説明

画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】フォーカス位置がずれた画像であっても作業時間を増大させることなく検査を行なうことができる画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラムを提供すること。
【解決手段】所定のパターンを有する基準画像、前記パターンを有する取得画像および基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、およびコントラスト比から算出される取得画像のずれ量と取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部と、基準画像と取得画像とのコントラスト比を算出し、コントラスト比が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、コントラスト特性からずれ量を求め、ずれ量から復元特性をもとに復元係数を取得して取得画像の復元処理を行なう復元処理部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス位置がずれた画像を本来撮像されるべきフォーカス位置における画像に復元する画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板や半導体基板やプリント基板などの処理対象基板を検査する検査装置は、処理対象基板に形成されたミクロンオーダーのパターンの線幅を測定するため、光学顕微鏡を有している。この光学顕微鏡は、オートフォーカス機能を有し、ステージに載置された処理対象基板の測定ポイントで自動的に焦点合わせを行なって撮像する。撮像された画像は、画像処理部に送られて、測定ポイントにおけるパターンの線幅が測定され、処理対象基板の検査が行なわれる。
【0003】
ところで、オートフォーカス機能は、必ずしも測定ポイントの所望の焦点距離で撮像できるとは限らない。撮像を行う測定ポイントのずれや処理対象基板上に形成されたパターンによる凹凸形状によって、焦点位置がずれてしまい、端面が曖昧なパターン画像によって正確な線幅測定ができないことがあり、適切な焦点位置で撮像された画像を取得できることが望まれていた。
【0004】
この要望に対し、処理対象基板が有する凹凸パターンの形状と、距離センサが認識する凹凸パターンの形状との差分を算出し、この差分から補正するための補正値を算出して、この補正値によって距離センサからの出力を補正して正確な移動目標値を求め、検査ステージを駆動してレンズの自動焦点合わせを行う技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−332595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1が開示する技術では、処理対象基板が有する凹凸パターンと距離センサが認識する凹凸パターンとから移動目標値を算出して検査ステージを駆動して撮像するため、通常のオートフォーカス機能による撮像処理と比して時間を要する。また、得られた画像の焦点が合っていない場合、この移動目標値の算出を再度行なうか、または距離センサの認識パターンを再度設定する必要が生じ、作業時間の増大をまねくおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、フォーカス位置がずれた画像であっても作業時間を増大させることなく検査を行なうことができる画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像処理装置は、所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部と、前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性において設定された閾値を超えたか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる検査装置は、上記の発明にかかる画像処理装置と、オートフォーカス機能を有し、前記画像処理装置が取得する画像を撮像して、前記画像処理装置に送信する撮像手段と、前記取得画像または前記復元処理部において復元された画像をもとに、検査処理を行う検査処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる画像処理方法は、所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部を有するコンピュータが、前記基準画像、前記取得画像、前記コントラスト特性、および復元特性を用いて、前記取得画像の復元を行なう画像処理方法であって、前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性で設定された閾値を超えたか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて、前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記記憶部から読み出した前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる画像処理プログラムは、所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部を有するコンピュータに、前記基準画像、前記取得画像、前記コントラスト特性、および復元特性を用いて、前記取得画像の復元を行わせる画像処理プログラムであって、前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性で設定された閾値を超えたか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて、前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記記憶部から読み出した前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラムは、取得画像に対して、基準画像とのコントラスト比を算出して復元が必要か否かを判定し、復元が必要な場合、コントラスト特性および復元特性をもとにコントラストの高い画像に復元するようにしたので、フォーカス位置がずれた画像であっても作業時間を増大させることなく検査を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態にかかる検査装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は、処理対象基板上に形成されたパターンの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる画像処理装置が行なう検査処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかるコントラスト特性を示すグラフである。
【図5】図5は、点光源に対する応答性を表すグラフである。
【図6】図6は、復元係数とデフォーカス量との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる画像復元処理を説明する図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態の変形例にかかる検査処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0015】
まず、本発明の一実施の形態による画像処理装置および検査装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、FPD用のガラス基板や半導体基板やプリント基板などの処理対象基板(以下、ワークという)がインライン型の検査装置であってもよく、オフライン型の検査装置であってもよい。
【0016】
図1は、本実施の形態によるフラットパネルディスプレイ(FPD)検査装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、FPD検査装置1は、取得した画像の復元等を行うほか、取得または復元した画像を用いて検査を行なう画像処理装置10と、画像を撮像することによってワークの所定位置の画像を取得する顕微鏡20とを備える。
【0017】
画像処理装置10は、制御部11、送受信部12、判定部13、復元処理部14、入力部15、出力部16、線幅測定部17、および記憶部18を備える。
【0018】
制御部11は、CPU等を用いて構成され、画像処理装置10の各部の処理および動作を制御する。制御部11は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0019】
送受信部12は、所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有し、顕微鏡20の送受信部22と接続されている。なお、図示しない通信ネットワークを介してもよい。
【0020】
判定部13は、顕微鏡20から取得した画像のコントラストが基準画像のコントラストと比して閾値未満であるか否かを判定する。取得した画像のコントラストが基準画像のコントラストと比して閾値未満である場合、この取得画像を復元が必要な画像として判定する。復元処理部14は、判定部13によって復元が必要であると判定された画像に対して復元処理を行う。なお、復元処理は、フォーカス位置がずれた画像に対してコントラストを補正して、本来撮像されるべきフォーカス位置における画像に復元する画像処理である。
【0021】
入力部15は、キーボード、マウス、マイクロフォン等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。出力部16は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成される。
【0022】
線幅測定部17は、検査処理部として、顕微鏡20によって撮像された画像または復元処理部14によって復元された画像をもとに測定対象のパターンの線幅を測定する。測定された線幅は、出力部16によって出力される。
【0023】
記憶部18は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、画像処理装置10が処理を実行する際にその処理にかかわる、本実施の形態にかかる画像処理プログラムを含む各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成される。記憶部18は、取得すべき画像の基準となる基準画像データD1、基準画像データD1のコントラスト比とフォーカス距離との関係を示すコントラスト特性D2、およびフォーカス距離と復元係数との関係を示す復元特性D3を記憶する。なお、記憶部18は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0024】
上述した画像処理装置10は、制御部11の制御のもと、送受信部12を介して取得した画像に対して復元する必要の有無を判定部13が判定した後、必要に応じて復元処理部14が画像を復元し、線幅測定部17がこの復元画像を用いて、ワーク上に形成されたパターンの線幅を測定する。
【0025】
顕微鏡20は、制御部21、送受信部22、撮像部23、拡大光学系24を備える。制御部21は、CPU等を用いて構成され、顕微鏡20の各部の処理および動作を制御する。制御部21は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。送受信部22は、所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有し、画像処理装置10の送受信部12と接続されている。なお、図示しない通信ネットワークを介してもよい。
【0026】
撮像部23は、例えば、LED等の照明部と、集光レンズ等の光学系と、CMOSイメージセンサまたはCCD等の撮像素子とを有する。照明部は、撮像素子の撮像視野に白色光等の照明光を発光して、撮像視野内の被写体を照明する。光学系は、この撮像視野からの反射光を撮像素子の撮像面に集光して、撮像素子の撮像面に撮像視野の被写体画像を結像する。撮像素子は、この撮像視野からの反射光を、撮像面を介して受光し、この受光した光信号を光電変換処理して、この撮像視野の被写体画像を撮像する。撮像部23は、オートフォーカス機能を有し、自動で被写体との距離を測定する。拡大光学系24は、撮像部23の撮像視野を縮小して所望の拡大倍率の画像取得を実現するための光学系である。
【0027】
ここで、線幅測定部17が行なう線幅測定ポイント(撮像エリア)の登録について図2を参照して説明する。図2は、処理対象基板(ワーク)上に形成されたパターンの一例を示す模式図である。ワーク上には、パターンを構成するラインR1,R2と、レジスト等の特徴を有するモデルRsが形成されている。
【0028】
制御部21は、基準画像データD1として登録されているモデルRsとその近傍に設定された測定エリアA1とが撮像視野内に入るように撮像部23に撮像させる。撮像部23は、まずモデルRsを検索し、その後、モデルRsの近傍の測定エリアA1を含む領域の撮像を行なう。
【0029】
線幅測定部17は、撮像部23によって撮像された測定エリアA1のラインR1の両端のコントラストをもとにエッジを認識して、線幅を測定する。
【0030】
続いて、画像処理装置10が行なう復元処理および線幅測定処理について、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態にかかる画像処理装置10が行なう画像復元処理を含む検査処理を示すフローチャートである。制御部11は、顕微鏡20から画像を取得すると(ステップS102)、取得画像のコントラストを算出する(ステップS104)。なお、制御部11が算出するコントラストは、少なくとも測定を行なう測定エリアA1のラインR1の両端のコントラストが算出されればよい。
【0031】
制御部11は、取得画像のコントラスト算出後、判定部13に取得画像が復元すべき画像であるかを判定させる。判定部13は、記憶部18に記憶された基準画像データD1が有する基準画像の最大のコントラストと取得画像のコントラストとの比を算出し(ステップS106)、コントラスト比が閾値(0.8)未満であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0032】
このとき、コントラスト比が閾値以上であれば(ステップS110:No)、判定部13は、線幅測定処理の精度を維持可能な画像であると判定する。その後、制御部11は、ステップS120に移行して線幅測定部17に線幅測定処理を行わせ、検査処理を終了する。なお、制御部11は、線幅測定部17が測定した測定結果を出力部16に出力する。
【0033】
一方、コントラスト比が閾値未満であった場合(ステップS110:Yes)、判定部13は、取得画像が、復元が必要な画像であると判定する。制御部11は、復元処理部14に取得画像の復元を行うよう指示する。なお、本実施の形態におけるコントラスト比の閾値は、0.8であるものとして説明する。
【0034】
復元処理部14は、記憶部18のコントラスト特性D2を参照して、取得画像のフォーカス位置からのずれ量(デフォーカス量Δz)を算出する(ステップS112)。図4は、コントラスト特性D2を示すグラフである。図4に示すコントラスト特性は、コントラスト比(ここでは、基準画像における最大コントラストとデフォーカスによるコントラストとの比)とデフォーカス距離との関係を示している。
【0035】
復元処理部14は、基準画像と取得画像とのコントラスト比を取得し、コントラスト特性からデフォーカス距離zを算出する。たとえば、コントラスト比が0.7の場合、デフォーカス距離zが得られる。
【0036】
復元処理部14は、図4のコントラスト特性からデフォーカス距離zを算出すると、このデフォーカス距離の絶対値としてのデフォーカス量Δzを算出する。その後、復元処理部14は、このデフォーカス量Δzをもとに、復元特性から復元係数σを算出する(ステップS114)。
【0037】
ここで、点光源に対する応答性について、図5を参照して説明する。点光源を光学系に入力した際の光学的な応答性は、点拡がり関数で与えられ、例えば、図5に示す曲線Lz,Lz,Lzとして表される。曲線Lz,Lz,Lzは、図4に示すコントラスト比0.95,0.8,0.7にそれぞれ対応したデフォーカス距離z,z,zを中心位置とした輝度の分布を示している。横軸は、焦点位置(0)周辺の位置を示し、この場合、一次元における応答位置となる。
【0038】
点拡がり関数は、レンズが理想的な場合、δ関数となるが、収差またはデフォーカス距離が大きくなるに従い、中心(焦点位置)での輝度が低下するとともに、広範囲に分散する。特に、コントラスト比が0.95である曲線Lzは、焦点位置(0)における輝度は高く、分散性も低い。一方で、コントラスト比が0.7である曲線Lzは、焦点位置(0)における輝度が低く、広範囲に分散するものとなっている。
【0039】
画像を復元する処理は、上述した輝度と分散性を補正することによって取得画像のコントラストを高くすることによって行なわれる。二次元(x,y)の場合の点拡がり関数は、例えば、次式(1)で表すことができる。
【数1】

式(1)において、復元係数σは、デフォーカス距離に応じて定まる係数である。この復元係数σを用いることによって、取得した画像を復元することができる。また、図6は、復元係数σとデフォーカス量Δzとの関係の一例を示すグラフ(復元特性D3)である。なお、デフォーカス量Δzは、コントラスト比の閾値(0.8)におけるデフォーカス量を示す。また、デフォーカス量Δzより小さいデフォーカス量Δzにおいては、すでにコントラスト比が閾値を超えており、復元する必要がないため、曲線を破線によって示している。
【0040】
なお、ステップS114において、復元処理部14は、デフォーカス距離zの場合、デフォーカス量はΔzであり、復元係数はσと算出となる。
【0041】
ステップS114における復元係数σを算出後、復元処理部14は、画像復元処理を行う(ステップS116)。復元処理部14が行なう画像復元処理は、図7に示すようなフーリエ変換の関係を用いて行ない、取得画像g(x,y)および劣化特性h(x,y)から復元画像f(x,y)を得る。ここで、復元画像f(x,y)、取得画像g(x,y)および劣化特性h(x,y)は、f*h=gの関係を満たす(*は畳み込み積分を示す)。この劣化特性h(x,y)は、上述した式(1)であって、ステップS114で算出された復元係数σを含む。
【0042】
復元処理部14は、劣化特性h(x,y)および取得画像g(x,y)をそれぞれフーリエ変換(FT)することにより、周波数u,vの関数である劣化特性H(u,v)および変換画像G(u,v)を得る。さらに、復元処理部14は、フーリエ変換された劣化特性H(u,v)の逆数Hinv(u,v)を得た後、このHinv(u,v)と変換画像G(u,v)を乗じて変換画像F(u,v)を得る。復元処理部14は、変換画像F(u,v)を逆フーリエ変換(IFT)することで、復元画像f(x,y)を得る。
【0043】
その後、制御部11は、復元画像のコントラストを算出して、判定部13に基準画像データD1が有する基準画像の最大のコントラストと復元画像のコントラストとの比を算出させる(ステップS118)。続いて、制御部11は、ステップS108に移行して、コントラスト比と閾値とを比較し、判定部13にコントラスト比が閾値未満であるか否かを判定させる(ステップS110)。
【0044】
上述した本実施の形態にかかるFPD検査装置および画像復元装置は、取得画像に対して、基準画像とのコントラスト比を算出して復元が必要か否かを判定し、復元が必要な場合、コントラスト特性および復元特性をもとにコントラストの高い画像に復元するため、複数回撮像処理を行う必要なく、正確な線幅測定を行なうことが可能となるため、フォーカス位置がずれた画像を取得した場合であっても検査にかかる作業時間を増大させることなく検査を行なうことができる。
【0045】
図8は、本実施の形態の変形例にかかる検査処理を示すフローチャートである。まず、制御部11は、図3に示すステップS102〜S110と同様の処理(ステップS202〜S210)を行なって、取得画像に対して画像復元処理が必要か否かを判定部13に判定させる。制御部11は、コントラスト比が閾値以上ある場合(ステップS210:No)、ステップS222に移行して取得した画像に対して線幅測定処理を行うよう線幅測定部17に指示する。
【0046】
一方、ステップS210において、判定部13が、コントラスト比が閾値未満であると判定した場合(ステップS210:Yes)、制御部11は、ループ回数が設定回数未満か否かを判断する(ステップS212)。ループ回数は記憶部18に記憶され、任意に設定可能であるが、複数回繰り返されるステップS214〜S220の処理時間が顕微鏡20による撮像処理に要する時間以下となるように設定されることが好ましい。なお、ループ回数のカウントは、ステップS212に到達した回数(初回は1となる)としてもよく、ステップS218において画像復元処理を行った回数でもよい。カウントのタイミングに応じて、設定回数を変更することが可能である。
【0047】
ステップS212において、ループ回数が設定回数未満である場合(ステップS212:Yes)、制御部11は、復元処理部14に上述した復元処理(図3、ステップS112〜S118)に対応するステップS214〜S220を行なわせる。
【0048】
また、ステップS212において、ループ回数が設定回数以上である場合(ステップS212:No)、制御部11は、ステップS224に移行して報知処理を行う。報知処理において、制御部11は、顕微鏡20の制御部21に対して復元対象画像の撮像処理を再度行う旨の報知を行ってもよく、出力部16に画像復元処理が正常に行われていない旨の報知を行ってもよい。
【0049】
上述した変形例によって、復元処理のループに制限を設け、復元処理以外で生じた撮像画像の異常であっても報知することによって対応することが可能となる。
【0050】
なお、本実施の形態において、復元する画像領域は、画像全体であってもよく、コントラストを復元すべき箇所、例えば、線幅を測定するパターンのエッジ部分のみであってもよい。
【0051】
また、画像処理装置10は、顕微鏡20が撮像した画像を取得するものとして説明したが、拡大光学系24を用いずに撮像された画像を用いてもよく、メモリ等に記憶された画像を用いることも可能である。
【0052】
以上のように、本発明にかかる画像処理装置、検査装置、画像処理方法および画像処理プログラムは、取得した画像に対して再度撮像処理を行うことなく高いコントラストの画像を得ることに有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 FPD検査装置
10 画像処理装置
11,21 制御部
12,22 送受信部
13 判定部
14 復元処理部
15 入力部
16 出力部
17 線幅測定部
18 記憶部
20 顕微鏡
23 撮像部
24 拡大光学系
D1 基準画像データ
D2 コントラスト特性
D3 復元特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部と、
前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性において設定された閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記復元処理部は、前記復元係数を含む基準画像の劣化特性および前記取得画像をフーリエ変換することによって前記取得画像の復元を行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
同一の復元対象の画像における前記復元処理の回数が設定された回数未満であるか否かを判断し、前記回数が前記設定された回数以上であった場合に報知処理を行う制御部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置と、
オートフォーカス機能を有し、前記画像処理装置が取得する画像を撮像して、前記画像処理装置に送信する撮像手段と、
前記取得画像または前記復元処理部において復元された画像をもとに、検査処理を行う検査処理部と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段が撮像する撮像対象の画像を拡大可能な拡大光学系を備えたことを特徴とする請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部を有するコンピュータが、前記基準画像、前記取得画像、前記コントラスト特性、および復元特性を用いて、前記取得画像の復元を行なう画像処理方法であって、
前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性で設定された閾値を超えたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記記憶部から読み出した前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
同一の復元対象の画像における前記復元処理ステップの回数が設定された回数未満であるか否かを判断する判断ステップと、
前記回数が前記設定された回数以上であった場合に報知処理を行う報知ステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
所定のパターンを有する基準画像、外部から取得される前記パターンを有する取得画像および前記基準画像のコントラスト比とフォーカス位置からのずれ量との関係を示すコントラスト特性、および前記コントラスト比から算出される前記取得画像の前記ずれ量と前記取得画像の復元を行なう際に用いるパラメータである復元係数との関係を示す復元特性を記憶する記憶部を有するコンピュータに、前記基準画像、前記取得画像、前記コントラスト特性、および復元特性を用いて、前記取得画像の復元を行わせる画像処理プログラムであって、
前記基準画像と前記取得画像とのコントラスト比を算出し、該コントラスト比が前記コントラスト特性で設定された閾値を超えたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記コントラスト比が閾値未満であると判定された場合、前記記憶部から読み出した前記コントラスト特性から前記ずれ量を求め、該ずれ量から前記復元特性をもとに復元係数を取得して前記取得画像の復元処理を行なう復元処理ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項9】
同一の復元対象の画像における前記復元処理ステップの回数が設定された回数未満であるか否かを判断する判断ステップと、
前記回数が前記設定された回数以上であった場合に報知処理を行う報知ステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−4664(P2012−4664A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135263(P2010−135263)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】