説明

画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】濃淡ブラックインクの分解パターンを色によって柔軟に制御する場合でも、入力CMY信号の下色を精度よく濃淡インクに置き換え、色変化の少ない下色処理を行う。
【解決手段】墨生成処理部11は、入力CMY信号から濃ブラックインク(Bk)及び淡ブラックインク(Lk)の出力値を決め、混色変換部12は、Bk、Lk出力値を用いて混色濃度を求め、UCR処理部13において下色除去処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃淡インクを含む複数色の色材により色再現を行うカラー記録装置に関し、特に下色除去を行って、印刷する色材ごとの出力信号値を決定するカラー画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体に関し、例えばカラーMFP、カラーレーザープリンタ、インクジェットプリンタなどに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー印刷、カラーハードコピーの分野では、黄、マゼンタ、シアンの3色材に黒色材を加えて4つの色材で色再現している。これは一般に、黄、マゼンタ、シアンの3色だけでは、高濃度部のグレーを再現できないので、高濃度の黒の色材を使用して高濃度無彩色部の再現を可能にする。また、黄、マゼンタ、シアンの3色材で再現すべき色の黒成分を黒の色材に置き換える下色除去処理を行ことにより1画素あたりの色材の量を減らせるという効果もある。
【0003】
下色除去の方法としては、最も簡単には、例えば図12に示すように、黄、マゼンタ、シアンの信号量Y、M、Cの最小値MINを求め、この最小値MINを係数倍した値rMIN(但し、rは係数)を黒の信号量K0とする。そして、前記Y、M、Cの信号量からK0の信号量を減じることにより各補正データY0、M0、C0を得る方法が知られている。
【0004】
さらに、上述の下色除去法では、有彩色に対しては彩度が低下し、画質が劣化するので、特許文献1では下色除去後のデータに対し、黒の信号量に基づいて、Y0、M0、C0を増加させる下色加刷処理(UCA)を行う方法も提案されている。
【0005】
ところで、近年、インクジェットプリンタにおいては、CMYKインクだけではなく、淡インクを用いたプリンタや特色を用いたプリンタなど多色化が進展している。多色インクへの色分解方法としては、デバイスRGB信号を前述したような従来のUCR/UCA方式を用いてCMYK信号に分解し、分解されたCMYK信号を更に濃淡インクへの振り分けテーブルを用いて色分解する手法が一般的である(図13)。しかし、この方式では濃淡インクへの振り分けテーブルが固定のため、粒状性や印字可能なインク総量値を考慮して濃淡インクの分解パターンを柔軟に制御することができない。そこで、濃淡インクの有効性を最大限に生かすためには、従来のUCR/UCA処理とは異なる新たな色分解方法が必要になる。
【0006】
例えば、特許文献2では、三次元メモリマップ補間演算を用いて色分解を行うことにより、粒状性や色再現域を考慮して濃淡インクの使用量を決めている。この方式では、まず、黄、マゼンタ、シアンの信号量Y、M、Cで定義される色空間(CMY空間)における最外郭ラインごとに色分解テーブルを作成する。この際、濃インクの粒状度が目立たない淡インクの出力レベルを決定し、濃インクの打ち始めを決定している。全ての最外郭ラインの色分解テーブルが決まると、補間演算を用いて色空間内部の色材インク量を決定し、濃淡インクの分解パターンを柔軟に制御している。
【0007】
【特許文献1】特公平6−44801号公報
【特許文献2】特開2002−33927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2における濃淡インクは、C、M、Yの一次色のみであり、例えば濃淡ブラックインクを使用した場合を考慮していない。また、濃度の異なる二次色インク(R、G、B)或いは三次色インク(ブラック)などを使用した近年のプリンタにおいても濃淡インクの分解パターンを柔軟に制御可能な色分解方式が必要になってきている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、入力CMY信号を濃度の異なるブラックインク(または二次色インク)を含む複数の色信号へ色分解する色分解装置において、濃淡ブラックインク(または二次色インク)の分解パターンを色によって柔軟に制御する場合でも、入力CMY信号の下色を精度よく濃淡インクに置き換えることができ、色変化の少ない下色処理を行う画像処理装置及び方法を提供することにある。
【0010】
即ち、請求項1、4、5〜8記載の発明では、入力CMY信号を濃度の異なる二次色或いは三次色インクの色材を含む複数の色信号へ色分解する色分解装置において、二次色或いは三次色インクの分解パターンを柔軟に制御可能で、かつ分解パターンによらず色変化の少ない下色処理を行う画像処理装置、方法、プログラムおよび記憶媒体を提供することを目的としている。
【0011】
請求項2記載の発明では、入力CMY信号を濃度の異なる二次色或いは三次色インクの色材を含む複数の色信号へ色分解する色分解装置において、二次色或いは三次色インクの分解パターンを柔軟に制御可能で、かつ分解パターンによらず色変化の少なく出力色再現域の広い下色処理を行う画像処理装置を提供することを目的としている。
【0012】
請求項3記載の発明では、入力CMY信号を濃度の異なる二次色或いは三次色インクの色材を含む複数の色信号へ色分解する色分解装置において、二次色或いは三次色インクの分解パターンを柔軟に制御可能で、かつ濃淡インクの設定パターンによらず入力CMYの色特性が概ね一致する下色処理を行う画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、入力色信号を濃淡インクを含む出力色信号に色分解する画像処理装置において、前記入力色信号から前記濃淡インクの出力値を求める色変換手段と、前記濃淡インクの出力値に基づいて濃淡インクを混色した色に変換する混色変換手段と、前記混色変換後の色信号値を用いて、下色除去を行う下色除去処理手段とを具備することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1、4、5)の画像処理装置においては、入力色信号を濃淡インクを含む出力色信号に色分解する際に、濃淡インクの出力値に基づいて濃淡インクを混色した色に変換する混色変換手段と前記混色変換後の色信号値を用いて下色除去を行う下色除去処理手段とを有しているため、二次色或いは三次色インクの濃淡インクの分解パターンを色相ごとに制御するような墨生成処理を行う場合でも、色変化の少ない色信号に色分解することができる。
【0015】
本発明(請求項2)の画像処理装置においては、前記濃淡インクの出力値から下色加刷率を求める加刷率算出手段と下色除去処理後の色信号に対して、前記加刷率を用いた下色加刷処理を行う手段とを有しているため、濃淡インクの分解パターンを色相ごとに制御するような墨生成処理を行う場合でも、彩度低下の少ない色分解を行うことができる。
【0016】
本発明(請求項3)の画像処理装置においては、色分解処理前の入力色信号を出力したときの出力彩度と色分解処理後の出力色信号を出力したときの出力彩度が略一致するように前記加刷率を設定しているため、濃淡インクの分解パターンの設定を変更した場合でも、入力CMY特性が大きく変化せず色変わりの少ない画像出力を行うことができる。
【0017】
本発明(請求項6)の画像処理方法においては、入力色信号を濃淡インクを含む出力色信号に色分解する際に濃淡インクの出力値に基づいて濃淡インクを混色した色に変換し、前記混色変換後の色信号値を用いて下色除去を行うため濃淡インクの分解パターンを色相ごとに制御するような墨生成処理を行う場合でも、色変化の少ない色信号に色分解することができる。
【0018】
本発明(請求項7、8)のプログラムおよび記録媒体においては、濃淡インクの分解パターンを色相ごとに制御するような墨生成処理を行う場合でも、色変化の少ない色信号に色分解するプログラムをコンピュータで実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。 実施例1:
図2は、本発明の実施例における画像処理装置の構成を示す。色補正手段1は、入力された各々8ビットのRGB信号を中間色信号であるC0M0Y0信号(各々8ビット)に変換し、色分解手段2は、C0M0Y0信号をシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、濃ブラック(Bk)、淡ブラック(Lk)の5色信号(各々8ビット)に変換する。変換されたCMYBkLk信号は、ガンマ変換手段3、総量規制手段4、中間調処理手段5により順に処理され、最終的にはプリンタエンジンによって紙等の媒体に出力される。ここで、ガンマ変換手段3は、1次元のテーブル変換によりグレイバランス、階調性等を整える。この結果、C=M=Yの場合には無彩色グレーを表している。総量規制手段4は、CMYBkLkの色材総量をプリンタエンジンの出力可能な総量(本実施例では、260%とする)以内に収める処理を行う。中間調処理手段5は、多値の階調を持つCMYBkLk値を、プリンタエンジンが再現可能な少ない階調数を用いた面積変調の形式に変換する。
【0020】
色補正手段1としては、マスキング演算もしくは3次元ルックアップテーブル(3D−LUT)6を用いた補間演算等の方法を用いることができる。ここで、色補正パラメータは、入力RGB信号とC0M0Y0信号が等しい色を再現するように設定するが、後段の色分解手段の変換関係によりC0M0Y0が再現する色が変化する。このため、色補正パラメータは色分解手段の決定後に作成する。
【0021】
図1は、実施例1の色分解処理手段の構成を示す。実施例1では、入力CMY信号から濃ブラックインク(Bk)及び淡ブラックインク(Lk)の出力値を決める墨生成処理部11と、生成したBk出力値及びLk出力値を用いて混色濃度を求める混色変換部12と、下色除去処理を行うUCR処理部13からなる。
【0022】
図3は、墨生成処理を説明する図である。まず、中間色信号C0M0Y0を入力として、前記色補正手段と同様の3D−LUTを用いた四面体補間演算を行う。但し、図3の例では、C0M0Y0空間を一つの立方格子として扱い、8つの格子点で補間演算を行う。したがって、点W(0、0、0)、点Y(0、0、255)、点M(0、255、0)、点R(0、255、255)、点C(255、0、0)、点G(255、0、255)、点B(255、255、0)、点K(255、255、255)に対応する出力Bk、Lkを変換テーブルとして持つ。また、補間演算により算出される信号のうち、Bk、Lk信号は、そのまま出力信号のBk、Lkとなっている。
【0023】
四面体補間は、立方格子を図4のように、対角線を共有する6つの四面体に分解し、四面体の4つの頂点の変換テーブル値を用いて補間演算する方法である。図4のように、立方格子の各格子点のテーブル値をP000、P001、P010、P011、P100、P101、P110、P111と表すと、任意の入力信号がT1〜T6のどの四面体内に存在するかを図5の表における判定式で判定し、そのときの係数A、B、C、Dを用いて、以下の式を用いて出力値を求めることができる。
(出力値)=(係数A)×C0+(係数B)×M0+(係数C)×Y0+(係数D)
上記は、C0M0Y0空間を一つの立方格子としたが、C0M0Y0空間を複数の立方格子に分割し、各格子点に対応する補正量を保持しても良い。また、補間演算の代わりに色相分割マスキング演算を使ってもよい。
【0024】
上記のような補間演算を用いた墨生成処理を行えば、格子点に割り当てるBk、Lkの出力値を変えることにより、色相ごとに柔軟にBk、Lkの出力パターンを制御することが可能になる。図6は、上記の墨生成処理で決定される色相Aと色相BのBk、Lk出力値の例を示す。横軸は、MIN(C0、M0、Y0)を、縦軸はBk、Lkの出力値を表している。図6(a)は、例えばYベタ〜ブラックのラインにおけるBkとLkの関係である。Yベタ〜ブラックのラインでは、Bkインクの開始点が早いとざらつきが目立ちやすい。そのため、Bkインクの開始点をできるだけ遅らせるようにしている。図6(b)は、ブルーの色相のようにはじめからBkインクを打ってもざらつきが目立たないような場合の例である。このような場合には、インク総量を減らすためにBkの開始点を早めている。このように、本実施例における墨生成処理は、BkとLkの色分解を色相ごとに自由に制御することができる。
【0025】
墨生成処理によってBk、Lkの出力値が求まると、次に混色変換部12によって濃淡ブラックインクの混色濃度を求め、UCR処理部13において下色除去処理を行う。以下、例として、濃ブラックインクの最大濃度をDd、淡ブラックインクの最大濃度をDlとして説明する。
【0026】
ところで、濃ブラックインクと淡ブラックインクを混色した時の濃度Ddlは、濃ブラックの濃度と淡ブラックの濃度の和では単純には求まらない。例えば、各々100%べたで混色出力した場合は、インク付着量が多いためにインク表面の反射の影響が大きくなり、Dd+Dlよりも濃度が低くなることが多い。更に、濃ブラックインクと淡ブラックインクの濃淡比率によって、ドットの重なり率が変わるため混色特性が異なってしまうと言う問題も生じる。
【0027】
そこで、混色変換部12では混色モデルを用いて混色濃度を求めるようにしている。混色モデルを構築するには、BkとLkの出力濃度を異ならせた混色パッチを複数出力し、その出力パッチの濃度を測色する。そして、その測色濃度とBk、Lkの信号値を用いて変換モデルを構築する。変換モデルとしては、例えば
Ddl=a1*Bk+a2*Lk+a3*Bk*Lk
の多項式を用い、係数は測色濃度の予測誤差が最小になるように最適化する。また、多項式の代わりにニューラルネットなどの非線形モデルを使用することもできる。次に、上記で求めた混色濃度に従ってUCR処理部13において下色除去処理を行う。下色除去処理は、C0、M0、Y0のグレー成分をブラックインクで置き換える処理であり、典型的には以下の計算によって行うことができる。
【0028】
C1=C0−αK
M1=M0−αK
Y1=Y0−αK
本発明では、濃淡ブラックインクを使用しているので、上記のK信号の代わりに上記で構築した混色濃度Ddlを用いる。ここで、C、M、Yをそれぞれ100%で混色した時の濃度Dcmy、濃ブラックインクと淡ブラックインクを各々100%べたで出力した時の濃度をDmaxとする。一般にはCMY三色で再現できる色域よりもCMYKで再現できる色域の方が広く、Dcmy<Dmaxとなることが多い。その結果、CMYのグレー成分と等濃度のグレー成分をブラックインクで置き換えようとすると、シャドーの浮きが生じてしまう。そこで、ブラックインクへ置き換える際は、C0=M0=Y0=255が入力された場合に、Bk=Lk=255となるように下色除去量を正規化する。即ち、式で表すと
C1=C0−255(Ddl/Dmax)
M1=M0−255(Ddl/Dmax)
Y1=Y0−255(Ddl/Dmax)
となる。ここで、
C0、M0、Y0の信号値が、255(Ddl/Dmax)よりも大きくなるように予め墨生成処理部においてBk、Lkの分解パターンを調節しておくことが望ましい。
【0029】
以上のUCR処理により濃淡ブラックインクの濃淡インクの分解パターンに対する自由度の高いUCR処理が可能となる。また、UCR量の正規化処理により色域を拡大し、くっきりとしたシャドー再現を実現できる。また、上記の説明では、濃ブラックインクと淡ブラックインクを各々100%べたで出力した時の濃度をDmaxとしたが、総量規制が260%とすれば、Bk=Lk=100%に加えて、C=M=Y=20%と重ね打ちすることが可能である。そのような場合には、DmaxをBk=Lk=100%、C=M=Y=20%の濃度としても良い。
【0030】
実施例2:
実施例1では下色処理としてUCR処理のみを用いたが、下色処理のみでは彩度が低下し色域が狭くなる。そこで、実施例2では、下色処理にUCA処理を加えることによって色域を拡大する。
【0031】
図7は、実施例2の色分解処理手段の構成を示す。実施例2では、入力CMY信号から濃ブラックインク(Bk)及び淡ブラックインク(Lk)の出力値を決める墨生成処理部21と、生成したBk出力値及びLk出力値を用いて混色濃度を求める混色変換部22と、下色除去処理を行うUCR処理部23と、生成したBk出力値及びLk出力値を用いてUCA率を予測するUCA率計算部24と、及びUCA(下色加刷)処理を行うUCA処理部25からなる。
【0032】
図7の構成において、墨生成処理部21、混色変換部22、UCR処理部23は、実施例1と同様であるので、ここではUCA率計算部24及びUCA処理部25を説明する。本発明によるUCA処理を説明する前に、一般的なUCA処理を説明する。UCR/UCA処理の典型的な計算方法は
C’=(C−αK)(1+αK/255)
M’=(M−αK)(1+αK/255)
Y’=(Y−αK)(1+αK/255)
である。上式は、UCR処理によって減じすぎた有彩色成分を(1+αK/255)倍して彩度を高める働きをしている。彩度低下の原因としては、CMYのグレー成分をブラックインクで置き換えた際に、ブラックドットと有彩色ドットが一部重なることに起因している。
【0033】
ここで、濃淡ブラックインクを用いたUCA処理の場合にも、同様の現象が起こる。例として同じ濃度のBkインクでUCR処理する場合と、LkインクでUCR処理する場合を図8で説明する。図8の各円は網点面積法により再現されたカラー画像の各色画像の各網点を模式的に示している。(a)はUCR処理前のC、M、Yドットの状態を表している。(b)はLkインクのみでUCR処理した後のドットの状態を、(c)はBkインクのみでUCR処理した後のドットの状態を表す。図8を見ると、同濃度のブラックインクでUCR処理する場合でも、Lkのほうが面積率は高くなる。従って、同一濃度であってもLkインクの比率が高い方がC、M、Yドットと濃淡ブラックドットとの重なり率が高くなる傾向がある。このようにBkとLkの混色濃度が同じであっても、ドットの重なり方が異なるために、UCA率を濃淡インクの分解パターンに応じて制御するのが好ましい。そこで、UCA率計算部24では、BkとLkの信号量に応じて適切なUCA率を求める機能を有する。濃淡インクの信号量によらず一定のUCA率で処理しても構わないが、濃淡インクの信号量によってUCA率を制御する方が更なる高彩度化が可能になる。
【0034】
次にUCA率の具体的な設定手順について図9のフローチャートを用いて説明する。図9は、Ct、Mt、Ytに対するUCA率の計算フローを示している。まず、S101においてCt、Mt、Ytに対する彩度Sを求める。これはCt、Mt、Ytの信号値をプリンタで出力したときの彩度である。彩度Sは、プリンタの出力信号とその出力パッチを測色した明度、彩度、色相との関係をモデル化した色予測式を構築しておけば容易に計算できる。色予測式としては、ニューラルネットや補間演算によるものなど種々提案されている。次に、S102においてCt、Mt、Ytを入力信号とみなして墨生成及びUCR処理を行う。この墨生成及びUCR処理は実施例1と同様の処理を用いる。次にS103〜S106で収束演算を行ってUCA率γを求める。S103はUCA処理に相当し、有彩色C1、M1、Y1をγ倍して彩度を増加させる。S104ではS102と同様に色予測式を用いて、色分解後のC2、M2、Y2、Bk、Lkに対する彩度S’を計算する。そして、SとS’が一致しない場合には、S’がSと一致するまでγを修正しながらS103〜S106を繰り返す。
【0035】
上記の処理を、種々の色(Ct、Mt、Yt)に対して計算することで、Bk、Lkの出力値とUCA率γの多数のデータ組を得ることができる。この多数のデータ組を用いて、最後にBk、Lkからγを求めるための関数F(Bk、Lk)を作成する。関数としては、特に限定はないが、例えば多次多項式などを使用できる。また、墨生成処理によって、Bk、Lkの信号値が0の場合には、γ=1であるため、上記UCA関数F(0、0)は1となる。
【0036】
以上により、求めたUCA関数を用いてUCA率計算部24でUCA率を計算し、UCA処理部25でUCA処理を行う。本実施例の場合、UCA処理は、単純に下式のように乗算のみで良い。
C2=F(Bk, Lk)C1
M2=F(Bk, Lk)M1
Y2=F(Bk, Lk)Y1
以上説明したように、本実施例ではBk、Lkの信号値に基づいてUCA処理を行うようにし、墨分解パターンによらず、高彩度な色再現が可能となる。また、CMY三色再現時の彩度を元にUCA率を決定しているため、墨生成パターンによらず安定した色再現を行うことができる。
【0037】
実施例3:
上記の実施例では、下色処理を計算式によって実行した。本発明はこれに限定されず、3D−LUTで実現することも可能である。即ち、上記方式で求められた色分解後のC、M、Y、Bk、Lkの出力値を格子点出力値とする3D−LUTを作成し、この3D−LUTを用いて入力CMY信号に対するCMYBkLk出力値を補間演算回路を用いて求めるようにしてもよい。
【0038】
実施例4:
本発明は濃淡ブラックインクによる下色除去処理のみならず、二次色の下色除去処理にも適用可能である。図10は、濃淡レッドインクで下色除去を行う場合の実施例3の構成を示す。但し、マゼンタインク100%とイエローインク100%の混色の色相とレッドインクの色相とは一致するものとする。
【0039】
レッド生成部31では、実施例2と同様に入力M0、Y0の値に応じて、ダークレッドDr、ライトレッドLrを生成する。そして、UCR処理部33でM、Y成分からレッド成分を除去する。更に、UCA処理35を行って彩度の補正を行うことで、濃淡二次色インクを用いた場合においても、自由度の高い濃淡インクの分解パターンで色分解を行うことができる。
【0040】
実施例5:
上記した実施例は、ハードウェアの実施例であるが、本発明はソフトウェアで実行することも可能である。図11は、上記色分解処理方法を実現する装置を示す。図11に示すように、本実施の形態の画像処理装置は、マイクロコンピュータを含んで構成された装置本体100、カラーチャートの各パッチの色彩値を読み取るための測色装置150、データやコマンドを入力するためのマウス110及びキーボード120、画像データを表示するためのディスプレイ130、及びカラープリンタなどの画像形成装置140から構成されている。測色装置150は、色を数値で表現したデータとして出力するための装置であり、物体(原稿)に光を照射し、物体からの反射光や透過光の強さを光電的原理を利用して計測するためのものである。基本的には、光源と測光器からなる。装置本体100は、CPU210、CPU210の制御プログラム等が記憶されているROM220、RAM230、ハードディスク240、本体と他の装置との間でデータ等をやりとりするためのNIC250及びこれらをデータやコマンドが入出力可能なように接続されたバスから構成されている。このシステムにおいて、本発明の色分解処理方法としての機能をCPU210にもたせることができる。なお、CPU210におけるこのような色分解処理方法としての機能は、例えばソフトウェアパッケージ−具体的には、CD−ROM等の情報記録媒体の形で提供することができ、このため、図11の例では、情報記録媒体がセットさせるとき、これを駆動する媒体駆動装置310が設けられている。換言すれば、本発明の色分解処理方法は、イメージスキャナ、ディスプレイ等を備えた汎用の計算機システムにCD−ROM等の情報記録媒体に記録されたプログラムを読み込ませて、この汎用計算機システムのマイクロプロセッサに色信号処理方法及び色変換プロファイル生成方法を実行させる装置構成においても実施することが可能である。この場合、本発明の色分解処理方法を実行するためのプログラム−すなわち、ハードウェアシステムで用いられるプログラム−は、媒体に記録された状態で提供される。プログラムなどが記録される情報記録媒体としては、CD−ROMに限られるものではなく、ROM、RAM、フレキシブルディスク、メモリカード等が用いられても良い。媒体に記録されたプログラムは、ハードウェアシステムに組み込まれている記憶装置、例えばハードディスク240にインストールされることにより、このプログラムを実行して、色補正機能及び色分解処理機能を実現することができる。また、本発明の色分解処理方法を実現するためのプログラムは、媒体の形で提供されるのみならず、通信によって例えばサーバによって提供されるものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の色分解処理手段の構成を示す。
【図2】画像処理装置の全体構成を示す。
【図3】墨生成処理を説明する図である。
【図4】四面体補間を説明する図である。
【図5】四面体補間の係数を示す。
【図6】濃淡ブラックインクの生成例を示す。
【図7】実施例2の色分解処理手段の構成を示す。
【図8】濃淡インクのドットの重なりを示す。
【図9】UCA率の処理フローチャートを示す。
【図10】実施例3の色分解処理手段の構成を示す。
【図11】実施例4の構成例を示す。
【図12】従来のCMYK色分解処理を説明する図である。
【図13】従来の濃淡インクへの色分解方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
11 墨生成処理部
12 混色変換部
13 UCR処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力色信号を濃淡インクを含む出力色信号に色分解する画像処理装置において、前記入力色信号から前記濃淡インクの出力値を求める色変換手段と、前記濃淡インクの出力値に基づいて濃淡インクを混色した色に変換する混色変換手段と、前記混色変換後の色信号値を用いて、下色除去を行う下色除去処理手段とを具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記濃淡インクの出力値から下色加刷率を求める加刷率算出手段と、下色除去処理後の色信号に対して、前記加刷率を用いた下色加刷処理を行う下色加刷手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記加刷率算出手段は、色分解処理前の入力色信号を出力したときの出力彩度と色分解処理後の出力色信号を出力したときの出力彩度が略一致するように前記加刷率を設定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記濃淡インクは、濃度の異なるブラックインクであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記濃淡インクは、濃度の異なる二次色インクであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力色信号を濃淡インクを含む出力色信号に色分解する画像処理方法において、前記入力色信号から前記濃淡インクの出力値を求める工程と、前記濃淡インクの出力値から濃淡インクを混色した色濃度を求める工程と、前記色濃度から下色除去量を求める工程と、前記下色除去量を用いて下色除去を行う工程を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−158688(P2007−158688A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350774(P2005−350774)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】