説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム及び記憶媒体

【課題】画像の補正処理をより高精度に行ない、画質の向上を図ること。
【解決手段】 処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理装置である。この画像処理装置は、処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する。そして画像領域内に含まれる画素の信号値から、画像領域に関する変動量を算出する。又、画像領域内に含まれる画素の信号値から、画像領域における変動回数を算出する。更に、変動回数及び変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段を用いて、変動回数及び変動量から補正強度Fz1、Fz2、Feを求め、処理対象画素の信号値に対して、求めた補正強度で補正処理を加える。なお、設定手段は、異なる変動回数又は変動量に対し、補正強度Fz1、Fz2、Feが漸次変化するように対応関係を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に補正処理を施す画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像に補正処理を加える画像処理装置が知られている。例えば、読み取った画像を文字と網点の2領域に分離し、文字領域に対してはエッジ強調処理を施し、網点領域に対しては平滑化処理を施すことでシャープ感の向上とモアレの低減とを両立する技術がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−077623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的に画像に加えるべき補正処理は、その画像の属性に依存するため、画像の属性を誤判断してしまうと、適正な補正処理を加えることができなくなる。例えば、文字に対して平滑化処理を施したり、網点に対してエッジ強調を施したりすると、逆に画像を劣化してしまう。また、例えば、文字の一部を文字領域と判定し、文字の他部を網点領域と判定してしまうと、1つの文字の中にエッジ強調と平滑化の処理の切り換えが発生し、著しく画像を劣化していた。特に、従来は、画像の属性に応じて、エッジ強調等の補正処理のON・OFFを切り替えており、遷移状態が存在しなかった。そのため、処理の切り替え部分で画像の劣化があった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、画像の補正処理をより高精度に行ない、画質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理装置であって、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動量を算出する変動量算出手段と、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動回数を算出する変動回数算出手段と、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段と、
前記設定手段を用いて前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正手段と、
を有し、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理方法であって、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動回数を算出する変動回数算出ステップと、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段を用いて、前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正ステップと、
を有し、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
画像処理装置が、該画像処理プログラムを実行することにより、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動回数を算出する変動回数算出ステップと、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段を用いて、前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正ステップと、
が実現され、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る記憶媒体は、上記画像処理プログラムをコンピュータが読取可能に記憶したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変動量と変動回数により補正強度を変えることができるため、画像補正処理により発生し得る弊害を低減でき、画像の補正処理をより高精度に行ない、画質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
<MFPの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るマルチファンクションプリンタ(以下、MFP)1の概観斜視図である。図1(a)は、MFP1のADF(オートドキュメントフィーダ)31部分を閉じた状態であり、図1(b)は、開いた状態である。
【0012】
このMFP1は、基本的に、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信してプリントするプリンタとしての機能及びスキャナとしての機能を有する。さらにMFP単体で動作する機能として、スキャナで読取った画像をプリンタで印刷するコピー機能、メモリカードなどの記憶媒体から画像データを読取って印刷する機能、或いはデジタルカメラからの画像データを受信して印刷する機能を備えている。
【0013】
図1において、MFP1はフラットベットスキャナなどのスキャニングユニット14、インクジェット式や電子写真式などによるプリントユニット13を備えている。また、表示パネル等のディスプレイユニット19や各種キースイッチ等を備えるオペレーションユニット15を備えている。更に、MFP1の背面にはPCと通信するためのUSBポート(不図示)が設けられ、PCとの通信が行われる。各種メモリカードからデータを読み出すためのカードスロットを含むカードインタフェイス22やデジタルカメラとデータ通信を行うためのカメラポートを含むカメラインタフェイス23が設けられている。MFP1は、他にも、自動で原稿を原稿台にセットするためのADF31などを備えている。
【0014】
図2は、MFP1の内部構成を示すブロック図である。図2において、CPU11は、MFP1が備える様々な機能を制御し、オペレーションユニット15の所定の操作に従い、ROM16に記憶された画像処理のプログラムを実行する。プログラムを実行することにより、CPU11が処理対象画素を選択したり、処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出したりできる。また、CPU11は、画像領域内に含まれる画素の信号値から、画像領域に関する変動量や変動回数や変動加速度を算出することもできる。ROM16には、画像処理に用いられる様々なテーブルや数式が格納されており、変動量や変動回数や変動加速度と様々な補正強度との対応関係を設定する設定手段として機能する。CCDを備えるスキャニングユニット14は、原稿画像を読取り、赤(R)、緑(G)および青(B)色のアナログ輝度データを出力する。なお、スキャニングユニット14は、CCDの代わりに密着型イメージセンサ(CIS)を備えてもよい。また、ADF31を備えれば、連続でオーダーシートを読取ることができ更に簡便である。
【0015】
また、カードインターフェイス22は、例えばディジタルスチルカメラ(Digital Still Camere 以下DSC)で撮影され、メモリカードなどに記録された画像データを、オペレーションユニット15に対する操作に従い読み込む。なお、カードインターフェイス22を介して読み込まれた画像データの色空間は、必要ならば、画像処理部12により、DSCの色空間(例えばYCbCr)から標準的なRGB色空間(例えばNTSC−RGBやsRGB)に変換される。また、そのヘッダ情報に基づき、読み込まれた画像データは、有効な画素数への解像度変換など、アプリケーションに必要な様々な処理が必要に応じて施される。また、カメラインターフェイス23は、DSCに直接接続して画像データを読み込むためのものである。
【0016】
画像処理部12においては、読取り信号値の変換、画像の補正・加工処理、輝度信号(RGB)から濃度信号(CMYK)への変換、スケーリング、ガンマ変換、誤差拡散等の画像処理等の画像処理が行われる。画像処理部12が行なう補正処理としては、エッジ強調処理、平滑化処理、置換処理、及び無彩色化処理などが含まれ、補正手段として機能する。画像処理部12での画像処理によって得られるデータは、RAM17に格納される。RAM17に格納された補正データが所定量に達すると、プリントユニット13による記録動作が実行される。
【0017】
不揮発性RAM18としては、バッテリバックアップされたSRAMなどを用いることができ、MFP1に固有のデータなどを記憶する。オペレーションユニット15は、記憶媒体に記憶された画像データを選択し、記録をスタートするためのフォトダイレクトプリントスタートキーを備え、オーダーシートをプリントさせるキー、オーダーシートを読み込ますキー等を備える。また、モノクロコピー時やカラーコピー時におけるコピースタートキー、コピー解像度や画質などのモードを指定するモードキー、コピー動作などを停止するためのストップキー、並びに、コピー数を入力するテンキーや登録キーなどを備えてもよい。CPU11は、これらキーの押下状態を検出し、その状態に応じて各部を制御する。
【0018】
ディスプレイユニット19は、ドットマトリクスタイプの液晶表示部(LCD)およびLCDドライバを備え、CPU11の制御に基づき各種表示を行う。また、記憶媒体に記録されていた画像データのサムネイルを表示する。プリントユニット13は、インクジェット方式のインクジェットヘッド、汎用ICなどによって構成され、CPU11の制御により、RAM17に格納されている記録データを読み出し、ハードコピーとしてプリント出力する。
【0019】
ドライブユニット21は、スキャニングユニット14およびプリントユニット13を動作させるため、給排紙ローラを駆動するステッピングモータ、ステッピングモータの駆動力を伝達するギヤ、および、ステッピングモータを制御するドライバ回路などを含む。
【0020】
センサユニット20は、記録紙幅センサ、記録紙有無センサ、原稿幅センサ、原稿有無センサおよび記録媒体検知センサなどを含む。CPU11は、このセンサユニット20から得られる情報に基づき、原稿および記録紙の状態を検知する。
【0021】
PCインターフェイス24はPCとのインターフェイスであり、MFP1はPCインターフェイス24を介してPCからのプリント、スキャンなどの動作を行う。コピー動作時は、スキャニングユニット14で読取った画像データをMFP内部でデータ処理し、プリントユニット13で印刷する。
【0022】
オペレーションユニット15により、コピー動作が指示されると、スキャニングユニット14は原稿台に置かれた原稿を読取る。読取られたデータは画像処理部12に送られ、画像処理が施された後、プリントユニット13に送られ印刷が行われる。
【0023】
<画像処理>
図3はコピー時に実行される画像処理のフローチャートである。以下、各ステップについて説明を記述する。スキャニングユニット14で読取られ、AD変換された画像データに対し、撮像素子のばらつきを補正するために、STEP301において、シェーディング補正が施される。
【0024】
その後、STEP302で、入力デバイス変換が行われる。これによりデバイス固有であった信号データが標準的な色空間領域へと変換される。標準的な色空間領域としては、IEC(国際電気標準会議;International Electrotechnical Commission)により定められたsRGBがある。また、Adobe Systems社により提唱されているAdobeRGBでもよい。変換方法は、3x3や3x9のマトリクスによる演算方式や、変換規則を記載したテーブルに基づいて決定するルックアップテーブル方式などが挙げられる。
【0025】
変換されたデータは、STEP303において、補正・加工の処理が施される。処理内容としては、読取りによるボケを補正するエッジ強調処理や、文字の判読性を向上させる文字加工処理、光照射による読取りで発生した裏写りを除去する処理などが挙げられる。 STEP304では、拡大縮小処理が実行され、ユーザにより変倍指定がされている場合や、2枚の原稿を一枚の紙に割り当てる割付けコピーなどで、所望の倍率に変換される。変換方法は、バイキュービックやニアレストネイバーなどの方法が一般的である。
【0026】
STEP305では、標準色な色空間上のデータを、出力デバイスに固有の信号データへと変換する。本実施の形態に係るMFPは、インクジェット方式であり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどのインク色データへの変換処理が実行される。この変換もSTEP302と同様の方式を用いればよい。
【0027】
さらに、STEP306において、記録可能なレベル数への変換が行われる。例えば、インクドットを打つ/打たないの2値で表現する場合であれば、誤差拡散などの量子化方法において、2値化すればよい。これによりプリンタが記録可能なデータ形式となり、それに基づいて記録動作が実行され、画像が形成される。
【0028】
<処理単位>
図4(a)は補正処理を実施する際の処理単位を説明する図である。図4(a)の○印の画素を注目画素(処理の対象となる画素)とすると、図4(a)の太線のように注目画素を含む7×7画素で構成される領域(7×7領域)を設定する。この設定した7×7領域内の画像信号を用いて注目画素に対する画像処理を実行する。注目画素の処理が実行された後は、例えば図4(b)の×印の画素のように注目画素に隣接する画素を次の注目画素と設定し、同様に7×7領域を設定して画像処理を実行する。以降、同様に順次注目画素を1画素ずつ移動し、その都度7×7領域を設定することによって対象の画素全てを補正する。
【0029】
次に処理単位が領域単位の場合を説明する。図4(a)の○印の画素に対して7×7領域を設定し、○印に対して設定する補正強度を7×7領域内の複数画素、例えば全画素に適用する。次の処理は図4(c)の△印の画素に対して7×7領域を設定することで○印に対する7×7領域と△印に対する7×7領域とが隣接するように処理単位を移動する。 ただし、処理単位を画素単位とした方がより高い精度で補正強度を設定できる為、本実施の形態は、処理単位を画素単位として説明する。
【0030】
図5は処理単位の移動フローを説明する図である。STEP501は処理対象設定である。START直後は、最初の処理対象を設定する。STEP505からSTEP501に戻った場合は、次の処理対象を設定する。
【0031】
STEP502は処理領域設定である。処理領域とは前記説明したように処理単位を含む複数画素(前記説明では7×7領域)で構成される領域である。
STEP503は補正強度設定である。処理単位に対する補正強度を設定する。
STEP504は補正実行である。STEP503で設定した補正強度を使って処理単位を補正する。
STEP505は最終補正対象判定である。処理単位が最後の処理単位であるか否かを判定する。最後の処理単位でなければ(NO)STEP501に戻る。最後の処理単位であれば(YES)ENDとなる。
【0032】
以下の実施の形態では処理領域を7×7領域として説明している。これはスキャニングユニット14で使っているCCDまたはCISの撮像素子1画素が読む原稿の画素範囲を6画素以内とするよう設計した為である。尚、6画素以内の設計と言っても、原稿台からの原稿の浮きや原稿の凹凸等によって、撮像素子に入射する原稿からの反射光は種々の影響を受ける。その為、実際には6画素を超える範囲を読み取る場合もある。以下の実施の形態において原稿を読み取った画像信号の説明図を複数示すが、これらの画像信号も必ずしも6画素以内の反射光とは限らない。
【0033】
図6は撮像素子1画素に入る原稿からの反射光範囲を簡易的に示している。本実施の形態で使用した撮像素子は、図6(a)に示すように撮像素子1画素に対して、原稿の7画素範囲から6画素以内の反射光が入射するよう設計している(前述したように場合によっては6画素を超える場合もある)。つまり、原稿の1画素の反射光は撮像素子7画素に影響している。これが背景技術で述べたエッジのボケを発生し、シャープ感を損なっている。以下の実施の形態はボケを低減することを目的の1つとしている。例えば後述の第2実施形態は注目画素を置換候補画素で置換してエッジを強調する。よって、注目画素に対応する原稿画素の影響が少ない画素領域から置換候補を選択するとエッジ強調の効果は高い。そこで最低限、原稿画像の1画素の影響を受けている領域は処理領域として確保した。だから、7×7領域を処理領域と設定している。エッジ強調の効果をより高くする為、7×7を超える領域を参照領域とすることも有効である。また、図6(b)に示すように撮像素子1画素に対して、原稿の3画素範囲から反射光が入射する設計とした場合は、処理領域を3×3領域のように小さく設定してもよい。このように参照領域は原稿画像1画素が影響する撮像素子の画素数や、スポット径、ボケ画素数、Modulation Transfer Function(MTF)等の撮像素子の性能に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
<言葉の定義>
以下に、本明細書中で用いられる言葉の定義について説明する。
変動量とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の大きさを表わす値である。本実施形態では、1画素の両側に隣接する2画素の輝度値の差分の絶対値(エッジ量)のうち、最大のものを変動量として説明するが、これに限定されるものではない。注目する画素の画像信号に関連する値の1次微分の絶対値等、変化の差分(大きさ)を表現する値、または注目する領域内の画像信号に関連する値の変化の差分(大きさ)を代表して表現する値であってもよい。
【0035】
変動回数とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の頻度を表わす値である。本実施形態では、画像領域内の1画素の両側に隣接する2画素の輝度値の差分を−1、0、1で3値化し、3値化データの増減頻度(符号変化数(ゼロ交差点数))を変動回数として説明するが、これに限定されるものではない。画像領域内の画像信号に関連する値の1次微分の零交差点数や空間周波数、2値化後の黒白の変化数等、画像信号に関連する値の変化の頻度を表現する値であると定義する。
【0036】
変動加速度とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の加速度を表わす値である。以下の実施の形態では画像領域内の輝度の差分からさらに差をとった値として説明するが、これに限定されるものではない。注目する領域内の画像信号に関連する値の2次微分等、変化の加速度を表現する値であればよい。
【0037】
彩度とは、以下の実施の形態では注目する画素または領域における各色の画像信号差の内、最大絶対値として説明するが、これに限定されるものではない。度軸からの距離を表現する値であると定義する。
【0038】
適応的に補正強度を設定するとは、定義した変動回数、変動量、変動加速度、彩度の夫々取り得る値領域の内、夫々少なくとも一部の値領域において、夫々の値毎に異なる補正強度を設定することであると定義する。
【0039】
尚、画像信号の取り得る範囲を0〜255を例に説明するが、画像信号の範囲はこれに限るものではなく、MFP、画像処理に適するよう設定すればよい。
【0040】
以下、補正強度設定について説明する。尚、画像信号の取り得る範囲を0〜255を例に説明するが、画像信号の範囲はこれに限るものではなく、MFP、画像処理に適するよう設定すればよい。
【0041】
本実施形態は補正強度をエッジ強度とし、補正処理をエッジ強調フィルタ処理とする。後述するエッジ強調フィルタによるエッジ強調量を変動回数と変動量に基づいて適応的に設定するエッジ強度によって補正する。以下は、エッジ強度設定と設定したエッジ強度の適用の説明である。
【0042】
図7は第1実施形態における補正強度設定のフローチャートを示しており、フローチャートのステップに沿って補正強度設定を説明する。
【0043】
<補正強度設定STEP701:処理領域設定>
RGBの多値の画像信号で構成される画像において、注目画素を中心とした横7画素、縦7画素で構成される7×7領域の処理領域を設定し、処理領域の各画素値から式(1)に従って輝度Lを算出し、Lの7×7領域の処理領域を生成する。
L = (R+2×G+B)/4 ・・・式(1)
尚、本実施の形態は、式(1)で算出した輝度Lを用いているが、別の輝度を適用してもよい。例えば、均等色空間L*a*b*のL*を輝度としてもよく、YCbCrのYを輝度としてもよい。図8(a1)は白背景中の黒縦線を横方向に読み取った際の輝度を示している。図8(a2)は白背景中の横方向に並んだ網点を横方向に読み取った際の輝度を示している。
【0044】
<補正強度設定STEP702:4方向抽出>
STEP701で生成したLの処理領域から図9に示すように横1方向、縦1方向、斜2方向の合計4方向の各7画素を抽出する。
【0045】
<補正強度設定STEP703:L差分算出>
STEP702で抽出した4方向のLから各方向5画素のLの差分Grdを図10と式(2)に示すように算出する。ここで、画素L(i)の前画素をL(i−1)と後画素をL(i+1)とする。
Grd(i) = L(i+1)−L(i−1) ・・・式(2)
尚、L差分の算出方法はこれに限らず、隣接同士の差分でもよく、前記説明した前後画素より更に離れた画素同士の差分でもよい。図8(b1)と図8(b2)は夫々図8(a1)と図8(a2)のLに対して式(2)を適用して求めたGrdを示している。
【0046】
<補正強度設定STEP704:エッジ方向判定>
STEP703で算出した4方向のGrdにおいて、注目画素の4方向のGrd絶対値を求める。4方向のGrd絶対値の内、最大のGrd絶対値である方向を注目画素のエッジ方向と判定する。
【0047】
<補正強度設定STEP705:変動量算出>
STEP704で判定したエッジ方向にならぶ7つの画素から、STEP703で5つのGrdを算出できる。その5つのGrdを比較し、その最大絶対値を注目画素の変動量(エッジ量)として算出する。変動量が大きい程強いエッジであり、変動量が弱い程平坦に近いことを示す。
【0048】
<補正強度設定STEP706:変動回数算出>
STEP703で算出した4方向のGrdから4方向合計の変動回数を算出する。図11(a)に示すようにGrdの符号が+から−又は−から+に変化する回数、図11(b)に示すようにGrdの符号が+から0そして次の画素で−又は−から0そして次の画素で+に変化する回数を注目画素の変動回数(零交差点数)として算出する。
【0049】
尚、第1実施形態では図11(c)に示すように複数画素の0を挟んで符号が変化する場合や図11(d)に示すように0にはなるが符号の変化がない場合には変動回数としてカウントしていない。複数画素の0を挟んだ場合や0にはなるが符合が変化しない場合は、太線の可能性があり、STEP708とSTEP1403で述べるように太線に対しては図11(a)や図11(b)の細線とは別強度を設定できる利点があるからである。
【0050】
また、図8に示すように文字は網点に比べて変動回数が少ない傾向であるが、原稿の濃度均一性やシェーディング精度によっては、図12(a)に示すように文字の場合もGrdに振幅の小さい変化が多くなる場合がある。この場合、変動回数が網点のように多くなり、後述の補正強度設定を実施すると網点に近いエッジ強度が設定されてしまう弊害が起こる。そこで、STEP705で算出した変動量が設定した閾値を超えるような比較的大きい場合は、小さいGrdを0に平滑化するとより精度の高いエッジ強度設定が可能である。具体的には、図12(b)に示すようにSTEP−S705で算出した変動量を閾値(エッジ閾値)と比較し、変動量がエッジ閾値を超える場合は、平滑化閾値を設定する。平滑化閾値以下のGrd絶対値の場合は、図12(c)に示すようにGrdを0として変動回数をカウントする。これによって、文字の変動回数を少なく抑えることができてエッジ強度設定の精度を高くできる。
【0051】
<補正強度設定STEP707:変動回数に基づくエッジ強度設定1>
STEP706で算出した変動回数に応じて適応的にエッジ強度Fz1を設定する。図13(a)はSTEP707におけるFz1設定を説明する図であり、横軸は変動回数、縦軸はFz1を示している。文字の可能性が高い第1閾値より小さい変動回数の場合は、エッジを強調する為にFz1を1に設定する。高線数でモアレ発生し易い網点の可能性が高い第2閾値より大きい変動回数の場合は、モアレを強調しない為にFz1を0に設定する。第1閾値以上且つ第2閾値以下の変動回数の場合は、変動回数=第1閾値のときFz1=1、変動回数=第2閾値のときFz1=0となるべく、変動回数に応じてFz1が漸次変化するように適応的に設定する。これにより、エッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。Fz1の設定は、具体的には図13(a)の参照や以下の式(3)によって適応的に行なわれる。
Fz1 = (第2閾値−変動回数)/(第2閾値−第1閾値) ・・・式(3)
【0052】
<補正強度設定STEP708:変動回数に基づくエッジ強度設定2>
STEP706で算出した変動回数に応じて適応的にフィルタ強度Fz2を設定する。図13(b)はSTEP708におけるFz2設定を説明する図であり、横軸は変動回数、縦軸はFz2を示しており、図13(a)と組み合わせたときに図13(c)となることを目的としている。STEP706で述べたように変動回数が0の場合は太線の可能性が高い。太線を後述するエッジ強調フィルタを用いてエッジ強調すると、太線の縁部が濃くなる縁取りが発生する。もし縁取りをなしにしたい場合は、図13(b)のように太線の可能性が高い第3閾値より小さい変動回数の場合は、エッジ強調を抑える為にFz2を0に設定する。細線の可能性が高い第4閾値より大きい変動回数の場合は、エッジ強調する為にFz2を1に設定する。第3閾値以上且つ第4閾値以下の変動回数の場合は、変動回数=第3閾値のときFz2=0、変動回数=第4閾値のときFz2=1となるべく、変動回数に応じてFz2が漸次変化するように適応的に設定する。これにより、フィルタによるエッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図13(b)の参照や以下の式(4)によって適応的に設定できる。
Fz2 = (変動回数−第3閾値)/(第4閾値−第3閾値) ・・・式(4)
Fz1×Fz2によって図13(c)のエッジ強度を実現できる。縁取りをありにしたい場合は、変動回数に関係なくFz2=1を設定すればよい。
【0053】
<補正強度設定STEP709:変動量に基づくエッジ強度設定>
STEP705で算出した変動量に応じて適応的にエッジ強度Feを設定する。図13(d)はSTEP709におけるFe設定を説明する図であり、横軸は変動量、縦軸はFeを示している。平坦の可能性が高い第5閾値より小さい変動量の場合は、小さい変動を強調して画像を荒らさない為にFe=0を設定する。エッジの可能性が高い第6閾値より大きい変動量の場合は、エッジ強調する為にFe=1を設定する。第5閾値以上且つ第6閾値以下の変動量の場合は、変動量=第5閾値のときFe=0から、変動量=第6閾値のときFe=1まで、変動量が変化するに連れてFeが漸次変化するように適応的に設定する。これにより、エッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図13(d)の参照や以下の式(5)によって適応的に設定できる。
Fe = (変動量−第5閾値)/(第6閾値−第5閾値) ・・・式(5)。
【0054】
図14は第1実施形態における補正処理のフローチャートを示しており、フローチャートのステップに沿って補正処理を説明する。
【0055】
<補正処理STEP1401:エッジ強調量算出>
STEP701で設定したRGBの7×7領域に対して、エッジ強調フィルタを掛けた際の注目画素値と掛ける前の注目画素値との差分(エッジ強調量)を各色毎に算出する。本実施の形態では、注目画素を中心として5×5エッジ強調フィルタを掛ける例で説明をするが、STEP701で設定した処理領域サイズ以下のフィルタサイズであればよく、フィルタ係数値も適宜設定すればよい。図15(a)は5×5エッジ強調フィルタのフィルタ係数の一例である。注目画素値をN0とし、図15(a)のフィルタを掛けた結果の注目画素値をN1とし、エッジ強調量をΔFとすると、ΔFは式(6)を使って算出できる。
ΔF = N1−N0 ・・・式(6)
また、注目画素のフィルタ係数を図15(b)のように、図15(a)の注目画素位置のフィルタ係数から図15(a)のフィルタ合計値を引いた値とすることで、図15(b)を適用するだけでΔFを算出することができる。
【0056】
<補正処理STEP1402:Fz1によるエッジ強調量補正>
STEP1401で算出したエッジ強調量ΔFをSTEP707で設定したフィルタ強度Fz1で補正する。補正したエッジ強調量ΔFz1は式(7)を使って算出する。
ΔFz1 = Fz1×ΔF ・・・式(7)
STEP1402によって、変動回数が少ない文字に対しては比較的強くエッジ強調し、変動回数が多い網点に対しては比較的弱くエッジ強調を施すことが可能で、文字のシャープ感を増加することとモアレを強調しないことを両立することができる。
【0057】
<補正処理STEP1403:Fz2によるエッジ強調量補正>
STEP1402で算出したエッジ強調量ΔFz1をSTEP708で設定したフィルタ強度Fz2で補正する。補正したエッジ強調量ΔFz2は式(8)を使って算出する。
ΔFz2 = Fz2×ΔFz1 ・・・式(8)
図13(b)のようにFz2を設定した場合、STEP1403によって、太線は縁取りがでないようエッジ強調が施され、細線は太線より強くエッジ強調してシャープ感の増加と黒文字の濃度増加を施すことができる。
【0058】
<補正処理STEP1404:Feによるエッジ強調量補正>
STEP1403で算出したエッジ強調量ΔFz2をSTEP709で設定したフィルタ強度Feで補正する。補正したエッジ強調量ΔFeは式(9)を使って算出する。
ΔFe = Fe×ΔFz2 ・・・式(9)
STEP1404によって、文字のようなエッジ部は比較的強くエッジ強調し、背景や写真のような平坦部は比較的弱くエッジ強調を施すことができる。これにより文字のシャープ感増加とモアレを強調しないこと、写真を荒らさないことを両立できる。
【0059】
<補正処理STEP1405:エッジ強調フィルタ処理完了>
STEP1404で算出したエッジ強調量ΔFeを式(10)に示すように注目画素値N0に加算することによって、エッジ強調フィルタ処理画素値Neを算出する。
Ne = N0+ΔFe ・・・式(10)
尚、Neを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0060】
<第1実施形態による効果>
図16は第1実施形態により設定した適応的な補正強度を変動回数と変動量に対して示している。尚、ここで示す補正強度はFz1とFz2とFeを全て適用した際の強度(Fz1×Fz2×Fe)である。図16(a)は太線に縁取りを出す場合の設定であり、図16(b)は太線に縁取りを出さない場合の設定を示しており、濃度が高い程補正強度が強いことを示している。従来、変動回数に対しては適応的に補正強度を設定できないことが課題であったが、図16に示す通り変動回数に対しても適応的に補正強度を設定できる効果がある。
【0061】
また、変動量のみならず変動回数によって補正強度を変えることができる為、網点に対するエッジ強調によるモアレ弊害を低減できる。さらに、変動回数に応じて適応的に補正強度を設定できる為、変動回数による処理の切り換え弊害を低減できる。また、変動回数と変動量に応じて適応的に補正強度を設定できる為、変動回数と変動量による処理の切り換え弊害を低減できる。
【0062】
図17は600dpiの解像度で原稿を読み取った画像のエッジ強調前と後を示している。図17(a1)と(a2)は7ptサイズの数字5の一部であり、夫々エッジ強調前と後を示している。また、図18(a1)と(a2)は夫々図17(a1)と(a2)に対応しており、図17(a1)と(a2)中に示した16画素の画像信号を示している。
【0063】
図17(b1)と(b2)は150線スクリーン角30°の網点で50%濃度を表現しており、夫々エッジ強調前と後を示している。また、図18(b1)と(b2)は夫々図17(b1)と(b2)に対応しており、図17(b1)と(b2)中に示した16画素の画像信号を示している。
【0064】
図17(c1)と(c2)は人間の目の一部を表現した写真であり、夫々エッジ強調前と後を示している。また、図18(c1)と(c2)は夫々図17(c1)と(c2)に対応しており、図17(c1)と(c2)中に示した16画素の画像信号を示している。
【0065】
図17と図18に示すように文字エッジの画像信号の強調と、網点エッジの画像信号を文字エッジ程は強調しないことと、写真エッジの画像信号を文字エッジ程は強調しないこととを両立することができる。
【0066】
(第2実施形態)
第1実施形態はフィルタ処理によるエッジ強調を適応的な強度で実施する例を説明したが、第2実施形態ではエッジ強調と平滑化を適応的な強度で実施する例を説明する。
【0067】
第1実施形態のSTEP707において、図13(a)のエッジ強度Fz1ではなく、図19に示すエッジ強度Fz1を用いる。図19のFz1は−の強度も持つことが特徴である。強度が+の場合はエッジを強調する効果を持つが、強度が−の場合はエッジを弱める(平滑化する)効果を持つ。図19に示すように網点の可能性が高い変動回数(第2a閾値より大きい変動回数)に対して−の強度を設定することにより、網点を平滑化することができる。すなわち、第1実施形態では網点によるモアレを強調しないようにしていたが、第2実施形態ではモアレを低減することができる。
【0068】
また、以下に平滑化する別の例を説明する。図20は第2実施形態における補正強度設定のフローチャートである。尚、一部の処理は、図7を用いて説明した処理と同様であるので、同じ処理には同じ符号を付し、説明を割愛する。
【0069】
<補正強度設定STEP2010:変動回数に基づく平滑化強度設定>
STEP706で算出した変動回数に応じて適応的に平滑化強度Azを設定する。図21はSTEP2010におけるAz設定を説明する図であり、横軸は変動回数、縦軸はFz3を示している。文字の可能性が高い第7閾値より小さい変動回数の場合は、平滑化しない為にAzを0に設定する。網点の可能性が高い第8閾値より大きい変動回数の場合は、平滑化する為にAzを1に設定する。第7閾値以上且つ第8閾値以下の変動回数の場合は、処理の切り換えを目立ち難くする為に変動回数=第7閾値のときAz=0、変動回数=第8閾値のときAz=1となるように変動回数毎に漸次変化するAzを適応的に設定する。具体的には図16の参照や以下の式(11)によって適応的に設定できる。
Az = (第8閾値−変動回数)/(第8閾値−第7閾値) ・・・式(11)
【0070】
図22は第2実施形態における補正処理のフローチャートである。ここで、一部の処理は、第1実施形態の図14における一部の処理と同様であるため、同じ処理については同じ符号を付して説明を割愛する。
【0071】
<補正処理STEP2206:平滑化量算出>
STEP701で設定したRGBの7×7領域のブロックに対して、平滑化フィルタを掛けた際の注目画素値の変化量(平滑化量)を各色毎に算出する。本実施の形態では、注目画素を中心として5×5平滑化フィルタを掛ける例で説明をするが、STEP701で設定した処理領域サイズ以下のフィルタサイズであればよく、フィルタ係数値も適宜設定すればよい。図23(a)は5×5平滑化フィルタのフィルタ係数の一例である。注目画素値をN0とし、図23(a)のフィルタを掛けた結果の注目画素値をN2とし、平滑化量をΔAとすると、ΔAは式(12)を使って算出できる。
ΔA = N2−N0 ・・・式(12)
また、注目画素のフィルタ係数を図18(b)のように、図18(a)の注目画素位置のフィルタ係数から図18(a)のフィルタ合計値を引いた値とすることで、図18(b)を適用するだけでΔAを算出することができる。
【0072】
<補正処理STEP2207:Fz3による平滑化量補正>
STEP2206で算出した平滑化量ΔAをSTEP2010で設定した平滑化強度Azで補正する。補正した平滑化量ΔAzは式(13)を使って算出する。
ΔAz = Az×ΔA ・・・式(13)
STEP2207によって、変動回数が少ない文字に対しては比較的弱く平滑化することでシャープ感を損なわず、変動回数が多い網点に対しては比較的強く平滑化を施してモアレ低減できる。
【0073】
<補正処理STEP2208:平滑化フィルタ処理完了>
STEP2207で算出した平滑化量ΔAzを式(14)に示すようにSTEP1405で算出した注目画素値のエッジ強調フィルタ処理画素値Neに加算することによって、フィルタ処理画素値Nfを算出する。
Nf = Ne+ΔAz ・・・式(14)
尚、Nfを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0074】
<第2実施形態による効果>
第1実施形態は、変動回数が比較的多い網点に対してエッジ強調を抑えることができる為、モアレ強調しない効果がある。しかし、画像補正処理前に既にモアレが発生している場合、第1実施形態の実施によってモアレをそれ以上悪化することはなくても、良化することは難しい。第2実施形態は変動回数が比較的多い網点に対して平滑化を強く施すことができる為、第1実施形態に比べてモアレを低減する効果がある。また、変動回数が少ない文字に対しては平滑化を弱くできる為、文字のシャープ感を損なうことはない。従来のように網点と文字に像域分離して、網点に対して平滑化を実施し、文字は平滑化しない処理の場合、網点の一部を網点判定、他部を文字判定してしまうと、平滑化処理の切り換えが画像上に目立っていた。第2実施形態は変動回数に応じて適応的に漸次変化する平滑化強度を設定できる為、従来課題である平滑化処理の切り換えを目立たなくすることができる。
【0075】
(第3実施形態)
第1実施形態はフィルタ処理によるエッジ強調を適応的な強度で実施する例を説明した。図24(a)は白の背景中に黒の縦直線が描かれた原稿を白の背景から黒の縦直線にかけて読み取った画像信号Gの値を示している。ここで、図24(a)に示す値と同値が画像の縦方向に並んでいる場合、Fz1、Fz2、Fe全て1の強度で図15のフィルタを使って第1実施形態を実施すると、図24(a)の画像信号が図24(b)となる。図24(b)は図24(a)に比べてエッジが強調されるが、図24(c)のようにエッジ中に中間値がない状態ではない。第3実施形態では第1実施形態のエッジ強調に加え、置換を適応的な強度で実施して図24(c)に近づけることで更にエッジ強調する例を説明する。
【0076】
図25は第3実施形態の補正強度設定のフローチャートである。ここで、一部の処理は、第1実施形態の図7における一部の処理と同様であるため、同じ処理については同じ符号を付して説明を割愛する。また、第2実施形態と組み合わせてもよい。
【0077】
<補正強度設定STEP2510:最大最小輝度位置判定>
STEP704で判定したエッジ方向について、STEP702で抽出した4方向の内、エッジ方向のLの7画素から最大Lと最小Lの画素位置を判定する。
【0078】
<補正強度設定STEP2511:変動加速度算出>
STEP704で判定したエッジ方向について、STEP703で算出したエッジ方向のGrdから3画素の変動加速度Lapを算出する。変動加速度の算出方法は式(15)である。但し、画素Grd(i)の前画素をGrd(i−1)と後画素Grd(i+1)とする。図8(c1)と図8(c2)は夫々図8(b1)と図8(b2)のGrdに対して式(15)を適用して求めたLapを示している。
Lap(i) = Grd(i+1) − Grd(i−1) ・・・式(15)
尚、変動加速度の算出方法はこれに限らず、Grdの隣接同士の差分でもよい。
【0079】
<補正強度設定STEP2512:置換画素位置判定>
STEP2510で判定した最大Lと最小Lの画素位置と、STEP2511で算出した変動加速度Lapから置換画素位置を判定する。図8のようにLapの符号が+の場合は注目画素のLは最大Lよりも最小Lに値の大きさが近く、Lapの符号が−の場合は注目画素のLは最小Lよりも最大Lに値の大きさが近い傾向がある。そこで、表1に示すようにLapの符号に対して置換画素位置を判定し、置換すれば図24(c)を実現することができる。第3実施形態では表1のように置換画素位置を判定するが、注目画素のLapが0となるエッジ中心の扱いについては表1に限るものではなく、注目画素のLapが0であれば、最大Lの画素位置にしてもよいし、また逆に最小Lの画素位置にしてもよい。
【0080】
【表1】

【0081】
<補正強度設定STEP2513:変動加速度絶対値に基づく置換強度設定>
STEP2511で算出した変動加速度の絶対値に応じて適応的に置換強度Clを設定する。Clを変動加速度の絶対値によらず、Cl=1に設定することで、図24(c)を得ることができる。ただ、常にCl=1とするとジャギーが目立つ場合がある。そこで、ここではジャギーを抑えつつ、図24(b)よりもエッジを強調できる置換例を説明する。
【0082】
図26(a)はSTEP2513におけるCl設定を説明する図であり、横軸は変動加速度絶対値、縦軸はClを示している。エッジ中心付近である第9閾値より小さい変動加速度の場合は、置換しない為にClを0に設定する。エッジ中心付近を置換しないように設定するのはジャギー発生を目立たなくする目的である。エッジ中心から離れた第10閾値より大きい変動加速度絶対値の場合は、置換する為にClを1に設定する。第9閾値以上且つ第10閾値以下の変動加速度分絶対値の場合は、変動加速度絶対値=第9閾値のときCl=0、変動加速度絶対値=第9閾値のときCl=1となるように変動加速度絶対値毎に漸次変化するClを適応的に設定する。これにより、処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図26(a)の参照や以下の式(16)によって適応的に設定できる。
Cl = (変動加速度絶対値−第9閾値)/(第10閾値−第9閾値)・・・式(16)
【0083】
<補正強度設定STEP2514:変動回数に基づく置換強度設定>
STEP706で算出した変動回数に応じて適応的に置換強度Czを設定する。第11閾値と第12閾値を使い、STEP707と同様に図26(b)の特性でCzを適応的に設定する。変動回数が第11閾値より小さい太線の場合はCz=1、第12閾値より大きい細線や網点の場合はCz=0、第11閾値以上且つ第12閾値以下の場合は式(17)によって適応的に設定できる。
Cz = (第12閾値−変動回数)/(第12閾値−第11閾値) ・・・式(17)
【0084】
<補正強度設定STEP2515:変動量に基づく置換強度設定>
STEP705で算出した変動量に応じて適応的に置換強度Ceを設定する。第13閾値と第14閾値を使い、STEP709と同様に図26(c)の特性でCeを適応的に設定する。変動量が第13閾値より小さいの場合はCe=0、第14閾値より大きい場合はCe=1、第13閾値以上且つ第14閾値以下の場合は式(18)によって適応的に設定できる。
Ce = (変動量−第13閾値)/(第14閾値−第13閾値) ・・・式(18)
【0085】
図27は第3実施形態の補正処理のフローチャートである。図27のSTEP2701〜STEP2705は、第1実施形態で既に説明した図14のSTEP1401〜STEP1405と夫々同じである為、説明は省略する。第1実施形態と異なるSTEPについて説明する。
【0086】
<補正処理STEP2706:置換量算出>
STEP2512で判定した置換画素位置の画素値を用いて置換量を算出する。STEP701で設定したRGBの7×7領域からSTEP2512で判定した置換画素位置のRGB値を抽出する。注目画素値をN0とし、置換画素位置の画素値をC0とし、置換量をΔCとすると、ΔCは式(19)を使って算出できる。
ΔC = C0−N0 ・・・式(19)
【0087】
<補正処理STEP2707:Clによる置換量補正>
STEP2706で算出した置換量ΔCをSTEP2513で設定した置換強度Clで補正する。補正した置換量ΔClは式(20)を使って算出する。
ΔCl = Cl×ΔC ・・・式(20)
STEP2707によって、ジャギー発生を抑えた置換が施される。
【0088】
<補正処理STEP2708:Czによる置換量補正>
STEP2707で算出した置換量ΔClをSTEP2514で設定した置換強度Czで補正する。補正した置換量ΔCzは式(21)を使って算出する。
ΔCz = Cz×ΔCl ・・・式(21)
STEP2708によって、太線は置換を強くし、細線は置換を弱くしてジャギー発生を抑えた置換を施すことができる。
【0089】
<補正処理STEP2709:Ceによる置換量補正>
STEP2708で算出した置換量ΔCzをSTEP2515で設定した置換強度Ceで補正する。補正した置換量ΔCeは式(22)を使って算出する。
ΔCe = Ce×ΔCz ・・・式(22)
STEP2709によって、文字等のエッジ部は比較的強く置換することでシャープ感を向上し、平坦部は比較的弱く置換することで荒れを防止する。
【0090】
<補正処理STEP2710:置換処理完了>
STEP2709で算出した置換量ΔCeを式(23)に示すように注目画素のエッジ強調フィルタ値Neに加算することによって、フィルタと置換によるエッジ強調した注目画素値Ncを算出する。
Nc = Ne+ΔCe ・・・式(23)
尚、Ncを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0091】
以上の第3実施形態による効果を説明する。第1実施形態のエッジ強調フィルタによるエッジ強調に加え、第3実施形態の置換を使ったエッジ強調を実施することで、第1実施形態よりも更にシャープ感を増す効果が得られる。また、第1実施形態の縁どりが出ないようにした場合は、太線のエッジ強調が弱くなるが、第3実施形態によって縁取りが出ないことは維持したまま第1実施形態よりもエッジを強調する効果がある。また、変動回数が比較的多い網点に対しては置換を弱くできる為、モアレを強調することもない。さらに、変動量が比較的小さい写真に対しては置換を弱くできる為、写真を荒らすこともない。第3実施形態は変動加速度、変動回数、変動量に応じて適応的に置換強度を設定できる為、従来技術の文字と網点の像域分離を使って抽出した文字部に置換を適応することに比べて、置換処理の切り換えを画像上目立たなくすることができる。
【0092】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では原稿を読み取った際に発生するボケとモアレを改善する為に、シャープ感を向上するエッジ強調処理とモアレを低減する平滑化処理を説明した。ただ、原稿を読み取った際の別の課題もある。例えば黒文字を読み取った際にRとGとBが必ずしも同じ値を有しないために、印刷結果として黒文字の黒濃度低下とやや彩度増加が発生する。これは黒文字の品位を劣化していた。本実施の形態は黒を読み取ったRとGとBの値をより近くする処理について説明する。また、RとGとBの値をより近くする処理を無彩色化処理と呼び、無彩色化処理の強度を無彩色化強度と呼ぶ。無彩色化強度についても第1〜第3実施形態と同様に適応的に設定することを説明する。
【0093】
図28は第4実施形態の補正強度設定のフローチャートである。ここで、一部の処理は、第3実施形態の図25における一部の処理と同様であるため、同じ処理については同じ符号を付して説明を割愛する。ここでは、第3実施形態に第4実施形態を付け加えたフローであるが、第1実施形態や第2実施形態に付け加えたフローであってもよい。第3実施形態と異なるSTEPについて説明する。
【0094】
<補正強度設定STEP2816:彩度算出>
STEP701で設定したRGB7×7領域の注目画素に対して彩度を算出する。注目画素を中心とする3×3領域の各色平均値を算出する。R、G、Bそれぞれの平均値をAR、AG、ABとし、|AR−AG|、|AG−AB|、|AB−AR|の内、最大の値を彩度として算出する。尚、彩度算出はこれに限ったものではない。ここでは3×3領域の平均から求めたが、STEP701で設定した処理領域サイズ内の領域から求めればよい。また、色空間をRGBで求めたが、ブロックを輝度色差空間に変換して色差成分を使って輝度軸からの距離として求めてもよい。更に、第3実施形態で求めたNcを使ってエッジ強調や平滑化処理を施した後の値から求めてもよい。
【0095】
<補正強度設定STEP2817:彩度に基づく無彩色化強度設定>
STEP2816で算出した彩度に応じて適応的に無彩色化強度Ksを設定する。図29(a)はSTEP2816におけるKs設定を説明する図であり、横軸は彩度、縦軸はKsを示している。輝度軸付近である第15閾値より小さい彩度の場合は、無彩色化する為にKsを1に設定する。輝度軸付近を無彩色化するのは、輝度軸に近い為、原稿は無彩色に近い可能性が高いと判断できるからである。輝度軸から離れた第16閾値より大きい彩度の場合は、無彩色化しない為にKsを0に設定する。これはカラーの可能性が高いからである。第15閾値以上且つ第16閾値以下の彩度の場合は、処理の切り換えを目立ち難くする為に彩度=第15閾値のときKs=1、彩度=第16閾値のときKs=0となるように彩度毎に漸次変化するKsを適応的に設定する。具体的には図24(a)の参照や以下の式(24)によって適応的に設定できる。
Ks = (第16閾値−彩度)/(第16閾値−第15閾値) ・・・式(24)
【0096】
<補正強度設定STEP2818:変動回数に基づく無彩色化強度設定>
STEP706で算出した変動回数に応じて適応的に無彩色化強度Kzを設定する。第17閾値と第18閾値を使い、STEP2507と同様に図29(b)の特性でKzを適応的に設定する。変動回数が第17閾値より小さいの場合はKz=1、第18閾値より大きい場合はKz=0、第17閾値以上且つ第18閾値以下の場合は式(25)によって適応的に設定できる。
Kz = (第18閾値−変動回数)/(第18閾値−第17閾値) ・・・式(25)
【0097】
<補正強度設定STEP2819:変動量に基づく無彩色化強度設定>
STEP705で算出した変動量に応じて適応的に無彩色化強度Keを設定する。第19閾値と第20閾値を使い、STEP2509と同様に図29(c)の特性でKeを適応的に設定する。変動量が第19閾値より小さいの場合はKe=0、第20閾値より大きい場合はKe=1、第19閾値以上且つ第20閾値以下の場合は式(26)によって適応的に設定できる。
Ke = (変動量−第19閾値)/(第20閾値−第19閾値) ・・・式(26)
【0098】
図30は第4実施形態の補正処理のフローチャートである。ここで、一部の処理は、第3実施形態の図27における一部の処理と同様であるため、同じ処理については同じ符号を付して説明を割愛する。
【0099】
<補正処理STEP3011:無彩色化量算出>
STEP2710で算出したNcを使って、式(27)から無彩色化量ΔKを算出する。G成分のNcをNcGとし、RまたはB成分のNcをNcPとする。
ΔK = NcG−NcP ・・・式(27)
【0100】
<補正処理STEP3012:Ksによる無彩色化量補正>
STEP3011で算出した無彩色化量ΔKをSTEP2817で設定した無彩色化強度Ksで補正する。補正した無彩色化量ΔKsは式(28)を使って算出する。
ΔKs = Ks×ΔK ・・・式(28)
STEP3012によって、輝度軸付近の画像信号をより輝度軸に近づけることが可能である。
【0101】
<補正処理STEP3013:Kzによる無彩色化量補正>
STEP3012で算出した無彩色化量ΔKsをSTEP2818で設定した無彩色化強度Kzで補正する。補正した無彩色化量ΔKzは式(29)を使って算出する。
ΔKz = Kz×ΔKs ・・・式(29)
STEP3013によって、変動回数が少ない文字に対しては無彩色化を比較的強くして文字を黒く、変動回数が多い網点や写真に対しては無彩色化を比較的弱くして色味の変化を抑えることができる。
【0102】
<補正処理STEP3014:Keによる無彩色化量補正>
STEP3013で算出した無彩色化量ΔKzをSTEP2819で設定した無彩色化強度Keで補正する。補正した無彩色化量ΔKeは式(30)を使って算出する。
ΔKe = Ke×ΔKz ・・・式(30)
STEP3014によって、文字のようなエッジ部は無彩色化を強くして文字を黒くし、写真のようにエッジが比較的弱い画像は無彩色化を弱くして色味の変化を抑えることができる。
【0103】
<補正処理STEP3015:無彩色化処理完了>
STPE3014で算出した無彩色化量ΔKeを式(31)に示すようにフィルタと置換によってエッジ強調した注目画素値Ncに加算することによって、フィルタ処理と置換処理と無彩色化処理した注目画素値Nkを算出する。
Nk = Nc+ΔKe ・・・式(31)
尚、Nkを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0104】
<第4実施形態による効果>
第1〜第3実施形態によってシャープ感を増す効果が得られる。しかし、各色の画像信号が同値に近づけて黒文字を黒々とした印象にすることはできない。第4実施形態は彩度に応じて適応的に無彩色化できる為、輝度軸に近い画素値を持つ黒文字をより黒々とした品位にする効果を持つ。また、変動回数と変動量に応じて無彩色化強度を変更できる為、文字に特化して無彩色化し、網点や写真の色味を変えないようにすることもできる。第4実施形態は、彩度、変動回数、変動量に応じて無彩色化量を設定できる為、従来の文字且つ無彩色を像域分離して無彩色化を適用するのに比べて、無彩色化処理の切り換えを画像上目立たなくすることができる。
【0105】
(第5実施形態)
第1〜第4実施形態ではエッジ強調や平滑化、無彩色化を適応的に補正することを説明した。ここでは、第1〜第4実施形態を実施した画像信号に対して図31を適用する例を説明する。図31は横軸を入力画像信号値、縦軸を出力画像信号値としている。第1〜第4実施形態を実施した画像信号を図31の入力画像信号として出力画像信号を求めることによって、図31の適用が可能である。図31の画像信号が小さい程暗く、大きい程明るいことを表現しているとすると、図31の適用によって、黒文字部の画像信号はより黒く、白背景部の画像信号はより白くすることができる。以上により、文字部と背景部とのコントラストを増加できる為、文字のシャープ感を更に増す効果がある。図31の画像信号をRGBとし、RGB各色に適用してもよいし、画像信号をLとしてLに適用してもよい。また、図31の画像信号をRGBとした場合、各色毎に入出力カーブを変更してもよい。また、図31の入出力カーブに限らず、適宜設定すればよい。
【0106】
一方、第1〜第4実施形態では変動回数と変動量、その他変動加速度や彩度を使って適応的に補正強度を決定したが、補正強度を像域に置き換えれば、変動回数及び変動量に応じて適応的に像域分離する効果を持つ。例えば、FzとFeの積が大きい程、より文字の可能性が高い画素と判定でき、小さい程より網点や写真の可能性が高い画素と判定できる。また、変動加速度や彩度も使うことで、エッジ中心への近さ、輝度軸への近さについても判定が可能で、像域をより詳細に分離できる効果がある。
【0107】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0108】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0109】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0110】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクがある。また、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0111】
その他、クライアントPCのブラウザを用いてインターネットサイトに接続し、本発明に係るプログラムそのもの、もしくは更に自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードするという利用方法もある。また、本発明に係るプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。 また、本発明に係るプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布してもよい。所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0112】
また、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0113】
さらに、PCの機能拡張ユニットに備わるメモリに本発明に係るプログラムが書き込まれ、そのプログラムに基づき、その機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行なう場合も、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】MFPの説明図である。
【図2】MFPの制御説明図である。
【図3】MFPの画像処理のフローチャートである。
【図4】処理単位の説明図である。
【図5】処理単位の移動のフローチャートである。
【図6】撮像素子の読取範囲の説明図である。
【図7】第1実施形態の補正強度設定のフローチャートである。
【図8】輝度と1次微分と2次微分の説明図である。
【図9】4方向抽出の説明図である。
【図10】L差分の説明図である。
【図11】変動回数の説明図である。
【図12】変動回数補正の説明図である。
【図13】エッジ強度設定の説明図である。
【図14】第1実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図15】エッジ強調フィルタ係数の説明図である。
【図16】設定したエッジ強度の説明図である。
【図17】エッジ強調前後の画像の説明図である。
【図18】エッジ強調前後の画像信号の説明図である。
【図19】平滑化を含むエッジ強度設定の説明図である。
【図20】第2実施形態の補正強度設定のフローチャートである。
【図21】平滑化強度設定の説明図である。
【図22】第2実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図23】平滑化フィルタ係数の説明図である。
【図24】エッジ強調の説明図である。
【図25】第3実施形態の補正強度設定のフローチャートである。
【図26】置換強度設定の説明図である。
【図27】第3実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図28】第4実施形態の補正強度設定のフローチャートである。
【図29】黒化強度設定の説明図である。
【図30】第4実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図31】黒つぶしと白とばしの説明図である。
【符号の説明】
【0115】
1 MFP
31 オートドキュメントフィーダ
13 プリントユニット
14 スキャニングユニット
15 オペレーションパネル
19 ディスプレイパネル
42 カードスロット
43 カメラポート
11 CPU
12 画像処理部
16 ROM
17 RAM
18 不揮発性RAM
19 ディスプレイユニット
20 センサユニット
21 ドライブユニット
22 カードインターフェイス
23 カメラインターフェイス
24 PCインターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理装置であって、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動量を算出する変動量算出手段と、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記処理対象画素に対する変動回数を算出する変動回数算出手段と、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段と、
前記設定手段を用いて前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正手段と、
を有し、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記変動回数が取り得る値の内の少なくとも一部の範囲において、前記変動回数に応じて補正強度が漸次変化するように対応関係を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記変動量が取り得る値の内の少なくとも一部の範囲において、前記変動量に応じて補正強度が漸次変化するように対応関係を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
前記変動回数が第1閾値より小さい場合に前記補正強度を最大値に設定し、
前記変動回数が前記第1閾値より大きい第2閾値より更に大きい場合に、前記補正強度を最小値に設定し、
前記変動回数が前記第1閾値から前記第2閾値まで変化するにつれて、前記補正強度が前記最大値から前記最小値へ漸次変化するように設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定手段は、
前記変動量が第3閾値より小さい場合に前記補正強度を最小値に設定し、
前記変動量が前記第3閾値より大きい第4閾値より更に大きい場合に、前記補正強度を最大値に設定し、
前記変動量が前記第3閾値から前記第4閾値まで変化するにつれて、前記補正強度が前記最小値から前記最大値へ漸次変化するように設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変動量算出手段は、前記画像領域内のエッジ方向上に並ぶ複数画素の信号値から前記変動量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記変動回数算出手段は、前記画像領域内のエッジ方向上に並ぶ画素の信号値から前記変動回数を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記変動量算出手段は、前記画像領域内において処理対象画素を含む複数方向の画素列の信号値の差分を比較し、該差分が最大の方向を前記エッジ方向と定義することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記変動量算出手段は、前記画像領域内のエッジ方向上に並ぶ複数画素の信号値の一次微分値の最大絶対値を前記変動量として算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記最大値と前記最小値の符号が異なることを特徴とする請求項4または5に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、エッジ強調処理、平滑化処理、置換処理、及び無彩色化処理のうち、少なくとも一つの処理を補正処理として行ない、
前記設定手段は、前記補正強度として、エッジ強調量、平滑化量、置換量、及び無彩色化量の内少なくとも1つを設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記設定手段は、前記変動回数と、第1補正強度及び第2補正強度との対応関係を設定し、かつ、前記変動量と、第3補正強度との対応関係を設定し、
前記補正手段は、前記処理対象画素を前記第1、第2、第3補正強度でフィルタ処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記設定手段は、
前記変動回数が第5閾値より小さい場合に前記第1補正強度を最大値に設定し、
前記変動回数が前記第5閾値より大きい第6閾値より更に大きい場合に、前記第1補正強度を最小値に設定し、
前記変動回数が前記第5閾値から前記第6閾値まで変化するにつれて、前記第1補正強度が前記最大値から前記最小値へ漸次変化するように設定し、
前記変動回数が第7閾値より小さい場合に前記第2補正強度を最小値に設定し、
前記変動回数が前記第7閾値より大きい第8閾値より更に大きい場合に、前記第2補正強度を最大値に設定し、
前記変動回数が前記第7閾値から前記第8閾値まで変化するにつれて、前記第2補正強度が前記最小値から前記最大値へ漸次変化するように設定することを特徴とする請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域に関する変動加速度を算出する変動加速度算出手段を更に有し、
前記設定手段は、
前記変動加速度と第4補正強度との対応関係を設定し、
前記変動回数と第5補正強度との対応関係を設定し、
前記変動量と第6補正強度との対応関係を設定し、
前記補正手段は、前記処理対象画素を前記第4、第5、第6補正強度で置換処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記設定手段は、
前記変動加速度が第9閾値より小さい場合に前記第4補正強度を最小値に設定し、
前記変動加速度が前記第9閾値より大きい第10閾値より更に大きい場合に、前記第4補正強度を最大値に設定し、
前記変動加速度が前記第9閾値から前記第10閾値まで変化するにつれて、前記第4補正強度が前記最小値から前記最大値へ漸次変化するように設定することを特徴とする請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域に関する彩度を算出する変動加速度算出手段を更に有し、
前記設定手段は、
前記彩度と第7補正強度との対応関係を設定し、
前記変動回数と第8補正強度との対応関係を設定し、
前記変動量と第9補正強度との対応関係を設定し、
前記補正手段は、前記処理対象画素を前記第7、第8、第9補正強度で置換処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記設定手段は、
前記彩度が第11閾値より小さい場合に前記第7補正強度を最大値に設定し、
前記彩度が前記第11閾値より大きい第12閾値より更に大きい場合に、前記第7補正強度を最小値に設定し、
前記彩度が前記第11閾値から前記第12閾値まで変化するにつれて、前記第7補正強度が前記最大値から前記最小値へ漸次変化するように設定することを特徴とする請求項16に記載の画像処理装置。
【請求項18】
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理方法であって、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域に関する変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域における変動回数を算出する変動回数算出ステップと、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段を用いて、前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正ステップと、
を有し、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
処理の対象となる処理対象画素を含む画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
画像処理装置が、該画像処理プログラムを実行することにより、
前記処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出する抽出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域に関する変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記画像領域内に含まれる画素の信号値から、前記画像領域における変動回数を算出する変動回数算出ステップと、
前記変動回数及び前記変動量と、補正強度との対応関係を設定する設定手段を用いて、前記変動回数及び前記変動量から前記補正強度を求め、前記処理対象画素の信号値に対して、求めた前記補正強度で補正処理を加える補正ステップと、
が実現され、
前記設定手段は、異なる前記変動回数又は前記変動量に対し、補正強度が漸次変化するように前記対応関係を設定することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の画像処理プログラムをコンピュータが読取可能に記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−11268(P2008−11268A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180378(P2006−180378)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】