説明

画像処理装置および文書保存処理プログラム

【課題】
e−文書法の対象となる文書に対する保存処理を効率的に行えるようにして、ユーザの手間を軽減させるようにした画像処理装置および文書保存処理プログラムを提供する。
【解決手段】
複合機10においては、原稿を読み取り、その読み取った電子文書に対し署名処理およびタイムスタンプ処理を実行し、公的文書として電子化して保存する。なお、この電子化に際して、読み取った電子文書が特定のフォーマットに一致し、また所定の条件に該当する場合は、電子化して保存しても公的文書として認められないため、このような文書には、署名処理等(署名処理、タイムスタンプ処理)を実行しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および文書保存処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種法令により保存が義務付けられた文書を電子化して保存することを認めるe−文書法(電子文書法)が施行され、企業等においては、紙媒体を用いて文書を保存する必要が無くなり、ペーパレス化を図れる他、文書の保存に伴うスペースやその管理費を削減できる。なお、決算書類や帳簿、定型的約款がない契約書、所定額以上の領収書は、e−文書法の対象外となり、従来通り紙媒体での保存が義務付けられる。
【0003】
e−文書法の対象となる文書を電子化して保存する際には、その文書に対し署名処理とタイムスタンプ処理とを行って、当該文書の作成者、作成時刻、非改竄であることを証明し真正性を確保する必要がある。
【0004】
署名処理は、電子文書の作成者やその文書が改竄されていないことを証明するのに有効な技術であり、例えば、特許文献1には、画像データ送信時に、送信者に電子証明書を入力させ、電子証明書の有効性を検証して発行元を明確にする技術が開示される。すなわち、この特許文献1によると、送信者を証明書によって管理できるので、第三者による悪用を防止することができる。
【0005】
また、タイムスタンプ処理は、ある情報(例えば、当該文書から生成したハッシュ値)と時刻情報とを組み合わせることにより、文書の作成時刻やその文書が改竄されていないことを証明するのに有効な技術である。
【特許文献1】特開2005−159726号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
e−文書法の対象となる文書を電子化して保存するには、スキャナあるいは複合機等を用いて原稿を読み取り、その読み取った電子文書をパーソナルコンピュータ等に転送後、かかるコンピュータ上で動作するアプリケーションを用いて署名処理やタイムスタンプ処理を行うといった手順を踏んでいた。
【0007】
文書の種類によっては電子署名やタイムスタンプを付与しても公的文書として扱えない場合がある。しかし、このような場合でも本人の証明書情報が確認できれば署名処理やタイムスタンプ処理が実行されてしまう。これに対処するには、読み取る際にユーザが文書の内容を1枚ずつ確認すればよいが、大量の文書を処理する場合には、このような対応では多大な労力を要してしまい、ユーザに過度の負担がかかってしまう。
【0008】
本発明は、e−文書法の対象となる文書に対する保存処理を効率的に行えるようにして、ユーザの手間を軽減させるようにした画像処理装置および文書保存処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の画像処理装置の発明は、原稿を読み取る読取手段と、前記読取手段で原稿から読み取られた電子文書の形式が所定の形式に一致するか否かを判断する形式判断手段と、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致しないと判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行う署名処理手段とを具備する。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記署名処理手段は、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断された場合に、前記署名処理手段による署名処理を行うか否かを選択させるためのユーザ介入画面を表示器へ表示制御するユーザ介入制御手段を更に具備する。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記読取手段で原稿から読み取られた電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当するか否かを判断する条件判断手段を更に具備し、前記署名処理手段は、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断され、かつ前記条件判断手段により前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記条件判断手段は、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が領収書の形式に一致すると判断された場合に、該領収書の金額が所定額以上であるか否かを判断し、該領収書の金額が所定額以上であるときに前記所定条件に該当すると判断する。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断され、かつ前記条件判断手段により前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、前記署名処理手段による署名処理を行うか否かを選択させるためのユーザ介入画面を表示器へ表示制御するユーザ介入制御手段を更に具備する。
【0015】
また、請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかの発明において、前記電子文書の時刻情報証明処理を行う時刻情報処理手段を更に具備し、前記時刻情報処理手段は、前記署名処理手段による署名処理が行われた電子文書に対し時刻情報証明処理を行う。
【0016】
また、請求項8の発明は、原稿から電子文書を読み取る画像処理装置における処理をコンピュータに実行させる文書保存処理プログラムであって、前記原稿から読み取られた電子文書の形式が所定の形式に一致するか否かを判断する形式判断ステップと、前記形式判断ステップにより前記電子文書の形式が一致しないと判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行う署名処理ステップとを含む。
【0017】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記原稿から読み取られた電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当するか否かを判断する条件判断ステップを更に含み、前記署名処理ステップは、前記形式判断ステップにより前記電子文書の形式が一致すると判断され、かつ前記条件判断ステップにより前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、e−文書法の対象となる文書を保存する際に、所定の条件に該当する文書を自動的に判別して保存することができるので、e−文書法の対象とならない文書を誤って電子保存してしまうことを抑止することができる。
【0019】
また、本発明によれば、ユーザが文書を確認してe−文書法の対象となる文書であるか否かを判断する必要がないので、大量の文書を効率的に処理でき、ユーザの手間を軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係わる画像処理装置および文書保存処理プログラムの実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係わる画像処理装置を配して構成した画像読取システムの全体構成の一例を示す図である。なお、本実施例においては、本発明に係わる画像処理装置を複合機10に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0022】
この画像読取システムは、複合機10と、認証局20と、タイムスタンプ局30とを具備して構成され、この複合機10と、認証局20およびタイムスタンプ局30は、イントラネット41およびインターネット42を介して通信可能に接続される。
【0023】
ここで、複合機10は、コピー、スキャナ、およびファックス等の各種機能を備えており、イントラネット41およびインターネット42を介して接続された認証局20との間で署名処理を、同じくイントラネット41およびインターネット42を介して接続されたタイムスタンプ局30との間でタイムスタンプ処理を実行する。
【0024】
複合機10は、e−文書法の対象となる原稿を読み取り、その読み取った電子文書に対し署名処理およびタイムスタンプ処理を実行し、公的文書として電子化して保存する機能を有する。複合機10においては、この電子化に際して、読み取った電子文書が特定のフォーマットに一致し、また所定の条件に該当する場合は、電子化して保存しても公的文書として認められないため、このような文書には、署名処理等(署名処理、タイムスタンプ処理)を実行しない。例えば、所定額(例えば、3万円)以上の領収書は、従来通り紙媒体での保存が義務付けられており、これを電子化して保存しておいても公的文書としては扱われないため、所定額以上の領収書のような文書に対しては、署名処理等を実行しない。
【0025】
認証局20は、証明書を発行する公的な機関である。認証局20では、電子文書の発行元が信頼のおける組織であることを証明するための電子証明書を発行する。すなわち、認証局20により電子証明書が発行された電子文書は、認証局20が信頼を保証することになる。認証局20において署名処理が行われ、電子文書に電子署名が付与されることで、電子文書の作成者やその文書が改竄されていないことが証明されることになる。
【0026】
タイムスタンプ局30は、時刻情報を保証する公的な機関である。このタイムスタンプ局30において、電子文書に対し信頼ある時刻情報を発行することで電子文書の検証が可能になる。タイムスタンプ局30においてタイムスタンプ処理が行われ、電子文書にタイムスタンプが付与されることで、文書の作成時刻やその文書が改竄されていないことが証明されることになる。
【0027】
次に、図2を用いて、図1に示す複合機10の概略構成の一部について説明する。
【0028】
複合機10は、その機能構成として、通信部11と、UI(User Interface)部12と、制御部13と、画像読取部14と、画像形成部15と、記憶部16とを具備して構成される。
【0029】
通信部11は、LAN(Local Area Network)ボード等から構成され、複合機10とイントラネット41とを繋ぐ通信インターフェースとしての機能を果たす。なお、この通信部11における通信は、有線、無線であるかは問わない。
【0030】
UI部12は、液晶ディスプレイなどの表示用デバイスである表示部12aと、タッチパネルや操作ボタンなどの入力用デバイスである操作部12bとを備えた操作パネル等から構成され、ユーザと複合機10とを繋ぐユーザインターフェースとしての機能を果たす。
【0031】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)、プログラム用メモリ、作業用メモリ、各種ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等から構成され、複合機10を統括制御する機能を果たす。
【0032】
画像読取部14は、照明ランプ、レンズ、CCD(Charge Coupled Device)等から構成され、プラテンガラス上(原稿台)に置かれた原稿を光学的に走査して、原稿から電子文書を読み取る機能を果たす。画像読取部14には、自動給紙フィーダ等が備わっていてもよく、その場合、トレイにセットされた原稿の読み取りを連続して行えることになる。
【0033】
画像形成部15は、感光ドラム、転写ベルト、定着器等から構成され、用紙等の記録媒体上に画像を形成し出力する機能を果たす。なお、本実施例においては、画像形成部15が電子写真方式で構成される場合を例に挙げて説明するが、これに限られず、他の方式(例えば、インクジェット方式)を採用してもよい。
【0034】
記憶部16は、HDD(Hard Disk Drive)、あるいはフラッシュROM(Read Only Memory)等から構成され、各種データを記憶する記憶装置としての機能を果たす。この記憶部16には主に、画像読取部14で原稿から読み取られた電子文書が格納される。以上が、複合機10を構成する各種処理機能の説明である。なお、図2においては、説明を分かり易くするために、各処理機能を具体的に実現する構成を例示しているが、これはあくまで一例であり、これ以外の構成により各処理機能が実現されてもよい。
【0035】
次に、図3を用いて、上記図2で説明した制御部13の機能的な構成の一部について説明する。
【0036】
制御部13は、その機能機能として、設定情報保持部51と、文書判断部52と、保存制御部53と、ユーザ介入制御部54と、署名処理部55と、タイムスタンプ処理部56と、文書格納処理部57とを具備して構成される。
【0037】
設定情報保持部51は、各種設定情報を保持する機能を果たす。この設定情報保持部51には、電子化して保存しても公的文書として扱われない電子文書に対する署名処理等を実行しないようにするための設定情報が保持される。具体的には、ある特定のフォーマットが設定される「特定フォーマット情報」、特定フォーマット内の所定領域(以下、この領域のことを条件判断領域と言う)の位置、形状、サイズ等が設定される「領域情報」、所定の条件が設定される「条件情報」が保持され、原稿から読み取られた電子文書のフォーマットが「特定フォーマット情報」に設定されたフォーマットと一致し、さらにそのフォーマット内の「領域情報」に設定された条件判断領域の情報が「条件情報」に該当する場合には、当該電子文書に対して署名処理等を行わないことになる。なお、設定情報保持部51に保持される設定情報は、複合機10に設けられたUI部12から登録するようにしてもよいし、複合機10に指示書フォームを読み取らせることによって登録するようにしてもよいし、また、複合機10に接続されたパーソナルコンピュータ等から登録するようにしてもよい。
【0038】
ここで、これらの設定情報について具体例を挙げて説明する。例えば、図4に示す領収書の金額が3万円以上のときに署名処理等を行わないようにする場合、「特定フォーマット情報」にこの領収書のフォーマットを設定し、「領域情報」に領収書の中央部点線枠内に位置する金額情報の領域を条件判断領域として設定し、「条件情報」に3万円以上を設定する。
【0039】
この図4に示す条件判断領域のように、その形状が矩形形状である場合には、例えば、所定の基準位置に基づき矩形領域の対角線上の2つの頂点の座標(点(x1,y1)と点(x2,y2))とを導出し、この頂点座標を「領域情報」に設定しておけばよい。なお、この「領域情報」は、同一フォーマットに対し複数設定してもよく、例えば、図4に示す領収書の場合には、文字列「領収書」等も領域情報として設定するようにしてもよい。
【0040】
文書判断部52は、原稿から読み取られた電子文書がe−文書法の対象外であるか否かの判断を行う機能を果たす。この文書判断部52における判断は、設定情報保持部51に保持された設定情報に基づき行われる。文書判断部52は内部に、フォーマット抽出部61と、フォーマット判断部62と、条件判断領域抽出部63と、条件判断領域判断部64とを具備して構成される。
【0041】
フォーマット抽出部61は、原稿から読み取られた電子文書からフォーマットを抽出する機能を果たし、フォーマット判断部62は、この電子文書から抽出されたフォーマットが、ある特定のフォーマットに一致するか否かを判断する機能を果たす。このフォーマットが一致するか否かの判断は、設定情報保持部51に保持された「特定フォーマット情報」に基づき行われる。
【0042】
条件判断領域抽出部63は、フォーマット判断部62においてフォーマットが一致すると判断された場合に、電子文書内の所定の領域(条件判断領域)を抽出する機能を果たす。条件判断領域抽出部63においては、この抽出した条件判断領域をOCR(Optical Character Reader)処理することで、その領域の文字列を抽出し、その抽出した文字列を条件判断領域判断部64へと供給する。なお、条件判断領域の取得は、設定情報保持部51に保持された「領域情報」に基づき行われる。
【0043】
条件判断領域判断部64は、条件判断領域抽出部63により抽出された文字列が、所定の条件に該当するか否かの判断を行う機能を果たす。この所定の条件に該当するか否かの判断は、設定情報保持部51に保持された「条件情報」に基づき行われる。この条件判断領域判断部64における判断の結果、「条件情報」に設定された条件に該当する場合には、その電子文書に対して署名処理等が実行されないことになる。なお、本実施例においては、文字列を比較することで所定の条件に該当するか否かの判断を行う場合について説明するが、文字列に限られず、絵や写真等のイメージ等が一致するか否かの条件等によって、所定の条件に該当するか否かを判断するように構成してもよい。
【0044】
保存制御部53は、文書判断部52における判断結果等に基づいて文書保存処理の動作を制御する機能を果たす。例えば、文書判断部52における判断結果に基づいて署名処理部55における署名処理や、ユーザ介入制御部54によるユーザ介入処理の開始を制御することになる。
【0045】
ユーザ介入制御部54は、保存制御部53からの指示に基づきユーザ介入を制御する機能を果たす。具体的には、原稿から読み取られた電子文書がe−文書法の対象外であるならば、図5に示すユーザ介入画面を表示部12aに表示してその旨をユーザに通知する。また、この表示に伴ってユーザが操作部12bから入力したユーザ指示を受け付ける。なお、本実施例においては、複合機10に設置された表示部12aや操作部12bを用いてユーザ介入を行う場合を例に挙げて説明するが、これに限られず、ユーザが扱うパーソナルコンピュータ等に通知してパーソナルコンピュータ上からユーザに介入させるようにしてもよい。
【0046】
署名処理部55は、認証局20との間で行う署名処理を司り、電子文書に署名を付与する機能を果たす。署名処理部55における署名処理は、保存制御部53からの指示に基づき開始される。例えば、この署名処理では、公開鍵を用いた認証方式を採用する電子署名が用いられることが多い。
【0047】
タイムスタンプ処理部56は、タイムスタンプ局30との間で行うタイムスタンプ処理を司り、電子文書にタイムスタンプを付与する機能を果たす。タイムスタンプ処理部56におけるタイムスタンプ処理は、署名処理部55において電子署名が付与された電子文書に対して行われる。すなわち、署名処理部55において署名処理が行われた電子文書に対し公的に証明される時刻情報等(時刻情報、ハッシュ値等)を付与することになる。
【0048】
文書格納処理部57は、電子署名およびタイムスタンプが付与された電子文書を、記憶部16へ格納する機能を果たす。なお、本実施例においては、複合機10内の記憶部16に電子文書を格納して保存する場合を例に挙げて説明するが、イントラネット41上のレポジトリやパーソナルコンピュータ等を格納先として設定しておき、署名処理等がなされた電子文書を、複合機10外部で保存するようにしてもよい。
【0049】
次に、図6を用いて、図1に示す複合機10において紙媒体の文書を電子化して公的文書として保存する際の動作について説明する。
【0050】
ユーザが、プラテンガラス上に原稿をセットし所定の設定を行った後、スタートボタン等を押下して処理の開始を指示すると、この処理は開始される。この処理が開始されると、まず、画像読取部14が、原稿から電子文書を読み取りこれが制御部13へと入力される。すると、制御部13の文書判断部52おいて、当該電子文書に署名処理等を実行するか否かの判断処理が行われる。
【0051】
この判断処理では、まず、フォーマット抽出部61が、電子文書からフォーマットを抽出する(ステップS102)。すると、フォーマット判断部62が、この抽出されたフォーマットと、設定情報保持部51に保持された特定フォーマット情報とが一致するか否かを判断する(ステップS102)。この判断の結果、フォーマット不一致の場合には(ステップS103でNO)、ステップS109における署名処理が開始されることになるが、フォーマットが一致する場合には(ステップS103でYES)、条件判断領域抽出部63が、電子文書から条件判断領域を抽出し、この抽出した条件判断領域にOCR処理を行う(ステップS104)。すると、条件判断領域判断部64において、この抽出された領域の文字列が、設定情報保持部51に保持された条件情報に該当するか否かが判断される。
【0052】
この判断の結果、抽出された領域の文字列が所定の条件に該当する場合には(ステップS105でYES)、保存制御部53からの指示を受けたユーザ介入制御部54が、表示部12aに上記図5で説明したユーザ介入画面を表示して当該文書がe−文書法の対象外である旨をユーザに通知する(ステップS106)。ここで、この通知を受けたユーザが、操作部12bから処理の継続を指示した場合には(ステップS107でYES)、ステップS109における署名処理が開始されることになるが、ユーザが処理の中止を指示した場合には(ステップS107でNO)、保存制御部53が各部へ中止を指示することで、当該文書の保存処理が中止され(ステップS108)、この処理は終了する。
【0053】
一方、ステップS105における判断の結果、抽出された領域の文字列が所定の条件に該当しなかった場合には(ステップS105でNO)、保存制御部53からの指示を受けた署名処理部55において署名処理が行われる(ステップS109)。この署名処理に成功すると、続いてタイムスタンプ処理部56においてタイムスタンプ処理が行われ(ステップS110)、これにより、原稿から読み取られた電子文書に、電子署名およびタイムスタンプが付与されることになる。この電子署名およびタイムスタンプが付与された電子文書は、文書格納処理部57により記憶部16へ格納され、保存されることになる(ステップS111)。そして、この処理は終了する。
【0054】
なお、図6で説明した文書保存処理においては、読み取った電子文書がe−文書法の対象外である場合には、ユーザに通知し介入を行わせる動作となっていたが(ステップS106、ステップS107)、自動給紙フィーダ等を用いて連続して原稿を処理する際には、読み取られた電子文書がe−文書法の対象外であってもその都度ユーザ介入を行わせずに、処理終了後にその旨を伝えるように構成するなどして、処理の継続を優先するようにしてもよい。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2について説明する。実施例1においては、e−文書法の対象外となる電子文書を判断する構成となっていたが、実施例2においては、e−文書法の対象となる電子文書を判断する構成について説明する。なお、実施例2の全体構成、複合機20の概略構成は上記実施例1の図1および図2で説明したものと同一であるため、その説明は省略する。
【0056】
実施例2においては、上記実施例1の図3で説明した設定情報保持部51に保持される「特定フォーマット情報」、「領域情報」、「条件情報」等の設定情報に、e−文書法の対象となる文書を判断するのに必要な条件等を設定する。文書判断部52においては、この設定情報保持部51に保持された設定情報に基づいてe−文書法の対象となる電子文書を判断することになる。
【0057】
ここで、図7を用いて、紙媒体の文書を電子化して公的文書として保存する際の動作について説明する。
【0058】
ユーザが、プラテンガラス上に原稿をセットし所定の設定を行った後、スタートボタン等を押下して処理の開始を指示すると、この処理は開始される。この処理が開始されると、まず、画像読取部14が、原稿から電子文書を読み取り、これが制御部13へと入力される。すると、制御部13の文書判断部52おいて、当該電子文書に署名処理等を実行するか否かの判断処理が行われる。
【0059】
この判断処理では、まず、フォーマット抽出部61が、電子文書からフォーマットを抽出する(ステップS202)。すると、フォーマット判断部62が、この抽出されたフォーマットと、設定情報保持部51に保持された特定フォーマット情報とが一致するか否かを判断する(ステップS202)。この判断の結果、フォーマットが一致する場合には(ステップS203でYES)、ステップS209における署名処理が開始されることになるが、フォーマット不一致の場合には(ステップS203でNO)、条件判断領域抽出部63が、電子文書から条件判断領域を抽出し、この抽出した条件判断領域にOCR処理を行う(ステップS204)。すると、条件判断領域判断部64において、この抽出された領域の文字列が、設定情報保持部51に保持された条件情報に該当するか否かが判断される。
【0060】
この判断の結果、抽出された領域の文字列が所定の条件に該当しなかった場合には(ステップS205でNO)、保存制御部53からの指示を受けたユーザ介入制御部54が、表示部12aに上記図5で説明したユーザ介入画面を表示して当該文書がe−文書法の対象外である旨をユーザに通知する(ステップS206)。ここで、この通知を受けたユーザが、操作部12bから処理の継続を指示した場合には(ステップS207でYES)、ステップS209における署名処理が開始されることになるが、ユーザが処理の中止を指示した場合には(ステップS207でNO)、保存制御部53が各部へ中止を指示することで、当該文書の保存処理が中止され(ステップS208)、この処理は終了する。
【0061】
一方、ステップS205における判断の結果、抽出された領域の文字列が所定の条件に該当する場合には(ステップS205でYES)、保存制御部53からの指示を受けた署名処理部55において署名処理が行われる(ステップS209)。この署名処理に成功すると、続いてタイムスタンプ処理部56においてタイムスタンプ処理が行われる(ステップS210)。これにより、原稿から読み取られた電子文書に、電子署名およびタイムスタンプが付与される。このようにして電子署名およびタイムスタンプが付与された電子文書は、文書格納処理部57により記憶部16へ格納され、保存されることになる(ステップS211)。そして、この処理は終了する。
【0062】
なお、図7で説明した文書保存処理においては、読み取った電子文書がe−文書法の対象外である場合には、ユーザに通知し介入を行わせる動作となっていたが(ステップS206、ステップS207)、自動給紙フィーダ等を用いて連続して原稿を処理する際には、読み取られた電子文書がe−文書法の対象外であってもその都度ユーザ介入を行わせずに、処理終了後にその旨を伝えるように構成するなどして、処理の継続を優先するようにしてもよい。
【0063】
以上、実施例1および実施例2を用いて、本発明の代表的な実施形態の一例を説明したが、本発明は、上記および図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0064】
例えば、上記実施例においては、読み取った電子文書が特定のフォーマットに一致し、さらに所定の条件に該当する場合に、e−文書法の対象外(あるいは対象)となる電子文書であると判断していたが、必ずしもフォーマットと条件とを判断する必要はなく、文書の種類によっては、フォーマットだけを判断してe−文書法の対象外(あるいは対象)となる電子文書であるか否かを判断するようにしてもよい。またこれとは逆に、フォーマットは判断せずに、電子文書内に所定の情報(文字列、数字等)があるか否かによりe−文書法の対象外(あるいは対象)となる電子文書であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施例においては、公的文書としての保存に際して、署名処理の後、続けてタイムスタンプ処理を行う構成となっていたが、文書によってはまとめて一時にタイムスタンプを付与してもよいものもあるため、必ずしも署名処理とタイムスタンプ処理とを一時に行う必要はなく、署名処理だけを行う構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施例においては、本発明に係わる画像処理装置を複合機10に適用して実施する場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、本発明に係わる画像処理装置をスキャナ、複写機あるいはファックス等に適用して本発明を実施してもかまわない。
【0067】
また、上記実施例において説明した処理を、コンピュータにインストールされた制御プログラムにより実施するように構成してもよい。なお、この制御プログラムは、ネットワーク等の通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の画像処理装置および文書保存処理プログラムは、原稿から電子文書を読み取る機能を有する画像処理装置および、この処理をコンピュータに実行させる文書保存処理プログラム全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係わる画像処理装置を配して構成した画像読取システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示す複合機10の概略構成の一部を示す図である。
【図3】図2に示す制御部13の機能的な構成の一部である。
【図4】領収書のレイアウトの一例を示す図である。
【図5】ユーザ介入画面の画面レイアウトの一例を示す図である。
【図6】図1に示す複合機10の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施例2に係わる複合機10の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 複合機
11 通信部
12 UI(User Interface)部
12a 表示部
12b 操作部
13 制御部
14 画像読取部
15 画像形成部
16 記憶部
20 認証局
30 タイムスタンプ局
41 イントラネット
42 インターネット
51 設定情報保持部
52 文書判断部
53 保存制御部
54 ユーザ介入制御部
55 署名処理部
56 タイムスタンプ処理部
57 文書格納処理部
61 フォーマット抽出部
62 フォーマット判断部
63 条件判断領域抽出部
64 条件判断領域判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段で原稿から読み取られた電子文書の形式が所定の形式に一致するか否かを判断する形式判断手段と、
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致しないと判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行う署名処理手段と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記署名処理手段は、
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断された場合に、前記署名処理手段による署名処理を行うか否かを選択させるためのユーザ介入画面を表示器へ表示制御するユーザ介入制御手段
を更に具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記読取手段で原稿から読み取られた電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当するか否かを判断する条件判断手段
を更に具備し、
前記署名処理手段は、
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断され、かつ前記条件判断手段により前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記条件判断手段は、
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が領収書の形式に一致すると判断された場合に、該領収書の金額が所定額以上であるか否かを判断し、該領収書の金額が所定額以上であるときに前記所定条件に該当すると判断する
請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記形式判断手段により前記電子文書の形式が所定の形式に一致すると判断され、かつ前記条件判断手段により前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、前記署名処理手段による署名処理を行うか否かを選択させるためのユーザ介入画面を表示器へ表示制御するユーザ介入制御手段
を更に具備する請求項4記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記電子文書の時刻情報証明処理を行う時刻情報処理手段
を更に具備し、
前記時刻情報処理手段は、
前記署名処理手段による署名処理が行われた電子文書に対し時刻情報証明処理を行う
請求項1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
原稿から電子文書を読み取る画像処理装置における処理をコンピュータに実行させる文書保存処理プログラムであって、
前記原稿から読み取られた電子文書の形式が所定の形式に一致するか否かを判断する形式判断ステップと、
前記形式判断ステップにより前記電子文書の形式が一致しないと判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行う署名処理ステップと
を含む文書保存処理プログラム。
【請求項9】
前記原稿から読み取られた電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当するか否かを判断する条件判断ステップ
を更に含み、
前記署名処理ステップは、
前記形式判断ステップにより前記電子文書の形式が一致すると判断され、かつ前記条件判断ステップにより前記電子文書内の所定の領域における情報が所定条件に該当すると判断された場合に、当該電子文書の署名処理を行わない
請求項8記載の文書保存処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48132(P2008−48132A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221584(P2006−221584)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】