画像処理装置の支持構造
【課題】画像処理装置にあって、重心に偏りがある場合にあっても、画像処理部の平面度、平行度を確保できるとともに、例えば、装置が机上に設置される場合にあっても、容易に位置ずれが発生しない画像処理装置の支持構造を得る。
【解決手段】装置本体50の下側部分に本体50を支持するベース部30を備え、前記本体50内若しくは本体50とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、接地対象面に接地当接面61で接地し、弾性材料からなる弾性突出部60を保持する保持部を、前記ベース部30に設け、この保持部に、前記弾性突出部60が圧縮状態で保持されている。
【解決手段】装置本体50の下側部分に本体50を支持するベース部30を備え、前記本体50内若しくは本体50とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、接地対象面に接地当接面61で接地し、弾性材料からなる弾性突出部60を保持する保持部を、前記ベース部30に設け、この保持部に、前記弾性突出部60が圧縮状態で保持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造に関する。この種の画像処理装置としては、複写装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
この種の画像処理装置は、装置の底部に、所謂、台ゴムを取付けて、そのベース部を支持するのが通常である。本願出願人は、台ゴムをベース部の底面にネジで固定することを提案している(例えば、特許文献1)。
さらに、本願出願人は、台ゴムによる支持部位間における撓みを防止するために、その撓みが発生する可能性の高い中間部位に突起部を設けることを提案している(例えば、特許文献2)。この先行技術に記載の実施例2においては、枠の中に弾性部材が設けられている。
【0003】
上記のように台ゴムを採用する場合、通常、台ゴムはベース部の底面に3ヶ所以上設けられるが、ゴムを使用する本来の目的は、装置本体の重量を支え、滑りやすい台上でも装置本体が滑らない様にすることにある。また、弾性材料を使用することで、相手側材料を傷付ける等の問題が発生するのを避けることもできる。
【0004】
【特許文献1】実開平06−10950号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−166621号公報(特許請求の範囲、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように台ゴムのみで装置本体を支持しようとすると、滑り等の問題はほぼ確実に解消することができるものの、以下の様な問題が最近の画像処理装置では発生しやすいことが判明した。
【0006】
台ゴムを使用する場合、そのゴム硬度によっては装置本体の重量で若干ながら沈み込む。
画像読み取り機能を有しないプリンタ等の画像処理装置であれば、この種の沈み込みが大きな問題を発生することはないが、特にスキャナーを備えた複写機等、画像読み取り機能を有する画像処理装置の場合は、読み取り光学系等が、本体上部等に取り付けられているので、その取付面の平面度、平行度が問題となる。これら精度が確保されていなければ、光学系自体を歪ませてしまうことになり、画像のゆがみや直角度不良等が発生する。
【0007】
この種の問題は、従来型の装置構成である、装置重心が平面視、略中央にあるものであれば、沈み込み量が台ゴム全てで均等となり、光学系はさほど影響を受けない。しかしながら、最近の胴内排出型の装置では問題となる。即ち、この型のものでは、駆動系が機械の後方側、特に定着ユニット側に偏る設計とならざる得ないため、平面視、重心にかなりの偏よりがあり、沈み込み量が台ゴム間で不均一になる。
この胴内排出型装置の構成では、重心に最も近い位置の台ゴムが最もよく沈み込み、その他の台ゴムは大して沈まない。結果、常用の樹脂製一体型の装置本体を備えたものにあっては、光学系の取付平面度・平行度に問題を生じる傾向にあることが判明した。
【0008】
以下、装置総重量39kgで、重心位置が機械本体後方の左側に偏って構成され、ベース部を含む装置本体が一体樹脂で構成され、さらに、台ゴムが装置本体の底面4角に均等配設される胴内排出型装置に関して、この問題をさらに具体的に説明する。
ここで、台ゴムはエチレンプロピレン(EPDM)ゴムの硬度(JIS K6301 Aに基づく硬度)60°の直方体(20×22×8.5mm)を使用し、装置底面から5mm突出するものとする。
【0009】
この構成では、後方左の台ゴムが約2mm圧縮され、後方右と前方左の台ゴムはそれぞれ約1mm、前方右のそれは0.5mm圧縮される。このため、光学系取付面も、この圧縮された寸法分だけ平面度が狂ってしまう。
【0010】
一方、装置本体に台ゴムを装着することなく、台ゴムの取付位置で、装置本体をそのまま台上に支持した場合の光学系取付面は、精度よく、その平面度・平行度とも確保されていた。
【0011】
さて、上記特許文献2に示した従来技術にあっては、装置本体に備えられるベース部の被支持部間の撓みの問題は解決できるが、上述のように、各台ゴム間で相互に異なった圧縮状態が発生する問題には対応できない。
【0012】
また、この種の台ゴムは、画像処理装置が床面に設置された際に、ユーザーが装置を引きずったりした場合、或いは、長期の設置後に持ち上げた場合に、容易に台ゴムが剥がれ落ちてしまわないものとされることが肝要である。即ち、長期的な台ゴムの良好な使用状態を確保するため、引きずりや長期の設置後の持ち上げで抜け落ちが発生しないような構造とすることが必要となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、画像処理装置にあって、重心に偏りがある場合にあっても、画像処理部の平面度、平行度を確保できるとともに、例えば、装置が机上に設置される場合にあっても、容易に位置ずれが発生しない画像処理装置の支持構造を得ることにある。
さらに、ゴム等で画像処理装置の滑りを防止する構造を採用する場合に、画像処理装置の引きずりや、長期にわたる恒常的な設置後に、容易にこれが剥離、脱落しない構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
先ず、画像処理装置の支持構造について説明する。
この画像処理装置の支持構造は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、前記ベース部の底に、接地対象面に少なくとも3ヶ所で接地して前記ベース部を接地対象面と平行に支持可能な接地部を設け、前記接地部の構成材料より弾性に富み、非接地状態において、前記接地部の底面より外側に突出した接地当接面を有する弾性突出部を設け、接地状態において、前記弾性突出部が弾性変形して、前記接地部が少なくとも3ヶ所で接地するとともに前記接地当接面が接地して、前記ベース部が支持される構成となる。
【0015】
この支持構造にあっては、フレーム部(引いては装置本体)の均等支持は、接地状態において接地部が受け持つ。一方、この接地部が接地している状態で、弾性突出部の接地当接面も接地対象面に弾性反発力により強固に接地しており、本来の弾性材料側の目的である滑り等の防止の役割を受け持つ。
さて、装置本体内あるいはその上部といった部位に画像処理部を備える場合、問題となる画像のゆがみ等の発生は、装置本体が接地し、その支持を受ける複数ヶ所において支持が不均衡となっている場合に発生するが、この支持構造の場合、接地部を装置本体と一体に、例えば、その構成材料である樹脂材等を構成することとなるため、この不均衡が発生することがなく、画像のゆがみ等の問題が発生することはない。
特に、装置本体側の重心に平面視で偏りがある場合にあっても、この支持構造では、この種の不均衡の発生を避けることができ、良好な画像処理を実行できる装置を得ることとなる。
【0016】
また、この種の弾性突出部は、接地部に設けられていることが好ましい。
弾性突出部と接地部とは相互に関連なく独立に設けられていても何ら問題はないが、弾性突出部を接地部に設けることで、接地に関連する箇所を必要最小限に抑えることが可能となり、装置の所謂、水平出しが容易となるとともに、弾性突出部の支持を接地部において行うことも可能となる。
【0017】
この種の構成を採用する場合に、前記弾性突出部が、圧縮状態で前記接地部に保持されている構成を採用することが好ましい。
この種の構造としては、例えば、弾性突出部を挿入位置決めするための収納穴を接地部に設け、さらに、この収納穴に弾性突出部を圧入するものとすることで達成されるが、このように弾性突出部が弾性状態で位置保持されることで、弾性材料に発生する保持力を利用して、強固な保持状態を得ることができる。結果、引きずりによる外れ、或いは、長期設置後の脱落等の可能性を確実に低減することができる。
【0018】
さて、これまで説明してきた構成において、前記接地部と前記弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられていることが好ましい。
この画像処理装置の支持構造における弾性突出部は、その非接地状態で弾性突出部の少なくとも一部が、接地部の底面より外側(底側で、装置本体から離間する側)に突出されており、接地状態で、少なくとも接地部の底面と面一になることが必要とされるため、その弾性変形分の空間が接地部、弾性突出部間に設けられていることで、弾性突出部の非接地状態、接地状態間での弾性変形をスムーズに発生させて、平面度・平行度確保および滑り防止等の目的を容易に達成できる。
【0019】
さらに、接地に伴って発生する前記弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されていることが好ましい。
【0020】
材料方向特性が同一とされることで、接地操作に伴って発生する弾性変形量を均一化できる。
【0021】
また、前記弾性突出部が複数設けてある場合であって弾性突出部材の平断面長が異なるとき、少なくとも1つの弾性突出部材の平断面における長手配設方向が、他の少なくとも1つの弾性突出部材の平断面における長手配設方向と異なるように構成するのが好ましい。
つまり、弾性突出部材の平断面長が異なる状態であって、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じ場合であれば、滑りやすい接地対象面上において、装置本体は長手配設方向側に滑りやすくなる。一方、この画像処理装置の支持構造であれば、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じではないため、装置本体の滑り止め効果が向上する。
【0022】
さらに、前記弾性突出部材はJIS K6301 Aに基づく硬度60°〜90°の硬さを有し、かつ、前記接地部の底面からの前記弾性突出部材の突出量が、前記弾性突出部材のみで前記装置本体の荷重を支持するときの弾性変形量以下であると共に前記弾性変形量の4分の1以上になるように設定してあるのが好ましい。
この突出量設定により、装置接地時には、全ての接地部の底面が接地対象面と接触し、かつ、それ以上の圧縮がない状態とすることができるため、ベース部を接地対象面と平行に支持できる接地部内で、弾性突出部材が圧縮されながら接地対象面に強く接触していることになる。そのため、装置本体の平面度を確実に確保できると共に、良好な滑り止め効果を奏する。
【0023】
次に、本発明の特徴構成および作用効果について説明する。
本発明の画像処理装置の支持構造の特徴構成は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、接地対象面に接地当接面で接地し、弾性材料からなる弾性突出部を保持する保持部を、前記ベース部に設け、この保持部に、前記弾性突出部が圧縮状態で保持されていることにある。
【0024】
上記特徴構成によれば、弾性突出部が弾性状態でベース部の底面から下側に突出して位置保持される構造を取る場合に、弾性保持することで、弾性材料に発生する保持力を利用して、強固な保持状態を得ることができる。結果、引きずりによる外れ、長期設置後の脱落等の可能性を確実に低減することができる。
【0025】
この構成の場合、保持部と弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられていることが好ましい。
【0026】
弾性突出部は、非接地状態から接地状態とされる場合に、弾性変形して接地対象面に接地する。よって、その弾性変形分の空間が保持部、弾性突出部間に設けられていることで、弾性突出部の非接地状態、接地状態間での弾性変形をスムーズに発生させることが可能となる。
【0027】
さらに、接地に伴って発生する弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されていることが好ましい。
【0028】
この場合も、材料方向特性が同一とされることで、接地操作に伴って発生する弾性変形量を均一化できる。
【0029】
さて、これまで説明してきた弾性突出部の接地当接面に関しては、その当接面が単純な平面(ベース部に装着された状態で接地対象面と平行な平面)である、あるいは、所定の凹凸形状を成す(ベース部に装着された状態で接地対象面に近接離間する方向で凹凸をなす)ことを、区別するものではなかったが、後者に記載のように、弾性突出部の接地当接面が、接地対象面に近接・離間する方向の凹凸面として形成され、接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する構成とすることも、好ましい態様である。
【0030】
弾性突出部の接地当接面を平滑面とし、画像処理装置が極めて平滑な机上等に設置された場合、ユーザーが画像処理装置を移動する際等に持ち上げると、本願の弾性突出部の接地当接面が、机の平滑面に密着して、弾性突出部がその吸着効果によって抜け落ちる懸念がある。弾性突出部を圧入する構成を採用する場合、圧入強度を上げれば脱落の危険性は低下するが、組立時に挿入が硬くなってしまい、かえって、組み立て作業性が低下する。
【0031】
しかしながら、接地当接面に凹凸を設け(この種の凹凸は、表面を荒らす程度のもの、ローレット加工により所定パターンを表面に形成するもの、さらには、下記する実施の形態で示すように表面を波型の凹凸面とするもの、単なる矩形状の凹凸面とするものを含む)、接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する(実質的な部分接地状態が実現する)ものとすると、上記の密着状態が幾分とも緩和され、画像処理装置の移動時等に弾性突出部が脱離する等の問題を解消できる。
【0032】
また、この種の弾性突出部を製造する場合は、異なった接地箇所に備えられる少なくとも対となる弾性突出部を得るに、弾性シート状材料を、前記凹凸面を形成するように切断して製造することが好ましい。この場合、切断面の両側に位置するに少なくとも対となる弾性突出部が実質的に対称な形状とされることが好ましい。また、この対となる弾性突出部が同一形状とされることが、なお好ましい。
【0033】
即ち、弾性シート状材料を、所望の凹凸面を形成するように切断加工により製造する。この様にする場合は、金型成型ではなく、シート材のカットによって作成される例えばゴムブロックとして弾性突出部を得るため、コスト削減の効果を得るとともに、切断面位置の選択により、各弾性突出部の形状差を抑え、実質的な対称性が確保された弾性突出部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明に係わる画像処理装置の支持構造を有する、一例としての複写装置1を、図面を用いて説明する。
【0035】
〔概略構成〕
図1は電子写真方式を用いた複写装置の概略外観図であり、図2は図1の複写装置の概略断面図である。
複写装置1の上部には画像読取り手段2が配置され、その下方の胴体部3には画像形成手段4、定着手段5、用紙搬送手段6が設けられ、胴体部3と画像読取り部の間で形成された空間には用紙の排出部7が形成されており、胴体部3の下方には画像を形成する用紙が収納された用紙収納手段9が設けられている。
また、画像読取り手段2の上部には原稿搬送装置(図示省略)が取付可能である。
【0036】
〔画像形成〕
前記画像形成手段4には、図2、3に示すように、円筒状の感光体ドラム10の周囲に隣接して帯電装置11、露光装置12、現像装置13、転写装置(転写ローラ)14、クリーニング装置15などが配置されている。
【0037】
画像形成は、画像読取り部に載置された原稿を露光して、その反射光像をCCD46により電気信号に変換し、帯電装置11により帯電された感光体ドラム10の表面に露光装置12で静電潜像を形成し、現像装置13でそれをトナー画像に変換する。
【0038】
一方、用紙収納手段9に収納された用紙は給紙ローラ20により最上部の1枚が搬送路21に送られ、レジストローラ22で一時停止して先端が整合された後、感光体ドラム10と転写ローラ14のニップに搬送されて、感光体ドラム10の表面に形成されたトナー画像が用紙に転写される。用紙はさらに定着手段5に搬送されてトナーを用紙に対して溶融圧着する。
【0039】
画像形成部では一定方向に回転するドラムに対して帯電装置11からコロナ放電により表面に均一な電荷を乗せる。露光装置12は画像読取り手段2で読取られた画像信号若しくは外部のパソコン等から送信された画像情報に応じてレーザー光を照射して感光体ドラム10上に静電潜像を形成する。
【0040】
現像装置13では、回転する現像スリーブが感光体ドラム10に対して微少な隙間を有して配置されており磁気ブラシにより静電潜像にトナーを付着させる。転写ローラ14は先に説明したようにトナー画像を用紙上に転写させる。
クリーニング装置15ではブレードが感光体ドラム表面に接触し残留しているトナーを回収する。
【0041】
装置本体は図2等に示すように、下部のベース部30、作像フレーム部31、補強部材部33を備えて一体構成されており、画像読取り手段2である画像読取り装置が装置本体上に連結されている。
ベース部30、作像フレーム部31及び補強部材部33は、ポリフェニレンエーテル(PPE樹脂)や、ABS樹脂等の一体成形体とされている。
【0042】
前記作像フレーム部31には画像形成手段4を位置決め支持する機構及びその装脱着時の案内部材などが形成されている。
また、上部には定着手段5が着脱可能に装備され、図2〜3に示すように、右方には露光手段12と冷却ファン16が取り付けられている。後方においては、画像形成手段4、定着手段5、用紙搬送手段6などを回転駆動させるモータ17や駆動機構18が側板部材に装着されて構成された駆動部19が取り付けられている。本願の複写装置1にあっては、この駆動部19が、装置本体左奥側に設けられていることで、平面視での重心位置が、その部位側に偏り、その対策が重要となる。
【0043】
〔画像読取り〕
図4は画像読取り装置2の概略外観図であり、図2にその概略断面図が示されている。
画像読取り装置2は、上方が開放された箱型の構造枠体41を有して構成され、その開放面にはコンタクトガラス42が載置され、それに対向するように開閉可能に原稿押さえ手段47(図1参照)が設けられ、その下方の内部空間には光源43、ミラーユニット44、レンズユニット45、CCD46が配置されている。
【0044】
光源43は構造部材に設けられたガイド部材(図示せず)により案内され左右方向に移動可能になっており、装置後方に設けられた駆動機構(図示せず)により移動されコンタクトガラス42上に載置された原稿を走査する。
【0045】
原稿からの反射される光は光源43に設けられたミラーとミラーユニット44で折り返されレンズユニット45に入射されてCCD46上に結像され、電気信号に変換されて出力される。構造枠体41はABSなどの樹脂材料で成形された部材が用いられる。
【0046】
構造枠体41の底面の四隅近傍にはEPDMゴム等を成形したパッド48が設けられており(図2参照)、装置本体に設置する際にはパッド48が装置本体の天井面に接地して画像読取り装置2を支持する。
【0047】
〔装置本体の支持構造〕
以下、本願の特徴である装置本体50の支持構造に関して、図5〜8に基づいて説明する。
これら図面において、図5は、弾性突出部材60を圧入して備えた装置1を底面側から見た状態を、図6は弾性突出部材60を収納穴54に収納する前の状態を、図7は装置1が接地されることなく、単に弾性突出部材60が装置されたフリーな状態を、図8は実際に装置1が接地された状態を示している。
また、これらの図7、8において、(イ)は接地部近傍の縦方向断面図を示し、(ロ)は圧入状態にある弾性突出部材60を含めた接地部近傍の平断面図を示す。
【0048】
図5に示す様に、本体下部に一体に設けられるベース部30は、基本的に、その外形においてコの字型を有している。
このベース部30の底面には四隅近傍に、本願独特の構成を有する接地部51が設けられている。図6に示す様に、この接地部51は、装置本体50の底面からは一段下側に部分的に突出されており、本体四隅で接地が起こるように構成されている。
【0049】
図5に示す様に、これら接地部51として、前方左接地部51a、前方右接地部51b、後方左接地部51c、及び後方右接地部51dが設けられている。ここで、装置の左右は、図2紙面左右方向に対応し、ユーザーが装置に向かった姿勢を基準とする。
本願にあっては、下記する構成を採用することで、ベース部30の水平出しは、ベース部30と一体に樹脂材料から設けられる接地部51によって達成される。
【0050】
図6に示す様に、これら接地部51の底面は、平面視で接地の長手方向に伸びる一対の平行接地面53を備えている。左側接地部(前後共)51a、51cに関して平行接地面53は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに関しては、平行接地面53は前後方向に長い構成が採用されている。
この配設方向は、後述する弾性突出部材60の平断面、長手配設方向に関しても同様である。
【0051】
これら各接地部51には、方形角柱状の前記弾性突出部材60が圧入されて保持される。
各接地部51に関して、弾性突出部材60は、装置の上下方向において、ベース部30内に、その上部側過半以上が収納されており、その一部が、図7に示す非接地状態(装置本体が浮いた状態)で、下側に突出するように構成されている。
【0052】
さらに、図6、図7(ロ)、図8(ロ)に示すように、接地部51に設けられている弾性突出部材60が圧入される収納穴54には、部材の圧入方向に沿って、内部空間側に突出するリブ55が3列づつ、平面視長手となる壁面56に設けられている。弾性突出部材60が、この収納穴54に挿入される段階で、これらリブ55により部分的に圧縮され、弾性突出部材60の保持が強固なものとなる。
【0053】
これら弾性突出部材60の形状は、異なった方向を成す3辺長をそれぞれ異ならせることで、シート状態にある弾性材料から、この部材60を切り出した状態で、共通する辺長を有する方向において材料特性が同一となるようにされている。即ち、図7に示す例にあっては、弾性突出部材60の上下方向がシートからの切り出し方向において同一とされていることから、装置が接地された状態において、弾性突出部材60が主に圧縮変形を受ける弾性突出部材の最長手方向(圧入された状態で上下方向)に関して、その材料弾性特性が、異なった接地部間で同一となり、接地に伴う圧縮においても、その圧縮変形に伴って発生する接地圧が均等となる。
【0054】
上述したように、左側接地部(前後共)51a、51cに関して平行接地面53は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに関しては、平行接地面53は前後方向に長い構成が採用されており、各接地部51a〜51dには3辺長が異なる方形角柱状の弾性突出部材60が圧入保持してある。
そして、少なくとも1つの弾性突出部材60の平断面における長手配設方向が、他の少なくとも1つの弾性突出部材60の平断面における長手配設方向と異なるように構成する。つまり、図5に示す例にあっては、左側接地部(前後共)51a、51cに配設してある弾性突出部材60は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに配設してある弾性突出部材60は前後方向に、それぞれ長手配設方向が長い構成となる。
ここで、弾性突出部材の平断面長が異なる状態であって、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じ場合であれば、滑りやすい接地対象面上において、装置本体は長手配設方向側に滑りやすくなる。一方、本構成であれば、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じではないため、例えば方形状の装置本体50の各辺に垂直な四方向において、台表面における装置本体50の滑り止め効果が向上する。
【0055】
弾性突出部材60は、エチレンプロピレン(EPDM)ゴムで成形された部材が一般的に用いられる。この材料は、硬度60°〜90°のものを採用することができ、具体的には60°とした。ここでの弾性部材の硬さとしての数値はJIS K6301 Aによるゴム硬度である。これらの硬度の材料はEPDMゴムのみならず、別種のゴム材料やポリウレタン等の合成樹脂材料の中からも容易に見出しえる一般的な材料である。
【0056】
さて、前記弾性突出部材60の形状(特に突出量)および弾性特性の選択と、接地部底面の構成に関して、図7、8に示す図面を参照しながら説明する。
【0057】
図7(イ)等に示すように、前記各接地部51の底面52は、同一平面を形成する。
即ち、水平面を成す台上に、複写装置1を設置した際には、図8に示すように、四隅近傍のこれら各接地部51の底面52が接地して、複写装置1を水平に保つことが可能とされている。この接地状態では、この部位が主に本体荷重を支える。
【0058】
一方、弾性突出部材60に関して説明すると、装置1が台上に接地された場合、図8に示すように、この弾性突出部材60が弾性変形して、各部位に掛かる荷重との関係から、その底側先端にある接地当接面61が、接地部の底面52と面一となり、共に接地する構成が採用されている。
また、この弾性変形を許容するように、図7(ロ)に示すように、接地部51と弾性突出部材60との間に、非接地状態と接地状態との間での、弾性突出部材60の変形を許容する変形許容空間57が設けられている。
【0059】
さらに、図7、8への接地操作に伴う変形状態からも判るように、非接地状態では弾性突出部材60の突出状態が確保されており、接地された場合に各接地部51が直接相手側に接地して、ベース部30ひいては装置本体50全体の平面度等が確保されることが判る。
【0060】
〔本願構成を採用することにより達成される平面度〕
本願構成を採用することにより達成される平面度に関して、具体例を以下に示す。装置構成は、先に従来技術の課題で説明した状況と同じである。
【0061】
弾性突出部材60の突出量を、今回の例では0.5mmとし、装置1を設置した際には、この4ヶ所の全てにおいて突出分が圧縮される。
後方左では、仮に、接地部51が存在せず弾性突出部材60のみで装置本体50の荷重を支持するときには2mm圧縮されるところであるが、本構成の場合は0.5mm圧縮されたところで、当該部位にある接地部の底面52と台表面が接触して、それ以上圧縮されることはなかった。後方右と前方左では1mm圧縮されるところであるが、本構成の場合は0.5mm圧縮されたところで当該部位にある接地部の底面52と台表面が接触し、それ以上圧縮されることはなかった。さらに、前方右では、接地部51の有無に関わらず0.5mmに圧縮されるところであるため、丁度0.5mmの圧縮で接地部の底面52が台表面に接触する。つまり、この実施例では、接地部51の底面52からの弾性突出部材60の突出量を、接地部51が存在せず弾性突出部材60のみで装置本体50の荷重を支持するときの弾性変形量以下であると共に前記弾性変形量の4分の1以上になるように、設定していることになる。
この突出量設定により、装置接地時には、全ての接地部51の底面52が台表面と接触しており、それ以上の圧縮がないため、光学系取付面の平面度も、樹脂ベース単体精度で確保できていた。
また、全ての接地部51内では、弾性突出部材60が十分に圧縮されながら床に強く接触しているため、滑り止め効果を損なうことはなかった。
よって、今回の構成によって、弾性部材本来の機能を失うことなく、光学系の平面度、平行度を確保することができた。
【0062】
〔弾性突出部の接地当接面の別形態〕
以上、説明した弾性突出部材60の接地当接面61は、単純な平面としたものであるが、図9、10に示すように、所定の凹凸形状(同図に示すものは波型凹凸形状)を成すものとすることで、この面が机表面と密着して、装置1の移動時に脱離を防止することができる。
【0063】
図9は、この例の弾性突出部材60を該当部位に取付た状態を、図6に対応して図示したものであり、図10は、この例の弾性突出部材60の形態(イ)、及び切断を伴った製造時の状態(ロ)を示したものである。
【0064】
図10(イ)に示されるように、この例では、弾性突出部材60の接地当接面61が、机表面である接地対象面に近接・離間する方向で、複数の傾斜面61aの組み合わせとして、凹凸状に形成されている。従って、この部材を使用すると、接地時には凹凸の凸側が主に接地することとなる。
【0065】
図10(ロ)に示されるように、その例の弾性突出部材60の接地当接面61を製造するには、台ゴムの原材料である弾性シート状材料70を、上記のような波型の凹凸面を形成するように切断して製造する。この場合、切断面71の両側に位置するに少なくとも対となる弾性突出部材60が同一な形状となるように切断面形状を選択する。
こうすることで、コスト削減の効果を得るとともに、切断面位置の選択により、各弾性突出部材60の形状差を抑え、特性の同一性が確保された弾性突出部材60を得ることができる。
【0066】
〔別実施の形態〕
本願の別実施の形態に関して以下説明する。
(1) 上記の実施の形態にあっては、画像処理機能として、画像形成処理、画像読み取り処理の両方を備えた装置を示したが、これら機能のいずれか一方を有する画像処理装置にあっても、本願支持構造を採用することで、本願の課題を解決できる。
(2) 上記の実施の形態においては、接地部に対して弾性突出部材を設け、接地部の底面と弾性突出部材の接地当接面との両方が接地される構成を示したが、引きずりに伴う脱落、長期設置後の持ち上げによる抜け落ちに対する対策にあっては、接地部の底面が接地対象面に接地することは必ずしも要求されない。
従って、本願にあって、接地対象面に接地当接面で接地する弾性突出部材を保持するため、ベース部に設けられる部位を保持部と称する。この保持部は、本願において弾性突出部を保持する部位を意味する。
(3) 上記の実施の形態にあっては、接地部に弾性突出部材を圧入することで、本願の支持構造を得るものとしたが、接地部(引いては装置本体)を構成する樹脂材料に対して、弾性に富み、接地して本願目的を達成できる弾性材料を、装置本体の形成時に一体に成形しておいてもよい。従って、接地部に対して弾性に富み、接地された状態で、接地部と面一となる弾性部位を、弾性突出部と呼ぶ。
この弾性突出部の概念は、本願上述の保持部に対しても適用する。但し、保持部を対象とする場合、接地状態で保持部と弾性突出部とが面一となることは要求しない。
(4) さらに、弾性突出部の保持構成は、上述の圧入に限られるものではなく、何らかの意味で接地部(又は保持部)に保持されていればよい。
(5) 上記の実施の形態にあっては、各接地部の弾性突出部材の収納穴を設け、この穴に弾性突出部材を圧入することで、本願の支持構造を得るものとしたが、弾性突出部材の形成部位は、接地部とは独立とされるものであってもよい。
図11に、接地部51とは独立に、本願に言う弾性突出部70を設けた例を示した。同図(イ)は非接地状態を、(ロ)は接地状態に対応している。この例にあっては、四端辺に設けられる各接地部の平面視で内側に、弾性突出部70が独立に設けられている。
(6) さらに、上述の例にあっては、弾性突出部材が、図7(ロ)、図8(ロ)に示すように、実質水平な平断面方向に弾性変形して変形が吸収される構成を示したが、装置の上下方向に設けられる収納穴の天面近傍に、この機能を果す空間を設け、弾性変形を上下方向で吸収できる構成を採用することも可能である。当然、水平・鉛直方向の両方向で吸収してもよい。
この種の変形許容空間を設ける構成は、本願にいう保持部に関しても採用できる。
(7) 上記の実施の形態にあっては、弾性突出部材を角柱状のものとしたが、図12に示すように、弾性突出部材を従来のように円筒状のもの71としてもよい。同図に示すものにあっては、円筒内の軸側に位置される突出柱が、本願にいう接地部を構成するのであり、円筒状の弾性突出部材71の内径は突出柱72の外径に対して僅かに小さく設定され、弾性突出部材に働く弾性変形力により、確実に位置保持されるように構成されている。
さらに、外径側に本体側から突出される環状の保持部73が設けられ、弾性突出部材71に過度の変形が発生しないように構成されている。図13(イ)に非接地状態を、(ロ)に接地状態を示した。
本願にいう保持部に関しても、保持部を突出柱状とし、弾性突出部を円筒状とする構成とすることができる。この場合も、保持部の接地は必要ない。
(8) 上記の実施の形態において、弾性突出部材60の接地当接面61の凹凸形状に関しては、これが波型を成す例を示したが、図14(イ)(ロ)に示すように、単純な矩形形状とされる構成としてもよい。図14の記載は、図10の記載に習ったものである。
さらに、このように特定の凹凸形状とする以外に、単に表面を荒らす、さらに表面に所定のローレット加工を施す等の操作を行うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本願の画像処理装置の支持構造を採用する複写装置の外観を示す図
【図2】図1に示す画像処理装置の概略断面図
【図3】図1に示す画像処理装置の駆動系の概略構成図
【図4】画像読取り装置の概略外観図
【図5】図1に示す画像処理装置を底面側より見た図
【図6】弾性突出部の収納穴への圧入構成を示す説明図
【図7】非接地状態における弾性突出部の状態を示す説明図
【図8】接地状態における弾性突出部の状態を示す説明図
【図9】別実施の形態の弾性突出部を備えた画像処理装置を底面側より見た図
【図10】別実施の形態の弾性突出部の具体的構成と、その製造工程を示す図
【図11】非接地状態、接地状態における本願の別実施の形態を示す図
【図12】円筒形状の弾性突出部を備えた本願の別実施の形態を示す図
【図13】非接地状態、接地状態における図12に示す本願の別実施の状態を示す図
【図14】更なる別実施の形態の弾性突出部の具体的構成と、その製造工程を示す図
【符号の説明】
【0068】
1 複写装置
50 装置本体
51 接地部
52 底面
53 平行接地面
54 収納穴
55 リブ
56 平面
57 変形許容空間
60 弾性突出部材(弾性突出部)
61 接地当接面
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造に関する。この種の画像処理装置としては、複写装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
この種の画像処理装置は、装置の底部に、所謂、台ゴムを取付けて、そのベース部を支持するのが通常である。本願出願人は、台ゴムをベース部の底面にネジで固定することを提案している(例えば、特許文献1)。
さらに、本願出願人は、台ゴムによる支持部位間における撓みを防止するために、その撓みが発生する可能性の高い中間部位に突起部を設けることを提案している(例えば、特許文献2)。この先行技術に記載の実施例2においては、枠の中に弾性部材が設けられている。
【0003】
上記のように台ゴムを採用する場合、通常、台ゴムはベース部の底面に3ヶ所以上設けられるが、ゴムを使用する本来の目的は、装置本体の重量を支え、滑りやすい台上でも装置本体が滑らない様にすることにある。また、弾性材料を使用することで、相手側材料を傷付ける等の問題が発生するのを避けることもできる。
【0004】
【特許文献1】実開平06−10950号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−166621号公報(特許請求の範囲、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように台ゴムのみで装置本体を支持しようとすると、滑り等の問題はほぼ確実に解消することができるものの、以下の様な問題が最近の画像処理装置では発生しやすいことが判明した。
【0006】
台ゴムを使用する場合、そのゴム硬度によっては装置本体の重量で若干ながら沈み込む。
画像読み取り機能を有しないプリンタ等の画像処理装置であれば、この種の沈み込みが大きな問題を発生することはないが、特にスキャナーを備えた複写機等、画像読み取り機能を有する画像処理装置の場合は、読み取り光学系等が、本体上部等に取り付けられているので、その取付面の平面度、平行度が問題となる。これら精度が確保されていなければ、光学系自体を歪ませてしまうことになり、画像のゆがみや直角度不良等が発生する。
【0007】
この種の問題は、従来型の装置構成である、装置重心が平面視、略中央にあるものであれば、沈み込み量が台ゴム全てで均等となり、光学系はさほど影響を受けない。しかしながら、最近の胴内排出型の装置では問題となる。即ち、この型のものでは、駆動系が機械の後方側、特に定着ユニット側に偏る設計とならざる得ないため、平面視、重心にかなりの偏よりがあり、沈み込み量が台ゴム間で不均一になる。
この胴内排出型装置の構成では、重心に最も近い位置の台ゴムが最もよく沈み込み、その他の台ゴムは大して沈まない。結果、常用の樹脂製一体型の装置本体を備えたものにあっては、光学系の取付平面度・平行度に問題を生じる傾向にあることが判明した。
【0008】
以下、装置総重量39kgで、重心位置が機械本体後方の左側に偏って構成され、ベース部を含む装置本体が一体樹脂で構成され、さらに、台ゴムが装置本体の底面4角に均等配設される胴内排出型装置に関して、この問題をさらに具体的に説明する。
ここで、台ゴムはエチレンプロピレン(EPDM)ゴムの硬度(JIS K6301 Aに基づく硬度)60°の直方体(20×22×8.5mm)を使用し、装置底面から5mm突出するものとする。
【0009】
この構成では、後方左の台ゴムが約2mm圧縮され、後方右と前方左の台ゴムはそれぞれ約1mm、前方右のそれは0.5mm圧縮される。このため、光学系取付面も、この圧縮された寸法分だけ平面度が狂ってしまう。
【0010】
一方、装置本体に台ゴムを装着することなく、台ゴムの取付位置で、装置本体をそのまま台上に支持した場合の光学系取付面は、精度よく、その平面度・平行度とも確保されていた。
【0011】
さて、上記特許文献2に示した従来技術にあっては、装置本体に備えられるベース部の被支持部間の撓みの問題は解決できるが、上述のように、各台ゴム間で相互に異なった圧縮状態が発生する問題には対応できない。
【0012】
また、この種の台ゴムは、画像処理装置が床面に設置された際に、ユーザーが装置を引きずったりした場合、或いは、長期の設置後に持ち上げた場合に、容易に台ゴムが剥がれ落ちてしまわないものとされることが肝要である。即ち、長期的な台ゴムの良好な使用状態を確保するため、引きずりや長期の設置後の持ち上げで抜け落ちが発生しないような構造とすることが必要となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、画像処理装置にあって、重心に偏りがある場合にあっても、画像処理部の平面度、平行度を確保できるとともに、例えば、装置が机上に設置される場合にあっても、容易に位置ずれが発生しない画像処理装置の支持構造を得ることにある。
さらに、ゴム等で画像処理装置の滑りを防止する構造を採用する場合に、画像処理装置の引きずりや、長期にわたる恒常的な設置後に、容易にこれが剥離、脱落しない構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
先ず、画像処理装置の支持構造について説明する。
この画像処理装置の支持構造は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、前記ベース部の底に、接地対象面に少なくとも3ヶ所で接地して前記ベース部を接地対象面と平行に支持可能な接地部を設け、前記接地部の構成材料より弾性に富み、非接地状態において、前記接地部の底面より外側に突出した接地当接面を有する弾性突出部を設け、接地状態において、前記弾性突出部が弾性変形して、前記接地部が少なくとも3ヶ所で接地するとともに前記接地当接面が接地して、前記ベース部が支持される構成となる。
【0015】
この支持構造にあっては、フレーム部(引いては装置本体)の均等支持は、接地状態において接地部が受け持つ。一方、この接地部が接地している状態で、弾性突出部の接地当接面も接地対象面に弾性反発力により強固に接地しており、本来の弾性材料側の目的である滑り等の防止の役割を受け持つ。
さて、装置本体内あるいはその上部といった部位に画像処理部を備える場合、問題となる画像のゆがみ等の発生は、装置本体が接地し、その支持を受ける複数ヶ所において支持が不均衡となっている場合に発生するが、この支持構造の場合、接地部を装置本体と一体に、例えば、その構成材料である樹脂材等を構成することとなるため、この不均衡が発生することがなく、画像のゆがみ等の問題が発生することはない。
特に、装置本体側の重心に平面視で偏りがある場合にあっても、この支持構造では、この種の不均衡の発生を避けることができ、良好な画像処理を実行できる装置を得ることとなる。
【0016】
また、この種の弾性突出部は、接地部に設けられていることが好ましい。
弾性突出部と接地部とは相互に関連なく独立に設けられていても何ら問題はないが、弾性突出部を接地部に設けることで、接地に関連する箇所を必要最小限に抑えることが可能となり、装置の所謂、水平出しが容易となるとともに、弾性突出部の支持を接地部において行うことも可能となる。
【0017】
この種の構成を採用する場合に、前記弾性突出部が、圧縮状態で前記接地部に保持されている構成を採用することが好ましい。
この種の構造としては、例えば、弾性突出部を挿入位置決めするための収納穴を接地部に設け、さらに、この収納穴に弾性突出部を圧入するものとすることで達成されるが、このように弾性突出部が弾性状態で位置保持されることで、弾性材料に発生する保持力を利用して、強固な保持状態を得ることができる。結果、引きずりによる外れ、或いは、長期設置後の脱落等の可能性を確実に低減することができる。
【0018】
さて、これまで説明してきた構成において、前記接地部と前記弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられていることが好ましい。
この画像処理装置の支持構造における弾性突出部は、その非接地状態で弾性突出部の少なくとも一部が、接地部の底面より外側(底側で、装置本体から離間する側)に突出されており、接地状態で、少なくとも接地部の底面と面一になることが必要とされるため、その弾性変形分の空間が接地部、弾性突出部間に設けられていることで、弾性突出部の非接地状態、接地状態間での弾性変形をスムーズに発生させて、平面度・平行度確保および滑り防止等の目的を容易に達成できる。
【0019】
さらに、接地に伴って発生する前記弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されていることが好ましい。
【0020】
材料方向特性が同一とされることで、接地操作に伴って発生する弾性変形量を均一化できる。
【0021】
また、前記弾性突出部が複数設けてある場合であって弾性突出部材の平断面長が異なるとき、少なくとも1つの弾性突出部材の平断面における長手配設方向が、他の少なくとも1つの弾性突出部材の平断面における長手配設方向と異なるように構成するのが好ましい。
つまり、弾性突出部材の平断面長が異なる状態であって、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じ場合であれば、滑りやすい接地対象面上において、装置本体は長手配設方向側に滑りやすくなる。一方、この画像処理装置の支持構造であれば、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じではないため、装置本体の滑り止め効果が向上する。
【0022】
さらに、前記弾性突出部材はJIS K6301 Aに基づく硬度60°〜90°の硬さを有し、かつ、前記接地部の底面からの前記弾性突出部材の突出量が、前記弾性突出部材のみで前記装置本体の荷重を支持するときの弾性変形量以下であると共に前記弾性変形量の4分の1以上になるように設定してあるのが好ましい。
この突出量設定により、装置接地時には、全ての接地部の底面が接地対象面と接触し、かつ、それ以上の圧縮がない状態とすることができるため、ベース部を接地対象面と平行に支持できる接地部内で、弾性突出部材が圧縮されながら接地対象面に強く接触していることになる。そのため、装置本体の平面度を確実に確保できると共に、良好な滑り止め効果を奏する。
【0023】
次に、本発明の特徴構成および作用効果について説明する。
本発明の画像処理装置の支持構造の特徴構成は、装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、接地対象面に接地当接面で接地し、弾性材料からなる弾性突出部を保持する保持部を、前記ベース部に設け、この保持部に、前記弾性突出部が圧縮状態で保持されていることにある。
【0024】
上記特徴構成によれば、弾性突出部が弾性状態でベース部の底面から下側に突出して位置保持される構造を取る場合に、弾性保持することで、弾性材料に発生する保持力を利用して、強固な保持状態を得ることができる。結果、引きずりによる外れ、長期設置後の脱落等の可能性を確実に低減することができる。
【0025】
この構成の場合、保持部と弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられていることが好ましい。
【0026】
弾性突出部は、非接地状態から接地状態とされる場合に、弾性変形して接地対象面に接地する。よって、その弾性変形分の空間が保持部、弾性突出部間に設けられていることで、弾性突出部の非接地状態、接地状態間での弾性変形をスムーズに発生させることが可能となる。
【0027】
さらに、接地に伴って発生する弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されていることが好ましい。
【0028】
この場合も、材料方向特性が同一とされることで、接地操作に伴って発生する弾性変形量を均一化できる。
【0029】
さて、これまで説明してきた弾性突出部の接地当接面に関しては、その当接面が単純な平面(ベース部に装着された状態で接地対象面と平行な平面)である、あるいは、所定の凹凸形状を成す(ベース部に装着された状態で接地対象面に近接離間する方向で凹凸をなす)ことを、区別するものではなかったが、後者に記載のように、弾性突出部の接地当接面が、接地対象面に近接・離間する方向の凹凸面として形成され、接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する構成とすることも、好ましい態様である。
【0030】
弾性突出部の接地当接面を平滑面とし、画像処理装置が極めて平滑な机上等に設置された場合、ユーザーが画像処理装置を移動する際等に持ち上げると、本願の弾性突出部の接地当接面が、机の平滑面に密着して、弾性突出部がその吸着効果によって抜け落ちる懸念がある。弾性突出部を圧入する構成を採用する場合、圧入強度を上げれば脱落の危険性は低下するが、組立時に挿入が硬くなってしまい、かえって、組み立て作業性が低下する。
【0031】
しかしながら、接地当接面に凹凸を設け(この種の凹凸は、表面を荒らす程度のもの、ローレット加工により所定パターンを表面に形成するもの、さらには、下記する実施の形態で示すように表面を波型の凹凸面とするもの、単なる矩形状の凹凸面とするものを含む)、接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する(実質的な部分接地状態が実現する)ものとすると、上記の密着状態が幾分とも緩和され、画像処理装置の移動時等に弾性突出部が脱離する等の問題を解消できる。
【0032】
また、この種の弾性突出部を製造する場合は、異なった接地箇所に備えられる少なくとも対となる弾性突出部を得るに、弾性シート状材料を、前記凹凸面を形成するように切断して製造することが好ましい。この場合、切断面の両側に位置するに少なくとも対となる弾性突出部が実質的に対称な形状とされることが好ましい。また、この対となる弾性突出部が同一形状とされることが、なお好ましい。
【0033】
即ち、弾性シート状材料を、所望の凹凸面を形成するように切断加工により製造する。この様にする場合は、金型成型ではなく、シート材のカットによって作成される例えばゴムブロックとして弾性突出部を得るため、コスト削減の効果を得るとともに、切断面位置の選択により、各弾性突出部の形状差を抑え、実質的な対称性が確保された弾性突出部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明に係わる画像処理装置の支持構造を有する、一例としての複写装置1を、図面を用いて説明する。
【0035】
〔概略構成〕
図1は電子写真方式を用いた複写装置の概略外観図であり、図2は図1の複写装置の概略断面図である。
複写装置1の上部には画像読取り手段2が配置され、その下方の胴体部3には画像形成手段4、定着手段5、用紙搬送手段6が設けられ、胴体部3と画像読取り部の間で形成された空間には用紙の排出部7が形成されており、胴体部3の下方には画像を形成する用紙が収納された用紙収納手段9が設けられている。
また、画像読取り手段2の上部には原稿搬送装置(図示省略)が取付可能である。
【0036】
〔画像形成〕
前記画像形成手段4には、図2、3に示すように、円筒状の感光体ドラム10の周囲に隣接して帯電装置11、露光装置12、現像装置13、転写装置(転写ローラ)14、クリーニング装置15などが配置されている。
【0037】
画像形成は、画像読取り部に載置された原稿を露光して、その反射光像をCCD46により電気信号に変換し、帯電装置11により帯電された感光体ドラム10の表面に露光装置12で静電潜像を形成し、現像装置13でそれをトナー画像に変換する。
【0038】
一方、用紙収納手段9に収納された用紙は給紙ローラ20により最上部の1枚が搬送路21に送られ、レジストローラ22で一時停止して先端が整合された後、感光体ドラム10と転写ローラ14のニップに搬送されて、感光体ドラム10の表面に形成されたトナー画像が用紙に転写される。用紙はさらに定着手段5に搬送されてトナーを用紙に対して溶融圧着する。
【0039】
画像形成部では一定方向に回転するドラムに対して帯電装置11からコロナ放電により表面に均一な電荷を乗せる。露光装置12は画像読取り手段2で読取られた画像信号若しくは外部のパソコン等から送信された画像情報に応じてレーザー光を照射して感光体ドラム10上に静電潜像を形成する。
【0040】
現像装置13では、回転する現像スリーブが感光体ドラム10に対して微少な隙間を有して配置されており磁気ブラシにより静電潜像にトナーを付着させる。転写ローラ14は先に説明したようにトナー画像を用紙上に転写させる。
クリーニング装置15ではブレードが感光体ドラム表面に接触し残留しているトナーを回収する。
【0041】
装置本体は図2等に示すように、下部のベース部30、作像フレーム部31、補強部材部33を備えて一体構成されており、画像読取り手段2である画像読取り装置が装置本体上に連結されている。
ベース部30、作像フレーム部31及び補強部材部33は、ポリフェニレンエーテル(PPE樹脂)や、ABS樹脂等の一体成形体とされている。
【0042】
前記作像フレーム部31には画像形成手段4を位置決め支持する機構及びその装脱着時の案内部材などが形成されている。
また、上部には定着手段5が着脱可能に装備され、図2〜3に示すように、右方には露光手段12と冷却ファン16が取り付けられている。後方においては、画像形成手段4、定着手段5、用紙搬送手段6などを回転駆動させるモータ17や駆動機構18が側板部材に装着されて構成された駆動部19が取り付けられている。本願の複写装置1にあっては、この駆動部19が、装置本体左奥側に設けられていることで、平面視での重心位置が、その部位側に偏り、その対策が重要となる。
【0043】
〔画像読取り〕
図4は画像読取り装置2の概略外観図であり、図2にその概略断面図が示されている。
画像読取り装置2は、上方が開放された箱型の構造枠体41を有して構成され、その開放面にはコンタクトガラス42が載置され、それに対向するように開閉可能に原稿押さえ手段47(図1参照)が設けられ、その下方の内部空間には光源43、ミラーユニット44、レンズユニット45、CCD46が配置されている。
【0044】
光源43は構造部材に設けられたガイド部材(図示せず)により案内され左右方向に移動可能になっており、装置後方に設けられた駆動機構(図示せず)により移動されコンタクトガラス42上に載置された原稿を走査する。
【0045】
原稿からの反射される光は光源43に設けられたミラーとミラーユニット44で折り返されレンズユニット45に入射されてCCD46上に結像され、電気信号に変換されて出力される。構造枠体41はABSなどの樹脂材料で成形された部材が用いられる。
【0046】
構造枠体41の底面の四隅近傍にはEPDMゴム等を成形したパッド48が設けられており(図2参照)、装置本体に設置する際にはパッド48が装置本体の天井面に接地して画像読取り装置2を支持する。
【0047】
〔装置本体の支持構造〕
以下、本願の特徴である装置本体50の支持構造に関して、図5〜8に基づいて説明する。
これら図面において、図5は、弾性突出部材60を圧入して備えた装置1を底面側から見た状態を、図6は弾性突出部材60を収納穴54に収納する前の状態を、図7は装置1が接地されることなく、単に弾性突出部材60が装置されたフリーな状態を、図8は実際に装置1が接地された状態を示している。
また、これらの図7、8において、(イ)は接地部近傍の縦方向断面図を示し、(ロ)は圧入状態にある弾性突出部材60を含めた接地部近傍の平断面図を示す。
【0048】
図5に示す様に、本体下部に一体に設けられるベース部30は、基本的に、その外形においてコの字型を有している。
このベース部30の底面には四隅近傍に、本願独特の構成を有する接地部51が設けられている。図6に示す様に、この接地部51は、装置本体50の底面からは一段下側に部分的に突出されており、本体四隅で接地が起こるように構成されている。
【0049】
図5に示す様に、これら接地部51として、前方左接地部51a、前方右接地部51b、後方左接地部51c、及び後方右接地部51dが設けられている。ここで、装置の左右は、図2紙面左右方向に対応し、ユーザーが装置に向かった姿勢を基準とする。
本願にあっては、下記する構成を採用することで、ベース部30の水平出しは、ベース部30と一体に樹脂材料から設けられる接地部51によって達成される。
【0050】
図6に示す様に、これら接地部51の底面は、平面視で接地の長手方向に伸びる一対の平行接地面53を備えている。左側接地部(前後共)51a、51cに関して平行接地面53は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに関しては、平行接地面53は前後方向に長い構成が採用されている。
この配設方向は、後述する弾性突出部材60の平断面、長手配設方向に関しても同様である。
【0051】
これら各接地部51には、方形角柱状の前記弾性突出部材60が圧入されて保持される。
各接地部51に関して、弾性突出部材60は、装置の上下方向において、ベース部30内に、その上部側過半以上が収納されており、その一部が、図7に示す非接地状態(装置本体が浮いた状態)で、下側に突出するように構成されている。
【0052】
さらに、図6、図7(ロ)、図8(ロ)に示すように、接地部51に設けられている弾性突出部材60が圧入される収納穴54には、部材の圧入方向に沿って、内部空間側に突出するリブ55が3列づつ、平面視長手となる壁面56に設けられている。弾性突出部材60が、この収納穴54に挿入される段階で、これらリブ55により部分的に圧縮され、弾性突出部材60の保持が強固なものとなる。
【0053】
これら弾性突出部材60の形状は、異なった方向を成す3辺長をそれぞれ異ならせることで、シート状態にある弾性材料から、この部材60を切り出した状態で、共通する辺長を有する方向において材料特性が同一となるようにされている。即ち、図7に示す例にあっては、弾性突出部材60の上下方向がシートからの切り出し方向において同一とされていることから、装置が接地された状態において、弾性突出部材60が主に圧縮変形を受ける弾性突出部材の最長手方向(圧入された状態で上下方向)に関して、その材料弾性特性が、異なった接地部間で同一となり、接地に伴う圧縮においても、その圧縮変形に伴って発生する接地圧が均等となる。
【0054】
上述したように、左側接地部(前後共)51a、51cに関して平行接地面53は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに関しては、平行接地面53は前後方向に長い構成が採用されており、各接地部51a〜51dには3辺長が異なる方形角柱状の弾性突出部材60が圧入保持してある。
そして、少なくとも1つの弾性突出部材60の平断面における長手配設方向が、他の少なくとも1つの弾性突出部材60の平断面における長手配設方向と異なるように構成する。つまり、図5に示す例にあっては、左側接地部(前後共)51a、51cに配設してある弾性突出部材60は左右方向に、右側接地部(前後共)51b、51dに配設してある弾性突出部材60は前後方向に、それぞれ長手配設方向が長い構成となる。
ここで、弾性突出部材の平断面長が異なる状態であって、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じ場合であれば、滑りやすい接地対象面上において、装置本体は長手配設方向側に滑りやすくなる。一方、本構成であれば、複数の弾性突出部材の平断面における長手配設方向が全て同じではないため、例えば方形状の装置本体50の各辺に垂直な四方向において、台表面における装置本体50の滑り止め効果が向上する。
【0055】
弾性突出部材60は、エチレンプロピレン(EPDM)ゴムで成形された部材が一般的に用いられる。この材料は、硬度60°〜90°のものを採用することができ、具体的には60°とした。ここでの弾性部材の硬さとしての数値はJIS K6301 Aによるゴム硬度である。これらの硬度の材料はEPDMゴムのみならず、別種のゴム材料やポリウレタン等の合成樹脂材料の中からも容易に見出しえる一般的な材料である。
【0056】
さて、前記弾性突出部材60の形状(特に突出量)および弾性特性の選択と、接地部底面の構成に関して、図7、8に示す図面を参照しながら説明する。
【0057】
図7(イ)等に示すように、前記各接地部51の底面52は、同一平面を形成する。
即ち、水平面を成す台上に、複写装置1を設置した際には、図8に示すように、四隅近傍のこれら各接地部51の底面52が接地して、複写装置1を水平に保つことが可能とされている。この接地状態では、この部位が主に本体荷重を支える。
【0058】
一方、弾性突出部材60に関して説明すると、装置1が台上に接地された場合、図8に示すように、この弾性突出部材60が弾性変形して、各部位に掛かる荷重との関係から、その底側先端にある接地当接面61が、接地部の底面52と面一となり、共に接地する構成が採用されている。
また、この弾性変形を許容するように、図7(ロ)に示すように、接地部51と弾性突出部材60との間に、非接地状態と接地状態との間での、弾性突出部材60の変形を許容する変形許容空間57が設けられている。
【0059】
さらに、図7、8への接地操作に伴う変形状態からも判るように、非接地状態では弾性突出部材60の突出状態が確保されており、接地された場合に各接地部51が直接相手側に接地して、ベース部30ひいては装置本体50全体の平面度等が確保されることが判る。
【0060】
〔本願構成を採用することにより達成される平面度〕
本願構成を採用することにより達成される平面度に関して、具体例を以下に示す。装置構成は、先に従来技術の課題で説明した状況と同じである。
【0061】
弾性突出部材60の突出量を、今回の例では0.5mmとし、装置1を設置した際には、この4ヶ所の全てにおいて突出分が圧縮される。
後方左では、仮に、接地部51が存在せず弾性突出部材60のみで装置本体50の荷重を支持するときには2mm圧縮されるところであるが、本構成の場合は0.5mm圧縮されたところで、当該部位にある接地部の底面52と台表面が接触して、それ以上圧縮されることはなかった。後方右と前方左では1mm圧縮されるところであるが、本構成の場合は0.5mm圧縮されたところで当該部位にある接地部の底面52と台表面が接触し、それ以上圧縮されることはなかった。さらに、前方右では、接地部51の有無に関わらず0.5mmに圧縮されるところであるため、丁度0.5mmの圧縮で接地部の底面52が台表面に接触する。つまり、この実施例では、接地部51の底面52からの弾性突出部材60の突出量を、接地部51が存在せず弾性突出部材60のみで装置本体50の荷重を支持するときの弾性変形量以下であると共に前記弾性変形量の4分の1以上になるように、設定していることになる。
この突出量設定により、装置接地時には、全ての接地部51の底面52が台表面と接触しており、それ以上の圧縮がないため、光学系取付面の平面度も、樹脂ベース単体精度で確保できていた。
また、全ての接地部51内では、弾性突出部材60が十分に圧縮されながら床に強く接触しているため、滑り止め効果を損なうことはなかった。
よって、今回の構成によって、弾性部材本来の機能を失うことなく、光学系の平面度、平行度を確保することができた。
【0062】
〔弾性突出部の接地当接面の別形態〕
以上、説明した弾性突出部材60の接地当接面61は、単純な平面としたものであるが、図9、10に示すように、所定の凹凸形状(同図に示すものは波型凹凸形状)を成すものとすることで、この面が机表面と密着して、装置1の移動時に脱離を防止することができる。
【0063】
図9は、この例の弾性突出部材60を該当部位に取付た状態を、図6に対応して図示したものであり、図10は、この例の弾性突出部材60の形態(イ)、及び切断を伴った製造時の状態(ロ)を示したものである。
【0064】
図10(イ)に示されるように、この例では、弾性突出部材60の接地当接面61が、机表面である接地対象面に近接・離間する方向で、複数の傾斜面61aの組み合わせとして、凹凸状に形成されている。従って、この部材を使用すると、接地時には凹凸の凸側が主に接地することとなる。
【0065】
図10(ロ)に示されるように、その例の弾性突出部材60の接地当接面61を製造するには、台ゴムの原材料である弾性シート状材料70を、上記のような波型の凹凸面を形成するように切断して製造する。この場合、切断面71の両側に位置するに少なくとも対となる弾性突出部材60が同一な形状となるように切断面形状を選択する。
こうすることで、コスト削減の効果を得るとともに、切断面位置の選択により、各弾性突出部材60の形状差を抑え、特性の同一性が確保された弾性突出部材60を得ることができる。
【0066】
〔別実施の形態〕
本願の別実施の形態に関して以下説明する。
(1) 上記の実施の形態にあっては、画像処理機能として、画像形成処理、画像読み取り処理の両方を備えた装置を示したが、これら機能のいずれか一方を有する画像処理装置にあっても、本願支持構造を採用することで、本願の課題を解決できる。
(2) 上記の実施の形態においては、接地部に対して弾性突出部材を設け、接地部の底面と弾性突出部材の接地当接面との両方が接地される構成を示したが、引きずりに伴う脱落、長期設置後の持ち上げによる抜け落ちに対する対策にあっては、接地部の底面が接地対象面に接地することは必ずしも要求されない。
従って、本願にあって、接地対象面に接地当接面で接地する弾性突出部材を保持するため、ベース部に設けられる部位を保持部と称する。この保持部は、本願において弾性突出部を保持する部位を意味する。
(3) 上記の実施の形態にあっては、接地部に弾性突出部材を圧入することで、本願の支持構造を得るものとしたが、接地部(引いては装置本体)を構成する樹脂材料に対して、弾性に富み、接地して本願目的を達成できる弾性材料を、装置本体の形成時に一体に成形しておいてもよい。従って、接地部に対して弾性に富み、接地された状態で、接地部と面一となる弾性部位を、弾性突出部と呼ぶ。
この弾性突出部の概念は、本願上述の保持部に対しても適用する。但し、保持部を対象とする場合、接地状態で保持部と弾性突出部とが面一となることは要求しない。
(4) さらに、弾性突出部の保持構成は、上述の圧入に限られるものではなく、何らかの意味で接地部(又は保持部)に保持されていればよい。
(5) 上記の実施の形態にあっては、各接地部の弾性突出部材の収納穴を設け、この穴に弾性突出部材を圧入することで、本願の支持構造を得るものとしたが、弾性突出部材の形成部位は、接地部とは独立とされるものであってもよい。
図11に、接地部51とは独立に、本願に言う弾性突出部70を設けた例を示した。同図(イ)は非接地状態を、(ロ)は接地状態に対応している。この例にあっては、四端辺に設けられる各接地部の平面視で内側に、弾性突出部70が独立に設けられている。
(6) さらに、上述の例にあっては、弾性突出部材が、図7(ロ)、図8(ロ)に示すように、実質水平な平断面方向に弾性変形して変形が吸収される構成を示したが、装置の上下方向に設けられる収納穴の天面近傍に、この機能を果す空間を設け、弾性変形を上下方向で吸収できる構成を採用することも可能である。当然、水平・鉛直方向の両方向で吸収してもよい。
この種の変形許容空間を設ける構成は、本願にいう保持部に関しても採用できる。
(7) 上記の実施の形態にあっては、弾性突出部材を角柱状のものとしたが、図12に示すように、弾性突出部材を従来のように円筒状のもの71としてもよい。同図に示すものにあっては、円筒内の軸側に位置される突出柱が、本願にいう接地部を構成するのであり、円筒状の弾性突出部材71の内径は突出柱72の外径に対して僅かに小さく設定され、弾性突出部材に働く弾性変形力により、確実に位置保持されるように構成されている。
さらに、外径側に本体側から突出される環状の保持部73が設けられ、弾性突出部材71に過度の変形が発生しないように構成されている。図13(イ)に非接地状態を、(ロ)に接地状態を示した。
本願にいう保持部に関しても、保持部を突出柱状とし、弾性突出部を円筒状とする構成とすることができる。この場合も、保持部の接地は必要ない。
(8) 上記の実施の形態において、弾性突出部材60の接地当接面61の凹凸形状に関しては、これが波型を成す例を示したが、図14(イ)(ロ)に示すように、単純な矩形形状とされる構成としてもよい。図14の記載は、図10の記載に習ったものである。
さらに、このように特定の凹凸形状とする以外に、単に表面を荒らす、さらに表面に所定のローレット加工を施す等の操作を行うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本願の画像処理装置の支持構造を採用する複写装置の外観を示す図
【図2】図1に示す画像処理装置の概略断面図
【図3】図1に示す画像処理装置の駆動系の概略構成図
【図4】画像読取り装置の概略外観図
【図5】図1に示す画像処理装置を底面側より見た図
【図6】弾性突出部の収納穴への圧入構成を示す説明図
【図7】非接地状態における弾性突出部の状態を示す説明図
【図8】接地状態における弾性突出部の状態を示す説明図
【図9】別実施の形態の弾性突出部を備えた画像処理装置を底面側より見た図
【図10】別実施の形態の弾性突出部の具体的構成と、その製造工程を示す図
【図11】非接地状態、接地状態における本願の別実施の形態を示す図
【図12】円筒形状の弾性突出部を備えた本願の別実施の形態を示す図
【図13】非接地状態、接地状態における図12に示す本願の別実施の状態を示す図
【図14】更なる別実施の形態の弾性突出部の具体的構成と、その製造工程を示す図
【符号の説明】
【0068】
1 複写装置
50 装置本体
51 接地部
52 底面
53 平行接地面
54 収納穴
55 リブ
56 平面
57 変形許容空間
60 弾性突出部材(弾性突出部)
61 接地当接面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、
接地対象面に接地当接面で接地し、弾性材料からなる弾性突出部を保持する保持部を、前記ベース部に設け、
前記保持部に、前記弾性突出部が圧縮状態で保持されている画像処理装置の支持構造。
【請求項2】
前記保持部と前記弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられている請求項1記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項3】
接地に伴って発生する前記弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されている請求項1又は2記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項4】
前記弾性突出部の接地当接面が、前記接地対象面に近接・離間する方向の凹凸面として形成され、前記接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する請求項1〜3のいずれか1項記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項5】
異なった接地箇所に備えられる少なくとも対となる前記弾性突出部を得るに、弾性シート状材料を、前記凹凸面を形成するように切断して製造する請求項4記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項1】
装置本体の下側部分に本体を支持するベース部を備え、前記本体内若しくは本体とともに、画像形成処理又は画像読取り処理の少なくとも一方の機能を実行可能な画像処理部を備えた画像処理装置の支持構造であって、
接地対象面に接地当接面で接地し、弾性材料からなる弾性突出部を保持する保持部を、前記ベース部に設け、
前記保持部に、前記弾性突出部が圧縮状態で保持されている画像処理装置の支持構造。
【請求項2】
前記保持部と前記弾性突出部との間に、非接地状態と接地状態との間での、前記弾性突出部の変形を許容する変形許容空間が設けられている請求項1記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項3】
接地に伴って発生する前記弾性突出部の弾性変形方向における材料方向特性が、異なった接地箇所に備えられる前記弾性突出部間において同一に設定されている請求項1又は2記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項4】
前記弾性突出部の接地当接面が、前記接地対象面に近接・離間する方向の凹凸面として形成され、前記接地状態で接地当接面の凸側部位が接地する請求項1〜3のいずれか1項記載の画像処理装置の支持構造。
【請求項5】
異なった接地箇所に備えられる少なくとも対となる前記弾性突出部を得るに、弾性シート状材料を、前記凹凸面を形成するように切断して製造する請求項4記載の画像処理装置の支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−41628(P2007−41628A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312015(P2006−312015)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【分割の表示】特願2004−183673(P2004−183673)の分割
【原出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【分割の表示】特願2004−183673(P2004−183673)の分割
【原出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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