説明

画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラム

【課題】立体画像表示に適用する左画像と右画像の視差制御を行なう装置、方法を提供する。
【解決手段】左眼提示用の左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換部と、右眼提示用の右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換部を有する。各画像変換部は、例えば入力画像に対して逆特性の係数列の微分フィルタ係数を適用した微分信号を生成し、該微分信号またはこの微分信号の非線形信号を原画像信号に加算する合成処理により視差を制御した変換信号を生成する。本処理により視差範囲の縮小または拡大等の処理が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。さらに詳細には、ステレオ視(立体視)に対応した視差画像の視差制御を行う画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオ視(立体視)に対応したいわゆる視差画像(3次元画像、3D画像とも呼ばれる)を生成するためには、異なる視点からの画像、すなわち左眼用画像と右眼用画像が必要となる。すなわち、視差のある画像を左眼用画像と右眼用画像として生成し、左眼用画像を観察者(ユーザ)の左眼のみで観察し、右眼用画像を観察者(ユーザ)の右眼のみで観察する制御を行うことで、観察者は立体感を実感することができる。
【0003】
なお、各画像をユーザの一方の眼で観察させるための構成としては様々な方法がある。例えば偏光フィルタや、色フィルタにより左右の眼各々によって観察する画像を分離するパッシブ眼鏡方式、あるいは液晶シャッタにより時間的に左右分離するアクティブ眼鏡方式などがある。一般的には、このような立体視用の特殊な眼鏡を装着して画像を観察することで立体画像の観察が可能となる。
このように、従来から、視差を持つ画像の提示による立体視の実現方法については、様々な手法が提案されている。
【0004】
しかし、視差範囲、すなわち近くに見える被写体と遠くに見える被写体の幅が狭すぎると、十分な立体感が感じられないという問題がある。一方では、視差範囲が大きい3次元画像を長時間、観察し続けると疲労や気分が悪くなるといった観察者が発生するといった報告もある。このような問題を解決する手法として、立体感を適正に与えるために視差量を制御する手法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開平07−167633号公報)は、3次元画像を構成する左右の画像(左眼用画像と右眼用画像)から視差に相当する網膜像差(ディスパリティ)を検出して、検出した網膜像差(ディスパリティ)情報に基づいて左右の画像を水平シフトして視差を調整する方法を開示している。すなわち、この特許文献1に開示された方法は、ディスパリティの平均値を用いて画像全体を水平にシフトすることで、観察者が見やすい視差範囲に設定する画像変換方法である。
【0006】
なお、ディスパリティとは、網膜像差、あるいは表示部における同一被写体の左眼用画像と右眼用画像間の距離に対応する値であり、ディスパリティが大きいほど視差が大きくなる。
この特許文献1に開示された方法は、ディスパリティの平均値を用いて画像全体を水平にシフトすることで、観察者が見やすい視差範囲に設定する画像変換方法である。
【0007】
この特許文献1に開示された構成は、ディスパリティの平均値を用いて水平シフト量を決定する構成であり、少ない処理量での変換が可能となるというメリットがある。しかし、左右画像を全体的に水平シフトする構成であり、視差のダイナミックレンジ(最も近い被写体と遠い被写体の奥行きの差)を制御することはできないという問題がある。
【0008】
また、非特許文献1("Stereoscopic image generation based on depth image for 3D TV",L.Zhang and W.J.Tam, IEEE Trans.On Broadcasting,Vol.51,No.2,June 2005)は、左右の画像から、画像の画素ごとに対応するディスパリティ(左画像と右画像のずれ)を記述したディスパリティマップを生成して、ディスパリティマップと原画像を用いて、異なる視点に対する画像を復元する方法を開示している。
【0009】
この非特許文献1に開示された手法は、新たな視点からの画像を生成することが可能であり、ステレオ画像の視差のダイナミックレンジについても制御した画像を生成することができる。しかしながら、この非特許文献1に記載の方法では、画像の画素ごとのディスパリティ(像差)を記述したディスパリティマップを生成することが不可欠であり、処理コストが大きくなり、回路の小型化が難しいという問題がある。また、生成される画像の品質がディスパリティマップの精度に依存するため、高解像度かつ、高精度なディスパリティマップが求められる。このような高精度なディスパリティマップの生成は困難であり、回路規模を増大させる要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07−167633号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】"Stereoscopic image generation based on depth image for 3D TV",L.Zhang and W.J.Tam, IEEE Trans.On Broadcasting,Vol.51,No.2,June 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、例えば上記の問題に鑑みてなされたものであり、画像の画素ごとのディスパリティを記述したディスパリティマップの生成を不要、または少ない処理での生成が可能なデータ量の少ない粗いディスパリティマップを生成するのみで、ステレオ画像における視差の制御を行うことを可能とした画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面は、
立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換部と、
立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換部を有し、
前記左画像変換部、および右画像変換部は、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出し、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成する画像処理装置にある。
【0014】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記左画像変換部は、前記特徴量として前記左画像の画像信号の微分信号を生成する左画像微分器と、前記左画像の微分信号、または該微分信号の変換信号を前記左画像信号に加算する合成処理を実行して前記左画像変換画像を生成する左画像合成部を有し、前記右画像変換部は、前記特徴量として前記右画像の画像信号の微分信号を生成する右画像微分器と、前記右画像の微分信号、または該微分信号の変換信号を前記右画像信号に加算する合成処理を実行して前記右画像変換画像を生成する右画像合成部を有する。
【0015】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記左画像変換部は、前記前記左画像の微分信号の非線形変換処理を実行する左画像非線形変換部を有し、前記左画像合成部は、前記左画像非線形変換部の生成した変換信号を前記左画像信号に加算する合成処理を実行して前記左画像変換画像を生成し、前記右画像変換部は、前記前記右画像の微分信号の非線形変換処理を実行する右画像非線形変換部を有し、前記右画像合成部は、前記右画像非線形変換部の生成した変換信号を前記右画像信号に加算する合成処理を実行して前記右画像変換画像を生成する。
【0016】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記左画像微分器と前記右画像微分器は、逆パターンの微分フィルタ係数列を有する一次微分フィルタを適用した微分処理を実行する。
【0017】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記左画像微分器と前記右画像微分器は、同一の微分態様による微分処理を実行し、前記左画像合成部と前記右画像合成部のいずれか一方は、各画像の微分信号または該微分信号の変換信号を入力画像信号に加算し、他方が入力画像信号から減算する処理を行う。
【0018】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記左画像微分器と前記右画像微分器は、入力画像信号の輝度信号の微分処理を実行する。
【0019】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記画像処理装置は、さらに、画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像における同一被写体部に相当する対応点の配置を解析して視差情報を生成する視差検出部を有し、前記左画像微分器と前記右画像微分器は、前記視差検出部の生成する前記視差情報に応じて、微分処理態様を変更して微分処理を実行する。
【0020】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記視差検出部は、画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像における同一被写体部に相当する対応点の配置が、
(a)左画像の対応点が右画像の対応点よりも左に位置する、
(b)左画像の対応点が右画像の対応点よりも右に位置する、
上記(a),(b)いずれの設定にあるかを示すディスパリティ極性情報を生成し、
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、前記視差検出部の生成するディスパリティ極性情報に応じて、逆パターンの微分フィルタ係数列を有する一次微分フィルタを適用した微分処理を実行する。
【0021】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記視差検出部は、画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像の縮小画像または間引き画像を適用して視差情報を生成する。
【0022】
さらに、本発明の画像処理装置の一実施態様において、前記画像処理装置は、さらに、前記左画像微分器と前記右画像微分器の微分処理態様、または前記左画像非線形変換部と前記右画像非線形変換部における変換処理態様の少なくともいずれかを変更制御するための制御信号を入力する制御信号入力部を有する。
【0023】
さらに、本発明の第2の側面は、
画像処理装置において実行する画像処理方法であり、
左画像変換部が、立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換ステップと、
右画像変換部が、立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換ステップを有し、
前記左画像変換ステップ、および右画像変換ステップは、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出し、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成するステップである画像処理方法にある。
【0024】
さらに、本発明の第3の側面は、
画像処理装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
左画像変換部に、立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成させる左画像変換ステップと、
右画像変換部に、立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成させる右画像変換ステップを実行させ、
前記左画像変換ステップ、および右画像変換ステップにおいて、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出させ、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成させるプログラムにある。
【0025】
なお、本発明のプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な汎用システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体によって提供可能なプログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、コンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0026】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施例構成によれば、立体画像表示に適用する左画像と右画像の視差制御を行なう装置、方法が提供される。本発明の画像処理装置は、左眼提示用の左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換部と、右眼提示用の右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換部を有する。各画像変換部は、例えば入力画像に対して逆特性の係数列の微分フィルタ係数を適用した微分信号を生成し、該微分信号またはこの微分信号の非線形信号を原画像信号に加算する合成処理により視差を制御した変換信号を生成する。本処理により視差範囲の縮小または拡大等の処理が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例に係る画像処理装置の構成例について説明する図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像処理装置の微分器の微分処理について説明する図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像処理装置の非線形変換部の非線形変換処理について説明する図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像処理装置の左画像変換部の処理例について説明する図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像処理装置の右画像変換部の処理例について説明する図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理例について説明する図である。
【図7】本発明の実施例1に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による各信号パターンの対応例について説明する図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による各信号パターンの対応例について説明する図である。
【図10】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による各信号パターンの対応例について説明する図である。
【図11】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による各信号パターンの対応例について説明する図である。
【図12】本発明の一実施例に係る画像処理装置の実行する画像変換処理例について説明する図である。
【図13】本発明の実施例2に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図14】本発明の実施例3(a)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図15】本発明の実施例3(b)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図16】本発明の実施例4(a)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図17】本発明の実施例4(b)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図18】本発明の一実施例に係る画像処理装置の構成例について説明する図である。
【図19】本発明の実施例5(a)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図20】本発明の実施例5(b)に係る画像処理装置の実行する画像変換処理による制御処理の具体例について説明する図である。
【図21】本発明の一実施例に係る画像処理装置の構成例について説明する図である。
【図22】本発明の一実施例に係る画像処理装置の微分器の構成例について説明する図である。
【図23】本発明の一実施例に係る画像処理装置の構成例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムの詳細について説明する。以下の呼応目に従って順次説明する。
A.実施例1:表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の縮小処理例
B.実施例2:表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の拡大処理例
C.実施例3:表示部の表示面より手前側に設定された視差範囲の制御(縮小/拡大)処理例
D.実施例4:表示部の表示面の前後に設定された視差範囲の制御処理例
E.実施例5:簡易なディスパリティマップを利用した視差制御を行う実施例
F.実施例6:シフト態様の制御用の信号を入力可能とした構成を有する実施例
【0030】
[A.実施例1:表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の縮小処理例]
図1以下を参照して本発明の実施例1について説明する。
第1の実施例は、立体画像(3次元画像)を構成する左右の画像(左眼用画像と右眼用画像)の像のずれ(網膜像差等や表示部における左画像と右画像の表示位置間距離)に相当するディスパリティの値を各画素に対応付けたディスパリティマップを利用することなく視差制御を可能とした実施例である。
本実施例は、ディスパリティマップを生成することなく、3次元画像を構成する左右の画像(左眼用画像と右眼用画像)の視差範囲の縮小処理や拡大処理等の視差制御を実行する画像処理装置を実現するものである。
【0031】
図1を参照して、本実施例の画像処理装置の構成例について説明する。画像処理装置100は、図1に示すように左画像(L1画像)10を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整左画像(L2画像)50を生成する左画像変換部110と、右画像(R1画像)20を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整右画像(R2画像)60を生成する右画像変換部120を有する。
【0032】
入力画像としての左画像(L1画像)10、右画像(R1画像)20は、立体画像(3次元画像)表示に適用する左眼用画像と右眼用画像である。すなわち、異なる視点からの撮影画像等、被写体距離に応じた視差の設定された画像である。なお、左画像(L1画像)10、右画像(R1画像)20は、ビデオデータ等の動画や、静止画、いずれでもよい。動画、静止画いずれの場合も、それぞれ3次元画像表示に適用する1組の左画像(L1画像)10、右画像(R1画像)20が、順次、左画像変換部110、右画像変換部120に入力され、各部において、各画像の変換処理が施されて視差調整が施された視差調整左画像(L2画像)50と視差調整右画像(R2画像)60を生成する。
【0033】
左画像変換部110は、左画像(L1)10を入力する左画像入力部111、左画像10の微分処理を行う左画像微分処理部112、左画像10の微分信号を非線形変換する左非線形変換部113、左画像10と非線形変換された微分信号を合成する左画像合成部114、変換後の視差調整左画像(L2)50を出力する左画像出力部115から構成される。
【0034】
右画像変換部120は、右画像(R1)20を入力する右画像入力部121、右画像20の微分処理を行う右画像微分処理部122、右画像20の微分信号を非線形変換する右非線形変換部123、右画像20と非線形変換された微分信号を合成する右画像合成部124、変換後の視差調整右画像(R2)60を出力する右画像出力部125から構成される。
【0035】
左画像変換部110と、右画像変換部120は、それぞれ入力画像信号の空間的な特徴量を抽出し、抽出した特徴量に対する異なる強調処理を施すことで視差の制御された視差調整左画像50と視差調整右画像60を生成して、左画像出力部115と右画像出力部125を介して出力する処理を行う。
【0036】
なお、左画像出力部115と右画像出力部125は、例えば3次元画像の表示処理を行う表示部に接続され、視差が調整された視差調整左画像(L2)50と視差調整右画像(R2)60を適用した3次元画像表示処理がなされる。
あるいは、左画像出力部115と右画像出力部125は、記録メディアに対する記録処理を実行する記録部に接続され、視差調整左画像(L1)50と視差調整右画像(R1)60の記録メディアに対する記録処理が行われる。あるいは通信部を介して外部装置に送信する構成としてもよい。
【0037】
左画像変換部110の実行する処理の詳細について説明する。
左画像入力部111は、3次元画像表示に適用するために予め生成された左画像(L1)10を入力する。
左画像微分器112は、左画像変換部110に入力された左画像10から画像特徴量を抽出する。具体的には、左画像10から輝度信号を取り出し、輝度信号に対する微分信号(HL)を生成する。左画像微分器112は、例えば画像の輝度信号を水平方向に入力して、入力輝度信号を一次微分した信号を生成する。一次微分処理は、例えば、水平方向3タップの線形1次微分フィルタなどを用いる。
【0038】
図2は、左画像微分器112における微分信号の生成処理例を示している。
図2には、
(a)入力信号
(b)微分信号
これらの各信号の例を示している。
【0039】
図2(a)は、入力画像信号の一例である。
図2(b)は、図2(a)の入力画像信号を微分処理した画像であり、例えば左画像微分器112の生成する輝度微分信号(HL)である。
なお、実施例では輝度信号を処理データとした例について説明するが、輝度信号ではなく色信号(RGB等)を処理対象データとして利用してもよい。
【0040】
左画像非線形変換部113は、左画像微分器112から出力される微分信号(HL)を非線形的に変換し、非線形変換信号(EL)として画像合成部114に出力する。
図3は、左画像非線形変換部113において実行する非線形変換処理の一例を示している。横軸が、左画像微分器112から出力される微分信号(輝度微分信号)の輝度値である。縦軸が、左画像非線形変換部113における非線形変換処理後の出力輝度値を示している。
【0041】
左画像非線形変換部113は、入力された微分信号(In(=HL))を、予め規定した関数f(x)により変換して、視差強調信号(Out(=EL))を出力する。すなわちOut=f(In)とする。このとき、関数f(x)は、様々な設定が利用可能である。関数f(x)の一例としては、例えば、
f(x)=xγ
上記式に示されるような指数関数を用いる。γは予め設定した係数であり、様々な値に設定可能である。
また、左画像非線形変換部113における変換関数は、指数関数に限定するものではなく、また線形的な変換を施しても構わない。
【0042】
なお、図1に点線で示すように、左画像非線形変換部113の処理を省略した構成としてもよい。この場合、左画像微分器112から出力される微分信号(HL)を直接、左画像合成部114に入力する。
【0043】
左画像合成部114は、左画像(L1)10と、この左画像(L1)10から生成した空間的な特徴量、すなわち、輝度信号の微分信号(HL)、または、この微分信号を非線形変換して生成した非線形変換信号(EL)を適用して視差調整左眼用画像50を生成する処理を行う。
【0044】
次に左画像合成部114の処理について説明する。
左画像合成部114は、入力画像である左画像10と、この左画像10から生成した空間的な特徴量、すなわち、輝度信号の微分信号、または、この微分信号を非線形変換して生成した非線形変換信号を適用して視差調整左画像50を生成する処理を行う。生成した視差調整左画像50は、左画像出力部115を介して出力され、例えば表示部に表示される。
【0045】
図4は、左画像合成部114において実行する画像合成処理の一例を示している。上から順に、
(a)入力信号(L1)
(b)微分信号(HL)
(c)合成画像信号(=視差調整左画像信号(L2))
これらの各信号を示している。
【0046】
(a)入力信号(L1)は、画像処理装置100に入力される左画像(L1)10の例えばビデオデータの任意のフレームの任意の水平1ラインの輝度変化を示している。中央部に輝度の高い高輝度領域が存在する1つのラインを例示している。
ライン位置(x1)からライン位置(x2)までの領域Pにおいて、輝度が次第に高くなる変化を示し、ライン位置(x2)〜(x3)において高レベル輝度を維持した高輝度部分が存在し、その後、ライン位置(x3)からライン位置(x4)までの領域Qにおいて、輝度が次第に低くなる変化を示している。
【0047】
(b)微分信号(HL)は、(a)入力信号(L1)の微分結果である。この微分信号は、図1に示す左画像変換部110の左画像微分器112において生成される信号である。
なお、左画像微分器112において利用される微分フィルタ係数は、図4(b)に示すように、
1,0,−1
上記系列の微分フィルタ係数を持つ微分フィルタである。
上記系列の微分フィルタ係数を持つフィルタによる微分処理は、
水平ラインの画素(n)の微分信号(In')を、
画素(n)の前(左)の画素(n−1)の画素値(本例では輝度)=(I(n−1))と、
画素(n)の後(右)の画素(n+1)の画素値(本例では輝度)=(I(n+1))、
を適用して以下のように算出することを意味する。
In'=(I(n−1))−(I(n+1))
【0048】
左画像微分器112の生成する微分信号(LH)は、図4に示すとおり、(a)入力左画像信号(L1)の輝度変化が正になる領域Pにおいて負の値をとり、(a)入力左画像信号(L1)の輝度変化が負になる領域Qにおいて正の値をとる。
【0049】
(c)合成信号(視差調整左画像信号(L2))は、図1に示す左画像変換部110の左画像合成部114において生成する信号である。左画像合成部114は、(a)入力左画像信号(L1)と、(b)左画像微分信号(HL)とを加算する合成処理を実行して合成信号(視差調整左画像信号(L2))を生成する。この結果、図4(c)に示す合成信号(視差調整左画像信号(L2))が生成される。
【0050】
この図から理解されるように、(a)入力信号(L1)のP,Qの輝度変化部分が、(c)合成画像信号(=視差調整左画像信号(L2))においては、右方向に位相変化(シフト)している。これは、入力信号(L1)に対する微分信号の合成(加算)処理による効果である。
【0051】
なお、図4の説明では、図1に示す左画像非線形変換部113の処理について省略した例を示しているが、左画像非線形変換部113の処理を加えた場合は、図4(b)の微分信号の振幅が制御(例えば抑制)されることになる。
この場合も、左画像合成部114における合成処理結果としての(c)合成画像信号(=視差調整左画像信号(L2))は、図4に示すと同様、P,Qの輝度変化部分が、(a)入力信号(L1)に対して右側に移動した位相変化(シフト)した信号となる。
【0052】
このように、図1に示す左画像変換部110は、入力画像である左画像(L1)10の輝度変化部分について、右方向にシフトした視差調整左画像(L2)50を生成して出力する。
【0053】
次に、図1に示す右画像変換部120の処理について説明する。右画像変換部120は、左画像変換部110と同様の構成を有する。
すなわち、右画像変換部120は、右画像(R1)20を入力する右画像入力部121、右画像20の微分処理を行う右画像微分処理部122、右画像20の微分信号を非線形変換する右非線形変換部123、右画像20と非線形変換された微分信号を合成する右画像合成部124、変換後の視差調整右画像(R2)60を出力する右画像出力部125から構成される。
【0054】
基本的には、右画像変換部120の各構成部における処理は、左画像変換部110の対応する各構成部の処理と同様の処理が行われる。
ただし、右画像20の微分処理を行う右画像微分処理部122において適用する微分フィルタの係数が異なる。
右画像微分処理部122において適用する微分フィルタの係数は、左画像変換部110の左画像微分処理部112において適用する微分フィルタの係数を反転した系列、すなわち逆パターンの系列となる。
【0055】
図5を参照して、右画像変換部120に入力する右画像(R1)20と、右画像微分処理部122において生成する右画像微分信号(HR)と、右画像合成部124の生成する合成信号(視差調整右画像信号(R2)の一例について説明する。
図5に示す信号例は、先に左画像変換部110の信号例として説明した図4に対応する。
【0056】
すなわち、図5は、右画像合成部124において実行する画像合成処理の一例を示している。上から順に、
(a)入力信号(R1)
(b)微分信号(HR)
(c)合成画像信号(=視差調整右画像信号(R2))
これらの各信号を示している。
【0057】
(a)入力信号(R1)は、画像処理装置100に入力される右画像(R1)20の例えばビデオデータの任意のフレームの任意の水平1ラインの輝度変化を示している。中央部に輝度の高い高輝度領域が存在する1つのラインを例示している。
ライン位置(x1)からライン位置(x2)までの領域Pにおいて、輝度が次第に高くなる変化を示し、ライン位置(x2)〜(x3)において高レベル輝度を維持した高輝度部分が存在し、その後、ライン位置(x3)からライン位置(x4)までの領域Qにおいて、輝度が次第に低くなる変化を示している。
【0058】
(b)微分信号(HR)は、(a)入力信号(R1)の微分結果である。この微分信号は、図1に示す右画像変換部120の右画像微分器122において生成される信号である。
なお、右画像微分器122において利用される微分フィルタ係数は、前述したように、左画像微分器112において利用される微分フィルタ係数を反転した係数列から構成される。すなわち、図5(b)に示すように、
−1,0,1
上記系列の微分フィルタ係数を持つ微分フィルタである。
上記系列の微分フィルタ係数を持つフィルタによる微分処理は、
水平ラインの画素(n)の微分信号(In')を、
画素(n)の前(左)の画素(n−1)の画素値(本例では輝度)=(I(n−1))と、
画素(n)の後(右)の画素(n+1)の画素値(本例では輝度)=(I(n+1))、
を適用して以下のように算出することを意味する。
In'=−(I(n−1))+(I(n+1))
【0059】
右画像微分器122の生成する微分信号(HR)は、図5に示すとおり、(a)入力右画像信号(R1)の輝度変化が正になる領域Pにおいて正の値をとり、(a)入力右画像信号(R1)の輝度変化が負になる領域Qにおいて負の値をとる。
【0060】
(c)合成信号(視差調整右画像信号(R2))は、図1に示す右画像変換部120の右画像合成部124において生成する信号である。右画像合成部124は、(a)入力右画像信号(R1)と、(b)右画像微分信号(HR)とを加算する合成処理を実行して合成信号(視差調整右画像信号(R2))を生成する。この結果、図5(c)に示す合成信号(視差調整右画像信号(R2))が生成される。
【0061】
この図から理解されるように、(a)入力信号(R1)のP,Qの輝度変化部分が、(c)合成画像信号(=視差調整右画像信号(R2))においては、左方向に位相変化(シフト)している。これは、入力信号(R1)に対する微分信号の合成(加算)処理による効果である。
【0062】
なお、図5の説明では、図1に示す右画像非線形変換部123の処理について省略した例を示しているが、右画像非線形変換部123の処理を加えた場合は、図5(b)の微分信号の振幅が制御(例えば抑制)されることになる。
この場合も、右画像合成部124における合成処理結果としての(c)合成画像信号(=視差調整右画像信号(R2))は、図5に示すと同様、P,Qの輝度変化部分が、(a)入力信号(R1)に対して左側に移動、すなわち左方向に位相変化(シフト)した信号となる。
【0063】
このように、図1に示す右画像変換部120は、入力画像である右画像(R1)20の輝度変化部分について、左方向にシフトした視差調整左画像(R2)50を生成して出力する。
【0064】
次に、図6を参照して、画像処理装置100の入力画像と出力画像との対応について説明する。
図6には、上から、
(L1)入力左画像信号
(L2)出力左画像信号(視差調整左画像信号)
(R1)入力右画像信号
(R2)出力右画像信号(視差調整左画像信号)
これらの信号パターンを示している。これらは、図4、図5を参照して説明した信号パターンに対応する。
【0065】
画像処理装置100の入力画像信号は、
(L1)入力左画像信号
(R1)入力右画像信号
これらの1組の画像信号であり、これらは、3次元画像表示用の信号であり、予め視差が設定されている。
すなわち、例えば、図6において、輝度変化部分[P]の中央部分の(L1)入力左画像信号の表示位置と、(R1)入力右画像信号の表示位置にはずれが設定されている。この表示位置ずれによって視差が生ずる。
【0066】
なお、以下では、同一被写体の表示部における左画像と右画像との表示位置間の距離を「ディスパリティ」と定義して説明する。
入力画像(L1),(R1)の輝度変化部分[P]の中央部分のディスパリティは、
(L1)入力左画像信号の点(p1)と、
(R1)入力右画像信号の点(p2)と、
これらの各点間の距離[V1]として設定されている。
【0067】
これに対して、出力画像、すなわち視差調整画像信号においては、
(L2)出力左画像信号(視差調整左画像信号)の点(p3)と、
(R2)出力右画像信号(視差調整左画像信号)の点(p4)と、
これらの各点間の距離[V2]がディスパリティとなる。
【0068】
このように、輝度変化部分[P]の中央部分のディスパリティは、
入力画像の組のディスパリティV1、
出力画像(視差調整画像信号)のディスパリティV2、
このように異なる値となる。
本例では、
V2<V1
であり、出力画像におけるディスパリティが、入力画像のディスパリティに比較して減少している。このディスパリティの減少より、視差が抑制される。
この効果は、各画像の位相変化(シフト)による効果として得られるものである。
【0069】
図7を参照して、本実施例1の画像処理装置の視差調整の効果について説明する。図7には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲S1
(b)視差調整画像の視差範囲S2
これらの2つの視差範囲を示している。なお、3次元画像を構成する左画像と右画像(左眼用画像と右眼用画像)には、様々な被写体距離(カメラからの距離)を持つ被写体が含まれ、左画像と右画像には被写体距離に応じた様々な視差が設定される。
【0070】
なお、図7(a),(b)には、観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
【0071】
なお、視差の指標値として、観察者(ユーザ)の左眼201と右眼202の各眼の網膜上の像の位置ずれを示す網膜像差や、同一被写体の表示画面上の距離が利用される。ここでは、同一被写体の表示画面上の距離をディスパリティと定義して、ディスパリティの比較を行う。ディスパリティ=0であれば視差=0となる。これは、観察者(ユーザ)の左眼201によって観察される左画像と、観察者(ユーザ)の右眼202によって観察される右画像、各々における被写体の表示画面210上の表示位置が同一位置となる場合である。
【0072】
具体的には、図7(a)の表示画面210上の中央のA点221が視差=0となる被写体A、すなわちディスパリティ=0となる被写体Aである。この場合、ユーザは、被写体Aが表示画面210上に位置するように感じられる。
【0073】
なお、図中に示す[A左/右画像]は、ユーザの左眼201によって観察される3次元画像用の左画像における被写体Aの表示画面210上の表示位置と、ユーザの右眼202によって観察される3次元画像用の右画像における被写体Aの表示画面210上の表示位置とが同じ位置であることを意味する。
【0074】
一方、図7(a)に示す
B左画像とB右画像、
C左画像とC右画像、
これらの各画像の表示画面210上の表示位置が異なっている。
これは、ユーザの左眼201によって観察される3次元画像用の左画像における被写体B,Cの表示位置と、ユーザの右眼202によって観察される3次元画像用の右画像における被写体B,Cの表示位置とが異なる位置であることを意味する。
【0075】
この様な場合、ユーザは被写体B,Cが表示画面210上と異なる位置にあるように感じられる。
具体的には、被写体Bは、観察者の左眼201と表示画面210上のB左画像の表示位置を結ぶ直線と、観察者の右眼202と表示画面210上のB右画像の表示位置を結ぶ直線との交点である空間上の点222に位置するように観察される。
また、被写体Cは、観察者の左眼201と表示画面210上のC左画像の表示位置を結ぶ直線と、観察者の右眼202と表示画面210上のC右画像の表示位置を結ぶ直線との交点である空間上の点223に位置するように観察される。
【0076】
このように、観察者によって感じられる被写体の位置は、同一被写体の左画像と右画像の表示画面210上の距離(ディスパリティ)に応じて設定される。表示画面210上の左画像と右画像の被写体間隔を示すディスパリティを用いて説明する。
被写体Aはディスパリティ=0である。
被写体Aは、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体Aの位置は表示画面210上の位置221となる。
【0077】
被写体Bはディスパリティ=DBである。
被写体Bは、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDBであり、ディスパリティがDBとなる。
観察者が実感する被写体Bの位置は観察者から表示画面210より遠い位置222となる。
【0078】
被写体Cはディスパリティ=DCである。
なお、DB<DCである。
被写体Cは、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDCであり、ディスパリティがDCとなる。
観察者が実感する被写体Cの位置は観察者から表示画面210より遠く、さらに被写体Bより遠い位置223となる。
【0079】
画像において被写体A,B,Cが観察される場合、観察者の観察する視差範囲は、最も手前の表示画面位置のA点から、画像内の最も遠い被写体C点までの幅[S1]になる。
【0080】
図7(b)は、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体A2,B2,C2は、図7(a)のA,B,Cと同じ被写体であるが、前述した変換処理によって画像信号の位相変化に基づく画像シフトが発生し、観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0081】
被写体A2はディスパリティ=0である。
被写体A2は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体A2の位置は表示画面210上の位置231となる。
【0082】
被写体B2はディスパリティ=DB2である。
被写体B2は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDB2であり、ディスパリティがDB2となる。
観察者が実感する被写体B2の位置は観察者から表示画面210より遠い位置232となる。
ただし、観察者が実感する被写体B2の位置は、図7(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Bより観察者から近い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0083】
被写体C2はディスパリティ=DC2である。
なお、DB2<DC2である。
被写体C2は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDC2であり、ディスパリティがDC2となる。
観察者が実感する被写体C2の位置は観察者から表示画面210より遠く、さらに被写体B2より遠い位置233となる。
ただし、観察者が実感する被写体C2の位置は、図7(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Cより観察者に近い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0084】
画像処理装置100の画像変換処理により、例えば、B点は左画像位置が右方向に少し移動し、右画像位置が左方向に少し移動することにより、ディスパリティが小さくなる。すなわち、ディスパリティは、DBからDB2に小さくなる。
【0085】
さらに奥に位置するC点では、左画像位置が右方向に大きく移動し、右画像位置が左方向に大きく移動し、ディスパリティがさらに小さくなる。
ディスパリティは、DCからDC2に小さくなる。
なお、
(DC−DC2)>(DB−DB2)
であり、奥の被写体のほうが、ディスパリティの減少幅が大きくなる。
【0086】
この結果、図7(a),(b)の視差範囲S1,S2を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲S1(A〜C)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲S2(A2〜C2)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲S2(A2〜C2)は、入力画像の視差範囲S1(A〜C)より縮小される。
【0087】
図7に示して説明した視差抑制効果は、先に図4、図5を参照して説明した画像シフトの結果もたらされる効果である。
すなわち、左画像微分処理部113で、図4(b)に示す係数により微分を行い、微分信号を左画像に加算、または微分信号を非線形処理後に左画像に加算することにより、合焦位置から離れた被写体では入力画像に対して右方向に画像がずれる。
また、右画像微分処理部123で、図5(b)に示す係数により微分を行い、微分信号を右画像に加算、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算することにより、合焦位置から離れた被写体では入力画像に対して左方向に画像がずれる。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティは、入力画像に対して小さくなり、図7(a)の視差範囲S1から図7(b)に示す視差範囲S2のように視差範囲を縮小することができる。
【0088】
なお、図1に示す画像処理装置100の実行する画像変換処理では、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(例えば一番手前の被写体など)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化が大きくなる。
図7に示す例では、一番手前のA点で焦点があっており、A点でのディスパリティ(DAとする)の変化はほとんど発生しない。画像は被写体が奥に行く(A→B→C)に従って焦点から遠ざかることによりボケが大きくなると考えられる。
この場合、被写体A,B,Cの、
画像変換前のディスパリティをDA,DB,DCとし、
画像変換後のディスパリティをDA2,DB2,DC2とすると、
ディスパリティの変化幅は、
(DC2−DC)>(DB2−DB)>(DA2−DA)≒0
このような設定となる。
【0089】
図1に示す非線形変換部113,123では、例えば先に図3説明した非線形変換処理により、微分信号の低域を持ち上げる処理を行う。この処理によって、例えば焦点のあっていないボケ領域(低周波領域)の微分信号のレベルを上げるといった処理が可能となる。この処理によって、図7を参照して説明した処理、すなわち、焦点が合った画素位置(例えば一番手前の被写体など)で最もディスパリティの変化を小さくして、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化を大きくするといった制御が可能となる。
【0090】
画像処理装置100に対する入力信号と、微分信号、および出力信号との具体的な対応関係の例について図8〜図11を参照して説明する。
図8〜図11には、入力信号と、微分信号、および出力信号の各ラインを示している。各ラインは、画像信号の1つの水平ラインの一部に相当する。縦軸が輝度、横軸が水平方向の画素位置である。
入力信号は、画像処理装置100に入力する左画像(L1)10または右画像(R1)20を構成する1つの水平ラインの輝度を示すラインである。
微分信号は、画像処理装置100の微分器(左画像微分器112または右画像微分器122)における微分処理によって生成される信号である。
出力信号は、画像処理装置100の合成部(左画像合成部114または右画像合成部124)における合成処理によって生成される信号である。
【0091】
図8〜図11に示す信号は、以下の処理例に対応する。
(1)図8:画像を構成する高周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理を適用した場合の処理例(右方向シフト)
(2)図9:画像を構成する高周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理を適用した場合の処理例(左方向シフト)
(3a)図10(a):画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理を適用した場合の処理例(右方向シフト)
(3b)図10(b):画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理を適用した場合の処理例(左方向シフト)
(4a)図11(a):画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理と、さらに微分信号に対する非線形変換による増幅を行った場合の処理例(右方向シフト)
(4b)図11(b):画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理と、さらに微分信号に対する非線形変換による増幅を行った場合の処理例(左方向シフト)
【0092】
図8は、画像を構成する高周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理を適用した場合の処理例を示している。
入力信号(a)に対する微分処理により微分信号(b)が生成され、入力信号と微分信号との合成処理によって出力信号(c)が生成される。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して右方向にシフトする。
【0093】
図9は、画像を構成する高周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理を適用した場合の処理例を示している。
入力信号(a)に対する微分処理により微分信号(b)が生成され、入力信号と微分信号との合成処理によって出力信号(c)が生成される。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して左方向にシフトする。
【0094】
図10(a)は、画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理を適用した場合の処理例を示している。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して右方向にシフトする。
図10(b)は、画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理を適用した場合の処理例を示している。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して左方向にシフトする。
【0095】
図11(a)は、画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[1,0,−1]による微分(本実施例では左画像微分器112)処理と、さらに微分信号に対する非線形変換による増幅を行った場合の処理例を示している。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して右方向にシフトする。
図11(b)は、画像を構成する低周波領域に対する微分フィルタ係数[−1,0,1]による微分(本実施例では右画像微分器122)処理と、さらに微分信号に対する非線形変換による増幅を行った場合の処理例を示している。
図から理解されるように、出力信号(c)は入力信号(a)に対して左方向にシフトする。
【0096】
なお、図1に示す非線形変換部113,123では、例えば先に図3説明した非線形変換処理により、微分信号の低域を持ち上げる処理を行う。この処理によって、例えば焦点のあっていない低周波領域の微分信号のレベルを上げるといった処理が可能であり、この処理によって例えば低周波領域のシフト量(位相変化量)を大きくするといった処理が可能である。
すなわち、この非線形変換部113,123の変換処理態様の設定に応じて、低周波領域と高周波領域のシフト量の差を大きくする、あるいは小さくするといった制御が実現される。
【0097】
[B.実施例2:表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の拡大処理例]
次に、本発明の画像処理装置の実施例2について説明する。
実施例2の画像処理装置は、実施例1において説明した図1に示す画像処理装置100と同じ構成を有する。
ただし、左画像変換部110の左画像微分器112で適用する微分フィルタと、右画像変換部120の右画像微分器122で適用する微分フィルタとを、実施例1の場合と入れ替えた構成である。
この微分フィルタの変更により、左画像と右画像の画像シフト方向が逆方向となる。この結果、実施例1では視差範囲の縮小処理を行ったが、本実施例では視差範囲を拡大する処理が行われる。
【0098】
図12を参照して、本実施例における画像処理装置100の入力画像と出力画像との対応について説明する。この図12は、実施例1において説明した図6と同様の図である。図12には、上から、
(L1)入力左画像信号
(L2)出力左画像信号(視差調整左画像信号)
(R1)入力右画像信号
(R2)出力右画像信号(視差調整左画像信号)
これらの信号パターンを示している。
【0099】
画像処理装置100の入力画像信号は、
(L1)入力左画像信号
(R1)入力右画像信号
これらの1組の画像信号であり、これらは、3次元画像表示用の信号であり、予め視差が設定されている。
すなわち、例えば、図12において、輝度変化部分[P]の中央部分の(L1)入力左画像信号の表示位置と、(R1)入力右画像信号の表示位置にはずれ(ディスパリティ)が設定されている。この表示位置ずれによって視差が生ずる。
【0100】
入力画像(L1),(R1)の輝度変化部分[P]の中央部分のディスパリティは、
(L1)入力左画像信号の点(p1)と、
(R1)入力右画像信号の点(p2)と、
これらの各点間の距離[V1]として設定されている。
【0101】
これに対して、出力画像、すなわち視差調整画像信号においては、
(L2)出力左画像信号(視差調整左画像信号)の点(p5)と、
(R2)出力右画像信号(視差調整左画像信号)の点(p6)と、
これらの各点間の距離[V3]がディスパリティとなる。
【0102】
本実施例では、左画像変換部110の左画像微分器112で適用する微分フィルタは、図12(L2)に示すように、
−1,0,1
上記系列の微分フィルタ係数を持つ微分フィルタである。
すなわち、前述の実施例1では、右画像変換部120の右画像微分器122で適した微分フィルタである。
上記系列の微分フィルタ係数を持つフィルタによる微分処理は、
水平ラインの画素(n)の微分データ(In')を、
画素(n)の前(左)の画素(n−1)の画素値(本例では輝度)=(I(n−1))と、
画素(n)の後(右)の画素(n+1)の画素値(本例では輝度)=(I(n+1))、
を適用して以下のように算出することを意味する。
In'=−(I(n−1))+(I(n+1))
【0103】
この微分信号は、実施例1において図5(b)を参照して説明した微分信号と同様の信号である。結果として、この微分信号と原入力信号の合成(加算)処理結果は、図12(L1)入力信号のP,Qの輝度変化部分が左方向にシフトされた、図12(L2)に示す出力左画像信号(視差調整左画像(L2))となる。
【0104】
一方、右画像変換部120の右画像微分器122で適用する微分フィルタは、図12(R2)に示すように、
1,0,−1
上記系列の微分フィルタ係数を持つ微分フィルタである。
すなわち、前述の実施例1では、左画像変換部110の左画像微分器112で適した微分フィルタである。
上記系列の微分フィルタ係数を持つフィルタによる微分処理は、
水平ラインの画素(n)の微分データ(In')を、
画素(n)の前(左)の画素(n−1)の画素値(本例では輝度)=(I(n−1))と、
画素(n)の後(右)の画素(n+1)の画素値(本例では輝度)=(I(n+1))、
を適用して以下のように算出することを意味する。
In'=(I(n−1))−(I(n+1))
【0105】
この微分信号は、実施例1において図4(b)を参照して説明した微分信号と同様の信号である。結果として、この微分信号と原入力信号の合成(加算)処理結果は、図12(R1)入力信号のP,Qの輝度変化部分が右方向にシフトされた、図12(R2)に示す出力右画像信号(視差調整左画像(R2))となる。
なお、非線形変換処理については省略して説明しているが、非線形変換処理を行った場合もシフト方向は同様の設定となる。
【0106】
実施例2は、このように実施例1の左右画像用の各微分器において適用する微分フィルタを入れ替えた処理を行うことで、左画像と右画像のシフト方向を逆方向に設定する構成としている。
【0107】
この結果、図12に示すように、輝度変化部分[P]の中央部分のディスパリティは、
入力画像の組のディスパリティV1、
出力画像(視差調整画像信号)のディスパリティV3、
このように異なる値となる。
本実施例では、
V1<V3
であり、出力画像におけるディスパリティV3は、入力画像のディスパリティV1に比較して増加している。このディスパリティの増加より、視差が増幅される。
この効果は、各画像のシフトによる効果として得られるものである。
【0108】
図13を参照して、本実施例2の画像処理装置の視差調整の効果について説明する。図13には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲S1
(b)視差調整画像の視差範囲S3
なお、図13(a),(b)は、先の実施例1の図7と同様、観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
【0109】
視差の指標値として、同一被写体の表示画面上の距離であるディスパリティを用いて説明する。
図13(a)は視差調整前の入力画像に対応する図であり、図7(a)と同じ図である。図13(a)において、
被写体Aは、ディスパリティ=0、
被写体Bは、ディスパリティ=DB、
被写体Cは、ディスパリティ=DC、
である。
0<DB<DC
であり、ユーザの実感する被写体の観察位置は、Aがディスプレイ上、Bはディスプレイより奥(観察者から遠い)、CはBよりさらに遠い位置となる。
観察者の観察する視差範囲は、最も手前の表示画面位置のA点から、最も遠い被写体観察位置であるC点までの幅[S1]になる。
【0110】
図13(b)は、本実施例2に従って、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体A3,B3,C3は、図13(a)のA,B,Cと同じ被写体であるが、前述した変換処理により画像シフトが実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0111】
被写体A3はディスパリティ=0である。
被写体A3は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体A3の位置は表示画面210上の位置241となる。
【0112】
被写体B3はディスパリティ=DB3である。
被写体B3は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDB3であり、ディスパリティがDB3となる。
観察者が実感する被写体B3の位置は観察者から表示画面210より遠い位置242となる。
ただし、観察者が実感する被写体B3の位置は、図13(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Bより観察者から遠い(表示画面210からも遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0113】
被写体C3はディスパリティ=DC3である。
なお、DB3<DC3である。
被写体C3は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDC3であり、ディスパリティがDC3となる。
観察者が実感する被写体C3の位置は観察者から表示画面210より遠く、さらに被写体B2より遠い位置243となる。
ただし、観察者が実感する被写体C3の位置は、図13(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Cより観察者から遠い(表示画面210からも遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0114】
画像処理装置100の画像変換処理により、本実施例2では、前述の実施例1と逆方向の画像シフトが実行される。
すなわち、B点は左画像位置が左方向に少し移動し、右画像位置が右方向に少し移動することにより、ディスパリティが大きくなる。すなわち、ディスパリティは、DBからDB3に大きくなる。
【0115】
さらに奥に位置するC点では、左画像位置が左方向に大きく移動し、右画像位置が右方向に大きく移動し、ディスパリティがさらに大きくなる。
ディスパリティは、DCからDC3に大きくなる。
なお、
(DC3−DC)>(DB3−DB)
であり、奥の被写体のほうが、ディスパリティの拡大幅が大きくなる。
【0116】
この結果、図13(a),(b)の視差範囲S1,S3を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲S1(A〜C)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲S3(A3〜C3)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲S3(A3〜C3)は、入力画像の視差範囲S1(A〜C)より拡大される。
【0117】
図13を参照して説明した視差拡大効果は、先に図12を参照して説明した画像シフトの結果もたらされる効果である。
すなわち、左画像微分処理部113で、図12(L2)に示す係数により微分を行い、微分信号を左画像に加算、または微分信号を非線形処理後に左画像に加算することにより、合焦位置から離れた被写体では入力画像に対して左方向に画像がずれる。
また、右画像微分処理部123で、図12(R2)に示す係数により微分を行い、微分信号を右画像に加算、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算することにより、合焦位置から離れた被写体では入力画像に対して右方向に画像がずれる。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティは、入力画像に対して大きくなり、図13(a)の視差範囲S1から図13(b)に示す視差範囲S3のように視差範囲を拡大することができる。
【0118】
なお、画像処理装置100の実行する画像変換処理では、前述の通り、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(例えば一番手前の被写体など)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化が大きくなる。
図13に示す状況では、一番手前のA点で焦点があっており、奥に行くに従って被写体ボケが大きくなると考えると、A点はディスパリティがほとんど変化しない。
【0119】
一番手前のA点で焦点があっている場合、画像は被写体が奥に行く(A→B→C)に従って焦点から遠ざかることによりボケが大きくなると考えられる。
この場合、被写体A,B,Cの、
画像変換前のディスパリティをDA,DB,DCとし、
画像変換後のディスパリティをDA3,DB3,DC3とすると、
ディスパリティの変化幅は、
(DC3−DC)>(DB3−DB)>(DA3−DA)≒0
このような設定となる。
【0120】
[C.実施例3:表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の制御(縮小/拡大)処理例]
実施例1と実施例2では、画像処理装置に対して入力する3次元表示用の画像、すなわち、左画像(L1)10と右画像(R1)20の視差設定が表示部の表示面から奥側、すなわち観察者から遠い位置に設定される画像である場合の処理例を説明した。すなわち、
実施例1では表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の縮小、
実施例2では表示部の表示面より奥側に設定された視差範囲の拡大、
これらの処理例について説明した、
【0121】
しかし、3次元画像の表示に適用する画像は、実施例1,2で説明した画像に限らず、表示部の表示面の手前側、すなわち観察者に近い位置に飛び出すように視差を設定した画像もある。
以下、実施例3として、視差制御を行なう入力画像が表示面より手前側(観察者方向)に被写体の観察位置が設定される3次元画像である場合の処理例を説明する。
実施例3(a)では表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の縮小、
実施例3(b)では表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の拡大、
これらの処理例について、順次説明する。
なお、本実施例3は実施例1で説明した図1の画像処理装置100と同一の構成によって実現される。
【0122】
(a)表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の縮小処理例
まず、表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の縮小処理例について、図14を参照して説明する。
図14には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲S1
(b)視差調整画像の視差範囲S4
なお、図14(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
【0123】
前述の実施例1,2と同様、視差の指標値として、同一被写体の表示画面上の距離であるディスパリティを用いて説明する。
図14(a)は視差調整前の入力画像に対応する図である。
図14(a)において、
被写体Eは、ディスパリティ=DE=0、
被写体Fは、ディスパリティ=DF、
被写体Gは、ディスパリティ=DG、
である。各ディスパリティの大きさは、
DG>DF>DE≒0
上記のような関係にある。
【0124】
ユーザの実感する被写体の観察位置は、Eがディスプレイ上、Fはディスプレイより手前(観察者に近い)、GはFよりさらに観察者に近い位置となる。
観察者の観察する視差範囲は、最も遠い表示画面位置のE点から、最も近い被写体観察位置であるG点までの幅[S1]になる。
【0125】
先に説明したように、被写体は、観察者の左眼201と表示画面210上の左画像の表示位置を結ぶ直線と、観察者の右眼202と表示画面210上の右画像の表示位置を結ぶ直線との交点である空間上の点に位置するように観察される。
本実施例では、その交点が表示画面210より手前(観察者に近い方向)に設定されるように、左画像と右画像の各被写体の画像(E〜G右画像とE〜G左画像)が設定されている。
このような設定の3次元画像である場合、図14(a)に示すように、観察者は、各被写体を表示画面210より近い位置に実感することになる。
【0126】
前述の通り、図14(a)に示す入力画像の視差範囲は、最も遠い表示画面位置のE点から、最も近い被写体観察位置であるG点までの幅[S1]になる。
【0127】
図14(b)は、本実施例3(a)に従って、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体E4,F4,G4は、図14(a)のE,F,Gと同じ被写体であるが、前述した変換処理により画像シフトが実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0128】
被写体E4はディスパリティ=0である。
被写体E4は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体E4の位置は表示画面210上の位置となる。
【0129】
被写体F4はディスパリティ=DF4である。
被写体F4は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDF4であり、ディスパリティがDF4となる。
観察者が実感する被写体F4の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置F4となる。
ただし、観察者が実感する被写体F4の位置は、図14(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Fより観察者から遠い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0130】
被写体G4はディスパリティ=DG4である。
なお、DF4<DG4である。
被写体G4は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDG4であり、ディスパリティがDG4となる。
観察者が実感する被写体G4の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置G4となる。
ただし、観察者が実感する被写体G4の位置は、図14(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Gより観察者から遠い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0131】
画像処理装置100の画像変換処理により、本実施例3(a)では、前述の実施例2と同方向の画像シフトが実行される。
具体的には、図12を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については左方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については右方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0132】
この結果、左画像のF位置(図14(a)F左画像)が左方向に少し移動して図14(b)F4左画像位置となり、右画像のF位置(図14(a)F右画像)が右方向に少し移動して図14(b)F4右画像位置となる。これにより、ディスパリティが小さくなる。すなわち、ディスパリティは、DFからDF4に小さくなる。
【0133】
さらに手前(観察者側)に位置するG点では、左画像のG位置(図14(a)G左画像)が左方向に大きく移動して図14(b)G4左画像位置となり、右画像のG位置(図14(a)G右画像)が右方向に大きく移動して図14(b)G4右画像位置となる。この移動により、ディスパリティがさらに小さくなる。
ディスパリティは、DGからDG4に小さくなる。
なお、
(DG−DG4)>(DF−DF4)
であり、手前(表示画面210から遠い)の被写体のほうが、ディスパリティの縮小幅が大きくなる。
【0134】
この結果、図14(a),(b)の視差範囲S1,S4を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲S1(E〜G)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲S4(E4〜G4)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲S4(E4〜G4)は、入力画像の視差範囲S1(E〜G)より縮小される。
【0135】
図14を参照して説明した視差範囲縮小効果は、画像処理装置100による画像シフトの結果もたらされる効果である。
本実施例3(a)では、左画像微分器112において、実施例2と同様、図12(L2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[−1,0,1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図12(L1),(L2)に示すように左画像は左方向へシフトされる。
また、右画像微分器122において、図12(R2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[1,0,−1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図12(R1),(R2)に示すように右画像は右方向へシフトされる。
【0136】
図14に示すように、左画像微分処理部113で、図12(L2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力画像に対して左方向に画像がずれた変換画像が生成される。
また、右画像微分処理部123で、図12(R2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力画像に対して右方向に画像がずれた変換画像が生成される。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティは、入力画像に対して小さくなり、図14(a)の視差範囲S1から図14(b)に示す視差範囲S4のように視差範囲を縮小することができる。
【0137】
なお、本実施例でも、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(被写体E)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従って(E→F→G)ディスパリティの変化が大きくなる設定としている。
【0138】
(b)表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の拡大処理例
次に、表示部の表示面より手前に設定された視差範囲の拡大処理例について、図15を参照して説明する。
図15には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲S1
(b)視差調整画像の視差範囲S4
なお、図15(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
【0139】
前述の実施例と同様、視差の指標値として、同一被写体の表示画面上の距離であるディスパリティを用いて説明する。
図15(a)は視差調整前の入力画像に対応する図であり、図14(a)に示す図と同じである。
図15(a)において、
被写体Eは、ディスパリティ=DE=0、
被写体Fは、ディスパリティ=DF、
被写体Gは、ディスパリティ=DG、
である。各ディスパリティの大きさは、
DG>DF>DE≒0
上記のような関係にある。
【0140】
ユーザの実感する被写体の観察位置は、Eがディスプレイ上、Fはディスプレイより手前(観察者に近い)、GはFよりさらに観察者に近い位置となる。
【0141】
この図15(a)に示す設定は、先に説明した図14(a)と同様の設定であり、観察者は、各被写体を表示画面210より近い位置に実感することになる。
図15(a)に示す入力画像の視差範囲は、最も遠い表示画面位置のE点から、最も近い被写体観察位置であるG点までの幅[S1]になる。
【0142】
図15(b)は、本実施例3(b)に従って、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体E5,F5,G5は、図15(a)のE,F,Gと同じ被写体であるが、前述した変換処理により画像シフトが実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0143】
被写体E5はディスパリティ=0である。
被写体E5は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体E5の位置は表示画面210上の位置となる。
【0144】
被写体F5はディスパリティ=DF5である。
被写体F5は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDF5であり、ディスパリティがDF5となる。
観察者が実感する被写体F5の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置F5となる。
ただし、観察者が実感する被写体F5の位置は、図15(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Fより観察者に近い(表示画面210から遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0145】
被写体G5はディスパリティ=DG5である。
なお、DF5<DG5である。
被写体G5は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDG5であり、ディスパリティがDG5となる。
観察者が実感する被写体G5の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置G5となる。
ただし、観察者が実感する被写体G5の位置は、図15(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Gより観察者に近い(表示画面210から遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0146】
画像処理装置100の画像変換処理により、本実施例3(b)では、前述の実施例1と同方向の画像シフトが実行される。
具体的には、図6を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については右方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については左方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0147】
この結果、左画像のF位置(図15(a)F左画像)が右方向に少し移動して図15(b)F5左画像位置となり、右画像のF位置(図15(a)F右画像)が左方向に少し移動して図15(b)F5右画像位置となる。これにより、ディスパリティが大きくなる。すなわち、ディスパリティは、DFからDF5に大きくなる。
【0148】
さらに手前(観察者側)に位置するG点では、左画像のG位置(図15(a)G左画像)が右方向に大きく移動して図15(b)G5左画像位置となり、右画像のG位置(図15(a)G右画像)が左方向に大きく移動して図15(b)G5右画像位置となる。これにより、ディスパリティが大きくなる。すなわち、ディスパリティは、DGからDG5に大きくなる。
なお、
(DG5−DG)>(DF5−DF)
であり、手前(表示画面210から遠い)の被写体のほうが、ディスパリティの拡大幅が大きくなる。
【0149】
この結果、図15(a),(b)の視差範囲S1,S5を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲S1(E〜G)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲S5(E5〜G5)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲S5(E5〜G5)は、入力画像の視差範囲S1(E〜G)より拡大される。
【0150】
図15を参照して説明した視差範囲縮小効果は、画像処理装置100による画像シフトの結果もたらされる効果である。
本実施例3(b)では、先に説明した実施例1と同様の微分処理が行われ、図6を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については左方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については右方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0151】
本実施例3(b)では、左画像微分器112において、図6(L2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[1,0,−1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図6(L1),(L2)に示すように左画像は右方向へシフトされる。
また、右画像微分器122において、図6(R2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[−1,0,1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図6(R1),(R2)に示すように右画像は左方向へシフトされる。
【0152】
図6に示すように、左画像微分処理部113で、図6(L2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力画像に対して右方向に画像がずれた変換画像が生成される。
また、右画像微分処理部123で、図6(R2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力画像に対して左方向に画像がずれた変換画像が生成される。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティは、入力画像に対して大きくなり、図15(a)の視差範囲S1から図15(b)に示す視差範囲S5のように視差範囲を拡大することができる。
【0153】
なお、本実施例でも、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(被写体E)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従って(E→F→G)ディスパリティの変化が大きくなる設定としている。
【0154】
[D.実施例4:表示部の表示面の前後に設定された視差範囲の制御処理例]
次に、表示部の表示面の前後に視差範囲を設定した画像を入力した場合の視差制御処理例について説明する。
実施例1,2では、表示面の奥に視差範囲が設定された画像に対する処理例を説明し、実施例3では表示面の手前に視差範囲の設定された画像に対する処理例を説明した。このように視差範囲の設定は、左画像と右画像における被写体位置を変更することで様々な態様に設定できる。従って、表示部の表示面の前後に視差範囲を設定した画像も生成できる。以下では、このような表示部の表示面の前後に視差範囲を設定した画像を入力して視差制御を行なう構成例について説明する。
なお、本実施例4は実施例1で説明した図1の画像処理装置100と同一の構成によって実現される。
【0155】
実施例4では、実施例3と同様、以下の2つの処理例について説明する。
(a)左画像を右方向にシフトし、右画像を左方向にシフトする処理例
(b)左画像を左方向にシフトし、右画像を右方向にシフトする処理例
これらの処理例について、順次説明する。
【0156】
(a)左画像を右方向にシフトし、右画像を左方向にシフトする処理例
まず、図16を参照して、画像処理装置100に入力する左画像(L1)10を右方向にシフトし、右画像(R1)20を左方向にシフトする処理例について説明する。
本処理例は、先の実施例1において説明した図6に示す処理に対応する処理を実行する。
すなわち、
左画像(L1)10については右方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については左方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0157】
本実施例4(a)では、左画像微分器112において、図6(L2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[1,0,−1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図6(L1),(L2)に示すように左画像は右方向へシフトされる。
また、右画像微分器122において、図6(R2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[−1,0,1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図6(R1),(R2)に示すように右画像は左方向へシフトされる。
【0158】
図16を参照して、本実施例4(a)における視差制御処理例について説明する。
図16には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲T1
(b)視差調整画像の視差範囲T5
なお、図16(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
本実施例では、観察者(ユーザ)が被写体の位置を表示画面の前後に実感される設定とした画像を入力画像としている。
【0159】
先に説明したように、被写体は、観察者の左眼201と表示画面210上の左画像の表示位置を結ぶ直線と、観察者の右眼202と表示画面210上の右画像の表示位置を結ぶ直線との交点である空間上の点に位置するように観察される。
本実施例では、その交点が表示画面210の前後に設定されるように、左画像と右画像の各被写体の画像(H〜J右画像とH〜J左画像)が設定されている。
【0160】
具体的には、
被写体Hが表示画面210上に観察され、
被写体Iが表示画面210の手前(観察者側)に観察され、
被写体Jが表示画面210の奥側に観察される設定となった入力画像である。
【0161】
前述の実施例と同様、視差の指標値として、同一被写体の表示画面上の距離であるディスパリティを用いて説明する。
図16(a)は視差調整前の入力画像に対応する図である。
図16(a)において、
被写体Hは、ディスパリティ=DH=0、
被写体Iは、ディスパリティ=DI、
被写体Jは、ディスパリティ=DJ、
ここで、被写体Iのディスパリティは、被写体Iの像が表示画面210の手前に観察される設定であり、被写体Jのディスパリティは、被写体Jの像が表示画面210の奥に観察される設定である。
【0162】
すなわち、図16(a)の表示画面210上の配置から理解されるように、
左画像における被写体Iの画像(I左画像)は表示画面210の右側、
右像における被写体Iの画像(I右画像)は表示画面210の左側に設定されている。
これに対して、
左画像における被写体Jの画像(J左画像)は表示画面210の左側、
右像における被写体Jの画像(J右画像)は表示画面210の右側に設定されている。
このような設定により、被写体Iが表示画面210の手前(観察者側)に観察され、被写体Jが表示画面210の奥側に観察される。
【0163】
観察者の観察する視差範囲は、観察者から最も遠いJ点から、最も近いI点までの幅[T1]になる。
図16(b)は、本実施例4(a)に従って、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体H6,I6,J6は、図16(a)のH,I,Jと同じ被写体であるが、前述した変換処理により画像シフトが実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0164】
被写体H6はディスパリティ=0である。
被写体H6は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体H6の位置は表示画面210上の位置となる。
【0165】
被写体I6はディスパリティ=DI6である。
被写体I6は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDI6であり、ディスパリティがDI6となる。
観察者が実感する被写体I6の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置I6となる。
ただし、観察者が実感する被写体I6の位置は、図16(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Iより観察者に近い(表示画面210から遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0166】
被写体J6はディスパリティ=DJ6である。
被写体J6は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDJ6であり、ディスパリティがDJ6となる。
観察者が実感する被写体J6の位置は表示画面210の奥、すなわち観察者から最も遠い位置J6となる。
ただし、観察者が実感する被写体J6の位置は、図16(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Jより観察者に近い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0167】
画像処理装置100の画像変換処理により、本実施例4(a)では、前述の実施例1と同方向の画像シフトが実行される。
具体的には、図6を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については右方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については左方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0168】
この結果、表示画面210の手前に観察される被写体Iについては以下のような処理が行われる。
左画像のI位置(図16(a)I左画像)が右方向に移動して図16(b)I6左画像位置となり、右画像のI位置(図16(a)I右画像)が左方向に移動して図16(b)I6右画像位置となる。これにより、ディスパリティが大きくなる。すなわち、ディスパリティは、DIからDI6に大きくなる。
【0169】
さらに、表示画面210の奥に観察される被写体Jについては以下のような処理が行われる。
左画像のJ位置(図16(a)J左画像)が右方向に移動して図16(b)J6左画像位置となり、右画像のJ位置(図16(a)J右画像)が左方向に移動して図16(b)J6右画像位置となる。これにより、ディスパリティが小さくなる。すなわち、ディスパリティは、DJからDJ6に小さくなる。
【0170】
このように、実施例4(a)の処理では、
表示画面210の手前に観察される被写体Iではディスパリティが大きく変更され、より手前に観察されることになる。
一方、表示画面210の奥に観察される被写体Jではディスパリティが小さく変更され、この場合も変換前より手前に観察されることになる。
【0171】
この結果、図16(a),(b)の視差範囲T1,T6を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲T1(I〜J)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲T6(I6〜J6)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲T6(I6〜J6)は、入力画像の視差範囲T1(I〜J)を全体として観察者側に近づけるように制御される。
【0172】
図16を参照して説明した視差範囲移動効果は、画像処理装置100による画像シフトの結果もたらされる効果である。
本実施例4(a)では、前述したように、先に説明した実施例1と同様の微分処理が行われ、図6を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については右方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については左方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0173】
図6に示すように、左画像微分処理部113で、図6(L2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力画像に対して右方向に画像がずれた変換画像が生成される。
また、右画像微分処理部123で、図6(R2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力画像に対して左方向に画像がずれた変換画像が生成される。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティが図16(a),(b)に示すように変更され、図16(a)の視差範囲T1から図16(b)に示す視差範囲T6のように視差範囲を全体としてより観察者側に近づけることができる。
【0174】
なお、本実施例でも、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(被写体E)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化が大きくなる設定としている。
【0175】
(b)左画像を左方向にシフトし、右画像を右方向にシフトする処理例
次に、図17を参照して、画像処理装置100に入力する左画像(L1)10を左方向にシフトし、右画像(R1)20を右方向にシフトする処理例について説明する。
本処理例は、先の実施例2において説明した図12に示す処理に対応する処理を実行する。
すなわち、
左画像(L1)10については左方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については右方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0176】
本実施例4(a)では、左画像微分器112において、図12(L2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[−1,0,1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図12(L1),(L2)に示すように左画像は左方向へシフトされる。
また、右画像微分器122において、図12(R2)に示す微分フィルタ係数、すなわち、
[1,0,−1]
この微分フィルタ係数を適用した微分処理が実行され、図6(R1),(R2)に示すように右画像は右方向へシフトされる。
【0177】
図17を参照して、本実施例4(b)における視差制御処理例について説明する。
図17には、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲T1
(b)視差調整画像の視差範囲T5
なお、図17(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
本実施例では、観察者(ユーザ)が被写体の位置を表示画面の前後に実感される設定とした画像を入力画像としている。
【0178】
図17(a)は、先に説明した図16(a)と同様の入力画像の視差範囲T1を示す図である。
具体的には、
被写体Hが表示画面210上に観察され、
被写体Iが表示画面210の手前(観察者側)に観察され、
被写体Jが表示画面210の奥側に観察される設定となった入力画像である。
図17(a)において、
被写体Hは、ディスパリティ=DH=0、
被写体Iは、ディスパリティ=DI、
被写体Jは、ディスパリティ=DJ、
ここで、被写体Iのディスパリティは、被写体Iの像が表示画面210の手前に観察される設定であり、被写体Jのディスパリティは、被写体Jの像が表示画面210の奥に観察される設定である。
【0179】
観察者の観察する視差範囲は、観察者から最も遠いJ点から、最も近いI点までの幅[T1]になる。
図17(b)は、本実施例4(b)に従って、図1に示す画像処理装置100において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体H7,I7,J7は、図17(a)のH,I,Jと同じ被写体であるが、前述した変換処理により画像シフトが実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0180】
被写体H7はディスパリティ=0である。
被写体H7は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体H7の位置は表示画面210上の位置となる。
【0181】
被写体I7はディスパリティ=DI7である。
被写体I7は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDI7であり、ディスパリティがDI7となる。
観察者が実感する被写体I7の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置I7となる。
ただし、観察者が実感する被写体I7の位置は、図17(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Iより観察者から遠い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0182】
被写体J7はディスパリティ=DJ7である。
被写体J7は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDJ7であり、ディスパリティがDJ7となる。
観察者が実感する被写体J7の位置は表示画面210の奥、すなわち観察者から最も遠い位置J7となる。
ただし、観察者が実感する被写体J7の位置は、図17(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Jより観察者から遠い(表示画面210からも遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0183】
画像処理装置100の画像変換処理により、本実施例4(b)では、前述の実施例2と同方向の画像シフトが実行される。
具体的には、図12を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については左方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については右方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0184】
この結果、表示画面210の手前に観察される被写体Iについては以下のような処理が行われる。
左画像のI位置(図17(a)I左画像)が左方向に移動して図17(b)I7左画像位置となり、右画像のI位置(図17(a)I右画像)が右方向に移動して図17(b)I7右画像位置となる。これにより、ディスパリティが小さくなる。すなわち、ディスパリティは、DIからDI7に小さくなる。
【0185】
さらに、表示画面210の奥に観察される被写体Jについては以下のような処理が行われる。
左画像のJ位置(図17(a)J左画像)が左方向に移動して図17(b)J7左画像位置となり、右画像のJ位置(図17(a)J右画像)が右方向に移動して図17(b)J7右画像位置となる。これにより、ディスパリティが大きくなる。すなわち、ディスパリティは、DJからDJ7に大きくなる。
【0186】
このように、実施例4(b)の処理では、
表示画面210の手前に観察される被写体Iではディスパリティが小さく変更され、観察者から遠い位置、すなわち表示画面210に近い位置に観察されることになる。
一方、表示画面210の奥に観察される被写体Jではディスパリティが大きく変更され、この場合も変換前より、観察者からより遠い位置に観察されることになる。
【0187】
この結果、図17(a),(b)の視差範囲T1,T7を比較して理解されるように、
変換前の入力画像の視差範囲T1(I〜J)は、変換後の出力画像(視差調整画像)の視差範囲T7(I7〜J7)に変化する。
すなわち、この例では、出力画像(視差調整画像)の視差範囲T7(I7〜J7)は、入力画像の視差範囲T1(I〜J)を全体として観察者から遠ざけるように制御される。
【0188】
図17を参照して説明した視差範囲移動効果は、画像処理装置100による画像シフトの結果もたらされる効果である。
本実施例4(b)では、前述したように、先に説明した実施例2と同様の微分処理が行われ、図12を参照して説明したと同様の画像シフト処理が実行される。すなわち、
左画像(L1)10については左方向へのシフト処理、
右画像(R1)20については右方向へのシフト処理、
これらの画像シフト処理が実行される。
【0189】
図12に示すように、左画像微分処理部113で、図12(L2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力画像に対して左方向に画像がずれた変換画像が生成される。
また、右画像微分処理部123で、図12(R2)に示す係数により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力画像に対して右方向に画像がずれた変換画像が生成される。
この結果、左画像と右画像の間のディスパリティが図17(a),(b)に示すように変更され、図17(a)の視差範囲T1から図17(b)に示す視差範囲T7のように視差範囲を全体としてより観察者から遠ざけることができる。
【0190】
なお、本実施例でも、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(被写体E)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化が大きくなる設定としている。
【0191】
ここまで、説明した実施例1〜実施例4の構成は、左画像と右画像の画素ごとに対応するディスパリティ(像差)を記述したディスパリティマップを生成する処理や、ディスパリティマップの利用処理が不要であるため処理コストが小さく、回路の小型化が容易である。
次に、簡易的なディスパリティマップを利用した実施例について説明する。
【0192】
[E.実施例5:簡易なディスパリティマップを利用した視差制御を行う実施例]
次に、実施例5として、簡易なディスパリティマップを利用して視差制御を実行する画像処理装置の構成と処理例について説明する。
以下に説明する実施例は、簡易的なディスパリティマップを生成することにより、視差範囲の制御をより的確に行うことが可能な画像変換装置を実現する。
【0193】
実施例5に係る画像処理装置300の構成例を図18に示す。図18に示す画像処理装置300は、先に実施例1の画像処理装置とし説明した図1に示す画像処理装置100に視差検出部301を追加した構成である。その他の構成は、図1に示す構成と同一である。
【0194】
画像処理装置300は、図18に示すように左画像(L1画像)10を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整左画像(L2画像)50を生成する左画像変換部110と、右画像(R1画像)20を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整右画像(R2画像)60を生成する右画像変換部120、さらに、視差検出部301を有する。
【0195】
左画像変換部110は、左画像(L1)10を入力する左画像入力部111、左画像10の微分処理を行う左画像微分処理部112、左画像10の微分信号を非線形変換する左非線形変換部113、左画像10と非線形変換された微分信号を合成する左画像合成部114、変換後の視差調整左画像(L2)50を出力する左画像出力部115から構成される。
右画像変換部120は、右画像(R1)20を入力する右画像入力部121、右画像20の微分処理を行う右画像微分処理部122、右画像20の微分信号を非線形変換する右非線形変換部123、右画像20と非線形変換された微分信号を合成する右画像合成部124、変換後の視差調整右画像(R2)60を出力する右画像出力部125から構成される。
この左画像変換部110と右画像変換部120は、先に実施例1〜4において説明した処理と同様の処理を実行する。
【0196】
視差検出部301は、左画像変換部110の左画像入力部111から出力される左画像輝度信号と、右画像変換部120の右画像入力部121から出力される右画像輝度信号を受信し、左画像と右画像において同一被写体を示すと判断される水平方向の対応画素位置を検出する。
【0197】
本実施例における視差検出部301は、左画像と右画像の対応画素位置(以下、対応点と呼ぶ)の位置関係について、以下の判定結果を取得する。
(a)左画像の対応点が右画像の対応点よりも左に位置する。
(b)左画像の対応点が右画像の対応点よりも右に位置する。
この2つのパターンのいずれであるかを判定する。
【0198】
(a)左画像の対応点が右画像の対応点よりも左に位置する。
(a)の場合は、先に実施例4において説明した図17(a)を参照して説明すると、被写体Jの左画像と右画像の対応関係となる。
すなわち、左画像の対応点(J左画像)は、右画像の対応点(J右画像)よりも左に位置する。
なお、このような設定の場合、その被写体の観察される位置は、表示画面より奥側(観察者から遠い位置)となる。
【0199】
(b)左画像の対応点が右画像の対応点よりも右に位置する。
(b)の場合は、先に実施例4において説明した図17(a)を参照して説明すると、被写体Iの左画像と右画像の対応関係となる。
すなわち、左画像の対応点(I左画像)は、右画像の対応点(I右画像)よりも右に位置する。
なお、このような設定の場合、その被写体の観察される位置は、表示画面より手前側(観察者に近い位置)となる。
【0200】
以下では、
(a)左画像の対応点が右画像の対応点よりも左に位置する。
この場合のディスパリティを正のディスパリティとする。
(b)左画像の対応点が右画像の対応点よりも右に位置する。
この場合のディスパリティを負のディスパリティとする。
正のディスパリティの場合は、被写体の観察される位置は、表示画面より奥側(観察者から遠い位置)となる。
負のディスパリティの場合は、被写体の観察される位置は、表示画面より手前側(観察者に近い位置)となる。
【0201】
一般的なディスパリティマップは、左画像と右画像の各画素対応の正確な画素ずれ量(画素数)を保持する設定であるが、本実施例では、視差検出部301は、各画素または複数画素からなるブロックについて、上述のディスパリティの正負(極性)のみを検出する。
【0202】
視差検出部301は、この画素またはブロック対応のディスパリティ極性情報からなる粗いディスパリティマップを生成して、左画像変換部110の左画像微分処理部112と、右画像変換部120の右画像微分処理部122に入力する。
【0203】
なお、本実施例の画像処理装置300における視差検出部301の実行する視差検出処理は、視差の高い数値精度を得るような複雑な視差検出処理は必要ない。ディスパリティマップは、例えば微分処理部のフィルタ係数の制御に用いるが、画像の水平移動は、原理上、入力画像の空間周波数に依存するため、ディスパリティマップの空間解像度は視差制御の性能に大きく影響しない。従って、視差検出処理は縮小した画像を用いる構成としてもよい。または、入力画像を空間的に間引いた点のみで視差情報を検出する構成としてもよい。このような構成により、処理コストを削減することが可能である。
【0204】
左画像微分処理部112、および右画像微分処理部122は、それぞれ、入力されるディスパリティマップの対象画素位置での極性に応じて微分処理の態様を切り換える。具体的には、例えば、先に実施例1,2において説明した図6に示す設定の微分フィルタを適用した処理と、図12に示す設定の微分フィルタを適用した処理とを適宜、切り換える処理を行う。
すなわち、
(1)左画像を右方向にシフトし、右画像を左方向にシフトする処理(図6)、
(2)左画像を左方向にシフトし、右画像を右方向にシフトする処理(図12)、
これらのいずれかの処理をディスパリティマップの対象画素位置での極性に応じて切り換えて実行する。
【0205】
以下、図19および図20を参照して、ディスパリティの極性が2方向(表示画面の奥にも手前にも被写体が表示される)にあるような入力画像に対して、本実施例5の図18に示す画像処理装置300を適用した処理例として、以下の処理例について、順次説明する。
実施例5(a)視差範囲を縮小する実施例
実施例5(b)視差範囲を拡大する実施例
【0206】
(実施例5(a)視差範囲を縮小する実施例)
まず、図19を参照して、ディスパリティの極性判定情報を適用して視差範囲を縮小する処理を行う実施例について説明する。
【0207】
図19は、先の各実施例において説明したと同様、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲U1
(b)視差調整画像の視差範囲U8
なお、図19(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
本実施例では、観察者(ユーザ)が被写体の位置を表示画面の前後に実感される設定とした画像を入力画像としている。
【0208】
図19(a)は、先に実施例4において説明した図16(a)、図17(a)と同様、被写体が表示画面210の前後に観察される。すなわち、
被写体Kが表示画面210上に観察され、
被写体Lが表示画面210の手前(観察者側)に観察され、
被写体Mが表示画面210の奥側に観察される設定となった入力画像である。
図19(a)において、
被写体Kは、ディスパリティ=DH=0、
被写体Lは、ディスパリティ=DL(ディスパリティ極性=負(−))、
被写体Mは、ディスパリティ=DM(ディスパリティ極性=正(+))、
ここで、被写体Lのディスパリティは極性が負であり、被写体Lの像が表示画面210の手前に観察される設定であり、被写体Mのディスパリティは極性が正であり、被写体Mの像が表示画面210の奥に観察される設定である。
視差範囲は、被写体L〜Mの観察位置に相当する視差範囲[U1]となる。
【0209】
図19(b)は、本実施例5(a)に従って、図18に示す画像処理装置300において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体K8,L8,M8は、図19(a)のK,L,Mと同じ被写体であるが、前述したディスパリティ極性に応じた画像シフトを伴う画像変換処理が実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0210】
被写体K8はディスパリティ=0である。
被写体K8は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体K8の位置は表示画面210上の位置となる。
【0211】
被写体L8はディスパリティ=DL8となる。
被写体L8は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDL8であり、ディスパリティがDL8となる。
観察者が実感する被写体L8の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置L8となる。
ただし、観察者が実感する被写体L8の位置は、図19(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Lより観察者から遠い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは画像のシフト処理の結果である。
【0212】
このシフト処理においては、図19(a)に示す被写体LのディスパリティDLの極性が考慮される。
前述したように、被写体Lは、ディスパリティ=DL(ディスパリティ極性=負(−))である。すなわち、左画像の対応点(L左画像)は、右画像の対応点(L右画像)よりも右に位置する。
このようにディスパリティ極性=負(−)の画素位置(画素またはブロック)についての変換処理は、本実施例5(a)では、
「左画像を左方向にシフトし、右画像を右方向にシフトする処理(図12参照)」を実行する。
【0213】
すなわち、図12に示すように、左画像微分処理部113で、図12(L2)に示す係数[−1,0,1]により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力左画像については左方向に画像がずれた変換画像を生成する。
また、右画像微分処理部123では、図12(R2)に示す係数[1,0,−1]により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力右画像に対して右方向に画像がずれた変換画像を生成する。
【0214】
この画像変換処理により、被写体Lのディスパリティは、図19(a)の示すDLから図19(b)に示すDL8に変更される。結果として、左画像の対応点(L8左画像)と、右画像の対応点(L8右画像)の距離は小さくなり、結果として、被写体像L8は、変換前の図19(a)に示す被写体像Lの位置より、観察者から遠ざかる(表示画面210に近づく)方向に移動して設定される。
【0215】
一方、表示画面210の奥に位置する被写体Mは、画像変換前のディスパリティ=DMが、画像変換の結果、図19(b)に示すディスパリティ=DM8となる。
観察者が実感する被写体M8の位置は表示画面210より奥の位置M8となる。
ただし、観察者が実感する被写体M8の位置は、図19(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Mより観察者から近い(表示画面210に近い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0216】
このシフト処理においても、図19(a)に示す被写体MのディスパリティDMの極性が考慮される。
前述したように、被写体Mは、ディスパリティ=DM(ディスパリティ極性=正(+))である。すなわち、左画像の対応点(M左画像)は、右画像の対応点(M右画像)よりも左に位置する。
このようにディスパリティ極性=正(+)の画素位置(画素またはブロック)についての変換処理は、本実施例5(a)では、
「左画像を右方向にシフトし、右画像を左方向にシフトする処理(図6参照)」を実行する。
【0217】
すなわち、図6に示すように、左画像微分処理部113で、図6(L2)に示す係数[1,0,−1]により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力左画像については右方向に画像がずれた変換画像を生成する。
また、右画像微分処理部123では、図6(R2)に示す係数[−1,0,1]により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力右画像に対して左方向に画像がずれた変換画像を生成する。
【0218】
この画像変換処理により、被写体Mのディスパリティは、図19(a)の示すDMから図19(b)に示すDM8に変更される。結果として、左画像の対応点(M8左画像)と、右画像の対応点(M8右画像)の距離は小さくなり、結果として、被写体像M8は、変換前の図19(a)に示す被写体像Mの位置より、観察者に近づく(表示画面210に近づく)方向に移動して設定される。
【0219】
この結果、変換画像によって表示される3次元画像の視差範囲は、図19(b)に示す視差範囲[U8]となる。
変換後の視差範囲[U8]は、変換前の画像による視差範囲[U1]に比較して、表示画面の前後とも表示画面210に近づき、縮小された視差範囲となる。
【0220】
このように、本実施例5(a)によれば、表示画面の手前に観察される被写体と、表示画面の奥に観察される被写体について、それぞれ逆のパターンの微分フィルタ係数を用いた処理により、逆方向のシフト処理を実行する。すなわちディスパリティの極性に応じて異なるフィルタを選択適用して異なる方向への画像シフト処理(図6または図12)を実行する。
【0221】
この処理により、表示画面の手前に観察される被写体も、表示画面の奥に観察される被写体も、その観察位置を表示画面方向に移動させることが可能となり、結果として、より効率的に視差範囲を縮小(U1からU8)することが可能となる。
【0222】
(実施例5(b)視差範囲を拡大する実施例)
次に、図20を参照して、ディスパリティの極性判定情報を適用して視差範囲を拡大する処理を行う実施例について説明する。
【0223】
図20は、先の各実施例において説明したと同様、以下の各図を示している。
(a)入力画像の視差範囲U1
(b)視差調整画像の視差範囲U9
なお、図20(a),(b)には、さらに観察者(ユーザ)の左眼201、右眼202と、3次元画像表示を実行中の表示部の表示画面210を示している。
表示画面210上には、被写体距離に応じた様々な視差を持つ画像が提示される。
本実施例では、観察者(ユーザ)が被写体の位置を表示画面の前後に実感される設定とした画像を入力画像としている。
【0224】
図20(a)は、図19(a)と同様、被写体が表示画面210の前後に観察される。すなわち、
被写体Kが表示画面210上に観察され、
被写体Lが表示画面210の手前(観察者側)に観察され、
被写体Mが表示画面210の奥側に観察される設定となった入力画像である。
図20(a)において、
被写体Kは、ディスパリティ=DH=0、
被写体Lは、ディスパリティ=DL(ディスパリティ極性=負(−))、
被写体Mは、ディスパリティ=DM(ディスパリティ極性=正(+))、
ここで、被写体Lのディスパリティは極性が負であり、被写体Lの像が表示画面210の手前に観察される設定であり、被写体Mのディスパリティは極性が正であり、被写体Mの像が表示画面210の奥に観察される設定である。
視差範囲は、被写体L〜Mの観察位置に相当する視差範囲[U1]となる。
【0225】
図20(b)は、本実施例5(b)に従って、図18に示す画像処理装置300において変換された画像、すなわち例えば視差調整左画像(L2)50と、視差調整右画像(R2)60とによって表示される画像の観察状況を示している。
被写体K9,L9,M9は、図20(a)のK,L,Mと同じ被写体であるが、前述したディスパリティ極性に応じた画像シフトを伴う画像変換処理が実行されているため観察者によって観察される被写体位置が変化する。
【0226】
被写体K9はディスパリティ=0である。
被写体K9は、左画像と右画像が表示画面210上の同じ位置に表示されており、ディスパリティが0となる。
観察者が実感する被写体K9の位置は表示画面210上の位置となる。
【0227】
被写体L9はディスパリティ=DL9となる。
被写体L9は、左画像と右画像の表示画面210上の距離がDL9であり、ディスパリティがDL9となる。
観察者が実感する被写体L9の位置は表示画面210から手前、すなわち観察者側の位置L9となる。
ただし、観察者が実感する被写体L9の位置は、図20(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Lより観察者に近い(表示画面210から遠い)位置に設定される。これは画像のシフト処理の結果である。
【0228】
このシフト処理においては、図20(a)に示す被写体LのディスパリティDLの極性が考慮される。
前述したように、被写体Lは、ディスパリティ=DL(ディスパリティ極性=負(−))である。すなわち、左画像の対応点(L左画像)は、右画像の対応点(L右画像)よりも右に位置する。
このようにディスパリティ極性=負(−)の画素位置(画素またはブロック)についての変換処理は、本実施例5(b)では、先の実施例5(a)とは異なり、
「左画像を右方向にシフトし、右画像を左方向にシフトする処理(図6参照)」を実行する。
【0229】
すなわち、図6に示すように、左画像微分処理部113で、図6(L2)に示す係数[1,0,−1]により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力左画像については右方向に画像がずれた変換画像を生成する。
また、右画像微分処理部123では、図6(R2)に示す係数[−1,0,1]により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力右画像に対して左方向に画像がずれた変換画像を生成する。
【0230】
この画像変換処理により、被写体Lのディスパリティは、図20(a)の示すDLから図20(b)に示すDL9に変更される。結果として、左画像の対応点(L9左画像)と、右画像の対応点(L9右画像)の距離は大きくなり、結果として、被写体像L9は、変換前の図20(a)に示す被写体像Lの位置より、観察者に近づく(表示画面210から遠ざかる)方向に移動して設定される。
【0231】
一方、表示画面210の奥に位置する被写体Mは、画像変換前のディスパリティ=DMが、画像変換の結果、図20(b)に示すディスパリティ=DM9となる。
観察者が実感する被写体M9の位置は表示画面210より奥の位置M9となる。
ただし、観察者が実感する被写体M9の位置は、図20(a)に示す変換前の入力画像における被写体位置Mより観察者から遠い(表示画面210から遠い)位置に設定される。これは前述の画像のシフト処理の結果である。
【0232】
このシフト処理においても、図20(a)に示す被写体MのディスパリティDMの極性が考慮される。
前述したように、被写体Mは、ディスパリティ=DM(ディスパリティ極性=正(+))である。すなわち、左画像の対応点(M左画像)は、右画像の対応点(M右画像)よりも左に位置する。
このようにディスパリティ極性=正(+)の画素位置(画素またはブロック)についての変換処理は、本実施例5(b)では、
「左画像を左方向にシフトし、右画像を右方向にシフトする処理(図12参照)」を実行する。
【0233】
すなわち、図12に示すように、左画像微分処理部113で、図12(L2)に示す係数[−1,0,1]により微分を行い、微分信号、または微分信号の非線形処理結果を左画像に加算する合成処理により、入力左画像については左方向に画像がずれた変換画像を生成する。
また、右画像微分処理部123では、図12(R2)に示す係数[1,0,−1]により微分を行い、微分信号、または微分信号を非線形処理後に右画像に加算する合成処理により、入力右画像に対して右方向に画像がずれた変換画像を生成する。
【0234】
この画像変換処理により、被写体Mのディスパリティは、図20(a)の示すDMから図20(b)に示すDM9に変更される。結果として、左画像の対応点(M9左画像)と、右画像の対応点(M9右画像)の距離は大きくなり、結果として、被写体像M9は、変換前の図20(a)に示す被写体像Mの位置より、観察者から遠ざかる(表示画面210から遠ざかる)方向に移動して設定される。
【0235】
この結果、変換画像によって表示される3次元画像の視差範囲は、図20(b)に示す視差範囲[U9]となる。
変換後の視差範囲[U9]は、変換前の画像による視差範囲[U1]に比較して、表示画面の前後とも表示画面210から遠ざかり、拡大された視差範囲となる。
【0236】
このように、本実施例5(b)によれば、表示画面の手前に観察される被写体と、表示画面の奥に観察される被写体について、それぞれ逆のパターンの微分フィルタ係数を用いた処理により、逆方向のシフト処理を実行する。すなわちディスパリティの極性に応じて異なるフィルタを選択適用して異なる方向への画像シフト処理(図6または図12)を実行する。
【0237】
この処理により、表示画面の手前に観察される被写体も、表示画面の奥に観察される被写体も、その観察位置を表示画面方向から遠ざかる方向に移動させることが可能となり、結果として、より効率的に視差範囲を拡大(U1からU9)することが可能となる。
【0238】
なお、本実施例でも、変換対象画像となる画像において焦点が合った画素位置(被写体E)で最もディスパリティの変化が小さく、合焦位置から離れるに従ってディスパリティの変化が大きくなる設定としている。
【0239】
[F.実施例6:シフト態様の制御用の信号を入力可能とした構成を有する実施例]
次に、シフト態様の制御のための制御信号を入力可能とした構成を有する実施例について図21〜23を参照して説明する。
上述の実施例では、図1に示す構成において、左画像微分器112と右画像微分器122において適用する微分フィルタ係数について、図6や図12を参照して説明したように、[−1,0,1]と[1,0,−1]の組み合わせを利用する構成としている。
【0240】
具体的には、以下のような設定となっている。
実施例1では、図6に従った微分フィルタ係数の設定(左画像微分器:[1,0,−1]、右画像微分器[−1,0,1])として、左画像を右方向にシフト、右画像を左方向にシフトする設定。
実施例2では図12に従った設定(左画像微分器:[−1,0,1]、右画像微分器[1,0,−1])として、左画像を左方向にシフト、右画像を右方向にシフトする設定。
実施例3(a)では図12に従った設定、
実施例3(b)では図6に従った設定、
実施例4(a)では図6に従った設定、
実施例4(b)では図12に従った設定、
実施例5(a)では図12に従った設定、
実施例5(b)では図6に従った設定、
このように、各実施例において、各微分器において適用する微分フィルタ係数を設定している。
この微分フィルタ係数の設定態様に応じて、画像のシフト方向の制御が可能となる。
また、微分フィルタ係数は、[−1,0,1],[1,0,−1]のような組み合わせに限らず、[−2,0,2],[2,0,−2]、さらには、[−1,−0.5,0,0.5,1],[1,0.5,0,−0.5,−1]の組み合わせ、あるいは一次微分フィルタ以外の2次元フィルタを適用するといった様々な設定が可能であり、この様な微分フィルタ係数の変更により、シフト態様を変更することが可能となる。
【0241】
また、上述の実施例1〜5では、左線形変換部113、および右線形変換部123では、例えば図3に示すパターンに従った非線形変換処理を実行すると説明した。
前述したように、この変換パターンを調整することで、シフト態様を制御できる。具体的には、例えば焦点のあった領域とボケ領域とのシフト比率などを変更する制御が可能となる。
【0242】
実施例6では、シフト方向やシフト態様を制御するための制御信号入力部を設けた構成である。
図21に示す画像処理装置400は、図1に示す画像処理装置100に制御信号入力部401を追加した構成を有する。その他の構成は、図1に示す構成と同一である。
【0243】
画像処理装置400は、図21に示すように左画像(L1画像)10を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整左画像(L2画像)50を生成する左画像変換部110と、右画像(R1画像)20を入力して画像変換を行い、視差調整が施された視差調整右画像(R2画像)60を生成する右画像変換部120、さらに、視差検出部301を有する。
【0244】
左画像変換部110は、左画像(L1)10を入力する左画像入力部111、左画像10の微分処理を行う左画像微分処理部112、左画像10の微分信号を非線形変換する左非線形変換部113、左画像10と非線形変換された微分信号を合成する左画像合成部114、変換後の視差調整左画像(L2)50を出力する左画像出力部115から構成される。
【0245】
右画像変換部120は、右画像(R1)20を入力する右画像入力部121、右画像20の微分処理を行う右画像微分処理部122、右画像20の微分信号を非線形変換する右非線形変換部123、右画像20と非線形変換された微分信号を合成する右画像合成部124、変換後の視差調整右画像(R2)60を出力する右画像出力部125から構成される。
この左画像変換部110と右画像変換部120は、先に実施例1〜4において説明した処理と同様の処理を実行する。
【0246】
制御信号入力部401は、左画像微分器112と右画像微分器122において適用する微分態様を制御するための制御信号、および、左画像非線形変換部113と、右画像非線形変換部123に変換処理の制御信号を入力する。
【0247】
微分器の微分フィルタの設定制御構成の具体例について図22を参照して説明する。図22は、左画像微分器112の内部構成例を示す図である。
左画像微分器112は、フィルタ選択部421、微分フィルタ適用部422を有する。
【0248】
微分フィルタ適用部422は、複数の異なる微分フィルタ係数を選択適用可能な構成を有している。フィルタ選択部421は、制御信号入力部401からの制御信号に応じて、特定の微分フィルタを選択し、選択した微分フィルタによって、左画像入力部111から入力する左画像の輝度信号に対する微分処理を実行する。
例えばこのような構成により、様々な微分フィルタ係数を適用した微分処理が実現される。
なお、図22は左画像微分器112の構成例として説明したが、右画像微分器122も同様の構成を有し、様々な微分フィルタ係数を適用した微分処理が実現される。
【0249】
図21に示すように、制御信号入力部401の制御信号は、左画像非線形変換部113と、右画像非線形変換部123にも制御信号を入力する。
左画像非線形変換部113と、右画像非線形変換部123に入力される制御信号は、微分信号の変換処理態様を制御する信号である。先に説明した実施例では、例えば図3に示すパターンに従った非線形変換処理を実行する構成として説明したが、本実施例では、制御信号によって、変換パターンを様々な態様に制御可能な構成としている。制御信号は、例えば入力(In)に対して適用する関数Fとして設定可能である。
この制御信号としての関数Fによって、
出力Out=F(In)が決定される。
このように変換パターンを調整することで、シフト態様を制御できる。具体的には、例えば焦点のあった領域とボケ領域とのシフト比率などを変更する制御が可能となる。
なお、変換処理は非線形に限らず線形変換とする設定としてもよい。
【0250】
このように、図21に示す画像処理装置400は、左画像微分器112と右画像微分器122において適用する微分態様を制御するための制御信号、および、左画像非線形変換部113と、右画像非線形変換部123に変換処理の制御信号を入力可能な構成とした。
【0251】
この制御信号の入力により、画像のシフト方向やシフト態様の制御が可能となる。
例えば変換後の画像を表示部に表示させて、表示画像をユーザが観察しながら制御信号を変更するといった処理により、ユーザの好みの視差範囲の設定や3次元画像の設定を実現することが可能となる。
【0252】
図21を参照して説明した構成は、前述した実施例1〜4の構成として説明した図1の画像処理装置に制御信号入力部401を追加した構成であるが、実施例5の構成として説明した図18に示す画像処理装置300に制御信号入力部を追加した構成としてもよい。図23に、この画像処理装置500の構成例を示す。
【0253】
図23に示す画像処理装置500は、先に実施例5の画像処理装置として説明した図18に示す画像処理装置300に制御信号入力部501を追加した構成である。
左画像変換部110、右画像変換部120、視差検出部301の構成および実行する処理は先に実施例5において説明したとほぼ同様である。
ただし、図23に示す画像処理装置500は、左画像微分器112と右画像微分器122において適用する微分態様を制御するための制御信号、および、左画像非線形変換部113と、右画像非線形変換部123に変換処理の制御信号を入力可能な構成である。
【0254】
この制御信号の入力により、画像のシフト方向やシフト態様の制御が可能となる。
例えば変換後の画像を表示部に表示させて、表示画像をユーザが観察しながら制御信号を変更するといった処理により、ユーザの好みの視差範囲の設定や3次元画像の設定を実現することが可能となる。
【0255】
なお、上述した実施例において、入力画像をそのまま適用して変換する処理構成として説明したが、各画像入力部で入力した画像(左画像10、右画像20)に対して縮小処理や間引き処理を実行し、その後、微分処理、非線形変換、合成処理、あるいは視差検出処理を実行する構成としてもよい。このような処理構成とすることで、データ処理量を削減することが可能となる。なお、実施例5において説明したように、視差検出部301の視差検出処理のみを縮小画像あるいは間引き処理画像を適用した処理として実行する構成としてもよい。
【0256】
また、上記した各実施例では、左画像微分器と右画像微分器とで微分フィルタ係数のパターンを逆系列とした設定の微分フィルタを適用する構成としたが、左画像微分器と右画像微分器とで同じ微分フィルタ係数を用いて微分処理を実行し、その後の合成処理において、一方(例えば左画像)は、微分信号(または微分信号を非線形変換した信号)を原画像信号に加算し、他方(例えば右画像)は原画像信号に対する減算処理を実行する構成としても同様の効果を奏することができる。
【0257】
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0258】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0259】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0260】
以上、説明したように、本発明の一実施例構成によれば、立体画像表示に適用する左画像と右画像の視差制御を行なう装置、方法が提供される。本発明の画像処理装置は、左眼提示用の左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換部と、右眼提示用の右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換部を有する。各画像変換部は、例えば入力画像に対して逆特性の係数列の微分フィルタ係数を適用した微分信号を生成し、該微分信号またはこの微分信号の非線形信号を原画像信号に加算する合成処理により視差を制御した変換信号を生成する。本処理により視差範囲の縮小または拡大等の処理が実現される。
【符号の説明】
【0261】
10 左画像(L1画像)
20 右画像(R1画像)
50 視差調整左画像(L2画像)
60 視差調整右画像(R2画像)
100 画像処理装置
110 左画像変換部
111 左画像入力部
112 左画像微分処理部
113 左非線形変換部
114 左画像合成部
115 左画像出力部
120 右画像変換部
121 右画像入力部
122 右画像微分処理部
123 右非線形変換部
124 右画像合成部
125 右画像出力部
300 画像処理装置
301 視差検出部
400 画像処理装置
401 制御信号入力部
421 フィルタ選択部
422 微分フィルタ適用部
500 画像処理装置
501 制御信号入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換部と、
立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換部を有し、
前記左画像変換部、および右画像変換部は、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出し、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成する画像処理装置。
【請求項2】
前記左画像変換部は、
前記特徴量として前記左画像の画像信号の微分信号を生成する左画像微分器と、
前記左画像の微分信号、または該微分信号の変換信号を前記左画像信号に加算する合成処理を実行して前記左画像変換画像を生成する左画像合成部を有し、
前記右画像変換部は、
前記特徴量として前記右画像の画像信号の微分信号を生成する右画像微分器と、
前記右画像の微分信号、または該微分信号の変換信号を前記右画像信号に加算する合成処理を実行して前記右画像変換画像を生成する右画像合成部を有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記左画像変換部は、
前記前記左画像の微分信号の非線形変換処理を実行する左画像非線形変換部を有し、前記左画像合成部は、前記左画像非線形変換部の生成した変換信号を前記左画像信号に加算する合成処理を実行して前記左画像変換画像を生成し、
前記右画像変換部は、
前記前記右画像の微分信号の非線形変換処理を実行する右画像非線形変換部を有し、前記右画像合成部は、前記右画像非線形変換部の生成した変換信号を前記右画像信号に加算する合成処理を実行して前記右画像変換画像を生成する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、逆パターンの微分フィルタ係数列を有する一次微分フィルタを適用した微分処理を実行する請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、同一の微分態様による微分処理を実行し、
前記左画像合成部と前記右画像合成部のいずれか一方は、各画像の微分信号または該微分信号の変換信号を入力画像信号に加算し、他方が入力画像信号から減算する処理を行う請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、入力画像信号の輝度信号の微分処理を実行する請求項2〜5いずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理装置は、さらに、
画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像における同一被写体部に相当する対応点の配置を解析して視差情報を生成する視差検出部を有し、
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、前記視差検出部の生成する前記視差情報に応じて、微分処理態様を変更して微分処理を実行する請求項2〜6いずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記視差検出部は、
画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像における同一被写体部に相当する対応点の配置が、
(a)左画像の対応点が右画像の対応点よりも左に位置する、
(b)左画像の対応点が右画像の対応点よりも右に位置する、
上記(a),(b)いずれの設定にあるかを示すディスパリティ極性情報を生成し、
前記左画像微分器と前記右画像微分器は、前記視差検出部の生成するディスパリティ極性情報に応じて、逆パターンの微分フィルタ係数列を有する一次微分フィルタを適用した微分処理を実行する請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記視差検出部は、
画像処理装置に入力する前記左画像と前記右画像の縮小画像または間引き画像を適用して視差情報を生成する請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像処理装置は、さらに、
前記左画像微分器と前記右画像微分器の微分処理態様、または前記左画像非線形変換部と前記右画像非線形変換部における変換処理態様の少なくともいずれかを変更制御するための制御信号を入力する制御信号入力部を有する請求項3〜9いずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
画像処理装置において実行する画像処理方法であり、
左画像変換部が、立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成する左画像変換ステップと、
右画像変換部が、立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成する右画像変換ステップを有し、
前記左画像変換ステップ、および右画像変換ステップは、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出し、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成するステップである画像処理方法。
【請求項12】
画像処理装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
左画像変換部に、立体画像表示に適用する左眼提示用の左画像を入力し、左画像の画像信号を右方向または左方向に位相変化させて左画像変換画像を生成させる左画像変換ステップと、
右画像変換部に、立体画像表示に適用する右眼提示用の右画像を入力し、右画像の画像信号を左方向または右方向に位相変化させて右画像変換画像を生成させる右画像変換ステップを実行させ、
前記左画像変換ステップ、および右画像変換ステップにおいて、各入力画像の画像信号の特徴量を抽出させ、抽出特徴量を適用した画像変換処理により、前記左画像変換画像、および前記右画像変換画像を生成させるプログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−166606(P2011−166606A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29239(P2010−29239)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】