説明

画像処理装置、電子カメラ、および画像処理プログラム

【課題】 周辺減光補正によりノイズが目立ちやすくなるのを簡便に抑えること。
【解決手段】 処理対象の画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報を取得する取得部と、ゲイン情報に応じた補間処理を処理対象の画像に対して施す補間部とを備える。なお、補間部は、ゲイン情報に応じて、像高が低いほど補間に用いる周辺画素情報が少なく、像高が高いほど補間に用いる周辺画素情報が多い補間処理を行っても良い。また、補間部は、ゲイン情報に応じて、像高が低いほどローパス効果が低く、像高が高いほどローパス効果が高い補間処理を行っても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象の画像に画像処理を施す画像処理装置、その画像処理装置を備えた電子カメラ、および処理対象の画像に対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像の光学的中心から画面周辺部に向けて略同心円状に光量が低下するいわゆる周辺減光を補正する技術が知られている。ところで、周辺減光を補正すると、画像周辺部におけるノイズが目立ちやすくなる。そこで、周辺減光補正を行った後に、像高を考慮したノイズ低減処理を行う技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−269373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の発明では、周辺減光補正に伴い、常にノイズ低減処理を行う必要がある。例えば、低感度撮影時など、通常はノイズ低減処理が不要な場合にも、周辺減光補正により目立ちやすくなったノイズを抑えるためにノイズ低減処理を行わなければならない。
【0004】
本発明の画像処理装置、電子カメラ、および画像処理プログラムは、周辺減光補正によりノイズが目立ちやすくなるのを簡便に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理装置は、処理対象の画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報を取得する取得部と、前記ゲイン情報に応じた補間処理を前記処理対象の画像に対して施す補間部とを備える。
【0006】
なお、好ましくは、前記補間部は、前記ゲイン情報に応じて、像高が低いほど補間に用いる周辺画素情報が少なく、前記像高が高いほど補間に用いる周辺画素情報が多い補間処理を行っても良い。
【0007】
また、好ましくは、前記補間部は、前記ゲイン情報に応じて、像高が低いほどローパス効果が低く、前記像高が高いほどローパス効果が高い補間処理を行っても良い。
【0008】
本発明の電子カメラは、撮影レンズを介して被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、上述した何れかの画像処理装置とを備え、前記取得部は、前記撮影レンズに関する情報に基づいて、前記ゲイン情報を取得し、前記補間部は、前記ゲイン情報に応じた補間処理を前記撮像部により生成した画像に対して施す。
【0009】
本発明の画像処理プログラムは、処理対象の画像とともに、前記画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報と、前記ゲイン情報の算出に用いる情報との少なくとも一方を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得した情報に応じた補間処理を前記処理対象の画像に対して施す補間ステップとをコンピュータで実現する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像処理装置、電子カメラ、および画像処理プログラムによれば、周辺減光補正によりノイズが目立ちやすくなるのを簡便に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、電子カメラを例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の電子カメラの概略構成を示す図である。
【0013】
図1において、電子カメラ1は、撮影レンズ10、撮像素子11、AFE(Analog Front End)・DFE(Digital Front End)12、ホワイトバランス処理部(以下、「WB処理部」)13、周辺減光補正部14、補間処理部15、画像処理部16、記録部17、操作部18、表示部19、制御部20の各部を備える。
【0014】
撮像素子11は、図2に示すように、ベイヤ配列の画素配列を有する。なお、ストライプ配列など、ベイヤ配列以外の画素配列を有する場合にも、本発明を同様に適用することができる。この撮像素子11により得られた画像データは、AFE・DFE12を介してディジタル信号に変換され、WB処理部13においてホワイトバランス処理が施された後に周辺減光補正部14において周辺減光補正処理が施される。さらに、補間処理部15において補間処理が施された後に、画像処理部16において、画像処理が行われる。なお、周辺減光補正部14および補間処理部15による処理の詳細は後述する。また、画像処理部16における画像処理にはガンマ処理、色再現処理、圧縮処理などが含まれる。これらの処理の詳細は公知技術と同様であるため説明を省略する。そして、画像処理部16における画像処理が完了すると、画像処理後の画像データは、記録部17に記録される。記録部17は、不図示のメモリカードなどの記録媒体を備え、撮像により生成した画像を記録する。
【0015】
操作部18は、不図示のレリーズボタンや選択ボタンを含み、各種ユーザ操作を受け付ける。表示部19は、不図示の表示素子などを備え、画像やメニュー画面などを表示する。制御部20は、上述した各部を制御する。また、制御部20には、各部の動作内容を示すプログラムが予め記録されている。プログラムは、記録媒体に記録されたものでも良いし、インターネットを介して伝送波としてダウンロードされたものでも良い。また、制御部20には、後述する周辺減光情報が予め記録されている。
【0016】
以上説明した電子カメラ1における撮像時の制御部20の動作について説明する。図3は、電子カメラ1における撮像時の制御部20の動作を示すフローチャートである。
【0017】
ステップS1において、制御部20は、操作部16のレリーズボタンが半押しされたか否かを判定する。そして、レリーズボタンが半押しされたと判定すると、制御部20は、ステップS2に進む。
【0018】
ステップS2において、制御部20は、各部から撮影条件を取得する。撮影条件には、撮影レンズ10のレンズ情報、絞り値(F値)、焦点距離、ピント位置などが含まれる。
【0019】
ステップS3において、制御部20は、周辺減光情報を取得する。制御部20は、ステップS2で取得した撮影条件に基づいて、予め記録された周辺減光情報を取得する。周辺減光情報とは、例えば、図4に示すような周辺減光カーブである。図4に示すように、像高(r)が高くなるほど出力レベルは低下する。そして、この傾向は上述した撮影条件により異なる。制御部20は、複数の周辺減光カーブを記録しており、ステップS2で取得した撮影条件に基づいて、何れかの周辺減光カーブを取得する。図4には、像高(r)=1で出力レベルが0.25まで低下するカーブ(1)と、像高(r)=1で出力レベルが0.50まで低下するカーブ(2)とを例示している。
【0020】
ステップS4において、制御部20は、ステップS3で取得した周辺減光情報に基づいて、周辺減光補正係数を決定する。周辺減光補正係数とは、例えば、像高(r)に応じたゲインである。このゲインは像高(r)が高い(周辺部分)ほど大きくなり、像高(r)が低い(中央部分)ほど小さくなる。制御部20は、上述した周辺減光カーブと補正後の目標ゲインとに応じて、像高(r)に応じた周辺減光補正係数を決定する。
【0021】
ステップS5において、制御部20は、ステップS4で決定した周辺減光補正係数に基づいて、補間係数を決定する。
【0022】
上述したように、撮像素子11は、ベイヤ配列の画素配列を有するため、その出力は1画素につき1色である。そこで、周辺の別の色の画素の出力に基づいて、各画素3色(R,G,B)の出力を得る処理が補間処理である。この補間処理は、周辺画素の情報をもとに行う処理であるため、ローパスフィルター(LPF)に近い平滑化効果を有する。そこで、本実施形態では、この平滑化効果に着目し、周辺減光補正により目立ちやすくなるノイズを抑えることができる補間処理を行う。周辺減光補正により目立ちやすくなるノイズは、像高(r)に応じて多くなる。そこで、像高(r)が高くなるほど平滑化効果の大きい補間処理を行うための補間係数を決定する。本実施形態において、補間処理に用いる補間係数には以下の3種類がある。
【0023】
(1)補間に用いるカーネルサイズ
制御部20は、補間に用いるカーネルのサイズを、ステップS4で決定した周辺減光補正係数に基づいて決定する。例えば、注目画素をRとし、Gの出力を補間に用いる場合を考える。制御部20は、例えば、図5に示すように、中央部(ゲイン=1.0程度)では、カーネルサイズを”3×3”とし、周辺部(ゲイン=4.0程度)では、カーネルサイズを”7×7”とする。また、中央部と周辺部との中間部(ゲイン=2.0程度)では、カーネルサイズを”5×5”とする。このように、像高(r)が高くなるほどカーネルサイズを大きくすることにより、補間に用いる周辺画素情報量を多くすることができる。
【0024】
(2)方向判定における閾値
制御部20は、補間時に、画像構造における方向判定を行い、画像構造を維持しつつ補間を行う。画像構造における方向判定は、まず、注目画素について、第1の評価値として、注目画素の上下に近接する同色の画素の画素値の差分を算出する。次に、第2の評価値として、注目画素の左右に近接する同色の画素の画素値の差分を算出する。さらに、第3の評価値として、第1の評価値と第2の評価値との差分を算出する。そして、この第3の評価値と所定の閾値とを比較して、画像構造における方向判定を行う。
【0025】
制御部20は、補間係数として、この閾値を、ステップS4で決定した周辺減光補正係数に基づいて決定する。制御部20は、例えば、図6に示すように、中央部(ゲイン=1.0程度)で、閾値を最小とし、周辺部(ゲイン=4.0程度)では、閾値を最大とする。このように、像高(r)が高くなるほど閾値を大きくすることにより、補間に用いる周辺画素情報量を多くすることができる。なお、図6では、図4で説明した周辺減光カーブの逆数と同様の傾向を有するカーブ(3)を例示している。また、像高(r)に応じて、閾値をリニアに変更しても良い。また、中央部(ゲイン=1.0程度、像高(r)=0近傍)における閾値に対して、ゲインの逆数を乗ずることにより閾値を決定しても良い。また、構造判定を斜め方向に関しても行っても良い。
【0026】
(3)補間時の注目画素の画素値の重み付け量
制御部20は、補間時の注目画素の画素値の重み付け量を、ステップS4で決定した周辺減光補正係数に基づいて決定する。例えば、図7に示すように、中央部(ゲイン=1.0程度、像高(r)=0近傍)では、注目画素の画素値の重み付け量を1とし、周辺部(ゲイン=4.0程度、像高(r)=1.0近傍)では、注目画素の画素値の重み付け量を0.25程度とする。このように、像高(r)が高くなるほど注目画素の画素値の重み付け量を小さくすることにより、ローパス効果を高くすることができる。なお、図7では、図4で説明した周辺減光カーブと同様の傾向を有するカーブ(4)を例示している。また、像高(r)に応じて、注目画素の画素値の重み付け量をリニアに変更しても良い。
【0027】
制御部20は、上述した(1)〜(3)の補間係数を算出し、適宜組み合わせて最終的な補間係数を決定する。なお、上述した(1)〜(3)の補間係数を必ずしも全て利用する必要はなく、上述した(1)〜(3)の補間係数のうち、少なくとも1つを算出して利用しても良い。
【0028】
ステップS6において、制御部20は、操作部16のレリーズボタンが全押しされたか否かを判定する。そして、レリーズボタンが全押しされたと判定すると、制御部20は、ステップS7に進む。
【0029】
ステップS7において、制御部20は、各部を制御して被写体像を撮像する。
【0030】
ステップS8において、制御部20は、周辺減光補正部14を制御して、周辺減光補正を行う。制御部20は、ステップS4で決定した周辺減光補正係数を用いて、ステップS7の撮像により生成された画像に対して周辺減光補正を行う。なお、周辺減光補正の対象となるのは、WB処理部13においてホワイトバランス処理が施された後の画像である。
【0031】
ステップS9において、制御部20は、補間処理部15を制御して、補間処理を行う。制御部20は、ステップS5で決定した補間係数を用いて、ステップS8で周辺減光補正が行われた画像に対して補間処理を行う。この補間処理により、上述したように、ステップS8で行われた周辺減光補正により目立ちやすくなったノイズを抑えることができる。
【0032】
ステップS10において、制御部20は、画像処理部16を制御して、ステップS9で補間処理が行われた画像に対して画像処理を行う。
【0033】
ステップS11において、制御部20は、ステップS10で画像処理が施された画像データを記録部17に記録し、一連の処理を終了する。
【0034】
なお、図3のフローチャートでは、レリーズボタンの半押し(ステップS1YES)後に行ったステップS2からステップS5の処理を、レリーズボタンの全押し後に行っても良い。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理対象の画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報を取得し、取得したゲイン情報に応じた補間処理を処理対象の画像に対して施す。したがって、周辺減光補正によりノイズが目立ちやすくなるのを簡便に抑えることができる。また、ガンマ処理などのノイズを強調する処理に先立って、ノイズを抑えることができるため、効率的である。また、従来のノイズ低減処理を行う場合と比較して、画像の解像感の低下も抑えることができる。さらに、従来のノイズ低減処理を行う場合と比較して、演算の軽減効果および処理時間の短縮効果も期待できる。
【0036】
なお、本実施形態では、周辺減光補正係数および補間係数を、制御部20により自動で決定する例を示したが、ユーザ操作に基づいて決定する構成としても良い。また、自動で決定した周辺減光補正係数および補間係数を、ユーザ操作に基づいて調整可能な構成としても良い。
【0037】
また、本実施形態では、周辺減光補正後に補間処理を行う例を示したが、補間処理を先に行い、後から周辺減光補正を行う構成としても良い。この場合、周辺減光補正によりノイズが目立つことを見越して補間処理係数を決定すれば良い。ただし、本実施形態で説明したように周辺減光補正後に補間処理を行う方が、解像感の維持には有効である。また、ホワイトバランス処理を周辺減光補正の後に行っても良い。
【0038】
また、本実施形態で説明した処理の一部または全部をコンピュータにより実現しても良い。この場合、コンピュータに図3のフローチャートのステップS2からステップS5、および、ステップS7からステップS11の処理の一部または全部を行うためのプログラムを予め記録しておく。そして、処理対象の画像とともに周辺減光補正にかかわるゲイン情報(周辺減光補正係数など)とゲイン情報の算出に用いる情報(撮影条件、周辺減光情報など)との少なくとも一方を取得することにより、上述した電子カメラ1と同様の処理を行うことができる。これらの情報は、処理対象の画像の付帯情報として記録されたものでも良いし、処理対象の画像とは独立に取得しても良い。また、撮影条件を取得する場合には、コンピュータに図4で説明した周辺減光情報などを記録しておけば良い。
【0039】
さらに、例えば、電子カメラにおいてRAW画像とJPEG画像とを関連付けて記録する際には、JPEG画像を生成した際のゲイン情報(周辺減光補正係数など)を記録しておき、RAW画像に対してこれを適用することにより、RAW画像とJPEG画像とを同様に画像再現することができる。
【0040】
このように、コンピュータにおいて本実施形態で説明した処理の一部または全部を実現する場合には、ユーザが手動で周辺減光補正量を決定する際にも、本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の電子カメラ1の概略構成を示す図である。
【図2】ベイヤ配列を説明する図である。
【図3】本実施形態の電子カメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図4】周辺減光情報を説明する図である。
【図5】補間に用いるカーネルのサイズを説明する図である。
【図6】方向判定における閾値を説明する図である。
【図7】注目画素の画素値の重み付け量を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
1…電子カメラ,10…撮影レンズ,11…撮像素子,14…周辺減光補正部,15…補間処理部,20…制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報を取得する取得部と、
前記ゲイン情報に応じた補間処理を前記処理対象の画像に対して施す補間部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記補間部は、前記ゲイン情報に応じて、像高が低いほど補間に用いる周辺画素情報が少なく、前記像高が高いほど補間に用いる周辺画素情報が多い補間処理を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記補間部は、前記ゲイン情報に応じて、像高が低いほどローパス効果が低く、前記像高が高いほどローパス効果が高い補間処理を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
撮影レンズを介して被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置とを備え、
前記取得部は、前記撮影レンズに関する情報に基づいて、前記ゲイン情報を取得し、
前記補間部は、前記ゲイン情報に応じた補間処理を前記撮像部により生成した画像に対して施す
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】
処理対象の画像とともに、前記画像の周辺減光補正にかかわるゲイン情報と、前記ゲイン情報の算出に用いる情報との少なくとも一方を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した情報に応じた補間処理を前記処理対象の画像に対して施す補間ステップと
をコンピュータで実現することを特徴とする画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−94697(P2009−94697A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262096(P2007−262096)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】