説明

画像処理方法及び画像処理装置

【課題】オートアイリスによる背景画像からの現画像の輝度変化量を基に作成した輝度補正値に基づいて現画像を輝度毎に補正するときに、背景領域に侵入した異物に起因する適正でない輝度補正値を除去する。
【解決手段】画像処理装置は、まず背景画像の各輝度について、現画像との輝度差分値の度数を算出する(図3A)。次に背景画像の各輝度の画素数と各輝度の現画像との差分値の合計を用いて背景画像の各輝度の現画像との輝度差分の平均値を算出し、この平均値を基に、仮の補正テーブルを作成する(図3B)。次に近似関数及び係数を設定し、関数に仮の補正テーブルの輝度値及び輝度補正値を代入し、係数を未知数とした方程式を解いて係数を求める。求めた係数と近似関数を用いて、補正テーブルを作成する(図3C)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートアイリスを有するカメラで取得した画像の輝度補正を行う画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域をカメラで撮影して取得した画像を処理して監視領域内の異物検出を行う際、一般に、検出対象物体と背景画像を含む入力画像から、背景画像を引くことにより検出対象物体の像を得る背景差分法や、現在入力されている画像フレームと前回入力された画像フレームとの差分を計算し、差分値の大きい領域を移動物体として検出するフレーム間差分法が用いられている。
【0003】
他方、現在の監視カメラは、被写体の明るさに応じてレンズの絞りや電子シャッタを制御することで入射光量を自動的に調整するオートアイリスを有している。オートアイリスが働くことで、例えば被写体が暗過ぎる場合、図7に示すように、入力明るさに対する出力輝度値の特性曲線が点線で示すオートアイリス動作前の特性曲線から実線で示すオートアイリス動作後の特性曲線に変化する。これにより、同じ入力明るさに対する出力輝度値が高くなるため、監視カメラの画像を明るくすることができる。このオートアイリスにより、特性曲線が左右に移動(図の場合は左方に移動)し、画像全体の平均輝度が変化する。
【0004】
ここで問題となるのは、二つの画像間で背景差分やフレーム間差分を行う際に、比較する2画像間において撮影するカメラでオートアイリスが働いた場合には、異物検出が困難になることである。即ち、オートアイリスにより明るさが変化することで、異物が存在しない領域(背景)であっても差分が生じるため、背景を誤って異物として検出しまうことがある。
【0005】
そこで、本願の出願人は、オートアイリスが異物検出に与える影響を補正する機能を備えた画像処理方法及び画像処理装置を提案した(特許文献1参照)。この画像処理方法及び画像処理装置によれば、まず現画像と背景画像とで通常の背景差分を行い、オートアイリスによる影響を判断する。より詳しくは、背景画像と現画像との同一画像座標における差分画像を取得し、その差分画像と背景画像とから、背景画像の輝度毎に差分画像の輝度の平均値を算出し、差分画像における輝度値が所定の値を超える画素数の割合が所定の値を超えるとき、オートアイリスが働いたと判断する。そして、オートアイリスによる輝度変化量から作成した輝度補正値、即ち前述した差分画像の輝度の平均値を基に現画像を輝度毎に補正することで輝度補正済み現画像を作成する。次に輝度補正済み現画像と背景画像とで背景差分を行い、この背景差分画像を用いて異物検出を行う。
【0006】
図8A〜Cは、特許文献1に記載された画像処理方法及び画像処理装置において、輝度補正済み現画像を作成するための補正テーブルの内容を示す図である。これらの図において、横軸は補正対象画像(現画像)の輝度値であり、縦軸は輝度補正値である。この輝度補正値は輝度を下げる量を示す。
【0007】
図8Aに示すように、被写体が暗いためオートアイリスにより現画像の輝度が上がった場合は、輝度補正値により現画像の輝度値を下げる。逆に、被写体が明るいためオートアイリスにより現画像の輝度が下がった場合は、輝度補正値により現画像の輝度値を上げる。図8Bに、複数の異なるオートアイリス幅(オートアイリスによる輝度変化量)に対応する補正テーブルを示す。
【0008】
特許文献1に記載された画像処理方法及び画像処理装置によれば、このような補正テーブルにより、現画像の輝度値を補正した輝度補正済み現画像と背景画像とから背景差分画像を作成し、この背景差分画像を用いて異物検出を行うことで、オートアイリスが働いたときでも安定した異物検出が可能である。
【0009】
しかしながら、この画像処理方法及び画像処理装置では、背景画像の輝度値毎にオートアイリスによる輝度補正値を算出しているため、特定の輝度値の背景領域に同領域面積の大半を占めるような大きさであり、かつ前記特定の輝度値との輝度差が所定値を超える異物が進入した場合、図8Cに示すように、その輝度値における輝度補正値は誤った値が算出される。各輝度値に対する輝度補正値はカメラの入出力特性により一定ではない(共通ではない)ため、全輝度値にわたって輝度補正値の平均値を用いるなどの単純な手法ではカバーすることができない。
【0010】
このようにオートアイリスによる輝度補正値が誤った値になると、異物が侵入したにもかかわらず、オートアイリスによる影響であると勘違いしてしまい、異物を検出できなくなるおそれがある。また、同じ輝度の背景の中で異物が無い部分が異物であると判断される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−246681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、オートアイリスによる背景画像からの現画像の輝度変化量を基に作成した輝度補正値に基づいて現画像を輝度毎に補正するときに、背景領域に侵入した異物に起因する適正でない輝度補正値を除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像処理方法は、所定のエリアを撮影して取得した現画像と、予め当該エリアを撮影して取得した背景画像とから背景差分画像を取得する工程と、前記背景差分画像内における差分値が所定の値を超える画素数の割合が所定の値を超えるとき、前記背景画像の各輝度に対する輝度差分値の統計情報を算出する工程と、当該統計情報を基に現画像の各輝度値と輝度補正値との関係を示す仮の補正テーブルを作成する工程と、当該仮の補正テーブルにおいて、輝度値の変化量に対する輝度補正値の変化量が所定値を超える輝度補正値を当該所定値以下の輝度補正値に書き換えることで、補正テーブルを作成する工程と、当該補正テーブルを用いて、前記現画像の輝度値を補正する工程とを有する画像処理方法である。
本発明の画像処理装置は、所定のエリアを撮影して取得した現画像と、予め当該エリアを撮影して取得した背景画像とから背景差分画像を作成する差分画像作成部と、前記背景差分画像内における差分値が所定の値を超える画素数の割合が所定の値を超えるとき、前記背景画像の各輝度に対する輝度差分値の統計情報を算出する輝度差分統計情報算出部と、当該統計情報を基に現画像の各輝度値と輝度補正値との関係を示す仮の補正テーブルを作成する仮補正テーブル作成部と、当該仮の補正テーブルにおいて、輝度値の変化量に対する輝度補正値の変化量が所定値を超える輝度補正値を当該所定値以下の輝度補正値に書き換えることで、補正テーブルを作成する補正テーブル作成部と、当該補正テーブルを用いて、前記現画像の輝度値を補正する画像補正部とを有する画像処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オートアイリスによる背景画像からの現画像の輝度変化量を基に作成した輝度補正値に基づいて現画像を輝度毎に補正するときに、背景領域に侵入した異物に起因する適正でない輝度補正値を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の画像処理装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態の画像処理装置により算出される背景画像のある一つの輝度に対する現画像との差分値の度数の一例、仮の補正テーブルの一例、及び補正テーブルの一例を示す図である。
【図4】オートアイリスと輝度補正量との関係を示す図である。
【図5】近似関数に実際の離散的なデータを入力し、連立方程式の解を求めることで作成した補正関数の一例を示す図である。
【図6】14個の基底を用いた場合の入力データと補正関数の一例を示す図である。
【図7】オートアイリスを説明するための図である。
【図8】オートアイリスが異物検出に与える影響を補正する機能を備えた従来の画像処理装置及び画像処理方法における補正テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
〈画像処理装置のブロック図〉
図1は、本発明の実施形態の画像処理装置のブロック図である。
【0017】
この画像処理装置10は、装置全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に接続され、例えば本画像処理を実行するためのプログラムなどを格納したROM(Read Only Memory)102と、CPU100の処理に必要なデータやプログラムなどを一時的に記憶するワークエリアとなるRAM(Random Access Memory)104と、異物検知のための監視領域の背景画像や現画像を撮影する、例えばオートアイリス付きのCCD(Charge Coupled Device)カメラ等の外部機器や、図示しないA/D変換器などの外部機器と接続するための外部機器インターフェース106と、撮影された背景画像を格納する背景画像記憶部108aと現画像を格納する現画像記憶部108bとを備えた記憶部108と、オートアイリスに起因する背景画像と現画像との二画像の輝度差の影響の有無を判断するオートアイリス影響判断部110と、上記二画像の輝度差分の平均値を算出する輝度差分平均値算出部112と、算出された輝度差分の平均値から後述する仮の補正テーブルを作成する仮補正テーブル作成部114と、作成した仮の補正テーブルの近似関数の係数について最小二乗法などによるフィッティングを行うフィッティング部116と、フィッティングの結果を用いて補正テーブルを作成する補正テーブル作成部118と、表示部120と、補正テーブルに基づいて現画像を補正する画像補正部122と、上記二画像の差分画像を作成する差分画像作成部130とを備えている。
【0018】
ここで、オートアイリス影響判断部110、輝度差分平均値算出部112、仮補正テーブル作成部114、フィッティング部116、補正テーブル作成部118と、画像補正部122、及び差分画像作成部130は、ROMに記憶されているプログラムやデータをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能に対応する機能ブロックである。
【0019】
〈画像処理装置の動作〉
図2は、本実施形態の画像処理装置10の動作を示すフローチャートである。このフローチャートはRAM104に格納したプログラムを起動してCPU100の制御の下で実行される。
【0020】
まず、CCDカメラで取得した画像を外部機器インターフェース106経由で入力し、現画像記憶部108bに記憶する(ステップS1)。次いで、差分画像作成部130により、現画像記憶部108bに記憶されている現画像と予め入力されて背景画像記憶部108aに記憶されている背景画像との差分画像である背景差分画像を作成する(ステップS2)。
【0021】
次に、オートアイリス影響判断部110は、背景差分画像と背景画像とを用いて、オートアイリスの影響があるか否かの判断を行う(ステップS3)。この判断は例えば以下の手順で行う。まず、背景画像と現画像との輝度の差分値がある閾値を超える画素の数を調べる。次に、その画素数の全画素数に対する割合(%)を調べ、その割合がある閾値を超えている場合はオートアイリスの影響があると判断する。
【0022】
オートアイリスの影響があると判断した場合は(ステップS3:Yes)、仮補正テーブル作成部114が仮の補正テーブルを作成する(ステップS4)。
【0023】
仮の補正テーブルは以下の手順により作成される。
まず、輝度差分平均値算出部112は、背景画像記憶部108aに記憶された背景画像の各輝度の画素数を算出して例えばRAM104に設けた記憶領域に格納する。図3Aは、背景画像のある一つの輝度に対する現画像との差分値の度数の一例を示す図である。
【0024】
続いて、背景画像の各輝度の現画像との差分値の合計を取得して上記記憶領域に格納し、さらに、背景画像の各輝度の画素数と各輝度の現画像との差分値の合計を用いて背景画像の各輝度の現画像との輝度差分の平均値を算出する。
【0025】
次に仮補正テーブル作成部114は、輝度差分平均値算出部112により算出された各輝度と輝度差分の平均値との対応関係を示す情報を作成し、仮補正テーブルとして例えば記憶部108に格納する。図3Bは仮補正テーブルの一例を示す図である。
【0026】
図示のように、横軸の輝度値と縦軸の輝度補正値との関係を示す輝度補正特性は、全体的には輝度値の変化に対する輝度補正値の変化が連続的である。即ち、輝度値を1段階(1/255)変化させたときの輝度補正値の変化量(輝度補正値の差分値)は単調に増加又は減少する。しかし、特定の輝度値の背景領域に同領域面積の大半を占めるような大きさであり、かつ前記特定の輝度値との輝度差が所定値を超える異物が侵入した場合、その輝度値における輝度補正値は誤った値が算出され、輝度補正値が急激に変化する。換言すれば、輝度補正値の差分値が大きくなる。
【0027】
そこで、本実施形態の画像処理装置10では、フィッティング部116がフィッティングを行うことで(ステップS5)、差分値が所定値を超える輝度補正値を除去し、そのフィッティングの結果に基づいて、補正テーブル作成部118が補正テーブルを作成する(ステップS6)。
【0028】
まずフィッティング部116が実行するフィッティングについて説明する。フィッティング部116は、CCDカメラの入出力特性から推測した一つの近似関数fをROM102から読み出すとともに、近似関数fに乗算する係数aを設定する。
【0029】
図4を用いて具体的に説明する。一般的な入出力特性下でオートアイリスが行われ、オートアイリス前の曲線201がオートアイリスにより曲線202に移動した場合、背景画素の輝度値毎の補正量は曲線203のようになる。なお、実際には輝度値は離散的であるため、入出力特性及び補正量は曲線201〜203をサンプルした値であり、オートアイリスによる輝度変化量、及び補正量は図に矢印で示すものとなる。このオートアイリスは画像が明るくなった場合のものであるが、画像が暗くなった場合も同様に操作する。
【0030】
図4の曲線203、即ち補正量の矢印の先端の包絡線が必要となる近似関数fである。ただし、前述したとおり、近似関数fは輝度毎の離散的なもので十分なので、数式ではなくテーブルとして持つ。下記の表1は、近似関数fの輝度値と補正値(図4の曲線203の補正量)の一例である。
【0031】
【表1】

【0032】
次に、オートアイリスによる影響に対する補正値がこの近似関数fの実数倍であると仮定し(オートアイリス幅が比較的小さい場合は仮定可)、その実数をaとし、補正関数Y=a×y=a×f(x)に対して、仮の補正テーブルにおける輝度値をx、輝度補正値をyとして代入する。次に係数aを未知数として連立方程式を立て、最小二乗法を用いて連立方程式を解くことでaを求める。
【0033】
即ち、表1における輝度値0、1、・・・255に対する補正値−2、−4、・・・0が、下記の表2に示すように、それぞれf(0)、f(1)、・・・f(255)となるから、下記の式[1]に示すように、最大256個の連立方程式が成り立つ。
【0034】
【表2】

【0035】
【数1】

【0036】
下記の式[2]〜[6]に示すように、式[1]を行列表記に変えて未知数aを求めることで、最小二乗法により補正関数Y=a×f(x)を求めることができる。
【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
【数6】

【0042】
なお、式[6]を用いる代わりに普通に最小二乗法を用いてaを求めることもできるので、説明する。ある点xにおける残差をdxとすると、
dy=y−a・f(x)
である。
【0043】
残差の二乗和を計算し、それが最小となるaを求める。残差の二乗和をDとすると、
D=Σd={y−a・f(0)}+{y−a・f(1)}+・・・
である。
【0044】
残差の二乗和をaで微分し、微分値が0となるaを求める。
(dD/da)=2{y−a・f(0)}・{−f(0)}+2{y−a・f(1)}・{−f(1)}+・・・=2{Σyf(x)}−aΣf(x)
であるから、
(dD/da)=0
となるaは、
a={Σyf(x)}/{Σf(x)
となる。
【0045】
補正テーブル作成部118は、補正関数Y=a×f(x)を用いて補正テーブルを作成する。これにより、図3Cに点線で示すように、輝度の変化に対する輝度補正値の変化量が所定値を超える輝度補正値が所定値以下の変化に書き換えられるとともに、全体的に滑らかな特性曲線からなる補正テーブルを作成することができる。
【0046】
なお、近似関数f(x)の形状はオートアイリスの幅によって異なるため、近似関数f(x)が1種類では、補正関数Yの形状が仮の補正テーブルに正確にフィットしないことが考えられる。そこで、オートアイリス幅に広く対応するために、近似関数f(x)を複数用意しておき、近似関数毎に未知数aの最適解を求め、各xにおける誤差の合計値が最小の近似関数を適用することが好適である。
【0047】
次に画像補正部122は、補正テーブル作成部118により作成された補正テーブルを用いて、現画像(入力画像)の各輝度の輝度値を補正し(ステップS7)、差分画像作成部130は、輝度値の補正された現画像と背景画像とから、背景差分画像を作成する(ステップS8)。
【0048】
背景差分画像を作成したら、それを用いて後段処理(異物検出)を行う(ステップS9)。また、ステップS3で、オートアイリスの影響がないと判断すれば(ステップS3:No)、そのまま後段処理(異物検出)を行う。そして、図示しない操作部から後段処理の終了指示が入力されるまで(ステップS10:Yes)、ステップS1から繰り返す。
【0049】
〈近似関数について〉
近似関数の決定方法について補足する。近似関数の決定方法には、「一般的な入出力特性としての近似」、「複雑な入出力特性への対応」、「治具を用いた入出力特性の学習」等がある。以下、順に説明する。
【0050】
《一般的な入出力特性としての近似》
一般的な入出力特性としてはダイナミックレンジ中央付近のコントラストを強くするようなものがあるので、これに三角関数などを基底とした合成関数を当てはめる。オートアイリスによる輝度値のシフト分をパラメータとしてふりつつ合成関数に使用した各関数の係数を最小二乗法で求め、誤差が最も小さいものを採用する。合成関数の係数(入出力特性)は変わらないと考えられるため、係数については時間軸での平均を用いれば安定化できる。
【0051】
基底関数g(x)の一例を下記の式[7]に示す。
【0052】
【数7】

【0053】
オートアイリスによるシフト量をsとすれば、g’(x)は下記の式[8]となる。ただし、式[8]においてs>0とする。
【0054】
【数8】

【0055】
合成関数f(x)は下記の式[9]となる。
【0056】
【数9】

【0057】
以後は式[1]〜[6]を用いた場合と同様にフィッティングを行い、aとsを求めればよい。
【0058】
また、求めた合成関数である近似関数f(x)自体はカメラの入出力特性を表すものであるから、一度求めた値をずっと利用してもよい。そうすれば毎フレーム計算するのはシフト値のみとなり、演算負荷は小さくて済む。
【0059】
図5は、近似関数f(x)に実際の離散的なデータyを入力し、連立方程式の解を求めることで作成した補正関数(補正テーブル)Yの一例を示す図である。この図において、横軸は表1における輝度値xである。ここでは、13個のxに対する13個のyにより、13個の連立方程式を立てaを求めた。aの計算値は略8.0である。
【0060】
《複雑な入出力特性への対応》
「一般的な入出力特性としての近似」と同じ要領で合成関数を複雑化することができる。基底関数は周期関数である必要がないので、例えば低輝度部分についてコントラストが急峻になるような関数を作成して重ね合わせればよい。
【0061】
=(0,0,1,1,1,2,2,3,2,2,1,1,1,0,0,0,0,0,・・・)
=(0,0,0,0,0,1,1,1,2,2,3,2,2,1,1,1,0,0,・・・)
=(0,0,0,0,0,0,0,0,1,1,1,2,2,3,2,2,1,1,・・・)
・・・
例えば上記b〜bのような256個の成分を有する基底を定義し、下記の式[10]、[11]を立てる。
【0062】
【数10】

【0063】
【数11】

【0064】
以後は最小二乗法を用いて、係数列a〜aを求めればよい。
【0065】
図6は、14個の基底を用いた場合の入力データyと補正関数Yの一例を示す図である。便宜上、xが0から52までのデータを図示した。式[10]においてn=14とした場合の係数列a〜a14の値を求めている。
【0066】
《治具を用いた入出力特性の学習》
カメラによっては複雑な入出力特性を有するものもある。そこで、例えば黒から白まで各色が均等に写るようなグラデーションでボードを作成する。ボードの中央部分はオートアイリスを発生させるために色(明るさ)を可変にする。このボードを撮影して取得した画像を用いて予め補正テーブルを作成し、記憶しておく。
【0067】
実動作時は学習した各テーブルに係数をかけてSAD(絶対値差分和)やSSD(差分二乗和)などの手法で評価して最も近い値を採用してもよいし、輝度のシフト値が整数であれば複数の評価結果から実数解を推測してもよい。
【0068】
例えば補正テーブルをk1(x),k2(x),…kn(x)、対応する評価関数をh(1),h(2),…h(n)、仮の補正テーブルをf(x)、正方対角行列からなる重み行列の成分をW(1)、W(2)、…とし、下記の式[12]によりSSDを算出する。
【0069】
【数12】

【0070】
なお、カメラの入出力特性が判っている場合は、シフトパラメータをふるだけで仮補正テーブルとフィッティングすることができる。後は「一般的な入出力特性としての近似」と同様である。また、カメラのコントローラにアクセスできる場合も同様であり、あらかじめ露出を変動させた場合の補正テーブルを作成してしまえばよい。
【0071】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態の画像処理装置によれば、オートアイリスによる輝度変化量を基に作成した輝度補正テーブルに基づいて現画像を輝度毎に補正することで輝度補正済み画像を作成するときに、特定の輝度値の背景領域に侵入した異物に起因する適正でない輝度補正値を除去することができる。また、図3Bに示す仮の補正テーブルから図3Cに示す補正テーブルを作成するとき、図3Bにおいて突出している値を周辺の値を基に補間するのではなく、近似関数と最小二乗法により包括的に補正するので、突出具合が一定の幅を持つような場合でも対応することができる。
【0072】
なお、以上の実施形態では、背景画像の各輝度に対して、現画像との差分値の統計情報として平均値を算出し、それを基に仮の補正テーブルを作成しているが、背景画像の各輝度に対して、現画像との差分値の中央値を基に仮の補正テーブルを作成することもできる。
【符号の説明】
【0073】
110…オートアイリス影響判断部、112…輝度差分平均値算出部、114…仮補正テーブル作成部、116…フィッティング部、118…補正テーブル作成部、130…差分画像作成部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアを撮影して取得した現画像と、予め当該エリアを撮影して取得した背景画像とから背景差分画像を取得する工程と、
前記背景差分画像内における差分値が所定の値を超える画素数の割合が所定の値を超えるとき、前記背景画像の各輝度に対する輝度差分値の統計情報を算出する工程と、
当該統計情報を基に現画像の各輝度値と輝度補正値との関係を示す仮の補正テーブルを作成する工程と、
当該仮の補正テーブルにおいて、輝度値の変化量に対する輝度補正値の変化量が所定値を超える輝度補正値を当該所定値以下の輝度補正値に書き換えることで、補正テーブルを作成する工程と、
当該補正テーブルを用いて、前記現画像の輝度値を補正する工程と
を有する画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理方法において、
前記補正テーブルを作成する工程は、前記仮の補正テーブルの各輝度値と輝度補正値との関係を近似する一つ又は複数の近似関数を選択するとともに、当該近似関数に乗算する係数を設定する工程と、前記仮の補正テーブルの各輝度値に対する輝度補正値を前記近似関数に代入して、前記係数を未知数とする方程式を解くことで、前記係数を取得する工程とを有する画像処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像処理方法において、
前記統計情報は平均値又は中央値である画像処理方法。
【請求項4】
所定のエリアを撮影して取得した現画像と、予め当該エリアを撮影して取得した背景画像とから背景差分画像を作成する差分画像作成部と、
前記背景差分画像内における差分値が所定の値を超える画素数の割合が所定の値を超えるとき、前記背景画像の各輝度に対する輝度差分値の統計情報を算出する輝度差分統計情報算出部と、
当該統計情報を基に現画像の各輝度値と輝度補正値との関係を示す仮の補正テーブルを作成する仮補正テーブル作成部と、
当該仮の補正テーブルにおいて、輝度値の変化量に対する輝度補正値の変化量が所定値を超える輝度補正値を当該所定値以下の輝度補正値に書き換えることで、補正テーブルを作成する補正テーブル作成部と、
当該補正テーブルを用いて、前記現画像の輝度値を補正する画像補正部と
を有する画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85070(P2013−85070A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222823(P2011−222823)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】