画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置
【課題】高品質な画像を得ることができる画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置を提供する。
【解決手段】撮影により得られた画像信号に対して階調補正回路72dで所要の階調補正処理を行った後、RGB/YC変換回路72fで輝度信号と色差信号を生成する。生成された輝度信号のレベルが輝度閾値以上の画素を検出し、その画素の色差信号に対して0近傍の信号が0値になるようなレベル変換処理をレベル変換回路72gで施す。これにより、ハイライト領域で目立つ偽輪郭の発生を防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【解決手段】撮影により得られた画像信号に対して階調補正回路72dで所要の階調補正処理を行った後、RGB/YC変換回路72fで輝度信号と色差信号を生成する。生成された輝度信号のレベルが輝度閾値以上の画素を検出し、その画素の色差信号に対して0近傍の信号が0値になるようなレベル変換処理をレベル変換回路72gで施す。これにより、ハイライト領域で目立つ偽輪郭の発生を防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置に係り、特に撮像素子で撮像された画像に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラでは、高品位の画像を得るために、撮影により得られた画像信号に対して階調補正や輪郭補正、色補正などの各種補正処理が施される。
【0003】
しかし、画像によっては、階調補正の処理を行うと、高輝度領域に偽輪郭(色ムラ)が発生し、かえって品質を落とすという問題があった。すなわち、一般に階調変換は、図16に示すように、入力の値が大きくなるに従って緩やかなるようにされているため、図17に示すように、緩いグラデーション画像を撮影すると、高輝度側で偽輪郭が発生しやすくなる。特にダイナミックレンジを圧縮するために、階調変換特性を図18のようにした場合には、さらに高輝度側で出力階調幅が狭くなり、より偽輪郭が発生しやすくなる。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1では、画像の平坦領域に高周波のノイズを付加することで、偽輪郭を目立たなくする方法が提案されている。
【特許文献1】特開平9−37299号公報
【特許文献2】特開平9−215012号公報
【特許文献3】特開平8−317425号公報
【特許文献4】特開2005−202037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、ノイズを生成するための回路が別途必要になるという欠点がある。また、この処理のために負荷が増大するとともに、加えたノイズによって画質が劣化するという欠点もある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高品質な画像を得ることができる画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置において、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換手段を備えたことを特徴とする画像信号処理装置を提供する。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号が0値にレベル変換される。これにより、偽輪郭の発生を効果的に防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記レベル変換手段は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換され、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換され、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換される。これにより、出力信号が不連続になるのを効果的に防止でき、より高品質な画像を得ることができる。なお、このように全体的にレベル変換を行うと、彩度が低下することから、次工程で彩度調整を図ることが好ましい。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記検出手段で検出された画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を対象にレベル変換の処理が行われる。偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得手段と、前記撮影データ取得手段で取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定手段であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記レベル変換手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、偽輪郭が発生しやすい撮影条件、たとえば、高ダイナミックレンジ撮影や低感度撮影等の階調豊かな撮影条件やノイズの発生を抑制した撮影条件等で撮影された画像信号に対してのみレベル変換処理が行われる。これにより、高品質な画像を効率よく得ることができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、各画素の彩度を検出する彩度検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記彩度検出手段で検出された彩度が、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、各画素の彩度が検出され、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は低彩度(グレー)の領域で目立ちやすくなることから、低彩度領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、画像の平坦領域を検出する平坦領域検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記平坦領域検出手段で検出された平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、画像の平坦領域が検出され、その平坦領域に属する画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は画像の形状(テクスチャ)なときに目立ちやすくなることから、画像の平坦領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が組み込まれたことを特徴とする撮像装置を提供する。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が撮影装置に組み込まれる。これにより、撮影により、簡単に高品質な画像を得ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、画像信号を入力する画像信号入力機能と、入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施す階調変換処理機能と、階調変換処理された画像信号から輝度信号と色差信号を生成する輝度・色差信号生成機能と、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする画像信号処理プログラム。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号が0値にレベル変換される。これにより、偽輪郭の発生を効果的に防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0023】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、前記レベル変換機能は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項8に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換され、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換され、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換される。これにより、出力信号が不連続になるのを効果的に防止でき、より高品質な画像を得ることができる。なお、このように全体的にレベル変換を行うと、彩度が低下することから、次工程で彩度調整を図ることが好ましい。
【0025】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出機能を備え、前記レベル変換機能は、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を対象にレベル変換の処理が行われる。偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0027】
請求項11に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得機能と、取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定機能であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定機能と、を備え、前記レベル変換機能は、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合にのみ前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、偽輪郭が発生しやすい撮影条件、たとえば、高ダイナミックレンジ撮影や低感度撮影等の階調豊かな撮影条件やノイズの発生を抑制した撮影条件等で撮影された画像信号に対してのみレベル変換処理が行われる。これにより、高品質な画像を効率よく得ることができる。
【0029】
請求項12に係る発明は、前記目的を達成するために、各画素の彩度を検出する彩度検出機能を備え、前記レベル変換機能は、彩度が低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0030】
請求項12に係る発明によれば、各画素の彩度が検出され、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は低彩度(グレー)の領域で目立ちやすくなることから、低彩度領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0031】
請求項13に係る発明は、前記目的を達成するために、画像の平坦領域を検出する平坦領域検出機能を備え、前記レベル変換機能は、平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、8又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0032】
請求項13に係る発明によれば、画像の平坦領域が検出され、その平坦領域に属する画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は画像の形状(テクスチャ)なときに目立ちやすくなることから、画像の平坦領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置によれば、高品質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明に係る画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。
【0035】
図1、2は、それぞれ本発明が適用されたデジタルカメラ10の外観構成を示す正面斜視図と背面斜視図である。
【0036】
図1に示すように、矩形の箱状に形成されたカメラ本体12の前面には、撮影レンズ14、ストロボ16等が設けられており、また、上面には、シャッタボタン18、電源ボタン20等が設けられている。
【0037】
また、図2に示すように、カメラ本体12の背面には、ズームボタン22、メニューボタン24、キャンセルボタン26、決定ボタン28、十字ボタン30、再生ボタン32等の各種操作ボタン類、各種表示を行うための液晶モニタ34等が設けられている。
【0038】
また、図示されていないが、カメラ本体12の底面には、メモリカードを装填するためのメモリカードスロット、バッテリを装填するためのバッテリ装填室等が開閉自在なカバーを介して設けられている。
【0039】
このデジタルカメラ10は、電源OFFの状態から電源ボタン20を押すと、撮影モードの状態で起動し、撮影が可能になる。そして、この撮影モードの状態で再生ボタン32を押すと、再生モードに移行し、メモリカードに格納されている画像の再生が可能になる。なお、電源OFFの状態で再生ボタン32を押すと、デジタルカメラ10は、再生モードの状態で起動する。そして、この再生モードの状態でシャッタボタン18を押すと、撮影モードに移行し、撮影が可能になる。
【0040】
また、撮影モードには、通常の撮影モードのほかに「高感度撮影モード」と「広ダイナミックレンジ撮影モード」を備えている。「高感度撮影モード」は、高感度で撮影するモードであり、「広ダイナミックレンジ撮影モード」は、高輝度の部分と低輝度の部分が存在する被写体を撮影するためのモードである。各モードの設定は、メニュー画面で行われ、ユーザは所要の操作を行って、所望の撮影モードに設定する。
【0041】
本実施の形態のデジタルカメラ10では、メニューボタン24を押すと、メニュー画面が液晶モニタ34に表示され、各種設定ができるようにされている。
【0042】
図3は、デジタルカメラ10の電気的構成を示すブロック図である。
【0043】
同図3に示すように、デジタルカメラ10の内部には、CPU50が設けられている。CPU50は、所定の制御プログラムを実行することにより、操作部(シャッタボタン18、電源ボタン20、ズームボタン22、メニューボタン24、キャンセルボタン26、決定ボタン28、十字ボタン30、再生ボタン32等の各種操作部材)52から入力される操作信号に応じてデジタルカメラ10の各部を制御する。
【0044】
ROM54には、このCPU50が実行する制御プログラム及び制御に必要な各種データが記録されている。CPU50は、このROM54に記録された制御プログラムをSDRAM56に読み出し、逐次実行することにより、デジタルカメラ10の各部を制御する。
【0045】
なお、このSDRAM56は、プログラムの実行処理領域として利用されるほか、画像データ等の一時記憶領域、演算作業等の各種作業領域として利用される。
【0046】
また、フラッシュメモリ58は、ユーザ設定情報等の各種設定情報等の記録領域として利用され、VRAM60は、液晶モニタ34に表示させる画像データ専用の記録領域として利用される。
【0047】
撮影レンズ14は、ズーム機能を有するAFレンズで構成されており、図示しないレンズ駆動機構に駆動されて、ズーミング及びフォーカシングが行われる。この撮影レンズ14には、図示しない絞りが組み込まれており、絞りは図示しない絞り駆動機構に駆動されて、絞り径が切り替えられる。CPU50は、図示しないレンズ制御部及び絞り制御部を介してレンズ駆動機構及び絞り駆動機構の駆動を制御し、撮影レンズ14及び絞りの動作を制御する。
【0048】
撮影レンズ14の後段には、撮像素子として、カラーCCDイメージセンサ(CCD)62が配置されている。CCD62は、周知のように多数の受光素子がマトリクス状に配列された受光面を備えている。撮影レンズ14を通過した被写体光は、このCCD62の受光面上に結像され、各受光素子によって電気信号に変換される。
【0049】
CCD62は、CCDドライバ64から供給される垂直転送クロック及び水平転送クロックに同期して、各画素に蓄積された電荷を1ラインずつシリアルな画像信号として出力する。CPU50は、CCDドライバ64を制御して、CCD62の駆動を制御する。
【0050】
なお、各画素の電荷蓄積時間(露出時間)は、CCDドライバ64から与えられる電子シャッタ駆動信号によって決められる。CPU50は、CCDドライバ64に対して電荷蓄積時間を指示する。
【0051】
また、画像信号の出力は、デジタルカメラ10が撮影モードにセットされると開始される。すなわち、デジタルカメラ10が撮影モードにセットされると、液晶モニタ34にスルー画像を表示するために、画像信号の出力が開始される。このスルー画像用の画像信号の出力は、本撮影の指示が行われると、一旦停止され、本撮影が終了すると、再度開始される。
【0052】
CCD62から出力される画像信号は、アナログ信号であり、このアナログの画像信号は、アナログ信号処理部66に取り込まれる。
【0053】
アナログ信号処理部66は、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲインコントロール回路(AGC)等を含んで構成されている。CDSは、画像信号に含まれるノイズの除去を行い、AGCは、ノイズ除去された画像信号を所定のゲインで増幅する。すなわち、デジタルカメラ10が、通常撮影モードや広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、AGCは、画像信号を通常ゲイン(Ga)で増幅し、デジタルカメラ10が高感度撮影モードにセットされている場合は、画像信号を設定感度に応じて定められるゲインで増幅する。たとえば、ISO400モードでは、通常撮影モードの4倍のゲイン(4Ga)で画像信号を増幅し、ISO200モードでは、通常モードの2倍のゲイン(2Ga)で画像信号を増幅する。
【0054】
図4は、AGCでアナログ画像信号が増幅される様子を示したグラフである。同図において、横軸は、CCD62から出力された画像信号のアナログ信号値を表し、縦軸は、AGCで出力されるアナログ信号値を表している。また、実線は、通常の撮影モード(ゲインGa)を表し、点線は、高感度撮影モード(ゲイン2Ga)を表している。
【0055】
図4に示すように、高感度撮影モードでは、被写体の高輝度部分(アナログ信号入力値の高い部分)が、出力の最大値を越えてしまい(飽和状態)、いわゆる白飛びとして再現される。
【0056】
しかし、多くの主要被写体は、低〜中輝度であり、この部分を階調豊かに表現することができる。
【0057】
このように、ゲインアップが行われると、撮影可能な被写体輝度の幅(ダイナミックレンジ)は減少してしまうが、その代わりに被写体の低〜中輝度部分を再現する階調の幅を広げることができる。
【0058】
アナログ信号処理部66で所要の信号処理が施されたアナログの画像信号はA/D変換器68に取り込まれる。
【0059】
A/D変換器68は、取り込んだアナログの画像信号を所定ビット(本例では10ビット)の階調幅を持ったデジタルの画像信号に変換する。この画像信号は、いわゆるRAWデータであり、画素ごとR、G、Bの濃度を示す階調値を有している。
【0060】
A/D変換器68でデジタル信号に変換された1コマ分の画像信号は、バス70を介してSDRAM56に格納される。
【0061】
バス70には、上記CPU50、ROM54、SDRAM56、フラッシュメモリ58、VRAM60、A/D変換器68のほか、デジタル信号処理部72、AF検出部74、AE/AWB検出部76、圧縮/伸張処理部78、記録制御部80、表示制御部84等が接続されており、これらはバス70を介して互いに情報の送受信できるようにされている。
【0062】
SDRAM56に格納された1コマ分の画像信号は、点順次(画素の順番)にデジタル信号処理部72に取り込まれる。
【0063】
デジタル信号処理部72は、点順次に取り込んだR、G、Bの各色の画像信号に対して所定の信号処理を施し、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)を生成する。
【0064】
図5は、このデジタル信号処理部72の概略構成を示すブロック図である。
【0065】
同図に示すように、デジタル信号処理部72は、ホワイトバランスゲイン算出回路72a、オフセット補正回路72b、ゲイン補正回路72c、階調補正回路72d、RGB補間演算回路72e、RGB/YC変換回路72f、レベル変換回路72g、輪郭補正回路72h、色差マトリクス回路72i、光源種別判定回路72j等を含んで構成されている。
【0066】
ホワイトバランスゲイン算出回路72aは、ホワイトバランス調整を行うために、後述するAE/AWB検出部76で算出された積算値を取り込み、ホワイトバランス調整用のゲイン値を算出する。
【0067】
オフセット補正回路72bは、黒色の被写体を撮影した場合に黒色が表現されるように、SDRAM56から点順次に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号に対して所定のオフセット処理を施して、ゲイン補正回路72cに出力する。すなわち、R、G、Bの各色の画像信号に対してあらかじめ設定されたオフセット値を減算して出力する。
【0068】
ゲイン補正回路72cは、オフセット処理された画像信号を点順次に取り込み、ホワイトバランスゲイン算出回路72aで算出されたゲイン値を用いてホワイトバランス調整を行って、階調補正回路72dに出力する。
【0069】
階調補正回路72dは、ホワイトバランス調整された画像信号を点順次に取り込み、所定の階調変換処理を施して、RGB補間回路72eに出力する。すなわち、画像データをモニタに出力すると、モニタに入力された階調値とモニタが出力する階調値との間にズレが生じることから、このズレを補正するために、撮影により得られた画像信号に対して所定の階調変換処理(いわゆるガンマ補正処理)を施して、RGB補間回路72eに出力する。
【0070】
図6に示すように、階調補正回路72dには、上記のズレを補正するためのガンマ変換テーブルが、あらかじめ設けられている。階調補正回路72dは、このガンマ変換テーブルに基づいて、点順次に入力された画像信号の入力階調値を変換する。
【0071】
なお、デジタルカメラ10が広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、所定の前処理が行われた後、上記のガンマ変換テーブルを用いた階調変換処理が行われる。以下、この前処理について説明する。
【0072】
図7に示すように、階調補正回路72dには、100%モード、200%モード、400%モードの3つの階調変換テーブルが設けられている。階調補正回路72dは、入力された画像のダイナミックレンジに応じて、この3つの階調変換テーブルの中から一つを選択し、選択した階調変換テーブルに基づいて、画像信号が持つ画素ごとの階調値を変換して、前処理を施す。
【0073】
ここで、この前処理で用いる階調変換テーブルは、以下の手順で決定される。
【0074】
まず、入力画像を16分割し、各領域における輝度の平均値(輝度平均値)を算出する。そして、全16領域での輝度平均値を比較することにより、輝度平均値の最大値を検出する。
【0075】
階調補正回路72dは、輝度平均値の最大値が、0〜255であるとき、すなわち被写体輝度が低いと判断される場合には、100%モードを選択する。また、輝度平均値の最大値が、256〜511であるときには、200%モードを選択し、512〜1023のときには、400%モードを選択する。
【0076】
図7に示すように、100%モードでは、入力階調値に対して出力階調値が4倍になるように階調変換処理が施される(入力階調値が255のときに出力階調値が1023となるような直線を描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0077】
また、200%モードでは、入力階調値が高くなるにつれてなだらかなカーブを描く入出力特性にて階調変換される(入力階調値が511のときに出力階調値が1023となるような非線形のカーブを描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0078】
また、400%モードでは、入力階調値が高くなるにつれて更になだらかなカーブを描く入出力特性にて階調変換される(入力階調値が1023のときに出力階調値が1023となるような非線形のカーブを描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0079】
このように、広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、階調補正回路72dに入力された画像信号は、まず、所定の階調変換テーブルによって階調変換処理(前処理)が施され、この前処理が施された画像信号が、ガンマ変換テーブルによって更に階調変換処理(ガンマ変換処理)が施される。これにより、100%モード、200%モード、400%モードの各階調変換テーブルによって階調変換処理のなされた画像信号は最終的に、図8に示すように階調値が変換されて出力される。
【0080】
このように階調補正回路72dは、ホワイトバランス調整された画像信号に対して所定の階調補正処理を施す。
【0081】
RGB補間演算回路72eは、階調変換処理されたR、G、Bの色信号を補間演算して、各画素位置におけるR、G、B3色の信号を求める。すなわち、単板式の撮像素子の場合、各画素からは、R、G、Bのいずれか一色の信号しか出力されないため、出力しない色を周囲の画素の色信号から補完演算により求める。たとえば、Rを出力する画素では、この画素位置におけるG、Bの色信号がどの程度になるかを周りの画素のG、B信号から補間演算により求める。
【0082】
なお、このようにRGB補完演算は、単板式の撮像素子に特有のものなので、撮像素子134に三板式のものを用いた場合には不要となる。
【0083】
RGB/YC変換回路72fは、RGB補間演算後のR、G、B信号から輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとを生成してレベル変換回路72gに出力する。
【0084】
レベル変換回路72gは、階調変換に伴う偽輪郭(色ムラ)の発生を防止するため、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbのうち色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理を行う。すなわち、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲(0値近傍範囲)に属する画素の色差信号を0値にレベル変換する。この偽輪郭は、特に階調が軟調化する高輝度側で目立ちやすくなるため、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素の色差信号についてのみ実施する。
【0085】
以下、このレベル変換回路72gによるレベル変換処理について説明する。
【0086】
上記のように、レベル変換処理は、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素の色差信号についてのみ実施する。
【0087】
図5に示すように、レベル変換回路72gには、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbと点順次に入力される。
【0088】
レベル変換回路72gは、まず、点順次に入力される輝度信号Yと、あらかじめ設定された輝度閾値YTHとを比較する。輝度閾値YTHは、ハイライトの基準となる閾値であり、この輝度閾値YTH以上のレベルがハイライトとして認定される。
【0089】
入力された画素の輝度信号Yが、この輝度閾値YTH未満の場合、レベル変換回路72gは、図9(a)に示すように、その画素の色差信号Cr、Cbに対して通常処理を実施する。すなわち、入力値と同値にレベル変換して出力する。
【0090】
一方、入力された画素の輝度信号Yが、輝度閾値YTH以上の場合、レベル変換回路72gは、図9(b)に示すように、その画素の色差信号Cr、Cbに対して抑圧処理を実施する。すなわち、その画素の色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下の範囲に属する場合は、元の値(入力信号レベル)に色差閾値Th分を加算してレベル変換する。また、色差閾値+Th以上の範囲に属する場合は、元の値から色差閾値Th分を減算してレベル変換する。
【0091】
このように、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換することにより、偽輪郭の発生を効果的に防止することができる。特に偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、本例のように、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、高品質な画像を得ることができる。
【0092】
なお、色差閾値−Thから+Thの範囲は、無彩色の範囲、すなわち0値近傍に設定することが好ましい。具体的には、色差信号の最大値の数%に設定することが好ましく、さらに好ましくは、色差信号の分解能の最小レベルに設定する(たとえば、色差信号の分解能が128レベルならTh=1とし、−1〜+1の範囲に設定する。)。
【0093】
なお、必ずしも、閾値の上限値と下限値を同じ値にする必要はない。すなわち、たとえば、色差信号の分解能が128レベルにおいて、−Th=−1、+Th=+2と設定してもよい。
【0094】
レベル変換回路72gでレベル変換処理が施された色差信号Cr、Cbは、色差マトリクス回路72iに取り込まれる。色差マトリクス回路72iは、レベル変換処理後の色差信号Cr、Cbに対し、所定の色差マトリクス(C−MTX)を乗算して色調補正を行う。すなわち、色差マトリクス回路72iには、光源対応の色差マトリクスが複数種類設けられており、光源種別判定回路72jが求めた光源種に応じて、使用する色差マトリクスを切り替え、この切り替え後の色差マトリクスを入力された色差信号Cr、Cbに乗算し、色差信号Cr、Cbを色調補正する。
【0095】
光源種別判定回路72jは、AE/AWB検出部76で算出された積算値を取り込み、光源種を判定して、色差マトリクス回路72iに色差マトリクス選択信号を出力する。
【0096】
また、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yは、輪郭補正回路72hに取り込まれ、輪郭補正回路72hは、取り込んだ輝度信号Yに対して所定の輪郭補正処理を行う。
【0097】
以上のようにしてデジタル信号処理部72は、点順次に取り込んだR、G、Bの各色の画像信号から輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)を生成する。
【0098】
AF検出部74は、CPU50の指令に従い、SDRAM56に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号を取り込んでAF制御に必要な焦点評価値を算出する。このAF検出部74は、G信号の高周波成分のみを通過させるハイパスフィルタ、絶対値化処理部、画面に設定された所定のフォーカスエリア内の信号を切り出すフォーカスエリア抽出部、及び、フォーカスエリア内の絶対値データを積算する積算部を含み、この積算部で積算されたフォーカスエリア内の絶対値データを焦点評価値としてCPU50に出力する。CPU50は、AF制御時、このAF検出部74から出力される焦点評価値が極大となる位置をサーチし、その位置に撮影レンズ14のフォーカスレンズを移動させることにより、主要被写体への焦点合わせを行う。
【0099】
AE/AWB検出部76は、CPU50の指令に従い、SDRAM56に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号を取り込んでAE制御及びAWB制御に必要な積算値を算出する。すなわち、このAE/AWB検出部76は、一画面を複数のエリア(たとえば、8×8=64エリア)に分割し、分割されたエリアごとにR、G、B信号の積算値を算出する。CPU50は、AE制御時、このAE/AWB検出部76で算出されたエリアごとのR、G、B信号の積算値を取得し、被写体の明るさ(測光値)を求めて、適正な露光量を得るための露出設定を行う。
【0100】
また、CPU50は、AWB制御時、AE/AWB検出部76で算出されたエリアごとのR、G、B信号の積算値をデジタル信号処理部72のホワイトバランスゲイン算出回路72a及び光源種別判定回路72jに加える。
【0101】
ホワイトバランスゲイン算出回路72aは、このAE/AWB検出部76で算出された積算値に基づいてホワイトバランス調整用のゲイン値を算出する。
【0102】
また、光源種別判定回路72jは、このAE/AWB検出部76で算出された積算値に基づいて光源種を検出する。
【0103】
圧縮/伸張処理部78は、CPU50からの指令に従い、入力された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)に所定形式(たとえば、JPEG)の圧縮処理を施し、圧縮画像データを生成する。また、CPU50からの指令に従い、入力された圧縮画像データに所定形式の伸張処理を施して、非圧縮の画像データを生成する。
【0104】
記録制御部80は、CPU50からの指令に従い、メモリカードスロットに装填されたメモリカード82に対してデータの読み/書きを制御する。
【0105】
表示制御部84は、CPU50からの指令に従い、液晶モニタ34への表示を制御する。すなわち、CPU50からの指令に従い、入力された画像信号を液晶モニタ34に表示するための映像信号(たとえば、NTSC信号やPAL信号、SCAM信号)に変換して液晶モニタ34に出力する。
【0106】
以上のように構成された本実施の形態のデジタルカメラ10の作用は次のとおりである。
【0107】
電源スイッチ20を押し、デジタルカメラ10の電源を投入すると、デジタルカメラ10は撮影モードの状態で起動する。
【0108】
上記のように、デジタルカメラ10が、撮影モードの状態で起動すると、CCD62から画像信号の出力が開始され、液晶モニタ34にスルー表示される。撮影者は、この液晶モニタ34の表示を見て構図を決定し、シャッタボタン18を半押しする。
【0109】
シャッタボタン18が半押しされると、CPU50にS1ON信号が入力される。CPU50は、このS1ON信号の入力に応動して、撮影準備処理、すなわちAE、AF、AWBの各処理を実行する。
【0110】
まず、CCD50から出力された画像信号がアナログ信号処理部66、A/D変換器68を介してAE/AWB検出部76及びAF検出部74に加えられる。
【0111】
AE/AWB検出部76は、入力された画像信号からAE制御及びAWB制御に必要な積算値を算出し、CPU50に出力する。CPU50は、このAE/AWB検出部76から得られた積算値に基づき被写体輝度を算出し、適正露出を得るための撮影感度、絞り値、シャッタ速度等を決定する。また、ホワイトバランス補正のためにAE/AWB検出部76から得られた積算値をデジタル信号処理部72に加える。
【0112】
AF検出部74は、入力された画像信号からAF制御に必要な積算値を算出し、CPU50に出力する。CPU50は、このAF検出部74からの出力に基づき撮影レンズ14を制御し、主要被写体に焦点を合わせる。
【0113】
撮影者は、液晶モニタ34の表示を見て画角、ピント状態等を確認し、撮影実行を指示する。すなわち、シャッタボタン18を全押しする。
【0114】
シャッタボタン18が全押しされると、CPU50にS2ON信号が入力される。CPU50は、このS2ON信号に応動して、本撮影の処理を実行する。
【0115】
まず、上記AE制御の結果求めた絞り値、シャッタ速度でCCD62を露光し、記録用の画像を撮像する。
【0116】
CCD62から出力された記録用の画像信号は、アナログ信号処理部66で所要の信号処理が施された後、A/D変換器68でデジタル信号に変換されてSDRAM56に格納される。そして、SDRAM56からデジタル信号処理部72に加えられる。
【0117】
デジタル信号処理部72に取り込まれた画像信号は、黒色の被写体を撮影した場合に黒色が表現されるようにオフセット補正回路72bで所定のオフセット処理が施される。
【0118】
オフセット処理された画像信号は、次いで、ゲイン補正回路72cに加えられ、所定のゲイン値を用いてホワイトバランス調整が行われる。
【0119】
ホワイトバランス調整された画像信号は、次いで、階調補正回路72dに加えられ、設定モードに応じて所定の階調変換処理が施される。
【0120】
階調変換処理された画像信号は、次いで、RGB補間演算回路72eに加えられ、所定の補間演算が行われて、各画素位置におけるR、G、B3色の信号が求められる。
【0121】
RGB補間演算後のR、G、B信号は、次いで、RGB/YC変換回路72fに加えられ、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成される。
【0122】
生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbは、レベル変換回路72gに加えられ、色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理が行われる。すなわち、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル(輝度閾値YTH)以上の画素の色差信号について所定のレベル変換処理を施す。具体的には、図9(b)に示すように、その画素の色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下の範囲に属する場合は、元の値(入力信号レベル)に色差閾値Th分を加算してレベル変換する。また、色差閾値+Th以上の範囲に属する場合は、元の値から色差閾値Th分を減算してレベル変換する。これにより、ハイライト領域(高輝度領域)で目立つ偽輪郭の発生を防止できる。
【0123】
レベル変換回路72gでレベル変換処理が施された色差信号Cr、Cbは、色差マトリクス回路72iに加えられ、所定の色調補正が施されて出力される。
【0124】
また、輝度信号Yは、輪郭補正回路72hに加えられ、所定の輪郭補正処理が施されて出力される。
【0125】
このようにして生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)は、一旦SDRAM56に加えられた後、圧縮/伸張処理部78に加えられる。
【0126】
圧縮/伸張処理部78に加えられたY/C信号は、所定の圧縮処理が施された後、SDRAM56に格納される。
【0127】
CPU50は、このSDRAM56に格納された圧縮画像データに対して所定の撮影情報(撮影時のシャッタ速度、絞り値、撮影感度、撮影モード等の撮影に関する諸情報)を付加した所定フォーマットの画像ファイル(たとえば、Exif形式の画像ファイル)を生成し、記録制御部80を介して生成した画像ファイルをメモリカード82に記録する。
【0128】
このようにして、メモリカード82に記録された画像は、デジタルカメラ10のモードを再生モードに設定することにより、液晶モニタ34に再生表示することができる。すなわち、再生ボタン32を押して、デジタルカメラ10のモードを再生モードにすると、メモリカード82に最後に記録された画像ファイルの圧縮画像データが読み出され、圧縮/伸張処理部78に加えられる。そして、圧縮/伸張処理部78で非圧縮の画像信号とされた後、VRAM60に加えられ、VRAM60から表示制御部84を介して液晶モニタ34に出力される。これにより、メモリカード82に記録されている画像が液晶モニタ34に再生表示される。
【0129】
画像のコマ送りは、十字ボタン30の左右のキーにて行われ、右キーが押圧操作されると、次の画像がメモリカード82から読み出されて、液晶モニタ34に再生表示される。また、左キーが押圧操作されると、一つ前の画像がメモリカード82から読み出されて、液晶モニタ34に再生表示される。
【0130】
以上説明したように、本実施の形態のデジタルカメラ10によれば、撮影により得られた画像信号に対して所要の階調変換処理を施して輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成した後、ハイライト領域の色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理を施すことにより、ハイライト領域で目立つ偽輪郭の発生を防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0131】
なお、上記実施の形態では、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素の色差信号に対してのみ偽輪郭抑圧処理(図9(b)参照)を施すこととしているが、全ての画素の色差信号に偽輪郭抑圧処理を施すようにしてもよい。この場合、画像全体の彩度が低下することから、レベル変換処理後の画像信号に対して所要の彩度補正処理を施すことが好ましい。なお、本例の場合、すなわち、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素の色差信号に対してのみ偽輪郭抑圧処理を施す場合においても、レベル変換処理後の画像信号に対して所要の彩度補正処理を施すようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態では、色差信号に偽輪郭抑圧処理を施す際、図9(b)に示すように、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲の場合は0値に、色差閾値−Th以下の場合は、元の値に色差閾値Th分を加算した値に、色差閾値+Th以上の場合は元の値から色差閾値Th分を減算した値に、それぞれレベル変換しているが、図10に示すように、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合のみレベル変換するようにしてもよい。すなわち、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下、又は、色差閾値+Th以上の場合は、元の値のまま出力するようにしてもよい。
【0133】
なお、この場合、出力データが不連続になることから、上記実施の形態のように、色差閾値−Th以下、及び、色差閾値+Th以上の場合も所要のレベル変換処理を施すことが好ましい。
【0134】
また、上記実施の形態では、撮影により得られた画像信号すべてに対してレベル変換処理を行うようにしているが、(1)撮影モードなどの撮影時の各種条件や処理する画像信号の特性により、又は、(2)画像の彩度レベルに応じて、又は、(3)画像のテクスチャ(形状)に応じて、レベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしてもよい。すなわち、画像によっては、偽輪郭が発生しても問題とならない場合があるので、このような場合は、レベル変換処理を行わず、無駄な画質劣化を防止する。
【0135】
以下、各種条件に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0136】
まず、撮影条件により、レベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0137】
一般に画像のノイズ量が多い場合には、偽輪郭は発生しても問題とならない。したがって、ノイズ量が多い場合や、ノイズ量が多くなるような撮影条件の場合は、レベル変換処理をOFFにする。
【0138】
一方、ダイナミックレンジを拡大して階調豊か(コントラスト豊か)に撮影した場合には、偽輪郭が発生すると、画像の品質を著しく落とすこととなる。したがって、階調を豊かにするような撮影条件の場合は、レベル変換処理をONにする。
【0139】
ノイズ量が多くなるような撮影条件としては、上記実施の形態のデジタルカメラ10の場合、高感度撮影モードで撮影した場合が挙げられる。したがって、高感度撮影モードで撮影した場合はレベル変換処理をOFFにする。
【0140】
また、上記実施の形態のデジタルカメラ10の場合、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影すると、階調豊かな画像を撮影することができるので、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影した場合はレベル変換処理をONにする。
【0141】
以下、撮影条件に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像信号を処理する手順について説明する。ここでは、特に高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFして、画像信号を処理する場合について説明する。
【0142】
図11は、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャートである。
【0143】
本撮影が実行されると、まず、CPU50は、撮影時の条件情報を取得し(ステップS10)、高感度撮影モードで撮影されたか否かを判定する(ステップS11)。
【0144】
ここで、高感度撮影モードで撮影されていると判定すると、CPU50は、レベル変換処理をOFFに設定する(ステップS12)。一方、高感度撮影モードで撮影されていないと判定すると、CPU50は、レベル変換処理をONに設定する(ステップS13)。
【0145】
この後、CPU50は、本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS14)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS15)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS16)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS17)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS18)。
【0146】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、レベル変換処理がONに設定されているか否か判定する(ステップS19)。そして、レベル変換処理がONに設定されていると判定すると、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbをレベル変換回路72gに加えて、色差信号Cr、Cbに所定のレベル変換処理を施させる(ステップS20)。この後、レベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS21)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS22)。
【0147】
一方、レベル変換処理がOFFに設定されていると判定すると、レベル変換処理は行わず、次の処理を実行させる。すなわち、色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加えて、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS21)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS22)。
【0148】
このように高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにすることにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。一方、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFしたとしても、偽輪郭は目立たないので、画像の品質が劣化することもない。
【0149】
なお、上記例は、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する場合について説明しているが、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をONにする場合も同様に、撮影時の設定モードに応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えることにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0150】
この他、階調変換特性によっても偽輪郭の目立ち具合が異なってくるので、階調変換特性に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像信号を処理するようにしてもよい。
【0151】
すなわち、レベル変換処理は、偽輪郭が目立つような画像(たとえば、階調豊かな画像等)が撮影される条件ではON、偽輪郭が目立たないような画像(たとえば、ノイズが多い画像等)が撮影される条件ではOFFする。これにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0152】
また、偽輪郭が目立つような画像を生成するような制御条件ではON、偽輪郭が目立たないような画像を生成するような制御条件ではOFFとしても、同様の効果を得ることができる。たとえば、感度を上げると、ノイズが増え、偽輪郭が目立たなくなるので、感度を上げるような制御を行った場合は、レベル変換処理をOFFにする。また、階調豊かにすると(コントラストを拡大すると)、偽輪郭が目立つようになるので、階調豊かにするような制御を行った場合は、レベル変換処理をONする。これにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0153】
なお、ユーザが任意にレベル変換処理のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。たとえば、メニュー画面に表示されるメニュー項目の一つにレベル変換処理のON/OFFを切り替える項目を用意し、ここでレベル変換処理のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。また、専用のボタンをカメラ本体12に設置して、ON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。
【0154】
次に、画像の彩度レベルに応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像を処理する場合について説明する。
【0155】
偽輪郭は、低彩度(グレー)のときに目立ちやすくなることから、一定以下の彩度レベルのときのみにレベル変換処理を行うようにする。
【0156】
このため、図12に示すように、デジタル信号処理部72には、撮影により得られた画像の彩度が、あらかじめ設定された彩度閾値以下か否かを判定する彩度判定回路72kが備えられている。この彩度判定回路は、RGB/YC変換回路72fで生成された色差信号Cr、Cbを取り込んで、画像の彩度レベルを算出し、彩度閾値以下か否かを判定する。そして、この彩度判定回路72kで画像の彩度レベルを算出し、彩度閾値以下と判定されると、レベル変換処理がON設定され、レベル変換回路72gにて色差信号に所定のレベル変換処理が施される。
【0157】
図13は、一定以下の彩度レベルのときにレベル変換処理ONにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャートである。
【0158】
本撮影が実行されると、CPU50は、その本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS30)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS31)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS32)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS33)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS34)。
【0159】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、生成された色差信号Cr、Cbを彩度判定回路72kに加える。彩度判定回路72kは、取り込んだ色差信号から画像の彩度レベルを検出し(ステップS35)、検出された彩度レベルと、あらかじめ設定された彩度閾値とを比較する。そして、検出された画像の彩度レベルが彩度閾値以下か否かを判定する(ステップS36)。
【0160】
ここで、検出された彩度レベルが彩度閾値以下と判定すると、彩度判定回路72kは、レベル変換回路72gによるレベル変換処理をONに設定する。この後、CPU50は、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbをレベル変換回路72gに加えて、色差信号Cr、Cbに所定のレベル変換処理を施させる(ステップS37)。そして、そのレベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS38)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS39)。
【0161】
一方、検出された彩度レベルが彩度閾値を超えていると判定すると、彩度判定回路72kは、レベル変換回路72gによるレベル変換処理をOFFに設定する。この場合、CPU50は、レベル変換処理は行わせず、次の処理を実行させる(レベル変換回路72gは、入力値をそのまま出力値として出力する)。すなわち、色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加えて、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS38)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS39)。
【0162】
このように撮影により得られた画像の彩度レベルが規定レベル(彩度閾値)以下の場合についてのみ、レベル変換処理を行うことにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。
【0163】
なお、彩度閾値の設定は、ユーザが任意に行うことができるようにしてもよい。すなわち、メニュー画面に表示されるメニュー項目の一つに彩度閾値の設定項目を用意し、ここで彩度閾値の設定をユーザが行えるようにしてもよい。この場合、CPU50はユーザが設定した彩度閾値を彩度判定回路72kに設定する。
【0164】
次に、画像のテクスチャ(形状)に応じて、レベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0165】
偽輪郭は、形状が平坦な時に目立ちやすいため、処理対象とする画素が平坦領域のときのみにレベル変換処理を行うようにする。
【0166】
このため、図14に示すように、デジタルカメラ処理部72には、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定するための形状判定回路72mが備えられている。この形状判定回路72mは、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yを取り込んで、信号解析し、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定する。そして、この形状判定回路72mで処理対象とする画素が平坦領域にあると判定されると、輝度信号Yがレベル変換回路72gに加えられる。レベル変換回路72gは、入力された輝度信号Yの輝度レベルと輝度閾値とを比較し、入力された輝度信号の輝度レベルが輝度閾値以上と判定すると、その画素の色差信号に対してレベル変換処理を実行する。
【0167】
なお、平坦領域か否かを算出する方法としては、N×M領域にある画素に対して値の最大、最小レンジを算出する方法や、分散を算出する方法などがある。また、エッジが含まれているかどうかを検出する方法を用いることもできる。
【0168】
図15は、処理対象とする画素が平坦領域にある場合にレベル変換処理を施す場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0169】
本撮影が実行されると、CPU50は、その本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS50)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS51)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS52)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS53)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS54)。
【0170】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、生成された輝度信号Yを形状判定回路72mに加える。形状判定回路72mは、取り込んだ輝度信号に基づいて処理対象とする画素の形状を解析し(ステップS55)、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定する(ステップS56)。
【0171】
ここで、処理対象とする画素が平坦領域にあると判定されると、輝度信号Yがレベル変換回路72gに加えられる。レベル変換回路72gは、入力された輝度信号Yの輝度レベルを検出し(ステップS57)、検出した輝度レベルと輝度閾値とを比較する。そして、検出した輝度レベルが輝度閾値以上か否かを判定し(ステップS58)、輝度閾値以上と判定すると、その画素の色差信号に対してレベル変換処理を実行する(ステップS59)。この後、CPU50は、そのレベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS60)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS61)。
【0172】
一方、ステップS56で処理対象とする画素が平坦領域にないと判定されると、その画素の色差信号については、レベル変換処理は行わせず、そのまま次の処理が実行される(レベル変換回路72gは、入力値をそのまま出力値として出力する)。すなわち、色差信号Cr、Cbが色差マトリクス回路72iに加えられ、所定の色調補正処理が施されるとともに(ステップS60)、輝度信号Yが輪郭補正回路72hに加えられ、所定の輪郭補正処理が施される(ステップS61)。ステップS58でその画素の輝度レベルが輝度閾値未満と判定された場合も同様にレベル変換処理は行わせず、そのまま次の処理が実行される。
【0173】
このように平坦領域にある画素についてのみレベル変換処理を行うことにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。
【0174】
なお、上記一連の実施の形態では、撮影条件や画像の彩度レベル、画像のテクスチャに応じて個別にレベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしているが、これらの各種条件を複合して、レベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしてもよい。
【0175】
また、上記実施の形態では、本発明をデジタルカメラに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。カメラ付き携帯電話機やデジタルビデオカメラ等の撮像機能を有する機器に適用することができるのはもちろんのこと、いわゆるRAW画像データ(撮像素子から出力された画像信号をデジタル化した画像データ)を現像処理する装置(RAW画像データから輝度信号と色差信号を生成する装置)にも同様に適用することができる。RAW画像データを現像処理する装置は、たとえば、所定の制御プログラムにより上記画像処理の機能をコンピュータに実現させることにより構成することができる。
【0176】
また、上記実施の形態のデジタルカメラでは、本発明に係る画像処理機能を有するデジタル信号処理部をハードウェア回路で構成しているが、当該ハードウェア回路と同じ機能をソフトウェアで構成することもできる。
【0177】
また、上記実施の形態のデジタルカメラでは、撮像素子としてCCDを用いているが、撮像素子は、これに限定されるものではなく、この他、CMOSセンサ等の撮像素子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明が適用されたデジタルカメラの外観構成を示す正面斜視図
【図2】本発明が適用されたデジタルカメラの外観構成を示す背面斜視図
【図3】デジタルカメラの電気的構成を示すブロック図
【図4】AGCでアナログ画像信号が増幅される様子を示したグラフ
【図5】デジタル信号処理部の概略構成を示すブロック図
【図6】階調補正回路のガンマ変換処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図7】階調補正回路の前処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図8】階調補正回路の階調変換処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図9】レベル変換回路による入力レベルと出力レベルの関係を表すグラフ
【図10】他の例のレベル変換回路による入力レベルと出力レベルの関係を表すグラフ
【図11】高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャート
【図12】デジタル信号処理部の他の例の概略構成を示すブロック図
【図13】一定以下の彩度レベルのときにレベル変換処理ONにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャート
【図14】デジタル信号処理部の他の例の概略構成を示すブロック図
【図15】処理対象とする画素が平坦領域にある場合にレベル変換処理を施す場合の処理手順を示すフローチャート
【図16】階調変換特性を示すグラフ
【図17】偽輪郭の発生メカニズムの説明図
【図18】ダイナミックレンジを圧縮した場合の階調変換特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0179】
10…デジタルカメラ、12…カメラ本体、14…撮影レンズ、18…シャッタボタン、34…液晶モニタ、50…CPU、52…操作部、54…ROM、56…SDRAM、58…フラッシュメモリ、60…VRAM、62…CCD、64…CCDドライバ、66…アナログ信号処理部、68…A/D変換器、70…バス、72…デジタル信号処理部、72a…ホワイトバランスゲイン算出回路、72b…オフセット補正回路、72c…ゲイン補正回路、72d…階調補正回路、72e…RGB補間演算回路、72f…RGB/YC変換回路、72g…レベル変換回路、72h…輪郭補正回路、72i…色差マトリクス回路、72j…光源種別判定回路、72k…彩度判定回路、72m…形状判定回路、74…AF検出部、76…AE/AWB検出部、78…圧縮/伸張処理部、80…記録制御部、82…メモリカード、84…表示制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置に係り、特に撮像素子で撮像された画像に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラでは、高品位の画像を得るために、撮影により得られた画像信号に対して階調補正や輪郭補正、色補正などの各種補正処理が施される。
【0003】
しかし、画像によっては、階調補正の処理を行うと、高輝度領域に偽輪郭(色ムラ)が発生し、かえって品質を落とすという問題があった。すなわち、一般に階調変換は、図16に示すように、入力の値が大きくなるに従って緩やかなるようにされているため、図17に示すように、緩いグラデーション画像を撮影すると、高輝度側で偽輪郭が発生しやすくなる。特にダイナミックレンジを圧縮するために、階調変換特性を図18のようにした場合には、さらに高輝度側で出力階調幅が狭くなり、より偽輪郭が発生しやすくなる。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1では、画像の平坦領域に高周波のノイズを付加することで、偽輪郭を目立たなくする方法が提案されている。
【特許文献1】特開平9−37299号公報
【特許文献2】特開平9−215012号公報
【特許文献3】特開平8−317425号公報
【特許文献4】特開2005−202037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、ノイズを生成するための回路が別途必要になるという欠点がある。また、この処理のために負荷が増大するとともに、加えたノイズによって画質が劣化するという欠点もある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高品質な画像を得ることができる画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置において、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換手段を備えたことを特徴とする画像信号処理装置を提供する。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号が0値にレベル変換される。これにより、偽輪郭の発生を効果的に防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記レベル変換手段は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換され、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換され、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換される。これにより、出力信号が不連続になるのを効果的に防止でき、より高品質な画像を得ることができる。なお、このように全体的にレベル変換を行うと、彩度が低下することから、次工程で彩度調整を図ることが好ましい。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記検出手段で検出された画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を対象にレベル変換の処理が行われる。偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得手段と、前記撮影データ取得手段で取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定手段であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記レベル変換手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、偽輪郭が発生しやすい撮影条件、たとえば、高ダイナミックレンジ撮影や低感度撮影等の階調豊かな撮影条件やノイズの発生を抑制した撮影条件等で撮影された画像信号に対してのみレベル変換処理が行われる。これにより、高品質な画像を効率よく得ることができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、各画素の彩度を検出する彩度検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記彩度検出手段で検出された彩度が、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、各画素の彩度が検出され、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は低彩度(グレー)の領域で目立ちやすくなることから、低彩度領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、画像の平坦領域を検出する平坦領域検出手段を備え、前記レベル変換手段は、前記平坦領域検出手段で検出された平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置を提供する。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、画像の平坦領域が検出され、その平坦領域に属する画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は画像の形状(テクスチャ)なときに目立ちやすくなることから、画像の平坦領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が組み込まれたことを特徴とする撮像装置を提供する。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が撮影装置に組み込まれる。これにより、撮影により、簡単に高品質な画像を得ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、画像信号を入力する画像信号入力機能と、入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施す階調変換処理機能と、階調変換処理された画像信号から輝度信号と色差信号を生成する輝度・色差信号生成機能と、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする画像信号処理プログラム。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号が0値にレベル変換される。これにより、偽輪郭の発生を効果的に防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0023】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、前記レベル変換機能は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項8に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換され、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換され、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換される。これにより、出力信号が不連続になるのを効果的に防止でき、より高品質な画像を得ることができる。なお、このように全体的にレベル変換を行うと、彩度が低下することから、次工程で彩度調整を図ることが好ましい。
【0025】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出機能を備え、前記レベル変換機能は、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を対象にレベル変換の処理が行われる。偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0027】
請求項11に係る発明は、前記目的を達成するために、入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得機能と、取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定機能であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定機能と、を備え、前記レベル変換機能は、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合にのみ前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、偽輪郭が発生しやすい撮影条件、たとえば、高ダイナミックレンジ撮影や低感度撮影等の階調豊かな撮影条件やノイズの発生を抑制した撮影条件等で撮影された画像信号に対してのみレベル変換処理が行われる。これにより、高品質な画像を効率よく得ることができる。
【0029】
請求項12に係る発明は、前記目的を達成するために、各画素の彩度を検出する彩度検出機能を備え、前記レベル変換機能は、彩度が低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0030】
請求項12に係る発明によれば、各画素の彩度が検出され、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は低彩度(グレー)の領域で目立ちやすくなることから、低彩度領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【0031】
請求項13に係る発明は、前記目的を達成するために、画像の平坦領域を検出する平坦領域検出機能を備え、前記レベル変換機能は、平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、8又は10に記載の画像信号処理プログラムを提供する。
【0032】
請求項13に係る発明によれば、画像の平坦領域が検出され、その平坦領域に属する画素のみを対象にレベル変換処理が行われる。偽輪郭は画像の形状(テクスチャ)なときに目立ちやすくなることから、画像の平坦領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、より高品質な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置によれば、高品質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明に係る画像信号処理装置、画像信号処理プログラム及び撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。
【0035】
図1、2は、それぞれ本発明が適用されたデジタルカメラ10の外観構成を示す正面斜視図と背面斜視図である。
【0036】
図1に示すように、矩形の箱状に形成されたカメラ本体12の前面には、撮影レンズ14、ストロボ16等が設けられており、また、上面には、シャッタボタン18、電源ボタン20等が設けられている。
【0037】
また、図2に示すように、カメラ本体12の背面には、ズームボタン22、メニューボタン24、キャンセルボタン26、決定ボタン28、十字ボタン30、再生ボタン32等の各種操作ボタン類、各種表示を行うための液晶モニタ34等が設けられている。
【0038】
また、図示されていないが、カメラ本体12の底面には、メモリカードを装填するためのメモリカードスロット、バッテリを装填するためのバッテリ装填室等が開閉自在なカバーを介して設けられている。
【0039】
このデジタルカメラ10は、電源OFFの状態から電源ボタン20を押すと、撮影モードの状態で起動し、撮影が可能になる。そして、この撮影モードの状態で再生ボタン32を押すと、再生モードに移行し、メモリカードに格納されている画像の再生が可能になる。なお、電源OFFの状態で再生ボタン32を押すと、デジタルカメラ10は、再生モードの状態で起動する。そして、この再生モードの状態でシャッタボタン18を押すと、撮影モードに移行し、撮影が可能になる。
【0040】
また、撮影モードには、通常の撮影モードのほかに「高感度撮影モード」と「広ダイナミックレンジ撮影モード」を備えている。「高感度撮影モード」は、高感度で撮影するモードであり、「広ダイナミックレンジ撮影モード」は、高輝度の部分と低輝度の部分が存在する被写体を撮影するためのモードである。各モードの設定は、メニュー画面で行われ、ユーザは所要の操作を行って、所望の撮影モードに設定する。
【0041】
本実施の形態のデジタルカメラ10では、メニューボタン24を押すと、メニュー画面が液晶モニタ34に表示され、各種設定ができるようにされている。
【0042】
図3は、デジタルカメラ10の電気的構成を示すブロック図である。
【0043】
同図3に示すように、デジタルカメラ10の内部には、CPU50が設けられている。CPU50は、所定の制御プログラムを実行することにより、操作部(シャッタボタン18、電源ボタン20、ズームボタン22、メニューボタン24、キャンセルボタン26、決定ボタン28、十字ボタン30、再生ボタン32等の各種操作部材)52から入力される操作信号に応じてデジタルカメラ10の各部を制御する。
【0044】
ROM54には、このCPU50が実行する制御プログラム及び制御に必要な各種データが記録されている。CPU50は、このROM54に記録された制御プログラムをSDRAM56に読み出し、逐次実行することにより、デジタルカメラ10の各部を制御する。
【0045】
なお、このSDRAM56は、プログラムの実行処理領域として利用されるほか、画像データ等の一時記憶領域、演算作業等の各種作業領域として利用される。
【0046】
また、フラッシュメモリ58は、ユーザ設定情報等の各種設定情報等の記録領域として利用され、VRAM60は、液晶モニタ34に表示させる画像データ専用の記録領域として利用される。
【0047】
撮影レンズ14は、ズーム機能を有するAFレンズで構成されており、図示しないレンズ駆動機構に駆動されて、ズーミング及びフォーカシングが行われる。この撮影レンズ14には、図示しない絞りが組み込まれており、絞りは図示しない絞り駆動機構に駆動されて、絞り径が切り替えられる。CPU50は、図示しないレンズ制御部及び絞り制御部を介してレンズ駆動機構及び絞り駆動機構の駆動を制御し、撮影レンズ14及び絞りの動作を制御する。
【0048】
撮影レンズ14の後段には、撮像素子として、カラーCCDイメージセンサ(CCD)62が配置されている。CCD62は、周知のように多数の受光素子がマトリクス状に配列された受光面を備えている。撮影レンズ14を通過した被写体光は、このCCD62の受光面上に結像され、各受光素子によって電気信号に変換される。
【0049】
CCD62は、CCDドライバ64から供給される垂直転送クロック及び水平転送クロックに同期して、各画素に蓄積された電荷を1ラインずつシリアルな画像信号として出力する。CPU50は、CCDドライバ64を制御して、CCD62の駆動を制御する。
【0050】
なお、各画素の電荷蓄積時間(露出時間)は、CCDドライバ64から与えられる電子シャッタ駆動信号によって決められる。CPU50は、CCDドライバ64に対して電荷蓄積時間を指示する。
【0051】
また、画像信号の出力は、デジタルカメラ10が撮影モードにセットされると開始される。すなわち、デジタルカメラ10が撮影モードにセットされると、液晶モニタ34にスルー画像を表示するために、画像信号の出力が開始される。このスルー画像用の画像信号の出力は、本撮影の指示が行われると、一旦停止され、本撮影が終了すると、再度開始される。
【0052】
CCD62から出力される画像信号は、アナログ信号であり、このアナログの画像信号は、アナログ信号処理部66に取り込まれる。
【0053】
アナログ信号処理部66は、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲインコントロール回路(AGC)等を含んで構成されている。CDSは、画像信号に含まれるノイズの除去を行い、AGCは、ノイズ除去された画像信号を所定のゲインで増幅する。すなわち、デジタルカメラ10が、通常撮影モードや広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、AGCは、画像信号を通常ゲイン(Ga)で増幅し、デジタルカメラ10が高感度撮影モードにセットされている場合は、画像信号を設定感度に応じて定められるゲインで増幅する。たとえば、ISO400モードでは、通常撮影モードの4倍のゲイン(4Ga)で画像信号を増幅し、ISO200モードでは、通常モードの2倍のゲイン(2Ga)で画像信号を増幅する。
【0054】
図4は、AGCでアナログ画像信号が増幅される様子を示したグラフである。同図において、横軸は、CCD62から出力された画像信号のアナログ信号値を表し、縦軸は、AGCで出力されるアナログ信号値を表している。また、実線は、通常の撮影モード(ゲインGa)を表し、点線は、高感度撮影モード(ゲイン2Ga)を表している。
【0055】
図4に示すように、高感度撮影モードでは、被写体の高輝度部分(アナログ信号入力値の高い部分)が、出力の最大値を越えてしまい(飽和状態)、いわゆる白飛びとして再現される。
【0056】
しかし、多くの主要被写体は、低〜中輝度であり、この部分を階調豊かに表現することができる。
【0057】
このように、ゲインアップが行われると、撮影可能な被写体輝度の幅(ダイナミックレンジ)は減少してしまうが、その代わりに被写体の低〜中輝度部分を再現する階調の幅を広げることができる。
【0058】
アナログ信号処理部66で所要の信号処理が施されたアナログの画像信号はA/D変換器68に取り込まれる。
【0059】
A/D変換器68は、取り込んだアナログの画像信号を所定ビット(本例では10ビット)の階調幅を持ったデジタルの画像信号に変換する。この画像信号は、いわゆるRAWデータであり、画素ごとR、G、Bの濃度を示す階調値を有している。
【0060】
A/D変換器68でデジタル信号に変換された1コマ分の画像信号は、バス70を介してSDRAM56に格納される。
【0061】
バス70には、上記CPU50、ROM54、SDRAM56、フラッシュメモリ58、VRAM60、A/D変換器68のほか、デジタル信号処理部72、AF検出部74、AE/AWB検出部76、圧縮/伸張処理部78、記録制御部80、表示制御部84等が接続されており、これらはバス70を介して互いに情報の送受信できるようにされている。
【0062】
SDRAM56に格納された1コマ分の画像信号は、点順次(画素の順番)にデジタル信号処理部72に取り込まれる。
【0063】
デジタル信号処理部72は、点順次に取り込んだR、G、Bの各色の画像信号に対して所定の信号処理を施し、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)を生成する。
【0064】
図5は、このデジタル信号処理部72の概略構成を示すブロック図である。
【0065】
同図に示すように、デジタル信号処理部72は、ホワイトバランスゲイン算出回路72a、オフセット補正回路72b、ゲイン補正回路72c、階調補正回路72d、RGB補間演算回路72e、RGB/YC変換回路72f、レベル変換回路72g、輪郭補正回路72h、色差マトリクス回路72i、光源種別判定回路72j等を含んで構成されている。
【0066】
ホワイトバランスゲイン算出回路72aは、ホワイトバランス調整を行うために、後述するAE/AWB検出部76で算出された積算値を取り込み、ホワイトバランス調整用のゲイン値を算出する。
【0067】
オフセット補正回路72bは、黒色の被写体を撮影した場合に黒色が表現されるように、SDRAM56から点順次に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号に対して所定のオフセット処理を施して、ゲイン補正回路72cに出力する。すなわち、R、G、Bの各色の画像信号に対してあらかじめ設定されたオフセット値を減算して出力する。
【0068】
ゲイン補正回路72cは、オフセット処理された画像信号を点順次に取り込み、ホワイトバランスゲイン算出回路72aで算出されたゲイン値を用いてホワイトバランス調整を行って、階調補正回路72dに出力する。
【0069】
階調補正回路72dは、ホワイトバランス調整された画像信号を点順次に取り込み、所定の階調変換処理を施して、RGB補間回路72eに出力する。すなわち、画像データをモニタに出力すると、モニタに入力された階調値とモニタが出力する階調値との間にズレが生じることから、このズレを補正するために、撮影により得られた画像信号に対して所定の階調変換処理(いわゆるガンマ補正処理)を施して、RGB補間回路72eに出力する。
【0070】
図6に示すように、階調補正回路72dには、上記のズレを補正するためのガンマ変換テーブルが、あらかじめ設けられている。階調補正回路72dは、このガンマ変換テーブルに基づいて、点順次に入力された画像信号の入力階調値を変換する。
【0071】
なお、デジタルカメラ10が広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、所定の前処理が行われた後、上記のガンマ変換テーブルを用いた階調変換処理が行われる。以下、この前処理について説明する。
【0072】
図7に示すように、階調補正回路72dには、100%モード、200%モード、400%モードの3つの階調変換テーブルが設けられている。階調補正回路72dは、入力された画像のダイナミックレンジに応じて、この3つの階調変換テーブルの中から一つを選択し、選択した階調変換テーブルに基づいて、画像信号が持つ画素ごとの階調値を変換して、前処理を施す。
【0073】
ここで、この前処理で用いる階調変換テーブルは、以下の手順で決定される。
【0074】
まず、入力画像を16分割し、各領域における輝度の平均値(輝度平均値)を算出する。そして、全16領域での輝度平均値を比較することにより、輝度平均値の最大値を検出する。
【0075】
階調補正回路72dは、輝度平均値の最大値が、0〜255であるとき、すなわち被写体輝度が低いと判断される場合には、100%モードを選択する。また、輝度平均値の最大値が、256〜511であるときには、200%モードを選択し、512〜1023のときには、400%モードを選択する。
【0076】
図7に示すように、100%モードでは、入力階調値に対して出力階調値が4倍になるように階調変換処理が施される(入力階調値が255のときに出力階調値が1023となるような直線を描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0077】
また、200%モードでは、入力階調値が高くなるにつれてなだらかなカーブを描く入出力特性にて階調変換される(入力階調値が511のときに出力階調値が1023となるような非線形のカーブを描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0078】
また、400%モードでは、入力階調値が高くなるにつれて更になだらかなカーブを描く入出力特性にて階調変換される(入力階調値が1023のときに出力階調値が1023となるような非線形のカーブを描く入出力特性にて階調変換処理が施される。)。
【0079】
このように、広ダイナミックレンジ撮影モードにセットされている場合、階調補正回路72dに入力された画像信号は、まず、所定の階調変換テーブルによって階調変換処理(前処理)が施され、この前処理が施された画像信号が、ガンマ変換テーブルによって更に階調変換処理(ガンマ変換処理)が施される。これにより、100%モード、200%モード、400%モードの各階調変換テーブルによって階調変換処理のなされた画像信号は最終的に、図8に示すように階調値が変換されて出力される。
【0080】
このように階調補正回路72dは、ホワイトバランス調整された画像信号に対して所定の階調補正処理を施す。
【0081】
RGB補間演算回路72eは、階調変換処理されたR、G、Bの色信号を補間演算して、各画素位置におけるR、G、B3色の信号を求める。すなわち、単板式の撮像素子の場合、各画素からは、R、G、Bのいずれか一色の信号しか出力されないため、出力しない色を周囲の画素の色信号から補完演算により求める。たとえば、Rを出力する画素では、この画素位置におけるG、Bの色信号がどの程度になるかを周りの画素のG、B信号から補間演算により求める。
【0082】
なお、このようにRGB補完演算は、単板式の撮像素子に特有のものなので、撮像素子134に三板式のものを用いた場合には不要となる。
【0083】
RGB/YC変換回路72fは、RGB補間演算後のR、G、B信号から輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとを生成してレベル変換回路72gに出力する。
【0084】
レベル変換回路72gは、階調変換に伴う偽輪郭(色ムラ)の発生を防止するため、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbのうち色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理を行う。すなわち、色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲(0値近傍範囲)に属する画素の色差信号を0値にレベル変換する。この偽輪郭は、特に階調が軟調化する高輝度側で目立ちやすくなるため、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素の色差信号についてのみ実施する。
【0085】
以下、このレベル変換回路72gによるレベル変換処理について説明する。
【0086】
上記のように、レベル変換処理は、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素の色差信号についてのみ実施する。
【0087】
図5に示すように、レベル変換回路72gには、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbと点順次に入力される。
【0088】
レベル変換回路72gは、まず、点順次に入力される輝度信号Yと、あらかじめ設定された輝度閾値YTHとを比較する。輝度閾値YTHは、ハイライトの基準となる閾値であり、この輝度閾値YTH以上のレベルがハイライトとして認定される。
【0089】
入力された画素の輝度信号Yが、この輝度閾値YTH未満の場合、レベル変換回路72gは、図9(a)に示すように、その画素の色差信号Cr、Cbに対して通常処理を実施する。すなわち、入力値と同値にレベル変換して出力する。
【0090】
一方、入力された画素の輝度信号Yが、輝度閾値YTH以上の場合、レベル変換回路72gは、図9(b)に示すように、その画素の色差信号Cr、Cbに対して抑圧処理を実施する。すなわち、その画素の色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下の範囲に属する場合は、元の値(入力信号レベル)に色差閾値Th分を加算してレベル変換する。また、色差閾値+Th以上の範囲に属する場合は、元の値から色差閾値Th分を減算してレベル変換する。
【0091】
このように、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換することにより、偽輪郭の発生を効果的に防止することができる。特に偽輪郭はハイライトの領域(高輝度領域)で目立ちやすくなることから、本例のように、ハイライト領域のみを対象にレベル変換処理を行うことにより、高品質な画像を得ることができる。
【0092】
なお、色差閾値−Thから+Thの範囲は、無彩色の範囲、すなわち0値近傍に設定することが好ましい。具体的には、色差信号の最大値の数%に設定することが好ましく、さらに好ましくは、色差信号の分解能の最小レベルに設定する(たとえば、色差信号の分解能が128レベルならTh=1とし、−1〜+1の範囲に設定する。)。
【0093】
なお、必ずしも、閾値の上限値と下限値を同じ値にする必要はない。すなわち、たとえば、色差信号の分解能が128レベルにおいて、−Th=−1、+Th=+2と設定してもよい。
【0094】
レベル変換回路72gでレベル変換処理が施された色差信号Cr、Cbは、色差マトリクス回路72iに取り込まれる。色差マトリクス回路72iは、レベル変換処理後の色差信号Cr、Cbに対し、所定の色差マトリクス(C−MTX)を乗算して色調補正を行う。すなわち、色差マトリクス回路72iには、光源対応の色差マトリクスが複数種類設けられており、光源種別判定回路72jが求めた光源種に応じて、使用する色差マトリクスを切り替え、この切り替え後の色差マトリクスを入力された色差信号Cr、Cbに乗算し、色差信号Cr、Cbを色調補正する。
【0095】
光源種別判定回路72jは、AE/AWB検出部76で算出された積算値を取り込み、光源種を判定して、色差マトリクス回路72iに色差マトリクス選択信号を出力する。
【0096】
また、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yは、輪郭補正回路72hに取り込まれ、輪郭補正回路72hは、取り込んだ輝度信号Yに対して所定の輪郭補正処理を行う。
【0097】
以上のようにしてデジタル信号処理部72は、点順次に取り込んだR、G、Bの各色の画像信号から輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)を生成する。
【0098】
AF検出部74は、CPU50の指令に従い、SDRAM56に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号を取り込んでAF制御に必要な焦点評価値を算出する。このAF検出部74は、G信号の高周波成分のみを通過させるハイパスフィルタ、絶対値化処理部、画面に設定された所定のフォーカスエリア内の信号を切り出すフォーカスエリア抽出部、及び、フォーカスエリア内の絶対値データを積算する積算部を含み、この積算部で積算されたフォーカスエリア内の絶対値データを焦点評価値としてCPU50に出力する。CPU50は、AF制御時、このAF検出部74から出力される焦点評価値が極大となる位置をサーチし、その位置に撮影レンズ14のフォーカスレンズを移動させることにより、主要被写体への焦点合わせを行う。
【0099】
AE/AWB検出部76は、CPU50の指令に従い、SDRAM56に取り込まれたR、G、Bの各色の画像信号を取り込んでAE制御及びAWB制御に必要な積算値を算出する。すなわち、このAE/AWB検出部76は、一画面を複数のエリア(たとえば、8×8=64エリア)に分割し、分割されたエリアごとにR、G、B信号の積算値を算出する。CPU50は、AE制御時、このAE/AWB検出部76で算出されたエリアごとのR、G、B信号の積算値を取得し、被写体の明るさ(測光値)を求めて、適正な露光量を得るための露出設定を行う。
【0100】
また、CPU50は、AWB制御時、AE/AWB検出部76で算出されたエリアごとのR、G、B信号の積算値をデジタル信号処理部72のホワイトバランスゲイン算出回路72a及び光源種別判定回路72jに加える。
【0101】
ホワイトバランスゲイン算出回路72aは、このAE/AWB検出部76で算出された積算値に基づいてホワイトバランス調整用のゲイン値を算出する。
【0102】
また、光源種別判定回路72jは、このAE/AWB検出部76で算出された積算値に基づいて光源種を検出する。
【0103】
圧縮/伸張処理部78は、CPU50からの指令に従い、入力された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)に所定形式(たとえば、JPEG)の圧縮処理を施し、圧縮画像データを生成する。また、CPU50からの指令に従い、入力された圧縮画像データに所定形式の伸張処理を施して、非圧縮の画像データを生成する。
【0104】
記録制御部80は、CPU50からの指令に従い、メモリカードスロットに装填されたメモリカード82に対してデータの読み/書きを制御する。
【0105】
表示制御部84は、CPU50からの指令に従い、液晶モニタ34への表示を制御する。すなわち、CPU50からの指令に従い、入力された画像信号を液晶モニタ34に表示するための映像信号(たとえば、NTSC信号やPAL信号、SCAM信号)に変換して液晶モニタ34に出力する。
【0106】
以上のように構成された本実施の形態のデジタルカメラ10の作用は次のとおりである。
【0107】
電源スイッチ20を押し、デジタルカメラ10の電源を投入すると、デジタルカメラ10は撮影モードの状態で起動する。
【0108】
上記のように、デジタルカメラ10が、撮影モードの状態で起動すると、CCD62から画像信号の出力が開始され、液晶モニタ34にスルー表示される。撮影者は、この液晶モニタ34の表示を見て構図を決定し、シャッタボタン18を半押しする。
【0109】
シャッタボタン18が半押しされると、CPU50にS1ON信号が入力される。CPU50は、このS1ON信号の入力に応動して、撮影準備処理、すなわちAE、AF、AWBの各処理を実行する。
【0110】
まず、CCD50から出力された画像信号がアナログ信号処理部66、A/D変換器68を介してAE/AWB検出部76及びAF検出部74に加えられる。
【0111】
AE/AWB検出部76は、入力された画像信号からAE制御及びAWB制御に必要な積算値を算出し、CPU50に出力する。CPU50は、このAE/AWB検出部76から得られた積算値に基づき被写体輝度を算出し、適正露出を得るための撮影感度、絞り値、シャッタ速度等を決定する。また、ホワイトバランス補正のためにAE/AWB検出部76から得られた積算値をデジタル信号処理部72に加える。
【0112】
AF検出部74は、入力された画像信号からAF制御に必要な積算値を算出し、CPU50に出力する。CPU50は、このAF検出部74からの出力に基づき撮影レンズ14を制御し、主要被写体に焦点を合わせる。
【0113】
撮影者は、液晶モニタ34の表示を見て画角、ピント状態等を確認し、撮影実行を指示する。すなわち、シャッタボタン18を全押しする。
【0114】
シャッタボタン18が全押しされると、CPU50にS2ON信号が入力される。CPU50は、このS2ON信号に応動して、本撮影の処理を実行する。
【0115】
まず、上記AE制御の結果求めた絞り値、シャッタ速度でCCD62を露光し、記録用の画像を撮像する。
【0116】
CCD62から出力された記録用の画像信号は、アナログ信号処理部66で所要の信号処理が施された後、A/D変換器68でデジタル信号に変換されてSDRAM56に格納される。そして、SDRAM56からデジタル信号処理部72に加えられる。
【0117】
デジタル信号処理部72に取り込まれた画像信号は、黒色の被写体を撮影した場合に黒色が表現されるようにオフセット補正回路72bで所定のオフセット処理が施される。
【0118】
オフセット処理された画像信号は、次いで、ゲイン補正回路72cに加えられ、所定のゲイン値を用いてホワイトバランス調整が行われる。
【0119】
ホワイトバランス調整された画像信号は、次いで、階調補正回路72dに加えられ、設定モードに応じて所定の階調変換処理が施される。
【0120】
階調変換処理された画像信号は、次いで、RGB補間演算回路72eに加えられ、所定の補間演算が行われて、各画素位置におけるR、G、B3色の信号が求められる。
【0121】
RGB補間演算後のR、G、B信号は、次いで、RGB/YC変換回路72fに加えられ、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成される。
【0122】
生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbは、レベル変換回路72gに加えられ、色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理が行われる。すなわち、輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル(輝度閾値YTH)以上の画素の色差信号について所定のレベル変換処理を施す。具体的には、図9(b)に示すように、その画素の色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下の範囲に属する場合は、元の値(入力信号レベル)に色差閾値Th分を加算してレベル変換する。また、色差閾値+Th以上の範囲に属する場合は、元の値から色差閾値Th分を減算してレベル変換する。これにより、ハイライト領域(高輝度領域)で目立つ偽輪郭の発生を防止できる。
【0123】
レベル変換回路72gでレベル変換処理が施された色差信号Cr、Cbは、色差マトリクス回路72iに加えられ、所定の色調補正が施されて出力される。
【0124】
また、輝度信号Yは、輪郭補正回路72hに加えられ、所定の輪郭補正処理が施されて出力される。
【0125】
このようにして生成された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとからなる画像信号(Y/C信号)は、一旦SDRAM56に加えられた後、圧縮/伸張処理部78に加えられる。
【0126】
圧縮/伸張処理部78に加えられたY/C信号は、所定の圧縮処理が施された後、SDRAM56に格納される。
【0127】
CPU50は、このSDRAM56に格納された圧縮画像データに対して所定の撮影情報(撮影時のシャッタ速度、絞り値、撮影感度、撮影モード等の撮影に関する諸情報)を付加した所定フォーマットの画像ファイル(たとえば、Exif形式の画像ファイル)を生成し、記録制御部80を介して生成した画像ファイルをメモリカード82に記録する。
【0128】
このようにして、メモリカード82に記録された画像は、デジタルカメラ10のモードを再生モードに設定することにより、液晶モニタ34に再生表示することができる。すなわち、再生ボタン32を押して、デジタルカメラ10のモードを再生モードにすると、メモリカード82に最後に記録された画像ファイルの圧縮画像データが読み出され、圧縮/伸張処理部78に加えられる。そして、圧縮/伸張処理部78で非圧縮の画像信号とされた後、VRAM60に加えられ、VRAM60から表示制御部84を介して液晶モニタ34に出力される。これにより、メモリカード82に記録されている画像が液晶モニタ34に再生表示される。
【0129】
画像のコマ送りは、十字ボタン30の左右のキーにて行われ、右キーが押圧操作されると、次の画像がメモリカード82から読み出されて、液晶モニタ34に再生表示される。また、左キーが押圧操作されると、一つ前の画像がメモリカード82から読み出されて、液晶モニタ34に再生表示される。
【0130】
以上説明したように、本実施の形態のデジタルカメラ10によれば、撮影により得られた画像信号に対して所要の階調変換処理を施して輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成した後、ハイライト領域の色差信号Cr、Cbに対して所定のレベル変換処理を施すことにより、ハイライト領域で目立つ偽輪郭の発生を防止でき、高品質な画像を得ることができる。
【0131】
なお、上記実施の形態では、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素の色差信号に対してのみ偽輪郭抑圧処理(図9(b)参照)を施すこととしているが、全ての画素の色差信号に偽輪郭抑圧処理を施すようにしてもよい。この場合、画像全体の彩度が低下することから、レベル変換処理後の画像信号に対して所要の彩度補正処理を施すことが好ましい。なお、本例の場合、すなわち、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素の色差信号に対してのみ偽輪郭抑圧処理を施す場合においても、レベル変換処理後の画像信号に対して所要の彩度補正処理を施すようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態では、色差信号に偽輪郭抑圧処理を施す際、図9(b)に示すように、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲の場合は0値に、色差閾値−Th以下の場合は、元の値に色差閾値Th分を加算した値に、色差閾値+Th以上の場合は元の値から色差閾値Th分を減算した値に、それぞれレベル変換しているが、図10に示すように、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合のみレベル変換するようにしてもよい。すなわち、入力された色差信号のレベルが、色差閾値−Thから+Thの範囲に属する場合は0値にレベル変換し、色差閾値−Th以下、又は、色差閾値+Th以上の場合は、元の値のまま出力するようにしてもよい。
【0133】
なお、この場合、出力データが不連続になることから、上記実施の形態のように、色差閾値−Th以下、及び、色差閾値+Th以上の場合も所要のレベル変換処理を施すことが好ましい。
【0134】
また、上記実施の形態では、撮影により得られた画像信号すべてに対してレベル変換処理を行うようにしているが、(1)撮影モードなどの撮影時の各種条件や処理する画像信号の特性により、又は、(2)画像の彩度レベルに応じて、又は、(3)画像のテクスチャ(形状)に応じて、レベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしてもよい。すなわち、画像によっては、偽輪郭が発生しても問題とならない場合があるので、このような場合は、レベル変換処理を行わず、無駄な画質劣化を防止する。
【0135】
以下、各種条件に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0136】
まず、撮影条件により、レベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0137】
一般に画像のノイズ量が多い場合には、偽輪郭は発生しても問題とならない。したがって、ノイズ量が多い場合や、ノイズ量が多くなるような撮影条件の場合は、レベル変換処理をOFFにする。
【0138】
一方、ダイナミックレンジを拡大して階調豊か(コントラスト豊か)に撮影した場合には、偽輪郭が発生すると、画像の品質を著しく落とすこととなる。したがって、階調を豊かにするような撮影条件の場合は、レベル変換処理をONにする。
【0139】
ノイズ量が多くなるような撮影条件としては、上記実施の形態のデジタルカメラ10の場合、高感度撮影モードで撮影した場合が挙げられる。したがって、高感度撮影モードで撮影した場合はレベル変換処理をOFFにする。
【0140】
また、上記実施の形態のデジタルカメラ10の場合、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影すると、階調豊かな画像を撮影することができるので、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影した場合はレベル変換処理をONにする。
【0141】
以下、撮影条件に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像信号を処理する手順について説明する。ここでは、特に高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFして、画像信号を処理する場合について説明する。
【0142】
図11は、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャートである。
【0143】
本撮影が実行されると、まず、CPU50は、撮影時の条件情報を取得し(ステップS10)、高感度撮影モードで撮影されたか否かを判定する(ステップS11)。
【0144】
ここで、高感度撮影モードで撮影されていると判定すると、CPU50は、レベル変換処理をOFFに設定する(ステップS12)。一方、高感度撮影モードで撮影されていないと判定すると、CPU50は、レベル変換処理をONに設定する(ステップS13)。
【0145】
この後、CPU50は、本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS14)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS15)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS16)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS17)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS18)。
【0146】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、レベル変換処理がONに設定されているか否か判定する(ステップS19)。そして、レベル変換処理がONに設定されていると判定すると、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbをレベル変換回路72gに加えて、色差信号Cr、Cbに所定のレベル変換処理を施させる(ステップS20)。この後、レベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS21)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS22)。
【0147】
一方、レベル変換処理がOFFに設定されていると判定すると、レベル変換処理は行わず、次の処理を実行させる。すなわち、色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加えて、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS21)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS22)。
【0148】
このように高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにすることにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。一方、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFしたとしても、偽輪郭は目立たないので、画像の品質が劣化することもない。
【0149】
なお、上記例は、高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する場合について説明しているが、広ダイナミックレンジ撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をONにする場合も同様に、撮影時の設定モードに応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えることにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0150】
この他、階調変換特性によっても偽輪郭の目立ち具合が異なってくるので、階調変換特性に応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像信号を処理するようにしてもよい。
【0151】
すなわち、レベル変換処理は、偽輪郭が目立つような画像(たとえば、階調豊かな画像等)が撮影される条件ではON、偽輪郭が目立たないような画像(たとえば、ノイズが多い画像等)が撮影される条件ではOFFする。これにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0152】
また、偽輪郭が目立つような画像を生成するような制御条件ではON、偽輪郭が目立たないような画像を生成するような制御条件ではOFFとしても、同様の効果を得ることができる。たとえば、感度を上げると、ノイズが増え、偽輪郭が目立たなくなるので、感度を上げるような制御を行った場合は、レベル変換処理をOFFにする。また、階調豊かにすると(コントラストを拡大すると)、偽輪郭が目立つようになるので、階調豊かにするような制御を行った場合は、レベル変換処理をONする。これにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。
【0153】
なお、ユーザが任意にレベル変換処理のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。たとえば、メニュー画面に表示されるメニュー項目の一つにレベル変換処理のON/OFFを切り替える項目を用意し、ここでレベル変換処理のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。また、専用のボタンをカメラ本体12に設置して、ON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。
【0154】
次に、画像の彩度レベルに応じてレベル変換処理のON/OFFを切り替えて画像を処理する場合について説明する。
【0155】
偽輪郭は、低彩度(グレー)のときに目立ちやすくなることから、一定以下の彩度レベルのときのみにレベル変換処理を行うようにする。
【0156】
このため、図12に示すように、デジタル信号処理部72には、撮影により得られた画像の彩度が、あらかじめ設定された彩度閾値以下か否かを判定する彩度判定回路72kが備えられている。この彩度判定回路は、RGB/YC変換回路72fで生成された色差信号Cr、Cbを取り込んで、画像の彩度レベルを算出し、彩度閾値以下か否かを判定する。そして、この彩度判定回路72kで画像の彩度レベルを算出し、彩度閾値以下と判定されると、レベル変換処理がON設定され、レベル変換回路72gにて色差信号に所定のレベル変換処理が施される。
【0157】
図13は、一定以下の彩度レベルのときにレベル変換処理ONにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャートである。
【0158】
本撮影が実行されると、CPU50は、その本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS30)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS31)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS32)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS33)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS34)。
【0159】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、生成された色差信号Cr、Cbを彩度判定回路72kに加える。彩度判定回路72kは、取り込んだ色差信号から画像の彩度レベルを検出し(ステップS35)、検出された彩度レベルと、あらかじめ設定された彩度閾値とを比較する。そして、検出された画像の彩度レベルが彩度閾値以下か否かを判定する(ステップS36)。
【0160】
ここで、検出された彩度レベルが彩度閾値以下と判定すると、彩度判定回路72kは、レベル変換回路72gによるレベル変換処理をONに設定する。この後、CPU50は、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbをレベル変換回路72gに加えて、色差信号Cr、Cbに所定のレベル変換処理を施させる(ステップS37)。そして、そのレベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS38)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS39)。
【0161】
一方、検出された彩度レベルが彩度閾値を超えていると判定すると、彩度判定回路72kは、レベル変換回路72gによるレベル変換処理をOFFに設定する。この場合、CPU50は、レベル変換処理は行わせず、次の処理を実行させる(レベル変換回路72gは、入力値をそのまま出力値として出力する)。すなわち、色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加えて、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS38)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS39)。
【0162】
このように撮影により得られた画像の彩度レベルが規定レベル(彩度閾値)以下の場合についてのみ、レベル変換処理を行うことにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。
【0163】
なお、彩度閾値の設定は、ユーザが任意に行うことができるようにしてもよい。すなわち、メニュー画面に表示されるメニュー項目の一つに彩度閾値の設定項目を用意し、ここで彩度閾値の設定をユーザが行えるようにしてもよい。この場合、CPU50はユーザが設定した彩度閾値を彩度判定回路72kに設定する。
【0164】
次に、画像のテクスチャ(形状)に応じて、レベル変換処理のON/OFFを切り替える場合について説明する。
【0165】
偽輪郭は、形状が平坦な時に目立ちやすいため、処理対象とする画素が平坦領域のときのみにレベル変換処理を行うようにする。
【0166】
このため、図14に示すように、デジタルカメラ処理部72には、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定するための形状判定回路72mが備えられている。この形状判定回路72mは、RGB/YC変換回路72fで生成された輝度信号Yを取り込んで、信号解析し、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定する。そして、この形状判定回路72mで処理対象とする画素が平坦領域にあると判定されると、輝度信号Yがレベル変換回路72gに加えられる。レベル変換回路72gは、入力された輝度信号Yの輝度レベルと輝度閾値とを比較し、入力された輝度信号の輝度レベルが輝度閾値以上と判定すると、その画素の色差信号に対してレベル変換処理を実行する。
【0167】
なお、平坦領域か否かを算出する方法としては、N×M領域にある画素に対して値の最大、最小レンジを算出する方法や、分散を算出する方法などがある。また、エッジが含まれているかどうかを検出する方法を用いることもできる。
【0168】
図15は、処理対象とする画素が平坦領域にある場合にレベル変換処理を施す場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0169】
本撮影が実行されると、CPU50は、その本撮影により得られた画像信号をデジタル信号処理部72に加える。そして、オフセット補正回路72bでオフセット処理(ステップS50)、ゲイン補正回路72cでホワイトバランス調整(ステップS51)、階調補正回路72dで階調変換処理(ステップS52)、RGB補間演算回路72eでRGB補間演算(ステップS53)を行わせ、RGB/YC変換回路72fで輝度信号Yと色差信号Cr、Cbを生成させる(ステップS54)。
【0170】
輝度信号Yと色差信号Cr、Cbが生成されると、CPU50は、生成された輝度信号Yを形状判定回路72mに加える。形状判定回路72mは、取り込んだ輝度信号に基づいて処理対象とする画素の形状を解析し(ステップS55)、処理対象とする画素が平坦領域にあるか否かを判定する(ステップS56)。
【0171】
ここで、処理対象とする画素が平坦領域にあると判定されると、輝度信号Yがレベル変換回路72gに加えられる。レベル変換回路72gは、入力された輝度信号Yの輝度レベルを検出し(ステップS57)、検出した輝度レベルと輝度閾値とを比較する。そして、検出した輝度レベルが輝度閾値以上か否かを判定し(ステップS58)、輝度閾値以上と判定すると、その画素の色差信号に対してレベル変換処理を実行する(ステップS59)。この後、CPU50は、そのレベル変換処理された色差信号Cr、Cbを色差マトリクス回路72iに加え、所定の色調補正処理を施させるとともに(ステップS60)、輝度信号Yを輪郭補正回路72hに加えて、所定の輪郭補正処理を施させる(ステップS61)。
【0172】
一方、ステップS56で処理対象とする画素が平坦領域にないと判定されると、その画素の色差信号については、レベル変換処理は行わせず、そのまま次の処理が実行される(レベル変換回路72gは、入力値をそのまま出力値として出力する)。すなわち、色差信号Cr、Cbが色差マトリクス回路72iに加えられ、所定の色調補正処理が施されるとともに(ステップS60)、輝度信号Yが輪郭補正回路72hに加えられ、所定の輪郭補正処理が施される(ステップS61)。ステップS58でその画素の輝度レベルが輝度閾値未満と判定された場合も同様にレベル変換処理は行わせず、そのまま次の処理が実行される。
【0173】
このように平坦領域にある画素についてのみレベル変換処理を行うことにより、無駄にレベル変換処理が施されて、画像の品質が劣化するのを有効に防止することができる。また、効率よく画像を処理することができる。
【0174】
なお、上記一連の実施の形態では、撮影条件や画像の彩度レベル、画像のテクスチャに応じて個別にレベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしているが、これらの各種条件を複合して、レベル変換処理のON/OFFを切り替えるようにしてもよい。
【0175】
また、上記実施の形態では、本発明をデジタルカメラに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。カメラ付き携帯電話機やデジタルビデオカメラ等の撮像機能を有する機器に適用することができるのはもちろんのこと、いわゆるRAW画像データ(撮像素子から出力された画像信号をデジタル化した画像データ)を現像処理する装置(RAW画像データから輝度信号と色差信号を生成する装置)にも同様に適用することができる。RAW画像データを現像処理する装置は、たとえば、所定の制御プログラムにより上記画像処理の機能をコンピュータに実現させることにより構成することができる。
【0176】
また、上記実施の形態のデジタルカメラでは、本発明に係る画像処理機能を有するデジタル信号処理部をハードウェア回路で構成しているが、当該ハードウェア回路と同じ機能をソフトウェアで構成することもできる。
【0177】
また、上記実施の形態のデジタルカメラでは、撮像素子としてCCDを用いているが、撮像素子は、これに限定されるものではなく、この他、CMOSセンサ等の撮像素子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明が適用されたデジタルカメラの外観構成を示す正面斜視図
【図2】本発明が適用されたデジタルカメラの外観構成を示す背面斜視図
【図3】デジタルカメラの電気的構成を示すブロック図
【図4】AGCでアナログ画像信号が増幅される様子を示したグラフ
【図5】デジタル信号処理部の概略構成を示すブロック図
【図6】階調補正回路のガンマ変換処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図7】階調補正回路の前処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図8】階調補正回路の階調変換処理における入力階調値と出力階調値の関係を表すグラフ
【図9】レベル変換回路による入力レベルと出力レベルの関係を表すグラフ
【図10】他の例のレベル変換回路による入力レベルと出力レベルの関係を表すグラフ
【図11】高感度撮影モードで撮影した場合にレベル変換処理をOFFにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャート
【図12】デジタル信号処理部の他の例の概略構成を示すブロック図
【図13】一定以下の彩度レベルのときにレベル変換処理ONにして、画像信号を処理する手順を示すフローチャート
【図14】デジタル信号処理部の他の例の概略構成を示すブロック図
【図15】処理対象とする画素が平坦領域にある場合にレベル変換処理を施す場合の処理手順を示すフローチャート
【図16】階調変換特性を示すグラフ
【図17】偽輪郭の発生メカニズムの説明図
【図18】ダイナミックレンジを圧縮した場合の階調変換特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0179】
10…デジタルカメラ、12…カメラ本体、14…撮影レンズ、18…シャッタボタン、34…液晶モニタ、50…CPU、52…操作部、54…ROM、56…SDRAM、58…フラッシュメモリ、60…VRAM、62…CCD、64…CCDドライバ、66…アナログ信号処理部、68…A/D変換器、70…バス、72…デジタル信号処理部、72a…ホワイトバランスゲイン算出回路、72b…オフセット補正回路、72c…ゲイン補正回路、72d…階調補正回路、72e…RGB補間演算回路、72f…RGB/YC変換回路、72g…レベル変換回路、72h…輪郭補正回路、72i…色差マトリクス回路、72j…光源種別判定回路、72k…彩度判定回路、72m…形状判定回路、74…AF検出部、76…AE/AWB検出部、78…圧縮/伸張処理部、80…記録制御部、82…メモリカード、84…表示制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置において、
色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換手段を備えたことを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
前記レベル変換手段は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項3】
前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記検出手段で検出された画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置。
【請求項4】
入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得手段と、
前記撮影データ取得手段で取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定手段であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記レベル変換手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項5】
各画素の彩度を検出する彩度検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記彩度検出手段で検出された彩度が、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項6】
画像の平坦領域を検出する平坦領域検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記平坦領域検出手段で検出された平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が組み込まれたことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
画像信号を入力する画像信号入力機能と、
入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施す階調変換処理機能と、
階調変換処理された画像信号から輝度信号と色差信号を生成する輝度・色差信号生成機能と、
色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする画像信号処理プログラム。
【請求項9】
前記レベル変換機能は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項8に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項10】
前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項11】
入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得機能と、
取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定機能であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定機能と、
を備え、前記レベル変換機能は、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合にのみ前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項12】
各画素の彩度を検出する彩度検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、彩度が低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項13】
画像の平坦領域を検出する平坦領域検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項1】
入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施した後、輝度信号と色差信号を生成する画像信号処理装置において、
色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換手段を備えたことを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
前記レベル変換手段は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項3】
前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記検出手段で検出された画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置。
【請求項4】
入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得手段と、
前記撮影データ取得手段で取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定手段であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記レベル変換手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項5】
各画素の彩度を検出する彩度検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記彩度検出手段で検出された彩度が、低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項6】
画像の平坦領域を検出する平坦領域検出手段を備え、
前記レベル変換手段は、前記平坦領域検出手段で検出された平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像信号処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の画像信号処理装置が組み込まれたことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
画像信号を入力する画像信号入力機能と、
入力された画像信号に対して所定の階調変換処理を施す階調変換処理機能と、
階調変換処理された画像信号から輝度信号と色差信号を生成する輝度・色差信号生成機能と、
色差信号のレベルが、無彩色として規定された範囲に属する画素の色差信号を0値にレベル変換するレベル変換機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする画像信号処理プログラム。
【請求項9】
前記レベル変換機能は、色差信号のレベルが、所定の無彩色の範囲として規定された閾値−Aから+Bの範囲に属する画素については0値にレベル変換し、閾値−A以下の範囲に属する画素については、元の値にA加算してレベル変換し、閾値+B以上の範囲に属する画素については、元の値からB減算してレベル変換することを特徴とする請求項8に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項10】
前記輝度信号のレベルが、ハイライトとして規定された規定レベル以上の画素を検出する検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、輝度信号のレベルが規定レベル以上の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項11】
入力された画像信号の撮影データを取得する撮影データ取得機能と、
取得した撮影データに基づいて前記レベル変換手段によるレベル変換処理の要否を判定する判定機能であって、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合に前記レベル変換手段によるレベル変換処理を不要と判定する判定機能と、
を備え、前記レベル変換機能は、偽輪郭が発生しやすい撮影条件として、あらかじめ規定された撮影条件で撮影されている場合にのみ前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項12】
各画素の彩度を検出する彩度検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、彩度が低彩度として規定された規定彩度以下の画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【請求項13】
画像の平坦領域を検出する平坦領域検出機能を備え、
前記レベル変換機能は、平坦領域に属する画素のみを対象に前記レベル変換の処理を行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の画像信号処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−160291(P2008−160291A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344407(P2006−344407)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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