説明

画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】撮像された画像を最適な鮮やかさで補正することができるようにする。
【解決手段】デジタルカメラ(1)の画像処理部(7)は、撮像画像を構成する各画素についてHSV色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から色相重み付けヒストグラムを取得し、予め設定された所定の条件を満たす固定色相ゲインテーブルと色相重み付けヒストグラムとを積算して、各色の最大ゲイン値を取得し、最大ゲイン値で各色の彩度を補正する。ヒストグラムでの操作でよいため、代表色の選定を行わずに、ヒストグラム情報である色相重み付けヒストグラムをそのままゲイン量として扱うことで、最も目立つ代表色を強調しつつ、2番目、3番目の代表色も強調することができる、処理を単純化することができる等、様々な効果が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像した画像について、エッジ強調処理、彩度強調処理、階調補正処理等の「絵作り処理」を実行して、高品位な映像信号を得る撮像システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の撮像システムは、撮像系より出力された撮像信号をデジタル処理して輝度、色相、彩度からなる色空間の信号へ変換し、輝度信号に階調変換を行い、入力時の輝度値と色相値に対する第1の最大彩度値と、階調変換後の輝度値と色相値に対する第2の最大彩度値とを求め、色相が実質的に同一で、輝度のみが一定の比率で補正された場合に、これに対応するように彩度を補正することで、自然な色再現性を得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−312467号公報(段落番号[0034]、[0046]、[0069]、図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の撮像システムは、彩度が強く補正された場合には、以下の問題が予想される。
(1)
既に彩度が大きい画素は彩度飽和を起こし、結果的に色ずれが起こる。
(2)本来無彩色付近の色であった画素は、彩度が大きくあがることにより無彩色でなくなる。
(3)色温度の異なる複数の光源下で撮影した画像については、彩度補正により本来の色とは異なる色に強調されてしまう。
【0005】
また、かかる問題を解消するため、クラスタリングによる減色処理等により代表色を選定して彩度の補正処理を行うことも想定できる。しかし、クラスタリングした領域に代表色と成り得る色が複数存在する場合、これら複数の代表色夫々について全体のバランスを考慮しつつ補正処理を行わなければならない等、特殊な対処方法が必要となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の従来の課題に鑑みてなされたものであり、撮像された画像を最適な鮮やかさで補正することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る画像処理装置は、撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する第1の取得手段と、予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度補正手段と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る画像処理装置は、前記第1の取得手段は、前記撮像画像を構成する各画素のうち、前記所定の色空間における彩度及び明度が所定の閾値以上の画素の色強度を計測すること、を特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る画像処理装置は、前記第1の取得手段は、前記撮像画像を構成する各画素のうち、所定領域の画素の色強度については他の所定領域の画素よりも重み付けして計測すること、を特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明に係る画像処理装置は、前記撮像画像を構成する各画素の色の分布状態から、青空の画像領域の有無を判定する判定手段を更に備え、前記第1の取得手段は、前記判定手段により青空の画像領域が存在すると判定した場合に、青空に対応する色を他の色よりも重み付けして計測すること、を特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明に係る画像処理装置は、前記第2の色相ゲインテーブルを複数種記憶する第1の記憶手段と、撮像時に設定される撮影シーンに基づいて前記第1の記憶手段に複数種記憶されている前記第2の色相ゲインテーブルから特定のものを読み出す読出手段と、を更に備え、前記第2の取得手段は、前記読出手段によって読み出された前記第2の色相ゲインテーブルと前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得すること、を特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明に係る画像処理装置は、前記撮像画像を構成する各画素について所定の色空間における彩度の平均値を取得する第3の取得手段と、この第3の取得手段によって取得された彩度の平均値に基づいて、特定の彩度値でピーク値を有する彩度のゲインカーブを設定する第1の設定手段と、を更に備え、前記彩度補正手段は、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値と共に、前記第1の設定手段によって設定されたゲインカーブに基づいて、各色の彩度を補正すること、を特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明に係る画像処理装置は、前記彩度のゲインカーブを複数種記憶する第2の記憶手段を更に備え、前記第1の設定手段は、前記第2の記憶手段に記憶されている前記彩度のゲインカーブから特定のものを読み出して設定すること、を特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明に係る画像処理装置は、撮影条件に応じて、所定の色空間における最適な明度のゲイン値を設定する第2の設定手段を更に備え、前記彩度補正手段は、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値と共に、前記第2の設定手段によって設定されたゲイン値に基づいて各色の彩度を補正すること、を特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明に係る画像処理方法は、撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する工程と、予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと、取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する工程と、取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度工程と、を備える。
【0016】
請求項10に記載の発明に係る画像処理プログラムは、コンピュータを、撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する第1の取得手段と、予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと、前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度補正手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮像された画像について、彩度飽和や誤った色の強調を抑制して最適な鮮やかさで補正した画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置として機能するデジタルカメラの回路構成を示す図である。
【図2】図1のデジタルカメラが実行する処理の概要を説明する図である。
【図3】図1のデジタルカメラが実行する画像処理を説明するフローチャートである。
【図4】図3の画像処理における計測処理を説明するための図である。
【図5】図3の画像処理における色相処理を説明するための図である。
【図6】図3の画像処理における彩度処理を説明するための図である。
【図7】図3の画像処理における明度処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置として機能するデジタルカメラ1の回路構成を示す図である。
【0020】
本実施の形態のデジタルカメラ1は、基本となる動作モードとして、撮影をするための記録モードと、撮影した画像を再生するための再生モードとを有し、記録モードの下位モードとして補正モードを設けている。なお、補正モードとは、色相の色強度等に基づいて撮影画像を鮮やかになるように補正するモードのことをいう。
【0021】
デジタルカメラ1は、撮影レンズ2と、撮像部3と、前処理部4と、補正情報記憶部5と、プログラムメモリ6と、画像処理部7と、制御部8と、画像記録部9と、表示部10と、キー入力部11とを備える。
【0022】
撮影レンズ2は、通常の光学レンズであり、楕円状に形成されて、フォーカスレンズ、ズームレンズ等で構成される。
撮像部3は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサからなり、撮影レンズ2の光軸上に配置される。撮像部3は、撮影レンズ2により収束された撮影光を受光すると共に、受光面に結像された被写体の光学像を光電変換し、アナログの撮像信号として出力する。
【0023】
前処理部4は、撮像部3から出力された被写体の光学像に応じたアナログの撮像信号が入力され、入力した撮像信号を保持するCDS(相関二重サンプリング)、その撮像信号を増幅してその増幅された撮像信号をデジタルの画像データに変換するA/D変換器(ADC)等を制御する。撮像部3が出力した撮像信号は、前処理部4を経て、デジタルの画像データとして画像記録部9に送られる。前処理部4は、制御部8の命令に従い実行される。
【0024】
補正情報記憶部5は、画像データの補正に使用する情報を記憶する。補正情報記憶部5は、少なくとも、固定色相ゲインテーブル記憶部5a(第1の記憶手段)と、彩度ゲインカーブ記憶部5b(第2の記憶手段)と、明度ゲイン値記憶部5cとの各記憶手段を記憶する。
固定色相ゲインテーブル記憶部5aは、例えば、風景撮影モード、夜景撮影モード、人物撮影モード等の撮影シーン等、又は顔検出の有無等に応じて、複数種の固定色相ゲインテーブル(第2の色相ゲインテーブル)を記憶している。
彩度ゲインカーブ記憶部5bは、撮影時の周囲環境に応じて、複数種の彩度ゲインカーブを記憶している。
明度ゲイン値記憶部5cは、撮影時におけるストロボのオン/オフやISO(International Organization for Standardization)感度に応じて、複数の明度ゲイン値を記憶している。
【0025】
プログラムメモリ6は、画像処理部7、制御部8等で実行する各種処理に対応するプログラムを記憶する。
画像処理部7は、後述する画像処理に関する各種処理を行う。画像処理部7は、本発明の第1の取得手段、第2の取得手段、第3の取得手段、第1の設定手段、第2の設定手段、読出手段、判定手段、彩度補正手段の各手段として機能する。一例として、画像処理部7は、撮影された画像におけるYUV色空間信号と、HSV色空間信号とを相互に変換する処理を行う。YUV色空間とは、輝度信号(Y)と、輝度信号と青色成分の差(U)と、輝度信号と赤色成分の差(V)との3つの情報で表す色空間をいう。また、HSV色空間とは、色相(H:Hue)と、彩度(S:Saturation)と、明度(V:Value)との3つの成分からなるHSVモデル(HSV model)で表される色空間をいう。本実施の形態は、HSV色空間信号で表された撮像画像を用いることで、より細かい画像の色補正を行うものである。
【0026】
図1に戻り、制御部8は、例えば、中央処理装置(CPU)であり、プログラムメモリ6に記憶されたプログラムに従ってデジタルカメラ1全体を制御する。制御部8は、前処理部4、画像処理部7の各処理部を制御する。
画像記録部9は、撮像部3により撮像され、前処理部4で前処理がされた画像データを記憶する。画像再生時には、制御部8は、画像記録部9から画像データを読み出して、表示部10に表示させる。
【0027】
表示部10は、例えば、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶や、STN(Super Twisted Nematic)液晶等であり、プレビュー画像や、撮影後の画像データ、設定メニュー等を表示する。
キー入力部11は、シャッターキー11aと、補正モード実行キー11bとを備える。
シャッターキー11aは、撮像するための入力部である。補正モード実行キー11bは、撮影した画像を補正する補正モードを実行するための入力部である。この補正モードは、制御部8が、補正モード実行キー11bの操作を検出して、その後に、シャッターキー11aの操作を検出することで実現する。
【0028】
図2に、HSVモデルと各種ゲインの重み付けヒストグラム、及び補正後の色相分布変化の一例を示す。図2を参照して、本実施の形態のデジタルカメラ1が実行する処理の概要について説明する。
本実施の形態では、画像データを、YUV色空間からHSV色空間に色空間変換する。
HSVモデルは、図2(a)に示すように、円錐Cを用いて表すことができる。円錐Cで表現されたHSVモデルは、色相Hを、図2(b)に示すように色環の三次元円錐状の構造に描いて表現する。色相Hは、赤、青、黄等の色の種類を表し、0〜359の範囲の強度分布で表現することができる。彩度Sは、図2(c)に示すように、円錐Cの底面である円形交差部分の中心から円周方向への距離(半径)で表される。彩度Sは、色の鮮やかさであり、円形交差部分の中央を0として、0〜255の範囲で表すことができる。HSVモデルでは、彩度Sの値が小さくなるにつれて、灰色さが顕著になってくすんだ色で彩度Sが表現される。明度Vは、図2(d)に示すように円錐Cの頂点から底面方向への距離で表される。明度Vは、色の明るさであり、頂点を0として、0〜255の範囲で表すことができる。HSVモデルでは、明度Vの値が小さくなるにつれて、暗い色で明度Vが表現される。そして、撮像画像データの縮小画像を用いてその画像の、色相H、彩度S、明度Vのそれぞれを計測して得た色相、彩度、明度の分布から、色相(H)ゲイン、彩度(S)ゲイン、明度(V)ゲインの重み付けヒストグラム(強度分布)を生成し、これを補正値とする。
【0029】
以下、本実施の形態のデジタルカメラ1が実行する処理について詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係るデジタルカメラ1が実行する画像処理を示すフローチャートである。以下の処理は制御部8の制御の下に実行される。
図3のスタート時においては、ユーザの操作を検出することにより、撮影モードが設定される。またシャッターキー11aの操作検出による記録指示に先立ち、補正モード実行キー11bへの操作を検出することにより本フローチャートが実行される。まず、撮影モード時において、画像データの縮小画像を取得する。具体的には、制御部8は、前処理部4を制御して、撮像部3により撮影された画像データ、又は事前に画像記録部9に保存された画像データを縮小して、縮小画像のデータを生成する。縮小画像データは、画像データを補正するための解析に用いられる。
【0030】
ステップS2において、画像処理部7は、前処理部4にて処理された画像信号である縮小画像データを、YUV色空間からHSV色空間に色空間変換する。以後、ステップS3からS15までの処理は、HSV色空間に色空間変換した縮小画像のデータに対して行う処理である。
【0031】
ステップS3において、画像処理部7は、縮小画像を構成する各画素について、HSV空間(所定の色空間)の色相値Hを取得する。また、画像処理部7は、各画素の明度V及び彩度Sの計測を行い、明度V及び彩度Sが所定の閾値以上の画素を選択する。なお、本ステップから以降で説明するステップS11までは、画像処理部7が行う計測処理である。
【0032】
ステップS4において、画像処理部7(第3の取得手段)は、ステップS3で選択した明度Vが所定の閾値以上の画素を対象に、縮小画像の全体の彩度Sの平均値を取得する。このステップS4の処理は、次に説明するステップS5以降の処理と並行して行うことができる。
【0033】
ステップS5において、画像処理部7は、ステップS3での計測によって、明度Vが閾値以上であって、色相値Hが180〜240の範囲の画素が存在するか否かを判断する。色相値Hが180〜240の範囲の画素は、空の青さに相当する「青色」であることから、色相Hの範囲の画素は青空の色を表す可能性がある。該当する画素が存在する場合(ステップS5:YES)には、処理はステップS6に進む。他方、所定の画素が存在しない場合(ステップS5:NO)には、処理はステップS9に進む。
【0034】
ステップS6において、画像処理部7は、縮小画像における色相値Hが180〜240の範囲の画素の平均位置と分散を算出する。
【0035】
ステップS7において、画像処理部7(判定手段)は、ステップS6で算出した平均位置及び分散に基づき、縮小画像に青空の領域が存在するか否かを判断する。例えば、図4(a)に示す縮小画像20のうち、上部の領域21、左部の領域22及び右部の領域23のうちのいずれかに算出した平均位置があり、かつ、分散が大きい場合に、画像処理部7は、青空の領域が存在すると判断する。
図3に戻り、青空の領域が存在すると判断した場合(ステップS7:YES)、処理はステップS8に進む。他方、青空の領域が存在しないと判断した場合(ステップS7:NO)、処理はステップS9に進む。
【0036】
ステップS8において、画像処理部7は、縮小画像における色相値Hが180〜240の範囲の画素について、色相値Hの重み付け処理を行う。画像処理部7は、この重み付け処理で、青空が最適な鮮やかさになるようにする。
【0037】
ステップS9において、画像処理部7は、縮小画像の中央部(所定領域)の画素領域の各画素について、色相値Hの重み付け処理を行う。図4(b)に示すように、縮小画像30は、画像の中央部を形成する領域31と、領域31の周囲を形成する領域32とからなる。画像処理部7は、領域31の各画素に、例えば、「×5」の重み付けをする。このように、中央部の色相を大きく重み付けすることにより、視認しやすい中央部の色を最適な鮮やかさに設定する。
【0038】
図3に戻り、ステップS10において、画像処理部7は色相重み付けヒストグラムに対して、ローパスフィルタを掛けて、色相ヒストグラムの平滑化処理を行う。
【0039】
ステップS11において、色相重み付けヒストグラムを生成する。具体的には、画像処理部7(第1の取得手段)は、縮小画像の画素の各々の色相値Hを正規化して各色相値Hの最大値を求める。画像処理部7は、こうして得た各色相値Hの最大値に基づいて最大ゲイン値を決定し、最大ゲイン値の分布を表す色相重み付けヒストグラムを生成する。図4(c)、(d)に、生成した色相重み付けヒストグラムの一例を示す。図4(c)においては、横軸が色相を、縦軸が各色相の最大ゲイン値を表している座標系40において、生成された色相重み付けヒストグラム60であり、図4(d)は、色相を1周を360度とする角度に対応させて各色相の最大ゲイン値をXY座標の原点からの距離で表した座標系50において、生成された色相重み付けヒストグラム61である。図4(c)、(d)の色相重み付けヒストグラム60、61は、表現が異なるが、同一のゲイン値の分布を示している。画像処理部7は、この色相重み付けヒストグラムが表すゲイン値の分布に基づいて可変色相ゲインテーブル(第1の色相ゲインテーブル)を生成する。
【0040】
図3に戻り、ステップS12において、画像処理部7(読出手段)は、補正情報記憶部5の固定色相ゲインテーブル記憶部5aから、撮影シーンや顔画像の有無等に基づいた固定色相ゲインテーブルを読み出す。撮影シーンは、撮影時にユーザにより予め設定されているものとする。また、顔画像の有無判別については、公知の顔検出技術を用いて撮像された画像データが顔画像を含んでいるか否かを判別するものとする。ステップS13において、画像処理部7(第2の取得手段)は、ステップS11で生成した可変色相ゲインテーブルと、ステップS12で読み出した固定色相ゲインテーブルとを掛け合わせる積算処理を行い、補正を行うための最大ゲイン値の最大色相ゲインテーブルを生成する。
【0041】
図3のステップS12及びステップS13で行う処理について、図5を参照してより詳細に説明する。
図5(a)、(b)は、縮小画像の画素の色相値Hを正規化して得た各色相の最大値を最大ゲイン値とする色相重み付けヒストグラムの一例であり、最大ゲイン値の分布を、上記図4(c)、(d)に対応する座標系41、51における可変色相ゲイン70、71として示している。本実施の形態では、ヒストグラムの情報を、そのままゲイン量として扱う。図5(a)、(b)に示すように、この例では、可変色相ゲイン70、71は、色相値Hが0〜90の範囲の色強度が大きい。
【0042】
図5(c)、(d)は、固定色相ゲインテーブル記憶部5aから読み出した固定色相ゲインテーブルの色相重み付けヒストグラムの一例である。図4(c)、(d)に対応する座標系42、52における最大色相ゲイン値の分布を固定色相ゲイン80、81として示している。図5(c)、(d)の例では、固定色相ゲイン81のうち「肌色」の色相部分82と、「空の青色」の色相部分83について、色相ゲイン値を小さくしている。これによって、色相部分82は、「肌色」の極端な彩度上昇を抑制し、色相部分83は、「空の青色」の極端な彩度上昇を抑制する働きをする。
【0043】
図5(e)、(f)の91、92は、図4(c)、(d)に対応する座標系43、53における可変色相ゲイン71と固定色相ゲイン81とを掛け合わせて得た色相ゲインの分布を表した色相重み付けヒストグラムである。この色相ゲイン92が、撮像画像に対して各色相を最終的に補正及び調整する際に用いる最大色相ゲイン値となる。本実施の形態で、色相ゲイン92は、可変色相ゲイン71と比較して、部分93の色強度が比較的強く抑えられている。これは、固定色相ゲイン81の色相部分82において、部分93を含む色相値Hを抑制するようになっているためである。
【0044】
図3に戻り、ステップS14において、ステップS4で取得した縮小画像の全体の彩度Sの平均値に基づき、画像処理部7(第1の設定手段)は、補正情報記憶部5の彩度ゲインカーブ記憶部5bから最適な位置にピークを持つ彩度ゲインカーブを読み出して、彩度ゲイン値を設定する。図3のステップS14で行う処理は彩度処理に相当する。
【0045】
ステップS14で説明した彩色処理について、図6を参照して説明する。
図6(a)は、縮小画像の全体の彩度値の分布を示すヒストグラムの一例である。画像処理部7は、縮小画像の彩度値の分布に基づいて最大彩度ゲイン値を決定する。このため、図6(a)の彩度値の分布を彩度ゲインカーブ110と呼ぶ。
図6(a)のヒストグラムで、彩度ゲインカーブ110は、ピーク100を頂点にして左右が下降した直線グラフで表されている。図6(b)は、彩度ゲインカーブ110に、彩度ゲインカーブ記憶部5bから読み出したピーク100よりも鮮やかな方向にピーク101を有する彩度ゲインカーブ111を重ね合わせた図である。画像処理部7は、彩度ゲインカーブ110を彩度ゲインカーブ111にシフトさせることにより、撮像画像に対して彩度を最終的に補正及び調整する際に用いる彩度ゲイン値を得る。なお、本実施の形態では、彩度ゲインの分布を線形のカーブで表したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ガウス分布等を用いた非線形のグラフで表してもよい。また、彩度ゲインカーブ記憶部5bは、彩度ゲインカーブ111の他に、撮影時の周囲の環境に応じて異なる複数種の彩度ゲインカーブを記憶してよい。
【0046】
図3に戻り、ステップS15において、画像処理部7(第2の設定手段)は、撮影条件に基づいた明度ゲイン値を設定する。図3のステップS15で行う処理は明度処理に相当する。
ステップS15で説明した明度処理について、図7を参照して説明する。
図7(a)は、縮小画像の明度Vの分布を示すヒストグラムの一例である。画像処理部7は、縮小画像の明度Vの分布に基づいて最大明度ゲイン値を決定する。このため、図7(a)の明度値の分布を明度ゲイングラフ120と呼ぶ。図7(a)に示すように、明度ゲイングラフ120は、ある値から一定の傾きで単調増加する直線グラフで表されている。
図7(b)は、明度ゲイングラフ120に撮影条件応じて変更した最適な明度のゲイン値である明度ゲイングラフ121を重ね合わせた図である。明度ゲイン値記憶部5cは撮影時におけるストロボのオン/オフやISO感度等に応じて、複数の明度ゲイン値を記憶している。画像処理部7は、撮影条件に対応する明度ゲイン値記憶部5cに記憶された明度ゲイン値に基づいて、明度ゲイングラフ120から121にシフトするように修正する。画像処理部7は、この明度ゲイングラフ121により、最終的に撮像画像に対する補正及び調整する際に用いる明度ゲイン値を得る。
【0047】
図3に戻り、ステップS16において、画像処理部7は、縮小画像の元となった画像データを構成する各画素を、HSV色空間信号に変換する。ここで、HSV色空間信号に変換した画像データを、以下の説明において撮像画像という。そして、画像処理部7(彩度補正手段)は、各種設定されたゲイン値で、撮像画像の補正及び調整を行う。つまり、画像処理部7は、ステップS13で生成した最大色相ゲインテーブルのヒストグラムをゲイン量にした最大色相ゲイン値と、ステップS14で設定した彩度ゲイン値と、ステップS15で設定した明度ゲイン値とを用いて、撮像画像を補正及び調整する。
【0048】
ステップS17において、画像処理部7は、ステップS16で補正・調整後の撮像画像に対してJPEG圧縮を行う。
ステップS18において、画像処理部7は、ステップS17でJPEG圧縮を行った撮像画像を、画像記録部9に保存する。その後、画像処理部7は、本処理を終了する。
【0049】
本実施の形態によれば、以下のような効果がある。
(1)代表色の選定を行わずに、ヒストグラム情報である色相重み付けヒストグラムをそのままゲイン量として扱うことで、最も目立つ代表色を強調しつつ、2番目、3番目の代表色も強調することができる。
(2)色相ヒストグラムを加工するのみで実現されるため、処理の単純化を行うことができ、青空判定による空強調や、中央部分の色を強調する等の、その他判定処理に対応しやすいものにできる。
【0050】
(3)彩度や明度に応じて撮影画像を補正するゲインを変更するので、彩度飽和を起こりにくくできる。また、異なる色温度が存在する場合でも、本来の色とは異なる間違った色に強調されることを抑制できる。
(4)無彩色付近の色が大きく彩度があがってしまうことを抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、本実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施の形態では、撮像素子がCCDセンサであるデジタルカメラに本発明を適用したが、これに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の他の撮像素子を用いてもよい。
上述の画像処理部7の機能の一部又は全てを、制御部8を所定のプログラムに従い動作することによって実現するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、場合分けを伴う処理として、青空判定による空強調や、中央部分を強調を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、人物の顔や、紅葉の紅葉等、実装に応じて、様々な場合分けを伴う処理を適用してもよい。
更に本発明においては、最大色相ゲインテーブルの生成は、可変色相ゲインテーブルと固定色相ゲインテーブルとの積算によって行っていたが、撮影環境や、画像全体の色味を考慮し、最適な色相パラメータ値を更に加算する処理を加えても良い。
【0052】
本発明は、デジタルカメラに限らず、例えばカメラ付きの携帯電話端末等の静止画撮影機能を有する他の撮像装置にも適用できる。
また、本発明は、撮像装置に限らず、画像の色補正をする機能を有する任意の画像処理装置にも適用できる。また、係る画像処理装置には、所定のプログラムに基づき動作することにより前記機能が実現されるパーソナルコンピュータも含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 デジタルカメラ
5 補正情報記憶部
5a 固定色相ゲインテーブル
5b 彩度ゲインカーブ記憶部
5c 明度ゲイン値記憶部
7 画像処理部
8 制御部
9 画像記録部
11 キー入力部
11a シャッターキー
11b 補正モード実行キー
H 色相
S 彩度
V 明度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する第1の取得手段と、
予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する第2の取得手段と、
前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度補正手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の取得手段は、前記撮像画像を構成する各画素のうち、前記所定の色空間における彩度及び明度が所定の閾値以上の画素の色強度を計測すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の取得手段は、前記撮像画像を構成する各画素のうち、所定領域の画素の色強度については他の所定領域の画素よりも重み付けして計測すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記撮像画像を構成する各画素の色の分布状態から、青空の画像領域の有無を判定する判定手段を更に備え、
前記第1の取得手段は、前記判定手段により青空の画像領域が存在すると判定した場合に、青空に対応する色を他の色よりも重み付けして計測すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2の色相ゲインテーブルを複数種記憶する第1の記憶手段と、
撮像時に設定される撮影シーンに基づいて前記第1の記憶手段に複数種記憶されている前記第2の色相ゲインテーブルから特定のものを読み出す読出手段と、
を更に備え、
前記第2の取得手段は、前記読出手段によって読み出された前記第2の色相ゲインテーブルと前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記撮像画像を構成する各画素について所定の色空間における彩度の平均値を取得する第3の取得手段と、
この第3の取得手段によって取得された彩度の平均値に基づいて、特定の彩度値でピーク値を有する彩度のゲインカーブを設定する第1の設定手段と、
を更に備え、
前記彩度補正手段は、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値と共に、前記第1の設定手段によって設定されたゲインカーブに基づいて、各色の彩度を補正すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記彩度のゲインカーブを複数種記憶する第2の記憶手段を更に備え、
前記第1の設定手段は、前記第2の記憶手段に記憶されている前記彩度のゲインカーブから特定のものを読み出して設定すること、
を特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
撮影条件に応じて、所定の色空間における最適な明度のゲイン値を設定する第2の設定手段を更に備え、
前記彩度補正手段は、前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値と共に、前記第2の設定手段によって設定されたゲイン値に基づいて各色の彩度を補正すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する工程と、
予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと、取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する工程と、
取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度工程と、
を備える画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
撮像画像を構成する各画素について所定の色空間の色相における色強度を計測し、この色強度の分布から第1の色相ゲインテーブルを取得する第1の取得手段と、
予め設定された所定の条件を満たす第2の色相ゲインテーブルと、前記第1の取得手段によって取得された前記第1の色相ゲインテーブルとを積算し、各色の最大ゲイン値を取得する第2の取得手段と、
前記第2の取得手段によって取得された最大ゲイン値で各色の彩度を補正する彩度補正手段と、
して機能させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−283785(P2010−283785A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137630(P2009−137630)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】