波信号受信処理
(3)受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得するレンジプロフィール取得処理
【0003】
画像レーダ装置は、上記の一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得すると、そのレンジヒストリからレーダ画像を生成する。
ここで、レンジヒストリは、一般的に2次元分布として与えられ、その2次元分布の一軸は、レンジプロフィールと同じであり、高周波信号の照射を開始してからの経過時間[s](以下、「ファストタイム」と称する)、または、その経過時間に電波の速度の1/2を乗じたレンジ[m]で与えられる。
その2次元分布の他方の一軸は、相対位置関係を変えながら行う観測の時刻(以下、「スロータイム」または「観測時刻」と称する)、または、観測番号を表すヒットで与えられる。
【0004】
レーダ画像を得る代表的なレーダとして、合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)と、逆合成開口レーダ(Inverse SAR:ISAR)が挙げられる。
SARは、例えば、レーダが空間内を移動しながら地表面などの観測対象を観測することで得られたレンジプロフィールを適切に合成することで、あたかも大口径のアンテナを空間に配置したような効果を得るものであり、レンジに直交するクロスレンジ方向についても高分解能化させたレーダ画像を得ることができる。
ISARは、レーダが運動する目標を観測することで、SARと同様の効果を得て、クロスレンジ方向を高分解能化させたレーダ画像を得るものである。
例えば、目標に固定された座標系内でのレーダ位置の変化を考えれば、SARと同じ効果が得られることが容易に理解される。
【0005】
相対運動が自らの運動で定められ、かつ、その運動をユーザが比較的高精度に計測できるSARと比べて、相対運動が観測対象の運動で定められ、かつ、その運動を比較的高精度に計測することが困難なISARの方が、相対運動が未知又は推定誤差が大きくなる状況が発生し易い。
しかし、SARにおいても、レーダプラットフォームに搭載する運動センサの精度が低い場合には、相対運動が大きくなる可能性がある。
このような観点から、以下では、特にSARとISARを区別せず、画像レーダと呼ぶことにする。
なお、SARとISARの中間、即ち、レーダと目標の両者が移動する場合(例えば、航空機から海上を航行中の船を観測する場合)も画像化が可能であり、この場合も画像レーダの範疇に含まれる。
【0006】
目標における高周波信号の反射点のレンジ位置を知るには、レンジプロフィール上で該当点のレンジを計測すればよいので、本来観測は1回で十分である。しかし、クロスレンジ位置を知るには、距離の変化情報が必要になるので、上記のように、複数回の観測を実施してレンジヒストリを取得する。
例えば、等速直線運動をするレーダから固定目標を観測するような場合を想定すると、レーダと反射点の軌道方向の位置が近くなるほど距離が近くなる。
したがって、距離の変化を観測することにより、例えば、レーダと軌道方向の位置が等しくなる時刻を、距離変化が0になる観測時刻(または、距離が最も小さくなる観測時刻)として得ることができる。
この観測時刻と相対運動情報であるレーダの速度及びレーダの初期位置から、その点の軌道方向の位置(クロスレンジ位置に相当する)を特定することができる。
【0007】
実際のレーダ画像化処理では、複数の反射点の信号が重畳する受信信号から、各反射点の距離変化を直接計測して、距離に直交する方向の位置を特定することは困難であり、実際は、何らかの信号処理に基づいて実施されることとなる。
画像レーダにおける画像化方法は、各種提案されており、それを説明するための相対運動のモデルも色々なものがある。
ここでは、説明の便宜上、相対運動によるレーダと目標上の反射点の距離の変化が、「レーダと目標中心の間の距離の変化」と、「目標中心を中心とする回転運動」との合成によって発生すると考えられるモデルを採用する。
【0008】
最初に、目標に固定された座標系を考えると、この座標系の中で、レーダは静止目標を観測しながら移動する。
このとき、目標中心とレーダの間の距離を一定とするような補償を行った上で、レーダと目標中心の位置を固定するような座標系を考える。
この座標系においては、レーダと目標中心が静止し、目標のみが目標中心を中心にして回転するため、レーダと目標上の各反射点の間の距離変化は、レーダと目標中心の間の距離の変化と、目標中心を中心とする回転運動とによって発生したとみなせる。
なお、レーダと目標中心の間の距離の変化を引き起こす運動は、回転運動(rotational motion)に対する並進運動(translational motion)と呼ばれることがあり、以下でも、この用語を用いる。
【0009】
目標とレーダ間の距離が目標の大きさと比べて十分大きい場合、並進運動の影響は各反射点に等しく寄与するとみなせる。よって、この成分は、各反射点の距離方向に直交する方向の位置特定に役に立たないばかりか、レーダ画像をレンジ方向にぼけさせてしまう。また、その成分によっては、クロスレンジ方向にもぼけさせてしまう。
したがって、この成分については、正しく推定して補償してやる必要がある。この補償処理を並進運動補償と称する。
【0010】
並進運動の補償は、レンジ軸方向のぼけの要因となる。
レンジ分解能を超えた各反射点のレンジ移動を推定して、そのレンジ移動を補償するレンジ補償と、ドップラー軸方向のぼけの要因となる「位相の時間に対する2次以上の変化」を推定して、その2次以上の変化を補償する位相補償に大別される。
【0011】
次に、並進運動の影響が完全に補償された場合を考える。
直交座標系の原点に回転中心があり、z軸周りに角速度ω[rad/s]で回転する目標を−x方向の十分遠方から観測する場合を想定する。
この場合、ある想定した瞬時時刻における位置が[rPcosθP,rPsinθP,z]で与えられる点Pの回転中心を基準とする距離LP[m]は、下記の式(1)で与えられる。
また、距離変化に相当する+x方向のラジアル速度VP[m/s]は、下記の式(2)で与えられる。
【0012】
点Pのx座標をxP、y座標をyPとすると、これらはrPcosθP,rPsinθPと表される。
したがって、各反射点の距離-ラジアル速度の2次元分布はy軸方向の−ω倍の伸縮を除けば、xy平面に投影した目標の反射点位置を表すこととなる。
このため、並進運動補償後に残存する相対運動である回転運動の角速度ωが分かれば、距離-ラジアル速度の2次元分布をy軸方向に−1/ω倍伸縮させることで、目標の反射点のxy平面に投影した位置を特定することができる。
【0013】
一般のレーダでは、ラジアル速度を得るために、ドップラー周波数を用いる。これは、並進運動補償後のレンジヒストリをレンジセル毎にヒット方向にフーリエ変換することで得られる。
レンジドップラー周波数画像上の点Pのドップラー周波数をFP[Hz]とすると、FPは、送信波長をλ[m]として、下記の式(3)のように表される。
【0014】
即ち、レンジドップラー画像もy軸方向の伸縮を除けば、xy平面に投影した目標の反射点の位置を表すことになる。
そして、y軸方向の伸縮が正しい画像を得るためには、既知であるλを除けば、前述の角速度ωが必要になる。そして、この値は相対運動が未知な状況では一般に未知である。
なお、回転軸が上記のz軸のようにレンジ軸に直交しない一般的な場合には、回転運動をレンジ軸周りの回転と、レンジに直交する軸周りの回転とに分離した場合の後者の成分の角速度が必要となる。レンジ軸周りの回転は距離変化に寄与しないため、レーダ画像にも影響を及ぼさない。
【0015】
クロスレンジ軸方向の単位ベクトルic太字は、レンジ軸方向の単位ベクトルをir太字、回転角速度ベクトルをω太字とすると、下記の式(4)のベクトル演算で定められる。ic,ir,ωはベクトルを表すものであるため、式(4)では、ic,ir,ωを太字で表しているが、電子出願の関係上、明細書の文書中では、太字を使用することができないため、「ic太字」、「ir太字」、「ω太字」のように表記している。
【0016】
レンジドップラー画像のドップラー周波数軸を物理的な長さの軸であるクロスレンジ軸にスケーリングする問題はクロスレンジスケーリング問題と呼ばれる。
なお、上記観測時刻方向のフーリエ変換のように、信号処理によってクロスレンジ方向の分解能を向上させる処理を、以下では、クロスレンジ圧縮と称する。
【0017】
画像のドップラー周波数分解能は、観測時間をT[s]とすると、1/T[Hz]で与えられるので、これをクロスレンジに換算したクロスレンジ分解能Δc[m]は、下記の式(5)のようになる。
式(5)において、Δθ[rad]は観測中の総回転角である。
【0018】
原理的には、観測中の目標の総回転角Δθが大きければ大きいほど、クロスレンジ分解能が向上する。
しかし、距離LPやラジアル速度VPを示す式(1),(2)から容易に理解されるように、各反射点は回転角の変化とともに、そのレンジとラジアル速度(言い換えると、ドップラー周波数)が変化するので、総回転角Δθが大きくなる程、各反射点は、画像上でレンジとドップラー周波数の分解能セルを越えて移動してしまう。
即ち、上記のような単純なフーリエ変換処理では、総回転角Δθが大きい場合に、却って分解能が劣化してしまうことがある。
【0019】
この問題を解決する画像再生方法の一つとして、以下の非特許文献1に記載されているポーラーフォーマット法(以下、「従来方法1」と称する)がある。
従来方法1では、並進運動補償後の各ヒットにおけるレンジプロフィールについて、さらに、回転中心のレンジを完全にゼロとするような補償を行った後に、そのレンジプロフィールをフーリエ変換して得られる周波数分布(レンジプロフィールの軸をレンジ[m]とみなした場合は空間周波数分布)を、周波数平面上で、その送信帯域と各観測における目標の回転角に応じた位置に曲座標配置している。
【0020】
そして、そのデータを矩形グリッド上でリサンプリングして、逆2次元フーリエ変換することで、回転に基づく前述のぼけが解消されて、クロスレンジ方向も正しく物理的長さにスケーリングされた画像を得ることができる(元が周波数分布の場合は、得られる画像の2軸は時間になるが、これについては、既知の係数(光速/2)を乗ずることで、容易に物理的長さに変換可能である)。
しかし、従来方法1では、 以下の問題がある。
(i)周波数平面での曲座標配置を実現するために、各観測における回転角の変化量(回転角速度ωが一定の場合は、そのω)を知る必要があるが、相対運動の情報を有さない場合や、相対運動の推定誤差が大きい場合には、実現が困難である問題がある。
(ii)通常必要なレベルの並進運動補償に加えて、レーダと目標中心の間の距離を0に保つような補償が必要となるが、相対運動の情報を有さない場合や、相対運動の推定誤差が大きい場合には、実現が困難である問題がある。
【0021】
また、別の画像再生方法として、以下の非特許文献2に記載されている方法(以下、「従来方法2」と称する)が挙げられる。
この方法では、通常の並進運動補償に加えて、何らかの方法で、レーダと目標中心の間の距離変化を完全に0にするような補償が既になされているものと仮定する。
その上で、目標の等価的な回転加速度ベクトルが観測中一定であるとの仮定の下に、回転運動によって発生するぼけを、レンジ軸方向、ドップラー軸方向の順に2段階で補償している。
【0022】
第1段階では、等回転目標上の各反射点の観測中のレンジ変化が、レンジ分解能のオーダでは、以下の性質を有することを利用している。
(a)ヒットに対する1次変化と近似的にみなせる
(b)その1次変化の係数は、回転角速度の大きさによらず、回転中心のドップラー周波数が0の場合の各反射点のドップラーセルの位置と既知係数のみから近似的に定まる
従来方法2では、ぼけた画像をドップラーセル毎に、そのセル位置で定まる係数の1次変化分を補償している。これにより、画像のレンジ軸方向のぼけが近似的に解消される。
【0023】
第2段階では、画像のドップラー軸方向のぼけの原因となる「各反射点の距離変化によって発生する受信信号の位相変化」が、以下の性質を有することを利用している。
(a)近似的にヒットに対する2次の変化とみなせる
(b)その2次変化の係数の大きさは、回転中心が0レンジである場合の各レンジ位置に近似的に比例する。
【0024】
従来方法2では、並進運動補償の際に2次の距離変化によって発生する2次の位相変化を推定する一般的な方法の一つであるPD(Phase Difference)法を各レンジセルのデータに適用して、その位相の2次変化係数をレンジセル毎に推定する。
次に、これらの推定結果から、係数の大きさがレンジ位置に比例することを踏まえて、外れ値を排除して平滑しながら、各レンジにおける位相の2次係数を推定する。
そして、各レンジにおける位相の2次係数に基づいて、その不要な位相変化を打ち消すような補償を行った後に再度画像化する。
【0025】
以上の処理により、従来方法2では、回転角速度を推定する必要なしに、回転の運動の影響で発生する画像のぼけを近似的に補償することができる。
しかし、従来方法2では、以下の問題がある。
(i)クロスレンジスケーリングを実現できないので、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができない問題がある
(ii)回転の補償に際して近似的な処理を行なっているので、これに基づく誤差が発生する問題がある
(iii)通常の並進運動補償では、補償の対象としないレンジの1次変化を完全に0とする補償まで含めた並進運動補償がなされたものと仮定するが、その実現方法が明確ではないので、実現が困難である問題がある
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Jakowatz Jr.,C.V.,Wahl,D.E.,Eichel,P.H.,Ghiglia,D.C.,and Thompson,P.A.“Spotlight-mode synthetic aperture radar: a signal processing approach,”Kluwer Achademic Publishers,1999. の2〜3章
【非特許文献2】Munoz-Ferreras J.M., and Perez-Martfnez F.,“Uniform rotational motion compensation for inverse synthetic aperture radar with non-cooperative targets,”IET Radar Sonar Navig.,Vol.2,No.1,pp.25−34,Feb. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来の画像レーダ装置は以上のように構成されているので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合には、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができない。また、クロスレンジスケーリングを実現できないので、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができないなどの課題があった。
【0028】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合でも、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができるとともに、クロスレンジスケーリングを実施して、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明に係る画像レーダ装置は、高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路とを設け、レーダ画像生成回路が、回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路とを設け、レーダ画像生成回路が、回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するように構成したので、目標とレーダの間の相対運動が未知である場合や、その相対運動の推定誤差が大きい場合でも、回転運動によって発生する画像のぼけを精度よく補償することができるとともに、クロスレンジスケーリングを実施して、各反射点のレンジ方向の物理的な位置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジヒストリ取得回路1を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の並進運動補償回路2を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数変化量推定回路5を示す構成図である。
【図6】2次位相係数変化量推定回路5におけるスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の内部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7を示す構成図である。
【図8】2次位相係数評価値分布の一例を示す模式図である。
【図9】軌跡傾き信頼度分布算出回路71の処理内容を示す説明図である。
【図10】軌跡傾き信頼度分布算出回路71及び信頼度分布最大位置特定器72の処理内容を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態2による画像レーダ装置の2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態4による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態5による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
図1において、レンジヒストリ取得回路1は高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得する回路である。
【0033】
並進運動補償回路2はレンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する回路である。
回転レンジセル移動補償回路3は並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリで、目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回路である。
【0034】
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4は回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎(または、レンジ分解能セルを更に細かく分割されたサブレンジセル毎)に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布を出力する回路である。
2次位相係数変化量推定回路5はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する回路である。
【0035】
回転角速度換算回路6は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回路である。
2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数とレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4より出力された2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定する回路である。
【0036】
0次レンジ補償回路8は2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7により推定されたレンジが0になるように、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する回路である。
回転考慮レーダ画像生成回路9は回転角速度換算回路6により推定された角速度に基づいて、回転を考慮した画像再生を行うことで、0次レンジ補償回路8による補償後のレンジヒストリから、画像の両軸が物理的な長さの軸にスケーリングされているレーダ画像を生成する回路である。
【0037】
図2はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジヒストリ取得回路1を示す構成図である。
図2において、送信機31は高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器32に出力する。
送受切換器32は高周波信号の送信時と受信時で、信号の流れる方向を切り換える切換器である。
送受信アンテナ33は送受切換器32から出力された高周波信号を空間に向けて放射する一方、空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信して、その受信信号を送受切換器32に出力する。
【0038】
受信機34は送受切換器32から出力された受信信号を増幅して検波する。
レンジ圧縮器35は高周波信号の送信波形に基づいて、受信機34により検波された受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する処理を実施する。
なお、送信機31、送受切換器32、送受信アンテナ33、受信機34及びレンジ圧縮器35における一連の処理が、レーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返されることで、そのレンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリが取得される。
【0039】
図3はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の並進運動補償回路2を示す構成図である。
図3において、一般並進運動補償回路41はレンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、そのレンジ移動と2次以上の変化を補償する回路である。
1次位相変化補償器42は一般並進運動補償回路41による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する処理を実施する。
【0040】
図4はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4を示す構成図である。
図4において、レンジ補間器51は回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、レンジ方向に補間後のレンジヒストリをレンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52に出力する処理を実施する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52はレンジセル毎(あるいは、サブレンジセル毎)に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する回路である。
【0041】
図5はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数変化量推定回路5を示す構成図である。
図5において、スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求め、そのスペクトル画像から上記2次元画像上の直線の傾きを推定する回路である。
2次位相係数変化量算出回路62はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きから2次位相係数レンジ変化係数を算出する回路である。
【0042】
図6は2次位相係数変化量推定回路5におけるスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の内部を示す構成図である。
図6において、軌跡傾き信頼度分布算出回路71はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布の重み付けを実施して、重み付け後の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求めるとともに、そのスペクトル画像上で直流成分に相当する原点を通り、傾きが異なる複数の直線状の積分経路を設定し、その積分経路に沿って重み付けスペクトル画像の振幅分布を線積分した結果を、各積分経路の傾きに対する信頼度として出力する回路である。
【0043】
信頼度分布最大位置特定器72は軌跡傾き信頼度分布算出回路71から出力された各積分経路の傾きに対する信頼度の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する処理を実施する。
軌跡傾き換算器73は信頼度分布最大位置特定器72により検出された信頼度が最大の積分経路の傾きを、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに換算する処理を実施する。
【0044】
図7はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7を示す構成図である。
図7において、傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸(例えば、縦軸y)に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸(例えば、横軸x)上の座標(y=a(x+x0)で表される場合のx0)であるゼロ交差点を推定するために、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、2次位相係数が0になっているレンジであると推定する回路である。
【0045】
次に動作について説明する。
まず、レンジヒストリ取得回路1は、下記の(1)〜(3)の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得する。
(1)送信機31が高周波信号を発生し、その高周波信号を送受切換器32を介して送受信アンテナ33に出力することにより、その送受信アンテナ33から高周波信号を空間に向けて放射させる送信処理
(2)送受信アンテナ33が空間に存在している目標に反射された高周波信号の一部を受信し、受信機34が受信信号を検波する受信処理
(3)レンジ圧縮器35が受信機4により検波された受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、その受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得するレンジプロフィール取得処理
【0046】
並進運動補償回路2は、レンジヒストリ取得回路1がレンジヒストリを取得すると、そのレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する。
具体的には、以下のようにして、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する。
並進運動補償回路2の一般並進運動補償回路41は、一般的な並進運動の補償処理を適用することで、レンジヒストリ取得回路1により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、そのレンジ移動と2次以上の変化を補償する。
なお、一般的な並進運動の補償処理として、様々な方法が提案されているが、一般的な並進運動の補償処理では、レンジヒストリにおける位相の1次変化は、補償の対象とされていない。
【0047】
1次位相変化補償器42は、一般並進運動補償回路41による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する。
以下、1次位相変化補償器42による位相の1次変化の補償処理を具体的に説明する。
1次位相変化補償器42は、下記に示すように、一般並進運動補償回路41のレンジ補償で推定されたレンジ変化をヒットに対する1次関数で近似し、これに相当する位相変化を一般的な並進運動補償後のレンジヒストリから差し引く処理を行う。
【0048】
ここで、総ヒット数をH、ヒット番号をh(h=−H/2,−H/2+1,・・・,H/2−1)、パルス繰り返し周期をΔt[s]とする。第hヒットにおける観測時刻t(h)[s]は、下記の式(6)で与えられる。
なお、総ヒット数Hは偶数でも奇数でもよいが、奇数の場合には、ヒット番号をh=−(H−1)/2,・・・,(H−1)/2と設定する。
【0049】
レンジセル数をM、レンジセル番号をm(m=0,1,・・・,M−1)、レンジ分解能(後述するレンジピクセルスペーシング)をΔr[m]とする。
また、一般的な並進運動補償後のレンジヒストリをs1(h,m)で表し、レンジ変化の1次関数の傾き(1ヒット当たりのレンジセル変化量)をa1[cell]とする。
この場合、中心周波数をf0[Hz]、光速をc[m/s]とすると、このレンジ変化に相当する位相変化φ1(h)[rad]は、下記の式(7)で与えられる。
【0050】
1次位相変化補償器42は、式(6)及び式(7)の関係を用いて、一般的な並進運動の補償処理では補償されない位相の1次変化φ1(h)を下記の式(8)のように補償して、補償後のレンジヒストリs2(h,m)を取得する。
【0051】
上述したように、目標上の各反射点は、回転の影響で、その位置に応じたレンジ変化をする。
そのレンジ変化は、角速度が一定で、かつ、角度変化範囲が比較的小さい状況では、近似的に時間に対する1次変化とみなせ、かつ、クロスレンジ位置が同じであれば、同じとみなすことができる(クロスレンジ位置が同じ点は、同じドップラー周波数(あるいは、同じラジアル速度)であることを考えると理解しやすい)。
1次位相変化補償器42の処理は、一般的な並進運動補償によって、レンジ変化が0となったクロスレンジ位置のドップラー周波数を0[Hz]にすることを目的としている。
【0052】
回転レンジセル移動補償回路3は、回転運動によって発生するぼけのうちのレンジ方向の成分ぼけを補償する。
以下、回転レンジセル移動補償回路3によるレンジ方向のぼけの補償処理を具体的に説明する。
【0053】
ここで、回転運動によって生じる時刻t=0からの回転角をθ(t)とすると、t=0における回転中心を基準とするレンジとクロスレンジがxP,yPである点の回転角θ(t)におけるレンジrP(θ(t))は、下記の式(9)で与えられる。ただし、r0は
並進運動補償後の回転中心のレンジである。
ここで、cosθ(t),sinθ(t)は次式で表すことができる。
【0054】
ここで、2次以上の項を無視し、θ(t)=ωtとおくと、クロスレンジ位置yPの点のt=0からのレンジ変化δr(yP,t)は、下記の式(12)で与えられる。
よって、クロスレンジ位置yP毎に異なる1次のレンジ変化を補償してやればよいが、実際は、角速度ωとクロスレンジ位置yPは不明である。
【0055】
そこで、セル番号がd(d=−H/2,−H/2−1,・・・,H/2−1:d=0がドップラー周波数0)で与えられるドップラーセルについて考える。
このセルの中心点のクロスレンジ位置(上述のyP相当)は、クロスレンジ分解能Δcを用いると、dΔcで与えられる。
よって、この点のレンジ変化は、dΔcωtになる。
ところで、上述したように、Δc=λ/(2ωT)と与えられることを踏まえると、下記の式(13)が得られる。
【0056】
即ち、第dドップラーセルの中心点については、そのレンジ変化は角速度ωによらず、式(13)で与えられることになる。
ここで、時刻tの代わりに、ヒットhを用いるものとし、式(13)のδr(dΔc,t)をドップラーセル番号dに対するヒットhのレンジ変化δr(d,h)で表すと、下記の式(14)が得られる。
【0057】
回転レンジセル移動補償回路3は、以上を踏まえて、並進運動補償後のレンジヒストリs2(h,m)をヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像S2(d,m)を生成し、このドップラーセルd毎に式(14)で与えられる各ヒットのレンジ変化を打ち消すように補償する。
具体的には、dcドップラーセルの反射点について補償する際には、レンジヒストリs2(h,m)のdcドップラーセル付近の信号を通過させ、それ以外の信号の通過を阻止する性質の適当な重み係数Wdc(d,m)を導入し、下記の式(15)の重み付け画像Sチルダdc(d,m)(明細書の文書中では、電子出願の関係上、Sの上部の「〜」を表現することができないので、「Sチルダ」と表記する)を取得する(当然のことながら、dcドップラーセルが画像の端部付近の場合には折り返しを考慮して、通過帯域を設定すればよい)。
【0058】
回転レンジセル移動補償回路3は、重み付け画像Sチルダdc(d,m)を取得すると、その重み付け画像Sチルダdc(d,m)をドップラーセル方向に逆フーリエ変換して、dcドップラーセル付近の反射点に関するレンジヒストリsチルダdc(h,m)を取得する。
次に、回転レンジセル移動補償回路3は、式(14)のdにdcを代入することで得られるδr(dc,h)を打ち消すようにレンジヒストリsチルダdc(h,m)を補償し、補償後のレンジヒストリsチルダdc(h,m)をヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を取得する。
【0059】
そして、回転レンジセル移動補償回路3は、そのレンジドップラー画像におけるdcドップラーセルの全レンジデータを、別途用意している配列S3(d,m)におけるd=dcのセルに格納する。
なお、全てのdcドップラーセルについて同様の処理を実施して得られた配列S3(d,m)が、回転運動によるレンジ移動補償後のレンジドップラー画像に相当する。
その配列S3(d,m)をドップラーセル方向に逆フーリエ変換することで、回転運動によるレンジ移動補償後のレンジヒストリs3(h,m)が得られる。
【0060】
回転レンジセル移動補償回路3の処理では、回転中心が少なくともゼロドップラーセルに位置していることを期待している。
この観点から、前段の並進運動補償回路2では、レンジ変化がゼロであるドップラーセル(クロスレンジ)位置に回転中心が存在するという考えの下に、このセルをゼロドップラー(クロスレンジ)に配置するために1次の位相変化を補償している。
【0061】
ここで、点Pの位相変化φP(t)は、式(9)のrP(θ(t))でθ(t)=ωtとした値を用いることで、下記の式(16)のように表すことができる。
先に説明した回転レンジセル移動補償回路3では、式(16)に現れる三角関数を角度変化に対する1次以下の多項式で表しているが、ここでは、レンジセルの変化より感度の高い位相変化に着目することを考慮して、これより次数の高い2次以下の多項式で表すことにする。
この場合、式(16)の位相変化φP(t)は、下記の式(17)で近似される。
【0062】
式(17)において、2次の位相変化2πxPω2t2/λが、回転運動によってレンジドップラー画像をドップラー軸方向にぼけさせる主要な成分に相当する。
2次位相係数は、回転中心のレンジを基準とするレンジxPに比例することを踏まえ、ここでは、2次位相係数をレンジxPの関数α2(xP)として、下記の式(18)で表すようにする。
【0063】
式(18)より明らかなように、xPとα2(xP)の組が得られれば、|ω|を定めることができる。
さらに、下記の式(19)で表される2次位相係数のレンジに対する変化の割合である2次位相係数レンジ変化係数β2が得られた場合にも、ここから|ω|を定めることができる。
【0064】
|ω|を推定する際、xPとα2(xP)の組を用いる場合は、レンジxPを知る必要がある。言い換えると、回転中心のレンジを特定する必要があるのに対し、2次位相係数レンジ変化係数を用いる場合は、xPそのものは必要としないので、回転中心のレンジも推定不要となる。よって、推定が容易になると考えられる。
これらの観点に基づき、2次位相係数変化量推定回路5では、2次位相係数レンジ変化係数β2を推定し、回転角速度換算回路6では、2次位相係数レンジ変化係数β2を|ω|に換算する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4では、2次位相係数レンジ変化係数β2の推定を可能にするために、各レンジにおける2次位相係数の各候補値について、その確からしさについての評価値の分布である2次位相係数評価値分布を生成する(図8を参照)。
【0065】
即ち、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4は、回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、その位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎(または、レンジ分解能セルを更に細かく分割されたサブレンジセル毎)に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布を出力する。
以下、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4の処理内容を具体的に説明する。
【0066】
レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4のレンジ補間器51は、回転レンジセル移動補償回路3によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、レンジ方向に補間後のレンジヒストリをレンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52に出力する。
レンジヒストリのレンジ方向の補間には、一般的なゼロ詰め補間等を用いることができる。
この処理により、レンジヒストリのレンジ方向のセル幅(以下、「レンジピクセルスペーシング」と称する)が、元のレンジピクセルスペーシングΔrより小さくなり、セル数も増える。補間後のレンジセルについても、これまで通り、レンジセルと呼ぶことにする。
レンジ補間後のレンジピクセルスペーシングをΔrs[m]とし、補間後のレンジセル数をMsとする。
【0067】
後段の処理では、本来、各反射点のレンジ位置xPに対する特性を取り扱う必要があるが、これを各レンジセルの中心レンジに対する特性で代用する際、レンジ補間器51を組み入れることで、反射点の真のレンジと、その反射点の属するレンジセルの中心レンジとの差異を小さくして、これに基づく誤差の影響を低減することができる。
【0068】
なお、レンジのピクセルスペーシングが補間前から十分小さいと判断される場合には、レンジ補間器51の処理を省略することも可能である。
この場合、実際は、レンジ補間器51が不要となるが、その場合も、1倍の補間をしたとみなすことは可能である。
この点を踏まえ、以下では、説明の効率上、レンジ補間をしない場合も含めて、その処理の内容を統一的に説明する。
【0069】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、レンジセル毎(あるいは、サブレンジセル毎)に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する。
ここで取り扱う推定問題は、一般的な並進運動補償で取り扱われる問題と密接に関連している。
例えば、SARでは、レーダプラットフォームに搭載している運動センサの情報を用いて、レンジ分解能程度の補償を実現することができるが、波長オーダの精度が必要となる位相補償の誤差が残存していることがある。
このような問題に対して、受信信号そのものから位相誤差を推定する方法が各種提案されている。
【0070】
特に2次の位相誤差は、その影響が大きく、頻繁に発生する基本的な誤差であり、これに特化した推定方法も各種提案されている(例えば、Map Drift(MD)法や、Phase Difference(PD)法など)。
これらの方法を2次位相係数の推定に応用するのは有益である。ただし、並進運動補償においては、推定対象である位相誤差は、どのレンジセルにおいてもほぼ等しいという前提がおかれる場合が多い。そして、この前提に基づいて、各レンジセルで得られた位相変化の推定結果や変化量、中間指標等をレンジセル方向に統合(例えば、平均や積分等)することで、最終的な推定精度を向上させることが多い。
【0071】
しかし、ここで我々が取り扱う問題においては、2次の位相変化がレンジ毎に異なるため、従来の並進運動補償における処理をそのまま用いることはできない。
即ち、基本的には、レンジセル毎に得られた推定結果をそのまま用いざるを得ない。したがって、レンジセル方向に統合しないことによる精度劣化が生じて問題となる可能性がある。
【0072】
上述した回転運動によるレンジセル移動を補償した後に、各レンジにおける2次の位相誤差を補償して画像を結像させることが目的の従来方法2(非特許文献2を参照)においては、上記のPD法を適用して、2次の位相変化をレンジセル毎に推定する。
そして、この推定結果群に、推定を大きく失敗している外れ値が混入していることを危惧し、これを検出して除去する処理を適用する。
その後に、推定結果を平滑して、各レンジセルの2次位相変化を最終的に決定する。
しかし、この方法では、外れ値の混入数が増えるにつれて、推定に用いるデータ数が減少して推定精度が劣化する。また、外れ値の除去自体に失敗する可能性も高くなり、推定精度が劣化する。
【0073】
PD法においては、各レンジセルでの推定処理において、候補となる2次位相係数の各々について評価値が算出され、この評価値が最高の2次位相係数が、真の2次位相係数である可能性が高いと考えられる。
従来方法2では、この観点に基づき、各レンジセルにおいて評価値が最も高い2次位相係数を、そのレンジセルにおける仮の推定結果としている。
【0074】
しかし、画像上の反射点分布や雑音の状況によっては、真の2次位相係数の評価値が最高にならない場合がある。
例えば、PDやMDでは、原理的に、合成開口の前半のデータのみ、後半のデータのみの各々で生成した画像間のドップラーずれに相当する量を推定し、その推定結果から2次位相係数を得ている。その際、反射点分布の状態によっては、反射点間の干渉の影響を受けて、真値とは大きく異なる候補値の評価値が大きくなる場合がある。
従来方法2の外れ値は、このような影響を受けて発生した可能性が高い。ただし、このような状況においても、真値の評価値は、例え最高とはならなくても、高い値を保持しているので、この情報をうまく用いれば、推定精度を向上できる可能性がある。
この観点で、本発明では、評価値の分布全体に基づいて2次位相係数を推定するようにしている。
【0075】
以下、レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52の処理内容を具体的に説明する。
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52では、PDやMD等の2次位相係数の候補値に対しても、何らかの評価値を算出できるような2次位相推定法を用いて、レンジセル、候補値毎の2次位相係数評価値分布を算出する。
以下、PDを用いる場合を例にして説明する。
【0076】
あるレンジセルにおける位相2次の位相係数の真値がa2で与えられたとする。
注目レンジセルの受信信号g(t)が2次の位相誤差の含まれない信号s(t)を用いて、下記の式(20)で与えられるとする。
【0077】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、注目レンジセルの受信信号g(t)からから観測時間の前半の信号gs(t)と、後半の信号ge(t)を下記の式(21),(22)のように抽出する。
【0078】
ここで、s(t)=γPej2πfptと、振幅γPでドップラー周波数fPの1点のみが存在する単純な場合を想定すると、下記の式(23)で得られるgP(t)の位相の1次変化の中に2次係数a2が現れる。
これを得るためには、gP(t)をフーリエ変換して得られるスペクトルを確認すればよい。
【0079】
時間により変動しない項を無視すると、gP(t)のスペクトルGP(f)は下記の式(24)で与えられる。
【0080】
|GP(f)|を最大とするfをfmax[Hz]とすると、a2[1/s2]は下記の式(25)で得られる。
【0081】
レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路52は、以上を踏まえて、|GP(f)|相当の値を2次位相係数評価値分布とする。
以上の説明では、観測時刻tを連続値として取り扱っているが、その観測時刻がヒットhとパルス繰り返し周期Δtで表現される離散時刻になっていても同様である。
【0082】
また、s(h,ms)のヒット前半の配列をss(h2,ms)、後半の配列をse(h2,ms)(h2=−H/4,・・・,H/4−1)として、sP(h2,ms)=se(h2,ms)ss(h2,ms)*をヒットh2方向にフーリエ変換して得られる配列をG0(d2,ms)(d2=−H/4,・・・,H/4−1)で表すものとする。
ここで、G0(d2,ms)のd2方向の軸の単位はセルであるが、式(25)と、観測時刻を2分割したことで、ドップラー分解能が2倍に劣化したことを踏まえると、セル番号2をA倍することで、2次位相係数に対する分布に換算することができる。
【0083】
ここでは、 上記のG0(d2,ms)をd2軸方向にゼロ詰め補間して、この方向のセル数を増やすとともにセル幅を狭くする。ゼロ詰め補間により点数をNintp倍にする。
この結果得られた配列をG(ds,ms)(ds=−Hs/2,・・・,Hs/2−1)で表すものとする。ただし、Hs=(H/2)Nintpである。
この場合、セル番号d2から2次位相係数への換算係数Δa2は、下記の式(27)で与えられる。
このG(ds,ms)を2次位相係数評価値分布とする。
【0084】
ここでは、PD法を用いるものを説明したが、PD法に限るものではなく、MD法などの他の方法で代用させることも可能である。
MD法では、ヒット前半と後半で、それぞれ画像を生成し、その画像間の相互相関のピーク位置から画像間のずれを計測し、その画像間のずれを2次位相変化係数に換算するようにする。
したがって、各ずれに対する相互相関値も、PD法の場合と同様に、候補2次位相変化係数の評価値として用いることができる。
【0085】
2次位相係数変化量推定回路5は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布を受けると、その2次位相係数評価値分布に基づいて、2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する。
以下、2次位相係数変化量推定回路5による2次位相係数レンジ変化係数の推定処理を具体的に説明する。
2次位相係数評価値分布が示す2次元画像としては、一般的なs(y,x)という画像を想定する。
この画像のx軸方向の画素数はNx、y軸方向の画素数はNyである。これをG(ds,ms)と関連付ける場合、dsとyが対応し、msとxが対応する。
【0086】
まず、2次位相係数変化量推定回路5のスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61は、画像上の同じ傾きの直線は、いずれも、その画像を2次元フーリエ変換して得られるスペクトル画像上で原点(直流成分)を通り、元の直線の傾きに依存した傾きの直線状に投影されるというフーリエ変換の性質を利用して、元の画像上の直線の傾きを推定する。
一般的に、 x−y2次元無限平面上の傾きaの直線は、フーリエ変換の性質より、これを2次元フーリエ変換したfx−fy2次元無限周波数平面上で、原点を通り、傾きAが下記の式(28)で与えられる直線に変換される。
【0087】
この関係は、2次元画像s(y,x)上の直線群の傾きa(図9(a)を参照)と、これを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル画像S(fy,fx)上の直線の傾きA(図9(b)を参照)とにおいて、x方向の画素数Nxとy方向の画素数Nyが等しい特別な場合には同様に成立する。
x方向の画素数Nxとy方向の画素数Nyが異なる一般的な場合には、両傾きの関係は、各軸方向の空間分解能がそれぞれ1/Nx,1/Nyとなる影響を踏まえ、下記の式(29)で与えられる。
【0088】
いずれにしても、スペクトル画像上の傾きが分かれば、上式の関係に基づいて、元の画像上の直線群の傾きaを算出することができる。
特に、スペクトル画像S(fy,fx)上で傾きを推定するメリットは、直線が定点(原点)を通るので、その定点を通る直線検出問題に簡単化して、傾きを推定できることである。
【0089】
スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61の軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、以上を踏まえて、2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の絶対値である振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を生成し、そのスペクトル画像の絶対値である振幅分布を取得する。
定点を通る直線の検出は、定点を通り、傾きが異なる経路に沿ったスペクトル画像の線積分結果のピーク検出によって実施することができる。
2次元画像上の直線群の傾きaとして予想される値を一つ以上用意して、各々に応じたスペクトル画像上の積分経路を積分経路群として設定する。
【0090】
例えば、aの候補値をa_cand(ia)(ia=0,1,・・・,Na−1: Naはaの候補数)とする。
候補値として、acを中心とするWa幅の等間隔値とする場合、 a_cand(ia)は、下記の式(30)のように与えられる。
a_cand(ia)=ac+(Wa/Na)×(ia−1/2) (30)
候補値は、必ずしも等間隔値である必要はなく、a_cand(ia)として不等間隔な値を設定することも可能である。ただし、後段でa_cand(ia)が等間隔であることを想定した処理が存在する場合には、等間隔な値を設定する。
a_cand(ia)に対するスペクトル画像上の積分経路の傾きA_cand(ia)は、下記の式(31)で与えられる。
A_cand(ia)=−(Ny/Nx)1/a_cand(ia) (31)
【0091】
次に、軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、fy方向の2Ny点の位置fy0(iy) (iy =0,1,・・・,2Ny−1)を下記の式(32)のように設定する。
fy0(iy)=iy−Ny (32)
また、スペクトル画像のfy方向の画素番号が0からNy−1で与えられると想定し、下記の式(33)でfy(iy)を取得する。
fy(iy)=fy0(iy) mod Ny (iy=0、1、…、2Ny−1) (33)
【0092】
次に、軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、各iyに対するfx方向の画素番号fx(iy)を下記の式(34)で与える。
fx(iy)=(1/A_cand(ia))fy(iy)=−(Nx/Ny)a_cand(ia) (34)
これにより、2Ny組の(fx(iy),fy(iy))でスペクトル画像上の積分経路が設定される。
【0093】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、スペクトル画像の振幅分布S(y,x)と、各a_cand(ia)に対する積分経路を設定する配列fx(iy),fy(iy)に基づいて、スペクトル画像の振幅分布の線積分を行う。
その際、fx(iy)の値が小数の場合があることを考慮して、fx(iy)に隣接する2つ画素番号の画素の値の線形補間により値を決定する。
まず、floor(Z)を実数Zの小数点以下を切り捨てるオペレータとして、 fx(iy)より小さい側と大きい側の画素番号fx_sml0(iy),fx_lrg0(iy)を下記の式(35),(36)で取得する。
fx_sml0(iy)=floor(fx(iy)) (35)
fx_lrg0(iy)=fx_sml0(iy)+1 (36)
【0094】
また、線形補間に用いるための fx(iy)とfx_sml0(iy)、fx_lrg0(iy)までの距離d_sml(iy),d_lrg(iy)を下記の式(37),(38)で取得する。
d_sml(iy)=fx(iy)−fx_sml0(iy) (37)
d_lrg(iy)=1−d_sml(iy) (38)
fx_sml0(iy)とfx_lrg0(iy)が、0からNx−1の間の外の値を指す場合があることを踏まえ、下記の式(39),(40)により、それぞれに対応する画素番号fx_sml(iy),fx_lrg(iy)を取得する。
fx_sml(iy)=fx_sml0(iy) mod Nx (39)
fx_lrg(iy)=fx_lrg0(iy) mod Nx (40)
【0095】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、以上を踏まえて、傾きが様々に異なる経路に沿ったスペクトル画像の線積分を行う。
その際、線積分用画像としては、下記の(a)〜(c)に示す方法等が考えられる。
(a)S(fy,fx)をそのまま用いる方法
(b)S(fy、fx)の原点からfy方向に離れるほど、信号の大きさが小さくなって、傾きの検出感度が劣化してしまう場合を考慮し、S(fy,fx)の値を各fyにおいて、S(fy,*)(ここで、*は、スペクトル画像のfx方向の画素番号0からNx−1の全てを表す表現である)の最大値や2乗総和値等で正規化したスペクトル画像(以下、直線強調スペクトル画像)を用いる方法
(c)(b)と同様の目的で、各fyの2乗総和値でスペクトル画像を正規化するが、その際、後段の処理を考慮して、上記の正規化後の全スペクトル画像の画素の値を、さらに元のS(fy,fx)の全画素についての2乗総和値で割ったスペクトル画像(総電力保持直線強調スペクトル画像)を用いる方法
以下の説明では、(a)(b)(c)のいずれの方法で得られたスペクトル画像についても、スペクトル画像をS1(fy,fx)で表現する。
【0096】
軌跡傾き信頼度分布算出回路71は、各iyに対する線積分用の値z(iy)を下記の式(41)で取得する。
z(iy)= S1(fy(iy)
,fx_sml(iy))×d_lrg(iy)+ S1(fy(iy)
,fx_lrg(iy))×d_sml(iy)
(41)
【0097】
この値z(iy)を全てのiyについて総和することで、a_cand(ia)に対する積分値が得られる。
この際も、単にそのまま総和するのみならず、例えば、原点付近の値を重視するなど、何らかの重みW(iy)を乗じて総和することも可能である。
よって、以下では、軌跡傾き信頼度分布算出回路71が線積分値Z0を得るものとする。
なお、重みW(iy)については、その総和がある一定値Wtであり(ただし、Wt>0)、下記の式(43)を満足するように設定する。
【0098】
特に、Wt=2Ny、W(iy)=1(iy=0,1,・・・,Ny)とした場合に、z(iy)をそのまま総和したのと同じ結果が得られる。Wtは、後段の処理において本質的な値ではなく、同じ処理をa_cand(ia)を変えて繰り返し処理する際に、同じ値に設定していればよい。
【0099】
各a_cand(ia)によって定まる積分経路に沿って、以上の処理に基づいて得られる積分値Z0を、iaに対する配列Z0(ia)で表すものとする。
Z0(ia)の値は、積分経路がスペクトル画像上の軌跡に沿っていれば、言い換えると、a_cand(ia)が元の画像上の各軌跡の傾きに近ければ近いほど、高い値になる。
即ち、Z0(ia)の値が高い場合の傾きa_cand(ia)ほど、真の傾きaの候補値として、より確からしいとみなすことができる。この観点で、各a_cand(ia)についての上記Z(ia)を軌跡傾き信頼度分布と称する。
【0100】
図10に示す軌跡傾き信頼度分布において、そのピーク位置が、真の傾きaになっていると期待される。
以上のようにして、軌跡傾き信頼度分布算出回路71では、軌跡の傾きに関する信頼度分布を取得する。
【0101】
信頼度分布最大位置特定器72は、軌跡傾き信頼度分布算出回路71が信頼度分布を取得すると、その信頼度分布の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する。
即ち、信頼度分布最大位置特定器72は、一般的なピーク探索を実施することにより、上記のZ(ia)を最大とするiaを検出する。
【0102】
軌跡傾き換算器73は、信頼度分布最大位置特定器72により検出されたiaに相当する軌跡傾き候補a_cand(ia)を得て、その軌跡傾き候補a_cand(ia)を傾きaの推定結果aestとして2次位相係数変化量算出回路62に出力する。
なお、傾きaの推定結果aestは、G(ds,ms)が入力画像の場合には、あくまで、ds方向に1セル進んだ間にms方向に進む画素数(小数も許容)である。
【0103】
2次位相係数変化量算出回路62は、軌跡傾き換算器73から傾きaの推定結果aestを受けると、その推定結果aestを、前述のレンジ補間後のレンジピクセルスペーシングΔrsと、dsから2次位相係数への換算係数Δa2とを用いて、下記の式(44)により、2次位相係数のレンジに対する変化の割合である2次位相係数レンジ変化係数β2に換算する。
【0104】
回転角速度換算回路6は、2次位相係数変化量算出回路62が傾きaの推定結果aestを2次位相係数レンジ変化係数β2に換算すると、下記の式(45)によって、その2次位相係数レンジ変化係数β2を目標の等価的な回転運動の角速度の大きさ|ω|に換算する。
この角速度の大きさ|ω|によって、前述のポーラーフォーマット法等における周波数平面上での信号の配置の角度を特定することができる。
【0105】
2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7は、回転中心が備えるべき性質である「2次位相係数が0」となるレンジを推定し、このレンジを現在の回転中心のレンジとみなすようにする。また、後段の画像再生のために、このレンジを0レンジにするためのレンジ補償量を推定する。
即ち、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7の傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4より出力された2次位相係数評価値分布G(ds,ms)に対して、両軸方向のスケーリングを考慮した傾きが式(44)に示す2次位相係数レンジ変化係数β2であり、かつ、2次位相係数が0となるレンジが様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施する。
【0106】
傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路81は、各積分経路に沿った線積分を実施した結果、線積分の値が最大となる積分経路では、軌跡と一致していると考え、その積分経路において、2次係数が0となるレンジを、2次位相係数が0となるレンジ(ゼロ交差レンジ)とみなし、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
【0107】
0次レンジ補償回路8は、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7から2次位相係数が0となるレンジを受けると、そのレンジが0になるように、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する。
即ち、0次レンジ補償回路8は、並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリs2(h,m)において、2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7から出力されたレンジが0になるように、全ヒットに渡って補償する。その補償結果を配列srot(h,m)に格納する。
【0108】
なお、レンジヒストリs2(h,m)においては、既に並進運動によるレンジ変化の影響が補償されている。特に1次の位相変化を補償することで、回転中心が備えるべき条件の一つである「レンジ変化が0」のクロスレンジ上の点が、0ドップラーセルに配置されている。
また、回転中心が備えるべきもう一つの条件である「2次位相係数が0(言い換えると、観測中のドップラー周波数の変化が0)」となるレンジを0レンジに配置することで、「レンジ変化が0、かつ、2次位相係数が0」、言い換えると、観測中の画像上の移動が0の位置、即ち、回転中心をゼロドップラーに配置できる効果がある。
【0109】
回転考慮レーダ画像生成回路9は、回転角速度換算回路6により推定された角速度に基づいて、回転を考慮した画像再生を行うことで、0次レンジ補償回路8による補償後のレンジヒストリから、画像の両軸が物理的な長さの軸にスケーリングされているレーダ画像を生成する。
即ち、回転考慮レーダ画像生成回路9は、並進運動の補償後に、回転中心のレンジが補償されたレンジヒストリを、一般的なポーラーフォーマット法のように、回転を考慮した方法で画像再生することで、回転の影響により発生したぼけが正しく補償され、かつ、正しくクロスレンジスケーリングがなされているレーダ画像を生成する。
【0110】
以下、回転考慮レーダ画像生成回路9の処理内容を具体的に説明する。
回転考慮レーダ画像生成回路9は、並進運動の影響と、回転中心のレンジずれが完全に補償されたと期待されるレンジヒストリ(配列srot(h,m)に格納されているレンジヒストリ)をレンジ方向にフーリエ変換してレンジプロフィールのスペクトルに関するヒストリ(レンジスペクトルヒストリ)であるu(h,n)(n=−M/2,・・・,M/2−1)を取得する。
このレンジスペクトルを周波数空間で、送信パルスの中間周波数及び帯域幅と、回転により変化する角度η(h)(目標固定座標系でのレーダから回転中心を見た方向の角度)に応じた位置に配置する。
ここで、η(h)は、下記の式(46)で表される。
【0111】
ここで、第nレンジスペクトルセルにおける周波数をf(n)として、例えば、中心周波数をfc、送信帯域幅をBとすると、第nレンジスペクトルセルにおける周波数f(n)は、下記の式(47)のように表される。
【0112】
回転考慮レーダ画像生成回路9は、レンジスペクトルヒストリu(h,n)を、公知の「Central Slice Theorem」を根拠に、fr−fc周波数平面上で、n,h毎に下記の式(48)で定まる位置に曲座標配置する。
【0113】
以上により、目標の反射強度に関する周波数分布が得られる。
この周波数分布を適切な位置の矩形グリッドでリサンプリングして、これを2次元逆フーリエ変換することで、時間平面における目標の反射強度分布が得られる。
この画像の両軸を既知の(高速/2)倍することで、物理的な長さの軸にすることができる。即ち、クロスレンジスケーリングが実現されたレーダ画像が得られる。
そして、このレーダ画像においては、上記周波数平面での一連の処理の効果で、回転によるぼけが補償されている。
【0114】
この実施の形態1では、以上のような構成を採用することにより、以下の効果を奏することができる。
[1]
並進運動の補償処理において、特に、一般的には補償を必要としない1次の位相変化を補償するので、並進運動後にレンジ変化が0になったクロスレンジレンジ上の点をゼロドップラーセルに配置することができるようになり、以下の効果が得られる。
【0115】
(a1)
従来方法2に基づいて、回転によるレンジ移動を補償する際には、回転中心のドップラーセルを基準とする各ドップラー位置に応じて補償量を変える必要があった。そのため、回転中心がどのドップラーセルに位置するかを知る必要があった。
しかし、従来方法2では、単に並進運動が完全に記載されていると仮定すると述べられているのみで、回転中心のドップラーセルを知る方法や、0ドップラー周波数に配置する方法が具体的に開示されていない。
しかし、この実施の形態1では、上記の処理により、これを具体的に実現することができる。
なお、1次の位相変化を補償する代わりに、回転中心が、その位相変化相応のドップラーシフトがなされていると考えて、各ドップラーセルにおける上記補償において、各ドップラー周波数をこのシフトの分だけ補正して補償することも可能であるが、この実施の形態1で示した方法と本質的な相違は無い。
【0116】
(a2)
後段の回転を考慮した画像再生においては、レーダと回転中心は固定されている必要がある。この処理により、回転中心のドップラー周波数相当の移動を補償して回転中心が固定という条件の達成に寄与している。
従来方法1であるポーラーフォーマット法は、基本的に、レーダと目標の間の相対運動をかなり精度良く把握できているときの方法であり、相対運動の情報が既知情報として精度良く与えられることが期待できない場合においては、このような補償は困難であった。
【0117】
[2]
この実施の形態1では、レンジセル毎の2次位相係数を推定する際、各レンジにおける各候補値についての評価値全体の分布を用いて、2次位相係数のレンジに対する変化を推定しているので、その精度を高くすることができる効果がある。
これに対して、従来方法2では、各レンジにおける評価値の最大位置のみに基づいて推定することに相当する。よって、干渉等の影響による外れ値の影響を受け易く、推定精度が低い問題があった。
【0118】
[3]
レンジ毎の2次位相係数を推定する際、信号をレンジ方向に補間しているため、反射点の真のレンジと、その反射点が所属するレンジセルの中心との差を小さくできる。
これにより、レンジセル毎に、2次位相係数の推定に関する評価指標を算出する際、上記のレンジ差に基づく誤差の発生を低減することができる。
同様に、レンジセル毎に、類似の処理を行う従来方法2では、このような工夫が施されていないので、これに基づく誤差が低減されていない問題がある。
【0119】
[4]
2次位相係数のレンジ変化の係数を推定する際、この問題を画像上の直線(群)の傾き推定問題に帰着させ、さらに、フーリエ変換の性質を利用することで、これを既知の定点を通る直線の検出問題に簡単化して問題を解くようにしているので、2次位相係数のレンジ変化の係数を高精度に安定して推定することができる。
これに対し、従来方法では、最大位置の情報のみに基づいて推定を行い、その最大位置は、目標上の反射点分布によっては、反射点間の干渉等の影響を受けて、真の位置とは大きく異なる位置に発生することもある。このような場合に、外れ値を検出・除去して、再度推定を行っても、情報量の更なる欠落によって推定精度が劣化する。また、外れ値の発生頻度が増えれば、除去自体が困難になる問題がある。
この実施の形態1では、たまたま、あるレンジで真値とは異なる位置に最大値が発生した場合にも、真値に存在するある程度高いピークの情報(最大ではなくても、ある程度高いピークの情報)を利用して、精度劣化を極力抑えることができる。
【0120】
[5]
従来方法を記載している非特許文献では、2次位相係数と、レンジ位置の関係から回転角速度を推定できることが示唆されている。
しかし、これは、実際には、あるレンジ位置の回転中心を基準とするレンジと、その2次位相係数の組があって定まる話であり、その実現に向けては、回転中心のレンジが既知である必要がある。この回転中心のレンジは、未知であることから、実際は、非特許文献で示唆された方法は実現困難である。
これに対して、この実施の形態1では、 2次位相係数のレンジ変化から回転角速度を求めており、未知である回転中心のレンジを必要とせずに、回転角速度を推定することができる効果がある。
【0121】
[6]
従来方法1であるポーラーフォーマット法を実現するためには、回転中心をゼロレンジに固定した上で処理する必要があるが、この具体的な実現方法は、特にレーダと目標の間の相対運動が未知である状況においては示されておらず、実際は、回転を考慮した高精度な画像化を行うことは困難である。
これに対して、この実施の形態1では、先に述べた1次位相変化の補償により、回転中心が満たすべき条件の一つであるレンジの変化が0であるクロスレンジ、即ち、回転中心が含まれるクロスレンジを0ドップラーに配置するため、クロスレンジのドップラー周波数に相当するラジアル速度まで0にしている。
さらに、回転中心が満たすべき別の条件である「回転運動によって発生する2次の位相係数が0のレンジ」を、先に述べた評価値分布上において、傾きが既に定まった2次位相係数レンジ係数で定まり、切片の異なる複数の経路に沿った線積分結果の最大値探索により推定することも実現できる。即ち、回転中心のレンジ特定できる。
よって、このレンジをゼロとするような補償が実現されるので、回転運動を考慮した画像再生で必要となる回転中心のレンジを0に完全に固定する補償が実現される。
【0122】
[7]
これまで述べた回転角速度の推定と、回転中心のレンジを0に完全に固定する補償の実現により、これらを用いた回転運動を考慮した画像再生を実現することができる効果がある。
即ち、従来方法1では、特に相対運動が未知な状況において、実際には画像を再生できないか、未知量の推定誤差が大き過ぎて低画質な画像しか生成できなかった問題を解決できる利点がある。
【0123】
[8]
従来方法2では、回転運動の情報を知ることなく、回転に基づくレンジ変化の補償とドップラー周波数変化の補償を多段的に処理して、回転による画像のぼけの補償を実現しているが、これは実際の運動を近似モデルに置き換えた上で実現しているので、この近似に基づく信号の歪みを引き起こし、画質が低下する可能性がある。
この実施の形態1では、従来方法2と類似の方法を回転の推定、回転中心の固定のみに利用しており、実際の画像化は回転を考慮した精密な方法で実現しているので、従来方法2で発生するようなタイプの画質の劣化は生じない効果がある。
【0124】
[9]
従来方法2では、回転により発生するぼけの補償はできるものの、クロスレンジスケーリングは実現できない。
これに対して、この実施の形態1では、回転により発生するぼけの補償に加え、クロスレンジスケーリングまでも実現することができる。
【0125】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10は2次位相係数評価値分布と、2次位相係数レンジ変化係数の推定結果とに基づいて、2次位相係数が0となるレンジを推定し、さらに、その推定結果に基づいて、2次位相係数が0となるレンジを0レンジにするための補償量を算出する回路である。
【0126】
図12はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置の2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10を示す構成図である。
図12において、前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路91はスペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路61により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸(例えば、縦軸y)に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸(例えば、横軸x)上の座標(軌跡をy=a(x+x0)で表される場合のx0)であるゼロ交差点を推定するために、直線の傾きaに基づいて、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像をx軸に総和して、各々のyの総和値を最大とするyの値y0からゼロ交差点を推定する回路である。
【0127】
次に動作について説明する。
この実施の形態2と上記実施の形態1では、ゼロ交差レンジを推定する方法が異なっている。
2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡が、x−y平面において、y=a(x+x0)で表せる場合のx0を推定する問題において、
この実施の形態2では、x=0の位置を中心に、y’=y−axとなるように、各々のx毎に、何らかの方法で全画素を−axだけ平行移動させている。
その際、画像の端部から出た画素は、循環シフトの要領で、そのまま反対側の端に移動させる。以上は一般的な1次のレンジ補償等で出てくる処理である。
【0128】
補償後の画像において、元の軌跡はy’=ax0で表される。
よって、求めたいゼロ交差レンジx0は、補償後の画像をx方向に総和した分布において、その値のピークとなるyであるymaxを用いて、下記の式(49)のように表される。
x0=ymax/a (49)
【0129】
前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路91では、以上の原理に基づいてゼロ交差レンジを推定して、そのゼロ交差レンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
これ以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0130】
この実施の形態2の構成を採用することにより、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1と比較した場合の効果としては、ゼロ交差レンジの推定に用いる評価指標分布を、一般的な1次のレンジ補償相当の処理と、配列の一軸方向の総和で得ることができるので、容易に構成でき、かつ、処理負荷も低減できる可能性があることが挙げられる。
【0131】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジがゼロ交差レンジであると判定して、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する回路である。
【0132】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1,2で、2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを利用して、ゼロ交差レンジを推定するものを示したが、この実施の形態3では、2次位相係数評価値分布から求まる各レンジの2次位相係数(各レンジにおいて、評価値を最大とする2次位相係数の候補値)だけを見て、その2次位相係数が0に最も近くなるレンジセルをゼロ交差レンジと推定するようにしている。
【0133】
即ち、2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11は、2次位相係数評価値分布から求まる各レンジの2次位相係数を比較し、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを特定する。
そして、そのレンジがゼロ交差レンジであると判定して、そのレンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
これ以外の処理は、上記実施の形態1,2と同じである。
【0134】
この実施の形態3の構成を採用することにより、上記実施の形態1,2と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1,2と比較した場合の効果としては、ゼロ交差レンジを推定する際に、前段で推定された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに基づく、2次位相係数評価値分布の線積分処理(実施の形態1)や、補償と総和処理(実施の形態2)を実施する必要がないので、処理負荷が低減され、かつ、回路も簡単化される効果を奏することができる。
【0135】
実施の形態4.
図14はこの発明の実施の形態4による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は並進運動補償回路2により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを推定し、そのレンジをゼロ交差レンジとして0次レンジ補償回路8に出力する回路である。
【0136】
次に動作について説明する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、並進運動補償回路2から並進運動補償後のレンジヒストリを受けると、そのレンジヒストリをレンジ方向に区分的な領域(レンジ方向の重複許容)に分割する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、各区分領域において、一般的な並進運動補償で実施されるレンジセルの移動量推定処理を実施する。
【0137】
移動量がゼロとなるレンジの区分領域内には、ゼロクロスレンジが存在すると考えることができる。
区分領域内のゼロ交差レンジについては、その区分領域内のレンジヒストリの振幅値をヒット方向に総和(または、電力比較の観点では、2乗和)して得られる分布において、値が最大となるレンジ、または、分布形状が最も鋭くなったピーク位置として得ることができる。
【0138】
そこで、並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、区分領域内のレンジヒストリの振幅値をヒット方向に総和して得られる分布において、値が最大となるレンジがゼロ交差レンジであると推定する。あるいは、分布形状が最も鋭いピーク位置のレンジがゼロ交差レンジであると推定する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12は、推定したゼロ交差レンジを0次レンジ補償回路8に出力する。
並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0139】
この実施の形態4の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜3と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜3との比較では、一般的な並進運動補償で用いられるレンジ移動推定方法をそのまま応用できるので、既に保持する装置の改修コストをあまりかけずに流用できる効果がある。
【0140】
実施の形態5.
図15はこの発明の実施の形態5による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
2次位相係数推定回路13はHough変換等の画像上の直線の検出を行う一般的な方法に基づき、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、その軌跡の傾きと切片から2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、その2次位相係数が0になっているレンジを推定する回路である。
【0141】
次に動作について説明する。
2次位相係数推定回路13は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布G(ds,ms)を受けると、画像上の直線を検出する一般的な方法であるHough変換を実施することで、その2次位相係数評価値分布G(ds,ms)が示す2次元画像上の軌跡を検出する。
【0142】
2次位相係数推定回路13は、2次元画像上の軌跡を検出すると、その軌跡の傾き(ds方向に1セル進んだ間にms方向に進む画素数aest(小数も許容))と、その軌跡のゼロクロスレンジセル(その軌跡と、ds=0との交点のレンジセルmX(小数許容))とを取得する。
【0143】
2次位相係数推定回路13は、軌跡の傾きとゼロクロスレンジセルを取得すると、前述のレンジ補間後のレンジピクセルスペーシングΔrs,dsと、2次位相係数への換算係数Δa2を用いて、下記の式(50)より、2次位相係数レンジ変化係数β2を算出し、また、下記の式(51)より、ゼロ交差レンジrXを算出する。
【0144】
2次位相係数推定回路13は、2次位相係数レンジ変化係数β2とゼロ交差レンジrXを算出すると、その2次位相係数レンジ変化係数β2を回転角速度換算回路6に出力し、そのゼロ交差レンジrXを0次レンジ補償回路8に出力する。
2次位相係数推定回路13以外の処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0145】
この実施の形態5の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜4との比較では、一般的なHough変換を用いて装置を構成することができる効果を奏する。
さらに、2次位相係数推定回路13において、2次位相係数レンジ変化係数β2とゼロ交差レンジrXを同時に得ることができるので、装置構成が簡素化される利点がある。
【0146】
実施の形態6.
図16はこの発明の実施の形態6による画像レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
ゼロ交差レンジ推定回路21はレンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、その軌跡の傾きから軌跡のゼロ交差レンジを推定する回路である。
【0147】
レンジセル毎2次位相補償回路22は2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数とゼロ交差レンジ推定回路21により推定されたゼロ交差レンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、その補償量にしたがって回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する回路である。
【0148】
レーダ画像生成回路23はレンジセル毎2次位相補償回路22による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成する回路である。
クロスレンジスケーリング回路24は回転角速度換算回路6により推定された回転運動の角速度に基づいて、レーダ画像生成回路23により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施する回路である。
【0149】
次に動作について説明する。
この実施の形態6では、従来方法2と同様に、回転による画像のぼけを補償(回転によるレンジの変化と、回転によるドップラーの変化とを2段階で補償)し、補償後の画像をフーリエ変換することでレンジドップラー画像を生成する。
また、この実施の形態6では、従来方法では実施できないクロスレンジスケーリングを実施する。
【0150】
レンジヒストリ取得回路1、並進運動補償回路2、回転レンジセル移動補償回路3、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4及び2次位相係数変化量推定回路5の処理内容は、上記実施の形態1と同様である。
【0151】
ゼロ交差レンジ推定回路21は、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4から2次位相係数評価値分布を受けると、その2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、その軌跡の傾きから軌跡のゼロ交差レンジを推定する。
即ち、ゼロ交差レンジ推定回路21は、下記に示す(a)〜(e)のいずれかの回路と同様の処理を実施することで、軌跡のゼロ交差レンジを推定する。
(a)2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路7
(b)2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路10
(c)2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路11
(d)並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路12
(e)2次位相係数推定回路13
【0152】
なお、上記(a)では、上記実施の形態1等で詳述したように、推定に用いる入力値が異なる。そのため、その入力値を得るためのブロック間の配線や関連するブロックも異なる。
図16では、(a)や(b)を用いることを想定している構成図を示しているが、(c)を用いる場合には、2次位相係数変化量推定回路5からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線が不要となる。
(d)を用いる場合には、レンジセル毎2次位相係数候補評価回路4及び2次位相係数変化量推定回路5からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線が不要になる代わりに、並進運動補償回路2からゼロ交差レンジ推定回路21に向かう配線を追加する必要がある。
(e)を用いる場合には、 図17に示すような構成になる。
これらは、ゼロ交差レンジ推定回路21又はそれに相応する回路の入力を踏まえて適宜組みかえればいい。
【0153】
レンジセル毎2次位相補償回路22は、ゼロ交差レンジ推定回路21がゼロ交差レンジを推定すると、そのゼロ交差レンジと2次位相係数変化量推定回路5により推定された2次位相係数レンジ変化係数から、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、その補償量にしたがって回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する。
即ち、レンジセル毎2次位相補償回路22は、そのゼロ交差レンジと2次位相係数レンジ変化係数から各レンジの2次位相係数を算出する。
そして、回転レンジセル移動補償回路3による補償後のレンジヒストリにおいて、その2次位相係数から、各レンジで残存するドップラー変化を引き起こす2次の位相変化を算出し、その2次の位相変化を打ち消すように補償する。
【0154】
レーダ画像生成回路23は、レンジセル毎2次位相補償回路22による補償後のレンジヒストリ(並進運動と回転運動の影響によるぼけが大部分補償されたと期待されるレンジヒストリ)をヒット方向にフーリエ変換することで、レンジドップラー画像を生成する。
レーダ画像生成回路23により生成されたレンジドップラー画像では、従来方法2と同様に、レンジとドップラー周波数方向のぼけの主要成分が補償されている。
【0155】
クロスレンジスケーリング回路24は、レーダ画像生成回路23がレンジドップラー画像を生成すると、回転角速度換算回路6により推定された回転運動の角速度の大きさ|ω|に基づいて、そのレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さに相当するクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施する。
ドップラー周波数[Hz]からクロスレンジ[m]への換算係数は、上記の式(3)に基づくと、λ/(2・|ω|)で表される。
したがって、その換算係数をレンジドップラー画像のドップラー周波数[Hz]に掛けて、クロスレンジ軸にすればいい。
【0156】
なお、ドップラーセル番号[cell]からドップラー周波数[Hz]への換算係数は、観測時間Tを用いて1/Tと表される。
よって、レンジドップラー画像のドップラー方向の軸がドップラーセル番号で表現されている場合には、そのドップラーセル番号を、λ/(2・|ω|T)倍することでクロスレンジ軸に変換することができる。
以上により、従来方法2と類似の流れで生成した、回転によるぼけの主成分が補償されたレンジドップラー画像についても、これをクロスレンジスケーリングした画像にすることができる。
【0157】
この実施の形態6の構成を採用することにより、上記実施の形態1〜5と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態1〜5との比較では、回転角速度の大きさと回転中心のレンジ(ゼロ交差レンジ)の推定のために生成された回転によるレンジ移動が補償されたレンジヒストリや、レンジに対する2次位相係数レンジ変化率を再利用して、回転によるぼけの主成分が補償されたレンジヒストリを、処理負荷の増大をほとんど引き起こさずに生成することができ、かつ、これを処理負荷が回転を考慮した画像再生法より低い、ヒット方向のフーリエ変換でレンジドップラーにすることができ、かつ、これを既に推定された回転角速度の大きさを用いた簡単なスケーリングでレンジクロスレンジ画像にすることができるので、処理負荷低減の観点で効果がある。
【0158】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0159】
1 レンジヒストリ取得回路、2 並進運動補償回路、3 回転レンジセル移動補償回路、4 レンジセル毎2次位相係数候補評価回路、5 2次位相係数変化量推定回路、6 回転角速度換算回路、7 2次位相係数考慮ゼロ交差レンジ推定回路、8 0次レンジ補償回路、9 回転考慮レーダ画像生成回路、10 2次位相係数考慮前補正型ゼロ交差レンジ推定回路、11 2次位相係数基準ゼロ交差レンジ推定回路、12 並進補償後レンジヒストリ基準ゼロ交差レンジ推定回路、13 2次位相係数推定回路、21 ゼロ交差レンジ推定回路、22 レンジセル毎2次位相補償回路、23 レーダ画像生成回路、24 クロスレンジスケーリング回路、31 送信機、32 送受切換器、33 送受信アンテナ、34 受信機、35 レンジ圧縮器、41 一般並進運動補償回路、42 1次位相変化補償器、51 レンジ補間器、52 レンジセル毎2次位相係数候補評価指標算出回路、61 スペクトル画像利用型軌跡傾き特定回路、62 2次位相係数変化量算出回路、71 軌跡傾き信頼度分布算出回路、72 信頼度分布最大位置特定器、73 軌跡傾き換算器、81 傾き固定線積分型ゼロ交差レンジ推定回路、91 前処理補正総和型ゼロ交差レンジ推定回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項2】
並進運動補償回路は、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、上記レンジ移動と上記2次以上の変化を補償する一般並進運動補償回路と、上記一般並進運動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する1次位相変化補償器とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項3】
一般並進運動補償回路は、レンジ移動と2次以上の変化を補償するとともに、各反射点のレンジ移動のヒットに対する1次変化を推定し、
1次位相変化補償器は、上記レンジ移動のヒットに対する1次変化を1次の位相変化に換算し、上記位相変化を打ち消すように、上記一般並進運動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの位相の1次変化を補償する
ことを特徴とする請求項2記載の画像レーダ装置。
【請求項4】
2次位相係数候補評価回路は、レンジセル毎に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する2次位相係数候補評価指標算出回路から構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項5】
2次位相係数候補評価回路は、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、補間後のレンジヒストリを2次位相係数候補評価指標算出回路に出力するレンジ補間器を備えていることを特徴とする請求項4記載の画像レーダ装置。
【請求項6】
2次位相係数候補評価指標算出回路は、レンジヒストリのヒットの前半分の配列の複素共役である配列と、上記レンジヒストリのヒットの後半分の配列とを乗算して得られる配列をヒット方向にフーリエ変換して得られる配列を2次位相係数評価値分布として算出することを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像レーダ装置。
【請求項7】
2次位相係数変化量推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求め、そのスペクトル画像から上記2次元画像上の直線の傾きを推定する軌跡傾き特定回路と、上記軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きから2次位相係数レンジ変化係数を算出する2次位相係数変化量算出回路とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項8】
軌跡傾き特定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布の重み付けを実施して、重み付け後の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求めるとともに、上記スペクトル画像上で直流成分に相当する原点を通り、傾きが異なる複数の直線状の積分経路を設定し、上記積分経路に沿って重み付けスペクトル画像の振幅分布を線積分した結果を、各積分経路の傾きに対する信頼度として出力する軌跡傾き信頼度分布算出回路と、上記軌跡傾き信頼度分布算出回路から出力された各積分経路の傾きに対する信頼度の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する信頼度分布最大位置特定器と、上記信頼度分布最大位置特定器により検出された信頼度が最大の積分経路の傾きを上記2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに換算する軌跡傾き換算器とから構成されていることを特徴とする請求項7記載の画像レーダ装置。
【請求項9】
ゼロ交差レンジ推定回路は、軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、2次位相係数が0になっているレンジであると推定することを特徴とする請求項7または請求項8記載の画像レーダ装置。
【請求項10】
回転レンジセル移動補償回路は、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成し、上記レンジドップラー画像のドップラーセル毎に、当該ドップラーセルを中心とするドップラー幅分を抽出し、上記ドップラー幅分をドップラーセル方向の逆フーリエ変換を実施してレンジヒストリに戻し、上記レンジヒストリ上で、当該ドップラーセルのドップラーセル番号で定まる1次のレンジ移動を打ち消す補償を実施してから、再度、上記レンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレーダ画像に戻し、上記レーダ画像における当該ドップラーセルの画像を補償後画像格納用配列に格納することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項11】
回転角速度換算回路は、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数を回転角速度の大きさに換算し、その換算結果を目標の等価的な回転運動の角速度として出力することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項12】
2次位相係数候補評価指標算出回路は、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリのヒットの前半分の配列で生成される画像と、上記ヒットの後半分の配列で生成される画像間の相互相関値を2次位相係数評価値分布として算出することを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像レーダ装置。
【請求項13】
ゼロ交差レンジ推定回路は、軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、上記直線の傾きaに基づいて、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像を上記他の一軸に総和して、各々のyの総和値から2次位相係数が0になっているレンジを推定することを特徴とする請求項7または請求項8記載の画像レーダ装置。
【請求項14】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを出力するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路から出力されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項15】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項16】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、上記軌跡の傾きと切片から上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、上記2次位相係数が0になっているレンジを推定する2次位相係数推定回路と、上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項17】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、上記軌跡の傾きから上記軌跡のゼロ交差レンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたゼロ交差レンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、上記補償量にしたがって上記回転レンジセル移動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する2次位相補償回路と、上記2次位相補償回路による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成するレーダ画像生成回路と、上記回転角速度換算回路により推定された回転運動の角速度に基づいて、上記レーダ画像生成回路により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施するクロスレンジスケーリング回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項18】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次元画像上の軌跡の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、上記軌跡のゼロ交差レンジであると推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項19】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次元画像上の軌跡の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、上記直線の傾きaに基づいて、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像を上記他の一軸に総和して、各々のyの総和値から2次位相係数が0になっているレンジを、上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項20】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定せずに、上記2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを、上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項21】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定せずに、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項22】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、上記軌跡の傾きと切片から上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、上記2次位相係数が0になっているレンジを推定する2次位相係数推定回路と、上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数が0になっているレンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、上記補償量にしたがって上記回転レンジセル移動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する2次位相補償回路と、上記2次位相補償回路による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成するレーダ画像生成回路と、上記回転角速度換算回路により推定された回転運動の角速度に基づいて、上記レーダ画像生成回路により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施するクロスレンジスケーリング回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項1】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記2次位相係数評価値分布から2次位相係数が0になっているレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項2】
並進運動補償回路は、レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、レンジ分解能を超えている各反射点のレンジ移動と、位相の時間に対する2次以上の変化とを推定して、上記レンジ移動と上記2次以上の変化を補償する一般並進運動補償回路と、上記一般並進運動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける位相の1次変化を補償する1次位相変化補償器とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項3】
一般並進運動補償回路は、レンジ移動と2次以上の変化を補償するとともに、各反射点のレンジ移動のヒットに対する1次変化を推定し、
1次位相変化補償器は、上記レンジ移動のヒットに対する1次変化を1次の位相変化に換算し、上記位相変化を打ち消すように、上記一般並進運動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの位相の1次変化を補償する
ことを特徴とする請求項2記載の画像レーダ装置。
【請求項4】
2次位相係数候補評価回路は、レンジセル毎に、当該レンジの信号の位相に加わっている2次の位相変化を示す2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさを評価して、複数の候補値の確からしさが数値化されている2次位相係数評価値分布を算出する2次位相係数候補評価指標算出回路から構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項5】
2次位相係数候補評価回路は、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリをレンジ方向に補間し、補間後のレンジヒストリを2次位相係数候補評価指標算出回路に出力するレンジ補間器を備えていることを特徴とする請求項4記載の画像レーダ装置。
【請求項6】
2次位相係数候補評価指標算出回路は、レンジヒストリのヒットの前半分の配列の複素共役である配列と、上記レンジヒストリのヒットの後半分の配列とを乗算して得られる配列をヒット方向にフーリエ変換して得られる配列を2次位相係数評価値分布として算出することを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像レーダ装置。
【請求項7】
2次位相係数変化量推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求め、そのスペクトル画像から上記2次元画像上の直線の傾きを推定する軌跡傾き特定回路と、上記軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きから2次位相係数レンジ変化係数を算出する2次位相係数変化量算出回路とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項8】
軌跡傾き特定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像の振幅分布の重み付けを実施して、重み付け後の振幅分布を2次元フーリエ変換してスペクトル画像を求めるとともに、上記スペクトル画像上で直流成分に相当する原点を通り、傾きが異なる複数の直線状の積分経路を設定し、上記積分経路に沿って重み付けスペクトル画像の振幅分布を線積分した結果を、各積分経路の傾きに対する信頼度として出力する軌跡傾き信頼度分布算出回路と、上記軌跡傾き信頼度分布算出回路から出力された各積分経路の傾きに対する信頼度の中で、信頼度が最大の積分経路の傾きを検出する信頼度分布最大位置特定器と、上記信頼度分布最大位置特定器により検出された信頼度が最大の積分経路の傾きを上記2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きに換算する軌跡傾き換算器とから構成されていることを特徴とする請求項7記載の画像レーダ装置。
【請求項9】
ゼロ交差レンジ推定回路は、軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、2次位相係数が0になっているレンジであると推定することを特徴とする請求項7または請求項8記載の画像レーダ装置。
【請求項10】
回転レンジセル移動補償回路は、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成し、上記レンジドップラー画像のドップラーセル毎に、当該ドップラーセルを中心とするドップラー幅分を抽出し、上記ドップラー幅分をドップラーセル方向の逆フーリエ変換を実施してレンジヒストリに戻し、上記レンジヒストリ上で、当該ドップラーセルのドップラーセル番号で定まる1次のレンジ移動を打ち消す補償を実施してから、再度、上記レンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレーダ画像に戻し、上記レーダ画像における当該ドップラーセルの画像を補償後画像格納用配列に格納することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項11】
回転角速度換算回路は、2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数を回転角速度の大きさに換算し、その換算結果を目標の等価的な回転運動の角速度として出力することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項12】
2次位相係数候補評価指標算出回路は、回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリのヒットの前半分の配列で生成される画像と、上記ヒットの後半分の配列で生成される画像間の相互相関値を2次位相係数評価値分布として算出することを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像レーダ装置。
【請求項13】
ゼロ交差レンジ推定回路は、軌跡傾き特定回路により推定された直線の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、上記直線の傾きaに基づいて、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像を上記他の一軸に総和して、各々のyの総和値から2次位相係数が0になっているレンジを推定することを特徴とする請求項7または請求項8記載の画像レーダ装置。
【請求項14】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを出力するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路から出力されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項15】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項16】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、上記軌跡の傾きと切片から上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、上記2次位相係数が0になっているレンジを推定する2次位相係数推定回路と、上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数推定回路により推定されたレンジが0になるように、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを補償する0次レンジ補償回路と、上記回転角速度換算回路により推定された角速度に基づいて、上記0次レンジ補償回路による補償後のレンジヒストリからレーダ画像を生成するレーダ画像生成回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項17】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布に基づいて、上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定する2次位相係数変化量推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定し、上記軌跡の傾きから上記軌跡のゼロ交差レンジを推定するゼロ交差レンジ推定回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記ゼロ交差レンジ推定回路により推定されたゼロ交差レンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、上記補償量にしたがって上記回転レンジセル移動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する2次位相補償回路と、上記2次位相補償回路による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成するレーダ画像生成回路と、上記回転角速度換算回路により推定された回転運動の角速度に基づいて、上記レーダ画像生成回路により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施するクロスレンジスケーリング回路とを備えた画像レーダ装置。
【請求項18】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次元画像上の軌跡の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上で、傾きがaでx0の候補が様々に異なる複数の積分経路を設定し、各積分経路に沿った線積分を実施して、その線積分の値が最大となるx0の候補が、上記軌跡のゼロ交差レンジであると推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項19】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次元画像上の軌跡の傾きがaであり、事前に設定された画像の一軸に添った座標が0となる位置を通る際の他の一軸上の座標がy=a(x+x0)で表される場合のx0であるとき、上記直線の傾きaに基づいて、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きが0になるように補正し、補正後の2次元画像を上記他の一軸に総和して、各々のyの総和値から2次位相係数が0になっているレンジを、上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項20】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定せずに、上記2次位相係数評価値分布に基づいて各レンジの2次位相係数を推定し、各レンジの2次位相係数の中で、2次位相係数が最も0に近くなっているレンジを、上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項21】
ゼロ交差レンジ推定回路は、2次位相係数候補評価回路から出力された2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きを特定せずに、並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリを参照して、回転運動により発生するレンジ移動が最小のレンジを上記軌跡のゼロ交差レンジとして推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
【請求項22】
高周波信号を空間に向けて放射する一方、上記空間に存在している目標に反射された上記高周波信号の一部を受信し、その受信信号のレンジ方向の分解能をレンジ圧縮して、上記受信信号のレンジ方向の振幅特性であるレンジプロフィールを取得する一連の処理をレーダと目標間の相対位置を変えながら繰り返すことで、上記レンジプロフィールの時間履歴であるレンジヒストリを取得するレンジヒストリ取得回路と、上記レンジヒストリ取得回路により取得されたレンジヒストリで、不要な並進運動によって発生するレーダと目標間の不要な距離変化を補償する並進運動補償回路と、上記並進運動補償回路により距離変化が補償されたレンジヒストリで、上記目標における高周波信号の各反射点で、回転運動によって発生するレンジ方向のぼけを補償する回転レンジセル移動補償回路と、上記回転レンジセル移動補償回路によりレンジ方向のぼけが補償されたレンジヒストリの中で、各レンジのヒット方向のデータ列の位相項を特定し、上記位相項に含まれている2次の位相変化の係数である2次位相係数の候補となる複数の候補値の確からしさをレンジセル毎に評価し、各候補値の評価結果のレンジ方向の分布を出力する2次位相係数候補評価回路と、上記2次位相係数候補評価回路から出力されたレンジ方向の分布である2次位相係数評価値分布が示す2次元画像上の軌跡の傾きと切片を特定し、上記軌跡の傾きと切片から上記2次位相係数のレンジに対する変化係数である2次位相係数レンジ変化係数を推定するとともに、上記2次位相係数が0になっているレンジを推定する2次位相係数推定回路と、上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数に基づいて、上記目標の等価的な回転運動の角速度を推定する回転角速度換算回路と、上記2次位相係数変化量推定回路により推定された2次位相係数レンジ変化係数と上記2次位相係数推定回路により推定された2次位相係数が0になっているレンジから、各レンジの2次位相変化を打ち消す補償量を算出し、上記補償量にしたがって上記回転レンジセル移動補償回路による補償後のレンジヒストリにおける各レンジの2次位相変化を補償する2次位相補償回路と、上記2次位相補償回路による補償後のレンジヒストリをヒット方向にフーリエ変換してレンジドップラー画像を生成するレーダ画像生成回路と、上記回転角速度換算回路により推定された回転運動の角速度に基づいて、上記レーダ画像生成回路により生成されたレンジドップラー画像上のドップラー周波数軸を物理的な長さであるクロスレンジ軸に換算するクロスレンジスケーリングを実施するクロスレンジスケーリング回路とを備えた画像レーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−242217(P2012−242217A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111555(P2011−111555)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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