説明

画像処理装置とその制御方法

【課題】従来、複数の画像処理モジュールを有する画像処理装置において、システムの負荷を最適化するために、負荷状態を監視する特別な機構を備えて周期的に各モジュールでの負荷バランスを計算し、負荷分散を行っていた。しかし、その方法は負荷分散の制御が複雑になるという課題があった。
【解決手段】同一の画像処理モジュールを複数備えた構成で、システムの負荷状態を監視する特別な機構を備えることなく、印刷ジョブの内容に応じて各画像処理モジュールで処理する内容を切り替えて、最適な負荷分散を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置とその制御方法に関し、特に、一連のデータ処理を施す処理機構を備えた画像処理装置とその装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の画像処理モジュールを有する画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1の画像処理装置では汎用命令セットと専用命令セットを持ち合わせた複数の画像処理モジュールを有している。そして、装置の負荷バランスに応じて画像処理モジュールに汎用命令と専用命令で画像処理を記述した第1のプログラムと、汎用命令のみで画像処理を記述した第2のプログラムを実行させ、高速化を図っている。
【特許文献1】特開2006−133839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来例では、処理能力テーブルや負荷分散テーブルなどの演算用テーブルを装置内部のRAMや外部RAMなどの記憶媒体に保持し、それらを用いて周期的に負荷バランスを計算し、その負荷バランスに応じて処理内容を切り替えていた。そのため、CPUの負荷状態を監視する特別な機構を備える必要があり、最適な負荷分散の制御が複雑であった。また、同一の処理機構を複数備えるのではなく、一部の画像処理に特化した構成となっているため、柔軟性や拡張性に欠けるという課題があった。
【0004】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、同一の処理機構を複数備え、システムの負荷状態を監視する特別な機構を備えることなく、ジョブの内容に応じて各処理機構の処理内容を切り替える画像処理装置とその装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の画像処理装置は、以下のような構成からなる。
【0006】
即ち、第1の処理部と第2の処理部を用いて一連の画像処理を実行することにより、入力された画像データを処理し、該処理された画像データに基づいて、記録媒体に画像を記録する画像処理装置であって、複数の記録モードに係わる情報を格納する不揮発性の記憶手段と、前記複数の記録モードの内、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを定めた記録モードを基準記録モードとして前記不揮発性の記憶手段に設定する設定手段と、前記画像データを含む印刷ジョブを外部の装置より入力する入力手段と、前記入力手段により入力された印刷ジョブから記録モードを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された記録モードと前記基準記録モードとを比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果に従って、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを変更する変更手段と、前記設定手段により設定された、或いは、前記変更手段により変更された画像処理の内容を、前記第1の処理部と前記第2の処理部でそれぞれ実行するように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また他の発明によれば、第1の処理部と第2の処理部を用いて一連の画像処理を実行することにより、入力された画像データを処理し、該処理された画像データに基づいて、記録媒体に画像を記録する画像処理装置の制御方法であって、不揮発性のメモリに格納された複数の記録モードの内、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを定めた記録モードを基準記録モードとして前記不揮発性のメモリに設定する設定工程と、前記画像データを含む印刷ジョブを外部の装置より入力する入力工程と、前記入力工程において入力された印刷ジョブから記録モードを決定する決定工程と、前記決定工程において決定された記録モードと前記基準記録モードとを比較する比較工程と、前記比較工程における比較の結果に従って、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを変更する変更工程と、前記設定工程において設定された、或いは、前記変更工程において変更された画像処理の内容を、前記第1の処理部と前記第2の処理部でそれぞれ実行するように制御する制御工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法を備える。
【発明の効果】
【0008】
従って本発明によれば、印刷ジョブに応じて第1の処理部と第2の処理部で実行する画像処理の内容を切り替えるので、システムの負荷状態を監視する特別な機構を備える必要がなく、容易に負荷分散を実現できるという効果がある。また、処理部を複数備える構成のため、将来的に、処理内容の変更や追加、機能や性能の向上などに柔軟に対処できるなど、柔軟性や拡張性が高いという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、既に説明した部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0010】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0011】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0012】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0013】
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0014】
本発明に従う画像処理装置の実施例としてはホストから画像データを受信して画像処理を行い、これを記録する記録装置が代表的なものである。
【0015】
<インクジェット記録装置本体の概略説明(図1〜図2)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の外観斜視図であり、図2は図1に示したインクジェット記録装置のアッパカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【0016】
図1〜図2に示されるように、インクジェット記録装置(以下、記録装置)2の前面に手差し挿入口88が設けられ、その下部に前面へ開閉可能なロール紙カセット89が設けられている。記録紙等の記録媒体(以下、記録媒体)は手差し挿入口88又はロール紙カセット89から記録装置内部へと供給される。インクジェット記録装置は、2個の脚部93に支持された装置本体94、排紙された記録媒体を積載するスタッカ90、内部が透視可能な透明で開閉可能なアッパカバー91を備えている。また、装置本体94の右側には、操作パネル部12、インク供給ユニット8が配設されている。操作パネル部12の裏側には制御ユニット5が配設される。
【0017】
このような構成の記録装置2はA0、B0などのポスタサイズの大きな画像を記録することができる。
【0018】
図2に示されているように、記録装置2は、記録媒体を矢印B方向(副走査方向)に搬送するための搬送ローラ70と、記録媒体の幅方向(矢印A方向、主走査方向)に往復移動可能に案内支持されたキャリッジユニット(以下、キャリッジ)4を備えている。キャリッジ4にはキャリッジモータ(不図示)の駆動力がキャリッジベルト(以下、ベルト)270を介して伝えられ、矢印A方向に往復移動する。キャリッジ4にはインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)11が装着される。記録ヘッド11の吐出口の目詰まりなどによるインク吐出不良は回復ユニット9により解消される。
【0019】
この記録装置の場合、キャリッジ4には、記録媒体にカラー記録を行うために、4つのカラーインクに対応して4つのヘッドからなる記録ヘッド11が装着されている。即ち、記録ヘッド11は、K(ブラック)インクを吐出するKヘッド、C(シアン)インクを吐出するCヘッド、M(マゼンタ)インクを吐出するMヘッド、Y(イエロ)インクを吐出するYヘッドで構成されている。このような構成のため、インク供給ユニット8にはKインク、Cインク、Mインク、Yインクを夫々収容する4つのインクタンクが含まれる。
【0020】
以上の構成で記録媒体に記録を行う場合、まず、搬送ローラ70によって記録媒体を所定の記録開始位置まで搬送する。その後、キャリッジ4により記録ヘッド11を主走査方向に走査させる動作と、搬送ローラ70により記録媒体を副走査方向に搬送させる動作とを繰り返すことにより、記録媒体全体に対する記録が行われる。
【0021】
即ち、ベルト270およびキャリッジモータによってキャリッジ4が図2に示された矢印A方向に移動することにより、記録媒体に記録が行われる。キャリッジ4が走査される前の位置(ホームポジション)に戻されると、搬送ローラによって記録媒体が副走査方向に搬送され、その後、再び図2中の矢印A方向にキャリッジを走査することにより、記録媒体に対する画像や文字等の記録が行なわれる。上記の動作を繰り返し、記録媒体の1枚分の記録が終了すると、その記録媒体はスタッカ90内に排紙され、例えば、A0サイズ1枚分の記録が完了する。
【0022】
図3は、本発明に従う画像処理装置の代表的な実施例である記録装置2の制御構成を示すブロック図である。
【0023】
記録装置2は、制御構成から見ると、図1〜図2に示した大きなサイズの記録媒体に記録を行う機構部からなる印刷機構120と、印刷機構120に2値化データを供給する制御ユニット5と、LCDなどで構成される表示ユニット400を備えている。制御ユニット5は、外部のコンピュータ1から画像データを受信し、その画像データを幾つかのステップを経て印刷機構120で印刷可能な2値データに変換して出力する。
【0024】
制御ユニット5は、画像データに対して印刷前に一連の複数の画像処理を施す装置であり、同一のASIC2個を直列に接続した構成となっている。
【0025】
ここで、ASIC200(第1の処理部)とASIC300(第2の処理部)、及び、ASIC300と印刷機構120とはチップ間インタフェース(チップ間I/F)210、310、311で、通信インタフェース420、430により接続されている。各チップ間を接続する通信インタフェース420、430の具体例としては、PCI−Expressなどの高速インタフェースが挙げられる。
【0026】
CPU201、301は、本発明に従う分割割合決定手段、記憶手段、及び記録モード比較手段や、これらの一部として、記録装置2全体の制御を司っている。CPU201とCPU301は相互に通信し合い、同期をとって動作する。
【0027】
ROM202、302は夫々、ROMインタフェース(ROMI/F)203、303によりASIC200、300と接続されており、装置全体の制御プログラムや各種データの読み出しが行われる。NVRAM(不揮発性メモリ)204、304は夫々、NVRAMインタフェース(NVRAM I/F)205、305により接続された更新可能な記憶手段である。NVRAM204には受信した画像データの記録モードと、ASIC200とASIC300での処理内容の切り替え箇所の情報が記憶される。NVRAM204、304の具体例としては、EPROM、EEPROM、FeRAM等が挙げられる。
【0028】
RAM206、306はメモリコントローラ207、307により接続されており、記録装置2の動作時に各種データの書き込みや読み出しが行われる。
【0029】
ホストインタフェース(ホストI/F)208、308はコンピュータ1と通信を行うための通信手段であり、ホストインタフェース(ホストI/F)208は通信ケーブル410によりコンピュータ1に接続される。ここで、通信ケーブル410は、パラレルケーブル、SCSIケーブル、シリアルケーブル、ネットワークケーブル等の汎用ケーブルでも、専用のケーブルでも何れでも構わない。
【0030】
表示ユニット400は記録装置2のマンマシンインタフェースの一部を構成し、表示ユニットインタフェース(表示ユニットI/F)209により制御ユニット5と接続されている。画像処理モジュール212、312は受信した画像データに対して一連の複数の画像処理を施して2値化データを生成する。2値化データは印刷機構120に転送され、そのデータが表現する画像が記録用紙等の記録媒体に記録される。
【0031】
なお、ASIC200、300の各構成部はシステムバス213、313により接続されている。
【0032】
図4は、画像処理モジュール212、312が実行する一連の画像処理の流れを示す図である。
【0033】
コンピュータ1から送られた画像データは、ASIC200の画像処理モジュール212に転送される。画像処理モジュール212又は312では、まず、復号処理500で符号化された1画素RGB各色成分を8ビットで表現する画像データに対する復号処理が行われる。次に、入力ガンマ変換処理510でRGB各8ビットデータにガンマ補正処理を施して1画素RGB各色成分12ビットの画像データを生成する。インク色展開処理520ではRGB各12ビットデータに対して輝度濃度変換を施してCMYK各12ビットの濃度データへの色空間変換処理を行う。
【0034】
さらに、出力ガンマ変換処理530ではCMYK各12ビットの濃度データに対してガンマ補正処理を施して、CMYK各14ビットの濃度データを生成する。解像度変換処理540ではCMYK各14ビットの濃度データに対してキャリッジ移動方向(図2の矢印A方向であり、主走査方向ともいう)に関して解像度変換処理を行う。誤差拡散処理550ではCMYK各14ビットの濃度データにN値の誤差拡散処理を施して、各画素各色成分をN値(Nは2〜17の整数)で表現する画像データを生成する。そして、網点処理560では各画素各色成分N値のデータに対して2値化処理を施して、CMYK各1ビットの2値データを生成する。最後に、生成された2値データを印刷機構120へ転送する。
【0035】
図5は記録モードと入力解像度と入力画像データの1画素1成分当りのビット数と入力画像データの色成分数の関係を示す図である。
【0036】
この図は、記録に用いられるメディア(媒体)が普通紙、主走査方向の出力解像度が1200dpiのときの記録モード一覧を表しており、記録モード113が基準となる記録モード(基準記録モード)に設定されている。そして、そのときのASIC200とASIC300での処理内容の切り替え箇所は図4のB(出力ガンマ変換処理後)である。
【0037】
例えば、入力色数が“1”とは画像データを表現する色成分が1であることを示す。また、入力ビット数が“8”とは各画素各色成分を表現する画像データのビット数が“8”であることを示す。
【0038】
なお、基準となる記録モードには、記録装置2で印刷ジョブを処理したときに、ASIC200とASIC300にかかる負荷バランスが均一に保たれる記録モードが設定されている。つまり、記録モード113では、ASIC200で復号処理500から出力ガンマ変換処理530までを実行し、ASIC300で解像度変換処理540から網点処理560までを実行する。このようにして、システム全体として負荷バランスが均一に保たれる。
【0039】
次に、以上構成の記録装置における負荷バランス調整処理についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0040】
図6は記録装置2の全体の動作を示すフローチャート、図7は制御ユニット5で実行する解像度比較、色数比較、ビット数比較に関する処理を示すフローチャート、図8はASIC200とASIC300の処理内容の切り替え動作を示すフローチャートである。
【0041】
まず、図6を参照しながら、記録装置2の全体の動作について説明する。
【0042】
ステップS600で記録装置2は印刷ジョブを受信すると、ステップS610では印刷ジョブに設定された記録に用いられる媒体の種類(印刷メディア)と主走査方向の出力解像度をチェックする。そして、ステップS620では、取得した印刷メディアと出力解像度の情報から記録モードを決定する。
【0043】
次に、ステップS630では、受信した印刷ジョブに基づいて決定した記録モードと基準記録モードが一致するかどうかを比較する。ここで、その比較の結果、両者が一致した場合は、処理はステップS680に進み、ASIC200とASIC300で処理する内容の切り替えは行わずに、そのまま記録処理を行う。
【0044】
これに対して、受信した印刷ジョブに基づいて決定した記録モードが基準記録モードと一致しなかった場合、処理はステップS640に進み、NVRAM204に記憶されている記録モードと比較し、両者が一致するかを調べる。この比較の結果、両者が一致する場合、処理はステップS670に進み、その記録モードに対応した切り替え箇所の情報を設定し、その後、ステップS680で記録処理を行う。これに対して、NVRAM204に記憶されている記録モードと受信した印刷ジョブに基づいて決定した記録モードが一致しなかった場合、処理はステップS650に進み、入力解像度と入力色数と入力ビット数をチェックする。そして、その処理後、ステップS660において、受信した印刷ジョブに基づいて決定した記録モードと切り替え箇所の情報をNVRAM204に記憶し、さらにステップS670において切り替え箇所の情報を設定する。最後に、ステップS680で記録処理を行う。
【0045】
ここで、ステップS650で実行する入力解像度と入力色数と入力ビット数のチェックの詳細について、図7を参照して説明する。
【0046】
まず、ステップS700では受信した印刷ジョブに設定された入力解像度と入力色数と入力ビット数を取得する。次に、ステップS710では、入力解像度をチェックし、受信した印刷ジョブの入力解像度と基準記録モードの入力解像度を比較し、両者が一致しているかどうかを調べる。この比較の結果、両者が一致していなければ、処理はステップS740に進み、ASIC200とASIC300で処理内容の切り替えを行う。その後、処理はステップS660に進み、そのときの記録モードと切り替え箇所の情報をNVRAM204に記憶する。これに対して、両者が一致した場合は、処理はステップS720に進む。
【0047】
ステップS720では、入力色数をチェックし、受信した印刷ジョブの色数(画像データで用いられている色成分の数)と基準記録モードの入力色数とを比較し、両者が一致しているかどうかを調べる。この比較の結果、両者が一致していない場合、処理はステップS740に進み、ASIC200とASIC300で処理内容の切り替えを行う。その後、処理はステップS660に進み、そのときの記録モードと切り替え箇所の情報をNVRAM204に記憶する。これに対して、ステップS720で両者が一致した場合、処理はステップS730に進む。
【0048】
ステップS730では、入力ビット数をチェックし。受信した印刷ジョブのビット数(各画素各色成分を表現するために用いられるビット数)と基準記録モードの入力ビット数とを比較し、両者が一致するかどうかを調べる。この比較の結果、両者が一致しない場合、処理はステップS740に進み、ASIC200とASIC300で処理内容の切り替えを行う。その後、処理はステップS660に進み、そのときの記録モードと切り替え箇所の情報をNVRAM204に記憶する。これに対して、両者が一致した場合は、ASIC200とASIC300で処理内容の切り替えは行わずに、処理はステップS660に進み、そのときの記録モードと切り替え箇所の情報をNVRAM204に記憶する。
【0049】
ここで、ステップS740で実行するASIC200とASIC300で処理内容の切り替える処理の詳細について、図8を参照して説明する。
【0050】
まず、ステップS800では、受信した印刷ジョブと基準記録モードの入力解像度、もしくは入力色数、もしくは入力ビット数を比較する。ここで、受信した印刷ジョブで設定されている値のほうが大きい場合は、処理はステップS810に進み、ASIC200とASIC300での処理内容の切り替え箇所を図4のAに変更する。即ち、ASIC200で復号処理500からインク色展開処理520までを実行する一方、ASIC300で出力ガンマ変換処理530から網点処理560までを実行するように変更する。
【0051】
これに対して、受信した印刷ジョブで設定されている値のほうが小さい場合は、処理はステップS820に進み、ASIC200とASIC300での処理内容の切り替え箇所を図4のCに変更する。即ち、ASIC200で復号処理500から解像度変換処理540までを実行する一方、ASIC300で誤差拡散処理550と網点処理560を実行するように変更する。その後、処理はステップS660に進む。
【0052】
従って以上説明した実施例に従えば、画像データを処理する機構として同一の処理機構(ASIC)を複数備えた装置において、印刷ジョブの内容に応じて各処理機構での処理内容を切り替えることができる。これにより、より簡易な方法で装置の負荷分散が実現できる。
【0053】
以上の実施例は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出のために熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体等)を備え、その熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いて記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0054】
なお、上述の実施例は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述の実施例では、画像処理の内容として、復号処理、入力ガンマ変換処理、インク色展開処理、出力ガンマ変換処理、解像度変換処理、誤差拡散処理、網点処理の各処理を挙げた。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではなく、実現可能な他の画像処理の構成でも構わない。
【0055】
また、本発明に従う画像処理装置の制御プログラムは、CD−ROMやフレキシブルディスク等の記憶媒体から、又は電子メールやパソコン通信等のネットワークを介して、画像処理装置やその装置と接続するPC等にロードされ、実行されてもよい。例えば、画像処理装置のRAMやPCのHDDにこのプログラムを格納することができる。
【0056】
さらに加えて、本発明のインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力装置として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】インクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図3】本発明に従う画像処理装置の代表的な実施例である記録装置2の制御構成を示すブロック図である。
【図4】画像処理モジュール212、312が実行する一連の画像処理の流れを示す図である。
【図5】記録モードと入力解像度と入力画像データの1画素1成分当りのビット数と入力画像データの色成分数の関係を示す図である。
【図6】記録装置2の全体の動作を示すフローチャートである。
【図7】制御ユニット5で実行する解像度比較、色数比較、ビット数比較に関する処理を示すフローチャートである。
【図8】ASIC200とASIC300の処理内容の切り替え動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 コンピュータ
2 記録装置
5 制御ユニット
120 印刷機構
200、300 ASIC
201、301 CPU
202、302 ROM
203、303 ROMインタフェース
204、304 NVRAM
205、305 NVRAMインタフェース
206、306 RAM
207、307 メモリコントローラ
208、308 ホストインタフェース
209、309 表示ユニットインタフェース
210、211、310、311 チップ間インタフェース
212、312 画像処理モジュール
213、313 システムバス
400 表示ユニット
410 通信ケーブル
420、430 通信インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の処理部と第2の処理部を用いて一連の画像処理を実行することにより、入力された画像データを処理し、該処理された画像データに基づいて、記録媒体に画像を記録する画像処理装置であって、
複数の記録モードに係わる情報を格納する不揮発性の記憶手段と、
前記複数の記録モードの内、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを定めた記録モードを基準記録モードとして前記不揮発性の記憶手段に設定する設定手段と、
前記画像データを含む印刷ジョブを外部の装置より入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された印刷ジョブから記録モードを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された記録モードと前記基準記録モードとを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果に従って、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを変更する変更手段と、
前記設定手段により設定された、或いは、前記変更手段により変更された画像処理の内容を、前記第1の処理部と前記第2の処理部でそれぞれ実行するように制御する制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記比較手段による比較の結果、前記決定手段により決定された記録モードと前記基準記録モードが一致する場合には、前記設定手段により設定された基準記録モードで前記第1の処理部と前記第2の処理部が実行されるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記決定手段により決定された記録モードと前記基準記録モードが一致しなかった場合には、さらに、前記決定手段により決定された記録モードと前記不揮発性の記憶手段に格納された複数の記録モードを比較することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブには、記録に用いられる媒体の種類と出力解像度と入力解像度と入力色数と入力ビット数が含まれることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記比較手段は、前記決定手段により決定された記録モードが前記不揮発性の記憶手段に格納された複数の記録モードのいずれとも一致しなかった場合には、さらに、前記印刷ジョブに含まれる入力解像度と入力色数と入力ビット数を、前記基準記録モードの入力解像度と入力色数と入力ビット数と比較することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変更手段により変更された内容を前記不揮発性の記憶手段に書き込むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理部と前記第2の処理とはそれぞれ、ASICであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記一連の画像処理は、入力された画像データの復号処理、入力ガンマ変換処理、色空間変換処理、出力ガンマ変換処理、解像度変換処理、誤差拡散処理、網点処理を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像処理装置は、インクジェット記録装置であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
第1の処理部と第2の処理部を用いて一連の画像処理を実行することにより、入力された画像データを処理し、該処理された画像データに基づいて、記録媒体に画像を記録する画像処理装置の制御方法であって、
不揮発性のメモリに格納された複数の記録モードの内、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを定めた記録モードを基準記録モードとして前記不揮発性のメモリに設定する設定工程と、
前記画像データを含む印刷ジョブを外部の装置より入力する入力工程と、
前記入力工程において入力された印刷ジョブから記録モードを決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された記録モードと前記基準記録モードとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較の結果に従って、前記一連の画像処理において前記第1の処理部で実行される画像処理と前記第2の処理部で実行される画像処理とを変更する変更工程と、
前記設定工程において設定された、或いは、前記変更工程において変更された画像処理の内容を、前記第1の処理部と前記第2の処理部でそれぞれ実行するように制御する制御工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−151497(P2009−151497A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327986(P2007−327986)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】