説明

画像処理装置およびX線診断装置

【課題】X線画像を用いて心筋細胞の生存度に関わる情報を提供すること。
【解決手段】画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、画像データ記憶部25に格納された時系列に沿った複数のX線画像から、心筋領域の染影状態が最も高い収縮期X線画像および拡張期X線画像を抽出する。画像変形部26cは、画像変形処理により、描出される被検体Pの心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように、収縮期X線画像および拡張期X線画像から収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成し、比画像生成部26dは収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素の画素値を除算処理することで算出した比の値を画素値とする比画像を生成する。そして、システム制御部21は、比画像生成部26dが生成した比画像を表示部23のモニタに表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置およびX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、心臓の虚血性心疾患の治療では、カテーテルを用いた血管内インターベンション治療と呼ばれる治療法が行なわれている。具体的には、血管内インターベンション治療においては、X線診断装置により治療対象部位の透視撮影が行なわれ、モニタに表示されたX線画像を参照する医師がカテーテルを操作することで、虚血の原因となっている梗塞部位の拡張が行なわれる。
【0003】
ここで、虚血性心疾患の治療後においては、血液の再灌流により心筋細胞の生存度(myocardial viability)が回復したか否かを確認することが重要となる。また、虚血性心疾患の治療を行なう際にも、生存度が低下している心筋細胞を特定することが、治療方針を決定するうえで重要となる。
【0004】
すなわち、虚血性心疾患の治療においては、心筋細胞が「生きているか否か」もしくは「回復したか否か」が医師にとって重要な指標となる。
【0005】
心筋細胞の生存度を非侵襲に知ることは困難であるが、間接的な手法としては、超音波診断装置やMRI装置により収縮運動における心筋の厚み変化を測定する手法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
かかる手法においては、拡張期と収縮期との間で心筋の厚み変化が大きければ心筋細胞が「生きている」とみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−124636号公報
【特許文献2】特開2005−270478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した従来の技術は、MRI装置や超音波診断装置により心筋の厚み変化を測定することで、心筋細胞の生存度を間接的に示す情報を医師に提供するが、虚血性心疾患の治療において用いられる装置がX線診断装置であることからも、X線診断装置により心筋細胞の生存度に関わる情報が提供されることが望ましい。
【0009】
しかしながら、現状では、X線診断装置により生成されたX線画像から、心筋細胞の生存度に関わる情報を提供する技術は、知られていなかった。
【0010】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、X線画像を用いて心筋細胞の生存度に関わる情報を提供することが可能となる画像処理装置およびX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、被検体の心位相を取得する心位相取得手段と、造影剤が注入された前記被検体の心臓を時系列に沿って撮影することで生成された複数のX線画像を記憶する画像記憶手段と、前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて抽出された第一の位相におけるX線画像および第二の位相におけるX線画像それぞれを、描出される心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように画像変形することで第一の画像および第二の画像を生成する画像変形手段と、前記画像変形手段によって生成された前記第一の画像および前記第二の画像において対応する画素の画素値を除算して比の値を算出し、当該算出した比の値を画素値とする比画像を生成する比画像生成手段と、前記比画像生成手段によって生成された前記比画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の本発明は、被検体の心位相を取得する心位相取得手段と、造影剤が注入された前記被検体の心臓を時系列に沿って撮影することで生成した複数のX線画像を記憶する画像記憶手段と、前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて抽出された第一の位相におけるX線画像および第二の位相におけるX線画像それぞれを、描出される心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように画像変形することで第一の画像および第二の画像を生成する画像変形手段と、前記画像変形手段によって生成された前記第一の画像および前記第二の画像において対応する画素の画素値を除算して比の値を算出し、当該算出した比の値を画素値とする比画像を生成する比画像生成手段と、前記比画像生成手段によって生成された前記比画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または6の発明によれば、X線画像を用いて心筋細胞の生存度に関わる情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1におけるX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、画像生成部を説明するための図である。
【図3】図3は、実施例1における画像処理部の構成を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例1における心位相取得部および画像抽出部を説明するための図である。
【図5】図5は、収縮期X線画像および拡張期X線画像を説明するための図である。
【図6】図6は、画像変形部による画像変形処理の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例1における比画像生成部を生成するための図である。
【図8】図8は、実施例1におけるX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2における画像抽出部を説明するための図である。
【図10】図10は、実施例3における画像処理部の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、実施例3において用いられるモデルを説明するための図である。
【図12】図12は、実施例3において比画像を生成するために用いられる計算式を説明するための図である。
【図13】図13は、実施例3におけるX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像処理装置およびX線診断装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る画像処理装置がX線診断装置に組み込まれている場合を実施例として説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、実施例1におけるX線診断装置の構成について説明する。図1は、実施例1におけるX線診断装置の構成を説明するための図である。
【0017】
図1に示すように、本実施例におけるX線診断装置は、高電圧発生器11と、X線管12と、X線絞り装置13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16と、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御部19と、絞り制御部20と、システム制御部21と、入力部22と、表示部23と、画像データ生成部24と、画像データ記憶部25と、画像処理部26とを有し、さらに心電計30と接続される。
【0018】
心電計30は、図示しない端子が取り付けられた被検体Pの心電波形を取得し、取得した心電波形を、時間情報とともに、後述する画像処理部26に送信する。
【0019】
高電圧発生器11は、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給し、X線管12は、高電圧発生部11から供給された高電圧によりX線を発生する。すなわち、高電圧発生器11は、X線管12へ供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量の調整や、被検体PへのX線照射のON/OFFの制御を行なう。
【0020】
X線絞り装置13は、X線管12が発生したX線を被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込むための装置である。例えば、X線絞り装置13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。
【0021】
天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0022】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子が配列された装置であり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像データ生成部24に送信する。
【0023】
Cアーム15は、X線管12、X線絞り装置13およびX線検出器16を保持するアームであり、X線管12およびX線絞り装置13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0024】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転および移動させるための装置であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための装置である。
【0025】
Cアーム・天板機構制御部19は、Cアーム回転・移動機構17および天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転調整および移動調整と、天板14の移動調整とを行なう。
【0026】
絞り制御部20は、X線絞り装置13が有する絞り羽根の開度を調整することで、X線の照射範囲を制御する。
【0027】
画像データ生成部24は、X線検出器16によって被検体Pを透過したX線から変換された電気信号を用いてX線画像を生成し、生成したX線画像を画像データ記憶部25に格納する。具体的には、画像データ生成部24は、図2に示すように、時系列に沿って生成した複数のX線画像(X線画像1、X線画像2、X線画像3、・・・)それぞれに対し、撮影時の時間を対応付けて画像データ記憶部25に格納する。なお、図2は、画像生成部を説明するための図である。
【0028】
画像データ記憶部25は、画像データ生成部24によって生成されたX線画像を、撮影時間に対応付けて記憶する。
【0029】
画像処理部26は、画像データ記憶部25が記憶するX線画像に対して各種画像処理を実行する処理部である。例えば、画像処理部26は、画像データ記憶部25が記憶する時系列に沿った複数のX線画像を処理することにより、動画像を生成する。なお、画像処理部26については、後に詳述する。
【0030】
入力部22は、X線診断装置を操作する医師や技師などの操作者が各種コマンドを入力するためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有し、操作者から受け付けたコマンドを、後述するシステム制御部21に転送する。
【0031】
表示部23は、入力部22を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、画像データ記憶部25が記憶するX線画像および画像処理部26によって画像処理されたX線画像の動画像などを表示したりするためのモニタを有する。
【0032】
システム制御部21は、X線診断装置全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部21は、入力部22から転送された操作者からのコマンドに基づいて、高電圧発生器11、Cアーム・天板機構制御部19、絞り制御部20を制御することで、X線量の調整およびX線照射のON/OFF制御と、Cアーム15の回転・移動の調整と、天板14の移動調整を行なう。これにより、X線診断装置は、心臓冠動脈に造影剤が注入された被検体Pの心臓を連続して撮影する。
【0033】
また、システム制御部21は、操作者からのコマンドに基づいて、画像データ生成部24における画像生成処理や画像処理部26における画像処理の制御を行なう。さらに、システム制御部21は、操作者からコマンドを受け付けるためのGUIや、画像データ記憶部25が記憶するX線画像および画像処理部26によって画像処理された動画像などを表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0034】
このように、本実施例におけるX線診断装置は、心臓冠動脈に造影剤が注入された被検体Pの心臓を連続して撮影することで時系列に沿った複数のX線画像を生成して画像データ記憶部25に格納するが、以下、詳細に説明する画像処理部26の処理により、画像データ記憶部25に格納されたX線画像を用いて、心筋細胞の生存度に関わる情報を提供することが可能となることに主たる特徴がある。
【0035】
以下、この主たる特徴について、図3〜7を用いて説明する。なお、図3は、実施例1における画像処理部の構成を説明するための図であり、図4は、実施例1における心位相取得部および画像抽出部を説明するための図であり、図5は、収縮期X線画像および拡張期X線画像を説明するための図であり、図6は、画像変形部による画像変形処理の一例を説明するための図であり、図7は、実施例1における比画像生成部を生成するための図である。
【0036】
図3に示すように、実施例1における画像処理部26は、心位相取得部26aと、画像抽出部26bと、画像変形部26cと、比画像生成部26dとを有する。
【0037】
心位相取得部26aは、心電計30から受信した心電波形および時間情報から、各時点における被検体Pの心位相を取得する。具体的には、心位相取得部26aは、図4の(A)に示すように、撮影開始後の各時点が、被検体Pの心臓の収縮期に対応する時点であるのか、被検体Pの心臓の拡張期に対応する時点であるのかを、心電波形および時間情報から取得する。
【0038】
画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、画像データ記憶部25に格納された時系列に沿った複数のX線画像から、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群をそれぞれ抽出する。
【0039】
例えば、X線診断装置により5秒間の連続撮影が行なわれた結果、5心拍分の複数のX線画像が生成された場合、画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、図4の(B)に示すように、それぞれ5枚からなる収縮期X線画像群(ES1〜ES5)および拡張期X線画像群(ED1〜ED5)を抽出する。
【0040】
そして、画像抽出部26bは、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから、造影剤による心筋領域の染影状態が高いX線画像それぞれを、収縮期X線画像および拡張期X線画像として抽出する。
【0041】
ここで、造影剤が冠状動脈に注入されたのちの心臓の造影画像においては、血管、心筋の順に染影される様子が描出され、その後、造影剤が静脈から抜けていく様子が描出される。すなわち、冠状動脈に注入された造影剤は、太い血管内から細い血管内へと流れ、そののち毛細血管内を流れ、その結果、心筋の細胞間質に流入する。そして、造影剤は、心筋の細胞間質に停滞したのち、約3心拍以内に心筋の細胞間質から静脈内に流出される。
【0042】
そこで、例えば、画像抽出部26bは、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから、血管領域を抽出し、抽出した血管領域を除去した画像群(血管除去画像群)を生成する。そして、画像抽出部26bは、生成した血管除去画像群において、造影効果が最も高いX線画像を画素値に基づいて抽出する。これにより、画像抽出部26bは、造影剤による心筋領域の染影状態が高い収縮期X線画像および拡張期X線画像を抽出する。例えば、画像抽出部26bは、図4の(B)に示すように、収縮期X線画像としてX線画像(ES3)を抽出し、拡張期X線画像としてX線画像(ED3)を抽出する。
【0043】
なお、本実施例では、画像抽出部26bにより収縮期X線画像および拡張期X線画像が自動的に抽出される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、収縮期X線画像および拡張期X線画像が操作者の判断により抽出される場合であってもよい。
【0044】
例えば、システム制御部21は、時系列に沿った複数のX線画像から画像処理部26により生成された動画像を表示部23のモニタに表示させる。そして操作者は、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群を指定し、指定した収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれの静止画の表示要求を、入力部22を介してシステム制御部21に通知する。そして、操作者は、システム制御部21の制御により表示部23のモニタに表示された各X線画像を参照して、心筋の染影状態が最も高いX線画像を目視により抽出することで、収縮期X線画像および拡張期X線画像を決定する。
【0045】
収縮期X線画像および拡張期X線画像について、図5を用いて説明する。図5の(A)に示すように、収縮期における心臓の形態と、拡張期における心臓の形態とでは、心臓の大きさの変化に伴い、心筋の厚みが異なる。具体的には、図5の(B)のモデル図に示すように、収縮期では、心臓が収縮することで心筋の厚みが大きくなり、収縮期では、心臓が拡張することで心筋の厚みは小さくなる。また、図5の(B)のモデル図に示すように、収縮期と拡張期とでは、心臓全体の位置が異なる。
【0046】
ここで、X線画像は、一方向から照射されたX線による投影画像である。すなわち、X線管12から被検体Pに向かって照射されたフォトンは、X線管12からX線検出器16への経路に位置する物体によって一部吸収されたうえでX線検出器16に達する。そして、X線検出器16においては、透過したフォトンの数に応じた電荷が発生し、発生した電荷の数が積算してカウントされる。そして、画像データ生成部24は、X線検出器16がカウントした電荷の積算数からX線画像の各画素の画素値を決定する。
【0047】
つまり、フォトンの経路上に存在する心筋に一定濃度の造影剤が含まれているとすると、心筋の厚みによって吸収されるフォトン数が変化することから、図5の(C)に示すように、収縮期X線画像および拡張期X線画像それぞれの画素値は、心筋の厚みに応じて変化する。したがって、収縮期X線画像と拡張期X線画像との画素値を比較することで、心筋の厚み変化を検出することができる。
【0048】
しかし、収縮期X線画像と拡張期X線画像との画素値を比較するためには、収縮期および拡張期におけるX線画像にて描出されている心臓の大きさおよび位置が一致するように画像変形を行なう必要がある。
【0049】
このため、本実施例における画像処理部26は、図3に示すように、画像変形部26cを有する。
【0050】
すなわち、画像変形部26cは、描出される被検体Pの心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように、収縮期X線画像および拡張期X線画像をアフィン変換などの画像変形処理することで、収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する。
【0051】
例えば、画像変形部26cは、図6に示すように、収縮期X線画像および拡張期X線画像それぞれを「10×10」のグリッドに分割する。そして、画像変形部26cは、対応するグリッド間にて画像の特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて、拡大縮小処理および位置あわせを行なって、収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する。
【0052】
あるいは、画像変形部26cは、収縮期X線画像および拡張期X線画像それぞれにおいて、血管分岐点や心臓周囲の形などの特徴点を抽出し、抽出した特徴点が一致するように、拡大縮小処理および位置あわせを行なって、収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する。
【0053】
図3に戻って、比画像生成部26dは、画像変形部26cによって生成された収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素の画素値を除算して比の値を算出し、算出した比の値を画素値とする比画像を生成する。
【0054】
すなわち、図5を用いて説明したように、拡張期と収縮期とでは心筋の厚みが異なるため、収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素間では、画素値が変わる。このため、拡張期と収縮期とで心筋厚みが変化しない領域では、比画像の画素値は、「1」となり、拡張期と収縮期とで心筋の厚みが2倍変化した領域では、比画像の画素値は、「1」より大きな値となる。
【0055】
そこで、比画像生成部26dは、例えば、図7に示すように、比の値が小さいほど暗くなるように比画像を生成する。これにより、比画像生成部26dは、図7に示すように、画像が暗くなっている領域が心筋細胞の生存度が低下している領域であるとする情報を提供可能な比画像を生成する。
【0056】
なお、比画像生成部26dは、比の値が大きいほど、画素が暗くなるように比画像を生成してもよい。
【0057】
また、比画像生成部26dは、医師により心筋の状態を把握することが容易になるように、収縮期変形画像および拡張期変形画像から血管領域を除去したうえで比画像を生成したり、生成した比画像から血管領域を除去したりする場合であってもよい。
【0058】
また、比画像生成部26dは、医師により心筋の状態を把握することが容易になるように、収縮期変形画像および拡張期変形画像から心臓領域以外の領域を除去したうえで比画像を生成したり、生成した比画像から心臓領域以外を除去したりする場合であってもよい。
【0059】
また、比画像生成部26dは、例えば、比が「1」以上の箇所は青く、比が「1」に近い場合は赤くなるように画素を構成することで、比画像をカラー着色して生成する場合であってもよい。
【0060】
図3に戻って、システム制御部21は、比画像生成部26dによって生成された比画像を、表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0061】
次に、図8を用いて、実施例1におけるX線診断装置の処理について説明する。図8は、実施例1におけるX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0062】
図8に示すように、実施例1におけるX線診断装置は、画像データ記憶部25に時系列に沿った複数のX線画像(造影画像)が格納されると(ステップS101肯定)、画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群を抽出する(ステップS102)。
【0063】
そして、画像抽出部26bは、心筋領域の染影状態が最も高いX線画像を抽出することで、収縮期X線画像群から収縮期X線画像を抽出し、拡張期X線画像群から拡張期X線画像を抽出する(ステップS103)。
【0064】
そののち、画像変形部26cは、アフィン変換などの画像変形処理により、描出される被検体Pの心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように、収縮期X線画像および拡張期X線画像から収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する(ステップS104)。
【0065】
続いて、比画像生成部26dは、画像変形部26cによって生成された収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素の画素値を除算処理することで算出した比の値を画素値とする比画像を生成する(ステップS105)。
【0066】
そして、システム制御部21は、比画像生成部26dが生成した比画像を表示部23のモニタに表示するように制御し(ステップS106)、処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、実施例1では、画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、画像データ記憶部25に格納された時系列に沿った複数のX線画像から収縮期X線画像群および拡張期X線画像群を抽出する。そして、画像抽出部26bは、心筋領域の染影状態が最も高いX線画像を抽出することで、収縮期X線画像群から収縮期X線画像を抽出し、拡張期X線画像群から拡張期X線画像を抽出する。
【0068】
そして、画像変形部26cは、画像変形処理により、描出される被検体Pの心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように、収縮期X線画像および拡張期X線画像から収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する。そして、比画像生成部26dは、画像変形部26cによって生成された収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素の画素値を除算処理することで算出した比の値を画素値とする比画像を生成し、システム制御部21は、比画像生成部26dが生成した比画像を表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0069】
したがって、心筋の厚み変化が描出された比画像を生成して表示することができ、上記した主たる特徴の通り、X線画像を用いて心筋細胞の生存度に関わる情報を提供することが可能となる。また、医師は、X線画像から生成した比画像を参照することで、心筋細胞の生存度を判定したうえで治療方針を決定することができ、血管内インターベンション治療をX線診断装置のみで行なうことが可能となる。
【実施例2】
【0070】
上述した実施例1では、収縮期X線画像および拡張期X線画像を各X線画像群から抽出する場合について説明したが、実施例2では、収縮期X線画像および拡張期X線画像を各X線画像群から合成する場合について、図9を用いて説明する。なお、図9は、実施例2における画像抽出部を説明するための図である。
【0071】
実施例2におけるX線診断装置および実施例2における画像処理部26は、図1および図3を用いて説明した実施例1におけるX線診断装置および実施例1における画像処理部26と同様の構成となる。しかし、実施例2においては、画像抽出部26bの処理内容が、実施例1と異なる。以下、これを中心に説明する。
【0072】
実施例2における画像抽出部26bは、収縮期X線画像群それぞれから造影剤による心筋領域の染影状態が最大である画素を抽出して合成することにより収縮期X線画像を生成する。同様に、実施例2における画像抽出部26bは、拡張期X線画像群それぞれから造影剤による心筋領域の染影状態が最大である画素を抽出して合成することにより拡張期X線画像を生成する。
【0073】
例えば、実施例2における画像抽出部26bは、図9に示すように、収縮期X線画像群(ES1〜ES5)および拡張期X線画像群(ED1〜ED5)それぞれから血管除去画像群を生成したうえで、同一画素のうち、「最も心筋が造影剤で染まっている値」であるピーク値を画素値として採用することで、収縮期X線画像および拡張期X線画像を生成する。
【0074】
なお、画像変形部26cおよび比画像生成部26dの処理内容は、ピーク値から合成された収縮期X線画像および拡張期X線画像を処理対象とする以外は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0075】
また、実施例2におけるX線診断装置の処理手順は、図8のステップS103にて収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから、ピーク値を採用して収縮期X線画像および拡張期X線画像を合成する以外は、図8を用いて説明した実施例1におけるX線診断装置における処理手順と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
上述してきたように、実施例2では、最も心筋が造影剤で染まっている収縮期X線画像および拡張期X線画像を合成して比画像を生成することができ、心筋細胞の生存度に関わる情報をより正確に提供することが可能となる。
【実施例3】
【0077】
実施例3では、心筋灌流画像を生成する際に算出される指標値を用いて比画像を生成する場合について、図10〜12を用いて説明する。なお、図10は、実施例3における画像処理部の構成を説明するための図であり、図11は、実施例3において用いられるモデルを説明するための図であり、図12は、実施例3において比画像を生成するために用いられる計算式を説明するための図である。
【0078】
実施例3における画像処理部26は、図3を用いて説明した実施例1および2の画像処理部26と比較して、図10に示すように、指標値算出部26eおよび心筋灌流画像生成部26fを新たに有する点が、実施例1および2と異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0079】
指標値算出部26eは、心筋の毛細血管における血液の灌流状況を表す「心筋灌流画像」を生成するために算出される指標値を、画像抽出部26bによって抽出された収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから算出する。
【0080】
まず、指標値算出部26eについて説明する前に、本実施例において用いられる心筋への造影剤の流出入モデルについて、図11を用いて説明する。ここで、図11に示すように、冠動脈から毛細血管に流入した血液(造影剤)は、毛細血管膜を透過して心筋の間質腔から細胞間隙に流入し、そののち、心筋の細胞間隙から間質腔を経て毛細血管へと流出する。
【0081】
そこで、図11に示すモデルでは、時刻「t」おいて、造影剤の心筋における単位体積当たりの相対濃度を「Cm(t)」と定義し、時刻「t」において、造影剤の冠動脈における単位体積当たりの相対濃度を「Ca(t)」として定義している。また、図11に示すモデルでは、冠動脈における造影剤濃度の時間変化を示す時間濃度曲線を入力関数とし、心筋の局所領域における造影剤濃度の時間変化を示す時間濃度曲線を出力関数とした場合、「心筋における血液の流入状態を示す指標値」を「K1」として定義し、「心筋における血液の流出状態を示す指標値」を「K2」として定義している。
【0082】
上述したように各値を定義した場合、時刻「t」における心臓の3次元座標(x, y, z)においては、心筋部と冠動脈との間で、以下の式(1)に示すような造影剤の濃度バランスが成立する。
【0083】
【数1】

【0084】
ここで、造影剤が心筋部に流入し始める条件下では、流入量が極めて少ないことから、「K2Cm(x,y,z,t)<<K1 Ca(x,y,z,t)」となる。これにより、式(1)は、以下に示す式(2)として近似することができる。
【0085】
【数2】

【0086】
さらに、式(2)を変形すると以下に示す式(3)が導出され、式(3)により、「K1」は、Y軸に「Cm(t)」、X軸に「Ca(t)」を時間積分した値をプロットした場合の傾きとして算出されることが示される。
【0087】
【数3】

【0088】
X線診断装置によって生成されたX線画像に対して図11に示すモデルを適用する場合、X線画像は、特定の位置にてX線管12から照射されたX線により被検体Pを投影した2次元画像であることから、以下では、直交座標系の座標(u, v)を用いる。ここで、時刻「t」にて投影方向における冠動脈部の画素に対応する画素値を「Ia(u,v,t)」として定義し、投影方向における冠動脈部の厚みを「Da(u,v)」として定義し、「t」の冠動脈部における造影剤の単位体積当たりの相対濃度を「Ca(u,v,t)」と定義すると、以下の式(4)に示す関係が成立する。なお、「Ia(u,v,0)」は、造影剤注入開始時にて投影方向における造影剤のない冠動脈部の画素に対応する画素値を示している。
【0089】
【数4】

【0090】
また、時刻「t」にて投影方向における心筋部の画素に対応する画素値を「Im(u,v,t)」として定義し、投影方向における心筋部の厚みを「Dm(u,v)」として定義し、「t」の心筋部における造影剤の単位体積当たりの相対濃度を「Cm(u,v,t)」と定義すると、以下の式(5)に示す関係が成立する。なお、「Im(u,v,0)」は、造影剤注入開始時にて投影方向における造影剤のない心筋部の画素に対応する画素値を示している。
【0091】
【数5】

【0092】
さらに、式(4)および式(5)の関係式を、式(3)を2次元座標系に変換した関係式に適用すると、以下に示す式(6)が成立する。
【0093】
【数6】

【0094】
式(6)において、「K1」は、心筋部の造影剤濃度を反映した画素値の自然対数値の変化量をY軸に、冠動脈部の造影剤濃度を反映した画素値の自然対数値の変化量を時間積分した値をX軸にプロットした場合の傾きとなる。ここで、「K1」に心筋部の厚みと冠動脈部の厚みとを反映させた新たな指標値「K1’」を、以下の式(7)により定義する。
【0095】
【数7】

【0096】
ここで、従来、心筋灌流画像を生成する際には、式(7)に示す指標値「K1’」が、心筋血流に比例する実質的な心筋局所領域への血液の流入状況を表す値として算出される。そして、「K1’」から、心筋領域における血流(造影剤)の最大値を示す画像や、心筋領域における血流(造影剤)の濃度変化を示す画像が心筋灌流画像として生成される。
【0097】
しかし、本実施例において、指標値算出部26eは、時系列に沿った複数のX線画像から「K1’」を算出するだけでなく、画像抽出部26bによって抽出された収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから「K1’」に対応する「K1ES’」および「K1ED’」を算出する。
【0098】
すなわち、投影方向における心筋部の厚みを、収縮期において「DmES(u,v)」とし、拡張期において「DmED (u,v)」とすると、「K1ES’」および「K1ED’」は、それぞれ以下に示す式(8)および式(9)として表される。
【0099】
【数8】

【0100】
【数9】

【0101】
そして、「K1ES’」を「K1ED’」で除算した比(Ratio)は、式(8)および式(9)から、以下に示す式(10)として表される。
【0102】
【数10】

【0103】
そして、式(10)の共通項を消去すると、以下の式(11)が導出される。
【0104】
【数11】

【0105】
ところで、造影剤が心筋の細胞間隙に分布しており、心拍運動による造影剤の毛細血管への流出入がほぼ無いとすると、「K1ES」と「K1ED」とは、ほぼ同じ値と見なすことができ、式(11)は、以下に示す式(12)に変形することができる。
【0106】
【数12】

【0107】
その結果、心筋の厚み変化の比は「K1ES’」および「K1ED’」の比として表すことができることが、以下の式(13)にて示される。
【0108】
【数13】

【0109】
すなわち、収縮期におけるX線画像群にて、収縮期での心筋部における造影剤の単位体積当たりの相対濃度である「CmES」の単位時間当たりの変化量は、「K1ES」と「CmES」との積で表され(図12の(1)参照)、拡張期での心筋部における造影剤の単位体積当たりの相対濃度である「CmED」の拡張期での単位時間当たりの変化量は、「K1ED」と「CmED」との積で表される(図12の(2)参照)。そして、式(1)から式(13)を用いて上述した説明によれば、「K1ES」および「K1ED」にて心筋の厚みを反映した「K1ES’」および「K1ED’」の比を算出すれば、収縮期と拡張期との間で発生する心筋の厚みの比が算出されることとなる(図12の(3)参照)。
【0110】
このようなことから、指標値算出部26eは、比画像を生成するために、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群それぞれから「K1’」に対応する「K1ES’」および「K1ED’」を画素ごとに算出する。
【0111】
そして、実施例3における画像変形部26cは、指標値算出部26eが画素ごとに算出した「K1ES’」および「K1ED’」を画素値した収縮期X線画像および拡張期X線画像を生成したうえで、実施例1および実施例2と同様に、画像変形処理を行なって収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する。
【0112】
そして、実施例3における比画像生成部26dは、収縮期変形画像および拡張期変形画像の対応する画素間で画素値を除算することにより比画像を生成する。
【0113】
また、心筋灌流画像生成部26fは、指標値算出部26eが時系列に沿った複数のX線画像から算出した「K1’」から心筋灌流画像を生成する。
【0114】
そして、システム制御部21は、比画像生成部26dによって生成された比画像を、心筋灌流画像生成部26fによって生成された心筋灌流画像とともに、表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0115】
なお、本実施例では、画像変形部26cが「K1ES’」および「K1ED’」から収縮期X線画像および拡張期X線画像を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像抽出部26bが「K1ES’」および「K1ED’」から収縮期X線画像および拡張期X線画像を生成する場合であってもよい。
【0116】
また、本実施例では、比画像とともに心筋灌流画像も生成して表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、比画像のみを生成して表示する場合であってもよい。
【0117】
次に、図13を用いて、実施例3におけるX線診断装置の処理について説明する。図13は、実施例3におけるX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0118】
図13に示すように、実施例3におけるX線診断装置は、画像データ記憶部25に時系列に沿った複数のX線画像(造影画像)が格納されると(ステップS201肯定)、画像抽出部26bは、心位相取得部26aが取得した被検体Pの心位相に基づいて、収縮期X線画像群および拡張期X線画像群を抽出する(ステップS202)。
【0119】
そして、指標値算出部26eは、比画像を生成するために、収縮期X線画像群から画素ごとに収縮期指標値「K1ES’」を算出し、拡張期X線画像群から画素ごとに拡張期指標値「K1ED’」を算出する(ステップS203)。
【0120】
そののち、画像変形部26cは、「K1ES’」および「K1ED’」から収縮期X線画像および拡張期X線画像を生成し(ステップS204)、生成した収縮期X線画像および拡張期X線画像を画像変形処理することにより、収縮期変形画像および拡張期変形画像を生成する(ステップS205)。
【0121】
続いて、比画像生成部26dは、画像変形部26cによって生成された収縮期変形画像および拡張期変形画像において対応する画素の画素値を除算処理することで算出した比の値を画素値とする比画像を生成する(ステップS205)。
【0122】
そして、システム制御部21は、比画像生成部26dが生成した比画像を表示部23のモニタに表示するように制御し(ステップS206)、処理を終了する。

【0123】
なお、図13には示さないが、指標値算出部26eは、時系列に沿った複数のX線画像から「K1’」を算出し、心筋灌流画像生成部26fは、指標値算出部26eが算出した「K1’」から心筋灌流画像を生成し、システム制御部21は、心筋灌流画像生成部26fが生成した心筋灌流画像を、比画像とともに表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0124】
上述してきたように、実施例3では、心筋灌流画像を生成する際に従来用いられていた指標値を収縮期および拡張期それぞれにおいて算出するだけで比画像を生成することができ、心筋細胞の生存度に関わる情報を簡易に提供することが可能となる。また、心筋灌流画像も比画像とともに生成して表示できるので、一回の造影撮影により、狭窄部位があるか否かの形態情報および心筋に血液が届いているか否かの灌流情報を、心筋細胞の生存度に係る情報とともに提供することが可能となる。
【0125】
なお、上記の実施例1〜3では、画像処理部26がX線診断装置に組み込まれている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像処理部26がX線診断装置とは独立に設置され、X線診断装置にて撮影された時系列に沿った複数のX線画像から比画像を生成する場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る画像処理装置およびX線診断装置は、心臓の虚血性心疾患の治療を行なう場合に有用であり、特に、X線画像を用いて心筋細胞の生存度に関わる情報を提供することに適する。
【符号の説明】
【0127】
11 高電圧発生器
12 X線管
13 X線絞り装置
14 天板
15 Cアーム
16 X線検出器
17 Cアーム回転・移動機構
18 天板移動機構
19 Cアーム・天板機構制御部
20 絞り制御部
21 システム制御部
22 入力部
23 表示部
24 画像データ生成部
25 画像データ記憶部
26 画像処理部
26a 心位相取得部
26b 画像抽出部
26c 画像変形部
26d 比画像生成部
30 心電計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心位相を取得する心位相取得手段と、
造影剤が注入された前記被検体の心臓を時系列に沿って撮影することで生成された複数のX線画像を記憶する画像記憶手段と、
前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて抽出された第一の位相におけるX線画像および第二の位相におけるX線画像それぞれを、描出される心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように画像変形することで第一の画像および第二の画像を生成する画像変形手段と、
前記画像変形手段によって生成された前記第一の画像および前記第二の画像において対応する画素の画素値を除算して比の値を算出し、当該算出した比の値を画素値とする比画像を生成する比画像生成手段と、
前記比画像生成手段によって生成された前記比画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて、前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記第一の位相および前記第二の位相に相当するX線画像群を抽出し、当該抽出した各X線画像群のうち、前記造影剤による心筋の造影効果が最大であるX線画像それぞれを、前記第一の位相におけるX線画像および前記第二の位相におけるX線画像として抽出する画像抽出手段をさらに備え、
前記画像変形手段は、前記画像抽出手段によって抽出された前記第一の位相におけるX線画像および前記第二の位相におけるX線画像に対して画像変形処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像抽出手段は、前記第一の位相におけるX線画像群それぞれから前記造影剤による心筋の造影効果が最大である画素を抽出して合成することにより前記第一の位相におけるX線画像を生成し、前記第二の位相におけるX線画像群それぞれから前記造影剤による心筋の造影効果が最大である画素を抽出して合成することにより前記第二の位相におけるX線画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて抽出された前記第一の位相におけるX線画像群および前記第二の位相におけるX線画像群それぞれにおいて、心筋の毛細血管における血液の灌流状況を表す第一の指標値および第二の指標値を画素ごとに算出する指標値算出手段をさらに備え、
前記画像変形手段は、前記指標値算出手段によって画素ごとに算出された前記第一の指標値および前記第二の指標値それぞれを画素値とすることで生成された前記第一の位相におけるX線画像および前記第二の位相におけるX線画像を画像変形処理することにより前記第一の画像および前記第二の画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第一の位相は、心臓の収縮期であり、前記第二の位相は、心臓の拡張期であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
被検体の心位相を取得する心位相取得手段と、
造影剤が注入された前記被検体の心臓を時系列に沿って撮影することで生成した複数のX線画像を記憶する画像記憶手段と、
前記画像記憶手段が記憶する前記複数のX線画像から前記心位相取得手段によって取得された前記被検体の心位相に基づいて抽出された第一の位相におけるX線画像および第二の位相におけるX線画像それぞれを、描出される心臓の大きさおよび位置が所定の範囲内で一致するように画像変形することで第一の画像および第二の画像を生成する画像変形手段と、
前記画像変形手段によって生成された前記第一の画像および前記第二の画像において対応する画素の画素値を除算して比の値を算出し、当該算出した比の値を画素値とする比画像を生成する比画像生成手段と、
前記比画像生成手段によって生成された前記比画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とするX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−246726(P2010−246726A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99242(P2009−99242)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】