説明

画像処理装置、画像処理方法、及び、画像処理プログラム

【課題】手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置が搭載されたMFPは、画像データを入力する入力部21と、入力された画像データから複数の手書部分を特定する特定部22と、複数の手書部分を互いの距離に基づいてグループ化するグルーピング部23と、グループ化された手書部分と、該グループ化された手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定部24と、決定された切出領域の画像データを含む、手書部分のサマリ情報を生成する生成部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及び、画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、印刷された文書の校正作業等を行う場合に、文書に手書きで校正内容を記入することがある。こうして得られた原稿は、印刷された部分と手書による部分とが混在している。下記特許文献1には、この種の原稿をスキャナにより読み取って得られた画像データから、手書部分のみを抽出する画像処理の方法が記載されている。特許文献1に記載された画像処理では、手書きの記入がなされる前の原稿をスキャンして得た画像と、手書きの記入がなされた後の原稿をスキャンして得た画像との差分をとることにより、手書部分のみの画像が抽出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−346459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、手書部分の例として、一部の活字を囲む線、この囲み線に繋がった引き出し線、引き出し線の先に位置する「もっと詳しく」という文字が示されている。この場合に上記の画像処理で抽出されるのは、「もっと詳しく」という文字、囲み線、引き出し線のみである。従って、手書きの記入がなされた原稿を参照する等して、囲み線に囲まれた活字を知り得なければ、抽出された手書部分から「もっと詳しく」すべき対象を把握することは、難しい。このため、手書部分による指示内容、手書きされた意図等、印刷部分に対する手書きによる記入内容を、ユーザが印刷文書を参照することなく把握することは、難しい。
【0005】
そこで本発明は、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能な画像処理装置、画像処理方法、及び、画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行う画像処理装置であって、前記画像データを入力する入力手段と、前記入力手段によって入力された画像データから手書部分を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像処理装置では、入力された画像データから手書部分が特定され、特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域が決定される。これにより、手書部分と、この手書部分と関連性の高い印刷部分とを含む切出領域が決定される。そして、決定された切出領域の画像データを含む、手書部分のサマリ情報が生成される。このサマリ情報が印刷又は表示されることにより、ユーザは、手書部分、及び、この手書部分と関連性の高い印刷部分を一纏まりで見ることができる。従って、ユーザは、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握することが可能となる。すなわち、本発明に係る画像処理装置によって、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、前記特定手段によって特定された複数の手書部分を互いの距離に基づいてグループ化するグルーピング手段を備え、前記決定手段は、前記グルーピング手段によってグループ化された手書部分と該グループ化された手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む前記切出領域を決定することが好ましい。
【0009】
この好ましい構成によれば、複数の手書部分が、互いの距離に基づいてグループ化される。これにより、関連する手書部分が分断されて特定された場合であっても、関連性の高い手書部分をグループ化することができる。そして、グループ化された手書部分と、該グループ化された手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域が決定される。この切出領域を含むサマリ情報が印刷又は表示されることにより、ユーザは、グループ化された関連性の高い手書部分と、これらの手書部分と関連性の高い印刷部分とを一纏まりで見ることができる。
【0010】
本発明に係る画像処理装置では、前記決定手段が、前記切出領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上となるように前記切出領域を決定することが好ましい。
【0011】
この好ましい構成によれば、切出領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上となるので、一定以上の印刷部分が切出領域に含まれることとなる。従って、手書きで記入された内容を把握するのに必要な分量の印刷部分を含む切出領域を決定することが可能となる。
【0012】
本発明に係る画像処理装置では、前記決定手段が、前記クループ化された手書部分を含む手書領域を設定する手書領域設定手段と、前記手書領域を含むより大きい領域を前記切出領域の候補領域として設定する候補領域設定手段と、前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かを判断する判断手段と、を備え、前記判断手段によって前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上であると判断された場合に、前記決定手段は、前記候補領域を前記切出領域として決定し、前記判断手段によって前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと判断された場合に、前記候補領域設定手段は、既に設定された候補領域より大きい領域を新たに候補領域として設定することが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、グループ化された手書部分を含む手書領域が設定され、この手書領域を含み、該手書領域より大きい領域が、切出領域の候補領域として設定される。そして、候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かが判断され、印刷部分の画素数が所定以上である場合に、候補領域が切出領域として決定される。一方、設定された印刷部分の画素数が所定以上でない場合に、既に設定された候補領域より大きい候補領域が新たに設定される。これにより、少しずつ候補領域を大きくして、含まれる印刷部分の画素数が所定以上となるように切出領域が決定される。従って、適切な分量の印刷部分を含み、かつ、必要以上に領域が大きくならないように、切出領域を決定することが可能となる。
【0014】
本発明に係る画像処理装置では、前記決定手段が、前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと前記判断手段によって判断された場合において、前記候補領域の設定された回数が所定回数に達した場合は、最後に設定された候補領域を前記切出領域として決定することが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、候補領域の設定された回数が所定回数に達した場合は、最後に設定された候補領域が、切出領域として決定される。例えば、グループ化された手書部分の周囲に存在する印刷部分が少ない場合に、切出領域が必要以上に大きくならないようにすることができる。また、候補領域の設定処理及び画素数の判断処理が、冗長に繰り返されることを防止することができる。
【0016】
本発明に係る画像処理装置では、前記生成手段が、複数の前記切出領域の画像データを含み、該複数の切出領域が配列された前記サマリ情報を生成することが好ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、複数の切出領域が得られた場合に、複数の切出領域が配列されたサマリ情報が生成される。従って、印刷文書の複数箇所に手書きによる記入がなされた場合であっても、ユーザが、手書きで記入された内容を纏めて閲覧することが可能なサマリ情報を生成することができる。
【0018】
本発明に係る画像処理装置では、前記生成手段が、前記原稿において前記切出領域を含むページを示すページ情報が付加された前記サマリ情報を生成することが好ましい。また、前記生成手段が、前記原稿において前記切出領域が位置するページ内の位置を示すページ内位置情報が付加された前記サマリ情報を生成することも好ましい。
【0019】
この好ましい構成によれば、サマリ情報が印刷又は表示されることにより、ユーザは、切出領域の画像と共に、ページ情報又は/及びページ内位置情報を見ることができる。従って、印刷文書において切出領域に対応する箇所をユーザが効率良く参照可能なサマリ情報を生成することができる。
【0020】
本発明に係る画像処理装置では、前記切出領域が所定の画像サイズを超える場合、前記生成手段は、該切出領域を前記所定の画像サイズまで縮小することが好ましい。
【0021】
この好ましい構成によれば、切出領域が所定の画像サイズより大きい場合に、切出領域が縮小される。従って、切出領域の画像を閲覧し易くすることができる。
【0022】
本発明に係る画像処理方法は、印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行う画像処理方法であって、画像データを入力する入力ステップと、前記入力ステップにおいて入力された画像データから手書部分を特定する特定ステップと、前記特定ステップにおいて特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成ステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る画像処理方法によれば、上記サマリ情報を生成することができる。すなわち、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【0024】
本発明に係る画像処理プログラムは、印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行うコンピュータを、画像データを入力する入力手段、前記入力手段によって入力された画像データから手書部分を特定する特定手段、前記特定手段によって特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定手段、前記決定手段によって決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成手段として機能させることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る画像処理プログラムによれば、コンピュータを上記画像処理装置として機能させることができる。従って、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る画像処理装置が搭載されたMFPの概略構成を示すブロック図である。
【図2】MFPが備える制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】切出領域の決定処理の例(削除の記入例)を説明するための図である。
【図4】切出領域の決定処理の例(追記の記入例)を説明するための図である。
【図5】切出領域の決定処理の例(訂正の記入例)を説明するための図である。
【図6】切出領域の決定処理の例(強調の記入例)を説明するための図である。
【図7】切出領域の決定処理の例(風船書きの記入例)を説明するための図である。
【図8】サマリ情報の例を示す図である。
【図9】サマリ情報の生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】切出領域の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】画像処理プログラムを実行するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図12】本実施形態に係る画像処理プログラムのモジュール構成を示す図である。
【図13】サマリ情報の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を用いて、実施形態に係る画像処理装置が搭載されたMFP(Multifunction Peripheral)1の概略構成について説明する。図1は、MFP1の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
MFP1は、プリント機能、スキャン機能、FAX(ファクシミリ)機能、及び、IFAX(インターネットFAX)機能を備えるネットワーク複合機である。このMFP1は、スキャン機能により原稿を読み取って生成した画像データを処理する機能を有している。画像処理の対象となる画像データとして、印刷部分と手書部分とが混在する原稿の画像データがある。例えば、文書が印刷された後に手書きで校正内容等が記入された原稿の画像データ等が画像処理の対象となる。MFP2は、印刷部分と手書部分とが混在する原稿の画像データから、手書部分とその周囲の印刷部分とを含む切出領域を決定し、この切出領域を用いて手書部分のサマリ情報を生成する。
【0030】
図1に示されるように、MFP1は、ユーザが各種の操作をMFP1に対して行うために、操作部10と、表示部11と、HTTPサーバ12とを備える。操作部10は、各種のファンクションキー等を備える。表示部11は、LCD等を用いた表示装置であり、MFP1の動作状態、各種設定内容、及び、生成されたサマリ情報等を表示する。HTTPサーバ12は、LAN3を介して接続されたコンピュータ5のディスプレイに各種の操作ページを表示し、コンピュータ5を介してユーザからの操作を受け付ける。また、HTTPサーバ12は、生成されたサマリ情報をコンピュータ5のディスプレイに表示する機能も有する。
【0031】
また、MFP1は、プリンタ13、スキャナ14、FAX制御部15、及び、IFAX制御部16を備えている。プリンタ13は、コンピュータ5から入力されるPDLデータ、スキャナ14により生成された画像データ、及び、サマリ情報等を用紙に印刷する。FAX制御部15は、MFP1が備えるNCU(Network Control Unit)17及びモデム18によって行われるPSTN(Public Switched Telephone Network)7を介したFAXの送受信を制御する。IFAX制御部16は、MFP1が備えるLAN I/F19を介して行われるIFAXの送受信を制御する。
【0032】
MFP1が備える制御部20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。制御部20は、記憶されたプログラムを実行することにより、MFP1が備えるハードウエアを統合的に制御する。
【0033】
図2は、制御部20の構成を示すブロック図である。制御部20は、以下に説明する入力部21、特定部22、グルーピング部23、決定部24、及び、生成部25としての機能を発揮する。この入力部21は、特許請求の範囲に記載の入力手段として機能し、特定部22は特定手段として機能し、グルーピング23はグルーピング手段として機能し、決定部24は決定手段として機能し、生成部25は生成手段として機能する。
【0034】
入力部21は、スキャナ14によって原稿が読み取られることにより生成された画像データを入力する。また、入力部21は、LAN3を介してコンピュータ5から画像データを入力してもよい。特定部22は、入力部21によって入力された画像データから手書部分を特定する。グルーピング部23は、特定部22によって特定された複数の手書部分を互いの距離に基づいてグループ化する。決定部24は、グループ化された手書部分とその周囲に位置する印刷部分を含む切出領域を決定する。
【0035】
図3を参照して、特定部22、グルーピング部23、及び決定部24についてより詳細に説明すると共に、切出領域が決定されるまでの画像処理について具体的に説明する。図3は、切出領域の決定処理の例を説明するための図であり、この例は、削除を示す内容が手書きで記入された原稿301の画像データから切出領域を決定する場合の例である。
【0036】
図3(a)は、原稿の一例を示す図である。原稿301は、印刷された文書に手書きによる記入がなされている。原稿301は、複数の活字「printing type」が横書き5行に印刷された文書に手書きによる記入がなされた例である。原稿301には、活字「type」を削除する旨の削除記号31が、手書きで記入されている。この削除記号31は、2本の取り消し線で構成され、活字「type」と重なっている。原稿301においては、複数の活字「printing type」が印刷部分であり、削除記号31が手書部分である。なお、本例では、印刷部分が活字部分のみであるが、印刷部分は、プリンタ等を用いて用紙に印刷された文字、記号、又は図形等であってもよい。
【0037】
特定部22は、原稿301の画像データに含まれる手書部分の画素を特定する。まず、原稿301の画像データに含まれる1画素又は連続する複数画素を判定単位として、判定単位毎に手書部分か否かを判定する。特定部22は、手書部分の濃度が印刷された活字の濃度より低いことを利用して、手書部分か否かを判定する。例えば、特定部22は、空白部分以外の画素を判定対象とし、判定単位に含まれる画素の平均濃度、又は、判定単位に含まれる画素と判定単位の周囲に位置する画素とを合わせた画素の平均濃度が所定の濃度以下であれば、判定単位に含まれる画素を手書部分の画素として特定する。図3(a)に示す例では、削除記号31が、活字「type」と重なっているので、削除記号31を構成する画素のうち、活字「type」と重なっていない部分の画素が、手書部分として特定される。
【0038】
図3(b)は、グルーピング部23によるグルーピング処理を説明するための図である。グルーピング部23は、互いの距離が一定以内に位置する手書部分の画素を1つのグループに纏める。例えば、グルーピング部23は、手書部分の画素に該当する位置を「1」で表し、手書部分以外の画素に該当する位置を「0」で表した二値画像において、「1」で表された領域を拡張する画像処理を行う。図3(b)におけるハッチングが施された領域41が、拡張処理により得られた「1」の領域を示している。
【0039】
そして、グルーピング部23は、拡張処理を行った結果、連結した「1」の領域に含まれる手書部分の画素を1つのグループに纏める。このグルーピング処理により、手書きによる連続した線、交わった線、所定の距離内にある線又は点等を示す画素が1つのグループに纏められる。図3(b)に示す例では、削除記号31を構成する2本の線が1つの手書画素グループとしてグループ化される。
【0040】
図3(c)は、切出領域の決定処理を説明するための図である。決定部24は、切出領域を決定するために、手書領域設定部241、候補領域設定部242、及び、判断部243を備える。手書領域設定部241は、手書グループ毎に、1つの手書画素グループに属する全ての手書部分の画素を含む手書領域51を設定する。本実施形態では、手書領域51は、手書画素グループに属する画素に外接する矩形の領域である。
【0041】
候補領域設定部242は、手書領域51が設定された後、オーバーラップ処理を行い、候補領域61を設定する。候補領域61は、手書領域51を含むと共に、手書領域51より大きい領域である。本実施形態では、候補領域設定部242は、矩形の手書領域51を上下左右の四方向に広げるオーバーラップ処理を行うことにより、候補領域61を設定する。例えば、手書領域51に含まれる画素より所定の画素数だけ大きい領域、手書領域51の上下方向及び左右方向の長さに対して所定の割合だけ大きい領域、又は、手書領域51の面積に対して所定の割合だけ大きい領域を、候補領域61として設定することができる。
【0042】
判断部243は、設定された候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かを判断する。判断部243は、印刷部分の画素数が所定の画素数以上か否かを判断してもよいし、印刷部分の画素数が候補領域61に含まれる画素数の所定割合以上か否かを判断してもよい。なお、判断部243は、画像データから印刷部分の画素を特定する方法として、任意の方法を利用することができる。例えば、濃度が所定値以上の画素を印刷部分の画素として特定することができる。
【0043】
判断部243によって候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上であると判断された場合、決定部24は、候補領域61を切出領域71として決定する。判断部243によって候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと判断された場合、候補領域設定部242が、既に設定された候補領域61より大きい領域を新たに候補領域61として設定する。図3(c)は、新たに候補領域61が設定された場合を示している。
【0044】
候補領域設定部242は、元の候補領域61を上下左右の四方向に広げて新たな候補領域61を設定する。例えば、元の候補領域61に含まれる画素より所定の画素数だけ大きい領域、元の候補領域61の上下方向及び左右方向の長さに対して所定の割合だけ大きい領域、又は、元の候補領域61の面積に対して所定の割合だけ大きい領域を、新たな候補領域61として設定することができる。その後、判断部243は、新たに設定された候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かを判断する。
【0045】
候補領域設定部242は、候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判定されるまで、設定する候補領域61を少しずつ大きくしていく。以上の処理を行うことにより、印刷部分の画素数が所定以上となるように切出領域71を設定することができる。
【0046】
図3(c)に示す例では、2回目に設定された候補領域61について、印刷部分の画素数が所定以上と判定され、2回目に設定された候補領域61が切出領域71として決定される。切出領域71内には、削除記号31と活字部分とが含まれている。活字部分は、削除記号31を構成する2本の取り消し線と重なる活字「type」である。また、切出領域71には、活字「type」の周囲の空白部分が含まれている。このため、切出領域71の画像によれば、活字「type」を削除する指示が、手書部分によって示されていることを把握できる。また、切出領域71の画像によれば、活字「type」の周囲に手書きで文字が記入されていないので、活字「type」を他の活字に修正する指示は、手書部分に含まれていないことを把握できる。
【0047】
なお、決定部24は、候補領域61の設定回数が所定回数に達した場合、最後に設定された候補領域61を切出領域として決定する。これは、グループ化された手書部分の周囲が空白で印刷部分が存在しない場合、又は、存在する印刷部分が少ない場合に、処理を冗長に繰り返すことを防止するためである。候補領域61は回数を重ねる毎に大きく設定されるので、所定回数目の設定で得られる候補領域61は、グループ化された手書部分の周囲に十分な大きさの空白部分が含まれることになる。従って、最後に設定された候補領域61を切出領域として設定することにより、切出領域の画像によって、グループ化された手書部分の周囲に存在する印刷部分がない又は少ないことを把握することができる。
【0048】
引き続いて、図4〜図7を参照して、切出領域が決定されるまでの画像処理について他の例を説明する。図4〜図7は、切出領域の決定処理の例を説明するための図である。図4は、挿入を示す内容が手書きで記入された原稿302の画像データから切出領域72を決定する場合の例を示している。
【0049】
図4(a)に示される原稿302は、活字が印刷された文書に、挿入記号321及び挿入文字(「from」)322が手書きで記入されている。挿入記号321及び挿入文字322は、活字「nting」と活字「type」との間に「from」を挿入する旨を示している。この挿入記号321及び挿入文字322は、活字「nting」と活字「type」との付近、かつ、活字の行間に配置されている。
【0050】
図4(a)に示す例では、挿入記号321及び挿入文字322を構成する画素が、手書部分として特定される。また、図4(b)に示すように、拡張処理が行われ、挿入記号321及び挿入文字322を拡張させた領域42が得られる。挿入記号321及び挿入文字322を構成する画素は、互いの距離が一定以内に位置し、1つの領域42に含まれる。よって、挿入記号321及び挿入文字322を構成する画素が、一つの手書画素グループとしてグループ化される。
【0051】
そして、図4(c)に示すように、挿入記号321及び挿入文字322に外接する矩形の外接領域52が設定される。その後、外接領域52を四方に広げた候補領域62が設定される。図4の例では候補領域62に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと判断され、既に設定された候補領域62より大きい領域が新たな候補領域62として設定される。そして、新たに設定された候補領域62に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判断され、新たに設定された候補領域62が、切出領域72とされる。
【0052】
切出領域72内には、挿入記号321、挿入文字322、挿入記号321及び挿入文字322の周囲の空白部分、挿入記号321及び挿入文字322の周囲の印刷部分「ting」「type」が含まれている。このため、切出領域71の画像によって、活字「ting」と活字「type」との間に「from」を挿入するという指示内容が、手書部分によって示されていることを把握できる。
【0053】
図5は、訂正を示す内容が手書きで記入された原稿303の画像データから切出領域73を決定する場合の例をしている。図5(a)に示される原稿303は、活字が印刷された文書に、訂正記号331及び訂正文字(「y」)332が手書きで記入されている。訂正記号331及び訂正文字332は、活字「tipe」に含まれる活字「i」を「y」に訂正する旨を示している。訂正記号331は、互いに交わった2本の線で構成され、活字「i」と重なる位置に記入されている。訂正文字332は、活字「i」の上の余白に記入されている。
【0054】
図5(a)に示す例では、訂正記号331及び訂正文字332を構成する画素が、手書部分として特定される。また、図5(b)に示すように、拡張処理が行われ、訂正記号331及び訂正文字332を拡張させた領域43が得られる。訂正記号331及び訂正文字332を構成する画素は、互いの距離が一定以内に位置し、一つの領域43に含まれる。よって、訂正記号331及び訂正文字332を構成する画素が、一つの手書画素グループとしてグループ化される。
【0055】
そして、図5(c)に示すように、訂正記号331及び訂正文字332に外接する矩形の外接領域53が設定される。その後、外接領域53を四方に広げた候補領域63が設定される。図5の例では、1回目及び2回目に設定された候補領域63に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと判断され、2回目に設定された候補領域63より大きい領域が新たな候補領域63として設定される。そして、3回目に設定された候補領域63に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判断され、3回目に設定された候補領域63が切出領域73に設定される。
【0056】
切出領域73内には、訂正記号331、訂正文字332、訂正記号331と重なる活字「i」、訂正記号331及び訂正文字332の周囲の空白部分、その他、訂正記号331及び訂正文字332の周囲の印刷部分が含まれている。このため、切出領域73の画像によれば、活字「tipe」に含まれる活字「i」を「y」に訂正する指示が、手書部分によって示されていることを把握できる。
【0057】
図6は、強調を示す内容が手書きで記入された原稿304の画像データから切出領域74,75を決定する場合の例を示している。図6(a)に示される原稿304は、活字が印刷された文書に、一行目の活字「type,」を強調する旨の強調記号34、3行目の活字「type,」を強調する旨の強調記号35が手書きで記入されている。強調記号34は、活字「type,」の周囲を楕円状に囲む線である。強調記号35は、活字「type,」の下側に引かれた波状の線である。
【0058】
図6(a)に示す例では、強調記号34及び強調記号35を構成する画素が、手書部分として特定される。次に、図6(b)に示すように、拡張処理が行われ、強調記号34を拡張させた領域44と、強調記号35を拡張させた領域45とが得られる。強調記号34を構成する画素は、互いの距離が一定以内に位置し、一つの領域44に含まれる。また、強調記号35を構成する画素は、互いの距離が一定以内に位置し、一つの領域45に含まれる。強調記号34を構成する画素と強調記号34を構成する画素とは、互いの距離が一定以内に位置していないので、同じ領域44,45内には含まれない。従って、強調記号34を構成する画素が一つの手書画素グループとしてグループ化され、強調記号35を構成する画素が一つの手書画素グループとしてグループ化される。
【0059】
そして、図6(c)に示すように、強調記号34に外接する矩形の外接領域54と、強調記号35に外接する矩形の外接領域55とがそれぞれ設定される。その後、外接領域54を四方に広げた候補領域64が設定され、外接領域55を四方に広げた候補領域65がそれぞれ設定される。強調記号34については、2回目に設定された候補領域64に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判断され、2回目に設定された候補領域64が切出領域74に設定される。強調記号35については、3回目に設定された候補領域65に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判断され、3回目に設定された候補領域65が切出領域75に設定される。
【0060】
切出領域74内には、強調記号34、強調記号34に囲まれた活字「type,」、この活字「type,」の左側に位置する活字「ng」、右側に位置する活字「p」、強調記号34の周囲の空白部分が含まれている。このため、切出領域74の画像によれば、活字「type,」を強調する旨が、手書部分によって示されていることを把握できる。一方、切出領域75内には、強調記号35、強調記号35の上に位置する活字「type,」、この活字「type,」の左側に位置する活字「ng」、右側に位置する活字「pr」、強調記号45の周囲の空白部分が含まれている。このため、切出領域75の画像によれば、活字「type,」を強調する旨が、手書文字によって示されていることを把握できる。
【0061】
図7は、風船書きを示す内容が手書きで記入された原稿305の画像データから切出領域76を決定する場合の例を示している。なお、訂正又は追記等を行う際に、対象となる活字や図の近くに十分な余白がない場合がある。この場合に、余白に訂正内容又は追記内容を書き込み、対象となる活字や図を線で囲み、その囲み線と内容を記入した部分とを接続する引き出し線を記入する方法がある。本実施形態では、この記入を風船書きとして説明する。
【0062】
図7(a)に示される原稿305には、活字が印刷された文書に、2行目の活字「pri」と3行目の「nting type,」について「not by hand」を追記する旨の風船記号361が手書きで記入されている。また、引き出し線362、追記文字(「not by hand」)363が手書きで記入されている。風船記号361は、2行目の活字「pri」と3行目の活字「nting type,」とを囲む線である。引き出し線362は、一端が風船記号361の付近に位置し、他端が追記文字363の付近に位置している。追記文字363は、原稿305の下側の余白に位置している。
【0063】
図7(a)に示す例では、風船記号361、引き出し線362、及び追記文字363を構成する画素が、手書部分として特定される。そして、図7(b)に示すように、拡張処理が行われ、風船記号361、引き出し線362、及び追記文字363を拡張させた領域46が得られる。風船記号361、引き出し線362、及び追記文字363を構成する画素は、互いの距離が一定以内に位置し、一つの領域46に含まれる。よって、風船記号361、引き出し線362、及び追記文字363を構成する画素が、一つの手書画素グループとしてグループ化される。このように、風船記号361と追記文字363とが離れていても、風船記号361と追記文字363とを繋ぐ手書部分(引き出し線362)が存在すれば、一纏まりとしてグループ化される。
【0064】
そして、図6(c)に示すように、風船記号361、引き出し線362、及び追記文字363に外接する矩形の外接領域56が設定される。その後、外接領域56を四方に広げた候補領域66が設定される。図6の例では、1回目に設定された候補領域66に含まれる印刷部分の画素数が所定以上と判断され、1回目に設定された候補領域66が切出領域76に設定される。
【0065】
切出領域76内には、風船記号361、引き出し線362、追記文字363、風船記号361に囲まれた活字、風船記号361並びに引き出し線362並びに追記文字363の周囲の空白部分並びに印刷部分が含まれている。このため、切出領域76の画像によれば、活字「pri」と活字「nting type,」とに関して、「not by hand」が追記された旨が、手書部分によって示されていることを把握できる。
【0066】
次に、図8を参照して、サマリ情報を生成する生成部25について説明する。図8は、サマリ情報の例を示す図である。図8は、印刷又は表示されたサマリ情報を示し、図8(a)は、1ページ目のサマリ情報801を示し、図8(b)は、2ページ目のサマリ情報802を示している。
【0067】
ここでは、上述した原稿301〜305が一纏まりの原稿である場合について説明する。例えば、原稿301〜305が、原稿301から順に、MFP1に搭載されたADF(自動給紙装置)によってスキャナ14へ給紙され、読み取られることにより、原稿301〜305の画像データ毎にページ情報が付加される。すなわち、原稿301の画像データには、1ページ目である旨のページ情報が付加され、同様に、原稿302〜305の各画像データには、2〜5ページ目である旨のページ情報がそれぞれ付加される。
【0068】
生成部25は、切出領域71〜76を含むサマリ情報を生成する。本実施形態では、サマリ情報に複数の切出領域71〜76が含まれているが、切出領域が1つであってもよい。生成部25は、所定の画像サイズを超える切出領域76については所定の画像サイズまで縮小する。そして、生成部25は、各原稿301〜305の画像データに付加されたページ情報を参照して、複数の切出領域71〜76が原稿のページ順に配列されたサマリ情報を生成する。また、生成部25は、1つの画像データから複数の切出領域74,75を切り出した場合、切出領域74,75の座標に基づいて、原稿304の上方の切出領域74から順に配列されるように、サマリ情報を生成する。
【0069】
また、生成部25は、ページ情報をサマリ情報に付加する。ページ情報は、原稿301〜305において切出領域71〜76をそれぞれ含むページを示す情報である。更に、生成部25は、ページ内位置情報をサマリ情報に付加する。ページ内位置情報は、原稿301〜305において切出領域71〜76がそれぞれ位置するページ内の位置を示す情報である。図8に示す例では、1ページ目の原稿301の切出領域71の上に、「1ページ上段中央」を示す文字情報81が表示されている。この文字情報81は、ページ情報として「1ページ」、ページ内位置情報として「上段中央」を示す情報を含んでいる。ページ情報及びページ内位置情報は、該当する切出領域71〜76の画像データと関連付けてサマリ情報に付加される。
【0070】
文字情報81に含まれるページ情報は、画像データに付加されたページ情報を用いることができる。文字情報81に含まれるページ内位置情報は、例えば、原稿301を複数のエリアに分割し、切出領域71が位置するエリアをページ内位置情報とすることができる。本実施形態では、2次元座標上において、原稿301をY軸方向に上段、中段、下段と分割し、更に、X軸方向に左側、中央、右側と分割することにより、原稿301を9つのエリアに分割している。そして、切出領域71が「上段中央」のエリアに位置することから、ページ内位置情報を「上段中央」としている。なお、切出領域76のように、ページ全体に位置する場合は、「5ページ全体」を示す文字情報86を生成してもよい。
【0071】
引き続いて、MFP1の動作について説明すると共に、本実施形態に係る画像処理方法について説明する。図9を参照して、サマリ情報の生成処理の処理手順について説明する。図9は、サマリ情報の生成処理の処理手順を示すフローチャートである。このサマリ情報の生成処理は、制御部20によって行われる。
【0072】
まず、ステップS101では、スキャナ14によって読み取られた原稿301〜305の画像データが、制御部20に入力される。すなわち、ステップS101では、特許請求の範囲に記載の入力ステップの処理が行われる。次に行われるステップS102では、最初のページである原稿301の画像データから手書部分の画素が特定される。すなわち、ステップS102では、特許請求の範囲に記載の特定ステップの処理が行われる。
【0073】
ステップS103では、該当するページの画像データに手書部分の画素が存在するか否かが、判断される。ステップS103において、該当するページの画像データに手書部分の画素が存在しないと判断された場合は、ステップS109へ処理が進む。ステップS103において、該当するページの画像データに手書部分の画素が存在すると判断された場合は、ステップS104へ処理が進む。ステップS104では、手書部分の画素について拡張処理が行われ、互いの距離が所定以下である手書部分の画素がグルーピングされる。
【0074】
次に、ステップS105では、グルーピングされた各手書画素グループについて、切出領域71が決定される。すなわち、ステップS105では、特許請求の範囲に記載の決定ステップの処理が行われる。ここで、図10を参照して、切出領域の決定処理について説明する。図10は、切出領域の決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0075】
まず、ステップS1051では、処理対象となる手書画素グループに含まれる手書部分について、外接領域51が設定される。次に、ステップS1052では、オーバーラップ処理が行われることにより、候補領域61が設定される。続くステップS1053では、設定された候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かが判断される。
【0076】
ステップS1053において、候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上ではないと判断された場合、処理がステップS1054へ進む。ステップS1054では、オーバーラップ処理の回数、すなわち候補領域61の設定回数が所定回数に到達したか否かが、判断される。ステップS1054において、オーバーラップ処理の回数が所定回数に到達してないと判断された場合は、ステップS1052へ処理が戻り、再びオーバーラップ処理が行われ、新たな候補領域61が設定される。
【0077】
ステップS1054において、オーバーラップ処理が所定回数に到達したと判断された場合は、処理がステップS1055へ進む。また、ステップS1053において、候補領域61に含まれる印刷部分の画素数が所定以上ではあると判断された場合、処理がステップS1055へ進む。ステップS1055では、最後に設定された候補領域61が、切出領域71として決定される。
【0078】
そして、ステップS1056では、処理対象となっている画像データの全ての手書画素グループについて切出領域の決定処理が完了したか否かが判断される。ステップS1056では、未だ切出領域の決定処理が行われていない手書画素グループがある場合、ステップS1051へ戻り、次の手書画素グループについて、切出領域を決定する処理が行われる。処理対象となっている画像データの全ての手書画素グループについて切出領域の決定処理が完了した場合は、切出領域の決定処理が終了する。そして、図9に示すステップS106へ処理が移行する。
【0079】
ステップS106では、ステップS105において決定された切出領域のうち、画像サイズが所定サイズを超える切出領域があるか否かが判断される。ステップS106において、所定サイズを超える切出領域がないと判断された場合は、処理がステップS108へ進む。ステップS106において、所定サイズを超える切出領域があると判断された場合は、処理がステップS107へ進む。ステップS107では、所定サイズを超える切出領域の画像サイズが所定サイズまで縮小される。
【0080】
ステップS108では、該当するページの画像データから切り出した切出領域の画像データ、ページ情報、及びページ内位置情報が記憶される。ステップS109では、全ページの画像データについて処理が完了したか否かが判断される。ステップS109で、全ページについて処理が完了していないと判断された場合は、次のページの画像データについて処理を行うために、ステップS102へ処理が戻る。これにより、原稿302〜305の全ての画像データについて画像処理が行われる。
【0081】
ステップS109において、全ページについて処理が完了したと判定された場合は、処理がステップS110へ進む。ステップS110では、原稿301〜305について記憶された切出領域71〜76の画像データ、ページ情報、及びページ内位置情報を含むサマリ情報が生成される。すなわち、ステップS110では、特許請求の範囲に記載の生成ステップの処理が行われる。以上により、本実施形態に係る画像処理が終了する。
【0082】
生成されたサマリ情報は、MFP1が備えるプリンタ13又は他のプリンタによって用紙に印刷することができる。また、サマリ情報は、MFP1が備える表示部11又はコンピュータ5において表示することができる。これにより、ユーザは、図8に示すサマリ情報を閲覧することができる。
【0083】
以上説明したMFP1では、特定された手書部分、及び、該手書部分の周囲に位置する印刷部分(活字部分)を含む切出領域71〜76が決定され、切出領域71〜76の画像データを含む、手書部分のサマリ情報が生成される。このサマリ情報が印刷又は表示されることにより、ユーザは、手書部分、及び、この手書部分と関連性の高い印刷部分を一纏まりで見ることができる。従って、ユーザは、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握することが可能となる。すなわち、MFP1によれば、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【0084】
また、MFP1では、複数の手書部分が、互いの距離に基づいてグループ化され、グループ化された手書部分、及び、該グループ化された手書部分の周囲に位置する印刷部分を含む切出領域71〜76が決定される。この切出領域71〜76を含むサマリ情報が印刷又は表示されることにより、ユーザは、グループ化された関連性の高い手書部分、及び、これらの手書部分と関連性の高い印刷部分を一纏まりで見ることができる。
【0085】
切出領域71〜76には印刷部分の画素数が所定以上含まれるので、一定以上の印刷部分が切出領域に含まれることとなる。従って、手書きで記入された内容を把握するのに適切な分量の印刷部分を含む切出領域を決定することが可能となる。
【0086】
切出領域の決定処理では、グループ化された手書部分を含む手書領域51〜56が設定され、この手書領域51〜56を含むと共に該手書領域51〜56より大きい領域が、切出領域の候補領域61〜66として設定される。そして、候補領域61〜66に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かが判断され、印刷部分の画素数が所定以上である場合に、候補領域61〜66が切出領域71〜77として決定される。一方、設定された印刷部分の画素数が所定以上でない場合に、既に設定された候補領域より大きい候補領域が新たに設定される。これにより、少しずつ候補領域を大きくして、含まれる印刷部分の画素数が所定以上となるように切出領域71〜76が決定される。従って、適切な分量の印刷部分を含み、かつ、必要以上に領域が大きくならないように、切出領域を決定することが可能となる。
【0087】
また、切出領域の決定処理では、候補領域の設定された回数が所定回数に達した場合は、最後に設定された候補領域が、切出領域として決定される。例えば、グループ化された手書部分の周囲に存在する印刷部分が少ない場合に、切出領域が必要以上に大きくならないようにすることができる。また、候補領域の設定処理及び画素数の判断処理が、冗長に繰り返されることを防止することができる。
【0088】
また、複数の切出領域71〜76が得られた場合に、複数の切出領域71〜76が配列された画像を示すサマリ情報が生成される。従って、印刷文書の複数箇所に手書きによる記入がなされた場合であっても、ユーザが、手書きで記入された内容を纏めて閲覧することが可能なサマリ情報を生成することができる。
【0089】
このサマリ情報を見ることにより、ユーザは、手書部分の内容について、素早く視覚的に把握することができる。例えば、多数ページからなる文書中に手書部分が散在している場合において、サマリ情報を見ることにより、ユーザは、手書部分だけの内容を効率良く確認することができる。従って、印刷文書の校正作業等に用いることで、構成作業の効率を向上させることができる。また、サマリ情報を生成する際に、手書きで記入された文字に対してOCR処理(文字認識処理)を行わないので、誤って認識された文字が表示されるリスクを回避することができる。
【0090】
また、サマリ情報には、ページ情報及びページ内位置情報が含まれるので、ユーザは、切出領域の画像と共に、ページ情報又は/及びページ内位置情報を見ることができる。従って、印刷文書において切出領域に対応する箇所をユーザが効率良く参照可能なサマリ情報を生成することできる。
【0091】
また、MFP1では、切出領域76が所定の画像サイズより大きい場合に、切出領域76が縮小される。従って、複数の切出領域71〜76の画像サイズが一定範囲内となるので、切出領域71〜76の画像を閲覧し易くすることができる。
【0092】
次に、図11及び図12を参照して、上述したサマリ情報の生成処理を行う画像処理装置として、コンピュータ90を機能させるプログラム100について説明する。図11は、本実施形態に係るプログラム100を実行するためのコンピュータ90の構成を示すブロック図である。図10は、プログラム100のモジュール構成を示す図である。
【0093】
コンピュータ90は、プログラム100の実行等を制御する制御部(CPU)91と、プログラム100等が記憶されたハードディスク92と、メモリ(RAM)93と、CD−ROM等の記録媒体に記録されたプログラム等を読み取り可能な読取装置94とを備えている。また、コンピュータ90は、入力デバイス95と、ディスプレイ96と、LAN I/F97とを備えている。
【0094】
プログラム100は、CD−ROM等の記録媒体に記録されていてもよいし、ネットワークを介してサーバ等からコンピュータ90に提供されるものであってもよい。プログラム100は、処理を統括するメインモジュール101、入力モジュール102、特定モジュール103、グルーピングモジュール104、決定モジュール105、生成モジュール106を備える。例えば、読取装置95により読み取られハードディスク93に記憶(インストール)されたプログラム100の各モジュールが実行されることにより、コンピュータ90が、画像処理装置(制御部20)を構成する入力部21、特定部22、グルーピング部23、決定部24、生成部25として機能する。
【0095】
本実施形態によれば、プログラム100が実行されることにより、コンピュータ90を上述したサマリ情報の生成処理を行う画像処理装置として機能させることができる。従って、手書きの記入がなされた印刷文書を参照することなく、印刷部分に対する手書きによる記入内容を把握できるサマリ情報を生成することが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、サマリ情報の表示例は、上記実施形態に限定されるものではなく、サマリ情報には、上述した以外の種々の付加情報を付加してもよい。この場合の例について、図13を参照して説明する。図13は、サマリ情報の変形例を示す図である。
【0097】
図13に示すサマリ情報は、コンピュータ5のブラウザ機能等を用いてコンピュータ5のディスプレイに表示させることができる。図13に示す例では、切出領域71の画像と、該切出領域71を含む原稿301のページ全体の画像とが同時に表示されている。この変形例に係るサマリ情報には、各切出領域71〜76を含む原稿301〜305のページ全体の画像データが含まれている。また、サマリ情報には、切出領域71〜76の番号を示す情報と、切出領域71〜76の総数、原稿301〜305毎に切出領域の総数を示す情報が含まれている。
【0098】
このサマリ情報はコンピュータ5のブラウザ機能等を用いて表示され、ユーザの操作に応じて、切出領域71〜76を順に表示させることができる。また、切出領域71〜76と同時に、該切出領域71〜76を含む原稿301〜305の画像が表示される。従って、ユーザは、切出領域の画像を見ながら内容を把握し、同時に、印刷文書を見ることが容易となる。また、切出領域71〜76と同時に、ページ情報、該当ページにおける切出領域の総数、原稿全体の切出領域の総数、表示中の切出領域の番号、ページ内位置情報等が表示されるので、各切出領域71〜76及び原稿301〜306の画像を閲覧し易くすることができる。
【0099】
また、上記実施形態では、原稿301〜305の画像データに含まれる画素の濃度に基づいて、判定単位毎に手書部分の画素を特定したが、手書部分の特定方法はこれに限られず、任意の方法を用いることができる。手書きの記入がなされる前の印刷文書をスキャンして得た画像と、手書きの記入がなされた後の印刷文書をスキャンして得た画像との差分をとることで、手書部分の画素を特定してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、手書領域51〜56を手書部分に外接する矩形領域としたが、手書部分を含む領域であればこれに限られず、外接していなくてもよいし、矩形でなくてもよい。また、上記実施形態では、候補領域61〜66を矩形領域としたが、矩形でなくてもよい。また、生成部25は、表示又は印刷されたサマリ情報の見栄えを良くするために、切出領域71〜76の画像サイズ及び位置を調整してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 MFP
11 表示部
12 HTTPサーバ
13 プリンタ
14 スキャナ
20 制御部
21 入力部
22 特定部
23 グルーピング部
24 決定部
241 手書領域設定部
242 候補領域設定部
243 判断部
25 生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行う画像処理装置であって、
前記画像データを入力する入力手段と、
前記入力手段によって入力された画像データから手書部分を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特定手段によって特定された複数の手書部分を互いの距離に基づいてグループ化するグルーピング手段を備え、
前記決定手段は、前記グルーピング手段によってグループ化された手書部分と該グループ化された手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む前記切出領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記切出領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上となるように前記切出領域を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記クループ化された手書部分を含む手書領域を設定する手書領域設定手段と、
前記手書領域を含むより大きい領域を前記切出領域の候補領域として設定する候補領域設定手段と、
前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上か否かを判断する判断手段と、
を備え、
前記判断手段によって前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上であると判断された場合に、前記決定手段は、前記候補領域を前記切出領域として決定し、
前記判断手段によって前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと判断された場合に、前記候補領域設定手段は、既に設定された候補領域より大きい領域を新たに候補領域として設定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記候補領域に含まれる印刷部分の画素数が所定以上でないと前記判断手段によって判断された場合において、前記候補領域の設定された回数が所定回数に達した場合は、最後に設定された候補領域を前記切出領域として決定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、複数の前記切出領域の画像データを含み、該複数の切出領域が配列された前記サマリ情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記原稿において前記切出領域を含むページを示すページ情報が付加された前記サマリ情報を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記原稿において前記切出領域が位置するページ内の位置を示すページ内位置情報が付加された前記サマリ情報を生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記生成手段は、前記切出領域が所定の画像サイズを超える場合、該切出領域を前記所定の画像サイズまで縮小することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行う画像処理方法であって、
画像データを入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力された画像データから手書部分を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにおいて決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
印刷文書に手書きによる記入がなされた原稿の画像データに対して画像処理を行うコンピュータを、
画像データを入力する入力手段、
前記入力手段によって入力された画像データから手書部分を特定する特定手段、
前記特定手段によって特定された手書部分と該手書部分の周囲に位置する印刷部分とを含む切出領域を決定する決定手段、
前記決定手段によって決定された切出領域の画像データを含む、前記手書部分のサマリ情報を生成する生成手段、
として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−39236(P2012−39236A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175427(P2010−175427)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】