説明

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】本発明の課題は、部分的なトナーロー状態の発生状況に応じてキャリブレーションの実行を適切に制御することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、印字領域に対し部分的なトナーロー状態を検出するための画像を出力する出力手段と、出力手段が出力した画像の読取り結果に基づき、部分的なトナーロー状態を判定する判定手段と、判定手段による判定の結果に基づき、トナーを用いた画像の出力における再現特性を較正するキャリブレーションの実施を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー印刷を行う画像形成装置として、例えば、フルカラー複写機が知られている。フルカラー複写機は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(Bk)からなる複数の出力色成分について、それぞれの色成分の画像を、印刷面に順次形成して印刷を行なう。フルカラー複写機の画像形成方式は、例えば、レーザビームによる電子写真方式である。電子写真方式では、画像信号に応じてパルス幅変調した信号によってレーザビームの発光を制御することにより、中間調表現が実現される。ところで、フルカラー複写機のような画像形成装置においては、形成される画像の濃度やその階調性が、画像形成装置がおかれた環境の変化あるいは感光体や現像剤等、装置要素の経時的変化に起因して変化することがある。これにより、画像品位の低下もしくは不安定化がもたらされることがある。これを防ぐために、いわゆるキャリブレーションが行なわれる。キャリブレーションとは、所定のパッチパターンを、例えば、感光ドラム上や記録媒体上に形成し、パッチパターンから読取った濃度に基づいて、その装置の画像データの印刷における濃度もしくは階調を補正することである。このように、パッチパターン(パッチ状のパターン)が形成された記録媒体は、「テストプリント」とも呼ばれる。
【0003】
しかしながら、従来のキャリブレーションでは、画像形成装置において、トナー供給機構として撹拌機構を持たないカートリッジ式トナー供給機構が用いられることを想定していない。このため、問題のあるキャリブレーションを行ってしまうことがある。
【0004】
撹拌機構を持たないカートリッジ式トナー供給機構では、同じ位置のトナーを重点的に利用する印刷を続けていると、トナーが偏ってしまい部分的なトナーロー状態に陥ってしまう。一般的にカートリッジにはトナー残量検出センサが一つ搭載されているが、全位置での検出をカバーできるものではない。そのため、センサから遠いところで部分的なトナーロー状態に陥った場合、トナーローと判定することもできない。
【0005】
そして、このように、部分的なトナーロー状態となった位置でキャリブレーション用のパッチパターンを形成すると、安定した濃度でパッチパターンの形成が行われない。したがって、このような状態でキャリブレーション実行してしまうと、トナーが十分にある印刷位置でも階調が適切に出力されなくなり、キャリブレーション前より画質が低下してしまう。
【0006】
トナーの偏りに起因する画像不良の発生を防止するシステムとしては、現像剤容器に収容した現像剤の残量を検出するために複数の電極対を設置し、検出されたトナー量に相違があった場合トナーの撹拌を行うもの(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−290356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術では、撹拌機構を持たないカートリッジ式トナー供給機構における部分的なトナーロー状態で起こりえるキャリブレーション問題を解決できない。これは、前述したようにトナー撹拌機構を持たないカートリッジ式トナー供給機構では、トナー偏りを防止することができないためである。
【0009】
そこで、本発明では、キャリブレーション実行時に部分的なトナーロー状態を判定して、適切に処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、印字領域に対し部分的なトナーロー状態を検出するための画像を出力する出力手段と、出力手段が出力した画像の読取り結果に基づき、部分的なトナーロー状態を判定する判定手段と、判定手段による判定の結果に基づき、トナーを用いた画像の出力における再現特性を較正するキャリブレーションの実施を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部分的なトナーロー状態の発生状況に応じてキャリブレーションの実行を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像処理装置の概観を示す図である。
【図2】画像処理部1008における画像信号の流れを示すブロック図である。
【図3】プリンタ部110を示すブロック図である。
【図4】階調画像を得るための画像処理部1008を示すブロック図である。
【図5】トナーロー状態キャリブレーション制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】表示部218の表示例を示す図である。
【図7】表示部218の表示例を示す図である。
【図8】テストパターンの例を示す図である。
【図9】表示部218の表示例を示す図である。
【図10】表示部218の表示例を示す図である。
【図11】表示部218の表示例を示す図である。
【図12】部分的なトナーロー状態を検出する処理のフローチャートである。
【図13】部分的なトナーロー状態を検出する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
本実施形態は、フルカラー複写機に本発明を適用したものに関するが、本発明の適用はこの実施形態に限られるものでない。
【0015】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る画像処理装置の概観を示す図である。
【0016】
<リーダ部100>
リーダ部100の原稿台ガラス1002上に置かれた原稿1001は、光源1003によって照らされ、原稿1001からの反射光は光学系1004を介してCCDセンサ1005に結像する。CCDセンサ1005は、三列に配置されたレッド、グリーンおよびブルーのCCDラインセンサ群からなり、ラインセンサ毎にレッド、グリーンおよびブルーの色成分信号を生成する。これら読取光学系ユニットは、図1に示す矢印の方向に移動され、原稿1001の画像をライン毎の電気信号に変換する。
【0017】
原稿台ガラス1002上には、原稿1001の一辺を当接させて原稿1001の斜め配置を防ぐ位置決め部材1007、CCDセンサ1005の白レベルを決定し、CCDセンサ1005のシェーディング補正を行うための基準白色板1006が配置されている。
【0018】
CCDセンサ1005によって得られる画像信号は、画像処理部1008によって画像処理されてプリンタ部110に送られ、プリンタ制御部1101で処理される。
【0019】
図2は、画像処理部1008における画像信号の流れを示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、CCDセンサ1005から出力される画像信号は、アナログ信号処理回路201に入力され、ゲインおよびオフセットが調整された後、A/D変換器202により、各色8ビットのディジタル画像信号R1、G1およびB1に変換される。画像信号R1、G1およびB1は、シェーディング補正回路203に入力され、色毎に基準白色板1006の読取信号を用いた公知のシェーディング補正が施される。
【0021】
クロック発生部211は、一画素単位のクロック(CLK)を発生する。また、アドレスカウンタ212は、CLKを計数し、1ライン毎に主走査アドレス信号を生成し出力する。デコーダ213は、主走査アドレス信号をデコードして、シフトパルスやリセットパルスなどのライン単位のCCD駆動信号、CCDセンサ1005が出力する1ライン分の読取信号中の有効領域を表す信号VEおよびライン同期信号HSYNCを生成する。なお、アドレスカウンタ212は、HSYNCでクリアされ、次ラインの主走査アドレスの計数を開始する。
【0022】
CCDセンサ1005の各ラインセンサは、副走査方向に互いに所定の距離を隔てて配置されている。このためラインディレイ204により、副走査方向の空間的ずれが補正される。具体的には、B信号に対してRおよびG信号を副走査方向にライン遅延させることで、RGB信号の空間的位置が合わせられる。
【0023】
入力マスキング回路205は、CCDセンサ1005のRGBフィルタの分光特性で決まる入力画像信号の色空間(読取色空間)を、以下の式(1)のマトリクス演算により、所定の色空間(例えばsRGBやNTSCの標準色空間)に変換する。
【0024】
【数1】

【0025】
Log変換回路206は、ルックアップテーブルROMを有し、R4、G4およびB4の輝度信号をC0、M0およびY0の濃度信号に変換する。ライン遅延メモリ207は、不図示の黒文字判定部により、R4、G4およびB4画像信号からUCR、FILTERおよびSENなどの判定信号が生成され出力されるまでのライン遅延分、C0、M0およびY0画像信号を遅延させる。
【0026】
マスキングUCR回路208は、入力されるY1、M1、C1の三原色信号から黒信号Bkを抽出する。そして、プリンタ部110の記録色材の色濁りを補正する演算を行い、読取動作毎にY2、M2、C2またはBk2の画像信号を、順次、所定のビット幅(例えば8ビット)で出力する。ガンマ補正回路209は、プリンタ部110の理想的な階調特性に合わせるべく、画像信号を濃度補正する。また、出力フィルタ210は、画像信号にエッジ強調またはスムージング処理を施す。
【0027】
これらの処理によって得られるM4、C4、Y4およびBk4の画像信号は、プリンタ制御部1101に送られ、パルス幅変調されたパルス信号に変換され、プリンタ部110による濃度記録が行われる。
【0028】
また、CPU214は、RAM215をワークメモリとして、ROM216に格納されたプログラムに従い、リーダ部100の制御や画像処理を行う。オペレータは、操作部217によってCPU214へ指示や処理条件を入力する。表示部218は、画像処理装置の動作状態や設定された処理条件などを表示する。
【0029】
<プリンタ部110>
図1において、矢印の方向に回転する感光ドラム1106の表面は一次帯電器1110により一様に帯電される。プリンタ制御部1101は、レーザドライバによって入力される画像データに応じたパルス信号を出力する。レーザ光源1102は、入力されるパルス信号に応じたレーザ光を出力する。レーザ光は、ポリゴンミラー1103およびミラー1104に反射され、帯電された感光ドラム1106の表面を走査する。レーザ光の走査によって感光ドラム1106の表面には静電潜像が形成される。
【0030】
感光ドラム1106の表面に形成された静電潜像は、現像器1105によって色毎にトナーで現像される。本実施形態では、撹拌機構のないカートリッジ式の一成分系トナーを用い、感光ドラム1106の周りに各色の現像器が上流よりブラックBk、イエローY、シアンC、マゼンタMの順に配置する。画像形成色に応じた現像器が、感光ドラム1106に接近して静電潜像を現像する。
【0031】
記録紙1108は色成分毎に一回転する転写ドラム1107に巻き付けられ、合計四回転することで各色のトナー像が記録紙1108に転写され重畳される。転写が終了すると、記録紙1108は、転写ドラム1107から分離され、定着ローラ対1109によってトナーが定着され、フルカラーの画像データの印刷が完成する。
【0032】
また、感光ドラム1106の周辺には、現像器1105の上流側(レーザー光が当たる場所)に感光ドラム1106の表面電位を測る表面電位センサ1114が配置されている。また、感光ドラム1106の周辺には、感光ドラム1106上の転写されなかった残トナーをクリーニングするためのクリーナ1111が配置されている。また、感光ドラム1106の周辺には、感光ドラム1106上に形成されたトナーパッチの反射光量を検出するためのLED光源1112およびフォトダイオード1113が配置されている。
【0033】
図3は、プリンタ部110を示すブロック図である。
【0034】
プリンタ制御部1101は、CPU304、ROM306、RAM308、テストパターン記憶部307、濃度換算回路311、LUT301およびレーザドライバ303などを有し、リーダ部100およびプリンタエンジン300と通信可能である。CPU304は、プリンタ部110の動作を制御するとともに、一次帯電器1110のグリッド電位や現像器1105の現像バイアスを制御する。
【0035】
プリンタエンジン300は、感光ドラム1106や、その周囲に配置された、LED光源1112およびフォトダイオード1113からなるフォトセンサ310、一次帯電器1110、レーザ光源1102、表面電位センサ1114、現像器1105などを有する。さらに、装置内の空気中の水分量(または温湿度)を測定する環境センサ309を有する。
【0036】
<画像処理部1008>
図4は、階調画像を得るための画像処理部1008を示すブロック図である。
【0037】
CCDセンサ1005によって得られた画像の輝度信号は、画像処理部1008において濃度信号に変換される。変換後の濃度信号は、初期設定時のプリンタのガンマ特性に応じた信号になるように、つまり原画像の濃度と出力画像の濃度とが一致するように、LUT(γLUT)301によって特性が補正される。
【0038】
LUT301により、階調特性が変換された画像信号は、レーザドライバ303のパルス幅変調(PWM)回路401によってドット幅に対応するパルス信号に変換され、レーザ光源1102のオン/オフを制御するLDドライバ402へ送られる。なお、本実施形態では、Y、M、CおよびBkの全色に対して、パルス幅変調による階調再現方法が用いられる。
【0039】
そして、レーザ光源1102から出力されるレーザ光の走査によって感光ドラム1106上には、ドット面積の変化により階調が制御された、所定の階調特性を有する静電潜像が形成され、上述した現像、転写および定着という過程をへて階調画像が再生される。
【0040】
[キャリブレーション制御(第一の制御系)と部分的なトナーロー状態の検出]
次に、記録紙に画像を形成する通常の画像形成(印刷)とは異なるシーケンスにおける画像制御として、リーダ部100およびプリンタ部110の双方を含む系の画像再現特性の安定化に関する第一の制御系について説明する。このとき、本発明の特徴である部分的なトナーロー状態の検出を交えて説明を行う。
【0041】
まず、リーダ部100を用いてプリンタ部110をキャリブレーションする制御系について説明する。
【0042】
図5は、本実施形態で実行される処理の一例を示すフローチャートで、リーダ部100を制御するCPU214およびプリンタ部110を制御するCPU304の協働により実現される。
【0043】
操作部217に設けられた例えば「自動階調補正」というモード設定ボタンの押下げをオペレータから受けた操作部217は、図5の処理を開始する。なお、表示部218は、図6や図7に示すように、タッチセンサ付きの液晶操作パネル(タッチパネルディスプレイ)を有する。
【0044】
<図5の説明>
まず、表示部218に、図6に示すテストパターン(部分的なトナーロー状態を検出するための画像データ)の出力スタートボタン601が現れる。図5のS501で、操作部217は、テストパターンの出力スタートボタン601の押下げを受けて、図8に示すテストパターンをプリンタ部110から出力する。
【0045】
次に、S502で、CPU214がテストパターンを形成するための記録紙の有無を判定する。S502で、記録紙が無いと判定された場合には、S503に処理が進み、CPU214は、図7に示すような警告を表示部218に表示する。画像処理装置は、複数の記録紙カセットを有し、例えばB4、A3、A4およびB5など、複数種の記録紙サイズの選択が可能である。
【0046】
S502で、記録紙が有ると判定された場合には、S504に処理が進む。
【0047】
なお、図8に示すテストパターンには、トナー種(ここでは、Y、M、CおよびBkの四色)ごとに帯状パターン801と、階調パターン802が含まれる。これらのパターンのサイズは、CCDセンサ1005の読取範囲に入るように設定されている。また、帯状パターン801は、部分的なトナーロー状態を検出するためのものであり、基本的には濃度が不安定な中間濃度域ではなく、高濃度域を出力する均一パターンとする。この帯状パターンは、少なくとも画像形成における主走査方向の有効印字領域をカバーするエリアに印字される。また高濃度域とは、プリンタ部で再現できる最大濃度が好ましいが、トナーの削減が好ましい場合には、最大濃度を再現するトナーの7割程度の濃度が好ましい。
【0048】
S504で、表示部218に図9に示す読み込みボタン901が現れる。そして、操作部217は、読み込みボタン901の押下げを受けて、原稿台に載せられたテストパターンからデータを読み取る。
【0049】
S505で、CPU214は、S504で読み取られたデータから、テストパターンの読み取りが正しく行われたか判定する。S505で、CPU214は、傾きが酷いなど正しい読取りが出来ていないと判定した場合、S506に処理を進めて、図10に示すような警告を表示部218に表示する。
【0050】
S505で、CPU214は、テストパターンの読み取りが正しく行われたと判定された場合には、S507に処理が進む。
【0051】
S507で、CPU214は、各帯状パターン801の読取結果を用いて、各トナーで部分的なトナーロー状態が起きていないかを検出する。詳細な検出方法については、図12を用いて説明する。
【0052】
S508で、S507の検出結果に基づいて、部分的なトナーロー状態が発生していると判定された場合は、S509に処理が進み、CPU214は、キャリブレーション処理を中断して、図11に示すような警告を表示部218に表示する。ここで、図11は、Bkトナーにおいて部分的なトナーロー状態が発生したものとして表示している。また、S508で、部分的なトナーロー状態が発生していないと判定された場合は、S510に処理が進み、CPU214は、通常通りキャリブレーション処理を行う。そして、CPU214は、得られた濃度情報が所定の目標濃度(目標再現特性)に近づくように補正するLUT304の内容を作成(較正)して設定する。
【0053】
なお、キャリブレーションLUTの生成を、従来技術を用いて行うことができるので、キャリブレーションLUTの生成に関する詳細説明をここでは省く。
【0054】
<図12の説明>
ここでは、図12に示すフローチャートを用いて、図5のS507の部分的なトナーロー状態の検出の処理について詳細説明を行う。なお、図12のフローチャートの処理はトナーの種類ごとに実行される。
【0055】
まず、S1301で、CPU214は、図8の帯状パターン801上のN箇所(N>1)で読取値Vnを取得する。そして、S1302で、CPU214は、S1301で取得したN個のVnから主走査方向の読取値の標準偏差Sを、以下のようにして求める。
【0056】
まず、CPU214は、Vnの平均値avg(V)を以下の式(2)により求める。
【0057】
【数2】

【0058】
次に、CPU214は、分散σ2を以下の式(3)により求める。
【0059】
【数3】

【0060】
次に、CPU214は、標準偏差Sを以下の式(4)により求める。
【0061】
【数4】

【0062】
次に、S1303で、CPU214は、標準偏差(S)≧Thre1となるかを判定する。ここで、Thre1は、あらかじめ定められた値である。S1303で、標準偏差(S)≧Thre1となると判定された場合には、S1305に処理が進む。この場合は、本来均一になるべき帯状パターンの読取値に大きなバラツキがある。つまり、部分的なトナーロー状態がトナーのどこかの位置で発生している可能性がある。そして、S1305で、CPU214は、キャリブレーション処理を中断する。なお、S1305では、帯状パターンの読取値のバラツキの大きいトナーのみのキャリブレーション処理が中断されても良い。
【0063】
S1303で、標準偏差(S)<Thre1となると判定された場合には、S1304に処理が進む。この場合、帯状パターンの読取値のバラツキが小さいので、部分的なトナーロー状態は、トナーに起こっていな。そして、S1304で、CPU214は、通常通りにキャリブレーション処理を行う。
【0064】
上記実施形態では、C、M、Y、Bkの単色の階調テストパターンを形成し、各単色についての階調濃度特性を目標再現特性に修正するキャリブレーションを例にあげて説明した。しかしながら、単色の階調テストパターンではなく、C、M、Y、Bkが混色したテストパターンを形成し、混色の色再現特性を較正するキャリブレーションに応用してもよい。尚、この場合、マスキングUCR回路がダイレクトマッピングを行うための3D(多次元)LUTに変更され、3D(多次元)LUTの格子点に対応する値がキャリブレーションにより較正される対象となる。
【0065】
<実施形態2>
以下の実施形態2の説明では、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0066】
ここでは、実施形態1と異なり、部分的なトナーロー状態が発生していた場合でも、その発生位置が階調パターン802から離れているのであれば、そのまま通常通りのキャリブレーション処理が継続される。
【0067】
図13に示すフローチャートを用いて説明を行う。なお、図13のフローチャートの処理ではトナー種類ごとに処理が行われる。
【0068】
<図13の説明>
S1400で、CPU214は、図8の帯状パターン801上のN箇所(N>1)で読取値Vnを取得する。
【0069】
次に、S1401で、CPU214は、S1401で取得したN個のVnから主走査方向の読取値の平均値avg(V)と標準偏差Sを、式(2)〜(3)により求める。
【0070】
次に、S1402で、CPU214は、平均値≦Thre2かつ標準偏差≦Thre3であるかを判定する。S1402で、平均値≦Thre2かつ標準偏差≦Thre3であると判定された場合は、S1304に処理が進む。この場合、平均値≦Thre2(平均値が想定していたよりかなり低い)、かつ、標準偏差≦Thre3 (主走査方向の濃度バラツキが小さい)ので、トナーが全体的なトナーローの状態である。
【0071】
一方、S1402で、CPU214は、平均値≦Thre2かつ標準偏差≦Thre3でないと判定された場合には、S1303に処理が進む。
【0072】
なお、全体的なトナーローの状態にあるという判定は、トナーのカートリッジの持つトナー残量検出センサ(不図示)のセンサ情報によって行われても良い。
【0073】
そして、S1304で、CPU214は、通常通りキャリブレーション処理を行う。ここでは、全体的にトナーローなので、CPU214は、キャリブレーション処理を中断してもよい。
【0074】
S1303で、CPU214は、標準偏差(S)≧Thre1となるかを判定する。S1303で、標準偏差(S)≧Thre1となると判定された場合には、S1403に処理が進む。この場合は、主走査方向の濃度バラツキが大きく、トナーに部分的なトナーロー状態が発生している可能性がある。S1303で、標準偏差(S)<Thre1となると判定された場合には、S1304に処理が進む。
【0075】
S1403で、CPU214は、部分的なトナーロー状態の発生位置を特定する。例えば、CPU214は、平均値avg(V)と、Vnとを比較して標準偏差に近いバラツキが出ている箇所を部分的なトナーロー状態の発生位置としても良い。
【0076】
S1404で、CPU214は、S1403で特定された部分的なトナーロー状態の発生位置を分析する。具体的には、S1403で特定された部分的なトナーロー状態の発生位置と、階調パターン802が形成される位置とを比較する。そして、CPU214は、S1403で特定された部分的なトナーロー状態の発生位置が、階調パターン802の付近であるかを分析する。
【0077】
次に、S1405で、CPU214は、S1404で実行される分析に基づいて、部分的なトナーロー状態の位置と階調パターン802が形成される位置が近くないか判定する。S1405で、部分的なトナーロー状態の位置と階調パターン802が形成される位置が近いと判定された場合、S1305に処理が進む。S1305で、CPU214は、キャリブレーション処理を中断する。一方、S1405で、部分的なトナーロー状態の位置と階調パターン802が形成される位置が近くないと判定された場合、S1304に処理が進む。そして、S1304で、CPU214は、通常通りキャリブレーション処理を行う。
【0078】
<実施形態3>
以下の実施形態3の説明では、実施形態1および実施形態2と異なる点についてのみ説明する。
【0079】
[キャリブレーション制御(第二の制御系)と部分的なトナーロー状態の検出]
通常の画像形成中に行われる画像制御である、プリンタ部110単独の画像再現特性の安定化に関する第二の制御系を説明する。
【0080】
第二の制御系は、Y、M、CおよびBkの各色パッチを感光ドラム1106上に形成して、LED光源1112とフォトダイオード1113を用いてパッチの反射光を読み取り濃度情報に変換する。そして、そのパッチの濃度情報を利用して、LUT301(γLUT)を補正することで画像再現性を安定化させるものである。
【0081】
なお、実施形態では比較的口径が大きい感光ドラムを使用している。そして、正確かつ効率よく短時間に濃度情報を得るために、感光ドラム1106の偏心を考慮して、感光ドラム1106の中心に対して点対称になる位置に同一色のパッチを形成し、それらパッチを測定して得られる複数の値を平均して濃度情報を求める。
【0082】
また、第二の制御系は、通常の画像形成中に非画像領域にパッチを形成し、その濃度を検出して、LUT301のテーブルデータを随時補正する制御である。転写ドラム1107に巻き付けられる記録紙の隙間部分に対応する、感光ドラム1106上の領域が非画像領域になるから、その領域にパッチを形成する。
【0083】
次に、第二の制御系での本発明の特徴である部分的なトナーロー状態の検出について説明を行う。
【0084】
第二の制御系では、前述したように感光ドラム1106の中心に対して点対称になる位置に同一色のパッチを形成する。このパッチの読取値から濃度を比較して大きく異なるようであれば、部分的なトナーロー状態が発生していると判定される。なお、比較するパッチは、基本的に不安定な中間濃度域ではなく高濃度域を出力するパッチとする。
【0085】
<実施形態4>
以下の実施形態4の説明では、実施形態3と異なる点についてのみ説明する。
【0086】
実施形態3において比較パッチ間の主走査位置が非常に離れている場合、どちらのパッチも部分的なトナーロー状態となっている可能性がある。この場合、濃度差が大きく出ないため、部分的なトナーロー状態を検出できないことになる。
【0087】
そこで、カートリッジの持つトナー残量検出センサ(不図示)が、ある程度の精度で残量検出をカバーできる位置に少なくとも1つのパッチを出力する。このパッチを基準パッチとする。基準パッチ位置のトナーローはトナー残量検出センサで行うとして、その他のパッチ位置における部分的なトナーロー状態は基準パッチとの濃度差から判定することができる。
【0088】
<実施形態5>
テストパターンは帯状パターン801を持つ図8としていたが、主走査方向のN箇所(N>1)で読取値Vnを取得できれば良いので、必ずしも帯状である必要はない。また、帯状パターン801と階調パターン802は同一紙面内にあるように記載しているが、これに限るものではない。
【0089】
また、複数のトナー残量検出センサを持つ場合、複数のセンサ情報から部分的なトナーロー状態を検出してキャリブレーションを制御しても良い。
【0090】
[その他の実施形態]
本発明は、さらに、複数の機器(例えばコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用することも、一つの機器からなる装置(複合機、プリンタ、ファクシミリ装置など)に適用することも可能である。
【0091】
また本発明の目的は、上述した実施形態で示したフローチャートの手順を実現するプログラムコードを記憶した記憶媒体から、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が、そのプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになる。そのため、このプログラムコード及びプログラムコードを記憶/記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も本発明の一つを構成することになる。
【0092】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0093】
また、前述した実施形態の機能は、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって実現される。また、このプログラムの実行とは、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行う場合も含まれる。
【0094】
さらに、前述した実施形態の機能は、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットによっても実現することもできる。この場合、まず、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行う。こうした機能拡張ボードや機能拡張ユニットによる処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字領域に対し部分的なトナーロー状態を検出するための画像を出力する出力手段と、
前記出力手段が出力した前記画像の読取り結果に基づき、前記部分的なトナーロー状態を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果に基づき、前記トナーを用いた画像の出力における再現特性を較正するキャリブレーションの実施を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記トナーのカートリッジは、撹拌機構を持たないことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記部分的なトナーロー状態を検出するための画像データは、高濃度域の出力を行うためのデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
印字領域に対し部分的なトナーロー状態を検出するための画像を出力する出力ステップと、
前記出力ステップが出力した前記画像の読取り結果に基づき、前記部分的なトナーロー状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定の結果に基づき、前記トナーを用いた画像の出力における再現特性を較正するキャリブレーションの実施を制御する制御ステップとを備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−249861(P2010−249861A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95987(P2009−95987)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】