画像処理装置、撮像処理装置、画像処理方法、および、画像処理装置の制御プログラム
【課題】高解像度で高フレームレートの動画像を生成可能な撮像処理装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明の撮像処理装置は、可視光を、少なくとも第1および第2色成分に分離する分離部102と、第1色成分の動画像を撮影する第1撮像部103と、第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部104とを備えている。第1撮像部103は、第1電荷蓄積期間で露光して、動画像の各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する。第2撮像部104は、第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、動画像の各画像を第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する。更に、この撮像処理装置は、第1、第2撮像部103、104における撮像条件を制御する制御部120と、第1色成分および第2色成分の各動画像の情報に基づいて時間解像度を高めた第2成分の動画像を生成するアップコンバータ106とを備えている。
【解決手段】本発明の撮像処理装置は、可視光を、少なくとも第1および第2色成分に分離する分離部102と、第1色成分の動画像を撮影する第1撮像部103と、第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部104とを備えている。第1撮像部103は、第1電荷蓄積期間で露光して、動画像の各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する。第2撮像部104は、第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、動画像の各画像を第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する。更に、この撮像処理装置は、第1、第2撮像部103、104における撮像条件を制御する制御部120と、第1色成分および第2色成分の各動画像の情報に基づいて時間解像度を高めた第2成分の動画像を生成するアップコンバータ106とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像の画像処理に関する。より具体的には、撮影された動画像の解像度およびフレームレートの少なくとも一方を画像処理によって高くした動画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像入力の分野では、携帯電話用カメラやデジタルスチルカメラの多画素化、画素の小型化が進んでいる。
【0003】
空間解像度は、撮像機器に求められる画質に応じて大きく異なる。例えばTV電話の解像度は、QCIF(Quarter Common Intermediate Format、横176画素、縦144画素)程度、または、QVGA(Quarter Video Graphics Array、横320画素、縦144画素)程度の比較的低い画素数である。一方、デジタル一眼レフカメラの解像度は、1000万画素を超えている。
【0004】
時間解像度も使い分けられている。例えば、HDTVまでの画素数の時間解像度については、民生機器によるビデオレート(30フレーム/秒)での撮像が実現されている。しかしながら、それ以上の画素数での撮像については、そのフレームレートは、デジタルスチルカメラに搭載されている連写機能による毎秒数フレームにとどまっている。
【0005】
一方、映像表示の分野では、フラットパネルディスプレイが急激な勢いで普及している。これに伴い、今後、様々な解像度のカメラとディスプレイの組み合わせにより、ユーザが映像を視聴することが予測される。
【0006】
入力側のカメラの時空間解像度(「時間解像度および空間解像度」を意味する。以下同様)と出力側のディスプレイの時空間解像度とを比較すると、現状の民生機器では出力側のディスプレイの方が高い。そのため、出力側の性能を最大限に発揮させる映像を一般ユーザが手軽に入力できる状況にない。このような状況になった理由として、これまでは読み出しスピードがボトルネックとなっていたことが挙げられる。高空間解像度の撮影は毎秒5フレーム程度までに限られ、逆に、毎秒30フレームの撮影はHDTVの空間解像度までに限られていた。したがって、高い空間解像度画像で、かつ高いフレームレートでの撮像は困難であった。
【0007】
上記の課題に対し、特許文献1から3は、高空間解像度と高フレームレートの撮像を両立するための方式として、2系統のカメラにより時間解像度と空間解像度の異なる画像を入力し、信号処理によって高空間解像度で高フレームレートの画像を生成する方式を提案している。これらの特許文献には図20に示す構成が記載されている。
【0008】
図20は、従来の撮像装置の構成を示す。撮像装置に入射した光は、その一部がハーフミラー171を透過し、第1カメラ172に入射する。その結果、低解像度、高フレームレートの動画像が撮影される。一方、撮像装置に入射した光のうち、ハーフミラー171で反射した光は、第2カメラ173に入射する。その結果、高解像度、低フレームレートの動画像が撮影される。
【0009】
アップコンバータ174は、第1カメラ172および第2カメラ173で撮影された各動画像を受け取り、画像処理を行って高解像度かつ高フレームレートの動画像を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−143439号公報
【特許文献2】特表2005−515675号公報
【特許文献3】特開2005―318548号公報
【特許文献4】特許3934151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の撮像装置は、基本的にはモノクロ画像に対する処理を想定して構成されているため、赤(R),緑(G),青(B)の3チャネルからなるカラー画像に適用すると、処理量が3倍必要になる。また、処理後の画像中のエッジ付近でR,G,Bの各色に相関がなくなるために偽色が発生することがあり、画質低下を引き起こしていた。
【0012】
本発明は上述の課題を解決するものであって、その目的は、演算量を低減させ、かつ、偽色の発生を抑えて、カラー画像の高解像度化を行うことのできる画像処理装置、撮像処理装置、画像処理方法、および、画像処理装置の制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像処理装置は、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成分および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取り、処理を行う画像処理装置であって、前記第1色成分の動画像の情報および前記第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する第1アップコンバータと、前記第1色成分および前記第3色成分の各動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および前記第3色成分の動画像を生成する第2アップコンバータとを備え、前記第1アップコンバータは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する。
【0014】
好ましい実施形態において、前記第1色成分、前記第2色成分、および前記第3色成分は、それぞれ、赤、緑、および青である。
【0015】
好ましい実施形態において、前記色間にまたがる滑らかさの拘束条件は、前記第1から第3色成分によって定まる色空間内における近傍画素値間の連続性を規定する式によって表現される。
【0016】
好ましい実施形態において、前記色空間における画素値の3つの座標成分は、それぞれ、前記第1から第3色成分の線形和である。
【0017】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータは、前記評価値が最小化するように、前記第2成分の動画像を構成する画素値を算出する。
【0018】
好ましい実施形態において、前記評価値は、撮像したシーン中の動きに沿った画素値変化についての拘束条件を含む。
【0019】
好ましい実施形態において、前記評価値の最小化は、疎な係数行列の連立方程式を、係数が固定のフィルタ演算と係数が画像の内容に応じて変化するフィルタ演算とに分解して演算することによって行う。
【0020】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの大きさがしきい値以上の領域についてのみ演算することによって行う。
【0021】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めることによって行う。
【0022】
好ましい実施形態において、第1アップコンバータは、前記動画像の動きの大きさに応じて前記評価値を変化させる。
【0023】
本発明の撮像処理装置は、第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光から前記第2成分を分離する分離部と、前記第1色成分および第3色成分の動画像を撮影する第1撮像部であって、第1電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する第1撮像部と、前記第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部であって、前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する第2撮像部と、前記第1撮像部および前記第2撮像部における撮影条件を制御する制御部と、上記いずれかの画像処理装置とを備える。
【0024】
本発明の他の撮像処理装置は、第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光を受け、前記第1色成分および第3色成分の光については第1電荷蓄積期間で露光することにより前記第1色成分および第3色成分の前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、前記第2色成分の光については前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光することにより前記第2色成分の前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する撮像部と、前記撮像部における撮影条件を制御する制御部と、上記いずれかの画像処理装置とを備える。
【0025】
本発明の画像処理方法は、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップとを含む画像処理方法であって、前記第1アップコンバートステップは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する。
【0026】
本発明による画像処理装置の制御プログラムは、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップとを前記画像処理装置に実行させ、前記第1アップコンバートステップは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の撮像処理装置によれば、解像度とフレームレートが異なる複数の色成分の動画像から、解像度とフレームレートがともに高い多色動画像を生成することが可能になる。複数の色成分の動画像の各々は、ハーフミラーなどを用いることなく、例えばダイクロイックミラーを用いて、入射光を色成分ごとに分離して撮影される。そのため、HDTV以上に高解像度化したカラー画像を動画として得るという効果や、HDTV用のカラーカメラをより小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1による撮像処理装置の構成を示す図である。
【図2】G用アップコンバータ106の構成をより詳細に示す図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ、ブロックマッチングによって動き検出を行うときの基準フレームおよび参照フレームとを示す図である。
【図4】G用アップコンバータにおける積和演算のフィルタ実装の説明図である。
【図5】R,B用アップコンバータ107の構成をより詳細に示す図である。
【図6】他の例によるR,B用アップコンバータ107の構成を詳細に示す図である。
【図7】相関値ρと重みW2との関係の例を示す図である。
【図8】R,B用アップコンバータ107の構成の変形例を示す図である。
【図9】実施形態1の変形例による撮像処理装置11の構成を示す図である。
【図10】撮像処理装置1を一般化した撮像処理装置13の構成を示す図である。
【図11】実施形態2の撮像処理装置におけるG用アップコンバータ106の他の構成例を示す図である。
【図12】実施形態2における領域分割部172による領域分割の一例を示す。
【図13】実施形態2における時間解像度アップコンバータの構成例を示す図である。
【図14】実施形態3による撮像装置901、ネットワーク902および処理装置903で構成された画像処理システムの例を示す図である。
【図15】本発明の入力画像の構成を示すデータ図である。
【図16】コンピュータによって構成された画像処理装置のハードウェアを示す図である。
【図17】本発明の処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】図17に示すステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】他の例によるステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】従来の撮像装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による撮像処理装置1の構成を示す図である。
【0031】
撮像処理装置1は、レンズ系101と、ダイクロイックミラー102と、第1撮像部103と、第2撮像部104と、画像処理部105と、制御部120とを有している。以下、まず各構成要素の機能を概説し、その後、撮像処理装置1の動作に関連して各構成要素の動作を詳述する。
【0032】
レンズ系101は、撮像処理装置1の外部から入射した光、すなわち被写体の像を集束させる。ダイクロイックミラー102は、光の赤(R)成分および青(B)成分を透過させ、光の緑(G)成分を反射する色分離部として機能する。すなわちダイクロイックミラー102は、入射した光を、「赤(R)成分および青(B)成分」と「緑(G)成分」とに分離する。なお、本明細書では、赤成分を「R成分」、緑成分を「G成分」、青成分を「B成分」とも記述する。
【0033】
第1撮像部103は、入射光(ここでは光のR成分およびB成分)に基づいて、短時間の露光時間、低解像度および高フレームレートでR成分およびB成分の動画像をそれぞれ撮影する。そして、得られたデータを出力する。なお、R成分の動画像およびB成分の動画像をそれぞれ取得するために、第1撮像部103は、内部にダイクロイックミラーを有し、かつ、R成分およびB成分をそれぞれ検出する2つの撮像素子を備えていてもよい。第1撮像素子103の他の例は、R成分およびB成分の両方を含む光が1つの撮像素子(単板式)に入射する構成を有していても良い。その場合、その撮像素子の前面に、R成分を透過しB成分を透過しないRフィルタと、B成分を透過しR成分を透過しないBフィルタが2次元的に交互に配列されていても良い。カラーフィルタを用いると、光の利用効率が低下するため、後述するように入射光の波長に応じてフォトダイオードに進入する光の深さが異なることを利用して色信号を生成するフィルタレス撮像素子を用いても良い。
【0034】
第2撮像部104は、入射光(ここでは光のG成分)に基づいて、長時間の露光時間、高解像度および低フレームレートで動画像を撮影し、G成分の動画像のデータを出力する。
【0035】
画像処理部105は、R成分およびB成分の光に対応する動画像のデータ、およびG成分の光に対応する動画像のデータを受け取り、それぞれを、画像処理によって高解像度および高フレームレートの動画像に変換して出力する。
【0036】
画像処理部105は、G用アップコンバータ106およびRB用アップコンバータ107を備えている。
【0037】
G用アップコンバータ106は、G成分のフレームレートを高めた高解像度、高フレームレートの動画像のデータを生成する。R,B用アップコンバータ107は、R成分およびB成分の解像度を高め、高解像度、高フレームレートの動画像のデータを生成する。動画像は、1枚または複数枚の画像を所定のフレームレートで連続して切り替えて表示される。R,B用アップコンバータ107による解像度を高める処理は、動画像を構成する各画像の画素数を増加させることを意味する。
【0038】
G用アップコンバータ106およびR,B用アップコンバータ107の詳細は後述する。
【0039】
制御部120は、第1撮像部103および第2撮像部104を利用して動画像を撮影するときの撮像条件を制御する。そしてその制御情報を、G用アップコンバータ106およびR,B用アップコンバータ107に出力する。
【0040】
次に、撮像処理装置1の動作とともに各構成要素の動作を詳述する。
【0041】
レンズ系101は、被写体の像が、第1撮像部103および第2撮像部104の撮像素子上に結ばれるように、その位置が調整される。レンズ系101を通った光は、ダイクロイックミラー102によって「R成分およびB成分」と「G成分」とに分離される。
【0042】
上記R成分およびB成分の動画像は、制御部120から指示された撮像条件、すなわち、短時間露光、低空間解像度、高フレームレートで、第1撮像部103によって撮影される。ここで、「低空間解像度」とは、例えば、NTSCの1フレームの画素数(水平720画素×垂直480画素)程度か、もしくは、それ以下のVGA(Video Graphics Array:水平640画素×垂直480画素)程度の画素数の空間解像度をいう。「高フレームレート」とは、30fps(フレーム/秒)ないし60fps程度をいう。「短時間露光」とは、最長でもフレームレートで決まる上限値(本実施形態の場合、30分の1秒ないし60分の1秒)以下の時間で露光することをいう。
【0043】
上記G成分の動画像についても、制御部120から指示された撮像条件、すなわち、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートの撮像条件で、第2の撮影部104によって撮影される。ここで、「高空間解像度」とは、例えば、一般的なデジタルスチルカメラの画素数(例えば水平約4000画素、垂直約3000画素)の空間解像度をいう。「低フレームレート」とは、第1撮像部103の数分の1から10分の1ないし20分の1程度のフレームレート(例えば3fps(フレーム/秒))をいう。「長時間露光」とは、前記低フレームレートの値で決まる時間(例えば1/3秒)を上限として露出することをいう。
【0044】
本実施形態においては、第1撮像部103および第2撮像部104は、制御部120によって同期制御されて動作する。しかしながら、同期して動作することは必須ではない。
【0045】
なお、上述した露光時間の長短、空間解像度の高低、フレームレート(時間解像度)の高低は、第1撮像部103および第2撮像部104における相対的な撮像条件を意味する。カラー画像のR成分およびB成分の露光時間は、G成分の露光時間よりも短ければよい。R成分およびB成分の空間解像度(ここでは画素数に対応)は、G成分のそれよりも低ければよい。R成分およびB成分のフレームレートは、G成分のそれよりも高ければよい。例示した上述の数値範囲に限定されることはない。
【0046】
以下、本明細書では、空間解像度が高く(H)フレームレートが低い(L)、Gの色成分の動画像をGHLと標記する。そして、空間解像度が低く(L)、フレームレートが高い(H)、RおよびBの色成分の動画像を、それぞれ、RLH、BLHと表記する。これらの各符号において、1文字目が色成分を表し、2文字目(第1の添え字)が空間解像度を表し、3文字目(第2の添え字)がフレームレート(時間解像度)を表す。
【0047】
G用アップコンバータ106は、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートで撮像されたG画像GHLのデータと、短時間露光、低空間解像度、高フレームレートで撮像されたR画像RLHおよびB画像BLHのデータを受け取る。そして、G用アップコンバータ106は、G画像GHL、R画像RLH、およびB画像BLHのデータに基づいて、G画像GHLの時間解像度を高めたG画像GHHを生成し、出力する。すなわち、G用アップコンバータ106は、同じ解像度でフレームレート(時間解像度)を高めた合成動画像を生成する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、空間解像度の低い領域(低空間周波数域)でのGB間、GR間の局所的な相関関係をゲイン係数として用いて、G画像の高域成分(空間周波数の高い成分)をR、Bに重畳する。色間の相関関係は、色間の波長差が小さいほど高くなるため、R画像またはB画像を高空間解像度・低フレームレートで取得すよりも、G画像を高空間解像度・低フレームレートで取得する方が、色間の相関関係が高まり、高域成分の重畳が効率よく行える。このため、本実施形態では、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートでG画像GHLの撮像を行っている。
【0049】
図2は、G用アップコンバータ106の構成をより詳細に示す。図2において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
G用アップコンバータ106は、動き検出部108および時間解像度アップコンバータ109を有している。
【0051】
動き検出部108は、ブロックマッチング、勾配法、位相相関法等の既存の公知技術によって、RLH、BLHから動き(オプティカルフロー)を検出する。公知技術として、例えばJ. L. Barron, D. J. Fleet, S. S. Beauchemin, and T. A. Burkitt. "Performance of Optical Flow Techniques", In Proc. Computer Vision and Pattern Recognition, pp. 236-242, 1992が知られている。
【0052】
図3(a)および(b)は、それぞれ、ブロックマッチングによって動き検出を行うときの基準フレームおよび参照フレームを示している。動き検出部108は、基準とするフレーム(動きを求めるべく着目している時刻tにおける画像)内に、図3(a)に示す窓領域Aを設定する。そして、窓領域内のパターンと類似するパターンを参照フレーム内で探索する。参照フレームとして、例えば着目フレームの次のフレームが利用されることが多い。
【0053】
探索範囲は、図3(b)に示すように、通常、移動量ゼロの位置Bを基準に予め一定の範囲(同図3(b)中のC)が設定される。また、パターンの類似の度合い(程度)は、(数1)に示す残差平方和(SSD:Sum of Square Differrences)や、(数2)に示す残差絶対値和(SAD:Sum ofAbsoluted Differences)を評価値として計算することによって評価する。
【数1】
【数2】
【0054】
(数1)および(数2)において、x,y∈Wは、基準フレームの窓領域内に含まれる画素の座標値を意味する。
【0055】
動き検出部108は、探索範囲内で(u,v)を変化させることにより、上記評価値を最小とする(u,v)の組を探索し、これをフレーム間での動きベクトルVとする。窓領域の設定位置を順次シフトさせることによって、動きを画素毎もしくはブロック毎(例えば8画素×8画素)に求める。
【0056】
再び図2を参照する。時間解像度アップコンバータ109は、第1撮像部103によって撮像されたR画像RLHおよびB画像BLH、第2の撮影部104によって撮像されたG画像GHL、および、動き検出部108によって検出された動きベクトルVの各データを受け取り、GHLを高解像度化しGHHとして出力する。
【0057】
ここで、GHLの高解像度化は、下記の(数3)を最小化するGHHを求めることによって行われる。
【数3】
【0058】
(数3)の右辺における第1項はGHHとGHLの対応画素間の輝度差を示す項、第2項は「動き拘束」を示す項であり、第3項、第4項および第5項は「滑らか拘束」を示す項である。ここで、GHH、GHL、RLH、BLHは動画像の各画素を要素とする縦ベクトル、HTは長時間露光による光の加算をモデル化した行列、λmは動き拘束に対する重み、λsC1、λsC2、λsC3は滑らかさ拘束に対する重み、C1、C2、C3は3次元の色空間中に定義したRGBとは異なる3色の成分の縦ベクトル(動画像の各画素を要素とする縦ベクトル)、QsH、QsVは水平および垂直方向の滑らかさ拘束(色空間中に定義した3軸、C1、C2、C3についてそれぞれ評価する)、Qmは動き拘束を、それぞれ表している。なお、GHHのフレームレートがGHLのフレームレートよりも高いため、GHHの画素数(縦ベクトルの要素数)はGHLの画素数(縦ベクトルの要素数)よりも大きい。
【0059】
制御部120によって第1撮像部103よび第2撮像部104に設定される撮影条件は、少なくとも上記HT、Qm、λsC1、λsC2、λsC3に反映される。なお、数3の左辺Jはスカラーである。上記の「撮影条件」は、第1撮像部103および第2撮像部104の各々の空間解像度または露光時間、あるいは、空間解像度の比または露光時間の比である。これらのことから、(数3)の第1項は、「撮像過程で決まる拘束条件」であると言える。
【0060】
上記(数3)を最小化するGHHとは、与えられた拘束条件の線形和をもっともよく満足するGHHを意味する。右辺の各項の導出過程は後述する。
【0061】
上記、C1、C2、C3は、それぞれ、RLH、GHH、BLHから以下の式によって計算される。
【数4】
【0062】
ここで、c11からc33は、R、G、B色空間からR、G、B色空間とは異なる別の色空間C1、C2、C3への色変換係数、Mは空間的な拡大(いわゆる補間拡大)を行う係数行列である。すなわち、(数4)は、C1、C2、C3が補間拡大されたRLH、BLHとGHHの線形和で表されることを示している。
【0063】
時間解像度アップコンバータ109は、下記(数5)に基づいて(数3)を最小化するGHHを得る。(数5)は、上記(数4)を(数3)に代入し、GHHで偏微分することによって得られる。
【数5】
【0064】
その結果、時間解像度アップコンバータ109は、(数6)に示す連立方程式を解くことによってGHHを得る。
【数6】
【0065】
(数6)は共役勾配法や最急降下法等の既存の数値計算法(連立方程式の解法)を用いることによって解くことができる。
【0066】
時間解像度アップコンバータ109が、入力されたGHLの時間解像度を上述の手順によって高めたGHHを求める処理は、単位時間当たりのフレーム数を多くする処理(すなわち時間解像度を高める処理)だけではなく、ぼけた画像をくっきりした(シャープな)画像に変換する処理も含んでいる。G成分の動画像は、第2撮像部104によって高空間解像度で撮影されているが、長時間露光の影響で画像の一部がぼけていることもありえる。このため、低フレームレートで撮影された画像のフレームレートを高めると、時間解像度のみならず空間解像度も高められるという効果(シャープ化)が生じる。従って、時間解像度のアップコンバートを行うと、時間解像度および空間解像度の両方が向上するため、これらを総称して「(時空間)解像度が高められる」と表現することが可能である。
【0067】
以下に、(数3)の各項の意味、働きについてより詳細に説明する。
【0068】
(数3)の第1項は、解像度が高められたGHHから予測される長時間露光画像(HTGHH)と、実際の観測によって得た長時間露光画像GHLとの差異を示す。これは、解像度が高められたGHHと、長時間露光画像GHLとの時空間的な対応関係を表している。ここで、HTでは行の数が列の数より少ない。これは、GHLが長時間露光画像であって、GHHよりもフレームレートが低い(すなわち、トータルの画素数が少ない)ことからも理解できる。そのため、仮に(数3)の左辺を第1項だけにすると、解くべき問題(すなわち連立方程式)が一意に解けない不良設定問題となる。
【0069】
この不良設定問題を良設定問題に変更するために、(数3)の第1項には第2項、第3項、第4項、第5項が付加されている。
【0070】
(数3)の第2項は、画像中の動きに関する拘束を規定する項である。ここでは、動画像中の各点が明るさを変えずに移動していくことを仮定している。第2項中の行列Qmは、動画像中で検出された動きベクトルの始点と終点の画素に関係する要素だけが、それぞれ1と−1になっている。そのため(QmGHH)2は、動きベクトルの始点と終点間の差の2乗の動画像全体に関する総和となる。
【0071】
(数3)の第3、4、5項は、画像が一般的に満たしている特性、すなわち近傍画素間の局所的な滑らかさを示す。モノクロ(単色)の動画像をI(x,y,t)とすると、局所的な滑らかさは、
【数7】
として表すことができる。ここで、積分範囲は動画像の占める時空間全体であり、数7の被積分関数中の||・||はベクトルのノルムを示す。(数3)の第3、4、5項は、(数7)を差分展開し、IをC1、C2、C3に置き換えて、行列QsとベクトルGHHの積の形で表している。
【0072】
滑らかさ拘束を色間にまたがる形で定義することにより、G成分の時間解像度を高めることに、R成分、B成分の情報を反映させることができる。本発明では、R、G、B成分を異なる時空間解像度で撮影しているため、このような拘束条件を用いた画像復元を行うことが有効である。ここで、RGBとは異なる色空間(C1C2C3)に分解することの利点を説明する。
【0073】
人の視覚特性の観点から、3次元の色空間をなすRGB信号は、解像感に大きく寄与する成分と、解像感にあまり寄与しない成分とに分けられる。そのため、前者についての正則化パラメータλを小さく設定し、後者についての正則化パラメータλを大きく設定することによって、解像感のある画像を復元することができる。
【0074】
また、復元すべきデータの分布という観点からは、解の変動の大きな方向についての正則化パラメータλを小さく設定し、解の変動の小さな方向についての正則化パラメータλを大きく設定することによって、復元精度を高めることができる。
【0075】
自然画像を撮影した画像では、大部分の画像において、輝度成分の変動が大きく、色成分の変動が小さくなる傾向がある。
【0076】
3色への分離の方法は、例えば、数8により、RGBからYCbCrという輝度式差信号への変換を行う。
【数8】
【0077】
また、3色への分離の方法は上記の方法に限らず、予め用意した画像についてRGB空間での主成分分析により、第1主成分、第2主成分、第3主成分を求め、3次元色空間中での3つの軸を決めるようにしてもよい。通常、自然画像から主成分分析によって求めた第1主成分は、輝度成分とおおむね等しくなり、第2主成分と第3主成分は色信号に相当する成分となる。
【0078】
なお、色間にまたがる滑らかさ拘束については、C3を色空間においてGと垂直に選ぶようにすることで、3色間にまたがるものから2色間にまたがるもので置き換えても、同様の画質の処理結果を得ることができる。その場合、(数3)の代わりに以下の式を用いる。
【数9】
【0079】
また、GHHを得るのに、(数6)の代わりに以下の式を解けばよい。
【数10】
【0080】
以上説明した方法および手順により、GHHは(数6)もしくは(数10)の連立方程式の解として得られる。連立方程式を解く計算は、変数の数(解くべき未知数の数)が多くなると、必要な演算量が莫大になる。大規模な連立方程式の効率的解法については種々提案されているが、演算効率の最適化は問題に依存するところが大きい。以下に、今回取り扱う問題の効率的な計算について説明する。
【0081】
図4は、GHHを計算するための共役勾配法の手順と、共役勾配法において最も演算量を要する係数行列Aと更新ベクトルpkとの積の演算を効率的に行うブロック図の一例を示す。図4においては、解くべき連立方程式を
【数11】
として表している。なお、後述するように、拘束条件として(数3)の右辺の全ての項を用いる必要は無い。図4の例では、(数3)の右辺第5項を省略している。
【0082】
共役勾配法では、残差rが小さくなるように、更新量pを計算し、これを用いて解xの更新を繰り返す。収束に必要な繰り返し数は、係数行列Aの条件(数値的な安定性)や変数数に依存する。本実施形態の場合、100回程度の繰り返しを行う。
【0083】
この繰り返し計算においては、係数行列Aと更新量ベクトルpの積の計算が、最も演算量を必要とする。ベクトルpは解の更新量であるので、その要素数(次元)は動画像中のGの画素数になる。例えば、HDTV信号の空間解像度で4フレーム分の処理を行おうとすると、Gの画素数(すなわちpの要素数)は、1920×1080×4=8294400となる。係数行列Aは正方行列であるため、さらにこれの2乗の要素数となる。このような莫大なメモリアクセスと積和演算は、このままでは、現在通常に入手できる計算環境では計算することができない。
【0084】
しかしながら、係数行列Aは、(数6)もしくは(数10)に示すように、長時間露光の過程HT、動き拘束Qm、滑らかさ総則QsH、QsVの2乗(自身の転置との積)の線形和になっている。これらの項は、着目画素とその近傍画素のみとの演算であるため、係数行列全体としては大部分が0となる。このような行列は疎行列と呼ばれる。係数行列中のどの画素が0になるのか、また、0でない係数の割合がどれ位になるのかということが問題により異なるため、効率的な解き方が個々の問題に依存することになる。
【0085】
長時間露光過程HTは、図4中の参照符号401で示す用に、係数が全て1の時間方向の蓄積フィルタと考えることができる。拘束条件としてはHTの転置とHTの積になるが、HTの転置は、1画素の値を蓄積画素数分の画素に出力する作用を表す。そのため、(HT)THTは、入力を複数フレーム蓄積した値を、入力画素に相当する画素位置に出力するフィルタと解釈できる。
【0086】
もしくは、長時間露光過程HTを、係数が全て1/4の時間方向の平均化フィルタとしてもよい(4フレーム加算の場合)。なお、長時間露光過程HTの係数を全て1とする場合と、加算フレーム数分の1とする場合の処理の違いは、次のようになる。
【0087】
前者の場合の処理は、長時間露光画像に含まれる動きブレを除去するとともに、長時間露光した光量を各フレームの画像に分配する。その結果、処理結果が入力画像よりも暗くなる。一方、後者の場合の処理は、長時間露光画像に含まれる動きブレを除去するだけであり、処理結果は入力画像と同じ明るさになる。そのため前者の場合、Gの復元結果を使ってR,Bを高解像度化する前に、図示していない乗算器によって、Gの明るさ(レベル)をR、Bと揃える必要がある(本実施例の場合、4倍する必要がある)。
【0088】
次に、滑らかさ拘束について説明する。Qsは、2階微分の作用素であり、差分展開すると、以下の式で表せる。
【数12】
【0089】
(数12)はGHHを入力、∂GHH/∂xと∂GHH/∂yを出力とみると、フィルタとしては、水平もしくは垂直の係数が(−1,2,−1)の3タップのフィルタと解釈できる。これを係数行列として見ると、Qsは対角成分が2で、左右1画素もしくは上下1ラインが−1、それ以外は全て0の対角行列となる。
【0090】
これらは、対角行列であるために、転置行列も自身と等しくなり、転置と自身の積は、係数が(1,−4,6,−4,1)の5タップのフィルタとなる。すなわち、滑らかさ拘束(QsH)TQsH、(QsV)TQsVは、図4中に402で示すように、水平5タップのフィルタと垂直5タップのフィルタとして計算できる。
【0091】
最後に、動き拘束Qmは、動きベクトルの始点に相当する要素が1、終点に相当する要素が−1のデータ対の集まりである。行列としては、対角成分が全て1で、各行に−1の要素をひとつずつ持つ。そのため、(Qm)TQmは、対角成分がすべて1で、Qmで−1になっている要素と、その転置位置の要素が−1の値を持つ。このような行列演算は、フィルタとしては、動きベクトルの探索範囲で決まる空間サイズを持つフレーム間フィルタとして実装できる。例えば、動きの検出範囲が高解像度側で縦横±n画素の範囲の場合、着目画素を含めて縦横(1+2n)画素×2フレームのフィルタとして実装できる。
【0092】
以上述べたフィルタ実装により、共役勾配法で最も演算量を必要とする行列Aとベクトルpの積の演算を、係数が0の演算を省略して、数個のフィルタ演算の線形和として、必要最小限の演算量で計算することができる。これらのフィルタ演算のうち、動き拘束以外のものは、処理する画像の内容によらず固定の係数のフィルタを事前に用意できる。一方、動き拘束はシーンの動きに依存するので、処理する画像の内容(本実施形態の場合、動き検出の結果)に応じてフィルタ係数を都度決定する必要がある。
【0093】
なお、共役勾配法によるGHHの計算について、本実施形態では全ての画素において計算する場合について述べたが、動き検出結果(Gの露光時間に相当するフレーム分の動きベクトルの長さの総和)に応じて、動きのある領域についてのみGHHの計算を行い、動きがほとんどない領域については、Gの入力画像をそのままGHHとすることにより、一層の演算量低減を図ることができる。
【0094】
また、共役勾配法によるGHHの計算において、動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めるようにしてもよい。これにより、定性的には、Gの入力画像をそのままGHHとすることと同様のこととなるとともに、数値的に安定化させることができ、繰り返し計算の収束を早めることができる。
【0095】
なお、上述の(数3)および(数9)に関しては、右辺の拘束条件は、必ずしもそれら全てを同時に用いる必要はない。以下のような変形例を用いてもよい。すなわち、(数3)および(数9)の右辺第2項を利用せずに
【数13】
としたり、
【数14】
としてもよい。
【0096】
これらの変形例によれば、全ての拘束条件を用いて(数3)もしくは(数9)によって計算するよりも少ない演算量でG成分の高解像度化を実現できる。ただし、拘束条件を緩和することになるため、生成される画像の高解像度感が多少低下することがある。
【0097】
また、動き検出が難しいシーンでは、動き検出の結果を用いない数式((数11)または(数12))によって高解像度化処理を行うことにより、出力される画像の画質に関して、動きの誤検出によるアーティファクト(画像の乱れ、ノイズ)の発生を抑えることができる。シーンからの動き検出が難しいか否かは、(a)時間的に双方向に動き検出を行った結果の差異から判断したり、(b)(数1)、(数2)に示した動き検出時の評価値の探索範囲内での最小値から判断することができる。
【0098】
前者(a)の場合、基準フレームの画像中の(x,y)において、時間的に順方向の動き検出結果が(u,v)であるとすると、次に順方向の動き検出時の参照フレームを基準に逆方向に動き検出をして、(x+u,y+v)における動き検出結果が(−u,−v)であれば、双方向の動き検出において一貫性があり信頼できる。一方、(−u,−v)と異なる場合、例えば一定のしきい値以上の差異がある場合には、動き検出が難しい状況であると判断できる。
【0099】
また、後者(b)の場合も同様に、SSDやSADの動き検出時の評価値の探索範囲内での最小値について、例えば予め定めたしきい値以上である場合、動き検出が難しい状況であると判断できる。
【0100】
再び図1を参照する。R,B用アップコンバータ107は、G用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分の動画像を用いて、第1撮像部103によって、短時間露光、低解像度、高フレームレートの撮像条件で撮像されたR,B成分の動画像を高解像度化する。
【0101】
以下、図5を参照しながら、R,B成分の動画像を高解像度化する処理を詳細に説明する。
【0102】
図5は、R,B用アップコンバータ107の構成をより詳細に示す。図5において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
R,B用アップコンバータ107は、ダウンコンバータ110と、係数推定部111と、復元フィルタ112とを有している。
【0104】
ダウンコンバータ110は、G用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分(GHH)を空間的に低解像化し、GLHを出力する。係数推定部111は、GHHとGLHから復元フィルタ112(復元フィルタH+)のフィルタ係数を推定する。復元フィルタ112として、ウィーナフィルタや一般逆フィルタ等の公知のフィルタを用いることができる。これらの復元フィルタは、GHHとGLHの関係を用いて、低解像度側の信号から高解像度側の信号を推定するものである。復元フィルタ112は、係数推定部111によって推定されたフィルタ係数を用いて、RLH,BLHからRHH,BHHを復元する。
【0105】
なお、R,B用アップコンバータ107におけるR,Bの高解像度化処理は、上述の処理に限る必要はなく、他の高解像度化処理によって行ってもよい。他の例による高解像度化処理を以下に説明する。
【0106】
図6は、他の例によるR,B用アップコンバータ107の構成を詳細に示す。ここで、R,B用アップコンバータ107は、RとBの相関に応じてGの高域成分を、補間拡大したR成分およびB成分に重畳することにより、R成分およびB成分を高解像度化する。
【0107】
図6に示されるR,B用アップコンバータ107は、ダウンコンバータ113と、補間拡大部114と、局所相関演算部115と、重み生成部116と、カウンタ117と、画像メモリ118と、正規化部119とを有している。
【0108】
R,B用アップコンバータ107は、動画像を構成するフレーム単位で処理を行う。まず、各フレーム処理の初めに、カウンタ117の内容と画像メモリ118の内容を、例えば0で埋めることにより、クリアする。
【0109】
低解像度化部113はG用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分(GHH)を空間的に低解像化し、GLHを出力する。
【0110】
補間拡大部114は、低解像度、高フレームレートで撮像されたRLH,BLHと撮影条件とを受け取り、RLHとBLHとをGHHと同じ画素数になるように補間拡大する。
【0111】
局所相関演算部115は、2×2画素や3×3画素程度の局所的な領域に関し、RLHとBLHの局所的な相関値を計算する。2×2画素について局所的な相関値ρを計算するときは、局所相関演算部115は、例えば(数15)を利用することができる。
【数15】
【0112】
重み生成部116は、局所相関演算部115によって計算された相関値に応じた重みを生成する。図7は、相関値ρと重みW2との関係の例を示す。重み生成部116は、相関値ρと図7に示す関係とに基づいて、重みW2を求める。
【0113】
図6に示されるように、重み生成部116によって生成され、出力された重みと、GHHとGLHの差(すなわちGの高域成分)とが乗算され、画像メモリ118が更新される。より詳しくは、乗算が行われた後、画像メモリ118内の画素データの格納位置に応じたアドレスが特定される。そして、乗算結果とそのアドレスに保持されていた値とが加算され、そのアドレスの値が加算結果に書き換えられる。
【0114】
このとき、画像メモリ118に書き込みを行う対象は、1画素でもよく、または、局所的な相関値を計算した範囲でもよい。ただし、後者のように複数画素について高域成分を重畳する場合、局所相関を計算する領域の設定の仕方(すなわち画像内でのインクリメントの仕方)によっては、同一画素に複数回、高域成分を重畳することになる。そのような場合を考慮して、図6のR,B用アップコンバータ107では、カウンタ117を利用する。カウンタ117は、高域成分を重畳した回数を各画素について記憶する。
【0115】
正規化部119は、複数回重畳した高域成分を、カウンタ117に1画素毎に記憶されている書き込み回数値で除算する。正規化された高域成分は、補間拡大部114によって補間拡大されたR,B画像に重畳され、RHH,BHHとして出力される。
【0116】
以上述べた方法によって、R,Bを高解像度化することにより、局所的な色バランスを保った状態でRとBとを高解像度化することができ、その結果、偽色の発生を抑えた高解像度化を行うことができる。
【0117】
なお、図7には相関値と重みの関係の一例として線形な関係の場合を示した。しかしこれは例であり、撮像時や表示時のγ特性を考慮して非線形な関係にしてもよい。また、前記の重みを、Rについては(Rの局所平均)/(Gの局所平均)で正規化し、Bについては(Bの局所平均)/(Gの局所平均)で正規化してもよい。この正規化により、R、G、Bの画素値に応じて、RとB重畳するGの高域成分の振幅を調節することができ、過度な高域の重畳による観察時の違和感を低減できる。ここで、R、G、Bの局所平均としては、補間拡大したRLH、BLHや図6のダウンコンバータ113でGHHをダウンコンバートしたGLHの画素値を用いればよい。
【0118】
なお、補間拡大したR、B画像に対する高域成分の重畳を1画素につき1回だけ行うように動作させるとすると、図6の画像メモリ118、カウンタ117、正規化部119は不要であり、図8に示す構成を採用することができる。図8は、R,B用アップコンバータ107の構成の変形例を示す。図8に示すように、図6と比較するとより簡単な構成でR,B用アップコンバータ107を実現することができ、かつ、同様の効果を得ることができる。
【0119】
なお、R,B用アップコンバータ107におけるR,Bの高解像度化処理は、上述したいわゆる復元フィルタを用いた処理や、Gの高域成分をRおよびB成分に重畳する処理に限る必要はない。高解像度化したG成分とそれを低解像度化したもの(上記GLHとGHH)との間の関係を学習し、学習結果に基づいてR成分、B成分を高解像度化するようにしてもよい。
【0120】
なお、学習は入力された画像の処理過程において行うものに限らず、予め事前に学習パターンを用意して行うようにしてもよい。この場合には、低解像度のG成分と高解像度のG成分の関係を学習する方法だけでなく、低解像のRGB成分と高解像度のRGB成分の関係を学習することも可能である。
【0121】
なお、S.Farsiuら、“Multiframe Demosaicing and Super−Resolution of Color Images”,IEEE Transactions of Image Processing,Vol.15,No.1,2006.Ron Kimmel,“Demosaicing: Image Reconstruction from Color CCD Samples”,IEEE Transactions of Image Processing,Vol.8,No.9,1999.Daniel Kerenら、“Restoring Subsampled Color Images”,Machine Vision and Applications 11: pp.197−202,1999.等の文献では、画像復元時のRGB間の局所的な相関性に基づく拘束条件を用いている。自然画像では、大部分の領域でRGB間に正の相関があるため、一般にこの拘束条件は有効に機能するが、領域の色が原色やそれらの補色に近い場合、別の色との境界では、局所的な相関関係が負になり、設定している拘束条件が有効に働かず、復元画像中に色にじみ、リンギング等のアーチファクトを生じさせる原因となる。
【0122】
これに対し、本実施形態で用いた色間にまたがる滑らかさ拘束では、局所的な色相関に基づくような正の相関は仮定しておらず、局所的な滑らかさだけを仮定しているので、相関という観点では正の相関でも、負の相関でもよい。そのため、上記の局所的な相関関係が負になるような領域でも、復元画像中に色にじみ、リンギング等のアーチファクトが顕著に発生することがない。
【0123】
これまでの説明では、出力信号はR,G,Bの各色成分であるとした。以下では、RGBの各出力信号を輝度成分と色差成分に変換して出力する撮像処理装置を説明する。
【0124】
図9は、本実施形態の変形例による撮像処理装置11の構成を示す。図9において、上述した撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
画像処理部105は、G用アップコンバータ106、補間拡大部114、およびダウンコンバータ113に加え、さらに色差計算部129および輝度計算部130を有する。
【0126】
制御部120は、補間拡大部114によって補間拡大されたR成分、B成分の信号、および、低解像度化部113で低解像度化されたG成分の信号を受け取り、(数16)の計算によって色差信号(Cb信号、Cr信号)に変換して出力する。
【数16】
【0127】
輝度計算部130は、補間拡大部114によって補間拡大されたR成分、B成分の信号、および、G用アップコンバータで高解像度化されたG成分の信号を受け取り、(数17)の計算によって輝度信号(Y信号)に変換して出力する。
【数17】
【0128】
上述の色差計算部129および輝度計算部130の説明から理解されるように、色差成分Cb、Crの計算には低解像度化したGを用い、一方、輝度成分Yの計算には高解像度化されたGを用いている。これにより、偽色の発生を抑えつつ、出力される画像の高解像度化を実現できる。
【0129】
なお、画像処理部105の後段にY、Cb、Crの各信号をRGBの各信号へ変換するブロックをさらに設けて、RGB成分の信号を出力する構成にしてもよい。
【0130】
なお、本実施形態による撮像処理装置およびその変形例による撮像処理装置は、G成分を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、R成分およびB成分を低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像するとした。しかしながら、これは例である。どの色成分(波長帯)を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像するかについては、他の例を採用することが可能である。
【0131】
例えば、海やプール等、水中のシーンを撮像する場合のように、シーン中にB成分が強く現れることが事前に分っている場合には、B成分を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、R成分およびG成分を低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像することにより、観察者により高解像度感のある画像を提示することができる。
【0132】
例えば図10は、撮像処理装置1を一般化した撮像処理装置13の構成を示す。図10において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
撮像処理装置13は、R成分撮像部131と、G成分撮像部132と、B成分撮像部133と、制御部134と、切替部135と、HL用アップコンバータ136と、LH用アップコンバータ137と、出力部138とを有している。以下、撮像処理装置13の動作とともに各構成要素の機能を説明する。
【0134】
光学系101を通った可視光は、ダイクロイックプリズムで波長分解され、R成分撮像素子131、G成分撮像素子132、B成分撮像素子133によって撮像される。RGB各成分の撮像部131,132,133の読み出し画素数は、ビニング読み出し方法により、個別に、かつ動的に設定できる。「ビニング読み出し方法」とは、隣接する画素に蓄積された電荷を加算して読み出す方法である。また、各撮像部131,132,133では、露光時間、フレームレートについても同様に設定可能とする。読み出し時の条件設定は、制御部134によって行われる。
【0135】
制御部134は、シーン中の色成分の分布に応じて、R成分撮像素子131、G成分撮像素子132、B成分撮像素子133のうちのいずれかを、高解像度、長時間露光、低フレームレート(実施形態1におけるGに相当)に設定し、残りを低解像度、短時間露光、高フレームレート(実施形態1におけるR,Bに相当)に設定する。
【0136】
なお、撮像開始時にはシーン中の色成分の分布が未知であるので、例えばGを高解像度、長時間露光、低フレームレートに設定するようにすればよい。
【0137】
切替部135は、制御部によるRGB各成分の撮像部131,132,133の設定に応じて、高解像度、長時間露光、低フレームレートでの撮像が設定されている成分の撮像データがHL用アップコンバータ136に入力され、残りの成分のデータがLH用アップコンバータ137に入力されるように切り替え動作を行う。
【0138】
HL用アップコンバータ136は、G用アップコンバータ106(例えば図1)と同じ処理を行い、高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像された成分の動画像を空間的に高解像化する。
【0139】
LH用アップコンバータ137は、低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像された2系統(2つの色成分)の動画像と、HL用アップコンバータ136で高解像度化された動画像とを受け取り、R,B用アップコンバータ107(例えば図1)と同じ処理により、その2系統の動画像を空間的に高解像化する。
【0140】
出力部138は、HL用アップコンバータ136とLH用アップコンバータ137によってそれぞれ高解像度化された動画像を受け取り、制御部134による設定に応じて、RGB3系統の動画を出力する。もちろん、出力部138が輝度信号(Y)および色差信号(Cb,Cr)信号等の、他の信号形式に変換して出力するようにしてもよい。
【0141】
なお、撮像部は本実施形態に示す3板構成のものに限る必要はなく、例えば、単板構成でR,G,B間で電荷蓄積期間を変えたり、画素加算の仕方を変えることで空間解像度を変えるようにしたり、ライン間引き読み出しをするようにしてもよい。
【0142】
(実施形態2)
次に、動きの大小に応じて処理効率を高めた実施形態を説明する。
【0143】
図11は、本実施形態におけるG用アップコンバータ106の構成を示す。他の部分の構成は、基本的には、図1および図2を参照して説明した実施形態1の構成と同様である。このため、ここでは、相違部分を説明する。
【0144】
本実施形態のG用アップコンバータ106は、動きのある領域に対する処理と動きのない領域に対する処理に分け、動きのある領域のみ高解像度化する処理を実行する。本実施形態では、図11に示すように、動き検出部171がRLH、BLHを入力として、動き検出結果と動きの信頼性の両方を出力する。領域分割部172は、動き検出部181によって検出された動き検出結果をもとに、動画像を3次元的に領域分割する。
【0145】
図12は、領域分割部172による領域分割の一例を示す。図12では、動画像が動きのない領域(領域番号0)と2つの動きのある領域(領域番号1と2)に分割されている様子を示す。
【0146】
領域ごとの時間解像度アップコンバータ173は、領域分割部172によって動きに応じて領域分割された領域分割結果のうち、動きのある領域について、個々にそれぞれ時間解像度アップコンバート処理を施し、動きのない領域については、撮影時のGの加算フレーム数に応じて、入力画像のGの各画素値を等分する。例えば、Gの加算フレーム数が4であれば、入力画像のGの各画素値を4分の1にして4フレーム分出力する。
【0147】
上記の処理を行うことにより、動きのない静止領域に対する処理を簡略化することができ、演算量を低減することができる。また、領域分割された動きのある領域に対して個々に処理を行うことにより、それぞれの領域について解くべき連立方程式の変数数を減らすことができ、演算規模を小さくできる。
【0148】
なお、上記では領域ごとの時間解像度アップコンバータ173の処理を、長時間露光画像に含まれる動きブレの除去と光量の分配の双方を含む分解処理として説明した。しかし、これに限る必要はなく、領域ごとの時間解像度アップコンバータ173の処理を、長時間露光画像に含まれる動きブレの除去のみにしてもよい。その場合、動きのない領域における処理は不要になり、単に入力をそのまま出力するだけでよい。
【0149】
上記の実施形態では、動きのある領域でのみ超解像処理をする場合について説明したが、動きの有無により処理を離散的に分けるだけでなく、動きの大小に応じて処理を連続的に切り替えるようにしてもよい。
【0150】
図13は、図4に対応する図面であり、時間解像度アップコンバータの構成の一例を示すものである。図13に示す空間滑らかさ拘束部182は、動きの大きさと信頼性に応じて、λsC1とλsC2を制御する。時間滑らかさ制御部183は、動きの大きさと信頼性に応じて、λtを制御する。
【0151】
空間滑らかさ拘束部182は、動きが大きいほど、すなわち、動きベクトルが長いほど、λsC1とλsC2を大きくし、逆に、動きが小さいほど、すなわち、動きベクトルが短いほど、λsC1とλsC2を小さくする。また、空間滑らかさ拘束部182は、動きの信頼性が高いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を強くし、逆に、動きの信頼性が低いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を小さくする。
【0152】
時間滑らかさ拘束部183は、動きが小さいほど、すなわち、動きベクトルが短いほど、λtを大きくし、逆に、動きが大きいほど、すなわち、動きベクトルが長いほど、λtを小さくする。また、時間滑らかさ拘束部183は、動きの信頼性が高いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を強くし、逆に、動きの信頼性が低いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を小さくする。
【0153】
以上述べたλsC1、λsC2、λtについての制御により、動きの小さい領域や静止している領域では、時間滑らかさ拘束が強くなるため、動きの大小に応じて処理を連続的または段階的に切り替えることができる。
【0154】
(実施形態3)
上述の実施形態1、2においては、撮像処理と高解像度化処理とが同一のシステム(撮像処理装置)によって行われる例を説明した。しかしながら、両処理は必ずしも同一のシステムで行われる必要はない。
【0155】
本実施形態においては、撮像処理と高解像度化処理とが異なるシステムにおいて行われる例を説明する。
【0156】
図14は、本実施形態による撮像装置901、ネットワーク902および処理装置903で構成された画像処理システムの例を示す。ネットワーク902に代えて、メディア906を用いても、本実施形態による画像処理システムを構成することができる。図14において、実施形態1、2の撮像処理装置(例えば図1)の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0157】
撮像装置901は、レンズ系101と、ダイクロイックミラー102と、第1撮像部103と、第2撮像部104と、撮影モード設定部904とを有している。
【0158】
第1撮像部103は、カラー画像のR成分とB成分とを短時間の露光時間で、低解像度かつ高フレームレートで撮像し、R画像RLHおよびB画像BLHを出力する。第2撮像部104は、カラー画像のG成分を長時間の露光時間で、高解像度かつ低フレームレートで撮像し、G画像GHLを出力する。
【0159】
撮影モード設定部904は、例えば第2撮像部104におけるフレームレート、露光時間等の、設定が可変な撮影条件を設定し、設定した条件を示す情報を映像信号のヘッダ中に書き込み、または、別途データとして出力部905を介してネットワーク902に出力する。
【0160】
図15は、データの構成の1例を示すものである。図15において、ヘッダ部には、フレームレート、露光時間(もしくは、Gの露光時間をR,Bのフレーム数に換算した値)等の撮影条件(設定が可変な条件)が保存され、これに、R,Bの画像データ、Gの画像データが続く。
【0161】
出力部905は、撮像装置901によって撮像されたG画像GHL、R画像RLH、B画像BLH、および、それらの撮影条件の情報をネットワーク902またはメディア906に出力する。
【0162】
処理装置903は、画像処理部105を有している。画像処理部105は、ネットワーク902またはメディア906を介して、上記GHL、RLH、BLHおよびその撮影条件の情報を受け取り、実施形態1、2において説明した処理により、これらを空間的、時間的に高解像度化したGHH、RHH、BHHを出力する。
【0163】
以上の構成により、撮像装置と処理装置とが別体で構成され、空間的に離れて存在していても、ネットワーク902またはメディア906を介して動画像信号および撮影条件の情報を授受できるように構成することにより、処理装置が高時空間解像度の動画像を出力できる。
【0164】
なお、ネットワーク902は家庭内に構築されたLAN(Local Area Network)でもよいし、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)でもよい。または、USB規格やIEEE1394規格の通信回線でもよい。さらに無線でも有線でもよい。上述のメディア906は、光ディスクや取り外し可能なハードディスクなどのリムーバブルディスク、フラッシュメモリカードが含まれる。
【0165】
上述の各実施形態では、撮像処理装置は、図に示す種々の構成を有するとして説明した。例えば、各構成に含まれる画像処理部などは、機能的に見たブロックとして記載されていた。これらの機能ブロックは、ハードウェア的には、デジタル信号プロセッサ(DSP)のような1つの半導体チップまたはICによって実現することも可能であるし、例えばコンピュータとソフトウェア(コンピュータプログラム)とを用いて実現することもできる。
【0166】
図16は、コンピュータによって構成された撮像処理装置のハードウェアの一例を示す。
【0167】
各実施形態の画像処理装置の各機能ブロックと、図16に示すハードウェアとの対応関係は以下のとおりである。以下では例として、主に図1に示す撮像処理装置1を挙げて説明する。
【0168】
撮像処理装置1のレンズ系101、ダイクロイックミラー102、第1撮像部103および第2撮像部104は、図16に示すカメラ151およびA/D変換器152に対応する。また、画像処理部105が実際の処理で利用する一時バッファ(図示せず)やメディア906は、図16に示すフレームメモリ153またはハードディスクドライブ(HDD)160に対応する。そして制御部120および画像処理部105は、コンピュータプログラムを実行した図16のCPU154によって実現される。
【0169】
図16のコンピュータを動作させるコンピュータプログラムは、例えばROM155に保持されている。または、光ディスク、磁気ディスクに格納されていてもよい。また、有線や無線のネットワーク、放送などを介して伝送され、コンピュータのRAM156に取り込まれてもよい。
【0170】
コンピュータプログラムは、プロセッサであるCPU154によってRAM156に読み出されて展開される。CPU154はコンピュータプログラムの実態であるコード化された各命令を実行する。命令の実行結果として得られたデジタル画像信号は、フレームメモリ157に送られて一時的に保持され、D/A変換器158によってアナログ信号に変換され、ディスプレイ159に送られ、表示される。
【0171】
画像処理部105を実現するコンピュータプログラムの処理は、例えば次に説明するフローチャートにしたがって記述されている。
【0172】
例えば図17は、本発明の処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、実施形態1による処理として説明するが、実施形態2の撮像装置901および処理装置903によって個別に行われる処理として把握することもできる。
【0173】
まずS101において、第1撮像部103および第2撮像部104は、長時間露光高解像度低フレームレートのG画像GHLと短時間露光低解像度高フレームレートのR画像RLH、B画像BLHとを撮像する。ステップS102において、画像処理部105のG用アップコンバータ106は、G成分の動画像を高解像度化する。より具体的には、ステップS104とS105とに分けることができる。ステップS104において、G用アップコンバータ106の動き検出部108は、動き検出を行う。ステップS105において、時間解像度アップコンバータ109は、動き検出の結果等を利用して、(数4)もしくは(数10)に基づいて(数3)もしくは(数9)をそれぞれ最小化するGHHを求める。
【0174】
次のステップS103において、R,B用アップコンバータ107は、R成分およびB成分の各動画像を高解像度化する。その後、制御部120は、撮像が完了したか否かを判定し、完了していないと判定すると処理はステップS101から繰り返され、完了したと判定すると処理は終了する。
【0175】
図18は、図17に示すステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図5に示すR,B用アップコンバータ107の処理に対応する。
【0176】
図18のステップS106において、ダウンコンバータ110は、撮像条件に基づいてGHHを低解像度化する。ステップS107において、係数推定部111は復元フィルタ112に適用するための係数を推定する。ステップS108において、推定された係数が復元フィルタ112に適用され、復元フィルタ112は、RLHおよびBLHを高解像度化し、RHHおよびBHHを出力する。
【0177】
図19は、他の例によるステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図6に示すR,B用アップコンバータ107の処理に対応する。
【0178】
ステップS109において、ダウンコンバータ113は、撮像条件に基づいてGHHを低解像度化する。ステップS110において、GHHからGLHが減算される。
【0179】
一方、ステップS111において、補間拡大部114が撮像条件に基づいてRLHおよびBLHを補間拡大すると、その信号に基づいて、ステップS112において局所相関演算部115が局所的な相関値を計算する。
【0180】
そしてステップS113において、重み生成部116が重みを生成すると、ステップS114においてカウンタ117が高域成分を重畳した回数を各画素について記憶する。ステップS115において、重み生成部116によって生成され、出力された重みと、GHHとGLHの差(すなわちGの高域成分)とが乗算され、ステップS116において画像メモリ118が更新される。
【0181】
ステップS117において、正規化部119は、画像メモリ118に保持された、複数回重畳した高域成分を、カウンタ117に1画素毎に記憶されている書き込み回数値で除算して、正規化する。
【0182】
そしてステップS118において、正規化された高域成分は、補間拡大部114によって補間拡大されたR,B画像に重畳され、RHH,BHHとして出力される。
【0183】
以上、本発明の各実施形態を説明した。実施形態1〜3においては、R,G,Bの3成分をダイクロイックミラーで分離する場合について説明したが、色成分の分離の形態はこれに限るものではない。例えば深さ方向に、順に、R+G+B、R+G、Rと3層に分けて撮像する単一の撮像素子(CCDやCMOSセンサ)を用いても良い。このような撮像素子は、入射光の波長に応じてフォトダイオードに進入する光の深さが異なることを利用して色信号を生成するため、フィルタが不要になる。このような素子を用いる場合、例えばR+GもしくはR+G+Bを高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、その他を低解像度、短時間、低フレームレートで撮像した画像を受け取って処理することで、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の撮像処理装置および画像処理装置は、撮像素子サイズを小型化したカメラによる高精細画像の撮像とその再生装置、システムとして有用である。また、本発明の撮像処理装置および画像処理装置は、本発明による画像処理方法を公知のコンピュータに実行させるプログラムによって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0185】
101 レンズ系
102 ダイクロイックミラー
103 第1撮像部
104 第2撮像部
105 画像処理部
106 G用アップコンバータ
107 R,B用アップコンバータ
120 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像の画像処理に関する。より具体的には、撮影された動画像の解像度およびフレームレートの少なくとも一方を画像処理によって高くした動画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像入力の分野では、携帯電話用カメラやデジタルスチルカメラの多画素化、画素の小型化が進んでいる。
【0003】
空間解像度は、撮像機器に求められる画質に応じて大きく異なる。例えばTV電話の解像度は、QCIF(Quarter Common Intermediate Format、横176画素、縦144画素)程度、または、QVGA(Quarter Video Graphics Array、横320画素、縦144画素)程度の比較的低い画素数である。一方、デジタル一眼レフカメラの解像度は、1000万画素を超えている。
【0004】
時間解像度も使い分けられている。例えば、HDTVまでの画素数の時間解像度については、民生機器によるビデオレート(30フレーム/秒)での撮像が実現されている。しかしながら、それ以上の画素数での撮像については、そのフレームレートは、デジタルスチルカメラに搭載されている連写機能による毎秒数フレームにとどまっている。
【0005】
一方、映像表示の分野では、フラットパネルディスプレイが急激な勢いで普及している。これに伴い、今後、様々な解像度のカメラとディスプレイの組み合わせにより、ユーザが映像を視聴することが予測される。
【0006】
入力側のカメラの時空間解像度(「時間解像度および空間解像度」を意味する。以下同様)と出力側のディスプレイの時空間解像度とを比較すると、現状の民生機器では出力側のディスプレイの方が高い。そのため、出力側の性能を最大限に発揮させる映像を一般ユーザが手軽に入力できる状況にない。このような状況になった理由として、これまでは読み出しスピードがボトルネックとなっていたことが挙げられる。高空間解像度の撮影は毎秒5フレーム程度までに限られ、逆に、毎秒30フレームの撮影はHDTVの空間解像度までに限られていた。したがって、高い空間解像度画像で、かつ高いフレームレートでの撮像は困難であった。
【0007】
上記の課題に対し、特許文献1から3は、高空間解像度と高フレームレートの撮像を両立するための方式として、2系統のカメラにより時間解像度と空間解像度の異なる画像を入力し、信号処理によって高空間解像度で高フレームレートの画像を生成する方式を提案している。これらの特許文献には図20に示す構成が記載されている。
【0008】
図20は、従来の撮像装置の構成を示す。撮像装置に入射した光は、その一部がハーフミラー171を透過し、第1カメラ172に入射する。その結果、低解像度、高フレームレートの動画像が撮影される。一方、撮像装置に入射した光のうち、ハーフミラー171で反射した光は、第2カメラ173に入射する。その結果、高解像度、低フレームレートの動画像が撮影される。
【0009】
アップコンバータ174は、第1カメラ172および第2カメラ173で撮影された各動画像を受け取り、画像処理を行って高解像度かつ高フレームレートの動画像を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−143439号公報
【特許文献2】特表2005−515675号公報
【特許文献3】特開2005―318548号公報
【特許文献4】特許3934151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の撮像装置は、基本的にはモノクロ画像に対する処理を想定して構成されているため、赤(R),緑(G),青(B)の3チャネルからなるカラー画像に適用すると、処理量が3倍必要になる。また、処理後の画像中のエッジ付近でR,G,Bの各色に相関がなくなるために偽色が発生することがあり、画質低下を引き起こしていた。
【0012】
本発明は上述の課題を解決するものであって、その目的は、演算量を低減させ、かつ、偽色の発生を抑えて、カラー画像の高解像度化を行うことのできる画像処理装置、撮像処理装置、画像処理方法、および、画像処理装置の制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像処理装置は、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成分および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取り、処理を行う画像処理装置であって、前記第1色成分の動画像の情報および前記第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する第1アップコンバータと、前記第1色成分および前記第3色成分の各動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および前記第3色成分の動画像を生成する第2アップコンバータとを備え、前記第1アップコンバータは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する。
【0014】
好ましい実施形態において、前記第1色成分、前記第2色成分、および前記第3色成分は、それぞれ、赤、緑、および青である。
【0015】
好ましい実施形態において、前記色間にまたがる滑らかさの拘束条件は、前記第1から第3色成分によって定まる色空間内における近傍画素値間の連続性を規定する式によって表現される。
【0016】
好ましい実施形態において、前記色空間における画素値の3つの座標成分は、それぞれ、前記第1から第3色成分の線形和である。
【0017】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータは、前記評価値が最小化するように、前記第2成分の動画像を構成する画素値を算出する。
【0018】
好ましい実施形態において、前記評価値は、撮像したシーン中の動きに沿った画素値変化についての拘束条件を含む。
【0019】
好ましい実施形態において、前記評価値の最小化は、疎な係数行列の連立方程式を、係数が固定のフィルタ演算と係数が画像の内容に応じて変化するフィルタ演算とに分解して演算することによって行う。
【0020】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの大きさがしきい値以上の領域についてのみ演算することによって行う。
【0021】
好ましい実施形態において、前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めることによって行う。
【0022】
好ましい実施形態において、第1アップコンバータは、前記動画像の動きの大きさに応じて前記評価値を変化させる。
【0023】
本発明の撮像処理装置は、第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光から前記第2成分を分離する分離部と、前記第1色成分および第3色成分の動画像を撮影する第1撮像部であって、第1電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する第1撮像部と、前記第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部であって、前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する第2撮像部と、前記第1撮像部および前記第2撮像部における撮影条件を制御する制御部と、上記いずれかの画像処理装置とを備える。
【0024】
本発明の他の撮像処理装置は、第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光を受け、前記第1色成分および第3色成分の光については第1電荷蓄積期間で露光することにより前記第1色成分および第3色成分の前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、前記第2色成分の光については前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光することにより前記第2色成分の前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する撮像部と、前記撮像部における撮影条件を制御する制御部と、上記いずれかの画像処理装置とを備える。
【0025】
本発明の画像処理方法は、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップとを含む画像処理方法であって、前記第1アップコンバートステップは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する。
【0026】
本発明による画像処理装置の制御プログラムは、第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップとを前記画像処理装置に実行させ、前記第1アップコンバートステップは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の撮像処理装置によれば、解像度とフレームレートが異なる複数の色成分の動画像から、解像度とフレームレートがともに高い多色動画像を生成することが可能になる。複数の色成分の動画像の各々は、ハーフミラーなどを用いることなく、例えばダイクロイックミラーを用いて、入射光を色成分ごとに分離して撮影される。そのため、HDTV以上に高解像度化したカラー画像を動画として得るという効果や、HDTV用のカラーカメラをより小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1による撮像処理装置の構成を示す図である。
【図2】G用アップコンバータ106の構成をより詳細に示す図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ、ブロックマッチングによって動き検出を行うときの基準フレームおよび参照フレームとを示す図である。
【図4】G用アップコンバータにおける積和演算のフィルタ実装の説明図である。
【図5】R,B用アップコンバータ107の構成をより詳細に示す図である。
【図6】他の例によるR,B用アップコンバータ107の構成を詳細に示す図である。
【図7】相関値ρと重みW2との関係の例を示す図である。
【図8】R,B用アップコンバータ107の構成の変形例を示す図である。
【図9】実施形態1の変形例による撮像処理装置11の構成を示す図である。
【図10】撮像処理装置1を一般化した撮像処理装置13の構成を示す図である。
【図11】実施形態2の撮像処理装置におけるG用アップコンバータ106の他の構成例を示す図である。
【図12】実施形態2における領域分割部172による領域分割の一例を示す。
【図13】実施形態2における時間解像度アップコンバータの構成例を示す図である。
【図14】実施形態3による撮像装置901、ネットワーク902および処理装置903で構成された画像処理システムの例を示す図である。
【図15】本発明の入力画像の構成を示すデータ図である。
【図16】コンピュータによって構成された画像処理装置のハードウェアを示す図である。
【図17】本発明の処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】図17に示すステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】他の例によるステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】従来の撮像装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による撮像処理装置1の構成を示す図である。
【0031】
撮像処理装置1は、レンズ系101と、ダイクロイックミラー102と、第1撮像部103と、第2撮像部104と、画像処理部105と、制御部120とを有している。以下、まず各構成要素の機能を概説し、その後、撮像処理装置1の動作に関連して各構成要素の動作を詳述する。
【0032】
レンズ系101は、撮像処理装置1の外部から入射した光、すなわち被写体の像を集束させる。ダイクロイックミラー102は、光の赤(R)成分および青(B)成分を透過させ、光の緑(G)成分を反射する色分離部として機能する。すなわちダイクロイックミラー102は、入射した光を、「赤(R)成分および青(B)成分」と「緑(G)成分」とに分離する。なお、本明細書では、赤成分を「R成分」、緑成分を「G成分」、青成分を「B成分」とも記述する。
【0033】
第1撮像部103は、入射光(ここでは光のR成分およびB成分)に基づいて、短時間の露光時間、低解像度および高フレームレートでR成分およびB成分の動画像をそれぞれ撮影する。そして、得られたデータを出力する。なお、R成分の動画像およびB成分の動画像をそれぞれ取得するために、第1撮像部103は、内部にダイクロイックミラーを有し、かつ、R成分およびB成分をそれぞれ検出する2つの撮像素子を備えていてもよい。第1撮像素子103の他の例は、R成分およびB成分の両方を含む光が1つの撮像素子(単板式)に入射する構成を有していても良い。その場合、その撮像素子の前面に、R成分を透過しB成分を透過しないRフィルタと、B成分を透過しR成分を透過しないBフィルタが2次元的に交互に配列されていても良い。カラーフィルタを用いると、光の利用効率が低下するため、後述するように入射光の波長に応じてフォトダイオードに進入する光の深さが異なることを利用して色信号を生成するフィルタレス撮像素子を用いても良い。
【0034】
第2撮像部104は、入射光(ここでは光のG成分)に基づいて、長時間の露光時間、高解像度および低フレームレートで動画像を撮影し、G成分の動画像のデータを出力する。
【0035】
画像処理部105は、R成分およびB成分の光に対応する動画像のデータ、およびG成分の光に対応する動画像のデータを受け取り、それぞれを、画像処理によって高解像度および高フレームレートの動画像に変換して出力する。
【0036】
画像処理部105は、G用アップコンバータ106およびRB用アップコンバータ107を備えている。
【0037】
G用アップコンバータ106は、G成分のフレームレートを高めた高解像度、高フレームレートの動画像のデータを生成する。R,B用アップコンバータ107は、R成分およびB成分の解像度を高め、高解像度、高フレームレートの動画像のデータを生成する。動画像は、1枚または複数枚の画像を所定のフレームレートで連続して切り替えて表示される。R,B用アップコンバータ107による解像度を高める処理は、動画像を構成する各画像の画素数を増加させることを意味する。
【0038】
G用アップコンバータ106およびR,B用アップコンバータ107の詳細は後述する。
【0039】
制御部120は、第1撮像部103および第2撮像部104を利用して動画像を撮影するときの撮像条件を制御する。そしてその制御情報を、G用アップコンバータ106およびR,B用アップコンバータ107に出力する。
【0040】
次に、撮像処理装置1の動作とともに各構成要素の動作を詳述する。
【0041】
レンズ系101は、被写体の像が、第1撮像部103および第2撮像部104の撮像素子上に結ばれるように、その位置が調整される。レンズ系101を通った光は、ダイクロイックミラー102によって「R成分およびB成分」と「G成分」とに分離される。
【0042】
上記R成分およびB成分の動画像は、制御部120から指示された撮像条件、すなわち、短時間露光、低空間解像度、高フレームレートで、第1撮像部103によって撮影される。ここで、「低空間解像度」とは、例えば、NTSCの1フレームの画素数(水平720画素×垂直480画素)程度か、もしくは、それ以下のVGA(Video Graphics Array:水平640画素×垂直480画素)程度の画素数の空間解像度をいう。「高フレームレート」とは、30fps(フレーム/秒)ないし60fps程度をいう。「短時間露光」とは、最長でもフレームレートで決まる上限値(本実施形態の場合、30分の1秒ないし60分の1秒)以下の時間で露光することをいう。
【0043】
上記G成分の動画像についても、制御部120から指示された撮像条件、すなわち、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートの撮像条件で、第2の撮影部104によって撮影される。ここで、「高空間解像度」とは、例えば、一般的なデジタルスチルカメラの画素数(例えば水平約4000画素、垂直約3000画素)の空間解像度をいう。「低フレームレート」とは、第1撮像部103の数分の1から10分の1ないし20分の1程度のフレームレート(例えば3fps(フレーム/秒))をいう。「長時間露光」とは、前記低フレームレートの値で決まる時間(例えば1/3秒)を上限として露出することをいう。
【0044】
本実施形態においては、第1撮像部103および第2撮像部104は、制御部120によって同期制御されて動作する。しかしながら、同期して動作することは必須ではない。
【0045】
なお、上述した露光時間の長短、空間解像度の高低、フレームレート(時間解像度)の高低は、第1撮像部103および第2撮像部104における相対的な撮像条件を意味する。カラー画像のR成分およびB成分の露光時間は、G成分の露光時間よりも短ければよい。R成分およびB成分の空間解像度(ここでは画素数に対応)は、G成分のそれよりも低ければよい。R成分およびB成分のフレームレートは、G成分のそれよりも高ければよい。例示した上述の数値範囲に限定されることはない。
【0046】
以下、本明細書では、空間解像度が高く(H)フレームレートが低い(L)、Gの色成分の動画像をGHLと標記する。そして、空間解像度が低く(L)、フレームレートが高い(H)、RおよびBの色成分の動画像を、それぞれ、RLH、BLHと表記する。これらの各符号において、1文字目が色成分を表し、2文字目(第1の添え字)が空間解像度を表し、3文字目(第2の添え字)がフレームレート(時間解像度)を表す。
【0047】
G用アップコンバータ106は、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートで撮像されたG画像GHLのデータと、短時間露光、低空間解像度、高フレームレートで撮像されたR画像RLHおよびB画像BLHのデータを受け取る。そして、G用アップコンバータ106は、G画像GHL、R画像RLH、およびB画像BLHのデータに基づいて、G画像GHLの時間解像度を高めたG画像GHHを生成し、出力する。すなわち、G用アップコンバータ106は、同じ解像度でフレームレート(時間解像度)を高めた合成動画像を生成する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、空間解像度の低い領域(低空間周波数域)でのGB間、GR間の局所的な相関関係をゲイン係数として用いて、G画像の高域成分(空間周波数の高い成分)をR、Bに重畳する。色間の相関関係は、色間の波長差が小さいほど高くなるため、R画像またはB画像を高空間解像度・低フレームレートで取得すよりも、G画像を高空間解像度・低フレームレートで取得する方が、色間の相関関係が高まり、高域成分の重畳が効率よく行える。このため、本実施形態では、長時間露光、高空間解像度、低フレームレートでG画像GHLの撮像を行っている。
【0049】
図2は、G用アップコンバータ106の構成をより詳細に示す。図2において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
G用アップコンバータ106は、動き検出部108および時間解像度アップコンバータ109を有している。
【0051】
動き検出部108は、ブロックマッチング、勾配法、位相相関法等の既存の公知技術によって、RLH、BLHから動き(オプティカルフロー)を検出する。公知技術として、例えばJ. L. Barron, D. J. Fleet, S. S. Beauchemin, and T. A. Burkitt. "Performance of Optical Flow Techniques", In Proc. Computer Vision and Pattern Recognition, pp. 236-242, 1992が知られている。
【0052】
図3(a)および(b)は、それぞれ、ブロックマッチングによって動き検出を行うときの基準フレームおよび参照フレームを示している。動き検出部108は、基準とするフレーム(動きを求めるべく着目している時刻tにおける画像)内に、図3(a)に示す窓領域Aを設定する。そして、窓領域内のパターンと類似するパターンを参照フレーム内で探索する。参照フレームとして、例えば着目フレームの次のフレームが利用されることが多い。
【0053】
探索範囲は、図3(b)に示すように、通常、移動量ゼロの位置Bを基準に予め一定の範囲(同図3(b)中のC)が設定される。また、パターンの類似の度合い(程度)は、(数1)に示す残差平方和(SSD:Sum of Square Differrences)や、(数2)に示す残差絶対値和(SAD:Sum ofAbsoluted Differences)を評価値として計算することによって評価する。
【数1】
【数2】
【0054】
(数1)および(数2)において、x,y∈Wは、基準フレームの窓領域内に含まれる画素の座標値を意味する。
【0055】
動き検出部108は、探索範囲内で(u,v)を変化させることにより、上記評価値を最小とする(u,v)の組を探索し、これをフレーム間での動きベクトルVとする。窓領域の設定位置を順次シフトさせることによって、動きを画素毎もしくはブロック毎(例えば8画素×8画素)に求める。
【0056】
再び図2を参照する。時間解像度アップコンバータ109は、第1撮像部103によって撮像されたR画像RLHおよびB画像BLH、第2の撮影部104によって撮像されたG画像GHL、および、動き検出部108によって検出された動きベクトルVの各データを受け取り、GHLを高解像度化しGHHとして出力する。
【0057】
ここで、GHLの高解像度化は、下記の(数3)を最小化するGHHを求めることによって行われる。
【数3】
【0058】
(数3)の右辺における第1項はGHHとGHLの対応画素間の輝度差を示す項、第2項は「動き拘束」を示す項であり、第3項、第4項および第5項は「滑らか拘束」を示す項である。ここで、GHH、GHL、RLH、BLHは動画像の各画素を要素とする縦ベクトル、HTは長時間露光による光の加算をモデル化した行列、λmは動き拘束に対する重み、λsC1、λsC2、λsC3は滑らかさ拘束に対する重み、C1、C2、C3は3次元の色空間中に定義したRGBとは異なる3色の成分の縦ベクトル(動画像の各画素を要素とする縦ベクトル)、QsH、QsVは水平および垂直方向の滑らかさ拘束(色空間中に定義した3軸、C1、C2、C3についてそれぞれ評価する)、Qmは動き拘束を、それぞれ表している。なお、GHHのフレームレートがGHLのフレームレートよりも高いため、GHHの画素数(縦ベクトルの要素数)はGHLの画素数(縦ベクトルの要素数)よりも大きい。
【0059】
制御部120によって第1撮像部103よび第2撮像部104に設定される撮影条件は、少なくとも上記HT、Qm、λsC1、λsC2、λsC3に反映される。なお、数3の左辺Jはスカラーである。上記の「撮影条件」は、第1撮像部103および第2撮像部104の各々の空間解像度または露光時間、あるいは、空間解像度の比または露光時間の比である。これらのことから、(数3)の第1項は、「撮像過程で決まる拘束条件」であると言える。
【0060】
上記(数3)を最小化するGHHとは、与えられた拘束条件の線形和をもっともよく満足するGHHを意味する。右辺の各項の導出過程は後述する。
【0061】
上記、C1、C2、C3は、それぞれ、RLH、GHH、BLHから以下の式によって計算される。
【数4】
【0062】
ここで、c11からc33は、R、G、B色空間からR、G、B色空間とは異なる別の色空間C1、C2、C3への色変換係数、Mは空間的な拡大(いわゆる補間拡大)を行う係数行列である。すなわち、(数4)は、C1、C2、C3が補間拡大されたRLH、BLHとGHHの線形和で表されることを示している。
【0063】
時間解像度アップコンバータ109は、下記(数5)に基づいて(数3)を最小化するGHHを得る。(数5)は、上記(数4)を(数3)に代入し、GHHで偏微分することによって得られる。
【数5】
【0064】
その結果、時間解像度アップコンバータ109は、(数6)に示す連立方程式を解くことによってGHHを得る。
【数6】
【0065】
(数6)は共役勾配法や最急降下法等の既存の数値計算法(連立方程式の解法)を用いることによって解くことができる。
【0066】
時間解像度アップコンバータ109が、入力されたGHLの時間解像度を上述の手順によって高めたGHHを求める処理は、単位時間当たりのフレーム数を多くする処理(すなわち時間解像度を高める処理)だけではなく、ぼけた画像をくっきりした(シャープな)画像に変換する処理も含んでいる。G成分の動画像は、第2撮像部104によって高空間解像度で撮影されているが、長時間露光の影響で画像の一部がぼけていることもありえる。このため、低フレームレートで撮影された画像のフレームレートを高めると、時間解像度のみならず空間解像度も高められるという効果(シャープ化)が生じる。従って、時間解像度のアップコンバートを行うと、時間解像度および空間解像度の両方が向上するため、これらを総称して「(時空間)解像度が高められる」と表現することが可能である。
【0067】
以下に、(数3)の各項の意味、働きについてより詳細に説明する。
【0068】
(数3)の第1項は、解像度が高められたGHHから予測される長時間露光画像(HTGHH)と、実際の観測によって得た長時間露光画像GHLとの差異を示す。これは、解像度が高められたGHHと、長時間露光画像GHLとの時空間的な対応関係を表している。ここで、HTでは行の数が列の数より少ない。これは、GHLが長時間露光画像であって、GHHよりもフレームレートが低い(すなわち、トータルの画素数が少ない)ことからも理解できる。そのため、仮に(数3)の左辺を第1項だけにすると、解くべき問題(すなわち連立方程式)が一意に解けない不良設定問題となる。
【0069】
この不良設定問題を良設定問題に変更するために、(数3)の第1項には第2項、第3項、第4項、第5項が付加されている。
【0070】
(数3)の第2項は、画像中の動きに関する拘束を規定する項である。ここでは、動画像中の各点が明るさを変えずに移動していくことを仮定している。第2項中の行列Qmは、動画像中で検出された動きベクトルの始点と終点の画素に関係する要素だけが、それぞれ1と−1になっている。そのため(QmGHH)2は、動きベクトルの始点と終点間の差の2乗の動画像全体に関する総和となる。
【0071】
(数3)の第3、4、5項は、画像が一般的に満たしている特性、すなわち近傍画素間の局所的な滑らかさを示す。モノクロ(単色)の動画像をI(x,y,t)とすると、局所的な滑らかさは、
【数7】
として表すことができる。ここで、積分範囲は動画像の占める時空間全体であり、数7の被積分関数中の||・||はベクトルのノルムを示す。(数3)の第3、4、5項は、(数7)を差分展開し、IをC1、C2、C3に置き換えて、行列QsとベクトルGHHの積の形で表している。
【0072】
滑らかさ拘束を色間にまたがる形で定義することにより、G成分の時間解像度を高めることに、R成分、B成分の情報を反映させることができる。本発明では、R、G、B成分を異なる時空間解像度で撮影しているため、このような拘束条件を用いた画像復元を行うことが有効である。ここで、RGBとは異なる色空間(C1C2C3)に分解することの利点を説明する。
【0073】
人の視覚特性の観点から、3次元の色空間をなすRGB信号は、解像感に大きく寄与する成分と、解像感にあまり寄与しない成分とに分けられる。そのため、前者についての正則化パラメータλを小さく設定し、後者についての正則化パラメータλを大きく設定することによって、解像感のある画像を復元することができる。
【0074】
また、復元すべきデータの分布という観点からは、解の変動の大きな方向についての正則化パラメータλを小さく設定し、解の変動の小さな方向についての正則化パラメータλを大きく設定することによって、復元精度を高めることができる。
【0075】
自然画像を撮影した画像では、大部分の画像において、輝度成分の変動が大きく、色成分の変動が小さくなる傾向がある。
【0076】
3色への分離の方法は、例えば、数8により、RGBからYCbCrという輝度式差信号への変換を行う。
【数8】
【0077】
また、3色への分離の方法は上記の方法に限らず、予め用意した画像についてRGB空間での主成分分析により、第1主成分、第2主成分、第3主成分を求め、3次元色空間中での3つの軸を決めるようにしてもよい。通常、自然画像から主成分分析によって求めた第1主成分は、輝度成分とおおむね等しくなり、第2主成分と第3主成分は色信号に相当する成分となる。
【0078】
なお、色間にまたがる滑らかさ拘束については、C3を色空間においてGと垂直に選ぶようにすることで、3色間にまたがるものから2色間にまたがるもので置き換えても、同様の画質の処理結果を得ることができる。その場合、(数3)の代わりに以下の式を用いる。
【数9】
【0079】
また、GHHを得るのに、(数6)の代わりに以下の式を解けばよい。
【数10】
【0080】
以上説明した方法および手順により、GHHは(数6)もしくは(数10)の連立方程式の解として得られる。連立方程式を解く計算は、変数の数(解くべき未知数の数)が多くなると、必要な演算量が莫大になる。大規模な連立方程式の効率的解法については種々提案されているが、演算効率の最適化は問題に依存するところが大きい。以下に、今回取り扱う問題の効率的な計算について説明する。
【0081】
図4は、GHHを計算するための共役勾配法の手順と、共役勾配法において最も演算量を要する係数行列Aと更新ベクトルpkとの積の演算を効率的に行うブロック図の一例を示す。図4においては、解くべき連立方程式を
【数11】
として表している。なお、後述するように、拘束条件として(数3)の右辺の全ての項を用いる必要は無い。図4の例では、(数3)の右辺第5項を省略している。
【0082】
共役勾配法では、残差rが小さくなるように、更新量pを計算し、これを用いて解xの更新を繰り返す。収束に必要な繰り返し数は、係数行列Aの条件(数値的な安定性)や変数数に依存する。本実施形態の場合、100回程度の繰り返しを行う。
【0083】
この繰り返し計算においては、係数行列Aと更新量ベクトルpの積の計算が、最も演算量を必要とする。ベクトルpは解の更新量であるので、その要素数(次元)は動画像中のGの画素数になる。例えば、HDTV信号の空間解像度で4フレーム分の処理を行おうとすると、Gの画素数(すなわちpの要素数)は、1920×1080×4=8294400となる。係数行列Aは正方行列であるため、さらにこれの2乗の要素数となる。このような莫大なメモリアクセスと積和演算は、このままでは、現在通常に入手できる計算環境では計算することができない。
【0084】
しかしながら、係数行列Aは、(数6)もしくは(数10)に示すように、長時間露光の過程HT、動き拘束Qm、滑らかさ総則QsH、QsVの2乗(自身の転置との積)の線形和になっている。これらの項は、着目画素とその近傍画素のみとの演算であるため、係数行列全体としては大部分が0となる。このような行列は疎行列と呼ばれる。係数行列中のどの画素が0になるのか、また、0でない係数の割合がどれ位になるのかということが問題により異なるため、効率的な解き方が個々の問題に依存することになる。
【0085】
長時間露光過程HTは、図4中の参照符号401で示す用に、係数が全て1の時間方向の蓄積フィルタと考えることができる。拘束条件としてはHTの転置とHTの積になるが、HTの転置は、1画素の値を蓄積画素数分の画素に出力する作用を表す。そのため、(HT)THTは、入力を複数フレーム蓄積した値を、入力画素に相当する画素位置に出力するフィルタと解釈できる。
【0086】
もしくは、長時間露光過程HTを、係数が全て1/4の時間方向の平均化フィルタとしてもよい(4フレーム加算の場合)。なお、長時間露光過程HTの係数を全て1とする場合と、加算フレーム数分の1とする場合の処理の違いは、次のようになる。
【0087】
前者の場合の処理は、長時間露光画像に含まれる動きブレを除去するとともに、長時間露光した光量を各フレームの画像に分配する。その結果、処理結果が入力画像よりも暗くなる。一方、後者の場合の処理は、長時間露光画像に含まれる動きブレを除去するだけであり、処理結果は入力画像と同じ明るさになる。そのため前者の場合、Gの復元結果を使ってR,Bを高解像度化する前に、図示していない乗算器によって、Gの明るさ(レベル)をR、Bと揃える必要がある(本実施例の場合、4倍する必要がある)。
【0088】
次に、滑らかさ拘束について説明する。Qsは、2階微分の作用素であり、差分展開すると、以下の式で表せる。
【数12】
【0089】
(数12)はGHHを入力、∂GHH/∂xと∂GHH/∂yを出力とみると、フィルタとしては、水平もしくは垂直の係数が(−1,2,−1)の3タップのフィルタと解釈できる。これを係数行列として見ると、Qsは対角成分が2で、左右1画素もしくは上下1ラインが−1、それ以外は全て0の対角行列となる。
【0090】
これらは、対角行列であるために、転置行列も自身と等しくなり、転置と自身の積は、係数が(1,−4,6,−4,1)の5タップのフィルタとなる。すなわち、滑らかさ拘束(QsH)TQsH、(QsV)TQsVは、図4中に402で示すように、水平5タップのフィルタと垂直5タップのフィルタとして計算できる。
【0091】
最後に、動き拘束Qmは、動きベクトルの始点に相当する要素が1、終点に相当する要素が−1のデータ対の集まりである。行列としては、対角成分が全て1で、各行に−1の要素をひとつずつ持つ。そのため、(Qm)TQmは、対角成分がすべて1で、Qmで−1になっている要素と、その転置位置の要素が−1の値を持つ。このような行列演算は、フィルタとしては、動きベクトルの探索範囲で決まる空間サイズを持つフレーム間フィルタとして実装できる。例えば、動きの検出範囲が高解像度側で縦横±n画素の範囲の場合、着目画素を含めて縦横(1+2n)画素×2フレームのフィルタとして実装できる。
【0092】
以上述べたフィルタ実装により、共役勾配法で最も演算量を必要とする行列Aとベクトルpの積の演算を、係数が0の演算を省略して、数個のフィルタ演算の線形和として、必要最小限の演算量で計算することができる。これらのフィルタ演算のうち、動き拘束以外のものは、処理する画像の内容によらず固定の係数のフィルタを事前に用意できる。一方、動き拘束はシーンの動きに依存するので、処理する画像の内容(本実施形態の場合、動き検出の結果)に応じてフィルタ係数を都度決定する必要がある。
【0093】
なお、共役勾配法によるGHHの計算について、本実施形態では全ての画素において計算する場合について述べたが、動き検出結果(Gの露光時間に相当するフレーム分の動きベクトルの長さの総和)に応じて、動きのある領域についてのみGHHの計算を行い、動きがほとんどない領域については、Gの入力画像をそのままGHHとすることにより、一層の演算量低減を図ることができる。
【0094】
また、共役勾配法によるGHHの計算において、動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めるようにしてもよい。これにより、定性的には、Gの入力画像をそのままGHHとすることと同様のこととなるとともに、数値的に安定化させることができ、繰り返し計算の収束を早めることができる。
【0095】
なお、上述の(数3)および(数9)に関しては、右辺の拘束条件は、必ずしもそれら全てを同時に用いる必要はない。以下のような変形例を用いてもよい。すなわち、(数3)および(数9)の右辺第2項を利用せずに
【数13】
としたり、
【数14】
としてもよい。
【0096】
これらの変形例によれば、全ての拘束条件を用いて(数3)もしくは(数9)によって計算するよりも少ない演算量でG成分の高解像度化を実現できる。ただし、拘束条件を緩和することになるため、生成される画像の高解像度感が多少低下することがある。
【0097】
また、動き検出が難しいシーンでは、動き検出の結果を用いない数式((数11)または(数12))によって高解像度化処理を行うことにより、出力される画像の画質に関して、動きの誤検出によるアーティファクト(画像の乱れ、ノイズ)の発生を抑えることができる。シーンからの動き検出が難しいか否かは、(a)時間的に双方向に動き検出を行った結果の差異から判断したり、(b)(数1)、(数2)に示した動き検出時の評価値の探索範囲内での最小値から判断することができる。
【0098】
前者(a)の場合、基準フレームの画像中の(x,y)において、時間的に順方向の動き検出結果が(u,v)であるとすると、次に順方向の動き検出時の参照フレームを基準に逆方向に動き検出をして、(x+u,y+v)における動き検出結果が(−u,−v)であれば、双方向の動き検出において一貫性があり信頼できる。一方、(−u,−v)と異なる場合、例えば一定のしきい値以上の差異がある場合には、動き検出が難しい状況であると判断できる。
【0099】
また、後者(b)の場合も同様に、SSDやSADの動き検出時の評価値の探索範囲内での最小値について、例えば予め定めたしきい値以上である場合、動き検出が難しい状況であると判断できる。
【0100】
再び図1を参照する。R,B用アップコンバータ107は、G用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分の動画像を用いて、第1撮像部103によって、短時間露光、低解像度、高フレームレートの撮像条件で撮像されたR,B成分の動画像を高解像度化する。
【0101】
以下、図5を参照しながら、R,B成分の動画像を高解像度化する処理を詳細に説明する。
【0102】
図5は、R,B用アップコンバータ107の構成をより詳細に示す。図5において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
R,B用アップコンバータ107は、ダウンコンバータ110と、係数推定部111と、復元フィルタ112とを有している。
【0104】
ダウンコンバータ110は、G用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分(GHH)を空間的に低解像化し、GLHを出力する。係数推定部111は、GHHとGLHから復元フィルタ112(復元フィルタH+)のフィルタ係数を推定する。復元フィルタ112として、ウィーナフィルタや一般逆フィルタ等の公知のフィルタを用いることができる。これらの復元フィルタは、GHHとGLHの関係を用いて、低解像度側の信号から高解像度側の信号を推定するものである。復元フィルタ112は、係数推定部111によって推定されたフィルタ係数を用いて、RLH,BLHからRHH,BHHを復元する。
【0105】
なお、R,B用アップコンバータ107におけるR,Bの高解像度化処理は、上述の処理に限る必要はなく、他の高解像度化処理によって行ってもよい。他の例による高解像度化処理を以下に説明する。
【0106】
図6は、他の例によるR,B用アップコンバータ107の構成を詳細に示す。ここで、R,B用アップコンバータ107は、RとBの相関に応じてGの高域成分を、補間拡大したR成分およびB成分に重畳することにより、R成分およびB成分を高解像度化する。
【0107】
図6に示されるR,B用アップコンバータ107は、ダウンコンバータ113と、補間拡大部114と、局所相関演算部115と、重み生成部116と、カウンタ117と、画像メモリ118と、正規化部119とを有している。
【0108】
R,B用アップコンバータ107は、動画像を構成するフレーム単位で処理を行う。まず、各フレーム処理の初めに、カウンタ117の内容と画像メモリ118の内容を、例えば0で埋めることにより、クリアする。
【0109】
低解像度化部113はG用アップコンバータ106によって高解像度化されたG成分(GHH)を空間的に低解像化し、GLHを出力する。
【0110】
補間拡大部114は、低解像度、高フレームレートで撮像されたRLH,BLHと撮影条件とを受け取り、RLHとBLHとをGHHと同じ画素数になるように補間拡大する。
【0111】
局所相関演算部115は、2×2画素や3×3画素程度の局所的な領域に関し、RLHとBLHの局所的な相関値を計算する。2×2画素について局所的な相関値ρを計算するときは、局所相関演算部115は、例えば(数15)を利用することができる。
【数15】
【0112】
重み生成部116は、局所相関演算部115によって計算された相関値に応じた重みを生成する。図7は、相関値ρと重みW2との関係の例を示す。重み生成部116は、相関値ρと図7に示す関係とに基づいて、重みW2を求める。
【0113】
図6に示されるように、重み生成部116によって生成され、出力された重みと、GHHとGLHの差(すなわちGの高域成分)とが乗算され、画像メモリ118が更新される。より詳しくは、乗算が行われた後、画像メモリ118内の画素データの格納位置に応じたアドレスが特定される。そして、乗算結果とそのアドレスに保持されていた値とが加算され、そのアドレスの値が加算結果に書き換えられる。
【0114】
このとき、画像メモリ118に書き込みを行う対象は、1画素でもよく、または、局所的な相関値を計算した範囲でもよい。ただし、後者のように複数画素について高域成分を重畳する場合、局所相関を計算する領域の設定の仕方(すなわち画像内でのインクリメントの仕方)によっては、同一画素に複数回、高域成分を重畳することになる。そのような場合を考慮して、図6のR,B用アップコンバータ107では、カウンタ117を利用する。カウンタ117は、高域成分を重畳した回数を各画素について記憶する。
【0115】
正規化部119は、複数回重畳した高域成分を、カウンタ117に1画素毎に記憶されている書き込み回数値で除算する。正規化された高域成分は、補間拡大部114によって補間拡大されたR,B画像に重畳され、RHH,BHHとして出力される。
【0116】
以上述べた方法によって、R,Bを高解像度化することにより、局所的な色バランスを保った状態でRとBとを高解像度化することができ、その結果、偽色の発生を抑えた高解像度化を行うことができる。
【0117】
なお、図7には相関値と重みの関係の一例として線形な関係の場合を示した。しかしこれは例であり、撮像時や表示時のγ特性を考慮して非線形な関係にしてもよい。また、前記の重みを、Rについては(Rの局所平均)/(Gの局所平均)で正規化し、Bについては(Bの局所平均)/(Gの局所平均)で正規化してもよい。この正規化により、R、G、Bの画素値に応じて、RとB重畳するGの高域成分の振幅を調節することができ、過度な高域の重畳による観察時の違和感を低減できる。ここで、R、G、Bの局所平均としては、補間拡大したRLH、BLHや図6のダウンコンバータ113でGHHをダウンコンバートしたGLHの画素値を用いればよい。
【0118】
なお、補間拡大したR、B画像に対する高域成分の重畳を1画素につき1回だけ行うように動作させるとすると、図6の画像メモリ118、カウンタ117、正規化部119は不要であり、図8に示す構成を採用することができる。図8は、R,B用アップコンバータ107の構成の変形例を示す。図8に示すように、図6と比較するとより簡単な構成でR,B用アップコンバータ107を実現することができ、かつ、同様の効果を得ることができる。
【0119】
なお、R,B用アップコンバータ107におけるR,Bの高解像度化処理は、上述したいわゆる復元フィルタを用いた処理や、Gの高域成分をRおよびB成分に重畳する処理に限る必要はない。高解像度化したG成分とそれを低解像度化したもの(上記GLHとGHH)との間の関係を学習し、学習結果に基づいてR成分、B成分を高解像度化するようにしてもよい。
【0120】
なお、学習は入力された画像の処理過程において行うものに限らず、予め事前に学習パターンを用意して行うようにしてもよい。この場合には、低解像度のG成分と高解像度のG成分の関係を学習する方法だけでなく、低解像のRGB成分と高解像度のRGB成分の関係を学習することも可能である。
【0121】
なお、S.Farsiuら、“Multiframe Demosaicing and Super−Resolution of Color Images”,IEEE Transactions of Image Processing,Vol.15,No.1,2006.Ron Kimmel,“Demosaicing: Image Reconstruction from Color CCD Samples”,IEEE Transactions of Image Processing,Vol.8,No.9,1999.Daniel Kerenら、“Restoring Subsampled Color Images”,Machine Vision and Applications 11: pp.197−202,1999.等の文献では、画像復元時のRGB間の局所的な相関性に基づく拘束条件を用いている。自然画像では、大部分の領域でRGB間に正の相関があるため、一般にこの拘束条件は有効に機能するが、領域の色が原色やそれらの補色に近い場合、別の色との境界では、局所的な相関関係が負になり、設定している拘束条件が有効に働かず、復元画像中に色にじみ、リンギング等のアーチファクトを生じさせる原因となる。
【0122】
これに対し、本実施形態で用いた色間にまたがる滑らかさ拘束では、局所的な色相関に基づくような正の相関は仮定しておらず、局所的な滑らかさだけを仮定しているので、相関という観点では正の相関でも、負の相関でもよい。そのため、上記の局所的な相関関係が負になるような領域でも、復元画像中に色にじみ、リンギング等のアーチファクトが顕著に発生することがない。
【0123】
これまでの説明では、出力信号はR,G,Bの各色成分であるとした。以下では、RGBの各出力信号を輝度成分と色差成分に変換して出力する撮像処理装置を説明する。
【0124】
図9は、本実施形態の変形例による撮像処理装置11の構成を示す。図9において、上述した撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
画像処理部105は、G用アップコンバータ106、補間拡大部114、およびダウンコンバータ113に加え、さらに色差計算部129および輝度計算部130を有する。
【0126】
制御部120は、補間拡大部114によって補間拡大されたR成分、B成分の信号、および、低解像度化部113で低解像度化されたG成分の信号を受け取り、(数16)の計算によって色差信号(Cb信号、Cr信号)に変換して出力する。
【数16】
【0127】
輝度計算部130は、補間拡大部114によって補間拡大されたR成分、B成分の信号、および、G用アップコンバータで高解像度化されたG成分の信号を受け取り、(数17)の計算によって輝度信号(Y信号)に変換して出力する。
【数17】
【0128】
上述の色差計算部129および輝度計算部130の説明から理解されるように、色差成分Cb、Crの計算には低解像度化したGを用い、一方、輝度成分Yの計算には高解像度化されたGを用いている。これにより、偽色の発生を抑えつつ、出力される画像の高解像度化を実現できる。
【0129】
なお、画像処理部105の後段にY、Cb、Crの各信号をRGBの各信号へ変換するブロックをさらに設けて、RGB成分の信号を出力する構成にしてもよい。
【0130】
なお、本実施形態による撮像処理装置およびその変形例による撮像処理装置は、G成分を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、R成分およびB成分を低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像するとした。しかしながら、これは例である。どの色成分(波長帯)を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像するかについては、他の例を採用することが可能である。
【0131】
例えば、海やプール等、水中のシーンを撮像する場合のように、シーン中にB成分が強く現れることが事前に分っている場合には、B成分を高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、R成分およびG成分を低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像することにより、観察者により高解像度感のある画像を提示することができる。
【0132】
例えば図10は、撮像処理装置1を一般化した撮像処理装置13の構成を示す。図10において、図1の撮像処理装置の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
撮像処理装置13は、R成分撮像部131と、G成分撮像部132と、B成分撮像部133と、制御部134と、切替部135と、HL用アップコンバータ136と、LH用アップコンバータ137と、出力部138とを有している。以下、撮像処理装置13の動作とともに各構成要素の機能を説明する。
【0134】
光学系101を通った可視光は、ダイクロイックプリズムで波長分解され、R成分撮像素子131、G成分撮像素子132、B成分撮像素子133によって撮像される。RGB各成分の撮像部131,132,133の読み出し画素数は、ビニング読み出し方法により、個別に、かつ動的に設定できる。「ビニング読み出し方法」とは、隣接する画素に蓄積された電荷を加算して読み出す方法である。また、各撮像部131,132,133では、露光時間、フレームレートについても同様に設定可能とする。読み出し時の条件設定は、制御部134によって行われる。
【0135】
制御部134は、シーン中の色成分の分布に応じて、R成分撮像素子131、G成分撮像素子132、B成分撮像素子133のうちのいずれかを、高解像度、長時間露光、低フレームレート(実施形態1におけるGに相当)に設定し、残りを低解像度、短時間露光、高フレームレート(実施形態1におけるR,Bに相当)に設定する。
【0136】
なお、撮像開始時にはシーン中の色成分の分布が未知であるので、例えばGを高解像度、長時間露光、低フレームレートに設定するようにすればよい。
【0137】
切替部135は、制御部によるRGB各成分の撮像部131,132,133の設定に応じて、高解像度、長時間露光、低フレームレートでの撮像が設定されている成分の撮像データがHL用アップコンバータ136に入力され、残りの成分のデータがLH用アップコンバータ137に入力されるように切り替え動作を行う。
【0138】
HL用アップコンバータ136は、G用アップコンバータ106(例えば図1)と同じ処理を行い、高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像された成分の動画像を空間的に高解像化する。
【0139】
LH用アップコンバータ137は、低解像度、短時間露光、高フレームレートで撮像された2系統(2つの色成分)の動画像と、HL用アップコンバータ136で高解像度化された動画像とを受け取り、R,B用アップコンバータ107(例えば図1)と同じ処理により、その2系統の動画像を空間的に高解像化する。
【0140】
出力部138は、HL用アップコンバータ136とLH用アップコンバータ137によってそれぞれ高解像度化された動画像を受け取り、制御部134による設定に応じて、RGB3系統の動画を出力する。もちろん、出力部138が輝度信号(Y)および色差信号(Cb,Cr)信号等の、他の信号形式に変換して出力するようにしてもよい。
【0141】
なお、撮像部は本実施形態に示す3板構成のものに限る必要はなく、例えば、単板構成でR,G,B間で電荷蓄積期間を変えたり、画素加算の仕方を変えることで空間解像度を変えるようにしたり、ライン間引き読み出しをするようにしてもよい。
【0142】
(実施形態2)
次に、動きの大小に応じて処理効率を高めた実施形態を説明する。
【0143】
図11は、本実施形態におけるG用アップコンバータ106の構成を示す。他の部分の構成は、基本的には、図1および図2を参照して説明した実施形態1の構成と同様である。このため、ここでは、相違部分を説明する。
【0144】
本実施形態のG用アップコンバータ106は、動きのある領域に対する処理と動きのない領域に対する処理に分け、動きのある領域のみ高解像度化する処理を実行する。本実施形態では、図11に示すように、動き検出部171がRLH、BLHを入力として、動き検出結果と動きの信頼性の両方を出力する。領域分割部172は、動き検出部181によって検出された動き検出結果をもとに、動画像を3次元的に領域分割する。
【0145】
図12は、領域分割部172による領域分割の一例を示す。図12では、動画像が動きのない領域(領域番号0)と2つの動きのある領域(領域番号1と2)に分割されている様子を示す。
【0146】
領域ごとの時間解像度アップコンバータ173は、領域分割部172によって動きに応じて領域分割された領域分割結果のうち、動きのある領域について、個々にそれぞれ時間解像度アップコンバート処理を施し、動きのない領域については、撮影時のGの加算フレーム数に応じて、入力画像のGの各画素値を等分する。例えば、Gの加算フレーム数が4であれば、入力画像のGの各画素値を4分の1にして4フレーム分出力する。
【0147】
上記の処理を行うことにより、動きのない静止領域に対する処理を簡略化することができ、演算量を低減することができる。また、領域分割された動きのある領域に対して個々に処理を行うことにより、それぞれの領域について解くべき連立方程式の変数数を減らすことができ、演算規模を小さくできる。
【0148】
なお、上記では領域ごとの時間解像度アップコンバータ173の処理を、長時間露光画像に含まれる動きブレの除去と光量の分配の双方を含む分解処理として説明した。しかし、これに限る必要はなく、領域ごとの時間解像度アップコンバータ173の処理を、長時間露光画像に含まれる動きブレの除去のみにしてもよい。その場合、動きのない領域における処理は不要になり、単に入力をそのまま出力するだけでよい。
【0149】
上記の実施形態では、動きのある領域でのみ超解像処理をする場合について説明したが、動きの有無により処理を離散的に分けるだけでなく、動きの大小に応じて処理を連続的に切り替えるようにしてもよい。
【0150】
図13は、図4に対応する図面であり、時間解像度アップコンバータの構成の一例を示すものである。図13に示す空間滑らかさ拘束部182は、動きの大きさと信頼性に応じて、λsC1とλsC2を制御する。時間滑らかさ制御部183は、動きの大きさと信頼性に応じて、λtを制御する。
【0151】
空間滑らかさ拘束部182は、動きが大きいほど、すなわち、動きベクトルが長いほど、λsC1とλsC2を大きくし、逆に、動きが小さいほど、すなわち、動きベクトルが短いほど、λsC1とλsC2を小さくする。また、空間滑らかさ拘束部182は、動きの信頼性が高いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を強くし、逆に、動きの信頼性が低いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を小さくする。
【0152】
時間滑らかさ拘束部183は、動きが小さいほど、すなわち、動きベクトルが短いほど、λtを大きくし、逆に、動きが大きいほど、すなわち、動きベクトルが長いほど、λtを小さくする。また、時間滑らかさ拘束部183は、動きの信頼性が高いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を強くし、逆に、動きの信頼性が低いほど、動きベクトルの長さに応じた制御を小さくする。
【0153】
以上述べたλsC1、λsC2、λtについての制御により、動きの小さい領域や静止している領域では、時間滑らかさ拘束が強くなるため、動きの大小に応じて処理を連続的または段階的に切り替えることができる。
【0154】
(実施形態3)
上述の実施形態1、2においては、撮像処理と高解像度化処理とが同一のシステム(撮像処理装置)によって行われる例を説明した。しかしながら、両処理は必ずしも同一のシステムで行われる必要はない。
【0155】
本実施形態においては、撮像処理と高解像度化処理とが異なるシステムにおいて行われる例を説明する。
【0156】
図14は、本実施形態による撮像装置901、ネットワーク902および処理装置903で構成された画像処理システムの例を示す。ネットワーク902に代えて、メディア906を用いても、本実施形態による画像処理システムを構成することができる。図14において、実施形態1、2の撮像処理装置(例えば図1)の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0157】
撮像装置901は、レンズ系101と、ダイクロイックミラー102と、第1撮像部103と、第2撮像部104と、撮影モード設定部904とを有している。
【0158】
第1撮像部103は、カラー画像のR成分とB成分とを短時間の露光時間で、低解像度かつ高フレームレートで撮像し、R画像RLHおよびB画像BLHを出力する。第2撮像部104は、カラー画像のG成分を長時間の露光時間で、高解像度かつ低フレームレートで撮像し、G画像GHLを出力する。
【0159】
撮影モード設定部904は、例えば第2撮像部104におけるフレームレート、露光時間等の、設定が可変な撮影条件を設定し、設定した条件を示す情報を映像信号のヘッダ中に書き込み、または、別途データとして出力部905を介してネットワーク902に出力する。
【0160】
図15は、データの構成の1例を示すものである。図15において、ヘッダ部には、フレームレート、露光時間(もしくは、Gの露光時間をR,Bのフレーム数に換算した値)等の撮影条件(設定が可変な条件)が保存され、これに、R,Bの画像データ、Gの画像データが続く。
【0161】
出力部905は、撮像装置901によって撮像されたG画像GHL、R画像RLH、B画像BLH、および、それらの撮影条件の情報をネットワーク902またはメディア906に出力する。
【0162】
処理装置903は、画像処理部105を有している。画像処理部105は、ネットワーク902またはメディア906を介して、上記GHL、RLH、BLHおよびその撮影条件の情報を受け取り、実施形態1、2において説明した処理により、これらを空間的、時間的に高解像度化したGHH、RHH、BHHを出力する。
【0163】
以上の構成により、撮像装置と処理装置とが別体で構成され、空間的に離れて存在していても、ネットワーク902またはメディア906を介して動画像信号および撮影条件の情報を授受できるように構成することにより、処理装置が高時空間解像度の動画像を出力できる。
【0164】
なお、ネットワーク902は家庭内に構築されたLAN(Local Area Network)でもよいし、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)でもよい。または、USB規格やIEEE1394規格の通信回線でもよい。さらに無線でも有線でもよい。上述のメディア906は、光ディスクや取り外し可能なハードディスクなどのリムーバブルディスク、フラッシュメモリカードが含まれる。
【0165】
上述の各実施形態では、撮像処理装置は、図に示す種々の構成を有するとして説明した。例えば、各構成に含まれる画像処理部などは、機能的に見たブロックとして記載されていた。これらの機能ブロックは、ハードウェア的には、デジタル信号プロセッサ(DSP)のような1つの半導体チップまたはICによって実現することも可能であるし、例えばコンピュータとソフトウェア(コンピュータプログラム)とを用いて実現することもできる。
【0166】
図16は、コンピュータによって構成された撮像処理装置のハードウェアの一例を示す。
【0167】
各実施形態の画像処理装置の各機能ブロックと、図16に示すハードウェアとの対応関係は以下のとおりである。以下では例として、主に図1に示す撮像処理装置1を挙げて説明する。
【0168】
撮像処理装置1のレンズ系101、ダイクロイックミラー102、第1撮像部103および第2撮像部104は、図16に示すカメラ151およびA/D変換器152に対応する。また、画像処理部105が実際の処理で利用する一時バッファ(図示せず)やメディア906は、図16に示すフレームメモリ153またはハードディスクドライブ(HDD)160に対応する。そして制御部120および画像処理部105は、コンピュータプログラムを実行した図16のCPU154によって実現される。
【0169】
図16のコンピュータを動作させるコンピュータプログラムは、例えばROM155に保持されている。または、光ディスク、磁気ディスクに格納されていてもよい。また、有線や無線のネットワーク、放送などを介して伝送され、コンピュータのRAM156に取り込まれてもよい。
【0170】
コンピュータプログラムは、プロセッサであるCPU154によってRAM156に読み出されて展開される。CPU154はコンピュータプログラムの実態であるコード化された各命令を実行する。命令の実行結果として得られたデジタル画像信号は、フレームメモリ157に送られて一時的に保持され、D/A変換器158によってアナログ信号に変換され、ディスプレイ159に送られ、表示される。
【0171】
画像処理部105を実現するコンピュータプログラムの処理は、例えば次に説明するフローチャートにしたがって記述されている。
【0172】
例えば図17は、本発明の処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、実施形態1による処理として説明するが、実施形態2の撮像装置901および処理装置903によって個別に行われる処理として把握することもできる。
【0173】
まずS101において、第1撮像部103および第2撮像部104は、長時間露光高解像度低フレームレートのG画像GHLと短時間露光低解像度高フレームレートのR画像RLH、B画像BLHとを撮像する。ステップS102において、画像処理部105のG用アップコンバータ106は、G成分の動画像を高解像度化する。より具体的には、ステップS104とS105とに分けることができる。ステップS104において、G用アップコンバータ106の動き検出部108は、動き検出を行う。ステップS105において、時間解像度アップコンバータ109は、動き検出の結果等を利用して、(数4)もしくは(数10)に基づいて(数3)もしくは(数9)をそれぞれ最小化するGHHを求める。
【0174】
次のステップS103において、R,B用アップコンバータ107は、R成分およびB成分の各動画像を高解像度化する。その後、制御部120は、撮像が完了したか否かを判定し、完了していないと判定すると処理はステップS101から繰り返され、完了したと判定すると処理は終了する。
【0175】
図18は、図17に示すステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図5に示すR,B用アップコンバータ107の処理に対応する。
【0176】
図18のステップS106において、ダウンコンバータ110は、撮像条件に基づいてGHHを低解像度化する。ステップS107において、係数推定部111は復元フィルタ112に適用するための係数を推定する。ステップS108において、推定された係数が復元フィルタ112に適用され、復元フィルタ112は、RLHおよびBLHを高解像度化し、RHHおよびBHHを出力する。
【0177】
図19は、他の例によるステップS103の詳細な処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図6に示すR,B用アップコンバータ107の処理に対応する。
【0178】
ステップS109において、ダウンコンバータ113は、撮像条件に基づいてGHHを低解像度化する。ステップS110において、GHHからGLHが減算される。
【0179】
一方、ステップS111において、補間拡大部114が撮像条件に基づいてRLHおよびBLHを補間拡大すると、その信号に基づいて、ステップS112において局所相関演算部115が局所的な相関値を計算する。
【0180】
そしてステップS113において、重み生成部116が重みを生成すると、ステップS114においてカウンタ117が高域成分を重畳した回数を各画素について記憶する。ステップS115において、重み生成部116によって生成され、出力された重みと、GHHとGLHの差(すなわちGの高域成分)とが乗算され、ステップS116において画像メモリ118が更新される。
【0181】
ステップS117において、正規化部119は、画像メモリ118に保持された、複数回重畳した高域成分を、カウンタ117に1画素毎に記憶されている書き込み回数値で除算して、正規化する。
【0182】
そしてステップS118において、正規化された高域成分は、補間拡大部114によって補間拡大されたR,B画像に重畳され、RHH,BHHとして出力される。
【0183】
以上、本発明の各実施形態を説明した。実施形態1〜3においては、R,G,Bの3成分をダイクロイックミラーで分離する場合について説明したが、色成分の分離の形態はこれに限るものではない。例えば深さ方向に、順に、R+G+B、R+G、Rと3層に分けて撮像する単一の撮像素子(CCDやCMOSセンサ)を用いても良い。このような撮像素子は、入射光の波長に応じてフォトダイオードに進入する光の深さが異なることを利用して色信号を生成するため、フィルタが不要になる。このような素子を用いる場合、例えばR+GもしくはR+G+Bを高解像度、長時間露光、低フレームレートで撮像し、その他を低解像度、短時間、低フレームレートで撮像した画像を受け取って処理することで、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の撮像処理装置および画像処理装置は、撮像素子サイズを小型化したカメラによる高精細画像の撮像とその再生装置、システムとして有用である。また、本発明の撮像処理装置および画像処理装置は、本発明による画像処理方法を公知のコンピュータに実行させるプログラムによって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0185】
101 レンズ系
102 ダイクロイックミラー
103 第1撮像部
104 第2撮像部
105 画像処理部
106 G用アップコンバータ
107 R,B用アップコンバータ
120 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成分および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取り、処理を行う画像処理装置であって、
前記第1色成分の動画像の情報および前記第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する第1アップコンバータと、
前記第1色成分および前記第3色成分の各動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および前記第3色成分の動画像を生成する第2アップコンバータと
を備え、
前記第1アップコンバータは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する画像処理装置。
【請求項2】
前記第1色成分、前記第2色成分、および前記第3色成分は、それぞれ、赤、緑、および青である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色間にまたがる滑らかさの拘束条件は、前記第1から第3色成分によって定まる色空間内における近傍画素値間の連続性を規定する式によって表現される請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色空間における画素値の3つの座標成分は、それぞれ、前記第1から第3色成分の線形和である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1アップコンバータは、前記評価値が最小化するように、前記第2成分の動画像を構成する画素値を算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記評価値は、撮像したシーン中の動きに沿った画素値変化についての拘束条件を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値の最小化は、疎な係数行列の連立方程式を、係数が固定のフィルタ演算と係数が画像の内容に応じて変化するフィルタ演算とに分解して演算することによって行う請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの大きさがしきい値以上の領域についてのみ演算することによって行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めることによって行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
第1アップコンバータは、前記動画像の動きの大きさに応じて前記評価値を変化させる請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光から前記第2成分を分離する分離部と、
前記第1色成分および第3色成分の動画像を撮影する第1撮像部であって、第1電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する第1撮像部と、
前記第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部であって、前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する第2撮像部と、
前記第1撮像部および前記第2撮像部における撮影条件を制御する制御部と
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置と、
を備える撮像処理装置。
【請求項12】
第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光を受け、前記第1色成分および第3色成分の光については第1電荷蓄積期間で露光することにより前記第1色成分および第3色成分の前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、前記第2色成分の光については前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光することにより前記第2色成分の前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する撮像部と、
前記撮像部における撮影条件を制御する制御部と
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置と、
を備える撮像処理装置。
【請求項13】
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップと
を含む画像処理方法であって、
前記第1アップコンバートステップは、
撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する、画像処理方法。
【請求項14】
画像処理装置の制御プログラムであって、
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップと
を前記画像処理装置に実行させ、
前記第1アップコンバートステップは、
撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する、画像処理装置の制御プログラム。
【請求項1】
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成分および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取り、処理を行う画像処理装置であって、
前記第1色成分の動画像の情報および前記第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する第1アップコンバータと、
前記第1色成分および前記第3色成分の各動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および前記第3色成分の動画像を生成する第2アップコンバータと
を備え、
前記第1アップコンバータは、撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像を生成する画像処理装置。
【請求項2】
前記第1色成分、前記第2色成分、および前記第3色成分は、それぞれ、赤、緑、および青である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色間にまたがる滑らかさの拘束条件は、前記第1から第3色成分によって定まる色空間内における近傍画素値間の連続性を規定する式によって表現される請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色空間における画素値の3つの座標成分は、それぞれ、前記第1から第3色成分の線形和である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1アップコンバータは、前記評価値が最小化するように、前記第2成分の動画像を構成する画素値を算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記評価値は、撮像したシーン中の動きに沿った画素値変化についての拘束条件を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値の最小化は、疎な係数行列の連立方程式を、係数が固定のフィルタ演算と係数が画像の内容に応じて変化するフィルタ演算とに分解して演算することによって行う請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの大きさがしきい値以上の領域についてのみ演算することによって行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1アップコンバータでの前記第2成分の動画像の時空間高解像度化は、シーン中の動きの小さい領域では、時間方向の滑らかさ拘束を強めることによって行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
第1アップコンバータは、前記動画像の動きの大きさに応じて前記評価値を変化させる請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光から前記第2成分を分離する分離部と、
前記第1色成分および第3色成分の動画像を撮影する第1撮像部であって、第1電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影する第1撮像部と、
前記第2色成分の動画像を撮影する第2撮像部であって、前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光して、前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する第2撮像部と、
前記第1撮像部および前記第2撮像部における撮影条件を制御する制御部と
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置と、
を備える撮像処理装置。
【請求項12】
第1色成分、第2色成分および第3色成分を含む可視光を受け、前記第1色成分および第3色成分の光については第1電荷蓄積期間で露光することにより前記第1色成分および第3色成分の前記動画像を構成する各画像を第1空間解像度で、かつ、前記第2色成分の光については前記第1電荷蓄積期間よりも長い第2電荷蓄積期間で露光することにより前記第2色成分の前記動画像を構成する各画像を前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影する撮像部と、
前記撮像部における撮影条件を制御する制御部と
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置と、
を備える撮像処理装置。
【請求項13】
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップと
を含む画像処理方法であって、
前記第1アップコンバートステップは、
撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する、画像処理方法。
【請求項14】
画像処理装置の制御プログラムであって、
第1空間解像度で、かつ、第1時間解像度で撮影された第1色成および第3色成分の動画像の情報と、前記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度で、かつ、前記第1時間解像度よりも低い第2時間解像度で撮影された第2色成分の動画像の情報とを受け取るステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報に基づいて、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する第1アップコンバートステップと、
前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報、および、時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報に基づいて、空間解像度を高めた前記第1色成分および第3色成分の動画像の情報を生成する第2アップコンバートステップと
を前記画像処理装置に実行させ、
前記第1アップコンバートステップは、
撮像過程で決まる拘束条件と、色間にまたがる滑らかさの拘束条件とを含む評価値に基づいて時間解像度を高めた前記第2成分の動画像の情報を生成する、画像処理装置の制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−15228(P2011−15228A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158022(P2009−158022)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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