説明

画像処理方法および画像処理装置

【課題】 照明などの明るさによって合焦度が変動することを考慮して合焦度判定を行うことができる画像処理方法および画像処理装置を提供する。
【解決手段】 読取対象表示およびその周辺の背景を含む判定対象領域内の各画素を二次微分して二次微分画像を生成する二次微分画像生成工程と、二次微分画像内の各画素の二次微分値の絶対値を相加平均して、絶対平均値を算出する絶対平均値算出工程と、判定対象領域の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成工程と、濃度ヒストグラムを高輝度側と低輝度側のクラスに分けるための閾値を算出し、該閾値によって分けられた2つのクラスの各平均濃度の差分によって、濃度分布幅を算出する濃度分布幅算出工程と、絶対平均値を濃度分布幅で除して、合焦度を算出するパラメータ算出工程と、算出された合焦度と所定の閾値とを比較するパラメータ判定工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法および画像処理装置に関し、特に、読取対象表示を読取る光学系の合焦度または読取対象表示の鮮明度を判定するための画像処理方法および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FA(Factory Automation)の普及に伴って、工場の生産ラインでは、ベルトコンベヤなどによって搬送されている工業製品をカメラなどの撮像装置を用いて撮像し、撮像された画像を画像処理することにより、その工業製品からバーコードシンボルおよび二次元コードシンボルなどのコードシンボル、ならびに文字などの読取対象表示を自動的に読み取ることが行われている。このように、移動する被写体に付された読取対象表示を、所定位置に固定して設けられたカメラによって撮像された画像を基に読み取る場合、シャッタチャンスは一度しかないため、撮像すべき被写体ごとに最適な焦点距離を求めるオートフォーカス方式によって撮像が行われるのではなく、撮像装置に備えられるレンズの焦点(フォーカス)および絞り、撮像装置のシャッタ速度、ならびに、撮像すべき被写体を照射するための照明装置の照射光量などの撮像条件を、予め調整しておいて撮像が行われる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
画像処理によって読取対象表示の読取りを行う場合には、読取対象表示に対応する表示領域と該表示領域の周辺の背景領域とのコントラスト、およびピントのボケ具合が、読取精度に大きな影響を与えることは一般に知られている。したがって、前述するように撮像条件を予め調整する際には、生産ラインを試験的に稼動させて、テスト用の物体を撮像することにより、コントラストやピントが適正であるか否かを判定することが行われている。従来から、コントラストやピントを判定するための判定項目として、合焦の程度を表す合焦度を用いた評価が行われている。
【0004】
たとえば非特許文献1では、合焦判定するための8種類の手法(具体的には、「フーリエ変換を用いる手法」、「グラディエントを用いる手法」、「高周波量に基づいた手法」、「高輝度量に基づいた手法」、「エントロピーを用いる手法」、「頻度の傾きを用いる手法」、「分散を用いる手法」および「SMD(Sum-Modulus-Difference)を用いる手法」)を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)像に対して用い、各手法について評価が行われている。非特許文献1における評価によれば、8種類の手法のうち、「高周波量に基づいた手法」および「分散を用いる手法」が優れている(合焦画像の検出率が100%である)ことが示されている。また特許文献2には、画像中の合焦度を含む矩形領域を抽出するための画像処理方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4080897号
【特許文献2】特開2001−331806号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ViEW2003 ビジョン技術の実利用ワークショップ講演論文集 pp.12−17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被写体に付されたコードシンボルや文字などの読取対象表示のピントやコントラストの適正度(合焦度)は、撮像装置および照明装置といった光学系の調整工程と、被写体に付された読取対象表示を検査するための工程において用いられる。非特許文献1に記載されるように、撮像された画像の各画素を二次微分し、その二次微分値のみに基づいて合焦度を算出する方法では、照明などの明るさの変動に伴って合焦度が変動してしまう。したがって、合焦度を判定するための条件としては、満足できるものではなかった。
【0008】
本発明の目的は、照明などの明るさによって合焦度が変動することを考慮して合焦度判定を行うことができる画像処理方法および画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の読取対象表示を含む撮像対象領域を撮像することによって、読取対象表示を読取る光学系の合焦度または読取対象表示の鮮明度を判定するための画像処理方法であって、
読取対象表示および該読取対象表示の周辺の背景を含む判定対象領域内の各画素を二次微分することにより二次微分画像を生成する二次微分画像生成工程と、
前記二次微分画像における各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって、絶対平均値を算出する絶対平均値算出工程と、
前記判定対象領域の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成工程と、
前記濃度ヒストグラムを高輝度側のクラスと低輝度側のクラスとに分けるための閾値を算出し、該閾値によって分けられた2つのクラスの各平均濃度の差分によって、濃度分布幅を算出する濃度分布幅算出工程と、
前記絶対平均値を前記濃度分布幅で除することによって、合焦度または鮮明度を算出するパラメータ算出工程と、
算出された合焦度または鮮明度と、予め定める閾値とを比較するパラメータ判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0010】
また本発明は、前記二次微分画像生成工程において生成された二次微分画像の各画素から、ゼロクロスに寄与する画素だけを抽出するゼロクロス画素抽出工程をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、所定の読取対象表示を含む撮像対象領域を撮像することによって、読取対象表示を読取る光学系の合焦度または読取対象表示の鮮明度を判定するための画像処理装置であって、
読取対象表示および該読取対象表示の周辺の背景を含む判定対象領域内の各画素を二次微分することにより二次微分画像を生成する二次微分画像生成部と、
前記二次微分画像における各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって、絶対平均値を算出する絶対平均値算出部と、
前記判定対象領域の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成部と、
前記濃度ヒストグラムを高輝度側のクラスと低輝度側のクラスとに分けるための閾値を算出し、該閾値によって分けられた2つのクラスの各平均濃度の差分によって、濃度分布幅を算出する濃度分布幅算出部と、
前記絶対平均値を前記濃度分布幅で除することによって、合焦度または鮮明度を算出するパラメータ算出部と、
算出された合焦度または鮮明度と、予め定める閾値とを比較するパラメータ判定部とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学系の環境設定の適否を判定する際に、判定対象領域の二次微分画像のみから算出される値を用いて判定するのではなく、判定対象領域の二次微分画像の絶対平均値を、判定対象領域の濃度分布幅で除して得られる合焦度を用いて判定するので、すなわち正規化された合焦度を用いて判定するので、照明などの明るさによって合焦度が変動することを考慮して合焦度判定を行うことができ、精度良く読取対象表示を読取ることができるように光学系の環境設定を行うことができる。また、光学系の環境設定を行うユーザが異なるような場合があったとしても、読取精度のばらつきを低減することができる。
【0013】
また被写体に付された文字などの読取対象表示を検査する際に、判定対象候補領域の二次微分画像のみから算出される値を用いて判定するのではなく、判定対象領域の二次微分画像の絶対平均値を、判定対象領域の濃度分布幅で除して得られる鮮明度を用いて判定するので、すなわち正規化された鮮明度を用いて判定するので、照明などの明るさによって鮮明度が変動することを考慮して鮮明度判定を行うことができ、印刷された文字などの読取対象表示に対する異常を精度良く検出することができる。また、光学系の環境設定を行うユーザが異なるような場合があったとしても、検出精度のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置20を備える画像処理システム1の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】撮像装置10および照明装置30に対して予め行われる光学系の環境設定のフローチャートである。
【図3】図2のステップs3における合焦度に基づく調整結果の判定工程のフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る画像処理装置20の機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】二次微分フィルタである3×3画素のラプラシアンフィルタを示す図である。
【図6】濃度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る画像処理装置20aの機能的な構成を示すブロック図である。
【図8】被写体2に付された文字を検査するための検査工程のフローチャートである。
【図9】図8のステップa3における濃度分布幅を算出する工程のフローチャートである。
【図10】図8のステップa4における絶対平均値の算出工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置20を備える画像処理システム1の構成を簡略化して示すブロック図である。画像処理システム1は、被写体2に付されたバーコードシンボルおよび二次元コードシンボルなどのコードシンボル、ならびに文字(記号を含む)などを含む撮像対象領域を撮像し、デジタル画像データとして出力する撮像装置10と、撮像装置10から出力されたデジタル画像データに対して所定の画像処理を行う画像処理装置20と、撮像装置10によって撮像対象領域を撮像する際に、被写体2を照射する照明装置30と、表示画面を有し、撮像装置10によって撮像された撮像対象領域の画像などを表示する表示装置40と、撮像装置10および照明装置30に対して行われる光学系の環境設定(撮像条件の設定)のために、設定値などを入力するための入力装置50とを含んで構成される。
【0016】
このような構成を有する画像処理システム1は、たとえば工場の生産ラインに隣接して設けられ、被写体2である工業製品に付されたコードシンボルおよび文字などを自動的に読取るために、または工業製品に付されたコードシンボルおよび文字が適正に表示されているかを検査するために、好適に用いることができる。以下では、被写体2に付されたコードシンボルおよび文字などのように、画像処理システム1を用いて読取られるべき表示および画像処理システム1を用いて検査されるべき表示を総称して読取対象表示と記す場合がある。
【0017】
以下、画像処理システム1を構成する各装置について詳細に説明する。
撮像装置10は、光学レンズおよび該光学レンズによって結像された光の受光量をアナログ画像信号として出力する電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)を備えるCCDカメラ11と、CCDカメラ11から出力されたアナログ画像信号をデジタルデータに変換し、デジタル画像データとして出力するA/D(Analog/Digital)変換器12と、デジタル画像データを1フレームごとに格納可能なフレームメモリ13と、デジタル画像データを1フレームごとにフレームメモリ13に格納するとともに、表示装置40に画像を表示させるためにデジタル画像データをD/A(Digital/Analog)変換器15に出力するカメラコントローラ14と、カメラコントローラ14から出力されたデジタル画像データを表示装置40に応じたアナログ画像信号に変換して表示装置40に出力するD/A変換器15とを含んで構成される。
【0018】
CCDカメラ11は、図示しないが、光学レンズの焦点(フォーカス)を調整するためのフォーカス機構、絞りを調整するための絞り機構、および、CCDが光学レンズを通した光に露出する露光時間、すなわちシャッタ速度を調整するためのシャッタ機構をさらに備えている。これらの各機構は、入力装置50から入力された指令や設定値に基づき、後述するCPU21からの制御信号によって自動的に駆動するように構成されるとともに、調整用のつまみを備え、該つまみを手動で変位させることによって駆動するように構成されている。
【0019】
表示装置40は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどによって実現され、D/A変換器15から出力されたアナログ画像信号に基づき、画像を表示画面に表示する。
【0020】
入力装置50は、マウスなどのポインティングデバイスやキーボードによって実現され、指令や設定値を入力するために、ユーザによって操作される。
【0021】
画像処理装置20は、ハードウエアとして、CPU(Central Processing Unit)21と、RAM(Random Access Memory)22と、ROM(Read Only Memory)23と、I/O(Input/Output)コントローラ24とを含んで構成される。CPU21は、ROM23に記憶されている画像処理プログラムに基づいて、撮像装置10から出力されたデジタル画像データに対して、後述する合焦度判定または鮮明度判定を行うための所定の画像処理を実行するとともに、ROM23に記憶されている制御プログラムに基づいて、画像処理システム1全体の動作を制御する。処理中の画像データや演算中のデータなどは一時的にRAM22に記憶される。I/Oコントローラ24は、入力装置50および照明装置30の電源32などが接続され、これらの入出力データの制御を行う。
【0022】
照明装置30は、被写体2を照射するための光源31と、光源31に対して電力供給を行う電源32とを含んで構成される。電源32は、光源31に対して供給する電力量を調整可能に構成され、入力装置50から入力された指令や設定値に基づき、CPU21からの制御信号によって自動的に調整されるように構成されるとともに、調整用のつまみを備え、該つまみを手動で変位させることによって調整されるように構成されている。また、光源31には、たとえば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やタングステンランプなどが好適に用いられ、電源32から供給される電力量に応じた照射光量で光を出射する。
【0023】
画像処理装置20を備える画像処理システム1は、前述するように、工場の生産ラインにおいてベルトコンベヤなどの搬送手段によって移送されている各被写体(工業製品)2に付された読取対象表示を順次読取る、または読取対象表示を検査するためのシステムである。したがって、被写体2ごとに最適な焦点距離を自動的に設定するオートフォーカス方式を利用して撮像するようには構成されておらず、光学系の環境設定、すなわちCCDカメラ11におけるフォーカス調整、絞り調整およびシャッタ速度調整ならびに照明装置30における照射光量調整を予め行った上で、被写体2ごとに読取対象表示を含む撮像対象領域を撮像するように構成されている。なお、画像処理システム1は、所定位置に停止させた工業製品に付された読取対象表示を読取るため、または検査するために用いられてもよい。
【0024】
以下、図2〜図4を参照して、本実施形態に係る画像処理装置20を用いた光学系の環境設定について説明する。
【0025】
図2は、撮像装置10および照明装置30に対して予め行われる光学系の環境設定のフローチャートである。ステップs0で、光学系の環境設定をするための準備が終了すると、ステップs1に進む。ステップs1では、CCDカメラ11のシャッタ速度が、たとえば次のような方法で設定される。先ずユーザは、撮像されるべき被写体2が静止状態で撮像されるのか、または移動状態で撮像されるのかを、入力装置50を介して入力する。そして、静止状態で撮像される場合には、シャッタ速度をさらに入力することにより、シャッタ機構が駆動されてシャッタ速度が設定される。静止状態の被写体を撮像するときのシャッタ速度としては、たとえば、1/60秒または1/100秒が好適に用いられる。
【0026】
また、移動状態で撮像される場合には、被写体2の移動速度をさらに入力することにより、該移動速度に基づいてシャッタ速度が演算され、演算された値に基づいてシャッタ機構が駆動されてシャッタ速度が設定される。具体的には、RAM22に予め記憶されている画像処理システム1の仕様から、分解能と、撮像装置10の撮像画面領域に相当する移動許容量とを読出し、次式(1)によって、シャッタ速度が演算される。
シャッタ速度=移動速度/(分解能×移動許容量) …(1)
【0027】
シャッタ速度が設定されると、ステップs2に進む。
ステップs2では、読取対象表示が付されたテスト用の被写体2を撮像して得られたデジタル画像データを画像処理したときの処理結果、および表示画面に表示された読取対象表示を含む撮像対象領域の画像の目視などに基づいて、CCDカメラ11におけるフォーカス機構および絞り機構を駆動することによりフォーカス調整および絞り調整を行うとともに、光源31に供給する電力量を調整することにより照射光量の調整を行う。調整によってフォーカス、絞りおよび照射光量が所望の設定値に設定され、これらの設定が終了すると、ステップs3に進む。
【0028】
ステップs3では、ステップs2において調整されたフォーカス、絞りおよび照射光量の調整結果について、合焦の程度を表すパラメータである合焦度に基づいて、その適否を判定する。合焦度判定についての詳細は後述するが、調整結果が適当であると判定されるとステップs4に進み、調整結果が不適当であると判定されると、調整結果が適当であると判定されるまで、フォーカス、絞りおよび照射光量の調整が繰り返し行われる。ステップs4で、光学系の環境設定を終了する。
【0029】
図3は、図2のステップs3における合焦度に基づく調整結果の判定工程のフローチャートである。また図4は、本実施形態に係る画像処理装置20の機能的な構成を示すブロック図である。
【0030】
画像処理装置20は、概略位置検出部61と、二次微分画像生成部62と、絶対平均値算出部63と、濃度ヒストグラム生成部64と、濃度分布幅算出部65と、合焦度算出部66と、合焦判定部67とを含んで構成される。これらの各部61〜67は、CPU21がROM23に記憶されている画像処理プログラムを実行することによって実現される。各部61〜67の機能については、合焦度に基づく調整結果の判定工程の説明と併せて説明する。
【0031】
ステップs30で、図2のステップs2においてフォーカス、絞りおよび照射光量が所望の設定値に設定されたCCDカメラ11および照明装置30を使用して、テスト用の被写体2を撮像するための準備が終了すると、ステップs31に進む。
【0032】
ステップs31では、テスト用の被写体2が撮像装置10によって撮像される。このとき、実際の生産ラインにおいて被写体2が移動状態で撮像される場合には、テスト用の被写体2も同一の移動速度で移動させて撮像され、実際の生産ラインにおいて被写体2が所定の位置に停止させた状態で撮像される場合には、テスト用の被写体2も同一の位置に停止させた状態で撮像される。テスト用の被写体2における読取対象表示を含む撮像対象領域が撮像装置10によって撮像され、撮像装置10からその撮像対象領域に対応するデジタル画像データが出力されると、ステップs32に進む。
【0033】
ステップs32では、画像処理装置20の概略位置検出部61によって、撮像装置10によって生成されたデジタル画像データに基づき、被写体2に付された読取対象表示の概略位置が検出される。概略位置の検出方法は、周知の方法によって行うことができ、読取対象表示が文字である場合には、たとえばOCR(Optical Character Recognition)法によって実現することができる。また、読取対象表示がコードシンボルである場合には、ラベリング処理法およびエッジ方向ヒストグラム法などによって実現することができる。さらに、撮像対象領域内に複数の文字が含まれている場合には、1文字ごとに概略位置が検出され、撮像対象領域内にコードシンボルと文字とが含まれている場合には、それぞれについて概略位置が検出される。概略位置が検出されると、ステップs33に進む。
【0034】
ステップs33では、画像処理装置20の二次微分画像生成部62によって、撮像対象領域に対応するデジタル画像データから、概略位置検出部61によって概略位置が検出された1つのコードシンボルまたは文字と、そのコードシンボルまたは文字の周辺の背景とを含む判定対象領域の画像データが抽出される。以下では、判定対象領域の画像データが、大きさがm×n(ただし、m,nは正の整数)画素の矩形領域の画像データであるものとして説明する。
【0035】
判定対象領域の画像データが抽出されると、さらに、RAM22に予め記憶されている二次微分フィルタを用いて、判定対象領域内における各画素が二次微分される。図5は、二次微分フィルタである3×3画素のラプラシアンフィルタを示している。図5(a)は、4近傍ラプラシアンフィルタLF1を示し、図5(b)および図5(c)は、それぞれ8近傍ラプラシアンフィルタLF2,LF3を示している。図5に示すようなラプラシアンフィルタを用いて二次微分することにより、二次微分された各画素によって構成される二次微分画像が生成される。二次微分画像が生成されると、ステップs34に進む。
【0036】
ステップs34では、画像処理装置20の絶対平均値算出部63によって、二次微分画像生成部62によって生成されたm×n画素の二次微分画像の各画素について、二次微分値の絶対値が算出され、さらに、各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって絶対平均値が算出される。具体的には、各画素の二次微分値をUij(ただし、i=1,2,…,m−1,m、および、j=1,2,…,n−1,n)とし、絶対平均値をMとすると、次式(2)によって、絶対平均値Mが算出される。
【0037】
【数1】

【0038】
絶対平均値Mが算出されると、ステップs35に進む。
ステップs35では、画像処理装置20の濃度ヒストグラム生成部64によって、m×n画素の判定対象領域に関し、濃度頻度をヒストグラムで表した濃度ヒストグラムが生成される。図6は、濃度ヒストグラムの一例を示す図である。本実施形態では、前述するように、判定対象領域が、読取対象表示に対応する表示領域と、背景に対応する背景領域とから成り、したがって、図6に示すような双峰性の濃度ヒストグラムが生成される。濃度ヒストグラムが生成されると、ステップs36に進む。
【0039】
ステップs36では、画像処理装置20の濃度分布幅算出部65によって、濃度ヒストグラム生成部64によって生成された濃度ヒストグラムに基づいて、m×n画素の判定対象領域についての濃度分布幅が算出される。
【0040】
具体的には、先ず、判別分析法を用いることにより、ある濃度値kを閾値として濃度ヒストグラムを2つのクラスに分けたときの2つのクラス間の分散が最大となるような濃度値kmaxを決定する。以下では、この濃度値kmaxを、2値化閾値と称することにする。
【0041】
たとえば、濃度範囲が0〜D(たとえば、D=255)であるとき、濃度範囲が0〜kのクラスをC0とし、濃度範囲がk+1〜DのクラスをC1とする。また、その濃度範囲における各濃度値Xに対する度数、すなわち画素数がH(X)であるとする。このとき、クラスC0の度数平均をu0、クラスC0の発生確率をw0、クラスC1の度数平均をu1、クラスC1の発生確率をw1、クラスC0とクラスC1との間の分散をSとすると、分散Sは、次式(3)によって濃度値kの関数として得られる。
=w0×w1×(u1−u0) …(3)
【0042】
ただし、
【数2】

【0043】
この分散Sを、濃度値kを変化させて、すなわち0〜Dまでの各濃度値kに対して計算することにより、各濃度値kに対する分散Sの値が算出される。このようにして算出された分散Sのうち、分散Sが最大となるときの濃度値kが、2値化閾値kmaxとして決定される。
【0044】
このようにして2値化閾値kmaxが決定されると、この2値化閾値kmaxによって、濃度ヒストグラムが低輝度側(濃度範囲が0〜kmax)のクラスC0’と高輝度側(濃度範囲がkmax+1〜D)のクラスC1’とに分けられる。このとき、クラスC0’の平均濃度をf0、クラスC1’の平均濃度をf1、濃度分布幅をBとするとき、次式(4)によって、濃度分布幅Bが算出される。
B=f1−f0 …(4)
【0045】
ただし、
【数3】

【0046】
濃度分布幅Bが算出されると、ステップs37に進む。
ステップs37では、画像処理装置20の合焦度算出部66によって、絶対平均値算出部63によって算出された絶対平均値Mを、濃度分布幅算出部65によって算出された濃度分布幅Bで除することによって、合焦の程度を表す合焦度Qが算出される。具体的には、次式(5)によって、合焦度Qが算出される。
Q=M÷B×10000 …(5)
【0047】
合焦度Qが算出されると、ステップs38に進む。
ステップs38では、画像処理装置20の合焦判定部67によって、合焦度算出部66によって算出された合焦度Qに基づいて、合焦度判定が行われる。具体的には、算出された合焦度Qと、予め設定されてRAM22に記憶されている合焦度判定用の閾値Q0とが比較され、Q≧Q0であると判定されると、合焦度Qが適正であるとしてステップs40に進み、Q<Q0であると判定されると、合焦度Qが不適正であるとしてステップs39に進む。合焦度判定用の閾値Q0は、たとえば経験則によって得られた値が予め設定され、ユーザが入力装置50を介してその値を入力することにより、RAM22に記憶される。
【0048】
ステップs39では、図2におけるステップs2と同様に、たとえばテスト用の被写体2を撮像して得られたデジタル画像データを画像処理したときの処理結果、および表示画面に表示された読取対象表示を含む撮像対象領域の画像の目視などに基づいて、再度、CCDカメラ11におけるフォーカス機構および絞り機構を駆動することによりフォーカス調整および絞り調整を行うとともに、光源31に供給する電力量を調整することにより照射光量の調整を行う。調整によってフォーカス、絞りおよび照射光量の所望の設定値に設定されると、ステップs31に進む。
【0049】
このように合焦度判定において合焦度Qが適正であると判定されるまで、フォーカス、絞りおよび照射光量の調整が行われ、合焦度Qが適正であると判定されると、ステップs40で合焦度に基づく調整結果の判定工程を終了する。
【0050】
このように、本実施形態によれば、光学系の環境設定の適否を判定する際に、判定対象領域の二次微分画像のみから算出される値を用いて判定するのではなく、判定対象領域の二次微分画像の絶対平均値Mを、判定対象領域の濃度分布幅Bで除して得られる合焦度Qを用いて判定するので、すなわち正規化された合焦度Qを用いて判定するので、照明などの明るさによって合焦度が変動することを考慮して合焦度判定を行うことができ、精度良く読取対象表示を読取ることができるように光学系の環境設定を行うことができる。また、光学系の環境設定を行うユーザが異なるような場合があったとしても、読取精度のばらつきを低減することができる。
【0051】
次に、他の実施形態に係る画像処理装置20aを備える画像処理システム1について説明する。画像処理システム1の構成は、図1に示す前述の画像処理システム1と同様の装置構成によって構成されるため、各装置についての重複する説明は省略する。本実施形態に係る画像処理装置20aを備える画像処理システム1は、画像処理プログラムを実行することによって実現される画像処理装置の機能的な構成において、前述する画像処理システム1相違する。なお、以下では、前述する画像処理システム1と同様の構成については、同一の参照符を付して説明する。
【0052】
図7は、本実施形態に係る画像処理装置20aの機能的な構成を示すブロック図である。画像処理装置20aは、概略位置検出部71と、検査対象マスク画像生成部72と、濃度分布幅検出対象画像生成部73と、濃度ヒストグラム生成部74と、濃度分布幅算出部75と、二次微分画像生成部76と、鮮明度検出候補画像生成部77と、鮮明度検出画像生成部78と、絶対平均値算出部79と、鮮明度算出部80と、鮮明度判定部81とを含んで構成される。これらの各部71〜81は、CPU21がROM23に記憶されている画像処理プログラムを実行することによって実現される。各部71〜81の機能については、後述する読取対象表示の検査工程の説明と併せて説明する。
【0053】
本実施形態に係る画像処理装置20aを備える画像処理システム1は、ベルトコンベヤなどの搬送手段によって移送されてくる被写体(工業製品)2に付された読取対象表示が適正に表示されているかを検査するためのシステムであり、特に、適正に表示されているかを検査するために好適に用いられる。
【0054】
以下、図7〜図10を参照して、本実施形態に係る画像処理装置20aを用いた読取対象表示の検査工程について、読取対象表示が文字であるとして説明する。
【0055】
図8は、被写体2に付された文字を検査するための検査工程のフローチャートである。ステップa0で、フォーカス、絞りおよび照射光量が所定の設定値に設定されたCCDカメラ11および照明装置30を使用して、検査対象の文字が付された被写体2を撮像するための準備が終了すると、ステップa1に進む。
【0056】
ステップa1では、検査対象の被写体2が撮像装置10によって撮像される。検査対象の被写体2における文字を含む撮像対象領域が撮像装置10によって撮像され、撮像装置10からその撮像対象領域に対応するデジタル画像データが出力されると、ステップa2に進む。
【0057】
ステップa2では、画像処理装置20aの概略位置検出部71によって、撮像装置10によって生成されたデジタル画像データに基づき、被写体2に付された文字の概略位置が検出される。概略位置の検出方法は、前述するように周知の方法によって行うことができ、たとえばOCR法によって実現することができる。また、撮像対象領域内に複数の文字が含まれている場合には、1文字ごとに概略位置が検出される。概略位置が検出されると、ステップa3に進む。
【0058】
ステップa3では、濃度分布幅が算出される。図9は、図8のステップa3における濃度分布幅を算出する工程のフローチャートである。ステップa30で、濃度分布幅を算出するための処理が開始されて、ステップa31に進む。
【0059】
ステップa31では、画像処理装置20aの検査対象マスク画像生成部72によって、撮像対象領域に対応するデジタル画像データから、概略位置検出部71によって概略位置が検出された1つの文字と、その文字の周辺の背景とを含む判定対象候補領域の画像データが抽出される。以下では、判定対象候補領域の画像データが、大きさがm×n(ただし、m,nは正の整数)画素の矩形領域の画像データであるものとして説明する。
【0060】
判定対象候補領域の画像データが抽出されると、さらに、判定対象候補領域内における各画素について2値化処理される。このとき、文字を白、背景を黒とすることによって2値化処理される。
【0061】
2値化処理するための閾値は、ユーザが入力装置50を介して入力することにより、予めRAM22に記憶されている固定の数値によって与えられてもよく、前述する判別分析法を用いることによって算出される2値化閾値kmaxによって与えられてもよい。2値化処理が行われることによって、2値化された各画素によって構成される2値化画像が生成される。2値化画像が生成されると、ステップa32に進む。
【0062】
ステップa32では、検査対象マスク画像生成部72によって、ステップa31において生成された判定対象候補領域の2値化画像に対し、膨張処理が行われる。このとき、膨張処理が行われる回数(膨張回数)N1は、ユーザが入力装置50を介して入力することにより、予めRAM22に記憶される。膨張回数N1は、たとえば2回である。膨張処理が行われることによって、膨張画像が生成されると、ステップa33に進む。
【0063】
ステップa33では、検査対象マスク画像生成部72によって、ステップa31において生成された判定対象候補領域の2値化画像に対し、収縮処理が行われる。このとき、収縮処理が行われる回数(収縮回数)N2は、ユーザが入力装置50を介して入力することにより、予めRAM22に記憶される。収縮回数N2は、たとえば2回である。収縮処理が行われることによって、収縮画像が生成されると、ステップa34に進む。
【0064】
ステップa34では、検査対象マスク画像生成部72によって、ステップa32において生成された膨張画像と、ステップa33において生成された収縮画像との差分を計算することによって、検査対象の文字の輪郭領域に対応する輪郭画像が生成される。以下では、この輪郭画像をマスク画像と称する場合がある。具体的には、次式(6)によって、マスク画像が生成される。
マスク画像=膨張画像−収縮画像 …(6)
【0065】
マスク画像が生成されると、ステップa35に進む。
ステップa35では、画像処理装置20aの濃度分布幅検出対象画像生成部73によって、ステップa31において抽出された判定対象候補領域の画像と、ステップa34において生成されたマスク画像との論理積演算を行うことによって、濃度分布幅検出対象画像が生成される。この濃度分布幅検出対象画像は、判定対象候補領域の画像から、判定対象領域である検査対象の文字の輪郭領域内における画素を抽出したものに対応する。具体的には、次式(7)によって、濃度分布幅検出対象画像が生成される。
濃度分布幅検出対象画像=候補領域の画像&マスク画像 …(7)
【0066】
濃度分布幅検出対象画像が生成されると、ステップa36に進む。
ステップa36では、画像処理装置20aの濃度ヒストグラム生成部74によって、濃度分布幅検出対象画像について、すなわち判定対象領域に関する濃度ヒストグラムが生成される。濃度ヒストグラムが生成されると、ステップa37に進む。
【0067】
ステップa37では、画像処理装置20aの濃度分布幅算出部75によって、濃度ヒストグラム生成部74によって生成された濃度ヒストグラムに基づいて、判定対象領域についての濃度分布幅が算出される。具体的には、先ず、前述と同様に、判別分析法を用いることにより、2値化閾値kmaxを決定する。2値化閾値kmaxが決定され、前述と同様に、2値化閾値kmaxによって、濃度ヒストグラムが低輝度側のクラスC0’と高輝度側のクラスC1’とに分けられると、クラスC0’の平均濃度をf0、クラスC1’の平均濃度をf1、濃度分布幅をBとして、前記の式(4)によって、濃度分布幅Bが算出される。濃度分布幅Bが算出されると、ステップa38に進む。ステップa38で、濃度分布幅Bを算出するための処理が終了する。再び図8に戻って、濃度分布幅Bが算出されると、ステップa4に進む。
【0068】
ステップa4では、m×n画素の判定対象候補領域内における判定対象領域(文字の輪郭領域)の二次微分画像が生成されて、その二次微分画像について絶対平均値が算出される。図10は、図8のステップa4における絶対平均値の算出工程のフローチャートである。ステップa40で、絶対平均値を算出するための処理が開始されて、ステップa41に進む。
【0069】
ステップa41では、画像処理装置20aの二次微分画像生成部76によって、検査対象マスク画像生成部72によって抽出された判定対象候補領域の画像データに対し、平滑化フィルタ、すなわち平均値フィルタまたはガウシアンフィルタ(加重平均フィルタ)を用いることによって、平滑化処理が行われノイズが除去される。平滑化処理が行われると、ステップa42に進む。
【0070】
ステップa42では、二次微分画像生成部76によって、平滑化処理が行われた判定対象候補領域の画像データの各画素が、前述と同様に、RAM22に予め記憶されているラプラシアンフィルタを用いて二次微分される。二次微分された各画素によって構成される二次微分画像が生成されると、ステップa43に進む。
【0071】
ステップa43では、画像処理装置20aの鮮明度検出候補画像生成部77によって、二次微分画像生成部76によって生成された判定対象候補領域の二次微分画像と、検査対象マスク画像生成部72によって生成された判定対象領域(文字の輪郭領域)に対応するマスク画像との論理積演算を行うことによって、判定対象領域内における各画素が二次微分されている鮮明度検出候補画像が生成される。具体的には、次式(8)によって、鮮明度検出候補画像が生成される。
鮮明度検出候補画像=判定対象候補領域の二次微分画像&マスク画像 …(8)
【0072】
鮮明度検出候補画像が生成されると、ステップa44に進む。
ステップa44では、画像処理装置20aの鮮明度検出画像生成部78によって、鮮明度検出候補画像生成部77によって生成された鮮明度検出候補画像の各画素のうち、ゼロクロスに寄与する画素を抽出することによって、鮮明度検出画像が生成される。すなわち、本実施形態では、判定対象領域の二次微分画像(鮮明度検出候補画像)の各画素から、さらに不要な画素を取り除くことにより、新たな判定対象領域に対応する二次微分画像(鮮明度検出画像)が生成される。
【0073】
具体的には、鮮明度検出候補画像の各画素について、注目画素の二次微分値と該注目画素に隣接する隣接8近傍の各画素の二次微分値との積をそれぞれ計算し、各積算値(隣接する画素が8つある場合には、8つの積算値)のうち1つでも負の値となる積算値があれば、その注目画素を鮮明度検出画像を構成する画素、すなわちゼロクロスに寄与する画素として判定し、逆に、負の値となる積算値が1つもなければ、その注目画素を鮮明度検出画像を構成する画素でないと判定する。このようにして、鮮明度検出候補画像の各画素から、ゼロクロスに寄与する画素だけを抽出することによって、鮮明度検出画像が生成される。鮮明度検出画像が生成されると、ステップa45に進む。
【0074】
ステップa45では、画像処理装置20aの絶対平均値算出部79によって、鮮明度検出画像生成部78によって生成された鮮明度検出画像の各画素について、前述と同様に、二次微分値の絶対値が算出され、さらに、その各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって絶対平均値が算出される。絶対平均値Mが算出されると、ステップa46に進む。ステップa46で、絶対平均値Mを算出するための処理が終了する。再び図8に戻って、絶対平均値Mが算出されると、ステップa5に進む。
【0075】
ステップa5では、画像処理装置20aの鮮明度算出部80によって、絶対平均値算出部79によって算出された絶対平均値Mを、濃度分布幅算出部75によって算出された濃度分布幅Bで除することによって、検査対象の文字の鮮明の程度を表す鮮明度Rが算出される。具体的には、次式(9)によって、鮮明度Rが算出される。
R=M÷B×10000 …(9)
【0076】
鮮明度Rが算出されると、ステップa6に進む。
ステップa6では、画像処理装置20aの鮮明度判定部81によって、鮮明度算出部80によって算出された鮮明度Rに基づいて、鮮明度判定が行われる。具体的には、算出された鮮明度Rと、予め設定されてRAM22に記憶されている鮮明度判定用の閾値R0とが比較され、R≧R0であると判定されると、鮮明度Rが適正であるとしてステップa37に進み、R<R0であると判定されると、鮮明度Rが不適正であるとしてステップa38に進む。鮮明度判定用の閾値R0は、たとえば経験則によって得られた値が予め定められ、ユーザが入力装置50を介してその値を入力することにより、RAM22に記憶される。
【0077】
ステップa37では、鮮明度Rが適正である、すなわち印刷された文字に異常なしと判定されたので、検査工程を終了する。また、ステップa38では、鮮明度Rが不適正である、すなわち印刷された文字に異常ありと判定されたので、たとえば表示画面を介して、ユーザに異常があったことを報知して、ステップa39に進む。ステップa39で、検査工程を終了する。
【0078】
このように、本実施形態によれば、被写体2に付された文字などの読取対象表示を検査する際に、判定対象候補領域の二次微分画像のみから算出される値を用いて判定するのではなく、判定対象領域の二次微分画像の絶対平均値Mを、判定対象領域の濃度分布幅Bで除して得られる鮮明度Rを用いて判定するので、すなわち正規化された鮮明度Rを用いて判定するので、照明などの明るさによって鮮明度が変動することを考慮して鮮明度判定を行うことができ、印刷された文字などの読取対象表示に対する異常を精度良く検出することができる。また、光学系の環境設定を行うユーザが異なるような場合があったとしても、検出精度のばらつきを低減することができる。
【0079】
また、本実施形態では、読取対象表示の輪郭領域に対応するマスク画像によって抽出された鮮明度検出候補画像から、さらに二次微分値の小さな累積誤差の影響を避けるために、ゼロクロスに寄与する画素だけを抽出することにより鮮明度検出画像を生成し、この鮮明度検出画像から絶対平均値を算出しているので、鮮明度判定の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像処理システム
10 撮像装置
11 CCDカメラ
20 画像処理装置
21 CPU
22 RAM
23 ROM
30 照明装置
31 光源
32 電源
40 表示装置
50 入力装置
61 概略位置検出部
62 二次微分画像生成部
63 絶対平均値算出部
64 濃度ヒストグラム生成部
65 濃度分布幅算出部
66 合焦度算出部
67 合焦判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の読取対象表示を含む撮像対象領域を撮像することによって、読取対象表示を読取る光学系の合焦度または読取対象表示の鮮明度を判定するための画像処理方法であって、
読取対象表示および該読取対象表示の周辺の背景を含む判定対象領域内の各画素を二次微分することにより二次微分画像を生成する二次微分画像生成工程と、
前記二次微分画像における各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって、絶対平均値を算出する絶対平均値算出工程と、
前記判定対象領域の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成工程と、
前記濃度ヒストグラムを高輝度側のクラスと低輝度側のクラスとに分けるための閾値を算出し、該閾値によって分けられた2つのクラスの各平均濃度の差分によって、濃度分布幅を算出する濃度分布幅算出工程と、
前記絶対平均値を前記濃度分布幅で除することによって、合焦度または鮮明度を算出するパラメータ算出工程と、
算出された合焦度または鮮明度と、予め定める閾値とを比較するパラメータ判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記二次微分画像生成工程において生成された二次微分画像の各画素から、ゼロクロスに寄与する画素だけを抽出するゼロクロス画素抽出工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
所定の読取対象表示を含む撮像対象領域を撮像することによって、読取対象表示を読取る光学系の合焦度または読取対象表示の鮮明度を判定するための画像処理装置であって、
読取対象表示および該読取対象表示の周辺の背景を含む判定対象領域内の各画素を二次微分することにより二次微分画像を生成する二次微分画像生成部と、
前記二次微分画像における各画素の二次微分値の絶対値を相加平均することによって、絶対平均値を算出する絶対平均値算出部と、
前記判定対象領域の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成部と、
前記濃度ヒストグラムを高輝度側のクラスと低輝度側のクラスとに分けるための閾値を算出し、該閾値によって分けられた2つのクラスの各平均濃度の差分によって、濃度分布幅を算出する濃度分布幅算出部と、
前記絶対平均値を前記濃度分布幅で除することによって、合焦度または鮮明度を算出するパラメータ算出部と、
算出された合焦度または鮮明度と、予め定める閾値とを比較するパラメータ判定部とを含むことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−112810(P2011−112810A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268138(P2009−268138)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】